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殲神封神大戦⑭〜杀了我

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑭ #封神仙女『妲己』 #プレイング推奨時間:1月18日8時31分以降


●梁山泊
 武骨な要塞の壁は輝く宝石と化し、傾国の美女を演じた女の香気に当てられた羽衣人達は狂が如く舞い踊る。
 その奥で女はただ座っていた。

 涙はもう枯れ果てた。
 喉ももう枯れ果てた。

 使命の為に蠱毒の贄となった女の努力も犠牲も汚名すらも全て無駄になった。
 ここに何があるのだろうか?
 何故、私はここに居るのだろうか?
 生きても……死して蘇っても、自分は蠱毒の贄であることを求められた。
 自死は叶わず、仙翁のユーベルコードはただひたすら機能を果たすのみ。

 涙はもう枯れ果てた。
 喉ももう枯れ果てた。

 それでも女は願った。
「杀了我」

 私を殺してくれと。

●グリモアベース
「で、どうする?」
 グリモア猟兵、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)は煙草に火をつけ、答えを待つ。

「場所は梁山泊。遠い未来に、人界が宿星武侠を必要とした時の為に作成された山城。その一室に彼女は居る……いや、待っているね」
 紫煙をくゆらせ、男は淡々と語る。
「部屋は彼女の香気にむせ返り、あらゆるものを魅了する酒池肉林の間と化しているだろう」
 グリモア猟兵の言葉はなおも続く。
「場には仙界の羽衣人達が舞い踊っている、勿論巻き添えは無しだ。その中で――」
 男は灰皿に煙草を押し付けた。
「君達は使命を果たさなければならない」
 探偵屋は立ち上がり、グリモアたるタイプライターのレバーを倒した。
「かつての封神仙女を殺す。これにはキネマのような予想外の結末も、奇跡もありはしない。それが彼女の望みであり。我々に課せられた役目だ」

 開かれたゲートの向こうから嬌声が聞こえる。
 理性などない、只の肉欲のなにか。

「で、どうする?」
 グリモア猟兵が再度問う。
 選択肢は君達に委ねられた。


みなさわ
 役目を終えたはずの女は蘇り、再び毒となった。
 ……本人の意を無視して。

 こんにちは、みなさわです。
 今回は単純な仕事です。

●プレイングボーナス
「酒池肉林の宴」の魅了に耐えつつ、妲己の先制攻撃に対処する。

●戦場
 梁山泊と呼ばれし、山城の一室。
 そこでは羽衣人達が舞い踊っており、部屋の壁すら魅了され宝石と変わっています。
 その中でどのように魅了から耐え、そして先制攻撃に対処するか。

 情報はそれだけで充分でしょう。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、彼女の望みに応えてあげてください。
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第1章 ボス戦 『封神仙女『妲己』』

POW   :    殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD   :    流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ   :    傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●汝、何を以て、彼の女に挑むか

 むせ返る香気に当てられれば、頭に靄がかかるだろう。
 見えないはずの霞が見え、その向こうでは羽衣を纏った者達が踊る。

 部屋から漏れる雫は酒精の香を纏い、気が付けば柱は肉となった。

 心の箍が徐々に緩んでいくのを感じる。
 決意は鈍り、使命を放り投げたくなる。
 そんな中で、部屋の向こうには女がいた。
 笑ってもいない、苦しんでもいない。

 ただ、泣いている。

 そんな時、君ならどうする?

 思考の答えをくれる暇は無かった。
 もう戦いの時は始まっているのだから。
荒谷・つかさ
私を魅了したいなら、ここには決定的に不足しているものがあるわね。
それは――筋肉よ。
(実は:筋肉好き)
(※実はも何も周知の事実感)

魅了に対し「でもアレは筋肉が足りない(=自分にとって魅力的でない)」と何度でも認識し直すことで対抗
もし何らかの手段で本当に魅力的な程の筋肉を持ってきたならそれはそれで「力比べ(=戦闘)」したくなるので問題無い

敵コードは【鬼神拳・極】で対抗
私に憑依なら、私の全力の更に5倍の一撃をぶち込み、無駄な追撃による消耗は一時的な行動不能状態(全身筋肉痛)を利用し防ぐ
敵に憑依なら体術と怪力を駆使して4発凌いでから全力パンチをぶち込む

酒と肉の宴より、血沸き肉躍る闘争を所望するわ。



●一死、封神

 香を切り裂くは剛の気迫。
 中心を歩く羅刹へ踊りを誘おうと羽衣人が近づくが、気が付けば彼女は遥か向こう。
 荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)無用の誘惑を避けんとばかりに武の歩法を以て妲己の元へと立った。
「私を魅了したいなら、ここには決定的に不足しているものがあるわね」
 つかさの言葉に傾国の妃は興味の視線を向ける。
「それは――筋肉よ」
「……」
 羅刹の言葉に仙女が頷く。
 おそらくは同意。
 そして、すぐにその顔は悲しみに歪んだ。
 女に移植された香気が妲己の意に反して応えたのだから。

 それは国士無双足りうる金剛の力士達。
 彼らはその鍛え抜かれた肉体を以てつかさへと挑みかかった。
「上等」
 悲しみを受け止めた羅刹は任せろとばかりに笑みを見せて腕をまくった。

 最後の金剛力士が床に叩き伏せられ、踊り狂う羽衣人を背につかさは女の前に立つ。
「酒と肉の宴より、血沸き肉躍る闘争を所望するわ」
「…………」
 仙女は眉一つ動かさない。
 だが望みはかなえられる。
 そのように出来ているのだから。
 羅刹の心の天秤が戦を望む衝動に揺れる。
 いや……揺らされた。

 殺生狐理精

 殺戮と欲情を煽る狐の化生。
 妲己に移植されたユーベルコードがつかさの心を侵食する。
「是非も無いわ」
 笑みが浮かぶ。
 それは煽られし欲望故か、それとも元からの性か。
 床を蹴り、拳を握り荒谷・つかさは妲己へと飛び掛かった。

 鬼神拳・極

 煽られし殺戮衝動すら糧とし得た力をさらに拳に乗せ、羅刹は渾身の一撃を女へと叩き込んだ。
 手ごたえは充分。
 続いて何か紐のようなものが引きちぎられる音と、硬いものが折れる音がした。
 猟兵最高峰の怪力から放たれる全力の一撃。
 引き換えに得るのは筋肉痛――筋肉の損傷。
 それが、もし仙翁の仕込んだユーベルコードで五倍の力となったらどうなるであろう?
 力を操り、制御し、最大限の威力と最小限の負荷を両立させる技能こそが怪力。
 そのバランスが崩れた今、筋肉は断裂し、支えるはずの骨は耐え切れず……折れる。
 代償を背負い、立ち上がることさえつかさには叶わない。
 彼女が見るのは感謝の笑みと共に壁に叩きつけられる只の女。
 そして立ち上がる封神仙女。

 ――分かっていた。

 彼女はこれから数度、死ぬのであろう。
 望みをかなえるために。

 だからこそ、羅刹の女は全力を以って応え。
 だからこそ、一撃でそれが叶わぬことを悔やむであろう。

 まずは一死。
 封神はここに始まる。

成功 🔵​🔵​🔴​

穂照・朱海
僕(やつがれ)にやらせてくれ
僕の妖刀は殺すことしかできない道具だ

…それにしても
美しい物を穢すしかなかった
者達には反吐がでる
それが何のためであれ…

せめて、速やかなる死を
それが今の僕にできる、
彼女の美しさに対する唯一の敬意の示し方だ

UCを発動
極彩色の翅を広げ、妲己のもとへ飛ぶ
可能な限り高速で道中を通り過ぎる
周囲の光景など見えないくらい速く

直接対決となったらスピードで撹乱しつつフェイントで隙を作る
出来る限り苦しみを減らすために必殺の一撃を見舞えるタイミングを測る

妲己…貴女を忘れない
かつて世界を守り
世界に穢されるしかなかった貴女の事を



●二死、還俗

 穂照・朱海(極彩色の妖魅・f21686)は自らの一振りを抜く。
 蝕む様に求める闘争への呪いを舌を噛むことで抑え込んだ。
 今はその時ではないのだから。

ヤツガレ
「僕にやらせてくれ」
 柄に朱と彫られた刃を握りしめ、何かに言い聞かす。
「僕の妖刀は殺すことしかできない道具だ」
 それは決意。
 自分が何者かを知るがゆえに出した答え。

 宝石の煌めきが視界を彩り羽衣人が踊りに誘う中、向ける視線は女だた一人。
「……それにしても」
 朱海の独白は重い。
「美しい物を穢すしかなかった者達には反吐がでる」
 それが何であろうと……。
 言葉とは裏腹に軽やかな足取りで地面を蹴ると足首の鈴が軽やかな音を立て、極彩色の翅が広がった。

 ――せめて、速やかなる死を

 それが自分に出来る、彼女の美しさに対する唯一の敬意。

 妖蛾幻想錦燕

 空気が割れ、音を超える。
 その勢いに人々が舞うように吹き飛ばされ、やつがれは仙女へと一直線に飛ぶ。
「……」
 女の顔が悲しみに歪んだ。
 意図しない飛翔。
 移植されたユーベルコードが作動し、その手に持った流星胡蝶剣が本人の望まない動きで朱海を切り裂かんとする。
 速度に対するは手数。
 やつがれの軌道を封じるかのように繰り出される胡蝶剣。
 対するは虚実交えた高速軌道。
 輝ける玄室の中で男と女が舞い踊る。
 金属音が鳴り響き、剣舞の華となるのは女の涙と歯痒い男の声ならぬ何か。

 やがて決着の時は訪れる。
 妲己の腹に埋まる妖刀。
 朱海はためらうことなく柄尻を捻り、彼女の腹に空気を送り込んだ。
「妲己……貴女を忘れない」
 返り血に染まる顔に悲壮感はなく。
「かつて世界を守り、世界に穢されるしかなかった貴女の事を」
「忘れてくださいまし」
 口元から血を零す顔に悲しみは無かった。
「私は世を混乱に至らしめ、死んでいった女なのですから」
 刃から滑り落ちるように女は崩れ落ち、そして沈黙が訪れた。

 二死、完了。
 仙界から人界に降りた女はまた一つ命を終えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪
そのやり方が本当に正しかったかどうかは
今更触れるつもりはないけど
貴方が心から死を望むなら
僕は僕に出来る限りの力を持って、その願いに従いましょう

僕自身が元々持つ【誘惑】を少しでも耐性代わりに
【高速詠唱、多重詠唱】で【浄化】の光と風魔法を組み合わせた【オーラ防御】
一時的でも香気を遮断したい

翼の【空中戦】で回避を重視
一応【催眠術】を乗せた【歌唱】で妲己さんの動きを少しでも鈍らせたい

この子達は…どうだろう
生きてるかと言われたら僕の魔力だし
無機物、自然現象…当てはまっちゃうかなぁ…?

【指定UC】発動
羽衣人達は避けさせ、直接妲己さん狙い
風魔法で煽れば火力は上がる
焼かれる痛みを与えないよう、【破魔】で浄化を



●三死、浄化

 彼はかつて見世物だった。
 誰かの都合で生かされた身。
 だからこそ女の苦しみの一端を知ることができた。

「そのやり方が本当に正しかったかどうかは今更触れるつもりはないけど」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の目に涙などという意味のない物は無く。
「貴方が心から死を望むなら、僕は僕に出来る限りの力を持って、その願いに従いましょう」
 ただ強い決意があった。

 歌が……聞こえる。
 高速にして多重に重ねた天使の詠唱は最早讃美歌に近い。
 光が澪を包み、祝福の風が香気を吹き飛ばす。
 道が出来た。
 そこへ歌を届ける。
 催眠を交えた歌声は女を魅了し、一瞬だけ香気を断つ。
 一秒に満たないタイミング。
 おそらくは自らのユーベルコードは完全に力を発揮しないだろう。

 ――だが、願いは叶えなければならない。

 浄化と祝福

 傾世元禳の香りの中を突き抜ける炎たる破魔の鳥。
 百を超える鳥たちが香気によって霧散する中、一つの炎が女に届いた。
 風が舞う。
 澪が放つ最後の攻撃。
 しかし、これも完璧ではない。
 たしかに炎は空気を喰らい妲己は火柱に捕らわれ炮烙の憂き目にあう。
 だが、命を絶つにはまだ足りない。

 ……まだだ!

 願いはまだ叶えていない。
 このままでは終わらない。
 彼女を殺める技を彼はもう使う事は出来ないが、女を苦しめない力を男は使うことができた。

 ――破魔

 魔を打ち破る浄化の力。
 ユーベルコードに重なったそれはの魔を打ち払い。
 仙女が背負った悪業すら払う。

 痛みは無かった。
 鳥たちが導いたのだから。

 痛みは無かった。
 破魔の炎に重ねた破魔の力が浄化の炎となったのだから。

 痛みは無かった。
 女の命はもう灯火を失っていたのだから。

 そこには何も残らなかった。
 何れ復活するであろうことは分かっている。
 強敵たるオブリビオンは死ぬまで殺さなければならないのだから。
 だけど、ここに居る妲己は死んだ。

 天使は望みを叶え。
 女の業は炎の禊によって払われ。
 そして彼女は三度死んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

エル・クーゴー
●SPD



躯体番号L-95
『撃破目標』を――捕捉しました
(彼女がそう望むなら、そのようにマーカーをセットする)


●対魅了
・電脳ゴーグルのバイザーを装着
・外界情報全般を暗号変換に経由してより知覚することで魅了の意識侵食に対抗(暗号作成+経戦能力)


●対先制
・バトルスーツより展開する飛行用バーニアへウェポンエンジンを直結しての高速機動にて回避専心(メカニック+リミッター解除+推力移動)
・敵空中機動の優位を潰すべく、地上低空/壁面沿いをなぞるようにカッ飛ばし先制を凌ぐ


●反撃
・【オーバードライブ(砲撃+一斉発射)】

・相手の攻撃は剣による
・ならば斬り付ける為に接近する手前、周囲全周を焼くこの技からは逃れ得まい



●四死、行動

「躯体番号L-95」
 どのような状況であってもエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は変わらない。
「『撃破目標』を――捕捉しました」
 目的を達成する為に動くだろう。
 そして今は妲己の願いに応え、電脳ゴーグルに表示された識別マーカーを赤に変えて撃破すべきものと認識する。
 同時にゴーグルを通して得られる外界情報に暗号を噛ませた。
 そうすることで視覚情報を安定させ、香気による嗅覚情報のリソースを削り、魅了に対しての軽減を狙う。
 準備は済んだ。
 後は為すことを成すだけだ。

 飛行用バーニアが炎を噴き、人形は舞う。
 望まぬ剣を右手に女は流星が如く、胡蝶が如く飛ぶ。
 一直線にエルを切り裂かんと薙ぎ払う妲己の剣。
 それを弾丸に刻む螺旋が如き回転で人形は回避する。

 バレルロール。

 地を、壁を、天井を這うように飛び、鋭きを剣戟から距離を奪いとれば、背後を取り砲門を向ける。
 背を取られた仙女が壁を蹴り反転、再度の一撃を見舞わんと間合いを詰める。
「ターゲット、『アン』ロック」
 コマンドワードが実行に移される。
 エルの視覚情報にある火器。
 それが全て無照準で発射されたのだ。

 超速射击――オーバードライブ

 相手が剣ならば、距離を詰めなくてはならない。
 ならば距離をとれば。
 そして全ての間合いに炎を投じれば。
 逃れる術はない。

 砲弾が流星が如き飛翔を撃ち落とし、銃撃が胡蝶の剣を吹き飛ばす。
 まだだ。
 弾丸の雨が注ぎ、女が舞う中、確実な成果を得るためにエル・クーゴーはバーニアを加速させ、仙女に掴みかかり玄室の床に引き倒した。

「『撃破目標』を――確保しました」
 ゴーグル越しに拳銃を向け、人形は宣告する。
 これで終わりだと。
「…………」
 女が静かに頷くと、エルの指が動き、遊底が暴れ、熱の残る真鍮が床に落ち、朱が飛沫となって顔に当たった。
「躯体番号L-95、目標を撃破しました」
 返り血に染まったゴーグルを額に上げ、人形は任務の達成を確認する。
 その時だった。
 張力を失ったのか、それとも何かのいたずらか、頬に当たっていた赤い一滴が一筋零れた。

 どのような状況にあってはエル・クーゴーは変わらない行動をとるだろう。

 ……本当にそうなのかを知る者はおそらくは皆無に近い。

 だが一つだけ確信できることはある。
 女は四度死んだ。
 これだけは事実だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー
とりあえず、自身を囲うよう念動力を展開して外気を遮断します。
普段は煙草の煙を漏らさないようにしていますが、今回は逆ですね。
香気を遠ざけて魅了を防ぎつつ、
ついでに周りの羽衣人のちょっかいも防ぎましょうか。
万が一魅了を防ぎきれなかったら…後はもう気合ですね。
念動力で自傷して痛みで意識を保ちましょうか。
痛いのは大嫌いなんですけどねぇ。

で、魅了に抵抗できたら【念動プリズン】でユーベルコードを封じます。
そしてそのまま念動力で首を絞め、殺害を試みましょう。
…私は頑張ってる人が大好きです。
そういう人は報われてほしいですし、手助けしたいとも思います。
だから手は抜きません。
これが私の最大限の、友好的な行動です。



●五死、最大限

 何かが大気を遮る。
 紫煙を纏う中、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は玄室の中を進んで行く。
 蠱毒の贄が生み出す香気とエリーの咥えた煙草の煙が混ざらず遮るような見えない壁――念動力。
 羽衣人も手を出せない状況下、その血が汚染されている女は腕時計を確認する。
 例え煙草の煙で肺を汚しても、汚すための材料たる空気は有限。
 かと言って念動力の障壁を解除すれば傾世に至るほどに万物を魅了する香気が自分を侵略するであろう。
 だから、一歩、二歩と、着実に近づき。
 そして……数歩近づいたところでユーベルコードのカードを切った。

 念動牢獄――サイ・プリズン

 歩いたのは欺瞞、近づいてくると意識させたうえで念動力で対象を捕縛する。
 ユーベルコードが封印され香気が消えたことを確認するとエリーは障壁を解除し、深く息を吸った。
 この清浄な空気を少しでも汚し、肺を汚染せねば、力は発揮できない。
 数度呼吸を整えた後、汚染された女は左手を伸ばし見えない何かを掴む。
「――ッ!?」
 生々しい感触が手に伝わり、同時に蟲毒の贄たる女の顔が歪む。
「……私は頑張ってる人が大好きです」
 正確に首を絞めるために実際に手を動かしイメージするしかなかった。
「そういう人は報われてほしいですし、手助けしたいとも思います」
 感触を確かめるためにはその手に首を絞める感覚が伝わらないと駄目だった。
「だから手は抜きません」
 全てを覚悟の上だった。
 無意識に呼吸をしようと仙女が口をパクパクと開く、首に手を持って行こうとしていたが、それは自らの意志で抑え込んだ。
 女には分かっているのだ。
「これが私の最大限の、友好的な行動です」
 それがエリー・マイヤーが選び、自分の望みを叶えるための方法だという事を。
 反射的に足が暴れ、妲己は倒れる。
 玄室の床が体温を奪う中、仙女の目は自らに優しさをくれる女に注がれる。
「そんなに見ないでくださいよ」
 軽口のようにエリーは返し、そして手に力を込めた。
 何も伝わらなくなったのはそれから間もなくだった。

「……」
 再び、煙草に火をつける。
 身体が汚染された女にとっては馴染んだものだったはずなのに、妙に苦い。
 けれど、その苦さも敢えて受け止めよう。
 それが人を殺したという事なのだから。

 最大限の善意によって、女は五度目の死を迎えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
神殺しの力持つダンピール(ダクセ種族説明)鍛えし義護剣ブリッジェシー
●破魔の刃にて香気断ち
胴に突き刺しコアユニットに憑りつく殺生狐理精刺し貫いて封じ

…己を赦せ、とは申しません
私もそうなのですから

ですが貴女は一度死した身
死すべき理由は嘗ての罪と違う物で無くてはなりません

淑女の願いに応えるのが騎士ならば、涙拭うは御伽の騎士の務め
その一助とならん事を

禁忌剣より仙界貫き人界に至る光条放ち
微細機械の偵察衛星放ち

樊城にて戦う兵
宴開く仙人
香港租界の喧騒
今、産声あげし赤子

汚くも美しき封神武侠界の“今”を見せ

過負荷で思考演算停止
事前プログラムに従い直近生命反応に剣振り下ろし
仙女が何を見出したか、絡繰は生涯知れず



●六死、告别忧伤

 女の涙は痛み故か、それとも悲しみ故か。
 どちらにしてもそれは終わりを告げる。

「……己を赦せ、とは申しません」
 香気が切り裂かれると現れるは鋼鉄の騎士。
 名はトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)。
 その手にあるのは義護剣ブリッジェシー。
 神殺しが鍛えた想いの刃。
「私もそうなのですから」
“汝、心の儘に振る舞え”
 剣に刻まれし願いの通りに騎士は己が腹――コアユニットを貫く。
「生憎と私は戦機、化生、妖に揺らす心は無いのです」
 封じ込めるは情欲のユーベルコードにして化生、殺生狐理精。
 咲く華は火という名の小さくも眩しい花弁。
「ですが貴女は一度死した身」
 邪魔者を封じ込め、トリテレイアは女と向き合う。
「死すべき理由は嘗ての罪と違う物で無くてはなりません」
 そうだ、罪はもう贖われた。
 ならば、何故騎士は来た?
 決まっている。
「淑女の願いに応えるのが騎士ならば、涙拭うは御伽の騎士の務め」
 ただ一人の女の涙を拭う為。
「その一助とならん事を」

 ――禁忌解放

 数多の惑星破壊兵器封じた電脳禁忌の災器。
 託されし剣はアレクシア。
 放たれし光の刃は仙界を切り裂き、人界に届く。

 機鋼神话故事――ナーサリーテール・フォア・アレクシア

 微細な機械が人界へ飛ぶ。
 それは偵察衛星。
 遠くを見る目となり、梁山泊にそれを映す鏡となり、見せるのは――

 樊城にて戦う兵
 宴開く仙人
 香港租界の喧騒
 今、産声あげし赤子

 戦いの中に進む日常という営み。

 それは妲己と名乗りし女が贄となりて作った未来。
 過去が作った礎が生み出したこれから。
 刃が振り下ろされる。
「…………」
 仙女の表情が動いた気がした。
 しかし戦機には最早認識叶わず。
 剣の禁忌を解放すると引き換えに流れて来た膨大な情報量。
 過剰な負荷に対し己を守るために機能を停止しているのだから。
 騎士に出来ることは事前にプログラムした一動作。
 直近に居る生命に剣を振り下ろす、ただそれだけ。

 結末は誰も知らない。
 女はもう未来を知ることは出来ず
 絡繰は果たすべき使命の為に結末を見届けることができない。
 だが破壊齎さず悲しみ拭う電脳の魔法は成立した。

 六度の死を以て、女は悲しみから解き放たれたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
待ってるコがいるなら見つけてあげなきゃ、ね
桃さんどうか力を貸してね
*桃源郷で作った宝貝『桃花』の浄化の力と
狂気・呪詛耐性で魅了に抵抗を

浄化の光を重ねた魔法の風を起こし
周囲の香りを属性攻撃
吹き飛ばして魅了されたコ達が正気になるお手伝いもできたら
向ってくるコは【UC】で武器受けたり
捕縛して攻撃を止めさせるの

泣きべそ天女さんに隙あらば
お鼻をちょんと摘んじゃう
泣くだけじゃ、何も変わらないのよ
…争いが絶えないこの世界は嫌い?
そうでないなら
嘆きよりも、どうか祈りを
私、貴女を無理に起こしたコを怒ってくるわ
パーじゃないのよ、グーで!

浄化籠めた蔓バラでそっと抱きしめて生命力吸収
貴女にも暖かな眠りを
おやすみなさい



●七死、晚安

 春が咲く。
 桃花の宝貝を振るい春を誘うのは城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)。
 物語の垣根を超えてやってきたのは何のため?
「待ってるコがいるなら見つけてあげなきゃ、ね」
 それは待っている人がいるから。
「桃さんどうか力を貸してね」
 枝にささやき、宝貝を振るうと浄化の光が春風に乗る。
 邪気を払う桃源郷の桃から作られたそれは、仙翁の思惑で移植され、張角に弄ばれし香気を払う。
 そこへ――泣いている女が間合いを詰めてきた。

 殺生狐理精

 殺戮と欲情を煽る化生が仙女に憑依し、いばらを殺めんと妲己の肉体を操る。
 魔法の紡錘と桃の枝。
 咄嗟、白薔薇の少女が両手に取った二つの道具を盾に女の貫手から伸びる殺意の爪を受け止める。
 衝撃が身体を揺らし、白のブーツが玄室の床を削り、二度、三度、たたらを踏む。
 倒れない。
 倒れるわけにいかない。
 倒れたくない。
 城野・いばらは妲己というアリスに用事があるのだから。
 だから茨を握りしめ、まずは狐理精におやすみを。

 茨の揺籃

 眠りを誘う呪いと祝福。
 化生が動きを止め、憑依から解放された女が罪悪感からかその場に立ち尽くす。
 ケホッと軽くいばらがせき込むと混ざるのは赤い何か。
 さっきの一撃でどこかを痛めたか。
 けれど足は動く。
 なら白薔薇がすることは決まっている。
 それは泣きべそ天女さんの花を摘まむこと。

「……?」
「泣くだけじゃ、何も変わらないのよ」
 不思議そうな顔を見せる仙女にいばらが微笑む。
「……争いが絶えないこの世界は嫌い?」
 薔薇が問い、贄は首を振る。
「そうでないなら、嘆きよりも、どうか祈りを」
 女の前でいばらは五指を交互に合わせ手を組んで祈りを促す。
 それから右腕の袖をまくって力瘤を見せようとした。
「私、貴女を無理に起こしたコを怒ってくるわ」
 残念だが色白の細腕はそのまま。
「パーじゃないのよ、グーで!」
 その言葉と振る舞いに仙女はくすりと笑みを零した。
 涙はもう無かった。

 抱きしめるように蔓薔薇が女を捕える。
 力が抜けていく。
 でもそれは温かく。
 妲己はいばらがしたように手を組み合わせて祈った。
「貴女にも暖かな眠りを」
 白薔薇のささやきが子守歌。

 晚安――おやすみなさいと告げるため。
 いばらは不思議の国からやってきた。
 泣いている子に会うために薔薇は垣根を越える。

 七度目は安らかな眠り。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

シリン・カービン
「あなたは、私の獲物」

妲己、あなたの置かれた状況はわかりました。
ですが、あなたは今回私が狙うべき相手。
なら、迷いません。
「あなたは、私の獲物」

手早く精霊弾を装填しながら、いつもの言葉を口中で呟きます。
集中力を高め感覚を研ぎ澄まし、生半可な誘惑に揺らがないように。

しかし、誘惑に屈するまでは行かないものの、
羽衣人の舞がちらつき、視線を乱す。
「……くっ」
そこに高速飛行で迫る妲己。
すかさず連射し、流星胡蝶剣を弾を弾くために振るわせます。

「……あなたは、私の獲物」
集中。より深く。より奥底へ。
自分の意識の深奥へ手を伸ばし、
……何かが触れた感触。

開かれた感覚器が知覚する周囲の感覚情報を塗り替え、
世界が再構築されていく。
額に開く、第三の目。
やけに鮮明に見える世界。
羽衣人も妲己も、全てが動きながら止まっているように見える。

精霊護衣のみを身に纏い、褐色の肌をさらす銀髪のエルフ。
第三の目は全てを見通す様に金色に輝き、
心の臓への射線を正確に見抜く。

「あなたは、私の獲物」
それが、手向けの言葉です。



●八死、女人死了

 一度の死で再度の封神が始まり。
 二度の死で神から人となる。
 三度の死で悪業は打ち払われ。
 四度の死で願いはかなえられ。
 五度の死で優しさをもらった。
 六度の死は悲しみを拭い去り。
 七度の死は涙を止めた。

 そして――八度の死は終わりの時。

「あなたは、私の獲物」
 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が精霊銃のボルトを引き、弾丸を込める。
「妲己、あなたの置かれた状況はわかりました」
 遊底を押し込み精霊弾を薬室に送りつつシリンは口を開いた。
「ですが、あなたは今回私が狙うべき相手」
 そして自分は狩人。
「なら、迷いません」
 自らの仕事を成すのみ。
「あなたは、私の獲物」
 繰り返す様に呟き、シリンは膝立ちで精霊猟銃を構えた。

 狩りの仕事は『待ち』である。
 どんな時も、息を潜めチャンスを狙う。
 故に香気の魅力にも心揺れるが、引鉄にかける指は揺れない。

 照準を合わせる。
 だが舞い踊る羽衣人が、その衣が邪魔をして、思い通り狙えない。
 だからタイミングを合わせる。
 舞踊のステップ、その狭間の狭い間隙、わずかな刹那の機を……
「――!?」
 だが、その機先を制するように女が飛んだ。

 流星胡蝶剣

「……くっ」
 咄嗟、進撃を止めるために引鉄を引く。

 連続射撃

 高速で振るわれる連撃を次々と銃弾で弾き飛ばし、再度狙いを着けようと立ちあがったところで――顎に衝撃が来た。
 蹴りと気づいたのは玄室の壁、宝石のようにきらめく硬いものに叩きつけられた時だ。
 衝撃で肺の空気が吐き出される。
 呼吸が止まる。
 何度もせき込み、一撃で混乱した自律神経を自分の手に取り戻し、再び猟銃を構える。
「……あなたは、私の獲物」
 自分を取り戻すために言葉を繰り返して。

 ――集中

 視聴嗅覚、そして風を感じる触覚すら削り落とし、深く深くへと自らを沈め、そして引く。

 Trigger
 心の引鉄を

 世界が……変った。

 開かれた感覚器が情報を塗り替え、再構築される世界――いや、狩人たるシリン・カービンが変わるのだ。
 額に開くは第三の目。
 真の姿が今、解放される。

 鹰眼狙击――ホークアイ・スナイプ

 そこに立つのは精霊護衣のみを身に纏い、褐色の肌をさらす銀髪の狩人。
 額の目は金色に輝き、世界を、呪いを、戒めを、悲しみを、命を、見定め――狙う!
 引鉄が絞られ、何かが弾ける音が響き、遅れて熱を持った金属が落ちた。

「あなたは、私の獲物」
 それはシリンが送る手向けの言葉。
「谢……谢……您……」
 それは妲己が送る感謝の言葉。
「あなたは、私の……」
 狩人は言葉を繰り返そうとした。
 銃で心臓を撃ち抜いた相手に、笑って感謝の言葉を述べる相手に、どんな言葉を返していいのか分からなかったから。

 だが……だが……それでもなにかを……

 しかし言葉は出ない。
 相手が言葉を発することを止めたからだ。

 九尾の化生とも呼ばれた封神仙女妲己は過去に一度死に、今、八度死んだ。
 ここに九生は断たれ、残るのは人としての亡骸。

「…………」
 褐色から白い肌に戻ったシリンはかつて蟲毒の贄だった女に羽衣人から受け取った布をかけた。
 死者には眠りが必要なのだから。
 八度目の死を成し、狩人は去る。

 そして……封神仙女妲己はただの女として死んだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年01月22日


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#封神武侠界
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#封神仙女『妲己』
#プレイング推奨時間:1月18日8時31分以降


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト