殲神封神大戦⑭〜哀れな仙女に死を与えよ
●死を待ち侘びる仙女
「封神台建立を命じた仙翁達は何故か死に、封神台は破壊され、私はオブリビオンとして蘇生され、異門同胞に縛られて……こんな事なら、私は何の為に……」
梁山泊内部の玄室で、妲己は咽び泣いていた。彼女の多大なる犠牲によって作り出された封神台も破壊され、今の世にはオブリビオンが蔓延っている。その上、その身もオブリビオン・フォーミュラに利用されるとは筆舌に尽くしがたい無念だろう。
「誰か、私を殺してください。もう、生きていたくはないのです……」
せめて自分がこれ以上害を為すことの無いようにと、妲己はただひたすらに死を求めていた。
●酒池肉林の先に
「次の決戦の相手は、封神仙女『妲己』だ。しかし……どうやらこの者は他の有力敵とは毛色が違うようだな」
グリモア猟兵の天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、戦争アタックによって新たな戦場が開いた事を集まった猟兵達に告げた。しかし、どうやら妲己はこれまでの敵とは違って、悪人では無いらしい。
「そもそもこの妲己は己が身を生贄として『封神台』を建立し、全てのオブリビオンを封印した者なのだ」
その過程に於いて、彼女は多くの殺戮と悪徳に手を染めた。しかしそれは仙界の桃花のみを食していた妲己を酒池肉林に穢す事で、彼女を『蠱毒の贄』とする必要があったからだ。オブリビオンの根絶が後の世に安寧をもたらすと信じた妲己は、本質的には悪では無いだろう。
「だが、オブリビオン・フォーミュラである大賢良師『張角』の『異門同胞』によって、妲己は支配下に置かれてしまった。故に、彼女を死を持ってこの状況より解放するのだ」
異門同胞から解き放つ手段は、妲己を殺すことのみだ。しかし、本人すらも死を望んでいるというのに、それは非常に困難なのだという。
「まず、妲己は山岳武侠要塞『梁山泊』の玄室に籠もっている。そのため、そこは万物を魅了する蠱毒の贄としての香気がむせかえり、あらゆる者を狂わせる『酒池肉林の宴の間』と化しているのだ」
これによって無骨な要塞の壁さえもが、魅了されて輝く宝石と化し、仙界の美しい羽衣人達が誘われて、正気を失い踊り狂っている。羽衣人達を傷つけず、この美しい宴に魅了されないように心を強く保ちつつ妲己と戦闘を行う必要がある。
「皆の中には、桃月桃源郷で妲己対策の宝貝を製作した者もいるだろう。今こそ、それの出番だな」
破魔の宝貝があれば、魅了への抵抗はかなり楽になる。もっとも、それが無ければ倒せないというわけではないとのことだ。
「魅了に抵抗したとしても、自動発動型の妲己のユーベルコードが邪魔をするだろう。どうやら離反を恐れた仙翁達に移植されたもののようだが……信頼もせずに犠牲にするとは、何とも酷いものだな」
このユーベルコードは妲己の意志に関係なく、猟兵達の先手を取って発動される。『殺生狐理精』は猟兵に憑依しその生命力を使い果たさせ、『流星胡蝶剣』は自動で飛翔し敵を切り裂く。そして『傾世元禳』は妲己より直接放たれる強力な魅了の香気である。
「斯様に困難な任務だが、貴殿達ならば必ず達成できるはずだ。どうか妲己を、張角の使役下から解放して欲しい」
百々はそう懇願すると、猟兵達を梁山泊へと送り出すのであった。
夢幻
●マスターの夢幻です。
●戦争シナリオのため、1章で完結となります。
●妲己は必ず先制攻撃してきます。
●このシナリオのプレイングボーナスは、『「酒池肉林の宴」の魅了に耐えつつ、妲己の先制攻撃に対処する。』です。
●また、⑬桃月桃源郷にて作成された『破魔の宝貝』を使えば、妲己の魅了へ抵抗しやすくなります。(特別にプレイングボーナスを与えます)
第1章 ボス戦
『封神仙女『妲己』』
|
POW : 殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD : 流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ : 傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:ロキ
胸のポケットに、宝貝と化した水墨画を忍ばせています。
風属性の魔銃で香気を吹き散らしましょう
「すみません、宝石も踊りも、美しい女性も美味しい食事も。あまり、興味を惹かれませんので」
解体してみたくはあるのですがね。
「例えどのような意思であろうとも、大義名分があろうとも。大勢を犠牲にした貴女は悪ですよ。ご心配なく。ちゃんと殺して差し上げますから」
話ながら目立たないよう、触手を伸ばしましょう。重力属性の触手で身動きが取れないようにし、氷属性の触手で氷漬けにします。凍らずとも体温が下がれば、一時的にマヒするでしょう。雷属性の触手で電撃を流し、攻撃すると致しましょう。
魅了の香気が立ちこめ、酒池肉林の宴の間と化した梁山泊へと、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)が足を踏み入れた。ちなみに、多重人格者である彼の今の人格はロキであった。
「すみません、宝石も踊りも、それから美味しい食事も。あまり、興味を惹かれませんので」
ロキは銃型魔導兵器『オムニバス』から風の魔術を放ち、厄介な香気を吹き飛ばす。もっとも、それだけでは充満する香気の全てを無効化はできないのだが、どうやら彼は魅了の影響を受けていないようだ。その理由は、彼の胸ポケットにあった。そこに収められた水墨画は、妲己の魅了対策として製作された『破魔の宝貝』だ。それは狙い通りの効果を発揮し、ロキを魅了から護っていた。
「……私を殺しに来てくださったのですか? ですが、このユーベルコードは私には制御出来ません。きっと貴方も……ああ、私は罪を重ねる事になるのでしょう」
そして、梁山泊奥の玄室にて、ロキは妲己と邂逅する。しかしその瞬間、妲己に迫る危険を感知したか、『傾世元禳』が発動した。
「美しい女性にも興味はありません。解体してみたくはあるのですがね」
その効力は、周囲に溢れた香気とは桁が違った。破魔の宝貝がその力を全力で発揮して尚、近距離で相対すると妲己に協力したくなる気持ちが湧き出てくる。ロキはその気持ちを抑えつけ、ユーベルコードを発動する。
「ご心配なく。ちゃんと殺して差し上げますから。例えどのような意思であろうとも、大義名分があろうとも。大勢を犠牲にした貴女は悪ですからね」
「何という意志の強さでしょう……。ええ、私は赦されざる悪人、どうかこの命を奪って下さい」
ロキは触手式魔導兵器『シンフォニア』で様々な属性の触手を伸ばして、妲己を攻撃する。氷属性の触手の冷気が、雷属性の触手の雷撃が、逃げようともしない妲己へと放たれる。その内の一部は傾世元禳の力で逸れていくものの、何割かは確実に妲己へと届いていた。
「……このあたりが限界ですか」
如何に破魔の宝貝が効果を軽減しているとしても、間近で傾世元禳の効力を受け続けていればさほどの時間も掛からずに完全に魅了されてしまう。ある程度攻撃をしたところで、ロキはこの場から退いたのであった。
成功
🔵🔵🔴
栗花落・澪
宝具:仙人さんと作った桃花のハンドクリームを手に塗る
杖を持つ手、魔力を放つ手
全ての源に力を
僕自身が元々持つ【誘惑】も
慣れっていう意味で耐性代わりになれば
合わせて【高速詠唱】で風魔法と組み合わせた【オーラ防御】
自分の周囲に風のバリアを張り、一時的でも香りを遮断
はじめまして、妲己さん
貴方を救いに来ました
翼の【空中戦】で回避を重視
羽衣人達は正気を失ってるなら催眠は効かないかな…
一応【催眠術】を乗せた【歌唱】で昏睡を狙うけど
届かないなら仕方ない
足場に広げた★花園を風魔法で舞上げて
一時的な目眩し
更に【指定UC】
この子達の判定がどうなるか不安はあるけど
【破魔】の炎による【浄化】で
なるべく痛みを与えず攻撃を
「えっと……これで大丈夫なはず、だよね?」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、梁山泊の手前で桃花のハンドクリームを自らの両手に塗りこんでいく。それは、彼が金蓮花の精霊・ハレンと一緒に集めた霊花で作った『破魔の宝貝』である。杖を持つ手、魔力を放つ手、全ての源に力を得て、これならきっと魅了に抵抗出来ると、その力を信じて澪は酒池肉林の宴の間へと踏み込んだ。
「うっ! 近づくにつれて、クラクラする香り強くなってくるね……」
破魔の宝貝はその効果を発揮しているものの、どうやら猟兵の侵入に反応して『傾世元禳』が発動しているようだ。更に濃く強くなる香気を防ぐため、澪は周囲に風のバリアを張った。これでどうにか意識を失わずに済みそうだ。そして彼は、梁山泊の最奥部、玄室にて妲己と向き合った。
「はじめまして、妲己さん。貴方を救いに来ました」
「はじめまして。救いを、死を、どれほど待ちわびたでしょう。貴方もきっとすぐに、彼らの様になってしまうでしょう」
妲己は周りで踊り狂う羽衣人達を指し示す。誰もこの魅了には抗えないと、彼女は諦めているように見える。
「いえ、そんなことはありません!」
澪は強い覚悟を秘めた瞳で妲己を見つめると、ユーベルコードを発動した。
「鳥たちよ、どうかあの人を救ってあげて!!」
懇願と共に放たれた破魔の炎は、様々な鳥の形をとって妲己の元へと向かっていく。だが、その内の半分ほどは傾世元禳の力で、明後日の方向に逸れていってしまった。それでも残る半分が、オブリビオン―――魔の存在と化した妲己を浄化していく。
「ああ、熱い……! しかし、まだこの身を焼き尽くすには足りません」
確実に妲己の体力は削れているようだが、未だそれは彼女の死へと届くところまでは行き着いていない。そして、妲己の至近距離に居続けることは、如何なる対策を取ろうとも困難だ。澪は悲しげな表情を見せながら、この場から撤退したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
※戦場⑬で入手した宝貝【魔符桃香】という闘気を持参
今までも、香りで幻覚を見せたりする罠やUCも、あったけど、
ここのは一際、すごいね…
(内ポケットのサシェに触れて)
桃の精さん、力を、貸してね?
桃色の温かくて気が鎮まる闘気を纏うよ(【狂気耐性・呪詛・落ち着き・ジャミング】)
桃の闘気に魔力を乗せて、強力になった【オーラ防御】の【結界術】で守りを固めるの
妲己さん?
泣いてるの?
その力だけを壊す事は、できないの?
だめでも、挑戦だけは、させてね?
きちんと、生命の理に則って、全うする方がいいんだから…
妲己さんを救いたい
その気持ちを【浄化】の力に
UCを【全力魔術】で、発動なの
何度でも、挑むから
「今までも、香りで幻覚を見せたりする罠やUCも、あったけど。ここのは一際、すごいね……」
むせかえるような香気とそこに篭められた魅了の力は、生物のみならず無骨な要塞の壁さえも輝く宝石と化すほどだ。
「桃の精さん、力を、貸してね?」
しかし、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)には『破魔の宝貝』がある。内ポケットに入れたサシェに触れた彼は、その力を借りた闘気を身に纏っていた。桃色の闘気は温かく、彼の気を鎮めてくれる。そうして十分に護りを固めたロランは、梁山泊内部を進み妲己の元へと辿り着いた。
「ああ、私は何の為に……」
「妲己さん? 泣いてるの?」
そこには、死を求めてすすり泣く仙女がいた。
「私に近づいてはなりません。貴方もきっと魅了されてしまうでしょう」
「少しなら、大丈夫だよ。そんな悲しそうな顔を、しないで……」
猟兵の接近に、『傾世元禳』が強烈な魅了の香気を撒き散らしている。あまり長い間は耐えられなそうだ。
「その力だけを壊す事は、できないの?」
「不可能です。仙翁達の術は強力で、誰にも制御出来ません」
「だめでも、挑戦だけは、させてね? きちんと、生命の理に則って、全うする方がいいんだから……」
妲己を救うため、ロランは破邪結界『Luce a spirale』を発動する。救済の祈りを篭めた聖なる光は、傾世元禳の力の前にその一部が拡散するも、妲己へと届いた。
「ああ……ありがとうございます。もう少しで、私は死ねるでしょう」
しかし、封神台を築くために為した悪逆のためか、それともオブリビオンとなってしまったためか、聖なる光は妲己の力のみならず、彼女自身をも浄化しようとしている。
「何度でも、挑むから……」
「いえ、これで十分です。もう、限界なのでしょう?」
何とか妲己を助け出そうとするロランであったが、妲己の言うとおり魅了に耐え続けるのももう限界が来ていた。これ以上やっても、犠牲者が増えるだけ、それは妲己も望まぬことだ。そこでロランは仕方なく、撤退を選んだのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
妲己さん
本当の貴女は
平和を望んで
らしてたんですね…
【SPD】
宴の魅了は
桃月桃源郷⑬で作った
ヴェール型の宝貝に
【破魔】や【浄化】も込め
身に纏い対処し
先制攻撃は
【第六感】【見切り】【早業】を総動員し
UC発動
瞬間移動で回避し
クイーンオブハートキーを使っての魔法攻撃で相殺
回避成功後
羽衣人さんを
傷付けない様にしつつ
クイーンオブハートキーを手に
【ハートのA(アリス)】も
展開
外傷を与えない
【精神攻撃】での
【衝撃波】【誘導弾】の【一斉発射】【全力魔法】や
UCで
妲己さんを攻撃
敵の攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】
【結界術】【オーラ防御】で
回避・防御
『こんな形でしか…お救いできず…ごめんなさい…』
続いてアリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)が、酒池肉林の宴の間を突っ切って妲己の元へと飛翔していた。彼女が被るはヴェール型の『破魔の宝貝』、その力で魅了に抵抗し、アリスは玄室に佇む妲己の元へと辿り着いた。
「妲己さん。本当の貴女は、平和を望んでらしてたんですね……」
「いえ、望みがどうであれ、私のした事は赦されません。そう、今もその罪を重ねようとしています」
アリスの接近に反応して、飛翔する『流星胡蝶剣』が襲い掛かってきた。そのスピードはかなりのものだが、動き自体は単純にまっすぐと向かってくるだけだ。アリスはタイミングを見極めてひらりと初撃を回避すると、反転して再度向かってきた剣に対してユーベルコードで迎撃を試みる。
「『バンダースナッチ・ムーヴ』、です!」
瞬間移動で飛んでくる剣を回避したアリスは、そのまま剣の後方に出現した。そしてアリスが『クイーンオブハートキー』から放った魔法弾が剣に直撃し、剣はカランと地面に落ちた。
「こんな形でしか……お救いできず……ごめんなさい……」
防衛の流星胡蝶剣を無力化したアリスは、『ハートのA』を展開すると妲己へと向けて全力の魔法を放つ。せめて外傷を与えぬようにと精神攻撃系にしたそれは、着実に妲己の体力を奪っていく。
「貴女はお優しいのですね。私を救いに来てくれて、ありがとうございます」
アリスの魔法を受けながら、妲己は優しく微笑んだのであった。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!
無理やり蘇生させられ、戦いを強いられているとは……妲己殿。
……オーダー、了解!
ワタシたちが、解放いたしマース!
このために用意した銅鑼型宝貝、猛忍👍を叩き鳴らして、魅了に耐えながら突破!
途中で羽衣人の方々の目を覚まさせながら、一気に玄室まで駆け抜けマース!
デリバリーデース、妲己殿! ワタシたちがアナタを救済(たお)しマース!
むう。憑依させる力というものはなるほど、厄介でありますな。
殺意や欲望のままに暴れ回ったら、自滅してしまう。
ならば、その上から更に人格を塗り潰せば良いのデース!
システム、インストール! 真の姿、開放! 超克!
「骸式兵装展開、朱の番!」
そして、自分ごと木阿弥大津波ー!
ワタシも妲己殿も傷つかず、殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」のみを洗い流しマース!
過剰なやる気を拭い去って、グリモア猟兵から託された使命感を抱えて立ち上がりマース。
妲己殿。アンタが悪徳を為したというその汚名。
ワタシたちが奪い去っていくよ。
……手にしたファルシオンにて、……断ちマース!
「無理やり蘇生させられ、戦いを強いられているとは……妲己殿……」
グリモア猟兵から聞いた妲己の境遇に思いを馳せたバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、顔を上げると気合いを入れて任務を受諾した。
「……オーダー、了解! ワタシが、妲己殿を解放いたしマース!」
そしてバルタンは、銅鑼を打ち鳴らしながら梁山泊の中へと突撃する。ゴーンゴーンと響き渡るその音色は、聞いた者の心に力を与える。そう、それは銅鑼型宝貝『猛忍👍(モーニングッ)』、魅了から目覚めさせる破魔の力の持った宝貝である。
「デリバリーデース、妲己殿! ワタシたちがアナタを救済(たお)しマース!」
「ああ、勇気ある御方……しかし、私の『殺生狐理精』は、私の意志に関係なく殺戮と欲情を煽ってしまいます……」
差し伸べられた救済の手にも、妲己に植え付けられたユーベルコードは牙を剥く。妲己と遭遇した瞬間、バルタンは殺生狐理精に憑依されてしまった。
「むう!? なるほど、厄介でありますな! 感情が抑えられまセーン!」
バルタンの心には殺戮衝動が溢れ、すぐさま手近な羽衣人に襲い掛かりそうになってしまう。しかし、もしもその心に身を委ねれば、強化の代償に生命力を喪失し、彼女はすぐに自滅して戦闘不能になってしまうだろう。
「システム、インストール! 超克!!」
そこでバルタンはオーバーロードに覚醒し、真の姿を現した。強力なオブリビオンを模したこの姿になる事で人格を塗りつぶし、憑依する殺生狐理精の力より逃れようというのだ。だが、例え真の姿になろうとも、殺生狐理精の力を完全に退けることは出来なかった。それでも、少しでも抵抗出来れば十分だ。
「骸式兵装展開、朱の番! これで洗い流しマース!」
バルタンは『木阿弥大津波』を発動、自分もろともに大津波で戦場を押し流す。精神的なやる気や欲望を攻撃するその力は、狙い通りに殺生狐理精を押し流し、バルタンを憑依から開放した。
「……お待たせ致しマシタ」
ユーベルコードの影響から開放されたと行っても、自爆に近い力業だ。バルタンの精神への影響は大きい。しかし、彼女はグリモア猟兵から託された使命感を抱えて立ち上がると、再び妲己の眼前へと歩み寄った。
「妲己殿。アンタが悪徳を為したというその汚名。ワタシたちが奪い去っていくよ」
「辛い役目を押しつけて、申し訳ありません……ああ、これでようやく……」
護りを失った妲己の身体を、バルタンの持つファルシオンがあまりにもあっけなく斬り裂いた。宿業はここに断ち切られ、妲己は骸の海へと還っていった。
こうして、猟兵達は妲己との決戦に勝利した。
―――願わくば、二度と彼女が利用されることの無いように……
大成功
🔵🔵🔵