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死せる者たちへのハロウィン

#ダークセイヴァー #お祭り2021 #ハロウィン

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●死にゆく晩に
 ある伝承は語る。
 一年が死に、新たな年へと生まれ変わるその晩は生者の世界と死者の世界との狭間が揺らぐ。それ故に人々は死者が家の戸を叩かぬよう瓜のランタンを魔除けにして一晩を明かすのだ、と。

 ある伝承は語る。
 その晩は死せる者たちが生ける者の世界に帰ってこれる一晩。ならばせめて温かな思い出と共に過ごそう、と。
 なればこそ悪霊に扮した子供たちが家々を回り、可愛らしいイタズラの代わりに菓子をねだるのだ、と。

「あー……、そういやそんな話もあったよなぁ……」

 ヴァンパイアの圧政から逃げたのは何時だったか。長く放浪を続けた男は力なく呟いた。
 周りには同じくここまで逃げ延びてきた人々の姿。今は十に満たない数まで減った彼らはなんとかここまで逃げ、生きてきた。ヴァンパイアの支配が及ばぬという辺境まで。

「今になって思い出すのがこんな事かよ……くそ……」

 光景すら想像できぬ口伝、ダークセイヴァーでは在り得なかった夢。
 人類砦なら、『闇の救済者(ダークセイヴァー)』の領地でなら。そんな思いが過ぎるも、これ以上動き続ける体力も気力もなかった。
 結局、何も変わりはしないのか……諦観は四肢から力を奪い、彼らの歩みを止めていた。

●グリモアベースにて
「皆さん、もうすぐハロウィンです。」
 キリッとした表情のつもりでアルトリンデ・エーデルシュタインが行き交う猟兵たちに呼びかける。
「皆さんの活躍のおかげで今年はダークセイヴァーでもハロウィンのお祭りができそうなんです。」
 それは喜ばしい事だろう。かつては生きていくのすら苦しかった常夜の世界にも、それだけの余裕ができたという事なのだから。

 どことなく意識が遠くにあるような面持ちでアルトリンデが続ける。
「丁度いいことにカボチャの群生地の場所が予知できました。なので、今回皆さんにお願いしたいのはハロウィンで使うカボチャを集めてほしいのです。」
 それでハロウィンの祭りをするのか、と問う猟兵にアルトリンデは首を振る。
「いえ、お願いしたいのはお祭りではなく死に逝く人たちへの餞なのです……」

 なんでも、カボチャの群生地にほど近い場所に、ヴァンパイアの支配を逃れてきた人々が集まっているのだという。だが、彼らには既に生きる力は残されていない。
 だからただ何もない荒野で力尽きようとしている人々に、せめて温かな思い出を手向けにして欲しい。
「絶望の世界にも今は希望がある。そう知れれば心安らかに眠る事も出来るでしょうから……ですので、生者と死者が交わるこの晩に、今のダークセイヴァーにある希望を見せて送り出して欲しいのです。」
 カボチャの群生地は危険な『狂える神々』がまだ徘徊している場所。その依代になっているオブリビオンにも安らぎを。自らの想いは裡に留め、アルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。

●狂える裡に、せめて光を
 ――此処は、……私、は……。

 昏く湿った夜気が冷たく騎士の身体を包む。
 己が何なのか、何を求めていたのか。霞む意識に浮かびかけた想いは狂気により喰い尽くされた。


こげとら
 ハッピーハロウィン!
 シナリオはハッピーから程遠くなってますが、しんみりしたハロウィンもいいんじゃないかと思うこげとらです。

 今回はカボチャの群生地からカボチャを集めてハロウィンしようというシナリオになります。
 ただし、お祭りするのではなく、死にゆく人々に今のダークセイヴァーはこんなに良くなったんだよ、という希望とか夢とかを見せる形になります。

 本シナリオは2章構成で、第1章がカボチャ群生地に居座る狂える神であるオブリビオンとの戦闘。第2章が集めたカボチャでハロウィンをして見せる、という流れになります。
 狂気に呑まれたオブリビオンに、助けられずに看取るしかない人々と暗めの流れになりますが、全章とおして皆様が希望を示していただければいいなぁと思っております。

 猟兵が積み上げてきた希望をより多くの者に見せるために。
 皆様のご参加をお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『深淵に沈みし騎士』

POW   :    蝕まれし聖光の剣
【聖剣の力を解放し、極光放つ聖剣のなぎ払い】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を崩壊させながら深淵が広がり】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    闇に翳る残光
レベル×5本の【破魔の光】属性と【深淵の闇】属性の【朽ちた聖剣から剣閃】を放つ。
WIZ   :    今は歪みし聖裁
【触れたすべてを蝕む深淵の闇】が命中した対象に対し、高威力高命中の【闇に蝕まれた者を滅する聖なる光】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルトリンデ・エーデルシュタインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこは常ならば陰鬱な場所だった。人の大きさほどの岩がまばらに突き立ち、地表を苔と湿った草が覆っている。
 暗い緑と岩肌の土地。その地にこの時期だけは鮮やかな色彩が加わっていた。

 ――。

 そこかしこにカボチャの実る地の中で、騎士は折れた剣を突き立て身を起こす。
 郷愁も惜別もない。深淵の闇の中を彷徨うが如き己には、この地の施しは身に余る――。
風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携可

約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
【世界知識】ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも【情報収集】の伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。

戦闘は剣士の動きだ。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。



 身を起こした『深淵に沈みし騎士』、その視線の先に一人の男の姿があった。

「聖騎士、或いはそれに類する者か。」

 風雷堂・顕吉は朽ちた騎士の姿を目に、そう独り言ちた。オブリビオンとなる前ならば同じ側だったかもしれないモノ。だが、今の騎士から滴る力はむしろ顕吉にとって馴染み深いヴァンパイアの其れ、闇に近しい感覚を受ける。

「その身を蝕む闇、ヴァンパイアとは別の物か。だが……」

 顕吉が抜いた刀、ドラクリヤがダークセイヴァーの弱弱しい明りの下、鈍く光る。対する騎士もまた、朽ちた身を深淵の闇で支えて折れた聖剣を正眼に構えた。

「お前がヴァンパイアと同じくダークセイヴァーに仇名すならば。」

 倒す理由には十分だ。声に乗せた意志は交わされた剣戟に。互いが振った刃が夜気を震わせた。打ち込まれた剣を顕吉の刀がいなし、切り返した一閃を騎士が鎧で滑らし弾く。

 重く、鋭い……まさに騎士の剣、だな。

 受け流さなければそのままへし折られそうな膂力、それでいて単なる力押しではない技量。ヴァンパイア同様、侮れない相手。約100年、ヴァンパイアとの死闘を続けてきた顕吉が幾度となく感じた強敵と相対する感覚が身を包む。
 騎士もまた、対する者が容易くはないと感じ取ったか、聖剣が微かに光を帯びた。声なき雄叫びと共に振るわれる剣が無数の剣閃となって放たれる。帯びた光を乗せ、またその光を喰らわんと噴き出る闇が奔り、顕吉へと襲い掛かった。
 首を狙った剣閃を防ぎ、心臓を穿つ剣戦を弾き、されどすべての剣閃を防ぐには足りない。その程度承知の上で顕吉は致命の一撃を防ぎながら踏み込んだ。外套が翻り、香の匂いが漂う。

「ヴァンパイアを弱める術式だ……お前の宿す闇にも通じよう。」

 魔除けの香草が闇を削ぎ、地獄の炎が騎士を支えていた力を焼く。なおも振おうとした騎士の腕に白木の杭が打ち付けられる。顕吉の放った【吸血鬼封じ(キュウケツキフウジ)】は騎士を蝕む闇を砕いていた。騎士の足を繋いでいた深淵の闇が弱まり、僅かに体勢が傾ぐ。翻り落ちる外套の中から顕吉が突きだした腕には吸血鬼殺しのパイルバンカー。

「ダークセイヴァーの闇を掃うのは今を生きる者の役目だ。
 塵は塵に……過去は過去に、還れ。」

 今も闇と対し続ける者の一撃が、かつて闇に抗った者を穿つ。鎧を砕き、騎士の身を貫くはパイルバンカーから打ち込まれた白木の杭、そしてヴァンパイアハンターの矜持。
 騎士を包む深淵の闇を貫き己が胴を抉った者に、騎士は在りし日の己を垣間見る。

 僅か一刻であったとて、顕吉との戦いは騎士の闇と狂気に鎖された心を揺さぶった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴォルフ・クライト(サポート)
ボスとの交戦時は、敵の行動阻害と逃走妨害および敵の情報を引き出すことを目的にして行動を行う。
ユーベルコードも使用し、敵にダメージを与えて行きつつ、敵の攻撃や身体的な情報を集められる限り収集をする。
敵が倒れるまでは容赦することなく攻撃を継続する。



「ここからは俺に任せてもらいます。」

 距離を離した騎士とダンピールの間に割って入った影。先ほどまでの攻防を観察していたヴォルフ・クライトが獣奏器を構え、深淵に沈みし騎士を見る。先ほどの攻撃による傷は闇が塞ぎ、その動きにも乱れは見えない。

「ダメージが回復している、という訳ではなさそうですけど……」

 重傷を与えてなおダメージがないかのように見えるのは騎士の身体を動かしているのが異端なる神々だからなのか、或いはその身を蝕む闇がそうさせているのか。

「もう少し、手の内を明かしてもらいますよ。」

 先ほどの攻防の最後、騎士の目に僅かな間だけ光が戻ったかのような挙動も含め、確かめた方が良いだろう。そう判断したヴォルフの意を受け蒼い竜【Melum】が槍に姿を変える。躊躇なく踏み込み突き入れた槍を騎士の剣が上へ掬い上げるように流し、そのまま力任せに撥ね上げた。

「騎士の剣術、型に嵌った動きだけでなく強引な手も使ってきますか……ですが!」

 槍ごと上に上がった腕では斬り込む騎士の刃は防げない。だが、その一撃がヴォルフに届く前に反対の手に持った獣奏器が鳴らされ、しなやかな白い影が飛び掛かった。咄嗟に払った騎士の腕を掻い潜り距離をとったのは金色の瞳の白狼【Selenitis】。騎士の意識が逸れた間に槍を引き戻したヴォルフの一撃が闇で塞がれた鎧の傷を再度穿った。

「ありがとう。助かったよ、Selenitis。」

 主人を気づかわし気に見上げる白狼に優しく声をかけ、油断なく槍を構え直す。が――。

 騎士の様子が……何でしょう、何か、逡巡しているような……。

 僅かに動きを止めたのは与えた傷のせいではあるまい。槍は上手く入ったとは言え、それで動きを止められるほど温い相手ではあるまい。ならば、なぜ。

「もしや、生前の記憶が浮かんでいるのでしょうか……」

 本来ならば在り得ない可能性。だが、闇に抗うダンピールの声に見せた瞳、そして互いを思い合うヴォルフと白狼の姿に見せた逡巡はかつての騎士の意識があったからか。

「だとしても、僅かな間だけのようですが。」

 斬りかかってきた騎士の剣を槍で弾き、騎士の瞳が既に異端の神々の狂気に染まっているのを目に、言葉を零す。だが僅かでもかつての自身を取り戻せているのは。

「ハロウィンの夜、だからかもしれませんね。」

 死者と生者の世界の境が曖昧になる夜ならば。かつて死んだ者の魂が、染み出た過去に写される事もあるのではないか。

成功 🔵​🔵​🔴​

北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理う解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。



 僅かに逡巡するような様子を見せた深淵に沈みし騎士は、だが再び折れた聖剣を構える。その瞳は深い狂気に沈んでいた。歪に霞む視界に映るは二刀を携えた猟兵、北条・優希斗の姿だった。

「もしアンタにかつての想いがあるのなら……」

 左手に魔刀『蒼月』、右手に妖刀『月下美人』。二振りの刀を構え、優希斗は真っ向から騎士に視線を返す。

「何を思い、何を目指したのか。内に抱えている物、見せてもらうよ。」

 騎士に返答の言葉はない。そも、今の騎士が言葉を解し、話す事が出来るかも分からない。されど戦いに身を置き続けた者とならば、刃を交わす事で見えるものもあるはずだ。
 正面から斬りかかる騎士の剣を優希斗が躱しながら左の『蒼月』で流し、体を回転させる勢いのままに右の『月下美人』で斬りつける。騎士は引く事なく踏み込む事で刀の当たるタイミングをずらし、斬撃は鎧の厚い部分を削るに止まった。

「正々堂々とした騎士同士の勝負だけやってきたわけではないようだね。」

 時に正面から、時に相手の意識の隙をつくように、二本の刀を巧みに操る優希斗に対し、騎士は受け捌ける刀は剣で、或いは鎧で受け弾き、隙あらば剣で、間合いが詰れば鎧に包まれた身体を打ち当ててくる。攻撃一つ一つが重く、騎士が相対してきた敵が尋常ならざるモノであったと窺わせる。

「聖騎士が死力を尽くして戦い続けなければならなかった、か。」

 その末路が今の深淵の闇に蝕まれた姿なのだとすれば何と戦っていたのかも予想はついた。
 かつて深淵の闇と戦い、呑まれ、深淵に沈んでなお戦い続けた果ての姿。それが深淵に沈みし騎士なのだろう。

「アンタの想いは理解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ。」

 舞うように優希斗の刀が振るわれる。その足は宙を踏み、なお速く翔けた。【舞技・秘奥天翔蒼破斬(マイギヒオウテンショウソウハザン)】の刀舞が騎士を襲う。騎士もまた応じるように振るった折れた聖剣から数多の剣閃が光と闇となって放たれようとした。
 しかし振おうとした騎士の腕が軋み、留められる。その腕に絡みついているのは優希斗が刀舞に紛れて放った鋼糸『夕顔』。騎士は鋼糸を強引に引きちぎり剣閃を放つもその時には既に優希斗の斬撃が騎士の腕を裂いていた。

「遅いな。」

 止まらぬ刀舞が騎士の身体を斬り、刻む。噴き出す闇で傷を覆い、騎士は大きく後ろへ飛んで距離を離した。その身からは血の代わりに闇が滴り落ちていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

七星・桜華(サポート)
『天魔流免許皆伝、更なる高みへと!』
『一か八かの勝負?必要無いね!私達の勝ちだ!』
『後は派手に騒ぐんだ!誰も倒れないようにね!』
隠れ里に伝わる『天魔流』の免許皆伝で派生流派も含めても免許皆伝は一人
残像を攻防の両方に使い、腰に挿している6振りの刀と扇子を使い戦闘する。
闘う姿は艶やかな舞踏が如く空中戦もできる。
第六感や野生の勘と言う直感も鋭く見切るまでも早い。
先手後手問わず。
殺気や覇気が残像にまで残る程濃密。
常に最善を最短で気づき勝ってきた。
防御無視の内部破壊を息をするかの様に行う。
柔剛の技を扱い両立させる。
消耗の回復に生命力を吸収する。
優れた第六感で賭け事も強い。
家事も万能。
両親も猟兵である。



 ばさり、と黒と白の羽織を翻し、七星・桜華が岩の上から戦場を見下ろす。荒涼とした岩に荒れ地、あちこちにあるカボチャが添える色が寂しさを紛らわせるも弱い月明かりの下では心許ない。そんな中、猟兵と切り合っている騎士は一見しても相当な剣の使い手と見える。

「なら、高みの見物って訳にもいかないね。」

 総合戦闘術『天魔流』免許皆伝、七星・桜華が佩いた刀を抜く。ユーベルコードを放ち終えた猟兵と入れ替わり、騎士の前へと跳び下りた。

「天魔流免許皆伝、更なる高みへと!」

 名乗りの代わりに気炎を上げ、刀の切先を騎士へと向ける。奇襲も弱っている所へ畳みかける事もせずに相手が構え直す時間を与えたのは、これまで見た騎士の剣術に己の刀が後れを取る事はないという自負の表れか。応じる騎士は静かに剣を構え直した。
 ピリとした空気が張り詰める。時が止まったかのように風すらそよがぬ緊張を破ったのはどちらが先であったか。同時に踏み込み、振うは膂力で振り下ろす騎士の剣に対して舞うように閃く桜華の刀。舞踏にも見せる刀の軌跡はどこまでも速く鋭く、時に二刀、返して三刀目、対応させる間も与えず斬り続ける。
 桜華の腰の刀は六本。それぞれ別の名を持つ刀は無論、同じ物は一つとしてない。故に刀を変えれば斬撃も変わり、それが騎士に慣れさせる間を奪っていた。
 だが、守り切れぬのならば攻めきるまで。鎧が斬られ、身が裂かれるのも厭わずに騎士の剣が光を宿す。肉体の損傷は深淵の闇が補うに任せ、眼前の剣豪を討つ必殺の一撃を放たんとする。いかに防ぎ、どう切り返すか――。

「一か八かの勝負? 必要無いね! 私達の勝ちだ!」

 思案する必要などない。騎士の聖剣が放つ輝きが臨界と共に振るわれ放たれるのと同時に、桜華はさらに踏み込んだ。光が轟音と共に地をなぎ払い、崩壊した地面を深淵が呑みこんでゆく。その闇の上に立つのは騎士と、剣の間合いの内側に踏み込んだ桜華のみ。密着するような距離、剣の間合いではないその距離で桜華の口の端が上がる。

「散れ! 星屑のように。」

 【破突刃・零式(ハトツジンゼロシキ)】。至近距離への相手への超高速かつ大威力の一撃。防ぐ間も与えずに桜華の刀が騎士に突き立った。根元まで打ち込まれた刀身、それでも勢いは衰えずに騎士を吹き飛ばす。致命といえる一撃を受けてなお、武芸の極致に揺さぶられた騎士の魂が今一度、己を立たせていた。

 その魂は闇に呑まれ終わるか、光を求め抗うか。或いは別の終わりを望むが故か。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
闇の力を振るう騎士
俺は黒騎士
他人事とは思えない
どこかキミ(お前呼びではない)からは哀しさも感じる
…止めてあげればいいのかな

暗夜の剣を抜く
これは俺の誓いの剣
故郷を守りたいと力を求め、邪悪な力でも構わないと手を伸ばしたときに生まれた、故郷への思いが込められた剣
これで彼と斬り合う
こちらが使うのはUC解放・宵
攻撃回数を重視して、彼の動きに反応できるようにしよう
彼の重い攻撃は自身の怪力を活かして受け止める

彼のなぎ払いが光を放ち、俺がそれを躱して深淵を見ることがあったなら
そう、キミも光であったんだねとより共感を感じる

朔を投擲し彼の鎧に引っかけ、ワイヤーを強く引き彼に接近
暗夜の剣で貫こう
もう眠っていいんだよ



 幾度も傷を負い、その度に闇が騎士の身体を覆ってゆく。砕けた鎧、壊れた四肢ですら深淵の闇で補い、なお戦おうとする騎士の前にサンディ・ノックスが立った。

「闇の力を振るう騎士。
 俺は黒騎士、他人事とは思えない。」

 闇に濡れた騎士の姿に己が黒騎士としての性を重ね、サンディは自問する。守るべき者はかつて在りし日に。それはどちらの騎士か。

「どこかキミからは哀しさも感じる。
 ……止めてあげればいいのかな。」

 サンディが暗夜の剣を抜く。夜空から照らす月の光の下でなおその刃は黒く、されど内に通う血のように一部に朱のさした剣。騎士もまた、折れた聖剣を正眼に構えた。

 これは俺の誓いの剣。
 故郷を守りたいと力を求め、邪悪な力でも構わないと手を伸ばしたときに生まれた、故郷への思いが込められた剣。

 其の剣は騎士の剣の対極か。打ち降ろされた騎士の聖剣をサンディが真っ向から黒剣で受ける。全霊で押し込まんとする剣をサンディが己が怪力で押し返し、切り返す黒き刃を騎士が下がりながら受け弾く。互いの剣が幾度となくぶつかり合い、夜気に鮮烈な火花が焼き付いた。
 其の誓いは今も続く想い、対するは且つて抱いた理想の残滓。切り結ぶ剣撃が激しさを増してゆく。多少の負傷は闇で補う騎士は時に強引にサンディを攻められる為に徐々に手数で押されてゆくように見えた。されどこのまま押し切られる程度の剣では断じて、ない。それは誓いの剣ゆえに。

「さぁ、宴の時間だよ。」

 【解放・宵(カイホウ・ショウ)】を乗せたサンディの暗夜の剣が速さを増す。攻め、守り、切り返し、サンディの剣は闇滴る騎士の剣と拮抗していた。速度で、手数で拮抗、いや防げない傷を闇で補い戦う騎士が徐々に押されているならば、騎士が必殺の一撃を以て勝負を決しようとしたのは必然であっただろう。
 一際強く聖剣で打ち払い空けた僅かな攻防の間隙に、騎士は両手で聖剣を握る。折れた剣身の先に光が集まり聖剣がかつての姿、かつての輝きを取り戻す。騎士の横薙ぎの一閃と共に、聖剣から光が奔流となって大地を奔った。輝きの過ぎた後、大地を喰らい尽くさんとするかのように深淵の闇が広がってゆく。崩壊する地上に残る者など深淵に呑まれた者以外は何もない――地上には。

「そう、キミも光であったんだね。」

 手近な岩に鉤付きワイヤーである朔を引っ掻け宙に跳んでいたサンディは、騎士の放った光を見下ろし、呟いた。深淵の上に立つ騎士が蝕まれ、さらに強く闇に染まる。サンディが引き戻した朔を投擲し、騎士の鎧に引っ掛かる。ワイヤーを強く引き勢いを乗せて接近するサンディの黒剣と、見上げた騎士が振り上げた折れた剣が交差した。

「もう眠っていいんだよ。」

 折れた剣は何も裂く事なく夜空を差し、暗夜の剣は深淵に沈みし騎士の身体を貫いていた。騎士の身体を支えていた闇が綻びてゆく。とうに限界を超えていた騎士が崩れ落ちた。暗夜の剣を引き抜いたサンディの耳を風がそっと撫でる。遠くから微かに聞こえた気がした囁きは安堵か、悔恨か、或いは想いを託す者の其れか。

 深淵の消えた大地にもはや過去の影はなく、かつて死せる者への手向けの如くカボチャが月明かりに優しく照らされていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『救いきれないもの』

POW   :    励ます

SPD   :    話を聞いてやる

WIZ   :    慰めの言葉をかける

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 カボチャの群生地からほど近い地に、彼らの姿はあった。
 既に動く事もままならない。まさに野垂れ死にという言葉そのままを表したかのような姿。

「結局、逃げたって同じだったんじゃないか……」

 諦観が更に活力を萎びさせてゆく。
 もはや助かる事のない人々だが、その心に希望を持たせて安らかに眠らせる事は出来るだろう。

 せめて最後は華やかに。群生地から採ったカボチャを使い、彼らが話でしか知らないハロウィンを見せよう。
 死出の道行が暗澹たるものではなく、ダークセイヴァーに挿し始めた希望の光に照らされる事を祈って。
眞嶌・未来(サポート)
 バーチャルキャラクターのシンフォニア×聖者、外見は十代前半くらいの女です。
ものすごくリアルなラブドールですけれどね!

 基本的にサポートなので、守られながら知っている歌を歌って支援します。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 重く暗い夜の闇の中、誰もが何を望むでもなく力尽きようとしていた。この世界には闇しかなく、希望の光など見えないとでも思うかのように。だが、ただうなだれていた男が、ふと顔をあげる。
「なにか聞こえる……歌、なのか……?」
 疲労と絶望で混濁していた意識に、心地よい旋律が沁み込む。男には馴染みのない、だけれどもどこか惹かれる歌声に引き寄せられるように視線を彷徨わせた先には、眞嶌・未来が鮮やかな何かをこちらへ運びながら歌を口ずさんでいる姿があった。

「♪~♪~~」

 未来は大きく実ったカボチャをせっせと運んでいた。持っているのはカボチャだけでなく、パーティで使うような色鮮やかな飾りの数々。男が呆然とこちらを見ている事に気づいた未来は微笑みを返し、男たちが居る野営地とも呼べないような粗末な広場を飾ってゆく。

「今夜はハロウィンだから、おばけにカボチャに~♪」

 繰り抜かれたカボチャのランタンとファンシーなおばけをあたりに飾り、カボチャ色をしたハロウィンカラーのリボンを付ける。
 その光景をただ呆けたように眺めていた男たちの顔が、わずかばかり明るくなっていった。パーティ自体も楽しいのは勿論だが、パーティ気分を盛り上げるのには準備を共にするのも良いだろう。満足に動く事も出来ない人々にも準備されてゆくこの光景を見せる事は、この後への期待、言うなれば希望を抱かせるには十分効果的だった。

「さあ、ハロウィンだよ♪」

 未来がにっこり笑って人々に声をかける。これまで培った経験を元に飾り付けた広場、彼らが今まで見た事のないようなパーティの様相に、男の目から涙が一筋零れた。
 それは、諦めで凍り切っていた男の心が溶ける雫のように。

成功 🔵​🔵​🔴​

仲佐・衣吹(サポート)
私ことウォッチが対応致しましょう
執事のように礼儀正しく丁寧口調の人格
常に微笑みを絶やさず立ち振る舞いはスマート

調べ物や相手から信用を得ることが必要ならば適任でしょう
あー……少々吃驚したり怖かったりするアクシデントには弱いのですけれど
(数秒固まった後に)微笑みと口八丁で誤魔化すのは得意です

アイテムやユーベルコードはその場に応じて選んで下さって結構です



 飾りつけを終えた広場に次いで現れたのは仲佐・衣吹だった。人々の表情は幾分和らいでいるとはいえ、ハロウィンの飾りをただ見ているだけというのでは味気ない。

「ここからは、私ことウォッチが対応致しましょう。」

 執事然とした衣吹の出で立ちは、この場に居る男たちには縁遠い姿であったろう。だからこそ、このハロウィンの夜が現実よりも温かな夢に思う者も居た。例えこの先の道行が定まっているのだとしても、今はハロウィンを楽しもう。そう思えるだけの気持ちを、衣吹は与えていた。
 ハロウィンの仮装と称して、温かなマント、白い布などで人々の身体を優しく包む。夜気に冷え、体力の衰えた身体を少しでも休ませられるように。

「皆様、ハロウィンの夜にはおばけに仮装した子供がお菓子をねだりに家々を回るそうですよ。」

 今の皆様の仮装のような恰好で、と衣吹は優しく語る。この場にはお菓子をねだる子供はいない。だが一人の男はかつて居た己が子を思い、また別の男は自分たちに施された仮装にハロウィンの夜の祭りに思いを馳せる。ヴァンパイアの支配が無ければ、或いは――。そう、思い描く事すらかつての彼らにはできなかった。

「さあ、周囲をご覧ください。皆様、ハロウィンの夜に相応しい仮装姿でしょう?」

 衣装を変えたわけではない。メイクも無ければ付け耳などもない。それでも彼らの体に負担をかけないように、いつもと違う雰囲気を感じさせられる装いに変わった同胞の姿に、男は伝え聞き、先に思い出していたハロウィンを見た。
「あぁ……」
 口から洩れたのは安堵の吐息。こんなに穏やかに夜を過ごすのは、いつ以来か。

「ささやかではありますが、皆様、ハロウィンの夜をどうぞお楽しみください。」

 優しく告げる衣吹の言葉は辺りを照らす穏やかな光と共に人々の心に解けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
もう少し早く辿り着くことができていたら
南瓜を食べてもらって元気を取り戻せるくらい彼らの生命力が残っていたら
そう思ってしまう
消えゆく命、それを見送ることしかできないなんて

こんな命にどう向き合えばいいのかの正解を知らない
けれど悲壮な表情は見せないで、いつもの顔でいようと思う

彼らの元に着いても特に声をかけず
南瓜の底をくり抜いて中身を出しじっくり火を通す
その間に南瓜でランタンを作り灯をともす
南瓜が柔らかくなったら牛乳等の材料を加えてスープを作るんだ
弱っている彼らでも食べられる筈

ハッピーハロウィン、貴方達に良い夜を
ランタンの灯る中、そう祈るように呟いて
スープがあることを示し場合によっては食べさせてあげる



 焚火がパチパチと音を立てて燃える。
 昏い闇を照らす炎、その中で燃え崩れゆく木片。燃え尽きた破片から散る最後の火の粉が風に消えゆく。
 サンディ・ノックスは手を動かしながら散って消える火の粉に目を細めた。

 もう少し早く辿り着くことができていたら。
 南瓜を食べてもらって元気を取り戻せるくらい彼らの生命力が残っていたら。

 そう思ってしまう。予知は必ずしも悲劇から人々を救う訳ではない。猟兵だからとすべてを救える訳ではない。そう、分かっていても。

「消えゆく命、それを見送ることしかできないなんて。」

 零れた言葉は誰に届く事もなく、火の立てる音とサンディがカボチャを繰り抜く音に紛れていった。目を向ければもう立つ事も出来ないくらいに疲弊しきった人々の姿。今は温かなマントにくるまれ凍える事はないだろう彼らの表情は、どこか安らいで見えた。

 こんな命にどう向き合えばいいのかの正解を知らない。

 だけれども、せめて彼らの前では悲壮な表情は見せないで、いつもの顔でいようとサンディは思う。この夜の思い出が、何よりの贈り物となるだろうから。

 人々の下に温かな香りが漂ってくる。ふと目を向ければ、サンディが底を繰り抜き中身を出したカボチャをじっくりと火にかけている姿が見えた。もはや食べ物を噛む力もろくに残ってない男の腹が、慣れすぎて忘れていた空腹を呼び起こす。人として当たり前の幸福。温かな食事を楽しむ幸せ。
 ――忘れていたな、この感じ。
 怯え、逃げながら無理やり流し込む食事とは違う温もり。誰かを思って作られる食事の味が香りと共に思い出される。
 彼らが思い出に浸るのを邪魔しないよう、サンディは声をかける事無くカボチャを繰り抜きランタンを作ってゆく。調理しているカボチャに火かじっくりと通るまでには顔の形に繰り抜かれたカボチャのランタンがいくつか出来上がっていた。

「カボチャの火の通り具合は……うん、いい感じだ。」

 カボチャランタンに灯した火が揺らめく影を躍らせる中、サンディは火の通ったカボチャと持ってきた材料を合わせてスープを作る。たっぷりの牛乳に柔らかくなったカボチャが混ざり仄かに色づく。味を沁みださせるために野菜を入れ、塩で味を調え、味見をしてみる。薄味だが旨味はしっかりと舌に感じる優しい味わい。
 噛む事もままならない彼らでも、スープならば。そう思い作ったカボチャスープを皿によそってサンディは男の所へ行った。

「ハッピーハロウィン、貴方達に良い夜を。」

 ランタンの灯る中、祈るような言葉と共に皿と匙を渡す。受け取った男は手に感じる温かさに震える声でありがとう、と言った。優しく笑みを返して次の人へと向かうサンディに、男から言葉が続けられる。
「ハ……ハッピー、ハロウィン。」
 初めて言う言葉に気恥ずかしさを感じながら、それでもサンディへと向けた男の顔は泣いているようにも笑っているようにも見えた。
 一人一人にサンディはスープを手渡し、ハッピーハロウィンと声をかける。誰もが皆、最初の男のようにたどたどしくもハロウィンを楽しもうとしているようだった。声が出ない者には無理しなくていいと優しく手を握り、自分では食べられないほど弱っている者にはサンディが食べさせてあげた。
 静かに、穏やかに時間は過ぎていった。

 夜が更けていき、一人、また一人と眠りに落ちてゆく。その顔は皆一様に満ち足り、安らかだった。ハロウィンの夜が明け、朝が来た時には起きている者が居なかったのだとしても。
 男は、かつて聞いたハロウィンの祭りを楽しんだのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月10日


挿絵イラスト