殲神封神大戦⑧〜ネオンと黒猫
夜の街に瞬く電光看板のネオン――ここは香港租界の中心部に当たる繁華街。昼間の如き明るさを誇る夜の摩天楼にはさまざまな店が立ち並ぶ。いったい何を素材にしているのか定かでない高級飯店や、どのような嗜好の客にも対応できるという売り文句の色街に金銀宝石なら何でも手に入る質屋等々。
欲だ。
この摩天楼にはありとあらゆる欲が満ちている。それしかないと言ってもいい。鮮やかなネオン看板の上に佇んだコンキスタドールは己の名前の由来である編笠を銃口で軽く持ち上げながら、香港租界の街並みを見下ろした。
「ここは私がその全てを知り尽くした街、香港租界。地の利はこちらにあるのさ。猟兵がどう出ようと、ここじゃ赤子の手をひねるようなものだね」
闇の中、編笠の周辺に拳銃やマシンガンを手にした黒服たちが姿を現した。全て彼女に忠誠を誓うマフィアたちである。
「いつでもおいでよ、猟兵たち。ただし、片道切符だと覚悟した上でやって来るがいいさ」
「香港租界きっての繁華街にて、編笠との決闘……か。どうやら相手も本気でこちらを倒すつもりのようだね」
麒・嵐(東方妖怪の冒険商人・f29276)はどこか面白がるように言った。なにしろ場所が場所だ。
「敵の本拠地も本拠地、こっちは完全にアウェーだからね。そりゃ編笠も強気に出るってもんさ。相手は地形の全てを知り尽くしているし、配下のマフィアまで引き連れている。建物の屋根も看板も電線も、彼女にかかれば足場も同然。ありとあらゆる場所を伝ってアクロバティックに先制攻撃を仕掛けてくる。これに対抗するにはこちらも彼女の予想を上回る『奇想天外なアクロバット・アクション』で先制攻撃を破るしかないだろうね」
ちなみに配下の香港マフィアは黒猫会というらしい。可愛らしい名前だが、装備している銃器は凶悪そのもの。
「コンキスタドール製の威力と連射性能が半端じゃないやつだよ。こいつらは編笠ほどの機動力はないので屋上や建物の窓から射撃したり、編笠と協力してこちらを待ち伏せしたりといった戦い方が基本になるだろうね」
説明は終わりだと嵐は告げ、いよいよ編笠の待つ香港租界へと向かう時が来た。
「舞台は欲望渦巻く摩天楼。さあて、どれだけ凄いアクロバット・アクションが見られるだろうね?」
ツヅキ
プレイング受付期間:OP公開時~フォームが締め切られるor完結するまで。
連携無し、順次リプレイをお返ししていきます。プレイングが送れる間は受付中ですが、執筆のタイミングや数が多くなり過ぎた場合は完結を優先する場合があります。
●第1章
アクション純戦闘です。香港租界の複雑に入り組んだ夜の繁華街を舞台に、マフィアの配下を引き連れた編笠との大乱闘が待っています。彼女の想像を上回るアクロバティック・アクションで先制攻撃を対処するとプレイングボーナスです。
第1章 ボス戦
『『編笠』inノワール』
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POW : 紫煙龍降臨
自身の【煙管の煙から具現化した「紫煙龍」】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[煙管の煙から具現化した「紫煙龍」]から何度でも発動できる。
SPD : 拳銃挽歌
【改造モーゼル銃】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無数の銃弾】」を放ち、ダメージと【大量出血】の状態異常を与える。
WIZ : 「今だ、私の家族(マイ・ファミリー)!」
【編笠の命令】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【香港マフィア】で囲まれた内部に【銃弾の雨】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
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馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
属性:風
ま、こういう役目は私でしてねー?
足場熟知ということですが…はて、増えた足場はどうでしょうね?
防御用にした結界をさらに固め、見えぬ足場にして地形を利用、瞬間思考力で判断しながら軽業で上へといきましょう。
銃弾の雨もその固めた結界で弾いたり、そもそも範囲外に出たりしましょう。
ふふ、忍の第六感による感知は…侮らないことです。似た者同士なんですからね?
ああ、私のUCは避けても無駄です。追尾するこの矢は、風と雷によってあなたを追い詰める。
四悪霊の執念深さを舐めてはいけませんよー?
煌びやかなる摩天楼を彩るのは硝煙の匂いと銃声そして――奇想天外なるアクロバティック・アクション。
「こういう役目といえば、やはり忍のお任せですよねー」
身軽さでは四霊随一の『疾き者』は、先程からひょいひょいと香港租界の高層部を我が物顔で跳び回る。その動きは地形を熟知する編笠に勝るとも劣らぬ機敏さでマフィアの追撃をあっという間に振り切ってしまった。
「なぜだ? あいつの行動範囲は編笠様より広いくらいだぞ」
その疑問に答えたのは他でもない、編笠であった。
「なるほど……結界による足場だね?」
「さすが、お察しが早いですねー」
義透は微笑みながら首肯する。結界は見えない足場となって編笠も把握していない地形の一部を構成し、熟知していると豪語したその埒外にまで戦場を拡げたのである。
その上、忍の身軽さで上へ上へと昇られてはさすがの編笠も追いきれない。
「早く撃て!!」
屋上に配置した狙撃手による射撃を義透は厚めに展開した結界で弾き返す。威力と連射性能は強化されているという話だったものの、射程までそうだとは言われていなかった。
実際、いくら撃っても届かないので罵声と共に銃を投げ捨てる者もいたくらいだ。
「くえないねぇ」
「いえいえ、似た者同士ですからね?」
第六感がここまでは弾丸が届かないと告げる高さにまで到達したところで、義透は反撃に転じる。
構える弓は霊矢を放つための特別製だ。しかもそれは絶対に、外れないとくる。
「四悪霊の執念深さを舐めてはいけませんよー?」
引き絞る矢が雷気を纏い、竜巻のように周囲の風を巻き込みながら編笠を目指した。まるで台風か嵐か。いずれにしても、あんなものをくらったらただでは済むまい。しかも、編笠が躱した背後で霊矢はぐるんと向きを変えて追尾を続ける。
「しまッ……」
摩天楼の空に稲妻の花が弾け、空を金色の輝きで染め上げた。
大成功
🔵🔵🔵
岩永・勘十郎
「フン……遊びに付き合おう」
相手のアクロバティックな動きからの先制攻撃に、そう呟いて刀では無く片鎌槍“轟天”を取り出す。そして【早業】と【怪力】を駆使し大きく振り回す。煙の龍をその回転から生まれる風に飲み込ませ、まるで自分が龍を纏っているような演舞を見せながら周りの雑魚を処理していく。煙が元なら風に弱いはずだ。
「軽業な動きは良いが、見せる戦いと実戦は違うぞ?」
と敵を【挑発】。そして持っている槍を宙に投げ、龍が空を舞う。そして落ちてきた所に合わせUCを発動した斬撃を龍に合わせ繰り出す。【瞬間思考力】で敵の動きを解析し繰り出す技。万が一にも外しは無い。
そして時間差で落ちてくる槍をパシッと取って。
上空で爆ぜる雷光を岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)は見上げ、軽く鼻を鳴らす。やっとのことで猟兵の雷矢から逃れた編笠の目が勘十郎を捉えた直後、鎌首をもたげた紫煙の龍と目が合った。
「フン……遊びに付き合おう」
色鮮やかなネオンが透ける龍を勘十郎は“轟天”なる片鎌槍で迎え撃つ。その名の如く豪快に、鮮やかに振り回すことで巻き起こす突風が紫煙の龍を己の側に引き寄せた。
「おお……ッ!?」
マフィアはぽかんと口を開け、その光景に魅入る。
まるで祭りの龍舞を彷彿とさせる動きであった。それが少しずつ、だんだんと近づいて――いつしか感嘆が悲鳴に変わり、慌てて逃げ惑う羽目になる。
「そら、邪魔だ」
勘十郎が槍を振り回す動きに合わせて舞う紫煙の龍が、マフィアのいる建物に襲いかかったのだ。
「おやおや、よくやる」
自分の技を盗られた編笠も舌を巻いた。風に振り回されるうちに紫煙は乱れ、形を維持できなくなった残骸がいびつな雲みたいに空を漂った。
「軽業な動きは良いが、見せる戦いと実戦は違うぞ?」
