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忠誠の断罪者

#アリスラビリンス #戦後 #【Q】


●それはちょっとだけ前の話
 その日、不思議の国は襲撃を受けた。時計ウサギの多く住むその国で、住人達のほとんどはウサギ穴を通って逃げのびた。だが、ウサギ穴というのはどこでも好き放題開けるものではない。あくまで元からある穴を時計ウサギが先導し、アリスや愉快な仲間たちを先へ進ませているだけなのだ。
 だから、運悪く近くにウサギ穴がないところにいた時計ウサギたちは、別世界へ逃げることもできずにオウガに追い詰められてしまった。
「た……助けて……」
 オウガへの命乞い程無意味なものはない。そんなこと知っているが、命の危機にあってそれ以外に口から出せる言葉などあるはずもない。
 オウガの牙がウサギの頭を食いちぎろうとした時、さらにその上から重々しい声がかかった。
「汝に問う。汝、オウガとしての務めとは何と心得るか」
 そのオウガはウサギを食うのをやめて振り向く。そこにいたのは漆黒の甲冑を纏った騎士。相手が自分と同じオウガだと分かると、聞かれた方は大きな口を歪めて笑い答えた。
 決まっているじゃないか。アリスを食って、不思議の国を玩具にするんだ。
 その答えに尋ねたオウガは大きく頷いた。相手が心強い味方だと思い、答えたオウガは調子よく続ける。
 たくさんアリスを食って、たくさん不思議の国を滅茶苦茶にすれば、きっと猟書家様も喜んでくれる。鉤爪様は、強い者がお好き――
 調子よくまくしたてていたその口が、笑いの形を取ったまま頭部ごとごとりと地面に落ちた。
「我らが主はオウガ・オリジン様ただ一人。オリジン様を弑せし猟兵、餌でありながら逃げ出したアリス、猟書家なる簒奪者、それに与する不忠者。全て咎人なり」
 たった今オウガの首を落とした巨大な剣を、今度は時計ウサギたちに向ける。
「汝らに問う。汝ら、己が務めを如何に心得るか」
 時計ウサギの役目はアリスを次の世界へ導くこと。でも、そのアリス達はお礼を言って去っていくだけだった。この国が、自分たちが死にそうなとき、その役目は何の報いも齎さなかった。それだったら。
「あなたの望みに、従うことです」
 拾った命を捧げよう。助けてくれた、その人に。

●そして今は
「皆さん、殲神封神大戦お疲れ様です。今日は、アリスラビリンスでの依頼を出します……」
 既に張角も倒れかけ、勝勢に乗っている殲神封神大戦。なればこそ、他の世界の危機に改めて目を向ける時。アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が異世界の依頼を持って猟兵たちの前に現れた。
「オウガによって制圧された不思議の国があります。その国にはもう生き残った愉快な仲間はおらず、そのオウガの隠れ家となってしまいました。それを倒してきてください」
 原住民たる愉快な仲間にとってもオウガは恐ろしい敵。襲われ、滅ぼされることも珍しくはない。現に昨年のハロウィンではそう言った者たちがハロウィンの国へ移住しているのを見た者もいるだろう。
「ここに潜んでいるのはオウガ・オリジン配下であった強大なオウガと、元はここの住人であった配下です」
 彼らは猟書家には与することなく、オウガ・オリジン残党として力を蓄えているという。
「まずは最初に、配下の方を倒していただきます。『『偽アリス』アリーチェ』という女の子の集団です。こんな名前ですが元は時計ウサギで、この国が滅ぼされた時に結果的にボスに助けられたので、彼に忠誠を誓いオウガとなったみたいです。アリスの真似をしているのは、アリスへの恨みや時計ウサギとしての役目へを捨てたことへの屈折した感情の現れのようです……」
 実体がなく理由もわからない『役目』より、目の前にいる自分を救ったものに縋った、そんな存在だという。
「彼女たちはお茶会の真似事をしながら毒や熱湯をかけて来たり、甘えるふりをして胸ぐらをつかんで振り回したりとアリスを馬鹿にするような攻撃方が多いです。あるいはアリス適合者の方には特に強い敵意を向けるかも……」
 自分の本来の役目、世界を敵と見た、半ば自棄を起こしたような動きが多いという。
「彼女たちを倒せば、ボスの『懲罰の騎士』との戦闘です。彼はオウガ・オリジンに今も忠誠を誓っており、いつか彼女のため再起する機会を窺っています。彼の基準で咎人と判断した者をその剣と様々な拷問具で処刑にかかりますが、やはり彼もアリスや猟兵に強い憎しみを抱いています。一方で猟書家も嫌いみたいですが……」
 オウガ・オリジンだけに絶対の忠誠を捧げる黒き騎士。彼女に与さぬ者は全て断罪の対象ということだろう。
「懲罰の騎士はどうやら過去に何かしらの罪を犯したらしく、その贖罪をオウガ・オリジンに仕えその敵を処刑することで償おうとしているようです。少なくとも表向きはオウガ・オリジンを守り切れなかったことが罪だという風に思ってるみたいですが、実のところは分かりません……」
 あるいは、彼もまた自分の罪から目を逸らし続ける咎人ということか。
「ともあれ、彼らはフォーミュラ亡きあともその遺志を継ごうとする残党です。他の世界のそういう人たちと同じように、どうぞ倒してきてください……」
 そう言ってアレクサンドラはグリモアを起動し、猟兵をオウガの国となった不思議の国へ送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。戦争終盤ですが通常シナリオも出していきます。
 今回はアリスラビリンスにて、報われぬ忠義を一方的に捧げるオウガたちと戦っていただきます。

 第一章では『『偽アリス』アリーチェ』との集団戦。彼女たちは怪しい毒薬や腐ったミルクセーキ、熱湯をぶっかけてくる他胸ぐらをつかんでぶん回して投げてきます。アリスっぽい恰好をしていますが元時計ウサギで、アリスを馬鹿にするためにこんな格好をしています。ボスには忠誠を誓っていますが、その忠誠が一方通行であることには気づいていない(あるいはそう思い込もうとしている)ようです。

 第二章では『懲罰の騎士』とのボス戦。剣による直接攻撃や拘束、拷問で戒めてからのゆっくりとした処刑、自身の今まで聞いた断末魔を武器にした攻撃などを行ってきます。彼はオウガ・オリジンに忠誠を誓っており、猟兵、アリス、猟書家とその配下全てを咎人として扱います。咎人を殺しその肉を喰らうことで記憶の果てにある己の罪が浄化されると信じていますが、それがただの妄想でしかないことも何となく分かっています。

 全体的にちょっと真面目な戦闘依頼。基本的に敵は誰かに尽くすことで罪や絶望から目を逸らしている系です。同情するも否定するも自由ですが、最終的には倒すしかありません。

 それでは、敵を断罪するプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『『偽アリス』アリーチェ』

POW   :    ミルクセーキはいかが?
【怪しげな薬瓶】が命中した対象に対し、高威力高命中の【腐った卵と牛乳で作ったミルクセーキ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    甘いおねだり
レベル×1tまでの対象の【胸ぐら】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
WIZ   :    お茶を楽しみましょ?
【頑丈なティーポット】から【強酸性の煮え滾る熱湯】を放ち、【水膨れするような火傷】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

 荒れ果てた不思議の国。ここにはもう元の住人は誰も住んでいない。
 いや、いると言えばいるのか。
「うふふ、私はアリスよ。さあ、楽しいお茶会にしましょう」
「ねぇねぇ、私はアリスなの。お願い、助けて! アリスのお願いを聞いて!」
 異臭を放つ飲み物を手に、嘲笑を浮かべわざとらしくなよなよと腰を振る少女達。
 確かに彼女たちの服はいかにもアリス然としている。だがその頭の上にあるのは、白く長いウサギの耳。
 彼女たちはこの国の住人の時計ウサギであったが、オウガの侵攻を受けた時にその役目と、時計ウサギとしての生を終わらせた。今の彼女たちは 『『偽アリス』アリーチェ』。捨てた役目を踏みにじり、助けるべきアリスを恨み愚弄するオウガの集団。
 報いのない役目を捨てた彼女たちは、その代わりに別の者へ忠誠を捧げる。自らを惨死から救い、役目から解放し、そして新たな役目を与えたその相手へ。
 彼女たちは新たな主が自らを見ていないことに気づかない。あるいは気づきたくない。ただ新たな全てとなった相手に、それしかないとばかりに盲目的に忠を尽くし、彼の目的が成就するよう力を添え続ける。
「あらお客様、アリスに何か御用? じゃあまずはお茶を飲んで? ミルクセーキの方がいい? そうしたらアリスのお願いを聞いて? オウガ・オリジン様の為に……我らが騎士様の為に!」
 騎士が猟兵を殺せと命じたからには、彼女たちもまた命懸けで猟兵を排しにかかってくる。猟兵よ、拾った命を捧げた哀れな偽アリスたちの役目を終わらせろ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
憐れな方々では有りますが、容赦は無用ですねぇ。
始めましょう。

『FAS』を使用し飛行、【籠域】を発動し『乳白色の波動』を纏いますねぇ。
初撃の『薬瓶』は『物質』ですから、【籠域】の波動に触れた時点で破壊することが可能ですし、仮にそれが『波動に当たった』扱いとなっても『卵』『ミルクセーキ』も『物質』、同様に破壊し遮断出来ますねぇ。
後は『FMS』を広域に広げ、内部に向けたレーザーによる包囲攻撃と共に、バリアを『逃亡阻止』に用いましょう。
更に『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]、『FBS』による斬撃も併せた[範囲攻撃]と[追撃]を行い、確実に仕留めて参りますねぇ。



「こんにちは、アリスのお茶会へようこそ!」
 訪れた者を歓迎するような言葉と共に悪意に満ち加笑顔を浮かべ、少女達が小瓶やティーポットを手にする。まさに不思議の国然とした仕草を見せる少女達の頭上には、長く白いウサギの耳。
 アリスを名乗る彼女たちは『『偽アリス』アリーチェ』。追い詰められた果てに役目を捨て、新たな忠誠に生きる先を見出した時計ウサギのなれの果てだ。
「憐れな方々では有りますが、容赦は無用ですねぇ。始めましょう」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は彼女たちの経緯を知るものの、倒す以上の手はないと『FAS』を装備し飛行、彼女たちの頭上に陣取った。
「そんなに遠慮しないで、素敵な薬をあげるから!」
 そのるこるに、アリーチェたちは一斉に薬瓶を投げつける。本来はアリスの方が薬を飲む側のはずだが、それを投げるのも話に聞く彼女たちのアリスへの屈折した憎悪の表れか。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて祈りを捧げましょう」
 その薬瓶が届く前にと、るこるは【豊乳女神の加護・籠域】を発動、周囲に覇道を纏うことで縦としそれを受け止めた。
 薬瓶は波動に当たって割れ、地面に中身がぶちまけられる。それは地に生える草を溶かし、腐らせていく即効性の劇薬のようだ。
「そんなんじゃいつまでたってもお家から出られないよ! だったらこれでダイエットして!」
 飲むどころか触れるだけでも危険そうな薬の後は、どろりとした白色の液体の入ったグラスをぶちまけるアリーチェ。るこるはそれも波動に当てて受け止めるが、液体こそかからないものの近くに漂うその臭気だけで鼻が曲がりそうになる。
「どうしたの? ミルクセーキはお嫌い? アリスの分まで飲んでいいから」
 その腐敗臭の漂うものを平然と進めるアリーチェ。しばしばオウガにはとんでもない悪食の者もいるが、持っている自分たちも顔から遠ざけ中身が肌に触れないようにしているあたり、彼女たちもこれはとても口にできるものではないと認識しているのだろう。あるいは本命の攻撃に用いているあたり、こちらにも何か劇物が含まれているのかもしれない。
 某r魚状態のままるこるは周囲にバリア『FMS』を展開、中にレーザーを放ってそのまま一気に殲滅しようとする。
「ああ、ひどい人! 私たちはか弱いアリスなのに!」
 自棄を起こしたように言いながら、またも薬瓶とミルクセーキを投げつけるアリーチェ。それはバリアに当たって割れるがその臭気はどんどん濃く立ち込めていき、るこるの思考を乱していく。思念で動く浮遊兵装はそれによって狙いがあいまいになり、攻撃の精度もどうしても下がっていった。
「ほら、ねえ、どうしたの? アリスのお願いは聞いてくれるんでしょ?」
 臭気に顔を逸らしたのを目ざとく見つけ、あてこするようにアリーチェが言う。その言い方は少し前までアリスの願いを聞いていた自分を否定するかのような言い方。あるいは彼女たちが一番殺したいのは、自分の過去なのかもしれない。
 だが、そんな自棄に巻き込まれて倒されるわけにはいかない。
 一つの精度が低いならと、砲撃と斬撃、さらに爆撃を同時にかけて一気に殲滅を図る。とりわけ爆撃は腐ったミルクセーキを焼き、一瞬の臭気の後それをただの焦げに変えた。
 そして臭いがなくなれば攻撃の精度も増していく。どんどん正確になっていく攻撃に、元々ただの時計ウサギ、オウガとなっても直接戦う力は低いアリーチェは瞬く間に追い詰められて行った。
「い、いやっ! せっかく……せっかく、助かったのに……騎士様……!」
 攻勢に出られると、とたんに怯え主に助けを乞うアリーチェ。だが当然ながらそれに答える声などなく、ただ虚ろに手を伸ばすままアリーチェたちは拾った命を散らしていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
SPD

ええ、私が貴女達の願いを叶えるわ。
何でも言って頂戴?

胸倉を掴まれ振り回されても
【見切り・軽業】で着地

それは貴女達の本当の願いじゃないでしょ?
感謝しかしない人間、感謝すらしない騎士、私はそんな連中とは違う。
貴女達を救う為に来たの

私に願いなさい。愛されたいって

【誘惑・催眠術】を籠めて説得。
『平等なる女神の愛』で女神モリガンと化し
全技能がUC級に

そなた達を報われぬ役目から解放しよう。
私に身を委ねるが良い

効力の増した誘惑で脱衣を促し
媚毒の【呪詛】唾液を注ぐ濃厚なキス。
背中から尻へと愛撫しつつ
胸の先端や股間を擦り合わせ【慰め・生命力吸収】
優しくも情熱的に彼女達を求め
無上の悦びを与えよう



「ねえお願い、アリスのお願いを聞いて欲しいの! アリスを助けてくれるんでしょ?」
 アリーチェたちは相手を馬鹿にしながら、相手を『茶会』に誘い『おねだり』を繰り返す。もちろんそれは一種の挑発、あるいは愚弄であり、相手が本気で話を聞いてくれるなどとは彼女たちも思ってはいない。
「ええ、私が貴女達の願いを叶えるわ。何でも言って頂戴?」
 だから、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)にこう言われたとてそれは挑戦を受けられた程度にしか思わなかった。
「嬉しいわ! じゃあアリスを守って! 抱きとめて! ねえ!」
 胸元に飛び込み、その胸ぐらをつかむ。だが、それは縋り、甘えるような仕草ではなく明らかに相手を掴み上げる暴力的な掴み方。そしてアリーチェはそのまま力任せにドゥルールを持ち上げ、思い切り振り回し始めた。
「ほら、ほら! ねぇ、こんなに必死になってるの! アリスのお願い聞いてよ、ねぇ!」
 そのまま振り回し、辺りにぶつけ、最後には投げ捨てる。さらに間髪入れずに別のアリーチェが彼女を掴み、また振り回しはじめた。
「ねぇ、お願い早く聞いて! アリスの為に……騎士様の為に死んで! 咎人を処刑すれば騎士様はお喜びになるの! 私たちの役目は騎士様の為に咎人を捕まえて処刑することなの!」
 主の望みをそのまま自分の望みの様に言いながら、アリーチェはドゥルールを振り回し続ける。
 アリーチェたちは代わる代わるそのまま何度もドゥルールを振り回し、最後にとどめとばかりに大きく投げ捨てた。
 そのままぼろ屑の様に地面に転がる、そう思われた瞬間、ドゥルールは空中で身を捻り軽やかに着地した。
「うそ、何で死んでないの!?」
 アリーチェの力は決して強くはない。それ故ドゥルールは叩きつけの瞬間を見切り、ぎりぎりで身をかわすことで致命打を避けていたのだ。
 それでもユーベルコードで何度も振り回されたダメージは浅くないが、それを感じさせぬ態度でアリーチェたちに迫る。
「それは貴女達の本当の願いじゃないでしょ? 感謝しかしない人間、感謝すらしない騎士、私はそんな連中とは違う。貴女達を救う為に来たの」
 アリーチェは自身を救わなかった役目に絶望し、騎士の配下となった。だがその騎士にあるのはオウガ・オリジンへの忠誠のみ。アリーチェはあくまで彼の基準で咎人ではないから殺さないだけであり、彼女たちが望んでいるから配下扱いしている、ただそれだけなのだ。
「騎士様は咎人の断罪にお忙しいの! 自他に厳しい方だから簡単な仕事をこなした程度ではお褒めにならないのよ!」
 理解していない……したくない部分を突かれ、必死に騎士を擁護するアリーチェ。だが、それが空言であるというのは誰よりも彼女たち自身が分かっているだろう。
「私に願いなさい。愛されたいって」
 催眠術を混ぜながらドゥルールが彼女たちを誘惑する。乱れた心に催眠はよく効き、アリーチェは追撃を忘れている。
『迷える子羊よ、乞い願いなさい』
『人を守り、魔を救おう。それが我らの在り方なれば』
 ドゥルールの声に別の声がダブり、その姿が変わる。【平等なる女神の愛】で変じたその姿は銀色の長髪と瞳、黒翼を持つ女神モリガン。
 彼女への変身の条件は『他者の願いを承諾する』こと。最初に『抱きとめて』と言ったアリーチェを、ドゥルールは胸に抱いた。そして『守って』の願いも。
「そなた達を報われぬ役目から解放しよう。私に身を委ねるが良い」
 最初にドゥルールを掴んだアリーチェをだきよせ、口づけして呪詛を注ぎながら生命力を吸い上げる。
 ドゥルールもよく用いる得意の型だが、その効果は彼女以上。顕現に条件の付いている今のモリガンは全ての技能が超高レベルという猟兵以上の力。集団型であるアリーチェが抗し得るものではない。
 そのまま肌をすり合わせられ、瞬く間に消えていくアリーチェ。死を恐れオウガとなった彼女たちの真の開放は、そのオウガとしての力さえ吸われた先にあるのだろうか。
 それからも一人ずつ、ドゥルールに掴みかかった順番通りに優しく情熱的にアリーチェを求めるモリガン。
「無上の悦びを与えよう」
 あるいは彼女たちの喜びとは、対価ある要求そのものであるのか。それは吸収されて行く彼女たちの姿からはまだ分からなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アマネセル・エルドラート
「元同族、となると何となくやりづらいわね。でも…だからこそ、放置しておきたくはないわ。」
自らも時計ウサギ故に、オウガに与する偽アリスに対して複雑な感情を抱きながらも。
ここは偽アリス達を止める為に動くことにしよう。

「貴方たちは都合よく利用されてるだけよ…って言っても。どうせ聞き入れてくれなさそうね。」
説得が無意味となれば殴ってでも止める、UC【ドリームベール】で身を隠すことで敵の攻撃に対応。

(そう言えば…時計ウサギとしての役目の意味なんて…改めて考えた事もなかったわね。)
などと考えながらも。
【ランスチャージ】で力を溜めつつアリスランスを振り回して一気に数を減らす事を狙って行こう。



 アリーチェたちはこの様な名、この様な格好をしているがその正体は時計ウサギである。そして当然ながら、猟兵にも時計ウサギはいる。
「まあ来てくれたのねウサギさん。さあ、アリスをここから助け出して!」
 アリーチェたちがわざとらしい態度で言うその相手はアマネセル・エルドラート(時計ウサギのアリスナイト・f34731)。時計ウサギの猟兵であった。
「元同族、となると何となくやりづらいわね。でも……だからこそ、放置しておきたくはないわ」
 自らも時計ウサギ故に、オウガに与する偽アリスに対して複雑な感情を抱きながらも。ここは偽アリス達を止める為に動くことにしよう。同族だけど、同族だから、戦い倒さねばならないとアマネセルは思う。
 相手が同族だとはアリーチェの方も分かったのか、より一層相手を愚弄するような表情になる。
「ああ、なんてひどいの! 時計ウサギのくせにアリスを攻撃するなんて! そんな罪深い人は断罪しなきゃ!」
 主たる騎士の役目を補佐するとでもいうつもりか。だがその言葉はまるごと自分自身に刺さるはず。恐らくそれも、彼女たちは分かっていっているのだろう。
 アリーチェたちはアマネセルに向かい掴みかかってくる。その動きは鋭いとは言えないが、様々な感情を込めたその手は見るからに力がこもっており、捕まれば持てる力全てを振り絞って投げ飛ばして来るだろう。
「貴方たちは都合よく利用されてるだけよ……って言っても。どうせ聞き入れてくれなさそうね」
 彼女たちは懲罰の騎士に盲従している。その理由は彼に心服しているからではなく、過酷すぎる現実から自分を守るため。騎士の方も彼女たちが従っている理由など気にしてもいないだろうし、使ってくれと言われているから使っている、ただそれだけなのだろう。
 そしてアリーチェたちも恐らく全てを自覚している。その上でその長い耳を塞ぎ、眼を閉じているのだ。そういう相手はただ理解していないよりもずっと話を聞かせるのが難しい。なればやはり、殴って止めるしかもう手はあるまい。
「外からは見えないわよ、夢だから」
 現実から目を逸らすなら、いっそ夢で包んでやろう。【ドリームベール】で自分の身を隠し、アリーチェの掴みかかりを躱すアマネセル。
「一人で逃げるなんて、ひどい時計ウサギ! アリスを連れて行くのが役目の癖に! それで何も帰って来なくても!」
 大声を上げ、適当な場所に何度も抱き着くような仕草を見せるアリーチェ。まさに必死というその姿を見て、アマネセルは思う。
(そう言えば……時計ウサギとしての役目の意味なんて……改めて考えた事もなかったわね)
 なぜ時計ウサギはアリスを導くのか。確かにアリーチェたちのいう通り、そこに基本的に見返りはない。それどころかオウガからは不興を買い、目の敵にされる事だってあり得るのだ。
 考えてみれば哲学としても生物学としても、役目の意味は不条理に見えてくる。アリスラビリンスそのものが不条理の塊のような世界、考えるだけ無駄だと言ってしまえばそうなのかもしれないが。
 考えながらも、アマネセルは体には力を溜めていく。
 やがて、何度目かの掴みかかりを外したアリーチェがその体をアマネセルの前に投げ出す格好になった。その胸を、アマネセルがアリスランスを構えた突進で一つ気にする。
「がっ……!」
 何も言うこともできず、そのまま消滅していくアリーチェ。敵の姿が見えたとあって残りもそこに殺到するが、アマネセルも武器を大きく振り回し対集団用の戦法に切り替える。
「この、この裏切り者!」
 それは誰に、どういう意味で言っているのか。闇雲に掴みかかるアリーチェをランスでなぎ払いながら、アマネセルは考える。
 勝勢にありながらも晴れぬ心のまま、アマネセルは敵を一体でも多く減らそうと道を踏み外した同族を骸の海へ送っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベアトリス・ミラー
ホークと行動
アドリブ・絡みOK

「あなたは」
再びルシフェルと再会し、あの時の事をホークに話す。
あの時は現れたりするだけで精一杯と話され納得をする。
「いえ、あなたがいなければ私は」
現れなければ今頃どうなってたかは分かる。
「よろしくお願いいたします」
アンスウェラーを抜き、相手と対峙する。
戦乙女を呼び出し相手の動きを観察して対策を講じる。
(当たれば危険ですね)
見切りからの瞬間思考力で次に何をするか考える。
「ルシフェルさん、お願いが」
お願いと言うのは閃光弾の様な目潰し出来る魔術を頼む。
考えた作戦はUCで自身を創り出して迷彩で隠れて後ろに回り込む。
熾天使の眼差しを用いて一掃を狙う。
「あの時とは違うのですね」
来たばかりの頃と違うと改めて思う。


ホーク・スターゲイザー
ミラーと行動
アドリブ・絡みOK

「私達を知っているのか?」
「レヴェリー様よりお話は伺っております」
従者であると話す。協力する理由は個人的な興味からと話す。
ミラーの元に現れた時は意識操作によるものと話す。
「あの時は急を要する状況でしたので」
「結果として助かった。その先の事は」
明宵の明星を抜くのに続いて拳護の付いた片刃の剣を抜く。
「終わりにしましょう」
ルシフェルが翼を広げて宙に浮かび魔力溜めを行う。
「光ある生の為に、シャイニングジャッジ!」
広範囲に光線を降り注がせ爆撃の様な範囲攻撃を行う。
フェイントと不規則な動きで空振りを誘発させるように動き隙を狙って早業による連撃を繰り出す。
「終わりにしましょう」
ミラーの攻撃に合わせてルシフェルも攻撃を繰り出す。



