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殲神封神大戦⑧〜電脳の街

作者：龍真　神

●混ざった九龍城
　剥き出しの配管、コンクリートの無機質な建物、そして住民でさえ全て把握しきれていない複雑な通路。
　ここに住む者達は、怪しい姿をしたり、家電に似た姿であったり、非常にクセの強い住民ばかりであった。
　露店を見回せば、ネジだの扇風機の羽一枚だのとやはり普通ではないモノばかりが並んでいる。
　丸いサングラスを掛けた怪しいおじさんが店主であろう、何故かよく通るダミ声で『ネジいらんかね～、今ならこの扇風機の羽も付いてくるよ』と言っている。
　ひと昔前のスチームパンクの様な九龍城。
　普通じゃない、薄汚れた個性的な姿であればきっと、この世界に馴染める気がする。
「ここは、ここで、良い九龍城じゃないか」
　編笠はキセルを吸いながら、口からゆっくりと煙を吐き出した。

●グリモアベース
「皆様、お集まりいただきありがとうござます。率直に申します。皆様にはコンキスタドール『編笠』を倒していただきたいのです」
　ロイド・テスタメント（全てを無に帰す暗殺者・f01586）は、猟兵達を真っ直ぐに見つめながら言った。
「この九龍城の主、コンキスタドール『編笠』と戦うには九龍城の人々と似た姿でなければなりません。しかし、この九龍城はかなりクセの強い場所の様です。戦う前に下調べしてから行く事をオススメいたします」
　ロイドは画面に九龍城を映し出すと、少しだけ住民の姿も映し出されるが『何故か家電が歩いていた』くらいの内容であった。
「それでは皆様、ご武運を」

第1章 ボス戦 『『編笠』in九龍』

POW   :    編笠暗殺術 自身と武装を【編笠から落ちる影】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、［編笠から落ちる影］に触れた敵からは【平衡感覚】を奪う。 SPD   :    九龍乱戦遊戯 戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【代用武器とした、九龍城砦の全ての人・物品】の威力と攻撃回数が3倍になる。 WIZ   :    ドラゴンズ・ドリーム 【煙管の煙から具現化した「紫煙龍」】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【袋小路への迷い込み】を誘発する効果」を付与する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●不思議な電気街
　見上げれば空が遥か遠くに感じる程に、増築工事で増えた住居の影で街道は薄暗い。
　周囲を見回せば、古ぼけた露店が売る品々は普通の人ならば“ゴミ”としか思えない物であった。
「（歩く家電。テレビウムともまたちょっとちがうのかな？）」
　目に付いた店で古着を買った大豪傑・麗刃（23歳児・f01156）は、何故が進められた丸いサングラスを掛けた。
　安い布が伸びた男性用のチャイナ服モドキ、人々の活気で少し暑い位ので内心ホッとしつつも目の前に影が降りる。
「……？？」
　動いている。
　そう、家電と呼ばれる類が。
「こちらのオイルは良い物デスヨー、建業で大暴れの絡繰兵器から流れてきたものデース！」
　空いていたスペースでチャイナ服を着たバルタン・ノーヴェ（雇われバトルサイボーグメイド・f30809）が声を上げた。
「良いモンは高い、高いヨ！」
　隣の店主が眉間にシワを寄せながら言った。
　それは客次第なのかもしれないが、少し浮いている事にバルタンは未だ気付いてない。
「何これ！！　欲しい！！」
「売り物ジャナイ！　違ウ！」
　麗刃が両手に抱えているのは、鳥の様な熊の様な奇怪な電池式で動くオモチャだ。
　ウィーンと小型のモーター音と共にくちばしに似た口をカタカタと動かし、ギョロと飛び出た大きな瞳の瞼が開閉する。
「あ、住民なのか！？」
「ソウダヨ！　買ウナラコッチニシロ！」
　どうやって小さな両手を動かしているかは不明だが、店主らしき動くぬいぐるみは商品を並べている台を叩いた。
「え？　友売りか？　え？」
　麗刃は店主に似た商品を手にしながら交互に顔を見た。
「失礼ナ！！　コレハライトダ！」
「目が光るとか……買う」
　少しは躊躇えよ、と思いつつも麗刃は、お金を台に置くと商品を抱えて歩き出す。
「……ッ！」
　バルタンの視界が奪われる。
　奪われる前に編笠の姿が見えた気がするが、人間が大体感じる感覚を奪われているので直ぐに動く事は出来なかった。
　だが、サイボーグであるバルタンには機械である部分は生きている。

　頭部に埋め込まれた高度演算デバイス、が――

「……あ、意識が」
　麗刃の意識は糸が切れたかの様に無くなり、冷静沈着な純粋剣士に変える。
「我は大豪傑・冷刃……ふん、小癪な真似を、視聴嗅覚などなかろうと、風の動きや殺気を肌で感じ、第六感を働かせればきさまの場所など手に取るようにわかるわ、平衡感覚が乱されようと剣士の剣の動きに乱れなどないものよ」
　携えている“妖刀”の柄に手を添え、冷刃は行き交う住民の間を駆け抜けた。
　横一閃、白刃が薄暗い街道に煌めいた。
「こッ……！？」
　剣先が鼻を掠めて受け身を取ろうとした編笠だったが、肌が痺れる様な感覚と共に轟音が轟いた。
「六式武装展開、雷の番！」
　迸る電撃で体を覆ったバルタンが駆ける。
「キセルを吸っていたのがダメデース！」
　住民たちとは全く違う煙の成分を感知したバルタンは、濃度が濃い方向へと体を捻る。
「ははっ、そういうことか」
　バルタンの体が編笠にぶつかった。
　古い建物の壁へ吸い込まれる様に叩き付けられると、ガラガラと壁が崩れて粉塵が舞う。
「これじゃ、キセルの匂いが消えてしまいマース」
「くっ！　それより退避だ！　うっぷ！」
　麗刃がバルタンの腕を掴んでその場を離れた。

　鈍く痛む頭を押えながら――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●怪しくない手伝い
「（何だか不思議な街並みね）」
　近代的な建物でもなく、古すぎるとは思えない街並みを見回す索・緑蘭（魔界のイカサマ雀天使・f31867）。
「まずは――」
　この電脳の街、と呼ばれる異様な場所に溶け込まなければならない。
　緑蘭は、油汚れのエプロンを身に着ける。
「（少し、違和感が）」
　汚れた鏡で自身を映しながら首を捻る。
　ふと、顔を上げて行き交う人々をエメラルドの様な瞳に映した。
「あぁ」
　綺麗過ぎる、と感じた緑蘭は、着ているチャイナ服に油の他にも埃等々でもっと汚す。
　電飾、というか個性的なネオンが光る街道、裕福ではないが貧しすぎるとも言い難い住民。
　その中で商売するなら身なりは気にしていられないのであろう、お店によって店主の身なりは違うがやはり薄汚い。
「お店、手伝うわ」
「払えんぞ？」
　緑蘭の言葉を聞いて、面倒臭そうに店主が呟いた。
「この基盤を頂ければ」
「そんなんで良ければ」
　店主は不愛想ではあるが、悪い人ではないと感じた緑蘭はこくりと頷いた。
　カタカタ、と品物が揺れた気がする。
「何かしら？」
　粉塵が舞い、住民たちがコホコホと咳をする中で緑蘭は顔を上げた。
　二人の猟兵が駆け出し、その後からゆっくりと歩く編笠の姿が視界に入る。
　露店に並べられた物品が宙を舞う。
「危ない！　しゃがんで隠れて！」
　緑蘭が声を上げ、貰った基盤を盾にして飛んで来る品物たちを受け止めた。
　ユーベルコード『バトルキャラクターズ』を発動させ、召喚したゲームキャラクターを操る。
「突撃！」
　緑蘭が“予告状”を投げると同時に、ゲームキャラクター達は編笠に向かって攻撃をした。
　爆発音が響くと、街道を飛び交っていた物品がポトリ、と所々剥がれ取れているタイルの道に落ちる。
「ここは危険ね」
　一瞬だがグシャリ、とバトルキャラクターが傷だらけの編笠が踏み潰す姿が見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●二足歩行の？
「（遅くなったが……）」
　ジリジリと鳴るネオンの看板に照らされながら上野・イオナ（レインボードリーム・f03734）は周囲を見回した。
「（うん、うん、やっぱりめっちゃカッコイイ！）」
　ホログラムで体を覆い、巨大な電子レンジから手足が生えているという姿のイオナはこの世界に溶け込んでいる。
　大きい事は誤差、この九龍城では常識という壁は元よりない。
　太鼓をたたくサルのオモチャだって喋る、扇風機だってキャスター付きだったり、人の様な足が生えていたりと多種多様だ。
「（九龍高天原城の増築の参考にしよう）」
　うんうん、と頷きながら薄暗い街道を電子レンジ（イオナ）は歩く。
　売れるかどうかわからないジャンク品、オモチャが同じ姿をしたオモチャを売る。
　異様な光景だがイオナにとって楽しくてたまらない。
　ふと、気が付けば、どこにたどり着くか分からない裏路地にいた。
「ははは、探索している間に袋小路だ」
　と、笑いながらイオナが肩を竦ませた。
　吐息と共に煙で出来た龍が身体をくねらせながら袋小路を駆ける。
「このホログラムの輪郭、君に分かるかな？」
　大きな口を開け、電子レンジ（イオナ）に噛み付く、が――
　ホログラムの部分だけ削れ、イオナの白い髪が宙を舞った。
「地元で九龍城好き仲間(一般キマイラ)が見ているんだ！　負ける訳に
は行かない！」
　ユーベルコード『グッドナイス・ブレイヴァー』を発動させ、召喚された動画撮影ドローンが電子レンジ（イオナ）を捉える。
　視聴者の応援するコメントと画面越しに伝わる。
「ちっ！」
　既にぼろぼろ編笠が距離を取ろうと、跳躍する。
「流石に動きが鈍くなってるな！」
　地面を蹴って素早く編笠へ接近する電子レンジ（イオナ）。
　見た目はホログラムであっても、本体は軽量なので編笠の眼前で姿を消した。
「ど……ッ！」
　編笠は目で姿を探そうとする、が――
「これで、終わりだ」
　パチン、と指を鳴らす電子レンジ（イオナ）から眩しいほどの光を放った。
　ホログラムが爆発する。
　袋小路は消え、編笠のキセルがカランと音を立てて薄汚れたコンクリートの道に落ちた。
『勇者デンシ・レンジ』
　なんて、コメントが流れる。
　イオナというより、手足が生えた電子レンジが編笠を倒した。

　こうして、九龍城に平和が訪れた。

　そして、勇者デンシ・レンジの話が作られたのは、少し先のお話――……

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2022年01月29日