殲神封神大戦⑮〜神農剣凶
「みんな、あの『神農兀突骨』の予兆は見えた……よね?」
クイン・クェンビーは確認しつつも、念のためと言って説明を始めた。
現在進行中の、封神武侠界における大戦争『殲神封神大戦』。
その有力敵のうちの一柱、『神農兀突骨』がついに攻略可能となった、と。
「えっとね、神農っていうのは、昔の中国に伝わる農業と医療の神様なんだって。
クインも一応神だから、親近感湧いちゃうな~! クインより全然強いけど!」
それは当然である。
「でも、名前からわかる通り、神農は『兀突骨』っていう魔獣と合体してるの。
これも中国に伝わる……えっと、お話では一応王様、のはずなんだけど……。
身体に鱗が生えてて蛇とか動物を食べるって、たしかに魔獣みたいだよね」
少なくとも、この封神武侠界では、魔獣そのものだったということだ。
「それでね、神農兀突骨は、上半身と下半身でまったく攻撃方法が違うんだ。
今回みんなに相手してもらうのは、おもに上半身の『神農』側ってとこかな?
あ、攻撃方法が違うっていっても、別に下半身が動かないわけじゃないよ!」
あくまで、敵がメインとする攻撃方法が神農側に由来する、というだけだ。
当人が傑物とまで称する、兀突骨の馬鹿げた怪力と身体能力も、牙を剥く。
「予兆を見た感じ、神農はあのグリードオーシャンの『ザンギャバス』とか、
アックス&ウィザーズで出てきた『無限龍ワーム』のことも知ってたみたい。
それがどういうことなのか、クインにはわかんないけど、
クインたち猟兵のことを『強い』って言ってくれるのは、ちょっと嬉しいね」
人の世の繁栄を心から願いながら、その『収穫』を目論むさまは邪悪だ。
加えて、猟兵の集団としての強さを認め、自覚しているということは、
下手なブラフや演技は通用しない、正統派の強敵である。
強者とわかっていて挑戦を歓ぶあたりも、なお拍車をかけていた。
ともあれ戦う上で気になるのは、その攻撃方法とやらだが……。
「神農の武器は、『ユグドラシルブレイド』っていうものすごーい剣なんだ!
これに当たっちゃうと、たとえかすり傷でも一撃で戦えなくなるんだって……!」
クインは表情を曇らせる。一撃必殺の剣とは、まさに神に相応しい。
これは比喩でもなんでもなく、必殺剣の一撃は確実に猟兵と戦闘不能にする。
当たらなければいい、という単純な理屈は、敵の強大さゆえに困難な命題と化す。
「でも、あっちはクインたち猟兵の戦い方を観察したいみたいで、
先制攻撃はしてこないみたい。まず、こっちの動きを見ようとするよ。
その上で、同時に攻撃してくるって感じだね。うーん、どうすればいいんだろう」
クインは腕を組んで考えた。残念ながら、彼の貧弱な脳みそでは答えは出ない。
『猟兵が先手を得る』のは確実だ。だが、敵が後手を打つのもまた確実。
事実上の『同時攻撃に、いかにして打ち勝つ』か。それが、命運を分けるだろう。
「攻撃しなきゃ倒せないし、でも攻撃しか考えてないとやられちゃうし……。
だからって相手の攻撃を避けようとしてたら、こっちのダメージが下がるし……。
うーん、わかんないなー! みんな、相手は『強敵』だから、気をつけてね!」
クインは再度警告した。生兵法は大怪我のもと、というやつである。
「でも、みんななら勝てるよ! ていうか勝てないと、張角も倒せないからね!
この調子で全員やっつけて、封神武侠界をカタストロフから守りぬこー!」
えいえいおー! と、元気よく拳を突き上げ、猟兵たちを鼓舞するクイン。
彼の期待と信頼、そして神農の評価に応えられるかは、猟兵次第だ。
唐揚げ
というわけで毎度おなじみ、単純に強いタイプの有力敵です。
単純に強い敵、いいですね。自分では対策がまったくわかりません。
が、みなさんならそんなことはないはず。頑張ってください!
第1章 ボス戦
『『神農兀突骨』ユグドラシルブレイド態』
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POW : 三皇神農・変幻自在剣
【変形させた必殺剣「ユグドラシルブレイド」】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 三皇神農・無限複製剣
自身が装備する【必殺剣「ユグドラシルブレイド」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 三皇神農・絶対制御剣
【必殺剣「ユグドラシルブレイド」】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に生え狂う巨大食肉植物を剣と融合し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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決戦の舞台は、神農の祠だ。
祠の内部は広大な空間となっているが、地形は猟兵たちにとって不利に働く。
なにせ足元に生え狂うのは、巨大な食肉生物の有象無象。
神農兀突骨の神威によって蔓延り、蠢き回ることで不安定な足場を生んでいる。
この状況で神農兀突骨の相手をするのは、その時点で分が悪い。
加えて必殺剣『ユグドラシルブレイド』の一撃から繰り出される同時攻撃を、いかにして凌ぐか……!?
待鳥・鎬
僕達のように薬を扱う者にとっては、本当に身近な神様なんだ
だからね……うん、こんな神農様にはさっさとお還りいただこう!
正直、見てらんない
「山吹」の光学迷彩で姿を晦ませたら、杞柳を宿して宙へ
杞柳のお陰で空中戦も出来るけど、巨大食肉植物より高所を取れるなら尚良し
そうして地の利を確保したら、UCで光の雨を降らせるよ
UCを発動しながらも一ヵ所に留まらないよう注意して、相手に狙いを付けさせない作戦だ
食肉植物も、剣も、神農様も、全部全部灼いていけ
攻撃をどうしても回避できない時は、「鋼切」で受けて、そのままいなして反撃に転じよう
迷彩による有利は変わらないはず
歪んだ虚像を断ち切れ、鋼切!
●光の雨のなかで
中国の神話において、神農は医療と農耕の知識を人々にもたらした者とされる。
毒と薬の違いを人々に教えるため、毒物を服(の)み、そのために死んだと。
別の世界――たとえばUDCアースでは、それは事実なのかもしれない。
だが、この世界ではそうではなかった。そこにあるのはまったき邪悪だ。
「正直、見てらんないよ」
待鳥・鎬は、伝説とはあまりにも程遠い神農の有様に嘆息した。
「僕たち薬を扱う者にとっては、本当に身近な神様なんだ、あなたは。
……でも、僕はあなたを「神農様」とは認められない。認めたくないね」
「善き哉。人は神に仇なす者。その勝手さもまた、我にとっては喜ばしい」
神農は激昂するも嘲ることもなく、ただ純粋に鎬の無礼を喜んだ。
「……その喜びだって、結局は僕らを収穫(ころ)すからなんでしょ?」
鎬の表情が険しくなる。神農の朗らかな笑い声は、それを肯定していた。
「それを否とするならば、猟兵よ! その力を我に見せてみよ!」
「どこまでも神様ぶって……! 杞柳!」
鎬はまっすぐ挑むでもなく、使い魔を身に宿し、眩い光で姿を隠した。
太陽のような光輝が、束の間祠を照らし、すべてを白に染める。
「ほう! なるほど、身を隠して不意を打つというわけか。実に常道なり」
神農はかんらかんらと楽しげに笑った。鎬はそれを上から見下ろしている。
おそらく、読まれている。だが正確な位置まではすぐにはわからないはずだ。
被衣「山吹」に織り込まれた隠れ蓑としての呪力は、そう簡単に見破れない。
「であれば、我はこうしようぞ! 猟兵!」
「!」
はびこる巨大食肉植物が、必殺剣ユグドラシルブレイドに融合していく。
見えないなら、手当たりしだいを薙ぎ払えばいいというわけか!
「こっちも、じっとしているつもりはないよ……!」
鎬は光の翼を羽ばたかせ、暴威と呼ぶべき範囲攻撃をギリギリで躱した。
喰らえば終わりだ。食肉植物に身を裂かれるダメージはこの際度外視!
鋼切で剣身を弾いてくるくると回転し、飛沫した光を雨に変えて降らせる!
「全部全部灼いていけ!」
「おお……! なんという力強さ! 実によし、心地よき!」
ぐんぐんと相対距離が詰まる。最後に急角度で位置をズラし、鎬は剣閃を放つ!
「歪んだ虚像を断ち切れ、鋼切――!」
「我が必殺剣の味、とくと知るがいい!!」
双刃、激突! 両者ともにダメージを受けた!
「ぐ
……!!」
鎬は抗えぬ戦闘不可ダメージに、着地を失敗しごろごろと地面を転がる。
一方、神農。鋼切の斬撃は深々と袈裟懸けに刻まれ、どろどろ血を流している。
「む、おお……! これほどの一撃、とは
……!!」
ダメージは大きい。戦闘不能と負傷とでは釣り合わぬように見えるが、もとよりこれほどの敵は一撃で仕留めきれる相手ではない。
歪んだ虚像は、その斬撃によって歪を孕んだ。終わりに向かうための一撃は、何よりも強い光のように神の身を深々と抉ったのである。
成功
🔵🔵🔴
ハロ・シエラ
同時攻撃、ですか。
今までにない戦いですが……折角なので時間は有効に使いましょう。
帽子も服もブーツも脱いでレイピアも置き、スーツのみになります。
水中行動用なので動きやすさは申し分ないでしょう。
後はサーペントベインを構え、とにかく【早業】で攻撃を仕掛けます。
ユグドラシルブレイドが無数に増えて襲い掛かってくるのは厄介ですが、もはや一旦退く様な余裕はありません。
【勇気】をもって突撃し、【瞬間思考力】と【第六感】で敵の攻撃を出来る限り把握してその合間をすり抜け、ダガーを突き立てる事に集中します。
その際【スライディング】などで剣以外によって傷付く事もあるでしょうが、そこは【激痛耐性】で我慢ですね。
●一撃を届かせろ
「……む? なんのつもりだ猟兵よ。装いは人にとっての文化であろう?」
自ら帽子を取り、服を脱ぎ、ブーツまで履き捨てたハロ・シエラを訝しむ神農。
始原の存在たる神に衣服という文化はないが、ハロの行為は神にも奇妙に見えた。
ついには愛用する武器すらも置いたとあれば、いよいよ不可解である。
「これは、今の私には必要ありません。こちらが私にとっての戦装束です」
水中行動用のスーツ姿になったハロは、胸を張って言った。
それは詭弁やブラフなどではなく、戦士としての覚悟に満ちている。
「面白い……いかにして我を攻略するか? 見せてもらおうぞ!」
必殺剣、複製! そのひとつひとつが同じ一撃必殺を宿す凶剣!
ハロは蛇毒剣『サーペントベイン』を構え、駆け出した……!
神農は人の文化に疎いがゆえにいぶかしんだが、ハロのやることは単純だ。
ただまっすぐに、素早く、一瞬でも疾く攻撃を届かせる。
彼女が必要最低限のスーツ以外を脱ぎ捨てたのは、すべてそのための布石。
蛇牙の名を持つユーベルコード、すなわちスネイクバイトは、彼女が俊敏な動きのための布石を重ねれば重ねるだけ加速する。
複製の襲来よりも、疾く。むろん、その軌道を読み避けることも忘れない!
「何? 搦手を使うのではないのか!?」
神農は、猟兵の力を正しく認識し、強者であると認めていた。
それゆえに、逆にシンプルな攻略方法は、結果として奴の虚を突いた!
ハロは凸凹の地形を滑り、身を削りながら間合いに飛び込んだ。
複製剣は、すべてその軌道上に杭めいて突き刺さっている。回避成功!
「捉えられないほど、疾く……! この一撃、届かせてみせます!」
神農が本体のユグドラシルブレイドを振るうよりも、わずかに疾く。
ハロのスネイクバイトが兀突骨の部分を抉る。単純ゆえにダメージは大きい!
「ぐ、はは……! この我を相手に、斯様に単純な手で来るとは……!
その覚悟、勇猛! やはり我が強者と認めるに足る相手よ、猟兵!!」
神農は血を流して笑う。兀突骨もまた、雄叫びをあげて震えた。
ハロの一意専心は、強大なる神の意をすら貫いてみせたのである。
成功
🔵🔵🔴
御剣・刀也
ははは。一撃必殺の剣か
正に俺みたいな武芸者が追い求める理想の姿だな
それが相手となってはいやがおうにも燃えるってもんだ
てめぇの剣と俺の剣。どちらが上か、いざ尋常に勝負!
三皇神農・変幻自在剣で剣が変形して襲いかかってきたら、腕の動きを注視し、それから軌道や位置を推測し、第六感、見切り、残像で避ける
こちらの攻撃は、勇気で反撃を恐れず、グラップルとダッシュで食虫植物の床を駆け抜け、捨て身の一撃を叩き込む
「お前の剣ほどじゃないが、俺の剣も結構効くだろ?一撃必殺といかないのが、悔しいがな」
●ふたつの剣
一撃必殺の剣。
それは、剣の道を究めようとする者すべてにとっての、ひとつの夢だ。
あらゆる技も、知識も、その夢を追いかけるためにあるのかもしれない。
「まさに、俺みたいな武芸者が追い求める理想の姿だ。燃えてくるぜ」
御剣・刀也は、大きな雲を見上げる子供のように、清々しく笑った。
死地にあって斯様な笑み、刀也は腹を決めているのだとわかる。
「てめぇの剣と俺の剣、どちらが上か、いざ尋常に勝負!」
「面白い。剣客として我に挑むというのならば、相手になろうぞ!」
ぶあっ! と波動のような殺気が溢れ、刀也の前髪を跳ね上げさせた。
まさに神、まさに暴威。……だからこそ燃えてくる! 刀也は笑みを深める!
「行くぜ……!」
刀也は一切の衒いなしに、まっすぐに駆け出した。
すでに、相対した瞬間にわかっていた。小細工は不要だと。
付け焼き刃は、かえって身を滅ぼす。刀也は経験則としてそれを識っている。
今頼れるのは、今日まで練り上げたこの力と技、そして心だけだ。
湧き上がる恐怖を勇気で押し殺し、残像すら生み出すスピードで走る。
「真正面から来るか、重畳なり!」
神農は快哉めいて叫び、めきめきとユグドラシルブレイドを変異させた。
ただでさえ巨大な剣はさらに幅広に変わり、七支刀のように刃が突き出す。
もはや、剣というよりも、針山じみた有様だ。命中力を高めてきたか。
(「向こうは、当たりさえすればこちらを仕留められる。当然だな」)
刀也の頭は、一周回って冷静になっていた。
考えることはひとつだけだ。いかにして、こちらの攻撃を当てるか。
敵の攻撃を避けるかどうかは考えない。それでは届かせることは出来ない。
劣悪な足場を体術で踏破する。相対距離が、必殺まで縮まる!
身体差から考えれば、刀也は下から上へ切り上げるのがセオリーと見える。
しかし、刀也は逆――つまり、上段の振り下ろしで挑んだ。
「この切っ先に一擲をなして、乾坤を賭せん!!」
だんっ!! と食肉植物を蹴り、ロケットのように垂直に跳び上がる。
すさまじい剣気と覇気に、神農は武者震いを感じていた。
「捨て身の一撃とは、いよいよもって清々しいな! ぬうん!!」
双剣激突! 刀也はユグドラシルブレイドをまともに受ける、が……!
剣を受けたのは、神農も同じだった。
「ふ、は、は……! なるほど、見事なり、雲耀の太刀……!」
まるで星のように、降り落ちる一条のまっすぐな剣閃が正中線を割っていた。
ぶしゃり、と膨大な血が噴き出す。刀也は仰向けに斃れながら笑った。
「お前の剣ほどじゃないが、俺の剣もけっこう効くだろ? 一撃必殺といかないのが、悔しいがな……」
刀也の心は、晴れ渡っていた。惚れ惚れするほどの一太刀だった。
そしていつか、神をも一撃必殺する太刀に至ってみせると、意識を手放しながら心に決めたのである。
成功
🔵🔵🔴
グラン・ボーン
「神農兀突骨か
強そうだな」
ニヤリと口角を吊り上げる
かすり傷でも猟兵を倒すか、面白い
やってやるぜ
「剣一本避ければ良いんだろう」
匍匐前進で敵に近寄る
肉食植物に噛まれても死ぬわけではないので鋼の筋肉で耐える
相手の攻撃しにくい四つ足の下に潜り込んで仰向けになって、腹を殴る
剣で斬りにくい場所だと思ってたら、無数に複製された剣が雨のように襲い掛かってくる
グランは立ち上がり、回避しながら殴る蹴るの攻撃をいれていく
しかし、グランにもいくらか攻撃がかすっているはず
グランが動くたびに血が飛び散っているのだ
「悪いが俺には届いてないぜ」
全身に噛みつき絡み付いた肉食植物がグランの代わりにぐったりしていた
●巨人、神に挑む。
その神は、剣一本であらゆるものを打ち倒すのだという。
かするだけでも戦闘不能。まさしく、武芸者の理想たる一撃必殺だ。
「強そうだな」
グラン・ボーンはその神を前にして、あくまでも測る側として振る舞った。
強がりではない。グランは、心の底から敵を面白がっている。
高い壁である。つまり、グランにとっては、挑むべき格好の敵だ。
怯えるとか、竦むとか、そういう言葉は彼に存在しない。
「ほう……よい顔をしておる。それにずいぶんと見事に練り上げたものだ」
神農も、グランの身体つきから途方も無い鍛錬と実戦を見抜き、褒め称えた。
グランの肉体を包み込む筋肉の鎧は、天禀であり鍛えられ続けた剣と同じだ。
神農ほどの強者となれば、見ただけでおおよそのことはわかる。
「この俺の肉と技がどこまで通じるか、試させてもらうぞ」
「よかろう! 見せてみよ、猟兵よ。我はすべてを以て相対せん!」
強者たちの闘気がぶつかりあい、間にはびこる食肉植物が次々と爆ぜた。
緑色の粘液がマグマめいて飛び散るなか、グランはずしん! と踏み出す!
瞬間、神農はユグドラシルブレイドを無数に複製、周囲に浮かばせた。
どれもが一撃必殺。ひとつでも喰らえば、グランは戦闘不能だ。
その巨躯は、逆に被弾箇所を多くしてしまっているが……?
「たかが剣一本、されど剣一本だ」
なんとグランは走りながら身を伏せ、地を張ったのである。
食肉生物が身を喰らうのも気にせずに、匍匐前進でだ。その速度たるや!
「なるほど、我の身の下に滑り込んで叩こうとな? 面白い、だが甘いぞ!」
雨のごとく飛来する無数の剣! グランは身をひねりながら立ち上がる。
回避しながら拳を叩き込み、蹴りをくれてやるが、奇妙だ。
「何? バカな、我が必殺剣はたしかに当たっているはず!」
グランとて、無数の剣をそう簡単に避けきれるものではない。
血が飛び散っているのがその証拠……いや、待て!
「悪いが、俺には届いてないぜ」
食肉植物だ! 地を這うことで全身に絡みついた肉食植物が剣を受け止めている!
「我が神威で生まれた植物を利用するとは
……!!」
これには神農も笑った。剣が届くまで、数秒の猶予。それだけあれば十分!
「素手で戦うだけが、巨人拳ではないということだ。もらったぞ!!」
ずん!! と、踏み込みで周囲の食肉植物が爆ぜて巻き上がった。
練り上げた気を込めた拳が、質量と速度を伴って……叩き込まれる!!
「がはぁ……ッ!!」
兀突骨の部分に拳を受けた神農は、悶え苦しみ吹き飛んだ。
役目を終えた食肉植物が、ぼろぼろと落ちていく。グランの笑みは……凄まじい。
成功
🔵🔵🔴
深山・鴇
【逢魔ヶ時】
(どの口が???という顔でめっちゃくちゃ見る)
わかってるならいいんだがね、わかってなさそうだが
何だい?いいね、そういうのなら大歓迎だよ
(マッスルがすごい超人の漫画でも読んだか?)
本体はお爺ちゃん以下の体力だものな…階段上れないもんな…ま、君はそれ以外がヤバいんだがね!
先陣を切ろう、とくと加護の力を味わってくれよ
疾く駆け刃を振るう、距離もデカさも関係ない一撃だ
逢真君との連携も慣れたもの、自分の力を自分の背中で喰らうのはどんな気分だい?
任された、逢真君の毒も回りかけた頃だろう?それならより一層斬りやすいってものさ
体勢が崩れたところを直で斬り込む、縦一文字に真っ二つってものさ
朱酉・逢真
【逢魔ヶ時】
心情)期限前に収穫ってオイ、命数ってモンをご存知でない? これだから神ってな気まぐれで困る…おっとブーメランかな? ひ、ひ…。マ・いいや。旦那ァ、チョイと友情パワーでツープラトンしよォぜ。
行動)先ンじて戦場に毒を撒く。神農なら耐性あるし気付き難いンじゃねェかな。ただ俺の病毒は貫通するぜ。俺本体はマジでザコだ、見りゃわかるだろ。毒載せた眷属つっこませりゃ戦い方に納得もいくンじゃないかと。毒のヤバさはご存知だろ? 旦那の剣閃に合わせて《小路》を開き相手の剣を受け止める。道の先はお相手の背中だ。《小路》を通して自分の背中を切るがいい。失敗しても体勢は崩す、任せたぜ旦那。
●道を通ず
「ほう」
朱酉・逢真を目視した神農は、なんともいえない声を漏らした。
「斯様な"かたち"に収まっているとは、一体いかなる由と因果ゆえぞ。
あるいは、それも渾沌氏が左目を啓いたがゆえか? これは実に面白い」
「……ひ・ひ。あンなおっかねぇモンと一緒にしねえでおくれよ」
逢真は、喉を引きつらせるような奇妙な含み笑いを漏らした。
「俺のこたいい……それよか、お前さん期限前の収穫てのァいかんぜ。
命数ってモンをご存知でない? これだから神ってな気まぐれで困る……」
「は???」
深山・鴇は、思わず逢真の顔を二度見した。
「おっと、ブーメランかな? ひ、ひ……」
「わかってるならいいんだがね。わかってるようでわかってないだろ君」
「マ・そらいいや」
「流すとこじゃないぞ今の。やっぱわかってないだろ君」
逢真のノリはいつものことだった。
それはさておき、敵である。
農耕と医療。それは腐敗と病毒の対極、されど真反対ゆえに繋がっている。
神農は、人々に毒の有無を教えるため自らそれを含み、ついに死んだという。
薬を知るということは、毒を知ること。両者は遠く、だが近いのだ。
「こりゃア、俺ごときじゃ剣が触れるまでもねェや。風だけで吹っ飛ンじまう。
ひひ、ひ……身体(これ)がついてなきゃアな。マ、仕方ねぇ、仕方ねぇ……」
「死を斬るという経験は、さすがの我にも兀突骨にもない。実に善き哉。
その身、何度再生出来る? 百か? 二百か? 楽しみになってきたぞ」
「おいおい待て待て、俺を忘れてもらっては困るな」
凄む神農の前に、鴇が割り込んだ。
「そもそもだな、彼はおじいちゃん以下のクソザコ体力なんだ。
お前みたいなのが凄んだら、それだけで昇天するだろう。勘弁してくれ」
「俺ぁお天道様に昇ったりはしねェよ、旦那ァ」
「そういう話をしてるんじゃないんだ。とにかくだ!」
「ああ。チョイと友情パワーで、ツープラトンしようぜ」
「君なんか新しい漫画でも読んだのか??? ……まあ、そういうのなら大歓迎さ」
鴇は刀を構えた。瞬間、ピン……と空気が張り詰める。
「よかろう。見せてみよ、死を奉ずる者。その力! その技を!」
「そォそう、俺ぁ所詮賑やかしさ……ひひひ!」
勝負は雪崩込むように始まった。神農の必殺剣が! 変異する!
「加護の力、とくと味わってくれよ!」
そして鴇は、弾かれたように先陣を切った!
その剣は間合いを無視する。だが、鴇は前に駆けた。
なぜか? 理由は簡単だ、伸び来たった必殺剣を避けるためである。
ズバッ! と裂け目を生んだ剣は、鴇のすぐ後ろを薙いでいた。
あんなことをほざいておきながら、逢真は狙いに入れていない。狡猾な神だ。
(「斬っても潰しても無駄だと、わかっているようだな」)
鴇は内心で、神農の戦術眼に舌を巻く。
毒を含んだ眷属が有象無象となって襲いかかるが、それらも鎧袖一触。
まるで結界だ。近づけば近づくほど、必殺剣の恐ろしさは身にしみてわかった。
このまま喰らい、倒れるか? それは御免被る!
「毒か……! 我を相手に、毒とは! ふはははは!!」
一方、神農は、すでに蔓延していた毒の気配に震え、笑った。
逢真はチェシャ猫めいたにやにや笑いを浮かべている。だがそこに嘲りはない。
「今一度、我を病み殺すか? 否! 我にはこの強者、兀突骨の身体ぞあり!」
「だろうなァ……けどよ、俺の狙いはそちらじゃねェのさ……」
剣閃が走る。必殺剣が斬ったのは、その兀突骨の背面だ!
「空間を拓いたか
……!?」
「ひひひ。道は繋げたぜ旦那、あとはお前さんが通す番だ」
「言われるまでもない。任された!」
鴇は正眼に剣を構え、振るった。縦一文字の斬撃が神を割る!
「人と陰が手を結ぶ、などとは……! は、ははは! 面白い、面白いぞ猟兵!!」
神農は吠えた。愉悦、高揚、そして殺意に。
滂沱の血を流し、肉はおろか骨身に届いてなお。それは生の結実だ。
「ひ、ひ。神ってのァおっかねえや。ひひ!」
土気色の肌の男は、どこまでもうそぶいた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【相照】
なーんか他の奴らとは違う感じ
評価とかはどうでも良いんだけど
これはこれで厄介でちょっと面倒だよな
私は防御専門だから
当たっちゃいけないのって苦手なんだよな
嵯泉、何か良い案ある?
分かった。それなら――閃いた
近くで避けるのは難しくても、遠隔攻撃なら充分使える
嵯泉に気を惹いてもらってる間、呪詛の天幕を目眩ましに身を隠して
私の力だけじゃ無理だけど、嵯泉の怪力があるなら別だ
一撃目のオーラは天幕越しに不意を突く
【ドラゴニアン・チェイン】で縛って動きを封じ、目一杯振り回してやろう
体のどこかでも引き千切れれば僥倖よ
収穫するにはちと遅すぎたんじゃあないか?
はは、良いの思い付いた
――刈り取られるのは貴様の方だ
鷲生・嵯泉
【相照】
些か妙だが過去の残滓に違いは無い
評価された処で無意味も良い処だろうさ
まあ面倒ではあるが……倒すだけの事だ
盾としての優秀さも承知しているが
竜としての並みならぬ利が在る事を忘れてはいない
私の力を加える事で更に活かす案が1つ
――嘉攅戴令
私の怪力をお前に。存分に奮うと良い
掠る事すら不可なら尚更に
極限まで集中した第六感での先読みと
視線や向き、僅かな体捌きに足の運び等を戦闘知識で図り軌道を見極め
引き付けて躱す事で動きを減らして足を取られぬ様にし
衝撃波を牽制に使い灰の竜へは意識を向けさせん
さあ、後は存分に其の暴威を知らしめてやれ
そもそも収穫なぞさせるものか――だろう?
葉の1枚、根の1本とて遺さずにな
●必殺剣、堕つ
接触、即、必殺。
ようは当たらなければいいのだが、それができれば苦労はしない。
特にニルズヘッグ・ニヴルヘイムは、主に呪詛や竜の耐久力で攻撃を耐える、いわばタンクタイプの戦い方を得意としている。
そのダメージを転化することも出来ないとなると、これほど相性の悪い相手はいなかった。
「嵯泉、何かいい案ある?」
「ある。私の力をお前に加え、さらに活かす案が、ひとつだけ」
鷲生・嵯泉はきっぱりと言った。
「へえ……頼もしいな」
「私の怪力を、お前に貸そう。存分に振るうがいい」
嵯泉は、ニルズへッグの手首に、奇妙な黒い符を貼り付けた。
それは嵯泉が望んだ自らの技能を、黒符を貼り付けた相手に委譲するという、少々特殊なユーベルコードだ。
ニルズへッグの肉体に備わった怪力が、さらに強まる。みしり、と全身の骨が軋むほどだ。
「――わかった。私も、いい案がひらめいたぞ」
ニルズへッグは笑みを深める。そして、神農もまた、おそらくは笑っていた。
「感じるぞ。強者の猛り、不遜に相応しい実力を。おお、我と同じく、兀突骨も滾っておるわ……!」
「評価とか、私たちはどうでもいいんだけどな。まあ、人の営みを収穫するというのなら……」
ぎらりと、邪竜の双眸が煌めく。
「刈り取られるのは、貴様のほうだ」
「く、くく……! 重畳なり! 参るぞ、猟兵!!」
巨体が食肉植物を砕いて駆けた! そこへ嵯泉が飛び出す!
作戦会議など、ふたりには必要ない。思いついたことは、同じなのだ!
魔獣と融合した神農の突進は、それ自体がひとつの質量兵器だ。
そこに、変形した必殺剣の斬撃が加わるとあれば、御するのは至難。
嵯泉は鍛え上げたすべての感覚と知識を総動員して、前でひとり戦う。
受けることは出来ぬ。必殺剣の特性もあるが、怪力を委譲した今の嵯泉では、あれの強大なる斬撃には力負けしてしまうからだ。
「どうした猟兵よ、逃げ回るだけが汝の役目か!?」
「逃げているように見えるのか、この私が」
嵯泉は挑発を涼やかに受け流した。
「ならば、お前はただの猪武者だ。神などではない」
「よくほざく! その口を真一文字に裂いてくれようぞ!」
神農は楽しげに笑い、ここからが本番だとばかりに斬撃を加速させた。
さしもの嵯泉も、いよいよ荷が勝つ。悪路がさらに彼に敵する!
「……ぬ、う……!」
彼ひとりであれば、とうに斬撃が届くか、あるいは力負けして隙を晒していたことだろう。
事実、嵯泉の動きは徐々に圧され、斬撃はすれすれを通り抜けていた。
掠めるだけで終わりなのだ。極限の緊張感を持続させることは、只人に過ぎない嵯泉にとってはあまりにも負担が大きい。
彼はけして、神でも竜でもない。ただ、意地がすさまじく強いだけの人間なのだから。
だが、その意地が、結果的に神の目を縫い止めた。
「もらったぞ!」
「ぬうッ!?」
呪詛を天幕めいて広げ、視界から隠れたニルズへッグの不意打ちが決まる!
槍めいて貫いたオーラは強固な鉄鎖に変じる。神農は呵々大笑した。
「何を企んでいるかと思えば、我を相手に相撲を取るか! 面白い!!」
「ああ、私ひとりでは無理だっただろうな。だが……!」
めきめきめき! ニルズへッグの両肩および背筋が隆起し、陽炎をどよもす!
踏みしめた食肉植物が砕けて爆ぜた。巨体が……持ち上がる!
「な、にぃ
……!?」
ぶちぶち! と嫌な音を立てて、神農の片腕が引き裂かれた。
ずずん!! 横転する巨体。だが邪竜はその程度では逃さぬ!
「言っただろう? 刈り取られるのは、貴様のほうだとな」
鉄球めいて巨体を振り回すニルズへッグ! その落着地点には……嵯泉!
「そもそも収穫なぞ、させるものか。だろう?」
「ああ、違いないな」
「ふ、ははは! やはり強い、強いな猟兵よ! 見事なり――」
ざん、と、突風を思わせる剣閃が走った。
「過去の残滓に評価されたところで、無意味もいいところだ」
嵯泉は残心を切り、刀身にこびりついた血を拭った。
両断された巨体が、食肉植物に貪られ、大地へと還元されていく。
それは、残骸と成り果てた神の最期にしては、似合いの有様だった。
成功
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