 アリーチェたちの茶会の前、そこにまた新たな三人が現れた。
「あなたは」
 ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)は同行者の中で特に白いロープの男に注目する。だが、ベアトリスの認識ではむしろその男に近しいはずのホーク・スターゲイザー(六天道子・f32751)は、まるで知らない者の様に彼に怪訝な目を向けた。
「私達を知っているのか?」
「レヴェリー様よりお話は伺っております」
 それもまた自身が召喚する者の名。ともすれば、彼もまたそれに類する者か。
 かつて三皇伏羲の塒で見せられた破滅の世界、そこで自身を助けたのが彼だとベアトリスはホークに告げる。その時は彼が差し向けたものだと思っていたが、当のホーク自身その時にそこまでの余裕はなかった。
「私はルシフェル、貴方様の従者に。個人的な趣味から協力させていただきます。あの時は急を要する状況でしたので、勝手ながら意識操作にて動かせていただきました」
 ユーベルコードまで本人の意思に関係なく勝手に使った。従者を名乗りながらその領分を超える行いを平然ととり状況を覆したというのは、その名に違わぬ力と傲慢か。
「いえ、あなたがいなければ私は」
 だが、彼の助けがなければ間違いなく自分はあそこで破滅に飲まれていた。彼に対し恩のあるベアトリスが言い添える。
「結果として助かった。その先の事は」
 少なくとも、それについては純粋にありがたい。その時彼女が助けられていなければ、連鎖的に自分も破滅に飲まれていたのだ。
 そして今なすべきは目の前の敵を倒すこと。ホークは明宵の明星を抜くのに続いて拳護の付いた片刃の剣を抜く。
「よろしくお願いいたします」
 つづいてベアトリスもアンスウェラーを抜き、相手と対峙した。
「これが私の力です」
 さらにそこに重ねて【神世創造】で戦乙女を呼び出し戦列に加える。
「まあ素敵、そんなにたくさんアリスのお茶会に来てくれるのね、どうぞ召し上がれ!」
 アリーチェたちは一斉に退くのはいった小瓶を投げつけてくる。中身が猛毒なのは事前に知っているが、その投げ方は力強いとは言い難く、軌道を見切るのは容易い。
(当たれば危険ですね)
 だが、その毒薬は次なる攻撃の呼び水。迂闊に防いだり叩き落としてしまえばそこに向かって本命が来る。アリーチェの方もそれを分かって相手のど真ん中に防ぎやすい軌道で投げていると見越したベアトリスは、戦乙女たちに指示を出しそれを大きく避けさせた。
 戦乙女がいた場所で瓶が割れ、そこに毒薬がぶちまけられる。
「どうしたの? せっかくミルクセーキをだしてあげるのに!」
 その場所に次ぐけて投げられる腐ったミルクセーキ。それはぶちまけられると同時に鼻が曲がりそうなほどの異臭を辺りに広げていく。臭いそのものに攻撃力はないが、それ以外に何が入っているかもわからないし、臭いだけでも意識は乱される。想像を力にする戦乙女にとっては意識の乱れはそれだけで致命傷だ。
 だが、それはベアトリス自身が十全に分かっていること。
「ルシフェルさん、お願いが」
 自身の考えていた策をルシフェルに伝えると、心得たとばかりにルシフェルは宙に浮いた。
「光ある生の為に、シャイニングジャッジ!」
 広範囲に光線を降り注がせ爆撃の様な範囲攻撃を行う。周囲にまき散らされる光が辺りを包み、そこにいるすべての者の視界を白に染めた。
「ああ、なによこれ、眩しい、痛い!」
 余りの眩さに思わず目を伏せるアリーチェ。その眩い白の中に紛れ、ホークは素早く動き敵中へと切り込んだ。敵の接近だけはなんとか察せたアリーチェは、近づく敵に闇雲につかみかかろうとする。
「ねぇ、おねがいよ! アリスの話を聞いて! 私たちを抱きとめて!」
 必死の願いも聞く義理はない。相手の視界が潰される状況ながらも、オーバーロードに至ったホークの目には敵の動きははっきりと映る。一度相手の認識できる距離まで近づいては離れるというフェイントをかけ、相手の組みつきを不規則に動いて躱しては空振りを誘発させる。
「役目は終わりだ」
 その隙を狙い、連続攻撃でホークは一人をまず仕留めた。だがそのうちに目も治ってきたか目をしばたかせながら辺りを見回す残りのアリーチェ。
「私達には……もうこの役目しかないの! 騎士様が答えてくれなくても! アリスを案内するよりはずっといいから!」
 そうして目指すのは、指揮役として直接の光線はここまでしてこなかったベアトリス。その胸ぐらに掴みかかるが、その体はまるで根が生えたように動かなかった。
「え、なんで……」
 そう疑問に思うアリーチェが、またも光に飲まれ消える。それは先のものよりさらに明確な破壊の意思を持った光。
 それを放ったのはベアトリス。放つのに高い威力を持つ代わりに放つのにチャージ時間のいる『熾天使の眼差し』。ユーベルコード【アルカナ・ブラスター】に似た特性を持つその武器を使う時間を稼ぐため、彼女は閃光に紛れてアリーチェたちの後ろに回っていた。そしてその場に残したのは、戦乙女に代わり創造した自分の写し身。神でも悪魔でもない故にその精度は戦乙女に劣るかもしれないが、一度きりのデコイとしてはそれで十分だ。
「あの時とは違うのですね」
 かつて、自分を死の恐怖に追い込んだアリスラビリンス。だが、今は違う。自分には戦う力があり、オウガが如何なる存在かという知識もあり最早得体のしれない存在ではない。オウガの長であるオウガ・オリジンも既に倒れ、勝手を始める者、猟書家に鞍替えする者、そして未だ彼女に縋り続ける者と統制も取れなくなっている。来たばかりの頃とは何もかもが違うと、改めて思った。あの破滅は、もはや過去なのだと。
「終わりにしましょう」
 戦いを、彼女たちの逃避を。再度、今度は目くらましではなくより破壊力を込めて光を放つルシフェル。それに呼応し、ホークとベアトリスも最後の一掃にかかった。目も眩む光の中自由に戦場を把握し動ける、それだけの感知力を齎すオーバーロード。これもまた、過去には無かった力。
「騎士様……だれか……私を、助けて……!」
 過去と名前を捨てたアリーチェたちは、誰も取らぬ手を伸ばしながらその命を光の中へ消していった。オウガと化した彼女たちの行く末は最早骸の海しかない。己が選んだ道とはいえそれは救いになったのか。それに対して首を縦に振ることは、この場の誰にもできなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『懲罰の騎士』

POW   :    汝は咎人、罪ありき
【血濡れた大剣】が命中した対象を切断する。
SPD   :    汝は咎人、逃れることは叶わず
【拘束具】【拷問器具】【赤黒い焔】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    汝は咎人、同胞の叫びを聞け
【血濡れた大剣】を向けた対象に、【かつて処刑した者達の断末魔の叫び】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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 かつてここの住人であった『『偽アリス』アリーチェ』たちは全滅し、この世界に根差していた者は完全に誰もいなくなった。では、この世界は今は誰のものなのか。その答えを迷いなく言えるだろう者が、重い足音と共に現れた。
「汝らに問う。汝ら、己が罪を如何に捉えるか」
 崩れ、欠けた剣と鎧を装備した巨躯の騎士。それは兜の奥から赤い眼光を覗かせながら猟兵たちの前に立った。己が存在に耳目を集めようとするが如くずん、と大地に剣を突き立てる男。彼こそが『懲罰の騎士』。今のこの小世界の主であり、オウガ・オリジン死した後も彼女に絶対の忠誠を誓い続ける盲従の騎士である。
「餌でありながら逃げるアリス、それを幇助する時計ウサギ、己が領に不埒者を匿う愉快な仲間、オウガの恥晒しを飼うオウガブラッド。それら全て咎人である」
 アリスラビリンスの出身種族は全てオウガからどうにか逃れようとしている。それは彼にとって許しがたいことなのだろう。
「猟書家なる輩どもはあろうことかオウガ・オリジン様を拉致しそのお力を簒奪。結果大いなる外患さえ誘致しその治世を崩壊させるに至った。まさに逆賊。オウガ・オリジン様の御霊を安んじるには彼の者の首を全て落とすより他はなし。それに寝返りし不忠者も同罪なり」
 確かにオウガ・オリジンと猟書家の確執から迷宮災厄戦は起こり、結果的に彼女は倒された。そこだけ抜きだせば、彼の言い分にも理はあろう。
「なれど、最も罪深きは汝ら猟兵! 汝らはオウガ・オリジン様が知ろしめすこの世界を乱し、あまつそのお命さえ奪い去った。その罪、百度の断罪をもってしても償い難し!」
 声高に言うその言葉は字面だけならばまさに忠臣の鑑と言うべきもの。だが、そのあまりの淀みなさは帰って空々しささえ感じさせる。まるでそれは何度も己の中で復唱し、何も考えずとも諳んじられるよう暗記していたかの如くに。そして恐らく彼は気づいていまい。数えた罪の中に己が配下を倒されのが入っていないことなどは。
「オウガ・オリジン様より賜りし役目を我は今果たさん! 咎人を断罪し、その首をオウガ・オリジン様に捧げん!」
 堂々と宣言し剣を構える懲罰の騎士。主の名を呼び、その役目に縋り続けるこの男に他者の言葉は聞き入れられまい。恐らくその役目に盲従することだけが、主失いし彼が己を保つただ一つの方法なのだろう。
 猟兵よ、忠義の名の下全てから目を背けたこの男を断罪せよ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
歪んでしまったとは言え、素晴らしい赤心ですからねぇ。
これ以上壊れる前に、終わらせて差し上げますぅ。

