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痛みの先へ

#封神武侠界


「あ、ぐぁあ!!」
 男の声が響く。大きく宙を飛んだ大柄な男は、辛うじて受身を取りながら床に叩きつけられる。
 派手な音を立て転がる男性の着物は、破れ目の無い箇所を探す方が難しく、下帯すら擦り切れているようなあられもない有様だ。それだけで彼がどのような扱いを受けているのか分かるだろう。その裸と変わらぬほどに剥かれた屈強な肉体は、至る所に傷を付けている。
 恵体は彼の自慢であった。だが、先日敷かれた新たな法によって、不幸への切符と化していた。
「体の丈夫な者はその身を捧げるべし」
 とある貴族が、私兵団の鍛錬の為として屈強な男子を主として丈夫な者を集め始めたのだ。
 私兵とする為ではなく、私兵の木人代わりにする為に。
「はあ……はあ……ッ」
 彼も調査によって選ばれた一人だ。
 拒めば家族ごと罪人とする。と言われてしまえば大人しく従うしかない。
 周囲では同じ境遇の男達が、引き摺り起こされては拳や脚を叩き込まれている。時には数人がかりで嬲られ、弄ばれ、男の矜恃を踏み躙られる。
 私兵の優越感や暴力性を引き出す思惑もあるのだろうそんな役目も、しかし、限界を見せ始めた辺りで終わりを迎えた。
「よくぞここまで耐え抜いた」
 見下すような笑みでこの分所を任される私兵団幹部が言う。解放されるのか、そんな希望を抱いた彼の耳に飛び込んだのは。
「本所の木人に丁度良いだろう」
「……え?」
「声も出ない程嬉しいか? 身の程を弁えてるな!」
 我らの役に立つ事が出来るんだものな。嘲るようにして繰り出された蹴りに吹き飛ばされ、もはや立ち上がる気力も無い男は、しかし無慈悲にも更なる地獄へと送られて行くのだった。

◇◇◇

「という事件が起こっているんですよ」
 秋茶瑪・流(繁盛店長・f32732)は封神武侠界で起こっている事態を説明した。
「あまり気持ちのいい状況じゃないですからね。皆さんには、こんな状態にしている元凶のオブリビオンを倒してほしいんです」
 その為には先ず、いくつかある分所に選抜された民として潜入する必要がある。
「そして、そこで私兵の木人として、責め苦に耐えてください」
 この私兵は、オブリビオンの影響もあってか猟兵達にも十分通用する攻撃力を持っている。力自慢の一般人にはとても太刀打ち出来ない相手だ。
 ただ攻撃に耐えるという事は猟兵であっても辛いだろうが、耐えて欲しいと流は言う。
「反撃したら分所を壊滅させて終わりですからね、オブリビオンには届かない」
 場所もしれぬオブリビオンが待つ本所。そこに連れていかれたならば遠慮はいらない。本所の私兵もそこそこに精鋭だろう。彼らを突破し、オブリビオンを撃破する。
「頭であるオブリビオンがいなくなれば私兵団も自然にバラバラになるでしょうからね」
 オブリビオンの武力に酔いしれ悪政をしいた貴族も、そうなれば弱いものだろう。
「それじゃ、頑張って耐えてくださいね」
 流はそう締めくくると猟兵達を送り出すのだった。


熱血漢
 いつもの熱血漢な感じです。
 

第一章
 私兵達に痛め付けられるのを耐える章です。オブリビオンの影響で猟兵にも十分なダメージを与えられるように強化されています。

第二章
 連れていかれた私兵団本所の鍛錬場で、私兵を返り討ちにします。
 暴れてください。

第三章
 私兵団長のオブリビオンと戦闘です。

以上です。よろしくお願いします。
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第1章 日常 『武術鍛錬』

POW   :    パワーこそ正義。技の威力を鍛錬する。

SPD   :    スピードこそ命。速さを重視した鍛錬を行う。

WIZ   :    特殊な効果を発揮する技の鍛錬をする。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
アナスタシア・ムスハルト

女の子でも入れるかしらぁ?
流浪の民ならどんな扱いをしてもいいとかなってそうねぇ

まぁ、子供だし、最初はちょっと小突いて泣かせて遊んでやろう、程度でしょうね
でも私は頑強なドワーフの中で特に丈夫(元気・継戦能力)だし、冒険者としてやってきた(受け流し)し、全然平気

優越感が満たされず、歪んだ自尊心が傷つけられたら……手加減はなくなって、生意気な子供を「分からせ」てやろうと躍起になるでしょうねぇ
ただの殴る蹴るだけじゃなくて、雄と雌の上下関係を教育されちゃう
胸の先端を抓り上げられたり、最奥にたくさん注ぎ込まれたり
痛いのも乱暴にされるのも好きだから気持ちいいけど、従順に分からせられたフリをしておくわぁ



「なんだ? ガキじゃねえか」
 アナスタシア・ムスハルト(小さな大剣豪・f24499)の姿を見下ろして、私兵の男が嘲笑う。
「おいおい、こんなガキ連れてきても意味ねえだろ? 拳一発で泣き出しちまうぜ」
「あら? そんなこと言って、自信がないだけじゃなぁい?」
「……んだと?」
 凄惨な場にいるのだ。自制を意図的に外され、略奪兵として育てられている男は、そのアナスタシアの挑発に一切の抵抗なく怒りを露わにしていた。
 そして、その目がアナスタシアの全身を舐め回すように這う。欲が数珠繋ぎに呼び起こされたのか。卑しい目付きへと変わる男が拳を鳴らして「いいぜ」とアナスタシアに向き合った。
「泣いて叫んでも、もう返してやらねえぞ、お嬢ちゃん」

◇◇◇

「……く、この……!」
「どうしたの? もしかして泣くって、アクビが出て泣いちゃうて話だったの?」
 そうして始まった『鍛錬』
 アナスタシアはまだ、余裕を見せて男を煽っていた。
 彼女もただの矮躯な少女ではない。ドワーフの中でも頑強さに長け、戦闘経験も豊富なのだ。この施設へ送られただけはある。男の攻撃を受け止め、流す。その程度は造作もないのだ。
「手を抜いてやれば、このガキ……」
「ふうん、そんな戯言だれが信j――ッ」
 ドグ、と。言葉を話す最中に、これまでとは比べ物にならない速さの――鋭さの蹴りがアナスタシアの腹へとめり込んだ。あまりの勢いにアナスタシアの両足は床を離れ、宙に浮く。
「オラッ!」
 男が浮いたアナスタシアの首を掴んで床に叩きつける。そして、もがくアナスタシアを抑え込みながら、胸ぐらを掴んだ。
「生意気なガキに、上下関係ってのを教え込んでやるよ」
 掴まれた服が引き剥がされ、幼い容姿に反して豊かな胸陵が露出する。乳房を鷲掴むようにしてその先端に爪を立てる。
「ん、ぁッ!」
「テメエは愚民で、俺らが上位者だ。分かるか、ああ!?」
 それだけではない、男は己の下履きをずらして、組み伏せたアナスタシアの蜜裂にその熱を宛てがう。
 容赦なく征服欲の権化がアナスタシアの中へと侵略する。そこに彼女への思慮はなく、ただ己の快楽のためだけの道具だと言うような乱雑な杭打ちに、アナスタシアの全身に痛みが走って、目尻に涙が浮かぶ。
「い、ッ、ごめん、なさい……っ、ごめんなさいッ!」
 獣のように首に牙を立てられ、その逞しい腕が全身をなぶる。もれなく激痛を伴う快楽に、しかしアナスタシアは贖罪を求める言葉を吐きながらも、その目は男を見ていた。優越感に浸る男が己を貪っている。そんな征服されながらも、男を捕らえているという実感。激痛も衝撃も、その快感を高めている要素でしかない。
 高揚する瞳。男はそれに気付くこともなく、アナスタシアへと己を欲求をぶつけ続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サーティ・ファイブ
☆(これまでのあらすじ)丈夫そうに見えないけど内に秘めた潜在能力的に頑丈そうだなんて事言われて誘拐された。…ひっどい。

はぁ…ほんっと、言われた通りによく耐えてるなあ、オレ…
(衣服はほぼ全損。身体中に刻印された魔術回路が露わになっている)
胃の中のものも全部もどしちゃったし…
(手酷く物理的にやられて意識が飛びかけたが、一周回って精神が澄み渡ってきた。あるいは感覚がマヒしているだけかもだが)

で?次は?腹パン?それとも顔面?まだまだいけるけど?
(余裕が出てきた?)
…え、待って。なに?なにをするつもり?
物理的じゃない方向ってちょっとそれはマジでヤバ…っ!



「よく耐えてんじゃねえか」
「ヘ、そりゃあ、ドウモ」
 サーティ・ファイブ(SLM-35 Marchocias Proto・f34542)は、男二人に羽交い締めにサれるようにして無理やり直立をさせられている。
「ぐぶ、ぁ!」
 彼に声を掛けたのは、それとは別の、目の前の男。サーティが嫌味たらしく返せば、即座にその顔に拳が叩き込まれる。
 サーティの衣服は、全身ボロを着ている方がマシなほどに損失している。服の意味をなしていないその布切れに、全身に刻まれた魔術回路が顕になっている。
(ああ、でもホントよく耐えてるよ、オレ……)
 クラクラする頭で自褒しながら、サーティはやまぬ痛みに逆に冴えてきた思考を巡らせる。一時意識が飛んだ時から、むしろ何故か意識だけははっきりとしてきていた。
 胸から腹が気持ち悪い。胃の中は全部吐ききり、後は吐き気だけが襲ってくる。今更にほとんど裸であることに恥じらいすら出てきている。
(なんだ、余裕……あるじゃん)
 自分で言うのもあれだけど、図太いなと思いながら、顔を上げて男を睨んだ。
「んで? 次は? 腹パン? それとも顔面?まだまだいけるけど?」
 挑発する。だが、直後に来ると思っていた暴力は訪れない。
「お前、俺らのこと見下してるよなあ。目を見れば分かんだよ」
 代わりに、サーティを憎悪するように睨む男の目が数センチのところにまで近づいてきている。息がかかる。興奮した唾液の匂いが鼻をつく。
「お前がどんな扱いを受けるのが正しいのか、教えてやる」
 物理的にじゃなくてな。
 残っていた衣服が剥ぎ取られる。もう彼の身体とその体毛に映える白の魔術回路を隠すものはない。
「ひぐ、……っぁ……?」
 その時、腕を捕まえている男がサーティの尻尾を握りしめていた。まるで邪魔だと言わんばかりにそれをちぎれんばかりに引き上げる。
「なん、……気持ち、わりぃ」
 先程まではいなかった私兵が、サーティの股座に手を這わせている。
「……っ、ぁ゛」
 その掌が、そこにある雄の象徴を叩く。衝撃に鈍い声を漏らすサーティは明確に嫌な予感に襲われる。
「おい、こいつで遊んでやろうぜ。ぶっ壊してやろうぜ」
「ま、物理的、じゃなくって……まさか……ッ」
 拙いサーティにも聞いたことはある。だが、まさか、この状況でそれを強要されるなどとは思わなかった。
 男たちがその鍛えた裸体を晒していく。増える手がサーティの身体を弄り、若く未熟な窄みを捉える。
「ちょっとそれはマジでヤバ……っ」
「んだよ、ここはちゃんと準備始めてるぜ?」
 無数の指に刺激された欲が硬さを持ち始めている。それを握られればまた更に――。サーティにもはやそれを止めることは出来ない。
(暴れりゃ……任務が……、でも、ここままじゃ……っ)
 止める言葉も聞かず、男達はその手をサーティへと躊躇いなく伸ばしていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーニス・ウィザー
☆wiz

気持ちのいい話ではないね
力あるものはその力を持って助けるため、まして法の力を手にしてまでなんて
全く逆のことをしてる、見捨ててはおけないよ

反撃はしないで受けます
それなりに体は鍛えているから我慢、でも
腹筋を締めていても内臓が歪む、うぇ…っ
それでも耐えることはできるくらい、かも?

なかなか屈しないあたしに意地になってお腹に集中攻撃してきてる
辛いけど、あたしが耐えた分だけ他の人には行かないから倒れるわけには行かない
さすがに吐きそうになったり、吐いちゃうかもだけど

その中で一人のおじいちゃんが
腕も細くて屈強って感じじゃないけど

周りの兵をどかせてお腹に触られる
触っただけ、なのに

ぐじゅぶ!と嫌な音ともにナカが潰れる感じがして
足から力が抜けてへたり込んじゃう

内臓のものが逆流する感触、な、なんで?
浸透勁…?

