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緑鬼の驚異

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 奴らは村人達が寝静まった夜、突然やってきた。
 緑の体躯。子供程度の背丈。粗悪な武器防具で武装した醜悪な二足歩行の化け物。
 ゴブリンだ。

 まず家畜が襲われた。
 家畜小屋に入れられた彼らは逃げる場所も無く、必死の抵抗もむなしくゴブリンの集団になますぎりにされた。
 次にやられたのは家畜を守ろうとしたトマスだった。
 彼は過去に1匹でうろついていたゴブリンを殴り殺した経験があり、いけると踏んだのだ。それがいけなかった。
 家畜の腸を抜き出して遊んでいるゴブリンの後ろから、えいやっと農用フォークを突きだした。それは深々と1匹のゴブリンに突き刺さり見事致命傷を与えるのに成功する。だが。
 残りのゴブリンが一斉にトマスに振り返る。
 その瞳は加虐の興奮にぎらぎらと光り、口元からは興奮による涎がだらだらとしたたり落ちている。
 本能的な恐怖を感じたトマスがフォークを引き抜こうとするが。
「ぬ、ぬけねぇ!」
 深く入り込んだ凶器は死体にガッチリと食い込んでいて、恐怖で強ばった体では思うように抜けない。
 それを黙って見ているゴブリンではなかった。
「GYAGYAGYAAAA!」
 哀れなトマスが肉片と成り果てるのに、たいした時間はかからなかった。

●グリモアベース
「はいはい、仕事だよ全員集合」
 藤堂・藤淵がいつものようにやる気なさげに書類をもって現れた。
「場所はアックス&ウィザードの辺境にある村。その側にある洞窟だ。仕事はゴブリンの群れの駆除、及び攫われた村人の救助」
 端的に内容を述べると、先日起きたゴブリンによる村の襲撃とその被害の様を読み上げていく。
 家畜被害2頭。
 死亡者3名。攫われた村人1名。
 死亡者はトマスという農夫とその息子2人。攫われたのはその妻。
 犯人は最近付近に住み着いたとおぼしきゴブリンの群れで、確認できただけで10匹以上にもなる。
 襲撃は深夜に行われた。
 ゴブリン達はまず家畜小屋に押し入ると、そこにいた家畜を殺した。止めに入ったトマスをも殺害し、次いで家畜小屋近くにあった彼の家を襲撃。悲鳴を聞きつけて起きていた息子2名も同様に殺害。
 彼らの死体とトマスの妻は連れ去られた。
「てのが顛末。ヤッコさんらのネグラは割れてる。村からたいした距離もない洞窟だな。これは村の猟師が見つけ出した。竜の喉元、なんて言われる洞窟だそーだ。まるで竜が口開いたようにぽっかり空いてるからそう言ってるらしい。で、付近の足跡から見るに10じゃきかない数のゴブリンがいるっぽいのと、1つ普通のゴブリンとは思えない足跡もあったらしい」
 ゴブリン退治。この世界ではありふれた仕事だ。
 ゴブリンは雑魚の部類の敵であることから、猟兵達にやや弛緩した空気が流れる。
「いっとくが雑魚だと甘く見るなよ。武具を使う知恵もあるし、夜目もきく。何よりヤッコさんらは群れだ。1人で無策で突っ込むとかすんなよ。足下もろくすっぽ整えられてねぇ見通しの悪い洞窟、しかも奴らの巣だ。対策無しに突っ込んだら、死ぬからな」
 脅すように一声かけてから藤堂は猟兵達を送り出すのだった。


サラシナ
 拙作に目を通していただきありがとうございます。サラシナと申します。
 本作はオーソドックスな探索&バトルシナリオになっております。変な裏もなければ分岐もありません。
 プレイングの練習がてらに気軽に参加してみてください。
 ですが注意点がございます。
 3つNGな行動がありまして、それを行った場合は苦戦は必須とお考えください。また現実よりな判定を下します。ユーベルコードの威力やLVよりも、プレイングの工夫が明暗を分けるでしょう。
 答えに近いことは全てOPに記載してあります。

 それでは良き冒険を。
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第1章 冒険 『竜の喉元』

POW   :    気合で進む

SPD   :    手早く進む

WIZ   :    賢く進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リアーナ・シルヴァネール
◎ゴブリン?大好きよ…
人には言えないけどゴブリンて大好きなの、だって凄く生命力に溢れてて全然萎えないんだもの…
もちろん今日は真面目にやるわ、お仕事だからね
「連れ去られた奥さんは今頃ヤられちゃってる頃かしら…」

◎探索心得
周囲を照らす光の球体を自分に随行させる《ライトの魔法》で視界を確保しながら進む、もちろん松明も予備に持ったわ
慎重に奥へ進み、銃は使わず歩哨がいたら密かに近づいて、魔力刃を纏う蹴りで首を飛ばして暗殺し仲間を呼ばせない
連れ去られた奥さんとか女達を発見したら助け出すわ、放ってはおけないし
「命あっての物種ってね」
本当はゴブリンを捕まえて遊びたいけど、我慢しないとね…ウフフ

※アドリブ歓迎



 リアーナ・シルヴァネールは1人で洞窟の中にいた。
 その手には松明。あかあかと洞窟内を照らしながら先を進んでいく。
(人には言えないけれどゴブリンて大好きなの、だってすごく生命力に溢れてて全然萎えないんだもの……もちろん今日は真面目にやるわ、お仕事だからね)
 被害者たる村人の行く末すらも予想した上で 淫猥に口元を歪ませるその顔は、どこか被虐を望んでいるかのようだった。
 ともあれ、しっかりとした灯りの元であからさまに怪しい地形や岩肌を避けながら進む。
「見張りが、居ない?」
 ほぼ確実にいるだろうと踏んだ歩哨が存在しないことに首をかしげた。
 その時だ。
 風を切る音。複数!
「シッ!」
 矢だ。光の届く範囲に侵入してきたそれを刹那で見切り、蹴り落とす。
「なる、ほど。居ないんじゃなくて潜んでたわけね」
 考えてみれば納得できた。暗がりの中、煌々と灯りを照らして近づいてくる者をバカ正直に待っている奴はいない。
 普通なら灯りの範囲に入る前に気づくし、対策する。
 敵はとうの昔に彼女を補足。迎撃の準備をしていたのだ。
 こちらは1人。対して敵手は今の矢の数からして2人以上。
 こちらから相手は見えず、逆に相手からはしっかりと補足されている。
 まずい状態だ。
 明かりを消すか? 否。そんな事をすれば暗闇の中一方的に蹂躙されるのは目に見えている。
 このまま迎撃し続けるか? もちろん否だ。体力は有限で、相手がこれ以上増えないという保証は一切ない。というか、確実に増える。見つかっていたのなら他の仲間を呼びに行く。見張りとはそういうものだ。
 時間をかけて不利なのはこちらの方。
 となれば。
 シルヴァネールは身を翻して、強靭な脚力に物を言わせて出口に向かって走り出した。
 不利な状況で戦う意味などない。一旦仕切り直すか、ないしは他の猟兵と合流した方が賢い。
 敵が慌てたように矢を射掛けてくる。
 一発、二発、外れ。
 三発目が肩を射抜く。
 つんのめって転びそうになるのをこらえる。
 再度走る。
 前方に気配。猟兵か、と思った矢先に。
 進行方向より、矢。
 瞬時に見切って飛び退る。
 ゴブリンだ。来た道を戻っていたはずなのに、どうして。
「GYA! GYA! GYA!」
 笑い声だと直感で理解した。
 裏を取られた。
 いつ、どこで。
 わからない。けれども挟撃されてしまっていることだけは、確かだった。
 これはもう戦って突破するより他に道がない。
「中々、楽しませてくれるのね。燃えるじゃない」
 彼女は笑い、戦い始めたのだった。

 飛んでくる矢、矢、矢。それにまじって投擲されるボール状の何か。
 見切って避ける。地面に当たった瞬間液体をぶちまける。
 灯りを消して袋叩きにする魂胆だったのだろう。
 危なかった。
 もし消されていたら、視界を奪われて蹂躙されるがままになっていただろう。
 敵は彼我の状況を理解しており暗闇から出てこない。こちらは灯りというハンデを背負って戦い続けなければならない。
 増援の心配もある。
 けれど、うって出ようにもつめた分だけ下がるし、矢がその行動を阻む。
 この際もう音など気にせず銃弾を浴びせるという選択肢も在ったが、相手が見えないのではどうしようもない。
 結局。シルヴァネールは、他猟兵達が来るまで不毛な消耗戦を強いられる羽目になった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

片桐・公明
(絡みアドリブ歓迎です)
【WIZ】金属の全身鎧。左腕に装着する円盾。腰にフォースセイバー。左手に松明をもって進む。鎧のせいで見た目からは性別が分からない。なるべく声も発しないようにする。

