殲神封神大戦⑰〜どなたのメルでございます?
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予知、それは猟兵の活動を支えるものであり、オブリビオンが事を起こす前に討滅に向かうための絶対有利。
オブリビオンは漏れるはずのない計画を察知され、実を結ぶ前に滅ぼされる。そうして、猟兵は世界を守って来た。
しかし、予知を行うということはオブリビオンの計画、思惑を覗き込むこと。はたしてその視線が一方通行であるなど誰が定めたか。
我々が深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗き返しているのだ。
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「あなたのメルでございます。本日も殲神封神大戦の依頼でございます」
メル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が集まった猟兵に声をかける。だが、依頼参加者に毎回何がしか食品を供していた彼女が、今回はなぜか何も配らない。
「今回の敵は『鴻鈞道人』。自らが骸の海であると称し、妲己の思惑さえ超え封神されることなく張角を唆した、現状全ての元凶感を出している方でございます」
有力敵のほとんどが出るたびにこちらの思惑、事前に知っている情報を超えた話をしてくる今回の戦争。鴻鈞道人は『左目』を得た骸の海であり、完全に滅ぼすことは不可能だという。さらには帝竜が用いたとされる『再孵化』を用いて倒れた者どころか今生きているオブリビオンさえ蘇らせるなど、正に常識外れ、余りにも何でもありが過ぎる存在だ。
「で、そんな彼が今どこにいるかと申しますと……ここです」
そう言って指さすのは、メル自身の豊かな胸の谷間。
「まあ、正確には来る予定というだけなのですけど。と言いますのも、この鴻鈞道人、どうやら予知したグリモア猟兵の体を乗っ取る力があるようでして……はい、今回直接戦うのは、私自身でございます。骸の海さえ埋もれたくなってしまうなんて、我ながら罪なおっぱいでございます」
猟兵たちにざわめきが走るが、ぷるんと胸を揺らすメルの調子はいつもと変わらない。
「まあ、私はそんなに強いわけではありませんが、鴻鈞道人パワーのお陰で物凄く強くなれるみたいです。ユーベルコードは鴻鈞道人のものを使いますが、戦闘スタイルは私に準ずる形になるみたいですね」
メルの戦闘スタイルは魔法と剣を組み合わせ、銃撃も交えるオールレンジなものだ。本来はその分特別強い間合いはないのだが、鴻鈞道人によって底上げされた力で全てが得意距離と化してしまうという。
「どうやら私の意識は基本なくなるみたいで、お知り合いに声をかけて頂いても申し訳ありませんがお返事できません。また鴻鈞道人を倒せれば憑依は剥がれますが、言いました通り滅茶苦茶強いです。手加減していたら多分皆様が死にます。ですので、鴻鈞道人撃破を最優先、余計なことは一切考えぬようお願いいたします」
なまじメルを助けようと手加減すれば、その一瞬で猟兵の方が屠り去られる。まず鴻鈞道人を全力で倒し、その上で生きていれば僥倖と考えねばならない。
「形見の品にされても困るので今回の粗品は帰って来てからお渡しします。まあ死ぬと決まったわけではありませんし? それでは無理矢理人の中に入ってきちゃうセクハラ道人さんのところへ、ちょっと行ってまいります」
少しだけ声を震えさせながら、笑顔のままでメルは猟兵と共に封神武侠界へと向かうのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。実はメルが選ばれたのは消去法(シャイニー:壊れても何か直せそう オーロラ:近接特化で弱点明確 ミルケン:マスク+ボディ三人で動かし辛い アレクサンドラ:自分が傷つくの一切気にしない まどか:一人抜けてレベル低い)。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する』
まず、鴻鈞道人は戦闘開始時既にグリモア猟兵メル・メドレイサと融合しています。
強敵おなじみの先制攻撃ですが、鴻鈞道人のUCは基本自己強化ばかりです。自身を超強化した後、メルと同様の動き、装備で攻撃してきます。
近距離ではエンチャント魔法+剣技、中距離では海賊旗ぶん回しや短射程の魔法に毒物投擲、遠距離では機関銃乱射や広範囲魔法を主に使い、それに鴻鈞道人のUCによる強化を乗せて戦います。その他装備や技能は状況に応じて使い分けてきます。何ができるかはメルのステシをご参照ください。ただしどの技能も鴻鈞道人憑依によってレベルは超強化されています。オープニング公開から依頼終了まで、レベルアップ以外メルの装備や技能はいじりません。
メル自身の意識はなく、お知り合いなどが声をかけたり、あるいは彼女の興味を引きそうなことをしても効果はありません。
倒せれば鴻鈞道人は剥がれます。ただしメルが生きているかどうかは分かりません。手加減して勝てる相手でもないので、他の強敵と同様殺す気で行くことをお勧めします。
それでは、敵が誰であろうと勝利するプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』
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POW : 肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
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夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
了解致しました、何とかやってみますぅ。
『FAS』を使用し飛行、[空中戦]による回避行動をとり、『FMS』のバリアと『FXS』の結界、『FGS』の重力結界を展開しますねぇ。
残る『F●S』各種は全て『牽制』に使い、この状況でも上回ると思しき『手数』の優位を用い道人の行動を制限し対処、『継戦可能な程度』に被害を軽減出来れば十分ですぅ。
可能になり次第【炳輦】を発動、飛行手段を切替えますねぇ。
メルさんは『【高速飛行UC】が無い』ですから、スキルを強化していても『飛行速度』は私が上でしょうし、瞬間移動も可能ですぅ。
後は、残った『祭器』と『時空切断の嵐』を使い、攻撃を仕掛けますねぇ。
死絡・送
ジガンソーレに乗って出撃、助けるために全力を叩き込む。
「全力でやる、助ける為の残虐ファイトだ!」
仲間達と協力しつつ彼女の回復や蘇生は味方に任せて自分は、全力で彼女を叩く事に専念。
助ける為には全力で倒さねばならぬ以上、暴力の限りを尽くすのみ。
相手の先制攻撃はオーラ防御と念動力を組み合わせて凌ぐ。
ブリザードインパルスを一斉発射と薙ぎ払いを組み合わせて
発射しラッゾプーニョは重量攻撃と貫通攻撃を組み合わせてぶっ放す。
オーラ防御と根性で耐えつつ、ロボの武装を駆使して戦い
ユーベルコードのプロミネンスバスターをぶっ放す。
形定まらぬ渾沌の地。今猟兵の前に現れたのは、まるで豪華なレストラン、あるいは高級ホテルの食堂のような広く煌びやかな場所。そこにいるのは改造したメイド服を着た豊満な少女だ。その名はメル・メドレイサ。グリモア猟兵でありこの渾沌の地へ猟兵を転送した者。
だが普段彼女が猟兵に見せる甘え媚びるような態度はなく、黙って軽機関銃を前に向ける。その向く先は、誰あろう彼女自身がこの地に呼び寄せた猟兵たち。そのままメルは何の躊躇もなく引き金を引いた。
爆音と共に大量の弾がばらまかれ、猟兵を襲う。
「全力でやる、助ける為の残虐ファイトだ!」
死絡・送(ノーブルバット・f00528)は愛機『ジガンソーレ』の中でそう叫び、その弾丸を機体で受け止めた。
助ける、という彼の言葉通り、この行動はメルの本意ではない。殲神封神大戦の一つとして鴻鈞道人との戦いを依頼した彼女は、その予知を逆用されこの地に強制転移、その体を彼に乗っ取られてしまったのだ。その力は元とは比較にならないほど強化されており、回復や蘇生に気を裂いている余裕はない。全力で叩かねば、猟兵の側が簡単にやられてしまう。
もちろんすべては承知の上。こうしなければ鴻鈞道人を倒すことは出来ない。それが分かっているから、送は念動力で弾丸の勢いを弱め、オーラを張って壁としてその銃撃を愛機に受けて耐えた。
「了解致しました、何とかやってみますぅ」
銃撃が送に集中している間、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も『FAS』を装備して飛行し、空中戦に持ち込む構えを取った。そのままあえて彼と離れ、一丁しかない銃では同時に狙えない場所へ移動しようとするるこる。そちら側へ開いている手をメルは向ける。
「切り裂け氷刃」
声はそのまま、しかしまるで彼女と違う口調で言うメルが言うと、手から溢れる魔力が氷の竜巻となって空中のるこるを襲った。彼女の使う術には命を削ってエレメンタル・ファンタジアを完全制御する術があるが、それを鴻鈞道人の力で補いノーリスクで使っているのだろう。
光のバリアに宝貝の結界と二重の防御を張りそれを防ぐが、氷刃はそれすら切り刻んでるこるの体を氷漬けにしようとする。さらにそこに重力波を発生、氷を下方へ少しでも押しのけることで、どうにか深い傷を負うことは防いだ。
「そうか、然らば」
ならばと手を変えようとするメルだが、その手を戦輪が掠め集中をさせない。さらには上空からは砲撃能力を持つ兵装を一斉に差し向け、豊満であるが大柄ではないその体を火力で埋め尽くした。
仕方なく使う魔法を防御用のものに変えてそれを防ぐメル。鴻鈞道人由来の圧倒的な実力であれば並のユーベルコード級の魔法を多数撃ててもおかしくないと、るこるは彼女の手数を削ぐことに専念した。
「仕方なし。肉よ、渾沌と変われ」
一度魔力を止め口を開けると、そこから触手のように長い舌が塗らりと伸びた。その舌をガラスの剣に絡みつかせると、それを振り回しながら空中を舞いるこるへ迫った。
「これならば紙に等しい」
舌でその剣を一閃し、FMSのバリアを容易く切り裂く。並の腕よりもよほど筋力にすぐれすそれは、鴻鈞道人が己のユーベルコードで彼女の舌を変質させたものだろう。
「助ける為には全力で倒さねばならぬ以上、暴力の限りを尽くすのみ」
飛び上がったメルにジガンソーレが冷凍ガス『ブリザードインパルス』を振りまいて叩き落としにかかった。機関銃の掃射を体に受け、既に装甲は歪みきっている。軽減してこれなのだから、まともに受けていれば機体は大破していただろう。
「涼風よ。燃えよ」
今度はメルが開いている手を下に向け、火炎放射を放った。それに対してもオーラを再度展開するが、既に装甲は半壊、送自身も熱で炙られる。
「このくらい……!」
こうなれば自身も根性を見せて耐えるしかない。元より無傷で勝てるなど思ってはいないのだ。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
狙いが上下に方向に分かれた隙をついて、るこるは【豊乳女神の加護・炳輦】を発動した。その効果で結界を張りながら、高速でさらに高空へ飛び回るるこる。
「薄衣を幾枚重ねようと無意味」
メルはさらに剣を振り、防御結界さえ切り裂こうとする。だが、確かに結界は切れたが、その間にるこるは凄まじい速さでその場から離脱していた。
メルも飛んで後を追うが、その速度はるこるより襲い。
「メルさんは『【高速飛行UC】が無い』ですから、スキルを強化していても『飛行速度』は私が上でしょうし」
メルは浮遊魔法こそ使えるが、ユーベルコードでの飛行能力はない。鴻鈞道人の力で魔力の強化は出来るが、異形化以外ない能力を付与することは鴻鈞道人にもできないのだ。
高速移動と瞬間移動を繰り返し、メルを翻弄するるこる。そうして移動が定まらなくなった場所に、巨大な鉄拳が飛び掛かった。
「片腕くらいはくれてやる!」
ロケットパンチ『ラッゾプーニョ』が空中で右往左往するメルの体に叩きつけられた。元々肉弾戦がそこまで得手ではないのだ、その重量をまともに受ければ150cmにも満たぬ小さな体は大きく揺れる。
「首の方を所望しよう」
自身の体に押し付けられる拳を、舌の剣で一閃し両断する。だが、その身を下に向ける前に、彼女の前方に斬撃が現れた。
「返してもらいますねぇ」
時空切断の嵐と攻撃用兵装の一斉攻撃が、メルの体を切り裂いた。白肌に赤い血が流れるが、それで躊躇してはならぬとるこるは容赦なく攻撃を続ける。
「屍で良ければ構わぬぞ……」
多数の兵装を撃ち落とそうと、広範囲に真空波を乱れ撃つメル。だが下方からも彼女を焼こうとする力があった。
「太陽の紅炎が一切の邪悪を焼き尽くす、プロミネンスバスター!」
送が【プロミネンスバスター】を放ち、太陽のオーラでメルを包み込む。とっさに機関銃をそちらに乱射に止めようとするが、オーラと炎は弾丸では消しきれない。
その代わりに貫通した弾丸がジガンソーレの機体をさらに破壊していくが、射撃武器を撃てる機構さえ残れば攻撃には問題はない。
仲間を利用された怒りを燃料にした魔炎がメルを包み、ついにその全身を焼く。
「ぐ……体がもたぬか……!」
いかに鴻鈞道人が強くとも、憑依する体を失えば今はもう戦えない。それが分かっているから、二人とも手は緩めない。救いがあるとすれば、それはその先にしかないのだから。
一騎当千の力を得たグリモア猟兵は、幾度となく彼女の案内に応えた二人に挟まれその身を破壊されるのであった。
大成功
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ホーク・スターゲイザー
【トゥットファーレ】
アドリブ・絡みOK
デュークと共に呼び出した黒崎は凍てつく威圧感も狂気も感じさせない虚無感を漂わせていた。
死をもって利権への執着への無意味さを悟り自らを嘲笑する。
無理や不可能と散々言うと。
「できるね!やってやるよ!」
怒りながら刀を具象化させて対峙する。
感情的になりやすい性格を知っていた為、そこを利用した。
軽業と第六感を用いた回避に魔力を用いたダッシュによる縮地、相手の動きを見切りカウンターを繰り出す。
所有者が斬りたいと思ったものを斬れる太刀で斬る。
破滅の未来で戦った黒崎に比べれば劣るがそれでも異常な戦闘能力は健在。
格闘技でダメージを与えつつ加減を行い死なせないようにする。
「この中身が癪に障る真似をしたからだ」
ベアトリス・ミラー
【トゥットファーレ】
アドリブOK
第六感と相手の攻撃を予測し、見切りで回避を行う。
「鴻鈞道人を倒してメルさんを助けましょう!」
哪吒の時に創り出した巨人をダウンサイズして創り出す。
絶対に助け出すという決意、挫けぬ心を持って挑む。
「デュークさん、頼みが。鴻鈞道人を倒した後のメルさんの治療に」
「そういうと思って既に用意済みです」
薬やら医療器具やら用意済みと話してくる。
黒崎とネハンを中心に相手の戦力を削ぎ、動きの抑制を狙う。
「こちらも追加で!」
呼び出したのは幽霊船と先端に佇む喪服の女性。
黒い霧状になっては相手に異常を引き起こして動きの抑制を行う。
ジェイク・リー
【トゥットファーレ】
アドリブOK
「黒崎を呼び出すか」
両者の因縁に関わり結末を見届けた故に複雑なところもある。
(覚えていないのか)
眼中になかった事を気にせず黒銀の滅牙を抜き、剣に形成した終極の竜器による二刀流で対抗する。
得た情報は味方に共有しアシストしながら立ち回る。
救う力と討つ力を合わせた黒銀の滅牙は紫色の刀身に変わる。
第六感による察知、龍脈とダッシュによる縮地、翼や触手は斬撃波による切断で対処。
フェイントによる不規則な攻め、残像を残して迷彩からの不意打ちを繰り出す。
「相変わらず出鱈目な能力だ」
黒崎の能力に気後れしながらも自然とお互いに隙を狙う戦いになる。
「返してもらう」
アリス・スラクシナ
【トゥットファーレ】
アドリブOK
早業で獣の盟約を抜いてジャストガードと受け流しで対処を行う。
「悪趣味が過ぎるな」
エイルを呼び出して近接戦にて対応する。
水の属性攻撃を行いステイシス・ポールを取り出して足元を凍結させ動きの抑制を狙う。
「これならば!」
触手に魔力溜めで創り出した元素の剣を飛ばして数を減らすようにする。
距離をとってライフルに形成したリージョンによる射撃を行う。
戦いによってグリモア猟兵の体は傷ついた。だが、中にいる鴻鈞道人にその影響はない。所詮借り物の体でしかないし、仮にそれごと滅ぼされたとて骸の海そのものを名乗る彼が完全に滅されることなどありえないのだ。
そうしてその傷を出口にするかのように、メルの体から白き天使の翼、白きおぞましき触手、白き殺戮する刃が生える。鴻鈞道人の力、【肉を破り現れる渾沌の諸相】を持ってメルは猟兵たちに先制の一撃をはなった。
「悪趣味が過ぎるな」
自分のいいように他人……それもこちらの仲間の体を作り替え使うそのやり方。それにアリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)は吐き捨てながら攻撃を『獣の盟約』で受ける。その一撃は極めて重く、受ける場所や力の流れを慎重に調整してすら武器を取り落としそうになるほどの衝撃だ。
「鴻鈞道人を倒してメルさんを助けましょう!」
その強敵を前にして、成すべきことはただ一つ。絶対に助け出すという決意、挫けぬ心を持ってそれを高らかに宣言し、ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)も触手の殴打を避けた。太く、長くうねる触手は当たれば一撃で体を持っていかれるだろう。猟兵としての実力は極端に高いとは言い難いメルだが、それでもこの攻撃を放てるとは鴻鈞道人の力はまさに恐るべしと言ったところか。
その圧巻の先制を、オーバーロードの力で強引に受け止めようとする者がいた。ホーク・スターゲイザー(六天道子・f32751)は仲間に自分の分までの対処を依頼し、ユーベルコードの発動に全力を注いでいた。
「黒崎を呼び出すか」
その様子を、ジェイク・リー(終極の竜器使い・f24231)が『黒銀の滅牙』と『終極の竜器』の二刀流で攻撃をさばきながら言う。
(覚えていないのか)
その召喚しようとしているものとの因縁を知るジェイクはそれに対し複雑な感情になるが、今はそれどころではないと防御に専念していく。
召喚した者を数多く使い戦うのが得意戦術であるホークは、どうしてもユーベルコード頼みになりがち。即ち敵の先制にそれで対処することは出来ず、どうしても最初は好きを曝してしまうことになる。それをオーバーロードによる大幅な強化と、仲間の援護でホークは耐える。
隙だらけのホークを切り裂こうとする殺戮の刃の前にジェイクが躍り出て、どうにか受け流して彼を守る。うねる悍ましき触手はアリスがその動きを武器を当てて何とか逸らし、天使の翼で飛翔していくメルはベアトリスが引きつけて時間を稼ぐ。三人がかりでなお、鴻鈞道人の力を得たメルの四人分の猛攻は激しい。
疲弊が重なり、その守りも破られる、その時。
「力を貸してくれ」
ホークがついに【守護者召現】を発動した。それに答えまず現れるのは、黒いレインコートを着た男。
黒崎徹。敏腕刑事と汚職警官の二つの顔を持つ警察官であり、人の枠を逸脱した力を持つ男。だがかつてホークを恐怖に陥れたその男は、まるで何もやる気がないかのような虚無感すら漂わせていた。
「墓に着物は着せられないとはよく言ったもんだよ。死んで分かった、利権なんざ欲しがっても意味なかったってな」
英霊……つまり一度死した存在となれば生前あれだけ貪った利権に何の価値もなくなる。悪党であるであるその男は、その悪の根幹を奪われ存在を揺らがされていた。
それに対し、彼を知るホークは焚きつけるように言う。
「そうか。なら帰れ。あの時のぎらついたお前を期待したが、そんな腑抜けになってしまってはもう無理だな。あの強敵に挑むなど今のお前には不可能だろう」
わざとらしい煽りの言葉。だが、それを聞いた黒崎は怒りに燃えて刀を抜く。
「できるね!やってやるよ!」
メルへ向かって行く黒崎。冷酷な割に感情的な性格を知っていたので利用してみたが、ここまで上手くいくとは。あるいは彼も死して何かが変わっているのかもしれない。
「これが私の力です」
彼を援護せよとベアトリスが差し向けるのは、【神世創造】で生み出した巨人。かつてはオブリビオンマシンに対抗するため5メートルの巨躯だったそれは、敵や味方と合わせるために人間サイズまで縮んでいる。今のメルはただ大きいだけでは何のアドバンテージにもならない強敵、それも踏まえての事だ。
創造物を差し向け、自分は先を考えベアトリスは後方へ下がる。
「デュークさん、頼みが。鴻鈞道人を倒した後のメルさんの治療に」
「そういうと思って既に用意済みです」
それに答えるのはいつの間にか現れた黒人の男。彼もまたホークに呼び出された存在であるデュークは、薬や医療器具は用意済みとベアトリスに告げた。
殺す気で行かねば勝てない。だが殺したいわけではない。打てる手は打っておくべきだと、ベアトリスはあえて仲間と創造物に攻撃を任せ自分は後に備える。
「お前も私。手を貸せ!」
数は力だ。アリスも【邪神エイル】を召喚し、ともに触手の抑え込みに回る。一人では押されながら凌ぐのが精一杯だったそれも、二人掛かりなら同等に押し返していける。
「この力、鴻鈞道人のものしか使っていない……そろそろ来るぞ!」
ジェイクが交戦で得た情報を仲間に伝えた。相手は鴻鈞道人の力にメルの力を使える。渾沌の力が押され始めたらそちらも使い出すであろうことは予測はついていた。
「射貫け」
その予測を的中させるかの如く、触手の先端から魔力の光線が放たれた。自身の末端からならどこからでも出せるその射撃は、触手でリーチが大きく伸びた今となっては高い奇襲性も持っている。
それをとっさに屈んでアリスは躱し、そこを打ち付けようとする触手をエイルが抑え込んだ。
「そろそろ降りてきてもらおうか」
「断る」
ジェイクは一気に飛び、メルの翼を切り落としにかかる。それに対しメルは開いている方の手を電撃の刃に変え、それを迎え撃った。
救う力と討つ力を合わせた黒銀の滅牙は紫色の刀身に変わり、それと交差する。封神武侠界に巡る龍脈の力でメルの魔力を押しとどめ、高めた魔力で高速化した攻撃を第六感を働かせ避ける。
高速の空中戦。メルの刃はジェイクの命を狙うが、ジェイクが狙うはまた別のもの。
「返してもらう」
高速の斬撃波で、メルの翼と触手を切り落とした。ユーベルコード故にまた生やすことは出来よう。だが、浮遊の元となる者を切り離せば相手はバランスを崩し地に落ちる。そこに待ち受けていたのは。
「こいつを殺さず切ればいいんだろ、見てな!」
落下地点に一瞬で移動した黒崎が、切りたいものだけを切れる剣でその体を一閃する。カウンターを取るかのように落下に合わせた切り上げがメルとその中にいる鴻鈞道人を切り裂いた。
さらにはメルが体を起こすのを待たず、格闘戦で強引に組み伏せていく。元々格闘技の嗜みのないメルはインファイトには弱いが、それを片腕から生えた渾沌の刃で補い応戦するメル。
「再孵化の極み。皮とはいえその力よ」
メルは全身に火水土氷雷光闇毒風の九属性を滾らせ、黒崎を押し返そうとする。それに対して引くことなく、黒崎は強引に殴り合いを続けた。
かつてホークの見た最悪の破滅程でなくても、その力は高い。
「相変わらず出鱈目な能力だ」
その力に呆れつつも、ジェイクも隙を伺い参戦していく。どうせ相手は強い。複数掛かりでちょうどいいくらいだ。
「こちらも追加で!」
さらにベアトリスも力を振り絞る。幽霊船と先端に佇む喪服の女性を召喚し、黒い霧状になっては相手に異常を引き起こして動きの抑制を行わせる。
「吸収能力も持つか。弱くとも小器用な娘よ」
メルの体から粘液を噴き出させ、それに異常の霧を吸収させる。これもメルの能力を操ったものだが、防御に手を取られればその分他が疎かになるのは当然のことで。
「これならば!」
毒を吸収するならこちらは吸えまい。アリスが水の属性攻撃を行い『ステイシス・ポール』を取り出して足元を凍結させ物理的な拘束を図った。これでもう飛翔は簡単には出来まい。
さらに触手へ魔力の刃を向けての切り落としと、長柄である程度距離があったことを活かしさらに下がっての狙撃でさらなる妨害をかけていく。
全員からの怒涛の連撃。その意思の結実はここに。
フェイントからの不規則な攻め、ジェイクのそれと黒崎が呼応し対に魔力に守られたメルの体を撃ち抜いた。残っていた白い刃が折れ、彼女の体から一度渾沌の諸相が消える。
「この中身が癪に障る真似をしたからだ」
何も聞かれぬうちにそう言って消える黒崎。あとは完全にはがれたのちに治療を施さねば……そう考え、ホークは医療役の召喚を維持し続けるのであった。
大成功
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死絡・送
情報収取で敵影を探す。
「ぶっぱなしはしたが、これで終わるかはわからん」
最後まで責任をもって事に当たろうと味方と協力して動く。
見事に鴻鈞道人との融合が解かれていれば良いが、そうでない場合は
戦闘継続。
オーラ防御でバリヤーを張り油断せず、迂闊に接近せずに警戒。
メルさんを乗っ取った鴻鈞道人が襲って来たら
「まだ生きていたか、きっちりやってやる!」
ビーム兵器のルーチェ・デル・ソーレを発射し貫通攻撃
いざとなれば、機体を飛び出しノーブルアンカーで武器受けとカウンター反撃する。
「悪いな、ジガンソーレが遠隔操作できないと言った覚えはない」
と念動力による遠隔操作でジガンソーレを操り光子魚雷一万発発射!!を使用する。
「ぶっぱなしはしたが、これで終わるかはわからん」
最後まで責任をもって事に当たろうと一旦離脱後再度敵を探していた死絡・送(ノーブルバット・f00528)。終わっていればそれでいいとは思っていたが、果たして未だ鴻鈞道人の憑依は解かれてはいなかった。
激戦によってメルの体は既に満身創痍。この体も捨て時かと鴻鈞道人はその中で考えていたが、現れた相手を見た時にその体に余裕の嘲笑を浮かべさせた。
「まだ生きていたか、きっちりやってやる!」
「そのような壊れかけの我楽多で何をしに来た? まあ、私が言えた義理ではないかもしれないがな」
その前にいるのは送の愛機『ジガンソーレ』。先に鴻鈞道人と一度戦ったその機体は、その時のダメージによって既に半壊仕掛けていた。
「大人しく帰っていればいいものを。ならばその鉄屑、捨てやすいよう切り分けてやろう」
瞬時に駆け寄り、片手を振るうメル。その手は肘から先がまるで骨をそのまま削りだしたような刃となり、そこを炎の魔力が包んで溶断剣と変えていた。
恐らくは右腕を渾沌に変換しそこにメルのユーベルコードを乗せたのだろう。その刃がジガンソーレを焼き切らんと迫った。そしてその刃が機体を宣言通り鉄屑に変えるそのはずであったが。
「お前の強さはもう分かっているからな……何もしてないわけないだろう!」
ジガンソーレの前面には最後の出力を振り絞ったバリアと、こちらも送が命を懸けた這ってオーラの壁が張られていた。これは敵を探している時から敵襲に備えずっと張り上げていたもの。それ故に準備に要した時間分だけ厚く、精密に張ることができている。そのバリアが、赤熱の剣と化したメルの右腕を抑え込み、機体に届く刃を浅くした。
そして考えていたことはまだある。迂闊に接近せず、会敵後も距離を取らぬよう立ち位置を取った。結果機関銃以上に一撃は重い斬撃を相手は選択したが、これならば一部が深い分機体の全壊は防ぎやすい。
攻撃用の兵器、それもまだ生きている。
「押し返せ、ルーチェ・デル・ソーレ!」
切り下ろしながら移動するメルの体がちょうどそこに来たところで、ビーム兵器『ルーチェ・デル・ソーレ』を放った。接射されたビームはメルの体を貫き、その体を機体から離れさせる。
「下らぬ真似を……だがこれで、それも使えまい」
剣でビームを抉りだし、そこから今度は電撃を流し込むメル。魔法剣の特性を生かし内部機能を破壊し、他の兵器までも動けなくしたのだろう。
そしてジガンソーレの胸部まで切り下ろされた時、コックピットの装甲が開かれ送本人の顔が外に除いた。
愛機の受ける壮絶なダメージに送は怒りを燃やすが、敵がまだ離れていない。ならば策に変更はないと、自らその傷をこじ開け、武器を手に躍り出た。
「お前を直接殴ってやりたいと思っていた所だ、ちょうどいい!」
『ノーブルアンカー』を手にメルに躍りかかり、カウンターにその体を一発殴って鎖を絡みつかせる。メルが極度のインファイトに弱いことは先の猟兵が示してくれたのだ。送はそれに倣って相手を抱きすくめる程の近距離戦に持ち込んでいく。
「動かぬ玩具を捨てるは好判断だ。私もそろそろそうしようと思う。この体と共に死ぬがいい」
メルが死んだとて自分に不都合はない。存分に道連れにすればいいと、自ら諸共送を刺し貫こうとする鴻鈞道人。
だが、何一つ捨てるつもりは送にはなかった。
「悪いな、ジガンソーレが遠隔操作できないと言った覚えはない」
搭乗者を失ったはずのジガンソーレが動き出す。その動力は送の念動力。もちろんこんな状態で精密な操作は難しいし、そもそもほとんどの機能は破壊されている。
だからたった一度、魂を繋いだ機体に、己が猟兵を始めた時から共にあったこの技を託す。
「全てを光に変えて消す!! 光子魚雷、射て~~~~~~~っ!!」
ジガンソーレの全身から、【光子魚雷一万発発射!!】が放たれた。大正を指定できる光子魚雷がメルだけを、そして願わくばその中の鴻鈞道人だけを滅ぼせと全弾叩き付けられる。
「下らぬ……死したとて私の……骸の海の中に入るだけだというに……まあ、良い……ここは、引こう……」
メルの口を通して放たれる鴻鈞道人の言葉。それは本心か、それともただの負け惜しみか。
光の爆発が止んだ時、そこには全身に深い傷を負い倒れる小柄な時計ウサギの体だけが残されていた。送はその体に駆け寄り、抱き起す。その服も破れた豊かな胸に注視してみれば僅かに動いているようにも見えるが、大きさのせいでただ重力に揺れているだけにも見えてしまう。
「生きているのか……? とにかく、急がねば……!」
治療体制を整えていた仲間がいたはずだ。まずは彼らの元へ運ぼう。ジガンソーレは今度こそ大破。修理は可能だろうが今すぐ移動手段には使えまい。
送はしばし捨て置くことを愛機に詫びつつ、メルを横抱きにしたまま仲間の元へ走るのであった。
大成功
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