5
希望は偽りの星か、エースの逆境

#クロムキャバリア #ACE戦記 #フィアレーゲン #シーヴァスリー


●五里霧中
 地獄を見た――のだと思う。
 けれど、それはほんの些細なものであったのだと『フュンフ・ラーズグリーズ』は理解していた。
 小国家『グリプ5』を離れ、彼は一人荒野を往く。
『バンブーク第二帝国』は自身の出自を、その血統を憎しみの視線で睥睨する。
 彼らの憎しみは己には理解できぬことであったが、しかし、彼らが己を許さぬことを知っている。
 何処までも己を狙い続け、行く先ざきを炎に包み込むだろう。

 己の道は赫く燃えている。

「こんな憎しみだけが紡がれていくなんて間違っている。こんなこと、誰も望んではいないはずなのに」
 憎しみが自身へと集約されている。
 自分は『フュンフ・エイル』ではない。かつて悪魔とも救世主とも呼ばれたキャバリア乗りではない。
 ただ名前が同じだけだ。
『フュンフ・エイル』は不出世の『エース』だった。
 だから、あらゆる不可能を可能に変えてきた。自分には、できない。
 けれど、それでもと願ってしまうのだ――。

●孤高の人
『フィアレーゲン』という小国家があった。
 かつてはキャバリアの操縦技術が全ての小国家であり、『ツェーン』と呼ばれた少女がトップに立っていた。
 だが、猟兵の介入と立ち上がった人々によって揺らいだ体制を突くように小国家『シーヴァスリー』によって瞬く間に滅ぼされたのだ。
 国を捨てる者もいれば、『シーヴァスリー』に恭順を示す者もいた。
 またその支配に抗う者も居たのだ。

「……このキャバリアは希望だ……『H・O・P・E』……ほら……昔の言葉で希望って意味だったんだよ、『フュンフ』――」
 その言葉に『フュンフ・ラーズグリーズ』は血に塗れた手を握りしめてうなずいた。

 かつての『フィアレーゲン』に生きた人々の中で、『シーヴァスリー』に恭順を示さなかったもの達は、レジスタンスとして今も尚故国を取り戻さんと戦っていた。
 そこに『フュンフ・ラーズグリーズ』は流れ着いた。
 彼らは劣勢であった。そのままでは壊滅するだけであった。
『シーヴァスリー』の物量は圧倒的であったし、戦況を覆すには未だ戦力は足りなかった。
 けれど、レジスタンスたちが『シーヴァスリー』の研究施設より奪還した超高性能キャバリアは、たしかにその機体の名の通り『希望』そのものであった。

「だから……『フュンフ』、君に使って欲しい。他の誰でもない……君の力で、みんなを救って……」
 今、彼の腕の中にある少女は『シーヴァスリー』の兇弾に倒れた。
 己をかばったのだと『フュンフ・ラーズグリーズ』はわかっていた。己の生命に値打ちなどなかった。なのに、彼女は自分をかばったのだ。

 報いなければならない。
 値打ちのない生命を救った彼女のために。
 彼女の生命が散った意味をなくさぬために。
 今、偽りの希望が羽撃く――。

●象徴
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア――かつて『フィアレーゲン』と呼ばれた小国家は『シーヴァスリー』によって滅ぼされました。けれど、今まさに支配されている『シーヴァスリー』には未だレジスタンスが『フィアレーゲン』に抵抗しています」
 ナイアルテの言葉に猟兵達の中にはかつてオブリビオンマシンによって扇動された小国家での戦いを思い出す者も居ただろう。
『ツェーン』と呼ばれる少女が元首となっていた、キャバリア操縦技術のみが評価される小国家。それが『フィアレーゲン』であった。

 けれど、猟兵達によって『ツェーン』は敗れ、瓦解の隙を付いて小国家『シーヴァスリー』が侵攻し、国家としては消滅した。
 恭順を示す者、他国へ亡命する者、そして抗う者。
 今回ナイアルテが見た予知は、その抗う者――レジスタンスに関連するものであった。
「レジスタンスは劣勢に追いやられていますが、一機の『超高性能キャバリア』を『シーヴァスリー』より奪い、『グリプ5』を出奔していた『フュンフ・ラーズグリーズ』を旗印に反抗戦を盛り返しているのです」
 だが、それだけなのならば猟兵の介入することはない。
 すなわち、オブリビオンマシンが関連しているということだ。

「はい……その『超高性能キャバリア』こそオブリビオンマシンなのです。未だ『フュンフ・ラーズグリーズ』は、オブリビオンマシンに思想を歪められてはいませんが、いずれ思想を歪められ、破滅……戦火を拡大せることでしょう」
 これをどうにか止めなければならない。
『シーヴァスリー』が『フィアレーゲン』の国家が存在していたレジスタンスのアジトを襲う圧倒的な物量作戦を展開している。このアジトには未だ非戦闘員が多く存在している。アジトを潰すというのは口実であり、この非戦闘員たちの虐殺が目的なのだ。
 レジスタンスのキャバリア部隊はこれを阻止しようと立ち向かっているようである。

「レジスタンス側も『シーヴァスリー』側も同じ機体を使っています。『ジェネム2』と呼ばれる機体であり、赤いカラーリングがレジスタンス側。緑色が『シーヴァスリー』側の機体となっています。いずれもオブリビオンマシンではありません。この『ジェネム2』……」
 そこでナイアルテは息を吐き出すようにして言葉を切る。

「……赤いカラーリングのレジスタンス側のキャバリアを壊滅させてください」
 ナイアルテの言葉に猟兵達は首をかしげるだろう。
 恐らく『シーヴァスリー』はオブリビオンマシンの傀儡となっている小国家だ。壊滅させるならば、『シーヴァスリー』側であるのではないかと。
 だが、ナイアルテは頭を振る。
 あくまで今回のターゲットであるオブリビオンマシンは『レジスタンス側の旗印のオブリビオンマシン』である。
 レジスタンス側を壊滅させなければ、ターゲットのオブリビオンマシンはでてこない。

「……『フュンフ・ラーズグリーズ』は恐らく皆さんの説得を聞き入れることはないでしょう。虐殺を止めるために戦う彼の側に正義があるからです。戦って止めるしかありません」
 また『フュンフ・ラーズグリーズ』が駆る『超高性能キャバリア』――『H・O・P・E』は通常のユーベルコードに追加して、常時『破損箇所を結晶化させ再生する能力』を持っているようである。
 搭乗者の生命を削る機体ではあるが、強力無比な存在だ。

「『フィアレーゲン』のレジスタンスの皆さんには希望の象徴……それを破壊しなければならないことは、オブリビオンマシンの奸計であるのかもしれません。けれど、それでも破滅的な思想に狂わされることなどあってはなりません」
 どうかお願いします、とナイアルテは頭を下げ、猟兵たちを送り出す。
 そう、敵は『エース』である。
 これまでと依然変わらず。そして、二度目の戦いが始まる――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はクロムキャバリアにおいて『フィアレーゲン』のレジスタンスの希望の象徴である『超高性能キャバリア』と『フュンフ・ラーズグリーズ』を打倒するシナリオになります。

 キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
 ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。

●第一章
 集団戦です。
『シーヴァスリー』のキャバリア軍が『フィアレーゲン』の残存レジスタンスのアジトを襲い、非戦闘員諸共虐殺する作戦を展開しています。
 レジスタンスのキャバリア部隊がそれを阻止しようと立ち向かっていますが、どちらも同型機を使用していますが、オブリビオンマシンではありません。
 赤色のカラーリングがレジスタンス側、緑色が『シーヴァスリー』側です。

 ターゲットであるレジスタンス側の旗印であるオブリビオンマシンが出現するためには、レジスタンス側の『赤色のカラーリングのジェネム2』を壊滅させなければなりません。
『シーヴァスリー』側のキャバリアを倒す必要はありません。

●第二章
 ボス戦です。
 レジスタンス側の希望の象徴であるオブリビオンマシン『H・O・P・E』が現れます。
『フュンフ・ラーズグリーズ』が騎乗しており、通常のユーベルコードに加え、『破損箇所を結晶化させ再生する能力』を常時発動させています。
 ただし、搭乗者に消耗を強いるため、パイロットが消耗すれば再生する能力を弱体化させられるでしょう。

●第三章
 冒険です。
 象徴であるオブリビオンマシンを失ったレジスタンス側は潰走するでしょう。そんな彼らを虐殺せんと『シーヴァスリー』のキャバリア部隊が攻勢を強めます。
 皆さんはこのまま立ち去ることもできますし、『シーヴァスリー』側を一時の間追い払うことも、レジスタンスを安全な場所まで護送することもできます。
 選ぶのはみなさんです。

 それでは、戦乱続く世界、クロムキャバリアにおいて『エース』、『フュンフ・ラーズグリーズ』との二度目の対決。そして、偽りの希望を暴く皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
271




第1章 集団戦 『ジェネム2』

POW   :    全機一斉射撃
【部隊全機でビームライフル】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    突撃援護
【同型機による支援攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ビームサーベルでの攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    別動隊合流
【同型機で編成された別動隊】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 小国家『フィアレーゲン』の跡に散財するレジスタンスたちのアジト。
 そこは未だ多くの非戦闘員たちが身を寄せ合うようにして暮らす場所であった。彼らは故国を捨てることもできず、さりとて他国に亡命する余裕すらなかった者たちである。
 恭順を示せばよかったのかもしれない。
 けれど、彼らはかつて猟兵の介入に寄って己たちの価値観こそが過ちであったと気がついたのだ。
 誰かから奪うだけでは人の営みと言えぬことを。
 だからこそ、彼らは理不尽に奪う者たちと戦うことを選んだ。
「キャバリア部隊、出すぞ!」
「非戦闘員は逃げろ! 敵のキャバリアが来る! 急げ!」
 赤いカラーリングの『ジェネム2』が起動する。
 機体は旧式であったが、それでも動作に不具合はない。これまで戦って奪ってきた報いであるのだとしても、彼らは過ちを認め、理不尽に奪われたことをこそ正そうとしている。

「ここは抑える――ッ、がっ!?」
「下がれ!『シーヴァスリー』は投降を許さない。持ちこたえるんだ、俺達の希望、『フュンフ・ラーズグリーズ』が来るまで!」
『シーヴァスリー』のキャバリアの数は圧倒的であった。
 尋常ではない物量でレジスタンス側を圧する。どれだけ『フィアレーゲン』のレジスタンスたちが手練のキャバリア部隊であったとしても、飽和攻撃を前に封殺されてしまうことだろう。
 だが、彼らの瞳には絶望はなかった。
 なぜなら、彼らには『超高性能キャバリア』を駆る『エース』がいる。
『フュンフ・ラーズグリーズ』は、彼らにとっての希望そのものであった。

 かつては悪魔と呼ばれた『フュンフ・エイル』の再来。
 だが、それは同時に救世主とも呼ばれる存在の再来でもあった。
「あいつなら、きっとこの現状を察知してくれる! それまで非戦闘員を護るぞ!」
 レジスタンスたちは奮起する。
 しかし、その奮戦を猟兵達は壊滅させなければならない。

 彼らの抱く希望が偽りであるがゆえに。
 旗印たるキャバリアがオブリビオンマシン――いつか破滅への思想へと歪み、戦火を拡大させるだけの存在であるのだから――。
村崎・ゆかり
フュンフも厄介なことに首を突っ込んだわねぇ。
彼と同じ側に立てればよかったんでしょうけれど。

まずは黒鴉の式を飛ばし、投降勧告をして回らせるわ。
警告。当方は貴勢力の壊滅を望むものなり。然れど、流血は欲さず。速やかに総員、『フィアレーゲン』より退去すべし。
これで口実は立つ。

出てきたわね、レジスタンスの量産型。
「全力魔法」「範囲攻撃」砂の「属性攻撃」「仙術」「道術」で、紅砂陣。
オブリビオンマシンでない限り、キャバリアでこの絶陣に抵抗は出来ないわ。

アヤメ、羅睺。「環境耐性」の符を渡すから、パイロットの回収お願い。せめて死人を出さずに済ませたい。
このまま一気にレジスタンスのキャバリアを殲滅するわ。



「『フュンフ』も厄介なことに首を突っ込んだわねぇ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)にとってのこの事件の印象はそういうものであった。
 小国家『フィアレーゲン』はかつて『グリプ5』と戦争状態にあった。
 もはや国家としての体裁を取ることすらできぬ国。
 レジスタンスたちにとっては故国であっても、『フュンフ』にとっては敵でしかなかった。
 けれど、『フュンフ』にとって、その問題は問題ですらなかったのだろう。
 些細な問題だったのだ。
「彼と同じ側に立てればよかったんでしょうけれど」
 ゆかりは式神の黒鴉を飛ばし、警告する。

『警告』
 その言葉はレジスタンス側の『ジェネム2』と『シーヴァスリー』側のキャバリア部隊にも聞こえるように響き渡る。
『当方は貴勢力の壊滅を望むものなり。然れど、流血は欲さず。速やかに総員、『フィアレーゲン』より退去すべし』
 その言葉に反応したのは『フィアレーゲン』側のレジスタンスではなかった。
「此処は我が『シーヴァスリー』の領土である。不当に占拠している輩を排除しているだけに過ぎない。この排除に介入するのならば、同様のものとみなす」
『シーヴァスリー』のキャバリア部隊が一斉に銃口を黒鴉に向け、発砲する。
 こうなることは予測できただろう。
 しかし、ゆかりにとっては口実作りでしかなかったのだ。

 自分たちの目的はレジスタンス側のキャバリア部隊の壊滅である。
 希望の象徴。
 偽りの旗印であるオブリビオンマシンを引きずり出すためには、レジスタンス側のキャバリア部隊を壊滅さえなければならないからだ。
「第三勢力……! ここは俺達の故国だ!! ここから俺たちは!!」
 一気呵成に打ってでてくるレジスタンス側のキャバリア部隊をゆかりは見やる。
 新たな小隊の集合を呼びかけ、『ジェネム2』、その赤いカラーリングの機体が集まり緑色のカラーリングの『シーヴァスリー』側の機体へと銃撃を駆けるのだ。

「アヤメ、羅喉。この符を渡すから。パイロットの回収お願い。せめて死人を出さずに済ませたい」
 式神に符を手渡し、ゆかりは己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
 希望の象徴を潰えさせなければならない。
 それはともすれば、オブリビオンマシンの背後にある黒幕の思惑通りであるのかもしれなかった。
 けれど、それでもオブリビオンマシンは放置できない。
 今はよくても、いつか必ず狂った破滅思想に取り憑かれ、戦火を広げるだけの存在に堕すことをゆかりたち猟兵は知っているからだ。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。貪欲なる紅砂よ、万物全ての繋がりを絶ち、触れるもの悉くを等しく紅砂へと至らしめん。疾!」
 紅砂陣(コウサジン)が展開される。
 自身を中心に全てを風化させる紅い流砂と砂嵐が広がっていく。
 それらは無機物を風化させ、『ジェネム2』の装甲を食い破り、フレームすら風化させていく。
 朽ち果てていく赤い『ジェネム2』の機体から己の式神達がパイロットたちを脱出させていく。

 しかし、レジスタンス側を虐殺せんとしている『シーヴァスリー』のキャバリア部隊は未だ退却していない。
 絶妙にゆかりのユーベルコードの範囲の外から様子を伺っているようである。
 機を見て攻め込む算段を立てているのだろう。
 だが、それでもゆかりはやらなければならない。
 これが全て計算づくであったのだとしても、それでも『フュンフ・ラーズグリーズ をオブリビオンマシンの傀儡へと再び堕とすことはしてはならない。

 全ての選択は自らの手の中にある。
 その意味を噛み締め、ゆかりは己の瞳をユーベルコードに輝かせ、レジスタンスの旗印の到来を待つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
【心境】
「昨日の勝者は今日の敗者…か。クロムキャバリアはいつもそうだ。」
それにしても、またフュンフくんと戦うことになるとは…
あの模擬戦の日が懐かしいよ。まったく。

【行動】
非戦闘員の虐殺だけは阻止するわ。
キャバリアっていう強大な力の振るい場所…間違ってるんじゃないよ。
レスヴァントで出撃する。
パールバーティにはいつも通りARICAを搭載。
『援護射撃』よろしく。

『瞬間思考力』で敵の行動を『見切り』自慢の『操縦』テクで回避
プラズマ・スフィアを展開。
EMP干渉攻撃で敵機の動きを封じた隙にアストライアの『制圧射撃』でキャバリアの攻撃能力を破壊する。
「キャバリアを破壊する。死にたくなければ脱出しなさい!!」



 争乱だけが渦巻続く世界にあって、勝利者と敗者はいつだって存在するものである。
 勝者は敗者を踏みつける権利を有する。
 平等という言葉はない。
 白と黒。
 明確に分かたれた価値があるからこそ、人は争う。
 それは止めようのないことである。
 他者より優れたものを。他者よりより良きものを。
 あらゆる点において競争が激化するのであれば、それは当然のことでもあったのだ。けれど、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)にとって、それは珍しいことではなかったことだろう。

 盛者必衰の理。
「昨日の勝者は今日の敗者……か。クロムキャバリアはいつもそうだ」
 小国家『フィアレーゲン』の跡地に点在するレジスタンス。
 そのアジトを襲撃する『シーヴァスリー』のキャバリア部隊。オブリビオンマシンではない。
 けれど、彼らは虐殺を行おうとしている。オブリビオンマシンに思想を狂わされたわけでもなく、己たちの意志でもって虐殺を行おうとしている。
 弱者を踏みつける快楽を得た者は、須らくそうだ。
 やりすぎる。

「キャバリアっていう強大な力の振るい場所……間違ってるんじゃないよ」
『レスヴァント』が大地を疾駆する。
 それに追従するように自動操縦の『パールバーティ』が続く。砲撃を背に受けながら『レスヴァント』の機体が煌めく。
『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を切り抜け、彼女の自慢のキャバリア操縦テクニックが『ジェネム2』の合間をくぐり抜けていく。
 緑のカラーリングの機体は『シーヴァスリー』。
 今回の標的ではない。
 けれど、彼女はキャバリアと見た瞬間にプラズマ・スフィアを展開する。

 彼女の頭脳から電子機器全てをダウンさせる強電磁波が放たれ、全ての電気エネルギーを完全に破断せしめる。
 それは赤色のカラーリングである『ジェネム2』にも同様であった。 
「虐殺は起こさせない。キャバリアは破壊する。死にたくなければ脱出しなさい!!」
 オープン回線でユーリーは呼びかける。
 レジスタンス側も機体を捨てるだろう。戦えないキャバリアなど棺桶と同様であるからだ。
 アサルトライフルより放たれた弾丸が頓挫したキャバリアを撃ち貫いて爆発させる。


「それにしても、また『フュンフ』くんと戦うことになるとは……」
 あの日のことが懐かしく思える。
 あの日、お祭りの日。
 あの日だけは誰もが笑っていた。戦いとは無縁であった。ただ、笑い合っていたのだ。模擬戦であっても、祭りの催し。
 なのに、再び戦う時、今度こそ殺し合いになる。
 自分がそのつもりはなくても、相手は己の正義を曲げないだろう。その予感がユーリーにはある。

「あの模擬戦の日が懐かしいよ。まったく」
 炎が揺らめく中、ユーリーは一人呟く。
 争乱のクロムキャバリアにおいて、あの日だけが特別であったなどと思いたくはない。
 平穏が欲しい。
 誰もが笑い合える未来をつかみ取りたい。
 そう願うからこそ、ユーリーは己の瞳をユーベルコードに輝かせ、誰一人として死なせるつもりはなく、戦場を支配する。

 例え、人間というものが類稀なる残虐性を秘めていたのだとしても――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!(お約束)

フュンフさんが応えてくれないのは悲しいですが
どうにかレジスタンス側も被害が最小限になるようにしたいですね…

というわけで
かもんっ!『ファントムシリカ』!
ルベライトビットを駆使します
ミニシリカ任せましたよっ!

私とファントムシリカで
セラフィナイトスピアを持って真正面から突撃
攻撃範囲内の敵機が戦闘不能になるように足を狙っていきます

そして小隊(?)の死角からルベライトビットで強襲
駆動部を狙い撃ちですね
ついでにシーヴァスリー側のキャバリアにも
牽制を撃ち込んでおきましょう
勝手なことするなーっていう威嚇ですね



 小国家『フィアレーゲン』の跡地はすでに国家としての体裁を保っていた頃の姿をなくしていた。
 見る影もない。
 あるのは廃墟だけだ。
 そして、その廃墟を隠れ蓑にしてレジスタンス側は未だ小国家『シーヴァスリー』に抵抗していた。
 いずれすり潰されるだけの存在であったが、それでも希望の旗印は煌めく。
『フュンフ・ラーズグリーズ』の駆る『超高性能キャバリア』がそれを為す。
 皮肉にも敵対していた小国家の『エース』が己たちの窮地を救うことに人々は思うところがあるだろう。

 けれど、『フュンフ・ラーズグリーズ』は救世主となる。
 かつての『フュンフ・エイル』と同じように。敵対する者には悪魔と。味方するものには救世主と呼ばれる。
 だが、それは偽りの希望であることを猟兵達は知る。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
 お約束のサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)。
 前口上もばっちりである。

 しかし、今のサージェは哀しみにくれていた。
 いや、ツッコミがないからとかそういう理由ではない。『フュンフ・ラーズグリーズ』がきっと己たちの言葉に答えてはくれないだろうということを理解しているからだ。
「かもんっ!『ファントムシリカ』!」
 虚空より出現した白と紫を基調としたキャバリアの左肩から射出されるは真紅のスフィア型ビット。
 それらは戦場を疾駆する『ジェネム2』へと殺到する。
「ミニシリカ任せましたっ!」
 セラフィナイトスピアを構えた『ファントムシリカ』がキャバリア部隊へと切り込む。

 赤いカラーリングの『ジェネム2』たちこそが自分たちの標的である。
 オブリビオンマシンではない。キャバリアだ。
 それも圧政を強いられる側。
 レジスタンス側のキャバリアを破壊しなければならない。そうしなければ、『フュンフ・ラーズグリーズ』は現れないからだ。
「どうにかレジスタンス側も被害が最小限になるようにしなければ……!」
「コイツ……! アンダーフレームばかりを!」
 煌めくビットとスピアの斬撃が『ジェネム2』の脚部を破壊する。

 それは加減をしていると『ジェネム2』のパイロットたちにも理解できるものであった。
 こちらを殺すつもりのない攻撃。
 それがなぜなのか彼らにはわからないだろう。
 第三勢力として介入してきたキャバリアたち。それらの目的が殲滅ではなく、こちらの足止め、もしくは戦力を削ぎ落とすだけの攻撃であることにレジスタンス側のパイロットたちは訝しんだ。
「お前達は、何が目的なんだ!」
 その言葉にサージェは答えない。

 身動きの取れない『ジェネム2』を狙う『シーヴァスリー』側のキャバリアにビットが牽制するように飛ぶ。
 百花繚乱(アサルトアサシン)たるビットの乱舞は、まるでレジスタンス側と『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を分断するかのようであった。
「勝手なことはしないでもらいましょうかっ!」
 人死にを出さない。
 それだけが猟兵達に共通するものであった。
 生命を奪い合いのが戦争である。

 けれど、猟兵たちにとって、これは戦争ではないのだ。
 駆動部だけを狙い打つ攻撃。
 それは確かに『ファントムシリカ』を消耗させるだけの戦い方であった。けれど、それでも猟兵としての信念が揺らぐことはない。
「いつの日にか、この日の戦いが必要なことだったっていえるように! 人は死なせません。キャバリアを捨ててもらいます!」
 サージェの機体より放たれる真紅のビットが乱舞し、戦場を分断していく。
 まるで無用な争いをこそ憎むのだと言うように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クゥ・ラファール
弱きを挫き、強きを助けるお仕事。
クゥには似合いの仕事だね。猟兵になる前もなってからも、汚れ仕事からは逃げられない。
いいさ、嫌ではないから。

機体には緑系のカラーリングを施して参戦。レジスタンスを掃討しよう。
格闘戦の間合いまで近づかれると面倒だから、距離を保って【レーザー射撃】モードにしたDualFaceで攻撃。
周辺状況はこまめに確認し【瞬間思考力】で確りと把握。
こっちを狙ってくる敵を優先的に狙うけど、特に該当の敵がいなければシーヴァスリー側と交戦している奴を横から撃つ。

敵に囲まれたらUC発動、包囲を抜けつつDualFaceを連射して可能な限りの撃破を試みよう。



 小国家『フィアレーゲン』の跡地に潜むレジスタンス。
 彼らはすでに滅びた小国家の再興を願っているわけではない。平穏な暮らしを求めているだけに過ぎない。
 その平穏を護るためにキャバリアという力が必要であるというのならば、それは因果なことであった。
 力があるから争乱が舞い込む。
 力なくば恭順を示すしかない。
 しかし、恭順を示したところで平穏が訪れる保証などない。強い力は、より強い力に打倒されるものである。

 これまでの人の歴史が示す通りであった。
 何処まで言っても人は人と争うものである。弱き者は、さらに虐げられる。
 それをクゥ・ラファール(Arrow Head・f36376)は何度も見てきた。当然の結果でしかなかった。
「弱きを挫き、強きを助けるお仕事。クゥには似合いの仕事だね」
 それは猟兵になる前も、なってからも変わらない運命であるように彼女には感じられたことだろう。
 汚れ仕事からは逃げられない。
 どうあっても、己の足を、手を、体を掴む薄汚れたものがある。

 振り払うこともできない。
 そうあるべきと造られた生命であるからか。それはわからない。けれど、クゥは頭を振るのだ。
「いいさ、嫌ではないから」
 クゥは己の専用キャバリアのカラーリングを緑に変えて戦場へと飛び込む。
 レジスタンス側と『シーヴァスリー』のキャバリアは同一の『ジェネム2』であるがカラリーングが違う。
 赤色のカラリーングがレジスタンス側。そして、緑色のカラリーングが『シーヴァスリー』側である。
 ゆえにクゥは緑色のカラリーングに変えた己のキャバリアと共に戦場を蹂躙する。

「格闘戦に持ち込まれるのは面倒」
 レーザー射撃モードに変更したキャバリアライフルを放ち、レジスタンス側のキャバリアを撃ち抜いていく。
 周辺の状況はすでに理解している。
 瞬間的に思考を加速させ、敵機の位置を把握する。
 どれだけレジスタンス側が戦い成れていたのだとしても、『シーヴァスリー』側の機体が十全に整備されているのだとしても。
 それでもクゥにとっては戦うべき相手でしかない。
「緑色……!『シーヴァスリー』側か、こいつ!」
 レジスタンス側の抵抗は激しい。

 士気が高いというところもあるのだろう。
 それは革命の旗印たる『超高性能キャバリア』が彼らの希望になっているからだ。
「――希望があるから、絶望がある」
 抱く希望が大きければ大きいほどに、失ったときの虚は広く、深いものとなるだろう。
 だからこそ、クゥは希望を抱かない。
 砕けた心は元には戻らないから。
 傷を追った心を癒やすことができるのは時間だけだ。その時間の間に人は容易く死ぬ。
 
「だから、今だけは激情のままに生きればいい」
 クゥの瞳がユーベルコードに輝く。
 オーバーブースト・マキシマイザー。
 凄まじい速度で戦場を飛翔しながらキャバリアの全搭載武装を同時に解き放つ。乱舞するように機体が飛び、戦場に在りし『ジェネム2』たちを次々と撃ち貫いていく。
 レジスタンス側も『シーヴァスリー』も関係ない。
 あるのは破壊だけだ。
 猟兵になった今でも己のスタンスは変わらない。

 託された仕事は確実に果たす。
 そのためだけにクゥは己の機体を駆る。
 彼女の瞳は未だ諦観と虚無に満たされている。その瞳が見る偽りの希望は燃え盛る炎のようでもあったかもしれない。
 キャバリア部隊を分断し、破壊し、そして現れる旗印たる希望の星。
 偽りの星であったのだとしても、そこに宿る力は『エース』本来の力であることを彼女は知るだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
いや彼奴何やってるんだ…!?
まぁいい
「ご主人サマ!此処は春の幼」
やらねーよ!……今はな

【戦闘知識・情報収集・視力】
戦場の状況と各陣営の状況
非戦闘員の位置の捕捉
機体の構造と搭乗席の位置も把握


UC発動
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体と竜達に付与
光学迷彩と水障壁で熱源隠蔽

【集団戦術・捕食】
レジスタンスもシーヴァスリーも等しく蹂躙開始
竜達
無差別に襲い掛かり機体の四肢を食いちぎり無力化
複数で確実に仕留めに掛かり
レジスタンス側の搭乗員は安全地帯まで運びつつ人命優先
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
機体を切断して武装は強奪
基本無力化

不殺徹底
どっちも殺させねーよ

生憎とそういう戦い方は何度かしてるんでな



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)にとって、『フュンフ・ラーズグリーズ』の行動は理解に苦しむものであった。
 小国家『グリプ5』より出奔し、荒野を彷徨い、かつての敵対国であった『フィアレーゲン』のレジスタンスに参加している。
 何がどうなればそうなるのかと思ったのだろう。
 それも無理なからぬことであった。
『フュンフ・ラーズグリーズ』は迷走しているのかもしれない。
 けれど、彼がレジスタンス側の旗印として、希望の星たる力を持つことだけは確かであったし、そこに迷いなどなかった。

 己の正義を信じる強さを持った『エース』ほど厄介な存在はないことをカシムは知っているだろう。
「まぁいい」
 自身が為さねばならぬことはたった一つである。
『ご主人サマ! 此処は春の幼』
「やらねーよ! ……今はな」
 カシムは己の機体より聞こえる言葉に頭を振る。すぐにやりたがるから困ったものであると思ったのかもしれないし、ただ生命を奪うだけの戦いではないことを理解しているからであろう。

 すでに戦場には敵味方が入り乱れている。
 レジスタンス側と『シーヴァスリー』側の機体は同一であるがカラーリングが違う。
 赤いカラーリングがレジスタンス側。
 緑のカラーリングが『シーヴァスリー』側。
 どちらもキャバリアであり、オブリビオンマシンではないのだ。そして、『シーヴァスリー』側の目的は非戦闘員ごとの虐殺である。
 アジトの掃討はただの表向きな口実に過ぎない。
 徹底的に敵対勢力を叩き潰す。
 後顧の憂いを断つという意味では当然のことだろう。けれど、それは悪手である。

「万物の根源よ…帝竜眼よ…文明を構成せしめし竜の力を示せ…!」
 帝竜眼「ダイウルゴス」(ブンメイヲシンリャクシユウゴウスルモノ)が煌き、小型ダイウルゴスが召喚される。
 それは百体以上に及び、キャバリアを見つけた瞬間蹂躙する怪物へと化す。
 カシムのユーベルコードによって召喚されたダイウルゴス達は獣と同じであった。無差別に襲いかかり、『ジェネム2』の四肢を食いちぎり無力化していく。
 複数で確実に仕留めに掛かる。

「こ、この化け物は……!?」
 四肢をもがれだるまのようになった機体をダイウルゴスたちは次々と戦域から離脱させるように運び出す。
 それはともすれば人命を優先させるかのような動きであったことだろう。
「どっちも殺させねーよ」
 レジスタンス側も『シーヴァスリー』側も、どちらも敵の機体が無力化されれば、必ずトドメを刺そうとするだろう。

 しかし、それは無益な殺生でしかない。
 だからこそ、カシムはそれを防ぐ。
 不殺を徹底するのならば、たった一滴の血ですら流してはならないからだ。
 生命を奪えば、贖うことができるのは生命を捧げることのみ。
「奪ったり、奪われたり、そういうのがもううんざりだっていうから、平穏を求めるんえでしょーが」
 殺さず。
 されど、殺されず。

 そのような戦い方をカシムは幾度となく経験してきている。
 ならばこそ、彼はこの戦いこそが無意味であると知らしめるように小型のダイウルゴスたちと共に戦場を蹂躙する。
 この戦いこそが滅ぼすべきものであると――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ふむ。フィアレーゲン……我の名を冠し我を称える民たちか。
ならば守ってやらねばなるまい!」
『フィア様、依頼内容聞いておられましたでしょうか!?』

なに、ゴーレムどもを倒せばいいのだろう?
えーと、赤いのと緑のがいるが……
我はキツネもタヌキもどっちも好きだから、片方を選ぶことはできんな。

「ええい、面倒だ!
ゴーレムは全部倒してしまえ!
【隕石召喚】!」
『えええ……
まあ、大規模破壊魔法では、どのみち乱戦状態にある敵味方の区別などできないでございますね……』

箒の上に仁王立ちして魔法を撃った我に、敵も光線の魔法で反撃してくるが、その程度、我に当たると思うなよ!
箒による高速飛行で避けてみせるとしよう!



「ふむ。『フィアレーゲン』……」
 それはかつて在りし小国家の名である。
 今は形骸化し、体裁を整えることもできず、滅びたと言っていい。すでに小国家『シーヴァスリー』によって占領され、今は捨て置かれた領域である。
 そこに圧政を強いる『シーヴァスリー』に抵抗するレジスタンスが点在しているのだ。
 これを『シーヴァスリー』はくじくためにキャバリア部隊を派遣している。
 無用な争いの芽を摘むためというのは表向きである。
 実体はただの殺戮。
 非戦闘員も何も関係ない。そこにいるというだけで殺戮の対象となるのだ。

「我の名を冠し我を称える民たちか。ならば守ってやらねばなるまい!」
 フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)は、くわっと瞳を見開き、宣言する。
 その隣で『フギン』が、えっ!? という風に振り返る。
 いつものことである。
『フィア様、お話聞いておられましたでしょうか!?』
 聞いてない。
 聞いてはいるかも知れないが、恐らく都合良い所しか聞いていない。

「なに、ゴーレムどもを倒せばいいのだろう? えーと、赤いのと緑のがいるが……」
 フィアが見下ろす戦場を疾駆するキャバリア『ジェネム2』。
 レジスタンス側が赤色のカラーリング。
『シーヴァスリー』側が緑のカラーリングである。
 どちらもキャバリアでありオブリビオンマシンではないところが今回の戦いにおいて重要な部分である。
 しかし、フィアは別なことを考えていた。

 そう、赤と緑。
 きつねとたぬき的な。そういうあれである。フィアはどっちも好きである。どちらかを選べと言われたら、両方と応える類である。
 欲張りさんなのである。
「ええい、面倒だ! ゴーレムは全部倒してしまえ!」
 え!?
 どうしてそうなるのかと『フギン』は真顔でフィアを見つめる。
 いや、確実に赤色のカラーリングの『ジェネム2』だけを打倒することはできるはずだ。
 それだけの実力を備えた猟兵のはずである。
 しかし、フィアは極度の面倒くさがりだし、ついでに言うなら、雑なのである。

「天空より来たれ、全てを破壊する一撃よ。隕石召喚(メテオストライク)!」
『えええ……』
『フギン』は己の主の良くも悪くも大味なところを知っている。
 まあ、どのみち、乱戦状態にある敵味方の識別をフィアにしろというのが、そもそも間違いであったのだ。
 箒の上に仁王立ちして極大魔法を放つフィア。

 天に煌めくユーベルコードの輝きをレジスタンスも『シーヴァスリー』側も見ただろう。
 天空より召喚された巨大隕石。
 それは魔力に寄って凄まじい速度で飛来し、その質量でもって戦場を叩き潰さんとしている。
 迎撃するように攻撃を加えても、焼け石に水である。
「その程度、我に当たると思うなよ!」
 高笑いしながら、フィアは箒と共に大空を飛ぶ。
 あ、当然のことながら低空飛行である。この世界、クロムキャバリアにおいては天に座す暴走衛星『殲禍炎剣』が高速飛翔体を撃ち落とさんと睨めつけているからだ。
『フィア様、これ以上高く飛ばないでくださいね! 他の世界とは勝手が違うのですから!』

 そんな『フギン』のツッコミだけが戦場の空に響き渡る。
 悲しいかな。
 フィアは放たれた隕石の一撃が齎す衝撃波を見下ろしながら、心配を他所に高笑いを続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
え…うわ面倒臭っ!
ま、いーけどさあ仕事だし仕事
というかフィアレーゲンの残党か…
うん…そのちょっとだけ関わったことがある身としては若干申し訳ない…
まあ、やり方考えるか


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
『メカニック』の知識でジェネム2の構造を把握して…
【Code:A.M】起動
全部一気に纏め斬り!…するのが楽なんだろうけど、今回はちょっと小細工
レジスタンス側のジェネム2はなるべく武装とメインカメラの無力化を狙って後で復帰しやすいようにしよう
おおっと手が滑った!
シーヴァスリー側のジェネム2も纏めてきってしまったー
そっちはウィルスも含めて再起不能なくらい内側をズタズタにしておこう



 小国家『フィアレーゲン』の跡地、そこに点在するレジスタンスと占領し己がものとした『シーヴァスリー』との戦い。
 その戦いに介入し、潜むオブリビオンマシンを打倒する。
 それが今回の猟兵に告げられた概要である。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は思わず、面倒臭っ! とつぶやいていた。
 彼女の言葉も尤もであったことだろう。

 なにせ、打倒しなければならないのはレジスタンス側のキャバリアなのだから。
 しかも『シーヴァスリー』側の機体もオブリビオンマシンではなくキャバリア。それも同型であり、違いは色の違いと仕様の違いしかない。
 猟兵が動く時、それはオブリビオンマシンありきである。
 だからこそ、玲は面倒だと思ったのだ。
 これではどちらに転んだとしても猟兵とオブリビオンマシンに思想を狂わされていない人々の間には不和というしこりが残る。
「ま、いーけどさあ仕事だし仕事」
 玲は『フィアレーゲン』の残党に対して、若干の申し訳無さを感じていた。

 彼女もまた『フィアレーゲン』におけるオブリビオンマシンとの戦いにおいて関わった身である。
 元首である『ツェーン』を打倒し、国家瓦解の要因の一因を担ったのもまた事実。
 この現状があるのは猟兵たちに原因があると言われれば、たしかにそのとおりであったからだ。
「とは言え、全部一気に纏め斬り!」
 にするのが何も考えなくて楽なのだろうけれど、と玲は模造神器を抜き払い、その蒼き刀身をきらめかせる。
 稲妻が走り、その刀身に宿るはユーベルコード、Code:A.M(コード・アンチマシーン)。

 やり方を考える。
 確かに『フィアレーゲン』のレジスタンスは圧政に抵抗する正義を持つ。
 しかし、逆に『シーヴァスリー』のキャバリア部隊もまた暴徒を鎮圧するという建前であれど、不穏分子の芽を摘む治安という正義を持っている。
 やり方はどちらも過ちであったのだとしても、それでも己達が掲げる正義に偽りがあるなどと彼らは思っていないだろう。
「おおっと手が滑った!」
 わざとらしい物言いであったが、玲の放つユーベルオードの雷刃は一瞬でレジスタンス側の『ジェネム2』のカメラアイと武装を叩き潰す。
 さらに伸びた斬撃は、『シーヴァスリー』側にまで及び、内部のフレームにまで電子回路及び制御プログラムをずたずたに引き裂くウィルスを流し込む。

 レジスタンス側は機体を破棄して逃げるだけであろうし、大した脅威にはならない。
 けれど、『シーヴァスリー』側だけは機体を復旧させて即座に無抵抗な非戦闘員ごと虐殺を観光する可能性がある。
「どちらにしたって、遺恨を残すやり方はさ……黒幕の思い通りってわけでしょ」
 玲はオブリビオンマシンの背後にいる黒幕の思惑をこれまで何度も目の当たりしてきた。
 人の心と善性を悪性へと導くやり方。
 どれだけ気高き『エース』であっても歪め、狂った破滅の道へと引きずり込むやり方。
 彼女は見てきたのだ。

 これもまた『エース』を己の側に引きずり込む方策の一つであると。
「だから思い通りにはさせない。遺恨も何もかも残さない。『エース』は死なせない。何もかも思い通りに行くと思ったら大間違いだってもう一度教えてあげるよ」
 煌めく雷刃が再び振り抜かれ、超常の存在を知らしめる。
 生身単身でキャバリアを打倒する人。
 己の存在こそが、キャバリアと力をイコールで結びつけることをさせない。

 キャバリアがあればと願う力求める者の心を人の営みにつなぎとめる楔であると玲は、その蒼い刀身の煌きでもって示すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
UC装備したロシナンテⅣ搭乗

本来、猟兵は部外者
グリモアによって導かれオブリビオン案件に介入する以上、それ以外の事象に深入りする事は越権行為です

このような手段しかとれぬ不甲斐なさ
…何が騎士道ですか

ミサイル、ガトリング、ビームキャノン
重火器の乱れ撃ちスナイパー射撃でレジスタンス側の機体を破壊
接近されればその動きを見切り、キックでサーベル叩き落し
手の重火器で無力化

無用な犠牲は出さぬようにしても…『シーヴァスリー』側はそうは思ってくれないでしょう
追撃など私の眼前で許しはしません

両軍へ積極的に無差別攻撃行い彼方を牽制
搭乗員脱出の機を作り出し

私の騎士道を貫く為等と…
これでは、無法者の振舞いではありませんか



 強襲・殲滅戦用武装強化ユニット(エクステンションパーツ・コンボウェポンユニット)を装備した『ロシナンテⅣ』が戦場を疾駆する。
 小国家『フィアレーゲン』の跡地は、すでに『シーヴァスリー』の占領下にあった。
 恭順を示した人々は全て隷属を強いられる。
 国を捨てた者たちは、他国に亡命する。
 そして、そのどちらでもない者たちは、未だ故国にありて抵抗を示す。

 それがレジスタンスの戦い方であり、いずれ滅びゆく定めであった。
 強大な力は、いつかさらなる強大な力によって滅びる。
 どれもが真理であり、避けようのない事実であったことだろう。トリテレイアは、そのことを記録している電脳を持つ。
「本来、猟兵は部外者。グリモアによって導かれ、オブリビオン案件に介入する以上、それ以外の事象に深入りすることは越権行為です」
 理解している。
 わかっているのだ。今から己が為すべき行いは、決して己が抱く騎士道に立ち返ることのないものであると。

 だが、このような手段しか取れぬ不甲斐なさをトリテレイアは甘んじて受け止めるしかない。
 それ以外のやり方を知らぬがゆえに。
 放たれるは単騎で軍勢を圧倒する火砲である。ミサイル、ガトリング、ビームキャノン。装備された火力の全てでもって、レジスタンス側の『ジェネム2』を事後藤破壊していく。
「この、ハリネズミみたいな火力……!」
「だが、近づけば!!」
 火線の中をくぐり抜けてくる赤い『ジェネム2』。それはレジスタンスであるがゆえに熟練された動きであった。

 膨大な火力を持つ機体。
 しかし、接近してしまえば近接戦闘には弱いと判断してのことだろう。それに懐に入りさえすれば、強大な火力と言えどむやみには放てない。
 火線で焼ききれた武装を捨て身軽になった『ジェネム2』が『ロシナンテⅣ』へと迫る。
「騎士としては不本意なのですが……!」
 振り抜かれるサーベルの一撃を『ロシナンテⅣ』の脚部が蹴り上げ、弾き飛ばし、迫る『ジェネム2』を無力化していく。

 しかし、その無力化した『ジェネム2』を狙うのが『シーヴァスリー』のキャバリアだ。
 彼らの目的はレジスタンスの一掃である。
 だからこそ、トリテレイアの介入は好都合でしかなかった。オブリビオンマシンではないことはひと目で分かる。
 これは打倒すべき者たちではないことも。
 だからこそ、トリテレイアは生命をこそ護る戦いをするしかない。
「追撃など私の眼前では許しはしません」
 トリテレイアのアイセンサーが煌めくと同時に『ロシナンテⅣ』のアイセンサーが同調するように輝く。

 火線を放つハリネズミの如き威容。
 それらが飛ぶ戦場にあって無益な殺生は起こることはない。
 搭乗員の脱出までの時間を稼ぐようにトリテレイアは両軍に対して火線を放つ。誰もが戦っている。
 己の正義のために。
 守りたいもののために。

 誰かが守りたいと思うものは、誰かの敵なのだ。
 誰かの敵は、誰かの守りたいと思うものでもある。
 だからこそ、闘いは終わらない。不理解、不寛容、歩みよることができない人の心の壁があるからこそ、戦争は不毛な結果にしかならないのだ。
「私の騎士道を貫く為等と……」
 トリテレイアは恥じた。
 己の行いこそ、まさにそれであると。
 戦いに介入し、生命を奪うことこそなかったのだとしても。

 己の戦いは、誰かに消耗を強いることであると。
 ただの無法者。
 そのふるまいと同じであるとトリテレイアは恥じる。だが、それでも救われる生命があるのならば、トリテレイアは戦うしかない。
 ウォーマシンであるからではない。
 己自身が定めた者のためにこそ、オブリビオンマシンを討つ。
 その歪めたる未来を正すために――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『H・O・P・E』

POW   :    Harmony=Origin
【高速】で敵の間合いに踏み込み、【爪による攻撃】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
SPD   :    Origin=Peaceful
【機械仕掛けの無数の羽根】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    Peaceful=Emotion
【操縦サポートAIが起動し、自動操縦モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「これ、は――」
『フュンフ・ラーズグリーズ』は救援要請を受けて『フィアレーゲン』の跡地へと急行していた。
 レジスタンスの戦いは常に散発的なものばかりである。
 大規模な攻勢は仕掛けられず、さりとて圧政側の攻勢を防がねばならない。
 ゆえに彼は『超高性能キャバリア』――『H・O・P・E』でもって、一つのレジスタンスの拠点を防衛してきたばかりであった。

 しかし、目の前の惨状は如何なるものか。
『シーヴァスリー』のキャバリア部隊とレジスタンス側のキャバリア部隊が交戦していたことは理解している。
 だが、目の前に介入しレジスタンス側のキャバリア部隊を壊滅させていたのは、己のよく知る者たちであった。
「なんで、なんで、貴方達がそんなことをするんです!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』はこれまで幾度となく猟兵達に助けられてきた。
 それは戦争をなくすためであったし、見果てぬ平和を勝ち取るためでもあった。
 だから彼らは己の味方をしてくれていたはずだった。

 だが、今は違う。
 決定的に違う。彼らは圧政を強いられるレジスタンス側を壊滅させている。『シーヴァスリー』側にも損害はでているが、それでも。
「ただ平穏に生きていたいだけなんですよ! あの人達は! それなのに、それすら許さないと言うから! 人が人を虐げるというから! 僕は!」
 機体から放出した羽の如きビットが次々と損壊した『ジェネム2』へと突き立てられ、結晶化させる。
 結晶化したキャバリアが砕けた瞬間、其処に在ったのは損壊する前の『ジェネム2』であった。
「――行ってください。此処は僕が抑える。あの人達は僕の――……」

『フュンフ・ラーズグリーズ』の瞳に憎しみはなかった。
 狂わされてもいなかった。
 在るのは、ただ一つ。
 己の正義と猟兵の正義。
 そのどちらかが今ここに潰えるという事実のみ。
 回復した『ジェネム2』に乗ってレジスタンスたちが戦場から撤退していく様を見送り、『フュンフ・ラーズグリーズ』は猟兵たちと対峙する。
 もはや、避けれぬ戦いであった。

 だが、猟兵達は知っている。
 今は狂わされていなくても、必ず狂わされる。なぜならば、今彼が乗っているのはキャバリアではなくオブリビオンマシンであるからだ。
「キャバリアさえあれば、貴方達と言えど! キャバリアさえあれば僕だってやれるんですよ……!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の意志は変わらない。
 そこに正義が在るがゆえに。

「僕は、『エース』だ――!」
 迫る重圧はまごうことなき『エース』。
 かつて悪魔とも救世主とも呼ばれた『フュンフ・エイル』の再来――。
ユーリー・ザルティア
【心境】
「はあ、正直戦いたくない…なんて言えないわね。」
ただ、ちょーっと相変わらず視野が狭いわね。
正義なんて立場が変われば向きも変わる。
ちょっとエースというのにはこの狭さは危ういわね。
だからオブビリオンマシンに利用されちゃうのかしら?

【行動】
言葉は…説得はあえて言わない。
ただ、ボクの正義をキャバリアの動きで見せる!
後ろめたいものは何一つない…だからボクの動きを見ろー
レスヴァントの『操縦』で攻撃を『見切り』回避しつつ、攻撃の隙を『瞬間思考力』で読み切ってアストライアの『制圧射撃』の『カウンター』を叩き込む
この隙に『ショックアンカー』を射出して命中個所に電圧を流して爆破する。



 漲る重圧は、機体を震わせる。
『超高性能キャバリア』と謳われた機体の性能は言うまでもなかった。『H・O・P・E』。それは確かに『フュンフ・ラーズグリーズ』の『エース』としての技量を極限まで追従するに足る性能を持っていると言ってもいい。
「加減はしませんよ。できるわけがないと、僕は知っている」
『フュンフ・ラーズグリーズ』に最早迷いはない。
 けれど、それは同時に視野が狭くなっていると言ってもいいものだった。

 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『レスヴァント』の中で思わず呟く。
「はあ、正直戦いたくない……なんて言えないわね」
 そう、そんなことをいえるわけがない。
 どう言葉を弄しようとも、彼の中に正義があるのならば、それは止めようのないことであった。
 どれだけ叫んだところで交錯した糸は解くしかない。
 だからこそ、ユーリーは『レスヴァント』を駆り、説得ではなく己の正義を示すのだ。

「ただ、ちょーっと相変わらず視野が狭いわね。正義なんて立場が変われば向きも変わる」
『エース』と言うには、この視野の狭さは危うい。
 その力をたやすく誰かに利用されてしまうから。だからこそ、オブリビオンマシンは彼を狙うのかも知れない。
「応じるつもりがないのなら!」
 迫る『フュンフ・ラーズグリーズ』の踏み込みは相変わらず速い。
 模擬戦で味わった速度を更に越えて来ている。
 あのときとは全く違う機体。
 性能の差もあるのだろう。けれど、それでも尋常ではない。

「貴方達に僕は救われたというのに! 何をしてるんです!」
 放たれる爪の一撃が『レスヴァント』の腕部をえぐる。
 速い。
 躱すという選択肢すら許さぬ連撃。迫る二撃目が肩部装甲を剥ぎ取るように放たれる。
 見切っている。
 致命傷を受けぬように見切ることが出来たとしても、機体の損壊は免れぬほどの連撃。
 正に死を連想させる動き。

「――語る言葉はないよ。説教も、説得も必要ない。ただ、ボクの正義を」
 ユーリーは己の思考の中で考える。
 あのオブリビオンマシンの爪による死の四連撃は全て受けてしまえば、『レスヴァント』と言えど機能を停止されてしまう。
 そうなってしまえば、こちらの敗北は必至。
 だからこそ、四撃目を受けてはならない。迫る三撃目。
 それをユーリーは一瞬の判断でアサルトライフルの銃口にぶつける。放たれる一撃が三撃目を繰り出していた『H・O・P・E』の右腕を砕き、さらに四撃目を放とうとしていた左腕さえも砕く。

「ボクの動きを見ろ――!」
 叫ぶ。
 言葉ではない。己のキャバリアの動きを見て、やましいところのないことを、後ろめたいところがないことを示す。
「これで!」
「――させるかっ!」
 砕かれた腕部が結晶化している。再生するつもりなのだ。だが、それ以上に『フュンフ・ラーズグリーズ』はオブリビオンマシンの頭部を『レスヴァント』の頭部に叩きつける。
 キャバリアでの頭突き。
 機体が傾ぐ。互いに伝わる衝撃は凄まじいものであっただろう。

 だが、ユーリーはすでに一手を打ち込んでいる。
 ひしゃげた『レスヴァント』のアイセンサーが煌き、ショックアンカーが放たれる。
 それは高圧電流を『H・O・P・E』に流し込み、その機体のあちこちを焼き切らせる。
 機体はすぐに結晶化し、再生するだろう。
 けれど、消耗はさせられる。
「この、程度で、僕が!」
「ちゃんと見ろ! ボクの、みんなのすることを! 君が、君の正義が間違っているんじゃないよ!」
 流れ込む電流が機体の駆動系を焼き切り続ける。

 ユーリーは『レスヴァント』を突き動かす。
 今動かなければならない。今やらなければならない。己がされたように、『レスヴァント』のひしゃげた頭部でもって『H・O・P・E』の頭部を叩き潰す。
 ぐらりと機体が揺らぎ、倒れ込むのをユーリーは見下ろす。
「今君が思っていること、今君がやろうとしていること。一度は立ち止まってみなよ」
 茹だった頭で熱狂に浮かされるというのなら。
 今こそ、自分は冷水を浴びせなければならない。言葉なく。そして、己の動きでもって、ユーリーは『フュンフ・ラーズグリーズ』の再起を望むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
希望の星――『H.O.P.E.』ね。それがオブリビオンマシンだなんて、皮肉なこと。

「式神使い」で『GPD-331迦利』顕現。
「レーザー射撃」の「弾幕」で『H.O.P.E.』の動きを牽制する。

きっとコクピットのフュンフはいい面構えになってるんでしょうね。
今ここで彼を確保したとして、国内避難民の『グリプ5』への護衛は彼を措いてない。
今更正義が同行問答する気は無いわ。

彼も『迦利』の動き方や決め技はよく知ってる。だから「オーラ防御」で機体前方衝角を覆い吶喊させる軌道を取れば、受け止めに動く。もちろん、これで決められるなら決めるつもりよ。
でも本命はこっち!
九天応元雷声普化天尊、疾!
電気系統、無事に済む?



 焼き切られた回路は機体の全体に及ぶ。
 しかし、機体の内部を覆う結晶は即座に寸断された回路、そして砕かれた頭部さえも再生させ『H・O・P・E』はレジスタンス側の旗印として、また同時に希望の星としての威容を取り戻す。
「僕は『エース』だ。そのとおりにやるだけだ!『フュンフ・エイル』に出来て――」
 アイセンサーが煌めく。
 その重圧、その姿、その気迫。
 どれもが『エース』と呼ぶに相応しいものであった。

 けれど、それが偽りであることを知るのは猟兵だけである。
 目の前の『超高性能キャバリア』はオブリビオンマシンだ。今は破滅的な思想に呑まれていなくても、必ず飲み込まれる。
 破滅への道へと戦火を徒に広げるだけの存在へと成り果てる。
 その前に猟兵は止めなければならない。
「――僕に出来ないなんてこと、あるものか!」
 疾走る機体へと突撃する逆三角形の機体。
 放たれるレーザーの弾幕を『H・O・P・E』は牽制であると理解した上で大仰に躱すことなく、レーザーの弾幕、その間隙を縫うようにして迫る。

「無人機!」
「希望の星――『H・O・P・E』ね。それがオブリビオンマシンだなんて、皮肉なこと」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、式神でもありキャバリアでもある『GPD-331迦利』を操り『フュンフ・ラーズグリーズ』へと迫る。
「きっとコクピットの『フュンフ』はいい面構えになってるんでしょうね」
 だが、ゆかりは考える。
 今此処で彼を打倒して確保したとしても、レジスタンスの人間を『グリプ5』へと護衛することはできない。
 彼らを護ることができるのは『フュンフ・ラーズグリーズ』をおいて他にはいないのだ。

 今更だ。
 正義がどうであるとか、そんな問答は意味を為さない。
 どちらにも正義がある。
 どちらも正しいからこそ、衝突する。わかりきったことだ。
「何度見たかわからない攻撃で僕を止められると思うな!」
 迫る絶死の爪。
 結晶が砕け、その内部から修復された腕部が振るわれる。凄まじい連撃。死の四連撃は違わず『GPD-331迦利』を砕くだろう。
 放たれた爪の一撃がオーラを重ねた衝角と激突して火花を散らす。

 オーラが引き裂かれる。
 二撃目。
 三撃目。
 理解されているのだ。こちらのキャバリアが無人機であり、そして決めるための技が如何なるものであるのかも。
 だからこそ、受け止める。あの突撃を受け止めなければ、機動力で勝る機体に追いつく術はない。
「受け止めたわね……これで決められるのなら、決めるつもりであったけれど――」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。

 九天応元雷声普化天尊玉秘宝経(キュウテンオウゲンライセイフカテンソンギョクヒホウキョウ )。
 それは視界を阻害するほどの激烈なる落雷。
 超常の人たる猟兵が引き起こす事のできる天雷の一撃。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
 放たれる一撃が『H・O・P・E』へと降り注がれるようにして打ち込まれる。

 電気系統、あらゆる回路が焼き切られるだろう。
 視界を埋め尽くす紫電。
 その中でゆかりは見ただろう。結晶が機体を多い、その中から再び動き出す『H・O・P・E』の姿を。
 まさしくあれが『エース』の器。
 大成したことが、オブリビオンマシンによってであることが皮肉でしかない。
「まだ動く……!」
「僕の生命の使い道なんて決まっている……! できないことなんてあるものか! 貴方達が僕の前に立ちふさがるというのなら、それを押し通らせてもらう! みんなが望んだ平穏のために」

「そうね。みんなが望む平穏。それが掴み取れるのならば、たしかにそうなのでしょう。けれど、大きな力は大きな破滅を呼び込む」
 いつか必ず歪み果てる時が来る。
 だからこそ、力持つ者には責任がつきまとう。
 全てを救うことができないのはわかりきっていることだ。誰かを助ければ、誰かが死ぬ。
 悲しく、辛いことばかりである。
 だが、それでも人の営みが続くのであればこそ、それを糧にしなければならないのだ。

 降り注ぐ雷が『フュンフ・ラーズグリーズ』の機体を貫き、結晶化した機体を再び打ち据えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クゥ・ラファール
この動き…成程、これが『エース』か。
でも、その希望が絶望に変わる前に潰すこと。それがクゥの仕事。

引き続き機体搭乗し参戦。
敵が近接攻撃を仕掛けてくる動きを【瞬間思考力】でぎりぎり見切れる間合いを保ち、DualFaceを実弾モードで撃って攻撃。
この間合いなら、羽を飛ばすにも注意が要る筈。

どうやら猟兵は――世界の味方であって人類の味方とは限らないらしい。
つまり今この瞬間、あなたは世界の敵、ということ。

敵がUC発動するなら此方も発動。
LooSterで放つミサイルを囮にして、機動速度をミサイル以下に落とす。
敵がミサイルに気を取られている処に、攻撃を撃ち込もう。

小さな存在なんだよ、クゥも、あなたも。



 機体を穿つ雷がオブリビオンマシン『H・O・P・E』を焼く。
 しかし、結晶が機体を覆い砕けた後、再び姿を表した機体は十全なる状態であった。傷を追っても結晶化し再生する力。
 それが『超高性能キャバリア』としての力であるのだろう。
「ハァッ! ハァッ! ……ッ!!」
 それでも『フュンフ・ラーズグリーズ』は機体を制御せしめる。
 凄まじい機動。
 並のパイロットであれば、すでに消耗しきっているはずだ。だというのに、『フュンフ・ラーズグリーズ』は未だ戦場を疾駆する。

 己に生命の値打ちはなかったはずである。
 だが、それでも彼は戦う。己を救ってくれた者に報いるために。かつては敵であり、そして今は救うべき存在。
 争いが人の営みを壊すというのであれば、争いから護るのが己の『エース』としての役割であるというようにコクピットで咆哮する。
『H・O・P・E』のアイセンサーが煌き、さらなる速度を持って己の道を阻む猟兵へとと迫る。
「この動き……成程、これが『エース』か」
 クゥ・ラファール(Arrow Head・f36376)は己のキャバリアを駆り、戦場を席巻するかの如き超性能を発揮する『エース』たる『フュンフ・ラーズグリーズ』の技量を知る。

 確かに『エース』と呼ばれるべき技量である。
 これまで彼が如何なる戦いを経てきたのかをクゥは知らない。
 希望と呼ばれるに値する力であるとも思う。けれど、この希望が絶望に変わる前に潰すことこそが、己の仕事であると理解している。
「――ッ!」
 迫る『H・O・P・E』の爪。
 眼前に迫る、その切っ先の速度は凄まじいものであった。瞬間思考でギリギリをと思った瞬間、キャバリアの装甲が引き裂かれる。
 掠めた、と思った瞬間さらなる追撃が加えられる。

 間合いを保つようにキャバリアライフルから実弾が飛び出すが、そのことごとくを『H・O・P・E』は弾く。
「退いてもらう! どれだけ貴方達が強かろうが!」
 尋常ならざる技量。
 放たれる弾丸を空中で、それもキャバリアの近接武装でもって弾くなど、クゥにとっては理解し難きものであった。
 この間合であれば機械羽を飛ばすことがないであろうと思っていたが、とんでもなかった。迫る爪の切っ先を躱したと思った瞬間に装甲がえぐれていく。

「どうやら猟兵は――世界の味方であって人類の味方とは限らないらしい」
 此度の戦いがそうであるように。
 人の希望はに偽りも真もない。人は信じたいものだけを信じる。見たいものだけを見る。聞きたいものだけを聞く。
 だからこそ、齟齬が生まれ、人は争う。
 空に浮かぶ暴走衛星『殲禍炎剣』があろうとなかろうと、人の争いは決して止まらないのかもしれない。

 それが世界を滅ぼすか否かで判断される時、猟兵はやってくるのだ。
「つまり今この瞬間、貴方は世界の敵、ということ」
 クゥは淡々としていた。
 どれだけ言葉を弄しようとも、目の前の存在がオブリビオンマシンであることに変わりはない。
 恐るべき速度で迫るオブリビオンマシンの攻撃を躱す。
『フュンフ・ラーズグリーズ』が、もしも今オブリビオンマシンの持つユーベルコードに寄って理性をなくし、自動操縦でなかったのならば、破れていたのはクゥであった。

 けれど、今のクゥの瞳に輝くは機人の理(マンマシーン)。
「誰の敵だろうと関係ない! 僕が救うのは、救わなければならないのは! 人の営みを、平穏に過ごしたいと願う人達だ!」
「その感情、理解できない訳ではないけど。残念ながら、クゥには響かないんだよ」
 煌めくユーベルコードのままにクゥのキャバリアの動きが変わる。
 肩部に装備されたマイクロミサイルランチャーが一斉射され、『H・O・P・E』を襲う。
 そのミサイルの尽くを躱し、時に叩き落としながらオブリビオンマシンは尋常ならざる機動で持って爆風の中からクゥを狙う。

 だが、それは囮でしかなかった。
 クゥは爆風の中から飛び出す『H・O・P・E』を見定める。
 すでに照準は在っている。
 後は引き金を引くだけ。どれだけ強大な存在であろうと、『エース』であろうと、世界にとっては、唯一つの存在でしかない。
 だからこそ、クゥは呟くように言うのだ。
 きっと届かない言葉であったのかも知れないけれど。

「小さな存在なんだよ、クゥも、あなたも」
 放たれる弾丸がオブリビオンマシンの頭部を打ち抜き砕く。
 そう、それでも思い出して欲しいと願うのだ。
 世界を背負うほど人の存在は大きくはない。一人では背負うことなどできないのだ。
 一人で背負おうとすれば、必ず潰れてしまう。
 それを願う存在もいるだろう。
『エース』の意味。
 人々の希望であるのならば、きっと一人で輝くものではないはずだから。
 孤高の人であったとしても、世界なくば存在できない。
 ただ一人の存在に満ちるるのは、諦観と虚無。クゥは静かにコクピットの中で息を吐き出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ほう、キツネとタヌキの次は鳥か――。
我、チキン南蛮も好物だぞ」
『フィア様、まったくお話聞いてませんでしたね?』

何を言うか、フギンよ。
あの鳥から感じるプレッシャー、並のものではない。

『おお、フィア様がエース、ヒュンフ・エイル殿の存在を把握しておられました!』
「そう、奴こそ鳥の中の鳥!
キングオブチキン南蛮となるに相応しき存在よ!」
『やっぱり食べる気なのでございますか……』

だが、あの硬そうな羽や身体は、普通の火力ではこんがり焼くことはできまい。
鉄板やBBQたちがいないのは残念だが、ここは我の力の見せ所よ!

【竜滅陣】でこんがり美味しく焼き上がるがよいわっ!
迎撃で飛んできた羽ごと燃やし尽くしてくれる!



 レジスタンスのキャバリアは尽くが猟兵に寄って壊滅させられた。
 破壊された機体が結晶化され、再生される。
 それがレジスタンス側が擁する『超高性能キャバリア』にしてオブリビオンマシン『
H・O・P・E』であった。
 それを駆るのは『フュンフ・ラーズグリーズ』。
 頭部を撃ち抜かれ、機体の破片が飛び散る。だが、即座に頭部が在った場所に結晶が集まり、砕けては再生される。

 希望の旗印たる超性能。
 それは搭乗者の生命を削るものであったが、『フュンフ・ラーズグリーズ』は構わなかった。
「僕が『エース』になるんだ……! 僕が『エース』なのだから!」
 未だオブリビオンマシンに歪められていないとは言え、その心にある正義は未だ陰りを見せることはない。
 あるのは正義のみ。
 人の営み、その平穏を護ると決めた少年の瞳が煌めく。

「ほう、キツネとタヌキの次は鳥か――我、チキン南蛮も好物だぞ」
『フィア様、まったくお話聞いてませんでしたね?』
 フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)と使い魔の『フギン』はいつもどおりであった。
 逼迫した事態であったけれど、ペースを崩さぬということは幸いであったことだろう。
 まあ、キツネとタヌキの話もそうであるが、基本的にフィアの舌の好みが知れるところであった。
 味付けの濃いのが好きなのだな、となんとなく理解できる。
 理解できたところで、戦うことに代わりはない。

「何を言うか、『フギン』よ。あの鳥から感じるプレッシャー、並のものではない」
 フィアは『H・O・P・E』を見据える。
『エース』という核を得て、その力は尋常ならざるものとなっている。
 周囲を飛ぶ機械羽はあらゆるものを切り裂くだろう。
 あ、鳥ってもしかして、腕部に備えられた機械羽をして、そう表現したものであるのだろうか。いやはや。食欲すごい。
『おお、フィア様が『エース』の存在を把握しておられました!』
『フギン』は感激しきりである。

 これまで彼女の主は事ある毎に食欲直結の頭で考えていたがゆえに名前を覚えていなかった。
 いやまじで。
 なので、『フギン』は目の前のオブリビオンマシンの威容もさることながら、それを駆る『エース』の存在を認識しているフィアに感激した。
「そう、奴こそ鳥の中の鳥! キングオブチキン南蛮となるに相応しき存在よ!」
『やっぱり食べる気なのでございますか……』
 えぇ……。
 ドン引きである。どう考えたって、生体パーツ的なものがないオブリビオンマシンである。
 あれを食べたいと思うフィアの思考はマジでどうなっているのだと我が主のことながら『フギン』はおののく。

「だが、あの硬そうな羽や体は普通の火力ではこんがり焼くことはできまい。鉄板やBBQたちがいないのは残念だが、此処は我の力の見せ所よ!」
 フィアの瞳がユーベルコードに輝く。
 正直に言えば、彼女の食欲は内包する魔力にも直結するのかもしれない。むしろ、食欲が絡まないのならば、彼女のやる気はガクンと落ちるだろう。
 絶対食べる所なんてないのだが、『フギン』は黙っていた。
 黙っていた方が、戦いに有利であることもあるだろう。

「漆黒の魔女の名に於いて、我が前に立ち塞がりし全てを消し去ろう。竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)でこんがり美味しく焼き上がるがよいわっ!」
 迎撃に飛ぶ機械羽ごと飲み込むドラゴンすら消し飛ばす大規模破壊魔法が迸る。
 その輝きの中に『H・O・P・E』は飲み込まれる。
 光の奔流。
 それはあまりにも理不尽な光であったことだろう。

 フィアという猟兵が理不尽の塊であった。
 機械すら食べようとする食欲。
 その食欲に応じた魔力。
 あらゆる障害を破壊して突き進む意志は、正義と悪というものに収まらぬ破壊の力となって、オブリビオンマシンの思惑すら破壊するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
(試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に騎乗)
…うーん…まあ…焦りすぎだね…もっと他人に頼っても良いのに…

…さて…キャバリアでもなんでも使い様…と言うところを見せて差し上げよう…
…現影投射術式【ファンタズマゴリア】を起動…超高速で飛翔する小さな竜の幻影を多数出現させて囮にしようか…
…そのAIは速く動く物を優先して狙う…だったね…
…そしてこちらの攻撃に速度は必要ない…【縋り弾ける幽か影】を発動…ステルス型自爆ガジェットを多数召喚…
…幻影に引きつけられているH・O・P・Eに放って自爆させるとしようか…
…耐久力が強化されるらしいから…爆発の威力は強めにセットしておこう…
…今度はちゃんと周りと相談しようね…



 極大なる光がオブリビオンマシン『H・O・P・E』を飲み込む。
 その光は装甲の尽くを溶解させ、フレームさえもひしゃげさせた。けれど、即座に発動する結晶が機体を覆っていく。
 搭乗者の生命を削る奇跡の如き力。
「――ッ! まだ、だ!」
 結晶が砕けた後に現れるのは、十全たる状態の『H・O・P・E』。
 その機体は、未だ存在し続ける。
『超高性能キャバリア』と呼ばれた機体の力は、『エース』である『フュンフ・ラーズグリーズ』を持って完成される。

 憎しみがあるわけではない。 
 今は敵対しているのだとしても、彼の心には正義がある。オブリビオンマシンに乗っていたとしても、未だ心は歪められていない。
 破滅に至る道を歩んでいるのだとしても、それでも未だ彼は純然たる『エース』であったのだ。
「人の平穏は人が守らないといけないんですよ! 貴方達が、彼らの平穏を壊すというのなら!」
 自分がそれを阻むのだと『H・O・P・E』のアイセンサーが煌めく。

「……うーん……まあ……焦り過ぎだね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は小さく呟く。
 試作型術式騎兵『ツィルニトラ』に騎乗し、そのコクピットで彼女は他人に頼ることも覚えてほしいと願った。
 しかし、彼にとってそれは難しいことであろう。
 自身を、自身の中に流れる血統を憎む敵がいる。己を追い込むためだけに己の周囲を危険に晒すことを厭わぬ敵がいる。
 そのことを考えれば、彼のように追い込まれてしまうのも無理なからぬことであった。

「その間に人の生命が失われてしまうかもしれないんですよ!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』が迫る。
 踏み込みが速い。これまで見てきた機体を手繰る技術もそうであるが、機体性能と彼の願いが噛み合っていることがオブリビオンマシンの性能を底上げしている。
 振るわれる爪の切っ先は突如として現れた無数の幻影を貫いて止まる。
 周囲を高速で飛翔する竜。
 それがメンカルの生み出した現影投射術式『ファンタズマゴリア』による竜の幻影であった。
 高速で動く者に『H・O・P・E』は反応する。

 それが幻影であり、実体を保たぬものであったとしても、アイセンサーに感知される以上、それを追わざるを得ない。
 そういう機体なのだ。
 下手に自動操縦に切り替わったのが仇となる。
「そのAIは速く動くものを優先して狙う……だったね」
 メンカルの操縦技術は、たしかに『フュンフ・ラーズグリーズ』に及ばないだろう。機体性能の差もある。
 だが、それ以上にメンカルには智慧がある。
 如何なる力も知の前に屈するしかない。如何にあらゆる力を凌駕するものがあるのだとしても。

「それを使う者次第……なんでも使い様という所……見せて差し上げるよ」
 目の前のオブリビオンマシンはレジスタンス側にとっての希望の星。
 平穏を夢見る者たちにとっての旗印なのだろう。
 しかし、それが偽りの星であることを猟兵は知っている。そして、それを理解できるのもまた猟兵だけである。
 己達がやっていることは、希望を堕す行いにしか映らぬだろう。
『フュンフ・ラーズグリーズ』が理解できないのもまた無理なからぬ。
 ゆえにメンカルは多くを語らない。

「忍び寄る破滅よ、潜め、追え。汝は炸裂、汝は砕破。魔女が望むは寄り添い爆ぜる破の僕」
 ただ討ち滅ぼすのみ。
 オブリビオンマシンが必ず世界に破滅を齎すというのであれば、世界の悲鳴を聞き届ける猟兵がすべきことはオブリビオンマシンの破壊のみ。
 縋り弾ける幽か影(ステルス・ボム)。
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝き、自爆機能を備えたガジェットが飛ぶ。

 それはオブリビオンマシンのセンサーにも感知されぬ隠密性でもって『H・O・P・E』の機体に張り付く。
「……今度はちゃんと周りと相談しようね……」
 君は一人ではないのだからとメンカルは呟く。
 そう、例えどれだけ悪意が彼の周囲に害を齎すのだとしても、一人では何もできない。
 不理解と不寛容が、争いを生むのならば、人は一人では生きてはいけない。
 強くなければ生きていくことができないのだとしても、優しくなければ生きる資格すらない。

「――何を!」
 それを知らしめるように張り付いたガジェットたちが爆発を引き起こし、オブリビオンマシンの機体を砕くように破壊していく。
 腕部が吹き飛び、脚部がひしゃげ落ちる。
 強さと優しさ。
 その二つをもうすでに『フュンフ・ラーズグリーズ』は持っている。メンカルはそれを知っている。
 だから、いくらでもやり直せるとうなずくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
ようフュンフ
久しぶりだな

何で僕らがこんなことをするか?
理由は極めて単純です
そしてお前がそれが分からないとは言わせねーぞ?
分かっている筈だ
お前が乗っている物が何かを
既に一度乗っているんだからな?

何より…そいつに乗ったお前の姉妹がどうなったか知らねーわけねーよな?

どうせ降りろと言っても聞かねーだろ
だから…こうするしかねーよな

つくづく希望とは悪趣味な名前だ

まるで絶望へと落とす為の装置ですよそれは


嫌ですね
こうしたぶっ殺し合いってのは

【情報収集・視力・戦闘知識】
過去の対戦と今の動きと機体自体の構造を把握
こっちも把握されてるよな…はぁ…
UC発動
【弾幕・スナイパー・武器受け】
通常の弾丸を乱射しての猛攻
同時に敵の羽を迎撃
【空中戦・属性攻撃・迷彩・念動力】
…分かってますよ
此方が見切られるのは
だから…こうします

光属性の閃光
同時に念動力で機体の動きを止

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
機体を鎌剣で切り刻む

【医術】
常にフュンフの状態を観察
構造を見据え切り刻めばそのままフュンフを機体から強奪し
機体を始末!



 四肢が砕けたオブリビオンマシン『H・O・P・E』が大地にかく座する。
 しかし、砕けた四肢を補うようにして結晶が集まっていく。それこそが『超高性能キャバリア』たる所以。
 搭乗者の命を削る機能。
 集まった結晶が砕けた瞬間、そこにあるのは元あった『H・O・P・E』の四肢であった。
 衝撃波が迸る。
 機体が弾けるようにして戦場を駆け抜けたのだと猟兵達は理解しただろう。
「なんでこんなに! 僕はただ、彼らに平穏に生きてほしかっただけなのに! この力があれば、僕は『エース』になれると思っていたのに、なんで!」
 叫ぶ『フュンフ・ラーズグリーズ』の言葉と共に射出される機械羽。

 それらは乱舞するように、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の駆る『メルクリウス』へと迫る。
「よう『フュンフ』久しぶりだな」
 カシムはコクピットの中で呟く。
 目の前の相手は見知った相手であった。これまで何度も共に戦ったし、窮地を救ったこともある。
 だからこそ、理解できないだろう。
 いや、できるはずなのだ。
 己達がなぜこんなことをするのか。理由は極めて単純だ。

「お前がそれをわらかないとは言わせねーぞ?」
 乱舞する機械羽。
 それは全方位から襲い来る刃と同じである。
 神速を誇る『メルクリウス』であるがゆえに、全方位からの同時攻撃。こんな芸当ができるのは、こちらの戦術も、性能も知られているからである。
 油断もない。
 満身もない。
 目の前に迫るはまごうことなき『エース』。
「お前が乗っているものが何かを。既に一度乗っているんだからな? 何より……そいつに乗ったお前の姉妹がどうなったか知らねーわけねーよな?」
「わからないですよ! みんな、僕を子供扱いして!」

 オブリビオンマシンの存在を感知できるのは猟兵だけだ。
 猟兵ではない存在にオブリビオンマシンは感知できない。『フュンフ・ラーズグリーズ』は正しく猟兵ではない。だからこそ、特異。
 今はまだ破滅的な思想に狂わされていないにしても、完全に『H・O・P・E』を制御している。
 迫る機械羽を前にカシムの瞳がユーベルコードに輝く。
「どうせ降りろと言っても聞かねーだろ。だから……こうするしかねーよな」
 神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)。
 それこそが『メルクリウス』の真骨頂である。もとより速度に優れた機体。それが『メルクリウス』である。
 その速度をさらに三倍にまで上げる。

 そのユーベルコードの煌きを受けて、全方位から迫る機械羽の尽くをカシムは躱す。
 光の弾を放ち、乱舞する機械羽を打ち落とし、己の回避機動を確保する。さらに光学迷彩に寄って機体を隠す。
「どれだけ姿を隠すのだとしても!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』は瞬間的に理解していた。
 光弾の乱舞による目隠しに紛れて、機体を隠すカシムのやり方を。そして、必ず全方位の攻撃を躱すために光弾の軌跡をカシムが走り抜けることを。

「――ッ、分かってますよ。此方が見切られるのは」
 カシムは理解していた。
『フュンフ・ラーズグリーズ』であれば、この攻撃の軌跡を読み切るだろうと。瞬時に判断し、己に追いすがるであろうと。
 煌めく光弾の軌跡の中、『メルクリウス』と『H・O・P・E』のアイセンサーが交錯する。
『希望』の名を冠するキャバリア。
 つくづく悪趣味な名前であるとカシムは思ったことだろう。まるで絶望へと落とす為の装置でしかない。

 閃光がほとばしり、視界を埋め尽くす。
 いわゆるフラッシュグレネード。閃光は彼らの視界を埋め尽くし、『H・O・P・E』の動きを止める。
 一度希望の星として掲げられた、それが破滅を齎す。
 オブリビオンマシンの、さらに黒幕の考えそうなことである。黒幕の姿を見たことはない。
 けれど、わかるのだ。
 これまでの争乱の最中に見え隠れする策動。
 そこに介在する意志は悪意に満ちていた。悪意しか無いと言ってもいい。
「だから……こうします」
 カシムの瞳が輝く。
 敵の動きが速いのならば、そして、己の機動コースを見切っているのならば。
 己の念動力で止める。
 渾身の念動力が『H・O・P・E』の機体を雁字搦めに掴み上げる。

「機体が、動かないッ!? この力は!」
「わりーな、『フュンフ』。その機体は壊す。いずれ必ず絶望の星になる。その時お前がこれに乗っていたのなら、それは俺達の敗北そのものだからだ」
 念動力で軋む機体。
 放たれるは鎌剣の一閃。

 それはオブリビオンマシンを切り裂き、絶望の星にならんとする希望の星を偽りと断じる一撃。
 どれだけオブリビオンマシンが人の心を歪めるのだとしても、世界の破滅を願うのだとしても、それを許さぬ一撃があることを知らしめるようにカシムは『H・O・P・E』を一閃するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
…騎士として、出来れば其方に肩入れしたくはあるのです

いえ、女々しい言い訳ですね

フュンフ様、私と貴方の歩む道がぶつかっただけ
ならば、後は…剣で決するのみ!

駆動系の負担と思考演算負荷と引き換えに
UCでロシナンテⅣの格闘性能を限界突破

貴方が如何に優れたエースであろうと、簡単に剣で遅れを取るつもりは無い!

剣で、盾で
弾き、逸らし、流して、受け止め
死の四連撃を凌ぎ切り

投擲した大盾を目潰しに
その陰から躍りかかり高速近接戦闘…!

でなく、無防備な程に動作速度落とし攻撃
行動テンポを完全にズラし相手を幻惑

ホットからクール、クールからホット
炉心に熱を、演算に冷徹を

両極に一瞬対応遅れた虚を突き
即座に高速の連撃叩き込み



 閃光の後に現れたのは、一閃され両断されたオブリビオンマシン『H・O・P・E』の姿であった。
 その一閃の傷跡に溢れるは結晶。
 搭乗者の生命を削る力。
 砕けた結晶が煌めく中、十全の状態となっった『H・O・P・E』のアイセンサーが怪しく閃光を切り裂く。
「人のために、誰かのために戦うこと。それが僕の生命の値打ちなのだって知ったんですよ!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』は誰かのためにこそ戦う。
 それは過ちではない。

 けれど、どうしようもないことでもあったのだ。
 彼の駆る『超高性能キャバリア』はオブリビオンマシンだ。今は狂わされていなくても、必ず破滅への道を進み、戦火を拡大させるためだけの存在へと堕す。
「……騎士として、できれば其方に肩入れしたくはあるのです」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、『ロシナンテⅣ』の中でひとりごちる。
 それは自身へのいいわけであった。
 けれど、それを見透かしたように『フュンフ・ラーズグリーズ』は言う。

「そんな言い訳、聞きたいわけじゃない!」
 迫る『H・O・P・E』の踏み込みは速い。
 これまで彼が騎乗したキャバリアのどれよりも速かったことだろう。放たれる死の四連撃。
 それを全て受けてしまえば、この機体と言えど保たない。
 放たれる爪の切っ先を盾で受け止める。
 砕けた破片が煌めく中、互いのユーベルコードが輝く。

「『フュンフ』様、私と貴方の歩む道がぶつかっただけ。ならば、後は……剣で決するのみ!」
 砕けた盾を捨てない。
 なぜ捨てないのかと『フュンフ・ラーズグリーズ』は思ったことだろう。己の機体から放つ爪の一撃は盾では防げないと知ったはずだ。
 なのに、トリテレイアは盾を捨てない。
 これは駆け引きだ。
 一瞬の内に繰り広げられた互いの一手を潰すための戦い。
 電子頭脳が白煙を上げるのをトリテレイアは感じたことだろう。反応速度は極限まで向上させた己に『フュンフ・ラーズグリーズ』は付いてくる。

 放たれた剣の一撃を爪の一撃が迎撃し、剣を叩き折る。弾き、逸し、流して、受け止める。
 選択肢は多くはない。
「遅い……! 僕に加減をしているのなら!」
 それは侮辱だと憤る心がある。
 違う。加減などしていない。あるのは己の全性能を引き出しての戦い。三撃目が『ロシナンテⅣ』の頭部、その右側をえぐり取る。

「……追いつきますか、私達の時間に」
 感慨深ささえトリテレイアは感じていただろう。
『グリプ5』に起こった争乱。その連続した戦いの中で、初めて相対した時、少年は狂わされた激情のままに力を振るっていた。
 だが、今の彼は同じオブリビオンマシンに乗りながら呑まれていない。今、自分が何を為さなければならないのか定まった者の力の発露を己に見せている。
 それはともすれば、父性のようなものであったのかもしれない。
 己が守り、育てた存在が己を凌駕しようとしている。

 嬉しいという感情さえ沸き上がるかもしれない。
 けれど、それでもなお、迫る四連撃、最後の一撃が機体へと放たれる。
「ここで終わるわけには参りません――これより先は、戦機の時間(ウォーマシン・タイム)なれば」
 トリテレイアのアイセンサーが輝く。
 そう、己の限界を越えてくるというのならば、己もまた限界を越えていく。
 砕けた大盾を投擲し、トリテレイアは『フュンフ・ラーズグリーズ』の視界を塞ぐ。
 だが、それさえも彼は読み切っていた。砕けた盾をいつまでも手にしているほど、トリテレイアという猟兵が己の身を案じる存在ではないと知っていたからだ。

 だからこそ、読み違える。
 放たれた盾はただのブラインドだ。相手の行動テンポを崩すための幻惑。そこにあったのは無防備な『ロシナンテⅣ』の姿であった。

 脱力したかの如き姿。
 しかし、次の瞬間にその挙動は変わる。
「ホットからクール、クールからホット。炉心に熱を、演算に冷徹を」
 それは0と1。
 オンとオフ。
 一瞬の揺らぎの中にトリテレイアは己の挙動の全てを込める。大盾を払った『H・O・P・E』は無防備だ。

 彼が『エース』であると認めたからこそ、トリテレイアは未だ『エース』ならざりと告げる。
 彼の思う『エース』が不可能を可能にする悪魔とも救世主とも言わしめる力であったのならば、それはならざりと言わざるを得ない。
「貴方は未だ『エース』ならざりし、大器。今はまだ」
 折れた剣でもって叩き込むは、高速の連撃。
 オブリビオンマシンの装甲が砕け、全身を歪ませながら吹き飛ぶ。

「なら、いつ『エース』になれるっていうんです! 僕は、いつ! いつなれるんですか!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の慟哭が響き渡る。
 それをトリテレイアは見下ろして言う。
「それはわかりません。誰にもわからないことなのです。ただ、今の貴方は違う。貴方が求めるものは――」
 ただ一人では為し得ぬことであるからと、トリテレイアは揺らめくアイセンサーの中に見るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
まあね、まあうん
若干申し訳ない…
けどさ、その機体はダメだわ…うん
ダメなんだよそいつは
希望じゃあないんだよなあ
何れ絶望に落ちる星なんだよ、それは
…まあ、持ち上げて落とすっていうのは常套手段なんだろうけど
というかそーいう機体に縁があるね君
誰かの意図はあるだろうけど、それも宿命ってやつなのかなあ…まあそういうの信じないけど
と、いう訳で悪いけど壊させてもらうねそれは
まあまあ、悪いようにはしないから


本気の相手には本気で対応させてもらおうかな
超克、オーバーロード!
外装展開、模造神器全抜刀
さて、近接に踏み込まれると怖いね
まずは様子見して、4剣で爪による連撃を確実に『武器受け』して対処しよう
全部命中しなくてもさ、この体格差だと普通に死ぬって!
だけど、その刺激が心地いい!
『カウンター』で『斬撃波』を連続して放って『吹き飛ばし』て距離を取る
続けて連続して斬撃波で牽制しながら【Code:P.S】起動
通常の斬撃波に混ぜて高威力の奴を放つ!
1発じゃないよ、私の神器は4つある!
4発ぶち当てて後は離脱
もう撃ち止めだ



 かつて『フュンフ・エイル』という不出世の『エース』がいた。
 其の名はいつか呪いと成り果てたが、しかして其の名を求める者は、世に絶えることはない。
『エース』の名が希望にも絶望にも成り代わる。
 いつの時代だって、『エース』は生まれては潰えてきた。
 かくあれかしとなぞる『エース』の名の重さに尽くが戦火に消える。
「僕が『エース』じゃないっていうなら、いつ……一体いつ僕は『エース』になれるんです……!」
 砕かれたオブリビオンマシン『H・O・P・E』の機体が結晶に包まれ、砕けて散った後に飛び出すのは、十全なる機体であった。

 恐るべき超性能。
 それこそが『超高性能キャバリア』たる『H・O・P・E』と『フュンフ・ラーズグリーズ』の力であった。
 消耗している。
 機体は十全でも搭乗者が疲弊していることを月夜・玲(頂の探究者・f01605)は知る。
「まあね、まあうん」
 申し訳無さを感じていた。
 生身単身でキャバリアに立ちふさがる彼女の姿を……いや、その背中をいつだって『フュンフ・ラーズグリーズ』は見てきた。

 頼もしいと感じたことしかない。
 けれど、今まさにその背中ではなく面が己を見据えている。
 凄まじい重圧を感じるが、それでも『フュンフ・ラーズグリーズ』は退かなかった。己が退けば、己が守らねばならないと思った者全てが失われてしまう。
「わからないでもないよ。『エースの重責』ってやつ。けどさ、その機体はダメだわ……うん、ダメなんだよそいつは」
 玲の言葉を『フュンフ・ラーズグリーズ』は理解できないだろう。
 オブリビオンマシンを知覚できるのは猟兵のみ。
 彼は猟兵ではない。感知できなくて当然だ。自分たち猟兵にしかできないこと。今は制御できていても、必ずオブリビオンマシンの狂気に飲み込まれてしまう。

「何がダメだって! キャバリアさえあれば、僕だって貴方達のように!」
 迫る『H・O・P・E』の姿は『フュンフ・ラーズグリーズ』というパイロットを得て完成する。
 凄まじき四連撃が玲に迫る。
「希望じゃあないんだよなあ。何れ絶望に落ちる星なんだよ、それは」
 持ち上げて落とす。
 それがオブリビオンマシンの背後にある黒幕の常套手段である。同時に『フュンフ・ラーズグリーズ』を狙い撃ちにしたかのように黒幕の策動は彼に絡みつく。

 最新鋭キャバリア。
 過去の象徴たるキャバリア。
 そして、今希望の旗印たるキャバリア。
 彼の搭乗する機体はいつだって平和という希望を載せてきた。だからこそ、それさえも意図であるように思えてならない。
「それも宿命ってやつなのかなあ……まあ、そういうの信じないけど」
 玲の瞳が輝くは超克。
 迫る『フュンフ・ラーズグリーズ』が本気であるというのならば、己もまた本気で相対せねばならない。
 オーバーロードされた外装が展開され、模造神器が四振り抜刀される。煌き蒼い光が戦場に乱舞し、死の四連撃を迎え撃つ。

「そんな遠ざかっていくだけの宿命なんて!」
「この体格差なら普通に死ぬって!」
 だけど、この刺激が心地よいと感じる程度には玲の頭のねじは飛んでいた。正気の沙汰ではない。
 生身単身でキャバリアに立ち向かう。
 常識では考えられない超常の存在。それが玲であることを『フュンフ・ラーズグリーズ』は知っていた。
 この程度では絶対に死なない。彼女を乗り越えなければならない存在と認識しているからこそ、彼に生身である存在にキャバリアの武装を向けるという躊躇いはなかった。

「悪いけど、壊させてもらうねそれは」
「させはしません。この機体は希望の旗印! 人の営みが平穏のままであるためには! 玲さんであっても!」
 振るわれる四連撃は瞬く間に模造神器と打ち合い、凄まじい衝撃波を生み出して戦場に荒ぶ。
 カウンターで放たれた斬撃波すら躱し『H・O・P・E』のアイセンサーがきらめいている。
「貴方であっても僕は!」
 再び迫る『フュンフ・ラーズグリーズ』。そのオブリビオンマシンの脚部が寸断される。
 カウンターの一撃は、ただの一撃だけではない。
 放たれた斬撃波の一撃を躱せても、続く二撃目はかわせなかった。切り裂かれた脚部。かく座するしかないはずだ。

 けれど、結晶化した脚部が即座に修復し、踏み込む。
「まあまあ、悪いようにはしないから」
 なんて言っている暇はないと玲は感じたことだろう。このままでは押し負ける。確実に。それを玲は感じたからこそ、己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
「さあ、一撃デカいのをお見舞いしようか! Code:P.S(コード・プラズマスラッシュ)」
 手にした模造神器から放たれるは極大の稲妻の斬撃波。それは超克のちからを持ってして、放たれ『H・O・P・E』を飲み込まんとする。だが、それさえもありえないほどの反応速度で『フュンフ・ラーズグリーズ』は躱すのだ。
「何度も見てきたんですよ、貴方の斬撃を! 憧れですらあったのに!」

 放つ爪の一撃。
 絶対死の一撃。だが、玲の瞳はユーベルコードに輝き続ける。
「一発じゃないよ、私の神器は四つある!」
 そう。彼女の模造神器は四振り。例え一撃目が躱されたのだとしても、続く三連撃がある。
 十字に、さらにクロスするように放たれる斬撃波は稲妻の如き怒涛の力となって『H・O・P・E』を切り裂く。
「こんなっ、なんで……! どうして僕は届かないんだ――!」

 四肢を引きされ、頭部を潰され、装甲の尽くが破壊される。
 大地に崩れ落ちた『H・O・P・E』は再び結晶化していく。埋めようのない力の差を感じながら、それでも玲は言う。
「もう撃ち止めだ……」
 エネルギー枯渇状態になっている。
 玲は結晶化していく機体を見やり、其の言葉が己だけではなく、互いに通じるものであることを確信する。

 ゆっくりと息を吐き出す。
 此処まで成長したのかと思うこともあるかもしれない。それでも、まだまだだと己の背中を見せなければならない。
 いつかは一人で飛び立つこともあるかもしれない。
 けれど、それでも、その偽りの星は輝かせるわけにはいかないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
うーん、これは何を言ってもダメなパターン
仕方ありません
まずは戦いましょう

引き続きファントムシリカ搭乗&
【百花繚乱】のルベライトビットの攻撃を主軸に

遠距離攻撃はファントムシリカにきついと何度言ったら!
セラフィナイトスピアの斥力フィールドで
何とか受け止めつつ距離を詰めましょう

別にフュンフさんの邪魔をしたいわけじゃなくて

フュンフさんに正義があるように
私にも使命があります
私がこの世界に干渉する以上
それを違えることは叶わず
道がぶつかれば戦うしかありません

ちなみにレジスタンスを潰したいわけじゃなくて
あなたの機体が本命です
それ破壊できたらそっちに転びますよーっと
クノイチ的にきたないのはお手のものなので!



 ずたずたに引き裂かれた機体が結晶化し、砕けた破片を撒き散らしながら大地に立つ。
 恐るべき力。
『超高性能キャバリア』と呼ばれたオブリビオンマシン『H・O・P・E』はたしかに強大な力であった。
 だが、搭乗者の生命を削る異能は、必ず枯渇する。
「僕が、僕が『エース』にならなければ――キャバリアさえあれば、貴方達にだって勝てる……! 貴方達のようにやれるはずなんだ!」
 慟哭が響き渡る。
 
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は知っている。
 この慟哭さえもいつかは絶望に塗りつぶされてしまうのだと。いつかの希望は必ず狂気に呑まれ、戦火を拡大させるだけの存在に堕してしまう。
 今何を言って『フュンフ・ラーズグリーズ』には届かないとサージェは理解する。
 ならば、戦わなければならない。
 希望の星が偽りであり、いずれ絶望の星となるのならば。
「別に『フュンフ』さんの邪魔をしたいわけじゃなくて――」
『ファントムシリカ』が戦場に疾走る。
 紅のビットが飛び、『H・O・P・E』の放った機械羽と激突する。

 今はまだ拮抗している。
 互いの距離が離れているからだ。けれど、何れこの拮抗は崩される。遠距離からの飽和攻撃こそ、近接戦闘を主軸においている『ファントムシリカ』にキツイものがあった。
 セラフィナイトスピアの斥力フィールドがあるからまだしのげているが、これが尽きた瞬間が己の命運が尽きた時になる。
「『フュンフ』さんに正義があるように私にも使命があります」
「人の営みを脅かしてでもしなければならないことですか、それは!」
 乱舞する機械羽がビットと激突して爆発していく。
 その閃光を受けながら二機が激突する。

 スピアの一撃を『H・O・P・E』は腕部の爪で切り払う。
 跳ね上がったフィールドを切り裂くように放たれる連撃をサージェは捉えることができなかった。
「私がこの世界に干渉する以上、それを違えることは叶わず。道がぶつかれば戦うしかありません」
「戦うことばかりじゃないはずでしょう!」
「ええ、別にレジスタンスを潰したいわけじゃなくて」
 火花が散る。
 互いの武装が激突し、百花繚乱(アサルトアサシン)の如きビットが戦場を支配していく。

「――ハァッ! くっ……!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の消耗も激しい。
 機体は保っても、搭乗者が保たない。動きに精彩を欠くようになった機体をセラフィナイトスピアの一撃が寸断する。
 結晶化が起きない。
 すでに限界に来ているのだ。だが、其の限界を超えるのが『エース』である。
「やっぱりこの機体が目的ですか!」
「ええ、そうです。その機体が本命です。それを破壊できたら――」
 其の言葉が続くことはなかった。
 放たれた一撃がセラフィナイトスピアを吹き飛ばす。『ファントムシリカ』にはすでに武装はない。

 だが、『H・O・P・E』の動きが止まる。
 コクピットハッチが開かれる。
「なんだ、どういう――!?」
 機体の腕がコクピットから『フュンフ・ラーズグリーズ』を引きずり出し、大地に下ろす。
 サージェは理解しただろう。
 あの機体。確かにオブリビオンマシンである。だが、猟兵が駆るオブリビオンマシンのように――。

「ミニシリカ、後はよしなにっ!」
 サージェはその一瞬を見過ごさなかった。
 例え、オブリビオンマシンが『フュンフ・ラーズグリーズ』を巻き込まぬようにコクピットから排除したように見えたのだとしても。
 それでも、あれはオブリビオンマシンだ。
 人の希望を一新に受け、その名が偽りであったのだとしても、注がれた意志と力は純然たる希望そのものであった。

『――』
 声が聞こえた気がした。
 動きを止めた。搭乗者をおろした。もうあの再生の異能は使えない。

 だからこそ、破壊する。サージェは躊躇わなかった。
 真紅のビットが機体を取り囲み打ち砕く。
 結晶化はもう二度と起こらなかった。砕かれ、大地に沈む『H・O・P・E』。その姿は己の役目をこそ終え、偽りの希望が地に失することを示す。

「なんで――……」
 サージェは呆然と立ちすくむ『フュンフ・ラーズグリーズ』を『ファントムシリカ』から見下ろす。
「……名は偽りでも、そこにあったのはそうではなかったということでしょう」
 あの機体は確かに偽りの名を持つ。
 だが、その身に受けた思いに偽りはない。それをサージェは知り、周囲を取り囲む『シーヴァスリー』のキャバリア部隊の存在に視線を向けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『旗印の堕ちた地で』

POW   :    圧政側の軍勢を一時の間追い払う

SPD   :    急ぎその場を後にする

WIZ   :    レジスタンスのメンバーを護衛する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 レジスタンスの旗印『H・O・P・E』は地に失する。
 すでに機体は動かない。
 パイロットは破壊される直前に、オブリビオンマシン自身の手によってコクピットから降ろされた。
 何がそうさせたのかはわからない。
 正しいことは何一つわからない。
 憶測でしかなかったけれど、それはまるでその機体に注がれた純然たる希望そのものが、そうさせたのではないかと思うほどの出来事であった。

 しかし、『シーヴァスリー』のキャバリア部隊は未だ健在である。
 彼らは虐殺を命じられている。
 この『フィアレーゲン』の跡地に残る者達全ての排除、鏖殺を命じられているのだ。
 このまま捨て置くこともできるだろう。
『シーヴァスリー』を排除することもできる。
 もしくは第三の道を選ぶことができるかもしれない。

 人を絶望に叩き落とすのは、失望ではない。
 いつだって人の足を止めるのは諦観である。
 猟兵達は見るだろう。
 レジスタンスたちの瞳に諦観がないことを。絶望でもない。彼らは見たのだ。己たちの旗印が地に伏すのを。
 けれど、未だ彼らの心には希望がある。

 明日を生きる希望が。
 まだ生きている。ただそれだけでいいのだと示した、偽りの希望。
 それを本物に変えるのはいつだって彼ら自身なのだから――。 
ユーリー・ザルティア
【心境】
「ふう。歪んだ運命を宿された希望倒れた。…でも。」
人はまだ生きている。…でしょ?
なら、足を止めるなってね。

【行動】
判定:POW

さて、フュンフくんを『索敵』…っと居た居た。
手短だけど、「レジェスタンスが非戦闘員を虐殺しようとしてたからそれを止めようとした事」
「『H・O・P・E』にはかつての『セラフィム・リッパー』のように暴走するように姦計を仕掛けられていたこと」を説明ね。

ボク達はキャバリアを失って戦闘力の無くなったレジスタンスを攻撃する意思がない。
エースとして彼らの旗頭として立ったんだから、責任取って彼らを連れていきなさい。時間ぐらいは稼いであげる。

レスヴァントを『操縦』し、追撃しようとしている圧政側のキャバリアを破壊するわ。
殺したいわけでもないし。キャバリアのアウトフレームをアストライアの『制圧射撃』とイニティウム『切断』で行動不能にしていくわね。
さて、イキナサイ。
姦計に堕ちていたとはいえ、希望は託されたのでしょ?
生きてさえいれば、どこにだって希望はある!!



 オブリビオンマシンは大地に伏す。
 その機体は破壊され、二度と動くことはないだろう。偽りの希望であれど、身に宿した希望に偽りはない。
 人の平穏への願いは、歪み果てることなく今も連綿と紡がれている。
 ならば、それを護るのが猟兵の役目であろう。
「ふう。歪んだ運命を宿された希望は倒れた……でも」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は機体の状況を把握する。
 己の『レスヴァント』は『H・O・P・E』との戦いであちこちに傷を受けている。
 この状況でなければ退いて立て直したいところではあるが、それでも『シーヴァスリー』側のキャバリアが非戦闘員の虐殺を止めないというのならば、彼女は躊躇う理由を保たなかった。

「人はまだ生きている……でしょ? なら、足を止めるなってね」
 小さく呟く。
 偽りの希望なくとも、キャバリアがなくとも人は生きている。ならば、その路を照らすことだって出来るはずだ。
 ユーリーは『レスヴァント』を駆りながら索敵し、『フュンフ・ラーズグリーズ』の姿を認める。
 大地に伏した『H・O・P・E』の姿を見ている彼にユーリーは告げる。
「手短だけど。その機体にはかつての『セラフィム・リッパー』のように暴走する仕掛けがあったの」
 だから止めたと、ユーリーは告げる。
 その言葉は確かに理解できるものであっただろう。

 機体の制御が自動操縦に切り替わることがあった。
 それが恐らくオブリビオンマシンとしての本能であったのかもしれない。ユーリーの言葉に『フュンフ・ラーズグリーズ』はうなずく。
「わかっています……でも、あれはそんのじゃなかったって、思う自分もいるんです。あれは……」
「違ったと?」
 ユーリーは己もまたオブリビオンマシンの機体を擁する猟兵である。
 あの機体にも意志のようなものが宿るのであれば、それはきっと人々の希望の集合体のようなものであったのだろう。

「なら、『エース』として彼らの旗印として立ったんだから、責任取って彼らを連れていきなさい」
『フュンフ・ラーズグリーズ』は頭を振る。
 己にその力がないと思っているのだろう。キャバリアを失った彼にできることは多くはない。
 だから頭を振ったのだ。
 それを見てユーリーはいう。
「キャバリアがあれば、なんていう者に『エース』の力は宿らない。本物の『エース』っていうのは、人の希望でしょう」
 ならば見ろと、示す先にあるのはレジスタンスの者たち。
 彼らの瞳にあるのは絶望ではない。

 彼らが見ていたのは希望。
『フュンフ・ラーズグリーズ』という希望なのだ。オブリビオンマシンの性能や、その活躍ではなかった。
 だからこそ、『H・O・P・E』は偽りの希望であったとしても、彼を破壊される前におろしたのだ。
 その事実を知らしめ、ユーリーはうなずく。
「時間ぐらいは稼いであげる」
 機体の状況は悪い。けれど、ここで諦めるのは『エース』である己じゃない。ユーリーもまた『エース』なのだ。

 ならばこそ、先を示さねばならない。
 生きること。戦うこと。
 己の動きで『フュンフ・ラーズグリーズ』とレジスタンスたちに示さなければならないのだ。
「此処から先は行かせないよ」
『レスヴァント』と共にユーリーはアサルトライフルを構え『シーヴァスリー』側のキャバリアを牽制する。
 弾丸が飛び交う戦場に様変わりした『フィアレーゲン』の大地を疾駆する。
 アンダーフレームをイニティウムで切断し、レジスタンスたちの逃亡を負わせない。

「奸計に堕ちていたとはいえ、希望は託されたのでしょ?」
「でも、ユーリーさんは……!」
「生きなさい。生きてさえ居れば、どこだって希望はある!!」
『レスヴァント』が火花を散らしながら、『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を次々と行動不能にしていく。
 戦いは続く。
 クロムキャバリアにおいて戦乱は終わらぬ日常であったのかもしれない。

 けれど、『エース』はそれを終わらせる為の希望であると示した。
 人の希望を受けて、器となる。
 注がれた希望はいつの日にか結実することだろう。ユーリーは己の戦場に在る意義を見出す。
「聞きなさい。此処にあるのは『エース』、『撃墜女王』! ユーリー・ザルティア! この名を恐れぬのならば!」
 戦場を舞う女王。
 支配する戦場があるのならばこそ、その頂きにあるのが己であると示すように、ユーリーは華麗に銃弾飛び交う戦場を飛ぶのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
フュンフ、無事でよかった。
皆、『グリプ5』へ亡命して。先に落ち延びた人たちが一区画を作ってるからそこへ――その辺はフュンフの方が詳しいわよね。
護衛、よろしく、エース!

さて、あたしは『シーヴァスリー』の足止めをしましょう。
「全力魔法」衝撃の「属性攻撃」「範囲攻撃」「竜脈使い」「衝撃波」「仙術」「道術」で、地烈陣を連打。
敵機を破壊出来なくてもいい。地面を徹底的に荒らして、二足歩行のキャバリアには通りづらい地形に変えてやる。
追ってこなければ、無用な迎撃も必要無いものね。
乗り越えてくる機体には不動明王火界咒を飛ばしましょう。

難民の様子は、黒鴉の式で常時把握。足止めが要らなくなったら、あたしも撤収ね。



 破壊されたオブリビオンマシンの傍に『フュンフ・ラーズグリーズ』は居た。
 彼の胸に去来するのは絶望ではなかった。
 諦観でもなかった。
 あるのは、誰かに託された希望であった。
 人の生き死には一瞬だ。けれど、紡がれるものがあると知る。あのオブリビオンマシンが見せた最後の挙動は、きっと注がれた希望の集大成であったのだろう。
「『フュンフ』、無事でよかった」
 その背中に村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は近づき、言葉を掛ける。

 今まで命のやり取りをしていたとは思おえないほどのさっぱりした声であった。
 振り返った『フュンフ・ラーズグリーズ』の顔は憔悴していたけれど、それでも瞳に絶望の色がないことに彼女は安堵したかも知れない。
「みんな『グリプ5』へ亡命して。先に落ち延びた人達が一区画を作ってるからそこへ――」
 ゆかりはレジスタンスの非戦闘員たちを集めていた。
 彼らを『グリプ5』へと導かなければならない。
 このままこの『フィアレーゲン』にとどまっていても、『シーヴァスリー』の虐殺に巻き込まれてしまう。

 そうさせないためには、彼らを護衛するものが必要なのだ。
「その辺は『フュンフ』の方が詳しいわよね。護衛、よろしく、『エース』!」
「……でも、それは」
 彼の言葉もわからないでもない。
 あのオブリビオンマシンに乗っていたのだ。憔悴しきっていても仕方ない。だからこそ、時間を稼ぐ。
 先行した猟兵が戦場を舞うようにして戦っている。

 それを見やれば、己がしなければならないことも理解できる。
「あたしは『シーヴァスリー』の足止めをするわ。いいこと。これは貴方にしかできないこと。そして、これはあたしにしかできないこと。わかるわよね?」
 戦わなければ生きてはいけない。
 それがこの戦乱の世界、クロムキャバリアだ。
 だからこそ、人の優しさが人を活かす。
 かつて『フュンフ・ラーズグリーズ』が救われたように。そして、託されたように。
 紡いでいかなければならないのだ。

 一度は偽りの希望になったかもしれない。
 けれど、それでも注がれた希望は本物だったのだ。だからこそ、ゆかりはその瞳をユーベルコードに輝かせる。
『シーヴァスリー』のキャバリア部隊はそこまで迫っている。
「さあ、行きなさい。後のことは任せて!」
 煌めくユーベルコードが大地を穿つ。
 戦場全域がゆかりのユーベルコード、地烈陣(チレツジン)によって砕かれ、地表の崩壊に『シーヴァスリー』の『ジェネム2』を巻き込み足止めをする。

 破壊できなくとも大地を在らすことで、二足歩行のキャバリアでは進軍することが難しくできればいい。
 彼らがオブリビオンマシンに乗っていないのならば、これ以上の打撃を与えることに意味はない。
「無用な迎撃も必要ないものね」
 ゆかりは黒鴉の式神を飛ばし、レジスタンス側の人間たちが『グリプ5』へと遠ざかっていくのを確認する。

 彼らの先頭に立つには『フュンフ・ラーズグリーズ』だ。
 言葉は少なかった。
 けれど、彼には託されたものがある。
 それがきっと彼をこれからも突き動かしていくだろう。
「追ってこなければ、これで……あたしも撤収しましょう」
 戦況は刻一刻と変わって行く。
 それは小国家同士の情勢にもいえることだ。地底帝国である『バンブーク第二帝国』が『地底(アンダーグラウンド)』より這い出し、『シーヴァスリー』が暗躍する。

『グリプ5』周辺の状況は予断を許さない。
 けれど、ゆかりはオブリビオンマシンの背後にある黒幕が動くのならば、必ず己達が駆けつけることができるであろうことを知る。
 戦乱を呼ぶ存在を世界は許さない。
 ならばこそ、ゆかりは砕いた地表を見やり、未だ続く戦乱の空を見上げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
(引き続き試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に騎乗)
フュンフは…まあ大丈夫かな…さて…時間を稼ぐとするかね…
…えーと…相手の指揮官に通信で声かけるか…
…ここは痛み分け…ということにして一旦退かない…?
…ほら…そのほうがお互い損害ないし…整備とかの手間もなくなるし…
…だめ?…だめかー…交渉材料ないし仕方ないよね…
…浸透破壊術式【ベルゼバブ】が潜んだ魔方陣を展開…
…【浮かびて消える生命の残滓】で生命と知性を持たせた疑似AI型ウイルスを感染させてハッキング…キャバリア部隊を無力化…
…疑似AIに機体を強制操作させて一度この場から離れて貰おうか…国に帰って修理すればまた動くようになるよ…



 レジスタンスの旗印たる『超高性能キャバリア』、もといオブリビオンマシン『H・O・P・E』は地に伏す。
 その破壊された機体はレジスタンス側の敗北を意味していた。
『フィアレーゲン』の大地は、正しく侵攻者である『シーヴァスリー』の占有するところである。それを避難すること正しくはないだろう。
 この戦乱の世界、クロムキャバリアにおいて戦いは常である。
 平和の意味すら知らぬ人々は戦い続けなければならない。常に奪い続けてきた『フィアレーゲン』が、奪われる側になっただけのことである。

 それを悲しむべきであっただろうか。それとも新たなる希望の始まりとするべきであっただろうか。
 答えは誰も持ち得ない。
『エース』であった『フュンフ・ラーズグリーズ』は己の心が沈むより速く一歩を踏み出していた。
 猟兵との戦いは彼にとって得難きものを得る戦いであったことだろう。
「『フュンフ』は……まあ大丈夫かな……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、オブリビオンマシンの破壊を確認し、それを駆っていた『フュンフ・ラーズグリーズ』がこれから如何なる路を辿るにせよ、彼が揺れることがないことを知る。

 しかし、その路を阻む者たちがいる。
『シーヴァスリー』のキャバリア部隊。
 彼らは『フィアレーゲン』のレジスタンスたちを排除する命令を受けて此処にいる。非戦闘員も関係ない。
 ただ鏖殺するだけの使命。それが人の行いとして正しいかどうかは言うまでもない。けれど、このまま捨て置けば、レジスタンスの人間たちは掃討されるだろう。
「……さて……時間を稼ぐとするかね……」
 メンカルは試作型術式騎兵『ツィルニトラ』と共に戦場に座す。
 己の背後には逃げるレジスタンス。
 そして、前方にはそれらを追おうとする『シーヴァスリー』のキャバリア部隊。

「其処を退いてもらおうか、第三勢力。お前達の所属が何処であるかは問わない。我らの使命は『フィアレーゲン』の残存勢力の一掃だ」
『シーヴァスリー』の指揮官機がメンカルに告げる。
 その言葉はにべもないものであったが、確固たる意志を持っているように思えただろう。
 彼らは疑問に思っていないのだ。
 人と人とが争うのが常の世界にあって、敵対していた勢力は取り込むより排除した方が速いと知っているのだ。
 それも、生半可なことをしては、必ず因果がめぐるように己達の路を阻む障害になることを知っている。

「……ここは痛み分け……ということにして一旦退かない……?」
 メンカルは努めて冷静に告げる。
 猟兵たちの介入に寄って『シーヴァスリー』もまた損害を被っているはずだ。第三勢力として認知されている己たちを相手に、徒に消耗するよりも撤退したほうがいいだはずだと思ったが、それでも『シーヴァスリー』のキャバリア部隊は頑なであった。
「……ほら……その方がお互い損害ないし……整備とかの手間もなくなるし……だめ?」
「譲歩はない。理由もない」
「……だめかー……」
 交渉する材料もない。
 彼らにとって『フィアレーゲン』の残存勢力は残しておくデメリットはあれど、メリットなど一つもないのだ。

 ならば仕方ないとメンカルは『ツィルニトラ』により拡大された術式を展開し、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「造られし者よ、起きよ、目覚めよ。汝は蜻蛉、汝は仮初。魔女が望むは刹那を彩る泡沫の夢」
 浮かびて消える生命の残滓(メメント・モリ)は、彼女の力により生命と知性をもたせた疑似AI型ウィルスとして浸透破壊術式『ベルゼバブ』と共に『シーヴァスリー』のキャバリア部隊へと侵入していく。
 ウィルスが感染したキャバリアは、オブリビオンマシンではない。
 ならば、その機体のメインシステムに食い込んだウィルスが次々と伝播し、無力化していく。

「機体のシステムダウンだと……!? どういうことだ!?」
 指揮官機だけではない。 
 後続の部隊もまた同様のトラブルに見舞われている。メンカルにとって、時間を稼ぐだけでいいのだ。
「国に帰って修理すればまた動くようになるよ……」
 疑似AIウィルスによって『シーヴァスリー』のキャバリア部隊が自律して動き始める。侵食されたシステムに介入して、メンカルが彼らを撤退させる。
 強制操作でもって『シーヴァスリー』に帰還させるのだ。
 これならば無駄に生命を散らす必要もない。

 人の営みに潜む影。
 それがオブリビオンマシンであるというのならば、メンカルはこれをこそ討たねばならない。
 人の生命を奪うのではなく、戦乱呼ぶ芽こそ摘み取る。
 それが猟兵の戦いであるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
最期に乗り手に応えた…のでしょうか

どの口でと思われるやもしれませんが…
フュンフ様、ご自身の道が見えて来たのではありませんか?
どうか、そのままお進みください

猟兵の役目終えた今
私は、私の騎士道を今度こそ果たして参ります

ロシナンテⅣの消耗は激しくとも…Oマシン相手でなければ十分
次は『シーヴァスリー』の部隊です

UCにて自由奪い追撃阻止
サブアームのライフルや奪ったビームサーベルで無力化
ワイヤーアンカーで敵機の通信網ハッキング
指揮官機を捕捉、強襲

コクピットに剣突き立て徐々に押し込み

私の前で武力持たぬ者の鏖殺は許しません
今を生きるモノ、オブリビオンの区別無く討たせて頂きます

…撤退命令を下して頂けますね?



 オブリビオンマシン『H・O・P・E』は大地に伏す。
 その機体は破壊され、後に残るは人。
 ただの人だ。『エース』でもなければ、特別な人間でもない。オブリビオンマシンが求めたのは己の性能を引き出す存在でもなければ、ただ希望の受け皿に成り得る存在のみであった。
 けれど、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は見ただろう。

 己がウォーマシン、戦機でありながらも矛盾を抱えて存在しているように。矛盾を持つからこそ得たものがあるように。
 即断即決ではなく、懊悩の果に路を往く存在であるからこそ、理解することが出来たのかも知れない。
「最期に乗り手に応えた……のでしょうか」
 希望を見いだされた偽りの星。
 それがオブリビオンマシン『H・O・P・E』であった。

 だが、偽りの星が真の星のように輝かない理由など何処にもない。
 ゆえにトリテレイアは『ロシナンテⅣ』と共に佇む。眼下にあるのは『フュンフ・ラーズグリーズ』。
『エース』であり、悪魔とも救世主とも違う路を往く者。
 誰しもが『フュンフ・エイル』の如き力を求めるだろう。
「……」
「どの口でと思われるやもしれませんが……『フュンフ』様、ご自身の道が見えて来たのではありませんか?」
 トリテレイアの言葉に『フュンフ・ラーズグリーズ』は応えない。
 自らが進むべき道を決めることは、恐ろしいことだ。決断しなければならない。それが間違いである可能性だってある。正しさを証明するのはいつだって未来にしかない。

 だからこそ、トリテレイアは懊悩を持つ存在を愛おしく思うのかも知れない。
「どうか、そのままお進みください」
 トリテレイアは傷ついた機体のまま戦場に戻る。
 猟兵としての役目は終えた。これからは騎士としての役目がある。
「なにを……」
「私は、私の騎士道を今度こそ果たして参ります」
 機体状況は悪い。
 武装の尽くが破壊されている。期待のフレームは過負荷によって軋んでいる。だが、それでも『シーヴァスリー』のキャバリア部隊に虐殺をさせるわけにはいかないのだ。

「居たぞ! あれが最優先抹消対象!」
『シーヴァスリー』のキャバリア部隊が『フュンフ・ラーズグリーズ』の姿を認め、迫る。
 緑の『ジェネム2』が疾駆する。
 しかし、その疾駆をはばむは飛び交う機械の妖精が放つ特殊な鱗粉であった。それに触れた瞬間、『ジェネム2』の機体制御が奪われ、武装が『ロシナンテⅣ』の手の内に奪われる。
「この場所での無法はご遠慮頂きましょう」
 鋼の妖精圏(フェアリーランド・オブ・スティール)において殺戮は引き起こさせない。
 トリテレイアはサブアームで懸架したライフルを討ち放ち、迫る『ジェネム2』の脚部を破壊する。

 人命は脅かさない。
 足を止める。ただそれだけである。期待状況を考えれば自殺行為であった。だが、今の己は騎士である。
 守らねばならない生命があるのならばこそ、己の炉心は燃えるのだ。
「期待の制御が……!」
「私の前で武力持たぬ者の鏖殺は許しません」
 ワイヤーアンカーが指揮官機を補足し、通信網をハッキングして音声を流す。平坦な機械音声。
 されど、それは事実を知らしめる。

 逆手に持ったビームサーベルが『ジェネム2』の指揮官機のコクピットは一致を薄皮を焼くようにして突き立てられる。
「ひっ――!」
「今を生きるモノ、オブリビオンの区別なく討たせて頂きます……撤退命令を下して頂けますね?」
 脅しである。殺すつもりはない。けれど、指揮官機から発せられた命令は周辺の部隊を退却させるには十分なものであった。
 開放した指揮官機の撤退を確認し、トリテレイアはアイセンサーを揺らめかせる。

 そこにあったのは『グリプ5』へと向かう『フィアレーゲン』、そのレジスタンスたちの姿があった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
信じられねーな
彼奴…フュンフを守ったのか…
「あの子も本当はきっと希望でありたかったんだよ☆」
そういうものか

「それよりご主人サマ!物量で虐殺しようとする酷い人達がいるよ!もうあれだね☆」
ぐうう…!
殺害禁止だからな!
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体と竜眼号に付与して光学迷彩で存在を隠し水障壁で熱源隠蔽
竜眼号搭乗
UC発動
「「ひゃっはー☆」」
【集団戦術・戦闘知識・視力・情報収集】
シーヴァ軍の戦力とレジスタンスの状況
効率的な逃走経路と彼らの逃げ込める場所の把握
600師団
【空中戦・弾幕・念動力・二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
飛び回り念動光弾を乱射しつつ軍に襲い掛かり武装を切断強奪
搭乗者も色々盗んで無力化
時々セクハラ?
不殺徹底

残り
レジスタンスを護衛しつつ安全な場所まで必要時は運ぶ
必要時は念動障壁で防衛し死なせない

ああついでだ
このシーヴァスリーについての情報を根こそぎ奪え
此処のオブビリオンマシンや或いは何かの黒幕の影もあるかもしれないからな
「「はーい☆」」
…フュンフ…何も聞くな(死んだ目でふるふる



「信じられねーな」
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の心の内にあったのは、困惑であったかもしれない。
 希望の名を冠した機体『H・O・P・E』。
 その偽りの星は、己が破壊される前に、搭乗者である『フュンフ・ラーズグリーズ』をコクピットからおろした。
 それはともすれば、もはや必要ないという判断であったのかもしれない。
 けれど、カシムには『H・O・P・E』が『フュンフ・ラーズグリーズ』を守ったように思えたのだ。

 錯覚であったのかもしれない。
 けれど、事実として『フュンフ・ラーズグリーズ』は生命を燃やし尽くす前に機体より降りた。
 彼にとってもそれは予想外のことであったのだろう。
 カシムにとってもそうである。信じられないという言葉がそれを如実に示している。
『あの子も本当はきっと希望でありたかったんだよ☆』
『メルクリウス』の言葉が響く。
 果たしてそうであろうか。そうであってほしいという願望なのではないか。そう疑うこともあるかもしれないが、それでもカシムは頭を振る。

「そういうものか」
 偽りの星であっても、満ちる希望は真。
 ならば、あの偽りの星もまた真実。今はそれでいいとカシムはうなずく。
『それよりご主人サマ! 物量で虐殺しようとする酷い人達がいるよ! もうあれだね☆』
 カシムは今度こそ苦虫を潰したような顔をする。
 呻くような声がコクピットの中に響き渡る。やらないといけないのか。春の幼女祭りを。
 苦々しい気持ちであったが、『シーヴァスリー』によるレジスタンスの虐殺行為だけは止めなければならない。

 機体を迷彩に施す。
 熱源をも隠蔽する力によってカシムは帝竜大戦艦『竜眼号』に座す。
「殺害禁止だからな!」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
『もっちろーん☆』
 対軍撃滅機構『戦争と死の神』(メルシーハルノヨウジョマツリ)によって召喚される幼女『メルシー』たちが凄まじい数でもって戦場に跋扈する。
 跳梁跋扈と呼ぶに相応しい数。
 それらは『シーヴァスリー』のキャバリア部隊にとって悪夢そのものであったことだろう。

『シーヴァスリー』のキャバリア部隊は、ただ己達にくだされた命令を忠実に実行していただけだ。
 けれど、そこに疑問はない。
「抵抗する者も逃げようとする者も、全て排除せよ。発砲の許可は出ている――な、なんだ、あれは!?」
 その疑問も最もである。
 迫るは幼女。何かの間違いではないかと思うほどの大量の幼女である。しかも小型化したキャバリア武装を手にしている。
 それらがまるで昆虫の大行進のように迫るのだから、悪夢と見紛うのもうなずけるところである。

 宙を飛び回り、念動光弾がはなたれ続ける。
 武装を切断し、搭乗者をコクピットから引きずり出す。
「うわ、っ、うわあああ!?」
 悲鳴が戦場に響き渡る。
 機体を破壊され、身動きが取れないところにコクピットハッチを引き剥がされ、幼女にさらわれるのである。
 マジで悪夢である。
 恐ろしさしかないし、これが夢ならば醒めて欲しいと願うばかりである。

「ああついでだ。この『シーヴァスリー』についての情報を根こそぎ奪え」
 カシムは告げる。
 もしも、この部隊のキャバリアに情報が残されているのならば、オブリビオンマシンやその背後にある黒幕の策動が知れるやもしれない。
『はーい☆』
 幼女メルシーたちの返事だけは良いものであった。
 しかし、この状況をどう説明したものであろうか。特に『フュンフ・ラーズグリーズ』には。

 どうあっても説明できるわけがない。
 いや、説明したくもない。何も聞かないでほしいとカシムは死んだ目でもって艦橋に伝わる『シーヴァスリー』の情報を閲覧していく。
『シーヴァスリー』は新興の小国家である。
 だが、そのプラント保有数は、恐らく周辺国家の中で随一である。
 すでに『フィアレーゲン』、『八咫神国』の2つの小国家を滅ぼし、そのプラントを得ているからだ。

「さらには、『フォン・リィゥ共和国』も同盟……いや、傘下に収めている、か」
 カシムは『シーヴァスリー』が新興国家でありながら、強大すぎる力を持っていることに呻く。
 もしも、ここに一連の黒幕がいるのならば。
 どう考えても攻めあぐねるだろう。今はどうしようもない。
『ひゃっはー☆』
 幼女たちのはしゃぐ声を遠くに聞きながら、カシムは今はぐったりとするしかないのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん…どうしたもんか…
現地の人のいざこざは正直あんまり首を突っ込みたくないというか
けど、目の前の虐殺はまあ放置するには目覚めが悪いというか…
さりとて、この場で一時しのぎをしたってなあ…
全部が全部対応出来るわけで無し、するのも仕事じゃないし…

…当面シーヴァスリーのヘイトがレジスタンスより猟兵に向いてくれれば、警戒中は他の拠点のレジスタンスへの対応も緩むかな?
まあ、後は現地の人次第って事で…うん、しーらないっと!
それじゃあ兵士の方々には大変申し訳ないけど、ちょっと蹂躙させて貰おうかな

引き続いて超克、オーバーロード!
そして【Unite Dual Core】起動
2つの疑似邪神の力を宿して…蹂躙する!
遠距離のキャバリア部隊は雷刃で一閃
射程内のキャバリアは蒼炎で燃やす!
ま、なるべくパイロットは殺さないように…恐怖心だけを植え付けるような戦い方をしよう
けど、これだけだったらレジスタンス側の救援と思われるかもしれないから…
アジトも、避難が済んでる箇所から随時壊していこう
これこそ理不尽、即ち…UDC!



 猟兵とは世界の悲鳴に答える者のことを差す。
 戦乱だけの世界クロムキャバリアにおいて、オブリビオンマシンの胎動が世界の破滅に繋がるからこそ猟兵達は介入する。
 今まで幸か不幸か『グリプ5』周辺の国家におけるオブリビオンマシンの策動は一貫していた。
 それは『フュンフ・ラーズグリーズ』を追い詰めるためだけに張り巡らされたものであると理解できるだろう。
 精確に言うのならば『フュンフ・エイル』を端に発したものであるというべきか。
 いずれにせよ、今回のようなケースは稀であったし、同時にオブリビオンマシンの背後にあるであろう黒幕の策動の一つに他ならなかった。

「うーん……どうしたもんか……」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は悩んでいた。
 クロムキャバリアだけならず、他世界であってもそうだが、現地のいざこざに正直あまり首を突っ込みたくはないと考えていたのだ。
 しかし、このまま『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を放置すれば、レジスタンスの虐殺が始まる。
 それはあまりにも目覚めが悪い。
 ここで自分が大立ち回りをしても一時凌ぎにしかすぎないであろうことも理解している。

 そして、全てに対して対応ができるわけでもないもまた。
「……当面、『シーヴァスリー』のヘイトがレジスタンスより猟兵に向いてくれれば、警戒中は他の拠点のレジスタンスへの対応も緩むかな?」
 自分たち猟兵という第三勢力。
 それを『シーヴァスリー』が認知しているのならば、玲の言葉通りになるだろう。そのためには諸々の必要な処理というものが必要になるのだが、そこまでいくと流石に入れ込みすぎるということになるだろう。

 だからこそ、玲は考えるのをやめた。
「まあ、後は現地の人次第って事で……うん、しーらないっと!」
 飛び出す。
 小難しいことを考えていても仕方ない。
 人が生きていくためには動かなければならない。一歩を踏み出すことがなければ、生きることすら難しい。
 エネルギー枯渇で体が重い。
 けれど、それでも脚を踏み出す。やらねばならないことを定めたのならば、そこまでまっすぐに疾走るのが玲という猟兵である。

「弐神合一プログラム…略してUDC…起動!」
 彼女が疾走る先にあるのは『シーヴァスリー』のキャバリア部隊。その緑のカラーリングめがけて迸るのは模造神器より放たれた雷刃の一閃。
 それらは尽くがアンダーフレームを切り裂く、その場にかく座させる。
「何が起こった!? 敵襲か!?」
「ちがう、キャバリアの反応はないぞ!? どういうことだ!?」
 キャバリアを打倒できるのはキャバリアだけである。
 それがこの世界の理と言ってもいい。誰が、生身単身でキャバリアを打倒できると思うだろうか。

 誰もがその可能性を考えない。
 己達に迫る存在が超常の人であるという可能性を考えない。
「ステルス機能か……!」
「いや、反応がおかしい……人!?」
 飛び込む玲の姿はまさに理不尽そのものであったことだろう。オーバーロードに寄って召喚された機械腕。
 その副腕が振るうは蒼炎の刃。
 模造神器はUDCの力を擬似的に玲が再現したものである。Unite Dual Core(ユナイトデュアルコア)、それが彼女の今到達した技術の粋を集めたもの。

 雷と焔。
 その疑似邪神の力はオブリビオンマシンではないキャバリア程度で止められるわけがない。
「ひっ!」
「悪いけれどね、存分に怖がってもらわないといけないわけよ」
 玲は『ジェネム2』のコクピットハッチを蹴り倒し、その上に立つ。
 周囲を見回す。敵は未だ多い。けれど、これだけならば『フィアレーゲン』側の、レジスタンスの救援だと思われるだろう。
 玲は用意周到にレジスタンスのもぬけの殻となった拠点を破壊していく。

 それはまさに理不尽さを体現した働きぶりであった。
「ま、なるべくパイロットは殺さないようにって……パイロットとしては終わりかもしれないけれどね」
 玲の戦い方は正に超常そのもの。
 今後、この周辺国では生身単身の四つ腕の超常なる存在がキャバリアパイロットたちの都市伝説として語り継がれることだろう。
 蒼き焔と雷、その2つを手繰る邪神の如き存在。

 玲は己の存在をして恐怖の象徴となす。
「これこそ理不尽、すなわち……UDC!」
 覚えておくようにと、玲は生命は奪わずとも、暴虐の限りを尽くす。
 破壊と狂乱。
 それが『シーヴァスリー』のパイロットたちに深く刻み込まれる。彼らがもし、再び戦場に出てくる時はオブリビオンマシンで心を狂わされなければ無理だろう。

 それほどまでに玲の戦いぶりは凄まじく、あらゆる理不尽を煮詰めたような蒼い焔と雷でもって吹き荒れるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ふははは!
我が名を冠する国――フィアレーゲンの民たちよ!
今こそ貴様らが待ち望んだ希望の象徴たる我が旗印となって、諸君を導いてやろうではないか!」
『えええ……先程、レジスタンスの皆様の希望たるキャバリアと、エースであるフュンフ様を撃退した口で何をおっしゃっているのでしょうか……』

ふむ、周囲に残ったのは緑色のタヌキ軍のゴーレムたちか。
我が国民たちを襲おうというなら、この我が容赦はせぬぞ!

「【極寒地獄】に包まれて凍てつくがよい!」
『これは――お腹が空いたから、レジスタンスに恩を売って、お礼にご馳走してもらおうと考えている時のフィア様の目……!?』

くくく、この国の主たる我に貢ぐがよいわー!



「ふははは!」
 その笑い声は『フィアレーゲン』の跡地に響き渡る。
 レジスタンスの者たちは皆、一様にその声が何処からか聞こえてきたことは覚えているが、その声の主を見つけられなかった。
 そう、フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)は割りと上背がない。
 彼女の見事なぺったんならぬ、こう、えーと、スレンダーな出で立ちは『シーヴァスリー』のキャバリア部隊に追われる彼らにとって目に付かぬものであった。

「我が名を冠する国――『フィアレーゲン』の民たちよ! 今こそ貴様らが待ち望んだ希望の象徴たる我が旗印となって、諸君を導いてやろうではないか!」
 いや、わりとマジでそうじゃないのだが、フィアにとってはそうなのである。
 そんな事実はないのである。
 けれど、関係ないのである。言ったもん勝ちなのである。
『フギン』はそんな主の横暴なる振る舞いをたしなめるのに必至であった。

『えええ……先程、レジスタンスの皆様の希望たるキャバリアとエースである『フュンフ』様を撃退した口で何をおっしゃっているのでしょうか……』
 彼女の主は割りとマジで本気なのである。
 ひゃくぱー、本気なのである。本気と書いてマジと読むあれなのである。
 救いがあるのならば、フィアの言葉に耳を傾けている余裕がレジスタンスの者たちになったことであろう。
 彼らはこの土地を追われる。
 此処にとどまっていては、『シーヴァスリー』のキャバリア部隊による虐殺を免れぬのからだ。

 逃げるのに精一杯である。
 生きるということは斯くも難しく厳しいものなのだ。
「ふむ、周囲に残ったのは緑色のタヌキ軍のゴーレムたちか」
 いや、『シーヴァスリー』のキャバリアね。
 そんな些細な突っ込みすらもう『フギン』はする気力がなかった。勘違いでもなんでもいい。むしろ、レジスタンスを助けるために緑のタヌキ軍のゴーレムでもなんでもいいから、ぶっぱしてほしいとさえ思っただろう。
「我が国民たちを襲おうというなら、この我が容赦せぬぞ! 我が魔力により、この世界に顕現せよ、極寒の地獄よ……」
 詠唱が始まる。

 いつのまにか己の国民という風に認識しているフィアを止めるべくもない。
 このまま彼らを撃退してくれれば御の字。
『フギン』は不自然に押し黙る。このまま極大魔法をぶっぱすれば、『シーヴァスリー』のキャバリア部隊は足止めされ、双方に人的な被害はでない。
「極寒地獄(コキュートス)に包まれて凍てつくがよい!」
 放たれるユーベルコードは、『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を氷壁で出来た迷路の閉じ込める。
 破壊しようとしても、この氷壁はそう簡単に破壊できるものではない。
 ならば、レジスタンスたちが撤退をする時間も稼げるというものだ。

 しかし、『フギン』は気がついていた。
 フィアが何の打算もなく。
 それこそ人のためにということをするものではないことを。
『これは――お腹が吹田から、レジスタンスに恩を売って、お礼にご馳走してもらおうと考えている時のフィア様の目……!?』
 言わずもがな。
 フィアの瞳に輝くのはユーベルコードではない。
 食欲である!
 これは満場一致である。フィアはいつだって食べるものを優先する。ユーベルコードを使うとお腹が空くという致し方ない欠点が在るが故であるが、もはや最初がどちらであったのかさえ判別は付かない。

 空腹が先か、ユーベルコードが先か。
 いや、そういうロジカルなことでもないかもしれない。
「くくく、この国の主たる我に貢ぐが良いわー!」
 盛大に氷壁の上で笑うフィア。
 高笑いは盛大に響き渡り、人々は困惑しながらもなけなしの携帯食料を手渡してくれるだろう。
 それは救ってくれたから、というよりはお腹空かせた子を見かねて……と言ったほうが正しいのかもしれなかったが……。

 それでもフィアはきっと遠慮しないであろうことを『フギン』はため息と共に飲み込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
ぐふっ、シリアスモードの反動が(おめめぐるぐる
で、でもまだ倒れるわけにはー

ええ、使命も終わって今からぷらいべーとなう
ということでいきますよー

お呼びじゃなくても参じましょう!
私はクノイチ、フュンフさん!あなたに嫌われたとしても友でありたいと思う者です!

【威風堂々】とシーヴァスリー側に突っ込みますよー!
両手にはフローライトダガー
近接戦闘の乱戦はファントムシリカのお手の物
いつもながらに
「手数こそ正義!参ります!」
【疾風怒濤】でばっさばっさジェネム2を倒していきましょう
あ、遠慮一切なしで

さぁさ、今のうちに逃げてくださいねー
レジスタンスの人、フュンフさんを一緒に連れて行ってくださいねー
ここは世に忍ぶクノイチにお任せを!!

あ、フュンフさんひとつだけ
キャバリアがあれば、とあなたは言いました
ではあなたはキャバリアが無ければエース足り得ないのでしょうか?
今は無理でも、あなたはきっとあの機体『H.O.P.E』をいつか乗りこなせる

あの機体が最後に見せた行動はきっと……
『H.O.P.E』があなたに託した希望です



「ぐふっ……で、でもまだ倒れるわけにはー」
 戦いの反動からか、それともシリアスなことをした反動からか、どちらにしたってサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は目が廻るような思いであった。
 そう、猟兵としての戦いはオブリビオンマシンを打倒して終わりである。
 だが、サージェという個人としての戦いはこれからなのだ。
 使命が終われども、今からはプライベート。
 本来ならば必要としない戦いであった。けれど、他の猟兵たちがそうであったように、『シーヴァスリー』のキャバリア部隊による虐殺を見過ごしてはおけなかった。

 ここで虐殺を許せば、憎しみの連鎖だけがいずれ世界を覆っていことは明白であった。
「お呼びじゃなくても参じましょう! 私はクノイチ、『フュンフ』さん! あなたに嫌われたとしても友でありたいと思う者です!」
 サージェはレジスタンスたちと撤退する『フュンフ』の前に現れる。
 これまで築いてきた友好は、きっと先の一戦で瓦解したことだろう。サージェには少なくともそう思えたのだ。
 レジスタンスの旗印たるキャバリアを破壊し、レジスタンスをも壊滅させた。
 それが猟兵達のしたことだ。
 オブリビオンマシンを打倒するために仕方のないことであったと、オブリビオンマシンを感知できるのが猟兵である以上、証明しようがない。

 だからこそ、サージェは偽らざる心を伝えるのだ。
「……わかっています。貴方達が何をしようとしたのかは、僕にはわからない」
『フュンフ』の瞳にあったのは憎しみでもなんでもなかった。
 あのキャバリア――『H・O・P・E』の最期を知る者として、彼はかぶりを振った。
 サージェの言葉はきっと正しい。
 そして、自分の信じた正義もまた正しい。過ちは何処にもなかった。戦場の何処を探してもなかったのだ。
 ならば、互いの道が交錯しただけなのだ。
「だから、まだ僕らは友達のはずですよね」
 その言葉だけでサージェは十分だった。

 戦って、生命が在る。
 戦争しか知らぬ『フュンフ・ラーズグリーズ』にとって、その一歩は得難きものとなるだろう。
 平和知らぬがゆえに、その一歩こそが貴ぶべきものであったことをサージェは知る。
「ありがとうございます。でも、今は逃げてくださいね!」
 サージェは『ファントムシリカ』と共に戦場に飛び込んでいく。目指す先に在るのは『シーヴァスリー』のキャバリア部隊である。
 彼らを足止めしなければ、レジスタンスは虐殺の憂き目にあうだろう。
 ならばこそ、ここで彼らを止める。

 消耗した機体であれど、やるべきことはやらなければならない。
「いつもながらですけどね! シリカのお叱りは後で! 手数こそ正義! 参ります!」
 疾風怒濤(クリティカルアサシン)の如く戦場を駆け抜けるサージェと『ファントムシリカ』。
 彼女たちの機体はもうぼろぼろだ。
 フレームが軋んでいることはいつものこと。
 銃撃が飛び交う中、装甲はかすり傷ばかり生まれている。それでも誰かのために戦うことは誇らしいことだ。
「ここは世に忍ぶクノイチにおまかせを!」
 彼女は殿を努めてくれている。
『フュンフ・ラーズグリーズ』にとって、彼女は未だ友人の一人だろう。

 変わらぬ友情を誓ってくれる。
 それはこの争乱にあって、喜ばしいことであった。彼女の戦いぶりを見送り、『フュンフ・ラーズグリーズ』はレジスタンスたちと共に『フィアレーゲン』の跡地を離れていく。
 車両の中、『フュンフ・ラーズグリーズ』はサージェからの通信を聞く。
「ひとつだけ」
「――……なんです?」
「キャバリアがあれば、とあなたは言いました。ではあなたはキャバリアがなければ『エース』たり得ないのでしょうか?」
 きっとそれはそうなのだろう。

『フュンフ・ラーズグリーズ』にとって、いや、クロムキャバリアに生きる者にとって、キャバリアは力だ。
 力がなければ正義もない。
 正義を貫くためには力が要る。
 ならば、キャバリアがあればこそと思うのは当然のことであったのかもしれない。
 けれど、サージェは、いいえと否定する。
「今は無理でも、あなたはきっとあの機体に報いることができる」
 サージェは知っている。

 オブリビオンマシンは通常あのような行動を取ることはない。
 偽りの希望。
 その器に満ちていたのは、偽りならざる真の希望であった。虚の如き存在に満ちた希望は、偽りの希望にはならない。
 歪み果てるオブリビオンマシンであったとしても、あの最期の行動はきっと。
「『H・O・P・E』が貴方に託した希望があるからです」
 その事を忘れないで欲しい。
 サージェはそう願うだろう。人の希望が、人の思いが、人の願いが、人の祈りが、歪なる未来さえも正す時が来る。

 きっと来ると理解しているからこそ、サージェは通信を終えて、戦い続ける。
 今はか細き未来への可能性であったのだとしても。
 数多の出会いが寄り添い、紡がれ、より良い未来へとつながっていく。それを信じてサージェは微笑みの中、戦い続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クゥ・ラファール
諦めない、か。それもまた良いさ。
クゥの仕事は、さっきの機体を壊すことだけ。これ以上如何こうするつもりは無い。
――けど。その希望に免じて。もう一仕事、するとしようか。
クゥには無いもの、見せてもらったお礼だよ。

というわけで、シーヴァスリーの部隊を排除する。
DualFaceでの【制圧射撃】や、【推力移動】での敵の側面・背面を取るような動きで敵を追い立て、一箇所に集めたところをUCでDualFace・LooSterを一斉射し纏めて仕留める。
孤立している敵はEliminatorで斬り捨てる。

さあ、行くといい。
諦めないことで、得られるものはあるんだって――示して欲しい。



 緑色のキャバリアが戦場を疾駆する。
 手にしたライフルでもって『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を制圧し、さらに機動力で勝るように背面、側面を取り追い立てる。
「機体色に惑わされるな! あれは敵だ!」
『シーヴァスリー』のキャバリア部隊が次々と壊滅させられていく。
 他の猟兵たちがそうしたように、クゥ・ラファール(Arrow Head・f36376)もまた同様に『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を打倒していく。

 虐殺が許せなかったからではない。
 いつだって戦争というものに虐殺と略奪はつきものだ。
 そこにきれいであるとか、そうでないとか、そういった価値観は意味を為さない。
 あるのは戦火の痕だけだ。
「諦めない、か」
 小さく、クゥはキャバリアのコクピットの中で呟く。
 彼女は見ただろう。この争乱の世界の中で、平和知らぬ者たちが見た希望を。

 己も、あの『エース』、『フュンフ・ラーズグリーズ』もまた小さき者である。
 それは否定しようのないものであった。
 戦場における最小単位の一つでしかない。だからこそ、クゥは彼の行動を見て思ったのだ。
「それもまた良いさ。クゥの仕事は、さっきの機体を壊すことだけ」
 そう、猟兵としての戦いはオブリビオンマシンの破壊だけである。
 本来であれば、こうして猟兵達が残って虐殺を阻止する必要はない。世界の破滅に関わることでもない。
 クゥもまたそう思っている。

 けれど、彼女は見た。
『エース』の齎す希望の光を。
 オブリビオンマシンという偽りの星の中にありて、その希望だけが真であったように。己もまた、それに突き動かされるのだ。
「――けど。その希望に免じて。もう一仕事、することに決めた」
 自分の仕事にないこと。
 今までの彼女であれば、そんなことをする必要性も感じなければ、必然性もなかった。
 破壊して終わり。
 ただそれだけであったはずなのに、今は別のものに突き動かされている。

「クゥには無いもの、見せてもらったお礼だよ」
 レジスタンスの撤退する車両に迫る『シーヴァスリー』のキャバリアをクゥはキャバリアに搭載された武装の一斉射でもって足止めする。
 破壊してもよかった。
 撃墜してもよかった。
 けれど、あの希望の光を見た後なのだ。失わせていい生命はない。
 オブリビオンマシンだけが、この戦乱を歪ませているのならば、その尽くを彼女は破壊するだろう。

 そうした使命を彼女は帯びている。
 戦場にありて、鋼鉄の秩序(アイアン・ロウ)こそ必要であるように。
 孤立した『シーヴァスリー』のキャバリアを高出力のレーザーブレードが切り裂き、その機体を大地に叩き伏せる。
「――っ、貴方は」
 車両の中から『フュンフ・ラーズグリーズ』の顔をモニターが認識し、抽出する。クゥは、その顔を覚えたかもしれないし、忘れるかもしれない。
 けれど、彼は己が見たことのないものを見せてくれた。
 希望の光。

 それはこれまで諦観と虚無だけが心を占めていた彼女にとって、眩くも目を反らせぬ輝きであったかもしれない。
「さあ、行くといい」
 クゥは告げる。
 ここは自分が抑える。全てを諦めてしまった自分では辿り着けない境地があるのかもしれない。
 未だ自分の心には諦観がある。
 けれど、諦めないのならば、得られるものがあるのかもしれないと彼女は示された。
 きっと『フュンフ・ラーズグリーズ』が生きている限り、クゥの中にはその欲求が満ちていくことを知る。

「諦めないことで、得られるものはあるんだって――示して欲しい」
 どれだけ打ちのめされても。
 どれだけ困難に直面しても。
 歩みを止めない限り、諦めない限り、たどり着く事のできる光があるのだと示して欲しい。それならば、クゥの胸の内に満ちるのは諦観と虚無だけではないはずだ。
 その燈火のように暖かさをクゥは、今だけは護るために己の力をふるい、レジスタンスたちを無傷で逃し切る。

 あの先にこそクゥの求めるものが、彼が示した路の先があることを信じるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月11日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#クロムキャバリア
#ACE戦記
#フィアレーゲン
#シーヴァスリー


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠斑星・夜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト