女幹部様はチョコレートがお好き
●怪人だってチョコが欲しい
新宿駅、西口地下コンコース。
世界最多の乗降客数を誇り、朝晩のラッシュアワー時には凄まじい人数の人でごった返す東京の一大ターミナルも、平日の昼間とあれば穏やかなものである。
駅周辺に居を構えるオフィスから吐き出されたサラリーマン、たまの平日休みを満喫する仕事人達、バレンタインの時期限定で販売されるチョコレート目当てに、デパートに並ぶうら若き乙女たち。
そんな中に、どうみても異質な集団がいた。
「606」と刻印された装飾のないプレートアーマーを身に付けた、兵士と思しき連中が10人程。その彼らに向かい合って立つ、軍帽にボレロ丈のジャケット、ホットパンツにロングブーツという扇情的な服装の女性が一人。
兵士たちに向かって扇情的な女性が鋭い口調で言い放つ。
「いい、お前達!今年の目標はフェア限定新作チョコレート全買い占めよ!」
「「アイ、マム!!」」
「全てのチョコレートは誰のもの?言ってごらんなさい!」
「「全てのチョコレートは我らがボンボン様のものです!!」」
「分かってるならよし!今すぐにこのデパートの催事場に向かって、チョコレートを買い占めなさい!」
「「アイ、マム!!」」
ビシッと敬礼した兵士たちは、ガシャンガシャン、と新宿駅構内に金属音を響かせながらエレベーターへと歩みを進める。
それを見送った女性は突然恥ずかしそうに顔を赤らめ、頬を両手で挟みながらその場に蹲った。
「あ~~はっず!なんで私こんな格好してこんなところであんな大声出さなきゃならないわけ!?
私、買い占めなんてなんで命令しようと思ったんだろう……買いたいのは事実だけど少しでいいのに……気持ちわる……」
●男性だってバレンタインフェアに行きたい
「君達、そろそろバレンタインデーなわけだが」
ちょっとお高そうな生チョコレートを食べながら、イグナーツ・シュテークマン(炸裂する指弾・f00843)はそう切り出した。
そのチョコレートはなんだ、貰えないやつらに対する当てつけか、このイケメンめ、という怨嗟の籠もった眼差しを感じ取ってか、彼はゆるりと首を振った。
「勘違いするな、これは俺が自分で向けて買ったものだ。毎年の楽しみなんだぞ」
最早隠してもいない程度に甘党なこのダンピールは、そう言いながらまた一つ、柔らかいチョコレートを食んだ。
して、勿論彼は自分がチョコレートを食べる姿を見せつけるために、こうしてグリモアベースに立っているわけではない。事件が予知されたのだ。
「場所はUDCアース、東京都新宿区新宿。平日の昼間、駅前に立つデパートの催事場で行われるバレンタインフェアが、オブリビオンの襲撃を受ける」
平日の昼間とはいえ、新宿の駅前。バレンタイン戦線も佳境に入り、催事場のイベントに集まる人間も多いことだろう。
そこを襲撃されたら、イベント運営側も参加者側もたまったものではない。
故に、その襲撃を阻止してくれというのが、彼の持ち込んだ依頼だ。
「件のデパートは、駅舎と一体化している形でな。地下のコンコースとデパートの入り口が一体化している。
連中は律義にも、その地下のコンコースからエレベーターで催事場まで向かうつもりでいるらしい。
それ故、地下コンコースで決起している、その最中を襲撃するのがいいだろう」
敵の陣営は、鎧を着た兵士姿の男性が10人ほどと、女幹部らしき扇情的な服装をした女性が1人。
イグナーツの見立てによると、どうやらいずれもオブリビオンの寄生や洗脳によって、悪の軍団の一員に仕立て上げられた一般人らしい。
オブリビオンの力の元を破壊するなり、かけられた洗脳から解き放つことが出来れば、一般人を殺すことなく彼らを無力化できるだろう。
「オブリビオンに仕立て上げられた一般人とは言え、寄生や洗脳によって戦闘力は然るべきグレードまで強化されている。
助けることばかりに注力しすぎて、自身の身を危険に晒すことが無いようにしてくれ」
彼らを助けるなり始末するなりした後は、件のバレンタインフェアを楽しんでくるといい、と言いながら、イグナーツはフェアのパンフレットを差し出した。
入場は無料、出展するブランドは100以上。お求めやすい一人用からたくさんのチョコレートが入ったシェア用まで、より取り見取りだ。
ブランドも日常的に目にする機会のあるようなところから、バレンタインフェアの時期にしか出店しないメーカー、さらには日本初上陸の珍しいメーカーまで、多岐に渡る。
鎧に寄生された一般人はそうでもなさそうだが、洗脳された女幹部はチョコレートフェアに興味があるようだ。助けられたら、気にかけてみるのもいいだろう。
「それでは、君達の検討を祈る。頑張ってきてくれ」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
チョコレート大好きなので、毎年バレンタインの時期は楽しみです。
ですが今年は予定よりもチョコレートを買いすぎてしまいました。
がっでむ。
●目標
・悪の女幹部×1体の撃破、または無力化。
※撃破されなかった場合、悪の女幹部は一般人女性に戻ります。
●舞台・戦場
(第1章)
JR・京王線・小田急線新宿駅の西口地下コンコースです。
平日の昼間ということで人でごった返してはいないですが、それなりに人がいます。
新宿駅西口広場イベントコーナーや小田急線の改札外エリアなどが、ある程度戦いやすいかと思われます。
デビルズナンバーへいしの本体は鎧で、着ている人間は寄生された一般人です。
鎧だけを破壊することが出来れば、彼らは一般人に戻って戦場から去ります。
(第2章)
第1章と同じく、西口地下コンコースです。
悪の女幹部は第2章が始まるまで、引っ込んで姿を現しません。
悪の女幹部を何かしらの方法で洗脳から解き放てれば、無力化することが出来ます。
(第3章)
新宿駅西口前にある某デパートの催事場です。
世界各地のチョコレートブランドが、有名無名を問わず沢山出展しています。
日本にフランス、ドイツにイタリア、ベルギー、スイス、などなど。
イートインではソフトクリームやジェラート、変わり種ではチョコレートピザなど、様々なチョコレートスイーツが楽しめます。
悪の女幹部が一般人女性に戻った場合、主に有名ブランドのチョコレートをメインに買う予定を立てています。
それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『六零六『デビルズナンバーへいし』』
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POW : 悪魔の長剣(デビルロングソード)
【ロングソードによる攻撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 悪魔の連携(デビルコンビネーション)
【一体目の「へいし」の攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【二体目の「へいし」の攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 悪魔の武器(デビルウェポン)
自身の装備武器に【悪魔の力】を搭載し、破壊力を増加する。
👑11
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北条・優希斗
他者との連携・声掛けOK
……貰うは良いが、お返しとか大変になるんじゃないかなあ
まあ、他人に迷惑を掛けるのは流石に看過できないな
兵士達の寄生体を引き剥がすのを狙うよ
西口改札に陣取り地形利用を使って奇襲に最適な位置を陣取り、一般人に被害を与えぬよう、兵士を狙う
ユーベルコードは戦闘知識で寄生体を確実に破壊でき、且つ周囲に被害が及ばない状況で使用
それ以外はダッシュで接近、グラップル、二回攻撃で、鎧破壊を軸に戦う
それでは厳しそうなら月桂樹を使用
人傷沙汰で周囲の人に見られて騒ぎになるのはちょっとね
刀を抜くのは最終手段だ
回避は見切り、残像で標的をずらしながら行うよ
願わくば誰にも犠牲が出ないことを
マカ・ブランシェ
チョコレートはいつ食べても同じ味だと思うのだよ。
けれども皆がチョコレートに執着するのがバレンタイン……不思議な日なのだ。
戦場は現地の仲間達に合わせるのだよ。特に提案がなければ、イベントコーナーを推すのだよ。
ヒーローショーっぽく見えて誤魔化せるかもしれないし……バレンタインもショーくらいするのだろう?
◆戦闘
「へいし」の鎧だけを破れるように、相手の様子を見ながらクイックドロウで攻撃をしよう。
ダメージがあまり通らないようなら血統覚醒での底上げも考慮しておくのだ。
他の猟兵がいるなら咎力封じでのサポートに回るのだよ。
(連携、アドリブ歓迎です)
●そういえば兵士の鎧もチョコレート色ですね
東京都新宿区。JRと小田急線と京王線のコンコースが集中する、新宿駅西口の地下にて。
「いいことお前達!目的はこの上のデパート、11F催事場よ!そこで新作チョコレートを買い占めてくるの、分かった!?」
「「アイ、マム!!」」
春にはまだ早いですよ、立春こそ過ぎたけれど。と言いたくなるくらいに痛さ全開の連中が大声を張り上げていた。
道行くサラリーマンや若者が、関わり合いにならないようにと連中を避けてコンコースを通っていく。
その連中を柱の影から覗くようにして、マカ・ブランシェ(真白き地を往け・f02899)は不思議そうな表情を顔いっぱいに貼り付けていた。
「チョコレートはいつ食べても同じ味だと思うのだよ。けれども皆がチョコレートに執着するのがバレンタイン……不思議な日なのだ」
その隣に立って、同じように柱から顔を覗かせる北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)も首を捻る。
「……貰うは良いが、お返しとか大変になるんじゃないかなあ。まあ、他人に迷惑を掛けるのは流石に看過できないな」
きっとあの女幹部も、何らかの目的を持って催事場で開催されるバレンタインフェアに執着しているのだろう。
その想いを悪の秘密結社に悪用されて、へいしも一般人だったのが巻き込まれて。なんとも、不憫なことである。
「さぁ、お行き!」
「「アイ、マm……」」
「おーい、ヒーローショーをやるんならあっちのイベントスペースの方がいいと思うのだよ?」
びしっと敬礼して歩き出そうとしたそのタイミングに、如何にも不思議そうな顔をしてマカが声をかけた。
一斉にマカの方を向く女幹部と、兵士たち。どう見ても動揺しています本当にありがとうございます。
「んなっ、臆せずに話しかけてくる人がいるなんて想定外よ!?絶対に人から遠ざけられると思っていたのに!」
「いや……私としても直接声をかけるのは甚だ躊躇われたのだよ……」
非常に申し訳なさそうな表情をするマカに、女幹部は恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にしながら踵を返した。
「くっ、お前達!何としても目的を達成するのよ!私は後ろに下がっているから、デビルズナンバーの力を見せてやりなさい!」
「「アイ、マム!」」
女幹部の指示を受けて、二人の兵士がこちらに歩み出た。どうやら兵士を盾にして女幹部は安全な場所に退避する動きのようだ。
マカの愛銃でこのまま女幹部の背中を撃ってもいいのだけれど、それはそれでなんだか申し訳が無いので。
マカも踵を返して改札の方、広いスペースがある方へと駆けだした。その最中に優希斗にアイコンタクトを送ることも忘れない。
こちらに迫ってくる兵士の一体を引き付けて、マカは腰の熱線銃を抜いた。
「悪いけれど、早々に無力化させてもらうのだよ!」
超高速で引かれる引き金。一秒の間に、十数発の熱線がが一挙に放たれる。
その熱線は鎧の継ぎ目や兜の継ぎ目に殺到すると、一瞬で纏う者の身体から鎧を剥がしてみせた。
「……あ、あれ?何で俺、こんな所に……仕事に行こうとしていたはずなのに」
中から現れたスーツ姿のサラリーマンが、その場に立ちすくんで混乱を露にする。どうやら鎧を着ていた間の記憶はないらしい。
「ふむ、どうやら鎧を剥がすか壊すかすれば、中の一般人の洗脳は解けるようだな」
「単純だな、それ故にやりやすい」
もう一人の兵士がマカに向かって剣を振りかぶるその後ろ、柱の影から飛び出した優希斗が刀を抜いて斬りかかる。
刹那、目にも留まらぬほどの連続攻撃が鎧に襲い掛かった。
鎧を切り裂いて、しかし中にいる人間は傷つけないように。絶妙に力加減を調整した優希斗の刃は、ものの見事に鎧だけを寸断して見せた。
「あ……あ、ん?なんだこの……なんだこれ?」
鎧を剥がされ、これまた状況を飲み込めずに混乱する若い男性。
兵士の鎧から解放された二名の男性は、首を捻りながら新宿駅のコンコースから去っていくのだった。
大成功
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心象創造・空蝉
POWを選択
…奪うのではなく、ちゃんと買い占めるあたり、洗脳は不十分なんだろうな…非常にやりずらいが、仕方あるまい。愛と平和のためだ。
◆戦場は他の猟兵と合わせ、アイテムの魔弾拳銃、ヒプノシスガン【催眠術7、鎧砕き6、スナイパー2、だまし討ち2、クイックドロウ2、2回攻撃1】と、バウンドボディの伸縮性を利用した蹴りによる鎧の破壊、及び催眠による戦意喪失を狙う。相手の攻撃が当たった場合、アイテムのナノマシンドリンクボトルによる自動再生で治療する。(連携、アドリブ歓迎)
「奪うのではなく、ちゃんと買い占めるあたり、洗脳は不十分なんだろうな……」
地下コンコースから去っていく一般人を見て、心象創造・空蝉(接触者・f05647)は苦々しげに独り言ちた。
教団や悪の秘密結社がどこの所属であるにせよ、戦闘員である兵士たちや女幹部がきっちりとルールに則って購入しようとしているあたり、急ごしらえなのだろう。
故に空蝉は迷うことなく前に出た。
未だコンコース内でまごついている兵士たちめがけて、手にした魔弾拳銃・ヒプノシスガンの引き金を引く。
バウンドボディによって伸縮性を獲得し、猛スピードで兵士たちへと接近する空蝉の銃口は決してブレない。
しかして催眠と鎧砕きの力を併せ持つ弾丸は兵士二人の鎧を砕き、空蝉の蹴撃が更に一人の兵士の鎧を破ってみせた。
「あ……あ?なんでおれ、こんなところに……」
「えっ……おいこいつらなんなんだよ?やっべ怖ぇ……」
へいしの鎧の魔力から解放された一般人たちが、自身の置かれた状況に身震いしながらその場を立ち去っていく。
次々に鎧を壊され離脱していくへいし達に、残ったへいし達は困惑を隠せずにいた。
成功
🔵🔵🔴
メリー・アールイー
高級生チョコうらやましいじゃないか!
オブリビオンの洗脳?なんだい、叩けばなおるんかい?
チョコレート色の兵士っと…あ、あいつらだね
小田急線改札外エリアで発見した奴の相手をしよう
リピートモードでパワーアップ
Reと「フェイント」を交えながら接近
攻撃は針山クッションで「盾受け」して
「カウンター」のようにしつけ針を突き刺すよ
悪魔の連携?あたしたちの連携だって負けてないよっ
死角からの攻撃も「第六感」で察知
Reと操り合って鎧だけを壊そうね
中身まで「串刺し」にしないように気を付けて貫くさ
はいはい、お疲れさん
これ持っていい子でおかえり
洗脳から解放された元へいしへ
小さな義理チョコをぽいっと投げとくよ
アドリブ歓迎
「オブリビオンの洗脳?なんだい、叩けば直るんかい?」
「我々を一昔前の機械みたいに言うんじゃあない!!」
順調にその数を減らして、歯噛みする兵士の集団に、近くを通りがかったメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)の声が突き刺さった。
まるでアナログテレビか何かのような扱いに、憤慨するチョコレート色の鎧兜。
「ふふーん、おんぼろでないというなら捕まえてみな!」
「あっ、こらっ!」
兵士の手をひらりとかわし、メリーは小田急線の地下改札口の方へと駆けていく。
そのままおびき出された兵士は二体、メリーを両側から挟み撃ちにしようと、地下の柱を使って追い詰めにかかる。
しかし連携ならばメリーもひとかどの猟兵として知られた存在である。
Reを繰り、Reに自らを繰らせて力を増すは【リピートモード】。
一気にその速度を増したかと思いきや、メリーの身体がふわりと宙を舞った。
「はっ、な!?」
その小さな体に掴みかかろうとした兵士の両手が、フェイントに翻弄されて空を切る。
「あたしたちの連携だって負けてないよっ」
兵士の後方に降り立ったメリーの手で、しつけ針が翻った。
刹那のうちに、何百と突かれる兵士の鎧が、バラバラと音を立てて崩れていく。
「なっ……な、なんだこれ?」
「くっ、このガキ……!」
「はいはい、お疲れさん。それとあたしはガキって年齢じゃないよ」
鎧をはがされ困惑する仲間を助け出そうと、もう一体の兵士が駆け寄るも。
彼の眼前にメリーの姿は既になく、彼の背後にメリーが降り立った時には。
もう一人の兵士の鎧も、即座に砕かれ壊されたのだった。
「お、俺は一体何をしていたんだ……?」
「ま、災難に巻き込まれたってこったね。これ持っていい子でおかえり」
洗脳から解放されて立ちすくむ元兵士の一般人二人に、ぽいっと大袋入りの個包装チョコレートを一粒、手の中に握らせるメリーであった。
成功
🔵🔵🔴
秋月・充嘉
チョコチョコチョーコー。
はい、仕事はキチッとやるっすよー。
鎧が本体となっているなら下手に刃物系は難しそうっすね。なら、シャドウウェポンは戦闘棍にして鎧にだけダメージが行くようにするっすか。
そっちが二体で向かうならこっちも援軍を出させてもらうっすよ!
【己の影は良き相棒】で影の自分を出すっす。これで同数っすね。
あ、一般人を無事救出できたらちょーっとだけ品定めしていいっすか?いやほら、洗脳したけど戻ってこないことに不審感を持たされたらまずいじゃないっすか。
本音?連絡先交換してお近づきになりたい。
「チョコチョコチョーコー…、はいはい、仕事はキチッとやるっすよ」
秋月・充嘉(キマイラメカニカ・f01160)は誰に言うでもなくそう独り言ちながら、影の中から一本の棍を抜き取って構えた。
残った兵士は二人、その二人が一斉に自分へと向かってくるのを、充嘉はまっすぐ見据えた。
再び、彼の影がたぷん、と揺れると。そこから充嘉と同じ、獅子の体に竜の翼と尾を持った影が立ち上がった。
「へへっ、己の影はフォロー上手ってね!」
あちらが二人ならこちらも二人、充嘉とその影は同時に舗装された床を蹴った。
手にした戦闘棍を振るって振るって、鎧を叩くようにダメージを与えていく。
手にした剣を兵士が同時に取り落とすと。
パキン、と乾いた音を立てて、チョコレート色の鎧が砕け散った。
「あ、あれ……?俺、なんでこんなところで……」
「うーん?何だこいつら……俺は一体何を……」
「あ、大丈夫君達?頭とか痛くない、どこまで記憶残ってる?」
そう、自身が先程まで相対していた事実をおくびにも出さずに、親切に声をかける充嘉。その心の奥底にある「あわよくば連絡先を交換してお知り合いになりたい」という心持ちは極力隠したままで。
そうして、女幹部が身を隠している間に、兵士は全員鎧の洗脳から解放されて、各々の行くべきところへと散っていくのだった。
成功
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第2章 ボス戦
『悪の女幹部』
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POW : 今週の巨大化獣
【今週の巨大化獣 】の霊を召喚する。これは【パンチ】や【キック】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 戦闘員召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【悪の組織員 】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ : 悪の女幹部のおしおき
【剣 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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●現実はまるでハイカカオチョコレートのようにほろ苦く
「なっ……嫌な予感がしたから戻ってみれば、兵士が全員催事場に辿り着く前に片付けられているって、どういうこと!?」
女幹部は地下コンコースの真ん中で、握った拳をぷるぷると震わせながら、悔しげに声を張り上げた。
怒りのままに、腰にはいた剣を鞘から抜き放つ。
「もう我慢ならないわ、全てはボンボン様のため!お前たちを排除して、私自らチョコレートを買い占めてやるわ!」
北条・優希斗
仲間との連携・声掛けOK
(悪の女幹部の豊満な胸をチラ見しながら)……ボンボン様って、お前のことだと思っていたが……違うのか(何となく溜息を一つ)
まあ、チョコレートの買い占めで他の人々に迷惑を掛けさせる訳にはいかないよね
さて……お前に魅了されて、お前に付いてくる悪の組織員はどれ位居るんだろうな?
まあ……フック付きロープでそいつらを引っ掛けつつ、【範囲攻撃】による峰打ちで彼等を無力化しつつ、君にグラップルで殴りかかるだけだが
……操られているだけなんだろ? だったら正気を取り戻させるまでさ
【二回攻撃】、【フェイント】を使用して確実に敵に負傷を蓄積させる
防御は見切り、残像、オーラ防御で最小限に
心象創造・空蝉
SPDを選択
部下が戻らないことに、痺れを切らしたか。しかし幹部とはいえ、彼女も洗脳されているに過ぎない。なんとかして解かなければ。しかし…その格好はその、どうかと思うぞ。見てるこっちが恥ずかしくなる。
まずは幹部に対し、ダッシュによる接近を狙う。また戦闘員等が出てくるようなら、先程と同じ要領で凌ぐ。ある程度まで近づけたら、バウンドボディの伸縮による組み付きからの、アイテムUDCドライバーで、洗脳の元となるオブリビオンの吸収、あるいは位置の特定を狙う。こちらは元々流体だ。そう簡単には剥がせまい。
(連携、アドリブ歓迎)
●有名ブランドのチョコレートが食べたい
剣を構える女幹部の姿を見て、優希斗は大きく首を傾げた。
「ボンボン様って、お前のことだと思っていたが……違うのか」
「違うのよ!
ボンボン・ラ・ボンボニエール様は、私達『秘密結社ル・ショコラ』のトップに立つお方!私は彼の愛人の一人、プラリネ!よく覚えておきなさい!」
そう高らかに宣言して胸を張る女幹部・プラリネ。しかし優希斗の視線がある一点に向いていることに、彼女はようやく気が付いた。
優希斗だけではない。空蝉の視線も同じところを向いていた。
すなわち。
「いや……そんなにボンとした胸をしているものだから、てっきり」
「胸を強調するのはいいが……その格好はその、どうかと思うぞ。見てるこっちが恥ずかしくなる」
「ほんと男って女の胸しか見ないんだから!お前達、やっておしまい!」
あまりにも男性的で素直な心の動きに憤慨する女幹部プラリネの背後から、ずらっと姿を現すのは「ル・ショコラ」の下級戦闘員たちだ。
砂糖細工のような姿をした小型の兵士たちが、とことこと歩いてきては二人に殺到する。
ファンシーなお菓子の人形が拳でぽこぽこと叩いてくるその様は、なかなかにメルヘンチックで可愛らしいが、地味に痛い。
「大きさが小さいから、躱すのは容易だな」
そう言うや、空蝉の身体がぐんと伸長した。そのまま縮んで戦闘員の包囲を抜けつつプラリネへと接近すると、その身体に組み付かんと再び身体を伸ばしにかかる。
「さて……お前を洗脳しているオブリビオンはどこにいるのかな?」
「な……っ、私が操られているとでも言うの!?悪いけれど、へいし達のように分かりやすいようにはなっていないわよ!」
空蝉の流動的な身体からなんとか逃れようと、手にした剣を振り回すプラリネ。なかなか組み付く隙を与えてはくれないようだ。
その様子を遠目に見ていた優希斗が、刀を抜き放つ。
「あの様子だと、自分が洗脳されていることには気づいていないか、意図的に意識しないようにさせられているようだな……解除は容易ではないか。
まぁ、まずはこいつらを先に片付けよう。いい加減に鬱陶しい」
言わんや、刀の峰を一閃させて戦闘員を薙ぎ払う優希斗だ。吹き飛ばされた砂糖菓子の戦闘員が粉々に砕け散っていく。
自信を取り囲む障壁が無くなったことを確認し、プラリネへとその刃を届かせるために、優希斗も強く床を蹴った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メリー・アールイー
え?ボンボン様のため?自分のためじゃないんかい?
そんな上司に気を使わんでもいいんだよぅ
折角だからさ、頑張ってる自分のためのご褒美チョコ
ご用意なさいなっとね
勿論、買い占めは許さんよ。人間ほどほどが一番さ
再びReのリピートモードで自己強化
「フェイント」交じりの連携
ちっちゃな悪の組織員はしつけ針でおしおきだ
あんたを洗脳してるのはどれかなっと
とりあえずその軍帽を蹴っ飛ばしてみようかね
他の仲間の攻撃の反応をみて
洗脳を解く手がかりがあれば、そこを突きたいと思うよ
防御は「第六感」を使って避けたり
針山クッションで「盾受け」しよう
他に攻撃をくらいそうな仲間がいたら手を貸すよ
【アドリブ・連携、歓迎】
マカ・ブランシェ
「私としては……チョコよりプリンの方が美味しいと思うのだよ」
なるほど、君も洗脳されているのだね。
さて、どうしたものか……。
■
女幹部は咎力封じで行動を制限して、仲間のサポートをするのだよ。
説得に耳を貸しそうならいい感じの合いの手を入れて誘導でもしようか。
「説得が難しいなら……とりあえず気絶してもらおうか、なんてね」
小型の兵士や巨大怪獣はクイックドロウでちゃちゃっと片づけてやるのだよ。
「まったく、寒い季節に肌の露出が多いなんて理解に苦しむのだよ」
私? よく見たまえ、しっかり着込んでいるだろう?
(アドリブ・連携歓迎です)
共に戦う猟兵達と並ぶようにしながら、メリーはそのひらりと翻るドレスの袖をたなびかせた。
「え?ボンボン様のため?自分のためじゃないんかい?そんな上司に気を使わんでもいいんだよぅ」
「五月蝿いわね!ボンボン様の喜びは私の喜び!私はボンボン様の愛人として、あのお方に喜んでもらう使命があるの!」
再び召喚された砂糖菓子の戦闘員が、メリーに向けて剣を突き出してくる。それをひらりと躱しながら、メリーは口元を綻ばせた。
「折角だからさ、頑張ってる自分のためのご褒美チョコ、ご用意なさいなっとね」
「私としては……チョコよりプリンの方が美味しいと思うのだよ。自分へのご褒美プリン、悪くないだろう?」
「悪くないけれど!バレンタインなのよ、チョコレートを選ばなくてどうするというの!」
メリーの隣で戦闘員の剣を飛び越えるようにして躱すマカが首を捻った。彼女からしてみたら世間のチョコレートを持ち上げて持ち上げる風潮は不思議で仕方ない訳だが、チョコレートへの亡執に囚われたプラリネには届かない。
届かないなら物理で届かせるのみ、マカは手に持つ熱線銃を構えた。
「説得が難しいなら……とりあえず気絶してもらおうか、なんてね」
そうして口角を持ち上げたマカの指が、目にも留まらぬ速さで引き金を引いた。
次々と熱線に焼かれ、砕けていく砂糖菓子の戦闘員。拓かれた道へとメリーは身体をねじ込むように飛び込んでいく。
「あんたを洗脳してるのはどれかな?その軍帽とか怪しそうだねぇ」
「なっ、このっ……!」
軍帽諸共顎を蹴上げようと身体を浮かせるメリー。対するプラリネは咄嗟に剣を構えて蹴りを受け止めようとして――何かに気が付いたように腕を下げた。
結果、下から迫るメリーの足に強かに打たれ、頭と脳を後方に振られるプラリネ。弾みに被った軍帽が落ちて、ピンク色の髪がハラリと広がる。
その様子に、距離を取っていたマカが目を見張った。
「今、彼女……明らかに右腕を庇っていたね?」
「間違いないねぇ。今の動き……なるほど、『あれ』かな?」
自らを操る糸に吊られるようにして宙で回りながら、メリーの視線がマカとぶつかった。
手がかりは、掴めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
北条・優希斗
仲間との連携・声かけOK
ダッシュ、先制攻撃で接近しながら。
「……別に胸の問題じゃなく、ボンボン様について知りたかっただけだよ。君の洗脳は解かせて貰う」
薄い胸の知人を何となく思い出しつつ鳩尾に柄頭を叩き込んで肉薄してフェイント、騙し討ちで様子見。
戦闘知識、第六感でオブリビオンに操るための装置の場所を見切る。
……個人的には剣が怪しいと思うけれど。
そうすれば洗脳を解けると確信できたら早業で剣速をあげて夢月蒼覇斬で峰打ち
彼女を操っている本体を重点的に叩く
これで気絶まで追い込め且つ戦闘不能にできれば幸いだね
呼び出される部下達の攻撃は、残像で位置をずらしつつ見切りと地形の利用で回避
頼む、元に戻ってくれ
先の二名が成した動きと手がかりを、一度後方に下がっていた優希斗は見逃さなかった。
再び前へと進み出て、脳を揺さぶられて頭を振るプラリネへと肉薄する。
「……別に胸の問題じゃなく、ボンボン様について知りたかっただけ、なんだけどね。君の洗脳は解かせて貰う」
そう言い放ちながらプラリネの鳩尾へと、優希斗の持つ刀の柄頭がめり込んだ。
「がはっ……!」
痛みに目を大きく見開きながら、プラリネの右手の力が僅かに緩む。優希斗はそれを見逃さなかった。
「さっきの攻撃で、君は剣で蹴りを受け止めようとしたのに、わざわざその剣を下げた。蹴りで、剣が飛ばされるのを防ぐためだろう?」
声をかけながら優希斗は舞った。狙うはプラリネが肌見放さず手に持っていた剣。その剣を叩くように、力の抜けた彼女の手から引き剥がすように、あらゆる方向から剣戟を加えていく。
「あ、あ、あ
……!!」
その手から剣が離れるごとに、優希斗の攻撃に耐え切れなくなった剣が軋むたびに、プラリネが耐え難いように声を漏らした。
自らを形成する何かが引き剥がされる苦しみに、プラリネがかは、と息を吐き出した途端。
「――躍るよ、蒼き月の舞を」
優希斗が刀を一閃させると同時に、プラリネの剣が真っ二つに折れた。
「あ、あぁ……あ、あれ?私、何でこんなところで……ってか寒っ!?なにこの格好!?」
剣の呪縛と洗脳から解き放たれ、一般人へと戻った女性が、寒さにその身を震わせる。
びゅう、と一陣吹き渡った風が、砕けた剣の欠片を砂のように吹き飛ばしていった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『旬のもの食べよう!』
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POW : がっつり食べる、いっぱい食べる、見てて気持ち良いぐらい食べまくる、気合で勝負!
SPD : 素早く食べる、新鮮なうちに食べる、機転を利かせてより美味しく!
WIZ : 食材の知識で最適な食べ方を楽しむもよし、うんちくを披露するもよし、頭を使ってより美味しく!
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「これで事件は解決、ということだな。君達、ご苦労だった」
新宿駅地下コンコースに姿を見せたイグナーツが猟兵たちを労うと。
「つまり私は悪い人達に洗脳されてて、皆さんにご迷惑を……うわわ、すみませんでした!」
元悪の女幹部プラリネ、今はしがない一般人に戻ったピンク色の髪をした女性が、その場にいる全員に頭を下げた。
そんな彼女を微笑ましげに見つめるイグナーツが、肩にかけた鞄からカタログを取り出す。
それは悪の組織が狙いを定めていた、バレンタインフェアのカタログだ。無料で貰えるもののため、人数分ちゃんと用意されている。
「さぁ、後はチョコレートに満ちた甘い甘い一時だ。心行くまで楽しんでくるといい」
●追記
シナリオフラグメントで書かれている「旬のもの」は、すなわちチョコレートです。このシナリオはまだバレンタインの時期です。
イグナーツと、元プラリネは、プレイングでお呼びいただけた際にのみ登場します。
それでは、甘いものに満ちたひと時をお過ごしください。
北条・優希斗
……え~と、取り敢えず元プラリネさんは寒くないんですか?
もしよろしければこれをどうぞ(と言って身躱しのコートを貸す)
他者との絡み歓迎です。
さて、どうしようかな。
う~ん、まあ、折角こういう場だし、チョコレート購入してチョコレートフォンデュとか皆で食べようかな?
と言う訳で、市販のチョコレートからチョコレートフォンデュを作って持っていって皆で落ち着いたところでのんびり食べるよ。
こういう寒いときだもの。暖かいものを皆で食べながらのんびりした方が楽しいよね?
でも、その前にやることがある。
先の戦いで体に傷を負った人がいれば一通り手当を施すね。
これでも俺、医術に心得があるからさ。
マカ・ブランシェ
これだけチョコレートが集まるとちょっとした王国みたいなのだよ!
お祭りはどんなものでもワクワクするね。
それに、ひと仕事終えた後は甘いもの、と相場は決まっているのだ。
◆
元プラリネ……(本当の名前を聞いても構わないかな?)
彼女に有名なチョコの魅力を教えてもらうのだよ。
私は今日そのために頑張ったのだからね!
イグナーツくんが見つかったらチョコツアーに誘ってみるのだよ。
中からジャムが出てくるチョコに驚いたり、ナッツが入っているチョコを一心不乱に齧ったり、生チョコをお土産に買い込んだり。
「心を改めて、私も今日からチョコ大好き党になろう!」
手帳の、来年のバレンタインの日に「チョコツアー」と書き込んでおこう。
メリー・アールイー
カタログまで用意しとるとは
準備がいいじゃないか、イグナーツ
ついでに、あんたのおすすめの店を教えてくれないかい?
赤ペンを差し出して、
カタログに書きこんどくれとおねだりしたいね
皆に配る用のは…
ものすごく美味しかったり味が印象的だったり
見た目が珍しかったり…ウケが良いチョコってあるかねぇ
いくつかあるなら目移りしちまうよ
こういう場でケチケチしてもアレだね
買い占めはせんけど、
皆と楽しめるように、色々と買っちまおう!
自分用のはイートインで食べたいから
これだけは絶対食べとけってやつ、教えとくれっ
ほっぺたが落ちそうなほど美味しいチョコレート、期待しとるよっ
【アドリブ大歓迎】
「カタログまで用意しとるとは、準備がいいじゃないか、イグナーツ」
新宿駅前、とあるデパート、11階の催事場にて。
メリーはイグナーツから手渡されたカタログをパラパラとめくりながら口角を持ち上げた。
同様に優希斗も、マカも、洗脳から解放された元プラリネも、それぞれカタログに目を通しては出展する様々なブランドのチョコレートを眺めている。
「ピエール・マルコリーニ、デルレイ、ドゥバイヨル……この辺りはやっぱり押さえておきたいですね……!」
元プラリネが瞳をキラキラさせながら拳をぐっと握りしめると。
「これだけチョコレートが集まるとちょっとした王国みたいなのだよ!」
普段はそこまでチョコレートに興味関心を示さないマカも、お祭りならばとワクワクを抑えきれない様子でいて。
「……え~と、取り敢えず元プラリネさんは寒くないんですか?」
優希斗は隣にいる元プラリネが、洗脳されていた時そのままの服装でいることに気が気ではない様子だった。
「コート、貸しましょうか?」
「あっ、すみませんお借りします。さっきからお腹が寒くて」
優希斗が差し出した身かわしのコートに、手早く袖を通す元プラリネ。やはりあの服装は寒かったらしい。さもありなん。
「ところで優希斗殿……その手元のポットは、この場所では邪魔ではなかろうか」
「あぁ、これは……イートインがあるということだし、チョコレートフォンデュでも皆で出来ればと思ったんだけど、そんなこと出来る雰囲気じゃなさそうだね?」
優希斗が小型のフォンデュポットを持ち上げながら目を向けたのはエレベーター横にあるイートインスペースだ。
小さな丸テーブルがいくつか並び、ソフトクリームやパフェを食べる人がちらほらと居るが、皆が皆イベント中に購入したものを楽しんでいる。ポットを持ち込んでの調理は、出来そうにない。
「そうだな、フォンデュに使えるようなチョコレートは売られていないし、持ち込みは出来ないイベントだ。それはこちらで預かろう、コインロッカーに預けてくる」
イグナーツに手を差し出され、大人しくポットやピックの入ったバッグを差し出す優希斗である。
「あぁ、イグナーツ、ついでにあんたのおすすめの店を教えてくれないかい?こうたくさんあると迷ってしまってね」
「ふむ、そうだな……完全に俺の個人的なおススメになってしまうが。
高級で上質なチョコレートが欲しいなら、壁際このエリアのジャン=ミッシェル・モルトローやヴィタメールがいい。
ジャン=ミッシェル・モルトローは先日のサロン・ドゥ・ショコラで出展したものと同じラインナップで出しているし、ヴィタメールでは近年話題のルビーチョコレートも買える。
物珍しいものを、ということであればここのレクラがいいな。惑星を模したチョコレートで有名な店だ。
リーズナブルでかつチープでないものが欲しければ、ヴェルジュールに行くことを勧める。見た目がスタイリッシュだから値段の割にウケが良いんだ。モロゾフ系列だから味もいい。
他にも、こういうチョコレートが欲しいということがあればアドバイスが出来るが……」
「ちょ、ちょっと待っておくれ、マップに赤丸を付けるから……えーと、ジャン=ミッシェル・モルトロー、ヴィタメールはここで、レクラが……」
イグナーツがさらさらと上げていくブランド名を聞き逃さんとして、わたわたしながらマップに赤マジックを走らせるメリーだ。
そのマップを自分でも見ながら、マカがイグナーツへと視線を投げる。
「ふむ……とあれば、例えば中にジャムが入っていたり、ナッツが入っていたりするチョコレートを取り扱っているブランドは、どこになるのだよ?」
「そうだな、であればレダラッハのフレッシュチョコレートなどいいのではないだろうか。他には……」
イグナーツの指がマカの手元のマップを指さし、真剣な表情でマカが頷くのを見て、元プラリネがそっと近づいてマップの一点を指さした。
「フレーバーチョコレートなら……セゾン・ド・セツコもいいのではないでしょうか、和風になってしまいますが」
「なるほどなるほど。ありがとう、元プラリネ……あー、洗脳から解放されたのにプラリネと呼ぶのもおかしいな。よければ君の名前を聞かせてくれるかい?」
「あっはい、私のことは優菜(ゆうな)、とお呼びください」
元プラリネ、改め優菜に向けて、にっこりとマカは微笑んだ。
かくして事前準備を整えてチョコレート溢れる戦場に飛び出した猟兵たち。
マカは優菜について有名どころのブランドを回り、メリーは先にイグナーツから聞いたおススメのブランドへ。優希斗はイグナーツにレクチャーを受けながら回っていくことになった。
「テオブロマの看板商品は、この粒状チョコレートのキャビアだ。イートインにこれをあしらったソフトクリームも出ているから、後で行くとしよう」
「なるほど……缶に描かれているこれは、小田急ロマンスカーかな?」
ショーケースを前にして、イグナーツの説明を受けながら優希斗が目を見開く。その色とりどり、形も様々なチョコレートを前にすると、なるほどチョコレートとは奥深いものだと思い知らされる。
別の場所ではマカも優菜に教えを受けながら、チョコレートの奥深さを思い知らされていた。
「なんと……イグナーツ君の話していたレダラッハのチョコレート、ナッツがこんなにごろごろとしているのだよ……!」
「そうです、レダラッハのフレッシュチョコレートは大粒のナッツやドライフルーツがそのまま入っていて、割って食べるのが特徴なんです。
食べ応えがあって美味しいですよ」
「ほうほう……今から食べるのが楽しみなのだよ……!あ、そうだ、生チョコをお土産に、と思っているのだけれど、おすすめのお店は無いだろうか?」
「生チョコですか?でしたら……うん、メゾン・ショーダンとかどうでしょうか?」
女性二人のドキドキワクワクに満ちたチョコレート遍路はまだ終わりそうにない。
他方ではメリーがショーケースに顔をぐっと近づけて、友人たちに配る用のチョコレートを吟味していた。
「むぅ……なかなか、数がたくさん入っていて配りやすい品ってないものだねぇ……いっそ色々と買い込んで、皆で食べれるようにした方がいいかねぇ?」
「大人数で分ける形でしたら、こちらの小粒のガナッシュがたくさん入ったカフェがお求めやすいですよー」
眉を寄せるメリーに、微笑まし気に表情を緩めながらおすすめ商品を宣伝する店員の声に、さらに悩みを増す彼女だった。
そうして一通り回り切って、思い思いにチョコレートを購入した一行は、イートインスペースで成果を披露しあっていた。
「僕は、ビートルのツールボックスと……あと星果庵でチョコレート金平糖を、一つ買ったよ」
優希斗が手元の紙袋を持ち上げると、マカも手に持った紙袋をどさりとテーブルの上に置いた。
「私はレダラッハ、セゾン ド セツコにメゾン・ショーダン、ドゥバイヨルで買ったのだよ!いやぁ、チョコレートは奥が深い!心を改めて、私も今日からチョコ大好き党になろう!」
思っていた以上に楽しい時間を過ごせたマカの隣で、優菜もほくほく顔だ。
続いて購入品を披露するメリーだが、こちらも凄かった。紙袋の大きさが明らかに大きい。
「私は、ヴィタメール、ヴェルジュール、レクラにアンジュジュ、マ プティット ミネットで買ったんだが……友人に配るものを色々と吟味しているうちに、増えていってしまってねぇ」
「メリー殿……確かにこの場でしか買えないチョコレートというのも、沢山あるのだが」
皆で楽しめるために、ということでの購入だと言い張るメリーだが、果たして楽しむ前に持ち帰る道程でへばらないか、と不安になるイグナーツに、メリーが手を上げた。
「この場でしか、といえば!イートインにも、この場でしか食べられないチョコレートスイーツがあるんだろ?これだけは絶対食べとけってやつ、教えとくれっ」
「そうそう、ソフトクリームにパフェに、あれはピザかな?色々とあってどれも美味しそうなのだよ……!」
「さっき話に出ていたテオブロマのソフトクリームも気になるな……」
マカも、優希斗も、口々に思い思いの希望を述べながらイートインスペースの店舗に視線を向けていく。
甘い甘い時間は、まだまだ終わりそうにない。
大成功
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