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バレンタインフェアを楽しもう!

#UDCアース #お祭り2022 #バレンタイン


●ハッピーバレンタイン!
「愛する人にチョコを贈る。うぅん、いいですよねぇ、バレンタイン。あ、ハッピーバレンタインです、皆さん」

 集まってくれた猟兵達に向け、金宮・燦斗(《夕焼けの殺人鬼》[MorderAbendrot]・f29268)はニコニコ笑顔。なおチョコはない。

 今日はバレンタインデー。UDCアースでもその催しはしっかりと開催されており、特に日本ではチョコ経済が凄いことになっているとのこと。
 とある都市の百貨店ではバレンタインフェアが開かれており、様々なチョコレート菓子の販売はもちろん、無料で食べることが出来るチョコフォンデュ会場や手作りチョコ作成会場などいろんなイベントが開かれている。

 今回の任務は……ずばり、この百貨店で行われているバレンタインフェアを楽しむこと。戦いを忘れ、少しでも平和なひとときを楽しんでほしいという。
 楽しむのは1人でも、何人でもいい。このフェアはこの瞬間にしか起きないイベントなので、是非とも楽しんでほしいと。

「私としましても、みなさんが戦い詰めなのはあまり見たくありませんからね。休めるときには休んでほしいものです」
「それに、チョコレートは少量であれば疲労回復にも良いですよ。働き詰めの方も、ぜひともチョコレートを食べて、ゆっくりと休息を取ってください」

 ただし食べすぎは駄目ですよ、と一言入れる燦斗。医者としての観点から、疲労回復にいいからと食べすぎるのは良くないと注意を入れておいた。

「では、気になった方は私の手を。百貨店のど真ん中に送り届けますので、楽しんできてくださいね。……食べすぎには注意してくださいね!」

 念押しにもう一言追加すると、燦斗は了承を受けた猟兵達から戦場、もといバレンタインフェアが行われている百貨店へと送り届ける。

 一瞬の内に、チョコレートの香りが鼻の奥を通り抜けて――。


御影イズミ
 閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
 ハッピーバレンタイン。
 ということで、バレンタインシナリオをお届けに上がりました。

 こちらは1章のみの構成となっております。
 初めての方はMSページをご確認の上、ご参加ください。

●バレンタインフェアの詳細
 6階まである百貨店にて開催されており、階によって催し物が違っています。
 プレイングで階数の指定をしていただくと楽かもしれません。

 1~2階は『チョコレートフェスティバル』。様々なチョコレートやチョコ菓子が並んでいます。贈り物に最適なラッピングも受付中。
 3階は『チョコフォンデュ食べ放題会場』。レストラン系列のこの階では、様々なお店が無料でチョコフォンデュを提供しています。とんでもないチョコフォンデュもあるかも……?
 4階は『チョコ菓子制作会場』。チョコレートを使ったお菓子作りを体験します。材料はすべて揃っているので、チョコ菓子なら何でも出来ます。そう、何でも。
 5階は『チョコ作り体験会場』。カカオ豆からチョコレートを手作りします。なお労力が半端ないので翌日は筋肉痛待ったなしです。
 6階は休憩場所。チョコばかりで疲れた人にオススメ。

 色々ありますが、要は楽しめればOKです。
 皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
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第1章 日常 『UDCアースのバレンタイン』

POW   :    気合を込めて恋の決戦に向かう

SPD   :    気の合う友達に声をかけ、お祭り見物を楽しむ

WIZ   :    敢えてひとりでお祭りを見て回る

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
灰神楽・綾
【不死蝶】5階
へぇ、色んなことが出来るんだねぇ
梓、梓、チョコ作ってみたいなー俺
いやいや、だからチョコ作りだよ
案内板の5階を指差し

普通の料理なら梓は大先輩だけど、今回は俺も梓も同じ土俵
チョコスイーツだって何でも卒なく作れちゃう梓が
カカオを前にしてわたわたしている様子は
何だか新鮮で見ていて楽しい

ほらほら梓、動きが鈍くなってきてるよー
君なら出来る、がんばれがんばれ
…チェッ、バレたか

ペースト状になってきたカカオは見た目も香りも既にほとんどチョコ
一口舐めてみようっと……うわ、苦ッ

ようやく完成したチョコ
出来たてだからか、長い時間をかけて作ったからか
今まで食べたチョコの中で一番美味しく感じるね


乱獅子・梓
【不死蝶】5階
お前が自分で料理してみたいと言うなんて珍しいな
どういうのが作りたいんだ?ケーキ?クッキー?
えっ、そっち……!!?

綾に引っ張られるままチョコ作り体験会場へ
今まで市販のチョコしか見たことなかったから
完全に1からのチョコ作りなんて未知の世界
まぁこれも良い経験だと思うことにしよう

カカオ豆を洗い、ローストし、皮を剥き
そしてすりこぎでひたすらすり潰し……
結構な時間すり潰しているのになかなかペースト状にならない
おい綾!お前さっきからすり鉢押さえてるだけだろう!代われ!

そんなこんなで何とかチョコ完成
チョコってこんなに苦労して作られていたんだな…
市販のチョコももっと大事に食べよう…そう思った



●作ってる方には本当に感謝しか無い
「へぇ……いろんな事が出来るんだねぇ」
「おー……すげー」
 バレンタインフェア開催、ということでやってきたのは灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の2人。チョコレートの香りが包む中、様々な催し物が2人の目に映る。
 チョコの物販、チョコフォンデュの食べ放題、チョコスイーツ制作などいろいろな催し物が開かれていることを記す看板の前で綾がぐいぐいと梓を引っ張る。
「梓、梓、チョコ作ってみたいなー、俺」
「お前が料理してみたいと言うなんて珍しいな。どういうのが作りたいんだ? ケーキ? それともクッキー?」
「いやいや、だからチョコ作りだよ」
「……え?」
 そう言うと、自然と梓の視線が綾の指の先へ移り……指し示す階層を見る。
 彼の指が示していたのは、5階のチョコレート制作会場。手作りチョコが作れるというのが謳い文句の会場なのだが、なんとカカオ豆からの手作りチョコなのだと。
 クッキーやケーキならまだよかった。生地を作り、焼けるのを待つだけの単純な作業でとても簡単なものだから。でも今梓の視線の先にあるのは、カカオ豆から作るチョコレート作りの会場の名前。指差した階数間違ってない? 1階分ズレてるんじゃない? と首を傾げて綾を見ても、そう、ニコニコ笑顔のまま。
「……綾、なあ、綾」
「いやー、楽しみだよねー。豆からのチョコって貴重じゃない?」
「綾っっ!!!」
 梓の悲鳴虚しく、綾に腕を掴まれて5階まで連れて行かれる始末。入り口まで来て、もう逃げられないのだと悟ってしまう。

 5階、チョコレート制作会場。他のどの会場よりもカカオの香りが強く、色んな人がチョコレートの手作りをしている。制作するための手順を一通り聞いた後、綾と梓はまずカカオ豆を洗い始めた。
「今まで市販のチョコしか見たことなかったから、ここからは完全に未知の世界か……」
「チョコスイーツなら梓は簡単に作っちゃうもんねぇ。えーと、どのぐらい洗うんだっけ?」
「透明になるまでな。俺はフライパン用意するから、洗ったら水を取り替えてを繰り返すんだぞ」
「はーい」
 色が濁らなくなるまでカカオ豆を洗い、水気を切ってフライパンでからからと煎り続ける。だが何処まで煎ったらいいのかわからず、梓は首を傾げながらも木べらでころころと転がし、綾はじーっとカカオ豆を見続けていた。
 やがて弾ける音が何度か響き、乾いた音がフライパンに響いてきたのでそれを耐熱ボウルに上げて熱い内に皮を剥く。中から現れた豆を取り分けたらあとはすり鉢ですり潰すだけなので、すり鉢を綾が、すりこ木を梓が受け持つことに。
「細かくすり潰さなきゃならないって大変だよねぇ」
「まあ、そうしないとあのチョコレートにならないからな」
 ごりごりごりごり。ごりごりごりごり。乾いた豆をすり潰す音が2人の間に響く。漂ってくるチョコレートの香りはさらに勢いをまして綾と梓の鼻の中を通り抜け、これは期待出来るチョコレートが作れるだろうと思っていた。……すりつぶし作業を始めた当初は。

「……なかなか、ペースト状にならないな……」
 それから何時間すり潰しただろうか。細かく砕けたカカオ豆がねっとりとするまですり潰し続けるようにと手順にはあったが、それにしたって時間がかかっている。いつになったらねっとりするのだろうと梓は腕を動かし続ける。
「ほらほら梓、動きが鈍くなってきてるよー。君なら出来る、がんばれがんばれー」
 そんな中、綾はゴトゴトと動くすり鉢を目一杯押さえていた。代わりたくないという意思の表れとも言うが、そういう怠慢は流石の梓も見逃さない。
「いや、お前さっきからすり鉢押さえてるだけだろう!? 代われ!!」
「あ、バレた。チェッ」
 見つかっては仕方ないなぁと梓と綾は立ち位置を交代。今度は綾がごりごりとすり潰し、梓がすり鉢を押さえる係へと転向した。
 その後、ねっとりとなったチョコを湯煎にかけつつお湯が入らないように丁寧にすり潰す。この時点でもうほとんどチョコレートに等しかったため、綾が指でちょっとだけなめてみた。
「うわ、苦ッ。匂いだと甘い感じするのに」
「砂糖をまだ入れてないからな。ほら、入れるぞ」
 指定量の砂糖をだばぁと入れて、再びゆっくりすり潰す。とろとろに溶け切ったカカオをシリコンモールドに流し込み、あとは冷えるのを待つだけ。

 そして、ようやくチョコレートが完成した。この時点ですでに5時間経過。
 出来上がったチョコレートは市販品のようにキラキラと輝いており、手間を惜しまずに作られた品だというのがわかる。
 ひとくち食べてみれば、そのチョコレートは市販品よりも少しザラザラしていてとても苦い。けれど、手作りだからか、それとも協力して作ったからなのか、その味は市販品には負けていなかった。
「今まで食べたチョコの中で一番美味しく感じるね。ちょっと苦いけど」
「チョコってこんなに苦労して作られていたんだな……」
 口の中に広がるカカオの苦味と、わずかに広がる砂糖の甘さ。眠気を目覚めさせてくれるような味が、綾と梓の口を支配した。

 この日、2人は貴重な体験を終えたあとに脳裏に深く刻みつけた。
 ――チョコレート、もっと大事に食べよう、と……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イヴェット・アンクタン
【がれき】
※アドリブ歓迎
カカオ豆からの手作り、興味深いですね。旅団の長のみな様や、十紀さんとジフさんへ送るチョコづくり、楽しみましょうか。

力仕事は十紀さんに、配合の分量はジフさんまかせて、私は聞き耳と視力をいかし、ローストやかき混ぜをより均一に、外皮除去をより完璧に近づけましょう。
しかし……かなり神経を、削りますね。除去もそうですが、焼き加減が中々に、難しいです……。カカオマスと、他の材料を混ぜるのにも、体力が……!

では試しに1口……うわっ、にがー!?うあ、うあうあ、苦いよお……舌触りだけ、滑らかって、どういうことなの?
……い、いけません、取り乱しました。いつか、もっと上手く、作りたいですね。


ジフテリア・クレステッド
【がれき】※アドリブ歓迎
買って配るだけかと思いきや手作り…しかも豆からなの…?
なんか2人とも超乗り気だし…まあ、私も2人のためなら付き合うけどさ。
どうせ私がチョコをプレゼントするのは2人なわけだし。

とりあえず、レシピや作業工程は持ち前の学習力で覚えたし、私には闇医者だった時に培った経験で身につけた医術知識があるから、こういう調合みたいな作業にはちょっと自信があるよ。
ふふふ、これは大勝利確定だね。味の調整は任せてよ。

…うん、再手術するまで常に毒に汚染されてた私の味覚がゴミクズだってことを忘れてた。これだと普通の人には苦いんだね…2人ともごめんなさい。

…私たちも、色々できるようになりたいね。


尖晶・十紀
【がれき】アドリブ歓迎
本格派チョコ作り、楽しみ……
イヴ(イヴェットの愛称)とジフテリアの二人に、感謝を込めて贈る用に作ろう……

えーと?カカオ豆を煎ってすりつぶして砂糖を入れて固める……うん、とにかく根気がいる、ってことは分かった。
力仕事は、任せて欲しい。

(ゴリゴリすりつぶす)
こんなのからチョコが出来るなんて想像もつかないな……あ、でも匂いはもうチョコだね……味は……(つまみ食い)めちゃくちゃ苦いけど……(僅かにしかめ面)

完成したら、試食と、交換だね……十紀のは……うわ、思ったより苦い……あんなに大変だったのに……普段食べてるのとは何か違う……製菓プラントの人達って……凄いんだね……



●手作りとは人の好みが出るものである
 とある都市の百貨店。バレンタインフェアが行われているこの場所の5階にて、イヴェット・アンクタン(ロックオン・サバイバー・f24643)、ジフテリア・クレステッド(嵐を紡ぐ歌・f24668)、尖晶・十紀(クリムゾン・ファイアリービート・f24470)の3人が会場入りを果たす。
 目的は、そう、カカオ豆からのチョコレート作り。時間がかかると名高いこの作業に対し、彼女たちは己の腕を試しに来た。……なおジフテリアにとっては予想外だったようで、階数間違ってない? と何度も首を傾げてはイヴェットと十紀の2人に間違ってないと告げられた。
「か、買って配るだけかと思いきや手作り……しかも、豆から……??」
「興味深いですよね、普段食べているものを原料から作るなんて……」
「本格派チョコ作り……楽しみ……」
 それぞれお互いがお互いのためにチョコを作る楽しみを抱え、いざ、3人は手作りチョコ会場――もとい、戦場へと足を踏み入れた。

 会場の入口をくぐり、案内を受けてテーブルへと着席。髪などを巻き込まないように丁寧にバンダナで髪をまとめ、エプロンを付けてしっかりと手指の消毒を済ませるとスタッフからの手順説明を受けた。
 カカオ豆を洗い、しっかりと火を通して皮を剥いてすり鉢ですり潰し、砂糖を加えて固めるだけという話に聞くだけではシンプルでわかりやすい作り方。持ち前の学習力で作り方を覚えたジフテリアはメモで作業工程を残し、イヴェットと十紀もしっかりと話を聞いてメモに目を通した。
「とにかく根気がいる、ってことはわかった。十紀がたくさんすり潰せばいい?」
「そうですね……力仕事は十紀さんにおまかせして、配合の分量はジフさんに任せても?」
「オッケーオッケー、味の調整は任せて。闇医者だったときの経験が生きそうだよ」
 それぞれの役割を決め、早速カカオ豆を洗う作業から開始。ザラザラとザルに上げて流水でしっかりと洗い流していくのだが、これがまた水を何度取り替えても濁る。既にここから激務は始まっているのだと、3人はごくりと喉を鳴らした。
 しっかりと汚れを洗い落とし、透明になった水を見てほっと一息ついたのも束の間、次に待っているのは煎り作業。使っているのが生のカカオ豆なため、火を通す必要があるわけで。
 ザルに上げたカカオ豆の水分をキッチンペーパーで余すこと無くしっかりと拭き取り、次の作業へと運ぶジフテリア。念の為に表皮の状態を確認するが、水を吸っているだけなのでまだまだチョコレートには程遠い。
「ここは私に任せてください。適度な温度にしてみせます!」
 イヴェットがフライパンを片手に、木べらでコロコロと転がす。既にチョコの良い香りは漂っているのだが、煎っていくとその香りはより一層際立つものになってきた。嗅ぎ慣れたあの香りが鼻の奥を、喉の奥を突き刺さって離れない。
「お……いい匂い」
「うーん、既にいい匂いだったけど煎っていくといい感じになるね」
「うう……っ。でも、焼き加減が……中々に難しいです……!」
 イヴェットの顔がだんだん曇る。初挑戦のカカオ豆のロースト、果たして何処まで煎り続けたらいいのか……なんとか聞き耳を立てて音を聞き分けているが、なかなか変化する様子がない。
 長らく煎り続けたところで水気がなくなり、音がカラカラと固くなる。持ち前の視力と聞き耳によってカカオ豆のより良い状態を見出したためか、皿に上げたときのカカオ豆は外皮の剥がしやすさは段違いだった。
 その後は3人で綿密に、綺麗に外皮を取り外す作業。人数が多かったからすぐに終わったものの、1人だったらこの作業がどれだけ時間がかかったのだろうか……そんな考えが頭に浮かぶだけで、ちょっぴり背筋が冷たくなっていたりもした。

 続いてはチョコレートにするために煎ったカカオ豆をすり潰す作業。お待たせしました、ここからが地獄の作業ですと言わんばかりにすり鉢の中のカカオ豆達が十紀を見上げているようにも見えた。
「ここからは……頑張って、いこう……」
「適度な休憩を忘れないようにね、十紀。この作業は……どうやら、かなり時間が必要みたいだから」
 ちらりとジフテリアが周囲の一般人の様子を見やる。先に会場入りしていた人々は現在もなお、ゴリゴリとすり鉢でカカオ豆をすり潰してはチョコになるならないの様子を伺い、未完成品とわかれば再びすりこ木をぐるぐると回して作業を繰り返す。まさに見目には地獄の現場。
 だが、そんな地獄の現場を見ても十紀は胸を張った。力仕事ならば自分の仕事、得手となるなら任せておいてほしいと。
「とにかく……いっぱいすり潰せば、いいよね?」
「はい、そうです。もう、目一杯! 親の仇! というぐらいにすり潰しちゃってください」
「オッケー、イヴ。……あ、でも止める時は、言ってね?」
「大丈夫、そこは私が見ておくよ」
 イヴェットがすり鉢を押さえ、ジフテリアがカカオ豆の様子を見張り、十紀がすり潰す。完璧なフォーメーションを組んだ3人が今、早速、カカオ豆を粉々にすり潰していった。

 最初は大きな豆を突き崩し、粉になるように細かく潰す。すり鉢の構造上細かくなった粒が溝に入り込むが、それもお構いなしにどんどん叩き潰して粉へと変貌させる。
 次に、ゴリゴリと溝に擦りつけて油分を抽出させる。この作業が1番大変なもので、じんわりと油分が出て全体がもったりするまでは力任せにすり潰し続けるしかなく、もったりしても湯煎しながらすり潰し続けなければならないのだ。
「こんなのからチョコが出来るなんて、想像もつかないな……??」
 十紀は思う。チョコレートはとても滑らかでとろけるのに、こんなゴワゴワした形からどうしてあんな物が出来てるのかと。辺りにふわりと漂うチョコレートの香りはもう、すぐにでも食べたら口の中で溶けそうな雰囲気なのだ。
「あ、でも匂いはもうチョコだね……。ちょっと、食べてみる?」
「いいですね! じゃあ、一口……」
 指先で軽くすり潰したカカオ豆を取り、口へと運んでみる。……その瞬間に広がったのは、滑らかなのに対してチョコレート特有の苦味と、僅かに広がる酸味。匂いとは裏腹の甘さは何処にもなく、ただただ、舌に広がる苦さがイヴェットと十紀の身体を駆け巡った。
「うわっ、にがー!?」
「め、めちゃくちゃ、苦い……」
 イヴェットの顔は子供が泣くような顔に、十紀の顔は僅かにしかめっ面。相当堪えたようで、2人の顔はしばらくもとに戻ることはなかった。
 だがジフテリアは違った。口に広がる苦さは特に気になるようなことはなく、むしろこれが本物のチョコレートな気がしていた。けれど、2人の様相を見て思い出したのが……再手術を受けるまでは、自分の味覚が最悪だったこと。
「2人共、ごめんなさい。……私の味覚がゴミクズだったってこと、忘れてた」
「うわーん! ジフさんは悪くないですよーぅ!」
「うん、ジフテリアは、悪くない……」
 悪いのはカカオ豆。そう、3人のうちの誰も悪くはないのだ。
 後に砂糖を沢山入れよう! と提案したジフテリアは分量より少し多めの砂糖を入れ、2人でも食べやすいように調整。あとは温めながらしっかりと砂糖を溶かし、シリコンモールドに流し込んで冷やし固めるだけとなった。

 数十分後、冷やし固められたチョコレートが皿の上に並ぶ。キラキラと艶のあるチョコレートは、市販品と比べても全く遜色ないものだった。
「出来ましたね!」
「いい感じに出来上がった! あとは箱詰めして配るだけだね!」
「箱、たくさんあるね……? どれにしようかな……」
 出来上がったチョコレートをそれぞれ箱に詰めて、可愛らしいリボンと小さなメッセージカードをつける3人。テーブルの上に並べられた可愛らしい箱の数は、3人がそれぞれ渡したい人達の数だけ乗せられていた。


「本当に、本当にお疲れさまでした。ジフさんも十紀さんも、今回はありがとうございます」
 イヴェットが渡したチョコレートは、小さなカカオの形をしたチョコレート。
 色はそのまま、黒のチョコなのだが……それはキラキラと輝く宝石のようにも見えた。

「ううん、イヴェットもお疲れ様。十紀だって大変だったでしょ?」
 ジフテリアが渡したチョコレートは、可愛らしいハートのチョコレート。
 少し凝ったハートの形は煌めきを失わず、イヴェットと十紀の手に収まる。

「大変だったけど……この3人で作って、楽しかったから良しだよ」
 十紀が渡したチョコレートは、シンプルな板型のチョコレート。
 ただ、真っ直ぐな板だけど……その形には作り手の技術が込められていた。

 3人はそれぞれでチョコレートを交換し、一緒に食べる。思ったより苦くて甘さも控えめだが、それでも3人で作ったという思い出が味の違いを教えてくれていた。


「……でも、十紀はしばらくはチョコ作りはいい、かな」
「ああ……神経結構使いましたからね……」
「こういうのは1年に……いや、数年に1回ぐらいがいいよね」
 3人は今日の労力を振り返りながら、こう思う。

 ――チョコ製造業の方々、本当にありがとうと……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月19日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト