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寂しさの定理

#UDCアース


●瑠璃色の涙。
 血の涙が流れ落ちる。
 ズタボロの患者着は痛ましいものである。氷のUDCを取り込んだ肉体は、あらゆるものを凍りつかせる。
 だが、彼女が徒に力を振るうことはない。
「……とても眠いの。まぶたが重たくて、どうしようもないの。起きていたいのに、どうしても無理なの」
 それはぐずる子供のような声色であった。
 姿は子供であれど、中身は違う。人間の形をしているが、人間ではない。邪教によるUDCとの融合実験の被験者であり、被害者でもある。

 彼女は友を庇うために己から志願してUDCとの実験に身を投じたようであるが、その意識があるのかどうかすら怪しいものである。
 彼女の行いは正しい。
 正しくて、正しくて、同時に誤ちでもあった。
 どうしようもなく間違っていたのだ。
 誰かを護りたいと思うことは尊いことだ。人として尊ぶべきものである。けれど、彼女の本心からの行いは、ただの遅延でしかなかった。
「ええ、だから眠りましょう。あなたのお友達を連れてきたわ」
 彼女を見つめるUDC職員は、小さなぬいぐるみを彼女の傍に置く。
 周囲には大小様々なぬいぐるみや人形で溢れかえっていた。それはいわば生贄のようなものであった。
 強力なUDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』の心を慰撫し、平静を保つための方策であった。それでもどうにか、といったところであったのだ。

「いやよ。もっと大きなオトモダチがいい。それに犬や猫、動物のだなんて、そんな子供っぽいのは駄目なの。私は綺麗な女の子人形がいい」
 強力なUDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』の周囲に水晶の如き氷柱が生まれていく。このUDC組織施設は何重にも物理的、魔術的な障壁を彼女を中心にして囲いこんだものである。
 僅かな覚醒であれば封じ込めることができるが、もしも対処を誤ったのならば、即座に瓦解してしまう。
 それほどまでにUDC怪物の力は強大なのだ。
「そんな、だって、この間は大きすぎると……」
 UDC職員はたじろぐ。
 いや、本来であればすぐさまに答えを返したことだろう。けれど、UDCアースのUDC組織において、こうしたUDC怪物の封印施設は数多く存在する。
 どうしたって慢性的な人手不足なのだ。

「どうして? 私のお願いを聞いてはもらえないの? 貴方とわたしはオトモダチでしょう? わたしが困っているときは助けてくれるものじゃないの? 大きなオトモダチがいないと、わたし、眠れないわ!」
「――そ、れは……」
 UDC職員の女性は目にクマを刻み込んだかのような血色悪い顔のまま頭を振る。
 判っているのだ。頭の中でどうすることが正しいのかを。
 けれど、彼女はこれまで山積した組織内の雑務や、それに類する仕事を請け負ってきた。それに加えて彼女の世話までしている。
 本来なら専属で氷結幽鬼少女『ルリ』を鎮めるスタッフがいてもいいはずなのだ。だが、どうしようもない。
 まさに巫女のような役割を果たすことのできるスタッフは多くはない。
 肉体的にも、精神的にも彼女は追い込まれ……。

 ついに決壊する。
「お友達、お友達、お友達って! ずっと! ずっと! 私がどんな思いで貴方に尽くしてきたと思っているの! 私を友達だというのなら、もっと気遣ってくれてもいいでしょう!」
 たまらず叫ぶ彼女。
 激高する彼女の姿を見て氷結幽鬼少女『ルリ』は驚いたような顔をした。
 けれど、次の瞬間彼女は笑ったのだ。弧を描くように唇を歪ませ、血の涙をとめどなく流しながら、どうしようもない笑顔で言ったのだ。

「なら、絶交ね――」

●日常、なれど非日常
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はUDCアース……とあるUDC組織の支部において休眠状態のUDC怪物が目覚めようとしています」
 ナイアルテが語るのはUDCアースにあるUDC組織の支部が管理するドーム状の施設である。そこは休眠状態のUDC怪物を中心に物理的、魔術的による障壁でもって隔離され築かれた建物である。

 そこにはUDC職員がUDC怪物との対話や世話によって、どうにか平静を保たせ、封印を維持していたのだ。
 しかし、その平静状態が崩れ、UDC怪物がめざめる予知を彼女は見たのだ。
「無理なからぬことであったのかもしれません。UDC怪物との『対話』や『世話』は通常の人の精神を削っていくことでしょう。本来であればローテーションを組むなどしてインターバルを挟むのでしょうが……」
 UDC組織は慢性的な人手不足である。
 いつ狂気に侵されてしまうかもわからぬ状況だ。それが明日かもしれないし、もっと未来であるのかもしれない。そんな状況でおいそれ人員を増やすことはできないし、また適正あるものがすぐに見つかることもない。

「精神状態に限界が訪れたUDC職員の方が、ついにUDC怪物の対処を誤り怪物を覚醒させてしまうのです」
 この完全な覚醒が成ってしまえば、UDCアース事態が危うい。
 ゆえにナイアルテはテディベアを取り出す。説明を聞いていた猟兵たちは皆首を傾げたことだろう。
「この子はダディと言います」
 唐突な自己紹介。おそらくテディベアのことなのだろう。ナイアルテの私物紹介のコーナーにでもなったのかと思うほどの展開です。

「あ、いえ、その。今回のUDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』は、その心を慰めるための供物としてぬいぐるみを所望しているのです」
 UDC怪物である『ルリ』はいつも我儘を言いたい放題なのだという。どんなぬいぐるみを持っていっても難癖をつけてくる。
 最初はあれやこれやとなだめすかすことができるかもしれないが、それ続けばどうなるかは言うまでもない。
 ゆえに猟兵たちはぬいぐるみを作らねばならない。
 沢山の種類、沢山の大きさ、数が多ければ多いほど、世話をするUDC職員の負担を減らすことができる。

「まずは彼女のケアを致しましょう。そして、彼女の代わりに彼女の業務であるぬいぐるみの選別を楽にするためにたくさんの種類を作ってあげれば彼女も心を病むことはないでしょう。かくいう私もダディを抱えて眠ると心が落ち着くのです」
 そういう意味でも猟兵たちの作るぬいぐるみは必要であり、彼女の業務の負担を減らしてあげることができる。
「しかし、彼女のケアをみなさんが行っても、UDC怪物は元から職員の彼女を利用して覚醒することを画策していました。それが失敗したと察知すれば……」

 強引な手段に出てくるというわけである。
 これを猟兵たちは阻み、撃破しなければならない。
 それではお願いします、とナイアルテはテディベアを抱えながら一礼する。事件の内容と相反するような光景に見送られながら猟兵たちはUDCアースに転移するのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。
 今回はUDCアースにて起こるUDC怪物完全覚醒を阻むためのシナリオとなっております。
 場所はUDC組織支部、そのUDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』を封印するドーム状の施設になります。
 そこにはUDC職員の女性がおり、彼女一人でUDC怪物の平静を保つ業務と合わせて、UDCの引き起こす現象への対処に追われています。
 そんな彼女の心の隙を突いてUDC怪物は完全覚醒を目論んでいるのです。

●第一章
 日常です。
 UDC怪物を封印しているドーム状の施設でぬいぐるみを作り上げましょう。
 予知に在った精神崩壊を引き起こし、対処を誤ってしまうという職員の業務の負担を減らしてあげることにも繋がります。
 ともかく色や大きさ、姿形など多くのぬいぐるみや人形が必要になります。
 また、UDC職員の女性は日々の雑務にも追われています。
 山積した業務を肩代わりしてあげるなどしても良いでしょう。

●第二章
 集団戦です。
 皆さんのおかげでUDC職員の女性の精神が壊れることは免れるでしょう。
 ですが、UDC怪物は元からこの女性を利用して完全覚醒を狙っていたため、皆さんのせいで計画が失敗したことを悟ると大量の配下でもって襲撃してきます。
 これを撃破しなければなりません。

●第三章
 ボス戦です。
 支部の最深部、幾重にも封鎖された『牢獄』の中で、まさに覚醒しようとしているUDC怪物との戦いになります。
 この封印される『牢獄』は多くのぬいぐるみに囲まれた空間になります。
 UDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』に捧げられたぬいぐるみたちであり、それは彼女の執着でもあります。
 それをうまく利用することでUDC怪物との戦いを優位に進めることができるかもしれません。

 それでは、UDCアースにおいて完全覚醒を目論むUDC怪物の計画を打破する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『パペットメーカー』

POW   :    かっこいいぬいぐるみを作る

SPD   :    大きいぬいぐるみを作る

WIZ   :    可愛いぬいぐるみを作る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 UDC組織支部に存在する施設。
 そこで働く職員たちは慢性的な人手不足に悩まされている。それもそうであろう。UDCはただ存在するだけで人の精神に異常を齎す。如何に物理的、魔術的に障壁で阻むのだとしても、平静を保たせたUDC怪物の齎す狂気は、じわりじわりと蝕むようにして職員の精神を追い込んでいく。
「とはいえ、あの子に捧げるぬいぐるみ……あれもストックがない。持っていく度にこれじゃないあれじゃないというのは堪えるわね」
 UDC職員の女性の悩みはそれであった。
 UDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』はオトモダチと称して、ぬいぐるみや人形を欲する。
 いわば生贄であるが、比較的御しやすいとUDC組織が氷結幽鬼少女『ルリ』を評価するのは、そこであった。対話と幾つかの世話。
 それだけでUDC怪物が平静を保つというのであれば、それは容易い部類に入るのだろう。

 けれど、徐々にUDC職員の彼女の精神は蝕まれ始めている。
 このままではいつ対処を誤ってしまうかもしれない。
 ゆえに猟兵たちは彼女の雑務や、ぬいぐるみの調達に奔走しなければならない。UDC怪物の無理難題に即座に対応できるように、様々な色や大きさ、デザインの人形やぬいぐるみを作り出さなければならない。
 それだけではない。
 細々とした雑務もまた職員の彼女の精神を圧迫するものである。
 
 猟兵たちは一見すると容易いであろう任務の裏に潜む邪悪な意志を感じながら、UDC組織支部、UDC怪物の封ぜられているドーム状の施設へと足を運ぶのであった――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
助手:陰海月
たまにモデル:霹靂

さてー、大変そうなので手伝いますかー。
手先の器用さだと、私なんですよねー。

いろいろな種類、ということですから。ヒポグリフに海月、熊に馬に…。

一人だと限度ありますけど、陰海月が張り切ってねぇ。いつの間に裁縫の特技身に付けたのやら。
…大きな霹靂ぬいぐるみ、二人(?)で作りますか。


陰海月、同じように縫い縫いして綿つめて。所有してるぬいぐるみを、自身で修繕してたらできるようになった。
霹靂、自分に似たぬいぐるみ出来て『?』になる。



 強大なUDC怪物が封ぜられているドーム状の施設は静かなものであった。
 幾重にも物理的にも魔術的にも障壁が設けられ、この中心に眠るUDC怪物を抑え込んでいるのだが、それでも静かすぎると馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の中の一柱『疾き者』は思ったことだろう。
 人の気配が少なすぎるのだ。
 UDC組織の支部であるこの封印施設は、たった一人のUDC職員の女性でもって管理されている。
 慢性的な人手不足というのは此処まで来てしまっているのかと思うほどだ。
「さてー、大変そうなので手伝いますかー」
 手先の器用さでいえば四柱の中で己が随一である。
 この施設で平静を保たれているUDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』が求めるのは人形やぬいぐるみである。

 彼女自身が幼くしてUDC実験の被害者となったことからか、その幼い容姿に内面が引っ張られているせいかもしれない。
「とはいえ、ここまで人が少ないと何かあったときに対処のしようがないでしょうにー」
『疾き者』は、この状況を打破するために救援としてやってきた猟兵である。
 UDC職員の女性は今も山積している事務仕事や、細々したUDC関連の仕事をしているのだろう。
 それならばと彼女の負担を減らすべく、『疾き者』はぬいぐるみの調達に走るのだ。

 そんな彼の背後の陰から、にゅっと飛び出てきたのは『陰海月』である。
「ぷっきゅ!」
 張り切ったように触腕で器用に布と針を手に取る。
 いつの間にやら裁縫の特技を習得しているようである。どうやら所有しているぬいぐるみを自身で修復していたらいつのまにかできるようになっていたようである。
『陰海月』の後ろから首を傾げているヒポグリフの『霹靂』。
 これから何をするのかよくわかっていないようである。
「いろいろな種類を、ということですから。ふむ……」
『疾き者』は『霹靂』や『陰海月』を見やる。
 まずは、身近な存在から題材にするのもいいだろうと、彼等をもしたぬいぐるみを作るようである。

「……手習いと行きましょう。まずは大きな『霹靂』のぬいぐるみを作りましょうか」
「ぷきゅ!」
『陰海月』の張りきようったらなかった。
 触腕がいくつもあるからか、作業スピードが尋常ではないのだ。
 次から次に布を縫い合わせ、綿を詰めていく。
 これも普段からぬいぐるみを修繕している賜物であろうか。徐々に大きなヒポグリフのぬいぐるみができあがっていく。

『霹靂』は己と同じような別の何かが出来上がっているのを不思議そうに見ている。
 頭に?マークが浮かぶような表情になっているのに『疾き者』は苦笑いするしかない。
 とは言え、主として自分も負けてはいられない。
『陰海月』が『霹靂』を作るのならば、と自分は熊に馬にと細々としたものを作り上げていく。
「大きなものは『陰海月』に任せた方が良いようですね。ならば、私は小さな物を沢山作りましょう」
 二人はぬいぐるみを仕上げていく。
 ついに、完成した大きなヒポグリフのぬいぐるみと、それを囲む小さな動物たちのぬいぐるみ。

 その光景はこのUDC怪物を封じている場にあっては場違いなものであった。
 けれど、そのたくさんのぬいぐるみが集まる光景を見て、通りがかったUDC職員の女性の顔が僅かにほころんだ気がする。
 それをみやり、『陰海月』はよかったと微笑むように小さく鳴くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・リデル
UDC組織も大変そうですね。

まずはUDC職員の女性にご挨拶。彼女にいたわりの言葉をかけてからUDC怪物の平静を保つ業務を引き受けます。

もう大丈夫ですよ。ぬいぐるみが必要なのでしょう?
私はこんな感じで創り出せますので。貴女も一つどうぞ。
(と魔女の欲望具現術により職員の女性の心に寄り添ったぬいぐるみを一つ具現化してプレゼント。その後、UDC怪物に対面します)

貴女がルリさんですね。私はステラ・リデルと申します。
貴女にぬいぐるみを持ってきましたよ。
(とりあえずテディなベアを渡し、難癖をつけられたらそれに応じたぬいぐるみを何回でも具現化)

ふふ、他にご要望はありませんか?



 UDC怪物の世話に日常の業務。
 山積した仕事は用意に人の精神を蝕むことだろう。それが例え、UDCに関連したものではなかったのだとしても、人の心を圧迫するものであるからだ。
 精神的な重圧は目には見えない。
 だからこそ厄介なのである。それを解消することは人の心では難しいものであろう。
 何も気にせず、何にも囚われぬ者がいるのならば話は別であるが、ことUDC組織の職員ともあれば、それは重責を担うことになる。

 人手不足であることを差し引いても、UDC職員たちは常に綱渡りの状態で日々を過ごしているのだろう。
 そこにUDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』の世話まで加われば、いずれ限界を迎えるのは明白であったのだ。
「UDC組織も大変そうですね」
 ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)はドーム上の封印施設を見上げる。
 ここの中心にUDC怪物が平静を保ち、まどろみの中にあるのだという。
 まずはこの施設を任せされているUDC組織の職員にステラは挨拶をする。

「ご苦労さまでした。あなたの業務を一時的ではありますが、引き受けましょう」
 その言葉にUDC職員の女性は目を丸くする。
 それもそのはずである。かれこれどれだけの時間を此処で過ごしたというのだろう。疲れ果てた顔を見れば、それは一目瞭然である。
 だからこそ、ステラはねぎらいの言葉とともに彼女の肩を叩くのだ。
「もう大丈夫ですよ。ぬいぐるみが必要なのでしょう? 私はこんな感じで作り出せますので。貴女も一つどうぞ」
 その手にはうさぎのぬいぐるみ。どうやって生み出したというのであろう。
 まるで手品のような手際である。
 いつのまにと職員が驚いている隙にステラは彼女の手にそれを押し付けて、ほほえみながら、この支部の中心でもあるUDC怪物の元へと歩むのだ。

 ステラはこの施設が魔術的にも物理的にも幾重に重ねられた障壁で封をされていることを知る。
 それに加えて職員による対話と世話によってUDC怪物はまどろみの中にいる。
 眠っているのだ。
 ステラは今はUDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』が眠っていることを確認する。
「――だれ?」
 その問いかけにステラは頷く。

「貴女が『ルリ』さんですね。私はステラ・リデルと申します。貴女にぬいぐるみを持ってきましたよ」
 そういってテディベアをステラは生み出し、手渡すのだ。
 寝ぼけ眼といった『ルリ』はぼんやりとそれを受け取り、床に落とす。
「違うのよ。これじゃあないのよ。わたしが欲しいのはオトモダチなの。女の子の人形がいいの」
 早速難癖であるとステラは微笑む。
 想定内である。こうやって、何度も何度も職員を試してきたのだろう。オトモダチという言葉を使えば、人は何は無くても攻められた気持ちなる。その言葉を盾にして、UDC怪物は職員の心をすり減らしていったのだろう。

 心が決壊するのを待っているのだ。
 それをステラにも仕掛けている。けれど、ステラは次々とぬいぐるみを生み出していく。人形もまた同様である。
「ええ、貴女が望むものを用意いたしましょう。何度でも」
 そういってステラは微笑む。
 あくまで余裕は崩さない。こうなれば根比べである。それに此処には他の猟兵たちもやってきている。

 どれだけ我儘を言ったところで、こちらの備えは十全であるのだ。
「ふふ、他にご要望はありませんか?」
 余裕たっぷりの笑顔に『ルリ』の顔が僅かにこわばるのをステラは見逃さなかった。
 確実にこちらが猟兵であるということに気がついた上で、彼女は様子を見るように、再びその意識をまどろみの中に沈めるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
SPD
人の子であれば我儘は良くないとお話しする事も出来ましょうが……。

ぬいぐるみづくりのお手伝いを。
どうしても私の趣味に偏ってしまうでしょうけども、でも他の方もいらっしゃるでしょうしそこまで問題ではないと思います。
それに多分、件のUDCは何をもってしても文句は言いそうですよね。悲しい事に人にもそういう方々はいますけれども。
作るぬいぐるみは抱えたら顔を隠せるほどの大きさで、基本は猫の形。ただ模様はいろんな猫を表現しましょうか。一通り作り終わったら他の動物にも取り掛かりますが、やはり猫さん、猫さんです!
ふわふわふっかり、ほど柔らかさのぬいぐるみは職員の方も癒してくれると良いのですが。



 子供というのは純粋である。
 純粋であるがゆえに己の欲求にも正直である。我慢をするということをしない。
 我を通すことと、他者に譲るということを覚えていくことで社会というコミュニティに順応していくものだ。
 それを人は成長と呼ぶし、また同時に摩擦とも呼ぶ。
 摩擦は軋轢に発展していき、決裂を生む。
 決裂は争いを呼び込むものであるからこそ、人は学び、無用な争いを避けようとする。

 しかし、それは人の理である。
 UDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』にはまったく関係のないことだ。
 確かに少女の姿をしている。けれど、中身は別物である。人間の形をした何かでしかないのだ。
「人の子であれば我儘は良くないとお話刷ることもできましょうが……」
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は、UDC怪物の世話と対話をしなければならないUDC職員の心を思ってはため息を吐き出す。
 これより行な手伝いがUDC職員の女性の助けになればいいとぬいぐるみを作るのを手伝うのだ。

「とは言え、どうしても私の趣味に偏ってしまいそうですね……」
 藍の趣味とは、兎にも角にも猫である。
 彼女がぬいぐるみを作ろうと布地を選びながら、大きさを決めていく。
 できれば、抱えたら顔が隠せるほどの大きさのものがいいと藍は微笑む。どうせUDC怪物はどんなものを作っても、きっと文句は言いそうである。
「悲しいことに人にもそういう方々はいますけれども」

 人とUDC怪物。
 藍にとって、悪意あるものは総じて変わらぬものであったのだろう。だからこそ、藍は自身の心休まるもの、心が踊るものを作ろうと奮起するのだ。
 偏ったっていい。
 他の猟兵たちもやってきているのだ。さしたる問題ではない。むしろ、こうしてこだわって作ったほうが良いものができる。
「三毛猫、ぶち、白猫黒猫、茶トラ……」
 藍は同じ毛色の猫のぬいぐるみを作るのではなく、様々な布地を使って多くの種類の猫のぬいぐるみを作り上げていく。

 一通り作り上げたのはいいのだが、それでも藍は飽き足りない。
 他の動物のぬいぐるみを作るのもいいだろうと思ったのだが、手がどうしたって猫のぬいぐるみを作ってしまうのだ。
「やはり猫さん、猫さんです!」
 ふんす。
 藍の手が止まらない。言うまでもないが、藍は他の動物も作ろうと思ったのだ。
 けれど、彼女の知る猫の愛らしさはとめどないものである。
 後から後から藍の心を占めるのは猫の愛らしさばかりであった。手が、この手が勝手に猫のぬいぐるみを作り上げてしまうのだ。

「ふわふわふっかり……程よいぬいぐるみになりました……」
 すっかりご満悦である。
 顔を埋めれば生地の優しい感触が頬に伝わる。これはUDC怪物の心を慰撫するものである。
 けれど、同時に藍にとってはUDC職員の女性の心を癒やすものでもあればいいと思うのだ。
「一つくらい、彼女のために作るぬいぐるみがあってもいいですよね」

 藍はこの施設に入るまえに挨拶をした女性を思い出す。
 目の下にクマを刻み込んだかのような青白い顔の女性。すっかり肉体的にも精神的に参ってしまっていることは明白だった。
「あの方が少しでも癒やされるものを作りましょう。そのためにはやはり、猫さんですね!」
 藍はいつもよりもテンションが高く、その縫い針を手にした腕は止まらない。
 UDC怪物のためよりも、疲れ切った職員の女性のために作るぬいぐるみの方がよほどいい。
 そう思える心のままに藍は渾身の猫ぬいぐるみを縫い上げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
UDC職員の姉ちゃんに『湯呑セット』で淹れた緑茶に相棒の作った『おはぎ』をお盆に乗せて持っていくぜ。
「…これで一息入れて下さい。」
そんな暇ない?心配すんな、姉ちゃんが休憩している間の仕事は俺達がしといてやるよッ!

ぬいぐるみが必要なんだったな。相棒の裁縫スキルの出番だぜ。
「…もうすぐクリスマスですし、サンタやトナカイ、雪だるまのぬいぐるみなんてどうでしょう。」

こい、【影依代】ッ!
相棒がぬいぐるみを作っている間、俺が影依代の体を使い山積した業務を処理するぜ。
なあに、俺はWIZ 627の知的なヒーローマスクで通ってるんだ。なあ、相棒。
「…初めて聞きましたけど。」


【技能・心配り、裁縫】
【アドリブ歓迎】



「ふぅ……」
 目頭を覆い、息を吐き出すUDC職員の女性の目の前には山積した書類が山積みであった。
 UDCアースにおけるUDC怪物の事件は細々したものから大きなものまで調査をしなければならない。
 そうすることによって見えざる邪神たちの暗躍をいち早く察知することができるからだ。どれ一つとしていい加減な仕事などできないものである。
 だからこそ、UDC怪物の世話と対話は重圧として彼女の肩に重くのしかかるのだ。

 そんな彼女の隣に神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と相棒の桜がやってくる。
 手にしていたのは湯呑みセットで淹れた緑茶とおはぎであった。
 おはぎは桜の手作りであり、緑茶の暖かい湯気がUDC職員の目の前に立ち上っている。
「これは――?」
「……これで一息いれてください」
 桜が微笑む。けれど、彼女は頭を振る。時間がないのだ。やらなければならないことは山積しているし、こうしている間にも仕事は増えていくのだ。
 だからこそ、彼女は差し入れはありがたいが、と断ろうとしたのだ。

 それを遮るのは凶津の騒がしい言葉であった。
『心配すんな、姉ちゃんが休憩している間の仕事は俺たちがしといてやるよッ!』
 カタカタと鬼面が歯を鳴らすようにして言ってのける。
 凶津の言葉に桜もまた頷く。少しでも彼女の負担を減らすようにと、手助けにやってきているのだ。
 半ば強引に彼女におはぎと緑茶を手渡し桜は、さっそく彼女の仕事を奪い取る。

 まずはぬいぐるみを作ることからである。
『ぬいぐるみと言えば、裁縫。裁縫と言えば、相棒のスキルの出番だぜッ』
「……もうすぐクリスマスですし、サンタやトナカイ、雪だるまのぬいぐるみなんてどうでしょう」
 桜の提案は尤もであった。
 UDC怪物は、必ず持ってきたぬいぐるみに文句をつけるだろう。
 それがこれまで何度も行われてきたやり取りであることをすでに知っている。そうすることでUDC職員の精神をすり潰そうという腹積もりなのだ。

 だからこそ、桜は季節柄のぬいぐるみならば文句もつけにくいし、他と違っていればバリエーションとして数えることもできるだろう。
『そうと決まれば、来い、影依代(シャドウヒーロー)ッ!』
 凶津の鬼面の瞳がユーベルコードに輝く。
 それは彼自身が生み出したオリキャラ、『影依代』を具現化するものであった。
 桜がぬいぐるみを作っている間、凶津は凶津で山積した事務仕事を処理していくのだ。

「いつのまに……」
 桜は凶津が呼び出した『影依代』に鬼面が装着されていることに驚く。
 いつもは己がヒーローマスクである凶津との心の通わせあいでもって依り代として活動している。
 いわば、そのユーベルコードは凶津単体で行動するためのものであった。これならば作業効率は単純に二倍である。
『俺は知的で賢いヒーローマスクで通ってるんだ。なあ、相棒』
 びしっと影の体を動かしながら事務作業をこなしていく凶津に桜は半眼で見やる。

 そういうのは初めて聞いたものである。
 ちくちくと針仕事をしている桜にとっては、コントのようなやり取りである。そんな二人のやり取りを見て、UDC職員の女性はクスクスと笑っている。
「仲がいいのね、ふたりとも」
 微笑ましいやり取りに見えたのだろう。
 これまで、この施設での作業に忙殺されていた彼女にとって、こんな些細なやり取りですら貴重であったのだ。
 少しでも彼女の心がほぐれたことに凶津は一安心し、桜は微笑む。

 人の心を救うのは何も戦うヒーローばかりではない。
 誰かの仕事を肩代わりできるものもまた、誰かのヒーロー足り得るのだというように凶津は影の依り代を使って、バリバリと働き続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
一人でUDCの世話に業務は――仕方のない事とはいえハードワークが過ぎるんじゃないか。ぬいぐるみも作るが、彼女の雑務にも手を貸すよ。組織には、猟兵になる前に私がUDCか味方かの検査で世話になったからね。

養子が出来てから裁縫をする機会も増えたからな。何を作ろうか――。そうだな、相棒の子竜【レヴィアスク】によく似たぬいぐるみにでもしよう。
贄であるのを知ってか知らずか、相棒が不満そうに鳴いているが――。あげるのはぬいぐるみの方だと安心させつつ、職員から貰ったテディベアの型紙のシルエットを修正しながら作っていこう。

多少複雑だから時間が掛かったかな。ぬいぐるみ作りは程々に、職員の仕事を手伝いに行くか。



 UDC施設は慢性的な人手不足である。
 どれだけ補充人員が来るのだとしても、UDCに関連した任務は危険極まりないものばかりである。
 人の心では相対することも難しい存在との対話と世話。
 山積する事務作業。
 それらの全てを、この封印施設のUDC職員である女性は一人でこなしていたのだ。
 忙殺される日々は、どうしたって彼女の心を摩耗していく。
 それでも、やらねばならない。UDC怪物を目覚めさせてしまっては、平穏な日常はすぐに狂気に彩られ、人の生命が失われてしまう。

 そんなことをさせてはならないという重責もまた彼女の心にすりつぶしていくのだ。
「一人でUDCの世話に業務は――仕方のないこととはいえ、ハードワークがすぎるんじゃないか」
 マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)は強化人間であるが、人の身でこの業務内容は些かブラックすぎると判断する。
 UDC怪物の世話だけでもかなりの重責なのだ。
 そこに山積した事務作業は精神的に負荷をかけるものである。仕方のないこと、と彼女が言ったのは、それを理解しているからである。

「ぬいぐるみも作るが……まずは、彼女のタスクを処理しておかないとね」
 マホルニアは以前、UDC組織には己が猟兵になる前に世話になっているのだ。
 己がUDCか味方かの検査をしてもらったことがあるのだ。
 それに裁縫というものもできなくはない。なにせ、養子が出来てからというおの、裁縫をする機械に恵まれたからだ。
 マホルニアは即座に職員の女性の山積していた事務処理を肩代わりし、演算速度を上げた上で仮想空間内で事務処理のタスクを解消していく。

 これだけのことを一人でこなしていくのは、それだけでとんでもない仕事量である。
 だが、マホルニアに掛かれば僅かな時間で事足りる。
 少しでも恩は返せただろうかと思いながら、彼女は裁縫道具に手を取る。裁縫ができるように成ったとは言え、何を作ろうかと悩む。
「ふむ……お前を作ろうか」
 そう言って、マホルニアは相棒である子竜『レヴィアスク』をモデルにぬいぐるみを作り始める。

 どうせなら身近な存在のほうがいいだろうと考えたのだ。
 そんな彼女にUDC職員の女性が近寄ってくる。どうしたのだろうかと見上げると、彼女はテディベアの型紙を用意してくれたのだ。
「これが参考になるかもしれないと思って……それから、手伝ってくれてありがとう」
 目の下にクマを刻み込んだ女性の顔は幾ばくか晴れやかであった。
 他の猟兵達が手伝ってくれたことも在って、彼女の仕事も順調に済み、休憩する時間もできたのだろう。
 青白い顔であった彼女の血色がよくなっていることをマホルニアは喜び、ありがたくテディベアの型紙を受け取るのだ。

「ありがたく使わせてもらおう。このシルエットを修正していけば、相棒のぬいぐるみもできるだろうよ」
 そういうマホルニアの言葉に『レヴィアスク』は不満そうに鳴いている。
 おそらくこれが贄として作られていることを理解しているのだろう。己の姿を模したものが贄になるというのは、あまり気分のよいものではないのかもしれない。

 そんな相棒をなだめすかしながらマホルニアはぬいぐるみを作り上げていく。
 多少型紙のシルエットを変えての作業であったし、複雑な作業でもあったから時間は掛かったが、どうにか感性する。
「どうだ、出来栄えは? お前ににているだろう?」
 なんて微笑み、『レヴィアスク』の若干不満そうな鳴き声を受けてマホルニアは腕にぬいぐるみを抱える。

 職員の仕事をを処理し、後はUDC怪物の出方を伺うだけだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

羽々・一姫
UDCの人、こきつかわれているのね。
サボりたい気持ちはとてもよくわかる(言ってない)から、
わたしがちょっと手伝ってあげましょう。

【奈落召喚】を使って、知恵の神『コイオス』を喚びだして、
UDCの業務を効率よく片付けてもらいましょう。

その間わたしと女性職員さんは、お茶しながら待っていればいいわよね。

え? ぬいぐるみを作る? 職員さんは真面目ね。
わかったわ。わたしもやってみるけれど、
こういうのは得意ではないから、出来はあまり期待しないでね。

と、のんびりとぬいぐるみ作りを始めますが、やはり不得意。

困ったわ、クマの編みぐるみのつもりだったのだけれど……。
なんだかわからない不思議生物になってしまったわ。



 仕事とは責務を持って行なうものである。
 責務があるから重圧が生まれるものであることを知るのならば、時には休息も必要なのだ。むしろ、人間は働き続けることはできない。
 できると思う者もいるかもしれないが、それは張り詰めた糸のようなものである。
 テンションのかかりすぎたものは、それが例え、鋼鉄を撚り合わせた糸であったとしても、いつかは千切れてしまうものである。

 千切れた糸は必ず心を傷つける。
 傷ついた心の修復は容易ではない。だからこそ、羽々・一姫(Gatekeeper of Tartarus・f27342)は己のモチベーションである『仕事を早く終わらせればサボれる』ことをこそ、至上のものと仰ぐのである。
 結果として彼女の仕事は質のよいものへと昇華している。
「UDCの人、こきつかわれているのね」
 かわいそう、と一姫は同情する。
 だってそうだろう。雑務に忙殺されて、とちれば職場事態が危うい仕事をしなければならない。

 どう考えてもブラックである。
 こんな仕事を己がしていたのであれば、必ずサボりたくなるものである。きっと女性職員もサボりたいという気持ちを持っているはずだ。
 いや、持ってる。
「とてもよくわかるから、わたしがちょっと手伝ってあげましょう」
 まあ、その実、職員はそんなこと思う暇すらないほどに忙殺されているのだが、一姫には関係のないことであった。

 彼女のユーベルコード、奈落召喚(ゲート・オープン)によってタルタロスに幽閉されている知恵の神『コイオス』を呼び出す。
「門に囚われし咎人に命ず」
 さっきまでサボりたいという気持ちに理解を示していた者とは思えないほどの顔つきで一姫は『コイオス』にUDC職員の受け持っていた雑務の処理を効率よく片付けることを命ずるのだ。
 命ぜられた『コイオス』は頷き、この支部施設に山積していた雑務を勢いよく処理していくのだ。

 猟兵達がやってきたことにより、この支部の業務はこれまでにないほどに消化されていく。
 凄まじいことである。
「さ、お茶しながら待っていればいいわよね」
 一姫は『コイオス』に命じたことが終わるまでのんびりしていよう――つまるところサボろうとして気がつく。
 女性職員が何やら裁縫道具に手を伸ばしているのだ。
「少しでもぬいぐるみを作っておこうかと思って……」
「えー……職員さんは真面目ね」
 一姫はサボろうと持ちかけていたが、真面目な職員の女性の姿を見ていたら、仕方ないという気持ちにもなろうというものである。

「わかったわ。わたしもやってみるけど、こういうのは得意ではないから、出来はあまり期待しないでね」
 そう前置きして一姫は針を手に取るのだ。
 慣れないことというのは本当のことである。いや、不慣れというより不得意であった。
 彼女が手にした布と糸、そして針は彼女の不得意さを示すように歪な何かを生み出してしまう。

「……困ったわ、クマの編みぐるみのつもりだったのだけれど……」
「……いえ、独創的、だと、思うわ? でも、見れば、なんというか、良く見えてくるわね」
 職員も一姫の手にしたあみぐるみの姿に言葉を濁す。それが優しさであったのかもしれない。だが、その言葉に偽りはなかった。
 彼女の手にあったのはなんだかわからない不思議生物。
 クマ……? と首をかしげたく成る姿であったが、どこか味のある姿である。むしろ、こういうキャラクターがいたのでは? と錯覚するほどであった。

 そんな一姫と職員の朗らかなやりとりを尻目に『コイオス』は未だ終わらぬ事務処理に忙殺されるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒江・式子
連携アドリブ歓迎

どこの部署も大変ですよね
気持ちは痛い程分かります
覚醒なんてされたら
私の部署(後始末担当)の仕事も更に増えますし
未然に防げるならそれに越した事はありません

ぬいぐるみは他の方にお任せするとして
電話対応や書類の作成等々
事務作業なら私でも手伝えるでしょう
今のうちに少しでも休んで下さい
影の茨は使いません
業務に対する愚痴を言い合うだけでも
幾らかのストレス発散になるでしょうから

〝翳喰らい〟は危険性が低いと判断された為
私は組織に協力する事を条件に
社会復帰できました
ですが何かが罷り違えば
障壁の中に居たのは私だったかもしれない
(自分がUDCに呑み込まれない保証は無い)
全く、ゾッとしない話です



 世は常に事もなし、などとはよく言ったものである。
 それを為すためにどれだけの人々の尽力が必要であるのかを黒江・式子(それでも誰が為に・f35024)は知っている。
 誰かのためにと働くことは尊ぶべきことである。
 彼女自身も誰かのためにと戦うことを選んだ人間であり、猟兵である。
 だからこそ、今目の前にあるUDC組織支部のドーム状の封印施設を目の前にして息を吐き出すのだ。
 グリモア猟兵の予知によれば、この施設を任されているたった一人の職員が精神に限界をきたし、UDC怪物の目論見に乗ってしまうのだという。

「どこの部署も大変ですね」
 気持ちは痛いほど分かると、式子は頷く。
 UDC怪物はまどろみ程度の覚醒であれば、施設に設けられた魔術的、物理的な障壁で持って抑え込む事ができる。
 けれど、完全に覚醒してしまえば、この程度の施設では抑えきれない。
 そうなってしまえば、どうなるかなんて言うまでもない。
「私の部署の仕事も増えますし、未然に防げるならそれに越したことはありません」
 式子の目も死んでいた。

 彼女もまた忙殺される側の人間である。
 後始末や情報隠蔽。そうした面倒事を一手に引き受ける部署であるがゆえに、彼女の心労もどれほどのものであるかは伺い知れよう。
 式子は気を取り直し、支部施設に足を踏み込む。
 此処のUDC怪物が求めるのはぬいぐるみは人形の類である。これの容易もまた一人の職員に委ねられている。
「贄に文句を付けて、じわじわ精神的に潰していく算段なのでしょうね。ぬいぐるみは他の方におまかせするとして――」
 式子は襟を正す。

 自分ができること。自分のパフォーマンスを最大に発揮できることはなんであるかを思い出す。
 そう、事務作業ならば手慣れたものである。
 ここの作業を受け持つ女性職員の仕事を己がすればいい。他の猟兵たちもそうであったが、山積した事務処理を解消するだけでは足りない。
「今の貴女に必要なのは休息です」
 式子は女性職員に告げる。彼女は猟兵達が事務処理を請け負ってくれたおかげで、ぬいぐるみの作成を手伝おうとしていた。
 その手を式子は止めるのだ。

「今のうちに少しでも休んでください――そうですね、少しお話しましょう」
 式子の言葉はそう言っていたが、実際は愚痴の言い合いである。
 己の部署の多忙さ、互いの忙殺される日々を語る。
 言葉にすれば、それは心のなかから溶け出していくものである。少しでもストレス発散につながればいいと式子は職員と語らう。
「そう、あなたの部署も……」
「そうなんです。特に最近は事件の後始末が多くて……そちらも続々と連絡が来るでしょう?」
 式子と職員の会話は同じUDC組織内ということも相まって弾む。

 それは愚痴の言い合いであったけれど、心の内から濁ったものを吐き出してすっきりするのだ。
「UDC“翳喰らい”は危険性が低いと判断された為、私は組織に協力することを条件に社会復帰できました」
 式子の言葉は、彼女がこれまでたどってきた道程の険しさを語るものであった。
 言葉で表現する以上の経験もあったことだろう。
 彼女の瞳をみればわかる。けれど、それは目の前の職員の女性も同じであった。
 互いの顔は疲れ切っている。
 だからこそ、共感出来うるのだ。

「ですが、何かが罹り違えば――」
 式子と職員が見る方向にあるのは支部の中心にしてUDC怪物が封印された場所である。
 あの障壁の中に在ったのは自分であったのかも知れないという可能性。
 それ以上に式子は思うのだ。己がUDCに飲み込まれない保証は何処にもないのだと。だからこそ、恐れながらも日々を懸命に生きるのだ。
「それでも、あなたは誰かのためにと戦う。戦ってくれる」
 ゾッとしない話であると式子は語っていたが、女性職員は式子の手を握って感謝するように言うのだ。

 式子のように、誰かのためにと戦う者がいるからこそ救われる生命があるのだと、その言葉は愚痴ではなく、式子に感謝の言葉として伝えられるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー
人形ですか。懐かしいですね。
私も小さい頃は熊のワンダちゃんをいろんなとこに連れ歩いていた気がします。
もう彼女も残ってはいないのでしょうけど。

さて、ぬいぐるみ作りですね。
私はそこそこ不器用ですが、【念動ハンド】なら縫物くらい朝飯前です。
間接による可動域の制限もなく、自由自在に精密に針を動かす念動力の手。
この手に作れないぬいぐるみなど…まぁあるかもしれませんが、
普通に猫さんとか熊さんとかうさぎさんとか作る分には問題ありません。
いろんな森の動物さんを作って、選択の幅を増やすとしましょう。
ついでに余った手で疲れてる人のマッサージでもしましょう。
さらに余った手で煙草…いや匂いが移るから煙草はダメですね。



 幼き日を思い出すときにはいつだって、彼、もしくは彼女がいたことを思い出す。
 誰もがそうであるということはないであろうが、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は己の幼き日を思い出していた。
 フラスコチャイルドである彼女にも、人形遊びの経験はあるのだ。
「人形ですか。懐かしいですね」
 小さな頃、熊の『ワンダちゃん』をいろんな所に連れて歩いていた気がする。
 それは懐かしむべき想い出でしかないけれど、それでもかけがえのないものである。遠き日の想い出、それは残響のようにエリーの中に響き渡る。

 アポカリプスヘルでの幼き日々は彼女にとってどれほどのものであったことだろうか。
 こうして思い出して感傷に浸るくらいの時間は許されてもいいだろう。
 加えた煙草の火を携帯灰皿に押し付けて消してから、エリーはUDC組織支部の施設に足を運ぶ。
「もう彼女も残ってはいないのでしょうけど」
『ワンダちゃん』。
 あの愛くるしい見た目の熊のぬいぐるみ。幼き日々の残響をエリーは拭わずに、一人浸りながら施設の中に入る。
 
 此処はUDC怪物の封印施設である。
 UDC職員の女性が一人で維持しているというから、組織の慢性的な人手不足が伺い知れるだろう。
 ただでさえ、UDC怪物との対話と世話は人の精神をすりつぶしていく。
 彼女が判断を誤ってUDC怪物の完全覚醒を引き起こしてしまうのも無理なからぬことであった。
「さて、ぬいぐるみ作りですね」
 エリーは己が不器用であることを自覚していた。
 しかし、やらねばならぬというのならば、如何なる手段を講じてでも為すであろう。それだけの力が彼女にはある。

 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 布地と針を念動ハンド(サイ・ハンド)がつかみあげる。エリーの手ではなく、念動力によって生み出された手が彼女の意志を反映するかのように動き出す。
 確かにエリー自身は不器用である。
 けれど、思い描くぬいぐるみの形が頭の中にあるのであれば、話は別である。
「念動の手には関節に寄る可動域の制限もない。この手に作れないぬいぐるみなど……」
 まぁ、あるかもしれないけれど。
 しかしながら、それでも彼女の手繰る念動の手は素早く針に糸を通し、布を裁断していく。
 その手際は、彼女がイメージするぬいぐるみ職人のものであったことだろう。己の手の不器用さは知っている。
 けれど、彼女が思い描くイメージの中の職人の手はよどみなく。

 次々と猫や熊、うさぎといったぬいぐみたちが出来上がっていく。
「ついでと言ってはなんですが……」
 エリーは作業で突かれている職員の女性や、他の猟兵たちのマッサージを念動力の余った手でもって行っていく。
 これはサービスである。
 彼女の手繰る念動の手はおおよそ百を超えている。過剰であると思われるかもしれないが、使える手はなんでも使っていくのがエリーの流儀であろう。

 ぬいぐるみの出来栄えを見て、エリーは頷く。
 これだけバリエーションがあるのならば、UDC怪物に難癖を付けられたとしても増えた選択肢から選べばいい。
「一服しましょうか」
 エリーはごく自然に煙草に手を取って、念動の手によって火をつけようとして止めた。
「いや……匂いが映るから煙草はダメですね」
 煙草臭いだのと文句を言われたら叶わない。
 姿形は子供であっても別物なのがUDC怪物である。けれど、外見に内面が引っ張られることなどよくあることだ。
 UDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』が毛嫌いするかもしれない。

 それを思えば、一服はまだよした方がいいだろうとエリーは、ため息をつく。
 人仕事終えた後の一服こそが尤も美味い煙草なのである。
 しかたないと彼女は煙草を仕舞い、ゆっくりと己の念動力の手でもって慣れぬ仕事に凝り固まった肩をほぐすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
件の職員にはお疲れ様としか言いようがないね
少しでも助けになれるよう頑張ろうか

私も手伝いますの

人形作りできるのか
…いや別の意味で得意かもしれないけど

晶が人形をしていいなら大切にしますの

時々無断でやってるけどな

冗談は兎も角、僕は書類仕事とか雑務を引き受けよう
UDC組織の定型の物はある程度できるしね

私はぬいぐるみを作ってますの

神様然としてる本体と比べて
人間に近い性格しているから
大人しくしてれば邪神の分霊には見えないんだよなぁ

…あれ、職員にも情報共有されてたら
余計な心労になってたりしないよね

まあ、本体も含めて方法に難があるけど
人間を愛してるみたいだから悪い様にはしないか
永遠にしたい状態では無いだろうし



 UDC職員の待遇はブラック企業も裸足で逃げ出すほどのものであった。
 それは言い換えれば、このUDCアースにUDC怪物が跋扈しているということでもある。日々山積していく業務。差し迫るUDC怪物の世話と対話。
 これはUDC職員でなくても音を上げてしまうものであろう。
 迫る業務はジリジリと精神を圧迫していくであろうし、神経は擦り切れてしまう。
「お疲れ様としか言いようがないね。少しでも助けになれるよう頑張ろうか」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は普段より世話になっているUDC組織への恩返しというように奮起していた。

 同時に身に宿した邪神の分霊もまた張り切っていた。
 邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)というように邪神の分霊が現れる。
「私も手伝いますの」
「人形作りできるのか……いや別の意味で得意かもしれないけど」
 晶はわかりきっていたことであるが、それば別の意味での人形作りであることを知っている。
 だから、できると返されても正直に頷くことなどできようはずもなかった。
「晶が人形をしていいなら大切にしますの」
 事あるごとにこれである。
 時々無断でやってくることもあるが、もう慣れたということであろうか。慣れるのもまた恐ろしいことではあるが。

「冗談は兎も角として、僕は書類仕事に取り掛かるよ。UDC組織の定型の物はある程度できるしね」
 晶はぬいぐるみを作ることを邪神の分霊に任せて、山積している事務仕事に取り掛かる。
 他の猟兵たちもそうであったが、目の前の書類やデータの量は凄まじいものであった。
 これをこなしながらUDC怪物と対面しなければならない職員の心労を思えば、日々どれだけの脅威に晒されているのかが理解できる。

「私はぬいぐるみを作ってますの」
 邪神の分霊の足取りは軽い。
 そんな彼女を晶は見やる。神様然としている本体と比べれば、分霊は人に近い性格をしているから、おとなしくしている分にはただの人間の娘のようにさえ思えてしまう。
 それが誤ちであることをしっているけれど、時折どうしようもなくそう思ってしまうのだ。
「……あれ、職員にも情報共有されてたら余計な心労になってたりしないよね」
 自身のことをUDC組織は把握している。
 けれど、末端の全てに己の存在が周知されているわけでもないだろう。

 ここに邪神の分霊が居るという事実は職員の女性へのプレッシャーになっていたりしないかと心配したが、職員女性から布地やらをもらっている分霊を見る限り、その心配はなさそうであった。
「まあ、本体も含めて方法に難があるけど、人間を愛しているみたいだから悪いようにはしないか……」
 それに今の女性職員は永遠にしたい状態ではないだろう。

 疲れ切ったまま永遠になどと、そんな状態を彼女は美しいとは言わない。
 ならば、今は好きにさせたらいいだろうと晶は判断し、目の前の書類とデータの山に相対する。
「こっちも、さっさとがんばろう」
 UDC怪物をどのみち倒すことになるのだとしても、それでもこの山積した業務だけでも人の心を押しつぶすだろう。
 ならば、この戦いが終わった後に彼女の負担が少しでも減るようにと、晶は己のできることを懸命にこなすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…ぬいぐるみよりは山積みの業務を片付けるかな……
(女性職員に)雑務仕事の手伝いに来たよ…私が仕事代るから暫く休んで…一眠りして来て…
…あ、このお香焚くとリラックス出来るから使うと良いよ…
(医療製薬術式【ノーデンス】で作った精神を癒やすお香を渡す)

…さて…人手不足なのも判るけどこの業務量を1人はちょっと無理があるね…UDCの影響が無くても病みそう…
…書類仕事を片付けるついでに業務の手間を減らすようにプログラム組んでおくか…
…ここのUDCは今回はっ倒すけど他の業務でも応用出来るように、と…書式は一緒だろうし…
…あとは彼女が起きて来た時のために自動調理鍋【ダグザ】で暖かいシチューを作っておこう…



 UDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』はぬいぐるみや人形を求める。
 それは己の心を慰撫するものであったのだろう。そうすることで彼女はまどろみの中で夢を見る。
 その夢は誰にも知られることはないのだろう。
 幸せな夢であるのか、それとも恐ろしい夢であるのか。
 彼女はUDC組織の封印施設の中で今日もまどろむ。多くの猟兵達が彼女との対話を受け持つ代わりに、これまで一人で対応していた女性職員は、一時の休息を得ていたことだろう。

 だが、まだ彼女には山積した事務作業が残っている。
 例え、対話や世話を猟兵達が肩代わりしても、細々した雑務が残っているのだ。
 それは彼女の精神をUDC怪物でなくてもすりつぶしていくことだろう。ならばこそ、そのケアまで行ってこそである。
「……ぬいぐるみよりは山積みの業務を片付けるかな……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、他の猟兵達が手伝う雑務の山を見上げて息を吐き出す。
 これを一人でこなした上にUDC怪物の世話までしていたとなると、それは途方も無い心労であったことが伺える。

「雑務仕事の手伝いにきたよ……私が仕事代わるから暫く休んで……一眠りしてきて」
 メンカルが目の前の女性職員に告げる。
「でも、みんなが仕事をしているのに……」
 これまで多くの猟兵達が彼女を気遣ったことだろう。けれど、これまで仕事漬けになっていた彼女にとって休むということは選択肢にすら浮かばなかったのかも知れない。
 そんな彼女にメンカルは医療製薬術式『ノーデンス』より作り出したお香を手渡す。

「これは……?」
「……お香。これ焚くとリラックスできるから使うと良いよ……」
 だから、今はゆっくり休んでとメンカルはお香に火を付けて、その香りを女性職員に嗅がせる。
 ふわりと香る香りに女性職員はゆっくりとまぶたを閉じていく。
 これまでの疲労は伺い知れるものではない。目の下にできたクマの濃さはひどいものであった。
 女性職員が眠りに落ちたのを見て、メンカルは山積した事務作業を見やる。

「……さて……人手不足なのも分かるけど、この業務量を一人ではちょっと無理があるね……」
 そうでなくてもUDC怪物との相対は精神を削る。
 休もうと思っても休むことすらできないだろう。それがなくても、この作業量は現実的ではない。
 それだけUDCの脅威が蔓延っている証明でもある。
「……こういうのは抜本的に解決していかないといけないな……」
 メンカルは書類仕事を片付ける傍ら、業務の手間が減らせるようにプログラムを組み上げていく。

 UDC怪物はこの戦いで倒してしまう予定であるから、女性職員の業務の最たるものは片付けられる。
 けれど、それでもまた別の封印されたUDC怪物の世話をしなければならなくなるだろう。それと並行して事務作業をまたこなさなければならない。
 となれば、また今回のようなことが起こってしまうこともあるはずだ。
「……他の業務でも応用できるように、と……書式は同じのはずだし」
 メンカルは他の組織支部でも活用できるようにと事務作業の簡略化できるようにとプログラムを組み上げていく。
 これがどれだけの時間短縮になるかは、言うまでもない。

 作業自体は順調だ。
 余った時間をメンカルは自動調理鍋『ダグザ』にセットしていた具材より出来上がったシチューの味を確かめる。
「……うん。上出来」
 暖かいシチューの味は優しいものであった。
 これがあれば、起きてきた女性職員も喜んでくれるだろう。心が病んだときは暖かいものが、心を解きほぐす。
 メンカルは味見を終え、次に迫るであろう脅威に備えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『暗闇の追跡者』

POW   :    燃エ広ガル狂気
【崩れた輪郭から溢れ出る闇】が命中した対象を燃やす。放たれた【狂気を齎す漆黒の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    膨レ上ガル呪詛
【膨張しながら不定形に拡がり続ける闇】に変形し、自身の【輪郭や自己同一性】を代償に、自身の【攻撃範囲】と、技能【精神攻撃】【呪詛】を強化する。
WIZ   :    揺レ浮カブ恐怖
レベル分の1秒で【対象の背後に出現し、対象を絞め殺す腕】を発射できる。
👑11
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「――……」
 まどろみの中、UDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』は悟る。
 己の計画が猟兵によって打破されたことを。
 世話と対話をする女性職員の精神を壊し、対処を誤らせることによって完全覚醒へと至る計画は失敗に終わった。
 猟兵達が自分の無理難題を躱すためのぬいぐるみや人形を数多作り上げたことには、素直に喜ぶ。
 嬉しいという感情は心の中にある。

 けれど、どうしようもなく、狂おしいまでの寂しさがこみ上げてくる。
 氷結幽鬼少女『ルリ』は大勢の中にいる時にこそ、孤独を感じる。一人ぼっちで居るときには寂しさは感じないのだ。
 それが何故なのかを『ルリ』は理解していなかった。
 他者がいるから孤独を感じる。
 もしも、他者を知らなければ彼女は孤独を知らなかったことだろう。彼女の中にある定理は、ひどく自己で完結するものであったが、同時に誰かを強く求める矛盾でもあったのだ。

「――……なら、壊すまでよ。わたしを取り囲む全部を壊すの。この鬱陶しい障壁も、世界も、全部、全部、全部壊すの」
 彼女の意志は封印施設のドームを取り囲む眷属たちに伝えられる。
 内側から壊せないなら、外側から壊すまで。
「卵の殻を割るみたいにね。簡単なことよ。だって、いつだってそうしてきたのだから」
 己が邪教の実験施設から逃げ出した時と同じように。
 彼女の眷属たるUDC怪物たちが、ドームを取り囲み、一斉に襲い来る。

 それを猟兵たちは迎え撃たねばならない。
 施設がドーム状であったことが防衛の難しさを跳ね上げさせていた。UDC怪物たちの群れは恐ろしく多い。
 そして、守るべき施設はドーム状であるがゆえに何処からでも突破できてしまう。
 猟兵たちは、この難しい戦いに勝たねばならない。
 障壁が破壊されてしまえば、それだけで世界は破滅へと一歩を踏み出してしまうのだから――。
ステラ・リデル
さて、第二段階ですね。
封印施設はドーム状であるとのことなので宙に浮きその中心点の空中で周囲を視野に収めます。(空中浮遊×念動力)
そしてさらに上空に魔法陣を現出。
そこから戦場全体に放たれる蒼い神雷の嵐により、周囲から押し寄せるUDC怪物たちの殲滅を試みましょう。(『蒼雷天嵐』の発動)

貴方達は前座に過ぎません。すみやかに消え去りなさい。

敵SPDUCについて
闇は雷の光で消し去りましょう。



 膨れ上がるは影。
 それは不定形なる『暗闇の追跡者』たちであった。UDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の封印を中心として建造された封印施設は、その封印形態ゆえにドーム状に作り上げられていた。
 それが今、氷結幽鬼少女『ルリ』の眷属である『暗闇の追跡者』たちに味方する形となっていた。
 全周を包囲する彼等は、飽和攻撃を仕掛け、外側から封印の障壁を排除すればいい。
 猟兵達が戦うのだとしても、面で迫る彼等を点で穿つのだとしても、その包囲網から施設を守らなければならないという観点から見て、すぐに穿たれた点は塞がれることであったことだろう。

「さて、第二段階ですね」
 ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)はドーム状の封印施設の宙に浮かぶ。
 中央から見下ろす包囲網は確かに数の暴力であった。
 圧倒的な数でもって『暗闇の追跡者』たちはその体を不定形に変え、身に宿した呪詛でもって封印施設に施された魔術的な障壁を破り、その膨らんでいく体でもって物理的な障壁すらも破壊するだろう。

「数は圧倒的……ですが」
 ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
 国ううより出現させた魔法陣は、戦場となった封印施設を中心にして蒼い神雷の嵐を生み出す。
 全方位から敵が押し寄せるというのならば、全方位に向かって攻撃をすればいい。
 ステラにとって、それは容易いことであったことだろう。
 彼女のユーベルコードは、蒼雷天嵐(ディバイン・ジャッジメント)。
 あらゆる者を飲み込み、その雷でもって穿つ力。
「――……!」
『暗闇の追跡者』たちを照らす神雷の光は、彼等の不定形の影を色濃くし、その姿を様々と刻み込むだろう。

「貴方達は前座にすぎません。すみやかに消え去りなさい」
 ステラの言葉と共に神雷が迸る。
 面でもって敵を圧する神雷は、強力な力である以上に『暗闇の追跡者』たちの体を行動不能へと追いやる。
 さらに行動不能で足を止めれば、神雷が再び降り注ぎ、その体を霧消させるまでダメージを蓄積させていくのだ。

「闇は雷の光で消え失せるもの……どれだけ貴方達がUDC怪物の眷属として、この封印施設を守ろうとするのだとしても」
 ステラの瞳に輝くユーベルコードが、それを赦すことはない。
 例え、最終的に氷結幽鬼少女『ルリ』を打倒することになったのだとしても、この施設はこれまでUDC職員の女性が守ってきたものである。
 彼女のこれまでの頑張りが在ったからこそ、守れられてきた平穏が在ることを知るのならばこそ、ステラは神雷の力をふるって、これを撃退する。

 闇の津波のような『暗闇の追跡者』たちが霧消し、押し返されていく。
 だが、それでも尚迫る眷属たちの数は圧倒的だ。ステラは空中より睥睨し、その雷の力をふるい続ける。
 おそらく今もなお、氷結幽鬼少女『ルリ』は完全覚醒を諦めては居ない。
 手早く済ませて、彼女を打倒しなければいつまた職員女性の精神がすり潰されるとも限らない。
「前座とは言え、しつこい……」
 ステラは己の力を振るい続け、圧倒的な暗闇の波を押し返し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
ふーむ、おいでなすったようだね……
(シチュー鍋に蓋をして起きたら食べてねの書き置きを残す)
防御が弱そうな所は……まあ入り口か。玄関口を抑えるとしよう……

おお、居る居る……それじゃあ、闇には闇で対抗しようか……
【闇に潜りし貪食の群狼】を発動……不定形の闇を食い破る形で影狼の群れを呼び出そう……
そして追跡者そのものを動きごと食べるように指示…存分に食べていい
よ…

動きの止まった追跡者を復元浄化術式【ハラエド】で払ってしまうかな……
(影狼からの抗議を受けて)え?あの追跡者達、スカスカで見た目程の
り量がない?
……んー……まあそこは数でカバー、と言うことで……ここら一帯を片付けてしまおうね……



 不確定に広がりゆく影。
 それは『暗闇の追跡者』たちのユーベルコードであり、彼が群として存在するがゆえの強みであった。
 まるで津波のように押し寄せる軍勢とも言うべき大軍を前にしてメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はドーム状の封印施設の入り口に立ち塞がる。
 防御が薄い場所と言えば、人の出入りがある場所であろう。
 幸いにしてこちらは迎え撃つ側である。
 どれだけ大軍であろうと、この物理、魔術的に施された障壁を破壊しようとするのならば、『暗闇の追跡者』たちは、この防御の薄い入り口を狙ってくるであろうとメンカルは考えていたのだ。
「ふーむ、おいでなすったようだね」
 すでに彼女は手作りのシチューの鍋に蓋をして、疲労からぐっすりと眠っているUDC組織の女性職員の横に書き置きをのこしてきたばかりである。

 彼女は疲れ切っている。
 ならばこそ、この戦いこそ新たな心労となるであろう。
 眠っているのならば、眠らせたままでいい。戦いは猟兵の領分である。ならばこそ、メンカルは瞳にユーベルコードの輝きを灯すのだ。
 暗闇の中を追跡してくるUDC眷属がいるというのならば、それを照らし、光を齎すのが己たちである。
 それは謂わば、人の心の優しさである。
 このUDC眷属たちの大元である怪物の心根がどれだけ人の優しさに疑いを持つのだとしても、それでも人の心の暖かさは在るのだと知らしめるのだ。

「おお、居る居る……それじゃあ、闇には闇で対抗しようか……」
 彼女の影より滲み出るのは、闇に潜りし貪食の群狼(オペレーション・ウルフパック)である。
 空をも駆ける影狼の群れは、一瞬で『暗闇の追跡者』たちに食いつくのだ。

 影狼たちはあらゆる動的エネルギーを喰らい、奪う存在である。
「貪りの顎よ、襲え、奪え。汝は陰影、汝は餓狼、魔女が望むは動流喰らう闇の牙」
 詠唱が続く。
 次々とメンカルの影より飛び出す影狼たち。
 その顎はどれだけ不定形なる闇の体を持つ『暗闇の追跡者』であろうと、その動的エネルギーを食い破られ、霧消する定めである。

「……存分に食べていいよ……」
 メンカルの言葉に影狼たちの咆哮が轟く。 
 迫るUDC怪物の眷属たちの勢いは衰えない。それどころか、メンカルの守る入り口が急所であると理解しているのだろう、殺到する。
 しかし、その動的エネルギーを貪るようにして牙を振るう影狼達のおかげで、辿り着くことすら出来ない。
 そこにメンカルの展開した復元浄化術式『ハラエド』が、『暗闇の追跡者』たちを祓うのだ。

「――」
「……え?」
 メンカルは自分の足元にすり寄る影狼の物いいたげな視線に気がつく。
 どうやら、『暗闇の追跡者』たちは中身がスカスカであり、見た目ほどは動的エネルギーがないことをに不満を漏らしているようである。
「……んー……まあそこは数でカバー、ということで……」
 メンカルは気を取り直して、ユーベルコードの力を発露させる。
 影狼たちは仕方ないというように、その牙でもって多くの『暗闇の追跡者』たちの動きを止めていく。
 数でカバーとメンカルは言ったが、たしかにそのとおりである。
 どれだけ質が劣るのだとしても、数は数である。

 迫りくる暗闇の津波を押し留め、メンカルは己の展開した術式によって霧消していく『暗闇の追跡者』たちを払い続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亞東・霧亥
俺の体は1つしかないし、走り回って撃退するくらいしか思いつかないが、普通に走っても間に合わない。

『毒使い』と『医術』の知識で『ダッシュ』の速度を増加する『ドーピング』薬を『薬品調合』で作り出して・・・飲む。
不味い!もういらん!

【UC】
四方八方に帝竜の毒を撒いて一時的に劇毒沼と化し、次々と死滅させ続ける。



 UDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の目論見は猟兵達によって打破された。
 職員の対処を誤らせることによって完全覚醒を果たそうとしていたが、猟兵達がその業務を肩代わりすることにより、判断を誤ることなく、職員は今眠りの中にある。
 これまで蓄積されてきた疲労が一気に出ているのだろう。
 封印施設はドーム状になっているがために、UDC怪物の差し向けた眷属たちの猛攻にたいする防衛は薄く伸び切っている。

 猟兵たちは封印施設を守りつつ、眷属たちを迎撃しなければならない。
 敵の数は膨大である。
『暗闇の追跡者』と呼ばれる不定形の影の形を持つUDC眷属たちは、声ならぬ咆哮を上げて封印施設に津波のように迫っている。
「オオォォ――」
 何を考えているのかもわからない存在。
 されど、人に害を及ぼす存在であることを、亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)は理解しただろう。

「俺の体は一つしかないし、走り回って撃退するくらいしか思いつかないが、普通に走っても間に合わない」
 ドーム状の封印施設全てをカバーすることは難しいだろう。
 他の猟兵たちも駆けつけてくれてはいるが、迫りくる軍勢とも言うべきUDC眷属たちは猟兵の背後を取る。
 霧亥の背後からも『暗闇の追跡者』たちが迫り、その首を締め付けようとする腕を放つのだ。

 迫る気配。
 それは死角から放たれる腕の一撃であり、不可避なる攻撃であったことだろう。
 けれど、霧亥は己の調合したドーピング薬を飲み干していた。
 正直に言えば、味は最悪であった。
「不味い! もういらん!」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 エルダー・ブラッド(ドッケツダイサービス)。それは放たれる『ヴァル切り押すの毒血』であった。
 四方八方に撒き散らされる毒の血は、『暗闇の追跡者』たちの体に触れた端から、その影の体を腐蝕させていくことだろう。

 さらに当たらなくても、大地を広大な劇毒の沼に変えていく。
 己の力は毒血を持つがゆえに適応し、力を底上げしていくのだ。
「毒血dieサービス中!今なら毒々しいカーペットも付いての大特価!御代は貴様等の命だ!」
 劇毒の沼と化した戦場に構わず入り込み迫ってくる『暗闇の追跡者』たち。
 その怨嗟のごとき咆哮を聞きながら、霧亥は猛スピードで戦場を駆け抜ける。

 まともに相手をする理由はない。
 敵はこの劇毒の沼で朽ちていく。ならばこそ、防衛しなければならない封印施設の周囲を駆け抜ける。
「普通なら間に合わないだろうさ。普通ならな」
 霧亥はドーピング薬と己のユーベルコードを組み合わせて戦場の一角を侵入した瞬間に猛毒に侵される沼へと変えて、『暗闇の追跡者』の進軍を阻む。

 敵の数は多けれど、それでもこの場に集った猟兵もまた数多ある。
 戦いは数であるかもしれない。
 けれど、此処に集った者たちの実力は、数の差をひっくり返すには十分であることを示すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー
来ましたね。我々の正気値を削る厄介なクリーチャーが。
こんなのが跋扈してるとか、この世界結構やばいですよね。
実はうちの故郷より滅亡寸前度合が高くありません?

まぁ、それはさておき戦闘ですね。
まずは周囲に念動力を放ち、【念動フィールド】を展開します。
で、感知できる範囲の敵を念動力で浮かして一か所に集めます。
そのまま念動力をかせて捻ったり潰したり千切ったりして攻撃ですね。
一応、背後にも念動力を集めておいて、
腕が出現次第感知して捻り潰せるようにしておきましょうか。

さて、さすがにドーム全体は防御できない気もしますが…
他の猟兵もいることですし、たぶん何とかなるでしょう。
私は私で、できる限りでがんばりますか。



『暗闇の追跡者』たちの数はまるで津波のように封印施設を取り囲む。
 ドーム状の施設は、その形状ゆえに波状攻撃に脆い。
 幾重にも張り巡らされた魔術的、物理的な障壁は確かに強固な防壁になり得るだろう。けれど、それはUDC眷属たちには僅かな時間稼ぎにしかならない。
 ならば猟兵たちはこれを迎え撃ち、撃滅せねばならないのだ。
「来ましたね。我々の正気値を削る厄介なクリーチャーが」
 エリー・マイヤー(被造物・f29376)は、迫る影の形をしたUDC眷属たちを見やる。

 沸き上がるようにして全方位から迫る敵。
 いつ見てもUDCアースに跋扈するオブリビオン、UDCは見るものの精神を蝕む姿形をしている。
 エリーにとって、こんな怪物たちが暗闇に跳梁跋扈する世界の危険度は高いものであった。彼女の故郷の世界であるアポカリプスヘルよりも滅亡寸前度が高いのではないかと思うほどであった。
「まぁ、それは良いのです」
 目の前に敵がいる。
 それを撃滅せねばならぬというのならば、彼女の類稀なる念動力が、この戦場において如何に凄まじい力であるかを見せつけるまでである。

「今から私の独壇場です」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 広がっていく念動フィールド(サイ・フィールド)は、戦場を包み込み、『暗闇の追跡者』たちをも囲い込んでいく。
 彼女の言葉通り、この戦場はエリーの独壇場へ様変わりするだろう。
「――オオオ!!」
 咆哮する『暗闇の追跡者』たちは瞬時にエリーの背後へと回り込む。
 それはあまりにも早いがゆえに、目で終えぬほどであったが、エリーには関係ない。
 この念動フィールドにありて、あらゆる攻撃は彼女に感知される。
「捕まえました……」
 エリーの瞳が輝く限り、彼女の念動力は『暗闇の追跡者』たちを捉え、一箇所に集めるのだ。それは目に見えぬ手によってなされるようであり、『暗闇の追跡者』は戸惑ったように咆哮するしかない。

 あまりにも強大な力。
 それは振りほどくこともできぬほどの力であり、『暗闇の追跡者』たちがエリーの背後から強襲しようとしても、全てが無駄に終わる。
「さて、流石にドーム全体は防御できない気もしますが……」
 エリーは振り返ることをしなかった。
 彼女の背後で念動力の腕によって捕らえられた『暗闇の追跡者』たちが一気にねじ切られる。
 影の体でありながら、UDC眷属である彼等は怨嗟の咆哮と共に霧消していく。

 それに一瞥をくれる時間すら惜しい。
 エリーの念動力の腕は瞬時に『暗闇の追跡者』を捕らえ、次々に捻り潰していくのだ。
 ここが彼女の独壇場であるという意味もうなずけるものであった。
「他の猟兵もいることですし、多分なんとかなるでしょう」
 楽観的であると言われるかもしれない。
 けれど、エリーはできないことは言わない。自分にできることを、その限りにおいて全て成し遂げる。
 それこそがエリーにとっての戦いである。

 煙草に手が伸びそうになるが、こらえる。
 まだその時ではない。だからこそ、エリーは彼女の念動力でもって波状攻撃を仕掛けてくる『暗闇の追跡者』たちを次々と捕らえては霧消させる。
「大抵のことは念動力でどうにかできる……アナタたちも、ほどほどにしておいてくださいね」
 迫りくる『暗闇の追跡者』たちの手は、結局エリーの髪一房にすら触れることなく念動力の手に掴まれ、ねじ切られ、すり潰され、尽くが無に帰すしかなかったのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
陰海月には休憩してもらいまして。
こうなると、あなたが良いと思いましてー。

人格交代
『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林

なるほど、たしかに私の方がよいですね。
相手の攻撃UCの性質も利用しましょう。
【四更・林】。破魔の力があるこの矢たちを…膨れ上がるあなたたちは避けることができません。一部分でも、視界に入っていればいいのです。

それに、四悪霊を呪うには、相応の強さが必要ですよ?(呪詛耐性)
精神攻撃も…最近、いろいろ(今まで見ていた悪夢)乗り越えた私には効果が薄くなりますので。


陰海月、縫い縫いにけっこう集中力使ったので、休憩中。
霹靂、自分のぬいぐるみぽふぽふしてた。



 膨れ上がっていく不定形の影。
『暗闇の追跡者』たちの体はもとより影である。ゆえにその形に決まりはない。相対する者によって姿を変えることもあるだろう。
 そのどれもが真実ではない。
 呪詛に満ちた咆哮がUDC組織支部の封印施設を取り囲んでいく。
 ドーム状の施設であるがゆえに防衛は困難である。どれだけ物理的にも、魔術的にも障壁を重ねたものであっても、飽和攻撃の前に全てを守り切ることは難しいだろう。

 突破されれば、UDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の完全覚醒に至ってしまう。
 そうなれば世界に怪物が放たれることになるだろう。それを阻止するために猟兵たちは駆けつけた。
「『影海月』は休憩してもらいまして」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、ぬいぐるみ作りでへとへとになった『影海月』を影の中に下がらせる。
 彼にとってそれは集中力を要するものであったから、休憩をしなければならないのだろう。
 その傍で『霹靂』がヒポグリフを模したぬいぐるみにじゃれつくようにぽふぽふとしている。

 そんな彼等を傍らに『疾き者』は己の主人格を交代する。
「こうなると、あなたが良いと思いましてー」
「なるほど、たしかに私の方がよいですね」
 交代した人格が表層に現れる。それは『静かなる者』であった。攻め入るのではなく防衛するための戦いを得手とする人格が切り替わることにより、そのユーベルコードの力も変質する。

 膨れ上がっていく『暗闇の追跡者』たちの姿を前に、白い弓を構える。
「我が梓奥武の力よ、ここに」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 破魔の祈りを込めた矢は空に放たれる。
 天に放たれた矢は空中で分裂し、『静かなる者』が見やる全ての『暗闇の追跡者』たちへと打ち込まれるのだ。
 どれだけかわそうとも、分裂した霊力の矢は、彼等を追いかけ貫くのだ。
「オオオ――!!!」
 怨嗟の咆哮が轟く。

 それは世界のすべてを恨むものであったことだろう。
 理由のない怒りが世界を破壊するのであれば、その怨嗟は暗く濁るものであったから。
「この四悪霊を呪うには相応の強さが必要ですよ?」
 その怨嗟の咆哮が己たちのトラウマをえぐるのだとしても。
 彼等の心にあるのは悪夢を乗り越えたという自負である。どれだけ己の心の中にひとかけらでも存在する恐ろしさを増幅させるのだとしても、無意味である。

 誰の心にも後ろ暗いことや、哀しみや、恐怖は存在している。
 けれど、それと同じように、同じくらいに、輝く何かがあるのだ。それは人によって変化するものであろう。
 手にした光を手放さない限り。
「我等の呪詛が、呪いが、世界という漠然としたものを呪うものに負ける道理などあるはずもなし」
 放たれる霊力の矢が天より降り注ぐ。

 封印施設に襲い来る津波のごとき『暗闇の追跡者』たちは矢によって散らされ、その波を崩ししていく。
 守るべき未来があると知るからこそ、悪夢を、過去を乗り越えてきた者に過去よりの呪詛は届かないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
動き始めたようだな。まだ手伝いたいが、こちらにリソースを回させてもらうよ。そら、ぬいぐるみで遊ぶのはやめだレヴィアスク。
知覚端子を展開して【情報収集】。追跡者たちの元へ向かいながら、相手の視界に入る前から光学兵器のモジュールを【ハッキング】で操作しながら照射しよう。

相手のUCは回避の後に対処。浮遊しているモジュールを足場にも使うよ。
情報収集した敵の動向を【瞬間思考】で把握して避け、待ち構えるよう配置したモジュールや、変化させたレヴィアスクで伸ばされた腕を【切断】。――背後背後と、何かの一つ覚えかね?



「動き始めたようだな」
 マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)はUDC組織支部の封印施設の中でUDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の眷属が襲撃してきたことを知る。
 ドーム状の施設であることが災いして、防衛線は伸び切っている。
 敵の数は膨大であり、飽和攻撃を繰り返す。ただそれだけで、この封印施設に取りつくことができるだろう。
 そうなってしまえば、いくら物理的、魔術的に幾重にも張り巡らされた障壁と言えど意味をなさない。
 完全覚醒のために強引な手段に出てきたことこそが、マホルニアにとっては戦いの合図でもあった。
「まだ手伝いたいが、こちらにリソースを回させてもらうよ」

 そんな彼女の近くで相棒である子竜『レヴィアスク』がぬいぐるみとまだじゃれている。
 よほど気に入ったのだろう。
 作った手前、それが嬉しくないわけではないのだが、それでも戦うに際しては気を引き締めなければならない。
「そら、ぬいぐるみで遊ぶのはやめだ『レヴィアスク』」
 そう言ってマホルニアは己の知覚端子を展開、周囲の状況を知る。

 ドーム状の施設を守るために他の猟兵たちも『暗闇の追跡者』たちを迎え撃っている。
 圧されていることはないが、それでも長引かせることはできないだろう。
 UDC怪物の完全覚醒はおそらく時間との勝負だ。
 これまで計画的に動いてきたUDC怪物が強引な手段に出れば、この封印施設も危ない。何よりUDC職員の女性の身も危うい。
「CODE:EMISSION//LDF_B_MODULE COORDINATE SHIFT.」

 マホルニアの瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女の光学兵器モジュールが空を飛翔する。反射外殻を持つ浮遊方無線光学モジュールが千を超える数飛び出し、マホルニアはそれを足場にして空へと駆け上がっていく。
 ドーム状の封印施設を取り囲む『暗闇の追跡者』たちの数は圧倒的である。
「だが、それでも負ける気はないね」
 知覚端子から送られてくる情報。
 それによりマホルニアは己の視線でもって敵の位置を把握し、光学モジュールによって『暗闇の追跡者』たちを迎撃していくのだ。

 空中にありて、その情報の全てを処理するだけの力がマホルニアにはある。
 瞬間的に判断し、情報を精査し、狙うべき敵を狙う。
「――となれば、私の背後を取ろうとするだろうな」
 相棒である『レヴィアスク』が変化した弓なりの両刃剣を振り向きながら振るう。その斬撃は、彼女の背後を取ろうとしていた『暗闇の追跡者』を切り裂く。
 彼等のユーベルコードの種は割れている。
 凄まじいまでの速度で必ず背後を狙う。
 背後を狙うことがわかっているのならば、マホルニアは空に飛翔する千にも及ぶ光学モジュールから発信される情報を元に不意打ちを防ぐことができる。

「オオオ――!」
「そういうのは造作もない」
 放つ斬撃が次々と彼女の背後に迫る『暗闇の追跡者』たちを切り裂いていく。
「――背後背後と、何かの一つ覚えかね?」
 正面に気を配る必要など何処にもなかった。
 敵の不意打ちは最早不意打ちですらない。マホルニアは、己の知覚端子から得られる情報全てを網羅し、光学モジュールに囲った戦場の中で舞うように『レヴィアスク』の刃を振るい、敵を霧消させ続ける。

 敵の目的は時間稼ぎ。
 強引ながら完全覚醒を為そうとする氷結幽鬼少女『ルリ』の目論見をマホルニアは打破せんと空中にその、光り輝く者(ヒミングレーヴァ)としての姿をもって、影たる敵を惹きつけ続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
すごい数……。これでも本番ではないのですね。ええでも。
全周囲からの攻撃は確かに守る側としては厄介でしょう。
無尽蔵の戦力があれば。
ですがUDCと言えど無限ではないでしょう。そして全周囲と言う事は戦力の拡散に過ぎません。

眷属が最大限に攻撃の範囲に収まるような場所に念動力で飛びましょう。
位置を定めたら青月をかかげ雷公天絶陣を放ちます。
範囲内であればどこにいようとも、ええたとえ背後であっても私の雷は撃ち貫きます。相手に攻撃させる時間など与えません。



 あふれる『暗闇の追跡者』たちの姿はまるで津波のようであった。
 影である体は不定形。
 そして、その怨嗟に満ちた咆哮は周囲の全てを呪うように大気を震わせるのだ。
「オオオ――!!!」
 そこに眷属としてあるがゆえに、意志はない。
 あるのは己の主である氷結幽鬼少女『ルリ』の完全覚醒を為すためだけの時間稼ぎ。猟兵たちに対処を誤らせることは難しい。
 ならばこそ、彼等の主は時を持って強引にまどろみの中から這い出ようとしているのだ。

「すごい数……」
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は敵の膨大な数を目の当たりにして息を飲む。
 けれど同時にこれが本番ではないことを知っている。
「ええ、でも……」
 守ることは不利。
 このドーム状の施設であるがゆえに防衛線は伸び切ってしまい、数で劣る猟兵たちは薄い防御に徹するしかない。
 他の猟兵たちの戦いぶりを見ても、押し負けることはないだろう。けれど、確実に時間を稼がれているという自覚があった。

 この飽和攻撃というものが厄介であった。
 守る側は徒に消耗を強いられる。無尽蔵な戦力であれば、猟兵達とて危うい。
「けれど、UDCと言えど無限でゃないでしょう。そして全周囲ということは――」
 そう、敵も同じなのだ。
 限られた戦力で飽和攻撃を仕掛ける以上、敵の攻撃も拡散されていることに違いはない。
 ならば、藍は念動力でもって空に飛ぶ。
 彼女の視線が見下ろすのは、『暗闇の追跡者』たちの一段であった。

『暗闇の追跡者』たちのユーベルコードは瞬時に敵との間合いを詰め、背後からの強襲にある。
「それを潰します。雷公鞭!」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 宝貝「雷公天絶陣」は、彼女を起点として雷を放つ。それはどれだけ彼女の不意を突くために背後を取ろうとしても、意味のないことであった。
 彼女の宝貝はあらゆる者を穿つ雷である。

 仕留めきれなくても構わない。
「ええ、例え背後であっても私の雷は撃ち貫きます……そして」
 振るう雷公鞭が再び雷を放つ。
 感電により動きの鈍くなった『暗闇の追跡者』たちを再び打ち据える雷撃。
 それは彼等の影を霧消させる。敵に攻撃をさせる時間すら与えない。これだけの飽和攻撃を仕掛けてくるのだ。
 拡散された戦力は徐々に薄くなっていくだろう。
 敵が時間を稼ぐというのならば、敵の想定以上の速度で戦力を削っていくのみである。

 藍は空中に陣取りながら雷の力をふるい続ける。
「得た安息を守るために戦うのが人であるというのなら、それを脅かす者がいることもまた必定」
 けれど思うだろう。
 誰かのためにと精神を擦り切らせてしまう人がいる。
 そんな人をこそ藍は守ろうと思うだろう。女性職員がそうであったように。今は日々の蓄積した疲労のために眠りに落ちている彼女の穏やかなまどろみを阻む者を討ち果たさなければならない。

「そのために私は戦うのですから――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒江・式子
連携アドリブ歓迎

助けに来たハズが
励ましてもらっちゃいました
俄然やる気が湧いてくると言うものです(表情変わらず)

実体の無い闇に姿を変える眷属達は
影に潜み影を捉える〝翳喰らい〟にとって
非常に相性の良い相手と言えます
私の足元を起点に
施設を覆うように茨を拡げましょう
近づく敵を一体でも捉えたならば
跡形なく喰い尽くすまで放しません
呪詛ごと吸収し茨の糧にさせてもらいます
そうして増強された影の茨は
更に範囲を拡げながら次なる獲物を待ちます
ある程度の数を喰えれば
施設全体をすっぽり覆える程になるでしょう

影の茨は火力こそ乏しいですが
こう言った防衛戦でなら一役買う事ができます
数を揃えたのが仇となりましたね



 最初は愚痴の言い合いができればよかったと思っていたのだ。
 吐き出すことで心のなかに溜まった澱は、すっきりとする。そのための呼び水になればいいと女性職員と会話をしたのだ。
 けれど、黒江・式子(それでも誰が為に・f35024)は変わらぬ表情と瞳のままに息を吐き出す。
 疲れたわけではない。
「助けに来たハズが励ましてもらっちゃいました」
 こんなつもりではなかったのかもしれない。
 けれど、不思議と彼女の心の中にあるのは暖かいものであった。

 自分が何のために戦うかなど言うまでもない。
 誰かのために戦う。
 ただそれだけが式子にとって大切なことであった。
「俄然やる気が湧いて来るというものです」
 表情は変わらない。瞳の色も変わらない。けれど、得たものがある。誰かのために戦うというのはこんなにも誇らしいものである。その誰かが言葉にしてくれたのだ。
 ゆえに式子の瞳はユーベルコードは輝き、相対する膨大な数の『暗闇の追跡者』たちを前にして、少しも怯むことはなかった。

 実態のない闇に姿を変える眷属達。
 彼等のユーベルコードは己の姿を不定形の闇に変える力を持つ。膨れ上がり、世界に対する呪詛を撒き散らす。
「オオ――!」
 意味のない咆哮。
 ただ世界を呪うためだけの咆哮。それを真っ向から式子は相対する。
 恐れることは何一つ無い。

「なぜならば――“翳喰らい”にとって貴方達は非常に相性の良い相手と言えます」
 彼女の足元を起点にして封印施設を覆うように、影の茨が覆っていく。
 それは生命力、魔力、感情と言った『暗闇の追跡者』たちが活動に必要とするあらゆるエネルギーを吸収し、茨の影を増幅させていく。
 近づく敵が一体でも捕らえたのならば、それは跡形もなく霧消するしかない。
 さらに力をました茨が迫る『暗闇の追跡者』たちへと伸び、範囲を広げながら迫るのだ。

 敵の飽和攻撃は全て“翳喰らい”にとって、ただの栄養にしかなりえないのだ。
 どれだけ敵の数が多かろうが、それは変わらない事実である。増幅された力は茨の成長につながる。
「不運と踊って頂きます」
 影の茨は火力こそない。
 けれど、その特性は『暗闇の追跡者』たちにこそ最大の力を発揮するだろう。
 防衛において、真価を発揮する式子のユーベルコードは、まさに敵にとっての袋小路の轍(フクロコウジノワダチ)である。
 後戻りも許さず、さりとて進軍も許さぬ。
 鉄壁にして不落たる茨は、封印施設をすっぽりと覆い尽くすほどに成長していく。

「数を揃えたのが仇となりましたね」
 式子の眼前に最早敵はいない。
 あるのは己のUDC“翳喰らい”の餌でしかない。どれだけの怨嗟が世界を呪うのだとしても、式子には届かない。
 その怨嗟は、たった一つの感謝の言葉で打ち消される。

 その誰かのために戦うことこそ、式子にとっての理由。
 死んだ瞳はまだ輝かない。けれど、その胸に灯る燈火は、煌々と今もユーベルコードの輝きとして戦場を照らし続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
ちぃ、四方八方わんさかおいでなすった相棒。
流石に俺達だけじゃカバーが出来ねえぜッ!?
「…なら、カバーが出来る者を喚べばいい。」
成る程、そりゃあいい。
「…妖刀、解放ッ!」

百鬼夜行龍『空亡』を召喚して施設の周りに天変地異を起こしてもらい、敵を一掃するぜ。
代償に敵を一掃している間、相棒が霊鋼の薙刀を持って神楽を舞い『空亡』に奉納するぜ。
俺は相棒の後頭部に被さって、敵が背後に出現して絞め殺す腕を放とうとしたら相棒に合図。
相棒は神楽を舞いながら背後の敵を破魔の力を宿す薙刀でなぎ払うって寸法よ。

これは前哨戦、とっとと片付けるぜッ!


【技能・封印を解く、ダンス、破魔、なぎ払い】
【アドリブ歓迎】



 戦場となった封印施設。
 UDC組織支部の施設は、敵の膨大なる数でもって包囲されていた。
 UDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の眷属である『暗闇の追跡者』たちは、その数で持って猟兵を圧倒しようとしている。
 事実、敵の数は多く、ドーム状の施設では防衛には向かない。
 敵の目的は時間稼ぎである。
 主である『ルリ』が強引にまどろみの中から這い出し、完全覚醒さえなせばいいのだ。

 彼女が完全覚醒を果たせば、魔術的、物理的に施された障壁など意味を成さないだろう。それまでの時を稼げばいいのだ。
 けれど、それをさせぬのが猟兵である。
『ちぃ、四方八方わんさかおいでなすった相棒。流石に俺たちだけじゃカバーが出来ねえぜっ?!』
 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は、ヒーローマスクたる鬼面をカタカタ揺らしながら言う。
 確かに彼の言うとおりである。
 これだけの数に晒されれば、どれだけ猟兵たちの質が『暗闇の追跡者』を上回るのだとしても消耗は避けられない。

「……なら、カバーできる者を喚べばいい」
 相棒である桜が迫る大軍を前にして告げる。
 彼女の言葉に凶津が頷く。成程、と。己たちの妖刀に封ぜられた存在を開放すれば、これほどの大軍でも蹴散らす事ができるだろう。
『そりゃいい』
「……妖刀、解放ッ!」
 桜の言葉とともに無名の妖刀より天変地異の術を操るは百鬼夜行龍『空亡』が現出する。

『暗闇の追跡者』たちは見上げるだろう。
 その圧倒的な存在を。
 あらゆる存在に例外無き滅びを与える百鬼夜行龍『空亡』の姿を。しかし、その圧倒的な力を前に強いられる代償もまた必要なのである。
 相棒である桜の神楽舞。 
 それを奉じることによって、代償と為す。桜の肉体にかかる負荷もまた相当なものであろう。
 汗が飛び散り、手にした薙刀が重しのように彼女の体にのしかかる。
「――オオオ!!!」
 そんな彼女を背後から襲わんとする『暗闇の追跡者』達。
 けれど、それを防ぐものがあった。

『やっぱり背後を狙うかよッ! 相棒ッ!』
 それは桜の後頭部にかぶさる凶津の鬼面であった。
 必ず敵は背後を取ってくる。ならば、背後にかぶさることによって死角を潰すのだ。凶津の言葉によって桜の手にした薙刀が神楽舞として振るわれ、その伸びた手を斬撃で持って切り割く。
 そこに百鬼夜行龍『空亡』の雷が降り注ぎ、完全に無床させるのだ。

「ふぅ――……ハァッ……!」
 桜の肉体も限界が近い。
 それほどまでに百鬼夜行龍『空亡』の招来は体力を削るものである。
 奉納する神楽舞は半端なものでは代償隣り得ないからこそ、桜は汗を珠のように散らしながら、舞を奉じる。
『これは前哨戦、とっとと片付けるぜッ!』
 凶津の言葉に反応し、百鬼夜行龍『空亡』が、最大の力を持って『暗闇の追跡者』の軍勢を押し返す。

 それは天変地異の力を手繰りながらも、桜の奉じる神楽舞に報いるものであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

羽々・一姫
あら。わたしにはちょっと守備範囲が広いかしら。

しかたないわね。
あまり使いたくはないのだけれど、わたし、失敗するのはサボれないより嫌いなのよ。

【ダイモンデバイス】から【アスモデウス】を喚びだして、助力を請いましょう。

72の軍団の長、偉大なる魔王、アスモデウス。
その力をもって、わたしの敵を悉く屠っていただけますか。

ええ、もちろん解っています。色欲の王。
すべてが終わった際には、わたしの身体を好きにしてかまいません。
ただし、命を奪う以外に、ですが。

いかがですか?

交渉が成立したら、あとはお任せ。
わたしは『暗闇の追跡者』が背後に回ってきたときに、
【タルタロスの鍵】を降るって真っ二つにするくらいでいいかな。



 UDC組織支部の封印施設に迫るUDC眷属たちの群れ。
 その数は未だ膨大であり、防衛に出た猟兵たちをしてもまだ押し返しきれぬものであった。
「あら。わたしにはちょっと守備範囲が広いかしら」
 羽々・一姫(Gatekeeper of Tartarus・f27342)は、『暗闇の追跡者』たちの怨嗟の咆哮を聞く。
 彼等の咆哮は、全てが呪詛である。 
 世界を呪う理由すらも最早定かではない。
 ただ、己の主である氷結幽鬼少女『ルリ』の完全覚醒をなさしめるためだけに、時間を稼ぐように封印施設へと迫っているのだ。

 封印施設事態は魔術的にも物理的にも幾重にも障壁を重ねて作られている。
 外からの破壊は困難を極めるであろうし、猟兵の姿もある。これを彼等が突破することは現実になはならないだろう。
 けれど、内側に存在する強力なUDC怪物である氷結幽鬼少女『ルリ』であれば別である。
 彼女が完全覚醒を果たせば、強引にでも封印施設から這い出すことは可能である。
「しかたないわね。あまり使いたくはないのだけれど、わたし、失敗するのはサボれないより嫌いなのよ」
 一姫の手にあるのはダイモンデバイス。
 それは彼女のユーベルコードの発露であり、悪魔召喚「アスモデウス」を招来せしめる力であった。

 獄炎の術を操る『アスモデウス』、その悪魔としての力は凄まじいものがある。
 けれど、代償を要求することがネックであったが、一姫はためらいなく告げる。
「72の軍団の長、偉大なる魔王『アスモデウス』。その力をもって、わたしの敵を尽く屠っていただけますか」
 その願いに『アスモデウス』は頷く。
 だが、代償はもちろんのことである。言われるまでもないことである一姫は告げる。
 彼女が捧げられる代償は、ただ一つ。

「ええ、もちろん解っています。色欲の王。全てが終わった際には――」
 一姫は、その紫の瞳を『アスモデウス』に向ける。
 彼が望むものがなんであるかを知るからこそ、それを妥協してはならない。譲歩を引き出そうとしてもならない。
 悪魔とはすなわち代償を元に必ずや仕事を終える者である。
 不確かな要素も、何もかも押し通して願望を現実にする者であるからこそ、こちらが手渡す代償に不備があってはならない。

 間違えないからこそ、一姫は、失敗という二字を尽く否定するために己の体すらも明け渡すのだ。
「ただし、生命を奪う以外に、ですが」
 いかがです? と尋ねるまでもない。
『アスモデウス』の頷きとともに獄炎が迸る。
『暗闇の追跡者』たちが一姫の背後を取ろうとユーベルコードで持って迫っても、その尽くが獄炎の中に消えていく。

「――オオ!!」
「――」
 告げる言葉は人外のもの。
 まるで己の供物に手を出すことは許さぬとばかりに一姫に迫る『暗闇の追跡者』たちを『アスモデウス』は屠り続ける。
 契約は為された。
 ならばこそ、その炎は一姫の敵を滅ぼし続ける。
「これじゃ、わたしの仕事はあんまりない感じかな……」
 仕事熱心なのは良いことであるけれど、『アスモデウス』の張り切りっぷりを見ていると、一姫は苦笑いするしかない。

 その獄炎が『暗闇の追跡者』たちの波を押し返し、猛る炎が一姫に迫る全てを霧消させていく。
 炎が舞い散る光景をみやり、一姫は悠然と施設の防衛に貢献する。
 それは失敗の二字を尽く踏み潰してきたからこそ、得られる光景なのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
もう人間の心は残ってなくて
UDC怪物と化してしまっているのかな

オブビリオンなのか
そうでないのか
曖昧な存在みたいだけど
自由にさせるとまずいみたいだね
力づくで止めるしかないなら
悲しい話ではあるけれど
まずは面倒な眷属を倒してしまおうか

瞬間移動的な挙動で
背後に回ってくるのは厄介だね

でも神気で体を覆ってしまえば
どこから攻撃されても同じだよ

UCを使用し背後からの攻撃を防ぎつつ
相手の時間を停めて固定しよう

動きを停めてしまえば
後はワイヤーで細切れにしてしまおう
UDC組織製の非実体にも効果があるものだよ

晶もずいぶん権能の扱いに慣れてきましたの
とても良い傾向ですの

褒めてくれているんだろうけど
素直には喜べない話だね



 世界を呪うUDC眷属たちの咆哮がUDC組織支部の封印施設を取り囲む。
「オオ、オオオ――!!!」
 そこに意味はない。
 世界そのものを呪う理由も、確固たる個すら失った不定形の存在は、その『暗闇の追跡者』という名でもって構成される群れでしかない。
 かつて在りし心はすでにないのだ。
「もう人間の心は残って無くて、UDC怪物と化してしまっているのかな」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、UDC眷属である『暗闇の追跡者』たちの姿を見て、そうつぶやく。
 闇の津波のように迫る軍勢。

「オブリビオンなのか、そうでないのか。曖昧な存在みたいだけど」
 それでも自由にさせるわけにはいかない。
 力づくで止めるしかないのならば、その面倒な眷属を倒してしまわなければならない。
 哀しみの理由も忘れ、憎しみの意味すらも理解することのない存在。
 そこに晶は憐れみを覚えたことであろう。
「悲しい話ではあるけれど」
 それでも他者を、世界を滅ぼしていい理由などない。
 世界もまた己という存在の一部であればこそ、それは自傷行為にほかならないのだから。

 晶の体を神気が包み込む。
 宵闇の衣から発せられる万物に停滞を齎す神気は、どれだけ己の背後を取るユーベルコードが強力であったのだとしても、その動きを止める。
「どこから攻撃されても同じだよ」
 そう、たしかに背後を取られるのは厄介極まりないものである。
 それが数を為すというのであればなおさらだ。けれど、晶には関係ない。
 停滞した『暗闇の追跡者』たちは伸ばした手のまま固まっている。いや、固まっているわけではない。ただ神気の内部と外とでは時間の流れが違うだけである。

「邪神の慈悲(マーシフル・サイレンス)って言うわけじゃあないんだけれどさ……その世界を呪う怨嗟の咆哮、此処で終わりにしてあげるよ」
 手にしたワイヤーガンから放たれる切断用のワイヤーが『暗闇の追跡者』たちの体を捕らえ、寸断していく。
 ただのワイヤーであれば効果はないだろう。
 けれど、UDC組織謹製のワイヤーである。非実体方であるUDCにも効果があることは既に証明されている。

 ワイヤーが『暗闇の追跡者』たちを寸断し、その体を霧消させていく。
「オォォ――!!」
 意味のない咆哮。
 怨嗟。それを聞きながら晶は迫りくる軍勢に相対する。
 ためらいは必要ない。それはきっと守るものを傷つけるためらいになることを晶は知っている。
 だからこそ、晶は己の身に宿った力を振るうことに躊躇わない。

 例え、それが己の身のうちに融合した邪神の思惑通りなのだとしても。
「晶もずいぶん権能の扱いに慣れてきましたの。とても良い傾向ですの」
 分霊が言う。
 その言葉を素直に喜べない晶は、苦笑いをするしかない。
 振るう力にためらいは要らない。そのためらいが奪うものを晶は知っているからこそ、己の身にまとう宵闇の衣より発せられる万物に停滞を齎す神気でもって、敵を切り裂く。

「素直には喜べない話だね」
 ただ、今はそういうしかない。
 受け入れがたき現実。されど、その身に宿した力が誰かを救う。
 晶は徐々に権能、力を受け入れ始めている己の心をこそ、戒めなければならないと、その襟を正しながら『暗闇の追跡者』たちを退けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『氷結幽鬼少女『ルリ』』

POW   :    オトモダチと私の邪魔をしないで!
【全身を更に氷で覆った姿】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    キライキライみんな大っ嫌い!
【慟哭と共に雹の嵐】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    貴方は…私のオトモダチだよね…?
【問い掛けに靡く親愛】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【凍り付いた髪の後ろに居るナニか】から、高命中力の【凍て付いていく白い光線】を飛ばす。
👑11
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 孤独を感じる心が凍てつくようであった。
 心とは柔らかい何かである。生きるために必要なのが熱なのであれば、氷結幽鬼少女『ルリ』の心にはそれがなかった。
 凍えるような孤独。
 それが耐え難きものであるのを知るからこそ、彼女は偽りのぬくもりを求めた。
 ぬいぐるみや人形がそうであったように。
「どうしてわたしが世界に在ってはならないの?」
 それは単純な疑問であった。

 UDC眷属たちは猟兵たちによって尽くが霧消させられた。
 それはいい。
 どうせ時間稼ぎでしかなかったのだから。己が完全に覚醒してしまるだけの時間だけがあればよかったのだ。
 そして、それは為された。
 強引に封印を解き放ち、『牢獄』たる封印施設の中で氷結幽鬼少女『ルリ』は血の涙を流しながら、ずたぼろの患者着のまま足を踏み出す。
「孤独は嫌なの。一人きりがいいの。けれど、誰かがいるから、わたしは永遠に孤独を感じなければならない。たった一人なら、寂しくなかったのに」
 かつて、友の代わりに邪教のUDC実験に志願した。

 あの子が生きている世界があるのなら、それでよかったのだ。
 自分の命を懸けるに値すると思っていたのだ。けれど、現実は同仕様もなく残酷である。そんなことは当たり前である。わかっている。
 己の実験の後に友もまた実験に投入されて生命を失った。どちらかなんてない。どちらもない。
 あるのは、ただただ不条理。
「でも、それでも奪われた。元のたった一人に戻るだけ。わたしの心に迫る寂しさに意味はないはず。なのに、どうしてわたしの心は今もこんなに寂しさを感じているの」
 周囲に積み上げられたぬいぐるみや人形たちを『ルリ』は傷つけない。傷つけられない。

 物言わぬ彼等こそが、己の心を慰撫してくれたものであると知るからこそ。
 それでも彼女の力は発露する。
 どうしようもない寂しさの定理を抱え、彼女は氷結の力で持って、己の心さえも凍りつかせ、世界をも覆わんとするのだ。

 このぬいぐるみや人形だらけの『牢獄』に猟兵たちは至る。
 戦わなければならない。
 どれだけ幼気な少女の姿をしていたのだとしても。どうしようもない寂しさを心に抱えた存在なのだとしても。
 世界に寂しさの定理を押し付けんとする彼女を放置することなど、許されないのだから――。
亞東・霧亥
全身の氷を素早く溶かすために、『毒使い』の知識から『薬品調合』で高濃度の融雪剤を作る。

次に『念動力』で周囲のぬいぐるみを様々な方向に速く飛ばしてルリの気を引く。
『忍び足』で『目立たない』よう背後から近付き、背中からの『暗殺』に効果的な箇所に融雪剤を振り掛ける。

【UC】
高電圧の一撃は心臓に強烈なショックを与えると同時に、全身に纏う氷を這い回ってルリの神経も焼くだろう。

一度で倒しきれるとは思っていないが、これで行動の一部を阻害し、後に続く者の一助にでもなれば幸いである。

*アドリブ、ツッコミ、誤字脱字歓迎



 ズタボロの患者着の下にある肌は、青白い。
 透き通るように白い肌は、その血液が決して人のものではないことを知らしめる。
 UDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』は血の涙を流しながら、笑っていた。
 完全覚醒は為された。
 時間を稼ぐUDC眷属たちによって猟兵たちは、この施設の防衛に掛り切りであった。だからこそ、多少強引でも彼女はまどろみの中から這い出すことができたのだ。
「寂しさをわたしに感じさせる世界なんて壊れてしまえばいいのよ」
 それはひどく独りよがりな言葉であった。

 姿形は幼気な少女そのものであったが、その内面は違う。
 人ではない何か別の物。
 それが氷結幽鬼少女『ルリ』というUDC怪物であった。
 彼女の体が氷で覆われていく。頑強なるUDCの力を顕現させるユーベルコードは、彼女の理性を失わせる。
 もとより理性などあったのかと問われれば、それは彼女の心に問うしかないだろう。
「大嫌いよ。全部。全部嫌い! だから猟兵も何もかも滅ぼして!」
 この『牢獄』には人形やぬいぐるみが山積している。

 どれもこれも大切なオトモダチである。
 彼女にとってオトモダチとは体温を感じさせぬ、人形やぬいぐるみだけであった。
 それだけが彼女の心を癒やしてくれた。
「――だから滅ぼさせるわけにはいかんのさ」
 その言葉とともに『ルリ』にぶちまけられたのは高濃度の融雪剤であった。
 亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)が調合して生み出したそれは身に覆われた氷雪を溶かすには至らなかった。

 けれど、それでもその氷がUDC由来であるということがわかればいい。
「嫌いよ、あなたなんて。滅ぼしてやるのよ。絶対に。嫌いなものなんて何一つ存在していいわけないから」
 まるで癇癪を起こした子供であると霧亥は思ったことだろう。
 これまで彼女に気配を悟られぬようにと、とにかく目立たぬように近づいていた。己の技量が高いこともあるのかもしれないが、氷結幽鬼少女『ルリ』は敵の接近に頓着していない。

「それが大事なのか」
 霧亥は何故、『ルリ』がこちらの融雪剤を躱さなかったのかを考える。
 同時になるほどとも思うのだ。彼女が躱さなかったのは、この『牢獄』たる場所に山積されたぬいぐるみたち……彼女のオトモダチに降りかかるのを嫌ったからだ。
「そうか。大事なものがあるから、そうやって自分すら犠牲にできる。犠牲にできてしまう」
 それが『ルリ』としての弱さであるというのなら皮肉である。

 霧亥の瞳がユーベルコードに輝く。
 それは帯電する拳の一撃。
 融雪剤は一つの目くらましに過ぎない。素早く動くものを優先的に狙う氷結幽鬼少女『ルリ』にとって、こちらの攻撃を届かせるのは容易ではなかった。
 さらに言えば、その小節の一撃は自身から30cmという至近距離でしか効果を発揮しない。
 何をおいても接近する必要があったのだ。
 積み上げたブラフ、踏み込み、帯電した拳。

 その全てが氷結幽鬼少女『ルリ』へと放たれる。
「一撃で倒しきれるとは思っていないが――」
 超高速の拳は雷を纏って放たれる。『牢獄』に雷鳴の如き轟音が響き渡る。
 彼の拳は氷に覆われた彼女の体を捉える。
 穿つは心臓。
 だが、拳の一撃は氷に覆われた胸にひび割れを走らせるだけであった。
「――だが、それでもこの拳に穿てぬものは無し!」

 煌めくユーベルコードの拳。
 それは覆われた氷すらも砕いて雷撃を到達させる。
 高電圧の一撃は、その心臓に強烈なショックを与え、氷結幽鬼少女『ルリ』に悲鳴を上げさせる。
 この一撃が猟兵たちの戦いの狼煙となる。
 どれだけ寂しさが心を凍りつかせるのだとしても。

 それでも世界をその氷でもって閉ざすわけにはいかない。
 彼女が嘗て友の未来という可能性を切り開かんとした献身は無駄に終わってしまった。残酷であると言わざるを得ない。
 だが、その哀しみ忘れた存在に世界を凍結させてはならぬのだというように、霧亥は拳を振り抜くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
私は人は個であるから孤独を感じるのだと思います。
それは誰かがいるからとか関係ない事ではないでしょうか。
誰かではなく私自身だからこそ私は寂しさも温もりも感じるのだと思います。
……きっと彼女はどうなってもその在り様であり続けるのが難しいのでしょう。

鳴神を投擲し彼女へ龍神の雷撃を。
申し訳ありませんが彼女からの反撃は龍王さんに受けて貰えるようお願いします。
体躯が大きいので私が受けるより些細だとは思いますが、直撃だけは避けるよう気を付けて。
そして誰かと協力する様子を彼女に見せるのは、良いのかどうかはわかりません。
孤独の定義も、いえそれに限らず「心」が感じるものは決まった形は無いのかもしれません。



 心臓を穿つつもりで放たれた拳の一撃を受けたUDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の身に覆った氷が砕けていく。
 理性無くとも、彼女ははっきりと理解していた。
 目の前に対峙する存在が、如何にして己を滅ぼさんとしているのかを。
 オブリビオンであるということ、猟兵であるということ。
 それが全てであるが、同時に彼女にとって許しがたいことであったのかもしれない。力の優劣をつけるというのであれば、己の方が圧倒的である。
 けれど、猟兵たちの戦いはいつだってつなぐ戦いである。
 一人が亀裂を走らせ、一人が楔を打ち込む。
 そうやって猟兵たちは一人では敵わぬ敵をこれまで打倒してきたのだ。

「なによ、なによ! わたしばっかりを!」
 のけものにする、とは言わない。
 自分ばかりが攻撃にさらされている。身に纏う氷は分厚く、彼女が邪教に寄るUDC実験によって得た力を発露させる。
 彼女の力は怪物そのものであった。

「人は個であるから孤独を感じる……」
 個であることに孤独を感じない氷結幽鬼少女『ルリ』にとっては相容れぬ考え方であろうが、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)はそう思うのだ。
 人間は何処まで行っても一人だ。
 けれど、己の外に個があることを知るのならば、それはきっと尊ぶべきものであるからだ。
 誰かがいるからとか関係ないことである。
 己を認識するために他者が居るのだとすれば、それはぬくもりを感じるものでもあるだろう。

 どうしようもない氷のように冷たい孤独を感じるからこそ、手のひらにある温もりを誰かに分け与えようと思える。
「……きっと貴方はどうなってもその在り様で在り続けるのが難しいのでしょう」
 彼女の手にした黒い三鈷剣が投げ放たれる。
 念動力でもって操作された一撃は、氷に覆われた氷結幽鬼少女『ルリ』の身に纏った氷へと突き立てられる。
 躱さなかった。躱そうとしなかったことに藍は気がついただろう。
 どれだけ理性を失ったとしても、『ルリ』はこの『牢獄』とも言うべき山積された、彼女の心を慰撫するために捧げられたぬいぐるみたちを傷つける可能性のある行動を取らない。

 ならばこそ、己の投擲を彼女は躱さなかった。
「――……孤独の定義も、いえそれに限らず『心』が感じrものは決まった形は無いのかも知れません」
 藍の瞳がユーベルコードに輝く。
 招来された嵐の王たる竜王の咆哮が轟く。
「――竜王招来(リュウオウショウライ)!」

 それは『牢獄』にありて雷を齎す力の権化である。
「そんなに誰かと居たいのなら! どうしてわたしのことを放っておいてはくれないの。わたしは、誰かがいると、どうしようもなく」
 孤独を感じるのだと。
 それは敵である猟兵に対しても同じなのであろう。猟兵が他という個と共に戦う。その光景を様々と見せつけられて、心の中に沈む澱が凍りついていくのを感じたのだ。

 藍は、それを善きことだとは思えなかったのかもしれない。
 いや、答えはでない。
 人は個である。だからこそ、他を知ることができる。思いやることができるのだ。
 寂しさを感じる心があるからこそ、温もりというものがある。
「それでも、あなたの『心』は今も孤独を感じているのでしょう。ならば、その哀しみこそを思い出すべきであったのです」
 放たれる竜王よりの雷撃が氷結幽鬼少女『ルリ』の身を覆った鎧の如き氷を打ち砕く。

『牢獄』を埋め尽くす雷撃の光。
 目もくらむような光を受けて尚、藍は目をそらすことをしなかっただろう。
 あれが寂しさの定理を抱える者の姿。
 誰かのためにと願った行いこそが、彼女の孤独を生み出したこと。
 それさえも忘れた魂を、その『心』の形を藍は感じ、そして、滅ぼすしかない怪物の痛みを知るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー
えっ、なんかかわいそうな感じでめっちゃ攻撃しづらいんですけど。
地味に職員さん悲しみそうな気もするんですけど。
倒さなきゃダメなヤツですか?
倒さなきゃダメなヤツですか…
おのれUDC。なんと惨い世界でしょう。

仕方ありません戦いますか。
まず、念動力で周囲の人形を集めて壁を作ります。
なんか光線撃ってくるらしいので、隙間のないように。
で、一瞬顔を出して【念動エクスプロージョン】で攻撃して、
反撃が来る前にぬいぐるみウォールに引っ込みます。
だるまさんが転んだ…いや、いないいないばぁですかね。
とにかく物陰からちくちくと削る方向で立ち回ります。

私はアナタの友達じゃありませんが…
まぁ、かわいそうだとは思ってますよ。



 雷撃によって砕けた氷が氷結幽鬼少女『ルリ』の体から剥がれ落ちていく。
 その氷は光を反射して『牢獄』の中に煌めく。
「どうして。どうして。どうして。こんなにわたしの心は凍えているの。寂しさが消えない」
 彼女の言葉は冷たい。
 吐息は全てを凍らせるかの如く。
 心のなかは寂しさだけが占めていた。どれだけ多くのオトモダチに囲まれても、どれだけ心を慰める言葉をもらっても、それでも氷結幽鬼少女『ルリ』の心に去来するのは寂しさばかりであった。

 友を失ったからか。
 それともすでにこの世界に己の居場所など皆無であるからか。
「みんながいるからわたしが寂しい思いをしないといけない。たった一人なら、なんてことなかったのに! あなたもわたしを」
 攻撃するのね、と言葉が紡がれた瞬間、エリー・マイヤー(被造物・f29376)はなんとも言えない気持ちになったことだろう。

 かわいそうだとも思った。
 攻撃しづらいとも。それに、彼女の世話をしていたUDC職員の女性すらも哀しみそうであるとエリーは思ったことだろう。
「倒さなきゃダメなヤツですか? 倒さなきゃダメなヤツですか……」
 エリーにとって、その幼気な姿をしたUDC怪物は攻撃することを躊躇わせるものであった。
 仕方がないと割り切ることができたのならば、どんなによかったことだろう。
 葛藤を抱えるエリーに対峙する氷結幽鬼少女『ルリ』の広がった髪の背後にある何かが蠢く。
 それが彼女が邪教のUDC実験によって融合した嘗てのUDCの名残、残滓であった。

 姿形がわからない。
 どちらかと言えば、エリーの手繰る念動力と同じたぐいであろう。
 氷結齎す怪光線がエリーの躊躇いを突いて放たれる。それをエリーは念動力を持って、『牢獄』に存在する数多のぬいぐるみたちでもって壁を作るのだ。
「――だめ! それはだめよ!」
 氷結幽鬼少女『ルリ』は、ぬいぐるみたちを攻撃できない。光線がねじ曲がり、『牢獄』の壁面を凍りつかせる。
 彼女にとってぬいぐるみたちはオトモダチであるのだ。それは、己の心を慰めてくれたものであるからに他ならない。
 ならば、何故UDC職員の女性にも同じことをしてやれなかったのか。

「なんと惨い世界でしょう。人の温もりを差し出されても、それを感じる心さえない。あなたが感じるのは人の温もりではなく、物言わぬもの、生命ではないものの形だけに寂しさを紛らわせるまどろみを見た」
 それが誤ちであるとエリーは知る。
 氷結幽鬼少女『ルリ』が叫ぶ。彼女にとって、それは真実であったことだろう。
 世界が残酷なことなど百も承知である。

 どれだけ生命を懸けても、得られないものもある。
 生命を懸けたところで、何の担保にもならぬのだ。だからこそ、エリーはぬいぐるみたちの壁から念動力でもって顔を出して、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「はいドカーン」
 念動エクスプロージョン(サイ・エクスプロージョン)は、エリーの視線がスイッチとなった破裂する念動力でもって氷結幽鬼少女『ルリ』の体を吹き飛ばす。
 言ってしまえば、だるまさんが転んだ……いや、いないいないばあである。

 これは友達がする遊びではない。
 戦いだ。わかっている。
「なんでこんなことばっかりするの! きらいよ、きらい! 猟兵なんて大嫌い! 私に意地悪ばかりするから!」
 彼女の叫びは、そのまま世界の否定そのもの。
 己の孤独を癒やすためだけに世界に氷結に寄る停滞を齎す。それをエリーは他者とのつながりを否定するものだと知る。

「私はアナタの友達じゃありませんが……」
 炸裂する念動力が氷結幽鬼少女『ルリ』の体を再び吹き飛ばす。ぬいぐるみたちををもって壁と為し、エリーは安全圏から彼女を削り落としていく。
 彼女が失ったものを思えば、エリーの心に去来するのは憐憫の情であったことだろう。
 それで何かが救われるかと問われれば答えは否である。

 けれど、それでも。
「まぁ、かわいそうだとは思っていますよ」
 救われることはない。
 世界は残酷で、救われぬ者ばかりで溢れている。それを当然だと言うことは簡単なことだ。
 せめて、とエリーは己の最大の念動力でもって『ルリ』を、嘗て彼女が抱いた誰かのためという思いを穢すことのないようにと、吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて
司るは氷雪属性・厄災『大雪』

陰海月は…そのまま休ませましょう。霹靂も枕になってますし。

どうしようもないこと、というのは往々にしてあるものですが。それで世界を壊すのはダメですよ。
氷雪に親しき者同士、戦いましょう。

【四更・水】にて霧を。あなたの視界は遮りますが、私からはよく見える。
ですから、そのまま射かけますね。

親愛は抱かず。『我ら』とあなたは友ではない。明確に敵ですから。
陰海月を休ませたままにしたのも、陰海月は親愛を抱いてしまうからなんですよね。あの子は優しいので。

そう、だからこそ、陰海月が眠っている間に終わらせます。


陰海月「Zzz」つかれた
霹靂「…クエ」翼を布団に



『静かなる者』は念動力の破裂により『牢獄』に叩きつけられたUDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の姿を見る。
 幼気な姿。
 少女の姿にズタボロの患者着。その破れた先に見えるのは傷跡ではなく、身に宿したUDCの力の発露である。
 氷結の力。
 それが彼女の中にある何か。UDC実験の成れの果て。
「『影海月』は……そのまま休ませましょう。『霹靂』も枕になってますし」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その四悪霊の影の中で『影海月』と『霹靂』が重なるようにして眠っている。

 それは彼等にとって僥倖であったことだろう。
「わたしの寂しさが消えない。どうしても消えない。凍えるような寒さをあなたたちは知っているの?」
 膨れ上がっていく氷結幽鬼少女『ルリ』の背後にある気配。
 彼女の身に宿したUDCの力の源らしき影が発する光線の一撃が『疾き者』の頬をかすめる。

 彼女の言葉は何処まで言っても孤独を感じさせるものであった。
 どうしようもないことの連続によって積み重なった雪のように、一度崩れてしまえば、それは雪崩となってあらゆるものを飲み込む孤独であることを知る。
「どうしようもないこと、というのは往々にしてあるものですが。それで世界を壊すのはダメですよ」
『静かなる者』は告げる。
 どうあがいても、猟兵とオブリビオンである。
 相容れぬ存在である以上に、氷結幽鬼少女『ルリ』の言葉は受け入れてはならぬものであると知る。
『影海月』が休んでいるのを僥倖だと言ったのは、彼であれば彼女の在り方に市内を抱いたであろうから。

 例え敵同士であっても、その優しさをもって理解を示すだろう。
 そうなってしまえば、光線は己に手を差し伸べたものにこそ放たれてしまう。そうなった時傷つくのは『陰海月』であり『ルリ』であろう。
「氷雪に親しき者同士、戦いましょう」
「わたしはあなたのことなんか嫌い。嫌い、嫌いよ!」
 放たれる光線を『静かなる者』は、瞳に輝くユーベルコードより生まれる濃霧でもって己の姿を遮る。

 濃霧の中に走るは、己の動きを模倣する濃霧の人型。
 それらが走る。
 親愛を抱いてはならない。抱くことはない。
「『我等』とあなたは友ではない。明確に敵ですから」
 拒絶の言葉。
 どうあっても交わることのない存在。オブリビオンと猟兵が交わる時、そこにあるのは滅ぼすか、滅ぼされるかのどちらかでしかないことは言うまでもない。

 四更・水(シコウ・スイ)によって生み出された濃霧の人型を次々と光線が貫いていく。
「敵なのね、わかっているわ。わたしはどうあっても孤独を感じてしまう。猟兵がいるから。猟兵のせいで、わたしは孤独を感じてしまうの。だから消えてほしい。わたしの目の前からも、ぜんぶ、ぜんぶ!」
 癇癪を起こしたように光線が『牢獄』に走る。
 その姿を哀れと思うことはない。哀れみは必ずや、親愛の念に代わるだろう。だからこそ、『静かなる者』は己の長弓を引く。

 優しき人が傷つかぬように。
 どうしようもないことが目の前に来たのならば、それを避けて歩むことを咎める者などいない。
 だからこそ、その矢は濃霧の中を走る。
 氷結幽鬼少女『ルリ』には見えぬものであったが、『静かなる者』にとってはよく見通す事のできるものであったがゆえに。
 憐憫は捨てる。
 世界を脅かす者を穿つ矢の一撃は、血の涙を流し続ける『ルリ』の身に吸い込まれるようにして穿たれ、身寄りあふれる氷結でもって寂しさを寂しさのまま砕くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・リデル
どうして貴女が世界に在ってはならないのか?
それは貴女という存在が世界を滅ぼすからですよ。
……残念ですが、貴女という存在を救う術は私にはありません。
ですが、私が存在する限り、貴女のことは覚えておきましょう。

『青い光の衣』を発動。
敵WIZUCに「いいえ、違います。ですが、同情はしていますよ」
とナニかからの白い光線を敢えて受けて自身の力に変換します。

それではさようなら。

変換した力をオーラセイバーに込めて斬り裂きます。



 矢の一撃がUDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の身を穿つ。
 傷口からあふれるは氷結の塊。
 鮮血ではなく、青白い何かは、身に宿したUDCの産物であったことだろう。彼女にとって、それは重要なことではなかった。
 身を貫く痛みなど、彼女の心の寂しさに比べれば意味のないものであった。
 幼気な少女の姿のまま、彼女の内面は怪物へと変わってしまっているのだから。
「わたしは、どうして此処にいてはいけないの。どうしてわたしは眠らねばならないの。眠っているだけでいいのなら、他の誰も必要ないのに、どうしてわたしは、こんなにも寂しさを抱えていなければならないの」

 彼女にとって寂しさの定理は、他者の存在である。
 他者があるから寂しさを感じてしまう。差し伸べられた温もりの意味すら理解できない彼女は、ぬいぐるみたちのように物言わぬ生命ではな何かにこそ心を慰められる。
 それがどんなに悲しいことであるかを猟兵たちは知る。
「どうして貴女が世界に在ってはならないのか?」
 簡単なことだとステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は言う。
「それは貴女という存在が世界を滅ぼすからですよ」
 オブリビオンは存在するだけで世界を滅ぼす。
 過去が滲み出て今という現在を侵食する。未来という可能性は潰え、世界はそれ以上進むことができなくなってしまう。

 過去の化身であるUDC怪物は、須らくそうである。
 どれだけ憐憫の情を誘うのだとしても、ステラは残念に思う以上の感情を彼女に抱くことはなかった。
「……残念ですが、貴女という存在を救うすべは私にはありません」
 ユーベルコードが輝く。
 救うに値するが、救う術はなく。
 それ以上を求めることはできない。全ての人が幸福でありますようにと願う心は尊ぶべきであるが、それはきっと嘘という棘を生み出すものである。

 他者を傷つける棘は摘み取らねばならぬ。
 痛みに流れる血と涙は逆巻くことがないように。
「ですが、私が存在する限り、貴女のことは覚えておきましょう」
「そんなの何の意味もないわ。あなたがおぼえていたから、わたしが寂しさを捨てることができないのと同じように」
 癒えることのない言葉は、平行線のままに。
 交わることのない線は互いを滅ぼすことでしか、己の存在を証明できない。

 放たれる光線をステラは真っ向から受け止める。
「――覆え」
 青い光の衣(ブルー・アーマー)を身に纏ったステラの眼前に張り巡らされた障壁が光線の一撃を吸い込む。
 彼女のユーベルコードの前ではあらゆる攻撃が無意味である。
 次々と光線が走る。その度にステラに届くことのない光線は霧消して吸い込まれていくのだ。
「いいえ、違います。ですが、同情はしていますよ」
 放たれる光線を受けて、手にしたオーラセイバーの光が膨れ上がっていく。
 彼女のユーベルコードは敵からの攻撃を受け止め吸収することによって力に変えていく。

 哀しみの連鎖は断ち切らねばならぬ。
 憎悪のそれと同じように。
 断ち切るしかないのだ。哀しみの傷跡が時間によって癒えるように、触れれば痛みに震えるように。
「それでは、さようなら」

 別離の一撃が放たれる。
 極大に膨れ上がったオーラセイバーの刀身が氷結幽鬼少女『ルリ』の体を袈裟懸けに切り裂く。
 噴出するUDC怪物の血潮は氷結の塊。
 血の涙を流し続けながら彼女は、己の抱えた寂しさを手放さない。
 手放してしまえばいいのに、手放さないのは、彼女の心が嘗て在りし、誰かのためにという思いが一欠片残る故――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
職員の手伝いをした際に覗いた資料には、かつて実験の被験者だった――とあったな。
深くまでは解らんが、“友達”に執着して『寂しい』……。こういった実験体の境遇は大体悲惨なものだからな。同情はするが、こうなった以上戦うのは仕方がないか。

グレイプニルを鋼糸状態にして【ロープワーク】。人形をいくつか巻き上げて時間稼ぎ。まあ、すぐ落ちるが。
戦場にUCを展開。黒い枯れ木のような【呪詛】の奔流を広げて『ルリ』を攻撃しよう。
あちらも範囲攻撃か。――ジェライラ、頼むよ。shelaⅣの自動防御である程度防いでもらい――、我が親友は気紛れだな。漏れたものは鎖で防ぐ。
その寂しさに意味がないことはない、と思うがね。



 邪教に寄るUDC移植実験。
 それがマホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)の知る氷結幽鬼少女『ルリ』のたどった末路である。
 選択の余地など何処にもなかったのだろう。
 幼気な少女が選択することができたことは幸いであったのかもしれない。己のためか誰がためか。
 彼女は誰がためにと行動した。
 その結果がこれである。友のために己の身をとしたのだ。それがただの遅滞でしか無かったことは言うまでもない。

 己の体を使っての実験が成功しても、失敗しても。
 どちらにせよ、彼女が守りたいと願った友は生命を落としたことだろう。それが絶望の始まりであり、寂しさの始まりであったというのならば、あまりにも酷であった。
「深くまでは解らんが、“友達”に執着して『寂しい』……」
 こうした実験体の境遇は大抵悲惨なものである。
 同情もする。
 憐憫の情も湧いてくる。

「きらいよ、きらい! 猟兵も、みんな、みんな嫌いよ!」
 慟哭とともに放たれる雹の雨。
 それは『牢獄』にありて猟兵たちを迎え撃つ拒絶の咆哮そのものであった。
 グレイプニルの鎖が『牢獄』にありし、ぬいぐるみたちを持ち上げる。それを見た瞬間、氷結幽鬼少女『ルリ』は慟哭止め、息を呑む。
 傷つけられない。
 目の前にあるぬいぐるみたちを彼女は傷つけることができない。 
 差し出された温もりのある手よりも、体温を感じさせないぬいぐるみたちを選んだ彼女にとって、それだけが心を慰めるものであったから。

 マホルニアは知っている。
 彼女が欲しているものを。
 けれど、仕方ないとも割り切ってもいる。戦わねばならない。猟兵であるがゆえに、オブリビオンとは相容れない。
 滅ぼし、滅ぼされる関係でしかない。
「――仕方がないか」
 グレイプニルの鎖よりぬいぐるみたちが落ちる。
 僅かな時間稼ぎにしか過ぎなかった。
 けれど、それで彼女には十分であった。連結させた知覚端子がネットワークを編み上げ、戦場に黒い枯れ木のような呪詛の奔流が広がっていく。

「根を張れ、逆しまの樹(ルート)よ――」
 マホルニアのユーベルコードに輝く瞳は見ただろう。呪詛の奔流が氷結幽鬼少女『ルリ』を飲み込んでいくのを。
 だが、その呪詛の中からも慟哭は響き、雹の雨が『牢獄』に降り注ぐ。
「いやよ、どうして、わたしだけがこんなに寂しさを持っていなければならないの。どこにもいない。世界中のどこにも“あの子”がいない寂しさは、どうして埋めればいいの!」
 失ってしまった生命は戻らない。
 時が逆巻くことはないように、決して戻らない。

「ジェライラ、頼むよ」
 自動病魚の力場障壁を生み出し織物が、呪詛をもって呪詛を阻む。
 マホルニアの友が防ぐ障壁を突き抜けてくる雹を鎖で撃ち落としながら、彼女は呪詛の中で血の涙を流し続ける少女を見る。
 彼女の抱えた寂しさに意味を見出すことはできるだろう。
 けれど、彼女は寂しさをこそ捨てたいと思うのだろう。意味のない悲しさ。理解できない悲しさ。
 あらゆるものを理解できぬ孤独に震える小さな体が流す涙だけが血の色をしていた。

「その寂しさに意味がないことはない、と思うがね」
 マホルニアは告げる。
 放たれる呪詛の奔流が、氷結幽鬼少女『ルリ』の体を蝕む。
 せめて、彼女の哀しみの意味。
 それをマホルニアは彼女という存在に刻み込むだろう。かつて友を思い、誰かのためにこそ己の身をなげうつ献身。
 それが報われなかったという哀しみこそ、彼女の心が抱える寂しさの定理。
 ゆえに、マホルニアはその寂しさがせめて世界を滅ぼさぬようにと、堰き止めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

羽々・一姫
どうして「あなたが世界に在ってはならない」のか。
それは、時間は巻き戻らない。巻き戻ってはいけないからよ。

あなたの受けた不条理も、凍えるような孤独も、なかったことにはできないの。
そしてあなたは『氷結幽鬼少女』として目覚めてしまった。

世界に在ってはならないものになってしまった。

あなたのすぐ側にあった、とても暖かい心に気づくことができれば、
違う世界が見られたかもしれないけれど。

ま、仮定の話をしてもしかたないわね。

あなたの『今』に同情はできるけれど、
それは他の人の『未来』を奪っていい理由にはならないわ。

だから……わたしにできる最適な『癒やし』を与えてあげましょう。

ゆっくりと近づいて、鎌を突き立てます。



 もしも、時が逆巻くことがあったのならば、彼女はどうしただろうか。 
『ルリ』と親しく呼ぶ友の言葉が聞こえる。
 呪詛の奔流に飲み込まれながら、UDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』は思った。もしも、時がまためぐるのであっても、彼女はあのときの選択を間違いだとは思わなかったことだろう。
 己の身を犠牲にしても救いたいと思った友がいた。
 それはきっと彼女にとって、彼女の生に意味在るものを齎すものであったから。
 けれど、その献身が報われぬことを彼女は知るべきであったのだ。

「どうして世界はこんなにもわたしをくるしめるの。寂しさが、わたしの心を埋め尽くしていく。それなのに、世界はわたしを在ってはならないという」
 その証左が猟兵である。
 猟兵とオブリビオンは滅ぼし、滅ぼされる間柄でしか無い。
 世界を滅ぼす存在を打倒するのが猟兵であるがゆえに、羽々・一姫(Gatekeeper of Tartarus・f27342)は告げる。
「どうして『あなたが世界に在ってはならない』のか。それは、時間は巻き戻らない。巻き戻ってはいけないからよ」
 告げる言葉はどうしようもなく。
 不条理は人の心を痛めつけ、打ち据える。
 むごたらしさを忌避するのが人であるのならば、そのむごたらしさを齎すのもまた人である。

「あなたの受けた不条理も、凍えるような孤独も、なかったことにはできないの」
 そして、目の前の少女は『氷結幽鬼少女』として目覚めてしまった。
 まどろみの中にいたのならば、まだよかったのかもしれない。
 けれど、世界に『在ってはならない』ものになってしまったのならば。
「わたしは、この寂しさはなかったことにしたいの。わたしが知らなければよかったものすべてを消しさってしまいたいのよ!」
 慟哭は咆哮に代わる。
 氷結纏う少女は、狂乱の叫びとともに一姫に襲いかかるだろう。

 それを一姫は見やる。
「あなたの直ぐ側にあった、とても暖かい心に気づくことができれば、違う世界が見られたかも知れないけれど」
 仮定の話でしか無い。
 仕方のないことだと一姫は息を吐き出す。
 その瞳は真紅の瞳。
 血統覚醒した肉体は、すでにヴァンパイアのものである。放たれる氷結幽鬼少女『ルリ』の氷結纏う拳が一姫を捉える。

 ひしゃげる頭蓋。
 けれど、瞬時にその頭蓋は再生される。
 痛みはある。けれど、それを勝る哀しみが去来する。
 どれだけの不条理、理不尽を受ければ、その拳は世界を凍結させるほどの哀しみを抱くことができるのだろうか。
「あなたの『今』には同情できるけれど」
 一姫は思い出す。
 UDC職員の女性の顔を。
 彼女の心は擦り切れていた。それはただのUDC怪物の傍に居たからではない。『ルリ』の心に寄り添うからこそ、擦り切れてしまったのだ。
 思えば、思うほどに。
 その温もりでもって相対するがゆえに、世界を凍らせるほどの哀しみに温もりすら凍りついてしまったのだ。

「それは他の人の『未来』を奪っていい理由にはならないわ」
 一姫は大鎌を手にする。
 悲しいことばかりが人生ではないと言えたのなら、どんなによかったことだろうか。
『今』ある『ルリ』はそうではない。
 彼女の悲しさを癒やすことができる事柄は唯一しかない。だからこそ、一姫はゆっくりと近づく。

 己を打倒せんと迫る『ルリ』の拳を身に受け、瞬時に再生しながら、その手にした唯一を振るう。
「わたしにできる最適な『癒やし』を与えてあげましょう」
 世界を凍らせる哀しみを断ち切ること。 
 それはすなわちUDC怪物としての生を終わらすことだけである。放たれた大鎌の一撃は、その哀しみを覆う鎧たる氷を貫き、少女の胸に突き立てられるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒江・式子
連携アドリブ歓迎

お友達ですか
そうですね
こんな状況でなければ
私達、結構いい話し相手になれたと思うんです
そう思う程に
貴女にシンパシーを感じています

ぬいぐるみに紛れて影の茨を伸ばし
放たれる光線を遮るように茨を噴き上げます
先程、沢山の糧を頂きましたので
普段なら受け止めるのが精一杯の所を
そのまま光線さえも飲み込みながら
彼女の方へまっしぐらに
成長した茨が伸びていくでしょう
少しでも触れれば最後
髪も体も後ろのナニかも全て絡め取り
何も感じられなくなるまで喰い尽くされていきます

誰も彼もが喪失の痛みを乗り越えられるワケではありません
まして貴女のやろうとしている事では
きっと貴女は満たされない
それだけは分かります



 突き立てられた刃の一撃が胸を穿つ。
 痛みに血の涙は流れない。氷結幽鬼少女『ルリ』の流す血の涙は、どうしようもないほどの哀しみに身を引き裂かれるからである。
 癒やすことのできない哀しみ。
 それが彼女の最早見えぬ瞳から血の涙を流し続ける。
「さびしい……さびしい……オトモダチが、ほしい……わたしの心を慰めてくれる、オトモダチ……」
 ゆらりと未だに立つUDC怪物の姿に黒江・式子(それでも誰が為に・f35024)は共感していたことだろう。

 こんな状況でなければ、であるが。
「お友達ですか。そうですね……こんな状況でなければ、私達、結構いい話し相手になれたと思うんです」
 式子はそう思ってしまう。
 けれど、それは親愛の情であった。
 どうしようもなく抱く哀しみを溶かすことはできない。氷結幽鬼少女『ルリ』は、その温もりを差し出されても、手を取ることをしない。
 彼女に必要なのは生命ではないぬいぐるみたちの存在だけである。

 生命は奪われ、失われてしまうものであると彼女は理解するからこそ、生命ではない何かでもって己の心を慰めるしかない。
 それが彼女の心を慰撫するたった一つの方策。
 ゆえにあのUDC職員の女性は、心を擦り切れさせてしまったのだろう。今の式子と同じように、その冷たい心に寄り添おうとして、己の心さえも凍てつくものへと変えてしまった。
 それを式子は知っている。
「なら、いなくなって。わたしの目の前から。誰かがいると、わたしはどうしようもなく寂しくなってしまうの」
 だから、消えてほしいというように彼女の背後より放たれる光線。

 それを式子は『牢獄』に山積したぬいぐるみたちの影に紛れた走る。
 彼女のUDC『翳喰らい』の茨が放たれる。
「これが精一杯です」
 だが、同時に式子の『翳喰らい』には力が満ちている。それは先程の戦いで持って『暗闇の追跡者』たちから得た糧があるからだ。
 数を誇る彼等は、全て『翳喰らい』の糧となった。謂わば、13番目の贈物(サイゴノオクリモノ)。

 あらゆるエネルギーを喰らうUDC。
 その茨が『牢獄』に這う。あらゆる壁面を、天井を、床を。
 成長しながら氷結幽鬼少女『ルリ』を追い込んでいくのだ。普段ならば光線の一撃を受け止めるのがやっとであろう。
 けれど、すでに糧を得た『翳喰らい』の茨は、光線すらも飲み込んでいく。
「どうして、どうして、消えてくれないの! わたしは寂しくて、寂しくて、どうにかなってしまいそうだというのに!」
「その寂しさを消すことはできないのです」
 伸びる茨が氷結幽鬼少女『ルリ』に至る。その背後にある何か、UDCの発露たる力すらも絡め取っていく。

「誰も彼もが喪失の痛みを乗り越えられるワケではありません」
 式子は知っている。
 喪う痛みも。失ってしまった誰かの心が虚のように闇を抱えるのも。
 己が誰かのために戦うのは、そうした誰かを救うためであるからこそ。だからこそ、式子は理解できる。
『ルリ』がかつて誰かのために己の生命を捧げたように。
 誰かのためにという思いは尊ぶべきものである。けれど、一度寂しさにまみれてしまえば、それは別の何かへと様変わりしてしまう。

「まして貴女のやろうとしていることでは、きっと貴女は満たされない。それだけはわかります」
『牢獄』を包み込む茨が、氷結幽鬼少女『ルリ』の背後に潜むUDCのちからの発露を奪い去っていく。
 それでも哀しみまで奪うことはできないだろう。
 満たされぬものを満たそうとする行いこそが、他者を傷つける。
 他者によって哀しみが膨れ上がるというのならばこそ、満たされぬ杯を満たされぬままで良いと受け入れることもまた必要なのである。

 式子はそれを知るからこそ、満たされぬ哀しみ、癒やされぬ悲しさをこそ思い。
 世界を凍結させるほどの哀しみを、己の『翳喰らい』が喰らい尽くすことを望むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…んー…寂しさを感じなくなる方法はあったと思うよ……
…オブリビオンになってしまったからには仕方ないとは言え…
…彼女と本当に友達になる気があればあるいは…ね…言っても詮無き事ではあるけど…

…ちなみに私はオトモダチにはなれないので悪しからず……と…
…あえてぬいぐるみを盾にはせず正面からやりあおうか…
…ルリの攻撃を術式組紐【アリアドネ】で作った魔術結界で防ぎながら
重奏強化術式【エコー】を重ね掛け…
…多重強化した【尽きる事なき暴食の大火】をルリへとぶつけるとしよう…
…この世界はもう寂しさしか無いと思うから…骸の海に還った方が良いよ…



 どれだけ哀しみが体を覆うのだとしても。
 それでも氷結幽鬼少女『ルリ』は、己の力、その身に宿したUDCの力を発露させることを躊躇わなかった。
 世界を凍結せしめるほどの悲しさ。
 埋まらぬ空虚。
 戻らぬ生命。
 それらのすべてを持ってして、彼女は世界を破滅に導かんとする。それも全て、己以外の他を排除し、一度得た孤独という悲しさを手放すためである。
「わたしは、わたし一人がいい。もう誰かといるのは嫌なの。生命は冷たくあってほしい。温もりなんて覚えてしまうから、冷たさを感じてしまう」
 だから、滅びればいい。

 その願いは、彼女の背後にある何かより発せられる光線で持って『牢獄』の壁面を貫いていく。
「……んー……寂しさを感じなくなる方法は在ったと思うよ……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、山積したぬいぐるみたちを盾にすることなく真っ向から飛び込む。
 放たれる光線を術式組紐『アリアドネ』でもって作り上げた魔術結界で防ぐ。
 けれど、その光線の威力は凄まじいものであった。
 彼女の心にある寂しさを煮詰めたかのような力は、光線の威力と成って発露するだろう。

 一撃一撃が重い。
「……オブリビオンになってしまったからには仕方ないとは言え……彼女と本当に友達になる気があればあるいは……ね」
 メンカルは女性職員のことを思う。 
 彼女が擦り切れたのは、UDC怪物の傍にいたからではない。
『ルリ』のことを思い、彼女の嘗ての境遇を知るからこそ、理解しようとしたのだ。その寂しさを濯げたのならばと思ったからであろう。
 打算でもなんでもない。
 ただの親切心。哀しみにくれる少女の心を少しでも慰撫しようとした結果、その温もりを拒絶する氷の如き心によって凍てつき、摩耗したのだ。
「……言っても詮無きことではあるけれど……」

「そんなことばかり言って! わたしは、だれもいらない! もういらない! オトモダチだけが居れば、それだけいいの!」
 慟哭と共に光線が走る。
 彼女にとって差し伸べられた温もり在る手は再び喪う恐れそのものであったことだろう。
 だからこそ、彼女の心は凍てつき続ける。
「私も同感だよ……オトモダチになるつもりなんてないから……」
 悪しからず、とメンカルhは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。 
 ただ闇雲に攻撃を防ぎ続けていたわけではない。多重強化術式『エコー』を重ねかけ、展開される魔法陣。
 それは如何なる存在も燃料にする白色の炎。

 ――尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)。

「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔――……此の世界はもう寂しさしか無いと思うから……」
 多重強化された炎は膨れ上がっていく。
『ルリ』の心にある澱の如き寂しさを溶かすことはできないであろう。
 この炎ができることは、燃やし尽くすことだけである。
 そうすることが、彼女の救いであったことだろう。差し伸べられた手を振り払い、孤独の中にこそ己の癒やしを求めた彼女に、この世界には居場所がない。

 彼女の居場所はそう……。
「骸の海に還った方が良いよ……」
 それ以外に彼女の孤独が癒えることはないだろう。全てが過去になり、全てが骸の海に流れ着くというのであれば、其処にこそ彼女の寂しさの定理の否定があるはずであったから。

 白色の炎が膨れ上がり、『牢獄』の中で炸裂する。
 この『牢獄』を抜け、彼女の心が溶けて消えるように。その全てを喰らう炎は、氷結幽鬼少女『ルリ』の身に覆った氷を溶かし尽くすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
大丈夫か、相棒。さっきの奉納の神楽舞で大分消耗したみたいだが?
「……まだ行けます。」
上等、んじゃルリの嬢ちゃんを止めにいきますか。

ルリの嬢ちゃんが氷で覆った姿で速く動く物を無差別攻撃するユーベルコードを使ったら逆にそれを利用してやるぜ。
式神【ヤタ】を放って超スピードで飛ばして俺達の近くまで誘導するぜ。
そしてルリの嬢ちゃんが此方の間合いに入った瞬間を見切って相棒の霊力を込めた薙刀で、
「…破邪・鬼心斬り、長い孤独で歪んだ彼女の想いを斬り祓います。」

嬢ちゃんの孤独がどれ程の物か、俺達には想像すりゃできねぇが。
「…せめてあの子の心だけでも救われれば。」


【技能・式神使い、見切り、浄化】
【アドリブ歓迎】



 吐き出す息が白い。
 胸が痛むほどの疲労は、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)の相棒である桜が限界までユーベルコードの代償たる神楽舞を奉納し続けたからであろう。
『大丈夫化、相棒。さっきの奉納の神楽舞で大分消耗したみたいだが?』
 案じる鬼面のヒーローマスクである凶津の言葉に桜はかぶりを振った。
「……まだ行けます」
 身は疲弊しきっている。
 手は重く、足取りはまるで足かせを付けられているかのように引きずっている。
 けれど、心に燃える正義の心が桜の中には未だくすぶり続けている。

 ヒーローマスクはただ一人では戦えぬ存在である。
 必ず相棒たる存在がいなければ、オブリビオンに打倒することは出来ない。しかし、肉体と成る者と心を通わせなければ、それも叶わない。
 だからこそ、凶津は頷くのだ。
 己の中にも彼女と同じように正義の心が燃え続けているのだから。
『上等、んじゃ『ルリ』の嬢ちゃんを止めにいきますか」
 二人の目の前にはぬいぐるみたちが山積した『牢獄』。そこに猟兵たちの攻撃によって疲弊したUDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の姿があった。

「きらい、きらい! みんなして! みんなして! わたしを追いやろうとする!」
 その慟哭とともに再び『ルリ』の体を覆う哀しみという名の氷。
 鎧のように、そして、同時に巨人のように膨れ上がっていく氷の体躯。
 それは凄まじい力となって、狂乱するように叫ぶ氷結幽鬼少女『ルリ』の孤独を発露させるように振り下ろされるのだ。

 その一撃を凶津たちは式神『ヤタ』を放ち、気を引かせた上で誘導する。
 どれだけ強大な力を得たとしても、高速で動くものを狙って攻撃する狂乱の徒となった『ルリ』を引きつけることなど容易であったのだ。
『引きつけるぜ、相棒ッ! 間合いに入った瞬間だッ!』
 凶津が叫ぶ。
 タイミングをあわせなければならない。相棒である桜の体力を考えれば、一撃が限度であろう。
 それ以上は桜の体が保たない。
 彼女を喪うことは体を喪うこと以上を意味するからこそ、凶津はたった一撃に己たちの全てを掛けるのだ。

 これまで他の猟兵達が紡いできた戦い。
 それを無駄にすることなどできない。一撃しか放てぬというのならば、全てをかける。燃える正義の心が、孤独に凍てつく心に負けてなるものかと立ち上がるのだ。
「……長い孤独で歪んだ彼女の想いを斬り祓います」
 桜の瞳がユーベルコードに輝く。
 手にした霊力を込めた薙刀が震える。もう体力はとっくに限界であろう。踏ん張る足も震えている。

 それでも退くことはしない。
 凶津と桜の想いは一つであった。
『ああ、それでこそ、俺の相棒ッ! いくぜっ!』
 重なる二つの思いが、凍てつく心を溶かす刃となる。
 あの『ルリ』の孤独がどれほどのものであるのかを、凶津たちは想像すらできない。例え、できたとしても誤りであったかもしれない。
 けれど、他者を思うことができるからこそ、人はこれまでの長い歴史を歩んでこれたのだ。
 誰のことも思わぬ生命に、連綿たる歴史は紡げない。
 正義の心も、悪しき心も。
 全てが存在するからこそ、紡がれるものがある。

 ゆえに桜もまた願うのだ。
「……せめて、あの子の心だけでも救われれば」
 願わずにはいられない。自分たちの勝手な願いであったのだとしても。
 それでも、破邪・鬼心斬り(ハジャ・キシンギリ)は、『ルリ』の心を凍てつかせ続けるUDCの歪んだ邪神、その怪異をこそ切り裂く。
 振り下ろされる氷の拳を切り裂く霊力込められし薙刀の刃。

 それは一閃のもとに轟音を響かせ、巨人じみたUDCの影をこそ切り裂くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
UDC怪物ではあるけど
オブビリオンか否か分からない
シャーマンズゴーストの様に共存できれば
良かったんだけどそうはいかないみたいだね

僕は不慮の事故だったけれど
完全に他人事とは思えないから
友達になれそうにないのはとても残念だよ

凍てついていく白い光線
相性があまりよく無かったね
この体は凍ったくらいでは問題ないよ
耐性があるからね

まあ、凍ったまま魔力で無理やり
体を動かせるってだけだけど
邪神の涙で慣れているからね

白い光線は気にせずそのまま近付いて行こう
あまり手荒な事はしたくないからね
騙し討ちみたいで気は引けるけど
孤独を感じてるみたいだから
職員さんみたいに尽力してくれる人がいる事を伝え
大人しく眠って貰えるように話しかけようか
まあ、無理そうだろうから隙を見て
ワイヤーを使う事になるんだろうけどね

それはあまり美しくありませんの
もしルリ様が受け入れるのでしたら
球体関節のお人形に変えて差し上げましょう
これまで見守ってくれたたくさんの
人形やぬいぐるみと共に優しい微睡を差し上げますの

孤独を感じぬよう永遠に大切にしますの



 氷の巨人の如き姿となったUDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の鎧が一撃のもとに切り裂かれ、砕けていく。
 彼女の流す血の涙は痛みによってではなく、孤独によって流されるものであった。
 すでに体内に流れる血潮は赤ではない。
 あるのはUDCのちからの発露である凍結した何かであった。
「寂しい……寂しい……どうして、こんなにわたしは寂しさばかりを感じているの」
 彼女のつぶやきは慟哭そのものであった。
 救われぬのを悲しむのではない。
 決して戻らぬ何かを思って、彼女は血の涙を流し続ける。

 その姿に佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、彼女がオブリビオンか否かを判別できなくなっていた。
 猟兵としての己が滅ぼさなければならないと叫ぶ。
 同時に己の中にある人して、そして同時に嘗て己もまた同じであったことを思って葛藤するのだ。
「共存できればよかったんだけれど、そうはいかないみたいだね」
 自分のことは不慮の事故であった。
 邪神と融合してしまった体。性別すらも反転した体。精神と肉体が乖離するかのような感覚は、今もなお覚えている。
 だからこそ、他人事とは思えない。
 そして、友だちになれそうにないのが、残念に思えてならない。

「いらない! そんなのいらない! 誰かがいるから私は孤独を感じてしまうのに!」
 放たれる光線を晶は受け止める。
 身を凍てつかせる光線は、晶の体を凍りつかせるだろう。けれど、もとより晶の体は邪神と融合したものである。凍ったくらいでは問題にはならない。
 凍てつくような停滞をすでに、この身は権能として携えている。
 宵闇の頃が揺れる。
 万物に停滞を齎す神気が、全てを凍てつかせる寂しさの定理ごと無理矢理、その肉体を動かすのだ。
「無理矢理動かしているだけだけれど……慣れているからね」
 慣れたいわけではないけれど。

 それでも晶は近づく。
 近づくなというように放たれる光線の一撃を受けても、その頬を凍結させられても、それでもなお晶は氷結幽鬼少女『ルリ』へと近づく。
「いやよ、来ないでよ!」
「あまり手荒なことはしたくないから……」
 それは同情であったのかもしれない。憐憫の情であったのかもしれない。そして、親愛の情であったのかもしれない。
 そのどれもが形容しがたき感情であった。
「孤独を感じているんだね。でもね」
 晶は言う。彼女には伝わらないことであったかもしれない。

 UDC職員の彼女が、どんな思いで『ルリ』と相対していたのかを思う。
 彼女はUDC怪物としてではなく、『ルリ』という少女として世話をしていたからこそ、心が摩耗していったのだ。
 それを彼女は計画通りだと思っていた。
 人のぬくもりがあるからこそ、『ルリ』はそれを拒絶し、孤独を感じる。けれど、女性職員は孤独を溶かすためにこそ温もりをもたらそうとした。
 その相違こそが哀しみの定理。証明された命題でもある。
「眠ってはもらえないかな……あの人だって、それを望んでいる。君が滅びていいだなんて思っていない……でも」
 それでも晶は願ってしまうだろう。

 優しさというのは、あまりにも美しくないと身のうちにある邪神が言う。
「あなたが受け入れてくださるのでしたら、お人形に変えて差し上げましょう。これまで見守ってくれたたくさんの人形やぬいぐるみと共に優しい微睡を差し上げますの」
 そうすれば、孤独を感じぬように永遠に大切にするのだと。
 邪神の言葉は確かにUDC怪物、氷結幽鬼少女『ルリ』の孤独を癒やすものであったことだろう。
 けれど。

「――いや、よ。いや、もう孤独は感じたくないのに、それでも」
 彼女の背後にある何かが膨れ上がっていく。
 身に融合したUDCが暴れ狂うようにもがくのだ。『ルリ』という『牢獄』に封ぜられたままの永遠など御免こうむるとばかりに、周囲の人形やぬいぐるみを弾き飛ばしながら晶に迫る。
 血の涙は乾ききっていた。
 けれど、そこから流れていたのは最早、血の涙ではない。
 あるのは煌めく透明な涙。
 少女の涙そのものであった。

 ゆえに晶の瞳が輝く。超えねばならぬものがある。どれだけの孤独を彼女が感じてきたのかは想像を絶する。けれど、彼女の身に宿すUDCが、その孤独を癒やすことを拒むというのならば。
「それを越えていく――超克(オーバーロード)!!」
 迸る神気は、それ以上の先を示さない。
 狂ったように腕をふるいあげていた『ルリ』の背後にありしUDCを止め、永久凍結を齎す。
 万物に停滞を齎す神気が凍結の力振るうUDCを永久に凍結する。

 超克の力は、誰かがいつか大切にしたものをこそ守るべき時に振るわれるものである。
 それはいつかの誰かの献身であり、誰かのためになりますようにと願われたものであったことだろう。ゆえに、晶の振るうオーバーロードの力は、氷結幽鬼少女『ルリ』の――いや、ただの『ルリ』の心を救っていく。
 共存でも停滞でもない。
 その背後に蠢くUDCこそを停滞の中に閉じ込める。

 もう彼女が寂しい思いをしなくて済むように。
 哀しみだけにくれる時間が訪れないようにと。
 彼女との対話、世話をしていた女性職員が嘗て憐憫と慈しみでもって相対した温もりをいつか『ルリ』が感じられるように。

 寂しさの定理を猟兵たちは否定する。
 ひとひらの欠片が優しき『牢獄』に落ち、かつてありし少女の魂は、その寂しさから解放されたのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月24日


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#UDCアース


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサフィ・ヴェルクです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト