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殲神封神大戦⑯〜愛言葉を唱えてる

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●愛言葉を唱えてる
 繊細で細やかな彫刻は、君のために誂えられたもの。
 この一室で口にする言葉は、決して誰にも聞こえない。

 それらに秘める想いを紡ぐのも自由。
 語りきれない気持ちを更に吐きだすも自由。

 ――さぁ、愛言葉を唱えて。

●内緒話は君だけに
「戦争お疲れ様。今からリラックスタイムだよぉ」
 揺歌語・なびき(春怨・f02050)がゆるゆると説明を始める。
「皆には、封神武侠界の人類の祖とされる神、三皇『女媧』の祠に行ってほしいんだ。女媧はオブリビオンじゃないんだけど、それでもこの祠は『消えることのない炎』と『固まることのない泥』で満たされてるんだよねぇ」
 あまり行きたく場所だとは思うんだけど、と人狼は続ける。
「そこに踏み込むと、いきなり『固まることのない泥』に四方を囲まれる。その後泥はすぐ固まって、美しい彫刻の施された『愛を語らないと出られない部屋』に変わるよ」
 猟兵達は今なんつった? という反応と、ああそれかぁという反応が半々。
「まぁ名前の通り閉じ込められちゃうんだけど、愛する誰か、あるいは大好きな趣味等について真摯に語ればこの魔力を浄化できて、皆も脱出成功!」
 やったね、簡単! 笑顔でなびきはダブルピースした。するな。
「恥ずかしいしすごく困っちゃう人も居るよねぇ、わかるよ。おれはいくらでも語れるけど」
 聞いとらんわ。何人かがそう思ったかもしれない。
「個室だから皆の話は誰にも聞こえないし、話し相手や聞き手が欲しかったらおれも同行するし。ね、簡単!」
 のんびりリラックスしていこう。そう言って人狼は血桜を咲かせた。


遅咲
 こんにちは、遅咲です。
 オープニングをご覧頂きありがとうございます。

●注意事項
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「殲神封神大戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 プレイングボーナス……誰か(あるいは何か)への愛を語る。

 内容はすきな人、家族、友人、憧れのアイドル、趣味、大切なもの、なんでも構いません。
 美しい彫刻は、話す内容によってお相手や物をモチーフにした彫刻に変わります。

 実在する猟兵のことを話す場合、お相手とフレンド感情が繋がっている、旅団などで何かしら関係があるなど、ある程度関係性が確認できる方のみ採用します。

 ゆるふわ文体なら🌸を。
 真面目な文体なら♥を。
 どちらか指定頂けるとそのように執筆します、無指定ならプレイングから察します。

 グループ参加は「2人」まで。
 話し相手や聞き手が欲しい場合、遅咲のグリモア猟兵が指定頂ければ誰でもご一緒します。

 既に出ている戦争シナリオの完結を優先するため、開始まで少々お時間を頂きます。
 開始日付はタグをご確認ください。
 出来る限り採用したいので、再送のお手間をおかけすることもあります。
 皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
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第1章 日常 『愛を語らないと出られない部屋』

POW   :    情熱的に愛を語る

SPD   :    淀みなく愛を語る

WIZ   :    語彙を尽くして愛を語る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

徳川・家光
「誰にも聞こえませんよね?……では……うさぎ。うさぎが好きです!まるまるとかわいいからだ、白いぽやぽやの毛、赤い目、ただかわいく見えるためにあるとしか思えない長い耳……。そう、うさぎこそはあらゆる生き物の中でいちばんかわいい、人類とうさぎが戦争になったら将軍職でありながらうさぎ軍に入ってしまいそうなぐらいのかわいさがあります。でも庶民に肉食を禁じてもあの耳のせいで『うさぎは鳥』とかいう謎のとんちでたべられてしまいますし、僕のユーベルコード『神州因幡白兎殺』なんて名前に兎殺って入ってますからね。とはいえ将軍ひとりのエゴでまつりごとやユーベルコードを縛ってはいけない。嗚呼慟哭……!」


♥(無茶振り)



 そこに足を踏み入れた途端、固まらぬはずの泥はみるみるうちに部屋の形を成していく。本当に閉じ込められるんですね、なんて独り言を呟いて、徳川・家光は壁面を少しだけこんこんと叩く。
 反響音もなく、ぽつんとひとりぼっち。あ、あーと声をあげてみても、返事はひとつも返ってこない。
「えーっと、聞こえてますか? 誰にも聞こえてませんよね?」
 きょろきょろと辺りを見渡して、では、と決意したようにこくりと頷く。サムライエンパイアに長く続く江戸幕府を取り仕切る将軍が愛しているもの、それは。
「うさぎ。うさぎが好きです!」
 ぱ、と赤茶の瞳が瞬いて、青年は嬉しそうにやわらかな生き物の名を告げた。まるまるとかわいいからだ、白いぽやぽやの毛。くりっときらきらした赤い目、ただかわいく見えるためにあるとしか思えない長い耳。
 壁面と床が静かに動きだして、ちょこんと愛らしい兎が一羽うまれる。わ、と驚いた家光の足元に寄り添うちいさな姿は、まるで本物のよう。
「そう、うさぎこそはあらゆる生き物の中でいちばんかわいいんです」
 人類とうさぎが戦争になったら、将軍職でありながらうさぎ軍に入ってしまうかも。勿論、家光も将軍であるから、それが本当に許されるとは思っていないけれど。ついうっかり、味方についてしまったら。奥方達や乳母達に怒られてしまうだろうなぁ、と一瞬だけ皆のことを思い浮かべる。
 だんだんと熱の入る彼の言葉を更に促すように、彫刻が次々と兎の群れを生みだしていく。仲良く寄り添う親子も居れば、眠たそうな大きな長毛種など、UDCアースで見かける外国の種も精巧な容で増えていった。
 でも、と。ふと家光はこぼす。
「庶民に肉食を禁じても、あの耳のせいで『うさぎは鳥』とかいう謎のとんちでたべられてしまいますし、僕のユーベルコード『神州因幡白兎殺』なんて名前に兎殺って入ってますからね……」
 いくらあの愛らしさに虜でも、将軍職は彼をただのうさぎ好きにはさせてくれない。将軍ひとりのエゴでまつりごとやユーベルコードを縛ってはいけないと、わかってはいるけれど。
「嗚呼、慟哭……!」
 せめて庶民が、うさぎを食べないようにしてくれたなら。そんな思いで、最初にうまれた一羽を撫でる。
 ぽやぽやの毛ではないけれど、青年の心はあたたかく満ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新名・有花
好きなものを語ればいいんだね?
……こいつが好きだよ。
(傍らに浮かぶ骨を撫でる)
寒くて、ひもじくて、それから多分悲しくて、寂しかった、
そんなあたしを助けて大事にしてくれたミィ。
安心して眠れる子守歌も、踊りたくなるくらい楽しい歌も
なんだって歌って聞かせてくれた。
言葉は交わし合えなかったけど大切にしたいって気持ちは伝わってきてた。
蜘蛛童だった頃からずっとあたしはミィが大好きだった。
……この姿になって、与えられていたものを愛と知り、
あたしの思いを恋だと知った。

死んでもまだあたしを守るために、ずっと側に居てくれるミィのことが
あたしは大好きで、愛してるよ。

『La♪』
(嬉しそうに歌う髑髏を見て頬笑む)



「好きなものを語ればいいんだね?」
 誰に尋ねるでもなく、新名・有花は呟いた。La、とやわらかな歌声が一度だけ響いた傍らを見れば、ふわりと宙に浮かぶ髑髏をそうっと撫でる。
「……こいつが好きだよ」
 土蜘蛛の娘は、今はもうひとりぼっちではなかったけれど。寒くてひもじくて、それから多分悲しくて。寂しかった幼いあの頃を思い出すと、ちょっぴり胸が痛くなる。
 人の身であった頃の青年は、ちいさな蜘蛛の子を助けて大事にしてくれた。ミィ、と名を呼べば、されこうべは優しく返事をうたう。固まらないと言われていた泥が、静かに形を成していく。それが楽譜に踊る音符の群れになっていくのを、有花は目を細めて見守る。
「安心して眠れる子守歌も、踊りたくなるくらい楽しい歌も、なんだって歌って聞かせてくれた」
 彼の言葉がわからなくても、彼が有花の言葉を知らなくても、ミィが有花を大切にしたい気持ちはいつだって伝わってきて。
 壁面を彩る楽譜は、いつか聞かせてくれた歌の数々が綴られている。たとえ有花が楽譜を読めなくたって、先程から優しく歌声を披露しているされこうべがそれを証明してくれていた。
 ちいさな蜘蛛の子であった頃から、ずっと少女は青年のことがだいすきだった。だから、寂しい夜も嬉しい朝も一緒に居てくれた理由を、人の容を得た娘は理解している。
「……この姿になって、与えられていたものを愛と知り、あたしの思いを恋だと知った」
 床にすら書き留められていく譜面は、きっと恋の音色が綴られている。ミィしか知らない、彼だけの花嫁の想いが籠められた無垢な歌の音がする。
 それに気付くまでに、間に合わなかったと泣いたこともあったけれど、今はもう悲しくない。潰えたはずのいのちを無理矢理繋いででも、いつだってミィは有花の傍に居る。
 死んでもまだあたしを守るために、ずっと側に居てくれるミィのことが、
「あたしは大好きで、愛してるよ」
 誰でもない彼を見てまっすぐに愛を紡ぐ娘の金の眼は、童の頃から変わらぬ光を宿している。もしかしたら、あの時よりもずっと眩くきらきらと。
『La♪』
 彼女の想いに応えるように、うれしそうに愛を謳うされこうべ。それがただ幸福であったから、少女は微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディイ・ディー
俺の好きな花は桜
理由は愛しい子の名に桜が宿っているから

いつからだったか
共に過ごす時間に花が咲いているように感じたのは
彼女は普通の女の子で、俺の元はただの物
人間ではない俺が一緒に居てはいけないと思った

彼女が幸せであれば、それだけでいい
だけどそれは自分に言い聞かせているだけだった

彼女の特別になりたい
俺だけが視線の先にいて
俺だけがその心を独占していたい

気付いた時には何もかも遅かった
桜の花が愛おしくて堪らなかった
何処にも行かないよう、風に攫われないように
掌の中に閉じ込めたくなった

俺の愛は欲に等しい
けれどこれでいい。だってさ
俺の名はD・D――ディザイア・ダイス
名の通り、欲望のままに生きたっていいだろ?





 なんにもない部屋に足を踏み入れて、青年は一度だけ目を閉じる。もう一度目を開ければ、すこしだけ息をつく。
 誰にも聴こえやしないから、綴ることの出来る言葉がある。ディイ・ディーの唇が動く。
「俺の好きな花は桜。理由は、愛しい子の名に桜が宿っているから」
 共に過ごす時間に、花が咲いているように感じたのはいつからだったか。きっかけは曖昧で覚えていなくて、けれどそれが、確かに青年の心に蕾をつくった。
 ディイの言葉に伴うように、壁面から静かに枝が伸びていく。彫刻というより塑像づくりに似ているな、と少しだけどうでもいいことを考えた。
 だからこそ、あの頃思っていたことがある。
「彼女は普通の女の子で、俺の元はただの物」
 ――人間ではない俺が一緒に居てはいけないと思った。
 むっつの怪異を宿した、いわくつきのオブジェクト。桜の花を、蒼い焔が燃やしてしまいそうで。
 彼女が幸せであれば、それだけでいい。そんな詭弁は、人ならざる容の自分に無理矢理言い聞かせているだけだった。
 ふわり、春風に靡くあわいさくらいろの髪。ぱちり、萌木のやわらかなみどりの瞳。あと二ヶ月程度でやってくる季節を映したような、やさしい朗らかな笑顔。
「彼女の特別になりたい。俺だけが視線の先にいて――俺だけが、その心を独占していたい」
 我ながら呆れるほどに我儘で、贅沢で、強欲で。どうしようもない感情に気付いた時には、何もかもが遅かった。
 桜の花が愛おしくて堪らない。何処にも行かないよう、風に攫われないよう。
「掌の中に、閉じ込めたくなった」
 誰に聴こえなくても、想いを口にするのはすこしだけ勇気が要る。これは決して純粋無垢な綺麗なものではなくて、自分はお伽噺のような優しいきらめく王子様でもなくて。
 それでも続きを言葉にしたくなったのは、彼の想いをゆるすように、枝に芽吹いた蕾が綻んでいるのが見えたから。
「俺の愛は慾に等しい、けれどこれでいい」
 だってさ、
「俺の名はD・D――ディザイア・ダイス」
 名の通り、欲望のままに生きたっていいだろ?
 咲き誇る桜に尋ねてみせたのは、彼女に似ていたからかもしれない。彩のない満開の花々が、青年にはあわい薄紅に色づいているように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佳月・清宵
【嗜】
さて、面白ぇ塒があったもんだなァ
――ああ、正気も正気、至って素面だとも
碌な愛は持ち合わせずとも、“愛飲”するモンなら持ってんだろ?

(腰の瓢箪酒撫でて笑い――)
そういうこった
アンタも色々隠し持ってると耳にしたもんでな
その点なら話は合うだろう

薫酒に爽酒、熟酒や醇酒
熱すも冷やすも良し
四季折々の風情を肴に、飲み比べ――
此方の酒も無論、見事なもんだがな

其方の酒も色味に香味、名前一つに至るまで、小洒落た趣があるってんだろ
へぇ――やっぱ良い趣味してんじゃねぇか

此方の純度極めた酒も良いが、万華鏡宛らに彩りを変えて魅せる様も実に面白味がある

さぁて、話の続きは実物でも愛でながらと洒落込もうぜ
酔狂仲間さんよ?


ルフィーノ・ファルネティ
【嗜】
――噂には聞いていたが、酔狂にも程があるだろう、君
突然呼ぶものだから何事かと思えば、正気かい?
互いに真当な愛など吐く柄ではなかろうに(やれやれと頭振り)

――ああ、成程、それが目当てか
鼻が利くという噂も真だったとはね
それならば、まぁ、少しだけ付き合ってもいい

(其方も中々面白げな品や味わい方が揃っているようだと、静かに聞きつつ)

私は移り気なものでね
ブラッディマリー、ホワイトレディ、キールロワイヤル、ブルームーン――
特別に入れ込むものはないが、カクテルとして毎日違った彩を愉しむも一興
アレンジ一つで見目も香も思いの儘
此方の気分次第で気儘に七変化してくれる様も、悪くない

――全く、本当に酔狂なことだ



「さて、面白ぇ塒があったもんだなァ」
「――噂には聞いていたが、酔狂にも程があるだろう、君」
 がらんとした部屋でわらった妖狐とは真逆の表情で、ルフィーノ・ファルネティは怪訝そうに尋ねた。突然呼ばれて何事かと思えば、グリモア猟兵から内容を知らされたのがつい先ほどのこと。困惑したまま転移の光に押し込まれて、佳月・清宵とふたりきりになったのがたった今。
「で、正気かい?」
 互いに真当な愛など吐く柄ではなかろうに。やれやれと頭を振ったルフィーノに、清宵は口の端をゆるくあげて。
「――ああ、正気も正気、至って素面だとも。碌な愛は持ち合わせずとも、“愛飲”するモンなら持ってんだろ?」
 そう告げた妖狐が、腰にぶら下げた瓢箪を撫でたのを見て、ああ、成程、とダンピールはようやく得心がいった。その瓢箪になみなみと入った酒は、今もとぷりと揺れているに違いない。
「それが目当てか。鼻が利くという噂も真だったとはね」
「そういうこった。アンタも色々隠し持ってると耳にしたもんでな」
 その点なら話は合うだろう。わらう妖狐に、それならば、と。少しだけ付き合ってもいいと、ルフィーノが目を細める。
 話題が話題だというのに、立ったまま語るのもなんだろうと、適当な場所で二人腰をおろす。それじゃあ俺から、と清宵が瓢箪を軽く揺らす。
「薫酒に爽酒、熟酒や醇酒。熱すも冷やすも良し」
 四季折々の風情を肴に飲み比べ――うたうように日本酒の味わいについて語る妖狐につられたのか、部屋を彩る彫刻は美酒を模した酒瓶の数々。すぐ傍にお猪口がふたつ分生まれて、へぇと覗けば、まるで本当に中身が存在するように見える。
 無論、此方の酒も見事なものなのだけれど。
「其方の酒も色味に香味、名前一つに至るまで、小洒落た趣があるってんだろ」
 なかなか面白そうな品や味わい方が揃っていると、清宵の語り口に静かに相槌を打っていたルフィーノが、ふと話の水を向けられて瞬いた。此方の番かと想いを巡らせて、では、と口を開く。
「私は移り気なものでね」
 ブラッディマリー、ホワイトレディ、キールロワイヤル、ブルームーン――洒落た名をひとつずつ告げれば、それは魔法の呪文に似ている。
 特別に入れ込むものはないが、カクテルとして毎日違った彩を愉しむも一興。アレンジ一つで見目も香も思いの儘。
「此方の気分次第で気儘に七変化してくれる様も、悪くない」
 銀の瞳にふと映ったのは、ラベルや硝子の艶まで精巧に再現された大小様々な名酒の酒瓶達。器用なものだと呟いているうちに、カクテルグラスがふたつ生まれる。
 へぇ、と清宵の赤い左眼が興味深そうにわらう。
「やっぱ良い趣味してんじゃねぇか」
 清宵の愛する純度を極めた酒も良いが、ルフィーノの好む酒の、万華鏡のように彩りを変えて魅せる様も実に面白味がある。
 それにしても、と妖狐がすこしだけつまらなそうにこぼす。その視線の先にあるのは、固まらぬ泥が生み出した芸術品の群れ。決して香ることのない酒の匂いを求めて、鼻をわずかに動かしてみせたものの。
「実際に飲める訳でもねェのに、こうも上手に造られちゃぁな」
「ふ、同感だ」
 誘われたなら、潰れぬ程度に酔っておくのが嗜みというもの。そんな二人の思いを形にするように、扉が静かにうまれる。
 此処での話は十分らしいと確かめて、さぁて、と妖狐が立ち上がる。
「話の続きは実物でも愛でながらと洒落込もうぜ、酔狂仲間さんよ?」
「――全く、本当に酔狂なことだ」
 そうこぼしたダンピールも、同じくまんざらでもない笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
🌸
アドリブ歓迎デース!
問題なければ他の方と絡んでも大丈夫デース!
なびき殿をお招きして、ワタシの好きなものを披露しマース!

すなわち、料理デース!
持ち込んだキッチンを展開して、料理を振舞いマース!
リクエストがあれば和洋中何でもオーケーデスヨ!
食べるのも作るのも、作ったものを食べてもらうのも好ましいであります!

何故? まー、深い理由はありマセンガ、生まれてから長らくずっと戦場にいたのであります。
戦争が終わって旅立った先で初めて知った娯楽が、食だったのであります!
栄養補給でない美味しいという感覚は、とても凄かったのであります!

そういう事情で、ワタシは料理が好きデース!
思う存分堪能して浄化しマショー!



 愛しているもの、それは人それぞれだけれど。サイボーグの娘は両手を広げて大きく声をあげた。
「ワタシの愛しているもの。すなわち、料理デース!」
 ぱんぱかぱーん、どこからともなくハッピーな音がする。わーっとぱちぱち拍手した人狼に、バルタン・ノーヴェは一礼し。
 殺風景だった部屋にはきらきら輝くキッチンが現れて、調理器具と食材の数々がずらりと並ぶ。
「リクエストがあれば和洋中何でもオーケーデスヨ!」
「えっなんでもいいの? じゃあおれパンケーキ食べたい、四段重ねくらいのホイップ盛りの。パフェもいいなぁ。あ、どら焼きとか点心もすき」
「いきなりスイーツまみれとは、相当の甘党と見マシタ!」
 遠慮なくリクエストをかましてきたなびきに動じることなく、バルタンの手はお菓子作りに必要な食材をすぐさまゲット。手際の良さは趣味の家事代行サービスで培われたものである。家事代行って趣味でやる奴なんだ。
「バルタンさんは料理を作るのがすきなの?」
「食べるのも作るのも、作ったものを食べてもらうのも好ましいであります!」
 なるほど、と頷きつつ、しゃかしゃか軽快な音と共にかき混ぜられるパンケーキの生地が入ったボウルを見つめた人狼が再び尋ねる。
「そっか。でもそれはどうして?」
 何故? 少しだけきょとんとした表情を浮かべたサイボーグは、すぐに笑みを浮かべる。
「まー、深い理由はありマセンガ、生まれてから長らくずっと戦場にいたのであります」
 戦争が終わって旅立った先。少女が初めて知った娯楽こそが、食。あたたかくてつめたくて、あまくてしょっぱくて、からくてにがい、そしてなにより。
「栄養補給でない美味しいという感覚は、とても凄かったのであります!」
 ぱぁっと目を輝かせた彼女が思い出すのは、一生忘れることのない『おいしい』という感情。バルタンの感情に反応するように、固まらぬ泥がつくるのは、彼女が今まで食べてきた料理の数々。けれどそんな彫刻よりも美味しそうなのは、なびきの前にどどんと並ぶスイーツの群れ。
「そういう事情で、ワタシは料理が好きデース!」
「つくるの速すぎない!?」
 最近の家事代行サービスのスキルはすごいからね、UDCアースのバラエティー番組とか見てると。
 いただきます、と二人で手を合わせてカトラリーを装備。絶対においしい、そんな確信が二人にはある!
「思う存分堪能して、浄化しマショー!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

月凪・ハルマ
え、なに。愛?いやよく分からんけど……
あ、好きなもの語ればいいの?なら多分大丈夫

ちなみに俺の好きなものは風呂。もしくは温泉
あ、サウナとかそういうのも含めてね

いやーなんかさ、普段は緊張感の多い仕事してるじゃん?猟兵だし
そういう仕事の合間とか、それが終わった後とかに割とよく
行くんだよね

街中にある昔ながらの銭湯とか、あるいは
人が殆ど来ない様な秘境にある温泉とか
まぁ何処に行くかはその時次第だけど、温かい風呂に浸かって
何も考えずにボーっとしてる時間が好きなんだ
風呂から出た後、火照った身体が徐々に冷めてくあの感じも好き

やっぱ癒しっていうのかな……
風呂とか温泉に入る事で、また頑張ろうって思えるんだよね



 月凪・ハルマはグリモア猟兵にどーんと背中を押されて転移した。え、なに。愛?
「いやよく分からんけど……」
 どういうこと? 実はあんまり話を聞いてなかったハルマくん。そういえば、と人狼の言葉を無理矢理思い出そうとすると、壁がめきめきと動き出す。
『趣味とかすきなものでもいいよ』
「あ、好きなもの語ればいいの?」
 わざわざ説明文を書いてくれるので固まらない泥は優しかった。なら多分大丈夫、とからっぽの部屋で応じると、少年は大きく伸びをする。
「俺の好きなものは風呂。もしくは温泉」
 サウナとかそういうのも含めてね、と付け足して。うーんともっちゃりした顔をして、馴染みある大浴場の光景を思い浮かべる。
「いやーなんかさ、普段は緊張感の多い仕事してるじゃん? 猟兵だし」
 猟兵っていつもそう。これも一応戦争のお仕事だしね。そんな仕事の合間や、終わったあとに割とよく通うことが多い。
 街中にある昔ながらの和やかな銭湯、人が殆ど来ないような秘境にある温泉。何処に行くかはその時次第だけれど、何処に行ってもやることはおんなじ。
「温かい風呂に浸かって、何も考えずにボーっとしてる時間が好きなんだ」
 銭湯ならば巨大な壁面に彩られたタイル画を、温泉ならば絶景を眺めてのんびりと。サウナでじんわり適度に我慢してみたり、水風呂でさっぱりしてみたり。
 風呂から出た後の、火照った身体が徐々に冷めていくあの感じ。お気に入りの飲み物と一緒に、ふうっと過ごすのもなんだかすきだ。
 ハルマの言葉に反応したように、固まらない泥が静かに動く。壁面には立派な富士山、足元には大きな大浴場が広がっていく。かぽーんと音がしそうな洗い場も一緒に、ご丁寧に風呂桶もセット済み。
「へー、器用だな……そのまま入れそう」
 逆に言うと、入れないのがもったいない。こっちは既に、赤壁で無双したりAI兵馬俑をボコったり水銀中毒の始皇帝を殺したりしている。ハルマくんはいつだって忙しい猟兵くんだ。
「やっぱ癒しっていうのかな……」
 風呂とか温泉に入ることで、また頑張ろうって思えるんだよね。そう呟いた彼の壁面、めきめきと再び説明文が現れる。
『お湯だせなくてごめんね……』
「え、あ、なんかごめん。気にしないで」

大成功 🔵​🔵​🔵​

瀬河・辰巳
同伴している相棒のフロッケかな。

まず、柔らかくて美しい毛並みや見る者を魅了させる瞳を持ち、優しくて賢い世界一素晴らしいサモエドであることは見ればわかるとして。

…また始まった、って呆れた顔はやめようね?

保護した子犬時代は警戒心むき出しでやたら噛まれたけど、今では周りを見て動いてくれるし、辛い時も寄り添ってくれる頼もしい存在でさ。
でも、遊ぶときは無邪気に駆け回るし。昔、別のサモエドの女の子を「可愛いね〜」ってもふもふしてたら、ヤキモチ焼いて俺に頭突きを食らわせたりして。本当に愛おしい。
……え、頭突き事件は忘れて?それも大事な思い出だから無理かな。
一緒に過ごした時間全てが大事な宝物だよ、フロッケ。



 もっとも愛しているものを語るなら、やっぱり彼女のことしかないだろう。がらんどうの部屋でひとりといっぴき、瀬河・辰巳は傍らに寄り添う相棒のフロッケを撫でる。
「まず、柔らかくて美しい毛並みや見る者を魅了させる瞳を持ち、優しくて賢い世界一素晴らしいサモエドであることは見ればわかるとして」
 また始まった。そんな呆れ顔のフロッケを見つめる顔は穏やかに笑んだまま。その顔はやめようね、と首をこしょこしょ、頭をよしよし。
 保護した子犬時代は警戒心むき出し、やたら噛まれたりしたのは数知れず。今では周りを見て動いてくれて、あの頃の噛み痕も、深かったものがかすかに残っている程度。それがちょっぴりもったいなくもあるけれど。
「辛い時も寄り添ってくれる、頼もしい存在でさ」
 きちんとお行儀よくお座りする相棒の、ふあふあの毛並みがくっつく度に笑みがほころぶ。そんな辰巳の気持ちを反映するように、固まらぬ泥は静かに形をつくっていく。
 それはひどく懐かしい、ころころした毛玉みたいな子犬の頃のフロッケ。青年に慣れて深く雄大な森を駆けるようになった姿は、今の彼女よりも随分ちいさい。
「そうそう、遊ぶ時は今も無邪気に駆け回るんだ」
 今もはしゃいでる時はこんな感じだなぁ、なんて、彫刻と本物を見比べる。そうだ、とふと現在に近い昔の頃を思い出す。
 別のサモエドの女の子を、可愛いねと褒めてもふもふしてみたら。やきもち焼きの相棒から、ごつんと頭突きを食らったっけ。本当に愛らしい、とくすくす笑うと、ぐいぐい強く身体を押される感触。
「……え、頭突き事件は忘れて?」
 それも大事な思い出だから無理かな。フロッケの必死なお願いもむなしく、辰巳の心に刻まれた思い出はひとつも消えやしない。それを証明するかのように、彫刻は次々と彼と彼女の思い出をうつくしい像として表現していく。
 すこし頑固で、優しく人懐っこい相棒。君にどれだけ助けられて、どれだけの日々を共に歩んだろうか。
「一緒に過ごした時間全てが大事な宝物だよ、フロッケ」
 わふ、とひと吠えした相棒は、ふあふあの尻尾をぶんぶん振っている。
 笑っているように見える素敵な顔は、本当に心からの笑顔を見せてくれているのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

驫木・大空
・・・なんや、愛を語らんと出れん・・・・・・なんやて・・・んな・・・殺生な・・・・・・。

出れんもんは困る、しゃぁない・・・・・・。
(深呼吸して腹をくくると扉に向かい)

ワイが愛しとるんは白蓮(f35350)、つまりやな、嫁や!!

銀雨時代は血まみれで敵を切り裂いとる姿に不謹慎やろぅが関係あらへん・・・べっぴんさんやな、思たもんや。

おぃこら、扉!
こちとら、ワイが成人するまで色々・・・・・・
ホンマ、イロイロ我慢出来たぐらいの愛やねんぞ・・・・・・愛しとる重さ・・・・いや、マリアナ海溝並な深さ・・舐めるんやないで・・・。

こないな扉すぐぶち明けたるからな!!

はずっ白蓮の顔・・・見れんっ


❤指定


彼方霧・白蓮
大空(f35794)と来たけど一緒に来たのは間違いだったかもしれない。まあ俺の誕生日プレゼントだと思って。

大空への愛を。
最初はちょっと怖かったけど、本当に最初だけで、すごくよくしてくれて、今でもゴーストタウン(※能力者の敵がたくさん出るダンジョン)にたくさん行ったのはいい思い出になってる。
いろいろあったけどずっと待っててくれて、俺は良い相手に恵まれたと思っているし、本当に感謝している。見つけてくれてありがとう。なんだ、まだ開かないのか?
ずっと俺に仕えろ、いや合ってるけど違う(情緒が忙しい) 好きです!うぐぇ…(だんだん限界) だ、だいすき…はぁ…もういい?(疲労)

あ(大空の録画するの忘れた)



「なんや、愛を語らんと出れん……なんやて……」
 んな殺生な……驫木・大空はわなわなと震えていた。そんな恥ずかしいこと、彼の人生では稀に起きるか起こらないかの一大イベントなのだから。彼の姿を見て、彼方霧・白蓮は彼と一緒に来たのは間違いだったかもしれない、と少しばかり困った笑みを見せた。
「なんとかして出れんのか? こう、扉をどーんとぶち破ってやな」
「そもそも、そのぶち破る扉がないんだよ」
 白蓮の言う通り、ふたりぼっちの部屋はがらんどうで、扉自体が最初からなかったかのように四方が壁になっている。
「まあ俺の誕生日プレゼントだと思って」
 ふふ、とどことなく余裕のある彼女の愛らしい微笑に、ぐっと部屋とグリモア猟兵への怒りを抑える。
「出れんもんは困る、しゃあない……」
 大空は静かに深呼吸。腹をくくって、先程まで扉のあった壁に向かって吠えてみせた。
「ワイが愛しとるんは白蓮! つまりやな、嫁や!!」
 銀の雨がさかんに降り続いたあの頃、血にまみれたまま敵を切り刻む彼女の姿を見ていた。不謹慎だと思われようが構わない、そんなことは愛の前では関係ない。
「……べっぴんさんやな、思たもんや」
「へぇ」
 嬉しそうに微笑む彼女の余裕を崩したくて、彼女への想いを言葉に綴る。
「ただべっぴんなだけやない、ワイのつくるメシをなんでも美味そうに喰うてくれる笑顔はめっちゃキュートや! 時々寂しくなったらくっついてくる姿も、いじらしゅうてたまらん! 仕事や他人の前ではクールでも、ワイの前ではかわいいかわいい嫁さんや!」
「お、大空?」
 ぱちぱちと瞬きさせて、白蓮はヒートアップしていく大空に声を掛けてみる。けれど彼は素知らぬふりで、壁へと再び吠えたてる。
「おぃこら、扉! こちとら、ワイが成人するまで色々……ホンマ、イロイロ我慢出来たぐらいの愛やねんぞ……愛しとる重さ、いやマリアナ海溝並な深さ……舐めるんやないで……」
 こないな部屋すぐぶち明けたるからな!! そう言いきった彼の愛をあらわすように、固まらぬ泥が動き始める。二人が出会った銀の雨降りしきる、あの鎌倉の街と奔る江ノ電の彫刻。
(あーはずっ! 白蓮の顔見れん……っ)
 顔を真っ赤にして愛妻から背を向けている旦那の隣で、白蓮はこほんと軽く咳ばらいをした。
「……ん、次は俺だな。最初はちょっと怖かったけど、それは最初だけで、すごくよくしてくれて。ゴーストタウンにたくさん行ったのは、いい思い出になってる」
 残留思念の蠢く廃墟は無数に在って、たとえばそれはショッピングモールであったり、刑務所であったり、病院であったり。廃墟とはいえ、学生がラブホテルに行くのはどうかと思ったこともある。
 若返った彼女の姿は青春を駆け抜けた日々と同じ。本当に様々な出来事があって、こうして二人は縁を繋いでいる。
「いろいろあったけどずっと待っててくれて、俺は良い相手に恵まれたと思っているし、本当に感謝している」
「……お、おう」
 静かに微笑む彼女に、まだ背を向けたままの大空が応じる。けれど、部屋は彼女の語りに満足していないようで。
「なんだ、まだ開かないのか? ……ええと、ずっと俺に仕えろ。いや合ってるけど違う」
 大空の恥ずかしがる様が派手なだけで、内心、白蓮だって鼓動がうるさい。落ち着いて考えていた台詞をすらすら語ったはずなのに、扉の形は一向に出やしない。だのに情緒が忙しくって、ならばと大きく息を吸う。
「好きです!」
 うぐぇ。変な声が出たのをきっかけに、固まらぬ泥は二人の愛を形にする。さめざめと降る銀の雨の風景も、彼の名前のように爽やかな鎌倉の晴天も。けれど未だ、扉をつくるつもりは無い様子。これで最後といわんばかりに、白蓮が大きく声を出す。
「大空!」
「なっなんや!?」
「だ、だいすき……!」
 思わず振り返った彼に、まっすぐぶつかる彼女の告白。満足したのか、扉の形が浮き彫りになっていく。
 大空の告白を録画するの忘れたなぁと思いながら、火照る頬をなんとか涼しげに取り繕うも。最愛の嫁の耳が真っ赤に染まっていることに、大空だって流石に気付いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
愛……
本来なら歌について語るべきなんでしょうが……
(暫し考え

……コローロ
いつも私の傍にいてくれるひかりのきみ

私の歌をいつも聴いてくれるきみ
綺麗な景色を見て嬉しそうに飛び回るきみ
歌の感想を尋ねても言ってくれない照れ屋さんなきみ
なのに怒る時ははっきりと言うきみ
いつも無茶をして怪我をする私を叱ってくれるきみ
ちょっとした悪戯を仕掛けてみると慌てふためいた後に怒って突進してくるきみ

あたたかくて、キラキラしていて……
そんなきみが、かわいくて、好きで、大好きで、あいしてる――


……あれ
(ふと気付けば、傍らにふわふわと浮かぶ赤く染まったひかり

(彫刻と何度も見比べる

えっ
あっ
き、聞いてた……?
(煙ぽぽぽっ

🌸



 からっぽの部屋でぽつんと立つ長身は、此処から出るための方法について口にする。
「愛……」
 本来なら、歌について語るのがきっと簡単なのだけど、スキアファール・イリャルギは暫く黙って考え込んでいた。そうしてぽつりとこぼれた名前は。
「……コローロ」
 いつも私の傍にいてくれる、ひかりのきみ。今はそっと隠れているから、言葉にするなら今がチャンス。きゅ、と一度口を引き締めてから、ふわふわ影人間は想いを紡ぐために口を開いた。
「私の歌をいつも聴いてくれるきみ。綺麗な景色を見て嬉しそうに飛び回るきみ」
 歌の感想を尋ねても、決して言ってはくれない照れ屋さん。なのに、怒る時はちかちか点滅してはっきりと言ってくれる真面目さん。
 スキアファールの言葉に共鳴した固まらない泥が、よいしょよいしょと形を成す。それはきらきらしたひかりのかたち。だいすきなあの子のかたち。やわらかは随分違うだろうけど、本物そっくり。
「よく似てますねぇ」
 思わず感心してしまったけれど、本物のコローロのほうがずっと愛らしくやさしい彩をしている。そこは譲れませんね、とうんうん頷きつつ、引き続き愛を静かに奏でる。
 いつも無茶をして怪我する彼を叱ってくれるやさしい姿も、ちょっと悪戯を仕掛けてみれば慌てふためく素直なところも、全部が全部いとおしい。
 改めて口にしてみると、こんなに素敵な仕草をいっぱい見せてくれるのだ。もっともっと自慢したっていいかもしれない。うんと愛を告げてみたっていいかもしれない。そう思いかけて、やっぱりぶんぶんと首を横に振るスキアファールさんは、コローロと勝負できるレベルの照れ屋さん。
「あたたかくて、キラキラしていて……」
 そんなきみが、かわいくて、好きで、大好きで、あいしてる――。
「……あれ」
 確か自分は、あの子を模した彫刻に声をかけていたはず。しかし気付けば影人間の傍らには、ふわふわ浮かぶひかりのきみ。赤く染まったそれは、まるで愛の告白をまっすぐに受け止めてしまったうら若き乙女のようで――あれ? つまりはその、
「えっあっ、き、聞いてた……?」
 思わずぽこぽこ湯気のように沸き立つ煙が、花咲くように宙を泳ぐ。コローロそっくりの彫刻達が、ふわふわ一緒に浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
🌸露(f19223)
今度は私が露を語れ?…そうだな…。露をか…。
「…。…。…ないな…」
真正面でそんな悲しそうな表情をされてもな。露。
何度も言うがそもそも私は『愛』は理解できてない。
そんな私に語れというのは難しいことであってだな。
……いや。もっともっと頑張れといわれてもな……。
愛などはわからん!で終わってしまうんだが…。

しかし…まあ君はよく私を慕ってくれていると思うよ。
…感謝の言葉は…そろそろ言っても構わないかもな。
「…露。いつも感謝はしているぞ?」
自然と優しい声音になってしまったような気がする。
まあ普段から思っていることを言葉にしただけだ。

露は一瞬きょとんとしてからかつてない程の笑顔をくれて。
……その後に抱き着かれ笑顔のままで涙をみせられたが…。
それほどまでに嬉しい物なのか?一度言ってるはずだが…?
まあいいか。無意識に自然と露の頭を撫でていた。
「これからもよろしく頼むよ。露」
………。
…す…少し腕の力を…緩めてくれないか…苦しい…。


神坂・露
🌸レーちゃん(f14377)
今度はレーちゃんがあたしを語る番よ!番よ!!
だってだってこーゆーのあたしばっかりなんだもん!
レーちゃんはしばらく考えていたけど一言。ないって。
「ええぇえ…。こんなにあたし大好きなのにぃ~」
それにずっ…と一緒なのにぃー。酷いわ酷いわ…酷い!
「もう少し頑張って、あたしのこと語ってほしいわ~?」
小さい時に色々とあったみたいだから結果はわかっていたけど。

むうぅ…って思っていたら急にレーちゃんが優しい声で。
『しかし、まあ…露。いつも感謝はしているぞ?」
って言ってくれた時は理解するのに時間がかかっちゃった。
そしてぎゅぅーって抱きしめたら何でか涙が出ちゃって…。
『何故泣く?!』って呆れられたけどいいの♪嬉しいんだもん♪
感謝の言葉は聞いたことないくらいに優しかったから…かも?
前にも感謝のセリフは言ってくれたけど…今日のは特別なの。
えへへ♪頭も撫でてくれたし今日は幸せだわ~♪レーちゃん!
レーちゃんレーちゃんって思いながら抱きしめ返すわ♪
…え?少し力入れすぎた?えへへ。ごめん♪



 なんにもないがらんどう。ふたりぼっちの部屋で、神坂・露は食い気味に大親友を促していた。
「今度はレーちゃんがあたしを語る番よ! 番よ!!」
「私が露を語るのか?」
 さきほど顔がくっつきそうな距離でレーちゃんへの愛を語り続けていた露ちゃん。それを聞いているだけならまだしも、自分について語れという。シビラ・レーヴェンスがジト目になって、ふむ、と暫し考え込む。
「……そうだな……露をか……」
「そうよ」
「ふむ……」
「……」
「…………」
「………………ないな……」
「ええええ!?」
 目に見えないわんこ尻尾をぶんぶんと振って、そわそわ待機していた露の期待は打ち砕かれた。
「ええぇ……あたしはこんなにレーちゃんことだいすきなのにぃ~。ずっとずっっっと一緒なのにぃ~」
「真正面でそんな悲しそうな表情をされてもな」
 しょんぼりしつつ、ひどいわひどいわ、とその場で軽く飛び跳ねて拗ねる仕草もべりべりきゅーと。しかしレーちゃんもレーちゃんで、心から困ったような顔をしている。カワイイ。
「何度も言うが、そもそも私は『愛』を理解できてない」
 そんな私に語れというのは難しいことだと説いてみるも、でもでも、と露も諦めない。
「もう少し頑張って、あたしのこと語ってほしいわ~?」
「いや……そう言われてもだな……」
 心なしか上目遣いできらきらとお願いポーズを追加されて、シビラはうぅんと眉間に皴を寄せてしまった。このままでは、愛などはわからん! の叫びひとつで終わってしまいかねない。
 露も、決して強要したい訳ではなかった。ちいさな頃に色々とあったらしいことはなんとなく知っているから、結果はわかっていたし。出られない部屋とはいえ、露が再びありったけの愛を語ればいいだけのこと。
 それでもやっぱりどこか納得いかなくて、むぅ、とほちゃほちゃほっぺを膨らませてしまう。そんな友人の姿を見て、シビラはどうしたものかと思いを巡らせる。『愛』は理解できずとも、『好意』がわからないわけではないから。
「しかし……まぁ君はよく私を慕ってくれていると思うよ」
「え?」
 感謝の言葉は、そろそろ言っても構わないかもな。
「……露、いつも感謝はしているぞ?」
 いつものひんやりとした声色が、ふんわりと優しい音をしているような。自分でも少し気になりつつも、シビラは普段から思っていることを言葉にしただけ。
 きょとんとした露の瞳がぱちくりまばたきをして、そうして彼女は動きを止める。約三十秒ほど続いたフリーズは、流石の長さにシビラも戸惑う。
「……露?」
 思わず声をかけてみれば、レーちゃん史上かつてないほどの花丸満点笑顔が咲いた。途端、ばっと露に抱きつかれる。ぎゅうっと力をこめられたそれは、いつも以上に強いような。というか、
「何故泣く!?」
「えへへ……だって、だって嬉しいんだもん♪」
 レーちゃんが、今までになくとんでもなく優しい声と表情をしていたからかもしれない。以前も感謝のセリフは言ってくれたけれど、今日のは特別。
 シビラの言葉を反映するように、それまで二人を見守っていた固まらぬ泥が動き出す。それまで出会った風景、美味しい食事、人々の顔、思い出――ふたりの旅路のすべてを形にしはじめた。多分泥もめちゃくちゃ心配してたんだと思う。
「見て見てレーちゃん、彫刻! レーちゃんとあたしが行ったところばっかりよ♪」
「ん……確かに。懐かしいな」
 抱きしめられたまま首をなんとか動かして、まだ目に涙を浮かべたままの露と一緒に、部屋の景色を見つめる。いつもなら此処でなんだこれは……と顔を顰めるシビラも、今は不思議とそんな気にはならなかった。
(とはいえ、それほどまでに嬉しいものなのか? 一度言ってるはずだが……?)
 それもまた、露の愛とやらなのかもしれない。自分にはまだ理解の及ばぬ概念を、彼女はようく知っているらしいから。まぁいいか、と思っている間に、気付けば友人の頭を撫でていたのは無意識で。
「これからもよろしく頼むよ、露」
「……えへへ、レーちゃんが頭撫でてくれたぁ♪」
 今日は幸せだわ、とふにゃふにゃ笑顔を見せて、露はぎゅっとシビラを抱きしめたまま。レーちゃんレーちゃん、と内心めいっぱいだいすきな人の名前を連呼して抱きしめる力を強める。
「……露」
「なあに、レーちゃん♪」
「す……少し腕の力を……緩めてくれないか……苦しい……」
「え?」
 うれしすぎてすこし力をいれすぎちゃったようです。しかたがないね。
 えへへ、と笑った露ちゃんとちょっとしんどそうなレーちゃんの姿に、全泥さんが感動で涙した。多分。


 あふれんばかりに語られた愛の言葉に、呪われた魔力が浄化されていく。
 唱えた愛言葉が鍵になって、扉の開く音がした。

 ――だって、愛の力は無敵なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月06日


挿絵イラスト