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夢の跡にも笑みは咲く

#アポカリプスヘル #お祭り2021 #ハロウィン

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#ハロウィン


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●夢の跡にも笑みは咲く
 ぎしぎしと鳴る観覧車、回らないメリーゴーランド、縁の欠けたコーヒーカップ。崩れ落ちるのはあっという間かもしれない、ジェットコースター。
 あらゆる瓦礫をかき集めて築かれた拠点にも、秋の寒さが近付いている。ホットココアの味は薄くって、けれど弟はうれしそうにそれを飲む。
 すっかり草臥れてぼろぼろのカレンダーが、ちょうどいつぞやの十月を指している。正確な日付は覚えていないけど、そっか。

「ハロウィン、かぁ」
「おねえちゃん、それなあに」

 そう溢した私の言葉に、そんな記憶のない年の離れた弟は首を傾げる。
 この子はハロウィンを知らない。彼だけじゃない、此処に居るほとんどのこども達は、そんなお祭の存在を知らないんだ。

「そーゆうお祭が昔あったの。こどもはみーんな、おばけとかヒーローとかすきな恰好に変身してさ、行列になって街を歩くの。で、トリックオアトリートって合言葉を大人に言ったら、お菓子がもらえたのよ」
「たのしそう!」

 目を輝かせたのは弟だけじゃない。近くで同じようにココアを飲んでいた子達が、わくわくと私を質問攻めにする。
 私一人では答えきれないけど、数少ない大人達の邪魔をする訳にもいかない。
 弟と同じくらいの年の思い出話をしていたら、胸がぎゅっと痛くなった。

「やりたいね、はろうぃん」
「……そうだね」

 遊園地の跡地で、私は精一杯大人っぽい笑顔を浮かべてみせた。

●いつかは君の夢が宿る
「アポカリプスヘルの、とある拠点に行ってもらえませんか」
 無間・わだち(泥犂・f24410)は、ふたつのかたちの瞳で猟兵達を見た。
「皆さんも知っている通り、あの世界の人達はその日を生きるのに毎日精一杯です。ハロウィンなんてお祭、ほとんど忘れてしまっています。けど、カタストロフの危険が去った今なら、猟兵が彼らのためにパーティを催してもいいんじゃないかなって」
 ふわり、継ぎ接ぎは笑む。
「行ってほしい拠点は、遊園地だった場所に築かれています。到着する頃は夕方ですから、ランタンなんかを少し飾りつけても、それだけで雰囲気が出ると思います」
 あまり大量の物資を一気に持ち込むと、オブリビオンストームを呼び寄せてしまう。皆で分担して、少しずつお菓子や料理、仮装セット等を持ち寄るべきだろう。
「拠点の住民は大人が数人で、他は子供ばかりです。低年齢の子達を、忙しい大人の代わりに十代の少年少女が世話してる感じですね」
 娯楽のないちいさなこども達の日々は退屈で、おとなのふりをするおおきなこども達は、きっと疲れている。
「パーティを満喫してもらったら、皆さんに見張り番をしてもらって、拠点の人達にはぐっすり休んでもらえたら。ただ、その夜更けを狙ってオブリビオンの群れが現れます。起こさないよう、なるべく静かに撃退してから、朝が来たら立ち去ってください」
 オブリビオンの特徴を問うた猟兵に、青年は頷く。
「ゴーグルを装備したハヤブサ型のオブリビオンです。見た目は丸くて愛らしいけど、猛スピードで突撃してきます。遠慮なく倒してください」
 ああ、とわだちは思い出したように。
「ハロウィン自体が初めての子も多いです。仮装してもらう為にも、見本として皆さんもそれぞれ仮装してもらえたらいいかな」
 かちり、かちりと歯車が動き始める。遊園地の時間が、すこしだけ動くように。


遅咲
 こんにちは、遅咲です。
 オープニングをご覧頂きありがとうございます。

●成功条件
 拠点にハロウィンパーティを提供し、オブリビオンを倒して次の朝には立ち去る。

●1章「夢の国の跡地」
 選択肢は気になさらず、自由に拠点の人々を楽しませてください。
 あまり大掛かりな物資を用意することはできません。

●拠点の人々
 数人の大人が拠点の生活を保ち、十代の少年少女が大人を手伝ったり、年少のこども達の世話をしています。
 交流したい人物が居れば指定できます。

●仮装
 どんな仮装姿か、指定をお願いします。お任せも可&NGがあればそちらも。
 尚、2章は仮装したまま戦闘に入ります。

 合わせでご参加の場合は2名様まで。
 呼び名とIDの記載、または合言葉や絵文字の記入をお願いします。

 単章のみのご参加も歓迎しております。
 どの章からのご参加もお気軽にどうぞ。

 人数次第ではやく受付を締め切る場合もあります。
 皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
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第1章 日常 『夢の国の跡地』

POW   :    園内を散策する

SPD   :    遊具を修理してみる

WIZ   :    在りし日に思いを馳せる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リグ・アシュリーズ
とりっく・おあ・とりーと!
物陰伝いに近付き、拠点の子たちを脅かすわ。
ほら、笑って!ハロウィンはね、皆が笑顔になる日なのよ!
大好きな空の色に染めた毛皮を被り、青空のたてがみ持つ狼獣人の仮装。
自力でも変身できるけど、ハロウィンだものね!

リュックから簡単な仮装グッズと、
折りたたみ式のバスケットを取り出し。
子どもたちにルールを伝え、いってらっしゃいをして先回り。
大人たちにはお菓子カゴ、自分で食べちゃダメよ?
皆さんの分は別に用意したから!
と、甘いチョコレートを振る舞って。

私もね、厳しい土地の生まれだからあえて言いたいの。
明日って待つだけじゃこないわ。
明日、笑顔になるために。楽しく迎える準備をしましょ!



 とろりとした夕闇が降りて、そう遠くはない昔は煌いていた遊園地にも夜が忍び寄る。今日も代わり映えのしない荒む日々が終わる――はずだった。
「とりっく・おあ・とりーと!」
「ひゃあ!」
 物陰から現れた見知らぬ人物に、こども達は悲鳴をあげる。すぐに駆けつけた兄貴分らしき少年が割り込むと、安心して、とリグ・アシュリーズは笑った。
「脅かしてごめんなさい、猟兵よ。奪還者って言った方がわかりやすいかしら」
「猟兵? ……そうか、本当に、居たんだ」
 この人は大丈夫、とこども達に言い聞かせて、少年は不思議そうにリグを見る。鮮やかな空色に染めた毛皮を被った娘の姿は、まさに愛らしい狼獣人。自力でも変身できるけれど、ハロウィンといえば仮装だもの。
「あの、さっきトリックオアトリートって」
「そう。ほら、笑って! ハロウィンはね、皆が笑顔になる日なのよ!」
 ハロウィン、という言葉を聞いて、ちいさなこども達がそわそわと浮足立つ。だって姉貴分から聞いた素敵なお祭が、今から始まるらしいのだ。
 リグは鼻歌まじりにリュックから仮装グッズを取り出して、こども達にひとつずつ手渡していく。猫耳カチューシャ、魔女の帽子、吸血鬼のマント。お手軽にお化けに変身した彼らに折りたたみ式のバスケットを配って、ハロウィンのルールを丁寧に教える。
「お菓子をもらえたら、イタズラは我慢すること! どちらかだからね」
「すっごく楽しみ!」
「おかし、たくさんもらえるかなぁ?」
 それぞれ思い思いに拠点内へ散らばる彼らに、いってらっしゃい、と手を振って。素早くリグは大人達の元へ先回り。お菓子の詰まったカゴを手渡して、ちいさなお化け達を待つよう伝える。
「よろしくお願いしますね、自分で食べちゃダメよ?」
 皆さんの分は別に用意したからと、狼娘は甘いチョコレートを振舞う。
「ふふ、ハロウィンなんて夢みたい」
「最後にガキ共にトリートをせがまれたのは、いつだっけな」
 笑いあう大人達とこども達の遭遇をそっと眺めていれば、恐る恐る合言葉を伝えた幼子の表情が笑顔で溢れだす。
 お菓子をもらってぴょんぴょんと跳ねる彼らと、それを見守る大人達の眼差しが愛おしい。ふと、最初に遭遇した兄貴分の少年がぽつんと拠点の隅に居ることに気付いて。
「あなたもお菓子をもらいに行ったら?」
「や、俺はもうそんな歳じゃないし……それに、こんなの意味ない気がするんだ」
 ぽつぽつと、少年はいつかの思い出を話しだす。嵐によって居なくなった家族と、最後に過ごしたハロウィンのこと。なんだか寂しくなったのだとこぼす少年に、それまで黙って聞いていたリグはお揃いの青空のたてがみを無理矢理被せる。
「わっ」
「明日って、待つだけじゃこないわ」
 彼女も厳しい土地の生まれだから、その寂しさもなんとなく知っている。だからこそ、彼に言いたかった。
「明日、笑顔になるために。楽しく迎える準備をしましょ!」
 ね、と朗らかに笑う娘の瞳は心から信じる希望に満ちている。驚いた様子の少年は、暫くしてふにゃりと笑った。
「兄ちゃん! 兄ちゃんもおかしもらおーよ!」
「……ああ、そうだな」
 駆け寄ってきたこども達と手を繋いだ少年に、リグは問う。
「さあ、それじゃあ合言葉を教えて?」
 いよいよ、素敵なお祭の夜が始まる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【対の華】
仮装:可愛い系でお任せ
女装だとちょっと照れる

折角のハロウィンだもん
出来る限りのことはしてあげたいよね
大掛かりなものは無理でもちょっとしたお面や付け耳とかなら持ち込めるかな
あと細かい演出は百鬼さんに任せる

あとは足場に★花園を生成
ガーベラやケイトウなど赤やオレンジの花を中心に咲かせ
少しでも雰囲気を演出
持ち込みじゃなく現地生成だから多少はどうにかならないかなーなんて

ハロウィンは、大人にトリックオアトリートって言うんだよ
言ってごらん、いいものあげる

合言葉を聞いたら★飴を配るね
魔法の瓶に入ったそれは無限に湧き出るから
欲しいだけ取り放題だよ

僕達も少し園内散歩でもしようか
好きでしょ、こういうとこ


百鬼・智夢
【対の華】
仮装:可愛い系でお任せ

そうですね…
知らないままは、勿体ないですから…

澪君が必要な物を持ち込む分
私は極力持ち込み無しで頑張りますね
皆、協力して…

★リアムの霊力も借りて善霊達を降霊し
火の玉として灯り代わりに園内に漂わせてみます
害は無いから、大丈夫
触っても熱くないですよ

あとは、最低限動ける程度の霊力を乗せた★クロも貸し出し
犬ですよ…骨ですけど
無邪気でとっても良い子なんです
遊ぶの大好きだから…よかったら
お手もおかわりも出来ますよ

怖がらせないよう気をつけますが…
私の普通が、どこまで通じるでしょうか…

合言葉のお返しにはクッキーを
ハッピーハロウィン、です

園内散歩、いいですね
是非ご一緒させてください



 夜が、ひっそりと遊園地を包む。狼娘がこども達にハロウィンのしきたりを教えている頃。かちりと歯車が合わさった音と共に、ふわり拠点に舞い降りた二人の少年少女。
 空色のキュロットに、ましろのマントをひらり。ちいさな王冠をちょこんと乗せた亜麻色の髪は、ポニーテールに束ねられて揺れている。薄紅の翼を羽ばたかせて、栗花落・澪は拠点を見渡す。
「遊園地の跡地だけでも素敵だけど……やっぱりちょっと寂しいよね」
 折角のハロウィン、出来る限りのことはしてあげたい。
 そんな少年の隣、百鬼・智夢があわい群青の修道女の裾を翻す。フリルとレースたっぷりのワンピースは、どこかのお嬢様にも見えたかもしれない。背中にはかわいらしい小悪魔の翼がくっついて、天使の王子様とは対の華。
「そうですね……知らないままは、勿体ないですから……」
 こくりと頷いた智夢が、抱きかかえたテディベアを頭を撫でた。皆、と呼びかけた途端、ふわりと彼女の周囲に善き霊達が降りてくる。大切な友達、リアムの霊力を借りることで、あたたかな灯りが拠点のあちこちに燈っていく。
 智夢に細かな演出を任せた澪も、踊るように拠点中を歩いて回る。その度にあわい光が咲いて、ガーベラやケイトウといった赤、橙の鮮やかな花々が道をつくった。
 現地生成なら、きっと影響は少ないはず。そう閃いた彼の目論み通り、嵐の気配は何処にもない。
「わあ、天使の王子さまだ!」
「かわいい! 女の子かなぁ?」
 驚く声に振り返れば、まだ変身していないこども達の姿。
「こんばんは、ハッピーハロウィン!」
 にっこりと笑いかける澪につられるように、幼子達も元気よく挨拶を返す。既に猟兵達が拠点にパーティを届けに来ることは伝わっているらしく、話がはやいと少年はちいさな変身グッズをわけていく。狐や犬のお面、兎の耳や猫の耳。おそろいの尻尾も生やしてあげれば、とってもキュートな動物達が現れた。
「わんわん、ぼくは犬だよっ」
「あたしはウサギ! ぴょーんぴょん!」
 見事な変身を遂げたお互いを見あいっこする彼らに、王子様はお祭の合言葉を教えてやる。
「ハロウィンは、大人にトリックオアトリートって言うんだよ」
 言ってごらん、いいものあげる。呼びかけられたこども達が、たどたどしくそれぞれのタイミングで合言葉を口にした。
「とりっく、おあ、とりーと」
「そう、上手!」
 さあどうぞ、と差し出された硝子瓶には、カラフルな飴玉がたくさん詰まっている。中身が無限に湧き出る魔法の瓶だから、欲しいだけ取り放題。驚きながらも、すきな飴を選ぶ幼い動物達は胸を弾ませた。
「盛況、ですね」
 明かりを燈し終えた智夢が、善き霊達と共に澪の元へ。新たに現れた小悪魔シスターの姿にはしゃいだこども達が、わあ、と興味津々で彼女に近付く。
「あなたはおひめさま?」
「シスターだよ、あっでもアクマの羽がついてる!」
 少しばかり賑やかな声に瞬きする智夢の周囲を、ふわふわと火の玉が浮かぶ。それに気付いた一人の少年が首を傾げた。
「おねえちゃん、これなあに?」
「私の、お友達……でしょうか。触っても、熱くないですよ」
 害は無いから、大丈夫。そう続けたシスターの言葉を合図に、火の玉がこども達に触れる。あったかいね、と言葉を交わして笑いあう彼らに、もう少し喜んでもらいたくて。
 クロ、と名前を呼べば、骨の犬がかたかたと動き出す。ひゃあ、と驚く彼らを怖がらせたかと思ったけれど、それは杞憂だった。
「すごい! これなに!?」
「ほねほねのわんちゃん、かわいいねぇ」
「無邪気でとっても良い子なんです。遊ぶの大好きだから……よかったら」
 目をきらきらと輝かせる彼らに、ぽつぽつと愛犬の性格を説明すれば、すぐにクロはこども達のアイドルに。お手もおかわりも完璧な骨犬は、からからと尻尾を揺らす。
 自分の普通がどこまで通じるか、それが気がかりでならなかった智夢も、どこかやわらかな表情を見せて。
「シスターさん、トリックオアトリート!」
「はい、ではこちらを――ハッピーハロウィン、です」
 飴と一緒に子犬の形のクッキーを受け取って、こども達はありがとう、と二人に笑顔を見せた。
「僕達も少し園内散歩でもしようか」
 好きでしょ、こういうとこ。大人達の元へ出発した幼子達を見送りながら、澪が提案すれば、智夢もこくりと頷いて。
「園内散歩、いいですね。是非ご一緒させてください」
 火の玉の灯りが辺りを照らし、花の道がやわらかく夜を彩る遊園地を、二人のんびりとゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シェリー・クサナギ
「お祭りは良いわよォ、すさんだ心に染み入るもの」
・シェリーは「奪還者」の一人である。人類再興のカギはかつての文化の復活と考えており、ハロウィンのような年中行事は荒野で緊張しきった人々を癒し、未来を担う子供たちの心をはぐくむであろうと信じている
・仮装は敢えてのシンデレラ。男性的な顔立ちも厚めの化粧を施せば、日ごろから手入れしているピンク色の長髪も相まって、サマになるだろう
・奪還者稼業のついでに収集している本を拠点の住人たちに貸し出し、字が読めないであろう子供たちには童話を朗読する。人間、夢が無ければ生きた心地がしないものである
「今は灰をかぶってみすぼらしくとも、いつかは『美しく』なれるのよ……」



