特訓! 激闘! マウンテンバイクレッツ&ゴー!!
●コンコンコンと叩けば
――キマイラフューチャーのど真ん中にそれは現れた。
「これは……マウンテンバイクコース!!」
「知っているのかキマイライデンーっ!?」
髭の長いキマイラにやけに顔の濃いバーチャルキャラクターの人が反応した。
マウンテンバイククロスカントリー。
距離は約3キロ強。
周回は約6周回。
延々と続く登り。
ロックセクションと言われる凸凹の激しい石の路面。
高速のダウンヒル。
急な段差を乗り越えるドロップオフ。
そしてテクニックを要求されるバンプトラック。
90分の中に行われるのはマウンテンバイクの総合競技。
「まさか、本当に実在していたとは……」
「で、どうする?」
呻くキマイラにバーチャルキャラクターが問う。
出てきたからには使わないと生きていけないのが彼らの性。
「そんなこと決まっているだろう……」
「貴方は!?」
「自転車仮面ー!?」
突然現れたヒーローマスクの老人に二人が反応した。
「猟兵の皆さんに――レースをしてもらうのが一番燃えじゃね?」
ぶっちゃけた老人の言葉にキマイラフューチャーの住民達は深く頷いた。
●そんなわけで自転車レースです
「正直、私はこういう世界での出番が来ないと思っていたんだ」
グリモア猟兵、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)の目は遠くを見ていた。
「独り言だ、忘れてくれ。では本題に移ろう。キマイラフューチャーの古代バーチャル遺跡で起こった一件は知ってるね。そのおかげでバーチャルキャラクターは様々な姿になることが出来たのだが……一つ厄介なことがある」
煙草をもみ消し、タイプライターを打鍵するグリモア猟兵。
文字を駆使したアートなイラストで作られるのは自転車に跨った猟書家、キングブレイン。
「かの一件でキングブレインはテレポート可能な自転車――ブレインバイシクル1号で逃走した。正直、これは見逃せない。何としても捕まえる方法を考えるべきだと思う」
キーをタイプするのを止め、探偵屋は懐から一枚のチラシを取り出した。
「ちょうど良くキマイラフューチャーでマウンテンバイクのコースが出来たのでレースをやることになった。君達はこれに参加して実戦形式で特訓してほしい」
グリモア猟兵がその場に居る人間の視線を受け止め、そして肩を竦める。
「私もおかしいと思ってる。なんでバイクレースなのか? キャバリアや他の方法で何とか出来ないかと……まあ、ぶっちゃけて言うとそうするべきだと予知してしまったからだよ……あと、あの世界の空気的に、ノリに乗った方が多分勝ちだろう?」
さらに懐から取り出したのは分厚い自転車のカタログ。
「幸い、キマイラフューチャー方々がノリノリで君達の自転車を用意してくれた、希望の物はそろうだろう。カタログを参考に要望してみてくれ」
ベルの音が鳴り、開かれるのはレース会場への道。
「ああ、そうそう。レースの後半にはキングブレインも乱入する。殴りたくなると思うが特訓の趣旨は自転車で勝つことだ、前哨戦とばかりに今回はレースで勝ってくれ」
さり気なく重要なことを話す探偵屋の目は少しだけ楽しそうに思えた。
みなさわ
やらないと負けだと思った。
御世話になっております、みなさわです。
今日はシャカリキペダルMTB編です。
●種目
マウンテンバイククロスカントリー。
3キロ強のオフロードのコースを6周回、約90分で争います。
どんな競技か知りたい方は赤い牛のチャンネルなどで動画が見れますのでご参考に。
●プレイング
第一章は自転車をチョイスし、各セクションをどのようにクリアしていくかといった感じに書いていただければ良いかと思います。
バイクとコースは以下の通りです。
●バイク
『ハードテール』
前輪の部分にだけサスペンションのある自転車です。
軽さと反応に優れ、登りやバンプトラックにて力を発揮しますが下りやロックセクションは苦戦するでしょう。
『フルサスペンション』
前輪と後輪にサスペンションが着いたバイクです。
総合力に優れ、あらゆる路面を走破する能力を持っていますがバンプトラックは若干苦手なところはあります。
『E-Bike』
電気の力でアシストしてくれる夢のようなマシンです。
その力は登りで大いに発揮され、ロックセクションすら楽に突破します。
反面、重量は重い上にある一定の速度でアシスト機能がオフになるという弱点があります。
●セクション
コースにはいくつかの難関があります、ここをどうするかがレースでの順位を上げる鍵となります。
『登り』
無限に続くかのような登り坂です。
路面はやや滑りやすく、脚力だけ、回転力だけでは先に進めません。
身体の強さが勝負を決めます。
『ロックセクション』
地面に埋まった石による凸凹セクションです。
バイクの操作や機能を駆使して戦うのがお勧めです。
『ダウンヒル』
土の上の高速スラローム、ジャンプ台、橋などで構成された下りセクションです。
飛ばせばコースから吹き飛び。ブレーキをかけっぱなしだと先に進めない。
バイクと自分のテクニック、両方が試されるでしょう。
『ドロップオフ』
高さ数メートルの段差です。
バイクを信じて前に行かないと死にます。
苦手な方には安全なルートも用意しておりますが、時間がかかります。
『バンプトラック』
ゴール前に用意されたバンクと小さな山で構成されたセクションです。
バイクの反応とプレイングが全てを決めます。
●キングブレイン
我慢できなくなって第二章から乱入します。
彼をどう抑え込んで前に出るか……二章はそういうプレイングが良いかと思います。
●ユーベルコード
他の選手やコースを破壊しないなら使用可能です。
むしろ必殺技は必要でしょう。
●その他
一章及び二章終了後にその時点の順位を断章にて告知します。
頑張ってください。
また、マスターページも参考にしていただけたら幸いです。
それでは皆様、よろしくお願いします。
第1章 冒険
『白熱の自転車レース!』
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POW : 力の限り漕ぎまくり、スタミナに任せて前を走る
SPD : 前半は体力を温存し、ここぞのタイミングで一気に仕掛ける
WIZ : 対戦相手を利用したコース取りを行い、風の抵抗を避ける
👑7
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●スタート前
招集エリアに並ぶのは人でもキマイラでもない。
――彼らの名は猟兵
埒外の存在たる集団は様々なバイクに跨りスタートを待っている。
「さあ、あと5分でレースが始まります。実況は私バーチャル濃い顔、解説はキマイライデンさんと自転車仮面さんにお願いします」
「どうも」
「うむ」
実況の言葉に頷く解説二人。
それぞれ違う視点からレースを紐解く役割を与えられているのだろう。。
「さて今回、猟兵同士で競われるマウンテンバイククロスカントリー。ロードレースのように片道のコースではなくて周回するのですね。ライデンさん」
「そう……各セクションをどう攻めるか、最初から飛ばしていくか、それとも前半は粘って先頭に食らいつき後半で引き離すか。選手には各セクションの突破に加えてレース全体での戦術も問われるでしょう。ギャンブルでいうなら『逃げ』『先行』『差し』『追い込み』と言った所です」
キマイラの言葉に頷く実況、そして視線を動かす先にはヒーローマスクの老人。
「なるほど、勝利の女神がキスをしそうですね。そしてマウンテンバイクと言えばバイクのチョイスも影響しますね。自転車仮面さんはどう見ますか?」
「無難な選択はフルサスペンションじゃろう。総合力が問われるコース故にそつなくこなせる。けれどハードテールも侮れない、軽さで登りをリードして後半までしのげるならバンプトラックで速度を上げられる。そしてE-Bike、脚力を温存するならこれが一番じゃ。何せアシストしてくれるからな……だが高速レースに持ち込まれたら、その機能が潰されて重さが仇になる。如何に難所で先行しペースをコントロールできるかが鍵じゃな」
「つまりはバイクによって合っている戦術や走り方があるという事ですね?」
解説の言葉を噛み砕く実況。
そして頷く、二人の解説者。
「では、そろそろ始まります。スタートはテレビウムのカウントマンさんが担当します」
視線の先にはピストルを空に構えるテレビウム。
その画面に浮かぶ数字がどんどん減っていき、レースの開始が近いことを知らせる。
5、4、3、2……1……
ピストルが鳴り、選手たちは一斉に走り出した。
レースが始まったのだ。
エリー・マイヤー
自転車に乗って戦うのに、ノリに乗った方が勝ちとはこれいかに。
まぁ、何でもいいんですけど。
とりあえず目についたこのハードテールを借りますね。
自転車は初めてですが、まぁ何とかなるでしょう。
はい何ともなりませんでした。自転車って難しいですね。
仕方ないので【念動ハンド】でバランスとります。
自分の体を支えて横倒れと吹っ飛びを防止しつつ、
ペダルもハンドルも補助させて全念動運転です。
疲れ知らずの念動力で登りもスイスイ、石の凸凹も強引に突破、
ダウンヒルで飛びそうになっても無理矢理念動力で軌道修正、
そのままドロップオフもかっ飛ばし、
バンプトラックも後ろから押して怒涛の加速、
最初から最後まで全力でかっ飛ばします。
和田町・いずみ
自転車に乗るのは久しぶりですが、自転車レースに出るのは初めてですね。
バイクは『E-Bike』にします
理由は得意の電脳魔術を駆使して組み合わせることができるからです。
セクション
『登り』
『E-Bike』のアシスト機能と電脳魔術を組み合して登ります。
『ロックセクション』
『E-Bike』のアシスト機能と電脳魔術を組み合して突破します。
『ダウンヒル』
電脳魔術を駆使して計算し、最適な運転操作で突破します。
『ドロップオフ』
急がば回れということで安全なルートで行きます。
『バンプトラック』
電脳魔術を駆使して計算によるサポートと『E-Bike』のアシスト機能によるダブルアシストで最適な運転操作で突破します。
●1st lap:電脳! 念動! バイクは自由だ!!
号砲!
最初に飛び出したのは和田町・いずみ(人間の電脳魔術士・f07456)。
またがるのはE-Bike、モーターによるアシストで走り抜ける新世代のスポーツバイク。
よくある電動自転車と違うのはモーターのトルク。
荒れた路面すら駆け抜けるそのパワーはライダーの脚力を補い、バイクコントロールに集中させることが可能なのだ。
さらに――
「和田町選手、すいすいと登っていきますね」
「なるほど。いかなる方法か分からないが、路面状況に応じてバイクのアシスト力がコントロールされておる……まるで電子制御されたラリーカーの様じゃ」
実況がいずみのペダリングに注目し、解説がバイク面からその秘密を解析していく。
それは電脳の魔術。
ユーベルコードによって引き上げられたハッキング能力がモーターの制御系をコントロールし、視力から入る高度な情報量を処理していく。
parablepsia
見えざる魔術
「自転車レースに出るのは初めてですが!」
先頭で登り坂を駆け抜け、凸凹した岩すらも電子制御されたアシストモーターが脚力を補い、コントロールに割くリソースすら削る。
「私には電脳魔術があります!」
最早、いすみは脚を回すだけで勝利できるだろう!
……普通ならそう思うところだが。
別の方法で迫る猟兵が背後からやって来た。
「自転車に乗って戦うのに、ノリに乗った方が勝ちとはこれいかに」
横倒しになったハードテールに跨り、路面を枕にしてエリー・マイヤー(被造物・f29376)は呟いた。
無理もない。
運動は苦手なのだから。
「自転車は初めてですが、まぁ何とかなると思ったんですが……何ともなりませんでした。自転車って難しいですね」
そして立ち上がるバイク。
決して足は着いていない。
・・・・・・・・・・・・・
ひとりでに立ち上がったのだ。
そこからはエリーの快進撃が始まる、先頭に追い付かんばかりの勢いで。
オフロードの登りは難しい。
舗装路に比べ路面は平坦でなく、乾いていれば砂が、濡れていれば泥が、タイヤを滑らせていく。
けれど、フラスコの才媛は意に介さず。
口元に煙草を咥え、悠々と登っていく。まるで誰かの手が押しているかのように。
「タバコ大丈夫なんですか? キマイライデンさん」
実況の言葉にキマイラが適当なところをコンコンすると出てくるのはルールブック。
「えーと、ルールブックによると……競技中に煙草を吸ってはいけないと書いてないですね。普通吸わないですし」
解説の言葉に濃い顔のバーチャルキャラクターがですよねーと頷いた。
一方、エリーはというとバイクコントロールが必要なロックセクションを力技で走り抜け、いずみに迫る。
始まるのはダウンヒル。
レースのスピードは一気に上がり、フィジカルではなくテクニックが咲くレースの華。
電脳の魔女が眼鏡の位置を直す。
レンズが舞い上がる砂礫を跳ねのける中、計算されるのは最適なフォーム。
未経験者のいずみが無理に攻めれば空を飛ぶのは確実。
ここは我慢の一方で、最後のドロップオフも避けてエスケープラインを走る。
その視界をフラスコの才媛が舞った。
Psy――Hand!!
念動ハンド走行
登りを支え、岩場を走り抜けたその御業こそは念動力による見えざる手。
脚力を補い、精密なペダリングを発揮したそれはある種のアシスト。
機材も味方した。
軽量なハードテール。
軽さと余計な要素を取り除いた車体は念動力を余すことなく受け止め、精密な操作を実現させる。
バイクの軽さと念動力。
二つが組み合わされば、高さ数メートルに及ぶドロップオフで華麗なアーチを描けるのだ!
「やりますね!」
「ええ、まあ」
いずみの言葉にエリーは答えを返す。
それ以上の言葉はない。
そんな余裕はもうなくなるのだから。
コース最後のセクション、バンプトラック。
角度のあるカーブと人工的な小山で構成されたテクニカルゾーン。
加速して飛び込んだのはフラスコの才媛。
遅れて電脳の魔女。
だが、バンクの着いたカーブを曲がり、山を先に超えたのは――和田町・いずみ!
バンプトラックも圧倒的なパワー差があれば先に進むことは可能。
けれど、このセクションに要求されるのはバイクをコントロールするテクニック。
パワーでなく、運転操作にリソースを割り振ったいずみが一歩、先を獲った。
ペダルを回し電脳の魔女は先にゴールラインを潜り抜けた。
だがレースは二周目に入ったばかり。
そして猟兵達も背後から迫っている。
彼らがこれから牙を向けるか、それとも二人が先行逃げ切りを見せるか……戦いの趨勢はまだ決まらない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
コンコンコン…システム・フラワーズ恐るべし…
出て来た戦機用フルサスペンションで参加
やはり重量の関係でスピードを落とすのが不得手ですね
ブレーキのタイミングに特に気を配らねば…
さて、一周して(●情報収集での)コースの解析は完了しました
じわりと堅実に順位を上げてゆくといたしましょう
登りは怪力…馬力活かし一気に踏破
ロックセクションは両のサスペンション活かし積極的に前へ
ダウンヒルとバンプトラックはUCに基づき最小限のブレーキで現状可能なコース●見切り、瞬間思考力で調整するコントロールで喰らい付き
勝負時はダウンヒル直前
蛮勇の如き加速!
騎士足る者、高所より騎乗しての跳躍は慣れております
着地衝撃逃し
バンプ備え
荒谷・つかさ
自転車での競争、それも障害込み。
馬術でなら結構自信あるんだけれど……まあ、やってみれば何とかなるでしょう。
自転車は万能型っぽいフルサスペンション
その中でも重くていいので兎に角頑丈なのを選ぶ
何故って、私の「怪力」を活かした走りにある程度耐えられないといけないからよ
基本的には持ち前のパワーを活かしたゴリ押しで突き進む
必要に応じて【妖術・九十九髪】(以下コード)で補助
以下セクション対応
・上り
滑り止めにコードで伸ばした髪をタイヤと路面の間に噛ませる
・ロックセクション及びバンプトラック
パワーと自転車の性能で強引に突破
コードで逐一姿勢制御
・ダウンヒル及びドロップオフ
全力で飛ばしつつコードで着地位置修正
●2nd lap:知性! 怪力! 重量級バトル!!
逃げを看過するほど、レースは甘くない。
2周目に入るとすぐに二台の重量級バイクが前に出て、力強いヒルクライムを見せつける。
「コンコンコン……システム・フラワーズ恐るべし……」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)のバイザーから光る眼はどこか遠くを見ていた。
跨るマシンは戦機サイズに合わせたフルサスペンション。
鋼鉄の身体に耐えうるがゆえに頑丈で、そして車輪も大きい。
気を付けるべきはブレーキだろう、ウェイトそして大径タイヤのジャイロ効果は土の路面に対して相性が悪い。
だが、登りならば……その馬力が重量差を打ち消し、サスとタイヤの力を存分に発揮する。
「一気に出たトリテレイア選手、追いすがるのは……これまた重量級のバイクだぁ!!」
実況が叫ぶ中、猛追するのは荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)。
体格に合わせたフルサスペンションは所々に溶接が追加された金属フレーム。
彼女の脚力に耐えうる頑丈さと形を両立できるのはただ一つの素材、それこそは。
――クロームモリブデン鋼、鉄である。
硬くしなやかな鉄の馬を駆り、つかさが登る。
まるで路面のコンディションなど無視するように力強く荒々しく。
「荒谷選手……これはパワーペダリングですね、重いギアでガシガシ漕いでいます」
「タイヤも路面に食いついて居るしこれはまさか……」
「――むぅ、もしやユーベルコード!?」
実況の言葉に解説の二人が話を繋げる。
だが真相は分からないまま、レースはロックセクションへ場面を移す
ここから二人のライディングスタイルの差が出てくる。
サスペンションの特性を活かし、前に出るトリテレイア。
それに対し、ゴリ押しのペダリングで進むつかさ。
だが路面の石は力を弾き、羅刹のパワーは反動となって返ってくる。
それがロックセクションの恐ろしさであった。
だがつかさは倒れない、まるで見えない糸に支えられているかのように。
しかしその間隙を戦機が突いた!
わずかな隙を見逃さず、巨体に見合わない精密なバイクコントロールで先頭を走ると、そのままダウンヒルへ。
追走する羅刹の女。
下り坂の勢いもプラスされ、その脚力が爆発すればたちまち順位は入れ替わる。
「そのスピードで!」
先行を許したトリテレイアがギリギリのスピードの中、ユーベルコードを駆使して最適なラインを切り裂く。
けれど、追い付くことは難しい。
何故ならコースから吹き飛ばされるように走るつかさが見えない何かをつかって路面を掴み爆走しているのだから。
Spirit of Hair
ツクモガミ・アンカー
其れは見えない髪の毛。
それが羅刹の姿勢を制御し、登りにおいてトラクションを稼ぎ、下りにおいてアンカーと化す。
つかさが先行し、ダウンヒルが終われば待っているのは数メートルの段差、ドロップオフ。
ここで……戦機が攻めた。
それは蛮勇が如き加速。
オーバースピードで飛び込めば、飛距離が伸びる分、落差で姿勢を崩すことになる。
だが、それは杞憂。
トリテレイアもまた――ユーベルコードを発動させていたのだから。
Riding logic
鋼の擬似天眼
センサーによって収集された情報は超高速演算によって解析される。
あらゆる路面を正確に走り抜けたのは彼の性格もあるが、それ以上に――この技が活かされていたのだ。
つかさも髪の毛を飛ばし、ウィンチのように引っ張ることで着地位置を修正するが、速度差は補えない。
先頭はまた変わり、戦機が前、羅刹が後ろ。
そして勝負はバンプトラックへ。
「ここで!」
つかさが吠え。
「決めます!」
トリテレイアが決意する。
最小限のブレーキから最適なラインへ飛び込むトリテレイア。
自転車に馬力を託し、強引に走り抜けるつかさ。
バンクの着いたカーブを抜けたのは戦機!
だが、その先の小山を超えたのは……
つかさであった。
バンプトラックはライン取りとバイクコントロールで速度を乗せていくゾーン。
ブレーキ……たった一つの減速動作が勝負を決めた。
二周目、先に抜けたのは荒谷・つかさ。
遅れてトリテレイアが後ろに着き、空気抵抗の少ない領域で脚を溜める。
勝負は三周目……まだ序盤が終わったばかりだ!
そして転機はここに訪れる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『猟書家『キング・ブレイン』』
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POW : 侵略蔵書「スーパー怪人大全集(全687巻)」
【スーパー怪人大全集の好きな巻】を使用する事で、【そこに載ってる怪人誰かの特徴ひとつ】を生やした、自身の身長の3倍の【スーパーキング・ブレイン】に変身する。
SPD : 本棚をバーン!
【突然、背中のでかい本棚を投げつけること】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクションをよく見て身体特徴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 脳ビーム
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【脳(かしこさを暴走させる)】属性の【ビーム】を、レベル×5mの直線上に放つ。
👑11
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●3rd lap:アイツがとうとうやってくる。
三周目に突入する中、実況を担当するバーチャルキャラクターがレースを振り返るように口を開く。
まるでこの後来る嵐を予期するかのように。
「ホールショット――最初は和田町・いずみ選手が飛び出しました。まるで電子制御したかのようにE-Bikeをコントロールし、エリー・マイヤー選手の念動力によるバイクコントロールとアシストに対しギリギリの差でトップへ」
「本当に細かい視点の差でした」
合わせるように解説を務めるキマイラが言葉を繋いだ。
1st lap result
1:和田町・いずみ
2:エリー・マイヤー
3:トリテレイア・ゼロナイン
4:荒谷・つかさ
……金愚武礼院
「二周目からは荒谷、トリテレイア、両選手が先行し力強いレースを展開しました。このラップでのトップは荒谷選手、果敢な攻めが勝負を分けましたね」
「徹底的な力攻めの荒谷・つかさに対し、まるで馬力に加えてコンピューターのように計算された走りを見せたトリテレイア・ゼロナイン……二人とも素晴らしいバトルじゃった」
ヒーローマスクの言葉に実況が頷く。
2nd lap result
1:荒谷・つかさ
2:トリテレイア・ゼロナイン
3:エリー・マイヤー
4:和田町・いずみ
5:金愚武礼院
「さて、三周目ですが……おや? 誰か後ろから追い上げて――怪人です! 自転車に乗って背中に本棚背負ってます!」
実況が怪訝な様子で見守る先には、普通の自転車で迫る骸骨っぽいヤツがいた。
「ブレブレブレ……ゲホッグホォッ!!」
「むせましたね」
「そりゃあ、息も絶え絶えで走ってるからのう」
せき込む男にツッコむ実況と解説。
呼吸を整えると金愚武礼院いや、キング・ブレインが改めて口を開く。
「ブレブレブレ(笑い声)! 皆さま、面白いことをしてますね? 吾輩も面白そうなのでついエントリーしてしまいました、偽名で」
「金愚武礼院」
呼吸が落ち着いたのか、噛まずにペダルを漕ぐ猟書家。
誰かが何かを叫んだが、全員が無視をした。
「だが、それもここまで! 勝負を決めさせていただきます! スーパー脳ビームライディング!」
キング・ブレインから発射されるビーム、だがそれは猟兵ではなくコースに刻み込まれ、その上をオブリビオンは走り出す。
「おーっと、キングブレイン、まるで暴走したかのようなペダリングだぁ!!」
「いや、アレ、暴走してますよ」
「うむ、かしこさを暴走させることで脳のリミッターを外してるな」
実況の叫び声に二人の解説者がユーベルコードの使い方を噛み砕く。
ビームで作ったコースラインを走ることで限界を超えた走りを見せるキング・ブレインのユーベルコード。
たちまち猟書家はトップに躍り出て、三周目のトップを奪う。
3rd lap result
1:キング・ブレイン
2:トリテレイア・ゼロナイン
3:和田町・いずみ
4:荒谷・つかさ
5:エリー・マイヤー
けれど、4周目に入ったところでキング・ブレインは肩で息をし始めた。
「…………」
口にしなかったが、誰もが分かっていた。
彼は全力を出し……そしてバテた。
勿論チャンスである。
回復する前に各セクションのどこかに絞ってアタックをかければキング・ブレインといえど先行を許すだろう。
そうなればレースは猟兵のペースに戻せる。
――勝機はそこに有る!!
エリー・マイヤー
さすが歴戦の猟兵です。
付け焼刃の念動運転によるゴリ押しでは、歯が立ちませんね…
ですが私にも意地があります。最後まで全力を尽くしますよ。
上り坂は軽いバイクを念動力でアシストしてスイスイ登ります。
ここで速度を出して、何とか巻き返して先行したいところですね。
ロックセクションは逆に速度は抑え気味で、
ハンドリングや左右のバランス調整に注力しましょう。
ダウンヒルとドロップオフではかっ飛ばします。
多少吹っ飛んでも念動力で軌道修正できますからね。
最後のバンプトラックは慎重に、頂点から頂点へ、
着地時に勢いを殺さず逆に加重で加速できるよう角度や高度を調整します。
ここが最後の勝負所ですが…しくじらないよう冷静に。
●4th lap:頂点から頂点へ勝利へのGrandroad
「さすが歴戦の猟兵、そして猟書家です」
トップを走るキング・ブレインの背中を見つめつつ、エリー・マイヤーが呟く。
「付け焼刃の念動運転によるゴリ押しでは、歯が立ちませんね……」
気を取り直す様にいつの間にか無くなっていた煙草を咥えた
「ですが私にも意地があります。最後まで全力を尽くしますよ」
灯される口先の炎――それはさしずめエンジンに点火するスパークプラグのようであった。
「やりますね、流石はマウンテンバイク。吾輩のブレインバイシクル1号に追いついて来るとは」
滑る路面を強引にペダルを回し、モトクロス並みのパワーで登っていく猟書家が自分に迫り行くフラスコの才媛に舌を巻く。
「ですが!」
しかし黙ってみているほど、お人よしでもない。
ロックセクションに差し掛かったところで、手に持つのは侵略蔵書『スーパー怪人大全集』
「吾輩にもユーベルコードがあるブレブレブレブレ(笑い声)!!」
本が開かれると光が迸り、キング・ブレインの股間に白いブーメランパンツが顕現され、そして頭にもマスク――いや、パンツを被り巨大化した!
「それはもしや――」
エリーの記憶からあんまり思い出したくないというか存在すら消したものが想起される。
「お分かりになりましたか、これこそ白ブーメランパンツ過激派怪人の力!」
白いブーメランパンツによって怪人の力を得た猟書家が顔のパンツを引っ張って離した。
ちょっと痛い。
「そして、この姿がスーパーキング・ブレインなのです!」
股間と顔面の程よい締め付けによって巨大化し得たもの――いわゆるパワー。
デメリットであろう重量増も登り区間を過ぎた今、問題はない。
「そこまでして勝利を得たいと」
「勿論ですとも……何故なら、一位の商品は鍵とライトですからね!」
スーパーキング・ブレインの言葉に一瞬……ほんの一瞬、フラスコの才媛は気を取られた。
その隙を猟書家は見逃さなかった。
三倍の身長から得られるトルクを駆使して岩場を駆け抜ける。
「ペースを乱されました」
揺れるロックセクションを念動力で制御し、エリーが追走する。
多分、真剣なんだろう。
だけど真剣のベクトルが違うのだろう。
だから、虚を突かれた。
けど、それはもう終わり。
ここからが逆転の開始だ。
ダウンヒルで速度を上げ、吹き飛ばす様にビルドされた下りのスラロームを走り抜け、ドロップオフを飛び越える。
――着地。
背中が見えた、差は車体一台分。
チャンスは一つ……バンプトラック!
先に入るのはキングブレイン。
力づくで飛び込んだバンクを最短距離で走るために低めのラインを走る。
続くのはエリー・マイヤー。
ラインは高め、スピードと姿勢、そして彼女を吹き飛ばそうとする遠心力は全てフラスコの才媛の掌の上。
Psy――Hand!!
念動ハンド走行
遠回りのラインを走っているはずのエリーが徐々に猟書家を追い越していく。
バンクの着いたカーブは頂点を超えるように走ることで実は直線に近いラインとなる。
その上で出口に向かう角度は下り。
姿勢制御さえ完璧なら、そこはバイクの発射台に変わるのだ。
軽さと反応に優れたハードテールが出口でキング・ブレインを抜き、その勢いで小山をジャンプする。
低いラインを走っていた猟書家は小山を登ることで時間をロスし、そしてフラスコの才媛の背中が遠くなるのを見るしかなかった。
「慎重にすれば出来るもんですね」
四周目をトップで通過する中、エリーは独り呟き、再び煙草に火をつけた。
勝った後の一服は何よりも美味い。
それを確認するかのように……。
大成功
🔵🔵🔵
荒谷・つかさ
金愚武礼院……へえ、中々にイカしたエントリーネームね。
良い名前のセンスと走りを見せてくれたお礼に、私の全力も見せてあげるわ。
【逸鬼闘閃・鬼神咆哮】発動
「怪力」による力ずくで強引な走行を、コードの飛翔能力で補助してぶっ飛ばす
具体的には左右に揺られる場所や空中での姿勢制御、路面に喰らい付くためのダウンフォース等
当然自転車レースなのであからさまな飛翔は自重する
基本的にどのセクションでも「怪力」とコードでの制御任せで全力疾走
強いて言うなら仕掛けるのはバンプトラック
ここに金愚武礼院が差し掛かった辺りで放つプレッシャーを全開に
私に気を取られて集中をかき乱されれば、良くて減速悪くてクラッシュ、ってとこかしら
●5th lap:目覚めろ真の力! 気魄のウォークライ!!
レースは続く。
再びトップに躍り出たキング・ブレイン。
三周目で飛び出した時の疲労はもう回復し、徐々にペースを上げていく。
「金愚武礼院……へえ、中々にイカしたエントリーネームね」
そこへ追走するのは荒谷・つかさ。
「ブレブレブレ(笑い声) お褒めいただき光栄です。結構苦労したんですよ、これでも」
褒められて嬉しいのか、胸を張る猟書家。
「良い名前のセンスと走りを見せてくれたお礼に」
登り坂、並走するようにつかさが並ぶと。
「私の全力も見せてあげるわ」
鬼神がコースに舞い降りた。
疾走!
坂を駆けのぼるタイヤから音が消えた。
「これは……」
遅れて登り坂をクリアしたキング・ブレインが呟き、そして後を追う。
「アルパカマッスルさん!」
猟書家の筋肉が張り切れんばかりに隆起し、背中からはワカイヤ(毛の名前)が生える。
「切れた肉体、お借りします!」
侵略蔵書『スーパー怪人大全集』を開くことで得た怪人の力。
そして選ぶのは巨大化ではなく、身長に対して三倍の筋密度。
得るのは力。
並びうるは剛力。
赤い瞳はつぶらに輝き、キング・ブレインがロックセクションを力で走り抜けた。
再び並びうる両者。
「これで落ちないなんて……やるじゃない」
「そちらこそ……やはり真のお姿でしたか」
猟書家の視線に映るのは色を失った髪、異形の手足、舞う焔。
それは人ではなく、神の異様。
真の力を開放したつかさの姿。
神の領域に到達した筋肉が柔らかくペダルを踏む。
10センチしか動かない前後のサスペンションが荒れた路面を受け止め、怪力をコントロールする技術が速度が増す下りでなおもペダルを回転させ、速度を上げる。
「そのお力、力だけではないと見ました!」
自らの筋肉によってダウンヒルで暴れるバイクを抑え込み、疾走するキング・ブレイン。
しかし……しかし……
「不思議ですね……コースは空いているはずなのに、抜きどころが見つかりません」
何かに阻まれているように猟書家はつかさを抜くことが出来なかった。
鬼神が飛び、遅れてキング・ブレインがドロップオフを超える。
落下する衝撃を受け止める猟書家に対し、つかさは羽根が生えたようなジャンプで距離を取り、トップを走る。
「なるほど! 飛翔能力を空力とバランス制御に使いましたね」
能力を看破したオブリビオンが我、得たりとばかりにペダルを踏む。
再び並ぶ両者。
勝負はバンプトラックへ持ち越された。
先に行くのはキング・ブレイン。
相手の能力は分かった、ならばここが抜きどころと見た猟書家が全力でペダルを踏みバンクへと飛び込む。
後に続くのは荒谷・つかさ。
真後ろにピッタリと張り付くと、小出しにしていたそれを――解放する!
Wild Hunt・Warcry
逸鬼闘閃・鬼神咆哮
放たれるのは強烈なプレッシャー。
トップを競り合うMTBレーサー達は相手がアタックする度にラインをわずかに塞ぎ、後ろに張り付けば相手の速度以上に加速し圧をかける。
怪力、飛翔、真の姿、全てをかけてペダリングをかければ、猟書家と言えど隙が生まれる。
そこを――突く!
つかさが山を越えた。
先に最終ラップへ入るのは鬼神が一人。
続くのは王が一人。
さらに追う猟兵達。
勝負は最終局面に入った。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
キングブレインを下す為だけなら何処のポイントでアタックを仕掛けても問題はありません
ですが、特別な事情無い限り勝負事には全霊を尽くすのが騎士というもの
このレース、一位を狙います…!
勝負を仕掛けるのは苦手なバンプトラック
ここで逃げ切りは難しい以上、追い抜かれてからの抜き返し狙う超短期決戦
UC起動…二分足らずに全てを賭けます
能力が6倍というのは何も馬力や速度だけに非ず
常識外れに向上した速度に振り回れずバイク操作を適切にコントロールしパワーセーブする精密さ、路面と選手間の状況をセンサーで瞬時に見切り果敢にその間隙を攻める判断力で勝負
ゴールの歓喜は暫し無用
先ずは抜かせて頂きます、キングブレイン!
和田町・いずみ
追いつかれて追い越しましたが、バイクのアシスト機能と得意の電脳魔術の組み合して活用して、なんとか巻き返して1位を目指して行きます。
急がば回れということで、電脳の魔女として、落ち着いて運転して追い越します。
●Final lap:電子が刻むラストスパート!!
レースはいよいよ最終周に入りコースの中に鐘の音が響き渡る。
打鐘
其れは最終周回を知らせるメッセージでもあり、終わりの始まりでもあった。
初めて聴く響きに猟兵達が耳を傾けた一瞬、再度先行するのはキング・ブレイン。
「長くも短いレースもここで終わりならば、吾輩も本気を出す時。ブレブレブレ(笑い声)」
宣言と共に投げるのは本棚。
侵略蔵書『スーパー怪人大全集』は失われるが、代わりに軽さと速さ、そして猟兵の能力を見抜き抜き去るための力を得るユーベルコード!
登りで必ずリードを奪った脚力。
そこに軽さが加われば――誰もついてこれない。
そう見抜いての猟書家の戦略。
しかし、それを覆すものがいた。
「追いつかれて追い越されましたが……やっと追い付きました」
和田町・いずみ。
電脳の魔女の名を得た鉄(違う意味で)の女は軽さを無視する力――電動アシストのモーターをフル回転させた。
parablepsia
錯視たる策士
急がば回れ、堅実で落ち着いたライディング。
猟兵とオブリビオンが抜きつ抜かれつの攻防の中、着実にラップを刻んだいずみがここで巻き返す。
「まさか!」
必死になってペダルを漕ぐ、猟書家。
「ここで!」
しかし、二人の差は徐々に縮まり。
「アタックされるとは!?」
やがて抜かれる。
それはチェスのようでもあり、時刻を守る鉄道のようでもあった。
不動の如き乱れないリズム。
電脳によって制御されたE-Bikeが決戦の機先を制し、猟兵優位でロックセクションへ持ち込む。
そこにもう一人、飛び込んできた。
トリテレイア・ゼロナインである。
「キングブレインを下す為だけなら何処のポイントでアタックを仕掛けても問題はありません」
やや強引なペースでトップを奪い、先行するトリテレイア。
追うキング・ブレインと和田町・いずみ。
「ですが、特別な事情無い限り勝負事には全霊を尽くすのが騎士というもの」
それを阻むは騎士の矜持。
一位――レースにおいてトップでゴールした者が獲得するはWinner、すなわち勝者。
……トリテレイア・ゼロナインは勝ちを狙っていた。
岩場を走り抜け、騎士が挑むは六度目のダウンヒル。
追いかける猟書家。
イーブンペースを守り、最後に勝とうとするいずみ。
後ろからとらえようとする猟兵達。
左右に吹き飛ばそうとするスラロームを走り抜け、続くのはドロップオフ。
先に着地するトリテレイア。
その頭上に虹がかかった。
「まさか、ここでビームを!」
「そのまさかです! 脳ビーム!」
キング・ブレインがビームを放てば、それは光のレールと変わる。
かしこさが……ぼうそうする!
ビームの軌道に合わせて、猟書家が決めたイカれたジャンプはトリテレイアを追い越して、トップを奪った。
勝負所はいよいよラスト……バンプトラックへと迫っていく。
バンクの着いたカーブと小山。
簡単に見えてバイクを動かす技量が求められるテクニカルゾーン。
逃げ切ろうとブレインバイシクル1号をコントロールするキング・ブレイン。
「ゴールの歓喜は暫し無用」
そしてトリテレイアがここに全てを――賭ける!
コアユニット性能上限増強。
シャットダウンまで残り116秒。
全能力――6倍!!
猟書家に追いつく騎士。
ラインは全く同じ。
テールトゥノーズが如き距離で車輪が近づく中、バンクを抜ければ小山。
ここで戦機がバイクを押し出すように動かし、加速を得る。
知識で覚えているわけではなかった。
けれど6倍に跳ね上がった判断力がバイクを押すことを選び、それがトップに躍り出ることで解となる。
「抜かせて頂きます、キングブレイン!」
Coreunit ・ Overlimit!
機械騎士の炉心は限界を超える!
残り時間が迫る中、ペダルを漕ぐトリテレイア。
追いかけるキング・ブレイン。
最後は短いストレート。
決着の時が来た!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●Goal:猟兵大勝利! 希望の明日へレッツ&ゴー!!
トリテレイア・ゼロナイン先行でゴールが近づく。
追うキング・ブレイン。
イーブンペースから加速する和田町・いずみ。
そこへペダルを踏み込む荒谷・つかさ。
始まりが近づいていた。
エリー・マイヤーも念動アシストを脚につぎ込み、全員がペダルを回す。
――スプリント。
勝利を得るための全力疾走。
全員がペダルを回す中、勝利を得るのは――
エリー・マイヤー!
4秒遅れてトリテレイア・ゼロナイン。
その後ろは荒谷・つかさ。
表彰台は猟兵が独占した。
全員が全力を尽くした。
冷静にバイクをコントロールし念動力でアシストしていたエリーがわずかに……わずかに脚力を残していた。
それが勝負を分けた。
かくして、レースは終わる。
だが、いつかまたコースが現れれば人は集まるだろう。
競争は人の心をいつも動かすのだから……。
●Last Result
1位:エリー・マイヤー 55分50秒
2位:トリテレイア・ゼロナイン 55分54秒
3位:荒谷・つかさ 55分56秒
4位:キングブレイン 56分00秒
5位:和田町・いずみ 56分08秒