「そうかい? ならば、それを見せてもらおうじゃないか」
「上等だ。刮目して見るがいい」
ほとんど残滓としかいいようのない状態の龍が、勘十郎の投げる槍に引き寄せられるまま空を舞う。
地上では勘十郎が低く腰を落とし、太刀に手を添えた。編笠も身構える。その動きを瞬間的に把握、躱そうとする動きすらも計算に入れて抜刀――落ちてきた龍ごと、編笠という概念ごと――断つ。
「……ッ」
パカッと彼女が被っていた編笠が半分に割れた。
「馬鹿な――」
「これが実戦的な軽業というやつだ。覚えておくがいい」
納刀と同時に槍を受け止め、勘十郎はその柄で軽く己の肩を叩いてみせる。背後には今度こそ完全に散れた煙がたなびき、瞬くネオンを映すブラウン管のような色彩を放っていた。
大成功
🔵🔵🔵
楊・宵雪
敵接触時、余裕がない場合は[オーラ防御]と付近の建物に転がり込むことで回避
屋根上の黒猫会狙う
[空中浮遊]で露骨に飛ぶのは邪道ね
庇に手をかけ、鉄棒をするように体を回して建物の上に上がりましょう
銃撃は電柱や看板、屋根同士の高さの差なんかを使って射線を通さないように動くわ
黒猫の方々には[気絶攻撃]で、不必要に傷つけないように対処するわ
編笠へはUCの狐火で
逃さないように多数の狐火を別々の方向から向かわせるわ
これだけで倒しきれるとは思わないから一撃離脱よ
逃げるときは道路を走る車の上にお邪魔するわ
信号機とトンネルは気をつけないとね
楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)が摩天楼を舞う度、ネオンに照らされた白い九尾が色とりどりの光に染まりながらふわりと揺らめいた。
「奇想天外なアクロバット、ね。乗ったわ。そちらの土俵で勝負してあげる」
宵雪は建物の壁際に跳びつき、庇の内側を掴んだ両手を起点にしてくるっと屋根の上に身体を引き上げる。一拍後、さっきまでいた足元をマフィアの銃弾が撃ち抜いていった。間一髪である。
「屋根だ!」
「遅いわ」
編笠の指摘に反応したマフィアたちが一斉に銃を放った。主に隣の建物の屋上から迸るマシンガンの銃声が激しくこだまする。だが、既に宵雪は隣の電柱を伝ってその向こう側にあった看板の裏に姿を消した後だった。
「屋上からじゃ射線が通らない、地上班応答せよ! ――うッ」
「ごめんなさいね。ただの気絶だから、後でちゃんと目が覚めるわよ」
手刀をそのまま「ごめんね」の形にして、宵雪はまずマフィアから片付けることにした。
「ぐッ」
「うわッ!!」
こうやって配下の数を減らしていけば、そのうちに編笠の敷いた包囲にも穴が生まれるだろう。そして、斃れたマフィアの代わりに間隙を埋めるのは薄紅色をした美しい狐火たち。
横合いから不意に現れた編笠の気配を察し、宵雪はとっさに硝子を破って建物の窓から内部に飛び込んだ。纏う気が破片から身を守り、床を転がっても擦り傷ひとつ負わずに済む。
「おやおや。まさか躱されるとはね、お見それしたよ」
「余裕ぶっていていいの?」
「性分なんだ、不真面目に感じるかもしれないが見逃してくれるかい」
「つまり、結構焦っているということね」
「そうとも言うさ」
宵雪の狐火はゆっくりと包囲を狭め、編笠を中心に巨大な炎禍となって摩天楼の一角を火の海へと変えてしまった。マフィアが何かを喚いている。水を持って来いとか、避難しろとか。
「水じゃ消えないわよ。死にたくなかったら、はやくお逃げなさい。私もそうさせてもらうわ」
欲はかくまい、と宵雪は一定の戦果を挙げた時点で自ら退いた。その引き際まで鮮やかであった。
「ん? なんだ?」
足場にしていた排水管からくるくると回転しつつ飛び降りた先は走行中の車の屋根。戦場から遠ざかりながら膝立ちで編笠を振り仰ぐと、してやられたとばかりに肩を竦めるのが見えた。
宵雪は信号機の下を通り過ぎるタイミングでその柱に飛び移る。うっかりトンネルに入られて、後頭部からゴンッなんて目に合うのは御免だったから。
「後は頼んだわよ、皆――」
大成功
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菱川・彌三八
此れだよ此れ!大暴れ!
体使うなぁ俺の十八番さ
さあさ鬼遊びと行こうや
前宙、遠心力、懸垂、跳躍、飛び降り、回転着地は基本
江戸の町でも屋根だ柱だと遊んだが、近頃ゆーでぇーしーでも仲間と其処らを飛び回ってら
ぱ…なんとか云うらしいぜ
知らぬ地で目の前のモン全部使うのが好いのさ
壁を走り、管を滑り、人の頭を飛び越えて
給仕の盆すら足場にならあ
ちいと力入れときな!
着地の姿勢を次の動作に繋いで繋いで、途切れる事なく駆け抜けてやる
弾を後ろに転じて避けたら、手近な雀稗を投げつける
煙を上に下に避け続けたら、お前ェが近付くかい
鳳凰で飛ぶなァ野暮だろうからヨ、あくまで体一つで跳び寄って、横っ面しこたまぶん殴ってやら
「派手に燃えてらァな。彼処に“鬼”がいるってかい」
最初の跳躍は軽く、手近なゴミ箱が足場であった。そのまま壁を蹴って窓枠に手をかけてから懸垂の要領で屋上まで跳び上がる。
現代地球に生きる者が彼の動きを見たならば、パルクール――!? 驚きとともにそう評したに違いない。
菱川・彌三八(彌栄・f12195)はうずうずしていた。目に映る何もかもが新鮮そのもの、ネオン看板の毳毳しさもどこから聞こえる享楽的な音色の旋律も、ここが異国であることを強烈に意識させる。
「あらよ、ッと」
あれは何だ? 狛犬に似ているが、阿形に口を開いて球を抱き、極彩色で塗られている。踏み潰さないようにそこをくるりと前宙で跳び越え、火中の編笠を挑発するようにわざとすぐ真横をすり抜けた。
「軽業が得意と言いやがったな? そら、俺についてこられるかい。お前ェが熟知した街だろうが無関係ヨ。むしろ知らぬ方が心躍るってナ」
「言うねえ」
編笠の煙管から産み落とされた紫煙の龍を引き連れて、彌三八は夜の摩天楼を縦横無尽に駆け抜けた。
「遅ェよ」
「くそッ」
壁を走る彌三八の後をマシンガンの弾が追いかけるように穿ち、そこから排水管を掴んでくるりと向かいの窓から建物内へと飛び込んだ。
「ちいと力入れときな!」
「えええッ!?」
そこは繁盛している飯店であった。さて、水を運びに行くか……と客の元へ向かう給仕の盆をたった一度足場にしただけで、反対側の窓から表通りへと飛び出してゆく。
「もういやしねェ
……!!」
着地しては前へ、繋いで繋いで、息つく暇も与えやしない。
「此れだよ此れ! 大暴れ!」
さんざ遊んだ江戸の町でも、仲間と跳び回ったUDCアースでも、そしてここ――香港租界でも。
「わぶッ!」
突然何かを顔に叩き付けられたマフィアが呻いた。
「じゃ、雀牌
……!?」
敵を出し抜いて、彌三八が笑う。弾丸を後転で躱したついでに飲み屋の入り口で一局打っていた仙人から拝借したやつをぶちまけたのだ。
「手を焼かせてくれるじゃないか」
「ようやく真打ちが来たかい」
彌三八のやり口を逃げの一手と誤謬した編笠は、つま先で向きを変え身一つで跳び寄るその動きにまで対応しきれなかった。握り締めた拳で横っ面を捉え、思い切り振り抜いてやる。
「ぐッ――」
血の混じった唾を吐き捨てた編笠が、ずり落ちた眼鏡の位置を直した。
「こいつは効いたね」
「さあさ、鬼遊びと行こうや」
体を使うのは彌三八の十八番。故にこの勝負、鳳凰で飛ぶような野暮は犯さない。
「ここに誘い込んだのはお前ェだからヨ、こっちはとことん付き合ってやら」
大成功
🔵🔵🔵
日輪・黒玉
誇り高き人狼は狩り場を選ばないもの
どのような場所であろうと、その首を狩りとって差し上げましょう
多少のダメージは覚悟の上で周囲を囲むマフィアの方へと全速力で【ダッシュ】
敵の下へと飛び込んだら、彼らの体を【踏みつけ】て【ジャンプ】
そのまま、建物や看板など足場にしつつ、蹴り飛ばした看板を武器や盾としても利用した立体的な動きで銃弾を避けていきます
囲まれた時は【スライディング】で足元へと滑り込みますよ
包囲の中に紛れてしまえば、その銃弾の雨も狙いをつけにくいでしょう?
呼び出した残像と共にマフィアの包囲を崩しつつ、編傘の姿を捉えた所で一気に飛び出し、残像と連続で蹴りを打ち込んでいきます
「どうやら、戦況はこちらが押しているようですね……」
日輪・黒玉(日輪の子・f03556)は周囲の様子を窺い、マフィアの居場所の目星をつける。なにしろあれだけの銃を乱射したら姿を隠すのにも限界があるというもの。
「まさか、あの編笠様が遅れを取るとは――がふッ!!」
頭を黒玉に踏みつけられたマフィアが情けない悲鳴を上げた。咄嗟に別のマフィアが銃口を向けるが、黒玉はひらりと隣の看板に飛び移って難を逃れる。
「その程度ですか?」
ネオン瞬く看板の上に佇み、つんと言い放った。
「編笠配下のマフィアが呆れますね。いいでしょう、誇り高き人狼は狩り場を選びません。――覚悟」
「うわあッ!!」
蹴り飛ばした看板が真下にいたマフィアを巻き込み、包囲に穴が開いた。そこを突いて一気に駆ける。狙いが足元だと気が付いたマフィアは拳銃に持ち替え、迎え撃つ構えを取るが間に合いそうもなかった。銃弾の雨をかいくぐり、スライディングで彼らの中に紛れた黒玉を狙えば同士討ちも同然の状況だったからだ。
「さあ、どこです編笠? その首、狩り取って差し上げましょう」
必ずや、首を取るという反骨心の呼び出した残像は敵の目を欺き、黒玉の動きをより際立たせる。
(「見つけた」)
上だ。
待ち伏せたマフィアに合図を出しやすい位置、即ち戦場を見渡すことのできる上層に編笠はいた。
「あッ」
残像を描いて包囲を抜けた黒玉にマフィアは反応できず、狙いを定めて撃つ暇すらない。
「編笠、覚悟……!」
「おっと」
黒王の蹴りを腕で受け止め、後退する編笠。だが、黒玉は疾駆する。前へ、更に――前へ。
「!」
マフィアが狙っているのに気づき、咄嗟に看板の裏側へと滑り込む。ネオンが割れ、一瞬の暗闇。黒玉を見失った編笠に飛び蹴りをくらわせた。
「ッ、やるね」
「当然です」
黒玉は表情一つ変えずに言った。
「さあ、気が済むまでやり合いましょう」
大成功
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バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎
夜景を楽しみつつ、大乱闘!
テンションが上がりマスネ、HAHAHA!
エンジョイしておりマスカ、香港マフィアのエブリワン!
ワタシも楽しくバトルさせてもらいマース!
屋根の上を駆けて、ジャンプからの空中機動!
滑走靴で夜空を駆け回りマース!
銃弾の雨の中、向かって来る紫煙龍との大立ち回り!
動きを見切り、摩天楼の地形を利用し、躱してからのカウンター・グレネードランチャーで吹き飛ばしマース!
温まって来たところでUC展開!
「六式武装展開、雷の番!」
目にも止まらぬ高速機動で、編笠へファルシオンで斬りかかりマース!
電線を切る等の小細工も有りデスネ!
足場不要の空中殺法、とくとご賞味くだサーイ!
流れる夜景がバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の瞳を高速で流れてゆく。いや、逆だ。摩天楼の夜景の中をバルタン“が”飛び回っているのであった。
「HAHAHA! エンジョイしておりマスカ、香港マフィアのエブリワン!」
ガガガッ、と屋根の瓦を抉りながら走り抜けるバルタンに手を焼いたマフィアが呻いた。
「あ、当たるわけねぇ……」
弱音を吐きたくなる気持ちもわかる。せめて足場のあるところだけ走ってくれるのならまだしも、やっと建物の端まで追い詰めたと思ったら普通に空中を滑走して大通りを挟んだ向こうのビルまでひとっ跳び。
どうやって追いかけろというのだ、これを?
「おい、そっちに行ったぞ」
「駄目だ、もういねぇ」
どうしようもないので向こうにいる仲間と無線で連絡を取り合うが全然間に合わない。これっぽっちも速さが足りない。
「ネオンが綺麗デスネ」
背を逸らし、逆さまになった街の煌めきをうっとりと眺める。赤、水色、白、金、青紫……ない色なんてひとつとしてない。あらゆる光、あらゆる色彩。
そして、鋼の弾丸と紫煙の龍も――だ。
「こなくそ!」
屋上からとにかくばら撒かれるマシンガンの弾丸を躱すため、バルタンはビルの背後をおおきく回り込む。ふと窓に紫がかった灰色の細長い影が映っているのに気づいて曰く。
「OH! アレが敵の操るスモーク製のドラゴンデスネ!」
紫煙はもくもくとまるで入道雲のように噴き上がった後、巨大な一匹の龍を象った。バルタンは龍の身体を軸にして螺旋を描くように急旋回、相手の目をくらませたところでグレネードランチャーをぶち込んだ。直撃したところから煙が吹き飛び、千切れた首がゆっくりと落ちて行く。
「おやまあ、やるもんだね」
崩れ落ちる龍の身体の向こう側、張り巡らされた電線の真上に編笠がいた。既に編笠は無く、半分割れてグラスの欠けた眼鏡越しの目が笑っている。
次で決まる。
編笠の煙管から煙が噴き上がり、バルタンの全身を迸る電撃が取り巻いた。
「六式武装展開、雷の番!」
まさしく雷光が迸るが如き高速機動で距離を詰めたバルタンのファルシオンが電線ごと編笠をたたっ斬る。
「あら?」
足場が――ない。
「これぞ足場不要の空中殺法、とくとご賞味くだサーイ!」
勝負は一瞬。
一秒にも満たない僅かな間にファルシオンを閃かせたバルタンの、刃が通り過ぎた後の空間が割れるようにずれてゆく。
「お見事」
断ち切られた編笠はゆっくりと宙を舞った後で墜落する。バルタンは見えなくなるまで見送った。一筋の紫煙が闇夜を漂い、やがて完全に掻き消えるまで。
大成功
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