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お菓子の迷宮のあまーい誘惑

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 迷宮に砂糖や小麦の焼けたあまーい香りが漂う。壁はクッキーやウエハースが敷き詰められ、そこにカラフルなキャンディや金平糖が飾り付けられていた。
「わあ! お菓子の迷宮だ!」
「すげー通路がクッキーにウエハースとか、全部お菓子で出来てる!」
「ねえねえ、ちょっと食べてみようよ!」
 まだ子供らしさの残る魔法学園の学生達が壁を割って食べてみる。すると口の中に甘さが広がり頬が緩む。
「おいしー!」
「本物のお菓子だ!」
「あっち! あっちからチョコの匂いがする!」
 学生達が足早に進むと、壁から溶けたチョコの流れる2mほどの滝があった。
「「おおー! チョコフォンデュだ!!」」
「このウエハースに付けて食べてみよう!」
 壁を割ってチョコフォンデュに浸して食べる。温かく濃厚なチョコの味が身も心も溶かすようだった。
「こっちにはショートケーキの小屋がある!」
「イチゴたっぷりだよ!」
 むっしゃむっしゃとケーキを頬張る。他にもお菓子のテーブルや椅子に綿菓子のクッションと食べ続ける。甘く美味しい食べ物に夢中になり、学生達の思考も甘さに溶けるように緩くなっていく。
「あー喉が渇いてきたなー」
「ねえねえ! こっちにジュースの湧き出る泉がある!」
「こっちは甘いココアだよ!」
「あーお腹いっぱいになったら眠くなって……」
 学生達はお腹一杯甘いものを楽しみ、迷宮探索の事など忘れてそのまま眠りこけてしまう。
 人をダメにする甘いトラップの山。ここは入り込んだ者をダメ人間にして戻らせない、帰らずの迷宮。甘いもの好きを虜にして迷宮の住人にしてしまう、高度なトラップが満載された恐ろしい場所だった。

「アルダワ魔法学園での地下迷宮探索任務だ」
 グリモアベースに足を踏み入れた猟兵達に、バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)が事件の説明を始める。
「どうやらお菓子で出来た迷宮が発見されたようだ。そこに子供の学生達が向かい帰ってこないという。どうやらお菓子の迷宮は人を虜にする力が備わっているようだ」
 甘いお菓子に魅了された人々はそこから帰らずに定住してしまい、ただお菓子を食べるだけの怠惰な生活を満喫してしまう。
「甘いお菓子に思考力を奪われ、囚われの身となっている学生達を救い出し、お菓子の迷宮を破壊して、迷宮を管理しているフロアボスを倒してもらいたい」
 迷宮が壊されれば、修復しようとオブリビオンが現れる。それを全て撃破し、迷宮を攻略することになる。
「しかしお菓子で出来た迷宮か……どんな味なのだろうな………ごほんっ。このように人は誘惑に弱いものだ。お菓子の虜にならぬよう気をつけて向かいたまえ」
 自分も行ってみたいという気持ちを抑え、バルモアは甘い迷宮への道を開いた。


天木一
 今回はお菓子の迷宮攻略です! あまーいお菓子で出来た迷宮を食べ散らかしましょう!
 お菓子の迷宮を破壊するのが目的ですが、その誘惑は強く壊した端から食べてしまいます。食べてもダメージはありません。
 お菓子の魅力に取り込まれる前に、迷宮を破壊しつくしましょう!
 一章で迷宮破壊、二章で集団戦、三章でボス戦となります。

 POW 迷宮を力任せに破壊し、お菓子をお腹一杯食べます。
 SPD 迷宮を駆け巡り、お菓子を早食いします。
 WIZ 迷宮を効率的に壊し、お菓子の食べ方を研究しながら食べます。
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第1章 冒険 『お菓子の迷路!?』

POW   :    迷路の壁を破壊、力任せにトラップを突破

SPD   :    トラップが発動する前に駆け抜ける

WIZ   :    地形を観察し、最短かつ安全な道を探す

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神元・眞白
【WIZ】
(お菓子を持参する人形が1)
……むぐ、……もぐもぐ。お菓子の迷宮があるって聞いて、学生に悪い。
ちゃんと食べきって、もとい壊しておかないと後々学園が大変な事になりそう。
もうなってる?…大事なのはこれから。

こっちはお菓子の種類と食べ方の選定を考えるとして…。破壊?
うん、飛威と符雨(人形)に任せればきっとなんとかしてくれる、はず。
定礎みたいなものがあれば早いけど、無ければ適当に壊しておいて。

甘いものがつづくとしょっぱい物が欲しくなるから……。
お煎餅とかそういう系探してみないと。符雨を調達に飛ばす…ん。


鹿忍・由紀
【WIZ】
あんまり長く居たらいけないところな気がする。
俺、甘いもの嫌いじゃないけど量はそんなに食べられないんだよね。
特別大好きってわけじゃなかったらそんなに惹かれないかな?
塩気があったらまだいいんだけど…でもそれじゃ甘い物としょっぱい物の無限ループになっちゃうか。余計に危ないね。

とりあえずユーベルコード「影雨」を使用して効率的に壊していこう。
範囲を広く使うことでさくさく壊していきたいね。
一般人を捕えてるってことは、何かしら利用しようとしてるはずだろう。

あれ…俺、また無意識に食べてた?なんて恐ろしい迷宮なんだ…。
絡みやアドリブはご自由に。


シオン・ユークリッド
WIZ
うーん、広いけど僕、繊細だから誰か他に行く人いないかな……一人で壊すより、複数で壊した方がダメージ大きいと思う。
地形観察・お菓子の甘い匂いで誘惑予測&嫌いなお菓子の方へ道を探す。
「チョコレートとかカスタードクリームとかは好きだけど、煎餅?おかき?は嫌い(見た目が可愛くないから)」
普通のクッキーもダメね、可愛くないから。
チョコレート一杯、卵をタップリ使ったカスタードがいいな
勿論、見た目最重要……味は美味しくて当たり前
(味にも見た目にもうるさい)
……だからトラップに引っかからないように、自分の嫌いなお菓子の方を選択し探索する

戦闘時は『お人形遊び』で、敵の動きを封じる。
共闘・協力OK



●甘い迷宮の甘い罠
「……むぐ、……もぐもぐ。お菓子の迷宮があるって聞いて、学生に悪い影響が……。ちゃんと食べきって、もとい壊しておかないと後々学園が大変な事になりそう」
 お菓子の迷宮を歩きながら神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)は、御側付きの人形が差し出すお菓子を受け取って食べていた。
「もうなってる? ……大事なのはこれから」
 迷宮を見渡しながら眞白は、どのようなお菓子の種類があり、どうやって食べるのが美味しいかと思案する。
「こっちはお菓子の種類と食べ方の選定を考えるとして……。破壊? うん、飛威と符雨に任せればきっとなんとかしてくれる、はず」
 汚れた口元を拭いてもらい、眞白は2体の人形に視線を移す。すると近接タイプの飛威と遠距離タイプの符雨が傍に控えて命令を待っていた。
「定礎みたいなものがあれば早いけど、無ければ適当に壊しておいて」
 そう命じてまたお菓子を食べる仕事に戻る。飛威と符雨はすぐに動き出し、飛威は飛ぶように壁を突き破ってクッキーの山を生み出し、符雨は符と銃弾を雨のように放ってお菓子の巨大なキノコやタケノコを食べやすく粉砕した。
「甘いものがつづくとしょっぱい物が欲しくなっちゃう……」
 眞白がきょろきょろと周囲を見渡す。
「お煎餅とかそういう系はないのかな?」
 符雨を煎餅探索に飛ばし、喉が渇いたところに差し出された温かなココアで喉を潤した。