内臓だけ潰す危険な技じゃ
勝手に体が痙攣して立てないあたしのそばに寄ってきてまたお腹を触られる

丁寧に臓腑を潰され、混ぜられて意識が混濁
床の上で楽な体制を取ろうとするけど中が傷ついてるから

生き地獄が襲う



 唾棄すべき邪悪だ。
 ユーニス・ウィザー(ロイヤルガード・f30744)は、隠しきれぬ嫌悪の感情を滾らせて、その鍛錬場にいる私兵達を睨んでいた。
「おいおい、そんな熱い視線で見ないでくれよ」
 その下衆の一人が、ユーニスの視線に獣欲を漲らせながら、にたにたと笑いを浮かべる。
「……」
 返事はしない。
 力あるものは、その力をもって他者を救けてしかるべし。だというのに、この場の私兵たちは、武力に加えて法の力を振りかざして、その全く逆の事をしている。
 乾いた血の染み付いた床。ここでどれだけの血が流れたのか。そして、彼らが正しく力を使っていれば、ここに流れた血、それよりも多くの命がきっと助けられたのだろう。
 今すぐに、この私兵を蹴散らし、今ここにいる民衆を開放してやりたいという気持ちをどうにか押さえるように目を瞑る。
 ここでそれをしてしまうのは、ここ以外の鍛錬所に連れて行かれただろう人々の扱いを悪化させることにつながる。
 耐えろ。ユーニスがそう自分に言い聞かせた。その瞬間。
「聞いてんの、かッ!」
「あぐッ……っ!?」
 ユーニスの脇腹に強烈な回し蹴りがめり込んだ。
 強烈な衝撃が、ユーニスの内臓をかき乱して、遅れて激痛と息もできない苦しみが襲う。一瞬視界が白く染まる。インパクトの瞬間に攻撃を察知して腹筋に力を入れたが、それでも尚貫通する威力。
「……ッ」
 胃の中を全部ひっくり返してしまいそうな痛みに、それでも、情けない悲鳴は上げまいと歯を食いしばって、男をにらみあげた。
「は、そそるじゃねえか」
 男も、周りの他の兵も、どうやらユーニスが簡単に壊れるおもちゃではないと理解したらしく、その視線が自分に向けられるのをユーニスは如実に感じていた。
「ッらぁ!」
 突き上げられる拳。ゴブ、と鈍い音を立ててユーニスの白い腹に突き刺さる拳が、一瞬彼女の体を浮かせる。床に付いた踵からの衝撃を膝を内股にして耐えたユーリスの顎を、男が掴んで持ち上げる。無理矢理に見上げさせられたユーリスに、泥を捏ねた失敗作のような醜い男の顔が近づいて嘲笑う。
「泣いて俺の下僕になるって喚けば、許してやるぜ?」
「嫌よ……」
「そうでねえとな!」
「……ぉ、ぐ……ッ」
 突き飛ばすように顎を離した男が、前蹴りを放つ。ユーリスの反応がいいと気に入ったのか。狙いはその腹。地面に転がされ、胸ぐらを掴まれたと思えば引き寄せられて拳が叩き込まれる。
 まるで鈍器を振り回すような蹴りが直撃して、逆流した胃の中が床に撒き散らされる。
「汚えなあ! おい!」
 罵声が飛ぶ。揺らぐユーリスの首を抱えるようにして膝蹴りを何度も叩き込めば、突き抜ける衝撃に最早押さえは聞かず、たちまちにユーリスの口は鉄と饐えた酸味に支配されていく。
「う゛ぇ……ぁ……っ」
 胃の壁がくっつくような感覚さえ覚える程に、何も吐き出すものがなくなったユーリスは、それでも絶えず襲い来る嘔吐感に苛まれながら、それでも膝はつかない。
 どれだけ蹴り飛ばされようと、殴り倒されようと、震える手足を藻掻き立ち上がる。
「ぁ……、く、あ……」
 立っているだけで精一杯だ。頭痛がひどい。常に床が揺れているように感じる。重点的に攻撃された腹部は局所的に服が崩れおちて、白かったのだろうその緩やかに弧を描くそこは、まるでドドメ色のペンキを塗られたかのように痛々しく傷を浮かばせている。
 それでも、ユーリスは泣いて許しを乞うような選択は選ばない。
 決して。
「はあ、はあ……コイツ……」
 男も、次第に疲れを見せ始めている。それもそうだ、一方的にとは言え、抑えもしない殴る蹴るという瞬間的な運動を重ねれば疲労もする。
「……ふむ、そろそろ代わってもらおうかの」
 男が伝う汗を拭う、そのタイミングで。ユーリスを囲んでいた兵士の外側から声がした。
 人山が自然と割れる。そこにいたのは身体の大きい男ばかりのこの場所にそぐわない、小柄な老人だった。
 手足も細く、この場にいる理由がわからないような風貌。だが、その周囲の私兵の反応にはそんな困惑は見当たらない。
 むしろどこか恐れをも抱くような目で老人を見ている。
「あ、ああ……」
 今までユーリスを嬲っていた男すら、文句の一つ発さず、その老爺に道をゆずるのだ。
 老爺はユーリスの前に立ち止まる。
「可哀想になあ、こんな所に連れてこられて」
 慮るような言葉。だがユーリスは、そこに一切の温もりを感じない事に酷く寒気を覚えた。
 老爺は優しげな手つきでユーリスの肌に手を当てた。
「健康的で良い腹じゃ」
 裂傷と鬱血にまみれた肌のどこが健康的だというのか。そんなことを考えたその時。
 ぐじゅぶ。と泥水をかき混ぜたような音がした。
 どこから?
 ユーリスの腹の内からだ。
「ぁ……?」
 声すら出ない。激痛と呼ぶにもあまりに凄惨な感覚が、ユーリスの腹の中で巻き起こり、どれだけ殴られようと蹴られようと砕けなかった膝が崩れ落ちる。脱力した膀胱から溢れる液体が下肢を伝い落ちていた。吐き出すものもなくなったはずの内臓から何かがせり上がってくる。
「ぉ、あ」
 吐き出したのは鮮血だった。ビチャ、チャ。と床を汚しながら、ユーリスは自分の身体に起こった異常に頭が追いつかない。
「内臓だけを潰した」
「浸透……、勁……?」
「まだ声が出せるか。ああ、愛いのう」
 そう零し、ゆっくりと老爺がその手を伸ばす。無意識にユーリスは腹を庇うように後ずさっていた。軋む身体も、血の味も、濡れた両足も気にはならない。
 逃げようとした。彼女にとって、それは幸いだったのか。その事にユーリスが気づくよりも早く、老爺の手が腹に添えられる。払いのける力もない。
「ひ、ぁ……」
 老爺の手の感触。それが腹に触れる。だが、すぐにその激痛はなく、朗らかに嘲笑う老爺は恐れるユーリスの表情を見つめていた。
「良い目だ」
「……っ、ぁ」
 瞬間、内臓がかき回される。痙攣するようにユーニスの身体が跳ね上がり、意識が混濁して痛みを遠ざけようとする。
 だがそれでも逃れられない。中が破れ水風船のように歪に膨らむ腹をどのような体勢で支えようとも、自分の一部が別物へと変えられる絶望からは逃れられず。
「……ぃ、あ゛」
 また、老爺の手が腹に触れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーリア・ブラッドスノー
☆血みどろok

あちこちから悲鳴と苦痛の声が聞こえます
このような仕事であれば当然かも知れませんが

ここはその中でもひどいですね
皆ほぼ虫の息、濃密な血の匂い

ここの私兵たちは青竜刀や槍を持っていますね、どれも血に濡れていて
普通なら演舞と考えますが…当てていますね
嗜虐的な笑みを浮かべて…あの手の笑みは狩る側と思っている顔です

はぁ、やはり演舞ということにしたいのですね
なぜ寸止めしていないんですか?
素人が経験者の攻撃を交わすのはほぼ不可能なのに
その結果がこの惨状でしょう?

いいでしょう、演舞に付き合ってあげます

命がけの踊りははたから見れば美しく見れるかもしれません
演舞としてはうまく行っているのに何故苛ついているのでしょう

攻撃の当たらないイラつきで直線的な動きですね、読みやすい
このままと思いましたが…相手が増え

よけ続けるのは難しい
後ろからの槍を避け、前の剣を避けても

腹に熱さ、青龍刀が深々と
刺さったまま一直線に横に引かれ

目の前の床に赤と桃色が広がる
手で臓物を手で抑えるもぬるぬるして

相手にやめる気配はない…



 リーリア・ブラッドスノー(うつろなる幻想・f27329)の潜入した鍛錬場は、死と血の匂いに塗れていた。
 恐らくは他の分所とくらべても凄惨な光景が作り出されているのだろう。
 悲鳴と苦痛の声。
 鼻を覆いたくなるような鉄臭さ。
「……」
 濃密な、血の匂い。
 リーリアの見ている中で、一人の男が同じように槍を握らされて私兵と向かい合っていた。男の身体は既に傷だらけで、寒がるように身体を震わせている。相当量の失血があるのだろう。
「おいおい、ちゃんと構えねえと演舞にならねえだろ?」
 まるで、互いの了承を経た演舞試合の体裁を見せるそれは、しかし、とてもそう捉えることなど出来ない。
 万全の状態であろうと。素人が経験と修練を積んだ兵士に一対一、正面からぶつかって勝てるはずも無い。リーリアの予想は、数秒後に見事的中した。
 勇んで踏み込んだ男。その槍を容易く弾いた私兵の槍先が男の脹脛を裂いたのだ。勢いのままに地面に転がって、だくだくと血の溢れる脚を抱えて悶える男。それを私兵は、ただ嘲笑って見下している。
「……はあ」
 これは演舞などではない。力量を見れば、寸止めすることも容易いだろうに、刃を当てているのだから。
 男が恐らくその生命を賭して突きこんだ瞬間の、私兵の笑みは、他者を貶める愉悦に満ちたものだった。嗜虐的な笑み。己が狩る側だと確信し、そして獲物を弄ぶ享楽に酔っている目。
「おい」
 そのままでは、失血死するだろう男を捨て置いて、その私兵はリーリアへと先程まで男性が使っていた槍を投げはなってきた。
 鉄の重い音を響かせてリーリアの足元に槍が転がる。
「これは?」
「次はお前だ」
 どうやら、ため息が聞かれていたらしい。
「良いでしょう、付き合ってあげます」
 ですが、これは必要ありませんね。リーリアは転がる槍を拾おうともせずにリーリアは私兵の前で、一つ優雅に一礼をしてみせた。

◇◇◇

「ぐ、……この……!」
 リーリアは、服の裾を花のように浮かばせて、槍の穂先を躱す。一歩間違えればたちまちに命を奪われてしまうだろう、命がけの演舞。
 それは、苛烈ながらも、美しさを纏うもので。
「演舞としては上出来でしょう?」
 リーリアは、苦い顔で睨む私兵に問いかけた。
 なのに、どうして苛ついているのでしょう? 問いかけたリーリアに返るのは忌々しげな舌打ちだけだった。
「ちっ……!
 薙ぎ払われる槍。短絡的に振るわれるそれは、構えから軌道が読めるような直線的な攻撃でしかない。
 それを躱して、今度はなんといって煽ろうか。そんなことすら考えていたリーリアは、その瞬間、何かが風を斬る音を耳に捉え、咄嗟に回避行動を取っていた。
 鋭利な刃がリーリアのいた場所を貫く。
「な……?」
 だが、そこにあったのは、槍の穂先ではなかった。
 青龍刀の刃。相手している兵士が持ってはいない武器。
 見れば、演舞と称して戦っていた男とは違う私兵が、青龍刀を持ってリーリアの背後から斬りかかってきていたのだ。
 気を取られたリーリアへと、今度は槍の攻撃が襲いかかる。
 目配せで合図でもしていたのか。それとも動きの中に符号でも混ぜていたか。乱入に驚くこともなく、即座に連携を組む私兵達。リーリアは口を閉ざし、連撃を回避する。
「そら、ちゃんと踊れよ」
「……っ」
 一対一の演舞の形式すら放り出した彼らに、他ならぬ嫌悪の視線を向けながらも何も言わない。諭した所で意味がないことは理解している。
 ただリーリアは避ける事に専念する。
 そうしていれば、また手勢が加わり、徐々にその攻撃を避けることが難しくなってきた。背後から突き出される槍を躱し、前方から叩きつけられる青龍刀を避ける。
 次は、どこから。誰が。
「――ッ」
 目まぐるしく加速する思考の中で、不意に脚に鋭い痛みが走っていた。黒い細長い鉄。棒手裏剣が、一瞬軸足としたリーリアの脚に突き刺さっていた。それは、リーリアを囲む私兵ではなく、完全に傍観していた兵の一人。
「く……ッ」
 転ばぬように脚を止めてしまった。その瞬間。
 ずぐ、とリーリアは己の脇腹に青龍刀の刃が突き刺さるのを見た。まるで手品か何かのように沈み込んでいく刃から、衣服へと赤い染料が溢れ出ていく。
 青龍刀が、リーリアの中にめり込んだままに、横に引き抜かれる。細長い亀裂が刻まれ、鮮血が吹き上がっていた。
 だが、それだけではない。
 中身の詰まった道具袋が破れたように、皮膜も刃に裂かれたらしい臓腑が自重によって傷口から顔を出す。
「ぁ……っ、か」
 手で押さえ込む。だが、血にぬめるそれは指をすり抜ける。バランスを崩したリーリアが膝を突いて、初めてどうにかまろ日出る桃色の塊を傷口に押し込み、そして、自らに降りる影に気づいた。
 更に増えた影。それぞれに武器を構えたままに、リーリアを見下ろしている。
「未だ元気そうだな」
「い、ぎ……ァっ!!」
 槍がリーリアの脚を貫いた。骨を削るように傷口を広げられる激痛に声を漏らせば、傷口が開いては、抱えた腕の中に肉が落ちる。
 耐えなければ。そう考えるリーリアの意識は、昏く、曖昧にぼやけていく。
「は、本家に送る前に、どれだけ保つか。確認してやろうぜ」
 耐えなけばいけない。
 この激痛を。苦痛を。
 耐えられるはずだ。とリーリアは己を鼓舞する。アレに比べれば。まだ、まだ。
 思考が過去と現在を去来する。
 まだ終わらない。
 現実という悪夢はまだ、覚めやらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『道場破り』

POW   :    向かってくる弟子達をちぎっては投げる

SPD   :    弟子達の妨害を掻い潜り、道場主のもとを目指す

WIZ   :    弟子達を説得し、道場主の支配から解放する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 凄惨な鍛錬場を辛うじて耐え抜いた猟兵達。
「ここで生き抜けば、お頭に直々に殺してもらえるかもな」
 彼らが連れて行かれたのは、地下に作られた道場だった。それまで相手していた私兵よりも、鍛え上げられた兵。それらが集う鍛錬場本所。
 ここに連れてこられた者は、さらなる地獄に絶望を抱くことだろう。だが、猟兵たちにとっては違う。
 彼らのいう「お頭」が、つまりはオブリビオンが、ここにいる。
 ここの兵も、猟兵がうごきだせば、すぐにその思惑に気付いて妨害しようとしてくるだろう。だが、もう耐える必要はない。居所が知れた今。
 邪魔するものは薙ぎ払い、オブリビオンを倒すだけだ。

◇◇◇

 襲い掛かってくる私兵達を撃破しながら、地下道場の奥を目指す場面です。
 私兵達への恨みを晴らすも、突破を最優先にするもご自由にどうぞ。

 よろしくお願いします。
アナスタシア・ムスハルト


散々に犯されてから放り込まれるわぁ
地面に落ちた衝撃で、幼い雌穴に注ぎ込まれたモノがゴボッと溢れちゃう
それだけで私の「使い道」は理解される
狭い穴をぐいぐい押し広げられて、もっと締めるようお尻を叩かれて、おっぱいを鷲掴みにされたら母乳が噴き出て、子宮をガンガン突き上げられて、熱いのを好き放題に注ぎ込まれて
たくさんの男の人に使い回されるわぁ

一頻り私を使って満足して、空気が弛緩したところで、「不意打ち」に「怪力」で引っ掴んで「びったんびったん」
さらに別の敵に向かって叩き付ける
刀があれば、拝借して首を「切断」
あぁ、別に痛みへの恨みとかじゃないわよぉ?
ドラゴンや天使の攻撃の方が痛かったし
ただ、邪魔なのよ



「ぁ……うっ」
 アナスタシア・ムスハルト(小さな大剣豪・f24499)は、連れてこられた本所の床に放り投げられた。男たちの飢えた視線があつまるのは、彼女の服装のせいだけではない。
 叩きつけられた衝撃で、散々鍛錬所の男に押し拡げられた壺孔から、ごぽりと粘ついた白い雫が溢れ出る。彼女は、前の鍛錬場の男たちにされるがままの状態でここに放逐されたのだ。
 床に転がったアナスタシアは震える手足で床を掴もうとするが、それよりも先に、足首を掴まれ宙吊りに彼女の身体が持ち上げられていた。頭を下に掲げ上げられ、眼前には下穿きに浮かぶ怒張がその存在を主張している。
「なんだ、てっきり面白みもねえ男が来るのかと思えば、気の利く差し入れじゃねえか」
「……っぁ、ンッ、ぁあッ!」
 片足で吊るされて、自然と開く幼い桃色を宿すそれが男の眼前に晒される。雫を零す割れ目へと男の指が沈み込めば、中をかき混ぜられて溢れる白濁が腹をつたい喉元へと伝っていく。
 嬌声を上げるアナスタシアなど構いもせず、男はまるで物を扱うように足首を掴んだまま周りの男に彼女を見せつけた。
「見ろよ、拡げられちまってらぁ」
 指で濁った液体にまみれた内壁を押し拡げてみせた後、徐に男はアナスタシアの腰を掴む。上下を反転させると、ずらした下穿きの中身を深くアナスタシアへと突き刺した。彼女への配慮など無い。ただ、入るから入れた。それだけだというように。
「お……ッ、いい具合じゃねえか、なあ」
「んぐ……ッぁ、うぅ……ッ」
 産毛すら薄い幼い肉を、見にくい棍棒が捲り上げるように貫いていく。足先すら床に付かず、ただ男の手だけが支えの状態では、ただ男の欲求を開放する道具となり下がる。そんな一人楽しむ男に、周りの私兵達もそばへと集まっては上下に跳ね続けるアナスタシアの身体へとその手を伸ばしていった。力を入れろと尻を叩かれ、揺れる豊満な膨らみを鷲掴みにされればその先端から溢れる白乳に乾いた唇が吸い付いて、歯が突き立てられる。
「ぁッ……ぁあッ」
 その手も、胸も、口も、脚さえも男たちに使われ、水瓶のように絶え間なく注ぎ込まれるアナスタシアは、それでも、確かに快感にその頬を赤らめさせている。
 快楽の嵐に、男たちが手を止めるはずなどなく。その饗宴はその場の誰もが満足するまで行われたのだった。

◇◇◇

 そして、誰もが満足した、その時。一息ついて鍛錬に戻ろうとした、その時。
「は?」
 一人の男が他の男を巻き込んで、地面に叩きつけられた。
 彼らは、突然起きたその惨劇に頭が追いつかないでいた。叩きつけられている男は、確かに私兵の一人で。
 アナスタシアを先程まで共に嬲っていた男だ。それがどうして他の私兵を巻き込んで息絶えているのか。全身の骨を砕かれたような格好で。
 そして、まるでそれを為したかのように、小さな滝のように男たちの名残を緩んだ柔筋から流すアナスタシアが立ち上がっているのか。
 ごくりと息を呑む。恨みがそうさせたのか。そんな風に思う彼らの思考を読んだように、アナスタシアは首を振ってみせた。
「……別に痛みへの恨みとかじゃないわよぉ?」
 傍に転がっていた刀を手に、アナスタシアは安堵させるように笑ってみせる。
「ドラゴンや天使の攻撃の方が痛かったし、ただ……」
 ちろりと舐めた唇に襲いかかるタイミングを計れずにいる私兵たちはその言葉の続きを待つ。
 その言葉が発せられると共に、振るわれた強烈な一閃が男たちの首を、一振りのもとに断ち切っていた。
「ただ、邪魔なのよ」
 ごとりと、首と身体が崩れ落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サーティ・ファイブ
☆(サーティは先ほどの惨状そのままに連れてこられた)
酷い目に…いやほんっと、酷い目っていう言葉じゃ表せないっていうか…
すっごく、むかつく。身内なら許すけど、他人はダメだよアレ。(割と身内には甘いようだ)

でも、もう我慢する必要もないのは…いいよね。
(指を指し、雑に狙って指先からオーラの散弾を放つ。狙いが雑だろうと散弾なら気にする必要がない)
だから、この場にいる全員ボッコボコにしてやるっ!
(散弾を乱射しつつ、生きた木人のせいで使われなくなった木人(木製)に目を付け)
これもおまけっ!
(木人に指先を当てて、威力と攻撃回数が3倍化されたオーラ散弾を発射&粉砕して木人の破片を飛ばす攻撃も混ぜる)



「う……酷い目に」
 サーティ・ファイブ(SLM-35 Marchocias Proto・f34542)は無数の男たちの手によって弄ばれたそのままに、この本所へと連れてこられていた。
「いや、ほんっと……酷い目なんて言葉じゃ足りないっていうか……」
 剥がされた衣服は捨て置かれ、汚された毛皮はごわついて所々歪に束になって絡まっている。拒みきれない状況の中で、なまじ猟兵故に感覚を受け入れる余裕があったせいでサーティ自身も快を覚えてしまったという事も感情に拍車をかけていた。
 思い出してまた少し涙目になる。
 これが身内だったなら許しはするが、他人からあんな風に触れられるのは、やはりダメだ。そんな心中を誰かに話せば、身内なら良いのかと若干引かれてしまいそうなことを考えながら、サーティは周りの私兵を見回した。
「でも、もう我慢する必要はないよね」
 サーティの惨状にニヤついた笑みを浮かべる男達に、彼はどこか落ち着いた心地でその視線を受け入れられた。
 まだここから更に抵抗してはいけない。なんて話だったならこうして穏やかにはいられなかっただろう。
 まあ、穏やかだったかと言えば、そういうわけでもないけれど。
 サーティはおもむろに、指を立て、適当に私兵を示す。これだけいれば、狙いは適当でも当たってくれるだろう。
 身構える私兵達。流石に抵抗の意志が見える相手にのんきに近づいては来ないらしい。サーティが動くより先に制圧しようとしたのか、一斉にサーティに襲いかかる男たちへとサーティは指先からオーラの散弾を放っていた。
「この場にいる全員ボッコボコにしてやるっ!!」
 ババッ! と電気回路がショートを起こしたような音と瞬きを放って弾丸が奔る。目にも止まらぬオーラの塊。サーティへと肉薄せんとしていた男達に放たれたそれらは、屈強な肉体を貫き、弾き飛ばしてはぶっ倒していく。
「こんのッ!」
 だが、狙いも定めずに放った散弾、その欠片すら飛んでこなかった箇所もある。偶然そこにいた男達が三方から其々にその手を伸ばしてくる!
 ダダン! とサーティは床を強く蹴ると、身体を跳ね上げて掴みかかる、もしくは殴りかかってきた腕を飛び越えながら、その頭の一つを蹴り飛ばした。最中、真下に散弾を放ちながら跳躍、着地。
「おらっ!」
「当たんない!」
 やられた仲間に目もくれず私兵がサーティを囲み襲い掛かってくるのを躱しながら、散弾を打ち込んでいく。攻撃が幾らか避けきれずにサーティの身体にぶつかるが、そんなもの、前の鍛錬場での出来事に比べれば何の事はない。
 とはいえもう少し手数がほしい。身軽に包囲を抜けたサーティがそう考えた丁度その時。サーティの傍らに、随分使われていなさそうな木人が立っていた。人のそれではなく、ちゃんと木製の木人だ。
「いい加減に!」
 追う私兵。サーティは木人の脚を散弾で砕くとその本体を前へと浮かばせる。伸ばした指先をその木人に付けて。
「これも、おまけっ!」
 オーラを放つ。
 砕けた木片がオーラを纏い、刃が如く散弾となって降り注ぐ。
「ぐ、ぁああッ!」
 弾数も威力も拡大させた散弾が私兵を貫いて悲鳴があがる。だが、まだ止まらない。
 サーティの鬱憤はまだまだ収まるところを知らないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーリア・ブラッドスノー


はぁ、はぁ、うっく
だめ、傷口が広すぎて…腸を戻せない
血と粘膜でぬるぬるして押さえておくのも最低限にしか
自分の内臓を見るのは慣れていますが、この感触は慣れないものですね…

向こうはこの傷ではもう何もできないと思っているでしょうか
甘いですね、生き地獄などとうに味わい尽くしたというのに
おすそ分けしてあげましょう

メスを取り出しUCを使います
目の前に本物の内臓が溢れているならもはや現実と区別がつかないでしょうか?
あなたたちがやったことです、報いを受けなさい

とはいえ、おなかに力を入れると腹圧で新たに腸が顔を見せて
ピンクの表面に静脈の紫
苦痛に答えるように蠢いて生暖かく

でも進まなければ…
臓物を抱えて前に歩み…



 リーリア・ブラッドスノー(うつろなる幻想・f27329)は、裂かれたままの腹を抱えながら、よろよろと歩きだす。
 運ばれる最中にどうにか全て腹に収めることは出来ていたが、意識が遠い。失血が致命的な領域にまで達しているのが分かる。手足が寒い。自分の身体とその外側との領域が分からなくなるような眠気が全身を蝕んでいる。
 幸いなのは激痛すら遠のいていることか。動けば身体が跳ねる。見下ろせば腹の隙間から青黒い脈の這う肉の管が見えるが、もはや見慣れたそれは、だが、滑る怖じ気が走るような感覚とともに温かみを僅かに感じさせてくる。
 この感触だけはどうしても慣れない。
「おい、死にかけじゃねえか」
 私兵がそんなリーリアに気づいたらしく、忌々しげに言い放った。そこに彼女の状態を慮るような様子はない。ただ、献上物が酷く使い古されたものだったという不快ばかりの声。
 両脚も満足に上がらず、常に足先を引きずるようにするリーリアに向ける目は、警戒のけの字もなく、油断といっても尚あまりあるようなものだ。
 リーリアが、もはや何も出来ず死に絶えるだけのモノだと、おもっているのだろう。
「甘い、です……ね」
 笑いすら浮かべながら、リーリアはメスを取り出した。
「おすそ分け、してあげ、ましょう」
 途切れる言葉、それが彼らに届いたかは知らない。
 ただ、彼らがメスを見たその瞬間。
「は、……ぁ、が?」
「なんだ、これ、血が……俺の、ッ、あッ!? あぁあ、アアアっ!!」
 私兵は一様に己の腹を抱えながら、激痛に悶え始めた。
 彼らの身体に穴が開いていない。鍛錬の傷はあれど、それ以外が五体満足の状態のまま。だというのに、彼らに襲い来るのは確かに腹を裂かれ、その中身を引きずり出されるような恐ろしい激痛と不快。己の生物としての尊厳を奪い取られるような陵辱の記憶。
 それは――。
「あなた達がやったことです、報いを受けなさい」
 そう。
 リーリエは、その身をもって体感した現実だ。
 私兵になぶられた記憶を強制的に目の前の彼らへと幻覚として体感させているのだ。リーリエは彼らに刺されたわけではない。だが、あの鍛錬場よりも濃く、血の匂いが充満するこの場所。
 彼らも同じようなことを、あの鍛錬場以上に繰り返しているのは明白だ。
「……ッ」
 少しおなかに力を入れる。脚を前に出そうとした拍子に、腕の中に肉の塊が落ちる。ピンクの表面に紫色の線が張っているそれを再び押し込めながら、止まっていた呼吸を取り戻す。
 激痛が頭の中で轟いている。まるで雷雲が脳の中に詰まっているような。強烈なスパークと轟音。
「……ぁ、はあ……ぐッ、うぅ」
 もはや、歩くという体裁すら怪しい。そんな身体を引きずりながら、それでも、リーリアは先へと進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーニス・ウィザー


意識…失ってた…?
ぐぶっ!

うぁ…お腹、内臓が潰れて激痛の塊を飲み込んだみたい
た、立たなきゃ、ごぷっ

立とうとすると喉の奥から血が上って
真っ赤な液体を吐き出す、お腹の中ぐちゃぐちゃになってる

血を吐いて苦しむあたしを見て私兵はニヤニヤしてる
悔しい、う、うぐ、うあああああ!

痛みを無視して立ち上がる
お腹に力が入って新しい血を吐きつつ激痛が襲うけど噛み殺して

目指すは道場主、たぶん私兵の相手をしてたら体が持たない
武器を振るって勢いと気迫でひるませる
あのおじいちゃんは…引っかかってくれないか
抜き手がお腹に深々と

じわりとにじむ血、翁の腕に血を伝ってる
お腹突き破られた?

相打ち覚悟で一閃
もう少しだけ…体よ持って…



 ユーニス・ウィザー(ロイヤルガード・f30744)は目を覚ました。いつのまにか意識を失っていたらしい。
 目を開けたそこは先程までの鍛錬場ではない。どうやら、本所とやらに連れてこられているらしい。
「ふむ、これでも死なんとはな」
 声が聞こえた。見上げればそこには先程の老爺。
「――っぎぅぶ」
 その姿を見た瞬間に、臨戦態勢を取ろうと転がった身体を起こそうと力を入れた瞬間。まるでスイッチが入ったように、全身に激痛が走り、喉の奥から鮮血が溢れ出ていた。
「ガハッ、ァ……グぅ……ッ」
 そうだ、分所の鍛錬場であの老爺に腹を。
 まるで我が物顔で老爺がそこにいるということは、老爺は本所の私兵だったのだろう。あそこの私兵が一目置いていた理由も納得がいく。
 立ち上がろうとする。そうして赤い液体をぶちまければ、にやにやと私兵がユーニスを見下ろしていた。血と汚物にまみれた全身。惨めにもがくユーニスをあざ笑っている。
「……ぐ、ぅあ! っ……ぁあッあああ!」
 脚を付くも、血で滑って顔面を床に叩きつけるようにして転んでしまえば、その醜態に私兵の笑いが膨れ上がる。
 それでもなお、ユーニスは立ち上がってみせた。
「フゥーッ、フゥー……ッ」
 冷や汗が全身を濡らす。満身創痍。それでもユーニスは剣を抜く。
 このまま、この数の私兵を相手していれば、この奥の私兵団長のオブリビオンに辿り着くまで体が持たないだろう。
「ぁ、ぁああッあああ!!!」
 気が狂ったように叫び、ユーニスは剣を振りかざして、奥へと駆け出した。踏み込む度痛む体に、この2つの目がどこを見ているかすらわからなくなる。
 刃に裂かれ、狂乱する様子に驚嘆し、私兵が道を開ける。数歩。それで進めはしたが。
「ぐ……ぶ」
「ほほ、元気の良い娘は好きじゃ」
 老爺がユーニスの体を抱くようにして、その手を彼女の腹に突いていた。
 浸透勁を貫く方へと特化させたのか。深々と老爺の細いしわがれた貫手が、ユーニスの白い腹を貫いている。
 ずぐ、と滝のように溢れ出す赤にまみれた腕を、老爺が引き抜いていく。その刹那。
(……ここで、逃せば……負ける)
 ユーニスは直感した。全身力を込める。破られた腹が更に避けようと構わない。老爺の腕を掴み、そのまま引き寄せるように身体を動かし。
「なッ……まさか、まだッ」
 走る刃が、老爺の首を跳ね飛ばした。
「……っ」
 先に進む。
 もう少しだけ、と己の体に願いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『緋車』

POW   :    鎖爆牢
【拳】が命中した対象を爆破し、更に互いを【闘気の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    転穿天
【闘気による加速と縮地歩方】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【拳】で攻撃する。
WIZ   :    城崩落
【拳】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
👑11
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「さあ、楽しもうか!」
 猟兵を歓迎するように緋車は両手を広げて待っていた。
 猟兵との殺しあい、ただ純粋に歓びを感じるような。
 そんな笑みで。
リーリア・ブラッドスノー

やっと、ですか…
はぁ、はぁ…うっく
最初に出て来ずに疲弊したところに、とはいい性格ですね

煽りつつ、クロックアップ
無理に動けば内臓、腸が飛び出しますが長引かせるくらいなら
激痛と喪失感で意識を失いそう…
負荷をかけているせいで臓器が蠢いている…

メスで高速移動しつつ切り裂き
この状態だとそれが精一杯でしょう
一応片手で傷を抑えていますか焼け石に水、てしょうか

この傷で動けているのに驚いてくれれば…
難しいか

動くたびに床があたしの血で染まりますね
血だけでなく体液も…あぁ、命が失われていく
おそらく倒し切るのは無理、ならば少しでも手傷を負わせたい

城崩落をわざと受けます
腹の傷口に深く潜り込んて直接内臓が潰され…

派手に苦しみ嗜虐心を煽る
だめ、内臓を引きずり出さないでと懇願してみせます
腸を掴まれたまま引き出される手を抑え込むふりをして…

掴まれたまま引きずり出されたそれはぴくぴくしてピンクでぬらぬらして…
痙攣して断末魔の悲鳴を上げる

もう何もできないと思わせて
捨て身のメスの一撃
でももう動けない
逆上されればされるがまま…



「……楽しもう、ですか」
 リーリエ・ブラッドスノー(うつろなる幻想・f27329)は、緋車のセリフに失笑をこぼす。
「最初に出て来ずに疲弊したところにその言葉、とはいい性格ですね」
「はは、あいつらにはどうしようもない位のバケモノじゃないと、楽しくじゃないか」
 緋車はリーリエを冷めた目で見つめている。
「ぐ、ぅ……はあ、はぁ……っ」
 裂けた腹を抱える無様な姿。出血は多くない。傷が塞がったのではなく、その体内の血が著しく流失したせいだ。普通の人間であれば、もうとっくに死んでいてもおかしくない傷。まだ意識があるのは、彼女に痛みへの耐性があることだけではなく、猟兵という存在だというのが強い。
 だが、緋車はそれでもリーリエに興冷めだと言い放つ。
「その点で言えば、君は残念だね。アレ程度にそんなに傷ついて」
「――本当に、……ハ、ぁッ、……いい性格ですね」
 リーリアは言い放つやいなや、指を鳴らした。瞬間。彼女の動きが目に見えて俊敏に変わる。寿命を引き換えにするユーベルコードに、ただでさえ朽ち崩れていきそうな体が悲鳴を上げる。
「あ、ぁ……ッ、ぐぅ……じ、ぅッ!」
 体内で導火線が駆け回り、至る所に仕掛けられた無数の爆弾が破裂するような激烈な痛みがリーリアの脳を焼く。真っ白になる意識の中で、リーリアは辛うじて己を身体と動きをリンクさせる事に成功していた。
 動けば、それだけ腹圧に内臓が踊る。視界の端に踊る肉塊が赤色ではなく紫に膿んだ色をしているのは、視覚がおかしくなっているからか、それとも、臓器が壊死しつつあるのか。
 だとしても、長引かせるくらいなら。この激痛と喪失感と共に防戦に持ち込まれるくらいならば。最後のマッチの灯火に風を送るような行為であってもリーリアは、速攻を選ぶ。
 握るメスで緋車に肉薄する。
 放った斬撃は、しかし、緋車の肌は愚かその衣服すら切り裂くことはない。容易く躱された一撃の隙。緋車の脚が動く寸前にリーリアは腹を庇うように肩を出す。
「がァッ!! ……ッぁ、ぅ!」
 重い足甲がリーリアの身体を跳ね飛ばす。まるで巨大な動物の衝突をうけたような衝撃がリーリアを貫く。残る血を絞り出すように、鮮血が尾を引いて床を汚していく。叫びも掠れ音にならない。肺に血が詰まっているのか、呼吸をいくらしようと苦しみが消えない。
 酸素が足りない。血が足りない。
 それでも、リーリアは立ち上がった。まだ。まだ、地獄は浅いと、自分に言い聞かせるように。
「目障りだな」
 そんなリーリアの眼前に、緋車は立っていた。
 冷めきったその目は、リーリアをただの弱者としか見ていない。振るわれた拳。それが己の腹へと吸い込まれていくのを、ゆっくりと動く視界の中で、リーリアははっきりと見ていた。
 沈み込む。防ごうという考えは巡れど、しかし、どうやって今まで腕を動かしていたのかすら思い出せなかった。それでもどうにか動いた片腕が拳を受け止め。
 内側からはじけ飛ぶ。骨片を散らし、防御にすらならなかった腕を貫いた拳がリーリアの胴体に打ち込まれた。 
 衝撃は、背中へと駆け抜ける。風穴が空いたような――いや、恐らく裂傷が背中へと届いているのだろう。痛みは既に全身を包んでいて、どこが傷ついているのかいないのか、それすら分からない。
「状況も理解できない蒙昧」
 緋車の腕が動けずにいるリーリアの今まで守っていた腹の傷に向かう。
 彼女の全身は既に切り刻まれているようなものだ。それでも、彼女が頑なにそこを守ろうとしたのは、何の事はない。状況判断能力の欠如によるものでしかない。
 始めの傷を塞いだとて全身からの出血は無視し得ぬものであり、ただ猟兵の準不死性にあぐらを掻いて思考を蔑ろにしただけ。
「ぁ……ッ、い、や……ッ」
 裂け目から覗く肉の色に手を伸ばした緋車。その手が何かを掴んだ触感に、猛烈な嫌悪感がリーリアの喉を引きつらせた。己の内部を――大事な容れ物を掴まれる、生物としてあるまじき異変に、本能的にリーリアは緋車の腕を掴んでいた。だが、そんな彼女など緋車は相手にしない。
「あ、っぁあ……ッ返し、て……ぇッ」
 彼にとってリーリアには何の価値も無い。
 悲鳴すら上げることが出来ない。己の中身が引きずり出されていくのを動く片腕で拒んでいたのも限界か。力なく落ちていく。
 リーリアの目が閉じていく。
 緋車が、そんな彼女にようやく息絶えたかと、冷めきった目を猟兵達が後から来るのだろう通路へと向けたその時。
「……なん」
 緋車の脚に突き立つ細い金属棒。それは、リーリアが握っていたメスの柄。死力を振り絞ったリーリアが最後の隙に温存した腕で刃を突き立てたのだ。
「……」
 緋車は僅かに楽しげにリーリアを見下ろす。だが、リーリアは、今度こそもう動けない。緋車に逆上され、どう壊されようとも抵抗の一つ出来ない。覚悟した彼女に反して、しかし緋車は己からメスを引き抜くだけで、あとはリーリアに背を向けていた。
 語っていたように、弱者には用が無いのだろう。
 リーリアはただ、空虚を感じながら、落ちていく暗闇に身を委ねていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーニス・ウィザー

やっとたどり着いた…ね
結構頭にきてるから覚悟するといいよ
とはいえ内臓が潰れてどれだけ動けるか…

防御は捨てありったけをぶつけるよ
口の中にあふれる鉄の味はもう無視する!
お腹から嫌な音も聞こえるけど、気にしたらもう動けなくなりそうだし

窮鼠猫を噛む、手負いの獣は怖いのを思い知らせてあげるんだから

ただ攻撃を受けたら怪しいかも
特に痛めつけられた腹は、どれだけ耐えられるかわからない
気づかれたら勝ち目はない、かも…
元気なように振る舞う!
長引けば血を吐いて動けなくなる、かな…
吐血もそうだけど太ももを伝う血も臓器損傷の証拠

気力が持つか体が持たないか…
武器を持つ手が上がらない
だめ、倒れるわけには…



「ぅ……やっ、と……!」
 息も絶え絶え。ユーニス・ウィザー(ロイヤルガード・f30744)はそんな様子で緋車の前に現れた。かき回され、穴の空いた袋のような腹からはまだ絶えず血が流れ出ている。
 そんな満身創痍ながらも、ユーニスは立つ。
「なんだ、またボロボロじゃんか」
「ええ……そう、よ……、でも、ねっ」
 ユーニスは剣を掲げて緋車へとぴたりと向ける。その切っ先は力強く定まっていた。
「結構頭にきてるから、覚悟するといいよ」
「いいね、そうでなくっちゃ」
 啖呵を切れば、緋車は嬉しげに笑みを浮かべて構えを取る。
「好きなときに来ていいよ」
 なんとも包容力のある言葉で緋車はユーニスを迎え撃つ気だ。ユーニスは啖呵を切った手前、それ以上何も言わずに構える。
(と言ったものの、どれだけ動けるか……)
 こうして少し動くだけで腹の中から奇妙な音が鳴る。腹の虫と言えば滑稽な絵面かもしれないが、そんな生易しいものではないことは誰よりも彼女が知っていた。
「っく……!!」
 激痛を食い縛り、ユーニスは一気に緋車へと駆けた。防御なんて考えてはいられない、そんなものはかなぐり捨てて攻撃に専念する。
 口の中に溢れる苦味のある鉄の味も意識から吹き飛ばして、一気に肉薄。
(窮鼠猫を噛む、手負いの獣は怖いのを思い知らせてあげるんだから……!)
 細剣が一閃する。これほどの重体だというのにもかかわらず、その一閃の鋭さたるや。緋車は、それを受けもせず大きく跳んで距離を取っていた。
「驚いた、そんな状態――」
「まだッ!」
 攻める。言葉を待つ余裕すらユーニスにはないのだ。一気に近づき剣を突きつける。躱し、受け、防御に専念する緋車の身体に躱しきれない傷が刻まれていく。一見それはユーニス優勢にも見えたのかもしれないが。
「ぐう、ぁ……ッ」
 一瞬、痛みに動きが鈍った瞬間を、緋車の拳がその腹を撃ち抜いていた。それとともに拳が闘気の爆発を起こし、激烈な痛みがユーニスの体を駆け抜けていく。
「ぁ、ァアッ――!」
 声にならない叫びに喉が焼ける。吹き飛んだユーニスは、しかし、つながれた闘気の鎖を掴んだ緋車に引き戻されてその足元に崩れ落ちるようにして転がっていた。
「……ッ、ぁ、ぐ…、まだまだッ!」
 見下ろす緋車の視線に負けじと立ち上がる。体を動かせばその度、口から血があふれる。それと同時に太腿にもだくだくと赤い流れが溢れている。
 内臓からの出血が上と下、その両方の口から溢れ出てきているのだ。剣で緋車を裂く。だがその傷一つにつき、数発の拳がユーニスを打ち叩く。その差は明確に、そして如実に現れていく。
 ユーニスが緋車の前に膝を付くのは、それからすぐのことだった。
(うでが、あがらない)
 声すら出ない、そんな脱力感の中で必死にユーニスは抗う。まだ、もっと、この怒りにはこの傷じゃ足りない。
(だめ、たおれるわけには)
 そう叱咤するユーニスも、しかし顔すら上がらない。そんなユーニスに残酷な声が落ちた。
「少し、楽しかったよ」
 笑う声。それは心からの明るい声色で。次の瞬間、緋車の蹴りが彼女の胸を砕き、闘気の鎖すら引きちぎり、ユーニスの意識はそこで途絶えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サーティ・ファイブ
☆出たな事の発端ッ!
オレは容赦しないからな!

はっ、チェーンデスマッチってか?
近距離もオレの間合いだッ!
(何しろ、近距離、かつ鎖でお互いの回避行動に制限がかかっている状況ならオーラの散弾の大半の命中が見込める)

(近距離でやりあいつつ、魔術回路を立ち上げ戦闘しながら詠唱を始める)
黒き大地の鎖よ 林檎を手にせし大地よ 汝の子らは天の先を目指し 地から離れゆく 汝がまだ子を求めるのならば その鎖で全てを縛れ!



「出たな事の発端!」
 叫ぶサーティ・ファイブ(SLM-35 Marchocias Proto・f34542)は一、ニもなく緋車へと飛びかかっていった。
 ひとまず、ぶん殴ってやらないと気がすまなかったのだ。その理由は、隠すもののない彼の全身で白濁がこびりつき乾きはじめすらしている無数の毛束が物語っているだろう。
「活きがいいね」
「オレは容赦しないからな!」
「勿論」
 緋車は、飛び込んできたサーティの拳を避けもせず、自らも拳を打ち出して迎え撃つ。拳が交差する。互いの攻撃がモロに直撃し、互いの間で爆発が起こる。
「はぶ、ッ!?」
 衝撃に弾き飛ばされながら、サーティは緋車との間に生まれた鎖を引き絞り体勢を整えて着地する。
「散歩してるみたいだ、乱暴なお手だったけど」
「ぐぬ、ふざけやがって!」
 サーティは、全裸に手錠のように絡みつく鎖というマニアックな姿になっている事も特に意識することなく、自慢げににやりと笑ってみせた。
「でも、チェーンデスマッチってか? 残念、近距離もオレの間合いだッ!」
 一気に肉薄する。
 肉弾戦が得意、ということではない。近距離で互いに鎖で繋がっているのであれば、オーラの散弾が最も脅威を発揮するにふさわしい状況に他ならなかった。
 接近するように見せかけて拳を避けてオーラ弾を打ち込む。避ける手段も乏しい緋車が連続で拳や脚を打ち込んでくる。
 サーティとしてもそれを完全に躱す手段はないのだ。どうにか動きながらもただオーラ弾だけではジリ貧になる。
「……黒き大地の鎖よ 林檎を手にせし大地よ」
 だからこそ、オーラの散弾を放ちながら詠唱をつなげていく。舌でも噛みちぎらせようとしたのか、強烈なアッパーをどうにか避けて、言葉を吐き出していく。
「汝の子らは天の先を目指し 地から離れゆく 汝がまだ子を求めるならば」
 湧き上がる不可視の鎖が頭上で何かを絡め取っていく。見えぬ何かが凝縮し、『そこ』に暴圧を産んでいく。
 そして。
「その鎖で全てを縛れ!」
 強烈な重力塊が緋車の頭上に落下する。繋がった鎖で満足に逃げ切ることも出来ない緋車は、交差し防御させた腕ごと重力塊の下敷きになって岩盤の床へと叩きつけられる。
 ばぎん、と闘気の鎖が千切れ、自由になったサーティは警戒するように距離を取って、重力塊が消えた小さなクレーターを見つめる。すると。
「はは、ははは! いいね、こうでなくっちゃ!」
 全身血みどろになりながら、外れたのだろう肩を床に叩きつけて嵌め直す緋車が笑っていた。
 まだまだ、元気らしい。
「……こわ」
 正直私兵達の方が、まだなんというか理解が出来る範疇では遭った気がする。いや、だからといって許しはしないけども。
 サーティはあまり関わりあいになりたくない相手だなあ、と考えながらも次の攻撃に頭を巡らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アナスタシア・ムスハルト


注がれたものをポタポタと滴らせながら辿り着くわぁ
ここで悪さをしていたのはあなたね?
刺激的で個人的には楽しませてもらったわぁ
けど、まぁ、放っておくことはできないわねぇ

拾った刀で斬りつける
練習用のナマクラだけど、それでも斬鉄くらいはできるわぁ(切断)
それに拳で真っ向から打ち合うなんて、闘気か何かで強化しているのかしら?

刀を叩き折られて、体勢を崩したところに致命的な拳が――届く前に、「無尽の刀剣」
石畳を材料に新たな刀を作って「受け流し」、反撃の斬撃を叩き込むわぁ(騙し討ち・不意打ち)
武器使いは、武器を壊せば無力化できると思ったかしら?
実は刀鍛冶なの、あんまり才能はなかったけどね



「ここで悪さをしていたのはあなたね?」
 再び壁に叩きつけられた緋車に声を掛けたのは、アナスタシア・ムスハルト(小さな大剣豪・f24499)だった。
 一糸まとわぬ姿。その豊満な体も、女性として成熟しながらもどこか幼さを思わせる妖艶さすら、しかし緋車の目を淫欲に乱すことは出来はしない。
 ただ、彼は好戦的な目を彼女へと向ける。
 アナスタシアも、そこに怒りや落胆を見せることはない。それで良いとすら考えていた。それだけの異常存在こそが、アレだけの落伍者を生み出したのだと、十分に理解出来る。
「刺激的で個人的には楽しませてもらったわぁ」
 そう言い、中指で何人もの男に慰み者にされて薄紅色に色づく蜜肉を拡げれば、混じり合い腹の中ですら泡立つ白濁が彼女の白い素肌を伝い落ちていく。
「けど、まぁ、放っておくことはできないわねぇ」
 それは手にした剣から滴る血と対称的にも見える。彼らの体液であるという一点においては同じものではあるが。
 獣のごとく、己の欲求を開放させた男たち。手ひどく扱い、壊れないと知るや、まるで幼子が玩具を乱雑に扱うように弄んだ私兵達。あれを作ったのが目の前の怪物だとするのならば、アナスタシアとしては感謝すら覚えていた。
「こんなに楽しかったのなんて、久しぶりだったわぁ」
 だから。
 とアナスタシアは、その嬲られ、あられもない姿を晒しながらも、武人としての気配をその全身に漲らせて笑う。
 と同時に、一気に駆け出した。瞬くほどの間に肉薄したアナスタシアは、男達の誰かが落とした鈍ら剣を振り抜く。
 その剣閃は、刃の鈍さを感じさせぬ鋭い一撃。ともすれば、その切っ先から奔る僅かな剣風ですら岩を斬らんばかりの鋭閃。
 それでも。
 それでも、緋車はその剣閃をその拳一つで弾いてみせた。
「いいね、君は――武だ」
「……ッ!!」
 笑みが一つ。放たれるは拳一つ。それが狙ったのは、アナスタシアではない。拳が刃にぶつかる。緋車の拳が容赦なく鈍剣を粉砕し、そして、連撃がアナスタシアへと迫る!
 アナスタシアはただ、その拳に腹を砕かれ、男達の名残を押し出されるように地に沈むばかり。そう、成ったのかも知れない。
 彼女が、純粋な剣士であったのならば。
「実は刀鍛冶なの、わたし」
 そう告げる彼女の手には一本の刀。地面の石畳から作り出した脆い剣が、緋車の拳を受け流していた。
 一撃にすら耐えれぬ脆い刃。だとして。ならば、再び作り出せばいい。即座に壊れた剣を放棄した彼女の手に、再び刀が握られ。
「……、は」
 石の刃が喉を貫く。
 緋車の顔には敗北に対しての笑みが刻まれ。
 アナスタシアは、崩れ落ちる緋車を、ただ冷めた目で見下ろすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月06日


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#封神武侠界


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠秋茶瑪・流です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト