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殲神封神大戦⑧〜狭隘の空に疾走るは飛燕

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑧ #コンキスタドール『編笠』

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#コンキスタドール『編笠』


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●九龍城砦
 香港租界、そこは『コンキスタドールの侵略地』である。
 封神武侠界において、明らかに文明レベルが異なる場所であり、いうなれば20世紀初頭のレベルにまで文明が進んでいる。
 九龍城砦の街路は迷路と化している。無計画な建設が繰り返されたがためだ。
 見上げる空は遠く、区切られ、日中であっても日が差し込まぬ場所さえある。
 そんな中、一人のコンキスタドール『編笠』が足を踏み入れる。
「やあ御同輩、失礼するよ」
 その声に反応する者もいれば、反応しない者もいる。

 此処、香港租界こそ封神武侠界における治外法権。
「分かってる。ここ九龍城砦では、人もオブリビオンも、その素性を問われない。香港の主たる私も、しきたりには従うよ」
 この租界における唯一のルール。
 それが素性を問わぬこと。人であっても仙人の類であっても、オブリビオンであっても詮索はしない。詮索したのならば、それはルール違反ということになる。
 その代償が如何なるものかは言うまでもない。
 この地を侵略し、頽廃へと導くコンキスタドール『編笠』にとって、自身を追う猟兵たちを退けるには都合のよう場所であったのだ。

「その代わり、私も勝手にやらせて貰う。私はここで、やってくる猟兵を迎え撃つ。厳しい戦いになるだろう。君たちも死ぬかもしれないね」
 それは戦いの巻き添えを食うということを示していた。
 猟兵たちとの戦いは滅ぼすか滅ぼされるか。その二択しか存在しない。ここ香港租界のように人とオブリビオンが存在することはありえない。
 コンキスタドール『編笠』の言葉に九龍城砦にひしめく影が不満げな声を上げたが、気にもとめた様子はなかった。

「でも……ここ九龍城砦では誰もが自由。私は君たちを支配しないが、君たちがどうなってもしったこっちゃない」
 互いに不干渉。
 ならばこそである。協力しろとは言わない。されど邪魔はするな。ただ一つの不文律においてのみ、この香港租界は文明発展の道を歩んできた。
 ばらまいた銃火器や阿片。
 それはらこの地にあって最早切り離せぬほどに定着したものである。
「ただ、この広大なる魔窟を利用させていただくだけさ」
 コンキスタドール『編笠』が見やるは、この九龍城砦の迷宮の如き街路や、看板や屋根、無計画な建築によんって成り立つ複雑怪奇な地形。
 これらを利用し、猟兵たちを迎え撃つ。
 そのために香港租界をこさえたわけではないが、利用しないわけにはいかない。

「猟兵達がどれだけの手練であるかはわかっているさ。けれどね、私はこの地形を利用して一方的に猟兵を補足し、仕留められる。ここ九龍城砦は、敵を招くのに最適な場所なのさ――」

●殲神封神大戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
 なんかえらい中華なチャイナドレスを身にまとっている。またも誰かに唆されたに違いない。
 足のスリットが深いというかエグい気がしないでもないが、ナイアルテも耳を赤くしている。
「お集まりいただきありがとうございます。封神武侠界における『租界』……香港はすでに『コンキスタドールの侵略地』となっています。そこに潜むコンキスタドール『編笠』の存在が確認されました」
 説明をちゃんとするところが彼女らしいところである。
 彼女の言葉通り、封神武侠界の香港は『租界』と呼ばれ、20世紀初頭レベルの文明が発展する地であり、コンキスタドールのばらまく銃火器や阿片によって頽廃している。
 コンキスタドール『編笠』の支配地であり、無計画な建築に次ぐ建築によって九龍城砦は、空さえ見えぬ雑多な迷路へと変貌している。

 看板や屋根、あらゆる場所が入り乱れ、何処に敵が存在してもおかしくない。
「しかも、コンキスタドール『編笠』は必ず皆さんに先制攻撃を仕掛けてきます。煙管の煙から具現化した龍や、改造モーゼル銃、雑踏に潜む無数の香港マフィアといったあらゆる手段を用いて、皆さんを苦しめることでしょう」
 手強い敵にほかならぬし、同時に必ず先制攻撃してくるということは一方的に狙われるということでもある。
 これを対抗するには……やはり、敵の予想を上回ることしかない。

「コンキスタドール『編笠』はアクロバティックな動きでもって、九龍城砦の街中から皆さんを襲ってきます。看板や屋根、建物の中と言った予想だにしない場所から変幻自在に……」
 ナイアルテは、それがまるでアクション映画のようでもあるとさえ評した。
 卓越した身のこなし。
 実践的な戦いではないのかもしれないが、そのアクロバティックな動きは本物である。先制してくることも侮れない。
 そして、こちらを一方的に補足しているということは、離脱も容易ということだ。
 ヒット・アンド・アウェイで次々と猟兵に襲いかかるコンキスタドール『編笠』は此処で逃せば、必ず封神武侠界に頽廃を齎すだろう。

 今でも九龍城砦は阿片などによって頽廃が進んでいる。
 これが租界だけではなく、封神武侠界全土に蔓延すればどうなるかなどいうまでもない。
「コンキスタドール『編笠』を討つのは当然ながら、香港租界をコンキスタドールから解放しなければならないのもまた急務であると言えるでしょう。コンキスタドール『編笠』の予想を上回る『奇想天外なアクロバット・アクション』で先制攻撃を破り、勝利致しましょう」
 カンフー映画さながらのアクション。
 それを示すようにナイアルテは構えを取るが、どうにもドレスの裾がひらひらしていて落ち着かぬ様子。
 着慣れぬもので動き回るものではないとナイアルテは気恥ずかしげに微笑みながら猟兵たちを見送る。
 果たして、猟兵たちはコンキスタドール『編笠』の予想を上回るアクロバット・アクションを成すことができるのか。それが勝敗分かつと心し、猟兵たちは魑魅魍魎が跋扈する家の如き九龍城砦へと転移するのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。

 オブリビオン・フォーミュラ『張角』の結界を支えるコンキスタドール『編笠』との戦うシナリオとなります。
 舞台は20世紀初頭レベルの文明まで発展した『香港租界』、九龍城砦です。
 迷路の如き建築物と看板、屋根、住人たちがひしめく九龍城砦から襲い来るコンキスタドール『編笠』の先制攻撃を躱し、これを打ち倒す必要があります。
 無論、コンキスタドール『編笠』は皆さんを一方的に補足し、九龍城砦のあらゆる場所からアクロバティックな先制攻撃を仕掛けてきます。
 皆さんは、この先制攻撃に『奇想天外なアクロバット・アクション』でもって対処し、攻撃を叩き込みましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに、アクロバット・アクションで対処する。

 それでは、迷路の如き九龍城砦より襲い来るコンキスタドール『編笠』の攻撃を躱し、アクロバティックに戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『『編笠』inノワール』

POW   :    紫煙龍降臨
自身の【煙管の煙から具現化した「紫煙龍」】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[煙管の煙から具現化した「紫煙龍」]から何度でも発動できる。
SPD   :    拳銃挽歌
【改造モーゼル銃】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無数の銃弾】」を放ち、ダメージと【大量出血】の状態異常を与える。
WIZ   :    「今だ、私の家族(マイ・ファミリー)!」
【編笠の命令】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【香港マフィア】で囲まれた内部に【銃弾の雨】を落とし、極大ダメージを与える。

イラスト:稲咲

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・シフファート
幻術式宝貝『万仙陣』を用いて周囲一体に幻術を展開
幻術を限定的に現出させて分身の術や超高速移動しているように見せかけましょう
また、本体の私自体も魔力で身体能力を強化して飛び回るわよ

更に香港マフィアや編笠に幸福な夢を見させて幻惑し、攻撃を回避していくわ
そうね、編笠が張角を制してオブリビオン・フォーミュラとなり、全ての世界を支配するコンキスタドールの王となる夢でも見せましょうか?

そうして夢を見ている所にUCで作り上げたメガリス砲を叩き込み、絶頂の所で夢から叩き起こしてやるわ
良い夢を見れた?でも残念、あくまで夢よ
更なるメガリスを装填し、体制を整え直しきれていない所にメガリス砲を叩き込むわ



 これは夢だと理解している。
 されど、その夢が甘美なるものであればあるほどに覚め難くものである。
 泥濘の如き夢の心地。
 それは香港マフィアたちにとって、如何なるものであったことだろうか。
 雑多な路地が重なり合い、積み上げられたかの如き建築物が空を覆う。隙間に見える空はあまりにも狭く。
 されど、陽の当たらなぬ場所こそが己たちの生きる場所であったのならば、香港租界に潜むコンキスタドール『編笠』配下のマフィアたちは、目を背けた陽にこそ惹かれるものであったのもかししれない。

 宙に浮かぶは幸福な夢の世界を紡ぎ出す八卦図。
 幻術式宝貝『万仙陣』。
 その幻術が見せるのは幸せな夢だけではない。
「どういうことだい、これは――」
 九龍城砦の街中を疾走るコンキスタドール『編笠』は幻術に塗れた路地裏を見やる。
 猟兵の姿は即座に捕らえることができた。
 しかし、シャルロット・シフファート(異界展開式現実改変猟兵『アリス・オリジン』・f23708)が宝貝でもって見せる幻影は、幸せな夢だけではなく、彼女が無数に分身と成って迫る光景となっていた。
「これでは合図を送ることもできないでしょう」
 シャルロットの宝貝は幻術を見せるもの。

 この九龍城砦に住まう者たちに存在する独特な霊気を持たぬ猟兵達を判別することは可能であるが、そもそも幻術で持ってコンキスタドール『編笠』の目を幻惑するのならば話は別であろう。
「洒落臭い真似をしてくれるね」
 改造モーゼル銃から放たれる弾丸が、無数に分身して飛び回るシャルロットの幻影に打ち込まれる。

 けれど、そのどれもが不発に終わるだろう。
 銃弾が九龍城砦の看板にぶち当たり、その破片が飛び散る。その中をシャルロット自身も強化された新滞納録で飛び回る。
「あなたが望むのはオブリビオン・フォーミュラになり、全ての世界を支配するコンキスタドールの王とでもなる夢?」
 望む者に望む幻影を見せるのが彼女の宝貝であるというのならば、コンキスタドール『編笠』の望む夢を見せる事ができただろう。

 だが、今の『編笠』はオブリビオン・フォーミュラ『張角』のユーベルコード『異門同胞』によって彼に対する忠誠心しか持ち合わせていない。
「残念だけどそれはない」
 コンキスタドール『編笠』にとって、今優先しなければならないことは張角を支えることのみ。
 如何に都合の良い夢を見せるのだとしても、『編笠』の忠誠心はユーベルコードによって支えられている。
 揺らぐものではなかった。
「けれど、それでも時間は十分に稼げたわ」
 魔術師は黄泉返りを用いて王笏を簒奪する(メイガス・オブ・グリードスナッチャー)。
 虚構の『王笏』たる存在を召喚したシャルロットの手にあったのは、メガリスの砲。

 夢と現。
 そして偽りの忠誠心に酔いしれるコンキスタドール『編笠』へと打ち込まれるは光条。
 ユーベルコードによって生み出されたメガリス砲の一撃が『編笠』と九龍城砦の建造物を巻き込みながら破壊していく。
 そのすさまじい砲撃の音は九龍城砦という、封神武侠界に非ざる文明を打ち壊すように轟音を轟かせ、猟兵たちの反撃の狼煙となるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
本当に人が住む場所なのかと疑う程の雑多さ、目も眩むようなネオンの輝き。
先制攻撃を捌くのは骨が折れそうですね。
とにかくまずは動きやすいように少しでも開けた場所へ。
敵が何処から仕掛けて来るかは分かりませんが【第六感】を働かせて対応しましょう。
勘に任せて【早業】で剣を振るい、銃弾を【武器受け】もしくは【受け流し】て防ぎます。
それだけでは埒が明かないので、頃合いを見てユーベルコードを併用して【ジャンプ】を繰り返し、回避・防御しながら敵に接近しましょう。
敵の予想を上回って攻撃するには、隠しておいたサーペントベインを【咄嗟の一撃】で【投擲】するなど、自分でも狙っていない行動が必要かも知れませんね。