「うーん、広いけど僕、繊細だから誰か他に行く人いないかな……一人で壊すより、複数で壊した方がダメージ大きいと思う」
 不安そうにシオン・ユークリッド(審美的志向・f07977)が同行者がいないかと周囲を探す。
「あんまり長く居たらいけないところな気がする」
 お菓子の甘い香りに身体が惹きつけられるのを鹿忍・由紀(余計者・f05760)は感じ取る。その姿をシオンが見つけて話しかけた。
「見つけた。僕も一緒に行ってもいいかな?」
「いいよ、俺でよければ一緒に行こうか」
 誘いを由紀は快諾し、共にお菓子の迷宮を歩き出す。
「俺、甘いもの嫌いじゃないけど量はそんなに食べられないんだよね。特別大好きってわけじゃなかったらそんなに惹かれないかな?」
 そう考えた由紀は影から魔力で複製した夥しい数のダガーを生み出して放つ。周囲のお菓子を貫き、クッキーの壁も、ウエハースの天井も、チョコスティックの柵も砕いていく。そして無意識の内にぽろぽろと零れ落ちるお菓子をキャッチして食べていた。
「僕はチョコレートとかカスタードクリームとかは好きだけど、煎餅? おかき? は嫌い。だから甘くないお菓子を探すのはどう?」
 シオンは甘くなく見た目も可愛くないお菓子を探す事で、甘いお菓子の誘惑を避けようと提案する。
「それはいい案だね。甘いものの次はしょっぱいの……って俺お菓子食べてた?」
 新しくダガーを放とうとして由紀はようやく自分がチョコスティックのお菓子を食べている事に気付いた。
「口の中が甘いな。塩気があったらまだいいんだけど……でもそれじゃ甘い物としょっぱい物の無限ループになっちゃうか。余計に危ないね」
 しょっぱいお菓子がこの場にあったら危ないところだったと由紀が思っていると、横から眞白の人形が壁を壊しながら現れて通り過ぎ、その先にある硬いのからソフトなものまで、さまざまな味の煎餅やおかきで出来た通路を見つけ、一部を壊して持って帰った。
「あーあそこ煎餅になってるんだー……よし、破壊しよう」
 見てはいけないものを見てしまった気分で、由紀は影のダガーを放ち迷宮破壊を再開した。食べてはダメだと強く念じ、攻撃に集中する。
「可愛くないお菓子は、全部壊してしまうね」
 続いてシオンも糸や鎖を操り、惹かれない可愛いくないお菓子を破壊していく。
「普通のクッキーもダメね、可愛くないから。チョコレート一杯、卵をタップリ使ったカスタードがいいな。勿論、見た目最重要……味は美味しくて当たり前」
 譲れない拘りのあるシオンが妥協せずに、あれもダメこれもダメと、ダメ出ししながらお菓子を壊す。食べて食べてと甘い香りを放つお菓子の誘惑を追い払い、迷宮を破壊しながら探索していく。すると壊しきった煎餅の通路の先に部屋を見つける。部屋はカラフルなマカロンで作られ、中央に甘い香りのするシュークリームのタワーが立っていた。足を踏み入れると、チョコレートのソースが上から流れてシューをコーティングする。
「へぇ……可愛いお菓子ね。演出は合格よ。でも当然美味しくないとお話にならない……」
 ふらりとシオンが近づき、シューを手に取って千切り真剣な表情で口に運ぶ。さっくりとしたシュー皮の中は零れんばかりの濃厚なカスタードと生クリーム。少しビターなチョココーティングにマッチして口の中で蕩けた。
「カスタードたっぷり……味も合格ね」
 これなら合格点だとシオンは微笑みシューを楽しみ始めた。その横では由紀ががっつりシューにかじりついている。
「あれ……俺、また無意識に食べてた? なんて恐ろしい迷宮なんだ……」
 いつの間にかしょっぱい煎餅とシューを両手に持ち、交互に食べていた事に由紀が気付くと、この迷宮の誘惑の強さに体を震わせた。

「……むぐむぐ、あ、帰ってきた」
 眞白が優雅なティータイムを楽しんでいると、符雨が焼いたのから揚げたのまで、多種多様な煎餅を持って帰った。
「これでいくらでも食べられそう」
 ぱりぽりと煎餅のしょっぱさで口の甘さを拭い、リセットされた口でまたチョコ菓子やケーキの甘さを楽しんでと永久機関の如く眞白はお菓子を食べ続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セルヴィ・アウレアム
お菓子、なぁ…。ウチは味とかわからんけんど、そんな美味いもんなんやったら、うちの『商品』に加えてもええかもしれんね。
よっしゃよっしゃ、いっちょ根こそぎかっぱらうとしよか!

・行動『WIZ:迷宮を効率的に壊し、お菓子の販売を試みます。』
お菓子の迷宮を『グルメツール』を用いて効率的に分解。それぞれを小分けして、パッケージしたお菓子をこれでもかというほどリュックに詰め込む。

人をダメにするお菓子として売れば大人気間違いなしですね!ガハハ!


ショコラ・リング
これもオブリビオンの思惑を打ち壊し、人々を救う大切な任務でございますからね!(と言いつつも、尻尾は正直にバタバタ振りながら)
ボクは【神の杖】で片っ端から壊していきますです
迷宮を壊す為に一杯動くのでエネルギー補給は必要でございますよね
相手の罠を利用して企みを挫く為の必要なことなのです
別に誘惑に負けてるわけじゃないのです!(壁を割ってクッキーを食べたり、小屋を壊しながらショートケーキを食べたり、喉が渇いてココアを飲んだり)
むむむ、あちらからいい匂いが……あれも食べ……ごほんっ、破壊しないとなりませんね!


天秤棒・玄鉄
 へえ、洋菓子の迷宮ねえ。
 ま、なんだおれも、甘味は嫌いじゃねえし、覗いてみるかねえ?
 バルモアの分も食ってやらねえとな。

【鎧砕き】の要領で迷宮を【なぎ払い】破壊しつつ、残骸を【掃除】がてら摘まみ食い。
 薄酒片手に団子を食うような甘い物好きだが洋菓子はそこまで好きじゃあない。が、ついつい手を伸ばす。
【第六感】で路を探りつつ、食い過ぎないよう【覚悟】きめて【破魔】で誘惑に抵抗しながら竹水筒にいれた茶で口を潤わして進む。

 しかしまあ、変わったもんがあるもんだ。
 さて、ガキどもはどっちかな。


レイナ・オトゥール
お菓子でできた迷宮ですか
なんともこう、心惹かれる迷宮ですね、本当
子供たちからお菓子を取り上げるようになってしまいそうですが
しっかり引きはがさないと

それにしても目の前にあると本当に目の毒で仕方がないので
迷宮の壁とかなら避けるとかあまりないと思うので
ドラゴニック・エンドで手あたり次第壊しましょう

食べると虜になってしまうようですし
出来るだけ食べるのを我慢……
そうです、体重!
ここで食べたら体重に直結すると念じながら頑張りましょう!

でも今壊した分を食べるぐらいなら
……ああ、ダメです、私どこまでこの誘惑に耐えれるでしょうか?


あ、食べた分迷宮を壊すように動けば実質カロリーはゼロなんじゃないでしょうか?



