6
奴隷の恋と女主人の愛

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




●少女の悔恨
 美しい女性(ひと)がいた。
 妖艶。魔性。人外。そう言った類の美しい女性だった。

 路地裏で薄汚れた私を、あの人は拾ってくれた。
 私の身を清め、傷を手当てし、綺麗な衣服を与え、温かい食事をくれた。
 優しく髪を梳きながら、『綺麗』と言ってくれた。
 あの感触を今もまだ覚えている。

 その人が何であれ、関係なかった。
 拾ってくれた恩に報いるべく、精一杯尽くした。
 血を求められれば血を捧げた。
 身体を求められれば身体を捧げた。
 心も魂も、求められるまでもなく全て捧げた。
 いつまでも優しく微笑んで欲しかったから。
 いつまでも愛の言葉を囁いて欲しかったから。

 暖かな笑顔を、私だけのものにしたくなってしまった。
 それが私の罪。他の何を押し退けてでも求めてしまった。
 だから私はこの『牢獄』に囚われた。それが私への罰。

 与えられる愛が偽りだと、知っていた。
 ううん、偽りと呼ぶのは間違いだ。
 人形や愛玩動物の愛だと、分かっていた。

 それでも――愛して欲しかった。きっと今でも。


「皆様、お集まりくださりありがとうございます」
 ソフィーヤ・ユリエヴァ(黒百合の聖女・f10512)と名乗ったグリモア猟兵がぺこりとお辞儀する。
「今回、女吸血鬼に囚われた少女達の救出をお願いします」
 ダークセイヴァーで美しい少女達を囲う女吸血鬼を予知した。
 ヴァンパイアの居城は、所在が掴めていてもその防備は完璧だ。
 だが警備が手薄になる隙はある。その好機に、攻め落とすのが今回の依頼だ。
「但し、少女達の多くは、女主人に洗脳されています」
 魔法ではない。それは、恋心と言う妄信。
 世界に虐げられ身も心も弱った少女に付け込み、その心を奪う。
 愛情という水を与えられれば、飢えて乾いた心は容易く堕ちてしまう。

「ですがそれは偽り……ヴァンパイアに飽きられれば捨てられる、虚構の蜜月です」
 今寵愛を受けている少女だけでなく、捨てられた少女達も未だ忠誠を誓っている。
 奉仕し続ければ、再び愛してくれると信じて。
 それしか、少女達には縋るものが無い。
 唯一の光と信じた物に裏切られては、心が壊れてしまうから。
「ただ救いの手を伸ばしても、少女達は拒むことでしょう……」
 誰とも知らない侵入者より、女主人に受けた『愛情』に縋ってしまう。
 それどころか鎖に繋がれたまま、粗末な武器を手に刃向かってくるだろう。
 『きっと女主人が褒めてくれる』、その為だけに儚い命を賭して。
 ソフィーヤは予知で見たその痛々しい光景に、悲しげに眉を下げる。

「皆様にお願いすることは3つ」
 顔を上げて仕切り直すソフィーヤは握り拳を見せ、一本ずつ指を立てる。

「1つ。城へ侵入時、立ち向かってくる少女達の無力化……可能なら説得と救出をお願いします」
 予知によって絶好の攻撃の機会を得た今、城には警備らしい警備はいない。
 少女達は猟兵達に挑んでくるだろう。それが無謀だと知っていても。
 戦闘力は皆無と言っていい。生死を問わず無力化するだけなら容易だろう。
 だが必要なのは何よりも言葉と、救おうとする意志だ。

「2つ。本命の女性ヴァンパイアの撃破です。但し、取り巻きには少女が多数います」
 今寵愛を受けている少女達がその身を挺して守り、戦おうとする。
 今愛されている者の忠誠心は高く、言葉を聞き入れる可能性は低い。
「ですが少女の犠牲を厭わずヴァンパイアを狙うといった行為は、避けてくださいまし」
 例え迷いなく少女を傷付け殺そうと、猟兵にとってより不利になる可能性が高い。
 命を奪わず、無力化に留めて欲しい。
 ここで命を落とすのは、ヴァンパイアだけでいい。

「3つ。無事ヴァンパイアを倒して救えた場合、少女達の心のケアをお願いします」
 無事救出した少女達は、ソフィーヤが手配した受け入れ先で暮らすことになる。
 猟兵達が去った後も、ある程度の支援は可能だ。
 だが少女達が共に手を取り合い、少女達自身で暮らせるようにしなくてはならない。
 その為には何よりも心の安らぎと癒しが必要だ。

「どうか、皆様の手で救い出し、本当の優しい言葉を掛けてあげてくださいまし」
 ソフィーヤは猟兵達へ挨拶の時よりも深く、長く、頭を下げた。


アマガエル
 9つ目のシナリオです。アマガエルと申します。
 シリアスで、百合色強めになっています。

 1章は、半ば捨てられた少女達との『集団戦』。
 2章は、少女達を囲った女主人との『ボス戦』。
 3章は、助け出した少女達の心のケアする『日常』。

 3章ではプレイングでソフィーヤ・ユリエヴァにお声かけ頂ければ登場します。
 それでは皆様の優しいプレイングをお待ちしております。
32




第1章 集団戦 『隷属から逃れる術を知らない少女達』

POW   :    命より重い忠誠を誓おう
【忠誠を誓った者から授かった力】に覚醒して【命を省みず戦う戦士】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    主のためなら限界すら越えて戦い続けよう
【主の命令書を読み限界を超えた捨て身の攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    主人に永遠の忠誠を誓おう
【忠誠を誓う言葉】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

久遠・翔
…どこの世界にもこの手の外道はいるんっすね
彼女達を見ていると過去の自分思い出すっすよ…

城に侵入する際、一切隠れません
少女達が現れたら説得を試みるっす

少女達の攻撃に対して避けはせずに喰らって「貴方達はその愛だけで満足なんっすか?」と問いましょう
確かに恩はあると思いますが、相手は打算あっての…そして貴方達を一人の人間とは見ていません

こんな事をしてもただの番犬としてとしか見てもらえないでしょう…だから、ここから出ていきませんか?もし、そうであれば俺が責任をもって貴方達の面倒見ます…一人の人間として
だから、お願いします…貴方達を傷つけたくない

…同じ、奴隷だった者として
…もう、そんな人出したくないんっす



「……っ! 侵入者……?!」
 少女達が侵入者を見つけ出す。
 いや、相手は隠れずに真正面から堂々と入ってきていた。
 侵入者である久遠・翔(性別迷子・f00042)は隷従する少女達を見つめる。
「……どこの世界にもこの手の外道はいるんっすね」
 服というにも憚られる薄いボロ切れを着せられ、重たい首枷を付けた少女。
 その姿を見て翔は過去の自分を思い出す。
 権力、武力、財力問わず、強大な力を持って何の罰を受けることなく、他者を支配する者がやることは、どこも同じだ。

「侵入者をやっつければ……きっとあの方に褒めて貰えるっ!」
 思い思いの武器を構えた少女が、翔に目掛けて武器を振るう。
 真正面から飛び込んでくるだけの稚拙な攻撃が、翔の腹部に刺さる。
 反撃はおろか、回避も防御もしない。
「貴女達はその愛だけで満足なんっすか?」
 痛みで――否、悲しみに表情を歪めながらフォークを持った手首を掴んで捕まえる。
 その腕は余りに細い。少し力加減を間違えただけで折れてしまいそうだ。
「こんな事をしても、ただの番犬としてしか見てもらえないっすよ」
「……っ! 愛してもらえるなら、犬でも――っ」
「ここから、出て行きませんか? 俺が責任を持って貴女達の面倒を見ます。……一人の人間として」
 翔は少女に『犬扱いでもいい』なんて言葉は言わせない。
 悲しい顔を浮かべながら言う少女に、自分を騙す嘘なんてつかせたくなかった。
 自分で自分を傷つけて、軽んじて、騙して、諦めて、無理矢理納得しようとしている。

「だから、お願いします……貴女達を傷つけたくない」
 少女の手を、自分の胸元に抱きしめる。
 キツく巻いたサラシで押し潰していようと、温もりと鼓動は伝えられる。
「……同じ、奴隷だった者として……もう、そんな人出したくないんっす」
 翔が少女の瞳を真っ直ぐ見つめていると、徐々にその顔が紅く染まっていく。
「なら……貴女が、私を愛してくれますか……?」
「えっ!?」
 少女にじぃっと熱っぽく見つめられる。
 『無自覚の魅了』が発動し、少女を虜にしてしまった。
「私は――もはやご主人様にとって不要な存在……本当は知っていました。だから、貴女についていきます」
 けれどただ魅了しただけではない。
 翔の想いが伝わったからこそ、少女は捨てられた事を受け入れ、翔に身を委ねた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リカルド・マスケラス
お面の乗った宇宙バイク
「向こうはいいように使われているって知ってても、尽くしてるっすから、説得の糸口は見つけられそうにないっすかねー?」
女吸血鬼が悪どいことをやっているなら、このまま見逃せば自分と同じ境遇の子(つまりライバル)が増えるとか言えるが、そう言う情報もないし

とりあえず、自分にできることをやるだけっすね。少女達をできるだけ傷つけずに捕縛するという不利な状況に【ジャスティス・ペイン】を発動させる。
【騎乗】でバイクの動きで翻弄させつつ【念動力】【ロープワーク】を使用し彼女達を繋ぐ鎖で手足を拘束。力づくで引きちぎろうものなら
「領主との絆、忠誠の証を壊していいんすか?」
と愛情を盾にやめさせる


六代目・松座衛門
「君たちの主人に用事がある! 退いてもらおうか!」
。〇(自分たちと戦う気力がある分、まだ救えるはずだ。)
希望なきこの世界の中で、「反抗する」ことを選べる少女たちに、希望を見出しつつ対峙する。

「「暁闇」だと傷つけちまう。ならば…!」
鋭い爪をもつ『戦闘用人形「暁闇」』の代わりにUC【即席人形劇】を発動。人形の整備用のパーツで非殺傷性の人形を作り、少女を取り押さえる補助をさせる。

「ひとまず、大人しくしてろ!」
捕まえた少女は、手ごろな布やロープで、手足を縛り、口には猿轡をかけておこう。さらに、『念動術「領」』で動かないように念力をかけて、無力化するよう努力する。

【WIZ】選択。アドリブ、連携歓迎。



 城門を抜けて少女の前に現れた無人の宇宙バイクには、人の代わりにお面が乗っていた。
 ヒーローマスクであるリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)。
「向こうはいいように使われているって知ってても、尽くしてるっすから、説得の糸口は見つけられそうにないっすかねー?」
 女吸血鬼が悪どい事をやっている情報はリカルドが調べた限りなかった。
 平気で他人を踏みにじる者、苦しむ姿を愉しむ者。
 この世界には、そんな者達が振り撒く悲劇に有り触れている。
 吸血鬼は直接手を下すことなく、誰かが捨てた玩具を拾い上げているだけなのだろう。

「ご主人様の元には、行かせないっ!」
「君達は君達なりに、希望を掴もうとしているんだな」
 だが立ち向かおうとする少女達を見た六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)は笑みを浮かべる。
 捨てられていると知りながら、『反抗する』という選択肢を選んだ。
 それが誤った希望であれ、彼女達は絶望し切っていない。
「だが今は君達の主人に用事がある! 退いてもらおうか!」
 少女が折れた矢を握りしめて、振り被る。
 目をぎゅっと閉じて駆けて来た少女の攻撃を、松座衛門は容易く躱す。
 戦闘慣れしていないどころではない。
 暴力を振るわれる事はあっても、自ら振るったことないのだろう。
「『暁闇』だと傷付けちまう。ならば……! 鬼猟流 裏芸『即席人形劇』!」
 目の前で召喚された即席のガラクタ人形に驚いた少女を松座衛門は手刀で打ち据える。

「とりあえず、自分にできることをやるだけっすね」
 リカルドにとって、少女が何人徒党を組もうと無力化するのは容易い。
 だが少女自身が自傷を伴う力を振るうとなればまた別だ。
 それを傷付けずに捕縛するという困難なオーダーをこなす為に。
 何より弱き者の力となるヒーローとして正義を為すべく、その力を増大させる。
 バイクのエンジンを唸らせ、駆け抜ける。
 少女とすれ違い様にその鎖を操り、少女の身体に巻きつけて拘束した。
「っ、こんなの……っ!」
 非力な少女が自らを戒める鎖を掴み、力を高めていく。
 それは吸血鬼の力。ただの少女がそれに身を任せれば、無事では済まない。

「領主との絆、忠誠の証を壊していいんすか?」
「……っ!」
「自分は、利用されてると知ってなお尽くすのも、悪いとは言わないっすよ」
 少女達が望んでいること……それが少女の愛ならば、リカルドは最良と言わずとも否定はしない。
「けどそんな泣きそうな顔してたら放っておけないっす」
 リカルドは普段チャラけてはいても、だからこそ少女に悲痛な顔をさせるわけにはいかない。

「ひとまず、大人しくしてろ!」
 取り押さえた少女を、布とロープで縛り上げ、猿轡を噛ませる。
 万一ヤケを起こして自害などされぬよう、更に念動術で拘束する。
「君達の主人は自分達が必ず倒す。これは絶対に変えられない」
 抵抗する力尽きた少女を縛り上げながら、松座衛門が語り掛ける。
 オブリビオンである以上、倒さねばならない相手だ。
「その後、どうやって生きるか考えるんだ。自分達に立ち向かった君達なら、できるはずだ」
 松座衛門は立ち上がり少女に背を向ける。
 無謀、軽率、蛮勇、自暴自棄。
 彼女達の行動を否定するのは簡単だ。
 だが松座衛門はそこに彼女達の希望を見出した。
「死ぬ気で生きようとした。その気持ちを、忘れるな」
 目指すは、吸血鬼が待つであろう城の最奥だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイ・アイオライト
【SPD判定】
……「後に何も残らない」って自分で分かっている人間の結末は、どうしてこう……いつも悲惨なのかしらね。こういう人間を救いたいのに、あたしには戦うことしかできないわ。
もちろん、少女たちには傷1つつけないわよ。
【選択したUC】で影の壁を形成、少女からの攻撃を『オーラ防御』よ。『殺気』『恐怖を与える』で少女を怯ませて鋼糸で拘束するわ。

捨て身の攻撃……あたしを殺す気でいるなら、もちろんアンタも殺される覚悟があるのよね?
いいわ、それなら相手してあげる。でも心の中に微かでも生きたい思う心があるのなら……もう一度よく考えなさい。なぜ自分が「生」を望むのかをね。



「……『後に何も残らない』って自分で分かっている人間の結末は、どうしてこう……いつも悲惨なのかしらね」
 レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)は『こういう人間を救いたい』と願うのに、戦うことしかできない自分に唇を噛み締める。
 武器も持たず襲い掛かってくる少女を鋼糸で縛り上げて拘束し、意識を刈り取っていく。
 そこにフォークを手にした少女が現れ、殺意を向けてきた。
「侵入者……っ!」
「あたしを殺す気でいるなら、もちろんアンタも殺される覚悟があるのよね?」
 レイの殺気を込めた眼差しに身を竦ませ、震える手を抑えるように両手でフォークを握りしめる。
 少女は脚を震わせながらもレイを見据えている。
「私なんて……どうなったっていい。殺されたっていい。ご主人様が褒めてくれるなら……!」
 自分の命より、主人を優先する少女。
 レイがそこに見たのは、勇気ではなく『諦観』。
 命より大切な物を見つけたのではない。
 ただ自分の命を、軽んじているだけだ。

「……いいわ、それなら相手してあげる」
 レイに目掛けて、真正面から飛び込んでくる。
 捨て身の少女を鋼糸で縛り上げることはできない。
 少女の力では拘束を断ち切ることはできなくても、暴れて自らの肌を裂くのは目に見えている。
 少女が力いっぱい振り被ったフォークが、見えない壁に阻まれる。
「っ、この……!」
「でも心の中に微かでも生きたいと思う心があるなら……もう一度よく考えなさい」
 レイは少女に顔を近づけて、じっとその目を見つめる。
「何故自分が、『生』を望むのかをね」
「何、故……?」
 問われた少女の悲痛に歪む。
 手放されたフォークがからんと音を立てて落ちる。
「そんなの、ご主人様の為に決まってるっ!」
 力無く膝をついて少女は胸元の鎖を手握りしめる。

「こんな世界で生きてたって……辛くて、辛くて、苦しいだけ! ずっと死んだ方がマシだったっ!」
 レイは泣き叫ぶ少女に、投げかける言葉が見つからない。
 心も身体も未成熟な、弱い少女だ。
「でもあの人が温かさを教えてくれたッ! 生まれて初めて生きていてよかったと思えたッ! あの人に愛される事だけが私の幸せだった!」
 冷たい世界で生き続けていたなら、『大人』になっただろう。
 良いか悪いかではなく、そうするしかないという現実を知ったはずだ。
「分かってるの! もうご主人様は私を愛してない! 見てくれないっ!」
 だが吸血鬼は無責任に温もりを与え、無垢な少女の甘い蜜だけを吸い、捨てた。
 少女の弱い心を乱し狂わせるには十分。
 こんな少女の心を弄んだ吸血鬼に、レイは怒りを覚える。
「もう愛されないなら、死んだ方が良い……殺してよ……! もう、終わりにして……」
 少女に生きたいと願えるほどの希望はなく、自ら命を断つこともできない。
 絶望しながらも希望を求めて生きる、中途半端で、ごく当たり前の少女だった。
「……そう。でも貴女は死なせない。ヴァンパイアに愛された事だけが幸せと言うなら、尚更ね」
 レイは戦意を失った少女の意識を刈り取る。
 今出来る事は、少女を死なせないことと、元凶たる吸血鬼を討つことだけ。
「……貴女の生きる理由。見つけられるといいのだけれど」
 気を失った少女を抱え、レイは安全な場所に運び出した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

白皇・尊
妻の鉋(f01859)と共闘
僕も奴隷を持っていたので分かりますが…彼女達の主人は酷いですね、愛情がまるで無い。
「主人と奴隷の愛、その真実の愛を彼女達に教えてあげましょう…鉋」

☆共闘
まずは鉋と自身に強固な防御壁《守護法陣》(オーラ防御)を付与して守りを固め、鉋と共に攻勢へ。
「魔法?呪い?笑えます」
少女達に符を投擲し貼りつけて《霊子ハック》(ハッキング)を開始、その身を霊力を通して解析、少女達を縛る吸血鬼の術を解除して説得を行います。
「貴女達の主人は貴女達を既に愛玩物としても見ていません、捨てています。
何故って?
簡単です、僕ならまだ遊ぶ奴隷は壊れないよう守りの術をかけておきますから」

※アドリブ歓迎


喰龍・鉋
尊(f12369)と共闘 他人の心を弄んで最終的には捨てる…?最低だね、
そんなの絶対許せないよ
尊の守護を受けて少女たちの前に出るよ
攻撃しようとしてくる少女達の武装を【鎧砕き】で破壊するよ 【二回攻撃】で破壊した子は二回目に【怪力】を使って拘束してから言葉を掛けるよ
「ボクだって昔はキミたちみたいな奴隷だった、そして逃げ出した世界で尊と会えたんだ、キミたちが不安なのは逃げたところで未来がないことに対する恐怖だろう?それならボクが保証する、キミたちが居る以上に未来が無い場所なんて無い、目をさますんだ!!」



「他人の心を弄んで最終的には捨てる……? 最低だね、そんなの絶対許せないよ」
「僕も奴隷を持っていたので分かりますが……彼女達の主人は酷いですね、愛情がまるでない」
 喰龍・鉋(楽天家の呪われた黒騎士・f01859)と白皇・尊(魔性の仙狐・f12369)は、ボロを纏った少女を観察する。
「ご主人様のこと、悪く、言わないでっ!」
 少女は弓すら持たず、木の矢だけを手に思いっきり振り下ろす。
 だがそれは、尊の前に割って入った鉋と、尊によって施された防御壁の前に弾かれる。
「主人と奴隷の愛、その真実の愛を彼女達に教えてあげましょう……鉋」
「うん!」
 鉋が少女を引き付け、その古びた矢を折る。
 武器と呼ぶのも憚られるそれを失った少女は、後ろへ後ずさりながら叫ぶ。
「私は……愛されてるっ! ちゃんと、愛されてたんだっ!」
 今にも泣きそうなくしゃくしゃの顔は、少女自身その言葉を信じ切れていない。
 尊が投げた符が、少女に貼り付く。
「っ、何、これっ!?」
 少女は訳も分からず剥がそうとするが、剥がれない。
 少女に掛けられた魔法や呪い、洗脳の類いを探る。

「いいえ、愛されてなどいませんよ。まぁ、少なくとも今は、と言っておきましょうか」
 尊は溜息一つと共に、ふるふると首を振る。
 彼女達は操られていない。いや、この場合そうする必要すらないのだろう。
 要らなくなった玩具に、『名札』など要らない。
「貴女達の主人は、貴女達を既に愛玩物としても見ていません、捨てています」
「嘘っ!! 違う、何も知らないのに適当な事言わないでッ!」
 はっきりと言い切る尊に、少女は懸命に否定する。
「いいえ、わかります。僕なら、まだ遊ぶ奴隷は壊れないよう守りの術を掛けておきますから」
「……っ!」
 尊に気を取られた隙に、鉋が少女を拘束する。
 ただの非力な少女。ロクに食事も摂っていないか細い腕で、鉋を振り解くことはできない。
 怪力を込めるまでもない。いや、それどころか軽く力を込めれば折れてしまいそうだ。
 鉋の腕の中で精一杯暴れているつもりの少女の姿に、悲しげに眉を下げる。
 だが、だからこそ伝えなくてはならないと意を決する。

「ボクだって昔はキミ達みたいな奴隷だった」
 かつて異端として扱われた鉋は、少なくとも寵愛を受けている間は幸福だった少女よりも、より凄惨な目に遭った。
「そして逃げ出した世界で尊と逢えたんだ。キミ達が不安なのは、逃げた所で未来が無い事に対する恐怖だろう?」
「……っ!!」
 鉋の言葉に、少女は鉋の腕の中でびくっと震える。
「違うっ! 私は、違うの……!」
 自分に言い聞かせるような震える声が、何よりも物語っている。
 この少女は、愛されている、また愛してくれると信じているのではない。
 再び闇の中に進むことを怯えている。
 一度味わった光に、温もりを求めているだけだ。
「それならボクが保証する、キミ達が居るここ以上に未来が無い場所なんてない、目を覚ますんだ!!」
 過去の化身あるヴァンパイアの居城。
 停滞し、淀んだこの場所は閉ざされている。
 こんなところに居ようと、何も変わらない。
「貴女達は捨てられ、奴隷ではない。大手を振ってここから出られるんですよ」
「怖がらないで。ボクにとっての尊のように、キミ達にも素敵な出逢いがあるよ」
 抵抗の無くなった少女を解放し、鉋は改めて差し伸べる。
 少女は尊と鉋を見比べ、差し出された手をじっと見つめ――。
 やがてそっと手を取った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雛菊・璃奈
貴女達に向けられた愛は偽物…って、ただ言っても聞かないよね…。
でも、心当たりある子もいるんじゃないかな…?貴女達に向ける愛は偽り…主人にとってはお気に入りの道具に過ぎないんだって…。
心につけこんでくるオブリビオンのやり方はよく知ってる…。その結果、破滅させられた人達も…。
わたしは、その人達を救えなかった…間に合わなかった…。わたしは、貴女達を助けたい…。
本当に貴女達を愛しているなら、こんな勝ち目の無い戦いなんてさせたりしない…。
お願い、もう戦わないで…。

武器も能力も使わず、ひたすら
語りかけて説得…。
魔剣達が身を案じてガタガタと動こうとするのを抑え込んで語り掛けるよ…。

※アドリブ歓迎



「貴女達に向けられた愛は偽物……って、ただ言っても聞かないよね……」
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は自分の前に立ち塞がる少女を見つめる。
 『またご主人様に愛して貰う』。
 それが少女達の心を守る『希望』なのだろう。
「でも、心当たりある子もいるんじゃないかな……?
 貴女達に向ける愛は偽り……主人にとってはお気に入りの道具に過ぎないんだって……」
「違うっ! そんな事ないっ! ご主人様は沢山、沢山私を愛して、可愛がってくれた!」
 璃奈の言葉に少女はぶんぶんと首を振る。
 本当はそれを理解しているからこそ、聞きたくないのだろう。
 理解を拒む、生きる為に心を守る防衛本能だ。
「心につけこんでくるオブリビオンのやり方はよく知ってる……その結果、破滅させられた人達も……」
 璃奈は思い出す。
 かつて救えなかった人達を。救いたかった人達を。
 だが目の前にいる彼女達は、まだ生きている。言葉が届く。
 だから、きっと救えるはずだ。
「本当に貴女達を愛しているなら、こんな勝ち目の戦いなんてさせたりしない……」
「もう……もう黙ってっ! あなたの言葉なんて聞きたくないッ!」
 これだけ城内に入り込まれて、気付いてないということはないだろう。
 吸血鬼が少女に向けるのはきっと――無関心だ。

「偽りでも……嘘でもいいのッ! あの方が温もりをくれたのは……本当だからッ!」
 少女がフォークを手に璃奈目掛けて駆け出す。
 魔剣が璃奈の身を案じて、ガタガタと動く。
 璃奈を守るべく切り裂こうとする魔剣を抑え、自分に向かってくる少女を見つめる。
 少女の顔に浮かんだ表情は、璃奈への怒りでも憎悪でもない。
 ただ苦しくて、悲しくて、どうしようもなくて、やり場のない想いに苛まれている。
 幼く、か弱い、ただ泣いている少女。
「お願い、もう戦わないで……」
 無抵抗な璃奈に、振り上げた少女の手が止まる。
 抵抗しない――できない相手への一方的な暴力。
 それは、かつて少女も経験したことのあるもの。
 今自分がしようとしていることが、かつて憎悪したそれと同じだと、少女は気付いてしまった。

「じゃあ……じゃあ私はどうしたらいいの……?」
 握りしめた拳が開かれると、少女の手からフォークが零れ落ちる。
 理不尽な暴力に晒されるのがどれほど辛く苦しいか、彼女達は身に染みていた。
「それを、これから一緒に考えよう……? わたし達は、そのために来たんだよ……」
 璃奈の魔剣が鳴動をやめる。
 少女はようやく『助け』を求めた。
 きっと誰かに助けを求めることすら知らなかったのだろう。
 無意識で無自覚かもしれない。けれど未来に進む、確かな一歩だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
見ず知らずの声に耳を傾けてもらうためには、それなりの誠意が必要ですよね。
わたしは少女たちのもとへ無防備に歩み寄り、攻撃はすべて受け止めてそのまま静かに抱きとめます。
珍しく不快に感じる痛みに耐えつつ、優しく微笑みかけます。

「こんなことをしていても自分自身が傷つくだけです。あなたたちを愛してくれる人はたくさんいるはずですから、ここを出て探しにいきましょう?」

こういう子たちは見慣れているはずなんですけど、つい自分を重ねて無茶をしてしまいます…。実際はそれほど似た境遇ではないですし、あるいは彼女たちのほうが愛があっただけ幸せかもしれませんが。



「見ず知らずの声に耳を傾けてもらうためには、それなりの誠意が必要ですよね」
 レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)は両手を広げて、少女達に優しく微笑みかけながら無防備に歩み寄る。
 だが少女達は恐ろしいものを見るように、後ずさった。
「……っ、いや、来ないで……っ! そんな顔見せないでッ!!」
 手を伸ばせば届く距離に近づいたところで、少女は手にしたフォークを振るう。
 レナータはそれを避けるどころか防ぎもせず、肌に刺さる。
 歪んでしまったレナータにとって、傷付けられる事は被虐の愉悦を感じる。
 だが珍しくこの痛みは不快だった。
 何故不快なのか、レナータは少し考えて答えを出す。

「こんなことをしていても自分自身が傷つくだけです」
「傷付いたって良いっ! あの方が褒めてくれるなら、私なんてっ!」
 レナータは優しく少女を抱きしめて、表情を崩すことなく微笑みかける。
 きっとこの少女にとって他者を傷つける事は、最悪の『自傷』なのだろう。
 腕の中で震える少女が、手酷い暴力を振るわれていたことは想像に難くない。
 最も忌むべき『他者を傷付ける』行為を強いられたのだ。
 レナータがよく知る、誰かを傷付ける事で愉悦を覚える者とは決定的に違う。

「あなたたちを愛してくれる人はたくさんいるはずですから、ここを出て探しにいきましょう?」
「嘘、嘘っ! そんな人いない……! 私にはご主人様だけなの!」
 叫ぶように喚く少女を、ぎゅっと抱きしめる。
 腕の中で少女が暴れると、握りしめたフォークが傷口を抉って血が零れる。
 だがレナータは優しく微笑んだまま、傷など付いてなどいないように振る舞う。
「怖いんですね」
 少女の身体は凍え切って酷く冷たい。温もりを伝えるように更に強く抱く。
 レナータの優しい言葉に怯える少女。
 それは信じてもまた捨てられ、裏切られる事を恐れているのだろう。

「大丈夫。あなたは、誰も傷付けなくていいんです」
 肩に乗せるように少女の頭を抱きしめて、片翼で包み込んで髪を撫でる。
 次第に強張った身体から力が抜けた少女はレナータの腕の中で泣きじゃくる。
 レナータから流れる血が少女の肌に落ち、少女は自分が傷付けたことを思い出す。
「ごめ……ごめ、なさ……っ」
「いいんですよ。あなたは何も悪くありません」
 レナータは少女に自分の面影を重ねる。無茶したのもそのせいだろう。
 だがその境遇はより過酷なものだ。
 あるいは仮初めでも愛があっただけ彼女達のほうが幸せかもしれない。
 だが彼女達が恵まれていることは、それではない。
 何より、レナータ達がこうして助けに来たことが、一番の幸福だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
彼女達を殺さずに無力化すればいいの?
私の得意分野ね。
心のケアは後。今は無力化に専念するわ

『リザレクト・オブリビオン』で死霊騎士と蛇竜を召喚。
彼らは私と同じ強さ。技能も使える。
2体に【呪詛】を唱えさせ、少女達の精神力を削るわ

悲愴の剣で手首を切って死霊の召喚を解除。
精神的に疲労させた少女達を【誘惑】しつつ【催眠術】をかけ
忠誠心・依存心を私に向けさせるわ

途中で抵抗されても
【激痛耐性】と【オーラ防御】を持つ私には愛撫も同然。
さあ、身も心も 私に差し出しなさい?

抱きしめ、胸を押し付け合い
髪、背中、お尻、そして……
彼女達の全てを愛撫しながら【吸血】と【生命力吸収】で
死なない程度に美味しくいただくわね……❤



「彼女達を殺さずに無力化すればいいのね。なら私の得意分野ね」
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は、死霊騎士と蛇竜を召喚する。
 心のケアは後回し、今は無力化が先決だ。
「あぐ……っ!」
 2体に呪詛を唱えさせ、少女の精神を削る。
 少女にとって唯一の心の支えは吸血鬼の女主人。
 主人に捨てられた彼女達に、耐えるほどの心の強さは持っていない。
 ドゥルールは召喚を解き、地べたにへたり込み弱った少女に近づき、顎を持ち上げる。
「ふふふ。捨てられた可哀想な娘達……私が拾ってあげる❤」
 頬を撫でて誘惑し、じっと瞳を見つめて催眠術を施す。
 女主人に向けていた忠誠心と、依存心を自分に向けるように。
 少女を抱きしめながら、豊かな胸を押し付ける。
 栄養状況が悪いのだろう、身体は酷く細く肉付きが悪い。
 だが胸だけはドゥルールには劣るもののそれなりにあり、柔らかさを堪能する。
 少女の髪から背中、お尻を弄り撫で下ろす。
「嫌……っ! 私に触らないでっ!」
「ふふっ、抵抗してもだぁめ♪ 愛してあげる」
 少女はがりっと爪を突き立てるが、ドゥルールにとっては子猫が甘えるのも同じ。
 少女の敏感な所に指を這わせると、真っ赤になって懸命にしがみ付く。
 首筋に口づけ、優しく丹念に愛撫し続けると、甘い声で鳴き出す。
「さあ、身も心も、私に差し出しなさい?」
「は、ぁぅ……っ! ごしゅじ、んさまぁ……っ」
 ゆっくり噛み付き牙を立てると、一層強く抱きしめて背中を引っ掻く。
 赤い鮮血を零す首筋を舌で刺激しながら舐めるも、傷口を痛みではなく甘い声が挙がる。
 少女は吸血鬼と肌を重ねる事に慣れているようだ。
 吸血鬼としての愛撫に敏感に反応してドゥルールを愉しませる。
「ぁむ、ちゅ……♪」
「嗚呼、また私を求めてくださるのですね……ご主人様、愛してます、ごしゅじん、さま……ぁ……」
 少女は虚ろな目からぽろぽろと涙を零しながらドゥルールに抱き付き、自分からドゥルールの指に身体を擦り付ける。
 今抱かれている少女が脳裏に想い描いているのは、ドゥルールではなく女主人なのだろう。
「ふふふ、今はそれでもいいわ。じっくり心の底から私を求めさせてあげる……❤」
「んっ……♪」
 ドゥルールは赤い口紅のように少女の血で濡らした唇で、少女へ口付ける。
 少女が気を失うまで、ドゥルールは少女の血と身体を堪能するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎
味方へ私の意図を伝える


少女達に私達の言葉は届くでしょうか…
私は今彼女達が願っているであろう事を叶えましょう


予め自分の血を採血して血糊を作る

少女達に攻撃はせず共感し<優しさとコミュ力>で交渉

まだ愛してもらえているか確かめてみませんか?

あなた達が主の目の前で侵入者を殺せば喜んでもらえませんか?
私を捕まえてその人の元へ連れて行き
その武器で私の心臓を貫いて

もし助けが必要になったら求めて

実際に少女の攻撃は<勇気と覚悟>で無抵抗なフリをして受けますが
【贖罪】で耐え
口の中に仕込んだ血糊で吐血したように見せ
<医術と変装>で死んだように動かず様子を見守る

助けを求められたら生き返って助ける



「少女達に私達の言葉は届くでしょうか……」
 シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は不安で胸に手を当てる。
 ひたひたと近づいてくる気配を感じて深呼吸一つ。
 目を開くと、シホの周りを少女達が囲んでいた。
 少女が口を開く前に、シホは語り掛ける。

「貴女達がまだ愛してもらえているか確かめてみませんか?」
「……え?」
 シホの言葉に戸惑う少女に、自分を差し出すように前へ出る。
「今貴女達が願っている事を叶えましょう。あなた達が主の目の前で侵入者を殺せば、喜んでもらえませんか?」
「何、言ってるの……?」
「私を捕まえて、その人の元へ連れていき、その武器で私の心臓を貫いてください」
 シホの言葉に少女達は顔を見合わせ、ひそひそと話し合う。
 少女達は意を決したように頷く。
 シホへの疑いよりも、主人に手柄を見せる誘惑が打ち勝ったようだ。
 女主人がいる大広間へと招き入れる。

「あら? 捨て猫ちゃん。侵入者をここまで連れて来て、何のつもりかしら?」
「し、侵入者を捕えました!」
「ふぅん……? それで、どうするの?」
 気だるげな女主人はシホを値踏みするように見つめると、愉快そうに頬杖を突いて様子を伺う。
 シホは口を噤んで沈黙を守ったまま、吸血鬼を見つめる。

「こっ、この手で、侵入者を処刑……して、みせます……」
 少女はふるふると震える手で、錆びた矢を握りしめる。
 誰かを殺めることどころか、傷付ける事すら経験はないのだろう。
「面白い余興ね。やってみせて?」
 女主人は武器すら与えず、そのまま促す。
 少女がシホへと向き直り、心臓目掛けてフォークを突き刺した。
「かふ……っ」
 シホは口から血を吐き出し、床に倒れ込む。
 初めて人を殺めた――そう思った少女は息を荒げながら女主人に声を掛ける。
「ご主人様! これで褒めて……くださいますか……!」
「どうしようかしら。本当に手柄を立てたなら、吝かではないけれど」
 吸血鬼の視線が倒れ込んだシホへと注がれる。
「けど、ちょっと面白いから貴女をもう一度愛してあげる。着替えてらっしゃい」
「はっ、はい!」
 女主人が指を鳴らすと、シホを刺した少女だけが連れていかれた。
 シホを取り押さえていた少女達が、もじもじと不安げに見つめている。
「それで……貴女はこの娘達を『愛して欲しい』とお願いに来たのかしら」
 だがそれを無視して、吸血鬼の視線は変わらずシホに注がれている。
「お陰であの娘は『人を殺した』と思っているようだけれど。他人を殺してでも愛を勝ち取るって、今度どうなっちゃうのかしら? 将来が不安ねぇ」
 頬に手を当て、芝居がかった素振りではふっと溜息をつく。
「貴女の見解が聞きたいわぁ。ねぇ、可愛い猟兵さん?」
 吸血鬼が、邪悪に微笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
一応SPD

パンと清潔なタオルに魔法瓶2つでスープとぬるま湯持参

来るなら組み伏せる。
寿命削らせないため戦闘はしない。
「弱い。まともに喰ってねーだろ?」
無毒を示すため一口齧ってパンとスープを渡す。
「空腹は思考を鈍らせる」

救いに来た、でも世界は理不尽に満ちている、今のままは楽だが人として死んでいる、個人的要望は顔上げて可愛くあって欲しい。苦楽を共にする仲間が周りにはいると判断材料を示す。
選択に負の感情を介在させないため吸血鬼の否定は入れない

武器と身を清めるべく湯で濡らしたタオルを並べる。
「どちらか選んでくれ」
タオルなら頭を撫で決断したこと自体を褒める

「惨殺劇はないぜ」
吸血鬼は見てると予測。
少女は庇う



 四王天・燦(月夜の翼・f04448)が、向かって来た少女を容易く組み伏せる。
「あぅっ!?」
「弱い。まともに喰ってねーだろ」
 少女が持つ武器と言うには粗末な得物を取り上げた。
 薄汚れくすんだ金髪、痩せ細っているもののどこか勝気な少女は、倒れたまま燦を睨み付ける。
 燦は少女の上に馬乗りで抑えたまま、持参した鞄を探る。
 何をされるのかと怯えてぎゅっと目を閉じた少女の目の前に差し出されたのは、白く柔らかそうなパン。
「空腹は思考を鈍らせる」
 燦は少女の上から退いて、床に座り込む。
 周りで様子を伺っている少女達が襲い掛かって来ても、いつでも迎撃できる。
「食えよ、毒なんて入ってねーから」
 燦は続いて水筒を取り出しながら、受け取ろうとしない少女にパンを一口齧って無理矢理手渡す。
 だが少女は手に付けようとしない。
 少女のお腹がぐぅと鳴り、真っ赤になりながらも強情に耐える姿に、燦はやれやれと溜息を一つ零す。

「今のまま主人に従ってるのは楽だろうけどな、それは人として死んでるぜ」
 燦は少女に優しく甘やかして、少女の心を得るつもりはない。
 燦に依存してしまえば、依存対象が変わるだけだ。
「私に優しくしないでっ! 貴女に私の何が分かるのよ!? 私の事を分かってくれるのは、ご主人様だけっ!」
 その厳しい言葉を『優しい』と言った少女は、燦を必死に否定する。
 燦が自分達を救いに来た事は分かっている。
 女主人が自分を捨てた事も分かっている。
 吸血鬼の罰が怖いのでもない。懲罰すら、もはや与えてはくれない。
 それでも燦の好意を受け取れば――唯一の幸福な思い出すら捨ててしてしまう。

「本当にそうか? アタシにアンタの事が分かるとは言わねーけどさ」
 真っ白いタオルをもう一つのお湯で濡らし、温める。
 燦は少女の目の前で、吸血鬼を否定しない。
 例え偽りであろうと、少女達が愛されたと思っているのは事実だから。
「苦楽を共にする仲間が、周りにいるだろ」
「……っ!」
 初めて気付いたかのように、少女は周りの少女を見る。
 女主人の寵愛を奪い合う、ライバルでしかなかった者達。
 吸血鬼に集められた者達。
 ――自分と同じ境遇の少女達。

「どちらか選んでくれ」
 燦は片手に少女から取り上げた武器を、もう片方に温かいタオルを持ち差し出す。
「何、それ……戦って死ぬか、無抵抗に降伏しろってこと?!」
「違ぇよ。どちらを取ろうと、アタシはアンタ達を傷付けない」
 燦が与えたそれは、少女達にとっての初めての『選択の自由』。
 少女は俯きながら、最初は武器を手に取ろうとした手を止めて彷徨わせる。
「ただ、個人的な要望を言わせて貰えば……アタシはアンタ達には俯かず、顔を上げて欲しい」
「……何よ、それ」
 燦はじっと少女の選択を待つ。判断材料は既に渡した、急かしはしない。
 たっぷり時間を掛けた少女は、やがてタオルに手を置いた。
 周りの少女達も、同じようにからんと音を立てて武器を落とす。
「んっ。よく決断したな」
 燦はにっと笑顔を浮かべて、頭をくしゃくしゃと撫でる。
 救いの手を取る。
 それが少女にとってどれほど重大な決断だったか、語るのは野暮だろう。
 わしゃわしゃと撫でる燦の手に揺らされながら、少女はじぃっと上目遣いで拗ねたように見つめる。
「やっぱり可愛い顔が俯いてちゃ勿体ないぜ」
「~~……!! バカ……っ」
 にっと歯を見せて笑う燦に、頬を赤く染めた少女は憎まれ口と共にそっぽを向く。
 この分なら、きっとすぐに立ち直る事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イサナ・ノーマンズランド
SPD 

攻撃を【盾受け】、或いは【見切り】、【激痛耐性】で凌ぎながら【時間を稼ぐ】。抱き着きながら【ロープワーク】によって拷問具の鎖で自分ごと少女を拘束し、無力化する。

「他のだれにもあたえられなかったから、そのさいしょのきまぐれが……きみたちのぜんぶだったのなら」
「わたしが二回目になるから……あきらめないで。あいは、やけくそなんかじゃない」
「あいはあたえられるのを待つものじゃないし、ふたりだけのキャッチボールでもない」
「だれかにしてもらえてうれしかったことを、他のだれかにもわけてあげることだ。今、わたしがこうしてるみたいに……!」
「……だから、いっしょにいこう」

アドリブ 改変 共闘 歓迎です。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。貴女達はこの闇に閉ざされた世界で光を見たのね。
それがたとえ偽りの光だったとしても、光は光…。
…嫌になるぐらい、光を…愛を求める気持ちが分かってしまう。
だからこそ、放っておく訳にはいかない…か。

貴女達の忠誠は届かない…。
吸血鬼の愛と貴女達が求める愛は乖離しているから…。
もう気付いているはず…。

…愛の形は一つじゃない
この場に集まった人達は皆、貴女達を心配している
吸血鬼から、先の無い愛から、助けたいと思っている…。

その両の眼でよく周りを見渡して…。
それでも貴女は、他に光が無いと言うの?

…まずは説得。それが叶わないなら、眠りの呪詛で無力化する
【常夜の鍵】に収納して、全て終わるまで中に居てもらう


リリー・ベネット
……。
必ず救ってみせます。
アントワネット、フランソワーズ、生きますよ。

少女達には決定的な攻撃はしません。……その必要はないでしょうから。
必要であれば人形のアントワネット、フランソワーズで応戦しますが、戦意を喪失させられるよう努めます。

詳しい事情は知りません。
ですが、何か一つに固執する事はないのです。貴方達には、未来があります。
……本当の愛というものを、これから先、見つけられるはずですから。

もう偽りの愛に縋るのはやめて下さい。
貴方達の未来は私達、猟兵が作ります!



「侵入者めッ! お前達を倒して私達は、またあの方に褒めて貰って、愛して貰うんだ……!」
「……」
 震える手で折れた矢を握りしめる少女の姿に、リリー・ベネット(人形技師・f00101)は目を伏せる。
 捨てられた彼女達がそれでも懸命に尽くそうとする姿は、痛々しい。
「必ず救ってみせます。アントワネット、フランソワーズ、行きますよ」
 リリーは紅色と空色のドレスを纏った二体の人形で攻撃を受け止める。
 武器を奪い取り、遠くへ弾き飛ばす。
 だが少女はそれで諦めず、別の武器を拾い上げて手にする。
「こんなゴミみたいな世界で、ゴミみたいに生きる私達に、あの方は優しくしてくれた! だから……だから私はッ!」
「……ん。貴女達はこの闇に閉ざされた世界で光を見たのね」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は痛いほどに分かる。分かってしまう。
 それが例え偽りの光だったとしても、光は光だ。
「……嫌になるぐらい、光を……愛を求める気持ちが分かってしまう」
 冷え切った心に温もりと光を灯された彼女達が、『もう一度』と願うのは仕方ない事だ。
「けれど、貴女達の忠誠は届かない……吸血鬼の愛と貴女達が求める愛は乖離しているから……」
「違うッ! 一人だけ愛されようとした私が間違っていただけ! 私は、あの方が微笑みかけてくれれば、それだけでいい!」
 リーヴァルディの言葉に、髪を振り乱して拒む。
 盲目的に信じようとする少女に、現実を突きつける。
「貴女達がどんなに尽くそうと、求められるだけ応えて、与えられるだけ享受しても……。
 吸血鬼が愛するのは『飽きる』まで……先なんてない……」
「黙れ、黙れっ……このっ! このぉ!」
 少女は錆びた剣を引き抜き、重さでよろめきながら振り回す。
 それを盾で防いだイサナ・ノーマンズランド(海亡き世界の小さな鯨・f01589)が、拷問具の鎖で自分ごと少女を拘束する。
 イサナより年上で背も高い少女の、だがイサナよりも細い不健康な身体を強く抱きつく。
「っ、は、離してっ!」
「他のだれにもあたえられなかったから、そのさいしょのきまぐれが……きみたちのぜんぶだったのなら」
 抵抗する少女をイサナは離さない。
 彼女達が生きた十数年。
 その中で『光』と呼べる温もりが、吸血鬼の『寵愛』だけだったのだろう。
 だからこんなにも必死に求める。『まだ失ってない』と諦めきれていない。
 いや、きっと『それしかない』と、諦めてしまっている。
「わたしが二回目になるから……あきらめないで。あいは、やけくそなんかじゃない」
 イサナは懸命に想いを伝える。
 一回目が偽りで、利用されたものだとして、失ったところで次はある。
「詳しい事情は知りません。ですが、何か一つに固執することはないのです。貴女達には、未来があります」
 リリーも言葉を重ねる。
 生きている限り、何度だってやり直せる。
 吸血鬼に血の一滴、骨の髄まで利用されてやることはない。
 この『牢獄』のような城に鎖で繋がれた身だけでなく、囚われた心を助けるべくリリー達は来たのだから。

「あいはあたえられるのを待つものじゃないし、ふたりだけのキャッチボールでもない。
 だれかにしてもらえてうれしかったことを、他のだれかにもわけてあげることだ。今、わたしがこうしてるみたいに……!」
「……っ!!」
 イサナは少女に強く抱き締める。
 それは少女を逃がさない為ではない。
 凍えた少女の冷たい身体に、自分の、人の温もりを分け与えるため。
 傷付いた心には人の温もりが必要だと、イサナは知っていた。

「貴女達も、もう偽りの愛に縋るのはやめてください。貴女達の未来は私達猟兵が作ります!」
「だって、だって私の……っ、私の光は、あの方だけ……っ!」
 手を差し伸べるリリーに、少女は怯えたようにふるふると首を振る。
 足元さえ不確かな闇の中、歩き出すのは恐ろしいだろう。
 だが目を閉じていては、差し伸べられた手も、『光』も見えない。
「その両の眼でよく周りを見渡して……。それでも貴女は、他に光が無いと言うの?」
 リーヴァルディが周囲を示す。
「……愛の形は一つじゃない。この場に集まった人達は皆、貴女達を心配してる」
 それはリーヴァルディやイサナ、リリーだけではない。
 静かな城内のあちこちで、声が響いている。
 他にも沢山の猟兵達が、この城の少女達全てを救ってみせると集った。

「……本当の愛というものを、これから先見つけられるはずですから」
 リリーは少女の手を取る。びくっと震えながらも、拒まれはしなかった。
 その柔らかな温もりに少女の緊張が解ける。
「こわがったっていい、夜がこわいのはあたりまえ……だから、いっしょにいこう」
 イサナが鎖の拘束を解く。
 幼子のように泣きじゃくって懸命に抱き付く少女に、拘束はもはや不要だ。
 眩い希望の光が、暗く淀んだ少女達の瞳を照らし光を灯した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『少女愛好家『リリアーナ・ヒル』』

POW   :    トドメを刺した子には私からの寵愛を授けるわ
【大勢の短剣を持つ主人に心酔する娘達の突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【殺到する娘たちの追撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    私を守護する忠実で有能なペット達よ
全身を【大盾を持った少女達に指示し護る為の陣形 】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    ギャラリーは多い方が良いでしょう?
戦闘力のない【身動きのできない、拘束されている少女達】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【少女達の悲観や絶望の感情】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はキア・レイスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あらあら、随分と騒がしいわねぇ? 捨て猫でも拾いに来たのかしら?」
 猟兵達の前にこの城の女主人、『少女愛好家』リリアーナ・ヒルが姿を現した。
「その辺の捨て猫なら好きに連れて行って構わないのだけれど……」
 美しく着飾らせ、周囲に侍らせた少女達を抱き寄せて見せる。
「あなた達は私の愛猫も狙っていそうね。貴女はどう? あの人達と行きたい?」
「いいえ、私達が尽くすのはリリアーナ様だけです」
 リリアーナは愛しげに髪を梳き、髪を一房とって口付ける。
 愛でられる少女は拒むことなく、受け入れている。
「生憎お持て成しの用意はできていないのだけれど、来訪者には歓迎しないと、ね」
 リリアーナがぱちんと指を鳴らすと武装した少女達が現れ、リリアーナの周囲を少女達が守る。
「私の可愛い子猫達。私達の愛の巣を荒らす悪い野良猫と野鼠を捕まえて頂戴?」
「はい! 全てはリリアーナ様の為に!」
 少女達は一様に、主人の居城を荒らす猟兵達を憎悪するように、短剣を構える。
 ヴァンパイアの寵愛を受けている少女は、捨てられた少女とは比べるべくもない。
 明確な敵対心を持って、猟兵達に立ち向かっている。
 だが彼女達も、同じ境遇の救い出すべき者達だ。
 妄信する少女達の目を覚まさせなくてはいけない。
レイ・アイオライト
【SPD判定】
少女達を盾にして、自分はその中で面白可笑しくあたしたちの『鑑賞会』をするってこと……尚更許せないわ。
【変幻ナル闇ノ曙光】で周囲に存在する闇と同化、吸血鬼と少女の間にある空間は影になって「闇になっている」はず。その間に潜り込んだ後、影のオーラで『オーラ防御』、少女と吸血鬼を隔離するわ。
防御する暇なんて与えない、【斬影ノ型・閃煌】(命中率重視)で刀の『クイックドロウ』『だまし討ち』よ。
吸血鬼……闇に生きる者……ちょうどいい機会よ。アンタの闇の力とあたしの闇の力、どちらが強いのか勝負と行きましょうか。ねぇ?少女を盾にすることしか能のない女吸血鬼さん?(『殺気』『恐怖を与える』)


六代目・松座衛門
「飽きたからと、捨てて…。せめて『猫たち』に愛着をもって接していたなら、この愛の巣も壊さなくで済んだろうな!」
いずれ今の『愛猫』の少女たちも、先ほどの『捨て猫』のようになるのだろうと、リリアーナへの敵意を募らせ、戦闘に参加。
人形「暁闇」を、リリアーナへ接近させ、それを阻もうとする少女たちの攻撃を人形で【武器受け】する。

「これくらいかな。ニノ型 手繰り討ち!」
一旦、距離を空け、【武器受け】した際に繋いだ人形と少女たちの間の糸を巻き上げ、少女たちの体勢崩しと人形の加速を狙う。

「あんたに『愛』を語る資格はない!」
一気にリリアーナとの距離を詰め、鋭い爪で切り裂く!

【SPD】選択。アドリブ、連携歓迎



「少女達を盾にして、自分はその中で面白可笑しくあたしたちの『鑑賞会』をするってこと……尚更許せないわ」
 レイが少女達に守られる笑みを浮かべる吸血鬼を睨み付ける。
「飽きたからと、捨てて……。せめて『猫たち』に愛着をもって接していたなら、この愛の巣も壊さなくで済んだろうな!」
「ダメっ! 私達の居場所を、壊させはしないっ!」
 リリアーヌへ迫る松座衛門の人形『暁闇』が、少女達が数人掛かりで大楯で受け止められ、互いに拮抗し合う。
 今こうして懸命に守ろうとする少女達とて、愛想を尽かされれば簡単に捨てられることだろう。
 彼女達が本当の意味で報われることは、きっとない。
 松座衛門はそれを思えば、リリアーナへの敵意を更に募らせる。
「あんたはこの子達も捨てるのだろう、あの『捨て猫』のように!」
「あの捨て猫達は自分で愛される価値を失ったの。私も悲しいのよ?」
「身勝手なっ! あんたに『愛』を語る資格はない! 『ニノ型 手繰り討ち』!」
 『暁闇』が高速で吸血鬼へ迫り、鋭い爪で吸血鬼の腕を切り裂く。
 赤黒い血を流す吸血鬼は、切り裂かれた腕を抑える。

「吸血鬼……闇に生きる者……ちょうどいい機会よ。アンタの闇の力とあたしの闇の力、どちらが強いのか勝負と行きましょうか」
 レイは周囲の闇と同化する。
 少女が構えた大楯で守られた隙間から吸血鬼の姿が覗く。
 その影が刃と化し、盾の守りの内側から吸血鬼を更に切り裂き、血が霧と変わる。
「ねぇ? 少女を盾にすることしか能のない女吸血鬼さん?」
「あら、手癖の悪い子ね?」
 レイは刀を鞘に納めたまま盾の内側、吸血鬼の懐に入り込む。
 影のオーラで少女を弾き飛ばし引き剥がす。
 レイが刀を抜き放つと共に閃光が奔る。
「ふふ、私が守られるだけのか弱い女と思ったのかしら?」
 光速の居合い斬りが漆黒の闇で弾かれ、レイと松座衛門が切り裂いた腕が再生していく。
「リリアーナ様に手出しはさせないっ! ……くっ?!」
 レイは影のオーラで少女を傷つける事無く接近を阻む。
「行かせはしない!」
 松座衛門の暁闇も少女達を弾き、吸血鬼へと近づけさせない。
「あら……優しいのね? この娘達を傷つけないつもり?」
「当たり前よ。ここで死ぬのは、アンタだけ」
「そう。難しいと思うけれど。やってみせて?」
 余裕の笑みを崩さない吸血鬼も無傷ではない。
 再生するならば限界を超えて傷を与えるまでと、レイは弾かれた刃を翻し再び振るった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

白皇・尊
妻の鉋(f01859)と共闘

「あぁ、やっぱり…貴女は奴隷をペットとしか考えていない、僕とは決定的に違う」

☆共闘戦術
「僕は奴隷に子を産ませ、一族に迎えます…妻に娶ったのは鉋ただ1人ですがね」
鉋と自身に【あらゆる攻撃を弾く強固な防御結界(オーラ防御)】を付与し守りを固め、鉋を支援。
僕は更に符を少女らに張り付けて【ハッキング】で解析、命令が呪いや術であるかを調べながら彼女達の攻撃は防ぎ【因果応報】を発動し、少女達へ命令する力を奪ってリリアーナを逆に攻撃させる命令を出して少女らを混乱させ、動きを止めて鉋がボスを攻撃するチャンスを生み出します。
「これが愛の為せる技ですよ…なんてね♡」

※アドリブ歓迎


喰龍・鉋
夫の尊(f12369)と共闘
自分の身は自分で守れって教わらなかったのかい?
こんな子達を盾にするなんてやっぱりお前は最低だね、ボクは怒りで煮えたぎりそうだよ尊
【指定UC】を発動、防御重視、防御せざるを得ない状況をこれで凌ぐ、
尊の【守護の結界】と合わせてより強固な防御をもって挑むよ、
対峙しなければならない際は【鎧砕き】で少女の武装を解除、
少女たちをかいくぐったら【怪力】【二回攻撃】でボスの急所を力の限り突き刺すよ
*アドリブ歓迎



「あぁ、やっぱり……貴女は奴隷をペットとしか考えていない、僕とは決定的に違う」
「そのようね? 吸血鬼(わたし)にとって人間はか弱い、支配(まもる)べき生き物ですもの」
 人を『猫』と呼ぶ吸血鬼に、尊は首を振る。
「僕は奴隷に子を産ませ、一族に迎えます……妻に娶ったのは鉋ただ一人ですがね」
「……ふぅん、ヒトの女を孕ませる俗物のヴァンパイアのようね。汚らわしいわ」
「寵愛に値しなければ捨てる貴女にそう言われるとは、心外ですね」
 尊と吸血鬼は、互いに笑みを崩さないまま、不快感を露わにしながら睨み合う。
 その隙を狙う鉋の攻撃を、少女が大楯で防ぐ。

「自分の身は自分で守れって教わらなかったのかい?」
「ふふ、力ある者の台詞ね? 力無いこの子達の前で、よく言えたものだわ」
 笑みを崩さない吸血鬼とは逆に、少女の憎悪の色が深まり、鉋を睨み付ける。
 吸血鬼は少女をなだめるように肩を抱く。
「この子達は、『自分の身を自分で守れなかった』憐れな子達よ。
 力の無い少女が、見目麗しい少女が、どんな目に遭うか。あなた達もよく知っているのではなくて?」
 吸血鬼の言葉で過去を思い出したのか、俯いた少女の肩が震える。
 虐げられた弱い者がより弱い者に、不条理な暴力や唾棄すべき衝動をぶつける。
 オブリビオンだけではない、人間の悪意を、少女達はその身をもって知っていた。
「お前はそれを拾い上げて救った振りして、恩着せがましく利用しているんだろ!」
 少女の肩に手を添える吸血鬼へ鉋が黒剣を振るうが、少女の持つ大楯に阻まれる。
「お前達に、お前達なんかに、リリアーナ様は傷付けさせないッ!」
「だそうよ? 私は強制していないわ。この娘達の想いすら否定するのかしら?」
 少女達は懸命に吸血鬼を守る。恐らく命すら懸ける事も厭わない。
 吸血鬼に救い出された。彼女達がそう信じているのは事実だ。
 だがその想いを吸血鬼が利用していることも確かだ。
「こんな子達を盾にするなんてやっぱりお前は最低だね、ボクは怒りで煮えたぎりそうだよ尊」
 鉋は剣の柄を握りしめる手が怒りで震える。

「『強制はしていない』。選択肢を与えていないだけの詐欺師のやり口ですね」
「それ以上リリアーナ様を侮辱するなッ!」
 少女達が短剣を手に尊へ殺到する。
 だが尊は防御結界によって防ぐと共に、符を少女へ貼り付ける。
 少女達に与えられたヴァンパイアの加護を解析し、逆に利用する。
「……――『因果応報』」
「なっ!?」
 尊のユーベルコードが、逆に少女を支配する。
 短剣を手にした少女が、吸血鬼へと襲い掛かり短剣を突き刺す。
「ふふ……本当、趣味の悪い狐ね」
「貴女達、一体何をしているんです?!」
「りっ、リリアーナ様!? わっ、私……!」
 自らの手で主人を傷付けた少女達が戸惑う隙に、鉋が掻い潜り吸血鬼の腹部に拳を叩きつける。
「喰らえッ!」
「これが愛の為せる技ですよ……なんてね♡」
 夫婦の連携に、尊は笑みを浮かべる。
 だが笑い声は、吸血鬼の元からも聞こえた。
「この子達自身の手で私を傷付けさせるなんて、貴方も随分と酷いものね?」
「なっ!? このっ、離せっ!」
「よくも……よくも私達にリリアーナ様を傷付けさせたなっ!」
 だが吸血鬼を捉えたと思った鉋の剣の刀身を掴まれて抑え込まれる。
 武器を掴まれた鉋に、少女達が殺到する。
 鉋の援護を受けて少女達を振りきり、尊の元へ下がる。
「尊、大丈夫ですか?」
「くぅ……大丈夫、尊の守りのお陰……!」
 吸血鬼に傷を与えつつも、鉋も防御を貫かれ負った傷も浅くはない。
 だが尊から教わった符術の鎧で防御に特化させたお陰で凌ぎ切った。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

久遠・翔
くっ…さすがに少女達には攻撃できないっす

攻撃が服を掠めずたずたになっていく
防御陣形のせいでリリアーナが見えないなら!

地形の利用を使用して壁を蹴り上に飛びリリアーナに向かってフック付きワイヤーを投擲して拘束、動けないはずなんで一気にワイヤーを引っ張り上空から攻めるっす(びりっ)

…びりっ?
うわっ、晒が!?
空中でバランス崩しそのままリリアーナの胸元に顔からダイブした上にワイヤーが絡まり体がリリアーナに固定+UCで的確な場所に絶妙な加減で手や口が当たり、誘惑29の影響でなんやかんやされます

ぺ、ペットなんかにならない…ひぁん!?らめぇっすそこぉ!?
包囲が解けるとぐったりした姿に…
体力はある意味削りました



「くっ……さすがに少女達には攻撃できないっす」
「このっ、すばしっこい……小癪なっ!」
 少女が短剣を振るい、翔の肌を掠め服が切り裂かれていく。
 少女を傷つける訳にはいかず、防御と回避に徹している翔だが、リリアーナから引き離されていく。
 タワーシールドを構えて全周を守る少女に隠れ、姿を視界に収める事も敵わない。
 翔の視線が、上へ向く。四方八方(へいめん)が塞がれているのならば。
「防御陣形のせいで、リリアーナが見えないなら!」
 翔は壁を使って立体的に上へ跳ぶ。予想通り上の守りは甘い。
 大楯の少女が守りを固めるものの、だからこそ更に悠然と構えるリリアーナの動き自体制限されている。
 投げ放ったワイヤーがリリアーナの腕に絡みつき、全力で引っ張る。
「捕まえたっす!」
「ふふ、私を引っ張り出すつもり? 無駄よ」
 リリアーナは自身を引き寄せるつもりと判断し、ヴァンパイアの膂力で踏み止まる。
 だが翔はそれこそを狙っていた。
 翔の身体が引き寄せられ、防御の内側に飛び込む。
 そこまでは狙い通りだったが……。
 びりっと、胸元で異音が鳴る。
「……びりっ? うわっ、晒が!?」
 布が裂ける音が翔の胸元で響いた。
 刃が胸元を掠めながらもギリギリで断ち切れなかった晒が、アクロバティックな動きに耐えられずに切れてしまった。
 裂かれた隙間から、見えてはいけない物が見えそうになる。
 締め付けられた豊満な白い胸が弾けるように露わになり、空中でバランスを崩しながら必死に隠す。
 だが引き寄せられた力は十全に働いてしまい、翔の身体が吸血鬼の元へ飛び込む。
 ふにゅん、と柔らかい音と共に受け止められる。

「あら? ……もしかして、私の寵愛が欲しかったかしら?」
「なっ、ちちちち、違うっす?! あ、あれ、何か絡まって……!」
 吸血鬼の豊満な谷間に顔を埋めながら、翔は真っ赤に染まる。
 引き戻されたワイヤーが、翔自身とリリアーナに絡みつく。
 離れようと動くたびに、ふにゅふにゅと翔の手に柔らかい感触が伝わる。
 何を掴んで……というより揉んでいるのか気付いた翔の顔が真っ赤に染まる。
「……いけない野良猫ね。愛でるのは私なのよ?」
「わっ、ワザとじゃないっす、愛でてないっす?!」
 翔が真っ赤になって暴れると、ワイヤーが余計に絡まってしまう。
 とにかく谷間から顔を離そうとすると、互いの服がずれて肌が触れ合い、吸血鬼のめくれた部分に口付けてしまう。
「んぅ?!」
「あん♪」
 甘い声が吸血鬼の口から漏れる。
 どの部分に口付けたか、考えるとショートしてしまう。
「……ふふ、そんなに飼い猫にして欲しいのかしら? しょうがない子ね」
「ぺ、ペットになんかにならない……ひゃぁん!? らめぇっすそこぉ!?」
「私に不埒な事した罪は重いわ? 倍返ししてあげましょう」
 少女達の内側に包囲されて見えないので、サウンドオンリーだ。
 多分吸血とかなので健全である。
 やがてぐったりとして荒い呼吸を翔が、少女達の包囲から運び出される。
 その身を犠牲にリリアーナの意識を存分に惹き付けた翔のお陰で、猟兵達が少女達に対応する時間を稼ぐことができた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
さっきの娘、可愛かったわ。
私に抱かれながらも、飼い主の事だけ考えていた。
この湧き上がる感情は嫉妬ではなく
彼女の心を蔑ろにした、飼い主への怒り


リリアーナ様、雑種である私が
貴女を欲する事をお許し下さい

飼い猫になるのは貴女です。
亡骸(み)も 魂(こころ)も、私のモノに。
私の永遠の愛で、貴女の全てを奪います


真の姿を解放。赤黒い気を纏う。
『愛の想起・妖狐桃源郷』で 21体の妖狐忍を召喚。
拘束された少女達を快楽の虜にして応援を封じるわ。
あ、精気吸収は加減してね!

後はリリアーナと実力勝負。
【呪詛】で精神を蝕みつつ【衝撃波】の連発で弱らせ
【吸血】と【生命力吸収】でトドメ。
相手からの吸血は【オーラ防御】で防ぐわ



「貴女、私の捨てた猫と戯れていたみたいね。アレも欲しければ好きにしていいのだけれど?」
 リリアーナは身動きできない少女達を示す。
 主人に捨てられる恐怖に怯えた表情に、ドゥルールは先程の少女を思い出す。
 沸々と湧き上がる黒い感情を隠し、ヴァンパイアに対し慇懃に振る舞う。

「リリアーナ様、雑種である私が貴女を欲する事をお許し下さい」
 真の姿を解放すると、ドゥルールの身体に赤黒い気が纏う。
「ふぅん、ダンピール……ヴァンパイアの恥ね。あぁ、貴女に罪はないけれど」
 『恥』と呼んだリリアーナだが、ドゥルールを蔑んだ様子はない。
 ヴァンパイアの『父』への侮蔑だろう。
 ドゥルールは妖狐のオブリビオンを召喚する。
 拘束された少女達に妖狐達が迫り、甘い嬌声が響く。
 妖狐の甘い香りは同性である少女も魅了して快楽を与えて、ひと時でも主人を忘れさせる。

「あら、全員欲しいだなんて、はしたない欲張りね?」
「飼い猫になるのは貴女です。亡骸(み)も 魂(こころ)も、私のモノに。私の永遠の愛で、貴女の全てを奪います」
「ふふっ、それは無理ね。私としては試させてあげたいところだけれど――」
「リリアーナ様に手出しはさせませんッ!」
 ドゥルールの前に少女達が立ち塞がり、守りに入った。
 呪詛が吸血鬼を蝕むが衝撃波は大楯で防がれ、吸血鬼の爪がドゥルールへ迫る。
「この娘達の血は私の物。奪わせないわ」
「その寵愛――何故彼女に注がなかったのですか?」
 ドゥルールが想うのは、捨てられた少女。
 ドゥルールの腕に抱かれながらも、彼女を捨てた張本人であるリリアーナを慕い続けていた。
 胸に湧き上がった感情は嫉妬ではなく、彼女の心を蔑ろにした飼い主への怒り。
「簡単よ。私が愛したあの娘達は、私が愛する他の娘を疎んだ。そんな悪い娘は要らないの」
「だから、捨てた? 身勝手ですね……」
 ドゥルールは吸血鬼の首筋に喰らい付くように噛み、吸血鬼の血を吸う。
 弾き飛ばされて、口許と血で濡らすも――どうしてもその血は美味しいとは思えなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
「貴女達は、捨てられた子達を見て何も思わないの…?いつか自分達も同じ様に捨てられるかもって…」

unlimitedじゃこの子達まで…近接戦しか…。

少女達は力を抑えた黒桜の呪力解放【衝撃波、なぎ払い】で気絶させるか、【早業】峰打ちで意識を刈り取っていく…。
最初は温存するが、対処しきれなくなったら【妖剣解放】。高速移動で素早く気絶させて一気にリリアーナへ駆け抜け、凶太刀と神太刀による【呪詛、早業、2回攻撃】と【妖剣解放】の高速連撃から、二刀で×字に切り裂く…!

「人は猫でも道具でもない…ましてや、飽きたら捨てる物なんかじゃ決してない…!わたしは…貴女を許さない…!」

「これで…最後…!」

※アドリブ歓迎


イサナ・ノーマンズランド
POW
殺到する少女たちの攻撃を【見切り】、或いは棺桶による【盾受け】で凌ぎ、UCによるスタングレネードを投擲。少女たちを行動不能にさせた後で、女吸血鬼を攻撃。ショットガンによる【2回攻撃】で【傷口を抉り】、棺桶内蔵のパイルバンカーで【串刺し】にして【恐怖を与える】。

「わたし、これからひどいことするけどあやまらないよ」
「あいしているだなんだと言って、けっきょくどうぐあつかいか……!」
「そうやってなんにん、使い捨ててきた……!」
『こっちの今まで食べたパンの枚数が分からねえように、そんなのいちいち覚えてられねえよなあ』
『代わりにお前の罪過を数えてやるよ。さあ、魔女狩りの時間だぜ』

アドリブ歓迎です。


四王天・燦
「可愛い女の子の未来を拾いに来たんだ。見る目ねーぜ…いや自分より綺麗だから捨てたのか?」

「何股だよ?!」
恰好つけてたのに、寵愛の娘達から必死で逃げる。
ダッシュ・逃げ足、挙句に木にクライミングという滑稽っぷり。
大盾の陣形が崩れるまで逃げる。
ギャラリー呼んで笑えよ

一章の少女も驚くヘタレだが笑みを見せ符術『力場の生成』で跳ぶ。
ダッシュジャンプで大盾陣形が整うより速くリリアーナに接近し、デストラップを巻き付けて絞める。
「我慢比べだ」
見切りで致命傷は避け激痛耐性で耐える。
狂乱して寵愛と掛け離れたことを口走るまで我慢!
「ぎゃらりーは多い方が良い…ご尤もだ」

「血止めー。死ぬほど痛い」
少女を困らせるのはご愛嬌



「可愛い女の子の未来を拾いに来たんだ。見る目ねーぜ……いや自分より綺麗だから捨てたのか?」
「ふふっ、面白い解釈ね。でも違うわ」
 短剣を少女達が燦へと殺到する。
 その数は片手では利かず、対応するにも傷を付けずにとなると手に余る。
「何股だよ?!」
「十股や二十股では利かないかしらね?」
 恰好つけていた燦だったが、必死で逃げる。
 短剣を手にした攻撃担当の少女と、大楯を持つ防御担当は綺麗に分担している。
 上は開いているが、飛び込めば少女達に一斉に襲われるだろう。
 一度崩す必要があると判断した燦は、仕掛けるタイミングを見計らう。
 滑稽な素振りで尻尾を巻くように、短剣持ちの少女を自分に引きつける。

「unlimitedじゃ、この子達まで……近接戦しか……」
 璃奈が得意とする魔剣の斉射では、少女を巻きこんでしまう可能性が高い。
 そう判断した璃奈は極力少女達を傷付けぬよう、力を抑えた黒桜を振るう。
 ヴァンパイアの加護を得ている少女は、ギリギリで受け止める。
「貴女達は、捨てられた子達を見て何も思わないの……? いつか自分達も同じ様に捨てられるかもって……」
「……っ!」
「捨てられた娘達が悪いのよ。リリアーナ様を独占しようとした悪い娘達ですもの!」
 吸血鬼に心酔する少女は璃奈の言葉を否定する。
 だが武器を強く握りしめ、動揺する少女達も見受けられた。
 今は際限なく与えられる愛情。
 捨てられた少女達と同じ『間違い』をしなければ、変わらず愛されるはず。
 ――けれど本当に?

「わたし、これからひどいことするけどあやまらないよ」
 少女達に徐々に広まった動揺に、イサナが口火を切る。
 スタングレネードの安全ピンを外し、盾で守られた吸血鬼の上に投げつける。
 意図を察した猟兵は耳と目を塞ぐ。
 炸裂する爆音と閃光が、少女達を昏倒させる。

「あいしているだなんだと言って、けっきょくどうぐあつかいか……! そうやってなんにん、使い捨ててきた……!」
「道具扱い……? そう、貴女達にはそう映るのね」
『こっちの今まで食べたパンの枚数が分からねえように、そんなのいちいち覚えてられねえよなあ』
 イサナの人格が交代し口調が変わる。
 ショットガンを向ける。だがまだ撃たない。
 上空に跳んでいた燦から注意を逸らす為のフェイクだ。
「さぁ、我慢比べだ。みっともなくギャラリーに助けを求めていいんだぜ?」
 少女の守りが崩れた所に、燦が鋼の糸によるデストラップを吸血鬼の巻きつけて締め上げる。
 吸血鬼の爪が燦の腹部に突き刺さるが、致命傷を避けて耐える。
「ふふっ、私はあの娘達を本当に愛してるのよ。貴女達には理解できないようだけれど」
 鋼糸で締め上げられながらも、吸血鬼は不敵な笑みを浮かべる。

「使われない道具のなんと憐れな事かしら。愛でられない者のなんと憐れな事かしら。
 私は誰からも愛されなかった者に愛を与え、私は生きる理由を与えているの。好みの少女だけ――というのは否定しないけれど」
 吸血鬼は悪びれもせず、まるで善意や好意とでも言うように微笑む。
「私が捨てた猫達も、貴女達が拾って愛でるというなら喜んで差し上げるわ?」
 その言葉に、璃奈はぎりっと歯を噛み締める。
 吸血鬼の寵愛を失った少女達は、痩せ細りながらもこの城に居続けた。
 ヴァンパイアの気紛れで与えられ、捨てられ、心を弄ばれ……なお信じ続けた少女達を想えば――到底許せるものではなかった。

「人は猫でも道具でもない……ましてや、飽きたら捨てる物なんかじゃ決してない……! わたしは……貴女を許さない……!」
『自分で分からないってんなら、代わりにお前の罪過を数えてやるよ』
 璃奈が妖気を纏い、凶太刀と神太刀の二刀による高速連撃を放つ。
 更にイサナのショットガンが続けざまに叩き込まれる。
 吸血鬼は燦に拘束されたまま燦ごと跳ぶ。二人の攻撃をその身に刻みながら利用して、鋼の糸の戒めから抜け出す。
「血止めー。死ぬほど痛い」
 振り解かれた燦は貫かれた腹部を抑える。
 あの少女に見られたらどんな顔をしただろう。
 心配させて困らせてしまっていたかもしれない。

「いけないわ。だいぶ深く傷を受けてしまったわね。あぁ、もう起きれるかしら?」
「も、申し訳ありません、リリアーナ様っ!」
 吸血鬼は再生力を上回る傷をその身に刻み、少女の元に降り立つ。
 スタンから立ち直った少女が、慌てて防御を固める。
「構わないわ。けれど、そうね……私、貴女達を道具扱いしてるのかしら」
「いいえ! 滅相もありません! いえ、例えそうだとしても喜んで身を捧げます!」
「……そう、貴女達ならそう答えるわよね。……――もしかしたらそれが私の罪なのかしら?」
 吸血鬼は笑みを浮かべたまま呟き、小首を傾げた。その内心は計り得ない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

レナータ・バルダーヌ
愛しているのでしたら、せめて自らが先陣に立つものでしょうに…。先程の子もそうですが、愛というのも形によっては残酷なのですね……。

……さて、やるべきことができました。
多少、いえ、かなり身勝手かもしれませんがお許しください。

まずは【念動力】で牽制し、見えない力を使うわたしを警戒させます。何人かでも少女を差し向けてきたら成功、囮になって女主人から引き離し、少女の攻撃はすべて耐えて受け止めます。【激痛耐性】
そして、少女たちの想いを代弁するように、【A.B.エンパシー】を女主人に放ちます。もちろん、捨てられていた子の分も含めて。

「この痛みこそが愛の証です、彼女たちの愛に報いなさい!」


ハーミル・フラウミル
相手はあのヴァンパイア
怖い……汗が止まらないのに手は冷たくて
憎らしい敵を前に心を奮わせても
震えが止まらなかった
――先ほどまでは

少女たち、あれは私の影法師
猟兵になれなければ私もああなっていたかも知れない
何度涙を流してきたのだろう
どれほど辛くて心細かったろう
痛いほど分かる
「きっと助けますから」
そう決めたとき、不思議と震えは止まっていて

少女たちは捨て身で、私たちも反撃が難しい
どちらも傷ついていくでしょう
『生まれながらの光』でそれを癒します
一人も死なせません、仲間たちも、少女たちも
治療をしながら声をかけ続けます

「愛は与えるもの、乞うもの? いいえ、共に育むものです」
「引き換えに血を強いる愛など偽物よ」


シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎

<優しさ、コミュ力、覚悟、勇気、礼儀作法>

彼女は大丈夫です
自分が愛する人の為に侵入者と戦っただけですから
私は彼女の行いを尊びます

リリアーナへというよりは少女達へ語るように

私は…
愛は与えられる物でなく分かち合う物であって欲しい

でも会ったばかりの私が何を言っても
彼女達に届かないでしょう

だからまず彼女達の想いと苦しみをこの身で受止めました

余興が面白かったのでしたら
彼女達と私の身を賭けた強奪戦を受けて下さいませんか?

捧げるものシホ
この身を捧げてお見せしましょう

奪い愛い
ではなく
分かち愛う事を


終始
味方と少女達を
UCで回復し<オーラ防御しつつかばう>

戦後
猟兵と少女を医術とUCで手当て



「愛しているのでしたら、せめて自らが先陣に立つものでしょうに……」
「私達が望んでそうしているのです。リリアーナ様を傷つけさせません」
 レナータの言葉に、吸血鬼が微笑みを湛えたまま何も言わない代わりに少女が答える。
 彼女も先程の少女と同じなのだろう。
 今愛されているか、もう愛されていないかだけ。
 救われた自分の命を、吸血鬼に捧げようとしている。

 ハーミル・フラウミル(白翼の聖女・f14624)はヴァンパイアの紅い瞳を見る。
 冷や汗が流れ落ち、手は冷え切り、憎らしい敵を前に心を奮わせても、震えが止まらなかった。
 だが、その少女達の様子を見て想いを改めた。

「(少女達、あれは私の影法師……)」
 猟兵として導かれなければ、ハーミルもああなっていたかもしれない。
 彼女達は何度涙を流してきたのだろう。
 どれほど辛くて心細かっただろう。
 失意に沈んだ少女に手を差し伸べたのが、吸血鬼だった。
 弱った心に付け込み、想いを利用する。
 少女達が初めて知った優しさが、気紛れで簡単に失われる甘い毒だった。

「愛というのも形によっては残酷なのですね……」
 レナータは呟く。
 少女達は『愛』によって自分の身や命よりも、女主人を優先している。
 それが相互に想い合っているものでなくとも。
 それを愛と呼ぶなら、なんと残酷なのだろう。
 レナータの心に、やるべきことが決まった。
「多少、いえ、かなり身勝手かもしれませんがお許しください」
 レナータは見えざる念動力を放つ。
 ただの少女に察知できなくとも、吸血鬼には見切られる。
「左に盾を構えて。防御なさい」
「はい!」
 見えない攻撃を扱うレナータに、少女のほうが警戒したようだ。
「よくもリリアーナ様にッ! アイツを狙うわ、合わせなさい!」
 短剣を構えた少女がレナータに攻撃させまいと襲い掛かってくる。
 攻撃が見えなければ守ることができない。
「妙な力を使う侵入者め! リリアーナ様を守れない……あの方に愛を示すことができないわっ」
 レナータの身を少女の短剣が貫き、熱い痛みが走る。
 女主人の為に命すら捧げる、恋焦がれる少女の献身。
「それがあなた達の愛なんですね。……では、わたしが代わって伝えましょう」
 激痛に耐えながら、レナータは少女達に微笑む。
 ワザと受けたその刃の傷は、致命傷を避けているとはいえ痛烈だ。
 それをそっくりそのまま、吸血鬼へ分け与えてやる。
「……っ?」
「この痛みこそが愛の証です、彼女達の愛に報いなさい!」
「ふふ。そうね、私の為に尽くす彼女達の愛だわ」
 レナータは自らの身に刻まれた傷を、吸血鬼へと転写する。
 吸血鬼に痛みの錯覚が外傷を生むが、どこか嬉しげな笑みを浮かべる。

 シホはどこか、歪んだものを感じた。
 吸血鬼に尽くす少女達だけでなく、吸血鬼も何か間違えている。
 ハーミルも同じ事を思い、言葉を投げかける。
「愛は与えるもの、乞うもの? いいえ、共に育むものです」
「共に……育む? 与える愛は、違うというの?」
 ハーミルの言葉に吸血鬼がぴくりと反応し、不思議そうに首を傾げる。
「私は……愛は与えられる物でなく分かち合う物であって欲しい」
 シホは、少女達だけではなく吸血鬼にも敵意を向けず、少女達に語り掛ける。
 少女達は自らが忠誠を誓う、愛する吸血鬼を害しようとする者の言葉は聞き入れないだろう。
「会ったばかりの私が何を言っても、届かないでしょう。だからまず彼女達の想いと苦しみをこの身で受止めました」
 愛する者の為に、何かしたい。
 その為に自ら立ち上がり戦った少女を、シホは尊ぶ。
「私達は、リリアーナ様から頂ける愛を平等に分かち合っています」
「いいえ、そうではありません。愛する者と愛される者、互いに一方的ではいけないのです」
 シホは少女達に首を振る。
 吸血鬼も、少女達も。互いに愛し、応えているようで、どちらも一方的なのだ。
「貴女が愛しているという彼女達は、貴女から愛情を与えられなくなることを恐れています」
「…………――――」
 ハーミルの言葉に、吸血鬼が沈黙する。
 口許に手を当て……否、無意識に表情を隠そうとしている。
 だが頭を酷く殴られたような、衝撃を受けたその顔は隠し切れていない。

「引き換えに血を強いる愛など偽物よ」
「……そう。そうなのかも、しれないわね。でも私は吸血鬼だから、仕方ないの。
 こういう愛し方しか知らないから。こういう愛され方しか知らないの」
 ハーミルの否定に、吸血鬼は頷きながらも首を振る。
 『与える愛』しか知らない吸血鬼は、愛される事も、『与えられる』事しか知らなかった。
 相手が求めるものを与え合うのではなく、一方的に自分の愛を押し付けている。
 だから吸血鬼と少女達の関係は、歪んで見えるのだろう。
「余興が面白かったのでしたら。彼女達と私の身を賭けた強奪戦を受けて下さいませんか?」
「そうね。貴女は少し、欲しいわ。きっと猫達にも良い影響を与えるでしょうね」
 少女達に語り掛けるシホに、吸血鬼は興味を示した。
「捧げるものシホ、この身を捧げてお見せしましょう。『奪い愛い』ではなく、『分かち愛う』事を」
 シホはその身から、溢れんばかりの聖なる輝きを放つ。
 猟兵だけでなく、少女達をも包み込む。
 猟兵が傷付けなくとも、少女達が自身で付けていた傷をも癒す。
 分け隔てない輝きが一帯を包み込んだ。
 ただ一人、聖なる光に拒まれる吸血鬼を除いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「あの子達の泣き顔を見た。アンタを倒す理由はそれだけで十分っすよ。美人だからって容赦はしないっすよ」
真の姿になることで、仮面だけでなくヒーローコスチュームを着た青年の肉体も形成される
少女達は傷つけない。この制約で「ジャスティペイン」を発動。鎖分銅での【ロープワーク】【盗み攻撃】で彼女達から短剣などの武器を没収する。
「女の子が刃物を持つのは、料理をする時が一番似合ってるっすよ」
それでも少女の人数が多くてさばききれなくなれば、天井の証明とかオブジェに鎖を絡ませ上空に離脱。そのままリリアーナの上まで跳び、相手の防御の隙間を狙ってダガーや短剣を投擲
「どれだけ残酷なことをしてきたか、報いるがいいっすよ」


リリー・ベネット
人の弱みに付け込み、少女達の未来を奪う貴方の事……絶対に許しませんッ

向かってくる少女達が持っている短剣はアントワネットとフランソワーズで、フェイントをかけつつ奪い取ります。
幼い貴方達が、こんな戦いに挑む必要はないのです。
早く目を覚ましてあげたい。
他の猟兵の動きを見ながら、少女達をなるべく女主人から離すよう誘導しましょう。

女主人に近づく事が出来れば、ユーベルコード『歌う機械人形』でフランソワーズに漆黒の槍斧を持たせ一撃を決めます。
彼女には聞こえるでしょうか。
少女達の悲しみの歌が……。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。貴女達の愛を否定はしない。
だけど、私にも果たすべき誓いがある…。
だから、先に謝っておく……ごめんなさい。

防具を改造して自身の存在感を増す魔力を付与しておき、
第六感を頼りに敵の突撃を見切り【吸血鬼狩りの業】で回避に専念。

…無駄よ、貴女達では私には勝てない。

攻撃と注目を集めた所で【限定解放・血の波濤】を発動。
少女達を対象に誘惑の呪詛の波動を放ち行動不能にする。

…傷付けはしない。でも、今は眠っていて…。

その後、吸血鬼化した怪力を瞬発力に変えて吸血鬼に接近
生命力を吸収する力を溜めた大鎌をなぎ払い、
傷口を抉る波動を敵の体内で爆発させる2回攻撃を行う。

この場で生命を落とすのは吸血鬼。お前だけよ。



「あの子達の泣き顔を見た。アンタを倒す理由はそれだけで十分っすよ。美人だからって容赦はしないっすよ」
 リカルドは真の姿を解き放ち、ヒーローコスチュームを纏った青年が現れる。
 多くの少女達を、誰一人傷付けない。
 その困難な制約を達成するべく、正義の力が高まる。
「人の弱みに付け込み、少女達の未来を奪う貴方の事……絶対に許しませんッ」
 リリーが余裕の笑みを浮かべる吸血鬼を睨む。
 だがまずは吸血鬼よりも前に、少女達を先決。

「女の子が刃物を持つのは、料理をする時が一番似合ってるっすよ」
 リカルドに多方面から迫り来るナイフを弾き、絡め取り、そして奪い取る。
「幼い貴方達が、こんな戦いに挑む必要はないのです」
 リリーの二体の人形、アントワネットとフランソワーズがフェイントを織り交ぜながら弾き飛ばし、奪い取る。
 だは少女はそれで諦めず、自らの身体を武器に襲い掛かってくる。
「こっちです! 貴方達の目を覚ましてあげます」
「私達は望んでリリアーナ様に仕えてるんだ、邪魔するなっ!」
 リリーが吸血鬼から引き剥がすべく、少女を誘導する。

 四方八方は塞がれている、だが上はがら空きだ。
 リカルドは天井のシャンデリアに絡みつけて上へ離脱し、奪い取った短剣を投擲する。
「リリアーナ様ッ!」
 傍に控えた少女が射線に割り込み、その身を盾にする。
 だが初撃は庇われる事を織り込み済み。少女には刃ではなく、柄が当たる。

「今っす!」
 リカルドは振り子のように揺れながら、掛け声と共に二撃目を放つ。
 だがその短剣はリリアーナ自身の爪で弾かれる。
「ふふ、残念。私には届かないわね。無力な女じゃなくてよ?」
「でも注意は向けられたっすよ。『飼い猫』ならちゃんと見てないとダメっすよ」
 リリアーナの意識が、リカルドに向けられていた。

「……ん。貴女達の愛を否定はしない」
 リーヴァルディは少女達の想いを否定しない。
 心の隙間に入り込まれ、利用されているのだとしても。
 少女達は操られているわけではなく、望んで献身している。命を懸けて。
「だけど、私にも果たすべき誓いがある……だから、先に謝っておく……ごめんなさい」
 ヴァンパイアを狩る。その誓いの為にリーヴァルディは構える。
 防具に付与した魔力によって、その存在感が高められる。
 『リリアーナを守る為には、リーヴァルディを放っておけない』と少女達に思わせる。

「……無駄よ、貴女達では私には勝てない」
 ヴァンパイアから加護を与えられているとはいえ、リーヴァルディの前に敵わない。
 多くの少女を囲っている分、一人一人の力は大したことはない。
「っなら、数を揃えるまで!」
 リリアーナからの指示が無い。リカルドに引きつけられている。
 少女自身の判断で号令を挙げると、多数の少女達がリーヴァルディを囲む。
 この数に決死の覚悟で一斉に迫られれば、リーヴァルディとて危ういだろう。
 何より、少女自身の命を守ることが敵わなくなる。
 だが、リーヴァルディはこの状況こそを待っていた。
 少女達は自分の想いで仕えている。だからこそ、自分達で判断することもある。
 所詮戦い慣れていない少女だ。
 主人の指揮がなければ、リーヴァルディの罠に誘い込むのは容易い。

「……傷付けはしない。でも、今は眠っていて……『限定解放・血の波濤』」
 少女達は吸血鬼の従僕。
 ヴァンパイアの力の前に、本能的に隷従してしまう。
 リーヴァルディの呪詛がほんの一瞬、リリアーナの力を上回る。
 少女達は呪いに誘われ、気を失って倒れ伏す。
 多くの少女が倒れ、隊列が崩れた。

「……ッ! よくも私の子猫達を」
 ほんの僅か、一瞬でも愛する従僕が奪われた。
 余裕の笑みを浮かべていた吸血鬼の顔に怒りが宿る。
 漆黒の闇がその手に宿り、リーヴァルディへ狙い澄ます。
「どれだけ残酷な事をしてきたか、報いるがいいっすよ」
「ちっ……」
 飛び降りて背後に回り込んだリカルドが鎖鎌を振るいそれを阻む。
 明らかに冷静さを欠いた露骨な舌打ち。
 吸血鬼を守る者は少ない。
「聞こえるでしょうか。少女達の悲しみの歌が――『歌う人型機械人形』」
 更にリリーのアントワネットが庇いに入ろうとする少女を妨害し、フワンソワーズが漆黒の斧槍を手に迫る。
「リリアーナ様ッ!?」
「あ、ら?」
 吸血鬼の胸が、人形の斧槍に貫かれる。
 縫い付けられたその瞬間を、リーヴァルディは見逃さない。
 怪力の脚で床を踏み砕きながら、瞬発力に変換して迫る。
「この場で生命を落とすのは吸血鬼――お前だけよ」
 傷口を抉るように生命を刈り取る大鎌を薙ぎ払い、波動を体内で爆発させる。

「っ、ああ――そう、私は、終わるのね……?」
 リリーの斧槍と、リーヴァルディの大鎌と引き抜き、吸血鬼はたたらを踏む。
 如何に強靭なヴァンパイアとて、もはや再生限界を超えている。
 ヴァンパイアは少女達を守る為に、力の大部分を割いていた。
 傷付けるつもりが無いと察しても、その庇護の力を自身に戻すことをしなかった。
 少女を殺めていれば、分け与えていた力が吸血鬼に戻っていたことだろう。
 だが猟兵達は不利を承知で少女達を傷付けることは一切なかった。

「猟兵さん。あなた達に一つ、お願い良いかしら?」
 手足を始めとした末端から、灰となって崩れていく吸血鬼リリアーナに、猟兵は沈黙で応える。
「私は、愛せる者を愛し、与え、捧げさせる以外に、愛し方を知らないの。私が間違いだと言うなら――」
 リリアーナは少女達を示す。
 寵愛を与えていた『愛猫』も、寵愛に値しないとした『捨て猫』達も含めて。
「あなた達がこの娘達に、愛(生き方)を教えてあげて頂戴な。
 愛して欲しかった――私の願いは、もう叶えたもの」
 最期にリリアーナは満足げに微笑み、霧となって世界に融けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『失うで終わらせない』

POW   :    体を動かして肉体的癒しを

SPD   :    沢山料理を作ってお腹を満たす

WIZ   :    知識を与えて知的好奇心を刺激させる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵の活躍により、吸血鬼の支配と庇護から解き放たれた。
 少女達は誰一人命を落とす事無く、小さな集落に揃っている。
 寵愛を受け猟兵と戦った少女達も、もはや猟兵達を拒絶することはないだろう。

 彼女達は誰かに依存する事無く、自らの力でこの世界で生きていかねばならない。
 その為には『生きる理由』が必要だ。
 皆、か弱いただの女の子。少女達の心は良くも悪くも純粋だ。
 だが決して絶望に打ちひしがれるだけの無力な存在ではない。
 猟兵が少女に示したものが、きっと彼女達にとって希望の道標になるはずだ。
レイ・アイオライト
冗談交じりだけど、短剣を構えてこっちに突撃してきた少女もいたし、剣の稽古でもつけようかしら。
後は道化師みたいに、あたしの影を色々な形に変化させて、見せるわよ。
……暗殺者って立ち位置だし警戒されるかもしれないけどね。

大切な人のために何かをしてあげたいって気持ちは分かる。
あたしにも師匠がいたけど……自分の無力で喪った過去がある。だから少女たちの気持ちは痛いほどよく分かるのよ。

だけど大切な人が離れていなくなってしまったときに、「あたしはダメでどうしようもない人間だ」なんてその人に思われたくないの。

……辛い時があったら、今日浮かべた笑顔を思い出しなさい。
それで言うのよ、「この程度がなんだ!」ってね。


雛菊・璃奈
わたしは昔、奴隷として囚われ、道具として酷い扱いを受けた事があったよ…。
それでも、わたしは立ち上がった…。戦うと決めたから…。
貴女達にももう一度立ち上がってほしい…夢の為でも、もう一度、今度は本当に愛し合える人と出会う為でも…。
その為のお手伝いはするから…。


最後にひっそりと…。
リリアーナが道具として何人も使い捨てにした事は事実…それを許すつもりはない…。
…でも、一つだけ、わたしは勘違いしてたかもしれない…。
彼女は彼女なりに愛していた…ただ、人の愛と愛し方を知らなかっただけ、なのかも…。

次は、愛する人と幸せになれると良いね…。破魔の鈴を鳴らしてこっそりと彼女の冥福を祈るよ…。

※アドリブ等歓迎


白皇・尊
【白皇夫婦】
貴女達の未来に何があるのか、それは僕にも分かりません。
僕は長い時を生きてきて、これからも永い時を刻むでしょう…それでも生まれて来た事に後悔などした事がありません。
僕はあまり褒められた男ではありませんが、自分の力で自由を謳歌しています、力があれば自由に生きられるのです。

やりたい事などない、自由など要らない、今はまだそう思うでしょう。
でも未来は誰にも見えないのです。
生きていたから僕は鉋と出逢えました、日々愛し合い、共に生きたいと思える相手と。
貴女達にもきっとそんな人が現れます、だからどうか…そんな自分だけの本当に愛すべき誰かを見つけ、真実の愛を知る為に生きてください。
それが願いです。


喰龍・鉋
【白皇夫婦】
次はキミたちの未来の話だね、ボクもなんとなくここまで生き延びてきた、確かに運が良かっただけなのかもしれない、
でも、最初の一歩を踏み出したお陰でボクと尊はこうして出会えたんだ
生きる理由は…いつか一緒にお酒を飲めるようになったら、ボクと一緒に飲もう、成人の祝いをすることを約束するよ、ボクができる提案なんてこのくらいだけど、これまで自分の意思無く生きてきて、
いきなり歩き始めなきゃいけなくなっちゃったんだ、簡単なことから始めようよ、この約束が目標…っていうのは恥ずかしいけど、ボクが生きる理由になってあげたいな、その頃にはきっと、もっと沢山生きる理由ができてるはずさ


四王天・燦
きつねうどん・稲荷寿司・稲荷パスタ・黒蜜稲荷抹茶みたらし餡蜜…
炊き出しで必ず油揚げ。
味見でドヤ顔!どやぁ

時にリリアーナの城を報酬に所望。
活動拠点・今尚路地裏等で苦しむ少女(男が対象外…)の支援の場にしたい。
牢は酒蔵に改築※未成年
片隅にリリアーナの墓を立てる予定。
「野垂れ死にから救われた娘もいる。死んだら仏さ」

縁ある一章の娘に声を掛ける。
狐耳を見せ異世界人を告白。
毎日こっちに居られないから城の管理を任せたいと交渉。
「理不尽と向き合った経験、選択をできる強さ、可愛い容姿。適任だろ」
選択肢にしてくれ。
「ほら顔あげてると可愛いぜ」
無意識な誘惑がアタシの罪

最後に御守を渡す。
「幸せになれ。アタシの願いだ」


リカルド・マスケラス
とりあえず、難しいことはお腹いっぱいになってから
宇宙バイクで簡易キッチンセット引っ張ってきて、【料理】始めるっす。もし、料理を覚えたいって子がいたら、その子の体を使って作るっすよ。実際に動いた体験とかがあれば、覚えやすいと思うっすし。
「正しい食材の処理や調理法を知っていれば、食べることの出来る食材の幅も増えるっすからね」
それだけ彼女らが生きていきやすくなると願って
「やっぱり、女の子が刃物を使うときは、料理する時が一番すよ」

こちらを領主の仇と見るような子がいれば、それはそれで生きてく理由になるっすかね。無理に否定はしない
「なら、仇の技の数々をじっくり見るといいっすよ」
そんな事言いつつ料理を続ける


ドゥルール・ブラッドティアーズ
愛せる者を愛し、与え、捧げさせる……
それは間違いではありません、リリアーナ様。
ただ、貴女には 寛大さと責任感が足りなかった。
我儘を言わない子しか愛さない……それが悲劇のきっかけです。

……人の依存心は、簡単には消えない。
心の拠り所を失った彼女達には 新たな支えが必要なはず。
私の屋敷でメイドとして雇ってあげたいわ。
彼女達が笑って生きられるなら
私の事はリリアーナ様の代わりと思ってくれて構わない。

彼女達がそれを望まないなら
せめて【催眠術】で 悲しみを和らげてあげたい。
そして、これは命令でも洗脳でもない、ただのお願い。

この世界での孤独は 死よりも辛いわ。
皆で助け合って、慰め合って……どうか笑って生きて。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。満足した顔で逝く吸血鬼なんて珍しい。
本当に愛されていたのね。そして本当に愛していた…。
つまり、私は彼女達から愛する者を奪った仇敵になる…か。

…私は少女達にリリアーナの最期の言葉を伝える。
愛して欲しかった。そして私の願いはもう叶った…と。
貴女達の愛は、確かにあの女吸血鬼に届いていた。

…その上で、どうしたいのか彼女達に問う。
追悼がしたいなら作法を教えよう。
力が欲しいなら闘い方を教えよう。
…愛する者を殺した私が赦せないのなら、何時でもかかってきて。
その憎しみを受け止めてあげる…。

…赦す赦さないは貴女達が決めること。
そこに私達の事情をくみ取る必要なんてない。
だから選びなさい。自分自身の意志で…。


ハーミル・フラウミル
「伝えたいことはなにも特別なことではありません
もう一人ぼっちではない
それだけですよ」

集落の仲間が生きる理由となる
そうなって欲しいです

特に弱っている少女達のケアをさせてみます
食事の世話、傷の手当、身を清めたり髪を梳かしたり
衰弱が酷ければ側で体を温めたり
やることはたくさんです

「自分がされて嬉しかったこと一つ一つ思い出してください」

何故そこで赤面するんですか!?

そんな交流を重ねて絆を深め合って欲しいです
きっと心の癒しになっていきますから

そして私もそれは同じで
こんな安らぎはもうずっと忘れていました
滞在中は少女達と同じように過ごして癒しを分けて頂きます

「ふふ、髪を結うのが得意なの、教えて差し上げますね」


レナータ・バルダーヌ
うーん…いつも体ひとつで歩いていますし、猟兵らしく護身術…というのも能力任せなので難しいですね。
今はこれくらいしか思いつきません。

わたしは左腕の包帯を解き、包帯と服の間に挿んで持ち歩いている、ゴボウの種が入った紙包を少女に渡します。
生活が安定する頃には種まきによい時期になるでしょうし、育て方を教えてあげましょう。

「皆さんでたくさん愛情を注いで、収穫を分かちあってくださいね」

先程のシホさんの『分かち愛う』という言葉、わたしも感銘を受けたので僭越ながらお借りします。

……え?どうしてゴボウの種なんて持っているのか、ですか?
実は、バルダーヌ家は由緒正しいゴボウ農園の領主なのです。


シホ・エーデルワイス
他に愛し方を知らず
良い影響を与えると希望を感じたリリアーナさん

もっと早く違う形で逢ってみたかった

でも後悔はしません
私は私達と彼女の願いを叶えます


<医術と楽器演奏>を<コミュ力、優しさ、手をつなぐ>で教え
互いを想いやり
分かち愛う事を示す

作業として淡々と行わず
相手を想い楽しむ気持ちを忘れずに

自分がしてもらい
嬉しかったらお礼を言ってね

手当や打楽器等
簡単な基礎のみを教え
後はなるべく少女達同士で教え合わせる

私が教えた事に拘らず
皆さんの工夫と感性で発展させて欲しい

独りでなく皆で力を合わせて出来たら
喜びも分かち合えます

意見がぶつかり合ったら
落ち着いて話し合い折り合えるよう仲裁


最後
彼女の墓に頭の花を供えて弔う


久遠・翔
1章の女の子(名前あればその名で)に頼んで皆に聞き込み件他の子に用意した服や食事を配ってもらうっす

その間集落の近くにある木々を切り倒して高速建築の能力で瞬時に家を建てて皆さんの生活に困らないように工夫します
ここに色々要望を聞いてその要望通りの建物と家具を用意します…武器とかは多分城にあったでしょうし、それを貰ってきて慣れない子には訓練して覚えてもらいましょうっす

ただ未だに立ち直れない子もいるでしょうから…その子達には一緒に来ますかと提案します
最近色んな子の面倒見る事になったっすけど、家事がほぼできないんでそのお手伝いをしてくれる事が条件っすけどね?
少なくとも俺は誰も見捨てたりなんてしませんよ?


リリー・ベネット
……。
支えを失ってしまった少女達の心を、救いたいです。

最愛を失った少女達に、努めて優しく話しかけます。
貴女達は、歪な形でも……間違えた形だったとしても、あのヴァンパイアに愛されていました。
でもこれで終わりじゃないんです。
愛することも、愛されることも、これからたくさん……してほしい。

好きな物、得意なこと……褒められたことはありますか?
あるならそれを極めれば良い。
無いなら、一緒に見つけましょう。
絵を描くことでも歌うことでも、なんでもいいんです。
もし上手にできるようになったら私に見せてほしいんです。
その時きっと、貴女にも本当の愛が、わかるはずですから。



●命と心の糧
「とりあえず、難しいことはお腹いっぱいになってからっすよ」
 リカルドがバイクで簡易キッチンセット引っ張ってきて、料理を始めた。
 香ばしく美味しそうな香りが、少女達のお腹の虫を鳴らす。
「もし、この料理を覚えたいって子がいたら、体を借りて作るっすよ」
「身体を……?」
「自分はヒーローマスクっすからね。実際に動いた体験とかがあれば、覚えやすいと思うっす」
 勇気ある少女が名乗り出て、リカルド自身である白い狐面を装着する。
 少女の意識を保ったまま、少女の身体を操って手際よい包丁捌きで材料を刻んでいく。
 料理の工程を解説すると共に、下拵えを行う。
 支援物資である材料も使いつつも、メニューや味付けはこちらで調達できるもののみ。
 猟兵としての支援も、永続的には行えない。

「正しい食材の処理や調理法を知っていれば、食べることの出来る食材の幅も増えるっすからね」
 この先何年、何十年先でも、それだけ彼女らが生きていきやすくなると願って。
「やっぱり、女の子が刃物を使うときは、料理する時が一番すよ」
 自分や、誰かを守る為のものだとしても、人を傷つける為の短剣など似合わない。
 彼女達が戦うような事態に陥る事自体、リカルドは容認できない。
 少女の小さな手を、血に濡らすことはない。
「……領主の仇として見られるのも覚悟してたんっすけどね」
 リカルドは料理の合間に、ふと気になっていた問いを投げかける。
 リカルドは改めて問うことで、少女の心を傷付けるのではないかと迷った。
 だがその言葉に釣られて隠していた本音を吐き出すなら、心を押し殺すよりもずっと良い。
 思っていた以上に、自分達への敵意や怨恨を感じない。
 刃を向けたために顔を合わせづらそうにする者はいたが、逆に申し訳なそうにしていた。
 悲しみに打ちのめされるほど、絶望に染まってもいない。
 仇と恨むほど領主の死を悼んでいないかといえば、そうでもない。

「確かに……リリアーナ様を討った思う所が全くないと言えば、嘘になります」
 狐面を付けた少女の顔が、桶の中の水面に映る。
 予想に反して少女は微笑んでいた。
 儚くも弱々しくはない、確かな意志を感じる力強い笑みだ。
「私達の為に、皆さんは命を懸けて戦ってくれました……」
 少女達は、悪意を向けられることに慣れている。慣れてしまっている。
 だからこそ、純粋な好意が分かる。
 暗い闇の中でこそ、光は遠くまで、心の奥深くまで届く。

「なら、自分の技の数々をじっくりと見るといいっすよ」
「……はい!」
 真剣な目で、リカルドの手捌きを見つめる。
 美味しいものをお腹いっぱい食べる。
 生きる喜びとは、案外単純なものだ。

●力の使い方
「冗談だったんだけど、本当に希望されるとはね」
 少女が木剣を手に向かってくる。
 レイは素手で軽くいなして、組み伏せる。
「それじゃダメよ。貴女のそれは、反撃で傷付かないことを前提としたものだもの」
 ただの人間である少女の、無策の突撃。
 ヴァンパイアの加護が無ければ、容易く切り伏せられるだろう。
 相手に突撃する事に恐怖を感じていないが、この場合は『無謀』という悪い意味だ。
 フルプレートメイルでも纏えば別かもしれないが、そのほうが現実的ではない。
 これは根気良く基本から教える必要がありそうだ、と吐息を漏らす。
 けれど稽古を希望した少女の目が、本気だと物語っている。

「大切な人のために何かをしてあげたいって気持ちは分かる」
 レイは分かってしまうだけに、『冗談だ』と断り切れなかった。
 向かって来た少女は、リリアーナを守るべく短剣を取った少女だ。
 強制されるわけでもなく、お願いされたわけでもなく、自ら剣を握った。
「あたしにも師匠がいたけど……自分の無力で喪った」
 だから少女達の気持ちは痛いほどよく分かった。
 もし彼女がより強ければ、リリアーナを守り切ったかもしれない。
 今少女が剣を手にしている理由がそうでなくとも、自分の力不足は痛感していることだろう。
 でなければ『何かを守る為の剣』など、学ぼうとするまい。
「だけど大切な人が離れていなくなってしまったときに、『あたしはダメでどうしようもない人間だ』なんてその人に思われたくないの」
 レイにそう語り掛けられた少女の眼に、再び力が宿る。
 無力な少女でも、その想いだけは強い。
 弱い少女の強さの源泉は、やはり自分の為にではなく、他人の為にだった。
 それが身を結ぶのは――まだまだ時間が掛かりそうだが。

「わぁ、影が色々形が変わってる! 凄い!」
「あれってタカかな?」
「カラスよ、嘴がそれっぽいわ!」
「レイ様、答えは何なんですか?」
「どうかしら。貴女達で考えなさい」
 稽古を終えたレイは、少女達に影絵のように見せる。
 疲れを忘れて無邪気にはしゃぐ少女達の輝く目と、その顔に浮かんだ純粋な笑顔。
 レイはその表情を崩さぬまま、安心するように吐息を漏らす。
 影を操る、暗殺者としての技。恐れられ、警戒されるかもしれないと思った技。
 戦う事しかできないと言ったその力で、今こうして少女の心を楽しませていた。
「……辛い時があったら、今日浮かべた笑顔を思い出しなさい。それで言うのよ、『この程度がなんだ!』ってね」
「ありがとうございます、レイ様……」
 幸せな気持ちが、楽しい思い出が、辛い絶望を乗り越える力になる。
 レイは決して顔には出さない。
 けれどこういった小さな幸せを、少女達に積み上げていって欲しいと願った。

●人との出逢い
 鉋と尊の二人は、少女達にひとところに集まって貰っていた。
 寄る辺を失い、俯く少女達。
 救われた者として、鉋の言葉が必要だ。
「次はキミたちの未来の話だね、ボクもなんとなくここまで生き延びてきた、確かに運が良かっただけなのかもしれない」
 他者の出会いや人の縁や、運によるところが大きい。
 鉋が出会ったのが尊であったが、少女達がリリアーナであったのも、運なのだろう。
「でも、最初の一歩を踏み出したお陰でボクと尊はこうして出会えたんだ」
 けれど、少女達に自分の力で立てないとは鉋は思わない。
 踏み出すことが無ければ、いつまでも前に進むことはできない。

「貴女達の未来に何があるのか、それは僕にも分かりません。
 僕は長い時を生きてきて、これからも永い時を刻むでしょう……それでも生まれて来た事に後悔などした事がありません」
 未来は分からない。
 辛く苦しい事は尊にだっていくつもある。
「僕はあまり褒められた男ではありませんが、自分の力で自由を謳歌しています、力があれば自由に生きられるのです」
 だが後悔しないのは、自分で自分の歩く道を決めているから。
 思うがままに自由に生きるから、その結果と言う責任を後悔する事無く受け入れられる。
「やりたい事などない、自由など要らない、今はまだそう思うでしょう」
 尊も、彼女達が支配さ(まもら)れるだけの少女ではないと見ていた。
 彼女達とて愛する者の為に、自分達に立ち向かったのだから。
 今はまだ俯く少女達だが、瞼を閉じているだけだ。
 儚い夢幻のようなものの中でも、一度立ち上がった者はまた立ち上がれる。
「でも未来は誰にも見えないのです。生きていたから僕は鉋と出逢えました、日々愛し合い、共に生きたいと思える相手と」
 尊が鉋へと――最愛の人へと微笑みかければ、鉋の褐色の頬が紅を帯びてはにかみ笑った。
「貴女達にもきっとそんな人が現れます、だからどうか……」
 尊と比べれば、少女の……人間の短い一生でも、吸血鬼だけが唯一愛する人ではないはずだ。
「そんな自分だけの本当に愛すべき誰かを見つけ、真実の愛を知る為に生きてください。それが願いです」
 リリアーナは少女達を分け隔てなく愛したが、ただ一人に応える事はなかった。
 彼女達には求めすぎれば失う、薄氷の上に立つような愛ではない――真実の愛を知って欲しいと願った。
 俯いた少女が尊の言葉を噛み締めるように、ゆっくりと顔を上げる。

 真実の愛と呼べるものに出逢えるか、俯いたまま希望を抱けない少女もいる。
 そんな子達の為に、夫の言葉を繋ぐように鉋は少女達へ微笑みかける。
「いつか一緒にお酒を飲めるようになったら、ボクと一緒に飲もう、成人の祝いをすることを約束するよ」
 それは数年先の、小さな目標。
 暗雲立ち込める闇に支配された世界で、未来の話をすれば鬼が嗤う。
 『明日も同じように生きていられるか?』と嗤う。
「ボクができる提案なんてこのくらいだけど、これまで自分の意思無く生きてきて、いきなり歩き始めなきゃいけなくなっちゃったんだ、簡単なことから始めようよ」
 だが鉋は微笑み、笑い飛ばす。
 未来に希望を、目標を持つ者は、『より良い未来の為に生きていける』と笑う。
 その目標が自分との約束だと思うと、少し照れてしまう。
「その頃にはきっと、もっと沢山生きる理由ができてるはずさ」
 鉋と尊が見守る少女達。
 人との出逢いが生きる理由になるというならば、同じ境遇の少女達が何人もいる。
 互いの痛みを知る彼女達は、きっとお互いに支え合う事だろう。

●少女の居場所
 燦が炊き出しで用意した料理がテーブルに並ぶ。
 白く太い麺の入ったスープ。
 狐色の衣に包まれた白い粒々。
 黄色く細い麺。
 美しい色合いのデザート……にしれっと混ざっている何か。
「何……この、何? 見たことない料理ばっかりなんだけど……」
「知らないか? 右からきつねうどん、稲荷寿司、稲荷パスタ、黒蜜稲荷抹茶みたらし餡蜜……」
 燦と戦った強気そうな少女の問いに、燦は指差して答える。
「そうじゃなくて! 必ず乗ってるコレなに?!」
 必ず入っている『稲荷』の言葉は同じ物を差す。『きつね』も同義だ。
「油揚げだ」
 得意げに示すのはその名を冠する狐の大好物、豆腐を油で揚げたもの。
「ちゃんと味見した!? 後半明らかに合わなそうなんだけど?! っていうか特に最後!」
「勿論したぞ、油揚げは何でも美味しい」
 燦は現した狐耳をぴこぴことしてどやあ。
 偏食極まった妖狐らしいチョイスだ。
「意外といけますよ、これ」
「なんでよ?! 私はいらない……ホントいらないからね?!」
「まぁまぁ、そう言うなって」
 ツッコんだ少女の印象とは裏腹に、他の少女達からは好評だったことに、燦はドヤ顔を深めた。

 炊き出しを終えた燦はリリアーナがいた城を手直ししていた。
 リリアーナと同じく過去の産物であるヴァンパイアの城だが、消える事無く佇んでいる。
 絢爛な装いは消え去っているものの、多少修繕すればまだ人が住める場所として機能する。
 少女達の新たな住処である集落からもほど近い。
 燦はその城の片隅に、小さな墓を立てた。
「……あの方のお墓、立ててくれるの?」
「ああ。野垂れ死にから救われた娘もいる。死んだら仏さ」
「そう……私が言うのもアレかもしれないけど……ありがとう」
 胸の前で少女は拳を握りしめる。きっと祈っているのだろう。
 過去の化身である『リリアーナ・ヒル』はこの城で生き、未来へと遺していた。
 燦の隣にいる少女も、彼女が遺したものの一人だ。

「ここをさ、本当の意味で苦しむ少女を支援する場所にしたいんだ」
 燦は集落を離れて城に連れて来た少女に話す。
 女性限定であり、孤児院とはまた別だ。
 男女が共に過ごす問題を防止や解決し、責を負える者はない。
 構想は少女同士が互いに支え合う、寄り合い所帯のようなもの。
「アタシは毎日こっちに居られないから、城の管理を任せたい」
「……何で私なのよ」
 少女は口を尖らせてむすっとした表情を作ったまま、燦をじっと見つめる。
 内心頼られて嬉しげなのが見て取れる。
「理不尽と向き合った経験、選択をできる強さ、可愛い容姿。適任だろ」
「さっ、最後は関係ないでしょ?!」
 真っ赤になった少女がそっぽを向く。
 やがて俯き、真剣に考え込む。
 リリアーナの元で過ごした少女達にとっては、ここは良くも悪くも思い入れ深い場所だ。
 手放しで喜ぶほど良い思い出ばかりではなく、だが捨て去るほど悪い思い出ばかりではない。
 燦は少女の答えをゆっくりと待つ。
 燦にとってどちらでも構わない。拒否するならそれでも良い。
 だが答えは何となく分かっていた。

「……わかったわ。やってみる。ううん、やってみせるわ」
「そっか。やっぱり顔あげてると可愛いぜ」
 この強気な少女なら、そう言うと思っていた。
 にっと笑って無意識に誘惑してしまう燦に、少女の顔と耳が紅く染まる。
 燦が気付くと自然と近くにいる少女。
 知り合って結んだ縁、というのもあるが、
「べ、別に貴女の為じゃなくて、私達みたいな娘の為なんだから! 勘違いしないでよね!」
「ああ、それでいい」
 お手本のような素直じゃない反応をする少女の手を取って、燦は御守りを握らせた。
「幸せになれ。アタシの願いだ」
「……ありが、とう」
 微笑みかける燦に、少女が小さく応える。
 俯かず、顔を逸らさず、じっと燦の顔を見上げて。
 彼女にとっても、この場所が生きる理由になることだろう。
 奇しくもやることはリリアーナがしたことと似ている。
 だが彼女より上手くやるはずだ。
 少女は一人ではない。過ちを正し合える仲間がいるのだから。

●愛されたかった者
「愛せる者を愛し、与え、捧げさせる……それは間違いではありません、リリアーナ様」
 ドゥルールは亡きリリアーナを想う。
 彼女なりに少女達を愛していたと、ドゥルールは認める。
「ただ、貴女には寛大さと責任感が足りなかった。我儘を言わない子しか愛さない……それが悲劇のきっかけです」
 結局のところ、リリアーナは『都合のいい存在』を手元に残しただけだった。
 それが残された少女にもどれ程の不安と恐怖を植え付けたか、考えもしなかっただろう。

「もし、貴女達に心の支えが必要なら、私の屋敷でメイドとして雇いましょう」
 ドゥルールは少女に差し伸べる。
 人の依存心は、簡単には消えない。
 心の拠り所を失った彼女達には、新たな支えが必要なはずだ。
「貴女達が笑って生きられるなら、私の事はリリアーナ様の代わりと思ってくれて構わないわ」
「ルル様……ありがとうございます……」
 ドゥルールに抱かれた少女が腕の中に収まり、寄り添うように甘える。
「……でも、ダメです。今ルル様に甘えれば、同じ過ちを繰り返してしまうだけだから」
 吸血鬼だけでなく、少女も過ちを犯していた。
 寵愛を失う事を恐れて、女主人の行いを過ちだと正す事をしなかった。

「私はきっと、リリアーナ様を愛していたのではなく……誰でもいいから愛されたかっただけなんです」
 そんなことはない、と言ってあげたかった。
 ドゥルールの腕に抱かれながらも少女がリリアーナを想っていたのは、紛れもなく本物の愛だったはずだ。
「優しいルル様。貴女についていってしまえば、私は自分でそれを否定できなくなってしまいます」
 けれど少女の顔には、悲しみではなく微笑みを湛えていた。
 己の依存心を理解し、弱さを認める強さが少女の中にあった。
「私は愛し合える人を見つけます。だから……今だけ、こうして甘えさせてください。
 誰かに寄り掛かるのは……これで最後にしますから」
「そう……それで、貴女の悲しみが和らぐなら、いくらでもしてあげるわ」
 ドゥルールは抱きしめた少女の首筋に口付けする。
 血を吸ったばかりであるため、吸血はしない。
 痩せ細った少女、吸い過ぎれば命に関わるかもしれない。
 代わりに赤い痕を残す。愛欲ではなく、愛情を示す。
「この世界での孤独は死よりも辛いわ。皆で助け合って、慰め合って……どうか笑って生きて」
 人間であっても、弱いが故に同じ人間に迫害され、オブリビオンに心を救われた少女達。
 少女にドゥルールは自分を重ねるように、優しく抱きしめた。
 どうか彼女達が笑って生きられるようにと、心から願って。

●愛された者
「……ん。満足した顔で逝く吸血鬼なんて珍しい」
 リーヴァルディが吸血鬼が消え去る瞬間の表情を思い出す。
 この暗黒世界の支配者だと驕り高ぶった吸血鬼の末路。
 決まって見下していた人間やダンピールに打ち負かされた驚愕と悔しさ、そういうものばかりだった。
 リリアーナは、最期の最期で、あるいは真実の愛を抱いたのかもしれない。
 最愛の少女達を託せる相手、猟兵達と出逢った事によって。

「私は彼女達から愛する者を奪った仇敵になる……か」
 リーヴァルディは恨まれていようと、伝えるべき事があると、向き合う。
「『愛して欲しかった』。そして『私の願いはもう叶った』……リリアーナの最期の言葉よ」
 リーヴァルディが、少女達にリリアーナの言葉を告げる。
 リリアーナは気に入った少女を――自分を愛してくれる少女を集めて囲った。
 その行いの是非は、今は問わない。
 吸血鬼を愛した少女達に、告げる言葉は一つ。
「貴女達の愛は、確かにあの女吸血鬼に届いていた……」
「……ありがとう、ございます……あの方の言葉を伝えてくれて……そう言ってくれて……」
 リーヴァルディの言葉に、少女がぽろぽろと涙を零す。
 急ぐ必要はない。急ぐべきことでもない。
 リーヴァルディは少女達が泣き止むまで、静かに待つ。

「貴女達は、どうしたい……?」
 愛した吸血鬼(ひと)を失った少女。彼女達が猟兵を赦せるか赦せないか。
 オブリビオンを滅さねばならないという猟兵の使命とは無関係だ。
 死を悼み、追悼したいならば作法を。
 生きる為の力が欲しいならば、闘い方を。
 そして復讐ならば――。
「……愛する者を殺した私が赦せないのなら、何時でもかかってきて。その憎しみを受け止めてあげる……」
「……いいえ。リリアーナ様が、以前仰っていたことがあるんです」
 少女は涙を拭い、首を振る。
 少女達はリーヴァルディを責めることはなかった。
 先を促すように小首を傾げたリーヴァルディに、言葉を繋ぐ。
「『もし私が倒されても、相手を恨んではいけない』と……いつかこうなる事を予期されていたのかもしれません」
 少女がリリアーヌを倒した相手に、復讐を誓わぬように。
 ――あるいは、少女を本当の意味で助け出した相手を恨むことのないようにと。
「本当に愛されていたのね。そして本当に愛していた……」
 少女達が不思議なぐらい素直に、猟兵を受け入れたのはその言葉があったからなのだろう。
「でもその言葉があっても、それだけならきっと討った人を恨んでいたと思います。私達はどうしようもなく……愚かだから」
 少女達が猟兵を恨まないのは、リリアーナの言葉だけではない。
「リーヴァルディ様が、助けようとしてくれたこと……何よりも私達の心に寄り添ってくれていること……皆、ちゃんとわかっています」
 リーヴァルディは憎しみの矛先も受け止めるつもりでいた。
 『仇敵』と言う都合のいい捌け口になることも、リーヴァルディは甘んじて受けるつもりだった。
 先の見えない未来だとしても、復讐に生きればその恐怖を忘れることもできる。
 何かに当たり散らすほうが、余程楽だろう。
 彼女達がそれで満足するなら――復讐心が彼女達の生きる理由に、力になるのならばそれでもいいと。
 その想いが、少女達に伝わっていたから。
 彼女達が猟兵に立ち向かったように、自らの意志で選んだ。

「貴女達は、強いね……」
 この世界に生きる者達の強さを、リーヴァルディは見た気がした。
「リーヴァルディ様や、優しい人のお陰です」
 涙を拭った少女が、リーヴァルディに向かって柔らかく微笑む。
 絶望の闇に閉ざされた冷ややかな世界に生きる者達。
 だからこそ彼女達は、誰よりも『希望の光(やさしさ)』に敏感なのだ。
「だから……弔い方を、教えてください。私達が愛したリリアーナ様が安らかに眠れるよう」
「……ん。わかった」
 人の悲しみと、人の愛情を知った彼女達は、きっと強く、優しく生きていけるだろう。

●共に安らぐ時間
「伝えたいことはなにも特別なことではありません。もう一人ぼっちではない。それだけですよ」
 ハーミルは少女へ、他の少女達を示す。
 同じ者に恋した者達。似た境遇を辿った者達。
 これから共に支え合う『仲間』達。
 少女達は同じ場所で過ごしながらも、互いに知ることがなかった。
 ようやくこうして、本当の意味で共に同じ時間を過ごす。

「自分がされて嬉しかったこと一つ一つ思い出してください」
「嬉しかった……こと……」
 少しでも慰めになれるよう、少女に同じ事をしてあげたいと思い、ハーミルは問う。
 少女が徐々に真っ赤になって俯く。
「何故そこで赤面するんですか!?」
 何を連想してしまったのか、ハーミルまで想像してしまって顔が紅くなってしまう。
 吸血鬼の『寵愛』を受けた少女。
 あまり大っぴらに人に言えない事もされたことだろう。
「あっ、い、いえ、そういうのじゃなくて……っ! そういうのもして頂きましたけどっ」
 慌てるハーミルに呼応するように、口走ってしまう。
 そう言う事をする自分を想像してしまい、更にハーミルは耳まで赤くなる。
 だが少女の笑い声が零れ、吹き飛んでいく。
「……優しく抱きしめて貰えたのが……一番嬉しかった、です。守られてる気がして……凄く、落ち着いたんです」
 リリアーナの腕の中に包まれた思い出しているのだろう。
 少女は幸せそうな顔の中に、哀愁を漂わせる。
「こんな風に……ですか?」
 その少女を放っておけなくて、ハーミルは静かに抱き留める。
 腕の中に包まれた少女がハーミルを抱き返し、少女の温もりが伝わってくる。
「私も……ハーミル様に抱きしめられて、心まで温かくなるようでした」
 はにかんだように微笑む少女に、ハーミルがもう一人抱きしめた少女が同意する。
 衰弱していた少女は、聖者たるハーミルの抱擁で元気を取り戻していた。
 身体だけでなく心に、人の温もりを伝えられたのだと嬉しくなる。
「では、貴女も一緒に。互いにふれあいましょう」
 同じように二人纏めて、抱きしめる。

「ふふ、髪を結うのが得意なの、教えて差し上げますね」
 櫛と髪留めを手に、ハーミルは少女の長い髪を手に取る。
 伸ばしっぱなしの痛んでしまっている髪を優しく梳くと、美しさを徐々に取り戻していく。
「力になれてよかったです。私も……とっても嬉しいです」
 ハーミルは甲斐甲斐しく世話を焼きながら少女達の力になり、絆が深まっていく安らぎを感じた。
 誰かと共に過ごし、笑い合う穏やかな時間など、もうずっと忘れていた。
 少女達に与えるばかりでなく、ハーミルの心も癒されていた。

●共に育てる想い
「うーん…いつも体ひとつで歩いていますし、猟兵らしく護身術……というのも能力任せなので難しいですね」
 猟兵としての力や特異な能力によるものでは、少女達には真似できないだろう。
「今はこれくらいしか思いつきません。」
 レナータがそう言って左腕の包帯を解き、取り出した紙包み。
 中には小さな細長の粒が入っていた。
「これは?」
「ゴボウの種です。生活が安定する頃には種まきによい時期になるでしょうし、育て方を教えてあげましょう」
 不思議そうに首傾げる少女に、レナータは応える。
 猟兵達が支援できる期間は、長くない。
 少女達の集落が安定するまで、何か月も掛かるだろう。
 だが少女達の未来は、何年、何十年先までも続く。
「植物を育てるのは、とっても根気がいります」
 水や栄養をあげすぎてもいけない。
 日当たりや最適な気温、良い環境を与えればいいというものでもない。
 厳しい環境でこそ、より強く根を張り、良く育つ。

「でもなんでゴボウ……というか、そんなところにしまって持ち歩いているんですか?」
 小首を傾げた少女に、レナータは微笑む。
「実は、バルダーヌ家は由緒正しいゴボウ農園の領主なのです」
「農園……すごい……」
「皆さんでたくさん愛情を注いで、収穫を分かちあってくださいね」
 シホの言葉に感銘を受けたレナータは、言葉を借りた。
 少女一人でできることは少ない。一人でできる範囲の収穫などたかが知れている。
 だが人が集まれば規模を大きくできる。力を合わせる事で、人数以上の力を発揮できる。
 楽しい事も、辛い事も、苦労も分かち合う者がいること。
 きっとそれが、彼女達の生きていく力になるだろう。

●共に過ごす喜び
「リリアーナ……貴女と、もっと早く違う形で逢ってみたかった」
 他に愛し方を知らず、シホの想いが少女達に良い影響を与えると、希望を抱いたリリアーナを想う。
 もし彼女に、もっと早く、別の愛し方を教える事ができれば――。
 シホはそう思わざるを得なかった。
「でも後悔はしません。私は私達と彼女の願いを叶えます」
 『過去』であるリリアーナに、人の愛を教える事はもはや敵わない。
 だが『現在』を生きる少女達に、愛と、『未来』の生き方は教えることができる。
 それがリリアーナの願いであり、シホの願いであった。
 託された想いを受け取るように、未来を繋ぐ。

 シホは手当や打楽器等、簡単な基礎のみを教えて少女達にやらせてみた。
 少女達が集まれば、不器用な子や感性の低い子はどうしてもいる。
 シンプルな分、得手不得手はより顕著だ。
 だが逆に覚えの早い子もいた。
「それじゃあ巻き過ぎだし、キツく縛り過ぎだよ」
 器用な子は覚えも早く、すぐに要点を掴む。
「難しく考えすぎ。要は適当にでいいのよ」
 センスのいい子は、感性のみで心地良いリズムを刻み音楽を奏でる。
 シホはあまり口出しせず、なるべく少女達同士で教え合わせた。
「皆凄いなぁ……私は何もできないや……」
「こんなの簡単よ。ほら、教えてあげるから」
 教えることで理解力も深まり、そして少女達は交流を深めて互いを知る。
 少女達の間にはいつしか笑顔に満ちていた。
 女主人を仰ぐばかりで、互いに交流することは殆どなかったらしい。

「自分がしてもらい嬉しかったらお礼を言ってね」
 シホがその様子を微笑ましく見守っていると、少女達の視線がシホへと向く。
 不思議そうに小首を傾げると、少女が口を開く。
「その……ありがとう。私達の為に、色んな事教えてくれて……」
 一番に自分に向けられたシホは少し目を瞬かせるが、お礼を言われた次の言葉を教える。
「どういたしまして。それと……ありがとう。私も、貴女達の為に何かできて、嬉しい」
 過去の記憶を持たないシホ。償わないといけないという罪悪感。
 少女達に浮かんだ笑顔を見ていると、僅かに和らいだ気がした。

●立ち上がる脚
「俺は住む場所を用意するとするっすか」
 翔は周辺の木々を切り倒した木材や、支援物資を材料に『高速建築』で家を作り出す。
 土台や基礎まで完璧に造り上げられた、立派な新築の一軒家だ。
「凄い……魔法みたい……」
「他にも欲しい家具や、建物の間取りなんかの要望があれば用意するっすよ」
 新たな生活に浮き立つ中、暗い顔を浮かべる少女もいた。
「良かったら、俺と一緒に来るっすか?」
 心の支えであったリリアーナを失った者は、不安に彩られている。
 翔は少女に、問いかける。
「最近色んな子の面倒見る事になったっすけど、家事がほぼできないんでそのお手伝いをしてくれる事が条件っすけどね?」
 少女が不安がらないように、翔は冗談めかせて笑いかける。
 手を差し伸べるだけではない、支え合うことを示して。
 翔は、少女の不安を見抜いていた。
「少なくとも俺は誰も見捨てたりなんてしませんよ?」
 何かに依存するということは、それを喪う恐怖と共にある事。
 リリアーナに仕えていた少女達は、確かに愛されていたかもしれない。
 だが同時に、『常に見捨てられるかもしれない』という不安を抱いていた。
 今は共にいる、捨てられた実例があれば、尚の事だろう。

「……ありがとうございます、翔様」
 支援物資を配る翔の手伝いをしていた少女が、その気遣いを察していた。
「でも、貴女の傍にいるときっとまた甘えてしまいます」
「甘えたいなら、甘えていいんっすよ」
 それが優しさではなく甘さだとしても、少女達が生きていけるなら。
 彼女達は十分苦さを味わったのだから。
「生きるのは……愛されたいのは、『自分の為に』なのに、『翔様の為に』と言ってしまいます」
「俺はそれでも――」
 少女は翔の唇に指で触れて、その台詞の続きを言わせないように、困ったように微笑む。
「翔様は、きっと皆を包み込んでくれるのでしょう。でも、強い人に寄り掛かるばかりでは、ダメなんです。私達は弱いから……」
 手を取ってくれた翔の提案拒むことは、少女にとっても抗いがたい誘いだろう。
「手を取って、立ち上がらせてくれました。後は、自分達の脚で立たなきゃいけないんです」
 それ以上翔の優しい言葉を聴いてしまえば、決心が揺らいでしまうから。
 生まれたての小鹿のような弱々しく震える脚でも、自分の脚で生きていく為に
「わかったっす……でも、人に頼る事も忘れないで欲しいっす。貴女達は独りじゃないんすから」
「はい、その言葉を……翔様がくれた優しさを、胸に生きていきます」
 依存する弱さではなく、助け合い、頼る強さを持つために。
 自分達で生きていくことを少女達は、どこか眩しく見えた。

●命の潤い
「……。支えを失ってしまった少女達の心を、救いたいです」
 リリーは彼女達を救うためとは言え、心の支えを奪った事に責を感じていた。
 俯いた少女を前に膝を折って見上げ、じっと見つめる
「貴女達は、歪な形でも……間違えた形だったとしても、あのヴァンパイアに愛されていました」
 努めて優しい声色でリリーは語り掛ける。
 リリアーナの愛は、愛と呼ぶには一方的で、独善的なものだった。
 けれど少女達にとっては、それが初めての愛で――初恋だった。
 恋する少女はどうしようもなく盲目的で、悲しいまでに献身的だ。
「でもこれで終わりじゃないんです。愛することも、愛されることも、これからたくさん……してほしい」
 命を懸ける程の恋を、少女は失ったのではない。
 命を懸ける程の恋を、少女は知ったのだ。

「好きな物、得意なこと……褒められたことはありますか?」
 リリーは少女に問いかける。
「リリアーナ様が……声が綺麗ねって言ってくれました」
「私はリリアーナ様の絵を描いたら……褒めてくださって……全然下手で、見せられるものじゃなかったのに……」
 女主人を喜ばせ楽しめようと、少女達は自分なりにできる事を探していた。
 リリーは一つ一つ聞いて行く。
 俯いて暗い顔を浮かべる少女は、得意な事を見つけられなかったのだろう。
「あるならそれを極めれば良い。無いなら、一緒に見つけましょう」
 絵を描くことでも歌うことでも、なんでもいい。
 最初は上手にできなくても良い。
 『初めて』が失敗することは、当然だ。
「もし上手にできるようになったら私に見せてほしいんです。その時きっと、貴女にも本当の愛が、わかるはずですから」
 生きる事だけでも精一杯かもしれない。
 だが誰かの喜んでくれる姿を想って励む。
 好きな事を見つけ、上達し、見せてあげたいと思える人がいる。
 その夢中になれる何かは、生きる楽しみになりえるものだ。

●託された想い
「わたしは昔、奴隷として囚われ、道具として酷い扱いを受けた事があったよ……」
 璃奈は少女に語る。
 オブリビオンである吸血鬼の元でようやく人並みの扱いを受けた少女とは逆だ。
 璃奈の告白を受け、悲しげな顔浮かべる少女。
 痛みを知り、我が事のように共感する少女達に、璃奈は『だからこそ』と。
「それでも、わたしは立ち上がった……。戦うと決めたから……」
 少女達には璃奈のような、家系によるものや、選ばれし者としての特別な力は持ちえない。
 だが、少女達も一度は立ち上がった。
 璃奈は『今の苦難』に打ち勝つ為に。少女達は『今の平穏』を守る為に。
 璃奈は、自分と少女の間に、大きな違いはないと感じていた。
「貴女達にももう一度立ち上がってほしい……夢の為でも、もう一度、今度は本当に愛し合える人と出会う為でも……」
 今が辛く苦しくとも、生きて俯かず前を向いていれば、生きる喜びや人の愛は見つけられる。
 一人で立ち上がれないなら、誰かの手を取っていい。
「その為のお手伝いはするから……」
 璃奈は少女の手を握る。
 暗い道を歩むための希望の光になるべく。

 璃奈が訪れたのはこの戦いでの『唯一の死者』の墓。
 璃奈が来る前に、『エーデルワイス』の花が供えられていた。
 城の片隅に立てられた墓標には名は刻まれておらず、死体も埋まってはいない。
 オブリビオンである以上、いつかどこかで蘇るであろう。
 彼女によって、少女の命が救われた。
 璃奈が出逢った少女達は、吸血鬼に拾われなければ今頃生きてはいなかったろう。

「リリアーナが道具として何人も使い捨てにした事は事実……それを許すつもりはない……」
 同時に寵愛を与える者を『選別』するように、簡単に捨てたのも事実。
 純粋な愛と呼ぶには身勝手な、歪んだ愛情だ。
 オブリビオンは停滞した過去の存在。未来を描くことはできない。
「……でも、一つだけ、わたしは勘違いしてたかもしれない……」
 身勝手なものだとしても、少女達を利用するだけではなかった。
 少女を道具のように扱った。
 だが、気に入った道具は大切にするものだ。
 少女を犬猫のように扱った。
 だが、飼い猫は愛でるものだ。
「彼女は彼女なりに愛していた……ただ、人の愛と愛し方を知らなかっただけ、なのかも……」
 吸血鬼は、人間を対等の生き物として見る事はない。
 人間が犬猫を愛するように、一方的に愛した。
 犬猫が人間に甘えるように、一方的に愛された。
 もし人の愛と愛し方を知っていれば……そう考えた所で、璃奈は思考を切る。
 言葉が通じても、その価値観は到底分かり合えず相容れる事ない。
 吸血鬼と人間は、別の生き物なのだ。

 けれど願う事はできる。
「次は、愛する人と幸せになれると良いね……」
 璃奈は鈴を鳴らす。
 それは邪まなるもの、魔を祓う巫女の浄化の鈴の音。
 安らかな眠りあれと。
 璃奈が鳴らした以上に、反響した音が鳴り響き残響を奏でる。
 鏡の中から聴こえた鈴の音が、璃奈の鈴と重なったような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月26日


挿絵イラスト