 あたたかな花の道、拠点のあちこちに燈る灯り。ハロウィンパーティで賑わいだした夜の遊園地に、淡い薄紅と白を基調とした長身の姫君が笑顔を見せる。ふいに、前を見ていなかった幼子がぶつかった。思わず倒れてしまいそうになった少女を、姫君はすぐさま支えてやる。
「わ、ご、ごめんなさい」
「いいのよォ、だけど今度から気をつけなさいな。お友達とぶつかったら大変だもの」
 見上げるこども達の視線を一身に受けて、シェリー・クサナギはウィンクひとつ。そこには硝子の靴をこつんと鳴らすシンデレラが居た。男性的な顔立ちも、うつくしい化粧を施したかんばせはお姫様そのもの。普段から丁寧に手入れされた長髪も煌びやかに着飾って、どこか堂々としつつもやわらかな雰囲気に満ちている。
「おねえさん? おにいさん? わかんないけど、ステキ!」
「きれいだけど、かっこいいねぇ」
「ふふ、ありがとう。さ、合言葉を教えてちょうだい。かわいらしいあなた達に贈り物を渡したいの」
 トリックオアトリート! 元気に答えた仮装姿の彼らに、お菓子をしっかりと手渡して。その様子を見ていた男性が、ありがとう、とシェリーに声をかける。
「ハロウィンなんて、この子達は一生知らずに人生を終えるんだろうと思っていたよ。祭りのひとつも出来やしないからな」
「あら、それはいけないわね。お祭りは良いわよォ、すさんだ心に染み入るもの」
 シェリーという名の人間は奪還者。荒野と化したこの世界で人類の再興を夢見て、うつくしいものを取り返す為に生き続けている。かつての文化の復活は、人類再興のきっかけのはずだから。
 ハロウィンやクリスマスのような年中行事こそ、緊張に身を置く人々の心を癒し、未来を担うこども達の心をはぐくむものだと信じている。
「アナタ達にも贈り物をさせてちょうだい。合言葉は要らないわ」
 そう微笑んだシンデレラは、ちょっぴりの怪力でよっとテーブルに無数の本を乗せる。奪還者稼業のついでに収集しているそれらは、小説にコミック、ファッション雑誌に料理本――そして随分と古びた童話集。
「本!? こんなに沢山……」
「あ、これ……私、すきだった雑誌だ」
 男性が目を丸くした隣で、こども達の世話に忙しい十代の少女が一冊のファッション雑誌を手にとる。
「今晩はすきなだけお読みなさいな。女の子にはときめきが必要不可欠でしょう?」
「でも、あの子達の世話が」
「やぁね、それくらいワタシに任せてちょうだい。坊や達、昔々の素敵なお話を聞きたくなぁい?」
 シェリーに呼びかけられたこども達は、なになに、と楽しそうにシンデレラの元に集う。ふわりとドレスの裾を広げて床に座ると、幼子達は思い思いの場所に座って姫の朗読に耳を傾ける。
 それはいつかの灰かぶりのお話。十二時の魔法が解けても、王子様と彼女の愛が成し遂げたハッピーエンドの物語。やわらかな口調で語られるそれは、少し遠くで聞いていた大人の心もあたためる。
 うとうとし始めたこども達の傍で、ねぇ、と姉貴分の少女が雑誌を抱えてシェリーを呼ぶ。
「……いつかは、元に戻るかな。戻らなくっても、」
 大人びた表情を見せる少女に、シェリーは琥珀の双眸を細めて頷く。
「その雑誌。アナタにあげるわ」
「え、」
「今は灰をかぶってみすぼらしくとも、いつかは『美しく』なれるのよ……」
 だってアナタには、十分その資格があるのだから。その言葉に、ほろりと少女が涙をこぼした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神坂・露
レーちゃん(f14377)

レーちゃんが黒魔女さんならあたしは白猫さんよ!
あたしの周囲に子供達が集まってきて可愛いわ♪
勿論レーちゃんのところにも集まってきてて…。
相変わらず子供達の対応に困っててさらに可愛いわ~。
裾とか袖とか色々と掴まれててレーちゃん凄く可愛い♪

「ん? あたし? あたしは白猫さんよ~♪ にゃあ」
…ポーズをとってみるけど子供達には好反応だったわ~…。
あ。尻尾は掴まないでね。取れやすいから♪
合言葉にレーちゃん特製のゼリーを包んだ袋を手渡しするわね。
「は~い♪ 焦らないでも大丈夫よ。順番順番♪」

こーしてると無事に戦争終わったのねって実感するわよね。
あ。付けてる尻尾とか贈ってもいいかも?


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
仮装は魔女。大きい帽子にローブとらしい恰好をしようか。
何故か数人の子供達に輝くような瞳でみられつき纏われる。
そして裾を掴まれたり抱きしめられたり手を握られたり。
まあ邪険にはしないが…なんだか露が増えた気分だ。

「この格好? これは魔女と言ってな。架空の人物だ」
色々複雑でしかも面倒なので簡単に述べるだけにしておく。
合言葉を口にした者には特製の菓子をやろうか。
ハロウィンの為に住処で作った果汁を混ぜた小粒のゼリーだ。
幾つかの果汁味のゼリーを掌サイズの小袋に詰めてある。
子供だけではなく大人の分もあるから渡す。
「トリート。…ほら、これをやろう」
「人数分ある。そんなに慌てるな」
「やれやれ」



 ハロウィンの夜はまだまだこれから。用意してもらった仮装に身を包み、こども達は大人の元へ合言葉を言いに行く。そんな中で、彼らに混じってしまう猟兵達も居て。
「きみたち、だあれ?」
「しらない子だ! でもすごくちゃんとした変身してるー!」
 次々と自分達を囲みはじめる彼らと、さして身長の変わらぬシビラ・レーヴェンスは相変わらずクールな表情を見せている。大きな帽子が素敵な魔女の本格的な仮装に、こども達は心惹かれたらしい。
「ねえねえ、そのカッコウなに? キミもハロウィンしに来たの?」
「あっ知ってる、絵本で見た!」
「これは魔女と言って……架空の人物だ」
 きらきら輝く視線を向けられたまま、裾を掴まれ抱きしめられ。なんだこれは、と若干内心では困惑しているシビラの隣。白猫姿の少女がくすくす笑う。
「レーちゃん大人気ねぇ♪」
「わ、ねこちゃんだ! かわいい!」
「ふわふわの耳としっぽだね!」
 あら、あらあら? 神坂・露の周囲にも続々と集まるこども達に、彼女もほんの少し瞬き。相変わらずこどもの対応に困っている親友も、自分達に集まってきたこども達のこともかわいくて仕方がない。露もシビラも、傍目にはこども達と同じ年頃にしか見えないけれど、心はとっくに立派な大人以上。彼らを見つめる露の眼差しが、子を慈しむものになるのも当たり前だった。
「あたし以外にも猫さんが居るのね、にゃあ♪」
「にゃー!」
 招き猫のようにポーズをとってみれば、猫耳カチューシャをつけたこども達が真似をして。特に幼い子らは、不思議と揺れる尻尾が気になったらしい。取れやすいから掴まないでね、と優しく伝えると、こくりと頷きつんつんと触るだけ。
「さて、君達はハロウィンの合言葉を覚えているか」
「せーの、トリックオアトリート!」
 シビラの言葉をきっかけに、こども達は一斉に魔法の呪文を唱える。正解だ、と魔女は頷いて、とっておきのお菓子を配る。住処で作った果汁入りの小粒ゼリーは、どれもがカラフルな色をしていて、ラッピングされた小袋の中にめいっぱい詰め込まれていた。
「トリート。……ほら、これをやろう」
「わあ、ありがと!」
「きれいな色だねぇ」
「人数分ある、そんなに慌てるな」
 はしゃぐこども達の中で親友が埋もれてしまわぬよう、露もこっちこっちと皆に呼びかけて。白猫はふわりと耳と尻尾を揺らし、ふんわり甘い笑みを浮かべる。
「あたしにも合言葉を教えてちょうだい♪」
「トリックオアトリート!」
「は~い♪ よくできました!」
 彼女の呼びかけに応じて、口々に呪文を唱えたご褒美を配っていく。焦らないでも大丈夫よ、と順番の行列を整えて、一人一人を抱きしめながらゼリーを渡す。
「レーちゃん特製ゼリーはとっても美味しいのよ?」
「そうなの? 食べるのがたのしみだなぁ」
 ふいに露がシビラへと目配せして、まだ貰ってない子はこっちへ、とこども達を集める。幼子達が露へと移動した隙に、シビラはその光景を眺めていた一人の女性へと近付いた。
「素敵な夜をありがとう、猟兵さん。皆、とっても楽しそうで……私もうれしいわ」
 しゃがんで少女に礼を言う女性に、シビラは魔女帽子で隠れてしまう視線を少しだけあげる。ん、と突き出したゼリー入りの小袋に、女性は不思議そうな表情を見せた。
「この拠点の全員分くらいは用意している。大人だろうと祭は楽しむべきだろう」
「そんな、貰っていいのかしら……」
「気にするな。彼女も、君達全員に喜んでもらいたいだろうしな」
 ちら、と露のほうを見て、金の眼は女性へと視線を戻す。そんな魔女と白猫の関係に気付いたように、女性は優しい笑みを向ける。
「……あの子と仲が良いのね。私にも、毎年一緒に仮装をする子が居たわ」
 どこか懐かしそうで寂しげにする笑顔が、ほんの少しだけシビラの胸に刺さる。ありがとう、とゼリーを受け取る女性は、お友達を大事にね、と少女に語りかけた。
「レーちゃん、ちゃんと受け取ってもらってるわね」
 きっとこれで、拠点の人々全員にお菓子が配られるだろう。甘いものが心を満たすことを、露はようく知っている。鮮やかな花の道と、橙の灯りに彩られた遊園地はあたたかい。
「いつも頑張ってて、皆とってもえらいわ♪ 今夜はおもいっきり楽しんでね」
 はあいと明るい返事と笑顔を咲かせたこども達を見ていると、なんだかそれだけでこちらもうれしくなってしまう。こうしていると、無事に戦争がひとつ終わったことを実感する。
 そうだ、と思い出したように、一番年少に見えた少女に手招きして。露はつけていた尻尾を外すと、そっと少女の腰にくっつけて。
「これであたしとおんなじ猫さんよ♪」
「……ありがとう」
 にゃんにゃん、招くポーズをしてみせれば、恥ずかしそうに少女も真似をした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ハヤブサさま』