●あまーい迷宮を食べ尽くそう
「お菓子でできた迷宮ですか。なんともこう、心惹かれる迷宮ですね、本当」
 レイナ・オトゥール(村娘・f11986)は童心に返ったように目をキラキラと輝かせてお菓子の迷宮を見渡す。
「子供たちからお菓子を取り上げるようになってしまいそうですが、しっかり引きはがさないと」
 お菓子の虜となってしまっているのならば助けなくてはと気合を入れる。
「それにしても……目の前にあると本当に目の毒で仕方がありません」
 目の前の壁にレイナは槍を突き刺して穴を開け、さらにドラゴンを召喚して追撃させて、体当たりで壁をぶち壊す。バラバラに砕けたクッキーやウエハース。そして勢い余ったドラゴンが壁の向こうにあったイチゴショートにぶつかりドラゴンが生クリームだらけで戻ってきた。
「食べると虜になってしまうようですし、出来るだけ食べるのを我慢しなくては……」
 お菓子から視線を逸らす。だがどこを見てもお菓子が目に映り、誘うような甘い香りは迷宮中を包んでいる。逃れようのない甘いお菓子の誘惑だった。
「そうです、体重! ここで食べたら体重に直結すると念じながら頑張りましょう!」
 思わず伸ばそうとした手を堪え、己に言い聞かせるように我慢する。
「でも今壊した分を食べるぐらいなら……ああ、ダメです、私どこまでこの誘惑に耐えれるでしょうか?」
 壊せば壊すほどお菓子との接触は増え誘惑は強まる。ふと気づくとその手に良い香りのクッキーが握られていた。
「あ、食べた分迷宮を壊すように動けば実質カロリーはゼロなんじゃないでしょうか? 」
 素晴らしアイデアが思いついたと、レイナは迷いなくクッキーを口にした。甘さが口の中を満たし、もっともっとと訴えかける。
「ではもっと壊して、もっと食べましょう! 動けばどれだけ食べてもゼロカロリーです!」
 レイナは槍で板チョコの壁を破り、その奥にあったソファーサイズのチーズケーキとフルーツタルトを食べ始める。その隣ではドラゴンがジュースの池に飛び込んだ。
「甘くて美味しいです。これならいくらでも食べられそうです! あ、もちろん後でその分動くので、カロリーは大丈夫です!」
 全く大丈夫じゃない様子でレイナは手当たり次第に迷宮を壊し、暴走車のように突き進みながら食べ始めた。

「お菓子、なぁ……。ウチは味とかわからんけんど、そんな美味いもんなんやったら、うちの『商品』に加えてもええかもしれんね」
 味はわからなくともお宝の匂いはわかると、セルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)は目を輝かせてさまざまなお菓子で出来た迷宮を歩き、一つ一つお菓子の品質を確認していく。迷宮を歩けばさまざまなお菓子が見つかり、輝く宝の山のように目に映った。
「食べたらもっと食べたくなるお菓子なんやから、一度売ってもうたら何度もリピーターがつく『商品』になるってことやね」
 そして顔をニヤリと悪巧みしたように歪め、背負っていたリュックを下ろした。
「よっしゃよっしゃ、いっちょ根こそぎかっぱらうとしよか!」
 これはイイ商売になりそうだと、セルヴィは大きなナイフ、フォーク、スプーンといった道具を使いウエハースにクッキーにケーキと、それぞれを小分けにして効率的にお菓子の回収を始めた。

「へえ、洋菓子の迷宮ねえ。ま、なんだ。おれも、甘味は嫌いじゃねえし、覗いてみるかねえ?」
 意気揚々と天秤棒・玄鉄(喧嘩魂・f13679)が迷宮に足を踏み入れる。そこは絵本の世界にでも紛れ込んだような、お菓子だけで作られた甘い香りの漂うファンシーな迷宮だった。
「これはまた……食い放題ってやつか。バルモアの分も食ってやらねえとな」
 玄鉄はここに来たそうにしていたバルモアの分も食べてやろうと、早速拳を叩き込んで壁を砕き、掃除がてらそれを纏めて摘まみ食いする。
「これもオブリビオンの思惑を打ち壊し、人々を救う大切な任務でございますからね!」
 その隣ではショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)が正義感溢れることを言いつつも、尻尾は心に正直にバタバタと大きく振れていた。視界を埋め尽くすお菓子達。いくら食べても無くなりそうにないほどのお菓子の迷宮。この光景を前にしてお菓子好きが興奮を抑えられるはずもなかった。
「片っ端から壊していきますです」
 ショコラは漆黒の矢を放ちお菓子の通路を粉砕する。バラバラと砕け散ったお菓子をゲットし、パクリと口に放り込んだ。あまーいチョコクッキーの味が広がり思わず頬が緩む。そのまま手が止まらずに次はウエハース、次は金平糖と頬が膨らむほど放り込む。
「迷宮を壊す為に一杯動くのでエネルギー補給は必要でございますよね。相手の罠を利用して企みを挫く為の必要なことなのです」
 己に言い訳しながらショコラはお菓子をパクパクと食べ続ける。
「洋菓子はそこまで好きじゃあないんだが、結構いけるな」
 本来は薄酒片手に団子を食うのが好みだが、これはこれでいけると玄鉄はついつい手を伸ばしてむしゃむしゃと食べてしまう。
「おっと、これがこの洋菓子の迷宮の罠ってやつか。確かに強力だな。気をつけねえとおれも取り込まれそうだ」
 お菓子の誘惑を頭から追い払うように、玄鉄は竹水筒にいれた茶で口を潤わして心を静かに澄まして魔を祓い、拳で道を打ち破りながら進む。
「別に誘惑に負けてるわけじゃないのです!」
 そう強弁しながらも、ショコラは壁を割ってクッキーやウエハースを食べ、小屋を壊しながらショートケーキを美味しそうに頬張り、喉が渇いたとココアをごくごく飲んで、満足そうに座り込んだ。玄鉄と逸れ、あまーいお菓子を食べ、あまーい飲み物を飲む。お菓子に包まれた至福の時を堪能してうっかり何をしに来たのだったかと首を傾げる。
「むむむ、あちらからいい匂いが……あれも食べ……ごほんっ、破壊しないとなりませんね!」
 そして新たなチョコケーキの丸太小屋を破壊して口に含んだところで、我に返ってショコラは咳払いし、しかしそれでも手放さずチョコケーキを食べながら、漆黒の矢を撃ち込んで周囲のお菓子を吹き飛ばしてた。
「わー、お菓子がいっぱい降ってくるのです!」
 お菓子の雨を浴びるように、くるくる回転しながらショコラはお菓子を抱えるようにキャッチした。

「しかしまあ、変わったもんがあるもんだ。さて、ガキどもはどっちかな」
 玄鉄が探しながら歩いていると、うーんうーんと唸り声が聞こえる。
「こっちか?」
 急ぎ向かってみると、そこにはお腹をぽっこり膨らませて、マシュマロのベッドに寝ている子供達を見つけた。枕元にはお菓子やジュースが食べかけで並べられている。
「もう食べられないよー」
「あーでも、まだブラウニーとアップルパイがー」
「起きたらまたモンブランの山を食べる挑戦をするんだー」
 完全にお菓子の誘惑に負けた子供達がだらだらと自堕落な姿を見せている。
「んー……次はイチゴケーキにしますぅ……」
 その中に混じって、どんなルートを通ってきたのか生クリーム塗れになったレイナも寝ていた。
「………はぁ。おい、起きろ! おやつの時間は終わりだ!」
 その平和な姿に呆れながらも、玄鉄は子供達とレイナに茶を飲ませて正気に戻した。

●お掃除の時間
「こっちはクッキーで、こっちはウエハース。ほんでこれはケーキ。金平糖はカラフルに色を混ぜんとね。……これくらいあればひとまずは大丈夫かな。あっ、水筒にジュースも入れてこ」
 セルヴィが集めたお菓子を詰めるとリュックがパンパンに膨れ上がり、よっこいしょと持ち上げる。
「人をダメにするお菓子として売れば大人気間違いなしですね! ガハハ! 」
 元手無料。ただ迷宮のお菓子を売るだけのぼろい商売に笑いが止まらないと、セルヴィは悪徳商人のように迷宮中に笑い声を響かせた。
『おそうじーおそうじー』
「ん? なんか音が聴こえたような……」
 重いリュックを背負ったセルヴィが周囲を見渡す。すると先ほど回収したオレンジジュースの池が膨れ上がり、ぽこんっと可愛らしいオレンジジュースで出来た黄色いクラゲを生み出した。
『おそうじーおそうじー』
 違う場所から緑のソーダのクラゲが、さらに違うところからチョコソースのクラゲやイチゴジュースにリンゴジュースとカラフルなクラゲ達が生まれ、迷宮を破壊する招かれざる侵入者である猟兵達の周囲に浮かんだ。
「あーこれはちょっと危ないやつやね。『商品』を守って戦うんはちょっと大変かもしれんね」
 セルヴィがじりっと後ろに下がる。
『おそうじーおそうじーおーおーそうじー』
 その間合いを縮めるように色とりどりなクラゲ達がふよふよと浮かんで近づき、口からジュースを噴き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ふよふよくらげ』

POW   :    ふよふよ、とうめいになる
全身を【うっすら透明っぽい姿】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    ふよふよ、ぴゅーっとする
【空中をふよふよすること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【口から噴き出した水】で攻撃する。
WIZ   :    ふよふよ、しびしびする
【ふよふよした全身】から【高圧電流】を放ち、【感電】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●甘いくらげ
 甘い香りをさせたくらげ達の吐くジュースやチョコソースは、ちょっと飲んでみようかと猟兵達を惑わす。その液体の体に包まれればお腹一杯になるまで飲み続けて動けなくなりそうだ。やはりまだあまーい迷宮の罠は続いている。脅威とは思えぬふよふよと可愛らしく浮かぶ敵を見ながら、猟兵達は惑わされぬように警戒して挑む。
レイナ・オトゥール
うう、げふっ
これ以上はお腹が破裂しちゃいそうです

ここからはしっかりと敵を倒しましょう
焼いたら良い匂いしちゃうかもですが
トリニティ・エンハンス…特に火の魔力で攻撃力を上げて攻撃です

ああそれにしてもとっても美味そうなのに無念です
あ、いや、待ってください
学園に来てから行ったお菓子のお店で
同年代の女の子がこんな事を言っていたのを聞いたような気がします

甘いものは別腹

そう女の子には別腹というものがある
さっきちょっと女の子らしくない息が漏れた気はしますが私も一応女の子
つまり私には別腹があるはずなのでもうちょっと食べれるはず

見事な証明です
さあ、クラゲさんたち貴方達の攻撃はもう怖くありません!


アドリブ・連携歓迎


神元・眞白
【WIZ】
(未だにお菓子は食べ続けながら)
飲み物まで用意してあるのはいいところ。味を変えるなら炭酸…?
上手く誘導して飲み物の種類を集めておいた方がこの先無難そう。
水筒とか容器を探して、あったらその中に。なかったら……流れで、うん。

壊した迷宮をお掃除してくるだけ、かも?そうだったらそっとしておくことに。
見た目柔らかそうだし、強い攻撃だとその場で弾けて汚れそう。
少し離れたところからの攻撃が問題なさそう。近くに人がいたらまた誘導。

大分進んで来たからぼすにお土産は準備しておかないと。
迷宮のお菓子にクラゲの飲み物に。後はしょっぱい物を少々。


鹿忍・由紀
やっと敵らしいやつのお出ましか。
こいつら片付けたら親玉が出てきてくれるかな。
この迷宮の誘惑は大したものだけど、全部思い通りになると思わないでよ(先ほど食べたシュークリームのクリームが口元に付いたまま、キリッと)

水の塊っぽいけど斬撃ってちゃんと攻撃通るのかな。
まあやるだけやってみよう。
素早さはあまりなさそうな敵だからユーベルコードでさっさと終わらせちゃいたいね。
吐き出すジュースを浴びないように気をつけながら戦おう。
普段は怪しい物は口に含まないけど野生の勘と第六感により不利にならない程度なら。
…甘さがしんどくなってきた。

もしかして切ったらそこからジュース溢れ出てきたりする?
アドリブご自由に。



「うう、げふっ。これ以上はお腹が破裂しちゃいそうです」
 もうお腹いっぱいだとレイナはお菓子で膨らんだお腹を撫でる。
「ここからは運動の時間です! 食べた分のカロリーを消費しましょう!」
 カロリー消費の為にも頑張って戦わなくてはと、レイナは構えた斧槍に火の魔力を通して炎を纏わせ緑のクラゲに突き刺す。すると穴が空きプシューと中のソーダが溢れ出した。熱を持ったジュースの甘い香りが周囲に漂う。
「ああ……それにしてもとっても美味そうなのに無念です」
 無駄に垂れ流されるジュースに勿体ないとレイナは視線を向ける。蒸発するジュースの湯気を吸っていると、頭にまで靄が掛かってくるように思考が乱れる。
「あ、いや、待ってください。学園に来てから行ったお菓子のお店で、同年代の女の子がこんな事を言っていたのを聞いたような気がします」
 そう確かあれはケーキをカフェで食べている時、3つ目を食べようかどうしようか悩んでいる時のものだった。レイナはその時に聞いた言葉を思い出す。
 ――甘いものは別腹。
「そう女の子には別腹というものがある! さっきちょっと女の子らしくない息が漏れた気はしますが私も一応女の子。つまり私には別腹があるはずなのでもうちょっと食べれるはず」
 ピカ―ッ!と頭の上に電球が光ったようにレイナは最適解を導き出した。
「見事な証明です。さあ、クラゲさんたち貴方達の攻撃はもう怖くありません!」
『おーそうじーー』
 心晴れたようににっこり笑うレイナが背後からココアクラゲに取り込まれ、ごくごくと幸せそうに甘いココアを飲み始めた。

「飲み物まで用意してあるのはいいところ。味を変えるなら炭酸……?」
 状況が変わっても未だにティータイムを優雅に楽しんでいる眞白がソーダの炭酸ジュースのクラゲに目を向けた。
「たくさん種類があるようだし、一通り集めておこうかな」
 飴細工の水筒にジュースを集めようと、人形の飛威と符雨を使いクラゲを捕まえ、ぎゅっと絞って飴のグラスにジュースを注がせる。
「炭酸もいいですね。もしかしたら壊した迷宮をお掃除してるだけ? そうだったらそっとしておきたいところだけど……」
『おそーじーそーじーおーそーじー』
 そう思い眞白は様子を見ていたが、クラゲ達は周囲の壊れたお菓子と一纏めで猟兵も噴き出すジュース圧で掃除しようとしていた。
「クラゲにそこまでの分別を期待できませんか。それなら倒すついでにぼすへのお土産も準備しておこうかな」
 飛威が突進してチョコソースのクラゲを斬り裂き、符雨が符を雨のように飛ばしてお菓子の壁や小屋を粉砕する。クラゲが弾けチョコが吹き出し飛威をチョコ塗れにさせた。
「近くで倒したら汚れそう。少し離れた場所で倒さないと」
 自分は座ってお菓子を楽しみながら、これ以上人形が汚れぬように死霊騎士と死霊蛇竜を召喚してクラゲを集めて倒していく。

「やっと敵らしいやつのお出ましか。こいつら片付けたら親玉が出てきてくれるかな」
 由紀はダガーを構えてふよふよと浮かぶクラゲを見る。お菓子の迷宮にジュースのクラゲ。なんとも気の抜ける風景だった。
「この迷宮の誘惑は大したものだけど、全部思い通りになると思わないでよ」
 口元に先ほど食べたシュークリームのクリームを付けたまま、キリッと由紀は恰好をつけた。
『おそうじーらららおそうじー』
 クラゲ達はそんな由紀を気にもせず、散らばったお菓子をジュースで洗い流す。そのついでのように由紀にもオレンジジュースを飛ばした。
「水の塊っぽいけど斬撃ってちゃんと攻撃通るのかな。まあやるだけやってみよう」
 それを避けながら由紀は回り込んですれ違いながらダガーで切り抜ける。まるで水風船でも切ったような感触が手に伝わった。
「まるで水風船だね……水風船?」
 嫌な予感がして振り返る。するとぱんっとクラゲが破裂して飛び散ったオレンジジュースを由紀は頭から浴びた。
「あーそうなるよね……よし、もう一度濡れちゃったら何度濡れても一緒だよね」
 返りジュースで濡れるのを諦めた由紀は、次々とダガーでクラゲを仕留めていく。リンゴにイチゴにブドウと、カラフルな色で塗りたくられていく。その度に僅かに口にも入り、甘ったるいジュースの味で口が満たされていく。
「……甘さがしんどくなってきた」
 だがまだふよふよと周囲にクラゲが浮いているのを見て、少々げっそりしながら由紀はダガーを閃かせた。
 ココアの不透明なクラゲが潰れ、中から取り込まれていたレイナが零れ落ちる。
「うわっ!? って大丈夫?」
「ううううう、甘いものは別腹ではありませんでした………げふぅ」
 驚いた由紀が慌てて介抱するが、もう限界だとレイナは横たわってお腹を限界まで膨らませて唸っていた。
「迷宮のお菓子に、クラゲの飲み物に……後はしょっぱい物を少々。これくらいあれば十分かな」
 そんな惨事の横では、死霊騎士と死霊蛇竜に戦わせている間に、眞白がマイペースにお土産を選び人形達に荷造りさせていた。
「そこのクラゲを倒しますから、気をつけて」
 そう仲間達に声を駆け、死霊騎士が刃を振るってクラゲを斬り裂いて破裂させ、死霊蛇竜が尾で纏めて吹き飛ばし、壁にぶつかってクラゲが爆発する。真っ二つになったクラゲが弾けチョコソースが吹き出す。由紀はさっと飛び退いて避けた。だが横たわっているレイナは直撃を受け、今度はチョコソースに包まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ショコラ・リング
あ、甘い物で攻めてくるなんて……それに凄くいい匂いが……なんて強敵なのでしょう!?
ちょ、ちょっとだけなら……いえ、ダメです、誘惑に乗るわけにはまいりません(何度も葛藤しながら)
【其ノ弓ニ矢射ラズ】で一体ずつ確実に撃ち落としていきますです
クラゲはほとんどが水分と言われているらしいですし、この香りに吐くのがジュースやチョコソースということは、きっと本体も美味しいのかもしれません……
倒した後なら……ちょっとくらい……いえいえダメです、まだ先があるのですから、心を強く持たねば!(頭をぶんぶん振りながら)


シオン・ユークリッド
wiz

「ね、そこのクラゲちゃん。僕、熱湯が欲しいんだけど?」
声が届くかはわからないけど、偶然熱湯を吐き出したら……と思ってみたり
攻撃として処理されたとすれば、ミレナリオ・リフレクションで相殺
「そっかー、ティーポットに入らないのか――で、そろそろお茶の時間なんだけど」
クラゲちゃんは、メイド役でいいと思うけど
思いっきりコック&メイド扱いなんだけど……使える者はなんでも使うけど
明白なダメージを受けたり紅茶飲み干したら、お人形を操作して意識を戦闘時に切り替える
オンとオフの切り替えは大事だよ


天秤棒・玄鉄
 流石に胸が焼けてきたぜ。
 いや、眼を輝かせてる連中もいんのか。いやはや、恐ろしいもんだ。

 さて、砂糖まみれにされる前に動こうか。
 見えねえが【第六感】で場所や噴射角を【見切り】、【衝撃波】散らしながら【なぎ払い】かましてやる。
 上の方漂ってる奴は手頃なやつを【踏みつけ】【空中戦】だ。踏ん張る足場の無さは【力溜め】と【早業】で補って『喧嘩棒術、颪』からの【先制攻撃】からの【二回攻撃】で暴れてやらあ。

 ま、怪しげなジュースサーバーには退場頂いてもらおうかい。
 そろそろ塩気のあるもんでも食いたくなっちまったんでな。



●甘いお菓子の後は甘い飲み物を
「あ、甘い物で攻めてくるなんて……それに凄くいい匂いが……なんて強敵なのでしょう!?」
 ショコラの尻尾は振り振り、耳はピクピクと興奮したように反応する。
「ちょ、ちょっとだけなら……いえ、ダメです、誘惑に乗るわけにはまいりません」
 クラゲの方を向き、やっぱりダメだと目を逸らしと、忙しなく何度も首を振って葛藤し、ぐぐっと堪えて弓を手にする。
『おっそーじーっおそーじーー』
 するとその周辺の砕けたお菓子を掃除する為に、黒いクラゲが甘いチョコソースを噴き出して流していく。
「クラゲはほとんどが水分と言われているらしいですし、この香りに吐くのがジュースやチョコソースということは、きっと本体も美味しいのかもしれません……」
 じーっと食べ物を見る目でクラゲを見つめてしまう。
「倒した後なら……ちょっとくらい……いえいえダメです、まだ先があるのですから、心を強く持たねば!」
 頭をぶんぶん振って雑念を追い払ったショコラは矢を放つ。視線の先、真っ直ぐにクラゲを撃ち抜き、空いた穴からチョコソースが噴き出し、周囲をチョコレートの香りで包み込んだ。
「我慢我慢……あっ、でもジュースが降ってきたら不可抗力なのですよね!」
 由紀やレイナがジュース塗れになっている姿を見て、ピーンッと耳を立ててショコラの眼が輝く。
「仕方ないのです。クラゲを倒そうとしているだけで、決してジュースが飲みたいわけではないのです」
 言い訳しながらショコラは矢を連続で放ち、次々とクラゲを射抜いていく。クラゲはジュースを噴き出しながら萎れて消えていく。その雨のように降り注ぐジュースをショコラは口を開けて受け止めた。
「モモのジュースなのです! 甘くて美味しいのです!」
 尻尾がブンブン振られ、ぺろりとジュースで濡れた唇を舐める。
「もっと倒すのですよ!」
 次のジュースの雨を求め、これは敵を倒す為だからと自己正当化したショコラは嬉々として矢を番えた。
「流石に胸が焼けてきたぜ。いや、眼を輝かせてる連中もいんのか。いやはや、恐ろしいもんだ」
 矢が刺さり倒れるクラゲが発する甘い香りに少々げっそりした玄鉄は、まだ甘いジュースを飲んでいるショコラや他の仲間を見て戦慄する。普通の戦いよりもよっぽど恐ろしい光景を見てしまった気分だった。
「さて、砂糖まみれにされる前に動こうか」
 これ以上甘いもの漬けにされては堪らないと、玄鉄は助けた子供達を一先ず安全そうなチョコの建物に入れた。そして黒い木材に鋼鉄の芯が仕込まれた天秤棒を振り抜き、ジュースを噴き出していたクラゲを吹き飛ばし、自分に掛からぬように壁に叩きつけて破裂させた。
「しかし透明なクラゲってのはどっち向いてるか分からねえな」
 勘で判断して口の向いてる方を避け、回り込んで天秤棒を脳天に叩きつけて潰す。勢い余ってビスケットの地面まで砕き、潰れたクラゲから噴き出るジュースがビスケットをふやかした。

 粉砕されるクラゲの飛沫に巻き込まれぬよう、シオンは少し離れた場所でお菓子の椅子に座り、自前のティーポットに紅茶の葉を入れチラリとクラゲに視線を向けた。
「ね、そこのクラゲちゃん。僕、熱湯が欲しいんだけど?」
 試しにシオンはクラゲに注文してみる。すると体内の透明の液体が泡立つクラゲがぷくっと頬を膨らませ熱湯を吐き出した。対してシオンも熱湯を生み出して放ち、宙でぶつかり合う熱湯が弾けて相殺され地面を濡らす。
「そっかー、ティーポットに入らないのか――で、そろそろお茶の時間なんだけど」
『おーそうじーらららー』
 そう挑発すると、クラゲはさらにぷっくり膨らみ、大量のお湯を降らせた。
「欲しいとは言ったけど、加減ってものがあると思うんだけど」
 さっとシオンは立ち上がって避ける。降り注ぐ熱湯はティーポットを満たしその中で茶葉が踊るように舞っていた。
「ふーん、やればできるじゃない」
 シオンがまだ濡れてないお菓子の椅子を置いて座ると、クラゲは自慢げにぷくぷく膨らんだ。
「お菓子にお茶。ティータイムできる迷宮なんて早々ないね」
 マカロンを食べながらゆっくりと紅茶が蒸れるのを待ち、お湯で温もったカップに注ぎ、お掃除するクラゲ達を横目にのんびりとした時間を楽しむ。
「でも、残念だけどこっちも迷宮の掃除をしないといけないんだよ」
 お茶を飲み干すとシオンが立ち上がり、抱く銀髪の少女の人形を糸で操作して、意識を戦闘へと切り替える。
「このお菓子の迷宮は不法営業だから――壊してしまうよ」
 シオンが離れると同時に人形がチョコの欠片を拾って襲い掛かり、クラゲを突き刺して傷口から熱湯を噴き出させる。
「お疲れ様。掃除はともかく、メイド役としてはなかなかのものだったよ」
 萎んで消えるクラゲに別れを告げ、シオンは次のメロンジュースのクラゲに視線を向ける。
「こっちはまだまだ掃除が必要なみたいだ」
 人形を操り目についたクラゲを破壊して回る。
『おそうじーおそうじーよごれをきれいにー』
 シオンや玄鉄が派手に暴れていると新たなクラゲがどんどん集まってくる。
「イチゴにオレンジに、ソーダにココア、他にも色々いるな。まるで動くジュースサーバーだな」
 跳躍した玄鉄は近づくクラゲを踏みつけて階段のように上ってゆき、一番高いところにいたクラゲに天秤棒を突き入れた。
「飲み放題つってもおれはもう甘いものは遠慮させてもらうがな」
 そして次々と足場にしているクラゲの頭を叩き、踏み抜いて潰していく。
「ま、怪しげなジュースサーバーには退場頂いてもらおうかい。そろそろ塩気のあるもんでも食いたくなっちまったんでな」
 まだ口の中が甘ったるいと玄鉄は顔をしかめる。クラゲを倒すたびに甘いジュースが飛び散り、空気に混じって吸収してしまっていた。
「しっかしこんな迷宮を管理してるやつは何者なのかねえ。甘党なのは間違いないだろうが」
 クラゲを薙ぎ払いながら玄鉄は、纏めて迷宮の壁も衝撃波で吹き飛ばした。

●お菓子の迷宮のボス
 迷宮がジュース塗れになり、無数に浮かんでいたクラゲを全て倒すと、どこからともなく歌声が聴こえる。
「ららら~♪ お掃除―らんららー♪」
 ご機嫌な歌と共に現れたのは可愛らしいメイド。どこからどう見ても普通のメイドな少女が姿を現す。
「お前がここの主か? 全然強そうには見えねえが……」
 皆を代表して玄鉄が問いかけると、メイドは満面の笑みを浮かべて一礼した。
「いらっしゃいませ! お菓子の迷宮へようこそ! あまーいお菓子をお腹いっぱい楽しんでいってくださいね♪」
 その邪気の無い笑顔に思わず頷きそうになるのをぐっと堪える。迷宮のボス。人を甘やかしダメにするメイドが現れたのだ。
「ご主人様。今日はケーキにしますか? それともクッキー? 飲み物はココアがいいですか? 砂糖はたっぷりですね♪」
 次々とお菓子が用意され、目の前に積み上げられる。そこに全く悪意はない。だが延々とお菓子を食べるだけの生活を続ければどうなるかは明白だ。このまま放置すれば、多くの人々が迷宮の甘い誘惑に取り込まれてしまうだろう。猟兵達は恐るべきメイドに向け武器を構えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『安寧』のフィロソフィア』

POW   :    錬金メイドフィロソフィア
自身の【メイドとしての矜持】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    ソフィはメイドとして必要なことはなんでもできます
対象のユーベルコードを防御すると、それを【劣化版"賢者の石"に記録し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    ソフぃさんのお掃除タイム
いま戦っている対象に有効な【呪いが付与された弾丸を撃てる銃】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は錬金天使・サバティエルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●メイドのお世話タイム
 敵意を向ける猟兵達に対してメイドは首を傾げる。
「あーんして欲しいんですか? 仕方ないですね、それじゃあ……あーん」
 そう言いながらメイドがお菓子の銃を構える。そこから放たれるのもお菓子の弾丸。ポポポポポンッと撃つ度に一口サイズのチョコやケーキやジュースと違うものが飛び出してくる。それに対して猟兵達は思わずあーんと口を開けて待ち構えなくてはという気持ちになってしまう。お菓子の弾丸に籠められた魅了の力が働いているのだ。どこまでも甘く、どこまでも自堕落にさせてくれるメイドの誘惑に耐えなくてはお菓子漬けの身体にされてしまうだろう。
「お菓子はたくさんあるので、遠慮しないでくださいね♪」
レイナ・オトゥール
うう、カロリーは0(?)ですが物質的な質量保存の法則を忘れてました
乙女としてこのお腹は……
いえ、とても美味しかったので後悔はしてないんですけど

メイドさんのあの銃は脅威です
思わず口を開けてしまいそうですが
涙を呑んで晶竜「クリスティア」で盾受けしながらダッシュで接近
接近したらもう片手の氷竜「アイリス」で攻撃
この際【精霊竜召喚】で風の竜さんを呼び
風を纏い攻撃と防御をどちらも出来るだけ上げておきます

実家で農業をして居た身としては
お菓子を、食べ物を粗末にしてしまうのは本当に本当に心苦しいのですが
このままだと、最高に食材を無駄にしてしまう&女子として最後のライン―具体的には口から―を超えてしまいそうなので


フィロメーラ・アステール
「なんだここ、空気まで甘ったるい感じがするぞー!」
コレはいっちょ【気合い】を入れて、誘惑を断ち切れるようにみんなを【全力魔法】で【鼓舞】するか!

【生まれいずる光へ】を発動だ!
誘惑への戦闘力、すなわち精神的な強さをアップすることで、耐えられるよう応援するぜ!
まあ、真っ向勝負(大食い)で立ち向かうヤツもいるかもしれない……えーと。
たぶん、精神的な強さを増強できるなら、そっちにも何か効果があるんじゃないかなー!?

おっと、こっちにお菓子攻撃をしようとしても効かないぞ!
なぜなら【呪詛耐性】の、【オーラ防御】で……うえっぷ。
正直言うと道中でつまみ食いしただけで、もう食べられない! この大きさだからな!


神元・眞白
【SPD】
(お土産とは別にお煎餅をぱりぱり)
人形であの姿……(横見)飛威。……飛威?…もう行ってる。
待って。…うん、聞いてない。やりすぎないといいんだけど。

飛威がやる気だし、お土産はしょうがないから食べよう。
とは言っても1人じゃ危なそうだから魅医をサポートに。魅医、お願いね。

あのメイドが全部迷宮を整備してるなら凄い。
方法を聞いておけば後々何かの役に立ちそうだし、それとなく聞かないと。

倒して迷宮が壊れたら大変。その前にはちゃんとお菓子の回収を。
残るなら場所の地図を作って何回か遊びに来れる?


ショコラ・リング
オブリビオンでも悪意を持っていないと戦い辛いでございますね……
しかもなんだかこんなにもお菓子を用意してくれるなんて
放っておいてはダメだと分かっているのですが、この誘惑は強すぎます……
うぅ、今回のお仕事はとても心の強さが試されるのでございますね
あーんなんてしないですよ! しないですからね! ……し、しないです、よ?

全ては人々の為、頑張って心を鬼に……奮い立たせて援護射撃として【神樹の矢】を使います
この力で少しでも相手の誘惑を弱めることができれば……!!

終わってもその場にお菓子が残るようであれば……お掃除しないといけませんからね
食べてしまってもしょうがないですよね



 猟兵達の前でメイドが取り出したお菓子を並べ、パクっと食べて味見をしてうんうんと納得している。
「オブリビオンでも悪意を持っていないと戦い辛いでございますね……」
 無垢な眼を向けるメイドに、ショコラはなんともやりづらい感情を覚える。
「しかもなんだかこんなにもお菓子を用意してくれるなんて、放っておいてはダメだと分かっているのですが、この誘惑は強すぎます……」
 メイドが銃を撃つ度に生まれるお菓子達。その魔法のような光景にショコラの目は奪われる。
「うぅ、今回のお仕事はとても心の強さが試されるのでございますね。あーんなんてしないですよ! しないですからね! ……し、しないです、よ?」
 しっかりと自分に言い聞かせ、ショコラは尻尾をパタパタ大きく振りながら弓を構え神樹の矢を放つ。それはメイドに刺さり五感の一つをランダムに奪った。
「あれ? おかしいですね。甘さを感じません? 砂糖が少なかったでしょうか……」
 味覚を失ったメイドは首を捻り、砂糖をざざっと振りかけてお菓子を甘くしようとする。
「んーやっぱり甘くないです」
 砂糖塗れとなったお菓子は誘惑する力を減衰させる。
「みなさんもちょっと食べてみたくださいー」
 メイドは目の合ったショコラの口目掛けてお菓子の銃口を向け、ポポンッとケーキを撃ち出した。
「人々の為、心を鬼に……奮い立たせて戦わなくてはなりません!」
 あーんと口を開けたくなるのを我慢して、ショコラあーんと口を開け、一口サイズのフルーツタルトケーキを受け止めた。もぐもぐとその甘酸っぱさを楽しみ、満足そうに微笑んだ。そして食べ終わるとまた次のお菓子が撃ち出され、無限のお菓子を味わう事になる。

「うう、カロリーは0(?)ですが物質的な質量保存の法則を忘れてました
乙女としてこのお腹は……」
 カロリー0だからと食べ過ぎたレイナは、お菓子とジュースで膨れたお腹を撫でる。
「いえ、とても美味しかったので後悔はしてないんですけど」
 だが後悔は微塵もないと言い切り、重くなった身体で敵に立ち向かう。
「メイドさんのあの銃は脅威です。口を閉じて気をつけないといけません」
 誘惑に負けぬように口をぐっと閉じたレイナは、餌を貰う魚のようにお菓子を食べるショコラの前に水晶の盾を構えて割り込み、飛んできたケーキを泣く泣く防ぐ。
「食べ物を粗末に扱ってはいけません!」
 そしてお菓子を防ぎながら突っ込むとレイナは実家で農業をしていた身として心の籠った言葉を放ち、冷気を放つ青水晶の如き剣を振り下ろす。刃はぱっとメイドが掲げた掃除用に持っていた箒に防がれた。だがそこでレイナは風の竜を呼び出す。出現と同時に放たれる暴風にメイドは吹き飛ばされケーキの家に頭から突っ込んだ。
「うえーん。お菓子を粗末にしてるのはそっちじゃないですかー」
 生クリーム塗れになったメイドが涙目で恨みがましい視線を向けて来る。その姿を見ていると、オブリビオンを相手にしているはずなのに、こちらが悪い事をしているような気になって罪悪感を覚えてしまう。純真無垢という名の恐るべき精神攻撃だった。
「うう……仕方がないんです。このまま食べ続けると、最高に食材を無駄にしてしまう&女子として最後のラインを超えてしまいそうなのです」
 女子として決してお見せ出来ない醜態を見せてしまう訳にはいかないと、キリッとした顔でレイナは剣を振るって、ケーキの家ごとメイドを斬り裂いた。

「人形であの姿……」
 迷宮のボスが出ようとも変わらずティータイム中の眞白は、甘い物の口直しにしょっぱい煎餅をぱりぽり食べながら横目でメイドを見る。
「飛威。……飛威? ……もう行ってる。待って。……うん、聞いてない。やりすぎないといいんだけど」
 指示を出そうとすると、近くでお土産回収をしていたはずの人形の飛威が居なくなっている。周りに目を向けると、既に殺る気満々で飛威は真っ直ぐにメイドに向かって飛ぶように駆けていた。
「飛威がやる気だし、お土産はしょうがないから食べよう。とは言っても1人じゃ危ないかも。魅医、サポートお願いね」
 口直しを終えた眞白はお茶を飲み、お土産用に集めている途中だったお菓子を食べ始める。指示を受け人形の魅医は頷き、メイドの攻撃に加わるべく飛威の後を追った。飛威がすれ違いながらメイドを斬り裂き、魅医が援護に弾丸を放つ。
「もう! おやつの時間に暴れたらめっですよ!」
 メイドは反撃にクッキーにケーキにジュースと銃口から乱舞しお菓子の弾幕を張った。

「なんだここ、空気まで甘ったるい感じがするぞー!」
 目をキラキラさせたフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)が、フェアリーの羽をパタパタさせて飛び回り好奇心旺盛にお菓子の迷宮を見渡す。
「おおー! 全部お菓子でできてるのかー! お菓子食べ放題だな!」
 好奇心のままクッキーやチョコとお菓子をつまみ食いして頬を緩める。
「んんーー! コレは危険だな! いっちょ気合いを入れて、誘惑を断ち切れるようにみんなを全力で鼓舞するか!」
 もごもごと口の端を汚しショートケーキを食べながら、フィロメーラは戦っている猟兵達を見つけ、光の粒子を放って楽しそうに空中で踊り始めた。その姿を見た者を元気にさせるダンスで応援すると、光の粒子を浴びた仲間は戦闘力が高まっていく。
「誘惑への戦闘力、すなわち精神的な強さをアップすることで耐えられるようになるって寸法だぜ!」
 飛び回り振り撒かれる光が仲間達を包み込んで、甘いお菓子に対する抵抗力を与える。
「ふぅ、これで少しはお菓子の誘惑に抵抗できるはずだぞ!」
 踊り終わったフィロメーラは満足そうに笑みを浮かべ、喉の渇きを癒す為にジュースを飲んだ。

●メイドはもっとお菓子を食べさせたい
「ほら、そこの妖精さんもお菓子どうですかー。いっぱい食べていっぱい眠って、のんびりしましょー♪」
 メイドがフィロメーラに向けてお菓子の銃から次々と一口ケーキを撃ち出す。
「おっと、こっちにお菓子攻撃をしようとしても効かないぞ! なぜなら呪詛耐性の、オーラ防御で……うえっぷ」
 べちゃっと、普通の人ならば一口サイズでもフェアリーには普通以上の大きさに感じられるケーキがフィロメーラの顔にぶつかり、甘いチョコクリームが口に飛び込んできた。
「うっぷ……正直言うと道中でつまみ食いしただけで、もう食べられない! この大きさだからな!」
 ぶんぶんと両手を振って体のサイズをアピールし、もう限界だから無理とパタパタと羽を動かして逃げ回る。
「大丈夫ですよー。いーっぱい食べたらもっと食べられるようにお腹がぷっくりしていくんですよー」
 そんな恐ろしい台詞を吐きながらメイドはお菓子にジュースも乱射する。降り注ぐクリームやジュースに塗れてフィロメーラはふらふらと勢いを失くして、マシュマロソファーの上にぼよよんと落下した。
「食べてー寝て―食べてー寝て―♪ とーっても幸せな時間を過ごせますよ♪」
 メイドはその周囲にお菓子を並べ、寝たままでも食べられる空間を生み出す。

「お、怖ろしい……あんな状況になったら二度と戻ってこれません!」
 レイナは恐ろしいものを見てしまったと、寝ながらお菓子を摘まむフィロメーラから目を逸らした。
「もっとお菓子を食べてハッピーになりましょうよ! 甘いものをいっぱい食べれば戦いなんて忘れてしまいましょう♪」
 メイドが戦いどころか何もかも忘れさせるように、お菓子の銃からチョコをレイナの口目掛けて発射した。
「あ、チョコが……ってダメダメ! 本当にこれ以上は危険ですから!」
 思わず目を引かれながらもレイナは我慢して顔を背け、幾つも飛んでくるチョコを竜が風を巻き起こして薙ぎ払う。
「食べ物を粗末にするのも、お菓子作りの上手いメイドさんを攻撃するのも心苦しいですが、女子の尊厳に関わる問題なのです!」
 レイナは盾でお菓子を防ぎ、間合いを詰めると剣を一閃させ、お菓子の壁を斬り裂き崩れたお菓子がメイドを押し流した。

「またお菓子をダメにして! いけませんよ! お菓子を食べてないからそんな怒りっぽくなってるんです。お腹いっぱいお菓子を食べたら何も考えられなくなって、ぽわぽわ~って幸せになれるんです!」
 起き上がったメンドはぷんぷんと怒りましたよと腰に手を当てて叱る。そして銃を地面に向け、マフィンにワッフルにゼリーにプリンにスフレにパイと多種多様なお菓子を並べていく。その甘い香りは猟兵達を魅惑の世界へと誘う。だが体に降り掛かった光の粒子が虜になる半歩手前で踏み留まらせた。
「お菓子の食べ放題で誘惑するなんて、そんなのみんな虜になってしまうに決まってるでございます! 絶対にここで止めなくては食っちゃ寝するだけの人で迷宮が埋め尽くされてしまいます!」
 ごっくんと口に残っていたケーキを飲み込んだショコラは、矢を放って敵の五感をまた奪い、嗅覚を失わせた。
「おかしいですねー甘い香りを感じません。チョコレートが少なかったかなー?」
 メイドが次はどばどばとチョコソースを撒き散らし、辺りが胸焼けしそうな甘い香りに包まれる。

 そこへ飛威が腕を一閃すると周囲のチョコソースごとメイドが吹き飛び、メイドの反撃のお菓子弾を魅医が札を飛ばして撃ち落とす。
「もう、やんちゃな子にはお仕置きしちゃいますからね! お腹がぱんぱんになっても許してあげませんよ!」
 メイドのお菓子の銃が巨大化し、ホールケーキが弾丸として飛び出してくる。空中で撃ち落とそうとするが、粉砕してもショートケーキサイズで降り注ぎ、飛威がお菓子塗れになってしまう。さらにそこへウエディングケーキサイズの生クリームケーキが落下し、飛威を埋め尽くした。
「それにしてもあのメイドが一人で迷宮を整備してるなら凄い。どうやってるのか聞いておけば後々何かの役に立ちそう」
 それとなく聞いておこうと、お菓子を飲み込んだ眞白は席を立ってメイドに近づく。
「迷宮管理は大変そうだけど、一人でやっているの?」
「可愛いクラゲちゃん達がお掃除を手伝ってくれるんですよー」
 眞白がメイドに問いかけると、にっこり笑ってメイドが答える。こんな風にとメイドがジュースの弾丸を放つと、そこからクラゲが生まれてふよふよと迷宮のお掃除を始めた。
「あとはこうやってー」
 メイドがお菓子を撃ちまくり、新たなお菓子の壁や建物が作られていく。
「これでみんな大好きお菓子のお家が作れちゃうんですー。お菓子を食べて寝て食べて寝て。天国みたいな暮らしができちゃいます♪」
 そんな自堕落な生活をさせてあげようと、メイドが新たなお菓子を眞白に飛ばす。それを巨大ケーキの中から飛び出した飛威が斬り払った。そして魅医が治療を施し飛威の戦闘力を維持する。

「うえっぷ……お腹いっぱいじゃなかったら危なかったぞ。だがもうお菓子攻撃は通用しない!」
 正気に戻ったフィロメーラはふらふらと飛んで仲間達を盾にするように背後に回り、踊って仲間達に力を与える。
「もうおやつの時間は終わりです!」
 レイナは竜を突進させ、積み上がったお菓子を薙ぎ払いメイドを壁に叩きつける。
「倒さないとこれからも犠牲が出てしまいます。無限にお菓子を生み出してくれるメイドさんでもオブリビオンは倒さなくてはいけません!」
 きっとお菓子から視線を外したショコラが矢を放つ。矢は真っ直ぐに飛びメイドの身体を貫いた。
「みなさんやっぱり糖分が足りていません。早くお菓子を食べないと手遅れになってしまいます!」
 衝撃に倒れたメイドがお菓子塗れになりながらも銃を構える。
「モンスターを使うか……そういう方法もある。でも私なら人形を使う方が早いかも……」
 お菓子を食べながら眞白がよそ事を考えている間に、飛威が突っ込んでメイドを真っ二つにし、魅医が弾丸を放って穴だらけにした。
「おやつをお腹いっぱい食べた後は……あまいジュースを飲まないと……」
 最後まで甘いお菓子を生み出しながらメイドが力尽き崩れ落ちた。

●甘いものを食べた後は
 戦いが終わるとお菓子の家に放り込んでいた学園の子供達を起こし、迷宮の片付けを始める。
「……お掃除しないといけませんからね」
 ショコラがお菓子を手に取り口に運ぶ。
「これも全てお掃除の為ですから、食べてしまってもしょうがないですよね」
 完璧な理屈でもってショコラは自分を納得させ、あれもこれもとクッキーにマカロンにチョコケーキにモンブランに苺ショートにと、大量のお菓子を目の前に並べる。
「動いてカロリーを消費したら腹ごなしにもなってまた食べられそうです」
 ならば食べるしかないと、レイナもお菓子を集めて蕩けるような笑みをみせた。それに釣られるようにお腹一杯だったはずの子供達もお菓子に手を付ける。
「もっと体が大きかったら食べるんだけどな。もう無理だぜ。あ、でもお土産に持って帰るのはありかな」
 ふわふわのマシュマロクッションの上で飛び跳ねて遊んでいたフィロメーラは、飛び上がってお土産を物色する。
 そうして皆でお菓子を楽しんでいると、ぽろぽろと上からクッキーの破片が落ちて来た。見上げると天井がひび割れ始め、壁もまた同じように亀裂が走っていた。迷宮のボスが居なくなり、お菓子では維持できなくなったのだ。
「迷宮が壊れていく……。大変、すぐにお菓子を回収しないと」
 眞白は慌てて人形達に撤収指示を出し、お菓子の回収をさせて逃げ出す。
「管理するものが居なくなれば、お菓子を維持できないみたいね。残念」
 食べられるお菓子が残るなら、何度も遊びに来ようと思っていた計画が水泡に帰してしまったと眞白は残念がりながら、飛威の持ってきたお菓子を食べた。
 ショコラとレイナは子供達を抱え、フィロメーラを先頭に迷宮から逃げ出す。全員が逃げ出すと、ちょうど迷宮が崩落してお菓子は押し潰された。まるで幻でも見ていたように一瞬にして甘いお菓子の世界は目の前で無くなった。だが皆のお腹を見ればそれが幻ではなく現実のものであったと一目瞭然だった。そう、甘いものをお腹一杯食べればどうなるか――甘いものを食べた後の辛い現実がそこに待ち構えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月28日


挿絵イラスト