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錬金術メイドさんの甘いおもてなし(物理)

#アルダワ魔法学園 #猟兵の食欲全開シナリオ

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#アルダワ魔法学園
#猟兵の食欲全開シナリオ


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 バレンタインデーが近付くと、男女が妙にソワソワするのはアルダワ魔法学園でも同じのらしい。
 そして、アルダワ魔法学園にも非モテカーストに属する男子生徒たちも存在する。
 非モテ男子生徒3人は、迫りくるバレンタインデーに対して悲嘆に暮れていた。
「チョコなんて……、故郷の母ちゃんにしかもらったことないぜ!?」
「あ、ボク、婆ちゃんにしか……お小遣い付きで」
「せ、拙者はチョコなんて、購買部で買うし……別に、他人から、貰え……ない!」
 はぁぁ~っと深い溜息を吐く3人。
「そういえば、噂でバレンタインデー期間限定ダンジョンが出現するらしいぜ?」
「なんだそれ? 初耳だけど?」
「拙者知ってるぅ~! ダンジョンの奥にメイドさんがいて、チョコを渡してくれるという噂ですぞ~! おっと、こんなところにイベントダンジョンの攻略マップが!!」
「な!? メイドさんが、チョコを!?」
「そんなイベントダンジョンが実在するの!? マップまで!?」
「ええ、確かのようですぞ! 思い立ったら吉日! これからチョコを恵んでもらいにゆくであります、同志たち!」
 3人は結託して、そのイベントダンジョンとやらへ挑むのだった。
 ――待っているのは、廃人化という未来とも知らずに。

「……というのが、今回の予知の内容なんだけどね。もう、なんであたいは食べ物関係の予知になると、こうヘンテコな内容ばかりなんだろ……?」
 以前もカレーやうどんでハチャメチャな予知を見てしまった蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)が肩を竦めてしまう。そして季節柄なのか、今回はチョコレート絡みの予知である。
「察しのいい猟兵のみんなは気付いただろうけど、メイドさんは災魔、つまりオブリビオンだよっ! なんでも、錬金術により劣化版"賢者の石"を素材として造られた人造メイドさんで、モテない男子学生たちを自分の領域に迷い込ませて、過剰なほどのおもてなしで廃人にしちゃうんだよっ! それも、一般生活が出来ないほどに堕落させちゃうらしいね。幸い、被害に遭っても命を取らないみたいだけど、一般生活が出来なくなるってことは“心が死ぬ”ってことだからねっ? 強敵だよっ!」
 更にレモンは、メイドさんのおもてなし自体がダンジョンのトラップだと忠告する。
「チョコレートで出来たダンジョンの壁や床が猟兵たちに飛び掛かってきたり、お菓子っぽい災魔を放ったりしてるっぽい! しっかり対処しないと返り討ちに遭っちゃうよ、気を気をつけてねっ!」
 レモンは気合を入れて忠告をすると、頭上に輝くレモン型グリモアを輝かせる。
「アルダワ魔法学園のみんなが気持ちよくバレンタインデーを迎えられるように、みんな、頑張ってねっ!」
 光が一層強くなり、猟兵たちをアルダワ魔法学園の地下ダンジョン内へと転送してゆくのだった。


七転 十五起
 七転十五起、なぎてんはねおきと申します。
 バレンタインデーに先駆けて、アルダワ魔法学園での冒険にお付き合いいただければ幸いです。
 第一章は、チョコで出来たタイルが猟兵たちへ向かって高速回転しながら飛んできます。
 当たると地味に痛いです。ちなみに食べられます。美味しいです。
 壁や天井や床などすべてのタイルが飛来しますのでご覚悟くださいませ。
 第二章は集団戦、そして第三章はダンジョンボスのメイドさんとの対決です。
 シリアスになるか、ドタバタコメディになるかは、皆様のプレイング次第!
 それでは、皆さまのご参加をお待ちしております!
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第1章 冒険 『襲い掛かる無数のタイル』

POW   :    タイルの体当たりをひたすら耐える

SPD   :    タイルの体当たりを素早く回避する

WIZ   :    タイルが体当たりする前に撃ち落とす

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宮前・紅
わーい!すっごく美味しそうなタイルだね♪
チョコで出来たダンジョンなんて、いいよいいよ。俺もそういうの待ってた♪

【SPD】で判定
回避しながら、タイルを貪りたいな!
俺の人形達と協力して回避。
勿論、チョコタイルの回収も手伝って貰う予定だよ!俺の人形達は一応女の子だからね!スカートとかで受け止めて持ってっちゃうのもアリかな?

実は俺、結構甘党なんだよね!
普段は色々と口煩く、栄養のある食事を摂らないとだとか言われてるんだけど……。
動きながらなら、ま良いよね♪

美味しいダンジョンのお菓子を食べ尽くしていこうかな!
えいえいおー♪

アドリブ、その他歓迎♪



 早速、宮前・紅(絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970)が問題のチョコダンジョンへ足を踏み入れた。その入り口は意外にも判りやすく、むしろ怪し過ぎて一般学生でも敬遠するほど堂々と『バレンタインデー特別ダンジョン♪』と看板が掲げられていたのだから迷う心配もない。
「わーい! すっごく美味しそうなタイルだね♪ 天上も壁も床も、全部チョコで出来たダンジョンなんてすっごいね♪」
 目に映るすべてがチョコで出来ているダンジョンを歩きながら、宮前は期待に胸を膨らませる。その傍らには『Elsie』『Lacie』『Tillie』と名付けられた3体のからくり人形がトコトコと歩いて付いてくる。冒険のお供に宮前が操って同行させているのだ。
 しばらく歩くと、突然、目の前のタイルの1枚が急に宙に浮かび上がった。
「なになに? なにが始まるのかな?」
 目を輝かせてタイルを注目する宮前。
 次の瞬間、浮き上がったタイルが高速回転を開始!
 そのまま手裏剣めいて宮前に向かって飛来してきた!
「おっとっと! すごい! 飛んできたっ!」
 宮前はチョコタイルを引き付けてからサイドステップ回避!
 チョコタイルは壁にぶつかり粉々に粉砕!
「あ、砕けた。食べられるのかな?」
 宮前は砕けたチョコタイルの欠片を口の中に放り込んだ。すると、濃厚で滑らかな口溶けとともに、芳醇なカカオと優しいミルクの香りが鼻の中を抜けてゆくのだった。
「美味しいっ! こんなに美味しいチョコレート、なかなかお目に掛かれないんじゃないかな? いいよいいよ。俺、こういうの待ってた♪」
 宮前のご機嫌な声に反応したのか、次々とタイルが宙に浮いては彼に向かって飛来してくる! それを宮前は持ち前の敏捷性で回避しながら、壁にぶつかって砕けるチョコを回収しまくっていた。
「あむっ! うん♪ これは絶品だね♪」
 しかし、自分だけで回収するとなかなか骨が折れる。当たると痛そうだな、なんて考えていた時、自分の引き連れている人形たちに視線を向けた宮前。
「そっか! 俺の人形達、女の子だったね! みんな、ちょっと御行儀悪いけど、スカートを広げて!」
 宮前は3体の人形を巧みに操ると、“彼女たち”のスカートを広げさせた。そこへ回収したチョコレートをバスケット代わりに包み込ませて運搬させる事にしたのだ。
「実は俺、結構甘党なんだよね! こんなにたくさんのチョコレートを貰っちゃっていいのかな?」
 もぐもぐしながらチョコタイルを回避しては、破片を拾って人形のスカートへポイっ! 拾ってはポイっ! これを繰り返しているうちに、文字通り山ほどのチョコタイルの破片を獲得する事が出来た。
「こんなに食べたら、怒られちゃうかな? 普段は色々と口煩く、栄養のある食事を摂らないとだとか言われてるんだけど……。ま、動きながら食べるなら、良いよね♪」
 気が付けば、チョコレートタイルの区画を通過してしまっていた宮前。次なる“おもてなし”を受けるべく、意気揚々とダンジョンの奥へと歩を進める。もぐもぐと回収したチョコレートを食べながら、宮前は満面の笑顔で喜色に満ちた声を張り上げた。
「この調子で、美味しいダンジョンのお菓子を食べ尽くしていこうかな! えいえいおー♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドロンゴン・コーフィー
ふふー、美味しそうなお話だね!
バレンタインには僕も縁はないけど、突撃だー!
あ、ついでに学生くんも助けたげようか?

●POW
僕をただのドラゴンと甘く見られちゃ困るぜぃ。
全身で捕食可能なブラックタールだもんね!
どーんとかかって…いて、いててて、あいたぁ!?

甘く見てると危険だね!? 美味しいけども。
【この身は夢幻、我が名は竜】で全部僕のボディにしてやるー!
なめればスイート、なめたらスパイシー! みんなはどっちの僕がお好みかなー?
「今より僕は!チョコドラゴンだ!
よしどんどん食べよう、じゃないや、進もう!
他の子に飛んでかないように、グレンくん(炎の精霊銃)の火で少し溶かしておこうか?

アドリブ共闘歓迎!


霧中・真理
チョコレートですか、家族からの分で量がなかなかひどいことになる思い出が…。良い思い出ではありますけれど。
さて、私としましては得意なのか苦手なのかわからない場所ではありますが、役には立つでしょう

【災厄の枝】で焼き払います(属性攻撃)(範囲攻撃)
これならばどんどん燃やしてどんどん溶かしていけるでしょう。大きく危険を呼びそうならば他の手を考えねばなりませんが

、チョコレートは非常に優秀な栄養食にもなりますし、ちょっと回収して分析班にでも回してみましょうかね、変わった性質があれば面白いですし。
ちょっとくらい、食べても…あー、いや、辞めておきましょう。仕事中ですしね


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
【方針:SPD】

催しモノはちゃんとできてこそでありますからね。それを廃人化で台無しってのは、なくさないといけないでありますよ。

とりあえず、ダンジョンを攻略して敵のところに辿り着く必要があるでありますが……。

基本軸は【UC:虚構の神脳(SPD)】でタイルの動きを予測(見切り3,第六感4)して、一気に駆け抜ける(ダッシュ5)。多少の被弾(?)は致命傷じゃなければ平気(激痛耐性1)。何なら【UC:電脳世界の倉庫】に収納したり、あるいは【UC:紅眼の射手】と呼ばれた射撃で全て撃ち落としてもいいけど、まあ、弾の無駄か。

「当たらなければどうという事はない。と赤い人は言ったであります!」


アイレキア・ベルフィオーレ
チョコレートが飛来…なんとも摩訶不思議な。
そうね、ぶつかる前にキャッチしてしまいましょう。
(調理ボウルを持っていく)
剣を抜いて…と(剣がはらはらと鈴蘭の花弁に変化)
来たれ!鈴蘭!
(鈴蘭の嵐を「炎属性」で、やや手加減気味に発動)
チョコは熱せられれば…溶けるわね。
(溶けたチョコを片っ端からボウルでキャッチ)
扨、このボウルを冷やせば…
(「二回攻撃」で鈴蘭の嵐を「氷属性」で発動)
一度溶かして固めれば、量的にも嵩ばらぬというもの。

あとで砕いて食べるなり、再度溶かして成型するなりすればいいわよね。
あ、でも。少しばかり頂きましょう。(もぐもぐ)
……無糖のカフェラテが欲しいかも。(もぐもぐ)



「そこの3人組、ちょっと待った!」
 ドロンゴン・コーフィー(泥の竜頭・f04487)が、バレンタインデー期間限定ダンジョンに突入しようとしていた男子学生3人を呼び止めた。
「そこ、絶対に災魔の罠だと思うぜぃ。ここは“転入生”の僕たちに任せろー!」
 猟兵はアルダワ魔法学園では転入生扱いとされているのだ。もとより、どの世界でも猟兵がどんな姿で言動を取ろうが、その世界の人々に違和感を与えない特性を有している。故にドラゴンに擬態しているブラックタールを見たところで逃げ出すことはなく、彼らは普段通りに猟兵たちと会話を交わし始めた。
「て、転入生、悪いけど、俺達はどうしてもこの奥で待っているメイドさんからチョコが欲しいのだッ!」
「お母さんやお婆ちゃん以外からチョコが欲しいんです!」
「そうですぞ! この機会を逃すわけにはゆきませんぞ!」
 チョコに目が眩んでいる彼らに、ドロンゴンは仲間の方へ向き肩を竦めた。
「だってさー? どうしよう?」
「いくらモテないからといって、流石にこれは見境なさすぎでしょう……?」
 同じく呆れる霧中・真理(レーヴァテイン・f06420)も思わず苦笑い。
 隣で度し難いと言いたげな紅葉・智華(紅眼の射手/妹捜索中・f07893)も、何度も首を傾げている。
「私も理解に苦しむであります。彼らのこの意欲を、何故、自己の研鑽に対して費やせないのでしょうか? それに催しモノはちゃんとできてこそでありますからね。それを災魔によって廃人化で台無しってのは、なくさないといけないでありますよ」
 紅葉は改めて、この奥にいるメイドの正体を男子学生3人へ伝える事にした。流石に廃人化が待っていると聞かされては、二の足を踏む勇気が引っ込んでしまったようだ。
「や、やむを得ない。今年もチョコは諦めるぞ……っ」
「そんなっ! ここまで来て……!」
「ですが、廃人になるのは御免被りますぞ?」
 男子学生3人が何やら揉めだしたのを見かねたアイレキア・ベルフィオーレ(銀桜の聖華姫・f00055)が、道具袋からオシャレな瓶を取り出して蓋を開けた。
「チョコではないけど、よろしかったらどうぞ。フルーツキャンディーよ」
 差し出された色とりどりの飴玉を受け取り、男子学生3人はそれぞれ目に涙を浮かばせて感動している。
「う、生まれて初めて女の子からプレゼントされた……!」
「お婆ちゃんに自慢しなきゃ……!」
「うひょ、うひょひょひょひょ! ふへへへへへへ!」
 三者三様で気持ち悪かった。
 3人はダンジョンの挑戦を諦めると約束し、学園内へ戻っていった。
「うん、これで心置きなく探索が出来るね! ふふー、確かにダンジョン全てがチョコレートで出来ているなんて、美味しそうなお話だね! バレンタインには僕も縁はないけど、突撃だー!」
 ドロンゴンの気合の入った意気込みに対し、霧中はどうしたものかと思案顔。
「私はチョコレートというと、家族から贈られた分で量がなかなかひどいことになる思い出が……。良い思い出ではありますけれど。さて、ブレイズキャリバーの私としましては得意なのか苦手なのかわからない場所ではありますが、少なくとも役には立つでしょう」
「とりあえず、ダンジョンを攻略して敵のところに辿り着く必要があるでありますが……、チョコが飛び掛かってくる、とは?」
 紅葉はこの先に待ち構えるトラップが気になっていた。
 ただひとり、アイレキアだけがやけに大荷物であった。
「チョコレートが飛来……、なんとも摩訶不思議な。そうね……、なら、ぶつかる前にキャッチしてしまいましょう。ということで、調理実習室から調理ボウルを借りてきたわ。準備万端よ」
 めっちゃ調理ボウル同士がカンカンぶつかってうるさいけど、道具でチョコを受けとめるという発想は非常に合理的だ。運搬もしやすい。
 いざ、猟兵たち4人は問題のダンジョンの第一のトラップ、チョコレートタイルゾーンへ足を踏み入れる。