POW   :    獲物発見
全身を【風のオーラ】で覆い、自身の【肉を求める意思】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    抉り喰らう
【嘴】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    貪欲なる意思
【肉を求める意思を籠めた】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間】の協力があれば威力が倍増する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ハロウィンの夜は更けて、いつの間にかパーティーはおしまいに辿り着く。片付けは全て此方でやっておくからと、猟兵達が拠点の人々に眠るように促す。

「見張りまでやってもらえるなんて、なんだか申し訳ないわね」
「久々にぐっすり眠れそうだ……お言葉に甘えよう」

 そうして人々が寝静まった夜半を、ぴちち、と小鳥の群れが狙う。愛らしい見目とは裏腹に、骸の海から蘇った彼らは、簡単に拠点の人々を抉り喰らってしまうだろう。
 けれど、そうさせないため。猟兵達が此処に居る。

「りょうへいのおにいちゃん、おねえちゃん、おやすみなさい!」
「素敵なハロウィン、ありがとう」

 こども達の笑顔を守るため。大人達の安眠を守るため。
 仮装姿のヒーロー達は、肉食鳥の群れと夢の跡地で静かに戦闘を始めた。
百鬼・智夢
【対の華】
そうですね…皆さん折角気持ちよく寝ていますから
なるべく静かに戦いましょうか

★リアムを経由して呼び出した善霊さん達に
【オーラ防御】を張ってもらい
★クロや★心霊タクシーに盾替わりになってもらいながら
★破魔の薙刀で迎撃

ただ…肉食とはいえ、可愛い子達を攻撃するのは心が痛みますし…
澪君がうずうずしているのも感じるので
少し考えて【永遠の眠り】を発動

召喚した霊達による眠りの【呪詛】で
ハヤブサさま達を眠らせたいです

普通の眠りじゃなく呪いなので…多分、死んでも起きないかと…

澪君の様子を見て、私もそっとハヤブサさまを撫でてみたいです
…ふわふわ…

最後は霊達に【浄化】の炎で
眠らせたまま倒してもらいます


栗花落・澪
【対の華】
ハヤブサさまはいつ見ても可愛いなぁ
可愛いけど…一般人を犠牲にするわけにはいかないからね

2人顔を見合わせ、唇に人差し指を当ててから
僕は翼で空に舞い空中戦
【高速詠唱】から放つ光魔法の【属性攻撃】に【催眠術】を乗せて
こちらに攻撃を仕掛けにくくなるよう撹乱したいな

あわよくば同士討ちでもしてくれればこっちも楽だし
もふもふがぶつかって跳ねて…ああぁ可愛いぃぃ(心の声

百鬼さんがハヤブサ様達を寝かせてくれたら目を輝かせ
触ったら起きちゃう?

百鬼さんの言葉選びがどことなく物騒なのは今に始まった事じゃないので
喜んでもふもふに飛び込みます
正直このために頑張ってるとこある

あとは指定UCで優しくトドメを



 夜更けに明かりの落ちた廃遊園地は、普通ならそれだけで不気味で物悲しい。けれどこの拠点は、人々の営みが確かに息づいているのが感じられる。
 ぴちちぴちちと鳴くハヤブサ型オブリビオンを見て、天使の王子様はほんの少し見惚れるようにため息をつく。
「ハヤブサさまはいつ見ても可愛いなぁ」
 丸っこいフォルムにきちんと装備したゴーグルは、骸の嵐による目の保護だろうか。可愛いけれど、一般人を犠牲にする訳にはいかない。栗花落・澪がそう呟けば、悪魔の修道女がそうですね、とこくり頷く。
「皆さん折角気持ちよく寝ていますから」
 なるべく静かに戦いましょうか。百鬼・智夢と澪は互いに顔を見合わせて、しぃ、と唇に人差し指をあてる。それが二人の戦いの合図で、澪の薄紅の翼が音もなく羽ばたく。ふわりと宙に浮いた王子様に続いて、修道女は優しくテディベアに唇を寄せた。
 五百近い善なるゴースト達が、人々の寝床への道を阻む。この数の霊を相手に、小鳥達が一気に突破できるとは考えにくい。憂いなく戦える、と飛び出した澪がすばやくおまじないを唱えて、夜をあわく照らす光の魔法を解き放つ。
 善霊の群れの前に、対なる華の相手をすることに決めたらしい小鳥達が空舞う澪へ突進を仕掛けるも、不思議な光に目を眩ます。きらきらとしていた瞳はとろんとして、突進の威力がみるみるうちに衰える。なかには仲間にぶつかりに行く者も居て、王子様の催眠魔法はしっかりと効いた様子。
「あわよくば、と思ってたけど」
 こんなにあっさり引っかかってくれるなら、こちらも楽でありがたい。もふもふ同士がぶつかって、鞠のようにぽぉんと跳ね飛びあっている。
(ああぁ可愛いぃぃ)
 そんな光景を見ていると、思わず心の声がもれ出てしまいそう。一方、地上で迎撃に立つ智夢に従う骨犬が、鋭い牙で敵の肉を食い千切る。それだけでは足りないからと、少女は言葉を紡ぐ。
「お願いします、来てください」
 誰に頼むでもなく告げた合言葉をきっかけに、あの世の闇からぬるりと現れる一台の車。“乗客中”のランプが赤く灯ったそれは、間違いなく心霊タクシーと呼ぶのにふさわしい。急ブレーキをかけても一切音のない不思議なタクシーが盾と成って、ふわふわの小鳥達のタックルから智夢を守る。
 羽毛が辺り一面に飛び交う中で、とん、と修道女は地を蹴った。振るった薙刀は風を切って、破魔を宿した刃がうつくしく煌めく。ただ……、
「肉食とはいえ、可愛い子達を攻撃するのは心が痛みますね……」
 ちら、と宙を見上げれば、空を踊る澪が明らかにうずうずしているのも感じるし。ふむ、と少し考えて、先程呼びだした善霊の一部をこちらへ呼ぶ。
 智夢に呼ばれた数十名のゴースト達は、彼女に言われるまでもなく自らの力を発揮する。深い深い眠りに堕とされた小鳥達が、次々と地面へぽてぽて墜落していった。
「わ、眠っちゃった!」
 あっという間にみんなぐっすり夢の中。気持ちよさそうに寝息を立てるハヤブサ達に、澪は目を輝かせている。
「触ったら起きちゃう?」
「普通の眠りじゃなく呪いなので……多分、死んでも起きないかと……」
 智夢の言葉選びがどことなく物騒なのは、今に始まったことではないから。それじゃ遠慮なく、と、少年は喜んでもふもふの山に飛び込んでいく。
「正直このために頑張ってるとこある」
「正直すぎませんか……?」
 もふもふを満喫している澪の様子を見て、智夢もそっと小鳥に触れる。
「……ふわふわ……」
「でしょー?」
 ほんのしばらくの間、二人でやわらかな幸せを堪能すれば、満足したところできちんと仕事の続きにとりかかる。王子様の紡ぐ歌声は子守唄のように拠点中を包みこんで、花弁の嵐刃が小鳥達に降りかかる。同時にゴースト達の浄化の焔が色づいて、オブリビオン達は骸の海へと還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
機動力が高いだろうから飛行し難くしてやろうか。
鳥が無暗にあちこち飛び回られては少々厄介になる。

限界突破した全力魔法を高速詠唱で【崩圧陣】行使。
範囲攻撃と属性攻撃を付与し術の強化を図っておく。
人々の寝室になっている場所に影響のないようにする。

鳥への直接攻撃は露に全面的に任すことにしよう。
私は鳥の動きを抑制する術が生む重力の維持に集中する。
戦闘中は常に周囲の警戒は欠かさないでおく。
子や大人が物音に気付いて顔を出す可能性もある。
鳥が逃げる場合は追撃はしない。好きに逃げればいい。

戦闘終了後は念の為に見晴らしの良い場所で警戒を。
露がもってきた毛布に包まりながら二人で気を払っておく。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
わ♪わ♪この鳥さん凄く可愛い…けど倒す相手なのよね。
可哀想だけどここに住んでいる人達の邪魔はさせないわよ。

レーちゃんの術が発動してる間はあたしが攻撃をするわ!
二本の愛剣で【銀の舞】を繰り出すわ♪えーい!
2回攻撃と早業でザクザクっていくわ♪ごめんなさーい!
回避は野生の勘とか第六感とか見切りで避けるわよ!

レーちゃんの方に向かって行く鳥さんには容赦しないわ。
あとあと拠点の人達には手出しさせないわよ!
「あたしのレーちゃんに、触れさせないわ!」
(『誰が君のだ』とつっこまれるがスルー)

戦いが終わっても警戒するって本当にレーちゃんらしいわ。
だから重ねた毛布を一緒に使ってあたしも♪



 荒野の夜を彩るように、あるいは人々の眠りを妨げるように。小鳥の囀りに魔女は顔を顰めて、腰に携帯している魔導書の頁を捲る。シビラ・レーヴェンスと同じタイミングで、白猫も臨戦態勢に入ったものの、愛らしい見目のハヤブサ達についに声がはしゃいでしまう。
「わ♪ わ♪ この鳥さん凄く可愛い……けど倒す相手なのよね」
「露、わかっていると思うが手加減はなしだぞ」
 友人が仕事で手を抜くことはあり得ないけれど、シビラは神坂・露に一応釘を刺す。それをうざがる様子もなく、勿論、と露は素直に返して。
「可哀想だけど、ここに住んでいる人達の邪魔はさせないわよ」
 ぴちち、と鳴き喚いた小鳥達が少女二人への攻撃を始めるよりもはやく、魔女は素早く唇に呪文を乗せる。鈍色の魔法陣が観覧車よりも高い位置で無数に広がっていくと、それは彩のないオーラとなってオブリビオンの丸い身体に付与された。
「無暗にあちこち飛び回られては厄介だ」
 ――飛び辛くしてやろう。
 ぴ? と不思議そうな声をあげた小鳥達が、次々と墜落していく。限界まで強化された重力魔法は広範囲に及ぶものの、魔女の卓越した技術が拠点の寝床を守るように練られている。術の維持に努めるシビラの分まで、攻撃を任された露が本領を発揮する。
 小鳥達へと音もなく駆けだす白猫の両手には、二振りの剣が在った。欠けたコーヒーカップをジャンプ台に思いっきり地を蹴って、固まりとなったふわふわの小鳥の群れに突っ込むと、繰り出された刃と少女の髪彩によって銀の風が吹き荒れる。
「あたしは捕まったりしないんだから♪」
 重力によって動きが鈍くなろうと、小鳥の嘴の鋭さは変わらない。露の隙を見ては突っつこうとするものの、白猫はひらりと躱して小鳥を引っ掻き続けた。
 ふいに、飛び交う羽毛の中で舞う露をすり抜けて、数羽のハヤブサがシビラに狙いを定める。拠点の人々が物音に気付かぬよう、術を維持しながら周囲の警戒を欠かさず友人の戦いを見守っていた魔女は、素早く露に声をかける。
「露、」
 シビラは友人の名前を、たった一度呼ぶだけでいい。その言葉を、彼女は絶対に聞き逃したりしないと信頼しているから。親友に向かっていく小鳥の群れへ、露は一気に距離を詰めた。ふたつの刃が小鳥達を切り刻む度に、光が閃いていく。だいすきな人と拠点の人々に手出しするなら、容赦はしない。
「あたしのレーちゃんに、触れさせないわ!」
「誰が君のだ」
 すぐさまつっこまれたけれど、そこはスルー。だってあたしは本当にそう思ってるんだもの。なんて口には出さず、白猫は続けざまに舞を披露し続ける。
 二人に恐れをなしたのか、これ以上拠点を攻め入ることは難しいと判断したのか。まだ息のある小鳥達が、ふらふらと廃遊園地から逃げ出していく。
「あ、皆逃げてくわね」
「追う必要はないだろう、好きにすればいい」
 逃げていくなら追撃は無用、とシビラが術を解いて、露も頷き二振りの愛剣を仕舞う。本来ならこれで彼女達の役目は終わりなのだけれど、二人はまだ、グリモア猟兵の元へは帰らない。
 見晴らしの良い小高い場所で、少女達は毛布にくるまっていた。その視線の先にあるのは、先程まで居た廃遊園地の拠点。
「戦いが終わっても警戒するって、本当にレーちゃんらしいわ」
「……いつまた別の敵が襲ってくるとも限らない」
 そうね、と露も頷く。二人とも心は同じで、たった一日のハロウィンの夜を、拠点の人々にとって楽しいだけの思い出にしてあげたかった。
 重ねた毛布と二人分のぬくもりが、朝を待つ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 朝が来る。またいつものように、薄いココアを人数分淹れる。
 だけど今日は、なんだか昨日よりすっきりした目覚めだったと思う。

 久しぶりに、夢を見たのを覚えている。なりたいものになった夢。
 皆が笑いあって、甘いお菓子を食べた素敵な夜。
 それが幻なんかじゃなかったことを、贈り物の雑誌とお菓子の山が教えてくれた。

 ――今日も、夢の跡で一日が始まる。

最終結果:成功

完成日:2021年11月16日


挿絵イラスト