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秋祭大騒動

#サムライエンパイア #お祭り2021 #ハロウィン

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「発扉・破狼印(はつぴ・はろういん)!」
「「「オオッ!!」」」
 どおん、どおん――。地主の号令に合わせ、堀手(ほりで)の町の若い男衆が勇壮な太鼓の音色と祭囃子を奏で上げる。
「セイッ!」
「ハッ!」
「ハッ!」
「酉筑谷・酉比等(とりつくや・とりひと)!!」
 それと同時に、町の中心である酉比等(とりひと)神社の門扉が開かれた。
 その中から飛び出したのは、橙色に染め上げた祭り法被をいなせに着込んだ男衆と、彼らの担いだ神輿である。
 現れた男たちは、わっしょいわっしょいと威勢よく声を張り上げながら神輿を担ぎあげ、そして声を響かせながら境内より町内へと繰り出した。
 破狼印(はろういん)の祭り――。
 それはサムライエンパイアのある地方に残る、由緒正しい秋の祭りである。
 かつてこの地には人々を苦しめた狼の怪物がいたのだという。しかしある時、京の都より現れた武人、酉筑谷・酉比等(とりつくや・とりひと)なる侍がこれを調伏し、一帯の地域に平和を取り戻したのだ。
 その伝説的な偉業を称え、この堀手の町は毎年この時期には周囲一帯の地域の収獲を祝う祝祭を兼ね、酉筑谷・酉比等の用いたとされる退魔の印・破狼印(はろういん)を掲げた祭りを催しているのである。破狼印を刻んだ勇壮な酉比等神輿を担ぎながら男たちが丸一日をかけて一帯を練り歩き、そしてその後は夜を通した宴会が開かれるのだ。
 また、酉比等が怪物退治の報酬として息子へ菓子を振舞うよう当時の人々に求めたという伝承から、神輿には子供たちが随伴しながら酉筑谷・酉比等の名を唱えて各家庭を訪問し、菓子を貰うという風習もある。子供たちは菓子に喜び、どこの家庭もこの日ばかりはと張り切って振舞いの準備をする。地域に住む人々は、老若男女がこぞってこの日を楽しみにしていた。
 しかし。
「グヌヌヌヌ……!気に入らん!!気に入らんわ!!」
 ――そのように、人々が幸せに過ごす日常を憎悪する者がいた。
「……もはやこれ以上は許すことまかりならん!!者ども、であえ!であえィ!!」
「ハッ!」
 その男――オブリビオンである悪代官は、声を張り上げながら手駒である侍たちを呼びつける。
「行けぃ、者どもよ!!破狼印などというふざけた祭りを滅茶苦茶にしてやるのだ!」
「ハッ!!」
 悪代官、樋渡之富鉱・光安治(ひとのふこう・みつあじ)は邪悪極まりない笑みを浮かべて手下たちへと指示を下す――。
 かくして、浪人の群れが今まさに町へ繰り出そうとした神輿衆へと襲い掛かったのである。

「みんな、いますぐサムライエンパイアに向かってくれ」
 グリモア猟兵、九条・救助(f17275)は、グリモアベースにおいて猟兵たちへと依頼した。
「今、なんだかよくわからねーけどどうもいろんな世界でいろんな事件が同時多発的に起きてるみたいなんだよね……っつわけで、今から案内するのはその中でも、サムライエンパイアの案件だよ」
 救助はホワイトボードにマーカーで説明の記入を開始する。
「まず、状況の説明だ。今の時期、サムライエンパイアは収穫祭とかそういう秋祭りをやってる場所が多いんだけどさ――その中で、いくつかオブリビオンに襲われるところがあるみたいなんだ」
 続けて救助は大雑把なサムライエンパイアの地図をホワイトボードに描き、そして何箇所かに点を入れる。
「で、今からみんなに行ってもらうのはその襲撃地点のひとつ……堀手っていう町だね。場所は武蔵国……アース文化圏の日本で言うと神奈川県のあたりだね」
 その中のひとつに、救助は赤い印をつけた。
「ここでやってる破狼印ってお祭りにオブリビオンが乱入してメチャクチャにしようと企んでるんだ。こいつをやっつけて、地域のみんなとお祭りを守ってくれ」
 敵は神輿が出発しようとしているタイミングで、神輿が待機している神社の境内へと乗り込んでくる。そこへ駆けつけて、敵を叩いてくれ、と救助は説明した。
「で、その後なんだけど……」
 続けて、救助が戦闘終了後の話を付け加える。
「敵の脅威がなくなれば、お祭りも滞りなく再開されるはずさ。ついでだから、みんなも一緒にお祭りに参加しといでよ。お神輿一緒に担ぐもよし。子供らに混ざって遊ぶもよし。お祭りのご馳走だとかも出るから、料理のお手伝いしたりとか、宴会に参加したりとかするといいよ」
 ……即ち、そのままお祭りに参加して遊んできてもよい、ということだ。せっかくの機会、ぜひ楽しんできてほしい、とグリモア猟兵は最後にそう言い添えた。
「ってわけでいいかな。ほかに質問ないね」
 確認するように尋ねて一度周りを見渡してから、救助は頷いた。
「それじゃ、よろしくー!」
 かくして、グリモアに光が灯る。


無限宇宙人 カノー星人
 ごきげんよう、イェーガー。カノー星人です。
 闇の眷属を自称する皆様におかれましては、ハロウィンの時期は一年を通した催事の中でも最もテンションのアガることかと思われます。我々カノー星人もその例に漏れません。
 ということで、秋祭りです。よろしくお願いします。

☆このシナリオは「ハロウィンシナリオ」です。
 10/31の朝までに、全世界のハロウィンシナリオが「最低1本づつ成功」していれば、無事に「全世界を巡るハロウィンパーティ」が開催されます。
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第1章 ボス戦 『悪代官』

POW   :    ええい、出会え出会えー!
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【部下の侍オブリビオン】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    斬り捨ててくれる!
【乱心状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    どちらが本物かわかるまい!
【悪代官そっくりの影武者】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「よぉし、破狼印(はろういん)の始まりだァ!」
「オオッ!」
 神社の境内にて、男衆が声を張り上げた。男たちは力を込めて破狼印祭りの神輿を担ぎ上げ、そして神社を発とうと動き始める――。

しかし。
「ムハハハハ!そうはいかんぞ、貴様ら!」
 樋渡之富鉱・光安治(ひとのふこう・みつあじ)は、連れた手勢の侍の群れと共に突如境内へと押し入った。
「ウワッ!?なんだァ!?」
「ムッハハハハハ!この儂の目の前で民草どもが祭りなどと愚かなことを始めたのが運の尽きよ。この樋渡之富鉱・光安治(ひとのふこう・みつあじ)が貴様らの安寧など許すものか!者ども、斬れッ!!一人残らず斬って捨てい!ムッハハハ!皆殺しにすれば目撃者も残らぬという寸法よ!!」
「ハッ!」
「ヒヒヒ……全員切り捨ててやるぜ……」
 邪悪!
 ただ他者の幸福を憎み不幸に陥る姿を見たいという悪辣な性根が、ただそれだけの理由で無慈悲な殺戮を始めようとしているのだ!
 光安治の手勢である侍たちが、刀を手にしながら人々を囲み始める……!もはや一刻の猶予もない絶体絶命だ!

 猟兵たちよ、君たちは急ぎこの悪行を止めなくてはならない!
荒珠・檬果
雰囲気ぶち壊すオブリビオンは絶許。
せっかくのお祭りだというのに!

まあ、数に物言わせてるのなら、こっちも文句はつけさせねぇってやつでして。
ここの神様、ちょっと騒がしくなりますが、失礼します。
七色竜珠を白日珠へと合成、戟にしましてレッツ【合肥戦神、来々】。切り捨てなんてさせませんよ。
まずは押し返しが必要ですからね、歩兵の皆さんと一緒に突撃からの押し返し。
住人の危機なので、呼び出した李典殿も協力してくれますよ。こういう時には、普段の不仲とか引きずらないですから。

そいでもって、押し返したら各々、敵を叩いてくださいな。大丈夫、相手はオブリビオンですから!


夜刀神・鏡介
破狼印だの酉筑谷・酉比等だのという秋の祭り……偶然と片付けるにはあまりにも出来すぎな気もするが
きっと世の中そういうこともあるだろう。深いことは考えない

とにかく、人々が楽しみにしている祭りを台無しにしようなんて所業を見過ごすことは出来ないものな

悪代官の前で神刀の封印を解除。蒼の神気を刀身に纏わせて漆の秘剣【蒼鷹閃】を発動
素早く動き回りつつ、現れた侍たちを次々と切り伏せる
先んじて倒してしまえば合体時の性能も抑えられるし、合体すれば数が減る分立ち回りやすくなる

さて、部下は片付けた。残るはお前だけだ

あ、もし何者かと聞かれたならば、折角だし天下自在符を見せてやる
尤も、物語のように見逃したりはしないがね


ジェリッド・パティ
ほう、部下が素直にいう事をきくあたり……それなりの人望はあるようだな? 一人残らず細切れだ。囲いが消えても笑いが続くか見ものだ

相手の得物は刀か。……あまり使ったことがない武器だな……おいアンタ、それウチに寄越せ。寄越す寄越さないにしてもアンタはウチに殴られるし、刀は奪われる
対象が鎧を纏っているなら、装甲の薄い脇や首を狙って重量を乗せた拳で殴る。防がれても装甲の上から何度も殴ればいずれ中身も脆くなるだろ
戦場で乱心するか? それでウチに傷をつけるのか? 囲んで叩く脳がなきゃあ、集団の利は無いぞ愚か者共!!
刀が入手できたら装備するが、斬るよりはぶっ叩く形で使用する。もし刀が折れたら拾えばいい。寄越せ