 チョコレートタイルゾーンを通過する4人の猟兵たち。すると、早速、数枚のタイルが浮かび上がり、その場で高速回転を開始!
「僕をただのドラゴンと甘く見られちゃ困るぜぃ。全身で捕食可能なブラックタールだもんね! さぁ、どーんとかかって……」
 同時に9枚のチョコタイルがドロンゴンの全身に激突!
 ボコボコォと鈍い水音を立てて、チョコタイルが彼の身体の中へ飲み込まれていった。
「いて、いててて、あいたぁ!?」
 ブラックタールとはいえ、硬いチョコレートのタイルを直撃すると結構痛かった。
 幸い、全身でチョコレートを捕食することで全てのタイルをキャッチ。他の猟兵たちに当たらぬように壁の務めを果たしていた。
「びっくりしたー! 甘く見てると危険だね!? すっごく美味しいけども!」
「次弾、飛んでくるであります!」
 紅葉はユーベルコード『虚構の神脳(イミテーション・ラプラス)』を使用し、まるで物質の動きから未来を計算したかのようにチョコタイルの軌道を予測、これを回避しながら前進してゆく。
「――見えた。当たらなければどうという事はない。と赤い人は言ったであります!」
 壁に激突したチョコタイルの破片が跳ね返り、紅葉の身体に刺さる。それを振り払い、怯まず歩を進めてゆく。
「この程度の痛み、戦場で受けた銃弾の方がよっぽど痛かったであります!」
「僕も行くよ! みんなの壁になるんだー! そして飛んでくるチョコタイル全部を取り込んで、僕のボディにしてやるー! いくぞー! この身に夢現の境なし。見ろ、聞け、覚えて刻め、僕の名は今より! チョコドラゴンだ!!」
 ドロンゴンはユーベルコード『この身は夢幻、我が名は竜(チェンジ・ドラゴン)』で装備品含む周囲の物品と自分がドラゴンになるという気持ちで竜の如き姿へ武装をする事で自身を強化、最前線へ進み出るとチョコタイルを全身に浴びながら、その体の色を次第にココア色へと変色させてゆく。
「硬いままでは激突すると痛いでしょうし、何よりドロンゴンさんが消化しづらいでしょう。ここはひとつ、熱で溶かしてみましょうか」
 霧中は地獄の炎として体内に宿しているUDCのホムラミズチを呼び出すと、飛来するチョコタイルへ狙いを澄ます。
「さて、禍福は糾える縄の如し、というやつです。火加減の調節が上手くいけばいいのですが……」
 ユーベルコード『災厄の枝(レーヴァテイン)』によって、霧中の掌からチョコタイルへ向けて火炎放射! 香ばしいチョコの香りが一瞬でダンジョン内に広がる。
「おっと、いけませんね。火力が強すぎて蒸発してしまいましたか」
「もう少し、火力を弱めた方がいいかもしれないわね。私もやってみるわね。剣を抜いて……」
 アイレキアは一族に伝わる魔力を帯びた騎士剣『Santa Principessa』へ念を籠め始めた。すると、剣身が徐々に白く輝き始める!
「来たれ! 鈴蘭!」
 掛け声とともに、剣がはらはらと鈴蘭の花弁に変化!
 ユーベルコード『鈴蘭の嵐』だ。これにアイレキアは火の魔法の呪文を唱えれば、鈴蘭の花弁へ燃え移らせて炎の渦を生成!
「後ろからも来てるわね! よっと!」
 アイレキアは調理用ボールでチョコタイルを受け取ると、それはべちゃっと音を立ててすっぽり中へ納まった。どうやら、丁度良い火加減でチョコが溶けて柔らかくなったようだ。
「なるほど、一点に集中させるのではなく、炙るようなイメージですね」
 霧中もアイレキアの行動を参考にして火加減を調節。敢えて空間を温めるようにホムラミズチを操った。
 すると炎で温められたダンジョン内のチョコタイルは、必然的に柔らかくなってゆく。こうなると、ドロンゴンのリアクションも変化が起き始めていた。
「あれー? だいぶタイルの激突の際の当たりが弱くなってきたかも? それに食べやすくていいね!」
「しかし、柔らかいと却って汚れる上に運搬しづらいであります。もぐもぐ……」
 ちゃっかりタイルをかじりながら紅葉は運搬の問題を指摘。
 これにアイレキアが既に解決策を用意していた。
「そういう事なら、溶けたチョコをボウルの中で氷魔法で冷やせばいいわ。鈴蘭よ、今度は吹雪となれ!」
 今度は鈴蘭の花びらに霜が降りてダイアモンドダストが発生!
 溶けたチョコレートがボウルの中で再び固まり出した。
「これで手を汚さずに、しかも量的にも嵩ばらぬというものよ」
「つまり、私が溶かして、アイレキアさんが固めれば万事解決ですね」
「そういう事よ、真理さん。さぁ、みなさん! ボウルは持った!?」
 他の3人にも調理用ボウルを持たせたアイレキアの指揮のもと、ほぼ飛来するチョコタイルを受けとめてしまった猟兵たち。
 タイルを全方向から受け止め過ぎて、すっかりチョコ色に染まってしまったドロンゴン。ボウルすりきり一杯までチョコを集めた霧中とアイレキア、そしてユーベルコード『電脳世界の倉庫(サイバーアーマリー)』で、空間の歪みの中に存在する広大な倉庫の中にチョコを保管する紅葉。
「所謂、異次元収納でありますよ!」
 4人の力を合わせて、第一トラップのチョコレートタイルゾーンを完全制覇した猟兵たち。次に待ち構えるトラップは、果たして、いかなる内容なのだろうか……?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ひよこーん』

POW   :    ひよひよあたっく
【弾けたひよこーん】が命中した対象を燃やす。放たれた【不可視】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ひよー、ひよひよー!
【鳴き声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    ぱちぱちぽんぽん
【体内の熱】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちがダンジョンの奥へ進むと、一気に開けた場所に辿り着いた。
 そして、猟兵たちは異変を感知する。
 やたらこの場所が暑い、いや熱いのだ。
 それもそのはず。ここの地面が熱せられた鉄板になっており、留まっていたら足の裏を火傷してしまいそうだ。
 そんな熱々の鉄板の上で、ポンポンと小気味いい音を立てて跳ねまわっている奇怪な災魔がいた。
「ひよー!」
「ひよひよー!」
「ぱちぱちぽんぽん!」
 あれは災魔ひよこーん!
 ポップコーンのように熱せられた鉄板やフライパンの上で活動するオブリビオンだ。
 ちなみにもふもふ部分は食用である。ご丁寧に今回はバレンタインデー期間限定ダンジョンというだけあって、ひよこーんたちにもれなくチョコレートが絡められていた。恐らくボス災魔のメイドさんが大量の溶けたチョコレートをぶっかけたのだろう。猟兵にとってもひよこーんたちにとっても傍迷惑な所業である。
 さて、君達はこのひよこーんを倒さなければ、件のメイドさんのもとへ辿り着けない。灼熱の鉄板の上で、猟兵たちは文字通り熱戦を繰り広げることとなった!
宮前・紅
うう、俺暑いのちょ~苦手なんだよね。でも、ひよこーんかぁ……美味そうかも、じゅるり♪

【SPD】で判定
【極細ワイヤー】を駆使して、跳び跳ねるひよこーんを素早く空中戦に持っていきたいね♪(空中戦+パフォーマンス)
空中戦に持っていったら、『Elsie』『Lacie』『Tillie』の出番だよ♪
3体と連携しつつひよこーんを(踏みつけ)攻撃しようっと。
ここちょ~暑いから地面になるだけ降りないように、ひよこーんを踏みつけ(踏みつけ+敵を盾にする)ながら空中戦を続行!

ひよこーんって食べれるんだよね!美味しそう♪食べたい!これも持って帰りたいな?
このままかぶり付くのは可愛そうだしやめとこ!

共闘、アドリブ歓迎♪


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「……ん? んんんん? え、なにこれ……ふざけてるの……」(困惑により口調崩れ発生)

……ちょっと困惑してしまいましたが、智華は大丈夫です。
とりあえず、数が多いとなれば数で対抗。【UC:カバリングアームズ(WIZ)】を出した上で自分でも右手で04MV、左手でSirius[K's]で【UC:支配者の弾丸,連鎖する支配者の弾丸】という手数(2回攻撃6,援護射撃4)で殲滅。熱いのは平気でありますよ。(火炎耐性2)
後は、いつも通り【UC:虚構の神脳】で回避する準備をする。
カバリングアームズによる即席肉壁や【UC:矛反転する見えぬ壁】(盾受け2)の反撃(カウンター1)も行うであります。


アイレキア・ベルフィオーレ
【Wiz】
ポップコーンもチョコレートも天敵は湿気や水分。
ならポップコーンっぽい外見のひよこーんにも通用するかもしれないわ。
来たれ鈴蘭!此度は揺蕩う水を纏い嵐となれ!
(鈴蘭の嵐に水の「属性攻撃」を鉄板に向かって「全力で」放つ)
少々蒸し暑くなってしまったけれど、鉄板の温度も少し下がるかもしれないし、蒸気でひよこーんたちの動きが少しは鈍くなるかもしれないわね。
(扇でぱたぱた仰ぎつつ)

鈴蘭よ!次は吹雪となれ!
(「二回攻撃」の鈴蘭の嵐を氷属性で再度全力で)
鉄板とひよこーん達を急激に冷やす。
…鉄板、温度差で曲がったりしちゃわない…といいのだけれど。


ドロンゴン・コーフィー
おー。おぉ……暑い。え、熱い!? あっちっちー。このチョコ邪魔ー!?(武装チョコ放棄)



えぇ、チョコ浴びてんじゃん……。
うわ、ぱちぱち跳ねてるよ? 僕も跳ねないと、どんどん熱されちゃうね。ぴょんぴょんしながら空中戦……?初めての戦い方だよう。

「食べちゃうぞー!
『恐怖を与え』て怯んだとこに粘竜槍デロリスで『なぎ払い』を仕掛けて、【ドラゴニック・エンド】を打ち込むよ!

「やるよ、デロリスさん!
呼び出すのは食事に全力、子竜たち!
「おいで、ドラゴンベビー、パピー、ニュート……みーんな、おやつの時間だぜー!(様々な子竜が駆け出し飛び交い)

食べ残しは『串刺し』にして僕らで食べよー。



アドリブ共闘歓迎!


霧中・真理
行きますよ、ホムラミズチ。というところで【限定解除『ホムラミズチ』】を利用して上から叩かせていただきましょう。取りあえず、手助けが必要そうな方がいるならピックアップするのも手ですかね(騎乗)

お誂え向きに私も【ポップコーン】を持っていましてね、ふふふ、存分に味わっていただきましょう(援護射撃)(スナイパー)(クイックドロウ)
あとはホムラミズチを嗾けるくらいでしょうか?

しかし、ここでもチョコレートですか。いい加減甘ったるくて気がめいりますね…



 灼熱の鉄板ダンジョン内は、熱せられた床のおかげで気温も非常に高くなっていた。
「うう、俺……暑いのちょ~苦手なんだよね……」
 脚を火傷しないように小刻みな足踏みする宮前・紅(絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970)が憔悴しきっていた。
「水……水が飲みたいな~? ……あれ? なんかチョコの匂いがする!」
 喉の渇きを訴えながらも、チョコの香りに誘われて奥へ突き進んでゆく宮前。
 しばらくすると、開けた大部屋に辿り着いた。
 大部屋の中では、ポンポンと小気味いい音を立てながら大量のひよこーんたちが、所狭しとチョコ塗れになって跳ねまわっている。
「あれがひよこーんかぁ……美味そうかも、じゅるり♪」
 宮前、甘味への欲求が喉の渇きを凌駕した瞬間である。
「ひよっ!?」
「ひよひよー!?」
「ぱちぱちぽんぽん!!」
 そして彼の食欲は、ひよこーんたちにとっての殺気となって伝播してゆく!
 すぐさま、部屋中のひよこーんたちが一斉に鳴き声を上げだしたではないか!
「ひよー、ひよひよー!」
「ひよよー!!」
「ひよひよひよ!」
 宮前は唐突な大合唱に耳を抑えながらも楽しそうだ。
「すっごいね! うるさいけど、可愛い~♪!」
「「ひよひよひよ!!」」
 だが、これはひよこーんたちのユーベルコードである!
 互いの鳴き声を聞いて共感しあい、戦闘力をどんどんと増強してゆくのだ!
 その証拠に、強化されたひよこーんの一匹が宮前にタックルを仕掛けた!
 予想をはるかに上回る衝撃に、宮前は危うく尻もちをつきそうになってしまう。
「おっとっと! 危ない危ない! お尻を火傷しちゃうところだった! いてて……」
 じんわりと内臓に響く痛覚に、宮前は目の前の敵が案外侮れない脅威だと認識を改めた。
「だったら、俺も考えがあるよ! 『Elsie』! 『Lacie』!『Tillie』! さぁ、出番だよ♪」
 3体の少女人形を宮前が操る。突っ込んでくるひよこーんたちへ、逆に人形たちが跳び付いた!
 そのまま人形はサイズアップ! 体格を変幻自在に変化できる宮前の人形たちは、今では主人とほぼ同じ体格まで拡大している。
 そして人形は容赦なくひよこーんたちを靴で踏み付けると、鉄板に押し潰してゆく! 焦げるひよこーんたち!
「ひよよよよよー!?」
 よもや愛くるしい姿の災魔ポジションだと信じて疑わなかったひよこーんたちは、人形の靴の裏で圧死された挙句に鉄板で黒焦げになる仲間の最期を見て明らかに動揺していた。
「よーし! こうすれば足の裏はちょっと汚れるけど熱くない! みんな! どんどん踏み付けちゃおう♪」
「ひよひよひよよー!?」
 宮前と3体の人形は、まるで空中散歩をするかの如く、ひよこーんたちの頭を次から次へと踏み抜いては飛び移ってゆく。
 まるで何かのゲームで遊んでいるかのようなはしゃぎっぷりの宮前。
 そんな彼の行動を、あとからやってきた紅葉・智華(紅眼の射手/妹捜索中・f07893)が目撃して呆然としてた。
「……ん? んんんん? え、なにこれ……? ふざけてるの……? 智華、訳分かんないんだけど……」
 困惑気味で軍人キャラのメッキが剥がれる紅葉。
 その横でドロンゴン・コーフィー(泥の竜頭・f04487)が思わず叫んだ。
「おー。おぉ……暑い。え、熱い!? あっちっちー! 溶けちゃうー! このチョコ邪魔ー!?」
 先程食べたチョコレートで纏った武装を鉄板の床へ投げうった。あやうくドロンゴンの身体が熱でドロドロになるところだった。
「あぶなかったー。それにしても、あちちっ! 僕も跳ねないと、どんどん熱されちゃうね」
 その場でぴょんぴょん跳び跳ねながら、彼は敵の群れを目視する。
「えぇ、チョコ浴びてんじゃん……。うわ、ぱちぱち跳ねてるよ? あっちも僕もぴょんぴょんしながら空中戦……? なにそれ、初めての戦い方だよう……」
 ドロンゴンの当惑っぷりに、霧中・真理(レーヴァテイン・f06420)も思わず語気が重くなる。
「ここでもチョコレートですか。いい加減、甘ったるくて気が滅入りますね……」
 ここで霧中は体内に宿すUDCホムラミズチを呼び出すと、限定解除『ホムラミズチ』を発動。
「さて、不本意でしょうが力を貸していただきますよ、ホムラミズチ。行きましょう」
 全長3.2mの地獄化された炎の竜が霧中の身体の中から這い出てくる。その背に霧中は飛び乗り、戦闘力を向上させる。
 そして、先程からぴょんぴょん跳び跳ねるブラックタールのドラゴンに霧中は手を差し伸べた。
「ドロンゴンさん。熱いのが苦手なら、ホムラミズチの背に乗りますか? 地獄の炎で燃え盛ってますが、延焼しませんから安全ですよ?」
「ありがとー! ぴょんぴょん戦法も興味あったけど、ドラゴンに乗るドラゴンっていうのもかっこいいね! よーし! ダブルドラゴンで蹴散らすよ!」
 テンションが爆上がりのドロンゴンは、霧中とともに『粘竜槍デロリス』を構えてひよこーんたちと対峙する。
 その光景を静かに見守るのはアイレキア・ベルフィオーレ(銀桜の聖華姫・f00055)である。
(い、言いづらいわ……。この状況、水と氷の魔法で一網打尽に出来るはずって! なんだか皆さんの努力を不意にしてしまう気がして、伝えるのがすこし躊躇われるわ……)
 各猟兵たちがイキイキと各々の考える最善を尽くしている姿に、最適解を有しているアイレキアはすぐに伝えるべきか思い悩んでしまう。
 そして、自問自答の末に結論に至った。
(……私の作戦をすこし検証してから、皆さんに伝えるべきよね)
 既に自分の履いている靴に氷の魔法でコーティングすることで火傷を防いでいる。
 だったら、とアイレキアは仲間と少し離れたところで『実験』を行う事にした。

「ひよこーんって食べれるんだよね! 美味しそう♪ 食べたい! これも持って帰りたいな? でも、このままかぶり付くのは可哀そうだしやめとこ!」
 宮前は跳び跳ねるひよこーんたちの頭を人形3体を駆使して次々と踏み潰してゆく。
 ひよこーんの身体はまるでポップコーンに近くて、フワフワと軽い羽毛のようなもので覆われていた。
「えっ? キミ、食べないの? 折角だから食べちゃおうよ! 僕は食べちゃうぞー!」
 宮前の反応に対して、ドロンゴンは食べる気満々だ。
 がおーっとひよこーんたちを威嚇して恐怖を与えながら、手元の粘竜槍デロリスを構える。そして手近なひよこーんを槍で一突きした!
「やるよ、デロリスさん! ドラゴニック・エンドー!」
 槍の形状が変化してゆき、食欲全開な仔竜たちが槍から出現!
「おいで、ドラゴンベビー、パピー、ニュート……みーんな、おやつの時間だぜー!」
「きゅー♪」
「ぎゃうぎゃう♪」
「ぴきーっ♪」
 ボコボコと粘性のある槍からスライムで出来た仔竜たちが放たれ、周囲のひよこーんたちを喰らい尽くしてゆく!
 ドロンゴンも倒したひよこーんのもこもこの一部をそのままがぶっと丸かじりすれば、口の中いっぱいにチョコの芳醇な香りと香ばしいポップコーンの淡泊な味が広がってゆく!
「あっ、味は見た目通りだ! チョコレートを掛けたポップコーンそのままだよ! 美味しいと判ったらやる気が出てきたー!」
 その後も面白がってドロンゴンはドラゴニック・エンドを連発!
 そして、ドロンゴンを乗せているホムラミズチをけしかけながら、霧中はUDC機関の正式採用銃を構える。
「お誂え向きに私も“ポップコーン”を持っていましてね、ふふふ、存分に味わっていただきましょう」
 銃口からマズルフラッシュが連続で火を噴く! 発射されると弾丸が弾け飛ぶ為、弾痕等が特定しにくいがゆえに名付けられたのだとか。
 散弾銃めいた不規則な軌道の銃弾を浴びたひよこーんたちに風穴が開く。倒れたひよこーんをホムラミズチがすかさず喰らい、自らの力に変えていった。
 だが、ひよこーんたちも黙って食べられるわけにはいかないと、ここで反撃に打って出る。
「ひよよよよよーっ!!」
 なんと、突然、目の前のひよこーんたちが弾けた! その破片がホムラミズチに命中すると、不可視の炎となって燃え広がってゆく!
「真理さん! もしかしなくても、僕たち燃えてるよね!? あちちちー!」
「不可視の炎ですか……。炎使いに炎を使うとは、良い度胸ですね?」
 霧中は敵が弾け飛ぶ前に銃を乱射! 更にホムラミズチに捕食をけしかけ、これ以上の延焼を食い止めんとする。
 そこへ、割って入ってきた紅葉が左手に構えたWH04HL[K's]Sirius(ハイレーザーライフル)でひよこーんの群れを横一文字に焼き払う!
「お待たせしました。高熱の局地戦なら任せてください。耐性がありますので」
 部屋の一角のひよこーんたちを殲滅した紅葉が援護に駆け付けた。彼女の言葉通り、灼熱の鉄板の上でも平然と靴のまま移動をしている。
 ただ、その口はチョコレートで汚れていた。
「誤解であります。食用かどうかを検証しただけであります!」
 聞かれてないのに弁明をしちゃう紅葉の背後には、わらわら~っと何かが蠢いていた。
 彼女のユーベルコード『戦場覆う四足歩行兵器CA-X-001(カバリングアームズ)』で召喚した、110体の小型の戦闘用四足歩行兵器だ。ちなみに、紅葉のユーベルコードの電脳空間内の倉庫から搬出されるので、いつでもどこでも出したりしまったりできる便利さが売りだ。
「さぁ、数で戦力を補うのです。……各機へ伝令(オーダー)。『敵性オブリビオンを殲滅せよ』……であります!」
 戦闘用四足歩行兵器の群れがひよこーんの群れと激突を開始!
 紅葉はホムラミズチと連携し、ユーベルコード『支配者の弾丸(ドミナント・バレット)』と『連鎖する支配者の弾丸(ドミナント・チェイン・バレット)』のコンボによる手数で支援射撃を敢行。
 右手に構えた04-MVアサルトウェポン[MOMIJI's CUSTOM]とのガン=カタめいた銃乱射での制圧力は圧巻の一言だ。
 不利を悟ったひよこーんの群れは、更に次の一手を繰り出してゆく。
「ぱちぱちぽんぽん! ぱちぱちぽんぽん!」
 ひよこーんの群れから、体内に蓄積された熱を一気に猟兵たちへ解放してきた! このまま猟兵たちを焼き殺さんとする算段だ! しかもこれは自身から10m半径内の指定した全ての猟兵を攻撃する!
「こ、これは避けられないであります!」
 紅葉はユーベルコードの『虚構の神脳(イミテーション・ラプラス)』での回避や『矛反転する見えぬ壁(ヴェンジェンス・ウォール)』で防御からの反転攻勢に出ようと考えていたが、周囲をほぼ取り囲まれた状態でじりじりと熱波が迫っているうえに、部屋の中に逃げ場がない!
「行けませんね……。数が多すぎます……!」
「熱いー! 体がとろけちゃうよー!?」
 霧中はぐったりするドロンゴンを気に掛けながら絶えずポップコーンを乱射してゆく。
「駄目! もう限界! 俺もこの子に乗らせて!」
 踏み付けていたひよこーんの群れの熱に耐えきれず、宮前もホムラミズチに緊急避難!
 万事休す!
「あのー、私の事、忘れてないかしら?」
 アイレキアの声が鈴蘭の花弁のシャワーとともに聞こえてきた!
「確かめたいことは確認したわ。さぁ、反撃の時間よ! 来たれ鈴蘭! 花弁は揺蕩う水を纏い嵐となれ!」
 熱せられたひよこーんの群れに突然のスコールが浴びせられる!
 水蒸気の真っ白な煙が辺り一面に広がり、燃えるような熱さの代わりにむわっとした蒸し暑さが猟兵たちの肌にまとわりつく。
 アイレキアは愛用の銀桜聖霊扇でパタパタと仰ぎながら、思い通りの結果に満足する。
「少々蒸し暑くなってしまったけれど、部屋の温度が下がったわね。蒸気でひよこーんたちの動きが鈍くなったわ!」
 説明しよう!
 ポップコーンもチョコレートも天敵は湿気や水分である! ならば魔法で水をぶっかければ、自然と水は蒸発、ひよこーんの群れの身体が吸水して行動不能になるのだ!
「ひ、ひよ~っ?」
 じゃぶじゃぶになった体に困惑するひよこーんの群れに、アイレキアの追撃が襲い掛かる!
「鈴蘭よ! 次は吹雪となれ! この地を白銀の雪で覆いなさい!」
 鈴蘭の花弁が雪の結晶となると、ひよこーんの群れを瞬間冷凍してゆく!
 更に床の鉄板が一気に冷やされた影響で、亀裂が入っていたろところで破壊されてゆく!
「あらあら! 寒暖差で鉄板が割れてしまったわね。でも、これでこのダンジョンの熱さに悩まされなくていいはずよ」
 実際、割れた鉄板から熱を感じることはなくなっていた。あまりの寒暖差で装置が故障したのだろう。
 そして、凍り付いたひよこーんを猟兵たちは念入りに砕いて回り、完全討伐に成功したのだった。
「このひよこーん、地上に戻るまでには解凍されるかなー? あとでみんなで食べよー!」
「ブラックタールのドラゴンさん! 俺も食べたーい!」
「塩気と甘さがちょうどよかったであります。私が試食済みですので間違いないであります」
 ドロンゴン、宮前、紅葉の言葉に、霧中とアイレキアは思わず吹き出してしまった。
「あ、でも、甘い物だらけだと無糖のカフェラテが恋しいかも……」
「なるほど、ここの学食にあればいいのですが。仕事が終わったら確認してみましょうか」
 なんだかんだで、このふたりも興味津々のようである。
 さて、残すはこの“おもてなし”の仕掛け人であるメイドさんを打倒するだけだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『安寧』のフィロソフィア』

POW   :    錬金メイドフィロソフィア
自身の【メイドとしての矜持】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    ソフィはメイドとして必要なことはなんでもできます
対象のユーベルコードを防御すると、それを【劣化版"賢者の石"に記録し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    ソフぃさんのお掃除タイム
いま戦っている対象に有効な【呪いが付与された弾丸を撃てる銃】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は錬金天使・サバティエルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ふんふんふ~ん♪
 今頃、ソフィの作ったチョコレートダンジョンは盛況のはずなのです。
 悩める男の子に救済の手を差し伸べるなんて、ソフィはメイドの鑑なのです。

 あ! やっと踏破者がきました♪
 あれ……、どうしてでしょう?
 なんで、学園生の男の子ではなくて、猟兵の皆様なのでしょうか……?

 まぁ、些末な違いなのです。
 ソフィは全力でおもてなしをするだけなのです。
 それこそ、猟兵の皆様へ“死ぬまで”ご奉仕なのです♪

「お待ちしておりました、ご主人様にお嬢様。ここからは『安寧』のフィロソフィア……ソフィが、皆様を全身全霊で“おもてなし”をさせていただくのです♪」
宮前・紅
へぇ、メイドさんね♪
"死ぬまで"おもてなしって……えー嫌だよ!
俺早く、ひよこーんを解凍して食べたいので、ご奉仕されちゃうのはご遠慮させて頂くね♪

【SPD】で判定
UCを使用。
おっきくなったLiddel人形で、メイドさんをボッコボコにしよう!(騎乗)
これまでの美味しい"おもてなし"ありがと♪
俺からもおもてなしさせてよ!
これまでかき集めてきたチョコ3分の1くらいあげるね!
ってな感じで、メイドさんに溶けたチョコレート液を頭からいっぱいコーティングしてあげよっと!
さっきのひよこーんが居たとこの熱で溶けちゃったし、どうせだからどうぞ♪

アドリブ、共闘歓迎


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「過剰なおもてなし、奉仕ってのはただの毒であります。――だから、とっとと逝くといいよ、オブリビオン」(苛立ちにより口調崩れ)

怒りこそあれ、判断は冷静に。焦らず【UC:矛反転する見えぬ壁(WIZ)】を展開。敵の攻撃を誘発(おびき寄せ1)させた上で自分と仲間を護る(盾受け4)。そこから、壁からの敵を追尾する高圧電流で反撃(追跡3,属性攻撃1,カウンター1)。
高圧電流で動きを鈍らせて、右手04MV、左手Sirius[K's](鎧無視攻撃10)を装備して【UC:支配者の弾丸,連鎖する支配者の弾丸】で攻撃(2回攻撃6)する。

「メイドなら主の命令は絶対。なら逝け。それが唯一の命令だよ」


ドロンゴン・コーフィー
僕的には、このメイドさんを持ち帰りたいくらいだけど。殺意満点なんだよなぁ、うーん残念!


「お待たせ!キミがこのイベントの主催者だね。楽しかったよ、ありがとう!(翼を広げ)
そして、僕ら猟兵に倒される役までやってくれるんだから、感謝だ。

さっきの部屋は熱かったよー、このくらいね!(竜炎筒グレンから火を放つ

チョコもポップコーンも美味しかった……だから、僕からキミにお返しだよ。受け取ってね!
【重いご褒美】 (腹が膨れ、喉は登って口から飴のような粘体の塊が吐き出される)
きっと今日はいつもより甘いくて重いよー。

味方への攻撃を『かばう』。キミはメイド、僕はドラゴン……あれ、関係なかった?


アドリブ共闘歓迎!


霧中・真理
うぅむ、少しばかりやり辛いですね。年下に見える相手はどうも…。とはいえ、敵は敵。討つべき時に撃てないような訓練は受けておりませんので

ひとまずは援護を中心に立ち回る方がよさそうですね。私自身、あまり応用が利くわけでもありませんし…巻き込みかねない部分もあります。ここは【竜の血】で支援に回りましょう。あとは、牽制射撃を入れておけばよいでしょうか。あまり撃ちすぎると味方の邪魔になりそうですし(医術)(援護射撃)(かばう)(スナイパー)(武器落とし)



 可憐な『安寧』のフィロソフィアが猟兵たちに微笑みかける。
 彼女からは殺意と誠意が入り混じった混沌の感情がひしひしと伝わってくる。
「さぁ、猟兵の皆様、どうぞ此方にお掛けになって下さいなのです♪ 今、ソフィが特上のアッサムティーをお淹れ致しますね?」
 なんと、ソフィは本当に給仕を行い始めたではないか。
 これには猟兵たちも困惑する。
「うぅむ、少しばかりやり辛いですね……」
 霧中・真理(レーヴァテイン・f06420)は眉尻を下げてソフィの動向を窺っている。
「こちらへの敵意ははっきりと感じます。ですが、本気であのメイドは私たちをもてなそうと行動してくれているようです。個人的に、年下に見える相手と戦うのはどうも……」
 年下への攻撃を躊躇うのは、霧中が8人家族の次男坊で自分の弟と妹たちを連想してしまうためだろうか。
「お待たせ! 到着が遅れてしまったねー。キミがこのイベントの主催者だね。楽しかったよ、ありがとう!」
 ドロンゴン・コーフィー(泥の竜頭・f04487)は翼を広げ、ドラゴン感をアピール。ソフィの恐怖心を煽ってゆく。
「そして、僕ら猟兵に倒される役までやってくれるんだから、感謝だ」
「ら、乱暴はおやめ下さい、ドラゴンさん? ま、まずは紅茶の一杯を。それからでも遅くないですよね?」
「へぇ、メイドさんね♪ 毒入り紅茶で俺達を暗殺するつもりなのかな?」
 からかうようにカマを掛ける宮前・紅(絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970)に、ソフィは思わず顔をしかめた。
「ソフィはそんな無礼を働かないのです! 敵である猟兵を前にしても、ソフィはメイドとしての矜持をもって行動するのです。いつ攻撃されるか判らない上に此方から先手を取る機会は充分とあったのです。しかし、それを敢えてソフィは全て諦めてメイドとしての矜持のために、戦闘面で不利な行動をとったのです!」
 その豊満な胸元を前に張って誇らしげに語るソフィ。心なしか、彼女の戦闘力が高まってゆくのを猟兵たちは感じ取った。
「まさか……! 既にあのメイド、ユーベルコードを!?」
 異変を察知した紅葉・智華(紅眼の射手/妹捜索中・f07893)が二挺の愛銃を両手に構えた。これに他の3名の猟兵も臨戦態勢へと移行する。
 ただ、ドロンゴンは少々残念そうだ。
「僕的には、このメイドさんを持ち帰りたいくらいだけど。殺意満点なんだよなぁ、うーん残念!」
 これにソフィが俯きながら答えた。
「ソフィも残念なのです、可愛らしいドラゴンさん? あなたが猟兵でなければ、ここであなたが死ぬまでソフィがご奉仕しちゃってもいいのです♪ 外の世界へ借りたくなくなるほどの快楽と至福を味わっていただくのです♪」
「えー? 俺は死ぬまで続くおもてなしは嫌だなー!」
 宮前がすかさずソフィの言葉を拒絶した。
「俺、早く地上に戻って、ひよこーんを解凍して食べたいので、ご奉仕されちゃうのはご遠慮させて頂くね♪」
「まったくもって同意であります」
 語気に怒りを孕みながら紅葉も言葉を継いだ。
「過剰なおもてなし、奉仕ってのはただの毒であります」
 紅葉はWH04HL[K's]Sirius(ハイレーザーライフル)をソフィへ向けてクイックドロウ! 放たれた青白い熱線がソフィの右肩を焼き貫くと、テーブルへ配膳しようとしていたティーカップを地面に落として割ってしまった!
「――だから、とっとと逝くといいよ、オブリビオン」
 怒りで軍人口調が崩れ、素の口調で紅葉は宣戦布告を行った。
 だが、ソフィはぽろぽろと涙を流しながら、割れたティーカップの破片を集めていた。
「酷い……酷いです……! これは先代のご主人様から譲り受けたティーカップなのですよ……!? ソフィは今、撃たれた肩の痛みよりも、悲しみで心が痛いのです……! 猟兵をご主人様に迎えるとロクなことがないのです!」
「へぇ、猟兵を主だというんだ? メイドなら主の命令は絶対。それなら、私からの唯一の命令、聞けるよね?」
 04-MVアサルトウェポン[MOMIJI's CUSTOM]とWH04HL[K's]Sirius(ハイレーザーライフル)の銃口をソフィへ向けた紅葉が、吐き捨てるように“命令”を告げた。
「支配者の弾丸(ドミナント・バレット)で即座に逝け!」
 銃口から必中の弾丸が放たれ、命中したソフィの胸元を赤く染め上げる!
 すかさず紅葉はお得意の連鎖ユーベルコードを発動!
「これで終わりじゃないよ!」
 連鎖する支配者の弾丸(ドミナント・チェイン・バレット)の連続射撃がソフィの全身に銃弾と青白い熱線を浴びせてゆく!
 ここで霧中も銃を構えて牽制射撃を行う。
「やはり敵は敵。私とて討つべき時に撃てないような訓練は受けておりませんので」
 機関の正式採用銃ポップコーンでソフィを撃ち抜いてゆく霧中!
「さっきの部屋は熱かったよー、このくらいね!」
 ドロンゴンの口内に忍ばせる精霊銃である竜炎筒グレンから紅蓮の炎が放たれた!
「あれー? この展開、俺がいなくても倒せちゃう??」
 ただひとり、宮前だけが出されたアッサムティーを優雅に飲み干しながら戦闘を眺めていた。
 だが、そんな悠長な暇がないと彼は次の瞬間に思い知る。
「ソフィへの無礼を働く無法者の猟兵たちは許さないのです!」
 なんと、あれだけ全身に銃撃を受けても、ソフィは意識をはっきりと保っている!
 ソフィは強化された戦闘能力で猟兵たちの攻撃を防御して堪え凌いだのだ!
 この瞬間、彼女のユーベルコードが最大限に発揮される!
「ソフィはメイドとして必要なことはなんでもできます。例えば、お掃除は得意です!」
 突然、虚空からソフィは紅葉の愛銃である04-MVアサルトウェポン[MOMIJI's CUSTOM]とWH04HL[K's]Sirius(ハイレーザーライフル)を召喚!
「な……!? どういうことなの!?」
「ソフィは相手のユーベルコードを防御すると1度だけ拝借する事が出来るのです。そして、ソフィはもとより銃を召喚出来るのですよ♪」
「ヤバイ! みんな、逃げろ!」
 紅葉が叫んで遮蔽物に隠れようとするが、時すでに遅し。
「お掃除開始です♪」
 ソフィが繰り出す紅葉の必中の連携ユーベルコードが、猟兵たち4人に浴びせ掛けられた! まるで降り止まぬ銃弾のスコール! 紅葉は全身を撃ち抜かれ血を撒き散らし、宮前も急所を庇うのに必死で、その四肢に銃弾を幾多も撃ち込まれてゆく。
「ぐは……っ! 智華さんのユーベルコード、強烈ですね……! しかもこの銃弾、呪われてますね……!」
 霧中が己の中に宿すUDCホムラミズチの拒絶反応で呪弾を察知した。
「みんな! 急いで僕の後ろに隠れて! キミはメイド、僕はドラゴン……あれ、関係なかった?」
 ドロンゴンの身体はタール状がゆえに、どうやらソフィの放つ銃弾を受けても致命傷になりにくかったようだ。バッドステータスとして呪縛を被るが、肉壁として一身にソフィの攻撃から仲間を懸命に庇った。
「この間に回復をします。彼の力の一端をお見せしましょう。おふたりとも、私の近くに……!」
 ユーベルコード『竜の血(ニーベルング・サガ)』――霧中がホムラミズチの深紅の炎を掌から宮前と紅葉の傷口に放てば、見る見るうちに血は止まり、銃弾が体外へ排出され、傷が塞がってゆく! 既に疲労状態だった霧中は、高速同時治療の条件を満たしていたが故に出来た芸当だ。
「ありがとう、真理! そろそろ俺も頑張ろっと! いくよ、Liddel♪ Marionettes Divertissement……」
 宮前のユーベルコード『人形劇より嬉遊曲:Liddel(マリオネット・ディヴェルティスマン・リデル)』が発動される!
 全長約3.2mのLiddel人形が出現し、宮前は背中に跳び付いた。人形で銃弾を盾にしている……!
「援護するよ。自分のユーベルコードでやられっぱなしっていうのもムカツクからね」
 紅葉は唐突に、銃を乱射するメイドへ向けて問い掛けた。
「突然だけどクイズだ。私とお前の目の前には壁がある。見えないと思うなら撃てばいい」
 銃撃が一瞬止んだ。ソフィは防戦一方だった猟兵たちの悪あがきだと判断する。
「その手には引っかからないのです!」
「――さて、答え合わせの時間だね? ほら、撃ってこい!」
「言われなくてもそうするのです! 支配者の弾丸(ドミナント・バレット)!」
 必中の弾丸が紅葉へ向かって放たれる!
 しかし、紅葉は銃弾を前にして不敵に微笑んだ。
「最強の矛と最強の盾がぶつかる時、何が起こるか教えてあげるよ」
 飛来してきた銃弾が、紅葉の電脳魔術により出現した不可視の壁に激突して粉砕した! 刹那、攻撃に感応した不可視の壁からソフィを追尾する高圧電流を発射!
 これが紅葉の奥の手、ユーベルコード『矛反転する見えぬ壁(ヴェンジェンス・ウォール)』の全容だ!
 電撃を浴びたソフィは激しく痙攣をしたのち、膝を初めて地面に付けた!
「さぁ、反撃開始だね! これまでの美味しい“おもてなし"ありがと♪ 俺からもおもてなしさせてよ! これまでかき集めてきたチョコ3分の1くらいあげるね! さっきのひよこーんが居たとこの熱で溶けちゃったし、どうせだからどうぞ♪」
 宮前は巨大人形を操り、べちゃべちゃのチョコレートの塊を両手に握らせて連続ラッシュパンチ!
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーっ!」
 チョコ塗れの拳の弾幕を喰らって後ろに吹っ飛ぶソフィ!
 それに追いすがってトドメを刺さんとドロンゴンが仕掛ける。
「チョコもポップコーンも美味しかった……だから、僕からキミにお返しだよ。受け取ってね! きっと今日はいつもより甘いくて重いよー!」
「や、やめて……!」
「甘いか、辛いか、苦しいか? お味はキミが、確かめて!」
「メイドがご奉仕されたら負けなのです~っ!!」
 ドロンゴンの腹が急激に膨張! その内容物が喉は登ると、口から飴のような粘体の塊となって吐き出される! というかこれ、ほぼチョコだ! ドロンゴンの体積内にパンパンに突っ込まれたチョコタイルが溶けたモノだ!
 その質量は想像以上に鈍重で、ソフィの胸元に輝く劣化版賢者の石を押し砕き、更にソフィが倒れた地形にクレーターを作るほどの物量をドロンゴンは吐き出したのだった!
 動力を破壊されたソフィは、大量の溶けたチョコの中で溺れて、遂に二度と浮上してこなかった。
「まさかオブリビオン自身、最初に仕掛けたチョコタイルのトラップが災いして敗北するとは、夢にも思っていなかったでしょうね」
 霧中は『竜の血(ニーベルング・サガ)』でドロンゴンを治療しながら、固まったチョコの墓標を苦笑しながら眺めていた。

 猟兵たちはこのダンジョンを封鎖すると、学園側へ報告。
 これにて、チョコレートダンジョン事件は一件落着と相成った。
「ねー? ひよこーんを運ぶのを手伝ってよ!」
 宮前が凍り付いたひよこーんを抱えてえっちらおっちら食堂へ向かう。
「私のユーベルコードで保管したチョコも、食堂のおばちゃんに調理してもらうであります」
 軍人口調に戻った紅葉も食堂に同行していた。
「無糖のカフェオレ、置いてますかねぇ?」
 霧中もカフェオレを求めて2人の後をついてゆく。
「いやー、バレンタインデーって凄いイベントだったんだねー。それにしてもソフィさん、やっぱり連れてきたかったかも……?」
 ドロンゴンは若干の後悔を残しつつ、他の猟兵たちとともに口直しの食事に付き合うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月19日


挿絵イラスト