2016年を境に様々な変容が始まったシルバーレイン世界。その影響は、能力者の力の弱体化や運命予報の喪失などに留まらず驚異の在り方にも及んでいた。
変容と共に現れ始めたオブリビオンという新たな驚異……それがこの世界の青春に再び色濃い死の気配を浮き上がらせる。この世界の新たな戦いの命運は常識を超える力、『ユーベルコード』にかかっていた。
とある公団住宅群の廃墟、そこは都市部で働く人々が都市周辺に集まっていく状況に対応するために建てられた。その時代とは車、カラーテレビ、クーラーの三つが新・三種の神器として喧伝された景気に沸く昭和の時代。……そんな時代もとうに過ぎ去り、時が昭和から平成へ移る中で住人は減り続けていく。そしてこの住宅群は再開発からも取り残されて令和の今は完全な廃墟となった。
このような忘れられた場所はゴーストが発生しやすい。しかし近年は能力者たちの努力によって建物から不浄な気を取り除く除霊建築学の技術が施され最低限の安全が保たれている。
――オブリビオンが現れるまでは。
「今回は、こちらの土地のオブリビオンを倒していただきたいのですー」
依頼の結論を先に伝えたグリモア猟兵の天日・叶恵(f35376)は、詳細を説明するための資料を配り始めた。そこにはこの場所に関連する内容と今回の目的が記されている。
「こちらは、少し前にナンバード化オブリビオンが現れた廃墟です。以前に事件の解決をしてくださった方はすでに一度訪れているでしょう。皆さんに今回お願いしたいのは、そこの『ゾンビ』の残りの退治と、あの特殊空間の根本的な原因排除となりますー」
あの時は他のオブリビオンを従えて能力者を狙うナンバード化オブリビオンを倒して終わったが、今回はその支配下にあった残党退治という訳だ。
叶恵は視覚情報をより鮮明に提示するため、キューブ状のエネルギー体グリモアに液晶テレビの形を取らせるとそこへ映像を映し出す。
まずは公団住宅群の全体の地図。公団住宅の棟が川の字に並んでいる。それらはすべてが同じ構造だ。いずれも三階建でてエレベーターは無くひとつの階につき3DKの居住空間が四つある。廊下も含めて内部は単純で余計なものはなく、足早に進めば一棟につき10分程度で部屋を見て回れるほどだ。
そこで特定の手順を踏めば特殊空間……今回で蘇ったゴーストのオブリビオンのテリトリーへ引きずり込まれる訳だが――。
「昔は四という数字が不吉だとかで、四号室がなくて五号室だったんですよねー。その五号室が消えて四号室が現れる棟がひとつだけあって、そこで『ゾンビ』のオブリビオンが無限湧きしているのでその棟の四号室を破壊してくださいー」
提示された解決方法が非常に雑である。
「それで四号室を全部壊して残った『ゾンビ』を倒すと、残るオブリビオンはどこかに居る『通り魔の怨霊』のみになります。その怨霊を見つけて倒していただければー」
これが今回猟兵の力が必要な仕事となる。
「どうやらこの特殊空間、過去に現地の能力者たちがゴーストを倒した時のものによく似ているらしいのですよ。そこで銀誓館学園からも道案内役を派遣してもらえるそうです。足手まといにならない様にパーティーを組んで臨むとのことで、戦闘時に守る必要は無いでしょう」
最後にそう伝えると、叶恵は転移の用意を進めていく。
「私は、転移の発動と維持のため同行できませんが、皆さんならきっと大丈夫です。よろしくお願いしますね。――それでは、いってらっしゃい」
ウノ アキラ
はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。ウノ アキラです。
このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。
●執筆タイミングなど
今回は土日にまとめて書きますので、プレイング受付はその前の【毎週木曜の8時30分から土曜の昼まで】となります。
他にもマスター紹介のページは一読頂けるとプレイングの文字数を少し節約できるかもしれません。
●依頼の補足
シルバーレインのキャンペーンシナリオ(続きもの)です。
前回の話を知らなくても事件の解決は可能です。
以下の三章構成になっています。
一章は集団戦です。
いきなり特殊空間内です。
『ゾンビ』が現れます。
四号室から無限沸きしますので部屋をぶっ壊せば出てこなくなります。数が多いので、その対応がメイン描写になるかと。
二章は冒険です。
『ゾンビ』の無限沸きをつぶしたあと、特殊空間内の探索になります。自由に動けるパートです。脱線してもNPCが軌道修正します。
三章はボス戦です。
『通り魔の怨霊』が現れます。
侵入者を襲おうと機を伺っていたボスが襲ってきます。
●NPCの能力者たちについて
主な登場は断章となり、プレイングで触れなければリプレイではあまり出てきません。
ですが描写されない所で猟兵たちをサポートしていることでしょう。普通に交流を狙っても構いません。
全員ユーベルコードを持ちません。しかし四人一組のPTで連携して動き自衛は十分に行えるので、特に護衛はいりません。
四人の情報は以下です。
魔剣士×青龍拳士、平坂・修(20歳、男性)。
ナイトメア適合者×魔弾術士、岩下・千影(11歳、女性)。
ゴーストチェイサー×巡礼士、シャルロッテ・バーンズ(18歳、女性)。
除霊建築士×符術士、高野・伊織(19歳、男性)。
全員が2013年以降に能力者となった世代です。猟兵のことは『戦いの師』、または『先輩』として一目置いています。
事前の情報は以上となります。
よろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『ゾンビ』
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POW : 集団の脅威
【群れを為したゾンビの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【ゾンビ同士】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : ゾンビ、走る
【上着を脱ぎ捨てる】事で【走るタイプのゾンビ】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : ゾンビカース
攻撃が命中した対象に【ゾンビ化の呪い】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肉体のゾンビ化の進行】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:桜木バンビ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●公団住宅の廃墟:特殊空間
前回ここであったナンバード化オブリビオンの事件……その時と異なる方法で特殊空間が開いた。
「ほらやっぱり。こっちでも空間開いた」
なぜか得意げなシャルロッテ。対して修はパーティー最年少の千影を気遣いながら周囲を警戒する。
「千影、大丈夫か。ここは初めてだよな」
「……うん。でも、自分から志願したから、大丈夫……」
そのやりとりの横でシャルロッテはかつての戦いを思い出していた。
「ここは昔ゴーストタウンだったのよね。攻略したときは四号棟は敵が多すぎて全員でエスケープ。建物から出ると特殊空間を出ちゃって、また入り直しだったなー」
「ええ。そしてあの時は先輩たちもいました。今回は別件でいませんが……」
「今回はとーっても強い味方もいるし、だいじょーぶだいじょーぶ♪ ノーウォーリーだよー」
若干の不安を見せる伊織。その肩をシャルロッテは笑いながらバシバシ叩くのだった。
この住宅群は本来は全部で三棟あるのだが……この特殊空間では四棟目が現れている。その四棟目が前回、猟兵たちが引きずり込まれた四号室のある場所らしい。
そんなやりとりをしながら一行は、『猟兵たち』と共に四棟目へ近づいていく。その建物の周辺には案の定『ゾンビ』がうろついていた。
儀水・芽亜
&&&
つい先日訪れたばかりですから、印象は変わりませんね。いかにもオブリビオンを引き寄せそうな場所です。
年末大掃除、始めましょうか。
「全力魔法」夢の「属性攻撃」「破魔」「衝撃波」で、ナイトメアランページ!
敵群を分断してしまいましょう。
そのまま四号室に突入させ、内部の破壊を命じます。
出てきたゾンビは、もう仕方がないですね。「除霊」の力を込めた裁断鋏『Gemeinde』で「切断」していきます。
さあ、いくらでも来なさい。夢魔の蹄と私の『Gemeinde』がお相手します。
能力者組は、上手く立ち回っているようですね。今はそれで十分。
かなり討滅したはずですけれど、まだまだ出ますね。皆さん、気を緩めずに。
穂村・耶子
銀誓館学園の卒業生としては、後輩の前でカッコ悪いところは見せられないね
相手はゾンビ?
大丈夫、大丈夫、昔も随分と戦ってきた相手だし、ゾンビ映画もそれなりに見て研究し……って、最近のゾンビって走るの!?
よ~し、こうなったら……網目状の空間の断裂で、ゾンビを纏めてミンチにしちゃおう!
隙間が狭いから逃げ場はないし、空間ごと相手を切断する技だから、防御も無意味!
「ふふふ……なんか、こんな感じのトラップもあったよね? 伊達にゾンビ映画を見て研究していたわけじゃないんだよ
無限に敵が湧くなら、ボクはゾンビの掃討に専念するね
「さあ、今の内に部屋を破壊し……って、うわぁ……汚いサイコロステーキだらけだ……
霧島・絶奈
&&
◆心情
此の世界には『銀の雨が降る時代』を生きた、同姓同名の『私』が居たそうですね
今は居ないのが残念ではありますが…
閑話休題
とまれ、今は目の前の障害を排除するとしましょう
◆行動
『獣ノ爪牙』にて【集団戦術】を行使
何割かを能力者諸賢の護衛に回し、残る軍勢と共に進攻
数に數をぶつけるは定石でしょう?
私も【罠使い】の技を活かし「魔法で敵を識別するサーメート」を【衝撃波】にて散布し防衛網を構築
更に【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
この世界には「残留思念」があるのだとか…
故にこそ、肉親の足跡や残り香を追いたくもなるのでしょう
キアラ・ドルチェ
&&&
葛城・時人さんと共に
またここに来る事になるとは…運命の糸ですかね
あ、修さんにお会いしたらご挨拶っ
「またお会いしましたねっ♪ よろしくです!」
こうやって共闘できるのも、やはり運命の糸のお導き♪
数が多いですか…【高速詠唱】で次々とゾンビを倒していきましょう
基本は時人さんを守るように、余裕があれば仲間や修さんたちのフォローも兼ねて
「次から次へときりがありませんねっ」
時人さん、私が部屋自体を壊せるよう、皆さんがそこまで至れるよう道を切り開きますっ!
部屋破壊はお任せしましたよ? ふふ、銀の雨降る時代の英雄さんのかっこいい姿期待してます、時人『おじさま』?(悪戯っこっぽくういんく
葛城・時人
&&&
キアラ・ドルチェと共に
勝って去っちゃったけど…そうだね、残ってた
討ち漏らしはきちんとしなきゃ
また後輩たちに会えるのも嬉しいしね
平坂に会えたら挨拶
「皆で来てるのホント安心だよ」
他の皆にも宜しくねと笑顔で
ゾンビには起動し白羽蟲笛からの蟲をあてる
「舞えククルカン!殲滅を!」
光蟲の乱舞で幻惑できたら、邪魔されなくて済みそうだ
一時的に可能な限り隙間を空けてUC光蟲の槍発動
「元々存在しない部屋だし躊躇いはない!」
これでもかと集中してから放つ
他の猟兵も破壊に臨むなら出来るだけ合わせる
けど!
「お、おじさまはやめてキアラっ(真っ赤)」
黄昏立ち込める顔で胸を押さえつつ
無事破壊出来たら
「よし!一つクリアだ」
鈴乃宮・影華
&&&
あの時の公団住宅でもう一仕事、という事で
やって来ました
今回は特に切羽詰まった予知は無いようなので
気楽なものです
さて、まずは無限ゾンビですか
この前は護衛として平坂さんの下に私の軍団を派遣しましたが
今回は仲間の方(全員私より年下……いえ、何でもありません。後輩が育っているのはいい事ですとも)と一緒のようで大丈夫そうですね
なので今回はUC:黒燐弾・夕立を起動
雨に濡れた敵は他の猟兵や平坂さん達のいいスコアになる事でしょう
これで部屋の破壊に火力を回せると思います
私も鎧砕きの要領で『大蘭華』をフルスイングしたりしますね
●運命の糸
ゴーストの一種がテリトリー内に作り出す本来存在するはずのない特殊な空間――特殊空間。元がゴーストであったオブリビオンもそれを作り出す場合がある。そして今回の特殊空間は公団住宅群の敷地全体がその範囲であるらしい……その中でも特に異質なのが存在しないはずの四号棟だった。
前回猟兵たちが訪れたときは四号棟の内部に直接引きずり込まれたのだが、その四号棟は元々存在しない建物だからなのか出口へ出ると特殊空間から出てしまう性質になっており、猟兵たちがこの建物を外から見るのは今回が初めてとなる。
こうした中で猟兵たちは早くも周辺の『ゾンビ』を片付け終えて、残るは四号棟内部の攻略のみとなっていた。その棟の外観を見た鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)はふと思いに耽る。
(あの時の公団住宅でもう一仕事、という事ですね。今回は特に切羽詰まった予知は無いようなので、気楽なものです)
関わったことに再び巡り合うのは何かしらの縁を感じるもの。
特にシルバーレインでは霊的な繋がりである『運命の糸』というものがある。世界結界が神秘を封じる力は能力者同士の出会いすら阻害するのだが、この運命の糸という繋がりが結ばれることで再会を阻害されなくなる様だ。そのため能力者および元能力者の猟兵は縁と巡り合わせに敏感な傾向がある。
もっとも、過去の繋がりに関しては原因不明の世界結界の修復によって再び切断されてしまったものもある様だが……。
「またここに来る事になるとは……運命の糸ですかね」
キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)はそう呟くと、改めて案内役を務めた四人……特に前回救出対象として出会った能力者の修へと元気に声をかけた。
「またお会いしましたねっ♪ よろしくです!」
「こちらこそこの前はありがとうございました。今回もよろしくお願いします」
「お願いしまーす!」
「よろしくお願いします」
「……ます」
前回の礼を述べる修と元気に返すシャルロッテ。残る伊織は深々とお辞儀を返し、千影は小声でぺこりと会釈をする。
そんな銀誓館学園の後輩たちへ、葛城・時人(光望護花・f35294)もにこりと微笑んで挨拶をするのだった。
「や、平坂。また会えたね。皆で来てるのホント安心だよ」
後輩たち四人の武器は修が長剣、シャルロッテが丸盾とパイルバンカー、伊織がガンナイフ、千影が長杖となっている様だ。かれらへ宜しくねと伝えると時人も四号棟を見上げて戦いに向けて気を引き締めていく。
(……そうだね、残ってた。討ち漏らしはきちんとしなきゃ)
あの時ナンバード化オブリビオンとして蘇ってしまった後輩も、生前はこの地のゴーストを倒すことできっと近くの町を守ろうとしたのだろうから。
●特殊空間内の四号棟
そんな後輩たちを前に張り切る元能力者がここにもひとり。穂村・耶子(甘党残念剣士・f35497)である。
卒業年度と年齢こそ後輩たちとほぼ同じだが能力者への覚醒は耶子の方が早く、記録によると耶子はかつての『天空の戦い』にも参加している。
(銀誓館学園の卒業生としては、後輩の前でカッコ悪いところは見せられないね)
立派な先輩としてかっこいいクールビューティーな振る舞いを。昔の耶子に関わりがあるかつての結社『石と氷の座す所』にいたメンバーがひとり居るのでお互いの存在に気づいたらどうなるのか気にはなるけれどそれはいったん横に置いて。耶子は腰に下げたサムライブレイドの柄に手をかけて臨戦態勢をアピールしながら四号棟をクールに見上げて微笑むのだった。
そんな元能力者たちの様子に霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は興味深げに視線を向ける。
(此の世界には『銀の雨が降る時代』を生きた、同姓同名の『私』が居たそうですね。今は居ないのが残念ではありますが……)
別の用でこの世界を訪れた際にでも聞いたのだろうか。絶奈は何処かに居るというもうひとりの絶奈に興味を寄せた。様々な世界を跨げるのが今の猟兵なのだから、別の世界に瓜二つの別人が居る事もあるのだろう。
「――とまれ、今は目の前の障害を排除するとしましょう」
為すべき事を成すべく絶奈は黒剣の『【Guilty】』を手に四号棟の入り口へと向かう。
同様に儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)も周辺の『ゾンビ』がいなくなったことを確認すると四号棟の入り口へと歩みを進めた。
(つい先日訪れたばかりですから、印象は変わりませんね。いかにもオブリビオンを引き寄せそうな場所です)
「年末大掃除、始めましょうか」
オブリビオンという脅威をこの世界から取り除くために。
公団住宅の廃墟に在る特殊空間内の四号棟――その内部も通常空間の他の棟と大きな違いは無い。
違いを挙げるとするならば、事前の情報で明かされている様に一度中へ踏み込むと入り口から出る時に通常空間へ戻されてしまう事、そして五号室となっている筈の場所が四号室になっている事……。
そして前回とは少し構造が異なるのか『ゾンビ』がズルリと廊下の壁を越えて外へと出ていく様子も見られた。
とはいえそれは稀であり、群れをはぐれた個体は先ほど速やかに周辺を掃討出来た様に脅威度は低い。そんなはぐれ『ゾンビ』にも耶子はクールに対応をする。
(大丈夫、大丈夫、昔も随分と戦ってきた相手だし、ゾンビ映画もそれなりに見て研究し……)
すらりとサムライブレイドを抜くと一刀の元に両断せんと近づいて……その時、耶子と目が合った『ゾンビ』が上着を脱ぎ捨て走り出した――。
●一〇四号室攻略
大きく腕を振り上げ腿を高く上げた綺麗な短距離走のフォーム。この『ゾンビ』は生前は陸上選手だったのかもしれない。そんなスポーティーに迫るゾンビを斬り伏せた耶子は素の顔で突っ込みを入れた。
「……って、最近のゾンビって走るの!?」
その突っ込みを皮切りに四号棟内部での戦いが始まった。
能力者たちの支援――シャルロッテの幻影兵団と千影のサイコフィールドが展開されると猟兵たちに霧のような幻影兵と夢の力のバリアが付与される。その支援を受けながら真っ先に内部へ突入したのが芽亜。
「さあ、いくらでも来なさい。夢魔の蹄と私の『Gemeinde』がお相手します――駆け抜けなさい!」
群れを為し、ゾンビ化の呪いと共に突進をしてくる『ゾンビ』の群れへと放たれる白き馬。それが直線上に駆け抜けて迫る群れへ穴を空けた――ユーベルコードとなって強化された『ナイトメアランページ』だ。
その穴をこじ開ける様にぶつかるもうひとつの群れは、絶奈のユーベルコード『獣ノ爪牙<<ロンナ>>』によって召喚された槍ぶすまを形成する屍者の軍勢。ぶつかり合う『ゾンビ』と屍者たち。その光景はここが死者の世界であるかの様に錯覚させる。……とりあえず槍を振るう方が味方ということで良さそうだ。
「数に數をぶつけるは定石でしょう? ……さて、一部を貴方たちの護衛に回しますので活用してください。廊下から外へ漏れたものもこれで対応しましょう」
「おーう、まるで映画のワンシーンですねー!」
「使役のようなものですか。これがユーベルコード……」
驚く能力者チームを他所に絶奈の軍勢は『ゾンビ』の群れへ槍を突き立てて後方へと押し込む。そこへ裁断鋏『Gemeinde』を手にした芽亜が纏う幻影兵を用いて離れた位置から『ゾンビ』の群れを刻んでいった。群れの穴が広がり四号室への道が開くと、芽亜はその中へ飛び込み、そして――。
「――駆け抜けなさい、ナイトメア!!」
今度は四号室の前で、部屋へ向けて白い馬を放った。それは直線上に駆け抜けて部屋の壁を突き破り、内部を破壊していく。絶奈が召喚する屍者の軍勢もその壁に空いた穴へと入っていった。
メキメキと音を立て四号室が破壊されていく……部屋の在ったその場所は、壁が崩れ、戸が剥がされ、その形を失っていった。やがて部屋が部屋の形を成さなくなった時、四号室だった空間では『ゾンビ』が発生しなくなる。
一階の『ゾンビ』の発生は止まった――廊下に残るそれらも、元より廊下が広くないこともあって残る数は多くない。間もなく一階は片付く事だろう。
●二〇四号室攻略
二階へと一番乗りしたのは耶子だった。階段を降りて来る『ゾンビ』たちを斬り捨て軽快に二階まで駆け登った耶子は、廊下の奥の四号室から湧き出る『ゾンビ』を目撃する。
遠目にはドアの数が増えており、六体ずつ増えて早くも廊下を隙間なく埋めながらこちらへと向かってきていた。
「よ~し、こうなったら……網目状の空間の断裂で、ゾンビを纏めてミンチにしちゃおう!」
廊下の薄闇に刃がすっときらめく。その剣閃が紡ぎ出すのは網目状の断裂。空間を割く斬撃が廊下の端まで埋めるすべての『ゾンビ』を襲う――。
「秘剣、絶刃格子斬!」
耶子のユーベルコードが二階の廊下を埋め尽くす『ゾンビ』たちを一瞬で肉塊へと変えた。この時、耶子がイメージしたのは映画内の狭い通路のシーンで見られる格子状のレーザーなどが通り抜けていくトラップ。
「ふふふ……なんか、こんな感じのトラップもあったよね? 伊達にゾンビ映画を見て研究していたわけじゃないんだよ」
かっこよく身を翻らせて後ろ向きに着地した耶子は『ゾンビ』たちのドチャっとした音を背中で聞きながら、階段を上がってくる後続へとクールに呼びかけ、そして背後の廊下を振り返り――。
「さあ、今の内に部屋を破壊し……って、うわぁ……汚いサイコロステーキだらけだ……」
――オブリビオンとして消えゆく直前の『ゾンビ』だった肉片の山を直視してしまい、狐耳をへちょりとさせるのだった。
耶子が『ゾンビ』を一掃した二階の廊下……その奥の二〇四号室から再び『ゾンビ』が湧き出していく。六つのドアから湧き出るそれらに再び廊下を埋め尽くされる前にと駆け出したのが時人とキアラの二人だった。
「舞えククルカン! 殲滅を!」
時人が『白羽蟲笛』を風で鳴らすと羽毛と翼持つ蛇の様な白い群れが湧き出て眼前の『ゾンビ』の群れを喰らっていく。
「次から次へときりがありませんねっ」
続けてキアラも高速で詠唱を行い500本を超える大量の植物の槍を生み出した。ユーベルコード『森王の槍』……元のアビリティがユーベルコードとなって強化されたものだ。放たれた無数の槍が湧き出る『ゾンビ』を貫いて動きを止めていく。先に耶子が一掃していたこともあってキアラの援護は十分に追いついていた。
その援護を受けて白燐蟲と共に突き進む時人の背中を見たキアラは、はたと『思いついて』しまう。するとキアラは悪戯っぽい笑顔をふふふと浮かべるのだった。
「部屋破壊はお任せしましたよ? ふふ、銀の雨降る時代の英雄さんのかっこいい姿期待してます、時人『おじさま』?」
「う。お、おじさまはやめてキアラっ」
ずっこけそうになりながらも立て直す時人。運命の糸症候群で若返ってはいるが本来は30代の時人は、この年代に見られる若さ判定……お兄さんとおじさんの狭間に悩みを抱えて居る様だ。
悪戯っぽくウインクして誤魔化すキアラだが、援護自体は真面目にしており森王の槍で『ゾンビ』を退けている。その援護を受けて四号室の前へ辿り着いた時人はユーベルコード『光蟲の槍』を放った。
「元々存在しない部屋だし躊躇いはない!」
白燐蟲が輝き槍の形をとると二〇四号室の壁へと突き刺さる……すると四号室そのものを光の柱が包んだ。光が与えるエネルギーが部屋全体を灼き、壁がボロボロと崩れていく……。
――二階の『ゾンビ』の発生が止まった。
●三階に溢れるゾンビの壁
猟兵たちがそれぞれ一階と二階に残る『ゾンビ』を片付けていく中、影華が三階の様子を見ようと先に階段を駆け上る。
残りひとつとなった四号棟の四号室……最後の抵抗なのか、そのドアは九つとなり壁一面のドアから『ゾンビ』が湧き出ていた。その増殖の数は無限湧きと合わさり壁の如く押し寄せ始めている。
この急速な増加に対応するため影華はイグニッションカードから試作型黒燐複合装攻『大蘭華』を取り出すと隠された詠唱ライフルのトリガーに指をかけて――。
「彼の力を以て世界に奏上する――あれは、此世に不要也」
――階段の下から上の階へ向けて黒燐蟲の群れを撃った。その黒い蟲の群れは横殴りの大雨の如く三階の廊下を通り抜けて、湧き出る『ゾンビ』たちを貪り浸食しはじめる……ユーベルコード『黒燐弾・夕立<<イマジンカンパニー・バレットシャワー>>』。元は暴走黒燐だろうか? これを受けた『ゾンビ』は黒い蟲に貪られて廊下の途中で倒れていく。
「これで守りに気を割かずに廊下の突破と部屋の破壊に火力を回せるでしょう」
そう言うと影華は共にいた能力者チームの方を見て追撃を促した。
(雨に濡れた敵は他の猟兵や平坂さん達のいいスコアになる事でしょう。それに今回は仲間の方と一緒のようで大丈夫そうですしね)
階下の『ゾンビ』の残りを片付けている味方の猟兵もすぐ来るだろうが……後輩たちにもうすこし実践の経験を積ませたいと影華は考える……。だがこの時、影華はあることに気がついてしまった。
(全員私より年下……いえ、何でもありません。後輩が育っているのはいい事ですとも)
月日の流れを実感してわずかに動揺をしつつも。影華は幻影兵団の支援を受けると楽器ケースの形状をする試作型黒燐複合装攻『大蘭華』を振り回して幻影兵越しに『ゾンビ』を砕いていくのだった。
部屋の壁一面にドアをつくり『ゾンビ』が湧き出るペースを増やす最後の四号室。しかしその勢いは、影華が継続的に撃ち出す黒い蟲の群れが食い止めていた。
詠唱ライフルから放たれる黒い蟲が貪る事による侵食のダメージで『ゾンビ』たちは階段までたどり着けずに途中で力尽きていく……。
ここへ幻影兵団による射程アップの効果を受けた能力者チームが遠距離から『ゾンビ』の群れ削りに加わっていたが、その押し返しはジワリとした進みで時間がかかっていた。そんな中、階下の『ゾンビ』を全て倒し終えた面々が三〇四号室の攻略へと加わっていく。
●三〇四号室攻略
一階の『ゾンビ』を全て倒し終えた芽亜は三〇四号室の供給力に思わず呆れた。
「これはまたすごい量……。以前の二階の時も雪崩の様ではありましたが、これはそれ以上ですね」
(ですが……能力者組は、上手く立ち回っているようですね。今はそれで十分)
途切れずに湧いては浸食で倒れていく『ゾンビ』の壁。奥の四号室は壁一面に作り出した九つのドアで最大供給を発揮しており一気に倒さなければドアの前にたどり着くのは難しそうだ。
そこへ絶奈が懐からサーメート……テルミット焼夷弾の一種をいくつか取り出す。
「いえ、これだけ密集しているのならかえって好都合です。足止めの手段があれば合わせてお願いします」
そう言い残すと、絶奈はそれら焼夷弾を『ゾンビ』の群れへと放り投げた。
――異なる世界の技術を盛り込んだ道具を利用できるのは猟兵の強みのひとつだろう。絶奈が持ち込んだそれも魔法を用いて敵を識別するなど便利な延焼の仕方をするものらしい。とにかく、それが炸裂して三階の廊下に爆発的な非常に高い高温を生み出した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……!!」
広がる炎、燃える『ゾンビ』。燃えた『ゾンビ』は苦しみに走りまわるが――。
「――はっ!!」
八卦迷宮陣――除霊建築士である伊織のアビリティが周囲の敵のみ捕らえる見えない迷宮で『ゾンビ』たちをその場に縫い留めた。
「……ふう、間に合いました」
「ありがとうございます。さあ、今です。押し戻しましょう」
絶奈は屍者の軍勢をけしかけると、エンチャントファイア『ゾンビ』を押し戻し始めた。
特殊空間内の建物内で魔法で調整した焼夷弾を放り込んで敵を燃やす――その破天荒な手段にシャルロッテは大爆笑。対して八卦迷宮陣でフォローをした伊織は呆れを見せていた。
「あっははは、なにこれヤバすぎ! あはははっ!」
「何か投げようとしたからまさかと思いましたが……そのまさかとは」
だが『ゾンビ』の無限湧き自体が止まる訳ではない。芽亜は新たに湧き出る『ゾンビ』へナイトメアランページを放ってその数を削っていく。
「今の炎でかなり討滅されたはずですけれど、まだまだ出ますね。皆さん、気を緩めずに」
「そうですね、一気に押し込みましょう」
影華は頷きながら『大蘭華』を豪快に黙々とフルスイングして火属性『ゾンビ』を殴打していった。
やがて二階の討伐を終えた時人とキアラと耶子の三人もこの場にやってくるのだが、この時三人は奥の三〇四号室から湧くたびに即着火しては苦痛に走り回ってピタッと足を止めらた後に吹き飛ばされていく『ゾンビ』たちの惨状を目撃する事になる。
●四号棟、攻略完了
「ええっ燃えてますよっ!?」
「あー。うん……そーだね、燃えてる」
「こういう手が有効なのも猟兵の特殊性なのかもしれませんね。ところで、残りを片付けるの手伝ってくれません?」
呆然とするキアラと時人へ呼びかけた芽亜は、再び燃える『ゾンビ』の討伐を続けていく。影華も素早く状況に適応して黙々と楽器ケース(『大蘭華』)の質量で殴りつけていた。
「ところでこれ……建物に燃え移らないのは何故なのでしょう?」
ふと出てきたキアラの疑問。それには焼夷弾を放った本人の絶奈が説明をする。
「『魔法で敵を識別するサーメート』です。なので、敵以外は燃やさないんですよ」
「なるほど……?」
「や、と……それじゃ、部屋は俺が壊してくるね。ククルカンの乱舞で目つぶしも出来るからこの大混乱の中なら奥まで行けると思うし」
「時人さん、それなら私ももう一度森王の槍を放ちますよっ! 敵以外を燃やさない魔法のサーメート? なら植物の槍も燃えないでしょうしっ」
「あ、うん。じゃあ、お願いしようかな」
こうして三〇四号室も破壊され、三階の『ゾンビ』の発生も無事に止まるのだった。
『ゾンビ』の発生源だった四号室を全て破壊した一行はいちど四号棟を出ると特殊空間に入り直す。すると、四号棟自体が消えていた。この空間内の直接的な脅威は、残るは空間を生み出した主だけとなる。
大成功
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第2章 冒険
『特殊空間を攻略せよ』
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POW : 先頭を進み、仲間を守る
SPD : おかしな物品や文章が残されていないか探す
WIZ : 空間内の法則を調べ、それに従った行動を取る
イラスト:乙川
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●公団住宅の廃墟:特殊空間
詠唱兵器を用いない攻撃はゴーストや他の能力者に対して効果が薄い事が多い。……しかし『猟兵がオブリビオンに対して行う』場合そういう攻撃が有効となるのは、猟兵とオブリビオンの関係性によるものだろう。
そういう違いはあるものの先程の戦いは能力者チームの四人に貴重な知見を与えたことだろう。
「いえ、流石に参考になりませんよ」
「確かに難しいなぁ……」
先ほどの戦いから何か得ようと話し合っていた伊織と修の二人だったが、ついにギブアップ。
「でも、面白かったじゃん。次は怨霊でしょー? いこ」
次はどんな戦いを見られるのかとワクワクしているシャルロッテが二人の手を引っ張り先へ行こうとしたその時、千影が修の袖を掴む。
「ああ、そうだな……あそこにも寄っていこう」
「なら僕とロッテも行きましょう……『彼』とは、僕たちもチームでしたから」
能力者の四人は途中で寄るところがある様だ。
修は猟兵たちへ次の予定を伝えた。
「これから『通り魔の怨霊』が出る場所まで案内します。ですが、時間に余裕があるのでもしこの空間内で見たい所があれば案内をします。俺たちも、ちょっと寄りたい所がありますので……」
先ほど『ゾンビ』の発生源をつぶしたので特に迫った危険は無いだろう。彼らと話をするか、それとも探索をしてみるか。
少しの間、休憩の時間となりそうだ。
キアラ・ドルチェ
葛城・時人さんと共に
修さん達とご一緒したいかな?
行くの…行人さんの所なのかなって思うので
持てるだけの花と、そしてヤドリギのリース
能力者…ヤドリギ使いとして、そして一猟兵として
「困難に打ち勝つ」と言う花言葉を持つリースをお供えしたいです
「私たちは決して負けない、死と隣り合わせの中でも、必ずしあわせな生を掴み取ります」
そう言葉にして、行人さんに誓いましょう
「ねえ、行人さんてどんな方だったんですか?」
皆さんに聞いてみます
こうして故人を偲ぶ事も、鎮魂に繋がると思いますから
…そして生き残った者たちの気持ちの整理にも繋がると信じてますから
その想い出たちに耳を傾けながら、鎮魂の祈りを、そっと捧げます
儀水・芽亜
この特殊空間で寄りたいところと言うと、先日の方の墓標ですか?
オブリビオンの肉体は死ぬと消えるのが普通ですが、何か形見になるものが残りました?
戦いで果てた方のお身内にそれらしい理由をでっち上げて伝えるのも、学園事務のお仕事。幸い、私はまだそういう事例に遭遇していませんね。でもいつかは、隠蔽工作を施した訃報を伝える日が来るのかもしれません。
それ故に、学園の事務といえど『この世の本当のこと』を知っている人間が必要なわけです。
すみません、喋りすぎました。
ん、これがあの方の墓標ですか。私もせめて黙祷を。
さ、次のお勤めに参りましょう。聞けば通り魔の怨霊とか?
遠慮なく叩き潰せる相手ですね。頑張りましょう。
葛城・時人
キアラ・ドルチェと共に
平坂達と同道したいな
「寄りたいトコ俺たちもご一緒させて貰って
構わないかな…?」
行先は多分同じと思うけど
もし違うならその後俺の方も案内して貰おう
元の結社にも今の旅団にも花が咲いてる
この前、仲間を見送ったのに何もしなかったから
今日はキアラにもお願いして花持って来たんだ
「俺が決着をつけたんだし、ね」
一度起動を解いて取り出し
違う誰かの追悼ならそこにも花を
何方にしても絶対後輩だよね
花を供え
「あとはゆっくり眠って、岩下…」
覚えたその名を呼んで
平坂たちにも助けられなくてごめん、と
でもこれもちゃんと
「もしまたがあっても…ちゃんと海へ、俺達が必ず還すよ」
それが猟兵の役割。俺が選んだ事だから
鈴乃宮・影華
&&&
自由時間……ならUC:黒燐弾・特務群を起動させまして
「新技の試運転がてら、この子達に空間内を調べて来てもらいますね」
人間と同等サイズからミクロサイズまで大小様々な蟲達、
彼らが怨霊の出現場所もしくは出現法則のヒントを掴めたらベスト、なんですけど
……そもそも彼らの調査結果を私は理解できるのかしら?
安全に答え合わせができる今回はちょうどいい機会という訳です
結果待ちの私自身は平坂さん達に同行しましょうかね
ところでこの間の『彼』、岩下さんのお兄さんですか?
あの時のアレの言動は忘れていいですよ
「本来の彼は自身の死を恨んでいないはずです――死と隣り合わせの青春を歩むとは、そういう事ですから」
霧島・絶奈
&&
◆心情
幽明境を異にするも、死者の足跡や想いに触れる事が叶う世界…
其れは別離の悲哀を癒すのか、より強めるのか…
異邦人たる私と、現地住民とでは感じ方もまた違うのでしょうね
◆行動
折角ですし能力者諸賢と話してみましょう
何れの世界に於いても同じ事ですが…
新しく訪れた世界固有の文化や戦術、価値観等を知るのは楽しいものです
詠唱兵器と言う独自規格もそうですが、除霊建築学というのも興味深いですね
残留思念や特殊空間と言うものが存在する…
つまり、生と死に形態としての明確な境界が存在しながらも、環境としては共存している世界である故に発展した技術なのでしょうか?
其れもまた、詠唱銀が齎した脅威であり福音なのでしょうね
穂村・耶子
う~ん、頭を使ってどうにかするっていうのは、どうも苦手なんだよね
でも、後輩たちの前で、カッコ悪いところは見せられないし……
まあ、ゾンビが湧いて出ないなら、とりあえず危険はないのかな?
だったら、いつ何があっても守れるように先頭を進みつつ、みんなの寄り道に同行するよ
念のため、警戒だけはしておくけどね
何かあったらUCで後の先を取って斬り捨てるけど……たぶん、心配はいらないよね?
そういえば、ボクの知っている人とか、学園関係者も何人かいるんだっけ?
事件を解決したら、ちゃんと挨拶に行かないとね
久しぶりの人もいるし、みんな、元気にしてたかなぁ……
●残された者の今~家族~
見たい所があれば案内をしますと伝えた修。その申し出に対して葛城・時人(光望護花・f35294)は彼ら能力者チームと同じ場所に行く事を希望した。
「寄りたいトコ俺たちもご一緒させて貰って構わないかな……?」
(行先は多分同じと思うけど)
同様にキアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)も時人の希望に同意をする。
(行くの……行人さんの所なのかなって思うので)
さらには他の面々も特に行きたい場所は無いらしく、結果的に全員で能力者チーム四人の『寄りたい所』へと向かっていく。
その道すがらに儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は彼らに質問を行った。
「この特殊空間で寄りたいところと言うと、先日の方の墓標ですか? 何か形見になるものが残りました?」
彼女は現在は銀誓館学園の事務員として働いているらしい。……キャンパスが三十四もあり、すべてに小中高の全学年と各クラスがある巨大な学園だからこそ、連絡の不備や行き違いの可能性が気になるのだろう。
「もし形見の様なものがあれば把握しておきたいのです」
「いえ、そう言うものでは無くて……」
「ただかつての場所に似ている。それだけです」
修の返答に、伊織が訂正内容の補足を加えた。
「ここはあの時の特殊空間に似すぎています……もしあの時と同じゴーストが復活してここを作ったのだとして。それでもここは当時とは本質的には別モノでしょう……しかし、その彼の妹がそこを見たいと希望をしたのです」
「ちーちゃんあの時まだ幼稚園だったもんね……」
そう言いシャルロッテは千影の頭を撫でる。対する千影は表情に乏しくて、その心の内はよくわからなかった。
芽亜は事務的な質問を無遠慮に行ったことを謝罪した。
「……すみません、喋りすぎましたね」
その時、千影は自身の思いをぽつりと話し始めていく。
「小さかったからよく覚えてないけけど……優しかったことは覚えてる。だから知りたくて。パパやママ、修お兄ちゃんからも聞いてたけれど。来てみたかったの」
当時は幼くてよく覚えていなかったものの、五年前に居なくなった年の離れた兄について知りたいと考えていた様だ。そして今回がその機会のひとつなのだろう。
そのやり取りを聞いたキアラは四人に、故人と過ごした思い出を聞こうとする。
(こうして故人を偲ぶ事も、鎮魂に繋がると思いますから……そして生き残った者たちの気持ちの整理にも繋がると信じてますから)
「……ねえ、行人さんてどんな方だったんですか?」
●残された者の今~友~
無音で飛翔する黒い蟲たちが鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)のもとから飛び立った。その蟲たちは影華のユーベルコード『黒燐弾・特務群<<イマジンカンパニー・イレギュラーズ>>』によるもの。
「新技の試運転がてら、この子達に空間内を調べて来てもらいますね」
そう一言告げて、ユーベルコードの力で様々な大きさの蟲たちを放っていく。試すのは新たな力の使い勝手。
(彼らが怨霊の出現場所もしくは出現法則のヒントを掴めたらベスト、なんですけど……そもそも彼らの調査結果を私は理解できるのかしら?)
その傍らで先ほどの会話は始まった。
「ただかつての場所に似ている。それだけです」
その言葉から続くやりとりの内容から影華はなるほどと納得して千影を見る。
(この間の『彼』、岩下さんのお兄さんなのですね)
思い返すのは前回戦ったナンバード化オブリビオン……過去に遭遇した事のある既存の抗体ゴーストのナンバードとは多くの特徴が一致しない存在。
影華は先ほどから黙っていた修を気遣う様に言葉をかけた。
「あの時のアレの言動は忘れていいですよ。本来の彼は自身の死を恨んでいないはずです。能力者として戦う事――死と隣り合わせの青春を歩むとは、そういう事ですから」
――元より能力者とゴーストの戦いというものは死と隣り合わせだった。銀誓館学園の学生の親の世代でさえ幾人もの死者を出しており、英雄の世代とされる2007年から2012年の間に覚醒した能力者たちも、かつてのメガリス破壊効果『生命賛歌』が無ければどうなっていたことか……。
影華の言葉に修ははっとした。彼ら次なる世代も実戦前の訓練や座学でその危険性はよく聞かされていたためだ。もちろん五年前にこのチームに居た岩下・行人も例外ではない。
「そうですよね……俺たちは覚悟をもって戦っている、それは誰だって変わらないはずだ。ありがとうございます先輩」
かつての友の、変わり果てた姿と直接会ったからこその心の傷。それが和らぎ青年の表情にわずかに活力が戻っていく。
これなら罪の意識から自棄になる未来は訪れないだろう。その様子に小さく微笑んだ影華は、次に一行の先頭を歩き周囲を警戒する穂村・耶子(甘党残念剣士・f35497)をじっと見るのだった。
(はて……? 会った事がある気がしますね……)
●橙色の金平糖
影華から視線を注がれながらも、耶子は周囲を警戒して一行の先頭を務めていた。
(まあ、ゾンビが湧いて出ないなら、とりあえず危険はないのかな? だったら、いつ何があっても守れるように……)
先ほどゾンビの発生源をつぶしたとはいえここはまだ敵の領域だ。仮にオブリビオンが居なくとも本能に任せたゴーストが襲ってくる可能性もゼロではない。
念の為にと耶子は居合い――ユーベルコード『秘剣・燕反転返し!』の準備を維持して気を引き締める。
(何かあったらユーベルコードで後の先を取って斬り捨てるけど……たぶん、心配はいらないよね?)
そんな彼女がこの空間の探索に興味を示さなかったのは。
(う~ん、頭を使ってどうにかするっていうのは、どうも苦手なんだよね)
という理由から。後輩たちの前でカッコ悪いところを見せない様にと気を張る耶子の、その引き締まった表情と臨戦態勢の振る舞いは立派な剣士となっている。そこには箒を木刀代わりに振り回していた昔の面影は見られない。
そんな耶子も後ろから聞こえてくる銀誓館トークに耳をぴこぴこと傾けて、昔のことをふと思い出すのだった。
(そういえば、ボクの知っている人とか、学園関係者も何人かいるんだっけ? 事件を解決したら、ちゃんと挨拶に行かないとね。久しぶりの人もいるし、みんな、元気にしてたかなぁ……)
ふと結社の仲間と果樹園で姫君と賊を巡る戦いをして、稲荷寿司を作った思い出か耶子の脳裏に蘇る。他にも、イグニッションカード量産システム――IMSの実験に参加した事もあった。その結果として今現在イグニッションカードが量産されて猟兵に配られている現状は感慨深いものがあるだろう。
能力者同士にあるという霊的な繋がり――運命の糸が結ばれたならば、『世界結界』の働きを乗り越えてかつての様な交流を取り戻せるかもしれない。
今回の何らかの出会いもかつての縁と繋がりますように。
●故人を偲ぶ
たどり着いた場所は前回ナンバード化オブリビオンと戦った駐車場だった。その、三号棟の駐車場の片隅で修は立ち止まる。
「……あいつは、行人はここで、乱戦の中で側面から襲ってきたゾンビから俺を庇ったんだ」
五年前の2016年……二人が能力者に覚醒し銀誓館学園に保護されてから二年目の出来事。新たなゴーストタウンとしてここが発見され、そのボス格との対話も決裂し、複数の結社――銀誓館学園の能力者だけが所属する学園内の組織――による討伐隊が結成された戦いの中での事だったという。
当時は妖獣やリビングデッドが多く出ていたがその中でも特に無限に湧き出るゾンビが討伐隊を苦しめた。
一部の精鋭がボス格のゴーストを倒したことで特殊空間ごとゾンビたちは消え去ったということなのだが……その五年前の戦いの痕跡は、ここには見られない。
「僕の支援が間に合っていれば……」
「私も……焦ってセイクリッドバッシュが当たらなかったよ」
当時を思い出して後悔に暮れる能力者チームの面々。そこにキアラが前へと出て地面に花を添えた。それは持てるだけの花とヤドリギのリース……そのヤドリギの花言葉は『困難に打ち勝つ』。
「私たちは決して負けない、死と隣り合わせの中でも、必ずしあわせな生を掴み取ります」
(能力者……ヤドリギ使いとして、そして一猟兵として)
花を添えたキアラは時人に持ってきた花を渡した。受け取った時人はイグニッションを解除して装備を収め、キアラと同じように花を添えて手を合わせる。
「あとはゆっくり眠って、岩下……」
(この前、仲間を見送ったのに何もしなかったから)
「あの……もしよかったら、皆さんも。お花ならいっぱい持って来てますのでっ」
続けてキアラはこの場の全員にも花を配った。鎮魂に繋げるため、そして生き残った者たちの気持ちの整理のために。
芽亜も花を受け取り献花に加わる。
(ん、ここがあの方の墓標ということですね。私もせめて黙祷を)
ひとりずつ献花を進めるその最中、耶子がふと残留思念の存在に気が付いた。その場所へ詠唱銀を振りかけてみると形成されたのは白いロングコート。
……この残留思念が誰のものかは定かではない。全く無関係な思念かもしれない。しかし誰にともなくその防具は千影へと渡された。
●異なる世界
献花に加わりながら、霧島・絶奈(暗き獣・f20096)はここまでのやり取りや会話を興味深げに見聞きする。
(成る程。あれがこの世界にあるという『残留思念』と『詠唱銀』……故にこそ、肉親の足跡や残り香を追いたくもなるのでしょう)
空から降り注ぐ銀色の雨――詠唱銀。そこに強い思念が加わることで詠唱兵器が生まれ、ゴーストが発生する……この世界の神秘の力はどうやら詠唱銀という存在に支えられている様だ。
光り輝く神秘の金属が形づくる世界……この世界に絶奈は興味を示す。
(幽明境を異にするも、死者の足跡や想いに触れる事が叶う世界……其れは別離の悲哀を癒すのか、より強めるのか……異邦人たる私と、現地住民とでは感じ方もまた違うのでしょうね)
そして、全員の献花が終わると絶奈は能力者チームの四人へと話しかけた。
「すみません、いくつか質問をしても良いでしょうか。私はこの世界にあまり詳しくなく……詠唱兵器と言う独自規格、そして除霊建築学というものについて軽くで良いので教えていただけませんか」
(折角ですし能力者諸賢と話してみましょう。何れの世界に於いても同じ事ですが……新しく訪れた世界固有の文化や戦術、価値観等を知るのは楽しいものですから)
猟兵となった者にとっては半ば当たり前となっているが、異なる世界との行き来というのは能力者にとって馴染みのない珍しい出来事。それ故に彼らにとっても絶奈は未知の来訪者に相当する存在だ。
「えーと……なんだっけ。水晶の……」
「ルルモードですね。過去に彼は『全ての来訪者が求めるもの』を名乗っていたと記録されています。能力者訓練の講義で習ったでしょう」
「あー、そんな気がするー。つまり猟兵の転移ってルルモードってこと?」
「さあ……それは違う気がしますが……」
絶奈は早くも質問攻めを受けていた。元能力者の先輩たちの手前、なんとなく遠慮していた疑問が絶奈の前で弾けた様でもある。しかし転移の仕組みは猟兵側も詳しく解っておらず明確な解答は出来ない。
「すると妖狐たちの故郷ってそのサムライエンパイアって場所かもだね?」
「それはまだ言い切れないけど……でも、来訪者たちの先祖はきっと何処かの世界からやって来たんだろうなぁ」
しみじみとするシャルロッテと修。だが絶奈も収穫が無かったわけではない。
(生と死に形態としての明確な境界が存在しながらも、環境としては共存している世界……それ故に発展した技術だと推測できますね。其れもまた、『詠唱銀』が齎した脅威であり福音なのでしょう)
彼らから聞いたいくつかの情報を、絶奈は興味深げに思い返すのだった。
●平和の裏側で
「あの、さ。五年前にゴーストタウンになってたここを攻略するのにいくつかの結社が組んで戦ったんだよね」
献花も終わり各々が短い休憩を挟む最中、時人はある提案をした。
「だったら、他の後輩たちの追悼もしておきたいんだ。正確じゃなくてもいい、五年前に戦いがあった場所をわかる範囲で教えてくれないかな」
運命の糸が繋がらず当時は気づけなかったとはいえ、時人は助けられなかった後輩たちの事を思う。
そして、そういった犠牲について芽亜もまた本業の立場から思うことがあった。
(戦いで果てた方のお身内にそれらしい理由をでっち上げて伝えるのも、学園事務のお仕事。幸い、私はまだそういう事例に遭遇していませんが。でもいつかは、隠蔽工作を施した訃報を伝える日が来るのかもしれません)
かつての戦いで生命根絶を狙う存在は倒された……しかしゴーストそのものが居なくなった訳では無く、この世界は『世界結界』の崩壊に合わせてゆるやかにゴーストと人間が互いに天敵として存在する形で共存する世界に近づきつつあった。
そんな中でこのような戦いと犠牲は、幾度かあったことだろう。そして今はここにオブリビオンという脅威まで加わっている。
(……それ故に、学園の事務といえど『この世の本当のこと』を知っている人間が必要なわけです。今回の場所と数は、あとで私からも五年前の記録と差異がないか確認してみましょう)
ここが当時の特殊空間とは似ているだけだとしても、過去から滲み出るオブリビオンが再現しただけの場所だとしても。一般人のために人知れず戦って散った能力者たちを思い一行は各所を巡り献花を行った。
●弔いの後に
「もしまたがあって……オブリビオンとなってしまっても。その時はちゃんと骸の海へ、俺達が必ず還すよ」
最後の場所に花を添えた時人は心の中で後輩たちに誓う。
(それが猟兵の役割。俺が選んだ事だから)
このとき影華が放っていた蟲たちもちょうど戻って来ていた。様々な黒燐蟲たちは主である影華の体に戻っていくとその情報を宿主へ伝えていく。
(なるほど……こうしてイメージが直接伝わる訳ですね)
「怨霊の出現場所は一号棟の管理人室に何かあるのでしょうか」
影華は蟲たちが調べた内容を確認するように、修に聞いた。
「そうです。管理人室でブラウン管のテレビをつけて放置しておくと、一号棟の外に現れてエントランスから内に入ってきます」
その情報を聞いた芽亜と耶子は次の戦いに向けて戦意を高揚させていく。
「さ、次のお勤めに参りましょう。聞けば通り魔の怨霊とか? 遠慮なく叩き潰せる相手ですね。頑張りましょう」
「次は強敵になるから敵が出たら後輩たちは下がっててね。僕たちに任せてくれれば大丈夫だから」
復活した『通り魔の怨霊』――そのオブリビオンを倒せば、この土地の戦いは本当の意味で終了するのだから。
大成功
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第3章 ボス戦
『通り魔の怨霊』
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POW : 滅茶苦茶にしたかった
【引火したガソリン】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 死なせてやろうと思った
【凶器に用いた呪詛を纏う包丁】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : 巻き添えにしたかった
【犯行時に用いた暴走自動車】を操縦中、自身と[犯行時に用いた暴走自動車]は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。
イラスト:はるまき
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「仇死原・アンナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●公団住宅の廃墟:一号棟
とある公団住宅群の廃墟でオブリビオンとして復活した『通り魔の怨霊』……。この廃墟に残るオブリビオンはこれで最後となるだろう。
かつてこの廃墟で繰り広げられた戦いも、今度こそ終わりを迎える。
能力者の四人は一号棟の管理人室へ集まった。これから行うのは、かつてこの空間を作り出していたボス格の強力なゴーストを呼び出す手順。……管理人室の古めかしいブラウン管のテレビをつけることで怨霊が一号棟の外に姿を現すのだという。
その怨霊を迎え撃つのは猟兵たちだ。全員がこの怨霊を迎え撃つべくそれぞれの場所で待ち構える準備を進めている。
そして、テレビがつけられた。
……特殊空間に一台の自動車が現れるとそれは速度をあげながら一号棟へと向かっていく。その軌道は建物の入り口を狙っている様子だ。……廊下まで突入され中でガソリンを撒かれては厄介なことになる。その前に奴を倒さなければ。
霧島・絶奈
&&
◆心情
殺し合いがお望みですか?
では存分に愉しみましょう
この『逢瀬』を
◆行動
【罠使い】の技を活かし「魔法で敵を識別する磁気吸着式対戦車地雷」を【衝撃波】に乗せ敵進路上に複数設置
地形でもなければ激突でもないダメージなれば、当然通るでしょう?
加えて、装甲車すら吹き飛ばす爆発力です
一般的な車両など一溜りもないでしょう
さて…
「能力者」諸賢
聞けば、個の強さを束ね群体として比類なき力を発揮する…
其れが銀誓館学園の本領であり、流儀なのだそうですね
是非ともこの世界ならではの戦術と強さを拝見したいものです
成ればこそ、こうした支援も面白いでしょう?
<真の姿を開放>
【範囲攻撃】する『DIABOLOS LANCER=Replica』にて【二回攻撃】
一撃目は足元に撃ち込んで自身や他の猟兵の他、現地能力者達を強化
続く二撃目にて【マヒ攻撃】と為しますが、場合によっては二撃共支援用途として使用
更に【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】で追撃
負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
儀水・芽亜
なんとまあ、分かりやすい大量殺人犯。特殊空間から出ても活動して、被害を広げる可能性がありますね。
故に、ここで討滅します。
「全力魔法」深睡眠の「属性攻撃」意識を刈り取る「催眠術」で、幻夢クラスターを暴走車に放ちます。
居眠り運転は事故の元。建物に届く前に、運転を誤って自滅してください。
さすがに普通の火では平気な顔をしていますね。
ならば、裁断鋏『Gemeinde』で切り捨てるのみ。「フェイント」混じりの攻撃で、四肢の一本でも「切断」してみせましょう。
包丁は「見切り」「受け流し」、「除霊」「浄化」「精神攻撃」を付与した「カウンター」で怨霊の存在自体を攻撃します。
これでもう、この地には平穏が戻りますね。
キアラ・ドルチェ
&&&
葛城・時人さんと共に
ゴースト出現と同時に【高速詠唱】で茨の世界展開
捕縛し建物入り口への突入阻止と共にユーべルコード封じ
「時人さん、今のうちに撃破を!」
「これ、寿命削るからあまり使いたくない奥の手なんですが…でも、今はそんな事言ってられませんっ。そもそも私まだ実年齢3歳なので大丈夫!」
捕縛解除されても、再度直ぐに次の茨の世界を展開
逃しませんっ! 絶対に!
行人さんにも誓ったんですもの
どんな「困難にも打ち勝つ」と!
「ヤドリギ使いの名にかけて、私は絶対に貴方を逃さないっ」
おのれの、いのちをかけて!
終わったら皆さんに笑顔でお疲れ様を
そして時人さんには舌出しつつ可愛らしく謝罪
「無茶は程々にしまーす」
葛城・時人
&&&
キアラ・ドルチェと
俺もこの子も症候群やったから見た目はともかくとして
この子は大事な友達の娘だ
本当ならそれは使わせたくない
でも言い出したら聞かないのお母さんソックリなんだよな…
「三歳だからいいってもんでもないよ!あと君、今四歳だからね!」
命を削る技を躊躇いなく使う覚悟を無駄にする気はない
しかも名指しだ
「全力でいく!」
UC『光蟲の槍』起動
詠唱をしっかりして自分の中で輝く懐かしい力、俺が憧れた
眩い光を強く強く想起する
「絶対に!逃さない!」
着光の瞬間の風圧で白羽蟲笛からも蟲を出し
全部向かわせ追撃を
必要なら落ち着いて二撃、三撃
「後輩への約束も…護る!」
終われば共闘の皆にお疲れ様を、キアラにはメッを
穂村・耶子
通り魔、ね……
同情の余地はないし、バッサリ斬って捨てちゃおう
とはいえ、相手は頭のネジが吹っ飛んでるからね
こういうのを、無敵の人とかいうんだっけ?
とりあえず、相手とは敢えて距離を取って遠距離から攻撃する【フェイント】をかけよう
UCの瞬間移動で一気に距離を詰めて斬り掛かれば、対応は難しいはず
あ、いっておくけど、ボクの刀を包丁で壊そうとしても意味ないよ
ボクの攻撃は過程を無視して結果だけを残すから、ボクが刀を振り下ろした時点で斬られるのは確定
受け太刀も回避も無意味なんだけど……初見でそこまで見切れる人、そういないでしょ
今宵、ボクの顔に照り映える刃の光が、キミの現世の見納めだよ……なんてね
鈴乃宮・影華
&&&
あぁ……かつて、あの車は建物に突っ込んだんですね
ですがもう再現させません
「――骸はもう、骸の海に帰る時間です」
でもにわか剣士には斬鉄なんてできませんので……
詠唱ライフルの弾幕を自動車のボンネットにぶつけて行きましょう
それとUC:黒燐弾・常勝群を起動
蟲達には私から離れた所で『ハンマーの頭部』みたいな形で密集してもらい
「どっせぇぇいッ!」
先程ゾンビ相手にやったようなフルスイングを(幻影兵団のように遠隔で)敢行
ガソリンの火は
赤手の爪をワイヤーガンみたいに何処か適当な場所に射出し、ワイヤーを巻き取る勢いに乗って飛び退く感じで回避を試みます
●猟兵の役割
これから呼び出すのはこの土地に特殊空間内を作って潜む、ボス格のオブリビオン『通り魔の怨霊』……この公団住宅群の廃墟に巣食う脅威だ。
それはかつて五年前にゴーストとしてここに現れた怨霊。生前にこの住宅群の住民たちを轢き殺しながら一号棟へと車で入って廊下を塞ぎ、ガソリンを撒いて住民たちを大量に焼き殺した殺人鬼。その事件の際、彼は火を放つとそのまま外へ出て二号棟や三号棟でも刃物を振り回したという。
その事件でうまれた様々な恐怖と苦しみが残留思念として残り、やがて人が住まなくなった頃に銀の雨によって過去のゴーストタウンを形成したのだ。そのゴーストたちは一度当時の能力者たちによって倒されたが……それが現在、オブリビオンとして、ユーベルコードという力と共に蘇りこの地の驚異となっている。
猟兵たちがそれぞれの配置につくと、案内を務めた能力者チームは所定の手順を行っていった。それはこの空間を作り出すボス格のオブリビオン『通り魔の怨霊』出現の条件を満たす手順。
……そうして現れた暴走自動車に、鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)はふと当時の惨劇を想像した。
(あぁ……かつて、あの車は建物に突っ込んだんですね)
その想像に影華は思わず自身の肩を抱き寄せる。なぜなら死に瀕した際に体温が失われていく感覚を影華も経験したことがあるためだ。
「ですがもう再現させません――骸はもう、骸の海に帰る時間です」
そう言うと影華は『試作型黒燐複合装攻『大蘭華』』を構えて中の詠唱ライフルで迎撃と弾幕の形成を始めていく。そして同時に、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)と葛城・時人(光望護花・f35294)が一号棟の入り口を塞ぐ様に立った。
「ここは通しませんよっ!」
時人に守られながらキアラはいつでもユーベルコードを展開できる様にと『ドルイドの杖-Fragment of Lerads-』を掲げる。
オブリビオン化しているとはいえ、様々な条件がゴーストだった頃と同じ……ならば行動も似通っている筈だ。そのためこのオブリビオンもゴーストであった頃の行動をなぞり高確率で一号棟へ押し入ろうとするだろう。それを迎え討つのだ。
●暴走自動車の破壊
迫りくる暴走自動車は影華の銃弾によってタイヤを破裂させて蛇行する。しかし、それでも『通り魔の怨霊』は一人でも多くを巻き添えにせんとする執念で車体を制御して一号棟へ向かっていった。
ここに儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)のユーベルコードが炸裂する。
「眠れ眠れ愛し子よ、再び日の目を見ること能わずとも……!」
ユーベルコード『幻夢クラスター』。能力者の一部が扱える上位のアビリティ悪夢クラスターをさらにユーベルコードで強化したものだ。五百を超える大量の虹色の輝きが炸裂すると蛇行する自動車を包み込んで深い眠りへと誘っていく。その炸裂がもたらす眠りは対象を悪夢へと引きずり込むことだろう。
「居眠り運転は事故の元。建物に届く前に、運転を誤って自滅してください」
そこに重ねる様に霧島・絶奈(暗き獣・f20096)が円錐状の物体を複数放り投げた。これらの物体は絶奈が振るったアリスランスの『【Innocence】』から放たれた衝撃で自動車の進路上まで飛んでいく。
「――装甲車すら吹き飛ばす爆発力です。一般的な車両など一溜りもないでしょう」
魔法と科学を合わせた磁気吸着式対戦車地雷……異世界の特注品が悪夢の虹に紅の炎を加えた。
激しい炸裂音が特殊空間内で爆ぜてアスファルトを砕く。その爆発で暴走自動車は破壊され、吹き飛ばされた怨霊が慣性のままに粉塵から飛び出すとそれを影華が迎え打った。
「来て、私の軍団!」
ユーベルコード『黒燐弾・常勝群<<イマジンカンパニー>>』……影華の身体から黒い蟲の群れがブワッと噴き出すと密集して金槌の様な塊を形成し――。
(にわか剣士には斬鉄などの高度な剣術はできませんので……)
「どっせぇぇいッ!」
――ガンッ!
黒いハンマーが影華の動きに合わせて飛翔して、爆発で吹き飛んだ怨霊を大地に叩き落とした。
破壊され炎上する自動車の傍に叩き落されて、『通り魔の怨霊』は立ち上がりつつ叫びを上げる。その執念には並々ならない憎しみが垣間見えた。
「ぐ……。あ゛あ゛あ゛あ゛……!!! 滅茶苦茶にしたかった。巻き添えにしたかった。死なせてやろうと思った……!」
しかし憎しみの対象は個人ではなく目に映る全て。焼けながら歩みを始めるが、その目は虚ろだ。
その進路を芽亜と穂村・耶子(甘党残念剣士・f35497)が塞ぐ。
「さすがに普通の火では平気な顔をしていますね。しかしなんとまあ、分かりやすい大量殺人犯」
「通り魔、ね……。同情の余地はないし、バッサリ斬って捨てちゃおう」
「ええ。特殊空間から出て活動して、被害を広げる可能性もありますしね。故に、ここで討滅します」
芽亜の『裁断鋏『Gemeinde』』と耶子の『サムライブレイド』の刃が炎の輝きを反射して赤く染まっていた。それは過去の火災とは異なる輝き。その刃は未来を照らし理不尽を燃やすためにいまここに在る。
●異世界からのカミ
絶奈は対戦車地雷を撒くとすぐに一号棟の中へ入ってしまった。そして彼女は能力者チームの四人を連れ出して現れると、彼らにこう語る。
「さて……『能力者』諸賢。聞けば、個の強さを束ね群体として比類なき力を発揮する……其れが銀誓館学園の本領であり、流儀なのだそうですね」
「……はい、まあ」
話し方こそ穏やかだが絶奈が纏う雰囲気はどこか剣呑さを漂わせていた。異端の神々の一柱を自認する彼女はこのシルバーレイン世界の人類の力に興味を持っている様子だ。果たして今現れている性質は殺戮を嗜好する獣か、平穏を愛する聖女か。それともその両面か……。
いずれにせよ、彼女は彼らを戦わせるつもりだ。
「……是非ともこの世界ならではの戦術と強さを拝見したいものです」
能力者チームを連れ出す絶奈を時人が止めようとする。しかしそれに対して絶奈は『支援』という条件を提示した。
「待って、ダメだ。そんな危ないことはさせられない」
「勿論、無策のまま彼らを戦わせはしません。私はただ、見たいのです――成ればこそ、こうした支援も面白いでしょう?」
ヴェールから覗く絶奈の眼。その瞳は真の姿からの反転した色となっている。『カミ』の姿をとった絶奈はユーベルコードを発動させた――。
「……今此処に顕れ出でよ、生命の根源にして我が原点の至宝。かつて何処かの世界で在り得た可能性。『銀の雨の物語』が紡ぐ生命賛歌の力よ」
――その詠唱の一致は偶然の産物。加えて彼女は『ゾンビ』との戦いの最中に内心で振り返った様に、この世界は初めてなのだ。同姓同名の『霧島・絶奈』は居ても、今ここにいる絶奈はこの世界を知らない。……それでも、ソレはあまりにこの世界の根源のひとつに酷似していた。
絶奈のユーベルコード『DIABOLOS LANCER=Replica<<ディアボロスランサーレプリカ>>』が発動すると一号棟の前へ槍の様な輝く物体が突き刺さり周囲に銀の雨の領域が展開される。その雨は、猟兵と能力者たちにさらなる力と癒しを与えた。
「これでどうですか?」
そう言ってカミは微笑むと、続けて『通り魔の怨霊』へと視線を向ける。
(殺し合いがお望みですか? では存分に愉しみましょう。この『逢瀬』を)
●根本から異なるモノ
絶奈が大地に撃ち込んだ槍が発した衝撃が『通り魔の怨霊』に一時的な痺れを与えた。槍は、敵の動きを鈍らせながら大地に銀の雨を降らせていく。
「さあ、その力を見せてください『能力者』諸賢」
案内と支援で終わるつもりだった四人の能力者――平坂・修、岩下・千影、高野・伊織、シャルロッテ・バーンズの四名はこの状況に困惑をするものの、絶奈の有無を言わさぬ『カミ』たる雰囲気に圧され、さらにはこの世界で一般人を守る能力者としての自尊心も加わって武器をとる……。
「期待されるような結果は出せませんよ。……みんな、準備はいいか」
そう言うと、修は長剣を頭上に掲げ旋剣の構えをとった。
伊織の八卦迷宮陣が『通り魔の怨霊』の足を止めた。その間にシャルロッテは霧のような幻影兵を出現させ、千影の幻夢のバリアが仲間を包み込む。
だが怨霊は呪詛を纏う包丁で八卦迷宮陣を破壊すると目の前の邪魔者を排除すべく駆け出した。接近される前に導眠符が投げられるがその符も振り回す包丁で破壊されてしまう。さらにその包丁は幻影兵団の幻影兵さえも文字通り破壊した。
「なんて呪詛だ、滅茶苦茶だ……!」
「気をつけろ、恐らくあれはユーベルコードだ!」
修は注意を促しながら腕の形をした影――ダークハンドで怨霊を切り裂き妨害を試みるものの、その影さえも包丁の呪詛が破壊する。
影を破壊するために包丁が振り下ろされた隙。そこへ丸盾を構えたシャルロッテが突進した。オーラを纏った体当たり……セイクリッドバッシュだ。それが命中すると続けて千影が放つ雷の魔弾が怨霊へと命中。しかしバッドステータスの効きが悪い。
「……っ!? 吹き飛ばせない!」
「離れろ、ロッテ!」
修は回り込むと怨霊の背後から黒影剣を浴びせて注意を反らした。その斬撃に繰り出される反撃の腕を修が幻夢のバリアと重ねた剣で弾いて凌ぐと、同様に回り込んだ伊織のガンナイフの弾丸が怨霊へと突き刺さる。
怨霊は呻きをあげて防御の姿勢をとるがその足取りは未だにしっかりしており有効打とは言い難い。
「やはり、ゴーストとは違いますね。僕たちとは根本から異なる存在だと実感させられます」
「昔の来訪者組織やゴースト組織の幹部級と、どっちが強いんだろうな」
この隙に修は距離を離して間合いの外へ……この時、怨霊は修と伊織に注意が向いておりシャルロッテに背中を晒していた。
「背中ががら空きだよっ! デッドエーンドっ!!」
「まて! ロッテ、早まるな!」
そのアビリティは詠唱兵器を一時的に分解して渾身の拳へ変える奥の手。その一撃が怨霊の背を抉ると、敵はよろめいて苦悶の声を上げた。
「ぐお……っ」
「やった!」
だが怨霊はすぐに身を捻り、背後から殴りつけた相手――詠唱兵器が一時的に分解され盾さえ持たぬシャルロッテ――へ反撃を繰り出していく。
「あのバカっ!」
伊織と修が庇おうと駆け出していたが、間に合わない――。
●通り魔
呪詛を纏う包丁がシャルロッテ目掛けて横薙ぎに振られた。
「あのバカっ!」
伊織と修が庇おうと駆け出していたが、間に合わない――だが、ここで耶子が『サムライブレイド』の剣筋と共に現れる。
「――ひとつ」
包丁を持つ怨霊の手が斬り飛ばされ頭上へ飛んだ。
「ふたつ、みっつ」
続けて『通り魔の怨霊』は足に斬撃を受けて転ぶ。それは一瞬の出来事だった。短距離の空間跳躍で瞬時に間合いを詰めた耶子があらゆる防御を受け付けず結果だけを与える斬撃――ユーベルコード『秘剣・時空超越斬』を放ったのだ。
「よっつ! ……と」
四つ目の斬撃は頭上へ飛んだ後に落下してきた包丁を弾き飛ばすのに利用された。
「大丈夫? さ、ここはボク達に任せて」
そう言い耶子は後輩たちを後方へ下がらせる。それを守る様に芽亜と影華が『通り魔の怨霊』の前へと立った。
「やはり強力な個体相手には厳しい様ですね。オブリビオンにまともに対抗できるのは猟兵のみ……ということなのでしょう」
そう語る芽亜の言葉を聞き、影華は自身の黒燐蟲たちを見る。影華も元能力者として『ユーベルコード』の力を実感しているためだ。
足を負傷して転んだ『通り魔の怨霊』が立ち上がった。足に深い斬り傷があるにも関わらず平然と立ち始めるのは、元ゴーストとしての特性かそれともオブリビオン化による変異で得たものか……。
斬り飛ばされた手首も飛来し元の位置にくっつくと怨霊は再び包丁を拾って振りかざす。対する芽亜も『裁断鋏『Gemeinde』』を振るった。
「ならば、斬り捨てるのみ!」
芽亜は怨霊が持つ包丁の呪詛を弱めるべく『Gemeinde』へ浄化や除霊の力を流すと、その巨大なハサミみで受け流した。そしてすり抜けざまに怨霊の首を切断。
だが怨霊の全てに対する憎しみは止まらない。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
『通り魔の怨霊』の首が空中で叫ぶと首の切断面から燃える液体――引火したガソリンが血の様に噴き出した。『通り魔の怨霊』は首から引火したガソリンをまき散らしながら、すかさず影華へ体当たりを敢行する。まるで、たまたま目の前にいたから滅茶苦茶にしようと思い付いたかの様に。
「……っ!」
ユーベルコードによるガソリンと炎を避けるべく、影華は黒燐蟲の群れを怨霊にぶつけて時間を稼ぐと咄嗟に赤手――『試作型戦術強化機巧『暴虐之左』』の爪を一号棟の上階まで射出した。爪が突き刺さるとワイヤーを巻き取らせて緊急離脱を行う。
眼下では黒燐蟲たちが引火するガソリンに包まれて、燃えていた。
●茨の檻
引火したガソリンをまき散らしながら『通り魔の怨霊』が駆けまわっていた。怨霊は切断された首から火のついた液体を噴き出させていたが、頭部がふわりと浮いて在るべき位置まで戻ると今度は片手に包丁を握ったまま空いた手の平から引火したガソリンを撒き始める。
そうして腕を振り回し炎をばらまきながら怨霊は一号棟に向けて走り出した。
「こ、こっちに来ます時人さん!」
「危ないから平坂たちは一旦建物に避難! 大丈夫、俺たちがここで、絶対に止めるから。さあ、こっちだ!」
時人が長剣を手に前へと出るも怨霊は時人を避けて進路を変えた。その先はあえて距離を取っていた耶子の方。しかし……。
「あ、いっておくけど、ボクの刀を包丁で壊そうとしても意味ないよ。過程を無視して結果だけを残すから、ボクが刀を振り下ろした時点で斬られるのは確定――それは、さっき受けたから知ってるよね?」
耶子がこう言ながらユーベルコード……過程を飛ばす斬撃を放つそぶりを見せると、怨霊は再び進路を変える。その動きには『勝てそうな相手を選んでいる』様がありありと見て取れた。
つまり次の向き先は、キアラ。
「――太陽と月とターリアよ、荊の棘となり眠り姫の祝福を我が手にっ!」
『通り魔の怨霊』がキアラを狙って走り寄った時、高速で詠唱が行われ怨霊の四肢を魔法の茨が捕獲する。ユーベルコード『茨の世界』……最初に自動車が突進してきた際に入り口を守ろうと用意をしていた、捕縛と共に相手のユーベルコードを封じる技である。
「今ですっ! これ、寿命削るからあまり使いたくない奥の手なんですが……でも、今はそんな事言ってられませんっ。そもそも私まだ実年齢三歳なので大丈夫!」
『ドルイドの杖-Fragment of Lerads-』を掲げてキアラが叫ぶ。そこには運命の糸症候群――オブリビオンの発生とともに患う者が増え始めた現象で、全盛期への若返りまたは成長という症状がある――が関わっている。
その実年齢を理由にキアラは自身の寿命を削るユーベルコードを使用したのだ。その代償に時人は焦った。
「三歳だからいいってもんでもないよ! あと君、今四歳だからね!」
(俺もこの子も症候群やったから見た目はともかくとして。この子は大事な友達の娘だ。本当ならそれは使わせたくない)
その間にも『通り魔の怨霊』は茨を振り払おうともがき続ける。だがその腕と足の片方は芽亜の『Gemeinde』が切断した。
「逃す訳がないでしょう。ここで討滅しますと言ったはずです」
●絶対に
「があああああ!!」
茨に捕獲され、片腕と片足を切断されながらも『通り魔の怨霊』は暴れ続けた。そして身体が茨で裂けるのも構わずに大地を蹴ると強引に飛び上がって抜け出す。だがそれは更に上から襲撃してきた影華によって阻止された。
影華はガソリンの火を回避するべくワイヤーで登った際の高さを活かして、ユーベルコードによる黒燐蟲の群れをハンマーの形状に変えながら落下。そのまま真下の怨霊へとフルスイングを放つ。
「せー……の、せぇええいッ!!!」
飛び上がった直後に真上からハンマーを打ち下ろされた『通り魔の怨霊』は、轟音を響かせそのまま大地へと叩きつけられた。その衝撃に伸びて動かないうちに茨が再び巻き付いていく。今度は、より複雑に、より密接に。術者の命を吸って荊の棘はユーベルコードを封じる神秘の檻をより強固なものとしていく。
(逃しませんっ! 絶対に! 行人さんにも誓ったんですもの。どんな「困難にも打ち勝つ」と!)
「ヤドリギ使いの名にかけて、私は絶対に貴方を逃さないっ」
――おのれの、いのちをかけて!
「時人さん、今のうちに撃破を!」
代償を承知した上での二度目の使用。その頑固な覚悟に時人は額を抑えてため息を漏らすしかなかった。
(――本当ならそれは使わせたくない。でも言い出したら聞かないのお母さんソックリなんだよな……)
そして時人は強く集中するとユーベルコードの力を高め始める……これから放つのは『光蟲の槍』――強く集中するほど威力が増す、光る蟲たちの槍だ。
「今は遠くても、力の記憶は俺の中に……」
意識を集中させて想い描くのは憧れた眩い光。その懐かしい光が――力が、自分の中で輝く様を。強く、強く!!
この世界の根源をなす聖なる光の波動を時人が感じると、その手に光り輝くエネルギーの槍が現れた。その槍は時人の魂と共鳴する様に輝きを増していき周囲を光で白く染めていく。
(命を削る技を躊躇いなく使う覚悟を無駄にする気はない。しかも名指しだ)
時人は槍を打ち出す姿勢をとると空いた片方の手で『白羽蟲笛』を取り出した。笛は光のエネルギーが巻き上げる風で音を鳴らし、その音が純白の白燐蟲――ククルカンを多数呼び出していく。
「全力でいく! 絶対に! 逃さない!」
風が渦巻く程のエネルギーを宿す光の槍……その周囲には翼を持つ蛇のような純白の蟲が群れをなし飛び回っている。時人は、そんな白燐蟲の群れと共に『光蟲の槍』を放った。
「後輩への約束も……護る!」
茨の世界が白い光に飲まれていく――槍は『通り魔の怨霊』に突き刺さると、光の柱を新たに発生させて茨ごと怨霊を飲み込んだ。
●公団住宅群の廃墟
――光。その輝きに焼かれながら『通り魔の怨霊』は最後の抵抗のために動きだす。皮膚がボコボコと沸きたつと引火したガソリンを再び一面にぶちまけようとして――。
(とはいえ、相手は頭のネジが吹っ飛んでるからね。こういうのを、無敵の人とかいうんだっけ?)
その時、耶子がサムライブレイドを振った。その動きは舞いの様に、虚空をなぞり光を映す。
通り魔の怨霊――こういう手合いは凶行の最中は自身の生死への興味が薄い傾向がある。ましてゴースト、さらにオブリビオンとなってしまえばその傾向はより色濃くなることだろう。滅茶苦茶にしたい、死なせたい、巻き添えにしたい。その憎しみの対象は個人ではなく目に映る全て。そんな死の間際の執念からの反撃が……死を加速させる斬撃によって防がれた。
ひとつ、ふたつ、みっつ……よっつ。
果たして怨霊は、いくつ目の斬撃で力尽きただろう。少なくとも、その反撃は果たされないままに途絶えた。怨霊の残骸が光に飲まれて消えてゆく……その残骸を見て耶子は呟いた。
「今宵、ボクの顔に照り映える刃の光が、キミの現世の見納めだよ……なんてね」
気がつけば特殊空間は消えてもとの通常空間へと戻っていた。……すべてが終わったのだ。戦闘で砕けた地面も、建物の傷も、ここには残っていない。
光の槍を放った時人は疲れを見せながら共闘した仲間へ声をかける。
「みんな、お疲れ様だよ」
「みなさんお疲れさまですっ!」
キアラも笑顔でお疲れ様を言い、そのまま帰ろうとした……が、時人に帰路を遮られてしまう。
「キアラ、帰ったら色々言いたいことがある。良いね?」
その言葉にキアラは小さく舌を出して。
「無茶は程々にしまーす」
と謝罪を述べたのだけれど、果たして本当に反省しているのやら。
戦いが終わった安堵の中、ほのかに賑わう住宅群の中で芽亜は建物を見上げた。
「これでもう、この地には平穏が戻りますね」
かつて起きた惨劇も、戦いも、全てが終わったのだから。
――こうして公団住宅群の廃墟に発生した脅威は取り除かれた。かつて都市部を支えたこの住宅群は、再びこの土地が必要とされるまで取り壊される事もなくこのまま静かに朽ちていく事になる。
こうした土地にゴーストが溜まらない様に見て回るのもかつての、そして今もなお能力者たちの役目となるのだろう。しかしそこに巣食った脅威がオブリビオンであったなら……その時は再び猟兵たちの出番となる。
大成功
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