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おい、自転車競走（デュエル）しろよ

作者：七転 十五起

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　キマイラフューチャーの地下遺跡に現れたオウガ・フォーミュラ『キング・ブレイン』は、超速度で次元を超え、自力でテレポート可能という恐るべき自転車【ブレインバイシクル1号】で猟兵達の前から逃げていった。この自転車に追いつけない限り、猟兵達はキング・ブレインに勝ない！

「と、言う訳でっ！　特訓だよっ！」

　グリモア猟兵の蛇塚・レモン（白き蛇神憑きの金色巫女・f05152）は、集まってくれた猟兵達へ力強く訴えた。
「いずれ訪れるキング・ブレインとの直接対決に備えて、キマイラ達が協力してくれるんだってっ！　既に自転車レースのコースを用意してくれてるよっ！」
　……なんて？
「え、だから、自転車レース……」
　キャバリアやユーベルコードで飛んだほうが速くね？？？？？
「それは駄目だよっ！」
　レモンが一喝した。
「予知で自転車以外ではキング・ブレインには追い付けないかも、って見えたからっ！　だから自転車がベストっ！　鍛え上げた猟兵の脚力で、次元を超える速度をものにするよっ！」
　予知で自転車推奨と出たのなら仕方がないね。予知以外の行動をすると、任務失敗しかねないからね。

「んで、今回のコースは一般的な自転車ロードレースのように、キマイラフューチャーの街中を駆け抜けてゆくよっ！」
　しかし、キマイラ達が『遊び心満載』にした為、やべー仕掛けが満載らしい。
「スタートから傾斜45度の坂を800m駆け上がる『天国への階段』ゾーン！　落ちたらリタイア、車幅15cmの一本道が何本も懸かる『地獄の懸け橋』ゾーン！　最後は脚力の限界に挑戦、ベルトコンベアーを逆走してゴールを目指す『黄泉返り』ゾーン！　もちろん、ユーベルコードでのアシストは認めるよっ！　ただしっ！　空を飛んだら失格だよっ！」
　本当に脚力のみでの勝負になるのだろう。気を引き締めて特訓に臨まくてはなるまい。
　なお、キマイラ達が猟兵達のためにカスタム自転車を作ってくれるらしい。
　今回のレースに向けて、魔改造自転車を発注すれば、スクラップビルダーやらなんやらが完全再現してくれるという。
　車体のコンセプトから、既にレースは始まっていると言っても過言ではないのだ！
「あ、そうそう、最後の『黄泉返り』ゾーンで、何故かキング・ブレインも乱入する予知をみたから、何とか1位を掻っ攫ってきてねっ！」

　……なんて？？？？？

　レモンの言葉に耳を疑う猟兵達だが、彼等は問答無用でキマイラフューチャーへ転送されていってしまうのだった……！

第1章 冒険 『白熱の自転車レース！』

POW   :    力の限り漕ぎまくり、スタミナに任せて前を走る SPD   :    前半は体力を温存し、ここぞのタイミングで一気に仕掛ける WIZ   :    対戦相手を利用したコース取りを行い、風の抵抗を避ける 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

　さあ、今日という日を全世界のキマイラを始めとする全種族が待ち侘びたことか！
　猟兵があのキング・ブレインを打倒するべく特訓が行われると報じられてから、スクラップビルダー達が昼夜を問わず特製コースを作り上げてくれました！
　その特製コースを走る猟兵達が駆る最強の自転車（マシン）も、キマイラ達が各猟兵達のリクエストを忠実に再現した特注品です！
　この特訓、いえレースの模様は！　全方位に飛び交うドローンによる全世界同時生配信されております！
　実況はワタクシ、ヒーローマスクのマスクド・ジ・ノブン！
　解説はボディ担当のキマイラことエビチリ・レッドホットさんです！
『よろしくお願いします』
　それでは早速、本日のレースにエントリーする猟兵達をご紹介しましょう！
　１番、彼方より禍を射貫くもの！　高天原・光明（f29734）だー！
　モダンな軍服姿を纏った異世界の學徒兵！
　得意の弓術で培った集中力で、今回の自転車レースの１位を狙います！

「目には目を、自転車には自転車を、か。……いや、わからん。だが、野山を駆けずり回って鍛え、桜學府では『閃光スプリンタァ』と呼ばれたこの脚力の出番か」

　高天原選手、この特訓に少々疑問を感じているようですが、二つ名がつくほどの豪脚の持ち主のようです！
　これは期待できそうですね！
『相当速くないと閃光を冠することはないでしょう。どんな走りを見せてくれるか楽しみです』
　そんな高天原選手のマシンは、これまたレトロなダルマ自転車ですね！
　大きな前輪に小さな後輪が特徴のマシンですが、これでも最高時速は60kmも出る代物なんだとか！
　それを更にチューンナップして、レースに合わせた軽量化と変速機構の強化をキマイラ達に依頼したそうです！
　しかもたった今入った情報によると、高天原選手の世界では、このマシンは流行の最先端かつ最新式とのこと。
　流行に目ざといキマイラ達も、高天原選手に注目しているでしょう！
『他の猟兵達のマシンよりも重心が高い分、それがどう影響するか。レース展開が面白くなりそうです』
　続いての選手を紹介しましょう！
　なんと身長は21.8cm！　おてんば妖精姫！
　ティエル・ティエリエル（f01244）、ミニマムサイズの自転車に跨って参戦だー！

「うりゃぁー！　特訓だーーー☆　やる気満タン元気満タン、ボクの出番だよ♪」

　気合十分、小さな体に大きな闘志！
　マシンが小さい分、同じ距離でも他の猟兵達より漕ぐ回数が増えてしまいますが、このあたりはエースにどう影響するでしょうか？
『その心配は無用だと思います。見て下さい、あのマシンを。ティエリエル選手専用に作られたロードバイクは小柄な分、空気抵抗が少ないです。序盤の坂道は苦労するでしょうが、後半の爆発力に期待したいですね』
　ティエリエル選手、サイクルウェアにヘルメット、サングラスにスポーツドリンクまで完備してますね。
　このレースに懸ける意気込みの強さが伝わってきます。
　上位争いの台風の目は、ティエリエル選手かもしれません！
　更に３人目のエントリーをご紹介しましょう！
　３人目、いえ、３組目と言うべきでしょうか？
　小さな竜眼ことカシム・ディーン（f12217）と、その相棒の界導神機『メルクリウス』ことメルシー、タンデム乗車での参戦です！

「はあ……自転車勝負とか、そういうの天才魔術盗賊カシムさんの趣味じゃねーんだが」
「ええー楽しそうだよー☆　ほらご主人サマ！　ドローンカメラで配信されてるよ☆　スマイルスマイル♪」
「おいこら、ドローンの前に僕を押し出すな。……あー、キマフューの皆さん、こんにちは。この天ッ才魔術盗賊カシムさんの爆脚にかかれば、この程度のコースなんぞ寝てても世界新記録を叩き出せますよ。ま、体力づけにはいいし、やるからには一位狙うぞ！」
「ひゃっはー☆　ピリオドの向こうへ真っ先に辿り着いちゃうぞ☆」

　おおーっと、これはとんでもないビッグマウスが飛び出したぞ！
　ディーン選手、かなりの自信家のようですが、猟兵としてもかなりの練度を積んでいるとの情報がこちらにも入ってきています。
　その経験の豊富さがこのレースへの自信を生み出しているのでしょう。
『メルシー選手の存在も怖いですね。彼女の正体はキャバリアという搭乗型ロボットでして、その中でも自律かつ自我を持つ特別な神機と呼ばれるシリーズの１体なんです。人知を超えた脚力で、ディーン選手を力強くバックアップしてくれるのではないでしょうか』
　出場するマシンも唯一のタンデム自転車！
　２人の呼吸を合わせなければ最大速度が乗りません。
　コンビの絆が試されるでしょう！
　ここまでが正式登録された選手の紹介でした。
　これ以降は自由参加として、リレー形式でレースに臨む猟兵をご紹介しましょう！

「自転車でレース？　なんだか楽しそうだなぁ」

　桃色の長い髪が見目麗しい夢見る少女、シフォン・メルヴェイユ（f19704）は最初の難関である傾斜45度の坂を800ｍ駆け上がる『天国への階段』に挑みます。
　のんびりで天真爛漫なメルヴェイユ選手、目の前にそびえ立つ急勾配の坂を前にワクワクしていますね。
『気負いすぎずに臨むことで、彼女の実力が遺憾なく発揮されるでしょうね。正式参加ではないのが悔やまれます』
　そんなメルヴェイユ選手のマシンは、かなりデコられてますね？
　様々な花をあしらった、まさにユメカワ系自転車です！

「キマイラさん達のおかげで、こんなに可愛い自転車を作ってもらえたなんて嬉しいなぁ！　頑張ってこの坂を登りきってみせるよ！」

　こちらも気合十分です。果たしてダークホースとなれるのか？
　いよいよスタートの時間です！

　――オン・ユア・マークス！
（……パァァンッ！）

　今、号砲一発、スタートの合図が高らかに鳴り響きました。
　まず飛び出したのはディーン選手とメルシー選手、タンデム自転車での２人分のパワーは坂道に有利、他の猟兵達より頭一つ分抜き出てまずは先行逃げ切りの態勢だ！

「……なぁメルシー？　お前、キャバリアだろ？」
「そうだよ？　それがどうしたの、ご主人サマ？」
「お前……自分が乗り物なのに、別の乗り物に乗ってる事をなんとも思わねーのですか。シュール過ぎるだろ……」
「別に気にしてないよ？　だって、メルシーだってご主人サマに乗る事もあるよね♥　昨晩も――」
「てめーは全世界同時生配信中に何言ってんだごらぁっ!?　ヤメロォォォ!!」

　ディーン選手、どうやら昨晩はメルシー選手主導でお楽しみだったようです！
　世界中に二人の熱愛ぶりが拡散されました！
　ラブラブパワーで傾斜45度の上り坂をぐんぐん駆け上がっていきます！
『ディーン選手は本当にラブラブなんでしょうか？　照れ隠しなのかヤケクソなのか、私からはちょっと判別付きませんが……』
　ともかく、感情の爆発で２人の脚力が強化されてる模様です！
　一方、高天原選手とメルヴェイユ選手はほぼ横並び、ペース配分を考えての坂登りだ！
　ちょっと高天原選手のハンドルさばきがプルプル左右に震えているのが気になるところですが、大丈夫でしょうか？

「くそっ、この坂……想像以上の急勾配でペダルが重い！」

　かなり苦戦している様子！
　しかしさすがの集中力！
　常に最善のコース取りをしている高天原選手！
　その眼力はまさかユーベルコードなのでしょうか!?

「ご明察だ、実況担当。俺には此処から全て視えている。これぞ『狩人の千里眼（ヴァイス・マギィ）』――レースの状況を大局観で見据え、仕掛けどころは見逃さない……！」

　おおっと、これは後半に脚を溜めている！
　高天原選手、ゴール直前での差し切りを狙っているようです！
　ユーベルコードの眼力によるレースプラン、果たして先頭を走るディーン選手に届くでしょうか？
　そんな高天原選手に食らいつくのが、意外や意外、メルヴェイユ選手だ！
　ゆるふわな女子オーラ満載のマシンと乗り手からは想像できないような力強い坂登りを披露しているぞ！

「ふぅ……はぁ……大丈、夫……せっかくなら……一番になりたいよね……！」

　桃色の髪を振り乱し、立ち漕ぎで懸命に前へ前へと進んでゆきます！
　これは強い走りだ！　高天原選手の後ろにピッタリついていっています！
　その２人から大きく離されているのがティエリエル選手！
　やはり小柄なマシンでは漕ぐ回数が多くなる分、坂道は不利！
　ダントツの最下位です！

「ふふ～ん、これは作戦だよ☆　ボクだって、坂を越えたら本気出しちゃうよ☆」

　ティエリエル選手、余裕です！　余裕の表情です！
　それもそのはず、ギアを一番軽い状態に切り替え、体力を温存し続けています！
　意図的に最下位に甘んじ、坂を着実に攻略しようという作戦のようです！
　こちらも見た目の愛らしさには裏腹に、かなりの策士ぶりを発揮しています！
　そうこうしているうちに、ディーン選手とメルシー選手、トップで坂を登りきりました！
　純然たるパワーの違いを見せつけてくれました！
　やはり２人分の脚力は坂道に強かった！
　だがそんな２人を次なる難関、落ちたらリタイアの道幅15cm一本道が何本も懸かる『地獄の懸け橋』ゾーンが待ち受けます！
　真下はビル３階分の高さに相当する穴が広がっています！
　猟兵ならば落ちても大丈夫だろうとキマイラ達が勝手に決めつけて掘り進めた穴ですが、目の前に立つとかなりの恐怖心が選手達を苛むでしょう！

「飛べねぇのが面倒だな……メルシー、バランスを合わせろ」
「ラジャったよ☆」
「つーか、考えればこれは修練だから小細工なしで渡り切る事に意味があるんだよな。だったら物にしてみますか、柄じゃねーけどなっ!?」

　ディーン選手のツンデレ発言にメルシーの顔も思わずニッコリです！
　道幅15cmの一本道、これはかなりの集中力が要されます。
　２人乗り自転車は更に呼吸を合わせる必要が出てきますので、他の猟兵達よりもハンデを背負うことになります。
『それでも息ぴったりです。さすがですね』
　ディーン選手達が一本橋を渡り始めたその後ろ、高天原選手が坂を登りきり、そのまま一本道に挑んでゆきます。

「ぐ……細道は道の揺れで前に進まん！」

　一本道は安全に考慮して強度を保っていますが、それでも自転車が通ると揺れる模様！
　高天原選手、前輪の大きさのおかげで視点が高い分、より一層の恐怖心が煽られているかと思われます！
『結構怖いんじゃないでしょうか、俯瞰から穴の底を見てしまうと手が震えるかもしれません』

「まずい、穴の底を見てはいけない！　怯むな、ここで後退しては學徒兵の名折れ。なんとでもなるはずだ！　集中しろ、集中！」

　おっと高天原選手、ハンドルの震えがピタッと止まりました！
　そしてぐんぐんと迷うことなく一本道を突き進んでいきます！
『ユーベルコードによる視力強化、そして集中力が彼の恐怖心を取り除いたのでしょう』
　そのままディーン選手達を抜き去ってトップに躍り出た！
　一方、メルヴェイユ選手は坂を登りきり、次の猟兵とバトンタッチです。
　自由参加枠はリレー形式でレースを繋いでゆきます。
　各ゾーンに１人ずつ配置されており、順位には影響を及ぼしません。

「ど、読書で鍛えた集中力……こんなところで発揮することになるなんて……」

　秘密の司書さんこと高階・茉莉（f01985）は、見るからに文化系女子で自転車競技向きではなさそうですが、大丈夫でしょうか？
『ドジを踏まなければ、着実に一本道を渡りきれる実力は持ってるはずです！』

「慎重に、慎重に行きましょう……」

　おやおや？　かなりゆっくりと進んでゆくようですね？
『堅実にバランスを取って進んでゆくようですね。その証拠に、自転車が全くブレてません。速度意外は完璧ですね』
　自由参加枠ゆえ、レースの順位は関係ありません。完走を果たせば成功です。
　そういった意味では、高階選手の選択は最善手と言えるでしょう。
　さあ、満を持して坂を登りきったティエリエル選手、ここから巻き返しできるのでしょうか？

「地の利はボクにあり！　『地獄の懸け橋』ゾーンで一気に決めちゃうよ♪」

　おーっと！　ドローンカメラに向けてＶサイン！
　ティエリエル選手、勝利を確信した笑顔が花咲く！

「ボクにとって道幅15cmもあれば落ちる心配もないし、うりゃりゃーと全力でとばしていっちゃうぞ☆」

　小柄なマシンだからこその利点！
　他の自転車に比べて圧倒的にコンパクトが故に、ティエリエル選手は全力疾走しても道幅からはみ出ることがありません！
　何ということでしょう！　余裕で爆走してゆきます！
　これには先頭を進む高天原選手も二度見してしまいます！

「そんなことがあるのか!?　猟兵の多種多様ぶりには驚かされるな！」

　しかし高天原選手も食らいつく！
　その後ろからディーン選手達も猛追中！
　これは面白い展開になってきました！
　長い一本道はもうすぐ終わり、最終ゾーンの逆走ベルトコンベアーが待つ『黄泉帰り』ゾーンに突入します！
　現在の順位は……。

　１位：ティエル・ティエリエル
　２位：高天原・光明（２車体差）
　３位：カシム・ディーン＆メルクリウス（１車体）
　自由参加：シフォン・メルヴェイユ、高階・茉莉

　……となっております！
　最終ゾーンはどのようなドラマが繰り広げられるのでしょうか？
　レースは大詰めを迎えます！

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

第2章 ボス戦 『猟書家『キング・ブレイン』』

POW   :    侵略蔵書「スーパー怪人大全集（全687巻）」 【スーパー怪人大全集の好きな巻】を使用する事で、【そこに載ってる怪人誰かの特徴ひとつ】を生やした、自身の身長の3倍の【スーパーキング・ブレイン】に変身する。 SPD   :    本棚をバーン！ 【突然、背中のでかい本棚を投げつけること】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクションをよく見て身体特徴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。 WIZ   :    脳ビーム 詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【脳（かしこさを暴走させる）】属性の【ビーム】を、レベル×５mの直線上に放つ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　最終ゾーンの『黄泉返り』ゾーンは、公道を改造して全長500ｍの巨大ベルトコンベアーに作り変えてしまいました！
　これはゴール方向とは逆走してベルトが回転しており、猟兵達は倍以上の脚力を発揮できなければ押し戻されてしまうという、まさに真の意味での脚力勝負！
　これでキング・ブレインの時空を超える速度に対抗できるで……。

「ブーレブレブレブレブレ！（高笑い）」

　な、何事でしょうか？
　この特徴的な高笑いは、よもや!?

「そう！　吾輩こそがこの星を侵略中の大首領、キング・ブレインなるぞ、ブレブレブレ（笑い声）！」

　で、出たぁー！
　本物の大首領キング・ブレインだぁー！

「何やら楽しそうなイベントをやっているな！　どれ、吾輩も混ぜて下さい！」

　低姿勢だーぁ！　なんかすごく人の良さが滲み出る言動だが、この星を目下侵略中の親玉なんですよね！
　キング・ブレイン、有無を言わさずにそのままレースコースへ乱入しました！
　あれが噂の自力でテレポート可能という恐るべき自転車【ブレインバイシクル1号】でしょうか！
　何という馬力！　ベルトコンベアーの逆走が嘘のようにスイスイ前へ進んでゆきます！
　猟兵達、突然の乱入者に血気盛んの様子！
　これは血が見れるかもしれません！
　まさに！　これぞランディングデュエルといっても過言ではありません！
　ここからユーベルコードを用いたバトルレースが展開されるでしょう！
　果たして、勝利の栄冠は誰の手に!?










　なんとなんと、これは面白くなってきました！
　大首領キング・ブレイン、レース終盤に乱入で１位を掻っ攫っていきました！
　どういう原理か判りませんが、自力でテレポート可能という恐るべき自転車【ブレインバイシクル1号】に跨ったキング・ブレインがベルトコンベアーを物ともせずに逆走中！
　既に100ｍほど先行しております！
『キング・ブレインの脚力も侮れませんね。伊達にこの星を征服せんとする悪の大首領をやってません』
　唐突なハプニングに、レース参加している猟兵達の反応は様々の様子！
　おてんば妖精姫ことティエル・ティエリエル（f01244）選手、せっかくの１位通過に水を差されてしまいましたが、落ち着いて前を狙っているぞ！

「ようし、ボクが１番だ！　このまま負けないぞーーー☆　って、むむむー、キングブレインはだいぶ先行してるみたいだね！　でも勝つのはこのボクだぞ☆　それでそれで、キングブレインもコテンパンにしちゃうよ♪」

　さすが猟兵、これしきのハプニングには全く動じません！
　続く彼方より禍を射貫くものにして『閃光スプリンタァ』！
　高天原・光明（f29734）選手も必死にキング・ブレインを猛追中だぁ！

「来たなキング・ブレイン！　貴様のお陰でこの有様だ！　八つ当たりなのは重々承知だが、参加したからには痛い目に遭う覚悟があるんだろうな！」

　これは、おこです！　激おこプンプン丸です！
　殺気すら実況席まで感じるまでの、鬼気迫るランディング！
　クールな高天原選手が顔を真っ赤にして、歯を食いしばりながらペダルを漕いでいます！
　必死！　必死過ぎます！　これはかなりブチギレてますね!?
『高天原選手、相当この状況に違和感を覚えていたのでしょう。ツッコミ不在の中でこのリアクションは希少ですね』
　他の猟兵が馴染みすぎていて、実況の私も今の今までなんの不自然さを感じてませんでした！
　よくよく考えれば、他の手段があったはずですね！
『しかし、寄せられた情報によれば、自転車で競り勝たないと無意味だそうです。真意は不明ですが、キング・ブレインがここに出現したということは、恐らくは精度の高い情報かと思われますよ』
　そうなってきますと、埒外の異能を行使する猟兵にとってこの自転車レースは、かなり制約が多くなるかと思われます。
　おっと、その制約をモロに受けているかと思われる選手がいます！
　あれは小さな竜眼ことカシム・ディーン（f12217）選手と相棒のメルシー選手のタンデム走行！
　かなり出遅れての最終ゾーンの『黄泉返り』ゾーンの逆走ベルトコンベアー道路500ｍに挑みます！

「飛べねーってのが本当にきついなおい！　空を飛べれば、普段なら先頭まで一瞬で追いつけるんですけどね！」
「速さも凄いんだよね！　なんたって最高速度はマッハ34！　それが使えないのは、神機たるメルシーもちょっと悔しいぞ☆」

　かたや俊敏さがウリの自称天才魔術盗賊、かたや美少女の姿は仮の姿で正体は搭乗型人型汎用兵器キャバリア！
　お互いの持ち味がこのレースでは全く活かしきれていない状態が続いています！
　逆転の芽はあるでしょうか？
『正直厳しいですが、このあとのユーベルコード次第ではまだまだ逆転の可能性を否定できません。注目してゆきましょう』
　ディーン選手とメルシー選手、ティエリエル選手と50ｍほど差が開いてしまっています！
　現在キング・ブレインはまもなく200ｍに差し掛かろうとしています。
　それを追うティエリエル選手は小柄な身体なら必死に食らいついて２位をキープ、その差は10ｍまで縮めてきました。
　続く高天原選手が猛追、なにやら高天原選手の両足が輝いていますが、これは一体？
『おそらくユーベルコードでしょう！　異世界由来のユーベルコードには突撃系のユーベルコードも存在すると情報が入ってきます。高天原選手、このままキング・ブレインを後方から撥ね飛ばすのではないでしょうか』

「スクワッド・パレヱドだ！　俺の霊力の８割を自身の脚に！　スピードよりもパワーを重視だ！　はああぁぁぁっ！」

　これはスゴい！
　凄まじい気合でキング・ブレインとティエリエル選手との差を詰め寄っていくぞ！
　ベルトコンベアーの逆走としているとは思えない脚力！
　その勢いはキング・ブレインを遥かに上回っているのは一目瞭然です！
　おっと、ここでディーン選手とメルシー選手の姿が忽然と消えました！
　まさかリタイアでしょうか!?
『私、偶然見てたのですけど、２人は魔法でおそらく光学迷彩を纏ったから透明になったように見えているだけですね。我々の目からは見えなくなりましたので、何かやってくれるかもしれません』
　どうやら作戦のようです！
　姿が見えないため、キング・ブレインも我々実況班も何を仕掛けてくるか検討も付きません！
　レースはどうやらこの４組によって争われ……ああっと！
　後方から爆速で突っ込んでくる人物が！
　またしても乱入だー!!
　ええと、よく見てみると赤髪に黒曜石めいた黒い角が５本生えてます！
　首元に巻かれた白いマフラーをなびかせながら疾走する姿は、まるで太古のアーカイブに存在する『バッタ怪人の特撮ヒーロー』が如し！
　……たった今、スタッフから情報が入ってきました！
　彼も猟兵だそうです！
　その名前は――！

「実況さん、それには及びません！　名乗りは僕自ら行いましょう！」

　アッハイ。
　お願いします！

「僕はここより異世界のサムライエンパイアにある江戸幕府の三代将軍、徳川家光です！　こういうのもなんですが、実はエンパイアで一番偉い人だったりします！　僕もレースに乱入させていただきます！」

　こ、これは！　まさかのショーグン様（f04430）だー！
　太古のアーカイブには、ショーグン様とは『貧乏ハタモト侍を仮の姿とし、悪事を働くオブリビオンを勇ましいBGMを背に白馬に跨ってやっつける傍らでサンバを踊りこなす大御所』と記録されてます！
　そんな暴れん坊なショーグン様が実在していました！
　我々は今、歴史の証人となったァァァ！

「いや僕はサンバを踊りませんけどね!?　それはともかく……遂に発見しました、猟書家の首領キング・ブレイン！　この機を逃すわけにはいきません！　はぁぁっ!!」

　おおおっと！　ショーグン様がいきなり猛スパートォ！
　後発スタートだとは思えないペースで先頭との距離をぐんぐん縮めています！
　いくら猟兵でもこの並外れたパワーは異常です！
　一体、何処にそんな秘密が!?

「お任せ下さい、賢い僕がレースに参加しながらご説明しましょう！」

　アッハイ。
　またしてもお願いします！

「僕が乗るのはクロモリフレームのピストバイク【くろがね号】！　ブレーキも変速機も付いていないシロモノですが、シンプル故に頑丈で、僕みたいな昔の人でも乗れるようになったのです。スピードは……鍛え抜いた脚力で補えばいい!!　うおおおおおおお!!!!」

　それはつまり、自転車自体には特殊なギミックを施されておらず、この並外れたパワーはすべてショーグン様の地力そのもの！
　埒外！　まさに埒外の一言！
　逆走するベルトコンベアーでなければ、500ｍなんて一瞬で駆け抜けてしまえるでしょう！
　雄叫びを上げながら高天原選手を一気に抜き去り、ショーグン様、あっという間にティエリエル選手を捉えた！

「僕はこれより『自転車マシーン』と化します！　つまり僕は自転車と一体化することで全身の筋肉の動きを無駄なくペダルに注ぎ込み、最大の出力で最大の加速力を得られるのです！　賢い僕だから出来る必勝法です！　ううおおおおおおっ!!!!!」

　さすがショーグン様だ、なんて賢い！
　体力だけではなく、知力も上回ったショーグン様が遂に、遂にキング・ブレインの背中を捉えたぞ！
　その差は僅か６～５ｍばかり、電撃的大逆転劇は目前だー！
　しかし、ああっと！
　またしても後方から何かが追い上げてきました！
　第３の乱入者だ！　今度はなんだぁ～!?
『待って下さい、あれ、踊ってませんか？　曲芸のように前輪を上げたまま、信じられない速度で接近しています！』
　たった今、情報が入ってきました！
　あの選手は播州・クロリア（f23522）！
　その二つ名はなんと【踊る蟲】だそうです！

「飛び入り参加OKなら私も参加させていただきます。ダンスで鍛えたこの脚力があれば、逆走ベルトコンベアーなど何の苦もなく通過できるでしょう」

　しかし、他の選手が歯を食いしばって激走する中、どうして播州選手だけが曲芸のような自転車ダンスで猛追が出来るのでしょうか？

「それは私自ら解説しても？」

　……お願いします！

「先程も申し上げたとおり、ダンスで鍛えた脚力には自負があります。ですが、それだけでは決してキング・ブレインには勝てないでしょう。ならばどうするか？　ダンスしかありません」

　ちょっと何を言っているか判りませんでした！
『待って下さい、これはまさか、ユーベルコードではありませんか？』
　解説のエビチリさん、どういうことでしょうか？
『あれは【ダンスで生み出した旋律を給仕している間、戦場にいるダンスで生み出した旋律を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする】効果を持つユーベルコードかもしれません。そうだとすれば、我々が体感している時間の流れが彼女にとっては5分の1……裏を返せば、我々にとっては彼女は通常の5倍の速度で動くっことが可能なのです』
　なるほど！　ユーベルコードはやはりチート性能ですね！

「楽しんでますか？　私は楽しいです。リアです」

　スタッフの情報によれば、リアとは播州選手の造語で『いいね！』という意味合いだそうです。
　本当にダンスが好きなんですね！
『しかし、ウィリー走行かつ両手放し運転であの速度は、やはりチート性能ですね』
　播州選手、実はスカイダンサーでもあるそうですね。
　ダンスを極めてしまえれば、このような芸当も出来てしまうのでしょうね！
　そんなこんなで、一気に先頭争いに食い込んでいきました！
　激しいデッドヒートの中、依然先頭はキング・ブレイン！
　300ｍを通過し、気持ちよく逃げているぞ！

「ブレブレブレ！　吾輩に挑んでくるとは見所がありますね！　ですが私も勝ちたいので妨害させていただきます、ごめんなさい！」

　キング・ブレイン低姿勢のまま猟兵たちを妨害せんと、何やら全身が光って本棚を展開、更に四方八方へとビームを乱射し始めたぞ！
　これは危ない！　猟兵たちは無事でしょうか!?
　おっと高天原選手、混乱の中から頭一つ飛び抜けた！

「グリモア猟兵の予知のおかげで貴様のユーベルコードは丸わかりだ！　その背負ったスーパー怪人大全集の好きな巻に出てくる怪人誰かの特徴ひとつを備えたスーパーキング・ブレインに変身するんだったな!?」
「ほほう！　そこまで知って吾輩に挑むか！　って、何を向けているんです？」
「決まっているだろう？　拳銃だ！」

　BANG！　BANG！　BANG！

「あいたたた！　ひどいですよ、威嚇射撃じゃなくて狙ってきましたね!?」
「最初はそのつもりだったが、貴様の顔を見て気が変わった！　完全に変身される前に撃ち抜く！」
「そんなご無体な！」

　高天原選手、発砲ーっ！
　猟兵としては正しい行為ですが、まさかレース中に発砲するとは思いませんでした！
『よっぽど激おこプンプン丸ムチャ着火ボルケーノ状態だったのでしょうね』
　高天原選手の攻撃を見た猟兵たちも、どうやら攻撃仕掛けていいんだと気付いた様子です！
　次々と仕掛ける気配を見せています！
　ですがキング・ブレインも反撃に転ずるぅー！

「なんて猟兵は野蛮なんですか！　こうなったら吾輩の本棚をバーン！してやります！」

　ああーっと！　これは進路妨害だ！
　背中に背負った本棚を振り乱すキング・ブレイン！
　直撃すれば猟兵でもひとたまりはないぞ！

「見えます！ゴールテープを切る私の姿が！　そして悔しさに顔をゆがませたキング・ブレインの顔が！」

　播州選手が華麗に本棚をかわして、遂にトップへ文字通り躍り出たぞー！
　なんて見事な操縦テクニック！
　これにはキング・ブレイン、ダンスに見惚れて本棚を振り回す手が止まっています！

「エッチな本とかもあるかな？　かな？？」
「馬鹿か！　おめーは何を……」
「あー！　あったー！　『家庭教師のお姉さんが巨乳でムンムン過ぎるので、僕の別の授業が捗っちゃう件』シリーズぅ！」
「どんなシリーズだよそれ！　って、うわ、内容が結構えっぐ……」
「本棚の隙間にエロ本隠すとか古典的すぎるんだよ☆」

　なんとなんとー！
　光学迷彩でいつの間にか忍び寄っていたディーン選手とメルシー選手が、キング・ブレイン秘蔵のエロ本を発見してしまいました！
　このレースは全世界に同時配信されていますので、キマイラフューチャー全域にキング・ブレインの性癖の一端が暴露された瞬間です！

「うわああああああ！　吾輩のエロ本を返してください！　おねがいします、何でもしますから！」

　ブンブン本棚を振り回すキング・ブレイン、哀れ過ぎます！
　というか泣いてますね！　ガチ泣きです！
　その攻撃をディーン選手とメルシー選手がゴムゴムボディで受け流しているぞ！

「ソウルピース『豊臣秀吉』……その力の一端、使わせてもらいますよ？」
「神・魔軍転生『豊臣秀吉』だよ☆」

　どうやらユーベルコードでゴムゴムなボディになっている模様です！
　これはキング・ブレイン、攻撃が通じずエロ本も暴露され、精神的ダメージが甚大ですね！
『一生モノのトラウマになるでしょうね……以後の戦いに影響が出ないといいのですが』

「うわあああああん！　脳ビームで賢さ爆発させてみんな死んでしまえばいいのですよ！」

　ヤケクソのキングブレイン、脳ビームとやらを乱射しています！
　その軌道上にショーグン様が！　あぶなーい!!
『直撃してしました！　大丈夫でしょうか？』

「はぁ、はぁ……酸欠で世界が黄色に見える……気持ち悪い……」

　無傷だー！　酸欠で脳に酸素が行き渡らず、全然賢くなくなっています！
　ひどい顔です！　さっきまでの賢さが嘘のようです！
『二日酔いの犬型キマイラみたいな顔をしてますね』
　そして先程からチャキチャキと金属音がなっていますが、これは？
　……只今、情報が入ってきました！
　これはショーグン様の自転車に『僅かな軋み』を残しておいたそうです。
　鍔鳴りに似たこの音は、ショーグン様のユーベルコード『胡蝶酔月バタフライエフェクト』の発動条件！

「ふにゃぁ……？　吾輩、なんだか眠くなって……」

　ああっと、キング・ブレインがレース中に船をこき始めました！
　それを好機とばかりに、ティエリエル選手が仕掛けた！

「そこだー！　引っかかっちゃえー☆」

　くくり罠だー！
　キング・ブレイン大転倒！
　その上を高天原選手が、ティエリエル選手が、そして衝撃波を撒き散らす播州選手が轢き潰していきます！
　これはひどい！
　キング・ブレインそのままベルトコンベアーに乗って最下位！
　再起不能！
　
「むにゃむにゃ……おぼえてろー」

　キング・ブレイン逃げていきます！
　ですがレースはゴール目前！　果たして！

「「うおおおおおおおおおおお！」」

　――ゴール！

　１位：ティエル・ティエリエル
　２位：高天原・光明＆徳川・家光
　４位：播州・クロリア
　５位：カシム・ディーン

　白熱したレースでした！
　皆様、お疲れさまでした！！！！

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年11月22日