「行けい者どもっ!このような催し、徹底的にぶち壊しにしてやるのだっ!」
「オーッ!」
 悪代官、樋渡之富鉱・光安治(ひとのふこう・みつあじ)の号令に従って、浪人の群れが抜刀しながら境内へと押し入る。
「なんだあっ!?」
「うわあッ!!」
「ヒーッヒヒヒ!!お前達はここで皆殺しになるのだ~っ!」
 悪辣!浪人どもが町の人々を蹴倒し、足蹴にしながらその手に握った刃を振り上げる!
「ひ、ひいッ!」
「そぉら、まずは貴様から死ねい!」
 ――しかして、刹那!
「そこまでだ!」
「むおっ!?」
 跳ね上がる刃!横から割り入った重く鋭い剣閃が、無辜の人々を襲おうとしていたその凶刃を遮ったのだ!
「き、貴様……何奴!」
「見ての通り猟兵だ。人々が楽しみにしている祭りを台無しにしようなんて所業、見過ごすことは出来ないものでな」
 鉄刀の柄を握りなおしながら、慄く浪人どもの前に進み出たのは夜刀神・鏡介(f28122)であった。
 その手には、幕府より猟兵たちへと授けられし証・天下自在符が光る!
「まったくですね!せっかくのお祭りだというのに……雰囲気ぶち壊そうなんて絶許です!」
「グアーッ飛び膝蹴り!!」
 続けざま、素早く飛び込んだ新たな猟兵の姿が勢いのままに浪人の一人へとぶつかり、そして自動車事故めいて吹き飛ばす!浪人は悲鳴をあげながら玉砂利の上を跳ね飛んで転がり爆発四散!
「ぬう……!」
 気勢に押された浪人の群れはじりじりと後退り、猟兵たちとの間に間合いを置く。
「これ以上の悪事は、私たちが許しません!」
 そして――ざ、ッ!玉砂利を踏みしめながら荒珠・檬果(f02802)は悪党どもの前へと立ちはだかった。
「む、ムウウ……!自在符持ちども……!」
 猟兵たちの参入により、浪人たちはその足を止める。彼らとて悪事に手を染めるオブリビオンであっても、剣の道に生きる者たちだ。彼我の力の差を理解できぬほど未熟でも愚かでもない。
 しかし。
「何をしておる!自在符持ちであろうがなんであろうが、儂らの悪事を阻むというならば斬れい!斬って捨てい!」
 悪代官はそれを許さない。響き渡る銅鑼声が、下がろうとする浪人たちの足を止めさせた。
「ほう、部下が素直にいう事をきくあたり……悪党の割には、それなりの人望はあるようだな?」
 ジェリッド・パティ(f26931)はその様子を見遣った。
 その身の丈十尺近く。現れた鉄の威容が、悪党たちを見下ろすように聳える。
「だが、一人残らず細切れだ。囲いが消えても笑いが続くか見ものだな」
「むう……」
 ジェリッドは威圧するように一歩前に進み出る――。慄くように、浪人どもが唸った。
「あ、あんたがたは……」
「猟兵だ。安心してくれ、奴らは俺達が斃す」
「そうです!破狼印でしたっけ、このお祭りは私たちが護りますよ!」
 その一方、怯える人々を庇うように鏡介と檬果が並び立ち、そして敵の群を見据えた。
「……しかし、破狼印だの酉筑谷・酉比等だのという秋の祭り……偶然と片付けるにはあまりにも出来すぎな気もするが」
 鏡介は眉根へわずかばかり皺を寄せながら小さくぼやいた。
 この破狼印(はろういん)という催しはどうにも他世界のハロウィンに都合よく似すぎていないか。酉筑谷・酉比等(とりつくや・とりひと)なる人名もきわめて怪しい。胡乱なものを感じながら、鏡介は思った。
 しかし、あらゆる文明・文化には偶然の類似が存在することは多く知られている。多くの文明において太陽は主神としての格を備え、また、西洋神話と日本神話に語られるオルフェウスとイザナギの例が示すように、生物の収斂進化法則めいた文化の発祥傾向は存在しており、ここサムライエンパイアにもハロウィンに似た秋の祭りが催されていることにはなんの不自然も違和感もないのである。いいね?
 ――閑話休題。
「……まあ、いい。きっと世の中そういうこともあるだろう。深いことは考えない」
 鏡介は胡乱な思考を振り払い、そしてあらためて敵群に対峙した。
「さー行きましょう!悪いオブリビオンはやっつけますよ!」
「ああ。皆殺しだとか言っていたようだが……その言葉、そっくりそのまま返してやるとしよう」
 そして、猟兵たちが身構える。
「フン……!たかだか3人で何ができるというのだ!儂の手下どもはこんなものではないぞ!であえ、であえィ!」
 だが、悪代官樋渡之富鉱・光安治はさらに声を荒げた!それに応じるように、神社の外から配下の侍どもが押し寄せる!
「なるほど、数だけは揃えてきたようだ」
「そしたら私が手を打ちましょ。まあ、数に物言わせてるのなら、こっちも文句はつけさせねぇってやつでして……」
 檬果は一度神社の社へと向き直り、そして一度柏手めいて手を合わせた。
「ここの神様、ちょっと騒がしくなりますが、失礼します」
 ――その瞬間、檬果の身体が光を纏う。ユーベルコードの力を励起させているのだ。
「レッツ・【合肥戦神、来々】!」
 そして、檬果は刃を掲げた。――それは白日珠。高い巫力を備えた戦巫女の武具である。檬果の意に応じてかたちを変えるそれは、いまこの場では戟として顕現していた。
「れっつごー!」
『オオオッ!』
 掲げた白日珠から周囲の空間へと拡散されたユーベルコード出力は、そこに大型の『門』を開いた。
 その門をくぐりながら境内へと現れるのは、檬果の験力によって呼び出された兵士たちである!
「なにィッ!?」
「そーれ、押し返せー!」
『オオッ!』
 激突!現れた兵士たちは鬨の声とともに浪人たちへと押し寄せる!思わぬ援軍に悪党どもがどよめいた!兵士たちはそれを見逃すことなくぶつかってゆき、敵群の態勢を大きく崩す!
「よーし!いけてるいけてる!それじゃあ敵を叩いてくださいな。大丈夫、相手はオブリビオンですから!」
「派手にやるじゃねえか。……面白ぇ、ウチも暴れさせてもらおうか!」
 始まる乱戦の中、ジェリッドはそれを面白がるように笑い、そしてその真っ只中へと飛び込んだ。
「ムウッ!」
 ジェリッドの姿を目にした侍が、素早く反応して手にした刀で切りつける――
「甘いッ!」
 ギィンッ!しかしてジェリッドはそれをものともせずに薙ぎ払った。ジェリッドは続けざまに踏み込んで間合いを詰め、侍の腕を掴み上げる。
「グオ……」
「この得物は刀か……あまり使ったことがない武器だな」
 値踏みするようにその刃を見るジェリッドは、それから侍を見下ろした。
「おいアンタ、それウチに寄越せ」
「なに……!?き、貴様、刀は武士の魂ぞ!それを奪うなどと」
「そうかい。……まあ、寄越す寄越さないにしてもアンタはウチに殴られるし、刀は奪われる。残念だったな!」
「グアーッ頬骨!!」
 ジェリッドは躊躇なく男の顔面をぶん殴った。刀を手放しながら吹き飛んだオブリビオンが悲鳴をあげて爆発四散する。
「む、う……」
 その光景に、再び浪人たちが慄いて唸る。
「どうした!なにをビビッてる。戦場で乱心するか?それでウチに傷をつけるのか?囲んで叩く脳がなきゃあ、集団の利は無いぞ愚か者共!!」
 ジェリッドは吼えた。そして玉砂利の地面を蹴って走り出し、そして悪党どもに向かってぶつかってゆく。
「はッ!」
「ぐあッ!」
 その一方、鏡介は乱戦の中を巧みにすり抜けながら浪人の群を叩いていた。
「貴様ァ!」
 悪党どもが正面から鏡介へと襲い掛かる。唐竹割の一刀!しかし鏡介はこれを鋭い体捌きで躱すと鉄刀の一閃を叩き込んだ。
「……これ以上、お前たちのような悪党をのさばらせてはおかない。片付けさせてもらう」
 更に、鏡介はここで剣を持ち換えた。――神刀・無仭。封印を解き、白鞘より抜き放たれた刃が、青白く光を放つ。
「神刀解放。刃は流れるが如く――」
 【漆の秘剣【蒼鷹閃】】。
 その瞬間、戦場に光が奔った。解放された神刀を繰り、鏡介が刃を放ったのだ。
「グアーッやられた!」
「グアーッ真っ二つ!!」
「グアーッ死ぬ!!」
 迸る剣閃に、悪党どもが悲鳴をあげて次々に切り伏せられて爆発してゆく。
 戦況は猟兵達が優位性をもったままに推移していた。檬果の兵士たちによって抑え込まれた浪人たちは、暴れ回るジェリッドと鏡介の剣によって次々に叩きのめされ、もはやその数を大きく減らしている。
 しかし――。
「フンッ!!」
「……!」
 鏡介は向けられた殺気へと咄嗟に意識を向け、刃を薙いだ。
 ――状況を変えるべくして、悪代官樋渡之富鉱・光安治そのひとが戦場へと飛び込んだのだ!
 重たい剛の剣――鏡介は光安治の刃を神刀で払って受け流し、そして僅かに下がって間合いを開く。
「貴様……なかなかの使い手のようだな。しかァし!これ以上儂に歯向かおうというなら許さんぞ!」
 鋭い殺気が再び鏡介を向く。
「……部下はもう片付いた。残るはお前だけだ」
「馬鹿め!手下どもなどおらずとも、この儂がいれば貴様らなど皆殺しよ!」
 ――乱心状態!その両腕に力を込め、オブリビオンとしてのユーベルコード出力を宿した剣の技で悪代官は鏡介へと迫る!
「いいや、できねえな!!」
「グオッ!?」
 だが、そこへ側面から飛び込んだのはジェリッドである。雑な使い方で半ば折れかけた刀を力任せに振り回し、悪代官へと叩きつけたのだ。悪代官が衝撃に態勢を崩し、たたらを踏む。
「えいやっ!」
「ヌウッ!」
 更に襲い来る刃!檬果のかざした戟が悪代官を叩く!
「ム、ゥ……貴様ら!」
「だあッ!!」
 態勢を崩した光安治へと、再び襲うジェリッドの強撃!
「はあッ!」
 合わせるように、鏡介の神刀がジェリッドとほとんど同時のタイミングで光安治へと切っ先を斬り込んだ。
「ぐおおおおおおっ!!」
 重なる斬閃――!そこに込められたユーベルコード出力を浴びながら、悪代官がうめき声と共に吹き飛ぶ!玉砂利の上を二度三度と跳ねて転げ回った!
「さあ、これでどうですか!」
「これで終わってくれればいいんだが……」
「そうはいかねえだろうな」
 猟兵たちは戦闘態勢を保ったまま、悪代官の姿を追う。
「……許さんッ!!」
 ――そして、猟兵たちの予想を裏切ることなく、悪代官は立ち上がった。
「よくもこの儂にこれほどの無礼を……貴様ら、決して生かしてはおかぬぞ!」
 刻まれた傷の痛みに激昂する悪代官が、その双眸に憎悪と憤怒の火を灯しながら猟兵たちを睨めつけた。
「……ええー、しぶといですね」
「倒れるまで殴ればいいんだ。いくぞ!このまま押し切ってやる!」
「ああ。決着をつけよう」
 そして猟兵たちは再び武具とユーベルコードを構え、オブリビオンに対峙する。

 ――かくして、戦いは続くのである!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

レパル・リオン
待てーいっ!
太平の敵が笑う時、正義の爪が太陽に吠える!
魔法猟兵!イェーガー・レパル参上!

フォームチェンジ『トラニンジャ』!トラとニンジャ、その共通点は『鋭さ』!一撃必殺のニンジャのワザにトラの爪を合わせれば、斬れぬ物などあんまりない!

まずは悪の侍軍団相手に大立ち回りよ!カタナが振り下ろされるより速くパンチをアゴにぶちこみKOよ!

正義のニンジャはいつだってクール!そして無慈悲!
乱心して振り回されるカタナを見切り、よけてよけてよけまくり、大ぶりの一刀に左手を添えて、
必殺!トラ・ペネトレイト(※貫手で敵の心臓を貫き破壊する技)!


チル・スケイル
「皆さん、よろしくお願いします(お辞儀)」
「…(仕事の時間)」

「では、吉報をお待ちください」

竜派ドラゴニアンのクールな女性です。普段の口調は『私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?』誰にでも礼儀正しく接します
戦闘中は 『私、あなた、~さん、言い捨て』不要な発言はしません

戦闘スタイルは魔法による射撃が主体。氷の魔法を操ります。それ以外の属性は使いません

侮辱や暴言、報酬の踏み倒しなど、敬意に欠ける行為を嫌います

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません
スシが大好きです

あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ルク・フッシー
こ、こんにちは。ぼ、ボクは、ルクといいます

戦いは怖いですけど…誰かの大切な物を守るために…
大丈夫です。ボク、戦います…!

できるだけ敵と中〜遠距離を保ち、相手の能力を考え、最適だと思うユーベルコードを使い戦います
塗料に属性や誘導弾などの性質を宿す事もあります

攻撃はよけるよりオーラ防御や武器で受けて軽減したり、激痛耐性で耐えたりする方が得意です

たとえ依頼達成のためでも、他の猟兵や一般人などに迷惑をかけるような事や公序良俗に反する事はしません

よ、よろしくお願いします…!(絵筆をきゅっと抱きしめる)



「おのれおのれ猟兵どもめが!ふざけおってからにッ!!であえ、であえッ!!この儂の愉しみを邪魔するものどもを皆殺しにしてしまえいっ!!」
「おおっ!!」
 悪代官が鋭く叫ぶ!響く声に応えて呼び出されるのは悪漢の群れ!抜き身の刀を手にした悪代官配下の浪人たちだ!
「行け行け行けいっ!小癪な猟兵めらと町のものどもを血祭りにあげよ!」
 悪代官、樋渡之富鉱・光安治(ひとのふこう・みつあじ)は手にした扇子を指揮棒めいて振るい、浪人軍団へと指令を下す。応じた浪人どもが一斉に声をあげながら境内へと突入を開始した。
 ――しかし!
「待てーいっ!」
 鳥居の前で玉砂利が爆ぜる!そこに降り立った猟兵は――レパル・リオン(f15574)だ!
「その悪事もここまでよっ!」
「ムウッ!貴様……何奴!」
 現れた新たな猟兵の姿に、光安治旗下の浪人たちがどよめく!
 レパルはそこで素早く見得を切るようにポーズを取り、そして名乗りを上げた!
「太平の敵が笑う時、正義の爪が太陽に吠える……魔法猟兵!イェーガー・レパル参上!」
 バアーンッ!決まったポーズの背後で吹き上がる炎のイメージ!圧倒するその迫力に、男たちがたじろぐ!
「何をッ!!魔法だかゴボウだか知らぬが、犬面の物の怪が小生意気な!何をしておる!惑わされておるのではないわ!斬れ、斬れーい!!数で囲んで叩きのめすのだ!」
「お、おおッ!!」
 だが、その背後から飛ばされる悪代官の檄の声!気を取り直した浪人たちが、一斉にレパルへと向かう――だが!
「グアーッ凍死!!!」
 その瞬間、駆け出そうとした群れの先頭で浪人が悲鳴をあげながら突如斃れ、そして爆散した!
「な、なに……!?」
「グアーッ凍結!!」
「グアーッ絶対零度!!」
 戸惑う悪代官と悪漢たち――しかし、それを嘲笑うかのように二人・三人と次々にオブリビオンたちが倒れ、悲鳴をあげながら爆散してゆく!
「なんだ……何事だ!?」
「……人々の憩いの時を潰し、あまつさえ命までも奪おうとは……度し難い悪事ですね」
「……! 上か!」
 そして、ここで悪代官たちはようやく気付いたのである。
 境内を見下ろす位置、神社にほど近い火の見櫓の上――そこに一人の猟兵がポジショニングしていることに!
「レパルさん。そちらを援護します。敵の気勢は抑えますから、好きに暴れてください」
 チル・スケイル(f27327)である。
 ライフルに似た術式長杖を狙撃銃めいて使う彼女は、この戦場に介入すべく狙撃に適した位置へと至り、そしてスナイパーとしての役目を果たすべく備えていたのだ。
「その声と見事な氷の魔法……チルちゃんね!ありがと、助かるわ!」
「ヌウウーッ!ふざけおって……!だが、それでも貴様らは寡兵に過ぎん!これだけの戦力でかかれば、ひとたまりもないわッ!怯むな!どうせ我らは骸の海より蘇るのだ!進め進めえっ!」
 だが――それでも悪代官は恐れることなく、激昂の叫びとともに浪人たちへとまたしても指示を下す!
「お、オオーッ!!」
 そしてやけっぱち気味にとどろく男たちの鬨の声!いまだ悪逆非道の限りを諦めない悪代官たちは、ここまできてもなお闘志を折ることなく闘志を見せる!
「進めいっ!!一人や二人倒れたところで怯むでないぞ!」
「オオーッ!!」
 ざ――ッ!!石畳を踏みしめる草履の足音!かくして、諦めを知らぬ浪人軍団が境内の中に押し寄せようと――
「だ、ダメです……い、行かせませんっ!!」
「ムウーッ!?」
 ――しかし、その時である!
 またしても新たなユーベルコード出力の光が悪漢どもを遮ったのだ。男たちの道を塞ぐように爆ぜたのは、純白の塗料である!
「グアーッ漂白!!」
「グアーッ塗り潰し!!」
「ヌウウーッ!?こんどはなんだア!?」
「……こ、ここから先は……ぼ、ボクたちが、一歩も行かせません!」
 び、っ。――掲げた絵筆の先から散る塗料の飛沫!
 神社の境内へと降り立ち、そして浪人どもへと対峙したのは、ルク・フッシー(f14346)である!
「グヌヌヌゥ……!!犬面の次はトカゲの物の怪か!!百鬼夜行のつもりか、貴様ら!!ええ!?」
「そ、そういうつもりはありませんけど……」
「ルクくん、ここは怒ってもいいところよ!!……悪い奴のおじさん!!人のことを見た目で判断して悪口だなんて、ひどすぎるわ!!」
 ここでレパルが一歩前へと進み出て、異種族の外見をあげつらうコンプライアンス的に不適切な悪辣な言動を繰り返す悪代官へと抗議の声をぶつける!
「あと、物の怪じゃないわ!ちゃんと将軍様からこれもらってるし!!」
 ば、ッ!――レパルはここで天下自在符を掲げてみせた!おお、と声をあげて浪人たちが慄く。
「ええい!自在符があろうがなかろうが物の怪には変わりあるまい!貴様らいつまでくだらぬ茶番をやっておる!!さっさと行かんか!」
 しかしまたしても叱咤!声を張り上げる悪代官!ここでようやく侍どもが気を取り直し、おお、と声をあげながら猟兵たちに襲い掛かる!
「むう……わからずやね!これはもう実力行使しかないわ。いくわよルクくん、チルちゃん!」
「は、はいっ!」
「……よろしくお願いします」
 かくして、戦いは始まった。
「さあ、いくわよ!フォームチェンジ!」
 レパルは侍の群れへと向かって駆け出しながら、虚空へと向かって腕を突き出す――そして、そこから一着の衣装を掴み出した!
「とうっ!」
 そして目にもとまらぬ早着替え――レパルはそれによって姿を変える!【転衣召還/クロッシング・フォームチェンジ】である!
「ムウウーッ!?あれは!」
「魔法猟兵イェーガー・レパル……トラニンジャよ!」
「虎と忍者だとぉ!?」
 それはシノビ装束をモチーフとしながら虎の意匠をちりばめた格闘戦スタイルの衣装であった!
「トラとニンジャ、その共通点は『鋭さ』!一撃必殺のニンジャのワザにトラの爪を合わせれば、斬れぬ物などあんまりない!」
「戯言をっ!」
「囲め囲め!その速さを活かせぬよう包囲殲滅するのだ!」
 しかして敵はレパルを圧し潰すべく、数にあかせて攻め寄せる!人口密度を高めてしまえば思うようには動けまい!
「……」
「グアーッ凍傷!!」
 だが――ここで再び氷弾が爆ぜた!チルの援護射撃である!
「レパルさん!ぼ、ボクたちが援護します。き、気にせず暴れてください!」
「グアーッ千紫万紅!!」
 続けざまに爆ぜる極彩の飛沫!ルクが薙いだ絵筆から、再び塗料があふれ出る!
 二人の援護攻撃によって、レパルの包囲を固めようとしていた浪人たちの何割かがその勢いを削がれた。機動性の確保にじゅうぶんな空間を得たレパルが、素早く敵群の中を疾る!
「ありがと、二人とも!……よーっし、それじゃあ暴れるわよ!!」
「グアーッ顎骨!!」
 まさに一瞬!手近な浪人へと高速で間合いを詰めたレパルは、打ち上げる拳で男の顎を打ち上げた!顎骨を粉砕されたオブリビオンが勢いのまま倒れ、そして爆散する!
「き、貴様ッ!」
「正義のニンジャはいつだってクール!そして無慈悲!」
 レパルを追って刀を振りかざす男たちであったが、レパルはすぐさまに身を翻しその凶刃をすり抜ける。続けて二人目、三人目!鋭い牙にも似たレパルの武技が、次々にオブリビオンたちを刈り取ってゆく!
「おのれェッ!ふざけおって!」
「むっ!」
 しかして刹那!鋭い剣の一閃がレパルを狙う!激怒した悪代官が乱心めいて切り込んできたのだ!
「とああーーっ!!」
「この悪い奴のおじさん……できる!」
 重く鋭く巧みな太刀筋がレパルを襲う!だが、レパルとて多くの戦いを経て来た猟兵だ。敵の剣の腕は確かだが、それでも躱してみせる。
「フンッ!この儂の技の前に悲鳴をあげて滅ぶがいい!」
「一見メチャクチャだけど思ったよりも隙がないわ……!」
 だが、ここで悪代官は更に攻め入った!レパルは内心で僅かに焦れながらも、有効打を避けて防戦に努める。
 攻撃を当てられぬ悪代官と、躱しながらも攻め入る隙に届かぬレパル。戦いは膠着状態に陥りつつあった。
「……では、隙を作りましょう」
「グヌウ、ッ!?」
 ――ここで天秤を傾けたのはチルである。見える範囲の浪人軍団をあらかた無力化した彼女は、レパルを援護すべく悪代官へと氷弾を飛ばしたのだ。光安治はそれを辛くも躱すが――
「そこです!」
「ヌアッ!」
 その回避動作によって生まれる隙に、続けてルクが付け入った!地を払うように薙いだ絵筆が塗料の波を生みだし、光安治の足元を揺るがせたのだ!
「よーっし……これでとどめよ!必殺!トラ・ペネトレイト!」
「づおォッ!!」
 かくして、そこに生じた絶好の攻撃チャンスへと――レパルがその腕を突き込んだ!
「ぐううッ……!」
 ――光安治は叩きつけられたその一撃に呻きながら再び玉砂利の地面を転がった。
「お、おのれェッ……!!こ、この儂をこれほどにてこずらせるとは!」
 本来であれば必殺の一撃であったが――悪代官 樋渡之富鉱・光安治もまた高い戦闘力をもつオブリビオンであったのだ。巧みな体捌きでかろうじて致命傷を逃れたのである。
 しかし――その体力はもはや限界に近いだろう。
「これでまだ立てるなんて……しぶといわね!」
「で、でも……も、もうちょっとです!」
「……」
 レパルは拳を握る。それに続くようにルクが絵筆を構え、そしてチルが照星の先にもう一度オブリビオンの姿を捉えた。
 かくして、オブリビオンたる悪代官、樋渡之富鉱・光安治と猟兵たちはもう一度対峙する。
 決着の時はもはや目前であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鹿村・トーゴ
祭りの連中皆殺しとかなんで?
とにかく悪事働きたくて仕方ねーって手合いか
街中で人目もあるし忍びってバレんのヤだから
祭りに便乗の飴行商姿で敵侍に接近【忍び足】
振り返ったら手持ちクナイで【カウンター/武器受け】侍の刀を弾き首に一撃
えー?しがない飴行商すよ、お代官様
まー護身術ぐらいは修めてますけどね
羅刹なんでひと暴れもイイかなーって
と言いつつ【だまし討ち】
手裏剣を一般人に当てぬよう【念動力で投擲】侍と悪代官へ攪乱且つ攻撃
向かってきたら【スライディング】で立ち位置変えつつUCの蜂達をけしかけ
蜂に追随し動くとクナイで刺し斬り【暗殺】櫛羅で付けた傷から【毒使い】攻撃

敵攻撃は【野生の勘/激痛耐性】で躱し凌ぐ



「ウヌウウーッ!許せん!許せんぞ貴様ら!!祭りを楽しもうなどという愚かな町の者どもも猟兵どもも皆殺しにしてくれる!!」
 狂乱!悪代官が手にした刀を振り回しながら叫ぶ!
「オオーッ!!」
 その叫び声に応じるように響き渡る侍たちの雄叫び!悪漢どもが咆哮と共に神社の境内で暴れ回る!
「……なんで?」
 ――その最中、鹿村・トーゴ(f14519)は眉を顰めながら首を傾いだ。
 ただ祭りを楽しもうとしていただけの町の人々を問答無用で皆殺しにしようなどとは――いや本当になんで?トーゴはオブリビオンの思考の奇天烈さに困惑すらおぼえる。
「いや……とにかく悪事働きたくて仕方ねーって手合いか」
 思考の末にトーゴはその結論に至った。実際、その考察は正解である。
 オブリビオンとは尋常ならざる生命であり、骸の海より出でし邪悪だ。基本的に、その全ては世界の崩壊と破滅を目的としている。
 であるが故に、そうした悪の性質が発露することで時としてこのように大胆な暴挙に出ることがあるのだ。
「そりゃあちっと……どうにかしねえといけねーよなあ」
 トーゴは町の人々の間に紛れながら、静かに目を細め、いまの自分にできることを模索した。
 鹿村・トーゴは忍びの里で修行と研鑽を重ねた忍者である。
 忍びのものであるが故に、彼は自らの正体を気取られることをよしとしない。そのため、現在の彼は祭りの人だかりを目当てに商売をしに来た飴売りの行商人の装いをしていた。
(んじゃあ、バレないよーに慎重にいくとしようか)
 トーゴは静かに息を吐き出して、その身に纏う空気を弛緩させる。殺気を薄め、警戒を隠し、あくまで単なる商人である――と、思わせる『凡人のふり』をしたのである。
「貴様から切り捨ててくれるわっ!!」
 それが功を奏してか、トーゴのもとへと手近な位置から浪人が襲い掛かった。掲げた刀を振り下ろし、トーゴを袈裟懸けに切り捨てようとしているのだ。
「おっと……危ねー!」
 刹那、トーゴは素早く懐から一本のクナイを引き抜くと同時に襲い来る剣を弾いた。巧みな技がその切っ先の行く先を侍の首元へと引き寄せる!
「おゴッ!」
 ざ、ッ!!――それはまるで奇妙な自害のように見えただろう。トーゴは目立たぬようにクナイを服の下に隠しながら、あくまで何もしていないというテイでいる。『乱心した浪人が勝手に死んだ』のだ。
「ムウーッ!?なんだ……どういうことだ!!おい、貴様!」
 ――だが、激昂!突如部下が死に果てたことに気づいた悪代官が、怒りの声と共にやってくる!
「……なんすか、お代官様?」
「貴様……いま何をしたのだ!」
 悪代官が激憤と共にトーゴへと詰め寄った。――詳しくは見えなかったが、この飴売りの間近で急に死んだのだから、こいつが絡んでいるに違いない!あからさまにトーゴへと疑念の目を向けながら、悪代官がトーゴへとにじり寄る!
「えー?いやいや……オレはなんもしてませんよ。いきなりこのお侍さんが自分で刺したんす」
「いいや!!そのようなはずはあるまい!貴様が何かしたのであろう!」
「そんなこと言われましてもね。オレはしがない飴行商すよ、お代官様」
 激しく尋問を試みる光安治の追及を、トーゴはのらりくらりと躱して笑った。
「まー、護身術ぐらいは修めてますけどね……ほら、ご覧の通りオレ、羅刹なんで。ひと暴れもイイかなーってーのは思いますが――」
 トーゴは肩を竦めて卑屈そうに笑みながら、悪代官へと弁明を続ける――。――そのときである。
「グアーッ手裏剣!!」
「グアーッ暗殺!!」
「グアーッ死ぬ!!」
 響き渡ったのは、侍どもの断末魔であった。
「……なにいッ!?」
 突然の悲鳴に驚いた光安治がぎょっとしながら振り向く――そこにはもはや無事でいる配下は一人として存在していなかった。
 斃れた男たちの身体には、皆一様に手裏剣が突き立っている。
 ――説明の必要すらあるまい。むろん、これはトーゴの仕業であった。
 トーゴは悪代官が激怒しながら自分へと詰め寄っている最中、後ろ手で密かに手裏剣を放っていたのだ。投げ放った刃の群は、トーゴの念力によって操られ浪人どもを襲ったのである。
「ど、どうしたことだ……どうなっているのだ、一体!!」
 状況を把握できずに、悪代官が驚愕の声をあげる。
「どうなってるってお代官様、そりゃあ――」
 困惑する悪代官へと、トーゴは静かに笑いかけながらそっと間合いを詰めた。
「“こうなってる”んだよ」
「なに――!!」
 その瞬間――樋渡之富鉱・光安治は、凄まじい痛苦に悶絶する。
 一拍遅れて光安治の耳朶を打つのは――ぶうん。虫の羽音である。
 【虚蜂/ウロバチ】。
 トーゴのユーベルコードによって使役される不可視の蜂たちが、悪代官を刺したのだ。
「ぐ、お……!」
「オレの目の前でワルサかましたのが運の尽きだよ。……じゃあな、お代官様」
 突き刺された針の痛みと蜂毒の苦痛に悶える悪代官にすれ違いながら、トーゴはその手の中に隠した暗器でとどめを刺す。
「ば、馬鹿な――ごふっ!」
 そして――悪代官・樋渡之富鉱光安治は、ここに力尽きるのである。血を吐きながら悶え苦しむ悪代官は、およそ十数秒の後に完全に死亡し、爆発して骸の海へと還った。
 それに追従するように、光安治によって呼ばれていた悪漢たちも掻き消えるように消えてゆく――。

 ――かくして、ここに悪代官・樋渡之富鉱光安治は滅び去ったのである。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 日常 『そぞろ歩き』

POW   :    周囲をくまなく歩いてみる

SPD   :    効率よく散策してみる

WIZ   :    色々なものを観察しつつ歩く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「発扉・破狼印(はつぴ・はろういん)!」
「「「オオッ!!」」」
 どおん、どおん――。地主の号令に合わせ、堀手(ほりで)の町の若い男衆が勇壮な太鼓の音色と祭囃子を奏で上げる。

 オブリビオンである悪代官が去ったことで平和を取り戻した町の人々が、あらためて祭りを再開したのだ。
 神輿をかつぐ若衆。獣の顔の意匠を刻んだ南瓜灯籠(酉筑谷・酉比等(とりつくや・とりひと)が討伐した物の怪の頭を掲げて村々を練り歩き怪物退治を知らせて回ったという逸話から、周辺の特産物である南瓜を怪物の頭に見立てた細工品を掲げて回る風習がある)を掲げ、酉筑谷・酉比等の仮装をした子供たちが駆け回る。
 女たちや神輿に加わらない者たちは宴会や子供たちへの振舞い菓子ための準備を進め、祭りの空気をそれぞれに楽しんでいた。

 当然ながら、猟兵たちもこの祭りに参加することができる。
 神輿に加わったり、宴会に参加したり。あるいは祭りの風景を見ながらあたりを散策してもいいし、子供たちに混ざって菓子をもらいにいくこともできるし、逆に菓子を振る舞ってもいいだろう。
チル・スケイル
サムライエンパイアの祭事と言えば?スシですね。私も調理します

氷の魔法にて作り出したるは、アイスブルーの氷のナイフ。これで新鮮な魚介類を3枚におろし、スシネタを切り分けます
シャリの準備はお任せします。本場のシャリとスシネタ、ワサビを、私の冷たい手で一つにすれば…スシでございます

そしてこの地の破狼印なる祭り。子どもにお菓子を振る舞うのですね。私も皆さんと一緒に配りたいです

これは…!?スシを模した…菓子!
ああ、この色ツヤ、造形美…宝石めいて輝くスシの美を如実にあらわしています
ぜひとも食べてみたい所ですが…この味は、受け取った子どもの表情から推し量るとしましょう


ルク・フッシー
こ、こんにちは。ぼ、ボクは、ルクといいます

今は、戦わなくてもいいんですね…ふう…こういう日ばかりならいいんですが…

風景、人々、建物、技術…どの世界もボクの住んでる世界(アルダワ魔法学園)では見た事のない物がいっぱいですね〜…
のんびりと絵を描いて過ごしたいです

でも他の人に何かに誘われたら、ついていきます
帰ってから、他の人と一緒にいた時間を思い返しながら絵を描くのも、とても楽しい時間ですから

たとえ依頼達成のためでも、他の猟兵や一般人などに迷惑をかけるような事や公序良俗に反する事はしません

よ、よろしくお願いします…!(ぺこり、とおじぎをする)



「わあ……」
 ルク・フッシー(f14346)は目を輝かせて町並みを見渡した。
「風景、人々、建物、技術……。こうしてじっくり見るとわかりますが、どの世界もボクの住んでる世界では見た事のない物がいっぱいですね〜……」
 ルクは絵描きを趣味とするアルダワの学生である。
 猟兵としての活動の中で多くの世界を巡り、これまで幾度となくオブリビオンに対峙してきたが――本来は戦いよりも趣味の絵描きに没頭している方が好きなごく一般的な少年だ。
「事件も終わったことだし、今はもう戦わなくてもいいんですね……こういう日ばかりならいいんですが……」
 ルクは緩く息を吐き出しながらゆっくりと町を歩き始める。
 多くの場合、猟兵としての任務は戦場に於いて敵対するオブリビオンを討つまでが仕事だ。特に戦争期などはそれが顕著で、慌ただしく戦ってはまた次の戦場――といった過密スケジュールの中で戦いに追われる日々となる。
 それを思えば、今のこの穏やかに過ごせる時間は貴重なものであったといえるだろう。
 しかし、そのときである。
「サムライエンパイアの祭事と言えば?」
 知っていますか、と問いかけるようにチル・スケイル(f27327)がルクを見た。
「えっ。お、お祭りと言えば……?」
 ルクは突然向けられた質問に些か困惑しながら首をひねる。
「えっと……お神輿とか、でしょうか」
 折よくそのタイミングで、二人の立つ通りへと若衆のいなせな声が聞こえてきた。わっしょいわっしょいと勇壮な掛け声とともに担がれる神輿が通りへと入り、熱気が緩やかに町を包むのを二人はその肌で感じ取る。
「いえ、スシです」
「スシ……?」
 だがここでチルは臆面もなくそのようなことを言い放つ。
「いいですか、ルクさん。もともとスシとは江戸の町で生まれた屋台グルメなのです」
 ――ルーツをたどれば、江戸前握り寿司の成立以前に人々の間で供されていたスシは魚の身と米を発酵させてつくる熟れずしという発酵食品であるが、ここでは一般的にポピュラーな握り寿司を指して話を進める。
「そして祭りと言えば出店がつきものでしょう」
「……えっと、そうですね」
 チルは街並みを指して言う。――なるほど、たしかにその言葉の通り、町のあちこちには祭りに出た客をカモにしようといくつもの屋台が出店している。
「というわけで、祭事にはスシが必要なのです。ルクさんはシャリの準備を」
「えっ」
「お願いします」
「わ、わかりました……」
 かくして、なし崩し的に巻き込まれたルクはチルとともに急遽スシ屋台を出すこととなったのである。

「ご覧ください。氷の魔法にて作り出したるは、アイスブルーの氷のナイフ」
 チルは道行く人々の前で、その手の中にひと振りのナイフを作り出した。
「れで新鮮な魚介類を3枚におろし、スシネタを切り分けます」
 そして、素早くも巧みな手さばきでまな板上のサクを切り分けて見事なスシネタを作り上げる。
「ルクさん」
「あっ、はい」
 そして、チルの声にこたえてルクがお櫃を開けた。――酢飯である!
「……エンパイアの他にも多くの世界があり、そして世界の数だけスシが在ります。ですが――やはり、本場はここサムライエンパイアでしょう」
 言いながら、チルは涼やかにシャリを握った。そこに適量のワサビを添え、そしてスシネタを置いて手の中で包み込む。
「本場のシャリとスシネタ……そしてワサビ。私の冷たい手で一つにすれば……スシでございます」
 そうして握ったスシを、チルは屋台へと並べた。
「ひとつもらおうか」
「こっちにもくれ!」
「は、はい!」
 開いた屋台は存外に好評であった。チルは一心不乱にスシを握り、成り行きでアシスタントになってしまったルクがやってきた客を捌く――。立派な繁盛店の様相だ。
 スシの本場であるエンパイアで人々にスシを振舞う――。それは、チルにとってのひとつの目標がかなった瞬間であった。
「酉筑谷・酉比等(とりつくや・とりひと)!」
 その一方である。
 破狼印の祭りは滞りなく進み、町の人々は神輿や振舞い菓子のやりとりで笑い合う。
 その様子は、二人の屋台からも見て取ることができた。
 ――しかしてその中で、チルはあるひとつの信じがたいものを目にしたのだ。
「あれは……!?」
「……どうしたんですか?」
 突然目を見開いたチルのただならぬ様子に、ルクが恐る恐る尋ねる。
「見てください、あそこの子供が持っている……あの菓子」
「……?」
 チルは町を歩く何人かの子供たちの中から、ある一団を指し示した。
 彼らがその手に持っていたのは――棒につけられた飴である。
 それは、半分が白い飴細工でできており、もう半分を様々な色の飴細工と合わせたかたちをしていたのだ。
「スシを模した……菓子です」
 そう――それは寿司を模したかたちの飴細工である。
「本当だ……あんなものもあるんですね」
「ええ……。見てくださいルクさん。ここから遠めに見ただけでもわかるあの色ツヤ、造形美……宝石めいて輝くスシの美を如実にあらわしています」
 チルは懊悩した。
「そ、そうですね……」
「ぜひとも食べてみたい所ですが……いえ、詮無いことです。あの菓子の味は、子どもたちの表情から推し量るとしましょう」
 だが、ここでチルは煩悩を振り払っていま目の前にあるスシへと改めて向き合う。
 屋台を構え人に振舞い始めた以上、今の自分はスシを握る板前なのだ。
「あの……じゃあ、あとで買いに行きましょうね」
 あまりにも悲愴な雰囲気で言うものだから、見かねてルクは提案した。
 チルはそれに静かに頷き、そしてスシを握る作業を再開する。

 かくて、二人のスシ屋台は祭りに来た人々へと振舞われ、好評を博したのだという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夜刀神・鏡介
かくして悪代官は倒れ、町には平和が取り戻されたのだった……
祭りの名前や内容はやはり気になるにせよ、平和に祭りを楽しめるのは良いことだ

それじゃ、俺も少しばかり楽しませてもらうとしよう
とりあえず町を巡って、宴会場で軽く食事を。出てくる料理はやっぱり南瓜が多いのかな
ああ、まだ未成年なので酒はなしで

此処に来る前に一通りの由来は聞いているが、折角だし住民からも一通り話を聞いてみよう
ほら、もしかしたら住民だけに知られている意外な真実とかあるかもしれないし……ないかもしれないが
まあ、こういうのを語るのが好きな人もいるだろうし、交流するのも良しだ

近くを通る神輿や子供たちの様子を見つつ、ゆっくり過ごそう



「かくして悪代官は倒れ、町には平和が取り戻されたのだった……と」
 悪代官との戦いを終え、祭りで賑わう町並みと人々を眺めて夜刀神・鏡介(f28122)は緩やかに息を吐いた。
「……祭りの名前や内容はやはり気になるにせよ、平和に祭りを楽しめるのは良いことだ」
 しかして、鏡介の胸中には未だにちょっとした引っ掛かりが残る。破狼印(はろういん)の祭りだの酉筑谷・酉比等(とりつくや・とりひと)だの。尋常のサムライエンパイア文化にしては名前のセンスが奇妙過ぎる。
 ――さておき。
「まあ、いいさ。それじゃ、俺も少しばかり楽しませてもらうとしよう」
 そう。いつまでも細かいことを気にしていては楽しめるものも愉しめなくなってしまう。鏡介は気を取り直して、祭りの喧騒の中へと足を踏み入れていった。

「酉筑谷・酉比等(とりつくや・とりひと)!」
 かつてこの地に蔓延った物の怪を退治したと言われる伝説の武人、酉筑谷・酉比等の姿を模したとされる武士の装いで、子供たちが陽気に声をあげながら町を駆け回る。
 行き交う子供たちや、祭りの客を目当てに店を出す屋台の商売人。物見遊山にきたご隠居。すれ違う人々を見れば、その表情は老若男女を問わず明るい笑顔で満たされている。
 鏡介はその姿を見送って、町の若い衆が集う宴会場へと到着していた。
「邪魔するよ」
「ん……?おお、さっきの!」
「自在符持ちの兄ちゃんか!さっきは助かったぜ」
「こっちの席に来な!酒もあるぜ!」
 鏡介が会場に姿を見せると、たちまち男たちが声をあげて歓待した。――いずれも、先ほど神社で猟兵たちに助けられた者たちである。
「ありがとう。相伴にあずからせてもらおう」
「おう!今日はなんてったって破狼印の祭りだからな。無礼講も無礼講よ!一献どうだい」
「いや、実はまだ未成年でな。酒はなしで」
「なんだい、まだ若えってのに立派なもんだ。……よーし、じゃあ食え食え!今日は祭りだからな、大盤振る舞いよ!」
 鏡介の隣に座った男がぱんと手を叩くと、女たちが鏡介の元へと膳を届ける。――寿司やてんぷら、蕎麦といった江戸の流行に倣ったご馳走の他、目立つのはかぼちゃを用いた料理である。てんぷらの中にかぼちゃ天が多く見えるほか、煮物、ごま揚げ、安倍川といった様々な南瓜料理が供された。
「ああ、ありがたく頂くとしよう」
 鏡介は一度合掌し、それから料理へと手をつけた。
「しかし、やっぱり南瓜料理が多いんだな」
「ああ、なんてったってこの辺の特産だからな。今年は豊作だった。これも酉比等さまのお陰かねえ」
 祭りの若衆がしみじみと頷き、そして合掌しながら適当な感謝の祈りを捧ぐポーズをする。
「酉筑谷・酉比等か……。此処に来る前に一通りの由来は聞いているが、実際はどんな話なんだ?」
 かぼちゃの煮物を平らげながら、鏡介は男に尋ねる。
「ん、ああ……。そうだな。江戸で幕府が開かれるよりもずっと昔の話らしいが」
「そうそう。あー、たしか、当時は鬼だの妖怪だのがそこらじゅうに溢れかえってた時代だったっちゅう話だ」
「そんで、この辺にもとんでもない化け物が蔓延ってたらしい」
 鏡介の問いかけに、男たちがこぞって集まり出した。口伝でつたわる昔話を、男たちが代わる代わる話してゆく。
「ほう……」
「それで、その化け物に困ってた時にここを訪れたのが酉筑谷・酉比等、っちゅう話だな」
「うんうん。なんでも京の寺で化け物退治の修行を積んだってハナシで、聖句だか破魔の印だかをつかって物の怪どもを瞬く間に払ったそうじゃ」
「今やっとるこの破狼印の祭りはな、そんときにやっつけた化け物の首を持って化け物退治の報告にきたって話に倣ってんだそうだよ」
「由来がどうであれ俺らは騒げりゃそれでいいんだがな!」
「それを言っちゃあおしめえよ!」
「ワハハハハ!酉比等さまばんざいだ!」
「なるほどな」
 鏡介は振舞われた料理を食べながら、好き勝手口々に語られるその伝説を聞いていた。
 大筋としては、どこにでもある御伽話めいた英雄伝説だ。吉備の桃太郎や足柄の坂田金時の逸話のようなものなのだろうと鏡介は理解する。
「それで、子供たちに菓子を振舞うっていうのはどのあたりから……」
「おう、そいつはな。化け物退治の礼に酉比等さまは『息子に菓子でも食わせてやってくれ』って言ったっちゅうことで――」
 鏡介が興味を持って訊ねる度、男たちは代わる代わる伝承の内容を鏡介へと話して聞かせた。
 そんな中、宴会場の横をよその若衆の一団が神輿を担いで通りすがり、あるいは行き交う子供たちが元気な声をあげて走ってゆく。
 ――普段のオブリビオンとの戦いとは違った、穏やかで緩やかな時間だ。
 目を細めて祭りの情景を見守りながら、鏡介はこの時間をゆっくりと過ごしていく。

 かくして、猟兵達も町の人々も、取り戻した平和の中でそれぞれに祭りの一日を楽しんでゆくのである
 サムライエンパイアは、今日も泰平であった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年10月31日


挿絵イラスト