『FAS』を使用し飛行、騎士との間合いを開いた上で『FMS』のバリアを展開、私を外側に置いて騎士の周囲一帯を包みますねぇ。
そして、残る『F●S』各種は内部に配置し【接穣】を発動、全『祭器』を攻撃主体に超強化すると共に『即時修復効果』を付与しますぅ。
『大剣の斬撃』で『バリア』等の[切断]は可能でしょうが、『即時修復』で壊す端から即再生する以上、この『檻』からは逃れられません。
後は『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]、『FBS』の斬撃を重ね、確実に叩きますねぇ。



 自らの忠義と役目に従い、猟兵を『断罪』せんと現れた『懲罰の騎士』。主から託されたというその役目を誇る……あるいは縋るその姿を、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は複雑そうに見る。
「歪んでしまったとは言え、素晴らしい赤心ですからねぇ。これ以上壊れる前に、終わらせて差し上げますぅ」
 既に暴走一歩手前……あるいはもうしてしまっているのかもしれないその心を止めるべく、るこるは彼の前に浮き上がった。
「第一の咎人は汝か。その頭を垂れ我が剣を受けよ!」
 上段に構える懲罰の騎士。大柄な彼が長大な剣でその構えを取れば、宙に浮いたるこるにさえその切っ先が届くほど。その状態から思い切り振り下ろせば、とっさに躱したその身さえ剣圧だけで大きく揺らぐ。
 相手の力は本物と見たるこるは、より間合いを開け、円盤『FMS』を配置した。バリアを張る装置だが、それで囲むのは自分ではなく懲罰の騎士の方だ。
「大いなる豊饒の女神、豊かなる器を今一度、新しき力へとお導き下さい」
 その上で、るこるは【豊乳女神の加護・接穣】を発動する。騎士を取り巻くバリアが一段と輝きを増し、光の層も厚くなったように見えた。
「これで我から遠ざかろうと? 甘い!」
 そのバリアに向け、騎士は剣を振り下ろした。その一撃はまるで紙のようにバリアを切り裂き、消滅させる。
 だが、そこから出ようと騎士が一歩踏み出す、それよりも早くバリアは元に戻り再度騎士を阻んだ。
 さらにそこに砲撃機能を持つ『FRS』『FSS』、爆弾『FSD』に飛び回る戦輪『FBS』を差し向け、るこるは騎士を封殺にかかる。
「乱れ入るもまた罪なり。落ちよ!」
 大きな腱を振り回し、砲撃を防ぎ砲台を切り、爆炎をかき消して戦輪を一気に叩き落とす。その巨躯と巨大な武器を活かした攻撃はまさに圧巻の一言だが、それでも壊された兵装たちは即時元に戻っていく。
 これこそが【豊乳女神の加護・接穣】の効果、全ての祭器への即時修復効果の追加である。圧倒的な攻撃力を持って一撃で敵を処断することを得意とする騎士にとっては、かなり分が悪いと言っていい効果だろう。
「真なる罪は指揮する者に在り。やはりその首落とすより他なし!」
 操縦者であるるこるを狙い、騎士は進軍する。一撃で壊しても意味がないならと、騎士はバリアの壁に剣を押しあて、体ごと押し込んで突き抜けようとした。
「ぬぅぅ……邪魔を、するな!」
 それを阻もうと一斉に襲い掛かる攻撃兵器たち。こちらに攻撃が向かぬことで間断なく騎士にダメージを与えていくことができ、さらにそれによって騎士の押し込み自体も鈍る。
「ぬうぅ……うおぉぉぉ!!」
 雄たけびを上げバリアを突っ切ろうとする騎士。元々かけていた鎧にさらなる罅が入るが、それに構う様子はない。
「オウガ・オリジン様……お力を!」
 騎士は亡き主の名を呼び、自らを奮い立たせる。だが、それに答える声など当然ながらあるはずもない。それはさながら、アリーチェたちの懇願に彼が答えなかったかのように。
 その姿を見ながら、るこるは浮遊兵装たちにさらなる攻撃を命じる。それに答え兵装たちは一気に攻撃を激化させた。
 咎人を処刑することを己が役目とした懲罰の騎士。だが今は逃れられぬ檻に捕らえられた彼こそが受刑者。そしてただ一人、一刀のもと首を落としてきた彼とは対照的に、それを成すは戒めた相手を群れを成して殺す小さき兵たち。
 銃殺隊からの銃殺刑は軍人に対して行われる処刑であり、軍法違反者が処されるものである。だが同時に、軍人として死を与え最後の名誉を守るものとされることもある。
 オウガ・オリジンへの尽きぬ忠義と、それを自らを保たせる杖、薬として都合よく使いながらもそのことから目を逸らす不敬。それを持つ懲罰の騎士には、ある種最もふさわしい処刑法かもしれない。
 そして同時に襲い掛かる戦輪と爆弾は、名誉なき死である打ち首、相手を人と見ない爆殺を示すものか。
「オウガ・オリジン様……!」
 ついに壁の前で騎士ががくりと膝をつき、そこに一気に兵装が襲い掛かる。この『断罪』にて彼の罪が本当に断たれるか。それは刑吏の如く兵装を指揮するるこるにも分からないものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アマネセル・エルドラート
「罪、ね。確かに貴方たちオウガにとってはそうなんだろうけれど。」
言いたい事はわからないでもない。
しかしオウガにせよ、猟書家にせよ、どちらも此方にとって放置しておける物ではない。

「生憎、私達にとっては、オウガは野放しにしておくわけには行かないのよ。猟書家が嫌いってことだけは気が合いそうだけれど…此処で倒させてもらうわ。」
UC【アリスナイト・イマジネイション】で敵の攻撃に備えつつ、一気に走りこんで接近。
属性攻撃で電気の属性を付与した赤のプレイングカードを鎧の隙間を狙って投擲。
金属製の鎧であれば上手く隙間に入らなかったとしても通電である程度のダメージは狙えると判断、なるべく多く投げつけて行こう。



 予知の段階、そして猟兵の前に出てきた時、懲罰の騎士は様々な者の名を上げ、それらを全て罪人と断じた。
「罪、ね。確かに貴方たちオウガにとってはそうなんだろうけれど」
 それはオウガ・オリジンに仕えるオウガとして見れば至って真っ当な感覚と言えるかもしれないが、そもそもそれを阻むために猟兵はこの世界にやってきたのだ。
 言いたい事はわからないでもない。しかしオウガにせよ、猟書家にせよ、どちらも此方にとって放置しておける物ではない。アマネセル・エルドラート(時計ウサギのアリスナイト・f34731)はそう思う。そしてそれ故に、共感できる部分も一部はあるとも。
「生憎、私達にとっては、オウガは野放しにしておくわけには行かないのよ。猟書家が嫌いってことだけは気が合いそうだけれど……此処で倒させてもらうわ」
 アマネセルもまた、アリスラビリンス、そしてオブリビオン・フォーミュラの倒れた世界全てを脅かす猟書家は忌まわしい相手だと感じている。だが、それで敵の敵は味方と簡単に行くわけにはいかないのだ。
「汝は時計ウサギか。今ここで汝の余罪を検める暇はない。なれど、猟兵であるというそれだけで万死に値する咎人なり!」
 大きく剣を振り上げ、アマネセルを『断罪』にかかる騎士。アマネセルが時計ウサギであると分かって同じ時計ウサギであったアリーチェたちに何も言及しないのは、やはり彼がただ一つの方向しか向いていないことの表れだろう。
 アマネセルの頭部を目掛け、まっすぐに振り下ろされる巨大な剣。その軌道に、まるで身を差し出すかの如くアマネセルは真っ直ぐに突っ込んでいった。
「ここで、倒れるわけにはいかないの!」
 その剣を、現れた鎧が弾き返した。【アリスナイト・イマジネイション】の鎧は想像が尽きない限り無敵。騎士の剣はその妄念と信念全てが乗った彼そのものとすら言えるもの。それを己の信の鎧で受け止めるのは、意思と意思のぶつかり合いとも言える。あるいはこれこそが、アマネセルが懲罰の騎士に送る精一杯の意思表示か。
 そのまま鎧で剣の刃を滑って一気に走り込み、その巨体の懐まで入り込む。
「その大きい剣なら、この距離は逆に安全なはずよ!」
 いかにも取り回しの悪そうな大剣の内側に入って狙うのは、あらゆる鎧の弱点とも言われる関節の隙間。特徴的な裏面を持った『赤のプレイングカード』をその隙間に滑り込ませ、そこに電撃の属性を込めていく。
「ぬぅぅぅっ!」
 関節から鎧の中へ、カードを起点に電撃が流れ込んでいく。鎧の内側の彼が如何な体をしているか……そもそもそんなものがあるのかすら分からないが、その電撃は確実に彼の体を通り抜けていった。
「役目を果たせず死するはオウガ・オリジン様への不敬なり!」
 強引に剣を振り上げ、まるで切腹でもするかの如く自身に向けて叩きつける。自ら諸共になろうとアマネセルを叩き切ろうという捨て身の一撃だが、それもまたアマネセルの纏った鎧に弾かれ、それは奇しくも騎士の自爆すらも防いだ。
「金属製の鎧であれば上手く隙間に入らなかったとしても通電である程度のダメージは狙える……我慢比べよ、オウガの騎士!」
 絶対の防御があるとはいえ、こうまで大胆な策を取られては悠長に隙間を狙っている暇はない。残るカードは鎧に張り付けるように投げつけ、その一つ一つに電撃の力を宿し一気に通電させていく。それはさながら電気椅子による処刑の執行の如くであり、オウガを倒すという猟兵の使命を騎士に最もよく分かる形で表しているようにも見えた。
「咎人の死を確かめて初めて刑は終わる……その時まで、我が目を閉じるわけにはいかぬ……!」
 剣をアマネセルに押し当て、力強く引く懲罰の騎士。その力の出所は忠誠か、妄執か。それが鎧の無敵を上回るその一瞬前まで、カードも尽きよとばかりにありったけ投げ続けるアマネセル。
 やがせカードデッキが尽き、押し当てられる剣を振り払ってアマネセルが離れた瞬間、流し込んだ電撃が一気にスパークを起こし、鎧の罅や隙間から眩い大爆発を起こした。
 そのままそこから黒い煙を立て、がくりと膝を落とす懲罰の騎士。
 アリーチェたちと戦った時から考えていた役目の意味、それはアマネセルにもまだ確たる答えは出せていない。だが騎士の姿は、自らは猟兵として間違いなく役目を果たしたとの確信を彼女に与える者であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラムダ・ツァオ(サポート)
ラムダよ、よろしく。
相手が強いのなら、削れる機会は逃さず、相手に隙は見せず、
長期戦を覚悟して着実に狙うのがいいわね。
勿論、隙があれば見逃したくないけど。
見切ったり足には自信があるけど、過信せずに落ち着いて戦況を見極めるわ。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.囮役としてボスの注意を引き付け、味方の攻撃を当てやすくする。
2.ボスの移動手段→攻撃手段の優先順で奪っていく。
3.仕留められそうな場合は積極的に仕留めに行く。
 (他に仕留めたい人がいればその手助け)

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
アドリブ・連携歓迎


ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
オブリビオンに滅ぼされた都市で自分だけが生き残った過去を悔い、人々を守ることを重視して行動します。

●戦闘において
「及ばずながら、手助けさせて貰おう」
「貴様の相手は、この私だ!」
「なんと強力なユーベルコードだ……! (解説) 直撃すれば一たまりも無いぞ!」

・牽制攻撃
・敵の攻撃から他の猟兵や一般人を守る
・敵の攻撃を回避してカウンター
・ついでに敵の強さを解説する
など、防御的・補助的な行動を得意とします。

メイン武器は「黒剣」です。

他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。


ナイツ・ディン(サポート)
「ディロ、行くぞ!」
『竜たる我が力を見るがいい!』

ナイツは「」、一人称俺、冷静でありつつ好奇心旺盛
ディロ(竜槍/紅竜)は『』、一人称我、不遜な暴れん坊
ローア(竜槍/蒼竜)も『』、一人称私、丁寧な保護者

小柄な妖精種を生かして飛びながら(空中戦)ヒットアンドアウェイ、回避(見切り、第六感、盾受け、武器受け)してから弱点(鎧無視攻撃)を竜槍で突いたり薙ぎ払ったりカウンターが基本。場合によっては弓の援護射撃も有り。

UCは適宜使っていくぞ。
「暴れ倒してやるぞ、ディロ!」

援護よりも押せ押せ、アタッカー気質。変身系UCを使った場合は激痛耐性、火炎耐性、、氷結耐性でゴリ押すことも多い。



 懲罰の騎士はオウガ・オリジンに絶対の忠誠を誓っている。その心そのものは天晴れと見る者も少なくないが、それ故に彼は迷宮災厄戦における後顧の憂い、後腐れとして決して看過できぬ存在であった。あれから一年がたち、その時生き残った猟書家は未だ全員健在。その上オウガ・オリジン勢力まで盛り返されてしまっては、ただでさえ平穏に遠いアリスラビリンスの混沌はどれほど深くなってしまうことか。
「ディロ、行くぞ!」
 ナイツ・ディン(竜呼びの針・f00509)はそれはさせぬと、相棒の紅竜『ディロ』と共に騎士へと立ち向かった。
 そしてその戦いに呼応する者が他にも二人。
「及ばずながら、手助けさせて貰おう」
「ラムダよ、よろしく」
 ギャレット・ディマージオ(人間の黒騎士・f02429)とラムダ・ツァオ(影・f00001)。二人もまたこの懲罰の騎士は看過ならざる敵と討滅するために戦線に加わった。
 ナイツも含めたこの三人は、いずれも猟兵が世界を渡り始めたその時から前線にいる正に最古参、歴戦の猟兵である。
 三人の纏うその空気、風格とも呼ぶべきものを感じ取ったか、懲罰の騎士は改めて剣を構える。
「三人か。良かろう。刑吏としての我が全てを持って、汝らを刑に処すことをオウガ・オリジン様に誓おう!」
 敬愛する主の名において、猟兵を断罪せんとする騎士。無論それをされるつもりは誰にもない。
「相手が強いのなら、削れる機会は逃さず、相手に隙は見せず、長期戦を覚悟して着実に狙うのがいいわね」
 まず動くのはラムダ。相手はその分厚い鎧と巨体から相当なタフネスを持っていることが推察される。ならば一気に仕留めるよりは相手を消耗させていくことが自分の役目。
「じゃあそんな着込んでいるあなたに対抗して、こちらは一肌脱ぐわよ」
 自分の着ている服をおもむろに脱ぎ捨てるラムダ。健康的な姿態が露になるが、それに対する騎士の反応はある種予想通り。
「より軽装に……速さを求めたか。なれど汝は咎人、逃れることは叶わず」
 露出に動揺することなど一切なく、いかにも素早そうなラムダを戒めるべく拘束具拷問器具を投げつける。それはまるでラムダに新たな衣装を着せようとするかのようにその体目がけて飛んでいくが、得意の跳躍でラムダはそれを避ける。
「避けるのにこれを使いたくはないわね……その身体、削らせてもらうわ」
 一気に肉薄し、白黒二つの刃を構えて騎士に切りつけるラムダ。その刃は鎧の表面を撫で、分厚い鎧をまるで肉を削ぐかのように削り取っていく。
「かような刃で我が鎧貫けようはずもなし!」
 物理ばかりが能でないとばかりに、赤黒い炎を眼前に立ち上らせる騎士。ラムダは素早く身をひるがえし、【危肌一髪】とばかりにそれが身を炙る前に敵から距離を取った。
「貴様の相手は、この私だ!」
 入れ替わるように前に出たギャレットが、黒剣を構えて騎士にぶつかっていく。
「汝、我と同じ死の匂いがする。その剣がオウガ・オリジン様旗下を切ったとあらば、その罪ここで断罪せねばならぬ」
 兜の奥の赤き眼光が注視するのはギャレットの愛剣『漆影剣リグガガ』。オブリビオンの血によって呪われたその剣は、騎士が振るう処刑の剣と何かしら通じるものがあるのかもしれない。
 騎士は同じように咎人の血を無数に吸った自らの剣を振り上げ、剣諸共ギャレットを断ち割らんと勢いよく振り下ろした。その力は受けるには厳しいと判断したギャレットは、とっさに身をよじってそれを躱す。
「なんと強力なユーベルコードだ……! 大きく、重く、早い、まさに殺すために研ぎ澄まされた一撃。直撃すれば一たまりも無いぞ!」
 罪ありきと振り下ろされたその一撃を、決して軽く見られぬ脅威と固唾をのむギャレット。それは一見敵の力量に気圧されているようであって、しかしたった一太刀で相手の力を見抜く彼の慧眼を表すものでもあった。
「我が黒剣の姿は一つではない」
 敵の剣を受けぬよう、【黒刃鞭】にて剣を鞭剣に変形させ、牽制をかけていく戦法に切り替えるギャレット。相手の防御力から一撃必殺は望むべくもないが、大ぶりな攻撃には即座に回避に回れるし、ラムダが削った鎧をさらに削ぐような攻撃は少しずつ騎士のタフネスをも削いでいく。
「足掻くこともまた罪を重ねると知れ。汝は咎人、同胞の叫びを聞け」
 自身の剣を改めて構え直し、高く掲げる騎士。その切っ先の向いた方にいるのは、空中戦を仕掛けんと宙を舞っていたナイツだ。
 剣から放たれるのは、この刃にかかり処刑された者たちの断末魔。ナイツの脳裏に調子のいい笑い声が聞こえ、そしてそれが不自然に断ち切られる。
「ぐ……これは……!」
 それはこの剣にかかり首を落とされた、猟書家に寝返ったオウガの最期の声か。今笑っていた者が骸になる、その不自然さ、唐突さはある種恐怖や苦痛の絶叫よりもより不気味に恐ろしく、ナイツの精神、そしてそこから肉体までもを侵していく。
 騎士の目的はこれを咎人と見なすもの全てに齎すことか。それだけは何としてもさせてはいけない。
 乱れる意識の中でナイツは敵の攻撃を見る。これは精神から攻めるような攻撃だが、あくまで発射口となっているのは剣だ。ならばその切っ先から外れればよい。
 敵の攻撃の本質を見切ったナイツが一気に横に飛ぶ。それと同時に、ナイツは相手を自らの場に引きずり込まんとした。
「妖精を追ったら帰れないんだぜ?」
 周囲を【竜砂迷宮】で囲み、騎士から場の有利を奪う。心を攻める攻撃ならばフィールドを自らの者とすることで精神的な安定を確保し、同時に自らに従う竜の飛び交う砂漠に相手を引きずりこむことで地の利も自分のものにするナイツ。
「咎人に死に場所を選ぶ権利など無し。潔く我が剣に……」
 体を回しナイツを追おうとする騎士だが、その身を黒き刃の鞭が戒めた。
「貴様の相手はこの私だ、そう言ったろう!」
 ギャレットは味方を守るということを本分に動く。攻撃にさらされる味方を捨て置くなどするはずがない。刃で削れた鎧をさらに刃で戒め、敵の守りを削ぐ。
「私も相手して欲しいかな」
 そこに混ざるようにラムダも攻めかかる。だがその動きは倒すというより攪乱するもの。ラムダもまた最も得意とするのは味方の攻撃を補助し、敵の動きを妨げることなのだ。
 守りと攪乱、その上に築かれる力はここに。
「暴れ倒してやるぞ、ディロ!」
 槍と化した相棒を構え、全速力で突っ込んでいくナイツ。彼の最も得意とするところ、それは怪力で相手をぶち抜くアタッカーであった。
 狙うは仲間が幾度も攻め削りとり、ついにその役目を失った鎧の最も薄い所。
 小さな体に乗せた大きな力が、騎士の巨体を貫いた。
「ぐうおおおおおぉぉぉぉ!!」
 絶叫を上げ巨体を倒れさせる懲罰の騎士。その声に込められたは体の苦痛か主に誓った断罪を果たせぬ悔悟か。いずれであれ、オウガ・オリジン残党許すまじという猟兵の目的が果たされたことを覆せるものではないのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ホーク・スターゲイザー
ミラーと行動
アドリブ・絡みOK

デュークと共に黒い陣羽織に黒装束の浪人を呼び出す。
「いざ尋常に」
鬼の刑部の異名を持ち、目的であったある藩の若君を護り切った剣豪。
一刀流による立ち回りを行い鎖分銅も使っての武器封じを行ったりする。
「見事な忠誠、しかし目を背けているに過ぎない」
ルシフェルも剣を抜き、戦線に加わる。
相手の動きを読みながら回避を行いつつ黄龍の霊器と陰狼の霊器を一つにしてグレイブに形成して攻撃を行う。
レバーを引けばチャージを行い刀身から魔弾を撃ち出し、シールドを展開による防御、近接戦闘も出来るが使い手の技量が問われる。
「終わりにする」


ベアトリス・ミラー
ホークと行動
アドリブ・絡みOK

戦乙女を創り出して加勢させる。
「これは」
デュークに差し出された一本の長柄。
「まだ試作品なのですが」
「どうすれば」
アンスウェラーを取りつけグレイブとして機能出来る様に。
(かなり癖がある武器になりますね)
レバーを引けばチャージしてから魔弾を撃ち出し、シールド展開機能を備えたアタッチメント。
狙い撃てば武器の軌道を逸らしたりけん制できる可能性もあると踏んで魔弾による援護を行う。
「癖がありますね。使いこなせれば強いですが……あとは携帯性でしょうか」
バラせれば携帯性は上がると進言する。



 懲罰の騎士。彼はその名の通り、オウガ・オリジンに仕える騎士である。実体は首切り役人であったとしても、その忠誠心はまさに物語に登場する身命を主に捧げた誇り高き騎士そのものであった。
 そして国によってその役を負うものの名前は変わる。江戸時代までの日本において、その階級は『侍』と呼ばれた。とりわけ軍人としての側面が必要ない平時に置いて、彼らは特権と引き換えに忠誠と規範を第一とするまさに西洋の騎士と同じ役目を期待されていた。
 その侍の姿をした者が、今騎士に向かい合う。
「いざ尋常に」
 黒い陣羽織に黒装束の男。構えるのは一刀だが、その腰には暗器である鎖分銅が巻かれており彼が剣一辺倒の者ではないことが伺える。
 鬼の刑部の異名を持ち、目的であったある藩の若君を護り切った剣豪。彼はホーク・スターゲイザー(六天道子・f32751)が召喚したまた新たなる力であった。
「これより行うは果たし合いに非ず。断罪なり」
 騎士は決闘には付き合わぬとばかりに剣から片手を離し、そこから拘束具と拷問具を飛ばした。それを一刀のもとに切り捨て、刑部は鎖分銅を投げ返す。
 既にオウガ・オリジンの世界は崩壊している。そしてそのない幻想に縋り耐えた役目に邁進し続けることで騎士はそれから目を逸らし続けている。刑部……即ち刑吏を含めた法務全般に関わる名を持つ者。その役名を持ちながら今は浪人たる彼が未だ同じ役に縋る男に向ける意思は、果たして届いているのか。
 力比べを続ける両者に、ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)が創造した戦乙女が加勢する。想像の続く限り無敵である彼女たちだが、例え妄念とはいえ意思の硬さは騎士もまた至上のもの。信の比べ合いとなればあるいは不利を取るかもしれない。なれば、自らも攻めに出ねば。
 そう考えるベアトリスに、黒人の男が一本の長柄を差し出した。
「これは」
 手渡した男、ホークに召喚された者ながら彼にすらその正体がつかめぬ商人デュークは簡単に説明をする。
「まだ試作品なのですが」
「どうすれば」
 自身の武器に取り付けグレイブのように使え、そうとだけデュークは説明し、ベアトリスは言われた通りに『アンスウェラー』を取り付ける。
(かなり癖がある武器になりますね)
 長い武器はそれだけで強みを持つが、当然バランスは悪くなり簡単には使いこなせない。おまけにただの長物ではなく、レバーを引けばチャージしてから魔弾を撃ち出し、シールド展開機能を備えたアタッチメント。多機能ということはそれだけ習熟に時間を要するということだ。
 さらにもう一人、白服の男も剣を抜き騎士に切りかかる。
「見事な忠誠、しかし目を背けているに過ぎない」
 本気にも挑発にも取れる調子で言う男を、赤黒い炎を巻き上げ押し返さんとする騎士。
「徒党を組んで我が役目を阻まんとするか。ならば見せしめに首魁を曝してくれよう」
 狙うは召喚主であるホークだとばかりに、騎士は拘束具をそちらへ放つ。
 だがその攻撃は既に刑部、そして白服の男ルシフェルが一度受けたもの。それを参考に相手の動きを読みながら回避を行い、『黄龍の霊器』と『陰狼の霊器』を一つにしてグレイブのような形につなげるホーク。その形は、ベアトリスが持つものと酷似している。
 レバーを引けばチャージを行い刀身から魔弾を撃ち出し、シールドを展開による防御も可能。もちろんグレイブ本来の使い方である、長柄の手持ち武器としての先頭も可能だ。だがやはりその手の多さはそのまま使い辛さに繋がってしまう。切り替えに手間取った一瞬の隙を突き、騎士は剣を勢いよく振り下ろした。
「その首刎ねてくれる!」
 触れれば人の首など簡単に落とせる斬撃。それがホークの首を刎ねると思われた瞬間、その巨大な刀身に連続して弾丸が当たりその軌道を逸らした。
 それを撃ったのは、狙い撃てば武器の軌道を逸らしたりけん制できる可能性もあると踏んで魔弾による援護を行ったベアトリス。銃の扱いに特別慣れているわけではなかったが、的が大きかったことと彼女に注視されて痛かったこと、そして敵を倒すのではなく攻撃の妨害に狙いを絞ったことでそれは上手くいき、剣の軌道を逸らすことに成功した。
「癖がありますね。使いこなせれば強いですが……あとは携帯性でしょうか」
「解体すれば元通りに携帯できますよ」
 元は複数武器の合体なので、バラすことは可能と進言するデューク。だが今はその合体した武器で攻めるべき時。
「終わりにする」
 一度間合いを離し、遠間からグレイブを突き込むホーク。それは巨剣のリーチをも上回り、強烈にその体を突き崩した。使い手の技量が問われる扱い辛い長さだが、活かせたときの有利はまさにこの通り。
「おのれ……おのれ……!」
 巨体を仰向けに倒れさせながら怒りの言葉を吐く騎士。だが、その体は最早鎧の重量さえ錘に見える程に傷ついている。暴走する忠義の止まる時は近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
POW

守護霊の【ドーピング】で戦闘力を高め
オリジン様の面影を見せる

そうか……わたし亡き後も、ずっと……
大義であった。もう休むが良い

わたしがルルの中に居ると簡単には信じられまい。
【見切り・ジャンプ】で攻撃を避け
【怪力・踏みつけ・武器落とし】で大剣を【盗み】
【化術・料理】で殺傷力はそのままに美しくデコレーション。
『暴食の闇』で喰らい、わたしである事を示しつつ
強化された【誘惑・催眠術・全力魔法】で信用させる

信じるのが遅いわ!
この世界で最も尊いわたしを!

(アリーチェ達を弄んだ彼は憎いですが
貴女を想う彼は憎めません。オリジン様が望まれるなら……)

すまぬな、ルル

奴に労いと【生命力吸収】の抱擁を



「オウガ・オリジン様……我は……オリジン様がために……!」
 元よりひび割れ欠けていたものであったが、そこからさらに鎧は砕け、剣は歪み、その姿はまさに満身創痍というべき者。だが、彼はオウガ・オリジンの名を呼びその為に戦うことをやめない。それが彼の存在の核であり、彼が己を保つためのただ一つの方法であるからだ。
 その騎士の姿をドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は複雑そうに一瞥した後、己の吸収した霊の中から一人を選んでその身に宿した。
 その姿を自分の体に幻影として重ねてドゥルールは騎士の前に立つ。その姿を見た時、騎士は全ての負傷を忘れたかの如くに立ちあがった。
「そ、そのお姿は……」
 ドゥルールが自らに重ねたのは暗闇の顔を持つ幼い少女。それは紛れもなく、騎士が絶対の忠誠を捧げるオウガ・オリジンその人であった。己の全てである主の姿に、しかし騎士は剣を向ける。
「おのれ……あろうことか猟兵がオウガ・オリジン様を騙るとは! その罪の重さ最早計り難し! その身体を万の欠片に引き裂いたとて咎の一部も償うに能わず!」
 オブリビオンは本能的に猟兵を敵と理解できる。それに従い彼は目の前のオウガ・オリジンが猟兵が変じたものだということを察した。己の最も大切なもの、あるいは自分が自分であるための縁を侮辱されたと今までで最大の怒りを見せる懲罰の騎士。その姿を、表情のない暗闇がじっと見つめた。
「そうか……わたし亡き後も、ずっと……大義であった。もう休むが良い」
 その言葉を遮るように、巨大な剣が振り下ろされた。側近さえ理由なく殺した彼女が部下を労うはずがない。報いなくてこその忠義とばかりに振られる剣を、ドゥルールの変じたオウガ・オリジンは跳躍して避けた。
「わたしがルルの中に居ると簡単には信じられまい」
 相手の攻撃に理解を示すような言葉。なれどそれは騎士の怒りを煽るばかり。
「オウガ・オリジン様への愚弄はこの世で最も許されざる罪! その魂に至るまで切り潰してくれる!」
 怒りに任せさらに剣を振り回す騎士。だが自らが犯しているやもしれぬ罪を声高に叫び相手を攻めるその姿は、まさに彼が一顧だにしなかった配下アリーチェがしたのと同じこと。
 その剣を足で踏みつけ、体格差からは想像もできぬほどの重量をかけて踏み込み強引にその手から取り落とさせる。そのまま素早く剣を盗み取り、自ら掲げるドゥルール。その剣を一撫ですると、欠けていた部分が補われるだけでなく美しく煌びやかな、宝剣の如き見た目へと変化した。さらにその上に乗るのはたくさんのクリームやフルーツ……ただしその組成はアリーチェが用いたが如き猛毒や、ガラスすら切れそうなほどに研磨された宝石。
「オウガ・オリジン様より賜りし我が剣を……!」
 己が命とも言える剣さえも奪われ辱められた騎士は、全身から炎が立ち上らんばかりの怒りを見せる。一方でドゥルールはその剣を持って相手を切ろうというのか。いや。
「体に悪いものほど美味しいってね」
 ドゥルールはその剣を、暗闇に染まった自らの顔に押し込んだ。そして剣が顔に飲まれて行くと同時に、ドゥルールの気配が消え別のものへ変わっていく。
「そんな……まさか……」
 あらゆる危険物を喰らい、それが有害であるほど力とする【暴食の闇】。それは正しくオウガ・オリジンの魂を元に得た能力であり、それによって自らの力を高めることで完全な浸食を抑えつつ彼女の魂を強く顕現させる。何しろオウガ・オリジンの好物は『美しく有害なもの』なのだ。
 剣を喰らったオウガ・オリジンはまるで怒りに任せたかのように巨大化する。
「信じるのが遅いわ! この世界で最も尊いわたしを!」
「も、申し訳ございませぬ!」
 傲慢なる一喝。それこそが己の知る主の姿であると、反射的に平伏する懲罰の騎士。種を明かせばユーベルコードによって強化された誘惑と催眠術を全力で放った故の事であるのだが、そう言った精神操作はとりわけ脆い心にはよく染みる。
 二度とないと知りながら、新たな生き方など選べぬ故に忠義を盾に目を閉じ続けた懲罰の騎士。壊れかけた心を蕩かす忠義の行く先を得たその身はどれほどに脆かろうことか。
(アリーチェ達を弄んだ彼は憎いですが貴女を想う彼は憎めません。オリジン様が望まれるなら……)
「すまぬな、ルル」
 オウガ・オリジンは彼より大きな手を回し、騎士の巨躯を抱く。そのまま力を込めて鎧を抱き潰しつつ生命力を啜る様は、戯れの処刑か労いの抱擁か。
 主がため数多の咎人を断罪してきた懲罰の騎士は、主の手によって死を賜りその鎧諸共砕け散っていった。
 住人であったアリーチェと仮初の主である懲罰の騎士が消え、この小世界は完全に死んだ世界となった。逃げた住人達がいつか戻ってくるのか、それとも他のオウガが住み着くのか。あるいは未来永劫無人のままなのかもしれない。だがどうなろうと、役目を捨てた者と役目だけに縋り続けた者、そしてその届かぬ忠義を伝えるものは、ここには何も残るまい。役目と忠義は、小世界の虚空に消えたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月16日


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#アリスラビリンス
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#【Q】


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジャン・ストレインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト