君には見えない正義の為に
●一の為の全、全の為ならぬ一
アストカ自由連邦はクロムキャバリアのとある小国だ。
近隣の諸国にとって、アストカの軍人というのは強者の名である。
豊富な物資を背景に入念な教育を受けるかの国の民は勤勉かつ優秀。
所有するプラントの数は特別多くない筈なのだが、近隣国より明らかにとびぬけた優秀なパイロットたちを排出し続ける不可思議な国であった。
アストカの外に居る者たちは、知る由もない。
「……チッ、なに“E”が人間様の道を歩いてるんだよ、退け!」
アストカのプラントが生産する物資の殆どは、ごく僅かの上流階級の為に使われるという事を。
国の代表として諸外国に認識されるエリートたちは、そうした搾取の産物であると。
「す、すみませんすみません! どうか、殺処分だけは……!」
他の者は、この足蹴にされながら謝り続ける少女のように、奴隷のような扱いの中でもだえ苦しみ続けているという事を。
●それが正義だとしても
「皆様、お集りいただきありがとうございます。世界コードネーム:クロムキャバリアにて、オブリビオンの出現が確認されました」
シスター服に身を包んだグリモア猟兵が、自分の呼びかけに応じてグリモアベースに集った猟兵達へ語りだす。
「今回の目的地は小国家アストカ自由連邦。苛烈な階級制度を敷いて国力を増していったかの国で、虐げられてきた貧民・奴隷階級の方々によるクーデターが起こります」
アストカでは徹底的な階級による差別が行われている。
生まれた時の親の地位や生来の疾患、能力等によってA~Eのランク付けをされた国民の生活には、おおよそ同じ国の国民とは思えぬ格差が存在するのだ。
「AやBの上級ランクの国民はプラントからの物資を優先的に配給されます。高度な教育を受けて自由に職業を選び、国外への出入りも自由。実に人権意識が進んでおりますね?」
勿論、冗句ですと言葉を続けた彼女が、そのままアストカの説明を続行する。
「物資を一部の人間に集中させれば、当然他にしわ寄せが来ます。Dともなればその日暮らすのに精いっぱい、Eランクに当てはめられた者は奴隷どころか家畜以下の扱いで虐げられる者も珍しくはないだとか」
勿論、低ランクの国民も自分たちの待遇改善のために立ち上がったことは何度もある。
だが、プラントの物資の大部分を抑えている高ランク者で構成される政府とそれに従う軍の練度は高く、まともな教育を受けていない貧民たちが敵う相手では無かったのだ。
「ですが、そのレジスタンスたちの苦難の日々も終わりを告げます。彼らが手に入れた超高性能キャバリアを旗印に、理不尽な差別社会を作る現政権へ反撃する時が来たのです!」
「と、いうわけで。レジスタンスの希望である『超高性能キャバリア』が今回予知されたオブリビオンマシンです。破壊してきてください」
淡々と今回の目標を示した女が、そのまま猟兵の使命を告げていく。
「皆様が転移するのとほぼ時を同じくして、政府軍による貧民街の民間人虐殺が開始されます。超高性能キャバリアのパイロットを見つけるのが目的のようですが、このままだと背後を突く形で現れるレジスタンス軍に撃破されますね」
しかし、それでは困るのだ。
猟兵の目標であるオブリビオンマシンを引きずり出すためには、レジスタンスの側が危機に陥らなければいけないのだから。
「ですので、まず皆様にはレジスタンス軍を攻撃し、壊滅状態にしていただく必要があります。勿論、状況的には政府軍に合流して協調するのが楽でしょうけど……ええ、その辺りは任せます」
虐殺を働く政府軍を助けろと言って、素直に頷ける猟兵ばかりではないだろう。
言葉を濁したグリモア猟兵は、目標たるオブリビオンマシンの話に移っていく。
「オブリビオンマシンの名は不明です。レジスタンス内では単に『希望』と呼んでいるようですね。『希望』が現れる時点でレジスタンスは壊滅状態、政府軍もエリートと言っても猟兵とオブリビオンの戦いに割り込める程ではありませんから……『希望』を壊すことに集中してくださいな」
仮に政府軍とも敵対する形で参戦したとしても、レジスタンスの説得は困難だ。
オブリビオンマシンがパイロットを破滅的思想に導くといっても、彼らにとっては明日破滅を齎すかもしれないのがアストカという国家なのだから。
虐げられてきた者たちの希望となる機体を破壊することのみが、オブリビオンから世界を守る唯一の方法となる。
張りつめた表情でグリモアの光の中を進もうとする猟兵たちへ、女の声がかけられる。
「アフターケアとして、オブリビオンマシンを倒した後の帰還転移を遅らせますね。現地民ではなく、『貴方方の為のアフターケア』です」
どうか、後悔の少ない行動を。
そう言い残した言葉を最後に、女とグリモアベースの光景が光の中にかき消えて。
重い鉄人形たちの足音が響く街に、猟兵たちは降り立つのであった。
北辰
OPの閲覧ありがとうございました。
重い話になりそうですね。北辰です。
今回皆様に向かっていただくのは苛烈な階級制度が人々を苦しめる小国家アストカ自由連邦。
実は裏があって……とかもない、見たまんまの悪徳国家でございます。
その地で、虐げられし人々の希望になろうとしているオブリビオンマシンを破壊してください。
●戦場
アストカの貧民が住んでいる背の低い建物が並ぶ街が戦場となります。
家屋等の破壊は仕方ありませんが、猟兵が故意に攻撃しない限り、流れ弾が現地住民を襲うことはないとします。
ただし、政府軍の目的はこの地に住む低階級の国民の虐殺です。
●1章
貧民街での虐殺を目論む政府軍と、それを阻止しようと背後から奇襲を狙うレジスタンス軍の戦いに介入します。
政府軍とレジスタンス軍は共に同型のキャバリア(1章敵フラグメント)を使用していますが、皆様に求められるのは『レジスタンスの壊滅』です。
政府軍とは協力してもいいし、無視しても攻撃しても構いません。
ただし、政府軍を攻撃してもレジスタンス軍が貴方を味方と認識することはないでしょう。
キャバリアを借りたい場合は政府軍に言えば貸してくれるでしょう。
レジスタンス軍は国外情勢を知る術に乏しく、猟兵という存在を正しく認識できている者の方が少ないので、此方に協力を持ちかけるのは困難を極めます。
●2章
現れた『希望』たるオブリビオンマシンとの戦いです。
相手はレジスタンス壊滅に手を貸した猟兵を完全に敵と認識しており、世界が破滅する前に自分達が死にかねないアストカの現状も合わさり、説得による解決は不可能です。
完全な破壊が求められます。
●3章
猟兵の役目が終わってなお、この戦場の終わり方を選べるのは貴方たちです。
旗印を失い敗走するレジスタンス軍、オブリビオンマシンが倒れてなおレジスタンス軍の完全撃破を狙う政府軍。
レジスタンスを護衛してもいいでしょう。返礼として向けられるのは罵倒かもしれません。
政府軍を攻撃してもいいでしょう。此処の一部隊を倒したところで、アストカは変わりません。
何もしない事だって、立派な選択です。
この瞬間、貴方は自由です。
●受付期間
2/4、8:31よりプレイングを受け付けます。
それでは、我らに見えぬ正義を砕く為。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『MCK04SC-パラティヌス・スローター』
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POW : BSフレイムガン&RS-Sグレネードランチャー
【耐熱塗装を施した機体が装備する銃火器】から【対人用の広域火炎放射】か【対装甲榴弾】を放ち、【酸欠と火傷】もしくは【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : RBXSランスライフル&Sマイン&EPジャミング
【連射ビームと共に対人殺傷用鉄片と妨害電波】を降らせる事で、戦場全体が【情報封鎖されたキャバリアによる虐殺現場】と同じ環境に変化する。[情報封鎖されたキャバリアによる虐殺現場]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : RSレッグガン&RS-Fポイズンソー
自身の【脚部対人機銃を掃射、精密狙撃の精度】を代償に、【複数の対人・対キャバリア用無人ユニット】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【対装甲機械刃と自爆、戦場に散布する毒ガス】で戦う。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●第三者
重い足音が街に響く。
ある者は、自らが築き上げた地位の崩落を近くに感じながら、それを先延ばしにするべく更なる悪徳を為さんと強張った表情でキャバリアの操縦桿を握る。
ある者は、自らを、愛する者を虐げてきた悪徳を滅ぼさんと使命感を胸に燃やし、『希望』に背を押される勇ましい表情で敵の背後に忍び寄る。
彼らを見つめる眼がこの戦場に現れたことを。
今はまだ、私たちだけが知っている。
ノエル・カンナビス
市民階級制に、富の独占ですか。
程度の違いこそあれ、どこにでもある当たり前の話です。
そうしなければ皆、諸共に滅びますので。
世界が公平だなんて誰が言いましたか?
無論、それらは合目的でなければならず、
歪みを正常化する試みは称されるべきではありますが。
――金満貴族と同じ装備を持っている時点で戯言ですね。
そちらにはそちらの、こちらにはこちらの事情があります。
対話ができぬなら戦うまでのこと。
環境耐性/火炎耐性/毒耐性で、対熱防御もNBC防御も可能。
対人兵器も榴弾もオーラ防御(と称するガーディアン装甲の
防御衝撃波)で止まります。無人機も含め。
残るライフルも、全部避けて王手詰みです。
政府軍は放置一択ですね。
ヴィリー・フランツ
心情:《こっちは抵抗勢力を叩く、正規軍様はマンハントを楽しんでくれ、オーバー》
…俺が含めてクソッタレだぜチクショウ
手段:HL-T10 ヘヴィタイフーンMk.Ⅹに搭乗、【熟練操縦士】も発動し性能も底上げしとく。
先ずはEP-Sアウル複合索敵システムで索敵、RS一六式自動騎兵歩槍の射撃やRXバーンマチェーテによる白兵で的確に撃破しよう、ミサイルは温存だ。
敵の榴弾は装甲と増加装甲、更にスパイクシールドで防御、悪いが対人混合の装備じゃ役不足なんでな。
コアを狙わせてもらう、このガス濃度じゃ防毒装備がなきゃ脱出出来ても一分とて持たんよ、これは俺なりの人道的処置ってやつだ、苦しむよりマシだろ。
ホント胸糞悪ぃぜ
●人道的処置
「逃げろ、少しでも遠くへ逃げるんだ!」
堂々と進軍してくる政府軍のキャバリアに気づいた貧民街の人間たちは、恐怖の表情を浮かべながらも皆懸命に逃亡を開始する。
人の足で巨大なキャバリアから逃げられるものではないと彼らにも分かってはいるが、それでも彼らを走らせるのは生物として逆らいようのない逃走本能と、『希望』の存在。
「早めに片付けないとな、例のレジスタンスの高性能機が現れりゃあ……」
逃れられぬ虐殺を、それでも少しでも先延ばしにすれば、彼らの希望たるキャバリアが現れる。
貧民たちはそう信じ、そして殺戮を行う政府軍もそれを前提にして作戦の遂行を急ぐのだ。
やがて、政府軍が自国の民を手をかけんとするその時。
「そこまでだ! これ以上お前らの好きにさせてたまるかよ!」
血気盛んな若者の声を通信網に響かせながら、現れるのは政府軍と同型のパラティヌス。
国から鹵獲したものだろうか、多少の傷はあれど性能は虐殺者たちのそれに劣るものではない。
「レジスタンスか! 首領は隠れてやがるのか……?」
現れた複数のキャバリアは全て量産機。
政府軍の頭を悩ませる例の『希望』が出てこない点が逆に恐ろしい。
つい先日まで一方的な強者であった彼らにとって、姿の見えぬ上位者を警戒しながらの戦いは決して得意とするものでは無いのだ。
「行くぞ皆! 敵は『彼』を警戒している、俺たちであの蛮行を止めるんだっ!」
この場でのリーダー格であろうか。
いの一番に声を上げたキャバリア乗りが仲間を鼓舞し、戦闘を開始しようとした瞬間。
ライフルによる二筋の軌跡がその機体のコアを貫き。
若きレジスタンスは、己が死に気づく間もなくキャバリアの爆発に飲み込まれるのであった。
「こっちは抵抗勢力を叩く、正規軍様はマンハントを楽しんでくれ、オーバー……俺含めてクソッタレだぜ、チクショウ」
「程度の違いこそあれ、どこにでもある当たり前の話です。そうしなければ皆、諸共に滅びますので」
事務的な報告の後、猟兵間のみの回線で吐き捨てる男の声に、少女の冷淡な言葉が答える。
眉間にしわを寄せるヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)が駆るヘヴィタイフーンMk.Ⅹと、ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)の操縦するエイストラのそれぞれの腕には、射撃を終えたばかりのライフルが装備されていた。
「し、新型のキャバリア!? そんな、政府軍にはまだこれだけの戦力があるというの……!」
最も分厚い守りを固めるべきキャバリアのコアがあっさりと射貫かれた。
それが意味する絶望的なスペック差と、今まで影も形も無かった政府軍側の新戦力の登場に、専門の軍人教育を受けている訳でもないレジスタンスは大いに動揺する。
「へえ……! “猟兵”か、やっぱり違法な反乱軍共の寿命は長くないってことだなぁ!」
一方で諸外国の情報、そしてそこで活躍する猟兵の存在を認識している政府軍のパイロットたちは、その口角をニイっと吊り上げる。
圧倒的な戦力を有する猟兵は、世界を守ると称してオブリビオンマシンが現れる戦場に介入してくる。
そして、この国にそのような特別なキャバリアなど一つしかない。
味方かはこれからの動き次第だが、『敵の敵』ではあると確信した政府軍は、ヴィリーの通信を素直に受け入れ、レジスタンスの相手もそこそこに虐殺の為の毒ガスを撒き始めるのだ。
「始まったか……あのガス濃度、死ぬまでの数十秒は地獄だろうな」
「でしょうね。“流れ弾”でも飛ばしますか?」
「……いや、俺たちの仕事を早く終わらせるべきだろうよ」
それを横目にレジスタンスの相手をする猟兵たちは、戦場らしい内容の会話を、戦場には似合わぬ落ち着いたトーンで語っていた。
猟兵とはいえ、死ぬべき時は死ぬだろう。それでも、今この瞬間の彼らにそれに対する恐怖はみじんもない。
「く、くそっ! なんで当たらないんだ、本当に同じキャバリアなのか!?」
暗号化すら忘れたレジスタンスの悲嘆の声が、通信網に乗り戦場に響く。
オブリビオンマシンの力でどうにか立ち上がった彼らの練度は、ノエルとヴィリーからすれば児戯も同然だ。
火炎放射も榴弾も、あらゆる火器の軌道は実に素直で、猟兵の水準から見ればわざとでもない限り当たりようが無い。
ある意味で反乱軍が幸福なのは、あまりの力量差ゆえに“当たっても意味がない”と気づくことも無い事か。
キャバリアのスペックが違う、パイロットの練度が違う。
絶望的な複数の違いの前に、レジスタンスの勝ち目はまさしく皆無であった。
「チクショウ! なんでだよ、なんでお前らはあんな連中の味方を――」
「味方ではなく、あなた方の希望の敵なのです。そちらにはそちらの、こちらにはこちらの事情があります。対話ができぬなら戦うまでのこと」
悲鳴のような問いかけと共に、また一機のキャバリアが爆風に飲み込まれる。
ノエルとて、不必要な格差が悪徳となる事は知っている。
しかし、国家の運営の為にある程度の差異は必要とされるものであり、上位階級と同じキャバリアを駆り反抗できるこの国は、その“ある程度”の範疇だ。
故に彼女は容赦しない。
しいて言うならば、毒ガスの充満するこの殺戮空間において、一思いにキャバリアを破壊し絶命させてやることが、唯一の慈悲か。
「……ホント胸糞悪ぃぜ」
この戦場も、この殺戮も。
この行いを肯定できてしまう自分たちすらにも侮蔑の言葉を吐いて。
赤熱する刃を敵のコアに刺しこみ“慈悲”をかけてやりながら、ヴィリーはコクピットの中で呟いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
天城原・陽
【友曇】
※プライベートでは友人同士だけどお互いの素性を知らない
胸糞悪い国家に、胸糞悪い作戦…か
あームカつく。ムカつくわ。
いっそどっちも…って
(しれっと政府軍機も攻撃してる白い機体を確認。アッハ♪と破顔して)
いいわねアレ。実に良いわ。
(ダブルファイア。徹甲榴散弾でレジスタンス機を無力化)
「あー手が滑ったー後なんかビーコン表示の調子がー(棒)」
(ついでに加粒子砲の横薙ぎで政府軍機も無力化。代償に両軍から狙われるが承知の上だ)
うっへ…流石に捌き切るのはキツいかしら…っとぉ?
(さっきの白い機体の援護により被弾を免れる。機体操作し『サンクス』とハンドサイン)
さて、こっからよ…本命を引きずり出してやるわ
メルメッテ・アインクラング
【友曇】
「接続安定。操縦者情報、秘匿。マイクオフ。全て確認済みです」
私の主様、ラウシュターゼ様に乗り戦場へ。国の内情に心が痛みますが
『敵も味方も同型機に搭乗か――”これは事故が起きるな?”』
主様のお言葉の意図を汲み、頷きました
指定UCを発動し剣を振って光を放射
対人用の鉄片を消し、敵と同時に政府軍機も巻き込んで手足の【部位破壊】狙いの【切断】で無力化します
『ああ、”間違えたか。”仕方のない事だ』
あれは!お味方の赤の機体(※友人の天城原・陽さんが操縦者とは知らない)が危ない!
「させません!」疾駆し剣をウィップに変化
鞭をしならせ対装甲榴弾を上空へ弾きます
命の被害は出させません
できる限りの事を致します
●四面楚歌
「接続安定。操縦者情報、秘匿。マイクオフ。全て確認済みです」
妖しく光る四つの瞳。
戦場に現れたサイキックキャバリアに搭乗するメルメッテ・アインクラング(Erstelltes Herz・f29929)が、己が主に戦闘準備の完了を告げる。
その声は、その手裁きはよどみなくとも、青い瞳は憂鬱の色を宿し伏せられる。
苛烈な階級社会により弱者が虐げられるこの国家において、自分たちはこれから『希望』を摘み取らねばならぬのだ。
それが世界の為の正義だとしても、この国で苦しみあえぐ人々を想えば、胸の痛みはじくじくと続いていく。
『――時に』
「? なんでしょう、主様」
そんなメルメッテに、繋がれたサイキックの回路から声が響く。
『敵も味方も同型機に搭乗か――”これは事故が起きるな?”』
響く言葉は、その先を言わず。
しかしその意図を理解したメルメッテは、僅かに微笑み、頷くのであった。
「胸糞悪い国家に、胸糞悪い作戦…か。あームカつく。ムカつくわ」
唸るような、しかし少女特有の軽やかさも含んだ声が赤い“ジャイアントキャバリア”のコクピットに響く。
オブリビオンマシンを破壊しなければならない、その理屈は分かる。だからこそ天城原・陽(陽光・f31019)もグリモアの光に乗りこの戦場へと現れた。
だが、それに納得が付いてくるかは別の話。
何が楽しいのか、活き活きと自国の民へ向け武器を向ける政府軍を見れば、この連中の助けになるなど耐えきれるものでは無い。
「いっそどっちも…って、ん?」
だが、そんな彼女が見つめるパラティヌスの黒の中に、一つだけ混ざった白が居た。
操縦者情報の殆どが秘匿され、グリモアベースから付与されたビーコン情報、即ち猟兵であることだけが分かるその機体が圧倒的な速度で光の剣を振るえば、レジスタンス軍のキャバリアの四肢が次々に切り落とされ、無力化を進めていく。
『ああ、”間違えたか。”仕方のない事だ』
だが、陽の目を引いたのはその次の動き。
引き戻される光の剣が政府軍に当たり、やはりあっさりと足を切り落として身動きを封じてしまったのだ。
サイキックキャバリアが呟いた白々しい言葉はコクピットの外には漏れないが、様々な戦場を駆け、多くのキャバリアを見てきたアンサーヒューマンには理解できる。
“ミスではない”と。
「アッハ♪ いいわねアレ。実に良いわ」
オブリビオンマシンを引きずり出すために、レジスタンス軍の壊滅は絶対だ。
その為には政府軍と協力するのが手っ取り早いわけだが……自分たちに課されたオーダーは『任せる』である。
「あー手が滑ったー後なんかビーコン表示の調子がー」
徹甲榴散弾による面制圧の後、加粒子砲による狙撃によってトドメを刺す陽の必勝パターン。
しかし不運なことに、今日の赤雷号は調子がイマイチな様子。
うっかり、そううっかりバランスを崩したたらを踏んでしまったキャバリアから放たれる加粒子砲は横薙ぎの形になり、レジスタンスは勿論、政府軍のキャバリアも多く巻き込んでその機体を粉砕してしまうのであった。
「ちぃ、猟兵が統制の取れていない組織という話は本当か! あれらは敵として考えなくては!」
「くそ、むやみやたらに暴れやがって……!」
勿論、戦場では“過失”は許されない。
政府軍、レジスタンス軍双方に敵と認識された赤雷号は、周りをぐるりと囲まれた形での十字砲火に晒されることとなる。
「うっへ……流石に捌き切るのはキツいかしら……」
一機ずつ相手すればどうという事は無い練度だが、戦場のすべてが敵となれば流石に骨だ。
ある程度の被弾は覚悟の上で強行突破するしかないかと腹をくくった陽が操縦桿を動かす。
――それよりも、数瞬速く。
「させません!」
包囲の外側から飛来した光の筋がぐにゃりと曲がり、パラティヌスたちが放つ対装甲榴弾を上空へ打ち上げる。
メルメッテにとっても、自分に同調し政府軍も止める形で動いてくれた赤い機体は重要な味方だ。
光の剣を鞭状に変化させて作った隙をあのジャイアントキャバリアは見逃さず、攻撃直後の敵キャバリアをタックルで弾き飛ばし、強引に包囲を脱することに成功する。
「やった……! 味方もいる、命の被害は出させません!」
メルメッテが通信回線を閉じている為か、ハンドサインで感謝を伝えてくる赤の機体に手をあげて応えながら、彼女は決意を新たにしコクピットで呟く。
殺戮に特化した敵機たちを相手にしながら民間人も守り、レジスタンスを打破する。
言うまでもなく困難な道であるが、それを歩むのは自分ひとりではないと知ったメルメッテは、光の剣を振りかぶり再び戦場へと切り込んでいく。
「さて、こっからよ……本命を引きずり出してやるわ」
そのメルメッテは、そして続く陽は。
肩を並べて戦うその相手が、よく知る友人であるとは気づかぬままに、この残酷な戦場の全てへと立ち向かっていくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
カシム・ディーン
之は間違いではないですね
「限りある資源でできる事は少なく…より効率を求めたらねー…レジスタンスが革命を成功させたら?」
学のねー奴らがこの国牛耳っても結局周りに食い物にされるのがオチだろーな
【情報収集・視力・戦闘知識】
政府軍とレジスタンス両方の戦力と状況
UC発動
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体と竜達に付与
光学迷彩と水障壁で熱源隠蔽
それじゃ…やっちゃうか
政府軍もレジスタンスも等しく攻撃
【念動力・空中戦・スナイパー】
飛び回りながら念動光弾乱射して破壊
竜達
【捕食・二回攻撃・切断】
複数で襲い掛かり手足を食いちぎり無力化
一般人や脱出した人間は基本庇いつつキャバリアだけ無力化して奪い去る
不殺徹底
●其は絶望か
コクピットの中で、毒ガスから逃げ惑う人々を見やる。
彼らは皆一様にやせ細っていて、クロムキャバリアという世界の文明水準からすれば明らかに虐げられる弱者の風体だ。
それを見た上で、少年は呟く。
「……之は間違いではないですね」
「限りある資源でできる事は少なく……より効率を求めたらねー」
一人きりの空間で、答えるのは少女の軽やかな声。
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)が乗り込むサイキックキャバリア、『メルクリウス』は、光学迷彩を投影した霧にその身を隠しながら己が相棒に問いかける。
「レジスタンスが革命を成功させたら?」
「学のねー奴らがこの国牛耳っても、結局周りに食い物にされるのがオチだろーな」
あるいは、“希望”と共に立ち上がった彼らはその方がマシとでもいうのだろうか。
どちらにしても、此処に降り立った猟兵たるカシムがすべきことは決まっている。
レジスタンスを殲滅し、オブリビオンマシンを引きずり出さねばならないのだ。
「とはいえ、方法は任されたんだから、メルシーたちのやり方でいいんだよね?」
「ああ、そうだ。それじゃ……やっちゃうか」
一人と一機のやり取りの後。
光も熱も覆い隠す霧の中で、いくつもの影が蠢く。
「万物の根源よ……帝竜眼よ……文明を構成せしめし竜の力を示せ……!」
光学迷彩を交えた霧の中から大鎌を携えたキャバリアが飛翔する。
「うわぁ!? くそ、また新手か!」
「こっちにまで攻撃が……! 猟兵ってのは見境なしか!?」
空を飛ぶ手段を持たないこの国のキャバリアにとって、宙を舞い雨のように光弾を乱射するメルクリウスはそれだけで十二分の脅威だ。
レジスタンスと政府軍の区別なく浴びせられる攻撃は、戦場のキャバリアを等しく蹂躙していく。
「厄介な、だが一人なら……」
『グオオオオオオ!!!』
「っ、なんだこの怪物は!?」
そして、彼らの脅威となるのはカシム本人だけではない。
彼のユーベルコードで呼び出された小型の竜の群れ。
遠い異世界における帝竜が一つ、ダイウルゴスの力を有するドラゴンの群れは、複数でキャバリアを取り囲めば、その牙で次々に手足を食いちぎり無力化していく。
「ああ、あんな怪物まで……もう、駄目……」
そして、戦場を蹂躙するカシムとその眷属に最も恐怖を抱くのは、生身でこの場に立つことを余儀なくされる貧民街の住民たちだ。
“希望”が来ると信じ逃げ惑い続けた母親が、ドラゴンの威容に圧倒され、とうとう赤子を抱いたまま地へうずくまる。
こんなもの、逃げられるはずもない。
せめて、我が子共々一思いに――。
――がきぃん!
「……え?」
ふと響いた金属音。
何事かと顔を上げた母が見たものは、まさに自分たちを押しつぶそうとしていた政府軍のキャバリアを受け止めるメルクリウスの姿。
そのまま相手の四肢を鎌で刈り取ったキャバリアが、再び空へと舞い戻る。
「よし、次は毒ガスをどうにかしないとだね!」
「そっちは竜の羽ばたきで散らそう。こっちはこのままキャバリアの相手だ……!」
果たして、希望を砕きに来た彼らは何者なのか?
誰も答えられない疑問の中心で、カシムは散らされる命を守るべく、メルクリウスと共に駆けるのであった。
成功
🔵🔵🔴
鳴上・冬季
「悪を打ち破れるのは悪だけだ、と聞いたことがありますが。正しくその通りかもしれませんね。ここには悪しか存在しない、そうでしょう?」
嗤う
「行け、黄巾力士金行軍!全ての敵を鏖殺せよ」
呼び出した117体を39体ずつの3隊に分ける
更にその中を
砲頭から敵に制圧射撃する1組
砲頭で敵に鎧無視・無差別攻撃して蹂躙する1組
上記2組をオーラ防御で守る1組
の3組に分ける
その3隊をレジスタンスを包囲するように進軍させ殲滅戦を仕掛ける
自分は少し離れたで普段から連れ歩いている黄巾力士にオーラ防御で庇わせながら竜脈使い黄巾力士達の継戦能力あげ部隊強化
仙術+功夫による縮地は黄巾力士のオーラ防御で防げない時しか使わない
●悪と悪
「悪を打ち破れるのは悪だけだ、と聞いたことがありますが」
キャバリアのものと比べれば小さな。
けれども、人間よりも明らかに“重い”足音が規則正しく響く。
それを率いる男の呟きは、この戦場の誰にも聞こえない。
「なんだこの熱源……レジスタンスの民兵か?」
国の為と資源を独占し、今もまた民を殺戮せんとする政府軍のパイロットたちはレーダーに映る奇妙な小さな影に目を見張る。
「おい……コイツラ、俺たちを囲もうと!?」
正義は我らにあると立ち上がり、しかし“希望”を装ったオブリビオンマシンの尖兵となった自覚すらないレジスタンスたちもまた、自分たちに接近してきた機械の軍にようやく気付く。
己の悪辣を理解できない彼らに比べれば、『自分たち』はまだマシか?
「正しくその通りかもしれませんね。ここには悪しか存在しない、そうでしょう?」
そんな問いすらも嘲笑うように。
鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、その口元を弓のように歪めるのだった。
「行け、黄巾力士金行軍! 全ての敵を鏖殺せよ!」
三方向からレジスタンスに照準を合わせる人間大の二足歩行戦車は、百十と七の総数を誇る。
巨大なキャバリアと単純に比較できるものでは無いが、数の面では小国家に過ぎないこの国の政府軍とレジスタンスを足し合わせてなお届かぬ戦力だ。
「くそ、やはり敵か! この射線から抜け出さないと……」
「待て! 迂闊に出ると上空からの砲撃が来るぞ!」
三か所に分かれた黄巾力士は、まず曲射の形での制圧射撃を行う。
上空から降り注ぐ形で戦場を襲う砲撃にレジスタンスのキャバリアが身動きを取れなくなった所で、次に攻撃を行うのは金行の力を十全に活用する射撃部隊。
キャバリアの装甲すら撃ち抜くフルメタルジャケットの弾丸は、戦場のパラティヌスに“無差別に”襲い掛かり、その鎧を引き裂いていく。
「お、おい、あの野郎こっちにまで!!」
「一旦退け! あくまで狙ってるのはレジスタンスのクソ共だ!」
その流れ弾が政府軍に当たれば、やはりレジスタンス同様に装甲を貫通され、深いダメージを負ってしまう。
たまらず虐殺を切り上げて退却しようとする政府軍を横目に眺める冬季であるが、そんな彼を睨みつけるのはレジスタンスの兵士たちだ。
「このままじゃ全滅だ! あの指揮官らしき男を仕留める、援護してくれ!」
一機、勇ましく突撃を開始するレジスタンスのキャバリアを支援すべく、ボロボロのパラティヌスたちは三つの黄巾力士隊に銃撃を浴びせる。
それは、オーラで防御を固めた防衛部隊の守りを突破するほどではないけれども、僅かに緩んだ砲撃の隙間を縫い進んでいくキャバリアをどうにか冬季の近くへと導いてみせる。
人間相手ならこのまま殴りつけてしまった方が早い。
そう判断したレジスタンスの兵士は、突撃の勢いのままにランス型のライフルを振りかぶり、一気に冬季を叩き潰さんと振り下ろす。
――カァン。
「……え?」
「申し訳ありませんが……もう一体だけ居るのです、ええ」
キャバリアの振り下ろしを受け止めたのは、金行のオーラで身を包んだ最後の黄巾力士。
冬季が普段から連れている人型自律思考戦車は、キャバリアの武器を掴んだ両手をそのままに、その主砲を相手のコアへと合わせる。
その砲口が火を吹く直前。
勇敢なパイロットには、冬季の嗤う顔から目を逸らす勇気だけがついぞ湧いてこなかった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
【古城】
ロシナンテⅣ…私の機体はパラティヌスの改修機
兵器の…武力の本質を見せ付けられているようです
…騎士道等とお為ごかしだ、などと…!
失礼、取り乱しました
一刻も早く殲滅しましょう
『希望』が出る迄の犠牲が減ります
フォルター様はご随意に暴れて頂ければ
…私は無差別攻撃を仕掛けます
散布する粒子で通信遮断
両軍敵機達を孤立
射撃武装と連携封じ、力量が全てを決する近接白兵戦にて各個撃破
ランスを盾で、蹴りで弾き逸らし
間接部を剣で両断し解体
無力化した敵機襲う政府軍も同じく
通信封鎖の内なら離脱の言い訳も立つでしょう
これ以上の手出しは許しません…!
フォルター様、貴女もです
逃げる背を追うなら貴女であっても剣を向けますよ
フォルター・ユングフラウ
【古城】
オブリビオン根絶の御旗の元では、虐げられる民草の命など塵も同然…そういう事か?
ははっ、実に愉快ではないか
嬉々として虐殺に勤しむ姿は、嘗ての己を見ているかの様だ
ここはひとつ、我自らが手本を見せてやろう
さあ顕現せよ、我が愛機─The Empressよ
そして、不敬にも我が覇道に立ち塞がる輩を駆逐しろ─蒼ざめた死の騎士達よ
薙ぎ払い、斬り払い、狩り尽くせ
敵の攻撃は虐殺現場を作り出すらしいが、我以上に虐殺に慣れ親しんだ者がいるものか
レジスタンスも政府軍も、関係無い
己が意志で我の前に立つ者には、須らく死が訪れるのみ
解ったか?
これが、虐殺だ
●並ぶか対するか
銃を持った男が語る。
人を殺すのは銃ではなく、それを握った人間であると。
それは結局道具に過ぎなくて、持ち主の意思次第で人を救うこともできるのだと。
相手を打倒する力を持ち、されど私心ではそれを振るわず。
悪徳と残虐へと立ち向かう為の心の強さ……それを人は『騎士道』と呼んだ。
「兵器の……武力の本質を見せ付けられているようです」
異世界で見た演説を思い出しながら、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は唸るような呟きを漏らす。
目の前で自国民を殺戮するパラティヌス。
あれらが虐殺に特化した“スローター”の改修機なら、トリテレイアが搭乗するロシナンテⅣもまた同様の起源をもつキャバリアであった。
こちらは虐殺ではなく、騎士の鎧となり秩序を守るための機体ではある。
だが、今から自分が行う事を思えば……武力は振るい手次第という言葉も、お為ごかしのように思えてしまうではないか。
「ははっ、実に愉快ではないか。嬉々として虐殺に勤しむ姿は、嘗ての己を見ているかの様だ」
その騎士の苦悩を止めるように、嘲笑うように。
ロシナンテⅣに繋がる通信回線から聞こえたのは、女帝の名を冠するサイキックキャバリアに乗り込んだフォルター・ユングフラウ(嗜虐の女帝・f07891)の声であった。
此方はトリテレイアと対照的に、言葉通りこの殺戮空間を愉しげに眺め、軽やかな言葉を響かせていた。
「失礼、取り乱しました。一刻も早く殲滅しましょう、『希望』が出る迄の犠牲が減ります」
「嗚呼そうしよう。オブリビオン根絶の御旗の元、塵のように散らされる民草の命は少ない方がいいものなぁ?」
「……フォルター様はご随意に暴れて頂ければ」
トリテレイアに人間と同じような口があったなら、この上ないほどの力で食いしばられていただろう。
ウォーマシンらしからぬ遅いレスポンスをフォルターに返した後、トリテレイアのユーベルコードによるナノマシンの散布が始まる。
それは、政府軍が民衆に行う虐殺よりも更に隔絶した強者の行う蹂躙の始まりであり。
「うむ、オブリビオンのついでに狩られる哀れな虐殺者共に、我自らが手本を見せてやろう」
本当の虐殺の始まりである。
「く、照準機能が故障して……おい、誰か応答してくれ!」
「ジャミング、こんな広範囲にか!?」
政府軍とレジスタンスの“双方”の攻撃が、一時収まる。
トリテレイアが使用した【銀河帝国強襲白兵戦用妨害粒子散布弾頭】。
その通称はクローズコンバットミスト。声を奪い、銃を操るための目を潰すその霧に包まれた機体にできる事はただ四肢を動かすことのみだ。
「キャバリアの操縦そのものは問題ない……なら!」
「な、なんだよコレ、どうすれば……うわぁ!?」
状況にいち早く気づいた者たちは銃に頼る事をやめ、ランスを振り上げて戦闘を続行する。
そのほとんどは練度の高い政府軍のパイロット。ただでさえ猟兵たちの働きで数を減らしていたレジスタンスのキャバリアは、一気に劣勢に立たされることとなる。
だが、この戦場の支配者は政府軍ではない。
「申し訳ありませんが……今回は無差別攻撃です」
霧の中から現れるロシナンテⅣのシールドバッシュが、優位を錯覚した政府軍のキャバリアを撥ね飛ばし、中のパイロットを一瞬で気絶させる。
「し、白いパラティヌス!? くそ、また第三勢力か……!」
そのまま反転したトリテレイアは回転の勢いのまま、ランスを構えようとしたレジスタンス軍のキャバリアへと回し蹴りを食らわせる。
無論、キャバリアに揺れる脳などはないが、大質量の衝突でふらついたキャバリアは、そのまま関節部を剣で斬られ無力化されることとなる。
「な、なんだアレ……早すぎる……」
銃器を使えなくなった戦場に現れた格闘戦特化のキャバリア。
そして、それを操るのは歴戦のウォーマシンたるトリテレイアであるのだから、一般のキャバリア乗りが太刀打ちできるものでは無い。
「通信封鎖の内なら離脱の言い訳も立つでしょう。これ以上の手出しは許しません……!」
本人の宣言通り、レジスタンス軍とそれを狙う政府軍、双方を瞬く間に無力化しながらトリテレイアは霧に包まれた戦場を駆けていく。
しかし、トリテレイアに遭遇した兵士たちは幸運だったと言えよう。
「薙ぎ払い、斬り払い、狩り尽くせ。不敬にも我が覇道に立ち塞がる輩を駆逐しろ──蒼ざめた死の騎士達よ」
フォルターが操るThe Empressに付き従う人馬型の機械騎士たち。
その数は百を超え、トリテレイアの働きで連携の取れなくなった相手を容赦なく飲み込んでいく。
「も、もう降参する! キャバリアも壊れた、もう戦え……ああ、やめてくれぇ!」
「これは可笑しな遺言だな? やめるはずがないと分かっているだろうに」
足を切り裂かれたキャバリアが転倒し、群がる騎士たちがコクピットをこじ開ける。
そして、引きずり出された搭乗者の首に当てられた刃が滑れば、赤い血だまりが一つ増える。
その動きはよどみなく、実にスムーズだ。
猟兵であるから単純な速度も目を見張るものであるのだが、フォルター率いる騎士団の振りまく死は手慣れたものであり、速いというよりは巧いと評するべきだろう。
どうすれば人は死ぬか、どうすれば逃げる相手を逃がさぬか。
常夜の世界で虐殺を続けてきたこの女帝は、それを経験として知っている。
レジスタンスも政府軍も関係のない死を撒きながら前進していくその様は、真に虐殺と呼ぶべき戦いぶりであった。
「い、いやだ、死にたく……え?」
「ほう、汝の世界では『ご随意に』とはどのような意味なのだろうな?」
また一人、キャバリアを破壊されたパイロットを殺めようとした時に、それは起きた。
敵を押さえつけていた騎士の一体が吹き飛ばされたのだ。
所詮はユーベルコードでの複製品、一体程度壊されたところで痛くはないし、“彼”もそれを知るからこその行いではあるのだろう。
「フォルター様、もはやこの御仁は戦意を喪失しています。殺す意味はないでしょう」
一目散に逃げだしていく兵士を、フォルターからかばうように。
味方であるThe Empressの前に立ちはだかるロシナンテⅣ。
その通信回線から聞こえるトリテレイアの声色には、確固たる意志が宿っていた。
「それがどうかしたか?」
「…………」
そして、揺るがぬのはフォルターも同様。
自分たちが行っているのは虐殺だ。
相手がどう思っているとか、どのような所属だとか、そういったもので死は決まらない。
「“己が意志で我の前に立つ者”には、須らく死が訪れるのみ……これが、虐殺だ」
――今、前に居るのは一人だけだが。
トリテレイアは、不必要な殺戮を行う相手であればフォルターにも剣を向けるだろう。
そして、フォルターの刃の向く先にも、例外はなく。
猟兵同士の視線がぶつかる中、静寂が辺りを包み込む。
「……今の方でレジスタンスは全滅ですね。政府軍もほぼ壊滅、戦う意味はないでしょう」
「宴もたけなわ。切り上げ時を過ぎて、ぐずぐずと引きずるのも不格好ではあるな」
直前の剣呑な雰囲気が緩み、二人の意識はもうじき現れるであろう“希望”へと向けられる。
フォルターにしてみれば、血の一滴も垂らさぬトリテレイアは壊してしまうよりも、懊悩する様を並んで眺める方が面白いのだから、不満は大して大きくもない。
されど、あのレジスタンスが最後ではなく、彼女の虐殺が続いたのであれば。
あの相対の先がどうなったのか、トリテレイアはオブリビオンマシンとの戦いに備え、そのシミュレーションを打ち切るのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『H・O・P・E』
|
POW : Harmony=Origin
【高速】で敵の間合いに踏み込み、【爪による攻撃】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
SPD : Origin=Peaceful
【機械仕掛けの無数の羽根】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : Peaceful=Emotion
【操縦サポートAIが起動し、自動操縦モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
イラスト:落葉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠斑星・夜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●HOPE
『それ』は、何時の間にやらこの国の端っこに埋もれていた。
他国との境界線が近いその場所には、時折戦争の流れ弾やら壊れたキャバリアが飛んできて、安全に眠る事すらできない最底辺の者たちの住みかであった。
そのような苦悶と瓦礫が積み重なった山の中に、とある男が白く輝く装甲を見つけたのが始まりである。
男の手がキャバリアに触れた途端に流れ込んでくる、ある感情。
歓喜のような、安らぎのような、使命感のような。
この感情を他の者にも伝えねばならない。自分はその為にこのキャバリアに選ばれたのだと、男は確信する。
これを伝える為に邪魔となるすべてを排除することこそ、己が使命だと。
「レジスタンスは全滅……だが政府軍も殆ど壊滅状態。貴様らの狙いは俺……いや、“コイツ”だな? ――猟兵共!」
立ち上がった自分に賛同してくれた仲間たちが倒れ伏す戦場に、彼はようやく現れる。
この国の貧民らしく、国外の情報などほとんど知らないレジスタンスのリーダーであるが、目の前の敵がどのような存在かは握りしめる操縦桿を通して“彼”が教えてくれるのだ。
異世界より現れる侵略者たちを見下ろすように飛翔してくる純白の機体。
仲間たちを屠った許しがたい敵を排除すべく、彼は武装を展開する。
「貴様らにコイツを奪わせるものか! これこそが、俺たちに唯一残された……!」
道を阻むすべてを消し去った先。
この純白が導いてくれる道の果てに、希望があると信じて。
カシム・ディーン
よう…どうせおめーは聞く耳もたねーだろ
だからおめーじゃない
…伝えるのは…HOPE…おめーだ
おめーが希望の名を関するなら…「希望」を守って見せろ
オブビリオンとしての宿業に
抗って見せろ
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵機の動きと癖
構造と以前に戦った相手との差異を把握
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽
UC発動
【空中戦・弾幕・念動力・スナイパー】
念動障壁を纏いながら高速で飛び回り念動光弾を乱射
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
神速で接近してから鎌剣による連続斬撃から武装を容赦なく強奪する
…お前らの叛逆を否定しねーよ
未来がなくとも許せねー事はある
運が無い
それだけだ
ヴィリー・フランツ
wiz ※パイロットごと撃破
心情:まさか他の猟兵が両方を撃つと言う最も困難な方を選ぶなんてな、コイツは驚いた…だが後戻りは出来んぞ。
手段:ここまで来たらどう足掻いても俺達はクソッタレだ、最大火力でパイロットごと撃破、速攻をかける、生き延びた所で一生国から追われる身、長生きは出来んだろう、なら一思いにだ。
スーサイダードローンを全585機発進、奴は自動攻撃モードがあるな?なら特攻の飽和攻撃で奴の処理能力をオーバーフローさせる、もし手動操縦で回避を試みても今度は温存してたピラニアミサイルを発射、ソイツはドローンよりも速くて執念深いぜ?
動きが鈍ってきたら胴体にライフルを撃ち込み、ゲームセットを狙う。
鳴上・冬季
「敵の敵は味方…というのはただの希望的観測であることも多いのですよ。参考になるでしょう?」
「貴方が倒れれば、余剰物資の一欠片が、他の貧民の糧に回る可能性が生まれます。そう思えば、鏖殺されるのも悪くないのでは」
嗤う
「貴方の言う希望は、この世界の絶望なので。何度でも叩き潰してあげましょう…八卦天雷陣・万象落魂」
黄巾力士に自分を庇わせたままゆるゆる移動しながら空中に陣を描いていく
陣を書き上がったら黄巾力士に敵を制圧射撃して足止めさせ他の猟兵の待避時間と詠唱時間を稼ぎUC使用
敵に極大ダメージを与える
「政府軍もろとも落ちるなら。貴方も本望でしょう?」
嗤う
「これは、己の正義を掲げる3つの悪の巴戦ですから」
●正義でなく、悪でなく
その戦いが始まる時、ヴィリーの思考の少なくない割合を驚愕が占めていた。
目の前のオブリビオンマシンに対するものでは無い、戦場において、敵に対してそんな事を悠長に考えるほど彼は青くは無いのだから。
「まさか他の猟兵が両方を撃つと言う最も困難な方を選ぶなんてな、コイツは驚いた……だが後戻りは出来んぞ」
驚愕するのは、他の猟兵たちの行動に対してだ。
この国に存在するすべてのキャバリアを敵に回す選択を、周りの人々がこうも躊躇なく選ぶなんて思わなかった。
とはいえ、それを非難するような心づもりはさらさらない。
そんな事が言えるほど、ヴィリーは自分の選んだ選択を評価してはいないのだから。
「どうせクソッタレなら……とことんやらせてもらおうか!」
「覚悟しろ! このキャバリアの力を見せてやる!」
羽根型のビットを空中に展開しながら、『希望』……いや、オブリビオンマシン・『H・O・P・E』の搭乗者たるリーダーが吼える。
狙うのは、ライフルを構え後方に陣取るヴィリーではなく、あろうことか生身でこの戦場に赴いた冬季だ。
「おや、私ですか? このような生身の人間になんとも容赦のない……」
「黙れ、貴様が俺たちの仲間を殺した事はとうに知っている!」
「まあ、貴方達に関しては淡い期待を抱く余地も無かったでしょうからねえ」
そういう余地があったならどうなったか、政府軍の倒れたキャバリアを横目に嗤う冬季を襲う羽根に対して、彼の従える黄巾力士が立ちふさがる。
「貴方が倒れれば、余剰物資の一欠片が、他の貧民の糧に回る可能性が生まれます。そう思えば、鏖殺されるのも悪くないのでは」
「……生き延びた所で一生国から追われる身、長生きは出来んだろう」
「何を……唐突に現れたお前らに、俺たちの怒りを止める権利があるとでもいうのか……ッ!?」
猟兵達の言葉に激昂しかけるレジスタンスの首領。
彼の言葉を止めたのは、目の前に立つヴィリーと冬季のどちらでもなかった。
「損害は軽微……流石に先の雑兵とはスペックが違うな」
空中を飛び回る、光学カメラには捉えきれぬ影。
カシムの操縦するメルクリウスの存在に気づいた『H・O・P・E』のパイロットの思考に、この時初めて焦りが生まれる。
相手は、これまで圧倒してきた政府軍の軍人たちとは比べ物にならない脅威だと。
そう判断したならば、彼の行動も必然それを前提としてものに変わってくるのだ。
「『H・O・P・E』ッ! 力を貸してくれ!!」
猟兵には見えぬコクピットの中。
搭乗者の求めに応じて、操縦桿が意思を持って動き出す。
「急に動きが早くなった……!」
「自動操縦でしょうね。人の意思がないとはいえ、スペックの向上は単純に厄介です」
それは、オブリビオンマシンに備わった真価を引き出す戦い。
“仕込み”を終えていない冬季を襲う羽根の猛攻はますます激しさを増し、カシムの放つ念動光弾への対応力も劇的な上昇を見せる。
この時、相対する敵は大した力を持たない現地の民から、猟兵に比する力を有するオブリビオンへと変化したともいえよう。
「――それを待っていた」
だが、それが命取りだ。
ヴィリーが呟きと共に放つのは、600に迫ろうという数を誇るドローン群。
スーサイダーの名を冠するそれらの自爆特攻一つ一つはオブリビオンマシンを倒すほどのものではないが、膨大な量の弾幕が突如出現すれば、AIの処理にも相応の負担がかかる。
「な、どうしたんだ、『H・O・P・E』!」
オブリビオンマシンの急制動のGに耐えることにのみ専念していたパイロットが、急に動きを鈍らせた愛機に気づき操縦桿を握るものの、その隙はあまりに致命的だ。
「加速装置起動……メルクリウス……お前の力を見せてみろ……!」
その致命を、カシムは当然見逃さない。
鎌剣を構えての瞬間加速による突進はオブリビオンマシンへの接近を容易く成功させ、その刃は羽根型ビットを制御していたアンテナへと突き刺さる。
「よう……どうせおめーは聞く耳もたねーだろ。だからおめーじゃない……伝えるのは……HOPE」
「なにを……!」
オープン回線でオブリビオンマシンへとかけられるカシムの言葉は、文字通りその純白のキャバリアへと向けられたもの。
「おめーが希望の名を関するなら……『希望』を守って見せろ」
ただそれだけ。
仔細は語らぬままに、メルクリウスの足がオブリビオンマシンを蹴りつけ、間合いを取りつつその体勢を崩す。
「そうですね。貴方方が最初に“騙った”希望は何度でも叩き潰しますが――八卦天雷陣・万象落魂」
そこに落とされるのは、冬季による一筋の稲妻。
戦場に設置された八卦天雷陣が起動すれば、五行が生み出す超常の颶風が『H・O・P・E』を容赦なく飲み込んでいく。
「……やはり、まだ余力は残っているか」
「ええ、あくまで一当てです。中身も多分生きているでしょうね」
あくまで油断なく、ライフルでの追撃を試みるヴィリーが、しかし引き金を引くことなく呟く。
刃に裂かれ、風に飲み込まれたオブリビオンマシンは大きく傷ついてはいるものの、その戦意を失った様子はない。
「…………」
カシムもまた、油断なく見据えるその視線の先。
善と悪では測れぬ戦場の中、たった今守ってみせたパイロットと共に、オブリビオンマシンは立ち上がろうとしていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
メルメッテ・アインクラング
【友曇】
例え希望であってもオブリビオンマシンという事実に変わりはなく
もっと沢山の人々が、世界が消えてしまう前に、その翼を折らなくてはいけません
RXソード・従奏剣ナーハを構えて「モード:ノーテン!参ります!」
こちらの攻撃が響いていない!?【武器受け】を駆使して【受け流し】続けます
押し切られる前に打開を……「……ぁ。」私の名前を呼ぶ、声?
主様ではない。けれども確かに聞き覚えがあって。これは先程の、赤の機体から?
「――!!」まずは目の前の敵を!敵機の動きが停止した隙を逃さず指定UCを発動!
敵の腕部を刺突し【切断】無力化を狙いましょう
届いた御声は、思い当たるのは、貴方様は、まさか。
「天城原、様……?」
天城原・陽
【友曇】
両軍を相手取った。飛び交う通信から聞こえるのは怨嗟や怒り
だが…革命だ、希望だの前に、アレはオブリビオンマシンだ
「そんなだから付け込まれて何時まで経っても殺し合いばかりするのよ!!」
ああして世界の歪みに取り込まれる
そうだ…だから見せつけてやる
「これが私の…<<変革>>だ…!!」
機体制御、あの白い機体の戦闘に介入
赤雷号のA²デバイスを介して脳量子波を拡散。オブリビオンマシンに対してプレッシャーを与え動作を妨害する
『やりなさい!メル!!』
狙撃砲を構え同時攻撃
攻撃後
私は今何を言った…?さっきの脳量子波で直感的に分かってしまったのか
「『メル』…メルって言ったの私…あの白い機体に乗っているのが…」
●答え
猟兵の攻撃によって損傷したオブリビオンマシンが、それでも傷ついた機体で立ち上がる。
倒れた時に付着した土汚れはむしろ戦場に立つ純白を彩り、雄々しさすらそこに与えるのだ。
確かにこれは、人々にとって希望として映るのだろう。
敗れていったレジスタンスたちの内、まだ命のある者たちは口々に自分たちの希望へと声援を送り、それどころかこの場に至っては政府軍のキャバリアからすら“希望”の勝利を望む声が聞こえてくる。
それもそうだろう、突如現れて全てを蹂躙した『異物』こそ、この場で最も敗北を望まれる存在なのだから。
だが、たとえ希望であっても、あれはオブリビオンマシンだ。
野放しにしておけば、もっと多くの人が、そして世界が消えてしまうもの。
その前に、誰かがあの翼を折らなくてはいけないだろう。
その前に、世界の歪みに取り込まれた人々に見せつけなくてはいけない。
「モード:ノーテン!参ります!」
「これが私の……<<変革>>だ……!!」
それぞれの声は届かずとも、視線は同じ敵を見据えて。
二人の少女は、一気呵成にオブリビオンマシンへと挑んでいくのだ。
「はぁっ! くう、これは……こちらの攻撃が響いていない!?」
まずオブリビオンマシンに肉薄するのは、剣を構えたラウシュターゼである。
振り下ろした剣を翼のような腕部で受け止められたメルメッテは、その一合で敵の力に気づく。
単騎で一国の戦力図を書き換えてしまう力は伊達では無いのだろう、真正面から打ち込まれたはずの剣戟は、オブリビオンマシンの装甲を貫くことなく受け止められてしまったのだ。
『考えなしには攻められないな。あの形状、敵の近接武器を絡めとり奪う機能も有しているのだろう』
メルメッテの主でもあるサイキックキャバリアの見立て通り、迂闊に剣を振り降ろし続ければ、翼の間に受け止められて体勢を崩しにかかるだろうことは想像に難くない。
故に、メルメッテは剣を斜めに構えて、敵の攻撃を受け流して様子を見ることを選択する。
「速い、もたもたしてたら押し切られる……!」
しかし、装甲だけでなくそのスピードも驚異的な『H・O・P・E』の振るう腕の前に、メルメッテの額に一筋の汗がにじむ。
今この瞬間は対応できていても、一つ自分がミスをすれば、その隙に痛打を与えられ、一度傾いた形勢は容易には覆せないだろう。
なにか、状況を変える手が欲しい。
そう思考するメルメッテの表情が、また一つ険しくなった、その時である。
『やりなさい! メル!!』
「……ぁ」
突然の声と共に、オブリビオンマシンの動きが、一瞬停止した。
何が起こったのだろうか?
突然の出来事に、どうにも時間の流れがゆっくりとなったようにすら思える。
そんな奇妙な感覚の中で、“赤いキャバリア”の主はそのコクピットの中でもう一度己に問う。
何が起こったのか? いや、自分は何と言ったのだ?
白い機体を援護すべく、キャバリアのコアを介して脳量子波を拡散した。
オブリビオンマシンにプレッシャーを与えてその動きを鈍らせるという目論見は、見事に成功したのだ。
だからこそ自分は、咄嗟に味方への通信回線を開き、好機を逃すなと声を張り上げた。
アンサーヒューマンの超人的な処理能力と、脳量子波がもたらした超自然的とすら言える直感に従い、この場で叫ぶべき“名”を。
メルメッテの振るった剣が、オブリビオンマシンの腕部を切り裂く。
サイキックパワーで強化された剣を警戒した敵が素早く間合いを取る中で、メルメッテは敵以外の事を考えずにはいられない。
今の瞬間、自分の名を呼んだあの声を、知っている。
この、鉄と火薬と血の匂いが立ち込めているだろう戦場に、自分と共に立っている者が誰かを、理解してしまった。
「天城原、様……?」
「『メル』……メルって言ったの私……あの白い機体に乗っているのが……」
もう一度通信回線を開けばすぐにでも分かる答え。
二人の少女はそれを、コクピットの中だけで、ただ呟くのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
【古城】
フォルター様、私達の目標はマシンのみ
搭乗者の事は気にして頂きますよ
…人が生きるは命のみならず、“希望”が必要だとしてもです
我が勤めは女帝の守護
センサーにて軌道を見切り
ロシナンテⅣの肩部、頭部格納銃器
サブアームライフルの乱れ撃ちで羽根を撃ち落とし
魔力波動による消耗避ける為、短期決戦を挑むは読めておりましたとも
…破壊させて頂きます!
立ち塞がり
防御の構えを解除
敵の焦燥を付き攻撃誘導
微細な機体操縦の摺り足にて紙一重にて爪の初撃躱し
盾で逸らし、剣で弾き、シールドバッシュ
四連撃を捌き、女帝の止め放つ隙作り
貴女の嗜好はやはり理解し難いですが
ですが、憎悪を燃やせば生きる燃料となると…そういう事ですか
フォルター・ユングフラウ
【古城】
そこの男よ
聞こえているであろう、見えているであろう
そして、己の為すべき事もわかっているであろう?
さあ、向かって来い
そう易々と斃れるなよ
その使命とやら、示してみせよ!
…ふん、これであれもそう簡単には死ぬまいよ
お膳立ては済んだ、行くぞ
騎士により四連撃を捌かれた後の隙を突き、UCで追撃を行う
攻撃と移動の要であろう、あの翼
呪詛によりあれが朽ち果て捥げ落ちた時、“希望”とやらも地に堕ちる事となろう
希望と絶望は紙一重、表裏一体の存在よ
救いを仰ぎ見て輝く表情が絶望で歪む瞬間こそ、至高なのだ
その機体が朽ちるが先か、貴様の心が折れるが先か
精々抗ってみせよ、そして縋ってみせよ
貴様の言う、“希望”とやらにな
●生きる為
キュウウゥゥゥン……。
「な、なんだ!? く、どうしたんだ! 『H・O・P・E』ッ!」
猟兵らの活躍によりその損傷を増していくオブリビオンマシンから、弱弱しい電子音が漏れる。
困惑の声を上げるパイロットは、数秒遅れて今まで使っていた操縦サポートAIが停止し、その機能を失ったことに気づく。
「そんな、此処までコイツが追い詰められるなんて……」
愛機の、今まで見た事のない傷ついた姿に、レジスタンスを率いてきた男の声にも動揺と焦燥の色が混じっていく。
この国の外を殆ど知らない彼であっても、今日現れた『猟兵』たちが自分たちのスケールを遥かに超えた存在であるという事など、とっくに理解できている。
その相手に、壊れかけた『希望』だけでどう立ち向かえと言うのだろうか。
この国の歪みを自分が変えるのだと起った男の心が、残酷な力の差に弱く、小さなものへと押しつぶされていき……。
「そこの男よ。聞こえているであろう、見えているであろう――そして、己の為すべき事もわかっているであろう?」
決定的に砕け散る前にその耳に届いたのは、目の前に立つ“敵”の声であった。
「う……おおおおおおおお!!!」
「……搭乗者の事を気にしてほしいとは申し上げましたが」
フォルターの言に、折れかけた心を再び奮い立たせ武装を展開するオブリビオンマシン。
それを見やり、トリテレイアのウォーマシンとしての冷徹な部分が、このまま戦意を喪失させた方が穏便に終わったのではと考えてしまう。
「気にしてやったではないか。なんとも元気そうな雄たけびだろう?」
「分かってて仰っておられますよね?」
「何のことやら……これであれもそう簡単には死ぬまいよ」
くつくつと笑う女帝の声に押し黙る騎士が、敵を迎え撃つべくキャバリアを操作する。
相手はボロボロの希望。交差の時間は長くは無いだろう。
しかし、トリテレイアは一切の油断なく、そのアイカメラを瞬かせた。
『H・O・P・E』の真価は、その敏捷性と羽根型の近接ビットによる手数の大幅な増加……すなわち格闘戦において発揮される。
特に硬質な爪による斬撃は猟兵であっても脅威となるものであり、幾度も受ければ戦闘不能は免れないだろう。
まず、ロシナンテⅣの前に展開されるのはおびただしい量の羽根。
それに応ずる銃器の数々が羽根を撃ち落としていくが、そこに対する動揺は“どちらにも”ありえない。
これが牽制である事は、レジスタンスのリーダーとトリテレイアに共通する認識なのだ。
「(黒いキャバリアが下がっている……! 強力な攻撃の体勢が整う前に終わらせねば!)」
キャバリアの翼に比べれば小さな、しかし何よりも鋭利な青い爪を構えるオブリビオンマシンは、自分に残された時間は多くないと決死の特攻を仕掛けていく。
一撃。惚れ惚れするほどの制御で機体を下げる白い騎士の鼻先を爪が通る。
二撃。キャバリアの構えた、大きな盾で受け流される。
三撃。振るわれる巨大剣が爪によって打ち払われるが、機体そのものには届かない。
足さばき、両の腕の武装。魔爪から逃れるための手札は削り切った。
サブアームらの銃器は、羽根を押しとどめる為に使われ、此方に向ける余裕は無いだろう。
「おわりだああぁぁ!!!」
四撃。守りの構えを解いた白の騎士に、オブリビオンマシンの爪が突き立てられる。
「――ッ!?」
瞬間、強烈な衝撃に膝を屈するのは“希望”であった。
受け流しの為に振り抜いた盾。
その体勢のまま機体ごと体当たりしてきたシールドバッシュに吹き飛ばされたのだと気づく頃には、危惧していた黒が動き出す。
「希望と絶望は紙一重、表裏一体の存在よ」
『女帝』から放たれれる魔力波動が、オブリビオンマシンを飲み込んでいく。
最後の攻撃を捌かれ、機体の各所が損傷した『H・O・P・E』に、もはや抗う力は残されていない。
「その機体が朽ちるが先か、貴様の心が折れるが先か。精々抗ってみせよ、そして縋ってみせよ」
崩れた体勢を起こす力もなく。
女帝の言葉、その先まで届いているはずの“希望”が動き出す気配はない。
装甲が剥がれ、どんどんと崩れていくキャバリアの機体から、やがてパイロットが乗っているコクピットまでもが露出する。
その時。
一条の光がフォルターへと向かい飛翔した。
パシィィン……。
「……なんだ今のは?」
「歩兵用のビームライフルですね。万が一……いえ、億が一程度の確率でキャバリアにも損傷を与えられる程度の出力です」
即座にキャバリアの腕を伸ばし、女帝を庇った騎士のキャバリアについた僅かな汚れを見てトリテレイアが語る。
見れば、魔力波動の余波で気を失った男の腕には、鉄の巨人に立ち向かうにはあまりにちっぽけなライフルが握られていた。
「最後まで抗うことを選んだわけか。つまらん……」
「……貴女の嗜好はやはり理解し難いですが」
期待していた表情が見れなかったと、少しばかり不機嫌そうにつぶやくフォルターの隣でトリテレイアは思考する。
人が生きるは命のみならず、“希望”を奪うのならば、代わりが必要となるだろう。
その生きる燃料をあの男に与えた者がいるのなら……それはきっと、隣に立つ彼女なのではないか、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 冒険
『旗印の堕ちた地で』
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POW : 圧政側の軍勢を一時の間追い払う
SPD : 急ぎその場を後にする
WIZ : レジスタンスのメンバーを護衛する
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●これから
壊滅したレジスタンス軍。
その眼前で、彼らが希望を託した白きキャバリアの機体が無情にも崩れ落ちていく。
政府軍の虐殺からどうにか逃げ延びていた貧民街の住民たちも、意識ある兵士たちと同様――絶望の表情を浮かべてそれを眺めていた。
「司令部へ。こちら、現場に到着しました。反乱軍特記戦力の破壊、並びに『猟兵』戦力を確認」
「了解。予定通り、『任務』に当たられたし」
そして、そんな彼らに追い打ちをかけるように、政府軍の応援が到着する。
数そのものは、援軍を足しても先の戦力には戻らないだろう。
それでも、“希望”を失った民衆に、もはや抗う術は残されてはいなかった。
それでも、この戦場に限れば、行く末を決める者は他に居る。
この国そのものを変えるのには足らないが、確かに選択する時間は存在するのだ。
ある者は、希望を奪った彼らを怨嗟の目で見つめ。
ある者は、余所者に過ぎない彼らを訝し気に観察する。
誰もが、彼らを受け入れていない事だけが共通するこの場所で。
――猟兵はこれから。
ヴィリー・フランツ
※ヘヴィタイフーン搭乗
心情:さて、俺は野暮用で一足先に退かせてもらう、何処に向かうかって?そりゃこの国の国防総省だ。
俺達は抵抗勢力のフラグ機を倒した、少なくとも仕事の料金を請求しても良い筈だ、…少々過程が手荒すぎて微妙なラインだがな。
意地汚ねぇと思われるかもしれんが、ある種の儀式であり傭兵としての矜持みたいなもんだ。
………こうでもせんと気持ちの切り替えが出来んよ。
手段:向こうの誘導の下、担当官の最寄りまで乗り付ける。
機体から降りたら【喫煙者】を発動させながら移動、吸うのは紙巻じゃなく大物感の出る葉巻、胸にアークライト名誉勲章を着けて箔もつける。
今回の請求金額(多め)をバシッと提示するぜ。
●儀式
「やあ、ちょっといいかな?」
「っ、止まれ!! 此方の許可なく動けば敵対とみなすっ!!」
繋がれた通信回線から聞こえるヴィリーの声は、平時よりも更に鷹揚な響きで政府軍へと届く。
もっとも、ヴィリーの事など知る由もないこの国の人間からすれば、手の付けられなかったオブリビオンマシンを屠り、堂々とした態度でこちらに接触してくる警戒対象だ。
「ああ、指示には従おう。俺は仕事の料金を請求したいだけなんだ」
「仕事だと!? 貴様、お前たちがわが軍にどれほどの損害を与えたと……」
「……待て」
ヴィリーの発言を受けて、声を荒げる政府軍のキャバリアパイロットたち。
そんな喧騒を制止するのは、隊長機に乗った壮年の男の声であった。
「君はわが軍のキャバリアをも攻撃した。それを踏まえて対価を求めるというのか?」
「それは俺じゃあない。偶々来た方向が同じだけの連中さ。こっちには止める権利も義務も無い」
あくまで堂々と自らの主張を述べるヴィリーに対し、隊長機のパイロットは更に問いかける。
「つまり、君個人に攻撃の意思はなく……我々の妨害もする気は無いと?」
「……ああ、そうさ」
妨害をしない。
それがどのような結果を招くのかを理解した上で、ヴィリーは肯定を返す。
その言葉をもって政府軍の隊長はコクピットの中で静かに頷き、部下の一人にヴィリーの案内を命ずるのであった。
「これが要求額か……随分、相場より多くないかね?」
キャバリアから降ろされたヴィリーが招かれたのは、アストカ自由連邦の中心部、国防総省の一室だった。
ヴィリーの相手をする上等なスーツに身を包んだ男や、傍に控える小銃を持った兵士の表情は固い。
彼らは、多少なりとも猟兵を知っている。その中には、身一つでキャバリアを破壊するような規格外の化け物が居ることも。
キャバリアから降ろし、武装を解除したとはいえヴィリーに相対するというのは、彼らにとって非常に危険な選択であった。
「そりゃあ、普通の相手の話だろう? この額で凡百の傭兵をいくらか雇った所で、あの怪物キャバリアを仕留められたか?」
紫煙をくゆらすヴィリーは、その“威風”を存分に利用する。
高級な葉巻をくわえて、煌びやかな勲章を胸につけ、一国の中枢に対しても全く臆することなく交渉を進める。
「……わかった。そちらの要求通りの額を支払おう。国内の不安分子の排除への協力、感謝する……」
そうして、連邦が選んだのはヴィリーの要求の全面的な受け入れであった。
ヴィリーはそれにただ頷き、正式な支払いのための書類へとサインをしていく。
ふっと。
それまでに感じていた胸の痛み、己の中の疑問が風化して、遠くなっていくのを感じる。
“儀式”を終え、この戦いが終わるのだ。
切り替えられてしまう事への痛みすらもすぐに薄れていく中で、ヴィリーは交渉相手と空虚な握手を交わすのであった。
大成功
🔵🔵🔵
天城原・陽
【友曇】
ハッチを開け、シートから身体を起こし顔を合わせる
「第三極東都市管理局戦術作戦部…特務一課所属、天城原陽。先の戦闘…援護…感謝するわ。」
冷静に努めパイロットとして挨拶と礼を述べるも、友人が戦いに赴いていた事、そして自身もそれを隠していた事、悲しみと後ろめたさが綯交ぜになった感情は押し殺し切れずそれが表情に出てしまう。
「サイキックキャバリア…それに乗っているのが…メル、なのね。」
今はそれしか言葉に出来なかった。
飛び去って行くラウシュターゼを見送り、シートに戻りハッチを閉じた
怨嗟と疑惑のざらついた感覚を覚える
何処も彼処も『歪んでいる』…そう感じた
「オブリビオンマシンの撃破完遂…帰投する」
メルメッテ・アインクラング
【友曇】
『成程、お前の知人だな?
命令だメルメッテ。コックピットを開けろ。外からの開け方でな』
震えながら機体の指先で胸部装甲を軽く3回叩き、開けば、天城原様が――ああ。
「ッ!」急激に背面部接続装置を引かれ顔を上げさせられます
主様は正しい。私は自らの意志で此処にいるのです。決意を込め天城原様を見つめ返します
「天城原、様。メルメッテ・アインクラングがご紹介致します
こちらの御方こそが、私の主様……サイキックキャバリア、ラウシュターゼ・アインクラング様でございます」
『アーッハッハッハ!良くできた、褒めてやろう』
『帰るぞ。オブリビオンマシンとの戦闘は終わった、留まる理由は無い』
「……失礼致しました。では」
●友曇
怨嗟、怒り、不信、警戒。
いくつもの悪意の視線が、彼女たちを射貫く。
けれども、そのすべてが置き去りになってしまうほどの衝撃の中にいる彼女たちは、ただただお互いを見つめ合う。
『成程、お前の知人だな? 命令だメルメッテ。コックピットを開けろ。外からの開け方でな』
いつもならよどみなく行えるはずの主からの指示を、メルメッテは震える身体を抑えながら、ゆっくりと遂行していく。
赤きキャバリアに乗る陽の表情にもいつもの快活さは消え失せて、やはり緩慢な動作でハッチの解放を進めていった。
「ッ!」
ハッチが解放され、それでもメルメッテは前を向くことができない。
すると、サイキックキャバリアと己を繋ぐ背面を引かれ、メルメッテの顔が上体ごと引き起こされる。
向き合えという事だろう。
それは、どうしようもなく正しい。メルメッテは、自らの意思でこの戦場に立ったのだから。
決意を込めて、それでもゆらゆらと揺れる眼差しの先に、彼女は居た。
「第三極東都市管理局戦術作戦部……特務一課所属、天城原陽。先の戦闘……援護……感謝するわ」
友の名乗りに、返す言葉が出てこない。
冷静であれば苦も無く理解できる文字列が、耳を通り抜けていってしまう。
「サイキックキャバリア……それに乗っているのが……メル、なのね」
「……天城原、様。メルメッテ・アインクラングがご紹介致します。こちらの御方こそが、私の主様……サイキックキャバリア、ラウシュターゼ・アインクラング様でございます」
『アーッハッハッハ! 良くできた、褒めてやろう』
己よりも尊ぶべき主に言及されて、ようやく口を開いたメルメッテの紹介の後に、サイキックキャバリアからいやに楽し気な高笑いが響く。
苦し気な友に、笑みの一つでもかけてやりたい。
普段の勝気な陽はそう言うけれども、彼女の中のその声はあまりに小さくて、陽は自らの悲嘆の表情を押し隠すことができない。
知りたくなかった。知られたくなかった。
猟兵としての戦いの日々を、この友には。
これは世界を救う為の戦いであろう。
それでも、無力な人々の希望を踏みにじった今日という日に出会った相手に、陽は、メルメッテは、何も話すことができない。
『帰るぞ。オブリビオンマシンとの戦闘は終わった、留まる理由は無い』
「……失礼致しました。では」
残酷な邂逅に青ざめる少女たちの間で、ラウシュターゼの声だけが勇ましく力強い。
主の言われるがままにキャバリアを操作するメルメッテは、ハッチを閉じる刹那に陽へと一礼をして、有無を言わさず飛び去って行ってしまう。
「…………」
それを、陽はただ見送っていた。
止められない。止める言葉を持たない。止めて、かけるべき言葉が見つからない。
友が目の前から居なくなってから、ただ一人に集中していたアンサーヒューマンの感覚が、“それ以外”を捉え始める。
この国に生きる者たちの、異物を睨む悪意の眼だった。
ざらざらと、不快な肌触りの布で身体の内側を撫ぜられるような感覚。
この場において陽は誰の味方でもなく、誰も彼女の味方は居ない。
誰もかれも、何処も彼処も『歪んでいる』……陽には、そう感じられたのだ。
「オブリビオンマシンの撃破完遂……帰投する」
呟いたのは、彼女の意思を乗せない事務的な報告。
この戦場に起こるすべてに関わらないようにと。
赤雷号を操る陽は、足早に戦場を去るのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鳴上・冬季
「世界の敵を倒してなおこの地に介入する気は、あまりないのですよ」
嗤う
「この戦場に終幕を…塞げ、黄巾力士」
黄巾力士を 全長634mまで巨大化させオーラ防御使用
地上5mを両手足を伸ばしてうつ伏せでゆっくり回転飛行させキャバリアと革命軍隔てる
一斉攻撃で黄巾力士が撃墜されないよう本人は上空から竜脈使い劈地珠で黄巾力士強化
自分への攻撃は仙術+功夫で縮地して避けるが度重なれば雷公鞭で反撃
「貴方の国の決着は、別の場所でなせば良いでしょう。そのために攻撃しないで戦場を隔てて差し上げたのに。私と事を構えるなら…本気で鏖殺しますよ」
敵が応戦するなら金磚と砲頭からの無差別攻撃で蹂躙
敵になると選択した者全てを鏖殺する
●ある終わり方
ボロボロのレジスタンスたちが、駆けつけたばかりの政府軍たちが男を見やる。
この国において、絶対的な強者であったオブリビオンマシンを下した猟兵の一人の一挙手一投足に自分たちの命運が左右されるのだと、指の一動作も見逃してはならないと、視線が突き刺さっていく。
殺気だったそのいくつもの目に射貫かれれば、並大抵のものは怯え縮こまる事だろう。
「――世界の敵を倒してなおこの地に介入する気は、あまりないのですよ」
冬季は、そんな自分の置かれた立場すらも些事であると言うように。
この戦いで何度も見せた、笑みを浮かべるのだった。
「この戦場に終幕を……塞げ、黄巾力士」
「またあの機械兵……!」
「い、いや待て、なんだ? どんどん大きく……!?」
冬季の指示に従う二足戦車は、主の力を受けてみるみるうちにその姿を大きく、威圧的なものへと変貌させていく。
「ああ、そういえばこの世界には暴走状態の衛星兵器があるんでしたっけ。ならほどほどで抑えましょう……それで十分ですしね」
キャバリアをも超える体躯の黄巾力士を作り出し、なお余力を残した素振りの冬季に包囲する兵がたじろぐ中、黄巾力士は主の命を為すべく更なる行動を開始する。
身じろぎするだけで地響きを起こすような巨体はオーラを纏いながら宙へ浮き、うつ伏せとなったその体躯をもって政府軍のキャバリアと、レジスタンスの残党を隔てるのだ。
「貴方の国の決着は、別の場所でなせば良いでしょう。どうぞお引き取りを」
柔らかい、けれども相対する者にとっては悪夢から現れたような冬季の笑み。
まず一歩後ずさったのは政府軍のキャバリアたちだ。
彼らにとって、この貧民街を襲撃する最大の目的であった“希望”はすでにいない。
それならば、この神がかり的な力を持つ異邦人を刺激しない事こそが、もっとも優先されるべき使命であろう。
「ふ、ふざけるな……!」
だが、レジスタンスにその理屈は通用しない。
友を失い、仲間を失い、希望を失った。
自分たちを導いてきたオブリビオンマシンを失った以上、彼らの今後はより暗いものとなるだろう。
猟兵に戦いを仕掛けることでその寿命が縮まろうが、元より未来が無いと確信してしまう者も当然現れる。
「お前らさえ居なければ……! 俺たちは、希望を……!」
キャバリアを隔てる為の黄巾力士の壁は、人間の大きさならばあっさりと素通りできるもの。
銃を構えて、冬季へと走りくる若者の目を見て、その決意と絶望の深さを読み取った妖仙は。
「そうですか、私と事を構えるのであれば……本気で鏖殺しましょう」
振るわれる雷公鞭の雷と共に、嗤いかけてやるのであった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
【古城】
…慈悲深いのか、残酷なのか
貴女の事は生涯、理解しきれぬ気がいたします
さて、フォルター様
私は個人的動機で仕掛けます
貴女は…いえ、ご随意に
政府軍機残骸をハッキングし通信網を傍受
現場指揮官機を、指揮権を委譲されればその機体を
“頭”を潰し続け浄化作戦妨害し撤退促し
政府軍強襲
UC四連撃は常にコクピット刺し貫き
逃走、戦意喪失機以外
立ち塞がる敵
悉く鏖に
無力なオブリビオンの村を襲った事を覚えておられますか?
(北辰MS:過去の人殺し)
猟兵として手を汚したあの時よりは気分は晴れやかです
猟兵でなく騎士として動く故に
オブリビオン、人の区別なく
非戦闘員の虐殺を我が騎士道は許しません
…己に甘いと、罵って結構ですよ
フォルター・ユングフラウ
【古城】
レジスタンス、だったか?
戦とはこういうものだ、貧しき者達よ
力を持たねば、蹂躙され斃れるのみ
先程我は、希望と絶望は紙一重と言った
希望が潰えて絶望が支配したとしても、そのすぐ側に新たな希望が存在するかもしれぬ
外道の言葉と聞き流し、そのまま呆け続けるも良し
新たな“希望”を掲げ、輩の無念に報いるも良し
好きに生きよ
所詮、我等は余所者
己の運命は、己で切り拓け
我は、嵐と同じ
天災に道理も無ければ、理解も通じぬものよ
ふふっ、とうに把握していると思ったのだがな?
さて
我が前に立ち塞がる者は、全て等しく塵へと還そう
UCを自機へと発動し、暴威で以て全てを捻じ伏せてくれる
政府軍と言ったか、一つ教えてやる
搾取の上に胡坐をかき、己が民草すら治められぬ貴様等は、我と同じ外道よ
外道は、外道らしく─我が光刃に灼かれ、無様に死ね
今の我に、汝を罵る資格はあるのやら…な
今ここで杯を掲げるとしたら、あの村で掲げた酒よりもましであろうというのは同意よ
我は、我の外道に従う
汝は、汝の騎士道に従うと良い
●己の道
機械の身体を動かす駆動音が、大地を揺らす巨大な足音がすぐそこまで迫っている。
レジスタンス軍は壊滅し、彼らにとっては確かに“希望”であったオブリビオンマシンも失った民衆にとって、政府軍はまさしく絶望そのものであった。
激情のままに政府軍に、あるいは希望を摘み取った猟兵たちに挑める者はごく僅かなもの。
大半の民は、どこまでも自分たちを追い詰める現実にただ呆然とするばかりであった。
「戦とはこういうものだ、貧しき者達よ。力を持たねば、蹂躙され斃れるのみ」
その空白に投げかけられるのは、黒き機体から響く女帝の声であった。
力なくフォルターのキャバリアを見上げる人々に、女は言葉を続けていく。
「先程我は、希望と絶望は紙一重と言った――希望が潰えて絶望が支配したとしても、そのすぐ側に新たな希望が存在するかもしれぬ」
たった今希望を奪われた民衆にかける容赦のない、けれども奮い立たせるようなフォルターの声に、人々は様々な反応を示す。
「外道の言葉と聞き流し、そのまま呆け続けるも良し」
ある者は、やはり変わらず項垂れ続けていた。
もはや何の気力も持てずに、絶望に窒息し思考を止めるその時まで、ただ座り込む者たち。
「新たな“希望”を掲げ、輩の無念に報いるも良し」
ある者は、立ち上がり走り出していた。
破壊されたキャバリアから友を引きずり出し、座り込む人々を引っ張り、生き延びようとする者たち。
「……好きに生きよ。所詮、我等は余所者、己の運命は、己で切り拓け」
彼らの選択を、自分たちで選び出す道を。
フォルターは、ほんのわずかに柔らかな声で後押しするのである。
「……慈悲深いのか、残酷なのか。貴女の事は生涯、理解しきれぬ気がいたします」
彼らはまだ、生きている。
けれども、この場を生きながらえたところで、オブリビオンマシンを失った彼らの今後がより厳しいものになるのは間違いないだろう。
絶望に屈しようとした彼らを立ち上がらせるその言葉は慈悲なのか、あるいは更なる地獄へと突き落とす残酷さであるのか。
それなりに長い付き合いになってきたトリテレイアだからこそ、判別がつかない。
慈悲深さも、残酷さも、確かに彼が見てきた彼女の一面なのだから。
「我は、嵐と同じ。天災に道理も無ければ、理解も通じぬものよ」
とうに把握していると思ったと笑う顔がキャバリア内の通信回線を通して映れば、それは少女のような屈託のないもの。
いよいよ持って読みようが無い女帝の振る舞いに頭を抱えそうになるトリテレイアではあるが、この場では惚けてばかりもいられない。
「さて、フォルター様、私は個人的動機で仕掛けます。貴女は……いえ、ご随意に」
猟兵としての役目は確かに終わった。
だからこそ、騎士の役目を果たすのだと、トリテレイアはキャバリアに持たせた“残骸”に目を向け語るのだ。
「隊長!? 隊長、応答してください!!」
「くそっ、なんでこうも指揮官機を……! 通信回線の秘匿が通じていないのかっ!?」
「……貴方がたに勝ち目はありません。撤退を」
政府軍の残骸をハッキングしたトリテレイアは、政府軍の頭となる指揮官を、それが消えれば次の頭を次々と撃破していく。
指揮系統を破壊し、戦意を折り退ける。
そして、なおも立ち向かう者には、容赦のない剣戟を。
「フォルター様、無力なオブリビオンの村を襲った事を覚えておられますか?」
「ああ、ダークセイヴァーでの話だな」
「ええ……猟兵として手を汚したあの時よりは、気分は晴れやかです」
自分が死んだことにすら気づけない、無辜の民を殺めなくていい。
敵が背を向けて逃げ出すのなら、それをそのまま見逃してしまえる。
猟兵でなく騎士として、ただ無力な人々の虐殺を止める為に戦う事の、なんと楽なことか。
「うむ、相手も我と同じ外道故な。杯を掲げれば、あの村で掲げた酒よりはましなものが飲めるだろうよ」
「……己に甘いと、罵って結構ですよ」
先ほどまで猟兵として戦い、民の希望を壊した直後のこの振舞。
自らに軽薄さを感じたトリテレイアがそう言っても、女帝はくつくつと笑うばかり。
「今の我に、汝を罵る資格はあるのやら……な。先ほど、己の事は己で決めよと言ってしまったばかりだ」
だからこそ、自分は自分の外道に従うと女帝は光刃を振り下ろし。
騎士もやはり、己の騎士道に従い立ちふさがる敵を斬り伏せる。
二人の行動に溜まらず政府軍が撤退した頃には、民衆の逃走も終わり、最後に残った二人の猟兵も帰還することで、この地の戦いは幕を下ろしたのだった。
●彼らの道
「――以上、今回我々が受けた損害は大きく、反乱軍の特記戦力の喪失を考えても、暫くは掃討作戦の再開は不可能であると結論付けざるを得ないでしょう」
「あまりに国内に戦力を割きすぎれば、他国からの侵攻を許す……仕切りなおすしかないか」
猟兵たちが去った後。
アストカ自由連邦の中枢で、軍服の将校から報告を受けた身ぎれいな格好の首脳たちが、苦悶の表情を浮かべて意見を交わす。
「大丈夫ですかリーダー? まだ無理はしない方が……」
「いいんだ、“希望”を失っても、まだ時間はある。今度こそ俺たちの手で希望を……!」
貧民街では、傷を癒したレジスタンスたちが自分たちの苦境を認識しながらも、それでも未来に希望を作るのだと息巻いていた。
猟兵たちが去った後。
骸の海からにじみ出た過去に翻弄されたこの国の全ての人々は解放された。
それぞれに立場の違いがあり、結末が分からなくとも、彼らはようやく自分たちだけで未来を選び取ろうとしていたのであった。
大成功
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