洞窟をまっすぐ進んでいく
(…まっすぐ?)
時おり止まっては周囲を警戒。隠し通路の類いを疑う。特に変なオブジェクトを見たら念入りに確認する。
(別の道、まっすぐ進んでいたら裏取られていたかも。)

ゴブリンと遭遇したら、円盾で体制を崩してから首元掴んでUC
(武器は…一応借りておきましょう。)

(この世界は初めてだけど、先行している冒険者とかいるのかしら?)
(長剣?洞窟では振り回せないでしょうに。)

ひたすら堅実に進む。



 洞窟の中を全身甲冑の人物が歩いている。
 片桐・公明だ。
 性別も見分けが付かない程に全身を金属で覆った彼女の足音が、大きく洞窟の中を反響する。
 いや、それは外であったのならばそれほど気にもならなかったのかもしれない。
 けれども周囲に誰も居ない静かな洞窟内では殊更に響くように感じられるのだ。
 音はそれだけではない。ぼうぼうと燃える炎は彼女が左手に持った松明。
 それは周囲を明るく照らしとても頼もしく感じられる。もし何も持たずに乗り込んだのならば、3歩と進まぬ内に転倒して、ゴブリン退治どころではなかっただろう。
 ましてや、こんな物を見つけられるはずもなかったはずだ。
(別の道、まっすぐ進んでいたら裏取られていたかも)
 それは子供程度がくぐれるような小さな道。少なくとも今の片桐には中に入れそうにはない。だが、ゴブリンならば可能であろう。
 もし気づかずまっすぐ進んでいたらと思うと怖気が走る。とりあえず手近な物で塞ぎたいところだが。
(都合よくそんなもの無い、か)
 穴を塞げるほどの岩など転がっては居ない。かと言ってユーベルコードなど使って破壊しては自分が居ると宣伝して回るようなものだ。
 塞げない以上、裏は取られる、と考えて前に進むしかあるまい。
 覚悟をしておくこととしないことでは雲泥の差だ。
 前だけでなく後ろにも注意しながら進むしか無い。
 1人で。
 そう、彼女は1人だった。
 別に他の猟兵が居ないと思っていたわけではないし、連携を拒否したわけでもない。しようと意識もしなかったが。
 ただ気づいたら1人だったのだ。
 1人で全周を警戒し、罠にも気をつけて進むのは並大抵の集中力では足りない。ましてやスピードなど出ようはずも無かった。

 どれだけ神経を摩耗させて進んだろうか。
(飛来物っ)
 音に気づいたときには何かが鎧に当たり弾き飛ばされていた。
 矢だ。
(敵襲、どこから?)
 松明を掲げるもその明かりが届く範囲には射手は見えない。
 ただ岩肌だけが見える。
 暗がりに潜む凶手は、松明に慣れた目では見透かすことができない。
(まずい)
 生物の目というのは自律神経により瞳孔を拡大縮小して、水晶体を通る光の量を調整する。
 端的に言えば、明るいところから暗所を覗くことは難しい。
 では逆はどうか。
 暗がりの中ぼうっと光る松明の明かりは、どう見えるのか。
 答えは。
(通りはしないけど、うっとおしい)
 幾度も飛んでくる矢が答えとなる。
 全身鎧のおかげで傷を負うことはないが、一方的に嬲られるという状況に片桐は歯噛みした。
 どうせダメージにはならないのだし突っ込んでしまおう。そう思い、足元に力をいれた瞬間、飛来した何か。
(飽きずに何度も何度も!)
 フォースセイバーで切り払った瞬間。
 液体がぶちまけられた。
 毒、それとも可燃性の何かか。
 違う。強烈な鉄さびめいた臭い。アンモニアの臭い。
 汚物を浴びせられた。
 怒りに血が上るより早く、彼女は失策に気がつく。
(灯りがっ)
 そう。ゴブリンの目的は彼女の持つ灯りだったのだ。
 一気に暗闇の世界に落ちる。
 何も見えない。
 急な光量の変化に目は対応できていない。時間をかければ可能だろうが、それは奴らが許しはしない。
「GYAAAA! GYA! GYA!」
 幾重にも重なる嘲笑するようなゴブリンの声。
 同時に、衝撃。
 殴られた。
 反撃とばかりに振ったフォースセイバーに手応え。だが浅い。
 足元もおぼつかなく、視界も封じられていては、自慢の剣も相手の芯を捉えられない。
 圧倒的不利な状況。だが。
(その、程度)
 父母から受け継いだ才能と心は、この程度で屈することを良しとしなかった。
 片桐は萎えようとする心を叱咤して剣を構え直す。
 見えないならば目に頼らなければいい。
 足元がわからないのならば動かなければいい。
 相手の一撃は必殺には程遠い児戯のようなもの。
 こちらは逆に、一太刀まともに浴びせればその生命を奪える。
 そう思えば、混乱しかけた思考はクリアになる。落ち着けば、相手の無作法な足音や呼吸音が手に取るようにわかる。
 一太刀。
 今度は確かな手応え。
 断末魔の悲鳴。どうっと倒れる音。周りで騒いでいたゴブリン共が一斉に静かになる。
 やがて。
(逃げた?)
 与し易い餌ではないと認識したのか。ゴブリン共は一斉に引いていった。

 ゴブリン1体駆除。
 代わりに松明を失う。

 このまま進んでもろくなことにはならないだろう。
 片桐は壁に手をつき、慎重に元来た道を戻り始めた。
 運が良ければ他の猟兵に見つけてもらえるだろうし、最悪外に出てしまったとしてもやり直すことができる。進むよりはマシな選択だった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

青葉・まどか
…これ以上の被害者が出ないよう、最善を尽くします。

自らの巣に女性を攫った以上、追手が来ることは向こうも想定しているはず。
慎重に行動。

【影の追跡者】を召喚して先行偵察、情報収集する。


罠や見張りに注意。

入り口の周囲や内部に罠が仕掛けられていると思うので、視力・暗視・罠使いを活用して罠を探して無力化する。

見張りが隠れている可能性もあるので視力・暗視で周囲をよく観察。
こちらの襲撃が気づかれないようにしたいので、見張りが居るならダガーの投擲で暗殺を仕掛け、静かに始末する。

単独で突出せず、周囲の仲間との連携・フォローを心掛ける。
ゴブリンからの奇襲にも注意。

人が出来る事、考える事はゴブリンにも出来る。


トリテレイア・ゼロナイン
【古城】で参加

人も小鬼も、そして過去の騎士も襲撃の後の蛮行はどこも変わりませんね
そして私は御伽噺の騎士として振舞うだけです
捕らわれた女性のことを考えると気が重くなりますが

「防具改造」で関節の消音機能を上げ、全身を覆う暗色のマントを纏います
洞窟に潜入する際には妖精ロボを目立たぬよう先行させ落とし穴、鳴子などのトラップがないか調べさせながら前進、バックアタックを警戒しアラート代わりに後方にも一体追従、分岐ごとにも配置します

使い魔の蝙蝠の超音波をセンサーで拾い、洞窟内の構造を把握できればよいのですが
歩哨のゴブリンが前方にいるとわかれば「暗視」でフォルター様へ位置を伝えましょう
対集団戦は避けたいですね


フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

【古城】にてトリテレイアと共に参加

人間モドキであれば、どう弄ぼうが批判はあるまい
地の利は奴等にある以上油断出来ぬが…それすらも愉しみ、温かい鮮血を貪ってやる

流石にヒールで歩く訳にはいかぬのでな、滑り止め付きブーツを履いていく
遭難を防ぐ為に長いロープと、シャッター付きカンテラも念の為持参する

まずは、黒の血玉より使い魔の蝙蝠を召喚し、先行させる
発する超音波をトリテレイアが拾う事で、洞窟内の大まかな構造を把握出来るか試すとしよう

トリテレイアの暗視や妖精ロボ、我の蝙蝠で敵の位置が確認出来れば…UC:トーデスシュトラーフェにて背後に転移し、そのまま鎌で首を一息に掻き斬る

※アドリブ歓迎


鹿忍・由紀
【WIZ】
とりあえずは慎重に奥を窺いながら進もうか。
技能「暗視」も使って中の様子とゴブリン達の動向を確認する。
戦闘に移るために出来るだけ足場が確保出来る場所も確認しておく。戦いにくい場所で戦闘にならないよう誘導とか出来れば良いな。

敵は群れでいるはずだから単体行動は避け、ほかの猟兵達とも情報共有しながら攻めるよ。
気付いたことがあれば伝えるし、有利になるなら連携も。
面倒だし手際よく終わらせたいよね。
あんまり時間かけると連れ去られた人も助からなくなっちゃうかもしれないし、ね。



 暗くじめじめした中を人影が進んでく。
 トリテレイア・ゼロナイン、フォルター・ユングフラウ、青葉・まどか、鹿忍・由紀の4名だ。
 先を行く人影は青葉だ。
 その身のこなしは淀みがなく、まるで暗闇の中を見通しているかのように危うげ無い。足音も最小限に殺し蛇のように静かに進む様は流石の一言である。
 探索者であり、シーフでもある彼女の面目躍如といったところか。
 いくつか罠らしい罠はあったが、それは遺跡や迷宮にあるような凝った仕掛けではなく、精々が鳴子、落とし穴程度であった。
 視界さえ妨げられていなければ素人でも見つけられただろう。
 解除は無理だっただろうが。
 放置されている罠がいくつか。どうやら彼女たち4人より先に入った誰かが居るようだが、彼らはそれを回避して進んだようだった。
 懸命だろう。素朴な罠とはいえ下手に触って発動したら意味がない。
 罠の知識がある青葉は丁寧に解除してまわり、できないものには目印と声掛けで後続の猟兵が引っかからないよう注意を促す。
 こればかりは、青葉の隣に侍るように飛ぶ妖精にはできないことだろう。
 トリテレイアの異能【自立式妖精型ロボ】だ。ふよふよと浮かぶ妖精モドキは中々に愛らしく、青葉は声に出さず静かに笑った。

 シーフらしいスキルを揃えた青葉と、この機械妖精によって道中の罠は全て発見され無効化されるのだった。

 勿論それだけではない。
 罠を警戒して進む彼女らより更に前方には、青葉の【影の追跡者】、そしてユングフラウの使い魔たる蝙蝠が居た。
 影は青葉と共有した五感で、蝙蝠はその超音波でもって前方の地形と敵を探しながら進む。
 影は見つかりにくく、蝙蝠は洞窟にいたところで不審がられない。
 完璧な斥候であった。

 そして彼らよりずっと後、青葉の後ろにはトリテレイア、ユングフラウ、鹿忍の順で続く。
 トリテレイアの体にはロープが結わえ付けられており、その直後を進むユングフラウの歩行を補助していた。
 ユングフラウには暗闇を見通す目がなかったからだ。
 ユングフラウも念のために光源は所持していたが、周りに目がいいものが多数居たので今は使わずにいる。
 彼女のさらに後ろに居る鹿忍は側方及び後方の警戒。前方警戒は専門の者がいたので、穴を埋めるように連携したほうが有利になると判断したのだ。
 ふと鹿忍の視界に違和感。第六感は危険だと告げている。
「まって。たぶん、あそこ隠れてるけど……やっぱり。脇道だ」
 ゴブリン達が掘ったのか、それとももとからあったのか。そこには人間の子供かゴブリン程度なら通り抜けられるような穴が空いていた。
 塞いでしまうのが手っ取り早いが、派手な音を出すのも問題が有るように思える。せっかくここまで目立たずにきているのだ。
「お任せを」
 トリテレイアがすかさずその場に妖精型ロボを配置する。
「前にも飛ばしてるやつだね。トリテレイア、これは?」
「警報代わりです。もしここから敵が出てくればこれが知らせてくれます」
「なるほど、考えたね。ああ、じゃあ後方から追っかけてきている子も?」
「はい、いざという時のために」
 後方を警戒していた鹿忍は気づいていたのだが、彼らの後方を追尾してくる妖精型ロボが居たのだ。
「機械は万能だね。ん、となると俺が後方警戒する必要もない?」
「いえ、万能には程遠いです。所詮機械も人も目やセンサーに頼って物を認識しているだけですので、必ず漏れはあります。複数のチェックは必須かと」
「なるほど。楽はできないか」
「申し訳ありません」
「いや、言ってみただけ。気にすることじゃない」
 そんなやり取りをしながらしばらく進む。

 途中で1人猟兵を拾った。更に進む。

「止まって」
 青葉の制止。彼女の影と、ユングフラウの使い魔が前方で戦っている存在を見つけたのだ。
「たぶん、猟兵。後弓手のゴブリンが手前と奥に……それぞれ2ずつ」
「始末してしまおう。小出しで居る内に各個撃破出来るのならしめたものだ」
 ユングフラウは漸くの血の愉しみを予感して嗤う。延々と闇の中を歩くのは退屈で仕方がなかったのかもしれない。
 異論はない。全員で音に気をつけながら先を進むと、肉眼でもはっきりと戦場を視認することができた。
「なるほど、灯りをつけたらああなっていた、か」
 そこには松明を持ち、周りから射掛けられる矢を蹴り落とし続ける人物がいた。
「我が行く、と言いたいところだが……敵が見えんな」
 そうなのだ。
 使い魔は超音波で暗闇の中を飛べる。他の3名は暗視持ちなので前方の戦闘も敵の姿もはっきりと分かるのだが、ユングフラウに見えるのは松明を持った人物だけ。
 相手が見えなければ座標を特定できない。対象指定型の、しかも転移という高度で繊細な魔法には致命的な条件だ。
「仕方ない、任せた」
「まかせて」
 にっこりと引き受けたのは青葉だった。
 彼女は敵との距離を慎重に詰めると、その腕を高速で動かす。
 次の瞬間には手前側で矢を射掛けていたゴブリンの喉にダガーが突き立っていた。しかも2匹同時だ。
 恐るべき早業、そして正確さだった。
 首に生えた異物をどうにかしようと藻掻き苦しみながらゴブリンは倒れ、やがて動かなくなった。
 奥側の2匹が新たな敵に不利を悟って奥へと逃げていくのが見える。
「追うか?」
「いいえ、フォルター様。それよりも彼女の治療を」
 ゴブリンが去った後には、手傷を負った人物が1人居たのだった。

 総勢6名となった猟兵達は破竹の勢い、というには少々ゆったりと、だが確実に洞窟を踏破していった。
 罠は尽く無効化し、ちょっかいを掛けてきた無謀なゴブリンを血祭りにあげながら。
 歩哨は、もう立っていなかった。
「どう思う?」
「逃げたんじゃないかな?」
「もしくは、全兵力を集結し迎撃の準備をしているのやもしれません」
「話してても結論はでない。あんまり時間かけると連れ去られた人も助からなくなっちゃう。いこう」
 全員が頷く。
 そうして猟兵達は最奥へと進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ゴブリン』

POW   :    ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達が出した斥候が発見したのは、少し開けた部屋のような場所だった。
 奥に向かって長い長方形の部屋、というよりも拡充した通路のようなそこは精々20mといったところか。
 奥には更に通路が続いているが、その前には通せんぼをするようにゴブリン達が集結していた。
 その数は9。手入れをしていないのかだいぶくたびれた様子の弓、そして腰には大ぶりの剣をさしている。
 彼らは侵入者が来るのを待ち構えているようだった。
 その視線は猟兵達が出てくるであろう通路をじっと見つめている。
 無策で突っ込めば針鼠になることは火を見るよりも明らかである。
 さて、どう攻めるか。
片桐・公明
【SPD】変わらず同じ鎧を着ている
双方がギリギリ見えない位置に陣取る
杭と縄を使って足元に罠を仕掛けておく
その場で拳銃を構えてUC
一掃するつもりで放つ
(さっきコケにされたお返しよ。)

敵が突貫してくれば、罠に引っ掛かって転ぶはず。そこを確実に殺していく
(待ち伏せしておきながら、自分達はされないとでも思っているのかしら。)

近づいてこなければその場で銃撃
(跳弾は…こっちまで来ないか。)


青葉・まどか
厄介ですね。火力で蹂躙するか、策でいなすか?どうしましょ?

仲間との連携・フォローを心掛けます。

ゴブリンに『レプリカクラフト』で音響閃光手榴弾を作成して投擲。敵が狼狽したら強襲。使用の際は仲間に注意します。
作成が上手くいかない可能性もあるので仲間の対応案があるなら、そちらを実行。

視力・暗視・第六感で周囲を観察。
部屋の中にも細工が施され、伏兵や足元に罠があるかも?通路の奥から増援の可能性もあります。
油断せず行動。

戦闘の際は、動き回り撹乱。
敵の攻撃を視力で見切り、フック付きワイヤーを使い敵を盾にする。
『シーブス・ギャンビット』で攻撃。
早業・範囲攻撃・2回攻撃・投擲・武器落としを状況に応じて活用。


日月・わらび
臭い消しと慣らしのために泥遊びして
おおかみアイで暗視して
ふかふかのおおかみスリッパで足場対策

完璧!

まず防犯カラーボールを辺りに適当に投げるの
ノーコンぽく見せるの



怪力だましうち

ネズミ花火をいっぱい全力でシュートォ!と同時に突撃ィ!
慣れない音と閃光で混乱を招いて
蛍光の照り返しと暗視で罠は回避
わたしほど地面と近いヤドリガミはいねーの!

集団真上の天井に怪力鎧砕き裏破牙をどーんして
局所崩落で一網打尽にしてやるの

二回攻撃発動
巻き込まれそうな範囲に要救助者がいたら崩落の範囲外に
いなかったら離脱しやすい位置のゴブリンを範囲内に
蹴り飛ばしながら足場にして自分も範囲から離脱

間髪入れずに残党も皆殺しにしてやるのさ!


トリテレイア・ゼロナイン
【古城】で参加
果たしてあの粗雑な弓が鉄の身体と盾に通用するのか?という疑問もありますが、自分の体で確かめるのも怖いので、念には念を入れましょう。

入り口の左右の死角等に伏兵がいてもおかしくはありませんからね

フォルター様の使い魔の蝙蝠を先行させた後で、妖精ロボを複数体用意、「防具改造」で纏っていた暗色マントを被せ人間大の囮として部屋に侵入させましょう。
これで矢を無駄打ちさせ、次の矢を番えさせ、部屋に侵入する時間を稼ぎます。スラスターを起動させて侵入、伏兵がいるとわかれば攻撃から仲間を盾でかばい、いなければそのまま弓を撃たせず接近戦に持ち込みます。

油断は禁物、センサーをフルに使い伏兵を警戒しましょう


フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

引き続き、【古城】でトリテレイアと共に動く

ふん、雑兵の癖に待ち伏せとな?
大方、首領格に指示でもされたのだろうが…所詮は人モドキのする事よ、我等には到底及ばぬという事を骨肉に刻み込んでやる

まずは、使い魔の蝙蝠を先行させて偵察を行う
その後、トリテレイアが囮人形を放つ手筈となっている…これで、奴等に矢を無駄撃ちさせる
その後の矢を番えている隙に、我はUC:ヴィーダーゲンガーを放つ
…確認出来る範囲では9体だが、伏兵がいる可能性もある
漸く目も慣れて来たのでな、五感共有と暗視を活かし伏兵捜索を行おう
発見出来れば、そのまま死霊の腕で弄んでやる
いなければ、9体を挽肉に変えてやろう

※アドリブ歓迎


鹿忍・由紀
隠れる場所がないところでの集団相手は避けたいなぁ。
堂々と戦うのはあんまり得意じゃないんだよね。

俺は後方から麻痺毒を使った矢で敵の動きを鈍らせようかな。
少しでもあいつらの動きを制限してやれば他の猟兵達も戦いやすくなるだろう。
暗視、スナイパー、千里眼射ちを併用すればゴブリン達よりは有利に攻撃できるかな。

敵の数が半分以下になったら乱戦に紛れてダガーでの近距離攻撃に切り替え。
目立たないと暗殺で自分に集中が向いてない敵を狙っていく。

正々堂々戦うのは他の人に任せたよ。



「何をしている?」
 猟兵達が通路になにやら仕掛けをしている片桐に気がついた。
「罠よ。こっから射撃しておびき寄せようかと」
「それでと突撃してきたゴブリンたちを一網打尽、と。悪くはないな」
 ふむ、と仕掛けられた罠を見るユングフラウ。二本の間に縄を通しただけの簡単な作りだ。足を取られたら転倒するような作りなのだろうが。
「……バレるのではないか?」
 そうなのだ。仮におびき寄せるのに成功したとしても、相手は闇の中でも見通せる目が有ることは確定している。
 偽装がない状態では気づかれるだろうし、なにより。
「そうね。後私のUCだとちょっと威力が在りすぎるから、もし後ろの通路に通ってしまったら」
「後ろに居るだろう村人への被害、かの」
「そう。だから天井か、壁にでも当てたいところだけど、見えないのよね」
 日月の指摘に片桐が頷く。
 片桐もいい加減暗闇にも目が慣れてきて、近くの輪郭程度ならぼ見えるようにはなった。
 けれども遠く、射撃距離にいる敵の形まで見通せるほどではない。
「松明をつけて投げつけるとか」
「いえ、その間に叩かれるでしょう。此方から見える距離は相手にも見えている。そう考えたほうがいいです」
「トリテレイアの大盾の影からやればいいのではないかな?」
「でも私達が見えないんじゃ同じじゃない? 部屋全体を明るくできるならまだしもさ」
 問題は誤射だ。見えているならば問題は無いだろう。けれども見えない状態でやたらめったらに射撃されては困る。
 作戦会議の末、まず目の良いものによって片桐の射角を調整。
 先駆けに1発放った後は後詰めとして待機、という形に落ち着いた。

「母の歴史。父の知識。それを興すは私の能力。すべて焼き尽くす!!」
 轟っと放たれた片桐の【赤壁乃業火】
 膨大なエネルギーの奔流が、1体のゴブリンを焼き滅ぼしながら壁に激突、爆散させた。
 もしこれが通路の奥にまで通っていたとしたら、そしてもしその先に要救助者がいたら、絶命は免れなかっただろう。
 弓の有効射程外からの攻撃に、ゴブリン達が浮足立つ。
 圧倒的な有利な立場だと思いこんでいた状況から一転、狩られる側になったのだ。
 攻めるべきか、それとも当初の予定通り待ち伏せに徹するのか。
 彼らにはそれを判断できなかったようだ。その場で猟兵達が潜んでいる通路を指さし喚いたり、伏せたり、もしくは通路からの死角へと我先に逃げ出したりと、行動に統一性が見られない。
(所詮首領各の命令をこなすしかできぬ雑兵か)
 ユングフラウは嗤いながら、部屋の中に使い魔を放つ。トリテレイアが作った機械妖精もそれに続く。
 機械妖精にはフードを被せ、あたかも人影のように見えるよう工夫が施されていた。
 そのダミーと蝙蝠が部屋に突入した直後。
「GYA!!」
 馬鹿め、とでも言ったのかもしれない。
 両脇から突然現れたゴブリンの槍と鉈によって、フードと蝙蝠がバラバラにされた。
 もし何も考えずに突撃していたら、ここで手痛い一撃を食らっていただろう。
(中々頭がいいですね。ですが)
 その程度、熟練の猟兵に読めないわけがない。
 トリテレイアはむしろ憐憫すら浮かべて彼らを見つめる。先の展開が見えているだけに、そのちゃちな策が哀れにすら写った。
 直後、爆音。
 音と光の暴力が部屋の中で炸裂してゴブリン達の目と耳に深刻なダメージを与えた。
 青葉の作り出した音響閃光手榴弾だ。
 存在を知っていても、備えていたとしても、間近でその衝撃を喰らえばただでは済まない。
 三半規管と視覚を無遠慮に揺さぶられて、ゴブリン達はその場に声すらあげられずに膝をつく。
 ただの人間ならば泡を吹いて昏倒するほどのそれに耐えきったのは、流石は化け物である。とはいえ、だ。
「堂々と戦わないってのは、俺も同じでね」
 鹿忍の矢が伏兵を撃ち抜く。
 敵の待ち構えている部屋にわざわざ突入などしなくていいのだ。
 同じ弓とはいえ、鹿忍とゴブリン達のそれは雲泥の差がある。有効射程距離も、威力も。
 そうして伏兵がわけもわからない間に鹿忍に射殺されると、猟兵達が一気になだれ込んだ。
「足元!」
「落とし穴だの!」
 カラーボールを手榴弾と同タイミングで投げていた日月・わらびのファインプレーだ。
 シーフである青葉と、狼(スリッパ)である2人が、蛍光塗料の照り返しによって落とし穴の存在を看破。
 知らずに突っ込んでいたら足を取られて転倒。そこを囲んで虐殺する。そういうプランだったのだろう。
 全ては灰燼に帰した作戦だが。悪辣さと知恵ではやはりゴブリンは人に敵わないということだ。
 衝撃から立ち直りかけたゴブリンは、さらなる地獄を味わうことになる。
 きゅっ。
「消し飛べぇぇぇ!!」
 大きく跳躍した日月が天井に【裏破牙】を放つ。
 再度の爆音。崩落する岩。
 通路前に居たゴブリンは逃げる間もなくそれに押しつぶされていく。
 なんとか逃げおおせた一匹を足場に日月が更に跳躍。
「GYAGYAGYAGYAAAA!」
 一矢報いんと腰から剣を引き抜いたゴブリンが日月に迫るが。
「させませんよ」
 トリテレイアの大盾が防ぐ。ならばと足払いをしかけようとゴブリンが動くが。
「悦べ。抱擁をくれてやろう」
 ユングフラウの【ヴィーダーゲンガー】の方が早い。
 地面から湧いて出た無数の死者の腕がゴブリンを捉えて地面に引きずり倒す。
「GYAAAAAAAAAAAAAAA!」
 ぶちり、ぶちりと、肉を掴みえぐり取られていく絶叫が洞窟に響き渡る。
 仲間を助けよう、などという殊勝な意識はゴブリンには存在しない。
 彼らの思考はいかに自分が生き残るか、いい目を見るかという近視眼的な物であり、つまり。
「逃さない」
 猟兵たちに背を向けようとしたゴブリンを青葉のフック付きロープが捉え、引きずり戻す。
 すかさず飛来した矢が、ゴブリンの耳を打ち抜き脳髄を破壊する。
 鹿忍の【千里眼射ち】だ。暗闇の中、前衛の仲間に当てないだけでも難しいと言うのに、彼は敵の柔らかな部分を狙撃してのけた。

 後はもう語るべき戦闘は無く、ただの残党処理であった。
 伏兵、罠の察知。
 強烈な初手での動揺と無力化、後に突撃。
 6人の即興とはいえ息の合った作戦を前に、ゴブリン達はろくな反撃もできぬまま物言わぬ骸と成り果てた。

「わかっていたことだが、村人はいない、か」
「事前情報にある別個体もいないね。多分、奥」
「しかし数が合わない気が。情報では10以上って言っていたけど、いくらなんでも10を軽く越し過ぎじゃない?」
 ユングフラウ、青葉、片桐が生き残りが居ないか確認しつつ考えをまとめる。
 確実な死亡の確認。これをしっかりしないで背後から襲われる、なんて笑い話にもならない。
「その別個体も合わせれば、倒した数と合わせて16匹? 確かに少し多いね。まあ、それよりも」
 片桐が話に乗りつつも視線を奥へとつながる通路へと向ける。
 そこには崩落して半ば埋まった通路の入口があった。子供程度なら通れるだろうが、成人、ましてやウォーマシンの巨体が通り抜けられるような状態ではかった。
 日月が明後日の方向を向きながら、
「コラテラルダメージってやつなの。勝利の為のやむを得ない犠牲なの。TVで言ってた」
 などと供述しており。
「いや、悪いとは言ってないけど」
「退かさないことには、ですね。日月様、私も手伝いますから」
 力自慢の猟兵が複数居たため、撤去作業は驚くほど早くすますことが出来た。
 
 猟兵達は更に奥へと進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ゴブリンキング』

POW   :    ゴブリン親衛隊の召喚
戦闘用の、自身と同じ強さの【杖を持ち、炎の魔法を放つ、ゴブリンメイジ】と【剣、盾、鎧で武装した、ゴブリンナイト】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    王の激励
【王による、配下を鼓舞する言葉】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    ゴブリン戦奴の召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【奴隷ゴブリン】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 先程同様、斥候をだし罠を警戒しながら進んだ猟兵達が見たもの。
 それは宴会場のような広間だった。
 中心に轟々と燃える薪と、そこにかけられた大鍋。
 ぐつぐつと煮込まれた鍋からなにかがにょっきりと生えている。
 何かの棒のようにみえたが、違う。
 人の手足だ。
 ゴブリンは人を喰らう。人が獣を狩って食すのと同様に、彼らも人を狩って食うのだ。トマスと、その息子達だろう。妻がそうなっていないのを祈るばかりだが、少なくとも赤々と照らされた範囲には彼女らしきものはいない。
 火は部屋全体を照らすのには足りないのだ。
 鍋の周りに人影は見えなかったが、代わりに奇っ怪な生物を見つけた。
 緑の巨人、否、ゴブリンの親玉だ。
 通常のゴブリンより数倍立派な体躯。ウォーマシンと遜色ないということは2.5m以上はあるということだ。
 どこから持ってきたのか王冠のような物をかぶった様は、正に王と呼ぶにふさわしい。
 彼は玉座に座り、片手に人の頭を持って、その中身をすすることに夢中になっている。
 自分の配下達の敗北を予測していないのか。それともそんなものどうとでも良いと思っているのか。
 なんたる傲慢。
 なんたる余裕。
 猟兵達はそれを挫かねばならない。
 人を舐めた化け物を、滅ぼさねばならない。

 まだ敵は、王は、此方に気づいていない風に見えた。
 さて、どうする?
「おかしい」
 最初にその異常に気がついたのは日月だった。
「どういうことだ?」
「日月様?」
 猟兵たちは首を傾げて彼女を見る。
「アレは、なんであんなところに居るの?」
 日月が言うにはこうだ。
 マンハントに慣れている者が、攻め入られているのに堂々と通路から見える位置に『どうぞ襲ってください』とふんぞりかえっている。
 加えて前の部屋で局所崩落まで起こしているのに、悠長に食事などするものだろうかという疑問。
「アレは自分を囮にしてそうだの」
 簡潔に述べられたその事実に、猟兵達が顔を引き締めた。
 伏兵と罠程度の警戒はしていた。だが、あのゴブリンそのものが餌とは誰も思いつかなかった。
 本当に此方に気がついていないのか、確認する事を怠っていた。
「念には念を入れようか」
 鹿忍の声に全員が頷いた。 
 慎重に再度斥候と観察を行った結果に、全員が絶句した。
 夥しい数のゴブリン、ゴブリン、ゴブリン。
 見える範囲だけでも数十匹に及ぶゴブリンが、暗闇に隠れ潜んでいたのだ。
「誘導……」
 あからさまな灯り、いかにもな親玉に視線を集中させ、周りへの警戒を薄くする。そして知らずに突入でもしようものならば周りの伏兵こそが本命の剣となって相手を討つ。そういう作戦なのだろう。

 群れのリーダーである彼は、新鮮な人の脳髄をすすりながらほくそ笑んでいた。
 獲物が自分からやってきた、と。
 彼は食事に夢中になってなどいなかったのだ。
 他の同族ならいざしらず、彼は欲求にかまけて侵入者を忘れるようなことはしない。
 ゴブリンは基本臆病で考えなしなものだが、彼は違った。幾度も幾度も旅人や冒険者を自らの奸計によって打倒し、食らってきたのだ。
『人族なぞ何するものぞ』
 自信を裏打ちする人狩りの経験と自負が在った。
 人間が自分たちを侮り舐めてかかる事すら彼は熟知していた。そして同時に、同族になんら期待をしていなかった。
 前の部屋に配置した連中では侵入者を止められない。洞窟全体を揺るがすような振動を感じたときにその予想は確信へといたった。
 だから策をうった。
 わざわざ自分が通路から暴露するような場所に座っているのも、彼の(一族の中では)図抜けた智謀によるもの。
 まず侵入者は奇襲をかけてくるだろう。そんなものはわかりきっている。
 そこで1発当たったふりでもしてやれば、喜び勇んで自分の首をとりに突っ込んでくる。
 人間とはそういう野蛮で愚鈍な生き物だ。
 中央まで入ったら、後は闇の中に忍ばせた戦奴どもで包囲して嬲りものにしてやろう。
 もしくは先日狩ってきた人の雌をつかってもいい。
 人間は同族を盾に取られると必ず一拍は動きが止まる。幾度にも及ぶ冒険者達との戦いをこの作戦でくぐり抜けてきた。
 完璧だ。
 彼はもう一度笑った。

 闇を切り裂いて走ったのは灼熱の火線。片桐の【赤壁乃業火】だ。圧倒的な暴力を内包したエネルギー砲は鍋、ではなくその火元に突き刺さって爆発を起こした。
 岩が爆散し、高速で飛んだ飛礫が潜んでいたゴブリンを打ち据える。
 鍋が割れ、中身をぶちまけ火を消した。
 闇が部屋を満たす。
 暗闇をユングフラウの【トイフェルスシュピース】が飛ぶ。狙いはゴブリンキングの目。
 急な爆発と暗闇にあっても、ゴブリンキングの動きは水際立ったものだった。
 虚空から掴みだしたかのようにしてゴブリンを自分の盾に。
「GYAAAA!」
 悲鳴は盾にされた哀れなゴブリンか、それともゴブリンキングのものか。
 ゴブリンキングは攻撃に驚いたかのようにして玉座から転げ落ち、裏へと這って逃げる。
 日月はその間に入り口両脇の壁を爆散せしめる。
 岩肌と共に、そこに潜んでいたゴブリンが肉片となって散った。
 広がった視界。さらなるゴブリンが見えた。
「伏兵! 全周!」
「罠なし、村人見えず、なの!」
 先駆けとして出た青葉と日月が報告すれば、
「引っ剥がしてやる」
「お任せを」
 鹿忍の【影雨】が、トリテレイアの銃火器が吠え、端から親衛隊を粉微塵にしていく。
 足跡と数が合わない理由はこれだったのだ。
 ゴブリンキングは何らかの手段でゴブリンを量産する手を持っている。
 おそらく、召喚。
 永続しない類のものだから外に略奪や斥候に出すには向かなかったのだろう。
 だがこと防衛戦に置いてこの能力は破格だった。
 ゴブリンの数は多い。10や20ではきかない。100はくだらないのではなかろうか。
 囲まれていたら猟兵たちとて苦戦は必至だったろう。
 けれど、こうして端から切り崩していく分には何ら恐ろしくもなんともない。
 数が多い分1体1体は脆弱だった。
 銃弾1発、武器で一閃すればガラス細工のように脆く散るのだ。
 地形もまた猟兵達に有利に働いた。
 下がれば通路。一度に通れる人数はゴブリンとて10もいかない。
 守るに易い。
「威力度外視、ばら撒いて!」
「心得た!」
 水際立った活躍をしたのは鹿忍とユングフラウのダガーと鉄杭だろう。
 夥しい数のそれらは面白いように雑兵をなぎ払い、駆逐していく。
 まるでオセロの有効打のように、バタバタとゴブリンが倒れ伏し骸を晒す。
 あるものは急所を打たれて。またあるものは同族に盾にされて全身を針鼠のようにして。
 阿鼻叫喚とは正にこのこと。
 対集団において彼ら2人の技は最適解だった。

 ゴブリンキングは自身の見込み違いに気づいた。
 侵入者はただの冒険者ではない。今まで出会った事も無い化け物達だった。
 逃げなければ。
 切り替えは早い。
 彼はもう一度無数のゴブリンを召喚して盾とすると、この状況を打破する一手を探して視線を彷徨わせ。

「人質!」
 それに真っ先に気がついたのは日月だった。
 姑息な敵がこういう状況になったらどうするか。彼女は完璧に予測し、ゴブリンキングの動向に注意を払っていた。
 日月が疾走る。一拍遅れて青葉も追随。
 彼女たちは喚く雑兵など無視して跳ぶ。肩を、頭を踏み台に、飛び石を渡るようにしてゴブリンキングへと迫る。
「食べ物作れる人は死んでも助けろってじいやが言ってた!」
「……」
 青葉が横で苦笑し何か呟いたように日月には見えた。
「なんて?」
 問答をしている暇もない。2人を行かすまいと下からゴブリン達の手が伸びる。
 若い女だ。どこから喰らおう。
 俺は耳が良い。
 俺は鼻が。
 俺はあの柔らかそうな腿を貰おう。
 下卑た鳴き声は、ゴブリンの言語を知らずとも意味がわかる気がした。
「援護頼みます!」
「花道を作るのも騎士の役目」
 トリテレイアの鉄火が吠えれば、再度ゴブリン達が蜂の巣になり霧散する。
 火力が突出した2人の援護に裂かれたぶん、ゴブリンが後衛へも殺到するが。
「はっきり見えずとも、それだけ足音を立てれば!」
 一閃。
 片桐が縦横無尽に剣を振るって仲間を守る。
 
 もはや雑兵はほぼ壊滅し、ゴブリンキングの前に2人の少女が迫っていた。
 だが人質は未だゴブリンキングの手中。彼が村人を盾にしようとしたその時。
「させません」
 腕が、動かない。
 ゴブリンキングが驚愕と共に見れば。
 腕。
 機械で出来た腕が、ゴブリンキングの腕を抑えつけ、雑巾を絞る用に捻り切っていた。
 トリテレイアの奥の手、ならぬ隠し腕だ。
 すかさず青葉が人質を救助。その場から離脱する。
(人質は二の次。……だけど助けられるなら、ね)
 悲壮な覚悟を決めていた彼女は、その決断を下さなくて済んだことに胸中で安堵していた。
「さあて、姑息オブ姑息まん、ふぃにっしゅの時間なの」
 きゅい。
 最後の瞬間、キングが声ならぬ声を上げて。
「ぶっつぶれろおおお!」
 日月の【裏破牙】が、その脳天から爪先まで、一瞬で潰しきった。


 ゴブリンキングが滅すると、残り少なくなっていたゴブリン達は霧が晴れるように霧散した。
 残ったのはひっくり返った鍋と、その中身である人の一部。闇の中に転がっていた無数の人の残骸。おそらく旅人や他の村の犠牲者だろう。
 そして。
「……ぁあ、あ」
 心神喪失した女性が、1人。
 遅かったのだ。異形の化け物たちに弄ばれて、夫と子供達を目の前で解体、調理されて、彼女の精神は壊れてしまっていた。
 誰もがそうなっているだろうと覚悟していた。それでも、痛ましいことに変わりはない。
 トリテレイアは彼女にフードを被せて抱えあげる。
 ゴブリンの駆除と村人の救助。依頼は果たされた。ここから先は彼女の縁者達が、どうするか決めるべきだろう。いくら猟兵といえど、心の傷を癒やす術は持たないのだから。
 帰り支度を始める中、1人単独行動を取っていた青葉がそれを見つけた。
 隠し部屋。中に居たのは金銀財宝などではなく。
「やっぱり。……子供」
 戦っていたゴブリンより二回り以上小さい。体に比して頭と目が大きいのは子供の特徴だ。どんな生物でも幼い頃は可愛いもの。ましてや怯えに目を見開いて小刻みに震えていれば、なおさら庇護欲を誘う。
 けれど、青葉は惑わない。
 青葉は得物を握り直して、他の猟兵に見咎められるより早く彼らを一息に殺し尽くした。


『ゴブリンが低能であると真に見下せる人物が果たしてどれほど居るだろうか。
 私は少なくとも彼らを見下すことは出来ないが、大半の者が彼らを自分より劣っていると見なす。
 彼らは口をそろえてこういうだろう。
「我々には道具を作り出す知恵がある。歌や踊りといった文化的な分野でも発展している。それに比べて奴らはどうだ。緑色をした猿ではないか」
 と。
 まるで自分でそれらの発明をしたかのような論調だが、そういう人物に限って何も生み出しては居ないのだ。
 精々田畑を耕すか、金勘定をするか、もしくは国を動かすか、その程度だろう。
 誰かが発明した農耕、商売、政のやり方だけ学んで、そのままなんの発明も無くこなす。そんな者たちにゴブリンたちの知能を笑えるだろうか。
 先人の知識という下駄を履いて、素足の者を見下すがごとき浅薄な所業に私は恥ずかしさと、焦りを覚える。故に、私は彼らに警鐘を鳴らすために筆を取った。
(中略)
 ゴブリンに文字というものはない。
 故に、彼らは体験や知見、ひらめきを口承以外で同族に伝えることができない。
 それはどういうことか。
 知識の醸造がなされないということだ。
 人類は急に魔法を使えるようになっただろうか。急に馬車を作れただろうか。風や水の力を使って臼を回そうなどと思っただろうか。
 答えは否だ。
 木材の加工技術、馬の調教の仕方、車輪と車道の発明と普及、その他諸々の書ききれないほどの先人の発明の結晶が馬車なのだ。
 100、1000、いや、もっと長い長い年月を欠けて1つ1つ積み重ねた発明達の上に我々は立っている。
 文字という形で知識を後世へと手渡すことが出来たからこそ人類はここまで発展してこられたのだ。
 けして1つの思いつきで風車ができたわけではない。無数の先人たちの発明の上で風車は回るのだ。
 だがゴブリン達は違う。
 どれだけ優れた思いつきも、知識も、ほぼ一代で終わりを告げる。人間に滅ぼされるからだ。
 生き延びて年月を重ねたゴブリンが手強いのも、経験の積み重ねの差が他の同種より多いからだ。
 彼らだって生まれたばかりはただのゴブリンだった。
 故に私は警告する。
 白だか黒だか、肌色をしたゴブリンたちよ。もしくは裸の猿どもよ。
 お前たちと緑のゴブリンに差などないのだ。
 道具を使い同族間で共通の言語を操り、罠を使えるほどの知能が有る生物をバカ者だなどと侮るな。それは自分を嗤うようなものだ。

 緑のゴブリン達に経験を積ませるな。
 緑のゴブリン達に文字を教えるな。
 緑のゴブリン達に発展を許すな。
 でなければ、いつか緑色のゴブリン達は風車を開発し、魔法を洗練させ、馬車を作り、火薬の仕組みを理解して、我々肌色のゴブリンを駆逐しにくることだろう』
 とあるアックス&ウィザードの碩学者の手稿より抜粋
片桐・公明
【SPD】(指揮官ありの群衆相手。相手はこちらに気づいていない。定石は狙撃による頭つぶしだけど今の装備だと火力難があるかしら。それなら)

自身の中に使っている火薬を詰めた爆弾を鍋の火をめがけて投げ入れる。
爆発すれば当然パニックは起こる。鍋の中身がかかって火傷する個体もいるかもしれない。
そのタイミングを狙ってUCで攻撃。手早く一気に焼き払う。

(絡み、アドリブ歓迎です。)


青葉・まどか
私たちの目的はゴブリンの掃討。
人命救助は、二の次。攫われた女性が盾として扱われる様なら、止めをさします。

こちらに気付いていない、なんてことはないでしょうね。
ダガーの投擲で暗殺を仕掛けて状況を動かす。仲間の案が良ければ、そちらを実行。

罠や伏兵に注意。視力・暗視・罠使い・第六感を活用して周囲を観察。
周囲の仲間との連携・フォローを心掛ける。

敵の攻撃を視力で見切り、可能ならカウンター。

残像のフェイントからシーブズ・ギャンビットで早業の2回攻撃。

戦奴は範囲攻撃で退場して貰う。

ナイトとメイジには武器落としを狙い、攻撃を妨害。

親玉にスマフォのフラッシュで目潰し。

広場の奥にゴブリンの子供がいるなら始末します。


フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

【古城】で行動

女帝たる我の前で王冠を戴くとは良い度胸ではないか、下郎
そのふざけた王冠を払い落とし、頭蓋に詰まった肥溜めの中身にも劣る汚泥を撒き散らしてやる…!

