28
幻桜甘爛、神無月

#サクラミラージュ #お祭り2021 #ハロウィン

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サクラミラージュ
🔒
#お祭り2021
🔒
#ハロウィン


0




●大正浪漫とハロウィーンと
 ハロウィン。それはお化けに妖怪、モンスターに妖精、天使と悪魔、有名キャラクターといった様々な仮装と菓子、そして南瓜が存在感を放つ一大イベントだ。
 その中の一つ、汪・皓湛(花游・f28072)が告げた転移先の世界は、幻朧桜とその花弁が常にある浪漫溢れる世界――700年以上も大正時代が続く、サクラミラージュだった。
「幻朧桜、仮装姿の人々、現代とは違う建築様式……あれは、視ていただけの私でも心躍る風景でした。故に、影朧も誘われたのでしょう」
 南瓜に宿った影朧はかよわく、まだ子供だという。見た目はセーラー服風のブラウスに膝丈のパンツ、白いソックスにぴかぴかの子供用靴を履き、そして頭には南瓜を――「南瓜?」と問う声に、皓湛は緩やかに頷いた。
「ですが、現地の方に混じりハロウィン祭を楽しむのみで、実害はございません。件の影朧と戦うより、皆様もハロウィン祭を楽しむ事が転生への道標となりましょう」
 そう言って皓湛は片方の掌を上向きにする。
 空っぽだったそこでくるり回るようにして咲き現れたのは、桜の花だった。

 秋の盛りへと近づきつつある日々でも変わらず絢爛に咲く桜。
 その桜と肩を並べるほどに美しい白亜の館。
 一般開放された館の周りには、たこ焼きたい焼き、焼き芋焼きトウモロコシ、淹れたて珈琲やシュワワぱちっと弾ける色とりどりのサイダーといった屋台や、ハイカラな装いに一彩加えてくれそうなブローチ、指輪、釦やリボンにレェスといった、装飾品を中心とした露店も並んでいる。
 影朧は圧倒的に屋台が気になっているようだが、館の庭園から極彩花弁を降らす華火が打ち上げられたなら、そちらにも夢中になるだろう。
 華火には神への感謝や願いと共に花々が詰められており、打ち上げれば、秋空にあえかな極彩花弁が咲き誇るのだ。

「そのひとひらを掴めば、籠めた願いが叶う……そう言い伝えられている様です」
 火薬は職人の手により詰められた後。
 必要なのは感謝や願い、使いたい花びらと、火を付ける勇気だけ。
 そして館の中にはカフェーもある。この時期だけの特別仕様となったメニューが名を連ねており、どれもこれも絶品との噂だ。
「我ら猟兵の戦いはまだまだ続いておりますが、祭を楽しみ、日々を彩る事も重要です。どうぞ、楽しんでらして下さい」
 花神の男が微笑み、その傍らで花のグリモアが咲いていく。
 そして世界は幻朧桜咲き誇る浪漫の世界――サクラミラージュへ。


東間
 サクラミラージュでハロウィンのひとときをお届け。東間(あずま)です。

●受付期間
 個人ページトップ及びツイッター(https://twitter.com/azu_ma_tw)でお知らせ。プレイング送信前に一度ご確認下さいませ。

●各章について
 一章は美しき館にて開催されているハロウィン祭が楽しめます。
 導入場面はなし。
 屋台で食を、露店で買い物を、華火の打ち上げと花弁掴みを。どれかに絞ったプレイングがお勧め。

 二章では館のカフェーで甘味が楽しめます。カステイラやアイスの飾り等、色んな所がハロウィン仕様。グロテスクなものはありません。あってもキラキラ目玉風のゼリーくらい。
 詳細は二章開始時に導入場面にて。

 影朧は男の子。皆様が楽しんでいれば、それを見ているうちに満たされて転生出来ます。プレイングで絡む・絡まない、どうぞご自由に。

 ※どちらも仮装OK。縦横に幅をすっごい取る・といった周りに影響大の仮装は、採用率が下がりますのでご注意。
 ※プレイングでお声がけ頂いた場合、汪・皓湛もお邪魔致します。

●グループ参加:三人まで
 プレイング冒頭に【グループ名】、そして【送信日の統一】をお願いします。
 送信タイミングは別々で大丈夫です(【】は不要)
 日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びますので、出来ればそのタイミングでお願い致します。

 以上です。皆様のご参加、お待ちしております。
187




第1章 日常 『うちあげ華火』

POW   :    露店や屋台を巡って楽しむ

SPD   :    舞い散る花弁をたくさん掴まえる

WIZ   :    打ち上げ華火に願いを込め祈る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

花色衣・香鈴
(参考シナリオID(1章):27559)
【月花】
街は奇妙な姿だらけ
今日なら普段通りの怪奇人間(わたし)も許される気がした
「佑月くん」
傍らがすっかり馴染んだ人に声を掛ける
「華火、どの辺りなら見やすいでしょうね」
わたしは人混み自体は苦手だけれど彼に見失われることもないと知っていたから何も言わなかった

異形の身にも楽な空気に浮かれていただろうか
少し気恥ずかしくもなる
「覚えていますか。以前にも華火を見た時のこと」
先の見えない身で何も願えなかったわたしの前で貴方が願ったことを覚えている
「わたしからも願いたかったんです。佑月くんと一緒に華火を見る『今』を」
何でもない日にもわたしを大切にしてくれる人の為にこそ


比野・佑月
【月花】
「まかせて、香鈴ちゃん。」
自慢の耳や鼻を総動員して華火がよく見えそうな場所に当たりをつける。
あまりにも違う存在だと思っていたから、取ることを躊躇ったこともある彼女の手。
(返事は急かさないとも言ったけど)好意を告げた以上
キミの隣も、導く役目も譲るつもりはない。
それに、彼女ならきっと。取ってくれると確信しながら手を差し出す

「勿論、忘れるわけないよ」
あの時もキミと居たいとそれだけの願いを告げた。
そういうちっぽけなことすら願わなかったキミにも何か、欲しがってほしかった。
「…なんだ、叶っちゃったな」
傍にいられるだけで温かくて嬉しくて。
何でもないものだって特別にしてしまうキミの隣で幸せを噛みしめる



 四季全てを幻朧桜が彩り浪漫の薫り溢れる世界は、いつも以上に華やいでいた。
 包帯をぐるぐる巻いた木乃伊の婦人。派手さ重視か、躑躅色の縫合痕で青白い肌を繋いだ死者。屋台で買ったろう食べ物を仲良く頬張る少年三人組は、犬、猿、雉――どうやら鬼退治はお休みらしい。
 誰も彼もが何かに扮している。誰も彼もが、奇妙な姿だ。
 そこを普段通りの花色衣・香鈴(Calling・f28512)が――怪奇人間が歩いていても、誰も気にしない。存在に気付き、可哀想にという視線も、声も、ない。
「佑月くん」
 傍らを歩く比野・佑月(犬神のおまわりさん・f28218)に目を向け、声を掛けることに、香鈴はすっかり馴染んでいた。どうして自分の傍に、と思う隙間は香鈴の中にはもう無くて、ん? とこちらを向いた優しい黒目に穏やかな金木犀色の目が笑む。
「華火、どの辺りなら見やすいでしょうね」
 人混み自体は苦手だ。けれど、何も言わなかった。闇の中で獣に攫われた後、自分の元へ駆けつけてくれた佑月に見失われることはない。
「まかせて、香鈴ちゃん」
 尖った大きな耳、よく利く鼻。佑月が自慢のふたつを総動員すれば、ハロウィン祭で賑わう場所であろうと、欲しい情報を拾い逃すことなど起きはしない。耳がぴこり、ぴこりと前後左右に向き、時々尻尾もぱたりと揺れる。
「んー……あっちだ。香鈴ちゃん」
 そう呼んで、当たり前のように手を差し伸べる。
 彼女という人物を知る前――いや、知ってから、だろうか。あまりにも違う存在だと思っていた頃、こうして手を取ることを躊躇ったこともあった。自分の手より細く白い手の持ち主は、自分とは違うのだと。
 けれど花色衣・香鈴という少女を知った。芽吹いた好意を告げ、返事は急かさないとも言った。そして告げた以上、彼女の隣も導く役目も自分のものだ。彼女の存在も、その隣も、誰かに譲れるような軽いものではない。それに、“きっと、手を取ってくれる”という確信があった。
「行こ」
 真っ直ぐ笑顔を向けて誘えば、ぱちりと瞬きをした目が少しだけ伏せられてから、はい、と声。差し出していた手に細く白い手がそっと重ねられ、佑月の笑顔にほのかな光が灯るよう。
(「浮かれていたんでしょうか」)
 ハロウィンと、それを楽しむ人々。周囲を成すのは異形の身にも楽な空気だ。香鈴は少し気恥ずかしくなりながら、重ねた手をそのままに、幻朧桜の花びらが降る中を一緒に歩いていく。
「覚えていますか。以前にも華火を見た時のこと」
「勿論、忘れるわけないよ」


『無いです、特に何も』


 怪奇人間という先の見えない身。故に何も願えず、そう答えた香鈴の前で、佑月はくだらなくて気楽な願いをいくつも口にして、それから――、


『香鈴ちゃんと一緒に華火を見たいかな?』


 あの時も香鈴と――キミと居たい――それだけの願いを告げたことを、佑月は今もしっかりと覚えている。自分が口にした“お腹いっぱいになること”のようなちっぽけなことすら香鈴は願わず、特に何もと言った香鈴にも何か欲しがってほしくて。
 そっと、香鈴の顔を窺う。
 金木犀色のやわらかな眼差しは、幻朧桜の花びら舞う秋空を見上げていた。
 あの時から一年と、少し。
 香鈴の中にも、願いが芽吹いていた。
「わたしからも願いたかったんです。佑月くんと一緒に華火を見る『今』を」
 何でもない日にもわたしを大切にしてくれる人の為にこそ。
 少女の告げた願いに佑月の目がぱちりと瞬いて――ぱあん、と開花の音が響いた。華火が咲き、花びらが溢れて舞う。響く歓声はあたたかに揺れる波音めいて広がって――、
「……なんだ、叶っちゃったな」
 傍にいられるだけで、温かくて、嬉しくて。
 ぱたりと揺れた尻尾が、ぱたりぱたりと緩やかにリズムを刻むのを止められない。
(「キミが……キミだけが、何でもないものだって特別にしてしまうんだ」)
 きっとこれを、ひとは“幸せ”と呼ぶのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
POW
屋台の食べ歩きをしようにもあまり量も食べられないし、かといって打ち上げたいほどの願いがあるわけでもないの。それに綺麗なものを見るのが好きだから露店を眺めていこうかな。
華火があがってしまったらきっとそっちが気になってしまうから、その前に一通り見て歩くつもり。
切子のグラスも素敵だし細かな刺繍がされたリボンもいいけれど、ひときわ目を引いたのは三日月から星がこぼれおちるようなデザインのピンブローチ。
小さい真珠やクリスタルがあしらってあって小さいながらも存在感もしっかりあって。
これをいただこうかしら。
購入したら大事に鞄に仕舞い込んで華火に備えましょうか。



 近くへ寄ればいい香りが漂う屋台の列。
 感謝や願いを咲かせたい、咲いたところが見たいという人々で賑わう庭園。
 そのどちらも今日催されているハロウィン祭の花といえるものだが、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は数秒そちらに目を向けたのみ。藍は宝石髪を揺らし、それらとは別方向へ向かっていく。
(「あまり量も食べられないし……」)
 それに、自分にはああして咲かせるくらいの願いがあるわけでもないからだ。
 では何があるのか。なぜ来たのか。
 その理由は――ずばり、露店だった。
(「綺麗なものを見るのは好きなのよね」)
 歩く速度を緩め、露店ひとつひとつに目を向けていく。
 華火が上がったなら、きっとそちらが気になってしまうだろう。賑わい方から見て、既にいくつか打ち上げられたのかもしれない。次が始まるまで、暫く余裕はあるだろうか。その前に一通り見ていければと藍はあちこちに目を向け、気になった露店があればそっと足を止め、人を避けつつ覗いていく。
(「あの切子のグラス素敵……あ、向こうの細かな刺繍がされたリボンもいいな」)
 心を惹いたものは露店の位置も含め記憶に刻んで――と、歩く中、数ある露店の中でひときわ藍の目を引くものがあった。
(「ピンブローチ……」)
 いらっしゃいませ、と優しくかけられた声へ控えめに会釈し、じっと見る。
 サイズはそう大きくないが、小さい真珠やクリスタルがあしらわれたそのピンブローチは、サイズ関係なく存在感もしっかりとあった。秋空の日差しを受けて美しく煌めいたそれを見た時、三日月から星がこぼれおちているように感じたピンブローチから、藍は目が離せない。
 ――となれば、もう心は決まっていた。
 すいと伸ばした手はそのピンブローチを取り、店主へと。
「これをいただこうかしら」
「どうも!」
 夜空から拝借したような煌めきは丁寧に紙にくるまれ、袋の中。藍はそれを鞄へと大事に仕舞い込み、空を見る。どうやら、次の華火には十分備えられたようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわあ、華火きれいですね。
ハロウィンの華火ですから色合いもハロウィンぽくて素敵ですね。
ふえ?アヒルさんどうしたんですか?
帽子の上に乗ろうとしたけど乗りづらいって
ああ、今日は魔女さんの仮装で帽子は三角帽子にしていたんでしたね。
そういえば、アヒルさんは何の仮装をしたんですか?
ふええ、見たって分からないから聞いたのに
ふえ、この純白の翼っていつも通りじゃないですか。
そして、この黄金の・・・嘴ですか?
嘴じゃなくて、輪っかって、
ああ、天使さんだったんですね。



 人々で賑わう庭園は驚くほど広かった。一体何人来てるんでしょう、とフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は来館者の数に驚きながら、やっぱり今日もいつものようにおどおどしながら空いている場所を探し出し、ほっと息をつきながら芝生の上に腰を下ろす。
 華火が打ち上げられたのは、それから少ししてからだった。ぱん、と響いた開花の音は陸上競技のピストルめいて少し驚いたものの、打ち上がった華火を見た瞬間、その時の怖さはたちまち消えていく。
「ふわあ、華火きれいですね。ハロウィンの華火ですから、色合いもハロウィンぽくて素敵ですねアヒルさん。……ふえ?」
 なぜか肩に乗っているアヒルさんが悪戦苦闘している。
「アヒルさんどうしたんですか?」
『ガァガァ、グワッ』
 ひょいと両手で抱えれば、“帽子の上に乗ろうとしたけど乗りづらい”と訴えられ、ああ、と気付く。今日はいつもの格好ではなく魔女の仮装姿。帽子は仮装に合わせて三角帽子に変えていたのだ。
 仮装といえば、とフリルはもう一つ気付いた。
 アヒルさんもいつもと違う――つまり、自分と同じ仮装をしてきているのだけれど。
「アヒルさんは何の仮装をしたんですか?」
『ガア!』
「ふええ、見たって分からないから聞いたのに……!」
 すかさずビシッと嘴でつつかれてしまう。フリルはつつかれた所を擦り、涙目になりながら、アヒルさんの頭の先からお尻の先まで確認し――ふえ、と困り顔。
「この純白の翼っていつも通りじゃないですか」
『ガァガァ』
 顔をぷいっとされる。横顔――いや、“ここ”を見ろのサインだ。
「この黄金の……嘴ですか?」
『ガア、ガーァ』
 ふるふる。首を振られ、フリルはうーん、と考える。
 嘴ではなく――?
「輪っかって……ああ、天使さんだったんですね」
『ガア♪』
 大正解、とアヒルさんがぴょんと跳ねてお尻を振れば、アヒル天使さんだとはしゃぐ声。ふえ、と見れば南瓜を被った小さな子がいて――ぱぱんッ。次の華火が打ち上げられ、花びらが舞う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

槙宮・千空
ヨル(f32524)と

仮装は揃いの袴
アレだけ嬉しそうにされると
着付ける甲斐があるッてモンだ

美味そうな匂いも漂ってるけど
俺としては隣じゃなく
後ろをついて歩くヨルが気になる
露店の前で足を止めた彼女の後ろから
彼女の頭上に顎を乗せて覗き込む

何、それ気になるの?
へェ、結構イイじャン
店主の掌へ金貨一枚落とせば
釣りは要らないから、と笑って
慌てふためくヨルを
攫うように抱き上げエスコート

着替えさせる時も思ッたけど
お前、お洒落したら
もッと可愛くなりそうだよ

露店から離れた先で
買ったリボンを髪に結ぶ
至近距離から、じろじろ眺め
──ほら、やッぱり似合ッてる
満足げに口角を吊り上げて
揺れるリボンの先、そっと唇を寄せた


幽・ヨル
千空(f32525)と
アドリブ、マスタリング歓迎

袴は着た事なく
羞恥と照れの葛藤の末
千空さんに着付けてもらい
綺麗な衣装に嬉しくて柔く袖を握りしめ

私が釣りあえているかは大層自信がなく
千空さんの背後に隠れるように散策
けれどとある露店の
じいと見つめるは綺麗なリボン
憧れの眼差し向けるも
己のお洒落より、家にお金を入れてあげなきゃと諦めて
…けど
「ちあさん…!?」
煌く金貨、手に渡る憧れのリボン
慌てふためけば抱き抱えられ
彼の言葉に真っ赤になり

彼の指が髪を掬う度心臓の炎は落ち着かず
距離の近さに呼吸が止まりそう
彼の言葉や仕草をお世辞だと流せなかったのは
"本当"だったらいいのにと
心の奥底できっと望んでしまったから



 花びらと賑わいがさざめくように満ちる空間だった。ひらりと優しくはためいた袖も、綺麗に整列するようにして揺れた袴の裾も美しく――ひと目見た時と変わらず「綺麗」と心を照らすような衣装に、幽・ヨル(カンテラの灯・f32524)は頬を桜色に染めながら柔く袖を握りしめる。
 それを槙宮・千空(Stray cat・f32525)は見逃さない。笑ったという気配すらヨルに悟らせず、満足気に目を細める。
 本日の装い――仮装は揃いの袴。着たことがないと言っていたヨルが羞恥と照れの葛藤の末、こうして隠せぬ嬉しさを浮かべるとは。
(「着付けた甲斐があるッてモンだ」)
 だからこそ気になるのだ。こちらの足取りを導くように漂う美味しそうな匂いではなく――盗賊たる千空は当然様々な匂いの元がどの露店かは把握しているのだが――なぜ、ヨルは自分の隣ではなく後ろをついて歩くのか。先程まで浮かべていた嬉しそうな表情も、どうしてだか薄れている。
(「……綺麗な衣装。でも、ちあさんと私だと……」)
 ちら、と前を行く背中を見る。千空がこちらに顔を向けるのがわかり、慌てて目線を逸らすと、見ていたのは背中ではなく周りの露店ですよという風を装う。そのまま散策を続けて――今、千空がこちらを見ているかどうか確かめる勇気はなかった。
 揃いの袴。綺麗な袴。けれど、隣を歩けばそれぞれの違いが目に見えてはっきり浮かび上がる。元々の見目。袴姿の様。
 そこに考えが至ってしまったら、千空と釣りあえているか大層自信がなくなってしまったのだ。歩く足はそっと隣から後ろへ、背後へ隠れるように。視線は――どうしよう。そろそろ前を見た方がいいのかな。
 悩みと迷いを秘めた足取りがふいに遅くなった。そのまま足は止まり、気付いた千空も足を止めるがヨルは気付かない。ヨルの双眸はとある露店に並ぶものをじいと見つめていて、そこに憧れの彩が小さくきらきら浮かび始めていた。
(「綺麗なリボン」)
 あれで髪を結ったらどんな風になるだろう。頭の中で、名前そのままのような深い藍色の髪にあのリボンを添えてみる。それだけで気持ちは自然と上昇し始めて――けれど。
(「家に、お金を入れてあげなきゃ」)
 自分には、自分のお洒落よりも優先しなくてはいけないものがある。
(「私は、お姉ちゃんだから」)
 だから、自分よりも幼い弟妹に――。
「何、それ気になるの?」
「えっ」
 のし。
 頭に重みを感じたのと同時に聞こえた声へ、反射的に声をこぼしていた。
 ヨルが驚いている間が僅かなものでも、千空には十分過ぎる。お目当ての物は目の前。必要な物? 当然持っている。盗むよりもずっと容易い。
「へェ、結構イイじャン。店主、釣りは要らないから」
「ちあさん……!?」
 店主の掌にきらりと落ちる硬貨。差し出されたリボンは、笑う千空の視線を受け了解した店主によりヨルの手へ。手に渡った憧れのリボンに慌てふためくヨルの視線が、ふわりと高くなる。笑う千空の顔が後ろを歩いていた時よりもずっと近くて――抱き上げられているのだと気付いた。
「え、あ、あの」
「着替えさせる時も思ッたけど、お前、お洒落したらもッと可愛くなりそうだよ」
 千空は一気に赤くなったヨルを抱えたまま賑わいから離れ、落ち着ける場所でそっと下ろす。けれど鮮やかなエスコートは終わらない。指でヨルの髪を掬い、綺麗に纏め――それがヨルの心臓に炎の鼓動を宿し、あまりにも近い距離が呼吸を忘れさせかける。
 しかし千空は手を止めないし、離れない。夜色の髪にヨルの心を奪っていたリボンを結び、蝶の翅めいた輪郭描くそこをそっと引いて微調整。じろじろと眺め――触れていた指先を離した。
「──ほら、やッぱり似合ッてる」
 見立通りだ。リボンも袴も、幽・ヨルという少女によく映えている。
 満足気に口角を吊り上げた男の指先が顔に伸びる。顔の横を過ぎて先程まで触れていたリボンの先を取ると、笑む唇をそっと寄せて楽しげに笑った。
(「今のが全部“本当”だったらいいのに、なんて」)
 お世辞が上手と流せなかったのは、心の奥底でそう望んでしまったからだろう。
 嗚呼。誰かがこれを盗んでくれたら、心臓の炎は落ち着いてくれるだろうか?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

網野・艶之進
「花弁掴みでござるかあ。よく父上とやったものでござるよ」
・帝都生まれの桜の精としてはこの手の遊びはこなれたもので、剣術修行の一環として師である実父と何枚花弁を掴み取れるかよく勝負していた
・父との思い出に浸りながら花弁掴みに興じる。「残像」すらつくり出す素早い身のこなしをもってすれば、あの頃の父親よりも多くの花弁がつかめるかもしれない
・籠める願いは、世界平和。戦いのない世の中。網野の剣技は相手の邪心だけを切断する妙技であるが、その代償として網野自身の生命力を消耗してしまう。剣技『御刀魂(みとこん)』の使い手は自らの剣によって死ぬべきさだめにある。できることなら死にたくない、というのが実の本音



 年の頃は十代半ばか。緊張と期待の混じった面持ちで華火を打ち上げた少女が弾けた音に肩を跳ねさせる。けれど空いっぱいにふんわり溢れて舞う花びらを見た途端、眩い笑顔を浮かべていた。
 きゃあと嬉しそうに頬を紅潮させ、一生懸命花びらへと手を伸ばし掴もうとジャンプを繰り返す。少女が掴もうと励んでいる細長い花びらが何という花のものなのか、網野・艶之進(斬心・f35120)にはわからない。しかし、ふわりひらひらと踊りながら落ちてきたひとつを何とか受け止めた少女の笑顔には、よかったと安堵の息をこぼすのだ。
「花弁掴みでござるかあ。よく父上とやったものでござるよ」
 この帝都に生まれた桜の精としてこの手の遊びはこなれたもの。何せ年がら年中幻朧桜が咲き、花びらが舞っているのだ。そして艶之進の家は命ではなく邪心のみを斬りおとす活人剣、その絶技を代々繋いで――、
「それでは次の方、どうぞ此方へ」
「ん? おお、拙者でござるな」
 宜しく頼み申すと係の者へと礼をし、教えられた通りに花びらを詰めていく。
 火を付け打ち上げるという作業は艶之進にとってそう恐ろしいことではない為、係の者と共に安全確認をし終えたならば、いざ! と恐れず着火してみせた。素早く駆ける火花はやがて華火を籠めた筒に到達し、開花の音を弾けさせる。
 秋空に花開いた輝き。一斉に舞った花びら。
 そこへと被さったのは、師でもある父との思い出だった。

『艶之進。何枚花弁を掴み取れるか、この父と勝負だ』

 父に負けた回数。勝てた回数。思い出に浸りながら芝生を軽く蹴れば、艶之進の姿は花びらの間を素早く翔る鳥のよう。跳ぶ様は残像となって現れ、見物客の歓声が響く中、艶之進の手は花びらを一枚、また一枚と掴んでいた。
「……ふむ。父上、今回は私の勝ちのようです」
 あの頃の父に笑って呟き、掌の花びらを傷付けぬよう手を閉じる。
 艶之進が願うは世界平和。戦い無き世界。網野家の剣技が不要となる世界になれば――己は、父よりも長く生きられるだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

瑠碧の対の金烏・漢服風仮装

華火だって
瑠碧、俺が火付けるから花選んでくんねぇ?
勇気付けるよう手握り
俺あんま花とか分かんねぇから
あ、でも分かりやすい花のがいいかな
幻朧桜と混じって掴み損ねたら嫌だし
おいいね
空から空が降ってくるみたい

ま、願いはともかく
楽しそうじゃん?掴むの
折角だしな

(願いはもう叶ってる
大切な人の側に在れる事
でも
喜びも楽しい事も
二度と奪われる事なく
出来るだけ長く側に
二人で幸せ掴みたい)

…結局欲張っちまったかな
思わず呟き
瑠碧は大丈夫?
火を付け

おー
すっげぇ綺麗じゃん
幻朧桜と花弁と花火が一緒に舞って
今年は一緒に花火沢山見れたな
嬉しげに表情緩めはっとして
って花!落ちてくる
見切り掴もうと


泉宮・瑠碧
【月風】

昨年の月兎の仮装で

華火…
理玖の申し出と温もりに安堵
私達が知るお花…ネモフィラがありますね
では濃い青を選びます

華火だけなら萎縮しますが
花もあって、理玖も居るから
頑張り、ます

私の知る神様とは違うけれど
此処の皆様の支えである感謝と…
今までとこの先も会う魂達が、安らかであるように
そして…
一秒でも長く理玖と居られますように
そう願いを籠めて、花を華火へ

理玖の呟きに首を傾げ
私も籠めました
後ろへ下がり、耳を塞ぎます

花開く振動と響く音に
固く身を縮めつつ空を見上げます
光の残滓と、花に瞬き
…はい、今年は見られました
花弁は伸ばした掌中に

影朧の子も、花弁が取れる様に
風をふわりとそちらへ
君も、安らかでありますよう



 神への感謝や願いと共に花びらを籠め、火を付け、打ち上げる。それがハロウィン祭の華火だと聞いた泉宮・瑠碧(月白・f04280)の兎耳が、不安と共に小さく揺れた。月兎が見せた気配に、その対である金鳥の仮装をしていた陽向・理玖(夏疾風・f22773)は瑠碧の手を握る。
「瑠碧、俺が火付けるから花選んでくんねぇ?」
 俺あんま花とか分かんねぇからさと困ったように笑う温もりに、瑠碧の表情がやわらいだ。浮かべた安堵に理玖もほっとした笑みを浮かべるも、並ぶ花を見て気付く。
「分かりやすい花のがいいかな。幻朧桜と混じって掴み損ねたら嫌だし」
「……ネモフィラがありますね。理玖、あの濃い青にしませんか?」
「お、いいね。空から空が降ってくるみたい」
 明るい笑顔に瑠碧は「はい」と頷き、小さく微笑んだ。花がある。理玖もいる。華火といえど火を感じると萎縮してしまうけれど、大丈夫。
「頑張り、ます」
 少しきりっとした瑠碧がネモフィラの花を取り、教えられた通り華火に入れていく。ネモフィラの花ひとつひとつへと丁寧に籠めるのは、感謝と願いの両方だ。
(「私の知る神様とは違うけれど、此処の皆様の支えである感謝と……今までとこの先も会う魂達が、安らかであるように。そして……」)
 視線を向ければ、何となく感じ取ったのだろうか。理玖とぱちり目が合い、瑠碧は少しだけ頬を染めて目を逸らす。
 姉貴分と弟分だった頃と比べ自分たちの関係は随分と変化した。理玖という存在への想いと“もしも、また”に対する恐れも。瑠碧は指先でそっと持ち上げた青空色の花を見つめ、両手で包み込む。
(「一秒でも長く理玖と居られますように」)
 包み、願った時間は短いけれど、籠めたものは計れないほど深い。
 花がひとつ、そうっと華火に入れられていくのを見ていた理玖は暫し考える表情を浮かべ――よし、と笑う。願いについてはともかくとして。打ち上げた華火によって咲いて舞う花びらを掴むのは楽しそうだ。
(「それに、折角だしな」)
 花を傷付けないように摘み、願いを思い浮かべ――そして浮かんできた願いが、理玖の笑顔を穏やかな彩に染めた。華火には願いを籠めると聞いたけれど。
(「もう、叶ってるんだよな」)
 大切な人の側に在れること。瑠碧の側に、在ること。
 けれど、自分の願いはそれだけに収まらない。
 あの15の暑い夏のように喜びも楽しいことも二度と奪われず、エルフと人という寿命差があっても、それでも出来るだけ長く側に――瑠碧と自分と、二人で幸せを掴みたい。
「……結局欲張っちまったかな」
 ほとりとネモフィラの花を落とした時、思わず口にしていた呟きに瑠碧が首を傾げる。どうしましたか、と不思議そうな様子に理玖は何でもないと笑顔で返し、次の案内を受けると隣を行く瑠碧の顔を心配そうに覗き込む。とうとう着火の時だ。
「瑠碧は大丈夫?」
「はい。願いも、籠めました」
「じゃ、後ろ下がって、耳塞いでて」
 下がった瑠碧が両手で耳を塞ぎ、こくんと頷く。それをしっかりと確認した理玖の手が導火線へと火を近付けて――しゅううっ! 触れてすぐに駆け出した火花はあっという間に華火玉に到達し、幻朧桜舞う空に開花の振動と音を響かせた。
 青空に華火が光り咲く。その残滓がネモフィラの青と共に降り始めれば、固く身を縮めていた瑠碧は目を瞬かせて見惚れ、理玖は片手で軽く日差しを遮りながら笑う。
「おー、すっげぇ綺麗じゃん」
 幻朧桜の花びらと共に光そのものが舞い降るよう。
 炎の花は、夏に海の中でも見た。夏に続き、秋はこの、白亜の館の庭園で。ニつの季節を巡った思い出と嬉しさが二人の顔に笑顔を灯す。
「今年は一緒に花火沢山見れたな」
「……はい、今年は見られました」
「ってそうだ! 花!」
 ハッと慌てた理玖の手と、あ、と気付いた瑠碧の手。それぞれが空から降ってきた空色の花へと伸び――ふわり。指先に、掌中に、花を受け止める。
『わあ……!』
 聞こえた幼い歓声に目を向ければ、空へと手を伸ばす南瓜頭の小さな紳士が一人。ぴょんぴょん跳ねて手を伸ばす彼も取れるよう、けれど気遣いが悟られぬよう瑠碧はやわらかな風を紡いで、青空色の花を小さな手へと導いた。
(「君も、安らかでありますよう」)
 だって今日はハロウィン祭。
 最初から最後まで楽しんで、沢山の“楽しい”を抱えていけますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壽春・杜環子
【たかとわ】
仮装は魔法の鏡(ハチ絵師様全身図参照
うふふ、うちのお姫様は今日もお可愛らしいこと(にこにこ

花火ではなく華火、とは……名前から美しいこと
たから様……まあ!可愛らしい子。おいでおいで、遊びましょう

迷いましたが、たから様が桜ならば
わたくし雪の様な白牡丹にいたします
そうすると季節の境目の素敵なところが一緒に楽しめた……様な気がいたしません?

火ば危ないですから、そうっと……
点きました?点きましたのね?
せーのっ!

わあ
あら、まあ……なんと美しい
素敵、春と冬が一足早く一緒に来てしまったような

込める願いは、どうかわたくしの出会った方々が幸せでありますよう……
今宵の君も、たから様も
息災でありますように


鎹・たから
【たかとわ】
仮装はミニワンピ白雪姫
たからには最強の魔法の鏡がついています(どやっ

二人で華火を打ち上げに
おや(影朧に手招き
こんばんは
よろしければ、たから達と間近に華火を見ましょう

花びらは帝都で舞う桜を
杜環子はどの花か決めましたか?
なるほど、とってもお得で素敵です
杜環子はいつも頭がいいですね

熱いのは苦手だけれど
火をつける勇気は勿論あります
折角ですし、皆で一緒につけましょう

いっせーのーで…!

…きらきらの、優しい華火です
桜と白牡丹
ふわふわの、綺麗な夜です
はっ掴まなくては(ぴょんこ
任せてください(ぴょんこぴょんこ

籠めた願いは
今夜現れた影朧が
皆転生できますように

今夜は全ての願いが叶う
そんな気がします



 屋台。露店。華火。仮装姿で行き交う人々の目当てはそれぞれ、もしくは三つ全てだろう。その為、白亜の館周辺とその敷地内は結構な賑わいを見せていた。
 うっかりしていると同行者とはぐれ、迷子になってしまうかも。
 それが屈強な衛兵や騎士を連れていない姫ならば、恐ろしい危険が忍び寄りそうなもの。けれど、ミニワンピをふわふわ揺らして歩く白雪姫は何も恐れていなかった。なぜならば。
「たからには最強の魔法の鏡がついています」
「うふふ、うちのお姫様は今日もお可愛らしいこと」
 どやっ。大きな目を誇らしげに輝かせた白雪姫に、手を繋ぎ歩いていた最強の魔法の鏡は嬉しそうなにこにこ笑顔だ。ヴェネチアンマスクのスティックに煌めく林檎も、見せるのは姫を眠らせる毒ではなく、金林檎や他の飾りと共に浴びた秋の日差し、その煌めきばかり。
 そんな白雪たから姫と最強の魔法の鏡・杜環子は手を繋ぎ、華火会場である庭園を仲良く歩く。打ち上げられる物は“花”火ではなく“華”火。空に極彩を咲かせるより先に名前の美しさが杜環子の顔にやわらかな笑みを灯し――、
「おや」
「どうなさいました、たから様? ……まあ!」
 一点を見るたからの視線を追った杜環子の目に、きらりと喜びが煌めいた。
 空を見上げ、周りを見て、片足をぷらぷらさせている南瓜頭の小さな紳士。話に聞いた影朧の子供だ。青空色の花を胸ポケットに挿している影朧は、次の華火が打ち上げられるまでの時間がちょっぴり退屈らしい。
 仕草も可愛らしい影朧が二人を見れば、二人の顔に揃って優しい彩が咲いた。
「おいでおいで、遊びましょう」
「よろしければ、たから達と間近に華火を見ましょう」
『! うんっ!』
 喜びがぱあっと光って見えそうな、そんな気配を小さな体からぽわぽわさせる南瓜紳士も華火の準備に加わった後、三人の目がそわわと向くのは数多の花だ。影朧は橙の秋桜を選び、たからは帝都に舞う桜を手に取った。
「杜環子はどの花か決めましたか?」
「たから様が桜ならば、わたくし雪の様な白牡丹にいたします。そうすると季節の境目の素敵なところが一緒に楽しめた……様な気がいたしません?」
「なるほど、とってもお得で素敵です」
『おねえちゃん、すごいね』
「その通りです。杜環子はいつも頭がいいのです」
 どやっ。パチパチパチ!
 自慢のお友達、きらきら眼差しとセットの拍手、幸せと照れくささ。そんな穏やかな空気は、点火の時を前にした途端やって来た緊張感でキュッと固まってしまったかのよう。
「折角ですし、皆で一緒につけましょう」
 最初に言い出したのはたからだった。熱いのは苦手で、着火した時に感じるかもしれないそれを思うと少しだけ心がふるりと揺れる。けれど火をつける勇気は勿論、心の中に。
 じっと向けられる眼差しに杜環子はこくり頷いた。澄んだ青い目に桜めいた煌めきが浮かび、渡されたマッチ箱から一本取り出して先端を箱に当てる。こうです、こう、と、おっかなびっくりな影朧に手本を見せ、きりりっ。
「火ば危ないですから、そうっと……」
『う、うん、わかった。そうっと……』
 シュッ。
 っぼ。
「点きました? 点きましたのね?」
『うん、ついてるよおねえちゃん!』
「ではお二人とも、いっせーのーで……!」
「『せーのっ!』」
 勇気を指先にも灯して、導火線へと“えいっ”。しゅわわわと音を立て駆け出した火花が筒へ向かう。筒に到達する。そして秋の空へと光が翔け――咲いた。
 ぱあんと響いた音はどこまでも真っ直ぐに。鮮やかに咲いた火の華は秋空の青にその輝きを透かしながら現していて、杜環子の唇から感嘆の声がこぼれていく。
「――わあ。あら、まあ……なんと美しい」
「……きらきらの、優しい華火です」
『わぁーっ! ふふ、うふふ!』
 見惚れる二人の間で、影朧の少年は溢れる感情をぱたぱた足踏みに変えていて。弾むような笑い声の心地良さを隣に、杜環子とたからは舞い始めた桜と白牡丹を目に映す。
「素敵、春と冬が一足早く一緒に来てしまったような……」
「はい。ふわふわの、素敵な空です」
 あたたかな桜と、清く澄み切った白牡丹。それは春に訪れた雪舞う冬か、それとも、待ちきれず冬へ会いに来た春か。秋桜の橙もひらりぴらりと踊り始めれば、三つの季節が仲良く手を繋ぎ始めたようにも見えて――、
「はっ掴まなくては」
『あっ、ぼくもぼくも! んん、届かない……!』
「任せてください」
 ぴょんこぴょんこ。たからが跳ねて春と冬と秋の彩を受け止めれば、やったねとはしゃいだ影朧の、南瓜で見えない頬がふくらと笑ったのが見えた気がした。
「ええ、ええ。やりましたね」
 小さな手に包まれた花へと杜環子はそっと笑む。自分の出会った人々が幸せでありますよう。そう願って籠めたものの宛先は多い。名前も知らぬ今宵の君。たから。どちらも幸せで――そして、息災でありますようにと。
 たからもまた、華火に籠めた願いを心の内に浮かべていた。
(「今夜現れた影朧が、皆転生できますように」)
 生まれも名前も、そして最期も知らない彼ら全てが、今日という日に触れている。そこに大勢の猟兵が関わっているのならば、触れ合い、巡り、繋がるあたたかさは、何層にも重なった花びらのように在るだろう。だからこそ。
(「今夜は全ての願いが叶う。そんな気がします」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

仮装はうさ耳娘

アヤネさん
屋台もいいんですけど
華火を打ち上げません?使いたい花弁を選んで火をつけるだけでいいみたいですよ
彼女の手を引いて打ち上げ場所へ

花弁、何色にしますか?私はこの浅葱色にしようかな
花弁を花詰めて打ち上げるとかサクラミラージュらしいですよね
願い事ですか?
えーと
実はそろそろ進路を決めなきゃいけなくて…その…願掛けですね
勿論勉強もしますけど
アメリカの大学を考えてまして
えへへ、合格したら宜しくお願いします

ドキドキしながら点火
わっ結構音が大きい
耳がキーンとする
でも下から見た華火は本当に綺麗で雪のように花弁が…
アヤネさん頭にめっちゃ花弁積もってますよ!
私も花弁捕まえなきゃ
待て待て〜


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

仮装は狼の耳としっぽ
かわいいうさぎは食べちゃうぞ

華火か
いいネ
でもソヨゴはうまく火をつけられるのかな?
大きな音もしそうだネ
あらやる気満々?
良いとも。僕も何か願い事を考えなくては

花弁の色はソヨゴの髪色の橙で
願い事か
神頼みは好みではないけど
ソヨゴとずっと一緒にいられるように祈ろうかな
ソヨゴの願い事って何?
進学?あらもうそんな時期か
え?アメリカってことは僕と一緒に暮らすってこと?!
やった!始める前に願い事かなっちゃったよ

ソヨゴが火をつけるのを見守る
うひゃ耳せんしておけばよかったネ
これだけたくさん降ってくるならUCを使うまでもない
そら捕まえた

願い事は
僕と同じ大学に彼女が進学できますように



 兎耳と狼耳がぴょこり、ぴょこり。祭を成す一つ、屋台から漂う良い匂いにそれぞれの耳が顔と一緒にそちらへ向くこともあるけれど、兎耳の持ち主は隣を歩く狼へと笑顔を向けた。
「アヤネさん、屋台もいいんですけど華火を打ち上げません? 使いたい花弁を選んで火をつけるだけでいいみたいですよ」
 可愛らしい兎耳娘――城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)の提案と自分の手を引く暖かさ、それから揺れる兎耳を何回も見ていたアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)は「華火」と呟きニッコリ笑った。
「いいネ。でもソヨゴはうまく火をつけられるのかな? 大きな音もしそうだネ」
「そ、それくらいできますよ。大きな音だって、耳を塞げば多分大丈夫です!」
 太鼓橋を渡り、白亜の館の敷地内へ。幻朧桜の花びら降る秋空の下、華火会場である庭園も心地良い賑わいで満ちており不思議とワクワクする。
「アヤネさんは花、何色にしますか? 私はこの浅葱色にしようかな。花を詰めて打ち上げるとかサクラミラージュらしいですよね」
「あらやる気満々? 良いとも。僕も何か願い事を考えなくては」
 ふふと笑った冬青の心は、狼さんの髪を彩るものとよく似た色の花に決まったらしい。アヤネは新緑色の目をぱちりとさせ、自分の華火に詰める花色は、と探す。その目が思わず止まったのはいつも近くに在る橙色。明るく温かな色をした花を取りながら願い事についても考えれば、浮かんだのは可愛い可愛い兎さんのことだ。
「神頼みは好みではないけど、ソヨゴとずっと一緒にいられるように祈ろうかな」
 アヤネの世界は冬青と出会って色を得た。それからは冬青と一緒に歩んだ先に見た世界はどれも様々な彩に色づき、虹を広げている。冬青だからこそ染まる世界の色は、まだ見ぬ世界にも伸びている筈だ。
「で、ソヨゴの願い事って何?」
「願い事ですか? えーと……」
 冬青の視線がちょっぴり泳ぐ。あっちへ、こっちへ。それから、手にしている浅葱色の花へ。もじもじしているように見えるのは、気のせいだろうか。
「実はそろそろ進路を決めなきゃいけなくて……その……願掛けですね」
「進学? あらもうそんな時期か」
「勿論勉強もしますけど」
 アメリカの大学を考えてまして。
 ぽそりと聞こえたそれにアヤネの目が丸くなる。
「え?」
 アメリカ。
 アメリカって、ことは。
「僕と一緒に暮らすってこと?!」
「えへへ、合格したら宜しくお願いします」
「勿論だよ! やった!」
 華火を打ち上げる前に願い事が叶うなんて。アヤネは思わぬタイミングで訪れた嬉しいサプライズを抱えながら、冬青が火をつけるのを見守ることにした。職人が側で見ていてくれるから安心ではあるけれど――それでもじっと見ていると、ふいに振り向かれる。
「大丈夫です!」
(「でも、今の顔ってドキドキしてる顔だよネ」)
 それでも冬青の気持ちを尊重して見守りに徹すれば、すられたマッチにしゅぼっと火がついた。すかさず導火線に寄せられるマッチ。元気よく走り出す火花。あっという間に縮まる火花と花火の距離。そして。

 ぱあんッ!!

「わっ」
「うひゃ」
 炸裂した音に二人は揃って声を上げ、丸くなった目に互いを映す。
「結構音が大きいですね」
「耳せんしておけばよかったネ」
 周りの賑わいが遠い。耳に残るキーンという感覚はもう暫く残りそうだ。
 でも、と冬青は見上げた空に咲く華火に目を細める。下から見る華火は花開いた瞬間から綺麗だった。秋空の澄んだ青と幻朧桜の花びら――そこに、沢山の花びらが重なり、舞う。
「これだけたくさん降ってくるなら……そら捕まえた」
 ずっと一緒にという願いは、ついさっき叶ってしまった。
 だからアヤネが新たに願うのは――、
「さすが……ってアヤネさん頭にめっちゃ花弁積もってますよ! 私も花弁捕まえなきゃ。待て待て~」
 ユーベルコヲドを使うまでもなく手にしたアヤネに続くべく、冬青も花びらを捉え、追いかけ、えいっとジャンプ。何度目かでその手は花びらに触れて――“僕と同じ大学に彼女が進学できますように”と、アヤネの新たな願いが世界を彩る虹の種になる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

音海・心結
【はぴぺい】
アドリブ歓迎

二人を連れ、館の庭園へと

秋なのに桜
流石、サクラミラージュですね
見応えがあります
ここからなら華火が見れるはず
……あ、ほら

そうゆえば、花びらのひとひらを掴めれば、
籠めた願いが叶うらしいですよ
試してみませんか?

我先に職人の元へと駆ける

浮かべる想いはこの日常がいつまでも続きますように
使う花びらはカリン
勇気を両手に火をつける

叶って欲しくて
花びらを掬おうと必死に手を伸ばす

ソフィアと由奈はどんな想いを花びらに籠めたのでしょうか
みゆは最後にネタ晴らし

ふたりの願い事
想いが違えど大切なことに変わりはないです
大切な友達の大切な願い
みゆもその願いを叶える為、尽力することを約束させてください


ソフィア・シュミット
【はぴぺい】
アドリブ歓迎

色鮮やかなサクラミラージュ
年中柔らかな色の桜が咲き誇るこの世界のハロウィンカラーはなんだか新鮮でワクワクします
今日もおふたりと一緒に楽しみましょう

花びらを?
それはソフィアのでも大丈夫なのでしょうか
ソフィアの髪の、ネモフィラ

可能ならば、ソフィアの勇気とともに火をつけます
願うのは、故郷を想う心が邁進の力になるようにと
みんな故郷があって、故郷の無事を願う気持ちがありますから
叶えたい、叶えなきゃと花弁に手を伸ばします

おふたりは捕まえれました?
ソフィアの願いと使った花ですか?
うふふ、それはねーー


神楽木・由奈
【はぴぺい】
アドリブ歓迎

みゆさんに誘われて、ハロウィン、楽しみに来たよー!
みゆさんとソフィアさんと一緒に、館の庭園に行く!
華火、楽しみ!

うわ、綺麗……! 見ごたえあったね!
えっ、願いが叶うの!? やってみる、やってみる、あたしもやってみる!
使う花弁は、あたしは……百合の花びら!
あたしが願うのは、来年もみんなでハロウィンを楽しめますように!
花びらを掴めばいいんだね、えい!

ちゃんと掴めたのかな、よくわからなかった!
あたしの願い事は内緒だよ! 恥ずかしい!
でも、みゆさんとソフィアさんの願いは聞きたいな~! ……駄目?
仕方ないなあ……えへ、あたしの願い事は……(赤くなりがら小さく告げる)。



 くるり、くるり。明るく澄んだ秋空に幻朧桜の花びらが舞う様がこの世界ではごくごく当たり前のものでも、庭園を訪れた三人の目には鮮やかなワンシーンとなって映り込んでいた。
「うわあ、凄い!」
「なんだか新鮮でワクワクします」
 神楽木・由奈(小さな願い・f24894)は楽しみにしている華火の前に秋のサクラミラージュへと歓声を上げ、ソフィア・シュミット(邁進を志す・f10279)も、春というやわらかな色の桜咲き誇る世界のハロウィンカラーに笑顔を浮かべる。
 二人を誘った音海・心結(桜ノ薔薇・f04636)も、秋なのに桜という見ごたえある組み合わせを前にふふりと笑い、周りを見た。
「ここからなら華火が見れるはずなのですよ。……あ、ほら」
 ぱぁんッと高く強い音が響いてすぐ。美しい青に現れた華火は昼の明るさでもよく見えて、その煌めきと色に由奈の目がぱあっと輝いた。
「うわ、綺麗……! 今の見ごたえあったね!」
「はい、素敵でした……!」
「そうゆえば、花びらのひとひらを掴めれば、籠めた願いが叶うらしいですよ。試してみませんか?」
「えっ!? あたしもやってみる!」
「それはソフィアのでも大丈夫なのでしょうか」
 華火を打ち上げる以外の楽しみ方を知った二人の顔は、更に輝いてそわそわしてと二つに分かれていた。やる気満々の由奈は我先にと職人の方へ駆けていった心結を追い、ソフィアは自分の髪を一房摘んで二人に続く。
 向かった先で案内や説明を担っていた女給にソフィアが気になっていたことを尋ねれば、返答は自分の花でも大丈夫ですよという優しい笑顔と言葉。どうぞ楽しんで下さいねと美しい礼を贈られて、心結の笑顔がふふりとこぼれる。
「良かったですね、ソフィア」
「ソフィアさんのネモフィラも華火と一緒に咲いたら絶対素敵だよ!」
「ありがとうございます。ソフィアの髪のネモフィラも、あの空に……」
 はにかんだ少女の指先がペニーブラックのネモフィラにそっと触れ、ひとつ、ふたつと摘んでいく。心結と由奈もそれぞれの胸に浮かんだ願いと共に花を選び、三人目が合えば楽しそうに笑い合ってと華火の準備は穏やかに、かつ、つつがなく。
 そして三つの華火玉は筒に詰められ――いざ、点火の時。しゅっと音を立てて走り出した火花が筒に触れた瞬間、幻朧桜舞う空に三つの華火が、そしてそこに籠められた花と願いが共に咲いた。

“この日常がいつまでも続きますように”

 心結が勇気を両手に空へと打ち上げた華火から溢れて咲いた、想い宿したカリンの花。桃や桜と似た愛らしいピンク色の花に籠めた想いが叶ってほしくて、心結はひらりふわりと落ちてくるカリンを掬おうと必死に手を伸ばす。
 ソフィアもまた、火をつけた時に抱いた勇気がまだ残る手を空へ――自身の髪から華火へと寄せたネモフィラへと伸ばしていた。

“故郷を想う心が邁進の力になりますように”

 誰もが皆、故郷というものを持っている。世界やその土地の環境によっては、常にその無事を願うだろう。その願いが力となり、故郷に光を齎すものとなるのなら。
(「叶えたい……ううん、叶えなきゃ……!」)
 あの花に宿る言葉が、世界のどこかで咲き誇るように。
 ひらりひらひらと華麗に舞う百合には、笑顔輝かす由奈の手が伸びていく。
 心結に誘われて楽しみに来たサクラミラージュのハロウィン。そこで知った華火と願いのジンクスも、ハロウィンと同じくらい由奈の心をわくわくさせてくれた。だから由奈が籠めた願いは――、

“来年もみんなでハロウィンを楽しめますように!”

 その時にいる世界がどこかは全く予想がつかないけれど、友達と何かを楽しめる幸せが在ってほしい。由奈は元気に芝生を蹴って跳び、手を伸ばす。
「えい!」
 蕾がぽんっと開いて花が咲くような明るさを響かせて――そして三人は、誰が言い出すでもなく集まっていた。
「由奈さん、心結さん。おふたりは捕まえれました?」
「ちゃんと掴めたのかな、よくわからなかった! あっ良かった、ほら!」
「流石です。心結もバッチリなのですよ。二人はどんな想いを籠めたのですか?」
「ええー? あたしの願い事は内緒だよ! 恥ずかしい! でも、みゆさんとソフィアさんの願いは聞きたいな~! ……駄目?」
「ソフィアの願いと使った花ですか? うふふ、それはね――」
 乙女三人集まればそこもまた一つの花園めいて賑やかに。他には内緒の願いのお披露目はソフィアから始まり、自分は最後にと笑った心結の笑顔で二番手は由奈になる。仕方ないなあと言った由奈の顔が赤くなり、声は二人にだけ聞こえる大きさへ。
「えへ、あたしの願い事は……」
「……わ、素敵な願いですね」
「そ、そう? 何か照れちゃうな!」
「想いが違えど大切なことに変わりはないのですよ」
 大切な友達の大切な願い。二人の願いを叶える為、尽力することを約束させてほしい。笑顔で告げた心結も自分の願いを伝え――三人の掌で、想い宿した花がやわらかに揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
【星巡】

仮装は梟の賢者
鳥の翼のような袖の、ワシミミズクを連想させる茶のローブを身に纏う
ふふん、ガワだけは賢そうだろ
…レンは赤いもの入れてるんだな
そうだな、レンの赤は好きだなとさらり

露店を二人でふらりふらり
宝箱の中で星を探す気持ち
綺麗な色のリボンを結んで貰うのは少しくすぐったい

私が目に留めたのは夜空に星を散らした空模様の釦
小さめの同じものを幾つかレンに並べて合わせてみる
今は針も糸も持ち合わせてないから留められないが
並べると星座みたいにも見えるかななんて

華火の音、花弁の気配に気持ちがそろりと其方を向き
空を見上げる
一枚くらい花弁掴めるだろうか
願いなんてこの一時で叶っているようなものだが
と笑みを返すよ


飛砂・煉月
【星巡】

今日のオレは酒呑童子
鬼だよって赤い角を自慢気に心持ちキリっと
んーと、赤ね
有珠も好きかな〜とか物言い曖昧に頬を掻く

有珠は梟の…賢者?
頭良さそーってオレ台詞が頭悪い!
有珠は中身も賢いでしょってさらりと

一緒に露店を歩くのは今日の星巡り
黒のレェスに星屑と桜鏤む夜空のリボンが映れば
髪、失礼すんねって結べば
うん、やっぱ似合う
これ下さいってリボンは解かずに其の侭で

有珠のは釦?
あっは、有珠が選んでくれたってだけで一等星じゃんね
うん、星座みたいで好きだな
そうやってまたオレ達だけの星を見つけてく

空に咲く華
もし花弁を掴んだら何を願ったかなって
伸ばした手に何か触れる?
隣のキミに視線移し
――ね、掴めた?なんて、



 人、獣、妖怪、妖精。様々な仮装をした人々で賑わう露店の間を、梟賢者と酒呑童子が行く。酒天童子から、じい、と注がれる視線に賢者――尭海・有珠(殲蒼・f06286)はふふんと笑み、翼めいた袖をひらりとさせた。
「ガワだけは賢そうだろ。……レンは赤いもの入れてるんだな」
「んーと、赤ね」
 心なしか普段より凛々しい表情をしていた伝説の鬼、もとい飛砂・煉月(渇望・f00719)は、自身の指で赤い角へと触れる。鬼だよ、と自慢気にしていたこの色だけれど。
「有珠も好きかな~」
「そうだな、レンの赤は好きだな」
「!」
 曖昧な物言いだったというのに、頬を掻いていた指は賢者の言葉でびくっと一時停止。それでもすぐに“何でもありませんけど?”と言うように平静を装ってみせるのである。
「有珠は梟の……賢者? 何かワシミミズクっぽい色のローブだよね。頭良さそーってオレ台詞が頭悪い!」
「はは」
「あ、笑ったな。っていうか、有珠は中身も賢いでしょ」
 今度は煉月が“中身もちゃんと見てる”と、さらりと言って賢者の表情を一時停止。
 そんな二人は露店が並ぶそこをふらりふらり。特に目当てが無いように見えて、賢者と鬼の首領がノープランである筈がない。いくつもある露店は宝箱。まだ見ぬ何かは、今日をいっとう彩る星だ。
 早速見つけた一つ目の星は、黒のレェスに星屑と桜を鏤めたひとひらの夜空。煉月は店主の許可を得て夜空のリボンを手にし、有珠の後ろに回る。
「レン?」
「髪、失礼すんね」
 春の欠片と夜が一つになった綺麗なリボンを結んでもらっているからか、少しくすぐったさを覚えること暫し。艷やかな黒髪に静かな彩が結われ、秋風でそうっと揺れる様が煉月の目に映り込む。
「うん、やっぱ似合う。これ下さい」
 リボンは解かず、そのままで。
 だって似合うじゃんねと楽しそうに笑った酒呑童子に、梟賢者はほんの少しばかり照れくさそうに笑む。通り過ぎたいくつかの露店にあった鏡に自分が映れば、黒髪とリボンは夜空の欠片めいて見えた。
 そんな賢者の眼差しは、次の星を探していくうちに普段の静けさを宿していく。
 ふいに、有珠の視線がぴたりと留まった。
「釦?」
「ああ。……そうだな……これと……ああ、これもいい」
 賢者のお眼鏡にかなったそれらは、夜空に星を散らした空模様。幾つか選んだ釦のサイズは小さめで、種類は同じものばかり。煉月に並べ合わせながら、更に吟味を重ねていく。
「今は針も糸も持ち合わせてないから留められないが……うん。並べると星座みたいにも見える、かな」
 今日の仮装がぴったりな賢さを持っているのに、なぜだか少しばかり確信が薄れたような言い方だった。それが不思議で、おかしい。煉月はきょとりとした顔で双眸をぱちり瞬かせ――あっは、と笑った。
「有珠が選んでくれたってだけで一等星じゃんね。うん、星座みたいで好きだな」
 そんな星は、この世で一番綺麗で眩しいに決まっている。当然それは、金銀財宝や勝利といった名誉よりもずっと価値のあるものだ。
(「そうやってまたオレ達だけの星を見つけてく」)
 梟賢者と酒天童子。二人で巡り見付けた星は一つずつ増えていき、訪れた時よりも抱える煌めきが増えた頃。ひゅるる、と聞き覚えのある音がしてすぐ、ぱあんと弾ける音と共に歓声が届いた。
 華火が咲いて花舞う気配へと、有珠の気持ちがそろりとそちらを向く。
 空を見上げれば、静かで青い領域に輝く華が咲いていて。そこに、幻朧桜と共に彩って舞うものがあった。
(「一枚くらい、掴めるだろうか」)
 彼方の華よりもずっと近く、そしてやわらかに降ってくる、あのひとひら。
(「もし掴んだら何を願ったかな」)
 伸ばした手に、何か触れるだろうか。
 朱点童子の緋色は梟賢者が持つ夜空と共に揺れる漆黒を映し、そうっと笑った。
「――ね、掴めた?」
 それは宝探しの時のような囁き声。
 その囁きに賢者の目が静かに動き、緋色を映す。
「願いなんてこの一時で叶っているようなものだが」
 そう答えた海色の青は楽しげに煌めいていて――けれど、今だけに収めるなんてきっと勿体ないだろう。それに賢き鳥と鬼の首領ならきっと、まだ見ぬ星の煌めきを見つけて新たな輝きを綴れる筈。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ

アドリブ歓迎
仮装:南瓜SD(黒豹)

秋なのにこの世界はやっぱり桜なンだなァ…
つーかフィッダ先輩、和服たァ意外な仮装で来たな(狛犬の格好も驚く
何言ってンだよ、俺は常に格好イイだろ?(ふふん
普段より着込んでるから変な感じすっケド

屋台巡りへ
焼きとうもろこしの良い香りに釣られ購入

おら、食ってイイぞ(自分も食べ
お?そっち気になるか
行ってみようぜ

まるで宝石の様な鮮やかなサイダーが弾け

フィッダはこういうのも好きなのか
何色が好みだ?(サイダーを購入
さて、このままお前に渡してもイイんだが
欲しけりゃァあの言葉言ってみな
ン、よく出来ましたっと(頭ぽむ
喜び方が半端ねェなァ

偶然通った影朧の男子にもさりげなくサイダー渡す


フィッダ・ヨクセム


仮装:和装な狛犬(ケープ系ひらひら)


此処は何時でも桜なんだろ?
華やかなのは良いことだ
おい久々に見てもやッぱカッケーな
(耳も似合うなァこの男)
ふふん、こーでぃねいと頑張ッたんだぞ

一緒に巡る散歩感
こういうのは一人では味わえな……いいのか?
焼きとうもろこし人生初体験!
……え?マジだけど
わりとイケる味

くろの袖を捕まえて、引いて
露店を指差してみたいかも
……すげえキラキラしてる
なああッち行こ…?

綺麗なのは俺好きだぞ
面白いのも結構……じぃと見つめて
赤いのと答えよう
ん?ああえと…とりっくあとりーと!
え、…凄いしゅわしゅわ!
ありがと、くろ!
当たり前のように奢りを受けた気もする
(でも悪くないな)(始終ニコニコ)



 流れる風の気配と見上げる先の空の青さはこの時期ならではのもの。
 しかし、華麗に舞って世界を彩る花は紛れもなく――、
「秋なのにこの世界はやっぱり桜なンだなァ……」
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の呟きは風に乗り、フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)の耳にも届いていた。
「此処は何時でも桜なんだろ? 華やかなのは良いことだ」
 おう、と軽く挨拶しかけたクロウはフィッダの姿を見て目を丸くした。
 他の世界と同様、この世界もハロウィンシーズン真っ只中。故に黒豹紳士としてやって来たのだが――フィッダが纏う和の雰囲気漂う仮装はこの世界と合っており、ケープめいた物がひらひら揺れていた。
「フィッダ先輩、和服たァ意外な仮装で来たな。狛犬か?」
「まァな。てかおい、久々に見てもやッぱカッケーな」
 獣耳も似合うとは恐るべし。フィッダはクロウの仮装を天辺から爪先まで見て――ふふん。先程掛けられた言葉に胸を張る。あの言葉はインパクトを与えられたという証である。
「こーでぃねいと頑張ッたんだぞ」
 するとクロウも得意げな笑みをニヤリ。ふかもふ黒豹尻尾が揺れそうな気配を漂わす。
「何言ってンだよ、俺は常に格好イイだろ? 普段より着込んでるから変な感じすっケド」
 ふふん、からの、ふふん。互いを称え合った二人は早速屋台巡りへと繰り出した。一緒に巡ればまるで散歩のよう。別に一人で来られないわけではないが、こういうものは一人では味わえず――、
「おら、食ってイイぞ。……ん、美味ェ」
「……いいのか? 焼きとうもろこし人生初体験だ!」
「マジかよ」
「……え? マジだけど」
 新発見と新体験。互いに目を丸くして、しかしそれぞれ浮かべているのは驚きと疑問だ。フィッダは疑問を浮かべたままクロウから受け取った焼きとうもろこしを齧り、ぷちりと弾けたとうもろこしの甘みと醤油ダレの香ばしさに目を輝かす。
「わりとイケる味」
「お、そいつは良かったぜ」
 香りにつられて買った秋の実りが齎した発見は想像していなかったものだけれど、クロウはニィと笑って次はどこにするかと周りを物色し始める。――と、くいくいと袖を引かれる感覚に呼ばれてそちらを見れば、何やら一点を凝視するフィッダがいた。
 視線を追う。
 何やらキラキラしている。
 視線を再びフィッダに戻せば、すげえ、と呟く声。
「なあ、あッち行こ……?」
「お? そっち気になるか。行ってみようぜ」
 訪れたそこは目にも鮮やかなサイダー屋。硝子瓶の中を満たして並ぶサイダーは宝石のようで、自分たちの前に買った少年の手元でプシュッ! と音が弾ける。
「こういうのも好きなのか。何色が好みだ?」
「綺麗なのは俺好きだぞ。面白いのも結構……」
 では何色に? じぃと見つめていたフィッダが選んだ赤をクロウは自分の分に続いて購入し、受け取った赤色を手渡さ――なかった。ん? と首を傾ぐ狛犬へと黒豹は煌めく赤色を片手に笑う。
「さて、このままお前に渡してもイイんだが……欲しけりゃァあの言葉言ってみな」
 あの言葉。瞬きを一回挟んだフィッダだが、クロウが指す言葉が何かすぐに思い出す。
「ああえと……とりっくあとりーと!」
「ン、よく出来ましたっと」
 頭を撫でてきた掌は温かく、それに笑顔を浮かべたフィッダなのだが――渡された物はソーダだ。ソーダといえば、ついさっき見た通りの現象が起きるのが当然なワケで。
「え、……凄いしゅわしゅわ!」
 気持ちの良い音が弾けてすぐに生まれ始めた無数の泡。驚いたフィッダだが、それ以上に湧き上がった感情がある。
「ありがと、くろ!」
 口をつければ、さあっと駆け抜けるような爽快感と口の中でパチパチ弾ける面白さ。
 しかし当たり前のように奢りを受けたような?
(「でも悪くないな」)
 開封し、飲み始めてからずっと浮かべている笑顔にフィッダ自身は気付いているのかいないのか。半端ないその喜びようをクロウは見守るように見つめ――スキップしながらやって来る南瓜頭の少年紳士に気付く。
 視線を送れば向こうもクロウたちに気付いた。軽く手を上げれば、ぱっと雰囲気を明るくして同じように手を上げて――、
「やるよ。ハロウィンだからな」
 例の言葉要らずのサービスも付けて小さな手に届けたそれは、しゅわりと弾けて煌めく宝石サイダーだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雲烟・叶
【星想】
ネムリアのお嬢さんと、手を繋ぐ代わりに互いのリボンを手に絡め

毎年何処も賑やかですねぇ
人が多いですから逸れねぇように……って、もうその心配はなかったんでしたね
手首に結ったリボンの先に、手に絡めたリボンの先に、相手が居る
それが何だか、じんわりと嬉しい

ハロウィンらしい装飾品でも付けておくのが良いんですかねぇ
折角ですし露店で買いましょうか
見付けたのは、とんがり帽子を被ってお座りした猫のシルエットブローチ
これなんか良いんじゃねぇです?
ふたつ購入し、片方を相手へ
イベント物ですし、毎日付けるもんでもねぇですが、記念にはなるでしょう?

お嬢さんもくださるんで?
これなら、季節が終わっても飾って置けますねぇ


ネムリア・ティーズ
【星想】
リボンを手に絡めればキミに触れているようで
仄かに指先があたたかくなる気がした

そうだね、にぎやかでみんな楽しそう
となりにいるよ …だから、ちゃんと繋いでいてね?
微笑み口遊むけれど、解けないと信じているから
そう思えることが嬉しくて、すこし、くすぐったい

うん、それに身に付ければハロウィンを連れて帰れるの
わあ…とてもステキな猫さんだ、すごくかわいい
ボクにも?ありがとう、叶とおそろいだ
ふふ、毎日付けたいくらい、うれしいな

それならと選んだのは、ガラスが嵌め込まれた小さな桜木のケース
深い森とコウモリのシルエットが描かれていて
ね、この子にぴったりでしょう?
ひとつをキミに
想い出を大切に飾って置けるように



 手を繋ぐ代わり、互いの手首に絡めたリボン。リボンそのものに熱はない筈なのに雲烟・叶(呪物・f07442)に触れているようで、ネムリア・ティーズ(余光・f01004)は自分の指先をそうっと見る。ほのかにあたたかくなる気がしたのは――どうしてだろう。
「毎年何処も賑やかですねぇ」
 緩やかに届いた叶の声に、そうだね、と視線を上げる。通りに並ぶ露店と並ぶ品々。露店の間を行く仮装姿の人々。見える色も満ちる空気や声も、全てがうきうきとした彩に染まっていた。
「にぎやかでみんな楽しそう」
「ネムリアのお嬢さん、人が多いですから逸れねぇように……って、もうその心配はなかったんでしたね」
 くすりと笑みをこぼした叶の銀目がネムリアから手首に結んだリボンへ。リボンからネムリアへと移っていく。絡めたリボンの先に相手が居る――それを改めて視覚で捉えた影響なのか、それが何だかじんわりと嬉しい。
 胸の内に灯った優しい温もりが銀の彩に映れば、視線交わった夜紫の目にもほのかに表情が浮かぶ。
「となりにいるよ。……だから、ちゃんと繋いでいてね?」
 微笑み口遊んでの願い事。けれどネムリアは解けないと信じていた。万が一、もしかしたら――そういった恐れではなく“きっと”という思いが自然と生まれたことが嬉しくて――すこし、くすぐったい。
 不思議な心地良さを繋いで行けば、今の時期に似合いの品がよく目に入る。そうでない時に彩りを添えてくれるだろう物も並んでいるのだけれど、叶は十字架や蝙蝠、妖精と幻想を象った物たちに目を留め、思案顔だ。
「ハロウィンらしい装飾品でも付けておくのが良いんですかねぇ。折角ですし買いましょうか」
「うん、それに身に付ければハロウィンを連れて帰れるの」
「ハロウィンを連れて帰る……100年経ったら自分らの仲間入りしそうですねぇ」
 ふふ、と笑みをこぼした叶の目に留まったのは、いつかその時を迎えるかもしれない猫――とんがり帽子を被ってお座りをしているシルエットブローチだった。お嬢さん、と声をかけ、指さす。
「これなんか良いんじゃねぇです?」
「わあ……とてもステキな猫さんだ、すごくかわいい」
 やわらかに落ちた感嘆の声に叶はそっと目を細め、店主さん、と指を二本立てた。
 一匹は自分の手に。もう一匹はネムリアへ。
 ぱちりと瞬いた目に、それぞれの手に渡った猫が映る。
「ボクにも? ありがとう、叶とおそろいだ」
「イベント物ですし、毎日付けるもんでもねぇですが、記念にはなるでしょう?」
「ふふ。でもボクは、毎日付けたいくらい、うれしいな」
 だってこの猫は、今日という日を他の誰でもないキミと過ごした証。
 それなら――とネムリアの視線が静かに周囲を撫でた。そのさなか、きらり、と目に映った光は一瞬。けれど不思議と見逃せなかった煌めきへと近付けば、ネムリアの心に“この子だ”と思わせる一品が待っていた。
 大きさはネムリアの手に収まるくらいのそれは、硝子が嵌め込まれた小さな桜木のケースだった。深い森と蝙蝠のシルエットが描かれており、小さな世界をここへと連れてきたよう。
 そこに叶が買ってくれたお揃いの猫を添えれば――始めから二つで一つだったかのように、それぞれの雰囲気がとけ合った。
 蝙蝠が舞う森と、それぞれの森を住処とする猫。並んでいた露店は別々だ。けれど見つけ、出会ったそこから物語が始まりそうなほどにしっくりと来る。
「ね、この子にぴったりでしょう?」
 そして森をいだいた桜木のケースもまた、とんがり帽子が似合う猫たちと同様、二つ仲良く並んでいた。ネムリアの手は二つとも迎え入れ、一つを叶へと差し出す。
「お嬢さんもくださるんで?」
「うん。想い出を大切に飾って置けるように」
「……ああ。そうですねぇ」
 叶の銀目が静かに、やわく、細められる。今も絡めたままのリボンだけでなく、受け取ったケースからも優しい熱が生まれるようだった。
「これなら、季節が終わっても飾って置けます」
 秋から冬へ。冬から春へ、夏へ。
 それを一回、二回と繰り返し――そしていつか100年目を迎えても、蝙蝠舞う静かな森を住処とする猫たちは、今日という日をしかと守ってくれるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高塔・梟示
千隼(f23049)と
去年の揃いの仮装で
ふふ、桜の世界では仮装というより変装だろうか

桜に南瓜とは不思議な取り合わせだね
お手をどうぞ、お嬢さん
賑わいの中に悪戯に姿隠さぬよう
繋いでいてくれるかい?

出店も惹かれるが、華火を見に行こうか
光とは違う極彩も見てみたいもの
千隼は、お願いはもう決まったかい?
わたしは、もう決まっているとも
花びらに想い込めて
一緒に火を点けようか、なんて冗談めかせば
返った言葉に瞬いて

澄んだ秋空を彩る華火見上げ
満開に咲く花びらに思わず綺麗だねと

感謝なら隣の彼女に
ともに在れる日々はとても幸せだ
もし我儘に願っても良いのなら
舞い落ちる花弁に手を伸ばして
君と明日も、これからも
…きっと離れずに


宵雛花・千隼
梟示(f24788)と
去年の揃いの仮装で
ふふ、少し懐かしいと思えるのがどこか嬉しい

賑わいに竦むより先に、嬉しいままに手を取って
勿論よ、離さないでいてね
あなたと手を繋いで歩くのがこんなにもいつものことになった

華火…見たいわ
お願いは、もう決まっているの
あなたは?と首傾げ、冗談めかす声に彼の手に触れて
離さないでと言ったでしょう、なんて

咲いた華火に我知らず小さな歓声を零し
ええ、綺麗ねと花弁に手を伸ばす

感謝は隣の彼へ、続きゆく幸せへ
欲張りに願ってしまうのは、この先を
重ねる季節と同じだけ少しずつ変わりゆく日々で
同じ幸せをあなたと重ねてゆけるよう
彼の願いが聞こえて愛しげに笑み
我儘になどならないわ
…傍にいてね



 いくつ武勲を立てたのだろう。男が纏う軍服にはいくつもの勲章が煌めき、はためくマントの下では、今は仕事の時ではないからと眠るランプが一つ揺れている。
 男の視線が向いた先には、女が一人、佇んでいた。
 レェスを纏い、花を添えたトーク帽。深い深い夜色のドレスは足元でふわりと広がって花のよう。手には――男と揃いのランプが一つ。こちらも太陽輝く今は、眠っている。
 それまではただただ静かだった二人の表情が、視線が交わった瞬間にやわらかな息遣いを宿す。ふふ、と互いの唇からこぼれ落ちた微笑も、ランプのように揃いのもの。
「桜の世界では仮装というより変装だろうか」
「少し懐かしいと思えるのがどこか嬉しいわ」
 高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)と宵雛花・千隼(エニグマ・f23049)が纏う服は、去年のハロウィンで着ていた揃いの仮装だ。シックなデザインはサクラミラージュでも違和感がなく、けれど桜舞う世界に南瓜溢れる祭という不思議な取り合わせに、梟示の意識は少しばかり向いてしまうけれど。
「さて。……お手をどうぞ、お嬢さん。賑わいの中に悪戯に姿隠さぬよう、繋いでいてくれるかい?」
「勿論よ、離さないでいてね」
 千隼の心と足が賑わいに竦むより先に、梟示から差し出された手が嬉しさを灯す。灯った温かさのままに手を取って歩き出せば、こうして歩くことがこんなにもいつものことになったのだと、二人歩いて重ねてきた時間を感じさせる。
「出店も惹かれるが、華火を見に行こうか。光とは違う極彩も見てみたいもの」
「華火……見たいわ」
 籠めて咲かす願いは、もう決まっている。
 秋空に咲く輝きを探し求めるように千隼の目が上へと向くのを見て、梟示は静かな笑みを浮かべた。この白亜の館にて打ち上げられる華火には、とある言い伝えがあるけれど。
「千隼は、お願いはもう決まったかい?」
「あなたは?」
「わたしは、もう決まっているとも」
 首を傾げた千隼へ、梟示は秘密を打ち明けるような温度で囁いた。

 ――花びらに想い込めて、一緒に火を点けようか

 冗談めかして言えば、そっと梟示の手に千隼の手が触れた。おや、とそちらへ目が向いたなら、手を繋ぐことと同じくらい当たり前となった距離で言葉が紡がれる。

 ――離さないでと言ったでしょう

 返った言葉に男の目は瞬き、女の目は静かに悪戯めいた彩を灯して細められる。
 その間も変わらず澄んだままの秋空を見上げれば、弾ける音と共に華火が彩った。秋の日和、満開に咲いた華火とやわらかに舞い始めた花びらは光そのものが現れたようで、咲いた瞬間知らず小さな歓声をこぼした千隼を、梟示はそっと抱き寄せる。
「綺麗だね」
「ええ、綺麗ね」
 意識するよりも思わずこぼれた言葉に千隼の声が寄り添い、手は花びらへと。
 華火に籠められるものは、神への感謝や願いだと聞いた。
 けれど、誰よりも感謝が向くのは隣にいる唯一だった。そして共に在れる日々から続いていく幸せへと通じていく。だからこそ、“その先”へと想いが向かうのを止められない。
(「“これ”は、欲張りかしら……?」)
 千隼の胸に浮かぶのは、そんな風に感じたことへの恐れではなく、まだ知らない、梟示と過ごす“この先”へのあたたかな熱だ。
(「重ねる季節と同じだけ少しずつ変わりゆく日々で、同じ幸せをあなたと重ねてゆけるよう」)
 熱は願いとなって指先に灯り、すぐそこまで降りてきた花びらに触れかけた刹那。
「もし我儘に願っても良いのなら――」
 近くから聞こえた声で、細い指先がかすかに跳ねた。
「君と明日も、これからも」
 舞い落ちる花びらに伸ばされる手が、秋空を受け止める視界に入る。
 ひらりと舞い、ふわりと上へ踊るように。それから小さく回転した花びらは悪戯な気質なのか。けれど梟示の指は惑うことなく花びらを追う。目も、願いを花開かすだろうひとひらを捉えたまま。そして。
「……きっと離れずに」
 花びらから千隼へ。未来への願いを宿した眼差しは、聞こえた言葉と共にそれを受け止めた微笑を見て春のようにやわらいだ。
「我儘になどならないわ。……傍にいてね」
 明日も、これからも。
 願う二人の視線は想いも共にとけ合って――それぞれの手で受け止めた花びらが、密やかに揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

君影・菫
【指繋】

黒ドレス纏うキミだけのご令嬢
なあ、うちを連れてって素敵な紳士さん?
なんてなあ
ふたつで一つのマスカレイド仮面を片方ずつ
仲良しの証

繋いだ指は絡めて気付けば手のひら
うちね、華火すきなんよ
な、はなびら掴みにいかん?
うちの楽しかったこと、ニーナともしたいんよ

華火を待つ間は繋ぐ手とくっつくぬくもりに身を委ねて
秋の空にあえかな極彩花弁が咲けば
綺麗やねって柔く弛む
はなびら掴む為に離した手も名残惜しいけど
――ふふ、
掴んだはなびらは、ふたりおんなじ
ん、お揃い
はなびらを芯にして
もう一度繋ぐ手はぎゅっと

キミとずうと仲良しでいられますように
願いはいっしょやと信じて
な、このままカフェーに行こ
…熱冷めぬうちに、な?


ニーナ・アーベントロート
【指繋】

燕尾服の紳士に扮して
とっておきの宴にお連れしましょう、レディ
…ふふ、なんてね
半分この仮面は仲良しの証
顔を見合わせる度嬉しくなる

華火、あたしも大好きだよ
一緒に見たらもっと楽しいかな
いつの間にか繋いでた手をゆるり揺らして
はなびら掴みと聞けば瞳輝かせて

秋の夜、風は少しだけ冷たいから
くっついて華火を待とう
夜空に咲く極彩色の大輪には小さな歓声を
はなびら掴みを忘れて見惚れそうになったけど
頭上のひとひらには素早く手を伸ばし
…あっ
またお揃いが増えたねえ
柔く咲む貴女につられへにゃり
掌にはなびら閉じ込め進もうか

この先もずうっと仲良く楽しく過ごせるようにと
願う気持ちは貴女の言葉で膨らんだ
…うん、行こ行こ!



 今日だけの特別な装い、特別な種族、特別な風景。
 その中にカツンと靴音響かせ現れた紳士の燕尾が、風に撫でられひらりと揺れた。
 真っ直ぐ向けられる黄昏に、菫色の目が静かな煌めきを踊らせる。纏う黒いドレスは他の誰でもない、かの紳士の為。だから――。
「なあ、うちを連れてって素敵な紳士さん?」
「ええ。とっておきの宴にお連れしましょう、レディ」
 令嬢の願いに紳士が言葉と礼で以て応じれば――なんて、と、紳士と令嬢それぞれの口から笑う声がこぼれ落ちた。
 君影・菫(ゆびさき・f14101)とニーナ・アーベントロート(赫の女王・f03448)は笑い合い、ぱたぱたと控えめに駆けって手を繋ぐ。
 半分こにしたマスカレイドは仲良しの証。二つで一つのそれが視界に入る度嬉しくなって、つい何度も顔を見合わせてしまう。
「うちね、華火すきなんよ。な、はなびら掴みにいかん?」
 音と光を咲かす空の華と、ひとひら掴めれば願いが叶うと言われる花びら。
 菫の声には、その時が楽しみで、やってみたくてたまらないと躍る心が映っていた。花咲くような笑みにつられてニーナも温まるような笑みを浮かべ――繋いだ指は絡めて、手のひら同士仲良くくっついていることにも、二人気付かぬまま。
「うちの楽しかったこと、ニーナともしたいんよ」
「華火、あたしも大好きだよ。一緒に見たらもっと楽しいかな」
「うん、うん。きっと楽しいやろなあ」
 お喋りしながら「いつの間に繋いでたんだっけ?」なんて言葉も意識も紡がれず、花びら掴みと聞いて瞳輝かせたニーナがゆるりと手を揺らせば、菫がブランコに笑う少女のような無邪気さで笑うから――。
「……ふふっ」
「なあに? どないしたん、ニーナ」
「うん。秋の風は少しだけ冷たいから、くっついて華火を待とうよ」
「ふふ、せやねえ。こうするとあたたかくて、ええね」
 繋いだ手は離さずに、ぴとりとくっついて笑い合えば、委ねあった温もりがぽかぽかほんわり、隅々まで広がるよう。少しだけ出来てしまった隙間を秋風が通り抜けることもあるけれど、寒いなんてちっとも感じなかった。
 一人で。または、誰かと一緒に。
 自分たちと同じように華火を待つ人々を眺め、時々他愛ないお喋りを挟む。
 そうしている間に広がり始めた心地良いざわめきは、次の華火が打ち上げられることに気付いた人々からの合図。そろそろやね、そろそろだね。何となく口を閉じたまま笑みを交わした数秒後。ピストルよりも可愛らしく、けれど弾け咲く強さに満ちた音が響いた。
「うわぁ……!」
 あえかに咲いた大輪の極彩色。幻朧桜と共演を果たした華麗な一輪にニーナは小さな歓声をこぼし、きらきらと目を輝かせるすぐ隣で、菫はぱちくりさせた目をやわらかに細めていった。
「綺麗やね」
「うん、綺麗……!」
 降り始めた花びらを見れば、掴む為とはいえ離した手に名残惜しさを覚える。
 そっと伸ばされた手を見て、見惚れて花びら掴みを忘れかけていたニーナも頭上へとやって来るひとひらへ素早く手を伸ばした。
 伸ばしたそこに在った温もりは緩やかに薄れていき、また繋げばいいと思うよりも名残り惜しさが勝った瞬間。
「……あっ」
「――ふふ、」
 それぞれの指先が掴んだ花びらは、おんなじもの。顔を見合わせれば二つで一つの仮面が目に飛び込んで、また、笑い声がこぼれていく。
「またお揃いが増えたねえ」
「ん、お揃い」
 柔く咲う菫につられ、ニーナもへにゃりと笑った。
 一緒に掴んだおそろいの花びらは落としてしまわないよう、改めて繋いだ掌へと大切に閉じ込める。ぎゅっと閉じたその中で、花びらが芯になる。
(「キミとずうと仲良しでいられますように」)
 心の中に響かせた願いは自分にしか聞こえないけれど。
 菫はふんわり笑い、花を閉じ込めた手を引いた。
「な、このままカフェーに行こ。……熱冷めぬうちに、な?」
 願いはいっしょだと信じて誘えば、その言葉が、ニーナの願いを膨らませる。
(「この先も、ずうっと仲良く楽しく過ごせるように」)
 一人でも楽しいこと、美味しいこと。それはきっとあるだろうけれど、菫と一緒なら、きっともっと楽しくて美味しいに違いないから。
「……うん、行こ行こ! どんなメニューがあるか楽しみだね」
「食べ切れんくらいあったら、どないしようか?」
「その時は……その時に考えよっか!」
 声が弾む。足取りが軽くなる。
 繋いだ手は――すっかり温かくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。
屋台を見て回ります。

UDCアースアメリカでは大人がハロウィンにコスプレをするという文化はありません。
しかも和風の世界であるサクラミラージュで、夏祭りのような屋台を回って楽しむなら、世界に沿った仮装であるべきですものね。色々悩んで、姉の意見を聞いた結果は、タヌキです!

タヌキの丸い耳に、真綿が詰め込まれた藍色チェックの暖かい上着。チャンチャンコというそうですね。
ホオヅキが連なったネックレスに、麻で出来た膝丈ワンピース。
下駄は慣れないと危ないと聞いたので、足元だけは黒いブーツで。
『タヌキが人間に化けている』というコンセプトの仮装をしてみました!

すずちゃんと、屋台を巡ります。
サイダァを飲んでみたいな。大正時代といえばサイダァって聞いたのよ。
色とりどりのサイダァにうっとりしながら、普段口にしない色にしてみましょう。
赤色! 赤色のサイダァをくださいな。
屋台も見た事がない食べ物をメインに回りたいです。
UDCアースジャパンに赴く事が殆どないので、屋台ってすごく新鮮で楽しい。


コイスル・スズリズム
仲良しのオーナーさんと同行!(f03848)
桜の髪色のオーナーさん、なんだかこの世界、すっごく馴染んでるね?
なんてウインクを飛ばしながら、一緒にお祭りの屋台へと。
いつか一緒にいってみたかったんだよね、こういう花やかなお祭り。オーナーさんとね。

すずの衣装は、かぼちゃの妖精をベース
色合いは、この世界にあわせて、和風のあでやかながら落ち着いた色彩のものをチョイスするよ。

オーナーさんはどんな衣装なんだろう?
と彼女の今年の装いを見ると

た・・・

え、マジで、本物なのかな
偽物のオーナーさんだったりしません?
お祭りの陽気の中で、誰かに化かされちゃってるのかしら
と真顔で冗談なんかとばしちゃって、お互いの衣装に笑いあう

歩いてるところ、笑ってるところ
全部が面白くて仕方ないわね。
でも、なんだろ、カワイイと思う

屋台では同じくサイダァ
ビー玉があるものを探してみよっかな
すずは青色のサイダァに。

弾ける泡と、オーナーさんの横顔を眺めながら
一緒に見たことない食べ物を探すわ

何もかもが新鮮で、不思議なハロウィンの空間。最高だね。



 国が違えば文化が違い、世界が違えばその規模もまた広がるだろう。
 故に、国が違えばイベントの過ごし方も変わってくる。
 大正時代が今も続き、幻朧桜という神秘の桜が一年中咲くこの国のハロウィンも、小宮・あき(人間の聖者・f03848)が知るUDCアースアメリカのハロウィンとは少し違っていた。
(「でも、しかも和風の世界であるサクラミラージュで夏祭りのような屋台を回って楽しむなら、世界に沿った仮装であるべきですものね」)
 そして悩んだ。それはもう色々と悩んだあきは姉を頼り、意見を扇いだ。
 その結果である仮装お披露目を道行く人々を眺めながら待つコイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)の仮装は、和と浪漫がとけ合った南瓜の妖精風だ。艶やかながら落ち着いた色彩の衣装は、不思議と目を惹く華やかさがある。
(「オーナーさんはどんな衣装なんだろう?」)
 あきの髪はふんわりやわらかな桜色をしている。この世界に転移して秋風に揺れる様を見た時、コイスルは「オーナーさん、なんだかこの世界、すっごく馴染んでるね?」なんてウインクを飛ばして、「すずちゃんたら」とスマイルを貰ったばかりだ。
(「そろそろかな? 楽しみだなぁ。いつかオーナーさんと一緒にいってみたかったんだよね、こういう花やかなお祭り」)
 楽しみで踵をトントンと鳴らした時だった。
 そわそわと待っていた声が自分を呼ぶ。
「すずちゃーん!」
「あっ、オーナーさん!」
 コイスルは双眸も笑顔もぱあっと輝かせて――固まった。
 ふわふわと風にそよぐ髪から覗く、こんがり茶色の丸い耳。縁が黒い耳をふにふにと触って、何だか暖かそうな藍色チェックの上着も嬉しそうにぽむぽむと叩くあきの姿。
 それは今日だけの装い。ハロウィンの仮装。
 けれど、あきの仮装はコイスルの予想を超えていた。
「見て下さい、すずちゃん。タヌキです!」
「た……」
 満面の笑みを浮かべたあきが口にした『タヌキ』。コイスルの中でその三文字がぽんぽこぽーんと表示され、そのままどんぶらこっこと穏やかに流れていく。あー、と脳内の自分が見送っている間に目の前の現実――タヌキなあきは、ルンルンと楽しそうに解説してくれていた。
「この上着はチャンチャンコというそうですよ。中に真綿が詰め込まれていて、凄く暖かいんです」
 ふふ、と笑うあきの首で連なりころころと揺れるネックレスは鬼灯製。
 膝丈のワンピースは、ななな、なんと! 麻で出来ている!
(「え、マジで、本物なのかな」)
 狸耳の先から爪先までじいぃーっと見ていけば、足元へ向いた視線であきの解説がそちらにも向かう。下駄ではなく黒いブーツなのは“慣れないと危ない”と聞いたから、らしい。
「……偽物のオーナーさんだったりしません? すず、お祭りの陽気の中で、誰かに化かされちゃってるのかしら」
「あ、鋭い。『タヌキが人間に化けている』というコンセプトの仮装をしてみました!」
 真顔で飛ばした冗談に、あきの目が得意げにきらりと輝いた。それから三秒くらい間が開いて――ぷ、とこぼれた音を合図に二人は笑い合いながら歩き出す。
「すずちゃんは南瓜の妖精さん? 今年も可愛いですね」
「ありがと、オーナーさん! オーナーさんのタヌキは……うん、全部が面白くて仕方なくて……でも、なんだろ、カワイイと思う」
 歩いているところ、笑っているところ。
 あきとタヌキという、素敵アンド可愛い組み合わせにコイスルは目をきらきらさせて笑い、オーナーさん、と手を取った。
「あっちに行ってみようよ。美味しそうなのいっぱいあるよ」
「ええ……! あ、すずちゃん。サイダァを飲んでみたいな。大正時代といえばサイダァって聞いたのよ」
「あ、それじゃあビー玉があるものを探してみよ?」
 しゅわっと弾けて爽快で、硝子瓶の中でビー玉がころろと音を立てれば、きっと目にも耳にも綺麗で心地良い筈。
 期待に満ちた二人の目は、見事お目当てのサイダァ屋を見つけ出した。屋台に並ぶサイダァは香水瓶のようで、色とりどりのサイダァにあきは思わず目を奪われる。
「わぁ……あ、店主さん。赤色! 赤色のサイダァをくださいな」
「はいよっ。そっちの南瓜のお嬢さんは何色にするんだい?」
「すずは青色のサイダァ!」
 ほんの少し汗をかいていたサイダァの瓶を受け取れば、纏う水滴と瓶の透明さ、そして中をしゅわわと満たすサイダァの色鮮やかさと煌めきが目の前に。間近で見るきらきらに二人は目を輝かせ、せーの、で封を開けた。

 ぽんっ!

 その瞬間に咲いた気持ちの良い音の直後、しゅわあと弾けた泡へ二人は急いで口をつける。口の中で遊び回るように弾けるサイダァの味はどうかというと、互いの輝く目と笑顔を見れば訊くより早く伝わった。
 綺麗でビー玉まで付いた水分は無事確保。では次はというと、サイダァ片手にまだ見たことのない食べ物探しだ。コイスルは青色サイダァを片手に、あきの横顔を眺めながら一緒に探していく。
「焼きそば、かき氷……結構定番が多いね?」
「そうですね。UDCジャパンに赴く事が殆どないから、新鮮で楽しいけど……」
 探しているのは、見たことのないがない食べ物なのだ。それをメインに楽しんでいく気満々のあきは、時折サイダァに口をつけながら熱心に屋台をチェックして――あっ、と声を上げた。
「ねえ見てすずちゃん、たい焼きならぬ南瓜焼きですって! 美味しそう……!」
「わぁ、可愛い南瓜の形してる! 中身も色々だね、オーナーさん。……ん? 珈琲クリィムなんてあるんだ?」
 近付いてメニューを見てみれば、ジャック・オ・ランタンの形をしたその中身を満たすものは、目に入った珈琲クリィムだけでなく定番の餡子やアイスクリン、そして中華まんを思わす甘辛い肉炒めや咖喱といったお料理系まであった。
 二人は目にわくわくとした煌めきを浮かべ、顔を見合わせる。
「ふふ、屋台ってすごく新鮮で楽しいですね」
「うん。不思議なハロウィンの空間……最高だね、オーナーさん」
 まずはこの南瓜焼きを味わって――そして、次の新発見へ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

サヨ、賑やかな祭りだね
纏うのはサヨと揃いの桜魔女の衣装だ
私の方は桜魔法使いといった方がよいかな
やはり魔女なら禁断の果実は外せない
毒林檎(という設定の)のりんご飴だそうだよ
サヨにもあげる
きみの笑顔がみたかったからね

どの屋台も心が踊るようだ
サヨは何がしたい?
華火──噫

何だか泣きたくなるくらいあたたかな心を感じる
サヨ?大丈夫かい?
一緒に私たちの華火をあげよう
美しい桜色と赫の華火だ

私は赫い桜花弁を込める
きみの桜と共に空に咲く
私に祈る神などいないから愛しい巫女へ祈る
……神(私)の望みを叶えられるのはサヨ(巫女)だけだからね

望みなど願いなど抱いてはいけないと思っていた
私は神だ
それらを叶えるもの
けれど私は手を伸ばす事を恐れない

掴まえた……!
ひらり薄紅を優しくにぎり櫻宵と微笑み合う

櫻宵が幸いに咲いて生きていてほしい
笑うきみの隣に、きみの居る世界で私は生きていたい
旅に行こう
色んな世界を共にみにいこう
叶えよう、今世で

噫、私も気合を入れてきみの修行を手伝うよ
うつろう明日も
花冷えの夜だって一緒なら怖くない


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイ!
ハロウィンの縁日なんて心が踊るわね
二人でお揃いな、桜魔女の仮装なんだから気分も上がっちゃうわ!

見やれば神の手には既にりんご飴がある
カムイったらいつの間に?
素早いわね
差し出されたりんご飴を齧り笑う

私の神様はなんて気が利くのかしら!
禁断の果実?幾らでも齧ってあげる

屋台を見て周りながらはしゃぐカムイが可愛くて
心も癒されるわ
カムイ、縁日を巡るのもいいけれど私はあなたとやりたいことがあるの!

華火の花弁を掴まえるのよ

華火は、私達にとって大切なもの
華の火の咲く祭りの夜に、『あなた』と再会して
見送った

ん、ごめんなさいね
少ししんみりしてしまったわ
華火に込める花弁は、私自身に咲く桜よ
宿す願いは果てない祈り
望みを咲かせるよう火をつける

ありがとう、約束を守ってくれてと神様に感謝をこめて
ぱんと咲いた満開の華火に二人一緒に手を伸ばして

……掴まえた!

カムイも?やったわね!
うん、叶えましょう
きっと叶うわ
私、修行だって頑張るもの
あなたの隣で今度こそ、ずっと咲いている為に

互いに掴まえた花弁をあわせて心を絆ぐ



 秋の空に幻朧桜の花びらが舞い、道行く人々は皆、いつもの自分とは違う特別な姿。サクラミラージュにある白亜の館でのハロウィン祭は楽しげな空気に満ち、しかし決して騒がしくはない。不思議と心地良い空気は、そこを訪れた誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)と朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)も等しく包み込んでいた。
「カムイ! ハロウィンの縁日なんて心が踊るわね」
「噫、賑やかな祭りだね。それに、きみと揃いの衣装だ」
「ふふ、そうね! あら? カムイそれ……」
 にこにこと隣を見た櫻宵――本日は桜魔女である櫻宵の目がぱちり瞬く。
 同じく桜魔女――カムイの方は桜魔法使いだろうか――その手に林檎飴がある。まだここへ着いてそう経っていない筈なのに、なんて素早い。
 桜魔女の視線に桜魔法使いは静かに微笑んだ。驚いたかい? そう囁くような微笑と共に指先でくるり串を回すと、紅色が美しく煌めいた。
「やはり魔女なら禁断の果実は外せないからね。毒林檎のりんご飴だそうだよ。サヨにもあげる」
「私の神様はなんて気が利くのかしら!」
 無邪気に笑って受け取る桜魔女へ桜魔法使いが「きみの笑顔がみたかったからね」と微笑めば、桜魔女の目がするりと細められていく。そんな風に言われたら――いいえ、きっと言われなくても――愛しい魔法使いから贈られた果実ならば、どんな禁が宿っていようと構わず口にするだろう。
「ふふ。幾らでも齧ってあげる」
 あ、と開かれた口が林檎に触れる。しゃく、と音がしてから少し間を置いて、同じ音がまた。屋台の間を緩やかに行く足取りと同じように、禁断の果実が魔女の腹へと収まっていく間、カムイの目にいくつもの屋台が映る。
 知っているもの、知らないもの。
 食べ物、玩具、遊戯。
 並ぶ屋台全てがカムイの心をくすぐって、きらきらと輝くような龍眼に櫻宵は林檎飴で口元を隠しくすりと笑む。
(「カムイったら、はしゃいでるわ。かぁいい」)
 それにとてもとても癒やされる。私の神は世界一ね、と誇らしさも加わり始めた時、屋台に向けられていた目が優しさを湛えながら櫻宵を映した。
「サヨは何がしたい?」
「私? 縁日を巡るのもいいけれど、私はあなたとやりたいことがあるの!」
 林檎飴を持つ方とは逆の手でカムイの手を取り、こっちよと手を引いて軽やかに向かう。屋台の間を通り、太鼓橋を渡り、白亜の館を横に整えられた芝生の上――庭園へ。
 そのまま華火の案内へと向かいながら隣を見れば、揺れる銀朱の髪の下、朱砂の彩を浮かべた桜色がきょとりと自分を見ていたものだから、くすりと咲う。
「華火の花弁を掴まえるのよ」
 あの夏空に咲いた華。交わした約束。
 『華火』は自分たちにとって大切なものだ。
(「華の火の咲く祭りの夜に、『あなた』と再会して――見送った」)
 あの夜に見た華火は今も魂に残り、自分たちを絆ぐもの一つ。かけがえのない絲。
「華火――噫」
 その言葉を聞いた瞬間、カムイの目は僅かに震えた。なぜだか泣きたくなるくらいあたたかな心を感じる。胸の内に灯ったそれを探ろうとした時、櫻宵の目を薄く濡らすものに気付いた。
「サヨ? 大丈夫かい?」
「ん、ごめんなさいね。少ししんみりしてしまったわ」
「いいんだよ、気にしないで。一緒に私たちの華火をあげよう」
 秋空に自分たちの華火を咲かせるのならば、美しい桜色と赫がいい。
 カムイは並ぶ花々の中から赫い桜の花びらに目を留め、慈しむような優しさで取っていく。櫻宵は自身に咲く桜を選んだ。触れて取り上げる手付きは、愛おしむように、静かに。
「カムイ、準備はいい?」
 桜の魔女は、桜に、華火に、果てない祈りを籠めた。
(「ありがとう、約束を守ってくれて」)
 大好きだった神であり師匠。
 そして、愛しい神様へ。
「勿論だよ」
 桜の魔法使いは、自分に祈る神などいないから愛しい巫女への祈りを籠めた。
(「……神(私)の望みを叶えられるのはサヨ(巫女)だけだからね」)
 神である自分は、望みを、願いを叶えるもの。望みなど願いなど抱いてはいけないと思っていた。けれど今は手を伸ばすことを恐れない。
 それぞれが持つ春の彩をやわらかに交わして、二人は望みを咲かす最後のひとつを灯す。その瞬間一気に駆け始めた火花は電気鼠ならぬ火花鼠のよう。弾ける音と光はあっという間に導火線を黒線と変え、華火筒に触れ――光が、熱が、空へと昇って――咲いたことを誇るような音を高らかに響かせた。
 澄んだ青に咲いた満開の華火。
 声を合わせてもいないのに、手を伸ばしたタイミングはぴたりと同じ。
 そして。
「掴まえた……!」
「……掴まえた! カムイも? やったわね!」
 カムイはひらり舞い落ちた薄紅を指先で包むようにしながら櫻宵と微笑み合う。微笑む櫻宵の言葉とその指先にある赫に、カムイの微笑はよりあたたかさを増した。
「ねえ、櫻宵。私は、櫻宵が幸いに咲いて生きていてほしい。笑うきみの隣に、きみの居る世界で私は生きていたい」
 どんどん芽吹いて咲いていく望みを、願いを、以前であれば思うことすら躊躇ったかもしれないけれど――今は違う。
「旅に行こう、色んな世界を共に見に行こう、櫻宵。叶えよう、今世で」
 いつか、ではなく、共に生きる今。
 カムイが紡いだ願いと言葉で、微笑む櫻宵の双眸にきらきらと小さな光が踊る。
「うん、叶えましょう。きっと叶うわ。私、修行だって頑張るもの。あなたの隣で今度こそ、ずっと咲いている為に」
 約束を守ってくれた神と、もっとずっと色んな場所を訪れて、色んなものが見たい。祈りと同じように、この願いには果てがない。それくらい、自分は目の前で微笑む神を求めている。
「噫、私も気合を入れてきみの修行を手伝うよ」
「なんて頼もしいのかしら、流石は私の神ね!」
 枝垂れ桜の儚き花びらと、鮮やかな赫を宿した桜の花びら。ふたつを合わせて絆げば、別々だったものがひとつの花となり、二人の顔に微笑みが咲き続ける。
 うつろう明日も、花冷えの夜だって――。
(「あなたと、」)
(「きみと、」)
 二人一緒なら、怖くない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

太宰・寿
【ミモザ】露店巡り
綺麗や可愛いがいっぱいだね
装飾品って見てるだけで楽しいから好き

言われてみればそうかも
自分で買ったりしないからかな?

あ、私たちそういうのじゃ…
店主さんからの言葉に待ったをかけるけど
うん?そうだねこのデザイン好き…ってそうじゃなくて
今日も羨ましいくらいに決断が早い!

そうだけど、これはそういうことじゃないでしょお…!?
嫌じゃないよ、選んでくれてすごく嬉しい
でもこういうのって恋人同士とか特別な関係で付けない?
うん、知ってるよね。そう…知って、る??
知ってるのに買ったの…?(?が隠せてない顔)
慕ってくれてる気持ちが嬉しいけど、最近はどう返したらいいのか分からなくなってて
指輪してなくても店主さんにはそう見えてた気がするけど恥ずかしいから言わない
それは英も大きくなったし、見えるかもしれないね

折角買ってくれたんだからしてるけど、どうして?
ちょっと!今、あ、って言ったでしょ!しかもおまじないの内容!
もう!とジト目でみるけれどすぐ可笑しくなって
ふふ、そういうことにしておいてあげる


花房・英
【ミモザ】
俺には良し悪しは分からないけど
楽しそうな寿に時々相槌を打ちながら隣を歩く

寿ってネックレスとかブレスレットはするけど指輪はしないよな
なんで?
なんて尋ねてたら、店主から買ってあげなよと言われる
勧められるままいくつかあるものの中からペアリングを手に取って

寿、手貸して
試着してもいいか店主に許可を得てから、寿の右手薬指に嵌めてみる
いいんじゃない?
これください

寿、お揃い好きだろ?
…嫌だった?
そんなこと言われなくても知ってる
でも、俺は寿が一番特別だから
自分の指にもはめてみるけど、慣れなくてちょっと違和感
こうやって同じ指輪してたら、俺と寿でも姉弟じゃなくて恋人同士に見えると思うか?
そっか
返す声は素っ気ないけど
胸の裡に湧いたのは嬉しいと戸惑いと半分ずつ
…早く大人になりたい
寿には聞こえないような小さな声で零して

嫌いじゃなければそれちゃんとつけてて
どうして…あ、寿がドジしないようにおまじないかけといた(真顔で嘘をつく)
…笑うな
いっつも寿のお願い聞いてるんだから、そのくらいしてもバチ当たらないだろ



 時折、打ち上げられた華火の音と人々の歓声が響いてくる。それが露店並ぶ通りにまで届く度、それぞれの場所で生まれた賑わいが豊かにとけ合うようだった。
 音は目に映る露店の華やかさや摩訶不思議な様とも重なり、太宰・寿(パステルペインター・f18704)の心も笑顔も、ふんわりとあたたかくなる。
「ねえ英、見て見て。綺麗や可愛いがいっぱいだね」
「うん。いっぱいあるな」
 花房・英(サイボーグのグールドライバー・f18794)は、寿のように並ぶ品々の良し悪しがわからない。けれど隣を行く寿がずっと楽しそうだから、話しかけられれば相槌を打っては同じ物を眺めていた。
「ああいうのって見てるだけで楽しいから好きだなぁ。……あ、蝶々のブローチだ。翅がころりと丸いね、可愛い」
「うん、そうだな。……なあ、寿ってネックレスとかブレスレットはするけど指輪はしないよな。ああいうのとか」
 英が指した先は指輪専門の露店だった。
 近くに寄って見てみれば、磨かれたリングのみのシンプルなもの、透かし彫りのリングに宝石を嵌め込んだもの――リングの形や幅、石の色やカットの種類が豊富で、見ているだけで楽しい時間を過ごせそうなほど。
 そんな指輪たちを前に、英が少しだけ首を傾げる。
「なんで?」
「なんで、って……」
 英の言葉に寿の目が瞬く。過去を掘り返しに行った視線はすぐに英へと戻った。
「言われてみればそうかも。自分で買ったりしないからかな?」
「ふふ。じゃあ、そっちの彼が買ってあげなよ」
 ごめんね、聞こえてたから。軽く手を上げ謝る店主に、自分たちはそういう関係では、と寿は待ったをかけ――たのだけれど、その視界で英がお勧めを尋ねそれに店主が応え、そして英の前に幾つか指輪が並べられて――と、目の前で始まったものに寿の目はパチパチきょとり。
「寿、手貸して。試着してもいい?」
「いいよ」
「どうも。……うん、いいんじゃない? こういうのって好き?」
「うん? そうだねこのデザイン好き。……ってそうじゃなくて」
「これください」
(「!? 今日も羨ましいくらいに決断が早い!」)
 寿が目をまん丸にしている間に英は会計まで流れるように済ませ、口をパクパクさせている寿を、じ、と見てから歩き始める。紫の彩は静かなまま。感情の詳細まで映し、語ってはくれない。
「寿、お揃い好きだろ?」
「そうだけど、これはそういうことじゃないでしょお……!?」
 だってお揃いの指輪って。しかも薬指にって。薬指だと確か――あれ、右手だとどういう意味になるんだっけ? 驚いて、少し赤くなって、それから「えーと」と考え始めた寿を見つめていた英の表情に、ほんの少しだけ感情が浮かぶ。
「……嫌だった?」
「嫌じゃないよ、選んでくれてすごく嬉しい」
 それは本当のことだった。嫌だなんて少しも思わなかった。嬉しかった。
 でも。
 でもでも。
「こういうのって恋人同士とか特別な関係で付けない?」
「そんなこと言われなくても知ってる」
「うん、知ってるよね。そう……」

 ん?

(「知って、る??」)
 パチパチ。
 きょとり。
 寿は思い切り首を傾げた。目も再びまん丸にしていた。思わず足を止めかけ、少しだけ空いてしまった英との距離を小走りして元に戻す。隣に戻ってきた自分をちら、と見て確認した英が少しだけ歩く速度を緩める中、寿はぽこぽこ浮かぶハテナマークを全く隠せずにいた。
「知ってるのに買ったの……?」
 英から向けられる気持ちが嬉しい。それは指輪を買ってくれたことと同じ、嘘ではないけれど――最近は、英から向けられるものにどう返せばいいのか分からなかった。今も、“知っていて買ったこと”に対する沢山のハテナしか浮かべられない。
「でも、俺は寿が一番特別だから」
 英の言葉にも寿は何かを返すことは出来なくて――けれど英は何かを求める様子はなく、自分の右手に目を向け、薬指に先程買ったばかりの指輪を嵌めていった。
 指をするりと通過して嵌った揃いの指輪は、秋の陽射しをきらりと反射して綺麗だ。指輪に慣れていない英には少しだけ違和感があるものの、着けていれば自然と慣れてくるだろう。気になるのは――、
「こうやって同じ指輪してたら、俺と寿でも姉弟じゃなくて恋人同士に見えると思うか?」
「それは英も大きくなったし、見えるかもしれないね」
 指輪をしていなくとも、あの店主にはそう見えていた気がするけれど。寿はその部分だけ言わず、恥ずかしさでかすかに染まった頬を隠すように英から視線を外した。指輪を映していた英の目が、少し遅れて寿に向く。
「そっか」
 返す声はいつも通りそっけなく、けれど、胸の裡には“嬉しい”と戸惑いとが半分ずつ満ちていった。見えるかもしれない――今の自分で、周りの目が自分たちをそう捉えるのだとしたら。
「……早く大人になりたい」
「ん? なあに? 何か言った?」
「別に。……なあ。嫌いじゃなければそれちゃんとつけてて」
「折角買ってくれたんだからしてるけど、どうして?」
「どうして……あ、寿がドジしないようにおまじないかけといた」
「ちょっと! 今、あ、って言ったでしょ! しかもおまじないの内容! もう!」
 英が真顔でついた嘘はすぐに見破られ、寿の目がジトっとなる。けれどジト目はすぐに湧き上がったおかしさでほろりと崩れ、楽しげな笑顔に変わった。
「ふふ、そういうことにしておいてあげる」
「……笑うな。いっつも寿のお願い聞いてるんだから、そのくらいしてもバチ当たらないだろ」
「ふふふ、どうしようかなぁ? ……ん? あ、ねえ英、あそこ!」
 弾む声、掴まれる袖。今度は何、と問う声は口にしたばかりの“いっつも”の到来を予感していた。寿の視線を辿った先には、きらりと彩を魅せる硝子製ミモザの置物が一つ。
「ねえ、近くで見てみない?」
「わかった」
 秋空の下、様々なものが実っていく。
 硝子のミモザへと向かう二人の右手でも、揃いの指輪が静かに煌めいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『花の帝都の小粋なカフェ―』

POW   :    軽食やお菓子に舌鼓を打つ

SPD   :    同席者や店員との会話を楽しむ

WIZ   :    洒落た内装や窓からの眺めを楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 やわらかな象牙色の天井と壁。ぷくりと丸く愛らしい鈴蘭形の吊り下げ型照明。磨かれたテーブルは珈琲のように濃く、腰を下ろせば心地よく受け止めてくれる紅色ソファには美しい桜華の刺繍。
 思い思いの袴と髪型で装った女給たちの接客技術は、厨房で作られる軽食や甘味に負けないくらい素晴らしく――ただし、ハロウィン期間中はちょっぴり違う。
 猫耳、尻尾、小さな蝙蝠の羽、腰にゼンマイと、カフェーの中を行く女給たちは今日だけの姿をお披露目中。
 用意されるナイフやフォークの持ち手には蜘蛛の巣の透かし彫りが。暫し喉を潤す役目を担うお冷の中、ぷかぷか浮かぶ氷は風船お化け。
 お品書きの字体は少しだけ掠れていて、普段いないメニューがちゃっかり並んでいるのだ。

 甘口、中辛、辛口と選べる人気の咖喱ライスは、じっくり作られた咖喱ルゥと、口に入れればほろりと崩れる豚肉と野菜の相性が抜群。ただしハロウィンの間だけ、野菜は星や花、お化けにジャック・オー・ランタンになる魔法にかかっている。
 香ばしいハムとチーズ、瑞々しい野菜に特製マヨネーズ、分厚い玉子焼きなど、様々なものを挟んだサンドウイッチ。生地に残る肉球の焦げ跡はもしや――「黒猫が魔法で手伝ってるんだよ」――幼い客人たちが熱心に交わす内容の真偽は誰にもわからない。
 ふかふかオムレツには、読み解くことが至難な魔法の言葉や魔法陣、または不可思議な存在たちの絵姿が真っ赤な液体で――「ご安心を、ケチャップでございます」。

 カフェー自慢のホットケーキには、バターの上に全体を覆って艶めく黄金の蜘蛛の巣がかかっている。蕩けていくそれは上品な甘さが特徴の蜂蜜製。ぺろりと行ける胃袋の持ち主であれば、ホットケーキを二段、三段、ご自由に。
 猫の頭を模った『魔女の使い魔カステイラ』はいつだってほかほかだ。ただし性格は一つずつ違っていて、どんな性格かは粉砂糖で描かれた表情で判断を。
 冷たい甘味なら『骸骨アイスクリン』だろう。ほの甘いバニラ味のアイスクリン頭蓋に刺さる蝙蝠クッキー、目はチョコレイトのコインか、キラキラ目玉ゼリーが嵌っている。宝石めいて煌めく苺や葡萄を添えられて、ちょっとした宝物のよう。
 ざくざく歯ごたえと素朴な味わいが人気の『魔界軍大集合クッキー』は、バターとココアの二種混合。獣や妖精、モンスターに幽霊と形を見るだけでも楽しい一品だ。

 お品書きはこの通り。
 それではどうぞ――甘爛のひとときを。
 




飲み物あり〼(珈琲、紅茶、ジュース、お茶、ビール)
 
比野・佑月
【月花】
「うん、一緒に食べよう。一口だけでも気になるもの何でも教えてよ」
底無しの俺と小食な彼女
いくらでも俺が残さず食べてしまうからと。
好きな物をいっぱい味わって欲しくて(そして笑って欲しくて)
食事のシェアをいつだって提案してしまう。
自分のモノを人に取られるのが一番嫌いだったはずなのに
そんな自嘲すら出てこないほどに当たり前になっていて、幸せで。
揺れる尻尾もきっと、美味しい食事のせいだけじゃないんだろう

「…別に、俺にも猫のトモダチはいるし」
嫉妬をすべきか、同じ犬ではないことに安堵すべきか
そんなくだらない思考に気を取られて噛み合わない返事を返すけど
些細なことすら嬉しくて
キミのこと、もっと知りたいんだ


花色衣・香鈴
【月花】
幼い頃見たお屋敷の中の食事室とは違えど館の中のカフェーというのは何処か懐かしい
従者の家系であった事に後ろ髪を引かれることもあるけれど
「何か食べますか?佑月くんがよかったらわたしも何か食べたいです」
『今』を大事にすると決めたから

発作持ちになってから食事は苦手になった
それでも
「ふふ、サンドイッチに肉球型の焼き目が」
優しい人と共有する食事の時間が幸せなことは覚えている
佑月くんとなら、思い出せる
「ネコさんと仰る文通友達をふと連想してしまいまして」
やっぱり浮かれているのかもしれないけれど
「わたしは交友関係が狭いので後は家族のことくらいですけど…聞いてくれますか?」
今日はもう少し色んな話をしたいな



 内装の色。造り。雰囲気。
 白亜の館内にあるカフェーは香鈴が幼い頃に見た食事室――屋敷の中にあったそことは違うものの、どこか懐かしさを覚えるものだった。
 両親は使用人であり、病に罹らなければ香鈴も身分ある誰かに使えただろう従者の家系。その為に、こういった場所を訪れて楽しむということに後ろ髪を引かれもするのだけれど、ソファへ腰を下ろした香鈴にはカフェーにいることを憂う彩は一切なかった。
「何か食べますか? 佑月くんがよかったらわたしも何か食べたいです」
 向かいに座った佑月と穏やかな笑みを交わし、お品書きを開いて問うその声は花のようにやわらかい。
 『今』を大事にすると決めた香鈴の目は、お品書きに書かれた文字と絵をどこか楽しげに追っている。向かい側で同じ物を開いていた佑月も、香鈴の言葉に尻尾を短く揺らしながら笑った。
「うん、一緒に食べよう。一口だけでも気になるもの何でも教えてよ」
 俺は底なしでキミは少食。
 けど大丈夫、任せて。
 いくらでも俺が残さず食べてしまうから。
 佑月のシェア提案に香鈴が頷き笑う。じゃあ、これなんてどうでしょう? どれどれ? お喋りが咲くそこには、揺れる尻尾がソファを軽く叩く音も混じっていった。
(「……本当は、キミに好きな物をいっぱい味わってほしくて」)
 そして、笑って欲しくて――。
 それだけの理由で今回も食事のシェアを提案してしまう。“自分のモノを人に取られるのが一番嫌いだったはずなのに”、なんていう自重すら出てこないほどに、それは佑月の中で当たり前になっていて――そこに幸せを覚えることもすっかり当たり前な今が、くすぐったい。
「じゃあ、これと、これを」
「うん、決まりだね。あ、すいませーん」
「はぁい、只今!」
 注文表片手にぱたぱたとやって来たゼンマイ仕掛けの女給に注文して、風船お化けの氷を時折カララと鳴らしながら喉を潤し、のんびりお喋りすること暫し。運ばれてきた皿の上、程よく重なって横たわる出来たてサンドウイッチを見た香鈴の表情がやわらかに綻んだ。
「ふふ」
 花咲き病に罹り発作が出るようになってから食事は苦手になったというのに。それでも目にした物を前に心も表情も綻んだわけは、優しい人と共有する食事の時間が幸せだと――それが自分の中に残っているからだろう。
 そしてそれは、佑月と一緒なら思い出せる。痛みや苦しみの訪れを恐れず、穏やかな心地のまま、『今』を大事に楽しめるのだから。
「佑月くん見て下さい。ここ。サンドウイッチに肉球型の焼き目が」
 仲良く並ぶ肉球の大きさは同じだ。それぞれの間にある感覚から、サンドウイッチを切る時に三角耳を生やした可愛らしいお手伝いさんが「よいしょ」と押さえた時のものに違いない――なんて。
「ネコさんと仰る文通友達をふと連想してしまいまして」
 この話を急にしてしまうなんて、やっぱり今日は浮かれているのかもしれない。
 けれど。
「頂きます」
 香鈴は両手をそっと合わせ、最初の一口を小さく“あーん”。パンのほの甘い味わいにハムとチーズの香ばしさが絶妙に合わさったそれは、目の前の少年ならぺろりと食べてしまえるのだろう。
 その少年はというと香鈴の手にあるサンドウイッチ――の肉球を、じい、と見つめてから、残りのサンドウイッチにぺたんとある肉球にも厳しいチェックを向けていた。
「……別に、俺にも猫のトモダチはいるし」
 香鈴を笑顔にさせた肉球の主に嫉妬すべきか。
 自分と同じ犬ではないことに安堵すべきか。
 だって猫相手なら負ける気がしないし、いや同じ犬でも――なんて言わないけれど。
 そんなくだらない思考に気を取られて返した言葉は、向けられたものとは微妙に噛み合っていなかった。何言ってるんだろう俺、と思わなくもない。しかし最初の一口をしっかり噛んで味わい終えた少女は、やわらかに笑っていた。
「わたしは交友関係が狭いので後は家族のことくらいですけど……聞いてくれますか?」
「……うん。聞かせて、香鈴ちゃんの事」
 話したいこと。もっと知りたいこと。それは世界の命運をかけたものでも世紀の大発見でもないけれど、こうして交わす“些細なこと”が何よりも嬉しくて、あたたかい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
WIZ
仮装は黒のワンピースに月モチーフを添えて月の魔女風に。
露店を見るために動きやすい格好をしてたけど、ここなら落ち着いて座れるから仮装もできるわ。
そして屋台で食べて来なくてよかった。
食べてたらこちらで味わう事も出来なかったでしょうに。

頼むのは『骸骨アイスクリン』と温かい紅茶を。
アイスとクッキー、チョコかゼリーも食べられるのはお得だと思う。
……それにアイスはお腹が膨れにくいしね。
お冷もカトラリーもハロウィン仕様の細かな装飾が楽しい。
アイスを食べながら店内はもちろん、窓の外に視線をやって行き交う人々を目に焼き付けて。
人々は皆幸いであってほしい。どうしてそう思うのかわからないけれどもそう願うのよ。



「此方のお席へどうぞ」
「ありがとうございます」
 藍は背中に小さな蝙蝠翼を持つ女給に会釈し、裾に手を添えながら案内された席へと腰を下ろした。それからほんの少しの間の後、此方どうぞとテーブルに置かれたお冷に浮かぶ氷は風船お化け形。グラスを持てば氷が揺れ、カラランと心地良い音を立てる。
 口をつければよく冷やされた水が喉を潤しながら通っていって――ふう、と、こぼれた吐息にに緊張感はない。寧ろリラックスしていた。
 外で露店を巡っていた時は動きやすさを選んだ格好をしていた藍だが、今はハロウィンらしさ溢れる姿。黒落ち着いて座れる場所だからとやってみた仮装――黒のワンピースに月のモチーフを添えた衣装に身を包み、じっとお品書きに目を通す様は月の魔女のよう。
 そんな魔女はお品書きを見つめ、胸の内にひとつの安堵を浮かべていた。
(「ハロウィンメニュー、結構あるのね……屋台で食べて来ていたら、ここで味わう事も出来なかったんじゃないかしら」)
 胃の許容量を顧みての判断が、こうしてハロウィンメニューという良縁に結びつく。その良縁から何を選ぶのかというと――。

「お待たせ致しました。此方、ご注文の骸骨アイスクリンと紅茶でございます」
 硝子の器に収まり、ひんやりキラキラと魅せてくる純白氷菓の骸骨一つ。
 銀色の匙を寄せれば匙が純白の内へと溶け込むように入っていった。一口分掬えば蜜柑ゼリーの目がぷるりと揺れ、ほの甘いバニラ風味は蝙蝠クッキーも一緒に食べるとまた美味しい。
 これ一つでアイスだけでなくゼリーとクッキーも食べられるお得感。しかもアイスは腹が膨れにくくてとお得感倍増しの氷菓で藍は静かに舌鼓を打つ。少し冷えてしまった気がしたなら、温かな紅茶で一休み。カトラリーを彩るハロウィン意匠と店内を楽しみ、そして窓の向こうにも目をやって――気付けば、桜舞う中行き交う人々を目に焼き付けていた。
 人々は皆幸いであってほしい。
(「どうしてそう思うのかしら」)
 考えてみても藍にはわからない。
 けれどもその願いは、自分の中に確かなものとして存在していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

縹・朔朗
ちょいと、グリモア猟兵さん
肩を軽く叩いてにっこりと笑み

もし良ければ、私とお茶しませんか
ああ、お忙しいなら断って頂いて構いません
私一人で楽しみます

…でも、折角ご案内して下さったのに、
肝心の貴方が味わえない、と言うのは些か酷でしょう?
私も一人でお茶をしばくのは寂しいですし…
ね?

ふふ、ご承諾下さるなら嬉しいです
…方言が出ていましたか?
こう見えてサクミラの京都出身なのです

良いお店ですね
お好きなものを召し上がって下さい
私は…そうですね
紅茶と三段ホットケーキを頂きましょう

ふふ、甘味は幾らでも食べられます
皓湛さんは好まれる方で?
お好きでしたら、またいつかお茶しませんか
帝都をご案内致しますよ


アドリブ歓迎



「ちょいと、グリモア猟兵さん」
 見かけた後ろ姿、自分よりも低い所にある肩を軽く叩きながら声をかければ、緩やかに振り返った汪・皓湛(花游・f28072)の目ににっこり笑む縹・朔朗(瑠璃揚羽・f25937)が映る。
「貴方は確か……」
「縹・朔朗と言います。もし良ければ、私とお茶しませんか」
 そんな誘いをかけたのは白亜の館に入ってすぐの所だ。自然と通路の端に寄った二人の横を仮装姿の人々が行き交う様は、普段よりも摩訶不思議で少しばかり愉快でもある。そんな人々を朔朗は穏やかに見つめ――ぴたり。通路の先で留まれば、そこにあった『カフェー』の文字が書かれた立て看板に皓湛の目も向いた。
「あちらで?」
「ああ、お忙しいなら断って頂いて構いません。私一人で楽しみます。……でも、折角ご案内して下さったのに、肝心の貴方が味わえない、と言うのは些か酷でしょう?」
 聞いた所によると、ハロウィン仕様のカフェーで提供されるものはどれも洒落ており美味だとか。カフェーから出てくる人々が皆満足げなことから噂は確かなのだろう。それに、と朔朗は声量を落として少しだけ屈んだ。
「私も一人でお茶をしばくのは寂しいですし……ね?」
「……おや。その様に仰られては、否とは言えませんよ」
 悪戯っぽい微笑も添えての誘いに、楽しげな笑みとセットの「是非ご一緒に」が返されれば、朔朗の口からも「ふふ」と嬉しそうな笑みが咲く。
「ところで朔朗殿。しばく、というのは……?」
「ああ、方言が出ていましたか? こう見えてこの世界の京都出身なのです」
 茶をしばくというのは――と話も交えカフェーに入った二人を出迎えたのは、尻尾を揺らす化け猫女給だ。水を冷やす風船お化け氷はよく見れば顔が微妙に違っている。
 ハロウィンという特別な仕様に元々の雰囲気が上手くとけあった空間は“良い”の一言。だからだろう。何にしようか考え選ぶだけの時間もまた、良いものだった。
「お好きなものを召し上がって下さい」
「勿論、この機は逃せませぬ故。……ホットケーキを一段に。それとお茶と骸骨アイスクリンでしょうか。朔朗殿は?」
「私は……そうですね。紅茶と三段ホットケーキを頂きましょう」
 開いたままのお品書きには他にも甘味が載っており、どれもこれも魅力的。収める腹は一つきりだけれど、朔朗は甘味は幾らでも食べられるとくすくす笑う。皓湛も甘味を好むと知れば、名案が一つ、ぽんと浮かんだ。
「でしたら、またいつかお茶しませんか。帝都をご案内致しますよ」
「嗚呼、それは是非。この世界の事は勉強中の身で……」
 この世界の甘味も。皓湛が小声で添えたそこに潜む期待へ、朔朗はお任せ下さいと優美に笑む。まずはカフェーの甘味を楽しんで――“またいつか”の相談も、咲かせようか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、おいしそうですね。
私はオムレツでアヒルさんは咖喱ライスのランチです。
アヒルさん、お行儀よく食べないとその純白の翼が汚れてしまいますよ。
それはそれでハロウィン柄ぽく見えて面白そうですけど、カレーのシミを侮っちゃいけませんよ。
ランチが終わったらお洗濯の魔法できれいにしましょうね。

それにしてもこのオムレツに描かれた魔法陣はすごいですね。
よくケチャップで描けたものですね。
なんか、本当に何かが出てきそうです。
あれ?卵にチキン(ライス)を生贄にして呼び出すって・・・白い鳥?
これはオムレツですし、白い鳥といっても鶏さんですから。
気のせいですね。



 見ているだけでふかふか弾力が伝わりそうな、幸せの予感でいっぱいの蒲公英色オムレツ。思わず体が震えてしまいそうな香りをふんわり漂わす咖喱ライス。
 それぞれの前へと優雅に置かれた料理は見た目もほかほかと揺れる湯気も香りも素晴らしく、フリルとアヒルさんはカトラリーを手にしたまま揃って目を輝かせていた。
「ふわぁ、おいしそうですね」
『グワワ~♪』
「では……いただきます」
『グワワッ』
 二人の幸せと喜びに染まった声が仲良くハーモニーを奏で、掌が、翼が合わせられる。そしていざ最初の一口! という所で、フリルは「あっ」と小さな声を上げた。器用にスプーンを握ったアヒルさんが首を傾げる。
「アヒルさん、お行儀よく食べないとその純白の翼が汚れてしまいますよ」
『グワ~? ガァガァ、グワ』
 そんなうっかりはしない、とアヒルさんが胸を張り嘴を上へ向ける。しかしカレーの恐ろしさを知るフリルはダメですよと精一杯凄んだ。
「それはそれでハロウィン柄ぽく見えて面白そうですけど、カレーのシミを侮っちゃいけませんよ」
 付いてしまったカレーというものは普通に洗っただけでは、完璧に落ちはしないもの。ほんのりと残る黄色いシミに“ああ困った”というエピソードは沢山存在しているのだ。
 しかし備えあれば何とやら。フリルにはとあるユーベルコヲドがある。
「ランチが終わったらお洗濯の魔法できれいにしましょうね」
『ガァ♪』
 その時は任せた、とアヒルさんが片翼をしゅぴっと立て、スプーンで一口二口と順調かつ今の所は翼を汚すことなく食べていく。フリルもふわふわオムレツに匙を入れ、とろけるやわらかさと味わいに舌鼓。
(「それにしても……」)
 じ、と見つめるのはオムレツに描かれた緻密かつ見事なケチャップ製の魔法陣。
(「なんか、本当に何かが出てきそ――あれ?」)
 卵にチキン(ライス)を生贄にして呼び出す? 白い鳥が浮かび上がったフリルは首を傾げ、それから首を振る。これはオムレツで、白い鳥といっても鶏だ。だから、だから。
(「気のせいですね」)
 オムレツをケチャップ魔法陣と一緒に頬張れば、口の中いっぱいにほの甘くふわとろな幸せが広がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高塔・梟示
千隼(f23049)と

屋台を覗かなかったから悩むところだね
千隼はもう決まったかい?
微笑みながら繋いだ手はそのままに
女給さんの御召物やカトラリーまで
何処もハロウィン一色で楽しいものだ

咖喱の香りは食欲をそそるが
それ以上に誘われたホットケーキと珈琲を
ふふ、そちらのアイスは中々本格派だ
仮装もかい?愛らしいだろうね…ひんやり冷たいのかな
美味しそうだが残念だよ
今年は赤い葡萄酒が主食の仮装だから
なんて笑って冗談返し

おや、トリックオアトリート
ホットケーキをお裾分けしようか
アイスにはよく合うと思うよ
悪戯も菓子も魅力的だが…なら偶には悪戯を
何方もきっと甘いには違いないさ
つられ笑って、姫君がお望みとあらばと頬を撫で


宵雛花・千隼
梟示(f24788)と

カフェーでは甘味と軽食、梟示はどちらにする?
華火の余韻に心弾むまま彼の手は離さずに
館へ入ると内装に、女給さんたちの姿につい笑み零し
愛らしいのね…何処か知らぬ国へ旅に来た気分

聞いた身ながらメニューを決めかねてしまうわ
咖喱の香りはつい誘われてしまうのが不思議ね
悩んで、骸骨のアイスクリンと紅茶を
意外と怖…でも美味しい
あなたのものも良い香り
今年の仮装はアイスのお姫様を気取るの
召上がる?なんて冗談めかし
それは残念…けれど夜闇の主のようで、きっと素敵だわ

そう、トリックオアトリート
問いかけて、甘いアイスをお裾分け
悪戯を選んだ彼の手を拝借して唇や頬を寄せ悪戯に笑い
…もう少し甘えてもいい?



 こつりこつりと二人で刻む足音は行き交う人々の賑わいにすぐとけていくけれど、華火の余韻は千隼の心に灯ったまま。繋いだ手は離さずに、「あった」とカフェーの看板を見付けた梟示を見上げる。
「カフェーでは甘味と軽食、梟示はどちらにする?」
「屋台を覗かなかったから悩むところだね。千隼はもう決まったかい?」
 そう問いかけ微笑んだ梟示も繋いだ手を離さない。楽しみだと落ちた呟きに、ええ、と微笑む囁きが添い――カフェーへ入った二人を、ハロウィンの魔法にかかったカフェーが出迎える。
 優雅さを失わずてきぱきと働きまわる女給たちは、妖怪に魔物に妖精に玩具と、訪れた客に負けないくらいの多種族っぷり。翼や尻尾、角もあってと、席へ案内された後でもつい目で追ってしまう。
「愛らしいのね……何処か知らぬ国へ旅に来た気分」
「ああ。女給さんの御召物やカトラリーまで、何処もハロウィン一色で楽しいものだ」
 お冷に軽く口をつければ、きゅむっと目を閉じている風船お化け氷がカラコロ揺れる。
 ――さて。ここへ来る前に甘味と軽食のどちらにするかと尋ねたのは千隼だけれど。
「決められたかい?」
 決めかねている千隼の視線を独り占めしていたお品書きが、梟示の指先でくい、と傾けられる。
「……あなたは?」
 自分とお品書きを行き来する橙色に梟示は静かに笑み、そうだね、と自分の手前に置いていたお品書きの一箇所を指差した。示したのは咖喱――から、頁をぱらりと捲って甘味の頁へ。
「咖喱の香りは食欲をそそるが、それ以上に誘われたホットケーキと珈琲かな」
 ――そう。誰かが注文した咖喱が近くを通る度に素晴らしい香りが漂うものだから、千隼はつい不思議な咖喱魔力に誘われてしまいそうになる。
 けれどそんな困難をようやく乗り越えれば、冷気のカーテンをふわふわ広げていく骸骨アイスクリンが紅茶と共にお目見えして――そっと器を回転させれば、とろり崩れ行く黄金蜘蛛の巣を生地と共に味わおうとしていた梟示の目が、ぱちりと瞬きを挟んでかすかに笑う。
「ふふ、そちらのアイスは中々本格派だ」
「あなたのものも良い香り」
 骸骨の向きを戻せばチョココインが嵌った面は意外と怖い。けれど匙で片目を頂戴してしまえば、口の中に美味しさが訪れるばかり。次の一口に蝙蝠クッキーも載せて触れるのは今年のハロウィンのことだ。
「今年の仮装はアイスのお姫様を気取るの」
「仮装もかい? 愛らしいだろうね……ひんやり冷たいのかな」
 咖喱を食べる度にじわりと灯るスパイスの熱は、たちまち冷やされてしまうのだろうか。どうなのかなと笑む眼差しに、なら、と橙が細められ――蝙蝠クッキーと冷たく甘い頭蓋は口の中へ。
「……召し上がる?」
「美味しそうだが残念だよ。今年は赤い葡萄酒が主食の仮装だから」
「それは残念……けれど夜闇の主のようで、きっと素敵だわ」
 冗談めかした囁きに返されたものは、笑顔とセットの冗談ひとつ。
 それから――、
「トリック・オア・トリート」
 千隼の問いかけと共に差し出されたお裾分け、段々と形をなくしつつある骸骨アイスクリン一口分に、梟示は「おや、」と目を瞬かせるも、それではと蕩ける黄金の巣を被ったホットケーキを一口分差し出した。バターも染みたそれが美味しいことはもう知っているけれど、きっとと思うのだ。
「アイスにはよく合うと思うよ」
「ふふ、嬉しいわ」
「ああ、でも……どうしたものかな」
「?」
 悪戯と菓子。君から賜るのであればどちらも魅力的だがと囁く様は、今年の装いに変わる前から夜闇よりやって来た王のよう。
 梟示はテーブルの上へと載せた空いている方の手を、つう、と千隼の方へ寄せて囁いた。魅力的な問いかけに、答えを返さなくては。
「トリート」
 甘く美味しい甘味はあるけれど、偶には此方を選んだっていい。なぜなら何方もきっと甘いには違いなく――悪戯を選んだその手に細い指先がそっと重なり、覗いていた橙の目が静かに閉じられていく。
 唇へ。頬へ。
 千隼は拝借した手を寄せると静かに瞼を開いて、ちらり。梟示を見ると悪戯に笑った。悪戯か菓子か。その問いかけをしたのは先程の一回だけ。けれど偶にはと選ばれた悪戯を終わりにするには、この温もりはあまりにも離れがたいから。
「……もう少し甘えてもいい?」
「姫君がお望みとあらば」
 つられ笑った梟示の手が千隼の頬を撫でる。
 悪戯と菓子。何方にも満ちる甘さを、今は二人揃って享受しよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

太宰・寿
【ミモザ】
素敵な店内に、女給さん
テーブルに並ぶ何もかも可愛くて
きょろきょろと忙しなく視線を移してしまう

うん、楽しい!
子どもっぽいかなぁって、少し恥ずかしくなる
英の方がいつも落ち着いてるよね…
ありがとう。何にしようかな
メニューを受け取って悩みつつ

じゃあ、私はサンドウィッチに紅茶にしよっと
デザートは『魔女の使い魔カステイラ』と『骸骨アイスクリン』に『魔界軍大集合クッキー』も
英の言葉に甘えて頼むけど呆れてないかなぁとか…いつもより気になってしまう
お料理が届いたら早速頂くけれど
手を動かすたびに視界に入る指輪が面映くて百面相してしまう
うぅ…あっ美味しい…(ほわ

もちろん!カステラ好き?
そっかぁ、美味しいよ


花房・英
【ミモザ】
席についても落ち着きなく店内を見回す姿に自然と表情が和らぐ

楽しい?
それならよかった
ほら、メニュー。食べたいもの決めなよ

俺はカレーにしよ、中辛で
甘いのは寿が食べたいもの頼んだらいい
食べきれないのあれば貰うから
…めちゃくちゃ頼むな…と思うけど黙ってる
前みたいに呆れた、みたいな気持ちじゃないのが変な感じ
寿、なんか今日いつも以上に落ち着きなくないか?
時々挙動不審な寿の様子に、なにしてんだろと思いながらカレーを食べる

これ、食べてもいい?
別に。寿が美味しそうに食べるから、気になっただけ
寿のせいで味覚変わってきたかも
甘いもの嫌いじゃなかったけど、最近は割と好きだな
…量は少しでいいけど



 現代地球とは違う建築様式で彩られたカフェーの中。袴にフリルのエプロンという普段の装いに、ハロウィンの仮装も加わった女給たち。テーブルの上に並ぶ全ても可愛らしいものだから、カフェーに入ってからずっと寿の視線はきょろきょろと忙しない。
 料理を運ぶ女給の腰にある銀色ゼンマイ。ふんわりなだらかなラインを描くオムレツに書かれていた、ちらっと見えたケチャップ呪文。水を冷たく保つ風船お化けたちの表情。
 次々に移っていく視線を黙って追っていた英は、店内にあるもの全てを見回す姿に自然と表情を和らげていて。
「楽しい?」
「うん、楽しい!」
 迷いなく答えてから寿はハッとして口を閉じる。今のは――子供っぽいかなぁ。少し恥ずかしくて、お冷を飲もうかなという風を装いながら英から視線を逸していく。
「それならよかった」
「う……英の方がいつも落ち着いてるよね……」
「俺の分まで寿が楽しんでるからじゃない? ほら、メニュー。食べたいもの決めなよ」
「ありがとう。何にしようかな……あ、これ美味しそう。あ、でも、こっちも……」
 受け取ったお品書きに載っているハロウィン仕様の料理は、どれもこれも食べてみたい魔法ばかり放っている。うーん、と寿が悩む間に、英は普段と変わらない決断力を発揮する。
「俺はカレーの中辛」
「もう決まったの!? 待ってね、私も決めるから……! …………え、えーっと……」
「甘いのは寿が食べたいもの頼んだらいい。食べきれないのあれば貰うから」
 途端、ぱっと笑顔が輝いた。嬉しい。やった。そんな感情でいっぱいの笑顔に英の表情がまた少しだけ和らいで、その向かいで寿は満面の笑みで礼を言うと、ぱっと手を挙げ女給を呼ぶ。
「お待たせ致しました。ご注文お伺い致します」
「サンドウイッチと紅茶お願いします。それとデザートに『魔女の使い魔カステイラ』と『骸骨アイスクリン』に『魔界軍大集合クッキー』も。あとカレーの中辛を」
「畏まりました」
 女給が礼をして去れば万事解決、後は待つのみと寿は満足げにほっと一息ついて――ハッ! と息を呑んだ。英の言葉に甘えて食べたいものを頼んでしまった。
(「呆れてないかなぁ」)
 なぜだかいつもより英のことが気になってしまう。再びお冷を飲むフリ作戦でさり気なく見れば、英はいつも通り――に見えた。気にされていた英の胸の内はというと。
(「……めちゃくちゃ頼んでたな……」)
 そう思うも黙っていたのだった。同時に、以前のように呆れたといった類の気持ちでないことが変に思えて、しかしそれは不快ではなくて。何でだろうなと考えてみるものの、暫くして料理が届けば思考はそこで一時停止となる。
 寿も同じく“気になる”が途切れたのだけれど、サンドウイッチの肉球に笑って頂きますと食べて、うーん美味しいともぐもぐして。紅茶も味わって。しかし手を動かす度にキラリと視界に入る指輪が、面映い。
「うぅ……あっ美味しい……」
 何とも言えないふわふにゃとした気持ちと、サンドウイッチにカステイラ、アイスクリンやクッキーの美味しさで、ほわ、と広がる幸せ。行ったり来たりする心はそのまま百面相となって現れており――それはハロウィン仕様の咖喱ライスを食べる英にバッチリ見られていた。
(「なんか今日いつも以上に落ち着きなくないか? なにしてんだろ」)
 しかし、百面相となって現れても時々挟まる挙動不審の理由は寿にしかわからない。英は不思議に思いながらスパイスの聞いた咖喱を、花形人参、豚肉、白米と一緒に掬って食べて。
「なあ。これ、食べてもいい?」
 尋ねたのはウインクしているカステイラだ。次はどのクッキーにしようかなと考えていた寿が、もちろん! と声を弾ませる。
「カステラ好き?」
「別に。寿が美味しそうに食べるから、気になっただけ」
「そっかぁ、美味しいよ」
 寄せられた皿の上、カステイラ猫の片耳にフォークを刺して貰った一口分は、ふわっとやわらかで温かくて。そして。
「……美味しい」
「でしょ! ふふ。他のも美味しいよ」
 皿ごと少しだけ寄せられた軽食と甘味に、英は表情を変えずに手を伸ばす。
 何というか――寿のせいで味覚が変わってきたかもしれない。元々甘い物は嫌いではなかったのが、最近は“割と好き”になってきていた。ただし。
(「……量は少しでいいけど」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎹・たから
【たかとわ】
仮装のまま影朧と三人で
一緒にお食事を

…杜環子、困りました(メニュー開き
どれもきっと素敵な味
食後のデザートも魅力的で
迷ってしまって決まりません
あなたはどうですか?(影朧にメニュー見せ

なんと、三等分…(ハッ
杜環子はとても頭がいいですね
ではたから、オムレツにしたいです

オムレツをふぅふぅ冷まし
慎重にいただきます
たから、猫舌なのです
やわらかくてとろとろです(もきゅ
二人も食べてみてください
サンドイッチはしっとりふっくら

これが、三段ホットケーキ…!
ふあふあつやつやです
蜂蜜とメープル両方なんて
たから、やったことありません…
アイスクリンと一緒に食べれば
更に幸せいっぱい

影朧のあなたも
幸せでしょうか


壽春・杜環子
【たかとわ】
仮装のまま三人一緒

ふむ……すーごい素敵な鏡のわたくしがお告げを一つ(手のマスクで目元を隠して
三人居れば胃袋みっつ。両方三等分にすればよいのです――!(目をピカッ

わたくしサンドウィッチを
たから様もあなたも、一緒に食べましょう?
卵焼きってサンドウィッチにしても良かったのですね……!初めて知りました!

すごい
すごいですオムレツ
ぜんっぜん卵焼きと違います……!!
うふふ。ふわとろおいしい……

ホットケーキはやはり三段でしょう。なんたって一人一枚ですもの!
蜂蜜もいいけれど、メープルシロップも気になる……
掛けますか、両方。……あわわわバターの塩気がっ、塩気が罪深いっ

影朧が笑っていたら喜ぶなら、何より



 白雪姫と最強の魔法の鏡。二人は南瓜頭の少年紳士も連れて、三人仲良くルンルンわいわいとカフェーを訪れた――のだけれど。
「……杜環子、困りました」
 杜環子と少年の視線が向く中、たからは軽食と甘味の頁の行き来を繰り返す。載っているものはどれもきっと素敵な味だろう。先に味わっている周囲を見ればわかる。それだけに食後のデザートも魅力的で――。
「迷ってしまって決まりません。あなたはどうですか?」
『カレーライスの甘いの。でもね、この……クッキーも……』
 困りましたね。困ったね。
 どうしましょうか? どうしよ?
 迷える子羊となった二人を導ける者がいるとすれば、それはただ一人。
「ふむ……すーごい素敵な鏡のわたくしがお告げを一つ」
 すちゃっ。左手に持っていたマスクで目元を隠した杜環子に、たからと少年が熱い視線を向ける。お告げという神秘的な響き。難題解決の気配。二人が揃ってこくりと唾を飲んだ時、杜環子の右手が動く。人差し指、中指、薬指。ゆっくり立てられた数は、三。
「三人居れば胃袋みっつ。両方三等分にすればよいのです――!」
 ピカッ! お告げと共に光った目にたからがきゅっと目を瞑る。少年も肩をきゅっとしていたので、南瓜の下で目をきゅっとしていたに違いない。それはそれとして。
「なんと、三等分……」
 たからの目に輝きが満ちていく。やはり杜環子はとても頭がいい。鏡よ鏡と問われなくても、すーごい素敵な鏡の杜環子にかかれば魔法のように解決してしまう。
「ふふ」
 優雅にどやっとする杜環子に向けられる尊敬の眼差し二つは、うきうきルンルンとお品書きへ。少年は咖喱の甘口と魔界軍クッキーで決まりの様子。
「ではたから、オムレツにしたいです」
「わたくしサンドウィッチを。たから様もあなたも、一緒に食べましょう?」
『やったぁ! おねえちゃんたちもカレー食べよーね!』
 注文を済ませればメインのお楽しみはより魅力を増すもの。杜環子はお品書きを閉じる前に軽食の頁を見つめ、嬉しい新発見に胸を高鳴らす。
「卵焼きってサンドウィッチにしても良かったのですね……! 初めて知りました!」
 注文した品々がテーブルへ降臨したなら、高鳴りはキラキラ眩しいときめきへと華麗なる変身を遂げた。三人はうっとりと吐息をこぼし、「いただきます」。声を揃え、一緒に配膳してもらった皿へと仲良く分けていく。
 とろとろ中身が覗いたオムレツから昇る湯気は出来たての証。しかしたからは掬った一口分をじっと見つめた。ちなみに書かれていた呪文は難解で全く読めなかった。
『どうしたの?』
「たから、猫舌なのです」
『そっかぁ。じゃあ、ふぅふぅだ』
「そうです。美味しく楽しむには欠かせません」
 ――ということでふぅふぅ冷ますこと数回。杜環子と少年が見守る中、オムレツがつるりとたからの口内に運ばれると、たからの双眸からぱああっと光が散った。
「やわらかくて(もきゅ)とろとろです(もきゅもきゅ)」
 玉子の優しくまろやかな甘味と、絶妙な焼き加減が織りなす食感。これはとにもかくにも食べてほしくてたまらなくなってしまう。どうぞどうぞと促され、杜環子は少年と顔を見合わせた後にぱくっと食べた。そして。
「――……!」
『んー!』
 仲良くキラキラを湛える双眸。ほのかに染まる頬。少年は夢中で頬張り、杜環子の唇からは、すごい、と囁きがこぼれ落ちていく。
「すごいですオムレツ。ぜんっぜん卵焼きと違います……!!」
「美味しいですか、杜環子」
「ええ……! うふふ。ふわとろおいしい……さあさあ、次はお二人の番ですよ。サンドウィッチは如何です?」
 頂きますと食めばしっとりふっくら生地に受け止められ、贅沢に厚く美味しい玉子焼きで幸せがぽんっと膨らむよう。そこからふあふあつやつや三段ホットケーキへと向かえばまるで夢心地。
 一人一枚で楽しみましょうという杜環子の言葉には、ゆっくり蕩けていく黄金蜘蛛の巣も含まれていた。贅沢に一枚ずつ分けて――ぴたり。三人はあることに気付いてしまう。
 蜂蜜で満たされた注ぎ口のある小瓶と、メープルシロップでいっぱいの陶器の小瓶。配膳時に此方もどうぞと置かれたものだ。
「蜂蜜とメープル両方なんて、たから、やったことありません……」
『僕も……』
「掛けますか、両方」
 そんな難関も凄くて素敵な鏡・杜環子にかかればこの通り。
 ただし。
「……あわわわバターの塩気がっ、塩気が罪深いっ」
『んー!』
「凄いです、アイスクリンと一緒に食べてみて下さい」
「まあ! たから様、天才ですね?」
 早速試せばジタバタしたくなるくらいの幸せが更に広がって――、
『ねえねえ。おいしいね、おいしいね!』
 南瓜頭の中。くり抜かれて出来た目や口の奥にも、ぽかぽかな幸せ笑顔が咲いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ

アドリブ歓迎
仮装は一章同様

カフェの女給の格好に軽く見惚れ
所々にあるハロウィン仕様に微笑

細かい所まで凝ってるなァ
氷がお化けになってら

サンドイッチとオムレツ注文
美味な味を堪能

オムレツもおどろおどろしいぜ…
ン?気になるか
食べてみ(サンドイッチを渡し
肉球の痕が残ってる
手伝う黒猫を想像したら可愛いなァ
ハハ、張り合ってる?

フィッダのは…見るだけで胸焼けしちまいそう
それわざと聞いてるかー?
俺は食わねェっつの
…(オムレツ食べてたスプーン渡し
ハイハイ、お前もあーんしたかったのな(ぱく

(友達の定義が可笑しいこの関係
その目は
謂うならば
幼かった俺を彷彿とさせ
主に向けた眼差しとよく似ていて)

(友達っつーより
親子、か)


フィッダ・ヨクセム


仮装:南瓜SD(人姿で着込む狛犬服)

ハロウィンな雰囲気で帝都がこうも変わるモンなんだな
可愛らしさと物珍しさに驚きがたくさん
フォークまで?すげェな、徹底的だ

注文はホットケーキを三段で
とろおり甘さに釣られたい

なあくろそれ何食べてんの?凄い造形だけど
…うん?欲しいに聞こえた?
(遠慮なく)…!さんどいっち、うまい…(もぐもぐ)
俺様の肉球すたんぷならいつでもくれてやるぞ

俺の一口くらい、食べる?
ふかふか、あまあま
(当然わざと)
えー!…じャあスプーン貸せよ、なあ
甘いわけねェモン(オムレツ)ならいいだろ、なあ(じぃ)
へへへェ、くろのそういうトコ、マジリスペクトだわ(はいあーん?)

(傍に居るはとても、楽しい)



 サクラミラージュといえばで浮かぶものは色々あるのだが、自分が知るサクラミラージュと今のサクラミラージュは、同じ世界でありながら色々違うのだとフィッダは感じていた。
 目の前に広げているお品書き。カフェーの中を動き回る女給たち。
 それから、自分たちと同じ客である周りの人々も。
「ハロウィンな雰囲気で帝都がこうも変わるモンなんだな」
 客側もカフェー側もハロウィンを楽しんでいる今、フィッダの視界には可愛らしさと物珍しさから来る驚きが溢れている。注文した物が来るのを待つ間、元々置かれていたカトラリー入れに手を伸ばせば、そこに収まっている物も非日常の装いで。
「フォークまで? すげェな、徹底的だ」
 全くだとクロウは無言で頷き示す。色違いの目は各々の仮装を添えた女給たちに注がれた後、カフェー内各所にあるハロウィン仕様を見て静かに笑んだ。汗をかき始めたお冷に手を伸ばせば、中の氷が踊るように揺らぐ。
「細かい所まで凝ってるなァ。氷がお化けになってら」
「うわ、マジだ。……ん? くろの氷と俺の氷、顔が違わねェ?」
「あ? ……ここまで凝ってンのかよ」
 まさか隠し要素の如く他にもハロウィン仕様が?
 そんな可能性に思い至ったそこへ丁度良く運ばれてきたのは、生地とバターの香りが一つに溶け合いとろおり甘く香る三段ホットケーキに、サンドウイッチとふるふる揺れるオムレツだ。
 折角の出来たて、蒲公英色ドームの玉子が冷えてしまう前にとクロウはスプーンを手に取って――ぴたり。フォークを刺しナイフを入れる前に思わず半目で見てしまうのは、表面に書かれた魔法陣だ。
(「オムレツもおどろおどろしいぜ……凄まじいプロ意識だな」)
 かなり細かく、そしてそれらしく書かれている。先端が相当細く鋭いだろう絞り袋を想像しながら食べたオムレツは、おどろおどろしさをつい忘れてしまう美味しさ。サンドウイッチの方にも玉子はいて、ではそちらはと“がぶり”。
(「お。こっちは和風か」)
 すると、それぞれを堪能する黒豹に狛犬の視線がじいっと向いて。
「なあくろそれ何食べてんの? 凄い造形だけど」
「ン? 気になるか。食べてみ」
 すぐに渡されたサンドウイッチにフィッダの目が少しばかり丸くなる。もしや“欲しい”に聞こえたのだろうか? まあいいか食いもンだしとフィッダは即切り替え、そンじゃあと遠慮なくかぶりついた。
「……! さんどいっち、うまい……」
 貰った大きな一口分をしっかり噛んで味わっていると、自分の手元――サンドウイッチを見たクロウがふは、と笑った。何だと首を傾げると、クロウの指が掴んでいるサンドウイッチを示す。
「肉球の痕が残ってる。手伝う黒猫を想像したら可愛いなァ」
「俺様の肉球すたんぷならいつでもくれてやるぞ」
「ハハ、張り合ってる?」
 さて。どうだろう。
 狛犬はニヤリと楽しそうに笑うのみ。サンドウイッチごちそーさんと言って、いそいそうきうきという様子でホットケーキを食べ始める。バターと蜂蜜製蜘蛛の巣がとろりと生地に染みたそれからクロウは視線を外した。
(「見るだけで胸焼けしちまいそうだ」)
 が、しかし。
「くろ。俺の一口くらい、食べる? ふかふかで、あまあまだぞ」
「それわざと聞いてるかー? 俺は食わねェっつの」
 ジロリと向けられた視線に、しかしフィッダは大きな声で「えー!」と不服顔だ。――まあ、当然わざとなのだが。
「じャあスプーン貸せよ、なあ。甘いわけねェモンならいいだろ、なあ」
 じぃっと向けられる視線とこちらを呼ぶセットに、クロウはオムレツを食べるのに使っていたスプーンを渡す。
「へへへェ、くろのそういうトコ、マジリスペクトだわ」
 さっとスプーンで掬われたのは自分が注文したオムレツで、それはそのままクロウの口元へ差し出された。――つまり。
「ハイハイ、お前もあーんしたかったのな」
 はいあーん、と差し出した一口。ぱく、と食べられた一口。じゃれ合うような光景が友達の定義の可笑しさも抱えているなど、周りの者は誰も思わないだろう。クロウの目に映るフィッダは、傍に居ることの楽しさを笑顔として浮かべている。その、目が。
(「何でだろうなァ」)
 あれは、幼少期の自分を彷彿とさせる。自分が主に向けた眼差しとよく似ている。
 それはまるで――。
(「友達っつーより。親子、か」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

1章と同じ仮装

すごい感じのよさげなカフェーだな
てか女給さんの仮装もすげぇ
氷しげしげ
…凝ってるな?

瑠碧何にする?
やっぱアイスか
俺咖喱食べてもいい?中辛で
瑠碧も少し食う?
ホットケーキとカステイラも旨そう…
瑠碧がホットケーキなら俺カステイラにしよ
あと飲み物…あーお茶で

うーんやっぱ咖喱は食欲誘うな!
おおカステイラの猫も愛嬌ある顔してるぜ
写メりてぇ
匙に星や花の野菜毎掬い
瑠碧あーん
少し冷ましてから差出し
どう?
良かった
戸惑う様子も可愛くて満足げに笑う
うーん肉ほろっほろ
肉も食う?
アイス貰い
めっちゃ旨
咖喱とアイス絶妙だぜ
瑠碧カステイラとホットケーキもちょっと交換しよ

うーん旨かった
楽しくて美味い
最高だな


泉宮・瑠碧
【月風】

1章と同じ仮装

はい、今日は勿論ですが
普段も素敵なカフェーなのでしょうね
…動物耳の方とは、私達と少しお仲間?
私もお水の氷をまじまじ
…風船お化けです

私は紅茶と…
骸骨アイスクリンとホットケーキ一段で
あと、アイスの目はチョコが良いです
咖喱は理玖のお好きに
では、一口ずつ交換ですね
カステイラも、美味しそうです

理玖、咖喱好きですからね、とほのぼの
アイスもホットケーキも凝ってます…
そして美味しい
…カステイラの猫、可愛い…
ふぇ?
あ、あーん…
普段は私からよくするので
逆だと羞恥と戸惑いが少し
…美味しい、です
理玖もアイスからどうぞ、はい、あーん
お肉は遠慮します…

紅茶を手に一息
美味しくて、イベント感も満載ですね



「すごい感じのよさげなカフェーだな。てか女給さんの仮装もすげぇ」
「はい、今日は勿論ですが普段も素敵なカフェーなのでしょうね」
 カフェーに入った時に感じた華やかさ、覚えた感動。それらは案内された席に落ち着いてからじわりじわりと染み込むよう。動物耳を着けている女給は自分たちの仲間にも見えてくる。
 そんな大正浪漫とハロウィンが融合したカフェーは、理玖と瑠碧を驚かせるものをまだまだ秘めていた。
「……凝ってるな?」
「……風船お化けです」
 しげしげ、まじまじ。見つめられた風船お化けな氷が少し溶けたのか。カランと立てた心地良い音を合図に、そうだ、と理玖はお品書きを広げ瑠碧の方へ。カフェーに来たからにはここのハロウィン料理を味わいたいところ。
「瑠碧何にする?」
「私は紅茶と……骸骨アイスクリンとホットケーキ一段で。あと、アイスの目はチョコが良いです」
「やっぱアイスか。俺咖喱食べてもいい? 中辛で」
「理玖のお好きに」
 予想していた通りのチョイス。わくわくとした様で求められた許可。二人は穏やかな笑顔を交えながら相談を進めていき、一口ずつ交換しようと纏まった時。瑠碧の目が静かな煌めきを浮かべ視線を注ぐのは。
「カステイラも、美味しそうです」
「……よし、瑠碧がホットケーキなら俺カステイラにしよ。あと飲み物……あーお茶で」
 そうして決まった二人の注文はつつがなく女給に伝えられ、女給から厨房へと届けられ――暫くして、「お待たせ致しました」と優雅な声と共に今だけ味わえる品々が届けば、ふんわりと立ち上った香りが二人の鼻をくすぐった。
「うーんやっぱ咖喱は食欲誘うな!」
「理玖、咖喱好きですからね」
 一口食べた瞬間浮かべた笑顔に瑠碧もほのぼのと笑み、飾りに至るまで凝った骸骨アイスクリンとホットケーキに目を輝かせる。蜂蜜製の蜘蛛の巣をナイフで少し押すとパキリと割れ、バターと共に狐色の生地へと沈んで、蕩けて。
「美味しい……カステイラの猫も、可愛い……」
「カステイラの猫も愛嬌ある顔してるぜ」
 ニャンッ、と声が聞こえてきそうな表情は、つぶらな瞳と笑顔のウインクだ。理玖はフォークを入れる前にとスマホを取り出し、パシャリ。上手く撮れたそれをしっかり瑠碧に見せて、食べる前に保存出来たカステイラ猫の可愛らしさを共に味わった。
 ――味わうと言えば。
「瑠碧、あーん」
「ふぇ?」
 匙で掬われ、少し冷ましてから差し出された咖喱一口分。
 星や花の形をした、ルゥをとろりと纏った野菜に瑠碧の目が丸くなる。あーん、という言葉と、差し出された匙に可愛らしい野菜たち。それから、ほら、と笑う理玖の笑顔。普段は自分からよくしていることが逆になった途端、少しの羞恥と戸惑いで白い頬が朱に染まった。
「あ、あーん……」
「どう?」
「……美味しい、です」
「良かった」
 戸惑う様子も可愛いな、なんて言ったら困らせてしまうかも。それか、もっと恥ずかしがってしまうしれない。理玖は湧き上がった愛おしさを胸の中にしまったまま満足気に笑い、肉とルゥをほかほかのご飯と共に掬って食べた。
 んん、と思わず目を瞑り笑ってしまう。
 ああ、咖喱に入っている肉は何でこんなに美味いのか。
「うーん肉ほろっほろ。肉も食う?」
 いる? と尋ねて掬った一口分に、瑠碧はゆるゆると首を振りながらアイスクリンに匙を入れた。果物は――まずは無しにして、アイスクリンの味のみを楽しめるようにしたそれを、今度か自分から。
「理玖もアイスからどうぞ。はい、あーん」
「サンキュ。……ん! めっちゃ旨。咖喱とアイス絶妙だぜ」
「そう、なんですか? 咖喱、凄いですね……」
 シチューに加えられるミルクのようなものだろうか。アイスクリンの可能性に驚いていると、あのさ、と理玖の手がカステイラの皿をそうっと押して中央に寄せてくる。
「瑠碧、カステイラとホットケーキもちょっと交換しよ」
「……ふふ。はい」
 一口。二口。それぞれが選んだ“美味しい”を少しずつ交換すれば、交換した分だけ笑顔と美味しい幸せも交わり、心身共にあたたかく満たされていく。やがて皿の上は空っぽになって――。
「うーん旨かった」
「美味しくて、イベント感も満載ですね」
「ああ。楽しくて美味い。最高だな」
 ご馳走様の瞬間も笑顔はふたつ。絶えぬまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
リュカさんf02586と
去年の南瓜SD仮装で

見て下さい、お冷もハロウィン仕様ですよ!
料理にも期待が膨らみますね
リュカさんの味覚を鍛える為にも沢山頼みましょう
そっちは不便してなくても私は不憫している事が多いのでね!(黒焦げをよく食わされる

咖喱ライスもサンドウィッチも美味しいですね!
オムレツも絶品
ホットケーキとアイスも食べません?
ではカステラも頼みましょう。ふたつ
クッキーは買って帰る方向で

ええ、どれも美味しいです!
羨ましいですか、わかりますよ。ハレルヤは全てに褒められる至高の存在ですからね
ハレルヤへの憧憬は一生離れないでしょうが懸命に生きる事で多少は(砂糖を投入されて
いや流石に入れ過ぎですよ、コレ


リュカ・エンキアンサス
晴夜f00145お兄さんと
仮装は今年ので

うん、なんていうか凝ってるねえ
執念を感じる

料理に期待…
うんまあ(なんだかお兄さんが張り切っている…
味覚は、大雑把にはわかるから不便はしてないよ?
(そして雑な料理を作ってお兄さんを苦しめている自覚はない

まあうん、美味しい(というか、楽しい
それも美味しい
毒以外なら何でも食べるよ。貰う貰う
食いだめする
…っていうかお兄さん美味しそうに食べるね
美味しい?
…そう
あんまり思わなかったけど、今日はちょっとお兄さんが羨ましいな
いや、ほめては…ううん。まあ褒めてるのか。褒めてますけど

……
うるさい(お兄さんの飲み物に砂糖を4つ投入した
砂糖は脳がすっきりしていいらしいよ



 サクラミラージュへ運んでもらい、白亜の館を訪れ、館内に入っていざカフェーへ。
 女給に出迎えられる前、外を歩いていた時からそうだったのだけれど――大正浪漫とハロウィンのタッグは、カフェーに入っても変わらないどころか存在感を増していた。
「へえ。……おや!」
 注文を済ませてからずっとあちこち楽しそうに見ていたキョンシーの――夏目・晴夜(不夜狼・f00145)の手がお冷のグラスを取りくるくると傾ける。からら、から、と中の氷がグラスと触れて気持ちのいい音を立て始めた。
「見て下さい、お冷もハロウィン仕様ですよ!」
 向かいに座っていた悪魔軍人の少年もとい、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)は弾む声へと「うん」といつも通りの落ち着いた声で返す。
「なんていうか凝ってるねえ。執念を感じる」
「執念……まあそうですね、お冷の氷までハロウィン仕様ですし」
 これは料理にも期待が膨らみますね! なぜだか晴夜が不敵に笑うのを見て、リュカは執念といえば晴夜お兄さんのメイクもなかなかだけど、と思いつつ口にはしない。自分の味覚を鍛える為にも沢山頼みましょう、なんて言葉も飛び出したけれど。
「うんまあ」
 晴夜の言っていることは理解したけれど、張り切る理由がよくわからない。
「味覚は、大雑把にはわかるから不便はしてないよ?」
「そっちは不便してなくても私は不憫している事が多いのでね! 黒焦げの物体をこの晴夜に食わせるなんて……いつぞやのパジャマパーティで食べさせられたアレですとか!」
「アレじゃなくて芋だよ」
 貴公~、と呼ぶ兵隊の幻覚は頭の中から追い出して消去したリュカだが、そこはしっかり訂正するのだった。しかし食べさせられた晴夜は、アレを芋と呼ぶのはと不満顔。とうに去った筈の苦さも思い出してしまいそうで――と、それを救ったのはハロウィン仕様の料理たちだ。
「咖喱ライスもサンドウィッチも美味しいですね! オムレツも絶品ですよ。どうです、リュカさん?」
「まあうん、美味しい」
 咖喱ライスは何かいい感じの香りがする。サンドウイッチは三種類あるのがいい。
 ――というか。楽しい、と思えるのだ。それはあからさまに表情には出ていないだろうに、同じ物を食べている晴夜は「そうでしょう、そうでしょう!」と満面の笑みを浮かべている。
「そのオムレツも。それも美味しいね」
「ではホットケーキとアイスも食べません?」
「毒以外なら何でも食べるよ。貰う貰う」
 食いだめすると添えたリュカに、晴夜が半眼になった。時期が時期だけに冬眠前のリス――いや、熊か。しかし味覚鍛錬はなかなか良い感じだ。今後自分が不憫しない為にもここで止めてはならない。晴夜は閉じていたお品書きを改めて開き、ふむふむと目を通す。
「ではカステラも頼みましょう。ふたつ。クッキーは買って帰る方向で」
 日持ちするクッキーは明日以降の鍛錬にも使えるだろう。それにクッキーは焼き菓子だ。焼くというのはこういうことですよと、より分かりやすく伝えられ――、
「……っていうか」
「何です?」
「お兄さん美味しそうに食べるね。美味しい?」
「ええ、どれも美味しいです!」
 に、と笑った紫の目がリュカを映し、真っ白な狼尾が機嫌の良さを宿してパタパタ揺れる。リュカは咖喱を口に入れながら視界に入る尻尾を見て、そう、と呟いた。その表情はいつものように淡々として大人びていたけれど。
「あんまり思わなかったけど、今日はちょっとお兄さんが羨ましいな」
 素直に伝えたそれに、晴夜の双眸がゆるりと細められた。
「羨ましいですか、わかりますよ。ハレルヤは全てに褒められる至高の存在ですからね」
「いや、ほめては……ううん。まあ褒めてるのか。褒めてますけど」
「ええ、ええ、わかっていますリュカさん」
「……」
「ハレルヤへの憧憬は一生離れないでしょうが懸命に生きる事で多少は」
「…………うるさい」

 ポト、トト、トッ

 問答無用で晴夜のお冷に投入された砂糖は四つ。四角い砂糖が水に落ちれば氷山のようになり――そしてそれは風船お化け氷と触れ合いながら、少しずつ水中に甘い欠片を降らしていく。ああ、まるで雪のようですね――じゃなくて。
「リュカさん」
「砂糖は脳がすっきりしていいらしいよ」
「いや流石に入れ過ぎですよ、コレ」
「塩も入れる?」
「何作る気ですかあなた!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

駒鳥・了
ガーちゃん(f23517)と!
オレちゃんは英国風の探偵衣装(絵無し
コート付きであったかいのがポイント
ガーちゃんのケープは綺麗だケド色味的に寒そうに見え…って、天然羽毛!
そーゆーの聞くと良いなあって思っちゃう!
別の苦労も多そうだけど

ココの世界、建物から何からオシャレだよねえ
不審者にならない程度に見てるケド
メニューが来たらそっちに食いつく
迷った結果カフェメニュー提案!
その方が帰りに寄り道しやすそーじゃん!
オレちゃんは『魔女の使い魔カステイラ』2つに骸骨アイスクリンも追加!
1つ目はフツーに食べて、2つ目にアイスクリンを載せて食べよ
えっガーちゃんくれんの?じゃあこっちも食べて!アイスものっける?


ハルア・ガーラント
アキさん(f17343)と一緒に

フード付きの淡い薄荷色のケープを身に着け、手には南瓜ランタンの仮装姿
意外と温かいんですよ、背中の天然羽毛もありますし
彼女の近くへ翼を広げます
アキさんは本格的且つ温かそうな探偵姿
快活な彼女に良く合う仮装はこの世界にも溶け込んでいて可愛い!

あちこちに視線を走らせるアキさんは仕草と仮装の相乗効果で更に可愛いです
わたしは紅茶とホットケーキを――2段で!

アキさんのカステラ2つの理由になるほどと納得
それならアキさん、ホットケーキにアイスもいいかも。2段ありますしどうぞ?
カステラとアイスもお礼を言っていただきます

スイーツとハロウィンを満喫しながら帰りの寄り道を話し合いたいな



 人々が交わす声。ナイフやフォークの、高く軽やかな音。窓の向こうからかすかに伝わる外の様子。カフェーを満たす音はなぜだか落ち着く心地良さ。そんなカフェーで、駒鳥・了(I, said the Rook・f17343)は「ガーちゃんさ、」とハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)に話しかけた。
「どうしました、『アキ』さん?」
「ガーちゃんの仮装さ、ケープ綺麗だケド寒くない? ヘーキ?」
 仮装。ぱちり、と瞬きをしたハルアが纏うのは、可憐な白レースで縁取った淡い薄荷色のケープだった。ハルアの隣には持ってきた南瓜ランタンもちょこんとあるけれど、明るい今、暗闇を照らす役目は休憩中だ。
「意外と温かいんですよ、背中の天然羽毛もありますし」
 ほら、とハルアは翼を広げてみせた。密集する羽根からなるふわふわ感に、アキはそっかぁ! と納得と安心の表情を浮かべる。
「天然羽毛良いなぁ」
 自分はコート付きの英国風の探偵衣装だから全く寒くないけれど、ハルアは自前の翼でも暖が取れる。ただ、天然羽毛なだけに別の苦労も多そうだな、なんて思うのだった。換毛期ってあんのかな? と頭の中にカレンダーが浮かんでしまう。
「ふふ。アキさんも良く似合ってますよ。元々この世界で活躍してる探偵さんみたい! 本格的且つ温かそうですよね。それに可愛い!」
「へへ、ありがとガーちゃん! オレちゃん嬉しー♪」
 にかっと笑う今は愛嬌ある少女にしか見えないのに、アキがじっと周りを見ていた時は「事件の捜査に来た」と言われたら「そうなんだ!」と信じてしまう雰囲気があった。
「しっかし、ココの世界、建物から何からオシャレだよねえ」
 近くを通り過ぎただけの建物。どんどん近くなる白亜の館。街灯。煉瓦塀。エレガントなデザインのフェンス。行き交う人々が纏う服に、ハロウィンの為だけの特別衣装。了が見たサクラミラージュの日本には、懐かしさの中に洗練されたものが宿っていた。
 このカフェーもそうだ。アキは不審者にならない程度にとあちこちに視線を走らせ――ハルアは仕草と仮装の相乗効果で更に可愛く見えるアキにニッコニコ。ん? と笑顔に気付いたアキだが、何気なく開いたお品書きに目を丸くする。
「こっちもオシャレじゃん! うわレイアウトも凝ってる……ガーちゃん、何にする?」
「そうですね……うーん」
 これもあれも美味しそう。でも全部は難しいような? そんな難題に名探偵アキは一つの糸口を見出した。
「ガーちゃんガーちゃん。ちょっと提案あるんだけどさ」
「何です?」
 アキがわざと小声でした提案とは、咖喱ライスやサンドウイッチといったメイン系ではなく、カフェーが誇るもう一つの花形である甘味系メニューだけを注文することだった。なぜなら。
「その方が帰りに寄り道しやすそーじゃん!」
「なるほど……!」
 では早速、と二人は女給を呼んでそれぞれのお目当てを注文する。悩みが解決した上に美味しい物がやって来るとなれば、心もお腹も楽しみでいっぱいになって準備は万端。
 お待たせ致しました、とアキの前には二つの『魔女の使い魔カステイラ』と『骸骨アイスクリン』が。ハルアの前には紅茶と厚みとふかふかを兼ね備えたホットケーキが二段がやって来て――。
「「いただきます!」」
 弾む声と共に甘い幸せが一気に花開く。
 アキは一つ目のカステイラを普通に食べ、温かなふわふわしっとりを堪能した後に今度は骸骨からもりっとアイスクリンを拝借して、載せて――ぱくっ。
「ん! 超美味しい!」
「それならアキさん、ホットケーキにアイスもいいかも。ニ段ありますしどうぞ?」
「えっガーちゃんくれんの? じゃあこっちも食べて!」
「わあ、いいんですか?」
「モチロン! アイスものっける?」
「はい! ありがとうございます、いただきます」
 ホットケーキとカステイラはそれぞれの前へとお引越し。出来たて甘味に冷たいアイスクリン。ふわふわほかほかに真っ白な冷たさがじんわり染みて――ああ、なんて美味。
「アキさん、帰りはどこに寄りましょうか?」
「んー、来る時に見かけた珈琲カップ看板のカフェーか、牛の顔が書いてあった食堂はどう? あっちも美味しそーなのあったじゃん」
「あ、気になりましたよねあそこ! どっちも行きません?」
「イイねイイね!」
 スイーツとハロウィン。
 二人一緒に過ごす美味しくて楽しいひとときは、まだまだ続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神楽木・由奈
【はぴぺい】
アドリブ歓迎

内装、綺麗だよね~! あたしもうっとりしちゃう!
ソフィアさんが刺繍に惹かれてる! この刺繍、凝ってるもんね! どうやって縫ったんだろ?
氷もかわいいよね! 素敵!

みゆさんが大きいホットケーキがいいみたいだし、みんなで分け合って食べようよ!
どれだけ大きいホットケーキが来るんだろ、楽しみ!

うわ、美味しそう! いただきまーす!
おいしいね、おいしい、おいしい!
ねっ、みゆさんもソフィアさんも、美味しいよね!

こんな風にみんなでシェアして一つの物を食べるのもいいね!
えへへ、幸せ~!(ほっぺたを抑える)


ソフィア・シュミット
【はぴぺい】
アドリブ歓迎

とっても綺麗でとーっとも楽しかったのです
ふわふわとした心地で移動すると内装に目を奪われます
すごく手が込んでいるのです
特にソファの刺繍が気になるので指でなぞってみます
ソフィア刺繍を刺すことがあるので、機会があったらそういう風にハンカチに刺して贈ってみたいのです
氷も見てください
とってもかわいい

さて何にしましょうと視線を交わします
そこでみゆさんの提案に乗り大きなホットケーキをお願いしましょうか
これはいわゆる、お友達とシェア、ですよね
是非しましょう

一口しておふたりと目を見合わせます
ホントに美味しいのです
こうして分け合えるのが嬉しい、時間も幸せも
またご一緒しましょ


音海・心結
【はぴぺい】
アドリブ歓迎

気分が高揚したまま店内に入るのです
あれもこれもと視線は移り
後ろ髪引かれる形で席につきますよ

此処に住みたいくらいかわゆいですね
ぜんぶぜんぶ、ぜーんぶっ
かわゆくて、センスを感じるのですっ

この場所に似合う食べ物は――
先にメニューを取り、捲り捲って手が止まる
……おっきなホットケーキ
ふわふわのアイスにデコレーションも凄いですよ
一人じゃ食べれなそうですけれど、三人なら

えへへ、美味しいですよ
美味しいのです~
みゆは手が止まりません
だって、だって
とっても美味しくて幸せだから
二人に精一杯の感謝の気持ちを込めてお礼をゆいます

それと、これからの約束も
また一緒に遊びに行きましょうね
ずっと友達です



「華火、とっても綺麗でとーっとも楽しかったのです」
「みゆ達の華火も、誰かの華火も、素敵でしたね」
「うんうん。あの光景、忘れられないな~♪」
 打ち上がった時の音。咲いた瞬間に覚えたもの。爽やかな秋空に舞う花びら。
 庭園でのことを思い返しながらカフェに入るその間も、三人の気分はふわふわぽかぽか。仮装姿の女給に出迎えられ席へと案内される中、心結も気分が高揚したままで、視線はあれもこれもと飛び回る蝶のように移って落ち着けず――席につくまで後ろ髪を引かれる形に。
「此処に住みたいくらいかわゆいですね……」
「綺麗だよね~! あたしもうっとりしちゃう! あ、照明も可愛い!」
 すとんっと座った由奈は頭上にある鈴蘭形の照明に気付き、ソフィアも二人と同じように周りを見ては目を奪われていた。どこも手が込んでいるとわかるが、特に気になったのはソファを彩る桜華の刺繍だ。
(「凄い……こういう風にハンカチに刺して贈ってみたいのです……」)
 ソファに刺繍をすることがあるからこそ、刺繍をじっくり見るその目には静かな情熱が浮かび――その様子に気付いた由奈も刺繍に目を向け、うわ凄い、と驚くばかり。
(「ソフィアさんが刺繍に惹かれるのわかるなぁ。この刺繍、凝ってるもんね! でもどうやって縫ったんだろう?」)
 華火、内装と少女たちの注目は楽しく移り、次の主役は水を冷やす風船お化けの氷。その形だけでなく、グラスを持てば音を立てて漂う様がまた可愛らしく、三人のトキメキは止まらない。
 じゃあじゃあ、ここで食べられる物も可愛くて素敵でセンスを感じる物なのでは?
 心結がサッとお品書きを開き、ソフィアが「さて何にしましょう」と覗き込む。由奈もどれどれと目を輝かせ、三人視線を交わしての相談タイムの始まりだ。
「むむ、この場所に似合う食べ物は――」
 ぱらり、ぱらり。頁を捲っていった心結の手がふいに止まる。
「……おっきなホットケーキ」
「蜂蜜で作った蜘蛛の巣が載ってるだなんて、面白いですね」
「これなんてどうですか? 三段にしたら一人じゃ食べれなそうですけれど、三人なら食べれると思うのですよ」
「いいね、みんなで分け合って食べようよ!」
 ちょっとばかり大きい可能性があるとしても、心結が大きいホットケーキがいいのなら由奈は迷わず賛成の笑顔を輝かす。ソフィアもこくりと頷いて――、
(「これはいわゆる、お友達とシェア、ですよね」)
 一緒に楽しんでいるからこそのイベント発生に、何だかワクワクしてしまう。
「是非しましょう」
「ふふり。決まりなのです」
「どれだけ大きいホットケーキが来るんだろ、楽しみ!」

 ――なんて話していたのが20分ほど前。
 待ちに待ったホットケーキはふんわり厚い狐色。中央に鎮座するバターは端からとろりと蕩け始めていて、狐色の生地にしっとりとした染みを広げつつあった。
 ホットケーキ全体を包むように煌めく蜂蜜製の蜘蛛の巣は、まるでレースのよう。それもまたバター同様に一部が熱で柔らかくなり始めていて、不思議な魔法にもかかっているように見えた。
 何よりも。
「うわ、美味しそう!」
 由奈が声を上げた通り、その見た目と、食べる前から漂う香りでもう美味しいのだ。
 けれど食べずに美味しかったね、なんてする乙女たちではなく。
「いただきまーす! ……んんっ! おいしいね、おいしい、おいしい!」
 ぱくっと一口食べた由奈の止まらない“おいしい”に、心結とソフィアはついつい吹き出した。けれど一緒に一口目を食べた二人もまた、口いっぱいに広がった味わいにほわわと笑顔になっている。
 ふふふと三人は笑い合った。けれどそれだけじゃあ物足りない。
「ねっ、みゆさんもソフィアさんも、美味しいよね!」
「はい。ホントに美味しいのですよ」
 これがお友達とシェア。美味しくて楽しくて、なんて幸せだろう。ソフィアは頬を染めながら二人と目を見合わせ、心結もまた、ホットケーキを頬張りながら目を輝かせていた。
「美味しいのです~」
 生地は甘く、ふかふかふわふわ、ほっかほか。そこに染み込んだバターと蜂蜜はじゅわっとジューシーで、一口食べた瞬間から素晴らしい甘じょっぱさが満ちていく。
 一瞬で気持ちがいっぱいになって生まれた“美味しい”を笑顔と言葉で交わせば、もっともっと増えていくようだった。
「こんな風にみんなでシェアして一つの物を食べるのもいいね! えへへ、幸せ~!」
 本当にほっぺたが落ちちゃいそう! 由奈は頬を押さえて満面の笑顔だ。出来れば両方の頬を押さえたいけれど、利き手は美味しいをシェアする幸せに取り掛かっていて忙しい。
「みゆ、手が止まりません」
 一口食べて、味わって、また一口食べてと何回も繰り返してしまう。
 だって、だって。
「とっても美味しくて、幸せだから」
 はふ、と幸せいっぱいの吐息をこぼした心結は「二人と一緒だからですね」と笑う。そして精一杯の感謝を籠めた礼の後に、大切なことをもう一つ。
「由奈、ソフィア。また一緒に遊びに行きましょうね。ずっと友達です」
「うん! いっぱい美味しい物食べたり、遊ぼうね!」
「はい。またご一緒しましょ」
 時間も、幸せも。
 この三人で分け合うからこそ、沢山の“嬉しい”や“幸せ”が芽吹いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸神櫻

かぁいくてわくわくしちゃうわね!
何にしようかしら
お腹すいたわ!

やっぱり、これよ!
咖喱ライス!
お野菜達までおめかししててかぁいらし
…むぅ…子供っぽいとか思ってないかしら?
でも辛いのは苦手だもの
カムイ…ええ…!そんな、辛口なんてっ……無茶しないで!
カッコつけたいお年頃の童みたいな顔してるわよ?
…そんな神様もかぁいらしいけれど

美味しい!と咖喱を堪能していれば…ほら!
カムイったら…
お水飲んで!

カムイはやっぱりパンケーキね!
食いしん坊さん
一口くれるの?ありがとう……分厚すぎない?

私は魔女の使い魔カステイラ
きっと気が利いて気立てがよく凛とした性格なの!よ!
ええ…私そんな?

…何度も言われると
照れるわ


朱赫七・カムイ
⛩神櫻

洒落たカフェーだ
それにどれも美味しそうだね
何を食べる?

咖喱ライスか…本当だ野菜が可愛い形をしている
可愛くてわくわくするね
サヨは甘口にするといい
サヨは口が柔いのだから
私は辛口にするよ
…サヨ…私は生まれて一年とはいえ童ではない
無理ではないし心配ないよ
このくら……カラッ……

大丈夫だよ、サヨ……なんともないから
次からは甘口にするからね

デザートはお楽しみのホットケーキだ
ふかふかで、甘くて美味しい
私はこれが好きなんだ
三段重ねにしてじっくり堪能しよう
サヨも食べる?食べさせてあげる

サヨのカステイラも可愛いね
私はその子は気まぐれな性格だと思う
サヨのように気まぐれで
ひらりひらり目が離せなくて
可愛い

ほら可愛い



 華火咲いた秋空の下、それぞれの花びらを合わせて一つにしたなら、桜の魔女と魔法使いが堪能するは浪漫とハロウィンがとけあったカフェーのひととき。
 桜華刺繍のソファーに二人が腰を下ろせば、秘密と神秘がたっぷりの魔女集会が始まるよう。くすくすと笑った櫻宵の手がグラスを取り、カララ、と氷の音色を響かせる。
「ねぇ見て、カムイ。氷までハロウィンだわ。かぁいくてわくわくしちゃうわね!」
「洒落たカフェーだ。それにどれも美味しそうだね」
「何を食べる?」
「何にしようかしら」
 開いたお品書きを前に、全く同じタイミングで紡がれた声。二人は顔を見合わせ破顔すると、どこか無邪気な彩を浮かべた目で同じ頁を見つめていく。
「お腹すいたわ! そういう時は……やっぱり、これよ! 咖喱ライス! ほら見て。お野菜達までおめかししててかぁいらし」
 櫻宵の指がぴしっと示した頁には、実物を写したようにリアルな絵がドドン。絵を担当した従業員は相当の腕前なのだろう。見ているだけで不思議とお腹が空いてくる。
「……本当だ、野菜が可愛い形をしている。可愛くてわくわくするね。甘口、中辛、辛口……サヨは甘口にするといい」
 櫻宵の口が柔いことを知るからこそ、カムイの言葉には優しさが満ちていたのだけれど。櫻宵は桜色の唇を不満げに尖らせた。
「……むぅ……子供っぽいとか思ってないかしら?」
「可愛らしいと思っているよ」
「もう! でも辛いのは苦手だもの。カムイは……」
「私は辛口にするよ」
「ええ……!」
 驚きのあまり櫻宵は息を呑んだ。手にしていたグラスの中で風船お化け氷が強めに音を立てる。い、今、カムイは辛口と言ったのかしら?
「そんな、辛口なんてっ……無茶しないで! この間一歳を迎えたばかりじゃない!」
 そう。カムイは見目こそ立派な成人男性だが、『朱赫七・カムイ』としての生は一年と少し。しかし、カムイの意思は強かった。目を細め、愛しい巫女の手を取る。
「……サヨ……私は生まれて一年とはいえ童ではない。無理ではないし心配ないよ」
「カッコつけたいお年頃の童みたいな顔してるわよ?」
「え?」
(「……そんな神様もかぁいらしいけれど」)
 大丈夫かしら、と心配する櫻宵をよそに、カムイはキリッと優雅に微笑みながら女給を呼び、注文を済ませた。そして香り立つスパイスの中にほのかな刺激も抱いた咖喱ライスが運ばれて。
「美味しい! どんなスパイスを使っているのかしら? 凄く深みがあるわ……!」
 人参や玉葱の甘みも加わった咖喱ライスは、いくらでもおかわり出来そうな美味しさ。櫻宵は愛らしい野菜も楽しみながら一口二口と堪能し、そしてカムイもまた――。
「このくら……カラッ……」
 果敢に辛口へと挑んでいたが残念ながら苦戦していた。白磁の顔に“辛い”から来る朱が差しまくっている。
「カムイったら……お水飲んで! 足りなかったら私のお水も飲んでいいから!」
「大丈夫だよ、サヨ……なんともないから。次からは甘口にするからね」
 そんな咖喱ライス戦線を乗り越えて訪れた甘味のひととき。カムイの前では、三段重ねのホットケーキが甘く豊かな香りをふわふわさせていた。ナイフとフォークを入れて黄金蜘蛛の巣をパキリ。続いて、狐色の生地にふかふかと受け止められながら切っていく。
 バターを満遍なく広げ、蜘蛛の巣も上に添えた最初の一口は、ふかふかで甘くて、美味しくて――ホットケーキが、もっと好きになる幸せで満ちていた。
 綻び咲くような笑みを浮かべ味わうカムイに、櫻宵も嬉しそうに笑む。
「カムイはやっぱりパンケーキね! かぁいらしい食いしん坊さん」
「サヨも食べる? 食べさせてあげる」
「一口くれるの? ありがとう……って分厚すぎない?」
「サヨにあげるのだからね。さ、あーん」
「あーん。……んん、美味しいわ!」
「サヨのカステイラも可愛いね」
 魔女の使い魔カステイラ。今日の仮装にぴったりの甘味には、どこか大人びた表情が描かれていた。そういえば一つずつ性格が違うという話だけれど。
「私はその子は気まぐれな性格だと思う」
「きっと気が利いて気立てがよく凛とした性格なの! よ!」
 そうかな、とカムイが微笑んだ。龍眼に可愛らしい使い魔が映る。
「その子はサヨのように気まぐれで。ひらりひらり目が離せなくて」
「ええ……私そんな?」
「それから、」
 可愛い。
 目の前の存在を映しての言葉に、魔女の目がぱちっと瞬いた。
「ほら可愛い」
「……何度も言われると、照れるわ」

 噫。桜魔法使いは心に魔法をかけるのがお上手ね――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

花弁を捕まえて動いてたらお腹空いちゃいましたね
何食べよっかな
やはりここは甘…(ほわわんと咖喱の香り)…咖喱ライスで!
アヤネさんはやっぱりお肉好きですね
あとで一口ずつ交換しましょ

そういえばさっきアヤネさんが「僕と同じ大学に進学」って言ってたけど
アヤネさんの大学ってどの位のレベルだっけ…?
アヤネさんの家から通えて私の頭で入れるアメリカの大学
…と考えてたけどアヤネさんの通う大学ってめっちゃレベル高くない?偏差値どのくらい?

あのぉひとつお聞きしますが
アヤネさんの通ってる大学ってレベルどのくらいでしたっけ?
ごっふ!
いえ、大丈夫です!思ったより咖喱が辛かったナ〜って

まだ時間あるし
勉強がんばろ…!


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

これは素敵な空間だ
蜘蛛やらお化けやらかわいいネ
こういう趣向は僕好みかも

綺麗な色のソファにすぽっと座り
ソヨゴも僕の横においでと手招き
一緒にメニューを選ぼう

カロリー優先!
育ち盛りだから仕方ないネ
じゃあ僕は肉たっぷりのサンドイッチを頼もうかな
黒猫の肉球かわいい

僕の大学のレベル?
名門校だからネ。世界で五本の指に入るくらいかな

ソヨゴ大丈夫?むせた?

日本と違って難問のある入学試験とかはないから安心して
ハードルは高いけど可能性はあるさ
猟兵の実績なんかもアピールしたらいいよ
世界を救うためにこの大学に入りたいですって

もちろん僕にできることならなんでも援助するともさ!

追加でホットケーキ三段重ね頼んじゃおう



 訪れたカフェーは、秋空と華火、そして秋色に染まった自然眩しい外に負けない魅力に溢れていた。店内を照らす灯りのデザインやテーブル、ソファーの色――カフェーの造りと内装を愛でるように視線巡らすアヤネの表情は、明るく楽しげな彩を宿している。
「蜘蛛やらお化けやらかわいいネ。こういう趣向は僕好みかも」
 そして、素敵な空間には素敵で大好きな兎さんが隣にいるともっといい。アヤネはソファへすぽっと腰を下ろすと、自分の隣をぽんぽんと叩きながら冬青を手招いた。
「僕の横においで。一緒にメニューを選ぼう」
「ふふ、それじゃあお邪魔します」
 アヤネの隣に冬青もすぽっと座り、二人一緒にお品書きを開いて覗き込む。軽食、甘味、飲み物。ハロウィン仕様のお品書きには、今だけのメニューが勢揃いしているけれど。
「花弁を捕まえて動いてたらお腹空いちゃいましたね。何食べよっかな」
「カロリー優先!」
「気にしないんですか?」
「育ち盛りだから仕方ないネ」
 それに、学習すること、学んだことを実行するにはカロリーを要する。
 にこっと笑うアヤネへ冬青は納得するも、やはりここは甘いもの――というそこへ、ほわわんと漂ってきたこの香りは――スパイス、野菜、肉、お米の――うっごめんなさい甘いもの!
「咖喱ライスで!」
 食べ終えた後にお腹に余裕があったら多分きっとメイビー。そんな冬青の隣でアヤネはというと、余裕ある穏やかな笑みで一点をトントンと指先で叩く。
「じゃあ僕は、こっちの肉たっぷりのサンドイッチを頼もうかな」
「アヤネさんはやっぱりお肉好きですね。あとで一口ずつ交換しましょ」
「うん、そうしよ。あ、ほら見てよソヨゴ。肉球かわいい。黒猫かな?」
「かもしれませんね?」
 厨房でシェフたちと一緒になって、にゃあにゃあ頑張っているだろう猫についてお喋りして――そういえば、と冬青は庭園でのことを思い出す。アヤネは“僕と同じ大学に進学”と言っていたけれど、アヤネの大学のレベルがどのくらいか把握していないのだ。
(「アヤネさんの家から通えて私の頭で入れるアメリカの大学――……えっ。ちょっと待って」)
 冬青は固まった。もしかしてもしかしなくても、アヤネが通う大学とはハチャメチャにレベルが高いのではなかろうか。だってアヤネが通う大学とはつまり彼女が満足するに値する大学ということだ。

 偏 差 値 ど の く ら い ?

 ほぼほぼ確定の“もしや”で思考がグルグルしたり固まったりと忙しい間に、お待たせ致しましたと笑顔と一緒に届いたいい香り。アヤネはサンドウイッチに残る肉球に喜び、肉の味わいに満足げな笑みを浮かべ――冬青は咖喱ライス一口分をスプーンによそい、暫しそのままでいた。
「……あのぉひとつお聞きしますが」
「うん?」
「アヤネさんの通ってる大学ってレベルどのくらいでしたっけ?」
 さり気なさを装う為に咖喱をぱくり。美味しい。美味しいけれど大学レベルが気になって素直に味わえなかった。
「僕の大学のレベル? 名門校だからネ。世界で五本の指に入るくらいかな」
「ごっふ!」
「ソヨゴ大丈夫? むせた?」
「いえ、大丈夫です! 思ったより咖喱が辛かったナ~って」
 アハハびっくり~と誤魔化し、もう一口食べて――…………ウッ、ドウシヨ。心の中で頭を抱えた。しかしアヤネと一緒にアメリカで学びたい。一緒に暮らしたい。
(「まだ時間あるし、勉強がんばろ……!」)
 冬青の目がキリッと元気を取り戻したのを見て、アヤネは大丈夫だよと笑う。名門大学の受験は、学んでほしいという生徒を得る為の、それなりの篩を用意してはいるけれど。
「日本と違って難問のある入学試験とかはないから安心して」
「そ、そうなんですか?」
「ハードルは高いけど可能性はあるさ。猟兵の実績なんかもアピールしたらいいよ、世界を救うためにこの大学に入りたいですって。もちろん僕にできることならなんでも援助するともさ!」
 まだ時間はある。その間に勉強でわからない所があれば教えられるし、大学の資料だって欲しいものがあれば取り寄せよう。大学側が“欲しい!”と思うようなアピールが出来るように『城島・冬青』という人物を如何に魅せるか、そのアドバイスだって。
「わーん、ありがとうございますアヤネさん!」
「よし、追加でホットケーキ三段重ね頼んじゃおう」
「えっ、三段ですか!?」
「そうさ」
 まずは甘くて美味しい物を食べて――二人一緒の幸せを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネムリア・ティーズ
【星想】
出逢ったばかりの黒猫ブローチを身につけて

お店の中もハロウィンでいっぱいだ
店員さんの仮装もステキだね
ぐるり移ろう視線をキミに向け微笑み

どれにしようか悩むの……叶は決まった?
わあ、ねこさんも気になってたんだ
どんな子か来るか楽しみだね

それなら、ボクはホットケーキにする
ずっと前に絵本で見たのが美味しそうでね
いまも、きらきらして見えるの
叶のねこさんと、はんぶんこしよ?

だいすきやとっておきは、キミにも渡したくなる
あのね、ステキなものにふれると思うんだ
叶も気にいるかなって

みてみて、はちみつがクモの巣になってる
ねこさんの顔も、すごくかわいい

分け合ったひとくちは、想像よりもふんわり甘くて
ふふ、おいしいね


雲烟・叶
【星想】
黒猫を揃いで身に付け

華やかですねぇ
本物の妖怪からすると自分たちの真似になるんでしょうか
自分ならちと照れちまいますねぇ

ふむ、自分はカステイラにしようかと
自分の元にどんな性格の猫が来てくれるかを見るのも楽しそうですし
ネムリアのお嬢さんのパンケーキも実物が楽しみですね
おや、言う前に言われちまいましたね
ふふ、一緒に取り皿も貰っときましょう

嗚呼もう、……同じですよ
何処ぞに行ったって、お前が居ればもっと楽しんでくれたかも、と思っちまうんですよねぇ……
毎季節、もっと色んな場所に行きましょう
リボンの先が当たり前になるくらいに

ええ、美味しいですね
使い魔もパンケーキも半分こ
それがより、美味しい気がした



 互いの胸元を彩る、出逢ったばかりの黒猫ブローチ。鈴蘭形照明から降る光を浴びて煌めく様は、増えた想い出そのものにまた新しい想い出を映すよう。
 仮装している客に女給。運ばれるメニュー。お冷の氷にカトラリー。
 ネムリアの視線は店内をぐるりと移ろい、叶へ向くとふんわりかすかに笑む。
「お店の中もハロウィンでいっぱいだ。店員さんの仮装もステキだね」
「本当に華やかですねぇ。本物の妖怪からすると自分たちの真似になるんでしょうか?」
 この中に本物が紛れ込んでいたら? 叶の言葉にネムリアは目を緩やかに丸くして、そうっと周囲を見る。その視線を追った叶はネムリアの考えを察して、くすりと微笑んだ。
「自分ならちと照れちまいますねぇ」
 本物は気にせずハロウィン料理を味わっているかもしれない。
 二人はお品書きを開き、軽食、甘味と目を通していく。載っているものはどれも、人々に負けず劣らずのハロウィン仕様っぷりを放っている。ネムリアは改めて一つずつ見ていき――ううん、と小さく唸った。
「どれにしようか悩むの……叶は決まった?」
「ふむ、自分はカステイラにしようかと。自分の元にどんな性格の猫が来てくれるかを見るのも楽しそうですし」
「わあ、ねこさんも気になってたんだ。どんな子か来るか楽しみだね」
 明るい子かな、クールな子かな。それとも、ハロウィンを楽しむ悪戯な子? ネムリアはもうすぐ出逢える猫に胸躍らせながら、それならとホットケーキを指差した。
「ずっと前に絵本で見たのが美味しそうでね。いまも、きらきらして見えるの」
 実物ではないのに、見た時からずっと忘れられないあの存在。そんなエピソードを聞いた叶も、ネムリアが出逢うホットケーキの実物が楽しみになってくるというもので。
「ね、叶。ボクのホットケーキと叶のねこさん、はんぶんこしよ?」
「おや、言う前に言われちまいましたね。ふふ、一緒に取り皿も貰っときましょう」
 取り皿にもハロウィンの魔法が仕掛けられてるんでしょうか。笑みを浮かべ何気なく周りを見た叶の耳に、ボクね、とネムリアの呟きが届く。
「だいすきやとっておきは、キミにも渡したくなる。あのね、ステキなものにふれると思うんだ。叶も気にいるかなって」
 美しい風景や装飾品。美味しい物。心震わす何かと出逢う度、思い浮かぶ存在はいつだって一人。銀の瞳が、はた、と、少しだけ丸くなる。
「嗚呼もう、……同じですよ」
「同じ……?」
「……ええ。何処ぞに行ったって、お前が居ればもっと楽しんでくれたかも、と思っちまうんですよねぇ……」
 そう思うようになったのはいつからだろう。いつから、同じ宿神たる少女を思い浮かべるようになったのだろう。今ではもう、自分も彼女と同様、行く先々で一つだけの存在を思い浮かべるのがすっかり当たり前だ。
 他所を映していた銀色が、ネムリアに向いてやわらかに笑む。
「毎季節、もっと色んな場所に行きましょう。リボンの先が当たり前になるくらいに」
 見付けた“だいすき”や、“とっておき”。ふらりと、または目的を持って出かけた先。そこで隣にいない一人を思い浮かべるのではなく、同じ想い出をもっとずっと一緒に出来るように。
 約束を結んだ二人が注文を済ませてから、暫し経った頃。額に一角、頭にはぴんと立った耳に腰からは細長い尾――ペガサスの女給によって、お待ちかねの甘味が二人の元へとやって来た。
 ホットケーキから溢れる甘い香りと熱はネムリアの頬をふわふわとくすぐって、狐色をした生地の上でバターがゆっくりじゅわりと蕩けていく。その更に上では、艶々キラキラの黄金色が全体を包むようにあった。
「みてみて、はちみつがクモの巣になってる。ねこさんの顔も、すごくかわいい」
「なかなか冷静な性格みたいですね。お嬢さんのホットケーキは……蜘蛛の巣は手作りですかね? 見事なもんですねぇ」
 お互いが選んだ甘味を見比べ、楽しみながら、ナイフとフォークで半分に切り分けて取り皿の上へ。頂きますと口に入れれば、バターと蜂蜜が溶け合い染み込んだホットケーキは少し熱く、クールな表情のカステイラは極上のしっとりとふんわり感。
 想像よりもふんわりと甘い二つでネムリアの顔に笑顔が咲き、半分この魔法もかかった一口は、叶にも優しい笑顔を灯していた。
「ふふ、おいしいね」
「ええ、美味しいですね」
 触れたものを分け合う。ただそれだけなのに、それがより美味しい気がする。
 満ちていくその理由はもう――当たり前のものとして、二人の中に宿っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コイスル・スズリズム
引き続きオーナーさん(f03848)と同行

メインとデザート、ドリンクを選ぶ仕草
メニューを選ぶ時のオーナーさんの慣れた手つきはいつも上品ね
すず、全部デザートでもいいかも、と笑うと
どれも本当にメニューが綺麗で迷っちゃう
シェアいいね!しようしよう。
迷った喧嘩、すずはカレーとホットケーキを選ぶ
カレーは辛口のを!
ホットケーキはメイプルシロップとバターいっぱいにしてください!

ドリンクは、カレーだからお水と、ミルク入りのアイスコーヒーをお願いしようかな

このお店、本当に素敵だよね!
スマフォで写真をとるオーナーさんに
すずとも一緒にとろ~といって2ショットの写真を

店内に瞳を輝かせるオーナーさんは
この時も、きっとまた経営のこと考えてるんだろうな
頬杖をつきながら、彼女のなんにでも真剣な表情を眺めてる

そんな彼女に、次にしたいことってどんなことがある?
って、将来の話をきいてみるよ

料理の味も、コーヒーの味も、きっと私は忘れないんだけど
彼女が今から喋りはじめるきりのない夢の話なんかも
忘れないんだろうななんて思いながら。


小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。

メイン1品、デザート1品、ドリンクをフルコースでいただこうかな。

私が注文するのはサンドイッチ。
猫さんの足跡は焼き印かな、判ってても可愛いものは可愛いよね。
デザートは、すずちゃんがホットケーキにするそうので、カステラにしよう。
ねね、シェアしよう? 違うメニューの方がいいよね。
ドリンクは珈琲をお願いします。ホットで。砂糖は不要です、ミルクだけくださいな。

出来上がるまで、店内の様子を観察します。
素敵な内装、可愛いお店。
ハロウィンの装いも可愛いけど、このお店、もともとかなりハイセンスでは?
UDCアースアメリカでホテルを経営する身。
ホテル内に飲食店は複数あります。テナント以外の直営店も多い。
近くをあるく店員さんに、内装の写真を撮っていいですかと聞いて、スマホを向けます。
もちろん、出来上がった料理も、勿論写真にとって。
あとでSNSに上げちゃおう。

可愛いね、美味しいね。と話しながら。
ん? なぁに、質問?
そうね、私が次にしたい事は、まずはクリスマスに備えて、ホテルを~…、



 あきの空色の目が紙の上を静かに辿り、時折、指先も目に映っているものと同じものをなぞっていく。コイスルの視界にちらりと見えた頁の様からして、あきはメインとデザート、ドリンクと一折チェックしていったのだろう。周りの雑音は穏やかで心地よく、その中にいるあきの仕草を見つめていたコイスルは、自分の口元をお品書きでそっと隠した。
(「メニューを選ぶ時のオーナーさんの慣れた手つきはいつも上品ね」)
 すず、変にニヤけちゃってないかな。
 心配になって隠していたけれど、ちょっと落ち着いた気がして元に戻す。あきが「ねえ、すずちゃん」と声をかけたのは丁度その時だった。
「ここ見て、猫さんの足跡。焼き印かな?」
 使い魔の猫がお手伝いしてるんだ――ワクワク話すちびっこたちの声に微笑みながら、そう判ってても可愛いものは可愛いよねと、お品書きに描かれている肉球の痕跡を指先でつつく。
「すずちゃんは何にするか決まった?」
「ん~……すず、全部デザートでもいいかも。見て、オーナーさん」
 ぺらりぺらり、ぺらぺら。捲って開いた頁に描かれている料理はどれも本当に綺麗で、あれもいいなこっちもいいなと、コイスルの気持ちは花畑を舞う蝶のように行ったり来たりで一つに落ち着けなかった。
「どうしようオーナーさん、どれも本当にメニューが綺麗で迷っちゃう……!」
 うーんうーんと悩み始めたコイスルと、そんなコイスルを見守りながら、うーん、と考え始めるあき。二人の「うーん」が重なった時、あきの脳にぴかりと名案が閃いた。
「ねね、シェアしよう? そうすれば他のメニューも楽しめるでしょう? あ、だったら違うメニューの方がいいよね」
「シェアいいね! しようしよう。オーナーさん、やっぱり素敵!」
 じゃあ私はこれを、すずはこれにするね――楽しいお喋りを挟みながらのメニュー決めはトントン拍子で進み、あきが手を上げるとすぐに妖精に扮した女給が笑顔でやって来た。
「サンドウイッチとカステイラを。飲み物は珈琲をお願いします。ホットで。砂糖は不要です、ミルクだけくださいな」
「畏まりました。南瓜のお嬢様は如何なさいますか?」
「すずはカレーの辛口のを! ホットケーキはメイプルシロップとバターいっぱいにしてください!」
「はい、いっぱいですね!」
 楽しそうな笑顔につられてか、妖精の女給もふわっと笑顔を咲かせた。飲み物は、水はお冷があるからとミルク入りのアイス珈琲に。
 全てを伝え終えればニコニコが止まらない妖精女給が厨房へと。あきはその後ろ姿を笑顔で見送ってから、カフェーの中をゆっくりと観察していく。
(「ハロウィンの装いも可愛いけど、このお店、もともとかなりハイセンスでは?」)
 内部に飲食店を抱えるホテルは複数あり、中にはテナント以外の直営店も多くある。自分が知る店を思い浮かべれば、このカフェーとの違いや個性が刺激と共に改めて浮かぶよう。
 落ち着いた印象を与える天井と壁の色、照明の可愛らしい造形、テーブルの色艶や桜華刺繍の紅色ソファ。このカフェーは、古き良きアメリカといわれる時代とはまた違った雰囲気を持っている。
 一つ一つを見ていくあきの表情は経営者の顔へと変わり、その様子をコイスルは頬杖をつきながら眺めていた。 
(「オーナーさん、きっとまた経営のこと考えてるんだろうな」)
 UDCアースのアメリカでホテルを経営しているあきから見たカフェーは、様々な刺激を受ける場所でもあるのだろう。
 そんな、何にでも真剣なあきが次はどこに注目するのかと眺め続けていると、何かを見付けた様子。どうしたのかなと視線を追うと振り返る形になり、そこには丁度近くを通った女給が一人。背中で小さな蝙蝠翼がパタパタ揺れていた。
「すみません。内装の写真を撮っていいですか?」
「ええどうぞ。何かご質問がございましたら、どうぞ遠慮なく仰って下さいませ」
 そう言って頭をぺこりと下げた女給にあきは礼を言い、いそいそとスマホを取り出して撮っておきたい場所に向け始める。止まらない撮影音も取り続けるあきも、コイスルは頬杖をついたまま笑顔で見つめていた。
「このお店、本当に素敵だよね!」
「そう、そうなのすずちゃん。ほら見て、こことか……」
 スマホの画面にあきの指が触れてフリックすれば、コイスルの目に“すずが眺めていたオーナーさんが見たもの、気になったもの”が次々と紹介されていく。ふふっと笑ったコイスルは自分のスマホも取り出して。
「オーナーさん、すずとも一緒にとろ~」
 あきの隣に移動してくっついて――はい、チーズ。
 笑顔の一枚もしっかり収めた後、届いた料理の数々がとびきりの香りを二人の前に広げていく。咖喱ライスは食欲そそる香しさ、ホットケーキとカステイラはふんわり甘くてときめく香りだ。
 勿論、テーブルに並ぶ料理もあきのスマホにしっかりと収められていく。提供される料理だってホテル経営者としては見逃せない。
(「あとでSNSに上げちゃおう」)
 料理の見た目も楽しみながら食べ始めれば、出てくる言葉は笑顔とセットの「可愛いね」「楽しいね」といった言葉ばかり。
「ね、オーナーさん。次にしたいことってどんなことがある?」
「ん? なぁに、質問?」
「そうね、私が次にしたい事は、まずはクリスマスに備えて、ホテルを~……」
 経営しているホテルの将来を笑顔交えて語る始めたあきに、コイスルも笑顔を浮かべ、料理に舌鼓を打ちながら耳を傾ける。咖喱ライスとホットケーキの味も、アイス珈琲の味も、きっと自分は忘れないのだろうけれど。
(「すず、オーナーさんのきりのない夢の話も忘れないんだろうな」)
 浪漫に満ちたあきの話は永遠に咲き続く花のよう。
 紡がれる言葉の一つ一つが、笑顔と同じくらい眩しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

幽・ヨル
千空(f32525)と
アドリブ歓迎

千空に連れられ
萎縮しながら、借りてきた猫のように恐る恐る席へ
メニュー覗けば見たことないものばかり
何がいいのか
そも注文すら遠慮してしまって
…けれど
ほっとけーき、という文字に瞳瞬き
これは物語の中で見た事ある気がする
ふわふわで、甘くて、おいしいのだと
さり気なく見つめていたつもりだったのに彼にはバレバレで

やがて運ばれてきたその御馳走
ほんとにいいの、と何度も千空に確認し
漸く口にしたそれはとろけるほど美味しくて
自然と笑顔溢れ、彼にも食べてほしくて
「はい、ちあさん!」
己の口端にホットケーキが付いてることに気付かず満面の笑みで一口差し出し

…綺麗な女給さんの姿を視線で追う千空の横顔を見て
やっぱり彼もああいう女性が好きなのかなあとどうしてか落ち込んで
私はちんちくりんだし、女性的な魅力もない
ぼろぼろの野良犬みたいで…ぐるぐる自己嫌悪
自覚なく俯きがちになっていたけれど
彼の声に顔を上げ
誤解だとわかった瞬間
顔から火が出そうで


槙宮・千空
ヨル(f32524)と

遠慮がちな性分の君を連れてきて
紅色ソファへ隣同士で腰掛ける
ぺらぺらとお品書きを眺めていれば
彼女の視線の先、選んだ料理に気付き
ホットケーキと飲み物の注文を済ませた

やがて運ばれてきたホットケーキ
何度も確認されては思わず笑い
差し出された手を掴めば
一口でパクリと食べて
ぺろりと舌舐りで御馳走サン
君の口端へ付いたパン生地も
指先で拭い取るついでに唇撫で
ウブなヨルを、からかってみたり
その反応の良さに、また肩を震わせた

ふたりで食べながらも
不意に女給の後ろ姿を眺め
あ? どうした?
視線を感じて君へと向ける
俯きがちな様子に察して
何だ、余所見すンなッて言いたいのか?
くくく、と揶揄と共に喉を揺らし
お前にも、あの小さな蝙蝠の羽とか
似合いそうだな、ッて思ッただけだから
俺はお前だけで手一杯だよ、と
隣に座る君のリボンを弄って双眸細めた



「へえ、上等な座り心地だ。ヨル、こっち来いよ」
 千空は案内されたソファへ悠々と腰を下ろし、ヨルへと手を差し伸べる。
 お手をどうぞ、と言うような仕草に微笑。しかしヨルは相変わらず。猫であるなら体中を緊張させていそうなぎこちない動きで千空の手に手を重ね、恐る恐るといった様子で隣に座る。
(「まァだ遠慮してンのか」)
 袴を見立てたことも、リボンを贈ったことも、自分がそうしたいと――似合うだろうと思ったからそうしただけだ。夜空に浮かぶ灯りのように輝くものを持つ少女は、いつ自身が持つそれに気付くのだろう。
 ――ま、取り敢えず今は。
「何食う?」
「え、あ……ええ、と」
 テーブルの上、二人の間にお品書きを置いて最初の頁を開く。
 千空の手で捲られたそこに描かれている料理と、その名前、そして料理の紹介文。ハロウィンに合わせた字体や装飾が施されたお品書きは、それ単体でも何かの読み物のようだ。そしてどれもこれも美味しそう――なのだけれど。
(「な、何だろうこれ……かりい、らいす? さんどういっち?」)
 自分以外を養う為に生かされ生きてきたヨルには見たことのないものばかり。咖喱ライスの“甘口”と“辛口”はどう甘いのか辛いのかわからないし、卵を使っているというオムレツはどうしてそんなに膨らんでいるのかと不思議でならない。そも、注文することすら遠慮してしまう。
(「咖喱ライス、サンドウイッチ、オムレツ……どれも良さそうじゃねェか」)
 そろそろ捲っていいか。眺めていた千空は戸惑っているヨルをちらりと見てから頁をぺらり。軽食から甘味へ移れば、咖喱ライスにサンドウイッチ、オムライスとはまた違う華がヨルの目に飛び込んでくる。
(「あ、」)
 ほっとけーき。
 知らないものだらけの中にあった、ヨルの知っていたもの。初めて見たのは物語の中、だった気がする。確か――、
(「“ふわふわで、甘くて、おいしい”……」)
 物語の中で、ほっとけーきはそういうものなのだと綴られていた。
 ああけれど、じっと見るだなんて如何にもこれが欲しいと言っているのも同じだ。きっと良くない。だからヨルは他のよく知らない甘味にも目を向け、ホットケーキに注目し過ぎないようさり気なく見つめて――いたつもりだったのに。
「ホットケーキと飲み物を。そうだな……オレンジジュースで」
「畏まりました」
「え、あっ……!」
 知らぬうちに見破り更には女給を呼んでと、鮮やかに注文を済ませた千空に、まさかバレバレだったなんてとヨルは慌てるばかり。そんなヨルに千空は「気にすンな」と笑って返し――物語の中でしか見たことのないそれが、やって来る。
 厚い二段重ねの狐色。じゅわ、と蕩けていくバター。その上にきらきらと被さる、蜂蜜蜘蛛の巣。存在しか知らなかった御馳走を前にしたヨルの目は、何度も千空とホットケーキを映す。
「ちあさん。ほんとにいいの? ほんとに?」
 すると千空の口から笑う音がこぼれる。ふは、と聞こえたそれにヨルが目を丸くすると、その目の前に千空の片手が開かれた。
「五回目」
「え?」
「ヨルが俺に『ほんとにいいの?』って訊いた回数」
「かっ……!! ……数えて、いたんですか……」
「減るモンじゃねェんだからいいだろ。ほら、お前のホットケーキだ」
 かたり。
 ホットケーキを包む蜂蜜細工と同じ、蜘蛛の巣の透かし彫りがされたナイフとフォークを目の前に置かれ、ヨルはこくり頷いて漸くホットケーキへと手を伸ばす。
(「確か、あの物語では……」)
 半分に切って、それから、と思い出しながらナイフとフォークを使って出来た一口分にフォークを刺して口に運ぶ。生地とバターと蜂蜜がとけ合った香りが一気に近くなって、胸がひどく高鳴って――ああ、これがあの――と頬張った一口は、信じられないくらい温かかった。
 噛んだ生地が、ふあ、と沈む。染み込んだバターと蜂蜜が熱と一緒にじゅわ、と口いっぱいに伝わって、蕩けてしまうんじゃないかと思うほど美味しかった。
 ずっと萎縮していたヨルの頬に朱が差し、笑顔が咲いていく。
 もぐむぐと温かくて甘い御馳走を噛んで、飲み込んで――、
「はい、ちあさん!」
 満面の笑みで差し出した一口に千空が笑う。ヨルの手ごとフォークを掴んで一口でぱくり。甘く温かな味わいを一気に灯すホットケーキを無言で味わい終えると、ぺろりと舌舐めずりをして。
「御馳走サン。それと、」
「え?」
 きょとりとしているヨルの口端に千空の指が触れる。かすかに触れるだけ、一瞬だったそれはヨルの口端に付いていたホットケーキ生地に触れ、攫っていって。
「こっちも貰うぜ」
 ぺろり。一気に顔を赤くしたヨルを千空がからかい、それに返った反応の良さが千空の口からぷくくとこぼれる音とセットで肩を震わせる。
 ホットケーキと千空によって、すっかり萎縮どころでなくなったヨルと、そんなヨルを面白がる千空。二人で食べていくホットケーキは順調に面積を減らしていった。
 もう少しで食べ終わる頃、ヨルは遠慮がちに一口分を切って口に運び――千空の目が女給の後ろ姿に注がれていることに気付く。途端、ぽかぽかとしていた心が重く、苦しくなった。
(「やっぱりちあさんも、ああいう女性が好きなのかなあ」)
 カフェーで働く彼女たちは皆素敵な装いをしていて、堂々としていて、笑っていて、可愛らしい。けれど自分はちんちくりんだし、女性的な魅力もないし、いつもどこかに包帯やガーゼを貼っていてまるでぼろぼろの野良犬みたいで――。
「あ? どうした?」
 千空は何やらぐるぐる沈んでいくような視線を感じヨルの方を向く。その声で顔を上げたヨルはいつの間にか俯いていたことに気付くも、元気をなくした顔は未だ俯きがち。ヨルが何を来にしたのか、千空はまたもひと目で見抜いてしまう。
「何だ、余所見すンなッて言いたいのか?」
 視線と笑う喉の音。揶揄を含んだ空気にヨルの視線が泳ぐ。
 ああ。素直じゃねェのに、そういう所は素直だな。なんて言わないが。
「お前にも、あの小さな蝙蝠の羽とか似合いそうだな、ッて思ッただけだから」
「え」
 じゃあ、ああいう女性が好みなんだと思ったあれは――。
「俺はお前だけで手一杯だよ」
 髪を彩るリボンに指が触れ、撫でるように弄る。双眸が、静かに笑む。

 少女は、誤解とわかった途端熱くなった顔を隠したい。
 しかし盗賊は、それを許してはくれなさそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月12日


挿絵イラスト