 砲撃の音が九龍城砦に響き渡る。
 あまりにも無計画に積み上げられたかのような建造物が崩れていく。
 猟兵の戦いによって崩れる建造物の中、その破片を蹴って飛ぶのはコンキスタドール『編笠』であった。
「まったくもって滅茶苦茶してくれるものだよ」
 しかし、『編笠』の動きは未だ健在である。
 空中の破片を蹴って飛ぶ姿は、まるで飛燕のごとく。
 明滅するネオンの光が生み出す影は、あちらこちらに飛んでは、めまいすら引き起こしそうな光景となる。

 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)にとって、空の狭き日の当たらぬ場所の存在する九龍城砦は馴染み在る世界のように思えたかもしれない。
 けれど、この九龍城砦に存在するネオンの電飾はあまりにもけばけばしく。
 くらりと頭が揺れる。
「この状況で先制攻撃を仕掛けてくる……捌くのは骨が折れますね」
 ハロはこの状況下であっても、コンキスタドール『編笠』が己を捉えていることを知る。
 破片を蹴って、空中を縦横無尽に駆け抜ける『編笠』の放つ雨のような銃弾はハロであっても受けてしまえば、大出血は免れない。
 血を失えば、満足に動けなくなってしまう。

「何処から仕掛けてくるかわからないってことは、恐ろしいってこと。わかるよね、猟兵!」
 放たれる銃弾の雨。
 それはコンキスタドール『編笠』の持つ改造モーゼル銃より放たれる。ハロにとって、それはあまりにも捌くのが難しい攻撃であった。
 破片が飛び散っている中であるがゆえに、ハロの第六感は全てが己へと降り注ぐ悪意のように感じられたことだろう。

 だが、破片と弾丸の区別がつかぬというのならば、己の剣戟の速さを知らしめる。
 手にしたレイピアを振るい、迫る破片や瓦礫、弾丸の全てを切り裂き弾き飛ばしていく。
「くっ……埒が明かない!」
 ハロの瞳がユーベルコードに輝く。
 このままでは防戦一方。時期に裁ききれなく成って弾丸の餌食となってしまうだろう。ならばこそ、ハロは空中を蹴るようにして飛ぶ。
 それはコンキスタドール『編笠』のように空中に飛び散る破片を蹴るようなアクロバティックな動きではなかった。
 彼女のユーベルコード、ヘリオンによって、空中――なにもない場所を蹴って飛ぶ。
 それも一度や二度ではない。

 数十回に渡って、ハロはまるでそこに見えない床が存在しているかのように飛ぶのだ。
「空を、飛んでいる……!? いや、蹴っている!? ウサギみたいなことを!」
 コンキスタドール『編笠』にとっては、空前絶後。
 あまりにも驚天動地なる動きであったことだろう。ハロは手にしたレイピアで弾丸を弾きながら、空中を自在に蹴って迫るのだ。
「飛びます、鳥の様に……うさぎじゃありません!」
 ハロは空中を蹴ってコンキスタドール『編笠』を上回る。

 彼女の眼下にあるのは驚愕に見開かれた瞳でもってハロを見上げる『編笠』があった。
「これで!」
 ハロは己すらも意識していなかった行動に出ていた。
 レイピアによる刺突の一撃ではなく、隠し持っていた短剣『サーペントベイン』を投擲する。
 その一撃は『編笠』の肩口に突き刺さり、血潮を撒き散らす。
 アクロバティックな動きをする『編笠』を打倒するためには、ハロ自身、自分でも狙っていない行動が必要であった。
 彼女の蓄積された戦闘経験は、ここに来て新たな境地に至る。
 どれほどの空中戦であったとしても、ハロは己でもって戦局を打破することができることを証明してみせた。

 放たれた短剣の投擲がまさにそれである。
 打ち込まれた一撃は楔となって続く猟兵たちを助けるだろう。破壊の痕残る九龍城砦の閉ざされた空をハロは蹴って飛ぶ。
 遥か眼下に墜ちる『編笠』を見やり、ハロは己の戦術が強大なオブリビオンさえも打倒せしめることを証明したのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

こういう軽業って、私なんですよねー。
さて、目を閉じての集中。第六感を研ぎ澄ませ音を聴き逃さず、直前まで引き付ける。

銃弾の嵐というのは、たいてい横なのです。
なので、上へ…それこそ、突き出ている棒や干場などを足場にして避けましょう。


で、反撃なんですが。まあ、あれです…陰海月が『はじめてのお食事、潰された恨み!』で攻撃したいそうなのでー。
陰海月が出てきたらUC発動、そのまま光珠発射で編笠に攻撃ですねー。
触手で器用に掴んで追いかけたりしますし。

相手からの攻撃は、四天霊障(極彩色)で弾きます。


陰海月、ぷんすこ!ぷきゅ!



 九龍城砦は戦いの余波を受けてあちこちが崩れたり、瓦解し始めていた。
 だが、それでもコンキスタドール『編笠』は構わなかった。
 壊れたのならば積み直せばいい。
 どれだけ追い込まれたのだとしても、最後に己が残っていればいいのだ。
「それだけの度量は持っているつもりだけどね」
 コンキスタドール『編笠』にとって、この香港租界は支配している場所であれど、そこに住まう者たちに何一つ強制することはなかった。

 銃火器をばらまき、阿片で持って人心を乱す。
 ただそれだけで膨大な金が動き、この香港租界は封神武侠界にありて20世紀初頭の文明にまで発展したのだ。
「これが人の欲と業の集積とでもいうのかね。だから、猟兵。あんたたちはこの租界にありて異質。異物。だから、すぐに分かる」
 コンキスタドール『編笠』の合図によって、九龍城砦に飛び込んできた猟兵の一人を狙って放たれる銃弾の雨は凄まじいものであった。
 香港マフィアたちによる一斉射。
 銃弾の雨と呼ぶにはあまりにも膨大な斉射。
 嵐の如き弾丸を前にして、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その一柱である『疾き者』は、己の第六感を研ぎ澄ませていた。

 敵は己を確実に補足する。
 ならば、逃げ回ることなど不可能だ。ならば、なんとする。
 引きつけ、時を待つことこそが肝要。音を聞き逃さず、その気配の多さゆえに『疾き者』は一瞬で判断したのだ。
 撃鉄が起こされる音、引き金を引く音。
 そのどれもがよく訓練されたものであった。
「銃弾の嵐というのは、大抵横なのです」
 そう、コンキスタドール『編笠』が香港マフィアたちにそう指示するはずだ。射線は必ず同士討ちを避けるために交錯している。

 ならば、躱すべきは上。
「狙いがずれれば、当たるものも当たらなくなるものでしてー」
 この九龍城砦が縦にうず高く重ねられた建造物の集まりであったことも幸いしたことだろう。
 突き出ている看板や、棒、干場などを足場にして『疾き者』は駆け上がっていく。
 この狭い空を飛ぶのは飛燕のごとく。
 銃弾を躱し、足場にした看板や棒、建築物が次々と蜂の巣にされていく。
「なんてやつ……! この状況で上に逃げるとはね! だけど!」
 コンキスタドール『編笠』もまた負けてはいない。
 敵が上へと向かうのであれば、己もまた改造モーゼル銃を片手に追うのだ。

 しかし、そんな『編笠』を阻むのは、『疾き者』の影より飛び出した『陰海月』であった。
 巨大な海月。
 彼と合体し、1680万色に輝く四悪霊の呪詛纏いし『疾き者』が光り輝く光珠でもって追いすがる『編笠』を撃ち落とすのだ。
 合体した『陰海月』の触手が墜ちる『編笠』を追う。
 その執拗さは、『編笠』にとっては不可解なものであったが、『陰海月』にとっては、明快そのもの。
『はじめてのお食事、潰された恨み』なのである。

「四悪霊・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノツヨサヲミヨ)……これは些かゲーミングカラーが強い……」
 目がくらむような光。
 それを間近で感じながら『疾き者』はぷんすことしている『陰海月』の気迫と共に墜ちる『編笠』を追う。
 放つ光珠が九龍城砦のネオンにも負けじと煌き、その狭き空に明滅する。

「なんてデタラメ!」
『ぷきゅ!』
『陰海月』の怒りは未だ収まらず。
 乱舞するゲーミングカラーの光珠が『編笠』を打ち据え、九龍城砦の底へと叩き落とす。
 食べ物の恨みは怖い。
 それを知らしめるように、未だ猛る『陰海月』に『疾き者』は圧倒され続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
さて今回のケースでは先制攻撃どんな感じになるのやら。まあ何が来てもいいようにスタイリッシュアクションの準備は万全に。相手の攻撃は忍び足で無音ダッシュからのパフォーマンス重視のムーンサルトジャンプで回避、二刀流による武器受け。

編笠に遭遇したら先制攻撃で大喝。

きみがアミガサタケくんかね!

しかしここは実に雑多というか。
多少うざったい感じもするか。
う雑多い。

きみの獲物はマウザーかね。
マウザーだけにまーうざい!!

な感じでギャグで相手の感情を揺るがし平静を崩し普段通りの実力出せなくして刀で斬る。

さてきみはわたしのユベコをコピーするらしいな。
よろしい見せてくれたまえ。コンキスタドールのやる渾身のギャグを!!



 香港租界、九龍城砦は猟兵とコンキスタドール『編笠』との戦いによって、構造物の破片舞い散る激しいものへと発展していた。
 ユーベルコードの乱舞が建造物を著しく破壊し、それでもなお無計画に積み上げられた建造物が空を覆い隠していることには変わりはない。
 看板が砕け散りながら、コンキスタドール『編笠』は飛ぶ。
 その姿は飛燕のようであったし、猟兵達は未だ彼女を捉えきれていなかった。
 打撃を与えてもすぐさま、この雑多な九龍城砦の内部へと逃げ込まれる。
 さらにあちらは猟兵たちの位置を一方的に補足できているようであった。それはこの香港租界に生きる者たちが纏う特有の霊気を持たぬ猟兵達であるからこそ、簡単に見つけられるものであった。

「面倒な連中に私も目をつけられたものだ……だけどね!」
 コンキスタドール『編笠』は加えた煙管から吹き出された紫煙が具現化した『紫煙龍』を解き放つ。
 それはユーベルコードを捕食しコピーするユーベルコード。
 一方的に猟兵を補足できるからこそ、コンキスタドール『編笠』は九龍城砦に転移してきた猟兵――大豪傑・麗刃(23歳児・f01156)へと『紫煙龍』をぶつけるのだ。

「む――きみがアミガサタケくんかね!」
 その大喝はよく通る声であった。
 この雑多なる九龍城砦であっても音が反響し、よく通る。麗刃はこの九龍城砦があまりにも雑多なことに辟易していた。
 迫る『紫煙龍』をムーンサルトジャンプで躱し、されど追いすがる牙を二刀流による武器でもって受け止める。
 ふきとばされる麗刃の体。
 しかし、彼は九龍城砦のネオン輝く看板に手をかけ、大車輪のように回転して飛ぶのだ。

「しかしここは実に雑多というか。多少うざったい感じもするか。う雑多い」
 一瞬時が止まったような気がしたのは気のせいであったかもしれない。
 いや、気にせいである。
 何かダジャレのようなものが聞こえた気がした。
「なんちゃって、あっはっは」
 シン、と空気が凍りついた気がした。
 あ、やっぱりそれってダジャレだったんだと『編笠』も理解したし、ついさっき自身のことをアミガサタケ科アミガサタケ属に属する子嚢菌類のキノコと言い間違えしていたのも、たまたまではなくて態とであったのだと漸くに『理解』した。

 いや、理解してしまっていた。
 何故か。
 それはネタキャラとしての矜持(ソレデモワタシハギャグヤネタガヤリタイ)という麗刃のユーベルコードにまで昇華された己の渾身のギャグを『紫煙龍』がコピーしてしまったためである。
 シリアスな空気や平常心で戦い挑む姿勢などあったものではない。
「きみの得物はマウザーかね。マウザーだけにまーうざい!!」
 畳み掛ける麗刃。
 きっとモーゼル銃の開発者であるマウザー兄弟に引っ掛けているのだろう。芸が細かいというか、なんというか!

「な、何をバカなをこと……!」
 戸惑う『編笠』。 
 それもそうだろう。煙管の紫煙から生み出された『紫煙龍』がコピーしたのは、麗刃のユーベルコードである。
 渾身のギャグを解き放ち、敵のシリアスな空気を壊す力。
 ならばこそ、『編笠』は戸惑っているのだ。喉元まで込み上げてきたギャグを飲み込む。言ってはならない。
 言った瞬間、自分の尊厳とか、そういうのが全部ぶち壊されてしまう気がしたからだ。

「さて、きみはわたしのユベコをコピーするらしいな。よろしい見せてくれたまえ。コンキスタドールのやる渾身のギャグを!!」
 無茶ぶりである。
 麗刃の言葉に『編笠』は口元を抑える。言いそうになっている。そこへ麗刃は疾走る。
 九龍城砦の障害物をかいくぐり、その手にした刃を走らせるのだ。
 こと戦闘において、麗刃のユーベルコードは彼にしか活用できないものだろう。口元を抑えた『編笠』にとって、それはどうしようもないものであった。
「さあ! さあさあさあ!」
 麗刃は刀を撃ち込みながら『編笠』の言葉を待つ。

「こんな戦闘なんとかせんとう!」

 ひどい。
 麗刃は、非常にがっかりした冷めた視線を『編笠』に向ける。
 何をとは言わなかった。論ずるにも値しないギャグであった。こんなものかと失望込めた視線が『編笠』を貫き、よくわからないままに勝負は決するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

肆陸・ミサキ
※絡み苦戦怪我アドリブok


アウェーって、ヤな感じ
いや、アウェーじゃない所なんて、私にはないのだけど……まあ、やれるだけやろう

アクロバティックって、運動音痴を無理矢理動かしてる私には難題だね
幸い跳び回れそうな造りの建物が多いし、普通に侵入するんじゃなくて、建物の屋根とかから飛び込んでいこう

囲まれるのは大変マズイな……シャリオを並走させて、足場が無いところに飛び出してもらって足場代わりの踏み台にさせてもらえるといいかな
乗り回すバイクを捨て石にするなんて、中々奇想天外だろう?

UCとして追跡指定する対象は、私の視線の先に設定しておこう
攻撃は手持ちの武器とか、看板とか屋根とか置物をぶん投げつけてやる



 一瞬、香港租界、九龍城砦の時が止まったかのような気配を感じたことだろう。
 それはコンキスタドール『編笠』が猟兵との戦いによって、その自尊心を大きく傷つけられた瞬間でも在った。
 何がとは言わない。されど、コンキスタドール『編笠』は多くのものを今まさに失っていた。
 この香港租界を支配する者としての威厳であるとか、コンキスタドールであることの矜持であるとか。
 そういった物を失ったのだ。
「よくもわけのわからないことに私を巻き込んでくれたな、猟兵!」
 激昂する『編笠』の咆哮が九龍城砦に響き渡る。

 その咆哮を聞いた、肆陸・ミサキ(終り・f00415)は雑多な建造物が折り重なるかの如き道を往く。
「アウェーって、ヤな感じ」
 アウェーじゃない所など自身にはないのだけれど、ミサキは自覚していた。
 己の往く場所は全てが戦場である。
 ならばこそ、敵地であると同様なのだ。それでもやれるだけのことはやらねばならない。
 敵であるコンキスタドール『編笠』は一方的にこちらを補足する術を持っている。
 必ず先制攻撃してくるということは、ミサキにとって不利であったが、これを躱さなければこちらが一方的に打倒されるだけだ。

「こんな狭苦しい場所で戦わないといけないなんてね……」
 運動音痴を無理矢理動かしているミサキにとって、この九龍城砦は謂わばパルクールの練習場そのものであった。
 看板が至るところから突き出し、無計画な建造によって建物は大きな階段のようになっている。
 建物の屋根を蹴り飛ばし、ミサキは飛ぶ。
「見つけた……猟兵ッ!」
 コンキスタドール『編笠』の激昂した表情と共に改造モーゼル銃の号砲が響き渡る。
 それは合図であり、九龍城砦の建物のあちこちから『編笠』配下の香港マフィアたちが銃火器を構え、一斉にミサキへと弾丸の雨を降らせる。

「囲まれている……大変マズイな……」
 とっさにミサキは黒い影を纏う大型重二輪車を召喚し、足場代わりに踏みつけて弾丸の雨を躱す。
 召喚された大型重二輪車を乗るのではなく、ただの足場代わりにしてミサキは弾丸を躱す。本当に運動音痴だというのだろうかと言うほどな見事な身のこなし。
「Chariot(シャリオ)!」
 ミサキの視線の先に大型重二輪車が駆け抜けていく。
 自身と五感を共有し、指定した対象を追跡するユーベルコードの力は、ミサキの視線の先経と固定されている。

 そうすることで、足場のない空中であってもミサキは足場を得て、さらに蹴って弾丸の雨を躱していく。
「足場にするためだけに……! なんてやつ!」
「こうでもしないと運動音痴には厳しいんだよ……ッ!」
 凄まじき怪力で持ってミサキは大型重二輪車の直ぐ側にあったネオン輝く看板を引っこ抜く。
 文字通り、引っこ抜いたのだ。
 それを如何にするかなど言うまでもない。

 手にした看板は振り回すか、ぶん投げるかのどちらかである。
 当然、ミサキの選択は後者である。
 ネオンに流れる電流が火花を散らし、明滅する視界の中でミサキは『編笠』の姿を捉えていた。
「まずは、第一投目」
 放たれる看板の一撃が九龍城砦に潜むマフィアたちを巻き添えにしながら『編笠』へと激突する。
 凄まじい音を響かせながら、建物や置物、看板、あらゆるものをミサキはぶっこ抜き、投げ放つ。

 それは単純な質量兵器として『編笠』を瓦礫の下へと叩き落とすのだ。
 これが奇想天外なるアクロバティックアクション。
 ミサキは、運動音痴だと自負するそれを返上しなければならないほどに、ド派手な戦いを見せつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

上喰・益巵
こんな雑多で入り組んだ街であいつを探す方がだるい。奇襲してきてくれるんなら願ったりかなったりだね

先制攻撃相手には【UC:迅捉の弦弾】(SPD)を発動しつつ、<クイックドロウ>からの<弾幕>でてめぇの銃弾を撃ち落とす
数には数で、銃弾には銃弾で相手してやるよ
足りない手数は相手の銃弾同士がぶつかり合うように弾をはじくことでカバー
それでも防ぎきれないならばUCで張ったワイヤーを足場にして回避だ
確かにこの街はてめぇの領域だろうが、このワイヤー地帯はあたしの得意領域だぜ
あとは相手の位置へワイヤーを伝って接近からの<零距離射撃>だ

せっかくの舞台だ、派手に撃ち合おうじゃねぇか
(アドリブ連携等々全て歓迎です)



 九龍城砦は破壊の音が響き渡る。
 無計画に立てましされた建造物や、突き出した看板、雑多な路地裏は日が当たらぬ場所さえある。
 そんな香港租界にありて、コンキスタドール『編笠』と猟兵の戦いは苛烈を極めていた。
 投げつけられた看板や置物の瓦礫の中を改造モーゼル銃から放たれる弾丸でもって吹き飛ばしながらコンキスタドール『編笠』はゆらりと立ち上がる。
「ここまでやられるとはね……! まったくもってけったいな連中だ、猟兵ってやつはさ!」
 がらがらと音を立てながら瓦礫から飛び立つコンキスタドール『編笠』。
 その視線の先にあるのは、猟兵の姿であった。
 ここで彼等を打倒しなければ、己に明日はない。はっきりとわかる。猟兵達がこの地にやってきた時点で己の命運は決定していたようなものだ。

 すなわち、滅ぼすか、滅ぼされるか。
 その二択しかない。
「こんな雑多で入り組んだ街であいつを探す方がだるい」
 上喰・益巵(酔っ払いの銃使い・f30263)は己が滅ぼすべきオブリビオンである『編笠』を探すことを早々に放棄していた。
 九龍城砦はあまりにも入り組んだ場所である。
 いるだけで頭がクラクラするような雑多な街並み。空を見上げようにも狭すぎて、窮屈な思いばかりが募るのだ。

 そんな中で本来であればコンキスタドール『編笠』が奇襲してくることはどう考えても不利であった。
 けれど、益巵にとっては好都合であった。
 奇襲とはすなわち、討つべき敵から己をみつけてくれて、向こうからやってくるということだ。
「それなら願ったり叶ったりだね――そう思うだろ、てめえも!」
 益巵は己を狙う殺気を敏感に感じ取る。
 荒廃した世界で生き抜くためには殺気に敏感であらねばならない。他者から奪い、奪われる生活を送っていれば、否が応でも身につくものであった。
 迅捉の弦弾(アリアドネ)は益巵の手にした銃より放たれ、『編笠』のモーゼル銃より放たれた弾丸と激突する。

「はっ、やるね!」
 轟音が雑多な路地裏に響き渡る。
 マズルフラッシュが日の当たらぬ路地裏にあって、明滅する。
 益巵の顔と『編笠』の顔だけが、その閃光に照らされて顕になる。そのたびに撃ち合う弾丸が空中で激突する。
 互いに致命打に至らない。
 弾丸同士が正面から激突するなど、そう何度もある偶然ではない。二人は狙っているのだ。
「鬼ごっこは好きか?」
 弾かれた弾丸からワイヤーが紡がれ、益巵は雑多な路地裏に張り巡らされた蜘蛛の糸の如きワイヤーを蹴って飛ぶ。

「確かにこの街はてめぇの領域だろうが、このワイヤー地帯はあたしの得意領域だぜ」
「調子に乗りすぎて付き合い過ぎたようだね! けれど、この程度で私を囲ったつもりかい?」
 互いにワイヤー張り巡らされた路地裏を飛ぶ。
 敵の残したものであれ、敵の領域であれ、利用できるものは全て利用する。
 益巵も『編笠』も戦いというものに卑怯もへったくれもないことを理解していた。そして、同時に楽しさも覚えていたことだろう。

「せっかくの舞台だ、派手に撃ち合おうじゃねぇか」
 空を舞う益巵の顔が笑っていた。
 楽しい。敵にして不足などない。己の技量の全てを持ち込んでも、五分。ならば、それを覆すにはどうするべきか。
 そう、敵の予想を上回るしかない。
「私に足場を用意したようなものだね! 猟兵! これで!」
 ワイヤーを利用するのは彼女だけではない。『編笠』も同様だ。己の得意な戦場に誘い込んだつもりであっても、それを『編笠』は踏破してくるのだ。

 躱せない、と思った瞬間、『編笠』の足元のワイヤーが消失する。
 それは益巵のユーベルコードの効果が終わる瞬間であった。そう、どれだけこちらのワイヤーを利用するのだとしても、ワイヤーが残る時間まで把握してない。 
 逆に益巵は把握している。
「惜しかったな――そこはもうあたしの領域じゃあない。だから」
 これで終わりだというように益巵はワイヤーを蹴って空中を疾走る。足場を失い、逃げ場を失った『編笠』へと銃口を突きつけ、零距離に近しい位置で引き金を引く。
 絶対不可避なる銃弾を受けて『編笠』が九龍城砦の路地裏へと落ちていくのを益巵は残ったワイヤーを手で掴み、勝利の確信と共に見下ろすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
『編笠』は待ち受けるのでなく前線に出てくるか。猟兵を舐めてない証拠ね。そういう相手こそ厄介。

とりあえず「目立たない」よう雑踏に紛れ。
攻撃される前に、顕現させましょう。『GPD-331迦利』を!
高い建物すれすれを遊弋させて、敵を探す素振りでもさせておきましょう。
これで、上でなくあたしから視線を外さない奴が『編笠』の手の者。
『迦利』全周波数帯をジャミング。『編笠』と香港マフィアの連絡を阻害する。

巫覡載霊の舞、見せてあげるわ。目についたマフィアから、薙刀の石突で叩きのめし、『編笠』の居場所を吐かせる。

さあ勝負よ、『編笠』。
「衝撃波」を纏った薙刀で「なぎ払い」、「貫通攻撃」で「串刺し」に。
弾丸は弾く。



「『編笠』は待ち受けるのではなく前線に出てくるか」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はそれを意外に思ったことだろう。
 コンキスタドール『編笠』の支配する香港租界。
 そこに攻め込んだ猟兵達を己の支配域でもって出迎え、打ち倒す。それができるだけの場所であった。
 この封神武侠界において香港租界は20世紀初頭の文明にまで発展している場所である。
 無計画に積み上げられた建造物や、雑多な路地裏。
 奇襲を仕掛け、迎撃するにはうってつけだ。さらには『編笠』配下の香港マフィアもいる。

 だというのに、コンキスタドール『編笠』は猟兵を逆に奇襲するのだという。
「猟兵を舐めていない証拠ね。そういう相手こそ厄介」
 ゆかりは敵が己の姿を一方的に補足できるからこそ、目立たぬように雑踏に紛れる。
 その間に彼女は式神であり、無人キャバリアである『GPD-331迦利』を遊撃に出す。
 この空を覆い隠すほどの建造物の乱立する中では空を飛行させることは難しく、その存在はすぐに『編笠』に知られることになるだろう。
 だが、『編笠』は猟兵の存在を補足できる。
 香港租界の人々が『GPD-331迦利』を見上げる中、己だけを見ている存在がいるのだとすれば、それこそが『編笠』である。

「いた――ジャミングして迦利!」
「遅いな、猟兵。合図なんて言うのはね、簡単なものでいいのだよ。例えば、こういう――」
 轟音が響き渡る。
 それは『編笠』の持つ改造モーゼル銃から発せられた号砲であった。
 その轟音を合図にして香港マフィアたちが建物のあちこちから銃火器の銃口を向ける。
 銃弾の嵐がゆかりを襲う。

 しかし、ゆかりの瞳はすでにユーベルコードに輝いている。
「巫覡載霊の舞、見せてあげるわ!」
 ゆかりは神霊体へと変身し、銃弾の嵐を飛び、衝撃波放つなぎなたの一撃でもって香港マフィアを打ち倒す。
 さらに九龍城砦の建物を薙刀の放つ衝撃波で破壊し、目くらましをしながら飛び立つ。
「さあ、勝負よ、『編笠』」
「言われるまでもない!」
 放たれる改造モーゼル銃よりの弾丸を薙刀で弾きながら、ゆかりは舞うようにして九龍城砦の看板を蹴って猛追する。

 弾丸の嵐はやまない。
 だが、空中を自在に舞うようにして飛ぶゆかりには追いつけないだろう。
 振るう薙刀の衝撃波が『編笠』を吹き飛ばす。
 この雑多な九龍城砦においては障害物が多すぎる。それは敵にとっても、ゆかりにとっても鬱陶しいものであった。
 彼女を追う弾丸が看板に打ち込まれ破片が飛び散る。
 己の振るう薙刀画の衝撃波がそれらを吹き飛ばしながら、『編笠』との追走劇を演じるのだ。
「迦利! 足場!」

 ゆかりは、遊撃させていた『迦利』を呼び戻し、その背を蹴ってさらに高く飛ぶ。
「――ッ! キャバリアかい!」
 モーゼル銃の弾丸が『迦利』によって塞がれ、巨大な影でもって『編笠』とゆかりとを隔てる。
 瞬間、ゆかりはキャバリアの影より飛び出す。
 一瞬の隙。
 それを突くゆかりの薙刀の一撃が走り、『編笠』へと突き立てられる。
 鈍い感触。されど、手応えを感じながらゆかりは『迦利』と共に九龍城砦の狭い空へと飛び上がり、『編笠』を見下ろすのえあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオ・ウィンディア
人質とかとっても無意味なんでしょう?
じゃぁ、こういうのは如何?

狙われたら、銃弾をいっさい逃げようとしないを選択
強烈な【早業】で鬼気を放ち【恐怖を与える】ことでトリガーの指を一瞬でも凍らせてあげる
さらにマルシュアスで【楽器演奏、歌唱、呪詛】
ソプラノからのハイソプラノで【二回攻撃、精神攻撃】
これが音楽家のアクロバットよ
巧みな演奏技術により敵集団を怯えさせたところで、私のターン

鍵を取り出してUC発動、
さぁ、物語はまだまだ序章でしょ?
とびっきりの悪夢、見せてあげるわ
全敵にダメージを与えつつ、編笠にはダガーによる【早業、切断】で近接攻撃を仕掛けるわ



 香港租界を支配するコンキスタドール『編笠』にとって、香港マフィアは護るべき存在ではない。
 利用するだけの存在に過ぎない。
 それは香港マフィアたちにとっても同様であったことだろう。これまで猟兵たちに仕掛けた奇襲の中で『編笠』に与する香港マフィアは後を絶たなかった。
『編笠』への恐怖で従っているのではない。
 ただ利害の一致。
 それだけで『編笠』と香港マフィアたちは協力し、銃火器に寄る弾丸の嵐を猟兵へと打ち込むのだ。

 そのさまを見ていたリオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)は小さく頷く。
「人質とかとっても無意味なんでしょう? じゃぁ、こういうのは如何?」
 リオはその小さな体を九龍城砦の雑多な路地裏にさらけ出す。
 それは自殺行為であったことだろう。
 コンキスタドール『編笠』は猟兵たちの姿を一方的に補足できる。それはすなわち、香港マフィアたちを十分に配置させ、包囲してから仕掛けることができるということにほかならない。
 リオの行動は敵にむざむざ己の姿を晒しただけに過ぎないのだ。

 だが、リオは『編笠』の合図を聞く。
 改造モーゼル銃の号砲。
 それによって一斉に己に向く殺気を鏡写しのように、一瞬の早業によって闇の魔力に反応した手回しオルガン式魔楽器『マルシュアス』が呪詛の音色を解き放つ。
 ソプラノからハイソプラノの歌声が響き渡る。
「さようなら物語、そして現実の恐怖へいらっしゃい」
 その言葉は言霊のように香港マフィアたちのトリガーを引く指を凍りつかせた。
 僅かな時間であったのかもしれない。
 けれど、その恐怖は香港マフィアたちを凍てつかせるには十分であり、リオのユーベルコードを発現させるための隙を生み出した。

「さぁ、物語はまだまだ序章でしょ?」
「――!? 何をしている、お前達!」
『編笠』は何が起こったのか理解出来なかったことだろう。
 一瞬の殺気。
 それとともに放たれた呪詛によって、香港マフィアたちの動きが止まったのだ。確かに己の号砲は響き渡った。
 だが、弾丸の如き嵐は引き起こされることなく、リオの手には映写室の鍵が取り出されていた。
 それは漆黒のカーテンを放ち、香港マフィアや『編笠』へと迫るのだ。

 そして銀幕は閉じる。(シュウエン)

 呪詛と恐怖が迸る。
「とびっきりの悪夢、見せてあげるわ」
 リオは闇に閉じ込められる香港マフィアたちの恐怖の悲鳴を聞きながら『編笠』へと手にしたダガーと共に迫る。
「恐怖に寄る支配かい……! だがね!」
 改造モーゼル銃の銃口がリオへと向けられる。
 瞬間、それを遮るのは暗闇のカーテン。ここに来てリオのユーベルコードが『編笠』の狙いを阻む。

 銃声が響き渡ってもリオは銃弾を一切躱さぬ。
 己の身に穿たれても止まらない。
 すでに覚悟は決まっているのだ。現実の恐怖に満ちた呪詛を撒き散らしながら、リオの手にしたダガーがカーテンを切り裂いて『編笠』へと迫る。
 その一撃は過たず、『編笠』の肉体へと叩き込まれる。
 精霊の加護により鋭さを増すダガー『ロータス』の一撃は、『編笠』の肉を貫き、その身を切り裂く。
「これが音楽家のアクロバットよ」
 リオは鮮血の向こうに微笑む。

 其処にあったのは驚愕に塗れる『編笠』の顔。
 予想だにしない場所からの一撃を受けて、血潮に染まる顔。リオは、その一撃を持って『編笠』を打倒するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
『網』より零れた人々の揺籃…光と影のように人の世には付き物ではありますが

…!

脚部スラスターの推力移動を用い跳躍
瞬間思考力で強度ある壁面を見切り、壁を蹴って移動
銃撃を回避しつつ九龍城砦上層へ誘導


空中にてUCを使用
電脳剣の電脳空間に格納された重火器を瞬時に装備
宙返りで屋上に降り立つと同時、相手の着地際を乱れ撃ち

貴女の商売と商品は些か民草を蝕み過ぎる
汚濁塗れと嘆くので無く、塵を一つ一つ拾う事こそが我が騎士道の使命

討たせて頂きます、コンキスタドール

ビームキャノン、ガトリング…点と面の射撃で行動を制限しつつ
スモークグレネードで目潰し

やはり、こちらが私好みです!

武装をパージし肉薄
近接戦闘にて本命の一撃を



 香港租界――其処はオブリビオンも人も問われぬ無法なる場所。
 しかし、無法の地にあっても明確なルールが一つだけ存在するのならば、それは素性を問わぬということのみ。
 それが何を意味するかをトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はよく理解していた。
「此処は、香港租界とは『網』よりこぼれた人々の揺籃……光と影のように人の世には付き物ではありますが」
 決して理解できぬことではない。
 いつの時代も、どの世界にあっても逸れてしまう者がいる。
 人の世の道理も、摂理も、あらゆるものから爪弾きになってしまう存在は必ず存在する。

 そんな彼等を受け入れるのが、香港租界のような場所であった。
 九龍城砦の無計画な建築に寄って折り重なった立地は、場所によっては一日中日が当たらぬ場所もある。
 そのような雑多な場所に在りて、トリテレイアはコンキスタドール『編笠』の奇襲に備えていた。
「……!」
 己のマルチセンサーが弾丸の轟音を検知する。
 だが、それよりも早く飛来する弾丸の雨がトリテレイアを襲う。脚部スラスターの推力をもって高く跳躍するトリテレイアを追うのは、九龍城砦の飛び出した看板を蹴る飛燕の如きコンキスタドール『編笠』の姿であった。

「逃さないよ、猟兵」
 その手には改造モーゼル銃。この銃弾の雨を生み出したのが、それであるというのならば、未だ『編笠』は健在であるようだった。
 これまで他の猟兵達に叩き込まれた攻撃は浅からぬものであった。
 傷が刻まれ、血潮が流れながらも、それでも猟兵を滅ぼすことをやめられない。そこにあったのは『異門同胞』によるユーベルコードの力による忠誠心であった。

「この私でも忠誠心というものが湧き上がってくるんでね、仕方がないことだが!」
「なるほど、それがオブリビオン・フォーミュラ『張角』のユーベルコードでありますか!」
 己よりも強き者を従えるユーベルコード。
 その恐ろしさの一端をトリテレイアは知るだろう。だが、彼はただ闇雲に『編笠』を空中に誘い出したのではない。

「貴女の商売と商品は些か民草を蝕みすぎる」
「彼等が欲するから与えたまでさ。それの何が悪い。私がいなくても、他の誰かが同じようにするはずさ。歴史は繰り返す。愚かだと言うつもりかい」
「いいえ。ですが、汚濁塗れと嘆くのではなく、塵を一つ一つ拾うことこそが我が騎士道の使命」
 トリテレイアのアイセンサーが煌き、強襲・殲滅戦用武装強化ユニット(エクステンションパーツ・コンボウェポンユニット)が装着される。
 単騎で軍勢を圧倒する射撃を放つ。
 ビームキャノン、ガトリング――点と面でもって『編笠』の回避行動を制限しつつ、スモークグレネードによる煙幕でもって視界を塞ぐ。

「討たせて頂きます、コンキスタドール』
 面と点での射撃でもって、『編笠』躱す先を誘導する。さらに煙幕は、『編笠』にとって庭である九龍城砦であっても、容易には移動できないようになさしめるには十分であった。
「そんなちまちましたことは誰もやりたがりはしない。誰かがやってくれるのをいつだって人は待つ。だから、愚かだと言うんだよ。楽な方に流れるし、それを肯定するためならば、どんなことでもする! それが人ってもんさ!」
 その言葉にトリテレイアは答えない。
 己の騎士道が示す答えは既に得ている。ならばこそ、人の本質を問う言葉に意味はない。
 パージした武装からトリテレイアは飛び立つ。
 己の本命は近接。

「やはり、こちらが私好みです!」
 肉薄するトリテレイアの巨躯を前に『編笠』はたじろぐだろう。煙幕の向こうに煌めくアイセンサー。
 それは己を滅びへといざなう光に他ならず。
 迫る鋼鉄の拳が『編笠』へち打ち込まれる。
 鈍い音がして、己の骨が砕けるのを『編笠』は感じただろう。目の前の騎士は、己の理解の埒外にある。

 人の本質を理解するのは共通したとしても、そこから導き出す答えは対極。
 人の愚かさを助長させるのではなく、肯定しつつも、それを乗り越えることをこそ信じる。どれだけ時間が掛かったとしても、人が人の手によってそれをなさしめる時間を護ることをこそ、トリテレイアは信条とする。
 その拳の重さは言うまでもない。
 雑多なる路地裏に失墜する『編笠』は、その信条煌めくアイセンサーを見上げることしかできなかったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
ふむふむ、アクロバティックにいけということですね。

七色竜珠を全て合成して、白日珠[長剣形態]へ。
どっから仕掛けてくるかわからない以上、竜脈使ってでも第六感と結界を高めて…銃撃に対処!ええ、弾きますし、武器受けもしますよ!

『編笠』は有利に立ち回ろうとするようですが、UC使った私には関係がない!縮地法は上でも下でも使えるんですから!
そして、足場がどこであろうと、慣れていますからね。地形を利用し行くまで!

あ、長剣になった白日珠だけ警戒されるかもですが。実は七色竜珠に戻せるので…戻して、七つ全部からビームだって出来るんですよ?
うん、実はこのUC…武器指定がないのです。



 香港租界、九龍城砦は雑多な街である。
 無計画に積み上げられたかのような建造物はやがて空を覆い、日さえ差し込まぬ場所を生み出す。
 その闇が育むのが人の悪意であったのだとすれば、それはコンキスタドール『編笠』にとって都合の良いものであったことだろう。
 日向を歩くことができぬ者たちは、得てしてそういう場所を好むのだ。
 どんなにあがいても、どんなに望んだとしても、日向を許されぬ者たちがいる。それは遺憾ともしがたきことであった。
「だから、こういう場所が必要とされるのさ。どんな時代だってね。変わらぬことさ。世界が変わろうとも、どうなろうとも、人は光ばかりでは生きて行けぬからこそ、心地よい静謐の闇に惹かれる」

 雑多な路地裏に叩きつけられたコンキスタドール『編笠』が立ち上がる。
 手にした改造モーゼル銃から号砲が響き渡り、香港マフィアたちが一斉に新たに現れた猟兵――荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)を手にした銃火器でもって狙う。
「どっから仕掛けてくるかわからないっていうのは!」
 檬果は手にした白日珠を長剣へと変え、己の足を伝う龍脈でもって第六感と結界の力を高め、嵐の如き銃弾の斉射を受け止める。

 結界は龍脈の力を得て強化されている。
 凄まじい轟音を立てて放たれる弾丸の全てを弾き飛ばしながら、手にした長剣でもって彼女は弾丸を切り払うのだ。
「そして、応用すると、こんな感じです?」
 檬果の瞳がユーベルコードに輝く。
 それは、魁鎗将『楽進』を憑依せしめるユーベルコードであり、同時に彼女と『編笠』との距離を一瞬で詰める縮地法である。

「距離は関係ない! そして、足場が何処であろうと!」
 彼女は一瞬で『編笠』の眼前に飛び込む。
 それは驚愕せしめる速度であったことだろう。
 魁鎗将『楽進』は言う――先駈けよ、我が誇りにかけて(スバヤサマケジ)と。
 彼女は、その言葉に応えるようにユーベルコードの光と共に『編笠』へと肉薄する。
「この距離を一瞬で――!?」
『編笠』はこれまで対峙した猟兵たちの攻撃を受けて、消耗している。
 傷だらけと言っても過言ではない。

 だが、彼女の動きに対処できないわけではない。
「長剣だっていうのなら」
 振り上げられた長剣を見やる。遅い、と『編笠』は思ったことだろう。あの程度ならばさばけると。
 だが、この駆け引きこそが、バトルゲーマーたる檬果の妙である。
 長剣の形をしていた白日珠が分裂する。
 束ねられた光が七つの宝珠へと変わり、光線を放つ。それはよきせぬ攻撃であったし、『編笠』にとっては予想さえしないものであったのだ。

「この程度の駆け引きできないで、ゲーマー名乗ることができますか!」
 放たれる七つの光条が『編笠』の体を貫く。
 この空さえ窮屈な九龍城砦にありて、その宝珠が放つ光条は、暗闇を晴らすものであったことだろう。
 どれだけ人の心が見せる闇が影であるのだとしても。
 その影を作るのが光であることを忘れてはならない。色濃くなる影があれば、輝く光もまた増すものである。

 ならばこそ、そこに人の心に絶望を見るのは速すぎると言うように檬果は、七つの光が織りなす光線で持って『織笠』を穿つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
あの、ここ本当に封神武侠界でしょうか?(ネオンに困惑中)
それにしてもこのコンキスタドール…随分都合のいいこと言ってませんか。
しかもそれで猟兵に勝てる…って随分こちらを甘く見積もられています。
その甘さ…代償を支払っていいただきます。

まずは『龍脈使い』の『道術』で香港に流れる龍脈からこの町の『情報収集』します。
うん。九龍城砦の建物や障害物など把握しました。
多分あそこから襲撃があります。
ならあの『地形の利用』して、三角跳び回避からの三回転半宙返り『空中機動』で回避します。…うぎ腰が…あと胸に何か掠めたぁ。
お、お返しの宝貝「五光石」です。
光弾を『投擲』して地形に跳弾などもぶてけてやります。



 封神武侠界にありて香港租界は、時代にそぐわぬ光景をもたらしていた。
 ネオン綺羅びやかな看板。
 雑多な建造物は天に届きそうなほどそびえ立ち、空を囲う。言葉にすれば20世紀初頭の文明レベル。
 しかし、他の封神武侠界しか知らぬ者にとっては、別世界と同義。
 それほどまでに香港租界は光と闇が混沌せしめる場所であったことだろう。
「あの、ここ本当に封神武侠界でしょうか?」
 ネオンの光に照らされて、目が明滅するのは董・白(尸解仙・f33242)であった。
 彼女にとっては封神武侠界こそが生まれた世界。

 仙人へと至りてもなおまだ驚くべきことがあったのかと戸惑う。
「けれど……此処は確かに封神武侠界……」
 地に流れる龍脈を探り、白は目の前の光景と繋がらぬ封神武侠界の光景に未だ混乱していた。
 雑多な路地裏の奥は闇が色濃い。
 されど、龍脈でもって情報を得る彼女にとっては、明るきことと変わりはしないのだ。
「うん。九龍城砦……把握しました」
 白は己を狙うコンキスタドール『編笠』がこちらを一方的に補足できることを知っている。
 ならば、どこから狙うかを理解することは容易い。

 瞬間、号砲が響き渡る。
 そして、あちこちの建造物から白を狙うのは香港マフィアたちが構える銃火器の銃口であった。
 あれがコンキスタドールが香港租界に持ち込んだものの一つ。一つは阿片。もう一つは銃火器。
 矢を引くのも鍛錬が必要となる。幼子であっても引き金を引けば、大の大人すら殺せる銃火器は、この世界にはまだそぐわぬものである。
「銃火器……やはり!」
 白は弾丸の嵐を壁を蹴って三角飛びの要領で躱しながら、火線の激しさを知る。けれど、まだ己を銃口は狙っている。

 空中で腰を捻って三回転半宙返り。
 ごきん! と鈍い音が響く。嫌な音に白の顔が固まる。あっ、とも思ったのだ。弾丸は躱せた。
 だが、いかんせん白の僵尸としての体は常日頃動かしているとは言え、それでも固まる関節もあるだろう。
 急に動いたことにより白の腰が悲鳴を上げる。
「うぎ、腰が……あと胸に何か掠めたぁ!」
「僵尸の仙人か、珍しいものだね。けれど、そういうのに私は興味はないんだ。残念だけどね」
 コンキスタドール『編笠』が高いところから白を見おろす。
 すでに多くの猟兵たちの攻撃を受けて消耗しているのだろう。ところどころ血に汚れているのは、そういうことだろう。

「これで猟兵に勝てる……って、随分こちらを甘く見積もられましたね。その代償がそれですか」 
 白はマフィアたちから放たれる十字火線を躱しながら九龍城砦の壁を蹴る。
 そのたびに銃弾が打ち込まれ壁を蜂の巣にしていく。
 恐るべき火力。だが、白は『編笠』の見積もりが甘いことを知らしめる。
「随分都合の良いことを言っていましたが、その甘さ……代償を支払って頂きます」
「支払いはニコニコ現金払いってね! 侮ったつもりはないが!」
 放たれる弾丸。
 それを撃ち落とすものがあった。

 白の放った宝貝「五光石」(パオペエゴコウセキ)が光弾となって己を狙う弾丸を蹴散らしながら『編笠』へと迫るのだ。
「この宝貝は狙った敵は逃がしません。無駄な抵抗は諦めてください」
 そう、彼女の放った光弾は狙った敵を自動で追尾する。
 銃火器のように放ったらそれまでではないのだ。空中で仔を描きながら旋回し、『編笠』を狙い続ける。
「扱う者の技量が必要な力なんてものはね! 力なき者をさらなる弱者に仕立て上げると何故わからない!」
「力には責任と代償がつきまとう。それがどんなに指一つで簡単に生命を奪えるものであっても、背負えぬ責任を人は負うべきではないのです!」
 
 だから厳しい修行で持って己を律する必要があるのだと白はその瞳をユーベルコードに輝かせながら、放つ宝貝の軌跡が『編笠』へと集約し、その身を穿つのを見るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
思いっきり手ぐすね引いてるとこに飛び込むとか、正直ぞっとしないけれど。ほかに手もないし、しょうがないわよねぇ…

アクロバットって言われても、あたしただの人間なんだけどなぁ…
んじゃまあ、とりあえず…向かってくる攻撃、全部撃ち落としましょうか。
○クイックドロウから●鏖殺・狂踊を起動、そのまま跳弾させて返り討ちにしちゃいましょ。利用できるものは周りにいくらでもあるんだし。

いやー、それにしても。入り組んだ街路・大量の障害物・狭隘な地形…あたしそこそこ長く猟兵やってきたけれど。


――こんなに楽な戦場、中々ないわねぇ。
さあさ紳士淑女の皆々様。狂瀾怒濤の戦争舞曲、喰らい飽きて力尽きるまで踊り狂ってくださいな?



 香港租界はコンキスタドール『編笠』の支配する地である。
 雑多な路地裏と無計画に積み上げられたかのような建造物が空を狭くしている。日の当たらぬ場所すら存在する九龍城砦で猟兵たちを一方的に補足する術を持つ敵。
 それは敵の懐に無防備に足を踏み出すのと同じであった。
「思いっきり手ぐすね引いてるとこに飛び込むとか、正直ぞっとしないけれど」
 それでも往かねばならない。
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、しょうがないこととは言え、嘆息することをやめられなかっただろう。

 猟兵とは言え、己はただの人間である。
 人間の可動域には限界がある。無論、人間であるからこそできることがあることを知っている。
「見つけた、猟兵……!」
 コンキスタドール『編笠』は、これまで多くの猟兵に消耗を強いられ続けていた。
 猟兵の力を舐めていたわけではない。猟兵のいずれもが『編笠』の予想を上回る速度と動きを見せただけである。
 ユーベルコードの煌きをティオレンシアは見た。
 己を狙う銃口。
 改造モーゼル銃。その銃口が己を狙っていると理解した瞬間、愛用の六連装リボルバーが凄まじき速度で放たれた弾丸を撃ち落とす。

 シングルアクションであるのに、その銃捌きは神業めいたものであった。
 ましてや己に放たれた弾丸を弾丸でもって撃ち落とすなど、常軌を逸した技量であるといえるだろう。
「私の弾丸をこうも撃ち落とす、猟兵っていうのは埒外なのにも程がある!」
「さぁて、それじゃあ御立ち合い。一指し御付き合い願いましょうか。…嫌だと言っても逃がさないけれど、ね?」
 この雑多な路地裏に己が立つ意味を『編笠』は知らなかったことだろう。
 障害物だらけ。
 対して敵の攻撃手段は銃火器である。弓矢のように曲射などできようはずもない。弾丸は放たれれば、一直線に進むのみ。

「いやー、それにしても。入り組んだ街路、大量の障害物、狭隘な地形……あたしそこそこ長く猟兵やってきたけれど」
 彼女の細い瞳が僅かに開く。そこにある光を暗闇濃い路地裏の奥から見る者は、怖気が疾走ることだろう。
 ならばこそ、鏖殺・狂踊(アサルト・タランテラ)たるティオレンシアのユーベルコードにまで昇華された技量は輝くのだ。
「――こんなに楽な戦場、中々ないわねぇ」
 甘ったるい声が響く。
 それをコンキスタドール『編笠』は聞いた。瞬間、放たれるのは間断ないティオレンシアのリボルバーから放たれる弾丸。
 この雑多な路地裏において、弾丸は跳ねるようにして、その全てが狙いすましたかのように『編笠』を狙うのだ。

 不規則な三次元弾幕。
 そう表現するしかないほどの弾丸。それはあまりにも早く、そして、点でありながら面でもって敵を圧する弾丸の嵐。
 どれだけ『編笠』がモーゼル銃から弾丸を嵐のように放つのだとしても、それら全てさえも利用するようにティオレンシアのはなった弾丸は跳弾を重ね、迫るのだ。
「こんな、デタラメ……!」
「さあさ紳士淑女の皆々様。狂瀾怒濤の戦争舞曲、喰らい飽きて力尽きるまで踊り狂ってくださいな?」
 ティオレンシアの言葉は跳弾の音にかき消される。
 されど、彼女の放った弾丸が消えることはない。あらゆる障害物に打ち込まれることなく弾かれるようにして跳ねる弾丸が、その全てが『編笠』へと迫る。

「楽でいいわねぇ。一歩も動かなくっていいなんて」
 ティオレンシアは糸目をさらに細め背を向ける。
 結果など見る必要はない。
 己の弾丸が狙いを過つことなどない。ましてや、この雑多なる九龍城砦。放った弾丸が何処に吸い込まれたなど。
「見るまでもないわね――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
無造作に聳え立つ建造物と、迷路のような街並み……
此の世界にこのような処があったとは、驚きだな。
まるで、此処だけが現世と隔離されているかのようだ。
■躱
等と歩いていたら、いつのまにか編笠の配下に囲まれていた。
此処は、此の刀を用いて大暴れしてやろうか。

空薙と心切、二振りの刀を【念動力】で回転させつつ縦横無尽に
動かし、【武器受け】の要領で降り注ぐ銃弾を弾き返すぞ。
俺は刀を動かしつつ、刀で防ぎきれなかった弾を【軽業】の如き
アクション……例えば宙返りやスライディング、他にも壁移動や
危うい態勢のジャンプなどで敵を惑わし、一気に編笠の元へ。

■闘
ある程度距離が縮まったら、咄嗟に刀を念力で手繰り寄せて
二刀流の構えを取る。
そこから瞬時に【薙鎌・乱】を放ち、無数の【斬撃波】の嵐で
編笠の身体を一気に斬り伏せるのだ!

『機銃の如き太刀』……見切れるか!?

※アドリブ歓迎・不採用可



 封神武侠界にありて、20世紀初頭の文明レベルと見紛うべき建造物が乱立する香港租界。
 その九龍城砦は雑多と呼ぶに相応しい迷宮の如き街並みと成り果てていた。
 日の当たる場所には、世間からあぶれた者たちが集うには格好の場所であり、この香港租界のたった一つのしきたりである『素性を問わぬ』があるからこそ、人もオブリビオンも共存し続けていた。
 それがどんなに恐ろしいことかを示すには九龍城砦の混沌は言葉よりも容易くそれを知らしめるだろう。

 そのネオン輝く看板の一つに立つのは、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)であった。
 猛禽の翼を休ませ、しかし、見下ろすその瞳は険しいものであった。
「無造作にそびえ立つ建造物と、迷路のような街並み……此の世界にこのような処があったとは、驚きだな。まるで此処だけが現世と隔離されているかのようだ」
 乱立した建造物は空を覆い隠さんばかりである。
 無計画に建築された建造物であるがゆえに、何処につながっているのか理解さえできない。
 この地に住まう者たちであっても同様であったのかもしれない。
 ふわりと看板から路地裏に降り立つ。

 次の瞬間、清綱は己の眼前に突きつけられる銃口を見る。
 右も左も、背後も。
 全て銃口に抑えられている。いつのまにか己はコンキスタドール『編笠』の配下である香港マフィアたちに取り囲まれていた。
 予告なく放たれる銃弾。
 されど、今更である。清綱にとって銃弾より早い攻撃はこれまで幾度となく見てきた。そして、今己が此処に在るということは、それらの全てをかいくぐってきたがゆえ。

 ならばこそ、彼は二振りの刀を空中に投げ放ち念動力でもって回転させつつ迫る銃弾の全てを切り払うのだ。
「――っ、ばかな!?」
「何も驚くことはない。ただ刀を俺は動かしただけゆえに」
 清綱の猛禽の翼が羽ばたき、空中に飛ぶ。今しがた彼が居た場所に打ち込まれるのはコンキスタドール『編笠』の手にした改造モーゼル銃より放たれた弾丸だ。
「すばしっこい……! 猟兵というのは、みんなこうなのかい?」
 それを合図に香港マフィアたちの猛攻が始まる。
 放たれる銃火器の火線は、この雑多なる九龍城砦にあって、あらゆる場所から放たれる。
 
 それらをパルクールの如く建物を利用し壁にし、時には足場にして空中で軌道を変え、壁を蹴って大地を走り抜ける。
「遅い! 弾丸の如き速度など!」
 清綱は二刀を念動力で制御し己に迫る弾丸を払いながら飛ぶ。看板を蹴って、さらに高さを得る。
 見下ろす先にあるのはコンキスタドール『編笠』。
 その姿を見下ろす位置こそ、清綱が求めたものであった。
 これまで己は銃火器の放つ弾丸の嵐にさらされていた。それは暴風の中を飛ぶのと同じであったことだろう。
 それは構わない。
 同時に、容易いとさえ思ったのだ。

「弾丸で俺を殺せるとは思わないことだ!」
「普通は殺せるんだよ、生命なんていうものは!」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 清綱の手に念動力でもって制御された二刀が握りしめられる。
『空薙』と『心切』。
 その二刀が煌めくのはユーベルコード。
「『機銃の如き太刀』……見きれるか!?」
 放たれるは虚空より現れる斬撃波。それは瞬時に六百近い斬撃となって解き放たれる。
 それは弾丸の嵐に対して、斬撃の嵐。

 薙鎌・乱(ナギカマ)――。

 それこそが彼のユーベルコード。
 迫る弾丸の悉くを切り裂き、あらゆるものを吹きすさぶ剣戟の元に霧消せしめる絶技。
 斬撃の嵐が止む後に来るは、血潮の雨。
 それは清綱の放った斬撃に寄ってコンキスタドール『編笠』の体に刻まれた傷跡より噴出するものであった。
 この日の当たる場所であっても、雨は振る。
 それが血潮の雨であったとしても。清綱は己の手にした刀を振り抜いて猛禽の翼を広げる。

「これぞ秘伝……薙鎌。その身にしかと刻まれよ」
 清綱は振り返ることはなかった。
 斬撃の嵐の中にありて、断ち切れぬものなどないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…成る程、今度の敵は逃げ隠れするしか能が無いのね

…良いわ。何処からでもかかって来るが良い
それとも、尻尾を巻いて逃げてみる?

…等とその場で構え掌を上に向け手招きを行い敵を挑発し、
肉体改造術式により強化した動体視力と反射神経で敵の銃弾の軌道を見切り、
防具改造を施し一点に収束させた「怪力の呪詛」のオーラで防御した両掌を使い、
残像が生じる早業で銃弾の雨を受け流しつつ吸血鬼化を行いUCを発動

…陽の光が届かないこの場所なら私も全力が出せる
地の利があるのが己だけだと見誤ったのがお前の敗因と知れ

自身の血に魔力を溜め索敵した敵の位置に無数の血杭を乱れ撃ち、
貫いた敵から生命力を吸収する闇属性攻撃のカウンターを行う



 血潮の雨が九龍城砦の日の当たる場所を濡らす。
 それはコンキスタドール『編笠』の体に刻まれた傷跡より噴出するものであった。
「ここまでやるとはね……だけど、私が負ければ香港租界は終わりさ……私の欲望は、忠誠心を凌駕する。それが侵略者にして簒奪者。コンキスタドールの本質!」
 咆哮する『編笠』が血まみれになりながら香港租界の雑多な街中に飛ぶ。
 血潮を撒き散らしながら飛ぶ姿は飛燕のごとく。
 されど、その瞳が見据えるのは猟兵の姿のみ。

 猟兵は滅ぼさなければならない。
 己が瞳に映るのは霊力。この香港租界に生きる者たちは皆、独特な霊気を帯びている。しかし、猟兵はそれを帯びていない。
 ならばこそ、この雑多な街にありて猟兵の姿はぽっかりと空いた空気溜まりのように視認することができる。
『編笠』の視界にあったのは、こちらを見やる少女であった。
「……成程、今度の敵は逃げ隠れするしか能がないのね」
 つぶやく言葉は、離れた位置にあっても聞こえる。
「……良いわ。何処からでもかかってくるが良い。それとも――」
 その唇が形作るは、簡単な言葉だった。

 ――尻尾を巻いて逃げてみる?

 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、その場から逃げることもなく、手のひらを上に向け、手招きして挑発していた。
「見くびられたものだね、私も!」
 改造モーゼル銃より放たれるのは、銃弾の雨。
 それは回避しがたき暴風のようにリーヴァルディに迫る。しかし、そえらの全てを肉体改造術式に寄って強化された動体視力でもって彼女は捉えていた。
 銃弾がどれだけ雨のように降りしきるのだとしても、並々外れた反射神経で持っ銃弾の軌跡を見切る。

「――こんなもの?」
 リーヴァルディの手が素早く動く。
 次の瞬間、彼女の手に平にあったのは無数の弾丸であった。
 どれもがひしゃげ、形を変えた鉛玉。
 リーヴァルディは掌に収束された怪力の呪詛でもって飛来する弾丸の尽くを掴み取っていたのだ。掌からバラバラと落ちていく弾丸を見やり、『編笠』は何が起こったのか理解出来なかったことだろう。

 迫るはリーヴァルディの瞳に輝くユーベルコードの光だった。
「……限定解放。極刑に処せ、血の魔棘」
 瞬間的に吸血鬼化したリーヴァルディが距離を詰める。弾丸よりも早い速度。その踏み込みは、限定解放・血の魔棘(リミテッド・ブラッドピアース)をなさしめたがゆえ。
 掌から放たれるのは己の血液を魔杭へと変貌させたもの。
 凄まじい速度で放たれる魔杭は乱れ打たれ、『編笠』の肉体を貫くだろう。

「……陽の光が届かないこの場所なら私も全力が出せる」
「まいったね、これは……日の当たる場所こそ本領の猟兵がいるなど」
「地の利があるのが己だけだと見誤ったのがお前の敗因と知れ」
 魔杭が打ち込まれた肉体から生命力が吸い上げられていく。リーヴァルディの瞳が爛々と輝く。
 吸血鬼化しているせいか、それともこの日の当たる場所をこそ己の衝動を高ぶらせるのか。
 どちらにせよ、『編笠』に滅びは必定である。
 地の利はたしかに『編笠』にあった。しかし、それを逆に喰い物にできる例外が猟兵に存在することをこそ知らなかった。

 だからこそ、敗れるのは定め。
 リーヴァルディは打ち込む魔杭の勢いのままに『編笠』を吹き飛ばし、九龍城砦の雑多な建造物を破壊し、そこに『編笠』を磔刑に処すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
地の利を相手に取られてるってのは面倒だねえ。
とはいえ入り組んだ所での戦闘はそれなりに得意だしね。
まあ、何とかしようか。

適当に街を歩いて先制攻撃を仕掛けられたら、
背中の噴気孔から空気を噴射して急加速。
銃弾に当たりにくいようスライディングで適当な建物に近づいて、
窓か扉を蹴破って中に飛び込むよ。

銃弾のくる方向が限定されれば後は壁や天井を蹴って跳ね回って、
銃弾を避けたり近寄ってマフィアたちを殴ったりして敵を減らしていこう。

ある程度数を減らして攻撃が減ったら【引網蜘蛛】を使って、
蜘蛛の巣を使って更に自在に跳ね回って編笠に近づいてぶん殴るよ。

アンタが勝手にするのなら、こっちも勝手な都合で倒させてもらうよ。



 九龍城砦はあまりにも無計画に建造物を積み上げたがゆえに、雑多な迷宮と化していた。
 それは地下に迫る迷宮ではなく、地にありて空を目指す迷宮の如く。
 見上げる空は狭い。
 狭隘なる空を飛ぶ飛燕の如きコンキスタドール『編笠』は、その全身を血潮に染めながらも飛ぶ。
 看板を蹴り、屋根を蹴り、高く高く飛ぶのだ。
「このままでは追われない。追われるわけがない。私の欲望は、このままでは……!」
 猟兵を此の地で打ち倒す。
 それが己の心に湧き上がった忠誠心によるものだと知っている。本来ならトンズラするところであるが、オブリビオン・フォーミュラ『張角』のユーベルコード『異門同胞』によって、ないはずの忠誠心が沸き上がるのを止められない。

 だからこそ、香港租界で猟兵を迎えたのだ。
『編笠』には不備はなかった。けれど、ここまで追い込まれたのは猟兵達が尽く予想を上回る力を示したからに他ならない。
「地の利を相手にとられてるってのは面倒だねえ……」
 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、とは言え、この九龍城砦の様相は生い茂る森のようでもあると感じていた。
 こんな入り組んだ場所での戦いは、それなりに経験しているし、得意であると自負もあった。

 だからこそ、彼女は適当に街を歩く。
 己を狙うのなら狙えばいい。混沌たる街の様相。しかし、感じる殺気は変わらない。オブリビオンは殺気を隠さない。
 己達と滅ぼし、滅ぼされる関係であるからこそ、隠しようのない殺気を放ってしまう。
 この香港租界の支配者である『編笠』の合図と共に放たれる香港マフィアたちの銃火器。
 轟音がいくつも重なり合った瞬間、ペトニアロトゥシカは、背の噴気孔から空気を排出し、急加速し迫る銃弾を地を滑るようにスライディングしながら、建物の壁をぶち破って内部に飛び込む。

 住人たちの驚愕した顔などに構っては居られない。
 銃弾がたちまちに壁を蜂の巣にし、さらにペトニアロトゥシカは床を蹴って飛び跳ねながら、別の壁から外へとぶち破って飛び出し、香港マフィアたちを蹴散らしていく。
「ぐぁっ!?」
「やっぱり、この世界には似つかわしい……でも」
 蹴散らした香港マフィアたちからペトニアロトゥシカは銃火器を取り上げ、こともなげにへし折る。
 これは明らかにこの世界にあってはならないものだ。
 阿片や銃火器。
 それらをばらまくコンキスタドール『編笠』の存在は、それだけで世界に亀裂を走らせることだろう。

 この香港租界が良い例だ。
 何処まで言ってもオブリビオンは世界を破壊に導く。ならばこそ、ペトニアロトゥシカの瞳がユーベルコードに輝く。
「くっ……体勢を立て直して――」
「逃さないよ」
 放たれるは、引網蜘蛛(アトラクト・ウェブ)。
 一瞬でペトニアロトゥシカから蜘蛛の糸が放たれ、九龍城砦の雑多な路地に蜘蛛の巣を張り巡らせる。
 それは彼女だけに扱える足場。
 伸縮自在なる蜘蛛の糸を蹴り、『編笠』へと迫る。
「アンタが勝手にするなら、こっちも勝手な都合で倒させてもらうよ」

 振るうは獣の拳。
 世界を頽廃へと導くのがオブリビオンだというのならば、それらの芽を尽く摘み取り、滅ぼすのが猟兵の役割。
 渾身の力を込めた拳は固く、そして重たい。
「好き勝手した代価だと思って、受け止めろ」
 打ち込まれた一撃が九龍城砦の建造物を破壊しながら『編笠』を失墜させるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…なかなかに雑多な場所だな…ここから奇襲されるのは確かに大変だ…
…とは言え…地形を利用するならこちらも利用するまで……だね……

……術式組紐【アリアドネ】を利用して看板や建物の窓等にアリアドネを引っかけてのワイヤーアクションで銃弾を回避していくよ…
……1度攻撃を回避したら【戦術構築:奸計領域】を発動……
…地形を利用して奇襲を凌ぎながら周囲に遅発連動術式【クロノス】で術式罠を設置…
…動き回ってるならそのうち引っかかるだろうから…罠から発射される術式でダメージを重ねていくとしよう…
…動きが読めるようになったら【アリアドネ】を予想進路上に仕掛けて拘束…動きを止めたところに魔力の槍を叩き込もう…



 九龍城砦の戦いは猟兵たちの優位に進んでいた。
 この雑多なる建造物が折り重なったかのような地形は、香港租界の主であるコンキスタドール『編笠』の独壇場に思えた。
 地理の把握は勿論のこと、この地に住まう者たち特有の霊気を持たぬ猟兵達を一方的に補足することができる『編笠』は圧倒的に優位であったのだ。
 しかし、結果は違う。
 叩きつけられた建造物の瓦礫から『編笠』は立ち上がる。
 手にした改造モーゼル銃を取りこぼさぬのは大したものであると言ってもいいだろう。
「まったくもって度し難いほどに埒外……これが猟兵か」
 呻く『編笠』の体は満身創痍。
 未だ身に宿るオブリビオン・フォーミュラ『張角』の『異門同胞』の力は、忠誠心でもって逃走を許さぬのだ。
「面倒なことに巻き込まれたものだ……私が生き残るには猟兵を打倒するしかないとは」

 だが、突破口がないわけでもない。
『編笠』は見る。霊気なき者。
 この九龍城砦にありて、空気溜まりのようにぽっかりと霊気が感じられない存在がいる。
 その存在――メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)を捉えた瞬間、飛燕のように九龍城砦の雑多な看板を蹴って己の改造モーゼル銃より弾丸の雨を降らせるのだ。

「……やっぱり奇襲してくる……地形を利用してくるなら、こちらも利用することは分かっていただろうに」
 メンカルは銃声を聞いて、即座に術式組紐『アリアドネ』を放ち、建造物の看板に引っ掛けて弾丸の雨を躱す。
 だが、それを追いかける『編笠』の身体能力は消耗してもなお、衰えるところがなかったのだ。
「猟兵にも色々いるようだね。こういったことが得意な者、そうでない者!」
 即座に追いつかれる。
 飛燕のように飛ぶ『編笠』の瞳が笑っている。

 遅れを取ることもあれど、それでも猟兵は個としての力はオブリビオンには及ばない。そういうものなのだ。だからこそ、油断もする。
 これまで強かに打ち据えられてきたというのに、目の前の獲物が己よりも劣るとしれば、勝てると思う。
 だが、『編笠』は知るべきだったのだ。
 力弱き者は、必ず力以外の何かを牙として研ぎ澄ましていることを。

 そう、力で及ばぬというのならば、戦術を持ってこれを制する。
 古代より力弱き人が肉体的にも膂力的にも勝る動物たちを制してきたのは、戦術在りきである。
「戦術構築:奸計領域(ウェルカム・キルゾーン)――とでも言おうか」
 遅発連動術式『クロノス』をメンカルは動き回りながら設置していた。密集する建造物を影に仕掛けた罠を次々と作動させ、術式に寄る弾丸が背後より『編笠』を襲うのだ。

「――ッ!?」
「自分の身体能力を誇るから、そうなる。手にした銃火器が便利であれば、便利であるほど、簡単に敵の生命を奪えると思うから、油断もする」
 メンカルの言葉が九龍城砦に響き渡る。
 連動して術式が展開され、次々と反撃の暇すら与えずに『編笠』の体は打ち据えられている。
 言葉を発する暇すらない。
 なんとか逃れようとした瞬間、『編笠』は見ただろう。

 メンカルは己から逃れるために術式組紐でもって飛んでいたのではない。
 己を捕らえるための網を張り巡らせていたのだ。進路方向に設置された『アリアドネ』が蜘蛛の巣のように迫り、『編笠』の体を拘束した瞬間、術式に寄って強化された魔力の槍を手にしたメンカルが迫る。
「……効果的だったね、これが」
 放たれる槍の一撃を躱す事もできず『編笠』は貫かれる。『アリアドネ』の糸でもってメンカルは九龍城砦を脱出しながら、一撃を見舞った『編笠』を見やる。

 銃火器や阿片と言ったものをばらまき、世界に破滅をもたらさんとしたオブリビオン。
 その末路はいつだって、猟兵に寄って打倒されるものである。
 それを示すように奸計へと墜ちる飛燕を見送るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
『フィア様、ここが編笠が治める九龍城砦でございます』
「ふぉふぉのふぁべものふぁおいふぃいにゃ」
『料理を食べながら話さないでいただけますか!?』

ええい、フギンよ、使い魔のくせに口うるさい奴め。
せっかく文明レベルの高い食事にありつけているというのに。

『それより編笠がアクロバティックに先制攻撃してきておりますっ!』
「ふぉのようなふぉうげひぃ、ふぁれにふぁちゅうじにゅ!」
『フィア様が投げたどんぶりや皿、それに割り箸などが銃弾を迎撃しておりますっ!?』

我の食事の邪魔をするとは、誰なのかは知らぬが【竜滅陣】で消し飛ぶがいい!

『フィア様!
せめて敵幹部の編笠であることくらいは認識していただけませんかっ!?』



 雑多な九龍城砦。
 それは空の狭き街。
 折り重なるように積み上げられた建造物は、まるで日の当たる場所を作るようでもあった。そこに住まう者たちの素性は知れず。
 オブリビオンも人間も変わらず存在し、あたかもそれこそが世界の縮図であるように思わせるほどであった。
 しかしながら、フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)は特に言葉を発していなかった。

 代わりに彼女の使い魔である『フギン』がしゃべる鴉の使い魔としておしゃべりしている。
『フィア様、ここがコンキスタドール『織笠』が治める九龍城砦でございます』
 道案内というか、ガイドというべきか。
 鴉の体で器用にフィアに飛んでついていく。一言もはっしないフィアに『フギン』は不審に思ったことだろう。
 黙っていることが出来ない主人であることはもうわかっている。だからこそ、静かなのが気にかかるのだ。
「ふぉふぉのふぁべものふぁおいふぃいにゃ」
 多分、『此処の食べ物すごく美味しいな』だと思う。
 なんで黙ってるのかと思えば、此処、九龍城砦の出店やらなんやらで買い込んだ食べ物をかっこんでいるだけであった。

 此処に何しに来たのかと問われても仕方ない。
『料理を食べながら離さないでいただけますか!?』
 いや、そこでもないんだけど。
 そんな『フギン』のツッコミを虚しく、主であるフィアは憤慨している。
「ええい、『フギン』よ。使い魔のくせに口うるさい奴め。せっかく文明レベルの高い食事にありつけているというのに」
 久方ぶりの調理された料理。
 これまではどうにも火を通せば大体行けるだろうという雑な食事ばかりであったのだ。

 ここ封神武侠界において香港租界は20世紀初頭の文明レベルをもっている。だからこそ、フィアは大喜びであったのだ。
『それより『編笠』がアクロバティックに先制攻撃してきておりますっ!』
 そんな『フギン』の言葉通り、迫るは弾丸の雨。
 しかしも看板を蹴りながら飛ぶように迫る『編笠』は満身創痍でありながら、未だ猟兵の打倒を諦めてはいなかったのだ。
「のんきに観光とは肝が太いというか、神経図太いというか!」
「ふぉのようなふぉうげひぃ、ふぁれにふぁちゅうじにゅ!」
 訳すの面倒なのでこのままで。

 このような攻撃通じないと言っておきながら、弾丸の雨がフィアの周囲にあったどんぶりや更、そんでもって割り箸などがフィアに迫る弾丸を防いでいる。
 いや、防いでいるか?
 かなりの偶然というか、悪運によってフィアは己の食事を完遂する。
 美味しかった。
 久しぶりのまともな食事。
 味付けイコール塩みたいな料理から開放されたフィアの笑顔はとてもよかった。

『フィア様! せめて敵幹部の『織笠』であることくらいは認識していただけませんか!?』
『フギン』がぎゃあぎゃあ騒いでいるのを尻目にフィアは己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
 お腹のチャージは満タン。
 弾丸の雨も、なんかこう、すごい悪運でもって躱している。スタイリッシュアクションというか、こう、たちの悪いB級映画を見ているような気分になるのは『編笠』だけであっただろうか。
「わけのわからないことを……! なんで当たらない!?」
「ふっ、我の食事を邪魔するからよ……ええっと、なんであったか、誰かは知らぬが兎も角!」
 
 展開される魔法陣。
 煌めくは魔力。紡がれる詠唱に寄って放たれるのはドラゴンすら消し飛ばす大規模破壊魔法である。
 美味しい料理を提供してくれた香港租界に恩を仇で返す大規模破壊魔法。
 言うまでもなく、此処でブッパすればどうなるかなんてわかっている。そう、すなわち街の破壊である。
「漆黒の魔女の名に於いて、我が前に立ち塞がりし全てを消し去ろう」
 お腹いっぱいで頭が回っていないのかも知れない。
 盛大にぶっぱされた光条の一撃が『編笠』もろとも、九龍城砦の建造物を吹き飛ばしていく。

 あたり一面が瓦礫の山に成った時、ようやくフィアは己がやったことと賠償請求責任の有無を感じ取って、これまた、スタコラサッサアクションでもって香港租界から逃げ出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
敵と、人…共存した、租界。

此処は…壊したくなる…!
何が気に入らない!?人を壊してはダメだ…!

サイキックシールドで【オーラ防御】銃弾を受け止め『ディスポーザブル』【残像】スピード増大に武装:アルダワの懐中時計で高速化の重ね掛け。

…編笠を壊せ!それが目的だ!!

【瞬間思考力】で増大したスピードを御し、人工魔眼の【第六感】が示す方向へ向けて走る!

【闘争心】この衝動の向け先は編笠だ!他は知らない!!

壁を走り、建物間を【ジャンプ】で跳び回り、
爆発的反応速度で障害物を乗り越え編笠を捉える!!

お前が!敵だァアア!!!
フォースサーベルで【切断】斬り掛る。もう銃弾など意に介さない。
一刻も早く、この衝動が人を巻き込まない内に仕留める!

銃弾でふっ飛んだ腕の代わりに、【念動力】大量出血で周囲に散った戦塵霊物質を腕として操り【継戦能力】編笠を掴む。

壊せ、この命を、壊せぇえええ!!!!!!

【怪力】編笠を地面に叩きつけ、フォースサーベルで【串刺し】から、サーベルに流し込むエネルギーを【限界突破】刀身の形状を爆発させる!



 苛立つ。
 何にと問われたのならば、香港租界の在り様にであった。
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は兎にも角にも、この街が、九龍城砦が気に入らなかった。
 オブリビオンと人間が共存している街。
 此処に住まう者たちは皆、素性の知れぬ者たちである。
 それは日の当たる場所を歩けぬ者たちの集まりであったし、あえて陽光に背を向けた者たちの吹き溜まりでもあったことだろう。
「敵と、人……共存した、租界」
 つぶやく度に嫌悪が喉から込み上げてくる。

 壊したいという思いがどうしようもなく小枝子の体を苛む。気に入らない。どうしても気に入らない。
 その理由を自分では自覚できないまま、小枝子は己に迫るコンキスタドール『編笠』の改造モーゼル銃より放たれる弾丸を見ていた。
 あの弾丸は己を壊すだろう。
 強かに打ち据え、肉体を穿ち、血潮を噴出させる。
 だが、気に入らない。『それ』がどうしても気に入らないのだ。
「――ッ!!!!!」
 咆哮が轟く。
 サイキックシールドでもって銃弾を受け止め、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 痛みと恐怖は消えた。

 懐にある『アルダワの懐中時計』の針が目まぐるしく回っていく。
 己の速度が爆発的に増大する。自覚なき狂霊へと変貌した小枝子の咆哮は、この九龍城砦のありとあらゆる場所にまで届く。
「『織笠』を壊せ……! それが目的だ!!」
 人は破壊してはならない。
 理解している。だが、いらだちは募るばかりであった。一瞬にも満たぬ速度で戦場と成った九龍城砦の瓦礫の中を飛ぶ。
 破片が舞い散り、弾丸が飛び交う。
 それを全て人工魔眼で捉え、如何にして走れば最小の被害で最速にして『織笠』へと至るのかを理解する。

「これだから猟兵というやつは! 埒外にも程がある! 痛みを感じていないのか! 普通は、弾丸は大きく躱して避けるんだよ!」
『編笠』は見た。
 弾丸の雨を前にして、最短の距離を疾走るべく致命傷にならなければ良いと言わんばかりに小枝子は、その間隙を縫うようにしてジグザグに戦場を横断してくるのだ。
 正気の沙汰ではない。
 打ち込まれる弾丸が小枝子の体を大きく傾がせる。だが、それでも構わないというように走り込んでくる小枝子の瞳が灯るのは、ユーベルコード。
 ディスポーザブル(コワレロコワレロコワレロ)たる兵。
 その真価を示すように、銃弾など意味をなさぬとばかりに特攻してくるのだ。

「この衝動の向け先はお前だ、『編笠』だ! ほかは知らない!!」
 苛立ちが炎と成って人工魔眼より噴出する。壁を蹴り、建物をぶち抜いて飛ぶ小枝子の炎の軌跡が九龍城砦に刻まれていく。
 敵。敵。オブリビオン。敵。それだけしか最早小枝子の中にはない。
 どれだけこの香港租界がオブリビオンと人との共存を示すものであったとしても、それを赦してはならぬという思いだけが込み上げてくる。
「お前が! 敵だァアア!!!」
 大きく跳ねた瞬間、小枝子は己の足が限界を迎え、筋肉が断裂した音を聞く。

 されど、超克に至る己には遠きものである。
 どれだけ四肢砕けようとも敵を討つ。ただそれだけのために己は存在しているのだ。
 手にしたフォースサーベルの一閃が『編笠』の手にした改造モーゼル銃を切り裂く。
「こいつ……! 自壊すらも厭わぬなんて……! どこまで頭のねじが飛んでるんだい!」
 たまらず『編笠』は飛び退る。
 だが、それが失策であった。小枝子は弾丸すらいとわずに飛ぶ。迫る。敵を破壊する。ただそれだけの存在として生まれたからこそ、小枝子は奔るのだ。
 一刻も早くオブリビオンを、敵を、この世界から排除しなければならない。

『編笠』はそこら中に転がっていた己のばらまいた銃火器の一つを手にし、引き金を引く。
 その弾丸は小枝子の腕を吹き飛ばしただろう。だが、それでも小枝子は止まらない。腕を失ったことすら意識していない。
 吹き出す血潮がまるで手のように形を作っていく。彼女の肉体は戦塵霊物質でもって象られる。
 ならば、失うことに意味はない。
「うそ、だろ――」
 驚愕する『編笠』の喉元を捕らえる戦塵霊物質の腕。
 力任せに大地に叩きつけ、建造物が砕けて崩壊していく。瓦礫が落下していく中、小枝子は己の衝動のままに叫ぶ。

「壊せ、この生命を、壊せぇえええ!!!!!!」
 壊すことが己の宿命であるというのならば、己の腕が掴む存在は壊さねばならない。
 敵。世界に破滅を齎す敵。
 己が護りたいと願うのではなく、己が壊したいと思うものをこそ壊す力。
 その衝動と共に『編笠』へと打ち込まれるフォースサーベルの一撃。胸に穿たれた一撃のままに血潮が飛ぶ。

「私は、此処で! 此処で私の欲望を!!」
「お前は、此処に居てはならない生命。ならば――」
 壊れろ、と叫ぶ声が響き渡り、フォースサーベルの刀身が凄まじい爆発と共に『編笠』の体内から炸裂する。
 その一撃は『編笠』の体を吹き飛ばし、その肉体を霧消させる。
「――!!!!」
 咆哮が再び轟き、瓦礫となった九龍城砦に破壊の音を齎す。
 それは歪なる在り方、その香港租界の世界にそぐわぬ有り様を否定するものであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月14日


挿絵イラスト