この期に及んで食欲を優先する愚物の極み、利用させてもらうぞ
接近せず、暗視を活かしUC:トイフェルスシュピースで奴の目の近辺を狙い撃つ
視覚を潰し、貫通した杭で玉座に縫い止められるか試してみよう
召喚された奴隷はUCで薙ぎ払い殲滅する
メイジやナイトが召喚されている場合、黒の弔銃で愚物の王に鉛弾を見舞おう
配下が消えれば、他の者も動き易くなる筈だ
妻の姿は見えぬが…別所で慰み者になっているのかもしれぬな
戦闘後は一応捜索しておく

※アドリブ歓迎


トリテレイア・ゼロナイン
【古城】で参加
さて、緑の王に拝謁する気は微塵もありません、押し掛け強盗と参りましょう

「暗視」で周囲の確認、伏兵や生存者の有無を見極めます
奇襲の一撃はフォルター様に任せ、その後召喚される取り巻きの排除と足止めに努めます
格納銃器を「なぎ払う」ように連射、奴隷ゴブリンを減らしつつ、脚部スラスターを点火して「スライディング」し、ナイトとメイジから仲間を「かばい」ます
接敵するまえに「怪力」で鍋を掴み、中身をナイトにぶちまけましょう
死者への尊厳は後回しです
その後「武器受け」「盾受け」で戦いつつ機を「見切り」隠し腕でキングを攻撃します

…もし女性が救われても彼女の心はすでに…いえ、私は為すべきを為すだけです…


鹿忍・由紀
俺は今回も後衛で動くよ。「目立たない」でまずは部屋に入らず戦闘が始まったら支援射撃を行うつもり。
部屋全体が明るいわけじゃないみたいだから引き続き「暗視」を使って部屋内を見渡して確認。
他の猟兵達がゴブリンキングを狙いやすいようにゴブリン親衛隊と戦奴の足止めと排除をメインで。
遠距離からUC「影雨」で取り巻きを引っ剥がしてやる。
親衛隊はキリが無さそうだからほどほどに、戦奴は「二回攻撃」で出来るだけ確実に消滅を狙っていく。
地味な仕事だけど他の猟兵がゴブリンキングを倒してくれれば仕事としては成功だからね。
頼もしい猟兵達が揃ってて助かるな。隙を作るから、見逃さないように任せたよ。


日月・わらび
おかしい
マンハントに慣れてて
ここで地形攻撃受けてこれ
親玉は自分を囮にしてそうだの
他に知能高い個体いなくて悪知恵の根元だから
騙し討ち位しそうだの

突入ー!直前に
広間に出る通路の横を
二回攻撃怪力鎧砕き裏破牙を左右にどっかーんして拡張
そのまま罠は壁破壊の結果と暗視で看破して
最寄りの敵をぶっとばすよ

後は表情見ながら裏破牙で逃げ道をきゅいきゅい

雑魚か親玉の視線が猟兵から外れたら二回攻撃
視線の先に回り込み
裏破牙で地形を変えてでも行く手を阻止
ゲスの余裕が消えた瞬間どうするかを読めばその先が人質の場所!

食べ物作れる人は死んでも助けろってじいやが言ってた
生きる理由がなさそうってだけで助けない理由にはならないんだの



「おかしい」
 最初にその異常に気がついたのは日月だった。
「どういうことだ?」
「日月様?」
 猟兵たちは首を傾げて彼女を見る。
「アレは、なんであんなところに居るの?」
 日月が言うにはこうだ。
 マンハントに慣れている者が、攻め入られているのに堂々と通路から見える位置に『どうぞ襲ってください』とふんぞりかえっている。
 加えて前の部屋で局所崩落まで起こしているのに、悠長に食事などするものだろうかという疑問。
「アレは自分を囮にしてそうだの」
 簡潔に述べられたその事実に、猟兵達が顔を引き締めた。
 伏兵と罠程度の警戒はしていた。だが、あのゴブリンそのものが餌とは誰も思いつかなかった。
 本当に此方に気がついていないのか、確認する事を怠っていた。
「念には念を入れようか」
 鹿忍の声に全員が頷いた。 
 慎重に再度斥候と観察を行った結果に、全員が絶句した。
 夥しい数のゴブリン、ゴブリン、ゴブリン。
 見える範囲だけでも数十匹に及ぶゴブリンが、暗闇に隠れ潜んでいたのだ。
「誘導……」
 あからさまな灯り、いかにもな親玉に視線を集中させ、周りへの警戒を薄くする。そして知らずに突入でもしようものならば周りの伏兵こそが本命の剣となって相手を討つ。そういう作戦なのだろう。

 群れのリーダーである彼は、新鮮な人の脳髄をすすりながらほくそ笑んでいた。
 獲物が自分からやってきた、と。
 彼は食事に夢中になってなどいなかったのだ。
 他の同族ならいざしらず、彼は欲求にかまけて侵入者を忘れるようなことはしない。
 ゴブリンは基本臆病で考えなしなものだが、彼は違った。幾度も幾度も旅人や冒険者を自らの奸計によって打倒し、食らってきたのだ。
『人族なぞ何するものぞ』
 自信を裏打ちする人狩りの経験と自負が在った。
 人間が自分たちを侮り舐めてかかる事すら彼は熟知していた。そして同時に、同族になんら期待をしていなかった。
 前の部屋に配置した連中では侵入者を止められない。洞窟全体を揺るがすような振動を感じたときにその予想は確信へといたった。
 だから策をうった。
 わざわざ自分が通路から暴露するような場所に座っているのも、彼の(一族の中では)図抜けた智謀によるもの。
 まず侵入者は奇襲をかけてくるだろう。そんなものはわかりきっている。
 そこで1発当たったふりでもしてやれば、喜び勇んで自分の首をとりに突っ込んでくる。
 人間とはそういう野蛮で愚鈍な生き物だ。
 中央まで入ったら、後は闇の中に忍ばせた戦奴どもで包囲して嬲りものにしてやろう。
 もしくは先日狩ってきた人の雌をつかってもいい。
 人間は同族を盾に取られると必ず一拍は動きが止まる。幾度にも及ぶ冒険者達との戦いをこの作戦でくぐり抜けてきた。
 完璧だ。
 彼はもう一度笑った。

 闇を切り裂いて走ったのは灼熱の火線。片桐の【赤壁乃業火】だ。圧倒的な暴力を内包したエネルギー砲は鍋、ではなくその火元に突き刺さって爆発を起こした。
 岩が爆散し、高速で飛んだ飛礫が潜んでいたゴブリンを打ち据える。
 鍋が割れ、中身をぶちまけ火を消した。
 闇が部屋を満たす。
 暗闇をユングフラウの【トイフェルスシュピース】が飛ぶ。狙いはゴブリンキングの目。
 急な爆発と暗闇にあっても、ゴブリンキングの動きは水際立ったものだった。
 虚空から掴みだしたかのようにしてゴブリンを自分の盾に。
「GYAAAA!」
 悲鳴は盾にされた哀れなゴブリンか、それともゴブリンキングのものか。
 ゴブリンキングは攻撃に驚いたかのようにして玉座から転げ落ち、裏へと這って逃げる。
 日月はその間に入り口両脇の壁を爆散せしめる。
 岩肌と共に、そこに潜んでいたゴブリンが肉片となって散った。
 広がった視界。さらなるゴブリンが見えた。
「伏兵! 全周!」
「罠なし、村人見えず、なの!」
 先駆けとして出た青葉と日月が報告すれば、
「引っ剥がしてやる」
「お任せを」
 鹿忍の【影雨】が、トリテレイアの銃火器が吠え、端から親衛隊を粉微塵にしていく。
 足跡と数が合わない理由はこれだったのだ。
 ゴブリンキングは何らかの手段でゴブリンを量産する手を持っている。
 おそらく、召喚。
 永続しない類のものだから外に略奪や斥候に出すには向かなかったのだろう。
 だがこと防衛戦に置いてこの能力は破格だった。
 ゴブリンの数は多い。10や20ではきかない。100はくだらないのではなかろうか。
 囲まれていたら猟兵たちとて苦戦は必至だったろう。
 けれど、こうして端から切り崩していく分には何ら恐ろしくもなんともない。
 数が多い分1体1体は脆弱だった。
 銃弾1発、武器で一閃すればガラス細工のように脆く散るのだ。
 地形もまた猟兵達に有利に働いた。
 下がれば通路。一度に通れる人数はゴブリンとて10もいかない。
 守るに易い。
「威力度外視、ばら撒いて!」
「心得た!」
 水際立った活躍をしたのは鹿忍とユングフラウのダガーと鉄杭だろう。
 夥しい数のそれらは面白いように雑兵をなぎ払い、駆逐していく。
 まるでオセロの有効打のように、バタバタとゴブリンが倒れ伏し骸を晒す。
 あるものは急所を打たれて。またあるものは同族に盾にされて全身を針鼠のようにして。
 阿鼻叫喚とは正にこのこと。
 対集団において彼ら2人の技は最適解だった。

 ゴブリンキングは自身の見込み違いに気づいた。
 侵入者はただの冒険者ではない。今まで出会った事も無い化け物達だった。
 逃げなければ。
 切り替えは早い。
 彼はもう一度無数のゴブリンを召喚して盾とすると、この状況を打破する一手を探して視線を彷徨わせ。

「人質!」
 それに真っ先に気がついたのは日月だった。
 姑息な敵がこういう状況になったらどうするか。彼女は完璧に予測し、ゴブリンキングの動向に注意を払っていた。
 日月が疾走る。一拍遅れて青葉も追随。
 彼女たちは喚く雑兵など無視して跳ぶ。肩を、頭を踏み台に、飛び石を渡るようにしてゴブリンキングへと迫る。
「食べ物作れる人は死んでも助けろってじいやが言ってた!」
「……」
 青葉が横で苦笑し何か呟いたように日月には見えた。
「なんて?」
 問答をしている暇もない。2人を行かすまいと下からゴブリン達の手が伸びる。
 若い女だ。どこから喰らおう。
 俺は耳が良い。
 俺は鼻が。
 俺はあの柔らかそうな腿を貰おう。
 下卑た鳴き声は、ゴブリンの言語を知らずとも意味がわかる気がした。
「援護頼みます!」
「花道を作るのも騎士の役目」
 トリテレイアの鉄火が吠えれば、再度ゴブリン達が蜂の巣になり霧散する。
 火力が突出した2人の援護に裂かれたぶん、ゴブリンが後衛へも殺到するが。
「はっきり見えずとも、それだけ足音を立てれば!」
 一閃。
 片桐が縦横無尽に剣を振るって仲間を守る。
 
 もはや雑兵はほぼ壊滅し、ゴブリンキングの前に2人の少女が迫っていた。
 だが人質は未だゴブリンキングの手中。彼が村人を盾にしようとしたその時。
「させません」
 腕が、動かない。
 ゴブリンキングが驚愕と共に見れば。
 腕。
 機械で出来た腕が、ゴブリンキングの腕を抑えつけ、雑巾を絞る用に捻り切っていた。
 トリテレイアの奥の手、ならぬ隠し腕だ。
 すかさず青葉が人質を救助。その場から離脱する。
(人質は二の次。……だけど助けられるなら、ね)
 悲壮な覚悟を決めていた彼女は、その決断を下さなくて済んだことに胸中で安堵していた。
「さあて、姑息オブ姑息まん、ふぃにっしゅの時間なの」
 きゅい。
 最後の瞬間、キングが声ならぬ声を上げて。
「ぶっつぶれろおおお!」
 日月の【裏破牙】が、その脳天から爪先まで、一瞬で潰しきった。


 ゴブリンキングが滅すると、残り少なくなっていたゴブリン達は霧が晴れるように霧散した。
 残ったのはひっくり返った鍋と、その中身である人の一部。闇の中に転がっていた無数の人の残骸。おそらく旅人や他の村の犠牲者だろう。
 そして。
「……ぁあ、あ」
 心神喪失した女性が、1人。
 遅かったのだ。異形の化け物たちに弄ばれて、夫と子供達を目の前で解体、調理されて、彼女の精神は壊れてしまっていた。
 誰もがそうなっているだろうと覚悟していた。それでも、痛ましいことに変わりはない。
 トリテレイアは彼女にフードを被せて抱えあげる。
 ゴブリンの駆除と村人の救助。依頼は果たされた。ここから先は彼女の縁者達が、どうするか決めるべきだろう。いくら猟兵といえど、心の傷を癒やす術は持たないのだから。
 帰り支度を始める中、1人単独行動を取っていた青葉がそれを見つけた。
 隠し部屋。中に居たのは金銀財宝などではなく。
「やっぱり。……子供」
 戦っていたゴブリンより二回り以上小さい。体に比して頭と目が大きいのは子供の特徴だ。どんな生物でも幼い頃は可愛いもの。ましてや怯えに目を見開いて小刻みに震えていれば、なおさら庇護欲を誘う。
 けれど、青葉は惑わない。
 青葉は得物を握り直して、他の猟兵に見咎められるより早く彼らを一息に殺し尽くした。


『ゴブリンが低能であると真に見下せる人物が果たしてどれほど居るだろうか。
 私は少なくとも彼らを見下すことは出来ないが、大半の者が彼らを自分より劣っていると見なす。
 彼らは口をそろえてこういうだろう。
「我々には道具を作り出す知恵がある。歌や踊りといった文化的な分野でも発展している。それに比べて奴らはどうだ。緑色をした猿ではないか」
 と。
 まるで自分でそれらの発明をしたかのような論調だが、そういう人物に限って何も生み出しては居ないのだ。
 精々田畑を耕すか、金勘定をするか、もしくは国を動かすか、その程度だろう。
 誰かが発明した農耕、商売、政のやり方だけ学んで、そのままなんの発明も無くこなす。そんな者たちにゴブリンたちの知能を笑えるだろうか。
 先人の知識という下駄を履いて、素足の者を見下すがごとき浅薄な所業に私は恥ずかしさと、焦りを覚える。故に、私は彼らに警鐘を鳴らすために筆を取った。
(中略)
 ゴブリンに文字というものはない。
 故に、彼らは体験や知見、ひらめきを口承以外で同族に伝えることができない。
 それはどういうことか。
 知識の醸造がなされないということだ。
 人類は急に魔法を使えるようになっただろうか。急に馬車を作れただろうか。風や水の力を使って臼を回そうなどと思っただろうか。
 答えは否だ。
 木材の加工技術、馬の調教の仕方、車輪と車道の発明と普及、その他諸々の書ききれないほどの先人の発明の結晶が馬車なのだ。
 100、1000、いや、もっと長い長い年月を欠けて1つ1つ積み重ねた発明達の上に我々は立っている。
 文字という形で知識を後世へと手渡すことが出来たからこそ人類はここまで発展してこられたのだ。
 けして1つの思いつきで風車ができたわけではない。無数の先人たちの発明の上で風車は回るのだ。
 だがゴブリン達は違う。
 どれだけ優れた思いつきも、知識も、ほぼ一代で終わりを告げる。人間に滅ぼされるからだ。
 生き延びて年月を重ねたゴブリンが手強いのも、経験の積み重ねの差が他の同種より多いからだ。
 彼らだって生まれたばかりはただのゴブリンだった。
 故に私は警告する。
 白だか黒だか、肌色をしたゴブリンたちよ。もしくは裸の猿どもよ。
 お前たちと緑のゴブリンに差などないのだ。
 道具を使い同族間で共通の言語を操り、罠を使えるほどの知能が有る生物をバカ者だなどと侮るな。それは自分を嗤うようなものだ。

 緑のゴブリン達に経験を積ませるな。
 緑のゴブリン達に文字を教えるな。
 緑のゴブリン達に発展を許すな。
 でなければ、いつか緑色のゴブリン達は風車を開発し、魔法を洗練させ、馬車を作り、火薬の仕組みを理解して、我々肌色のゴブリンを駆逐しにくることだろう』
 とあるアックス&ウィザードの碩学者の手稿より抜粋

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月19日


挿絵イラスト