勇者を讃えよ 伝説の大根収穫祭
ヒーローズアース。その大気圏外には「知られざる文明」が存在する。
ラグランジュポイントと呼ばれる其処は、衝突した宇宙船群の上に築かれた文明。
かつて侵略宇宙人を撃退した重力の罠であったその空域は、現在それらの奴隷であった人々が超テクノロジーを活用して居住しており、独自の文明を築いているのだと言う。
「二年前のアースクライシス2019の戦場にもなったんで憶えてる人もいるかしらね」
アルゲディ・シュタインボック(白金の癒杖・f03929)は集まった猟兵達を見渡しながら、そんな事を口にした。
当時、そこの住民達がオブリビオンに隷属を強いられていたが、各島々に伝わる不思議な兵器を猟兵達が用いる事で彼らの蜂起を促し、攻略をしたと言う経緯がある。
「その一つの島でね、ちょっとしたお祭りがあるの」
彼らに伝わる伝説の武器は、島の畑にそこら中に生えてる。
その名も『清白剣ダイ・コーン』!!
畑に青々と繁るその青菜を掴み、正義と勇気を抱きし者が立派に成長した大根を引き抜いたその時――聖なる野菜は声に応え、引っこ抜いた者の性質に応じた剣と化し、勇者に大いなる力をもたらすであろう!!
――と言うキテレツな武器によって、二年前救われたのだ。その島は。
「で、その時戦って民衆を導いた勇者を讃えつつ、大根の収穫のお祭りするらしいんだけどね。オブリビオンの残党が来ちゃう訳なのよ」
来ると言ってもスズメの形をした見目は可愛い連中なのだが。
放っておけば折角のお祭りも台無しにされかねない。
「折角だし、そのダイ・コーンを引っこ抜いて武器にして戦っても良いらしいわよ」
きっと勇者様の再来だ、と人々は喜んでくれる事、間違い無いだろうし。
「元々、その清白剣をもたらした勇者の伝説もあるらしいけど。その辺のお話や二年前の戦いをモチーフにしたショーやパフォーマンスも行われるらしいわ」
少ないが屋台も出る様で、聖剣にはならなかった大根が各種料理として振る舞われるので舌鼓を打つのも悪くない。
「楽しみつつ、人々を守ってあげてね。あ、お土産に大根持って来て頂戴な」
おでん作るわおでん、と最近和食に凝りつつあるエルフは転移の光を描きながら猟兵達を送り出すのであった。
天宮朱那
天宮です。大根のおでんは至福。
ヒーローズアースはラグランジュポイントより収穫祭のご案内。
ただし大根限定ですが。
拙作「アースクライシス2019⑬~清白の聖剣」の舞台にもなった宇宙島の話です。
未読でも未参加でも大丈夫ですのでウェルカム。
ちなみに当時の参加者さんは住民に勇者と歓迎されます。
(参考: https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=17281 )
一章は日常。PSWは無視して構いません。この章のみの参加も歓迎。
ショーとかもありますが、メインは大根料理の屋台になるかと。
和食・洋食・中華と大根用いた料理なら大体あり。
大根下ろしに合う料理もあります。
二章は集団戦。
スズメのオブリビオンが宇宙の畑を荒らし始めるので、その辺に生えている大根を正義と勇気の心で引っこ抜き、聖剣と変えて敵を討て!
と言う良く解らないノリのバトル。自前の武器で戦っても良いけど。
大根の聖剣使ってくれたらプレイングボーナスとします。面白いし。
公開と同時にプレイングは受付開始。
マスターページやタグ、Twitter(@Amamiya_syuna)などでも随時告知をしますので確認頂けますと幸い。
適度に人数集まったら〆切目安の告知予定。
10月満月時点での完結数次第で進行や完結に調整入れる可能性有りますので、ご了承頂きます様宜しくお願いします。
ご参加お待ちしております。
第1章 日常
『英雄賛歌』
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POW : ショーを楽しむ
SPD : 屋台を巡る
WIZ : パフォーマンスを楽しむ
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満月・双葉
大根が僕を呼んでいる
勇者だ何だというのは苦手なのですが、大根といえば僕でしょう(真顔)
僕は大根には少々うるさいですよ
これからの季節大根は大切です
おでん!さんま!もち!
ぁぁはい、和食が好きです
和食の屋台を制覇するとしましょう
何故餅に大根おろしを添えるのか…消化を助けるからです
大根と餅を一緒に煮ると餅が(溶けて)消えますよね…あれはやっちゃうと少し悲しい
しかし大根は悪くない
大根は頑張っただけですから
(という一連の主張は大根の輪切り(生)にいちごを飾った双葉流ショートケーキを片手に行われる)
………何か文句でも???
生でも美味しく食べられるのが至高の大根と言うものです
「大根が僕を呼んでいる」
満月・双葉(時に紡がれた人喰星・f01681)は大根特化の屋台が立ち並ぶ収穫祭の会場に着くなり、周囲に漂う大根料理の香りを感じ取っていた。
この宇宙島に伝わる勇者だ何だと言う話には少々苦手意識を覚えるものの、大根と言えば僕だ――と言う確固たる信念を胸に宿していた。
その表情たるや凄まじく真顔で、ガチの大根勢なのが良く解る。
「そこのお姉さんどうだい、こいつ食ってみねぇか」
「ふふ、僕は大根には少々うるさいですよ?」
屋台の親父の呼び込みに双葉は小さく微笑んで応じ、そしてその周囲の屋台に並ぶ様々な大根料理に目を向けた。
そう――時期は秋から徐々に冬が深まり冷え込みが激しくなる季節。大根の大切な季節に移り変わっていく今日この頃。
「おでん……! さんま……! もち……!」
嗚呼、和食好きの血が騒いでもう止まらない。
双葉は目の前にある和食屋台を全制覇すべく行動を開始したのである。
「何故餅に大根おろしを添えるのか……消化を助けるからです」
「へぇぇ……」
紙皿の上にその餅大根を載せて頬張る地元の子供達を前に双葉は熱弁する。大根への愛と蘊蓄は留まる事を知らない。
「ママがね、大根と餅を一緒に煮たら、お餅が溶けて消えちゃったって」
「あああ……あれは、あれはやっちゃうと少し悲しいんですよね」
しかし大根は悪くない、大根は頑張っただけですから――双葉は大根の肩を持つ様に子供達に告げるのだ。大根に含まれる消化酵素はデンプンの分解を促進するのだと。故に消化を助け、煮ると溶けてしまうのだと……!
「嬢ちゃん詳しいねぇ」
「しかし、今あんた何食ってるんだ?」
屋台の兄さん達が感心すると同時に困惑した表情で双葉の手元を見つめていた。
その手には「生大根の輪切り苺載せ」と言う良く解らない代物があったのだから。
「これですか? 双葉流・大根ショートケーキですが………何か文句でも???」
フォークを入れて口に運ぶ双葉。生大根独特の甘味と辛みと瑞々しさが相まって実に味わい深い。
「生でも美味しく食べられるのが至高の大根と言うものです」
大根サラダ程度の女々しくチャチなものでは満足出来ぬ大根の伝道師は、口元に笑みを見せて飄々とそんな事を告げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
逢坂・宵
ザッフィーロ(f02925)と
かれと手を繋ぎ立ち並ぶ屋台を見ながら歩きましょう
ここに来るのは久しぶりですね
前回訪れたときはいろいろ、そう本当にいろいろありましたが……
こうして活気がある島を見られてよかったです
かれに問われれば、少々言い淀んでから
この後わかりますよと答えて微妙な笑みを向けましょう
屋台のふろふき大根が目に入れば
この間きみが作ってくれたふろふき大根もおいしかったですねと表情を緩め
僕はサンマの焼いたのを大根おろしとともにいただきましょう
うん、さわやかな大根の辛味が……と
ふふ、もちろんですよ
きみのために作る料理を、気に入ってくれて嬉しいです
これからもずっと、きみに料理を作らせてください
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
大根料理の屋台かと周囲を見回しながら宵と手を繋ぎ祭りを楽しもう
そういえば宵は以前この島を助けたと聞いたが、どの様な戦いだったのだ?
そう声を投げつつ出汁の良い香りがしてくれば足を止めよう
ふむ、ふろふき大根か
味噌が乗ったそれも美味いが、今回は味が染みた煮物にしようかとそう手に取ろう
後は大根の味噌汁を頼み適当な場所に座りながら楽しもうか
やはり味が染みた大根は美味いな
あと味噌汁も出汁が効いていてとても美味いと思う…が
やはり宵の味噌汁が一番だなと、そう照れ臭げな声を一つ
明日はなんだ、俺がふろふき大根を作るゆえ、味噌汁を作ってくれるか?
やはり宵の料理が一番だから、な
小規模ながら賑やかな収穫祭。そこらから良い香りが立ち上る中、二人の長身男性が手を繋ぎながらゆっくりと歩んでいた。
「大根料理の屋台……か」
ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は何処となく不思議そうに周囲を見回しながら呟いた。屋台に並ぶ品々はどれもこれも大根関係。ある意味珍しい題材ではあるのは間違い無い。
「ここに来るのは久しぶりですね」
逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は屋台並ぶ様子を見ると、どこか安心した様な表情を浮かべた。こうして活気のある島を見られるとは――と、二年前の戦いで訪れた時の事をも思い返す。
「そういえば宵は以前この島を助けたと聞いたが?」
「ええ、前回訪れたときはいろいろ、そう本当にいろいろありましたが……」
何故か曖昧に答える宵の様子に、ザッフィーロは訝しげに首を傾げた。
「いろいろ……? どの様な戦いだったのだ?」
「ああ、いや、その――」
僅かに顔を赤らめて言い淀む宵。そして微妙な笑みを向けてこう告げたのだ。
「この後――わかりますよ」
ある種の挙動不審。今はそれ以上聞くべきでは無いと判断したザッフィーロは、ふと足を止めた。嗅覚をくすぐる出汁の良い香り。出所と思しき先に目を向ければ。
「ふむ、ふろふき大根か」
「ですね」
味噌を乗せて仕立てたそれも美味しいが、醤油出汁をたっぷり用いて味が染みたそれも悪くない。ザッフィーロは早速注文し、くったりと煮込まれた大根を器によそって貰って手に取った。
「そちらのサンマの塩焼きも、大根おろしと良く合いそうですね」
七輪で丁寧に焼き上げたサンマは地球からの直輸送らしい。知られざる文明と地球本土との交流が進んでいる証拠なのだと思うと平和を噛み締める次第である。
更に大根の味噌汁も頼み、二人は飲食スペースとして設けられた場所に移動する。
「「いただきます」」
簡易テーブルと椅子の席に腰を下ろし。収穫祭の主役である大根に、大地の恵みに感謝を籠めて、二人は料理に箸を着けた。
「やはり味が染みた大根は美味いな」
一口頬張り、じっくりと味わいながら食すザッフィーロ。同じくふろふき大根をつつき、口に運んで味わう宵。大根から染み出る甘味が出汁との最高の味わいを作り出しているのだ。
美味しいと顔を綻ばせて箸を進めていた宵は、ふと何かを思い出したのか。表情を緩めてザッフィーロの顔に視線を向けたら当の本人も何事かと手を止める。
「どうしたのだ、宵」
「そう言えば……この間、きみが作ってくれたふろふき大根もおいしかったですね」
「……!?」
唐突な褒め言葉。汁を口に含んでいたら恐らく惨事が発生していただろうか。
「そ、そうか……それを言うならば」
大根の白い根の部分と瑞々しい青菜の部分とが刻まれて入る味噌汁をザッフィーロは箸の先で掻き回し、椀に口をつけながら告げる。
「この味噌汁も、出汁が効いていてとても美味いと思う……が」
「……が?」
「やはり宵の味噌汁が一番だな」
視線は真っ直ぐ宵に向けられる。朴念仁が見せる、照れ臭さを隠しきれない様子のこの愛おしさは専門用語で言うときっと尊い。
「ありがとうございます、ザッフィーロ」
一言、告げる礼。それを聞き、ザッフィーロはコホンと一つ咳払いをした上で更に言葉を続けるのだ。
「明日は……その、なんだ。俺がふろふき大根を作るゆえ、味噌汁を作ってくれるか?」
ここだけ聞くとプロポーズか何かですか、と言う台詞を吐き出した。照れを押し殺す真摯な視線に、宵も耐えきれずにくつくつと笑い出した。
「ふふ、もちろんですよ。きみのために作る料理を、気に入ってくれて嬉しいです」
「やはり宵の料理が一番だから、な」
「これからもずっと、きみに料理を作らせてください」
そしてサンマの骨を外し、爽やかな大根の辛味を味わいつつも。二人の世界は塩っぱさも辛さも忘れるくらいに甘い優しさに溢れていた。
大成功
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夜鳥・藍
SPD
この世界での戦争が二年前……私が学生をいう平和な生活を送っていたころにも、皆さんは戦いの日々を送っていたのですね。
屋台を巡って可能ならレシピを教えていただきたいです。
学校の方針もあって和食ならだいたい知ってますし作れますが、洋食や中華ではあまり知らないので。
教えていただくことができなくても、料理自体を知る事ができれば十分です。あれこれ調理方法調味料を想像考えるのもやっぱり楽しいですし。
何より新しい事を学ぶことは楽しくて嬉しいものですから。
少しずつ屋台の料理を見て食べて。
お味噌汁や煮物ばかりかと思ってましたが、炒める焼くも美味しい物なんですね。
これなら一本買っても消費しきれそうね。
「この世界での戦争が二年前……」
屋台立ち並ぶ中を夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)はゆったり歩みながら、己の知らぬ文明の世界への興味を向けた。
ラグランジュポイント。このヒーローズアースと呼ばれる世界に存在する知られざる文明の一つ。宇宙空間にある此処も、実際訪れてみれば人々の営みという点では地上と大きく変わるものでは無いと知る。
聞くと、二年前の戦争ではこの宙島も戦場になったと聞く。藍がサクラミラージュの世界で卒業に備えながらも平和な生活を送っていた頃だろうか。まだ彼女が猟兵としての活動を始める前の事だが。
「その頃にはもう、皆さんは戦いの日々を送っていたのですね」
己の知らぬ猟兵の戦い。人々との交流の中で、それをひしひしと感じていた。
「ん……これは」
美味しい。大根餅という中華の点心では定番の料理と口にして、藍はその美味しさに打ち震える。和食なら学校で習ってきたし大体知っているが、洋食や中華はまだまだ未知の領域だ。
レシピを知りたい、と願うも。流石に屋台そのものの味は企業秘密だと言われてしまうが。代わりに提案されたのは、大根農家で提供しているレシピ集の話。
早速頂いてきたその小冊子をペラペラ捲りながら屋台巡りに精を出す。料理自体を知る事がまず一番であると、少しずつ色々な料理に舌鼓を打つ。
「お味噌汁や煮物ばかりかと思ってましたが」
炒めたり焼いたり、混ぜ込んでみたりと新しい調理法に巡り会えるのが何よりも楽しく嬉しい。
欧風の煮込みであるクリームシチューとも合うし、カレー風味のスープとも相性抜群。これに更にアレンジを考えるのも面白い。
「これなら一本買っても消費しきれそうね」
気が付いたら。お土産用と称し、太く大きな大根を何本も買い求めていた藍の姿がそこにはあったのだった。
大成功
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第2章 集団戦
『ちゅんちゅんさま』
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POW : 頑丈なくちばし
単純で重い【くちばし】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 鋭い翼
【翼】が命中した対象を切断する。
WIZ : 羽根ガトリング
レベル分の1秒で【翼から羽根】を発射できる。
👑11
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『ちゅんちゅん!』
『ちゅちゅーん!!』
そいつらはどこからともなく飛来してきた。
丸っこいふくよかボディ。可愛らしいスズメの様にも見えるが、彼らはれっきとしたオブリビオン。
『おいしそーな大根だちゅん!』
『ぜーんぶ貪り食ってやるのだちゅん!』
『む、何だあれはだちゅん?』
島の畑に向かうスズメ達を追って見れば、そこに不思議な光景を見る事だろう。
――白い輝きを地中に埋めて、引っこ抜かれるのを待つその大根の数々を。
勇気、正義、そして戦う意志を胸にその大根を引き抜けば。
求めに応じた清白剣ダイ・コーンは、その聖なる刃を以て君に力を齎すのだ!
パルピ・ペルポル
まずは雨紡ぎの風糸で害鳥用ネットを編んでこっそり畑の上に設置しとくわ。
畑から飛び出さないようにもネット編んで設置しておきましょ。
さて。
そんなに大根が食べたいならたっぷりと食らわせてあげるわよ、その体にねっ。
というわけで火事場のなんとやらを使って太くて立派なやつを引っこ抜いてホームラン狙うつもりで全力でぶん回すわ。
それで倒れるならよし、ネットに引っ掛かったのはさらに糸で絡めて全力でもふり倒すとするわ。
はーやっぱりもふもふは癒されるわねぇ(全力でぎゅっと)
もふり倒して癒されたらまた大根振り回して害鳥退治と参りましょ。
あ、大根も調達して帰らないとだわ。
ちゅんちゅんさま達が大根畑に飛来するほんの少し前。
「ふぅ……これで良し、と。仕込みは上々って所かしらね」
畑の上空をヒラヒラと舞うのは季節外れの蝶々などではなく。パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)が額の汗を拭う姿であった。
彼女の手には雨紡ぎの風糸。蜘蛛の糸の様に、いや、それ以上に捕捉、そして柔軟性と強度を有したそれは何かを捕らえる為の網を編むのに相応しい。
パルピは害鳥用のネットを編んで、敵が現れる前にこっそりとこの大根畑の上空に設置したと言う訳だ。
「……何だか懐かしさも感じるわね」
そう言えば二年前の戦いでもこの糸を使ったトラップを仕掛けた事を思い出す。あの時はキモい妖精もどきだったが今回は鳥だ。畑から勢いで飛び出しかねない相手となれば、念入りに編んだネットを設置しておく。
『ちゅんちゅーん!』
『うまそうな大根だちゅん!!』
ばさばさと丸っこいふくよかボディのスズメ達が畑に飛来するのをパルピもまた宙に浮いたまま出迎える。
「そんなに大根が食べたいなら――!」
自分の背丈より大きな大根の青菜を抱え込むと、パルピの火事場のなんとやらによるパワーを発揮! 太く立派に育った根を引っこ抜く!
「たっぷりと食らわせてあげるわよ、その体にねっ!」
全力にてそのまま思い切り振り回した大根は彼女の戦う意志に応え、その姿を(パルピにとって)巨大な両手剣へと姿を変えた!
ガコォォン!!
『ちゅーーっっん!?』
ホームラン宜しくぶっ飛ばされるちゅんちゅんさま。パルピの手にした清白剣は剣と言うには余りにも無骨でまるで巨大な棍棒か鈍器の様であった。
「ま、大根だし鈍器でも全然構わないんだけどね」
身体の大きさに似遣わぬパワーにて、ぶんぶんと風を切る音響かせながら彼女は向かってくるスズメ達と対峙する。
「てぇぃ!!」
『ぢゅーんっ!?』
大根に撃ち抜かれ、そのまま気を失って骸の海送りになるのも居れば、飛ばされてネットに引っかかり、糸に絡まって動けなくなるのもいるスズメ達。
「よしよし、更に糸で絡めて……」
『な、なにするちゅん
……!?』
「ふふ、決まってるでしょ?」
もっふもっふもっふもっふ。
『ちゅちゅー!?』
「はーやっぱりもふもふは癒されるわねぇ」
全力でスズメさん達をもふり倒すパルピ。ぎゅっと抱きしめて埋もれるこの感触が堪らない。もふもふイズじゃすてぃす。
『ちゅ……! 殺せっちゅん……!』
鳥類のプライドでも損ねたのか、くっころみたいな事言い出したスズメさん達。
「ええ、そうね。充分もふって癒されたし……」
再び大根を抱え込み、パルピは思い切り空中にて振りかぶった。
「害鳥退治と参りましょ」
『ちゅーーーんっっ!?』
場外ホームランでぶっ飛ばされてネットのそこらに引っかかってるスズメのご無体な姿を見つめながら。
「あ、大根も調達して帰らないとだわ」
パルピは買い物帰りの主婦の如く、思い出して言葉にするのであった。
大成功
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夜鳥・藍
雀が荒らすのは米なのでは……?
そもそも大根のいわゆる根を食い散らかすという話は……オブリビオンなのでその常識は通じないのですね。アブラナ科なので花芽と葉は割とつきやすそうですが。
自前の武器で戦います。
いえ抜いても、そもそも剣を振るう事がないので加減がわかりませんし……(若干言い訳)
複製して飛ばすのも多分慣れてませんし……(言い訳その2)
というか複製できるのかも怪しいですし……(その3)
いつもならもふもふできそうなのには反応しそうなのですけど、食害となるとそうもいきません。というか被害を抑えるのを優先ですね。
もふもふは害なくが大前提です。
複製した鳴神で向こうの攻撃を相殺しつつ攻撃しましょう。
「雀が荒らすのは米なのでは……?」
『ふっふーん、ちゅん達は好き嫌いしないちゅん』
夜鳥・藍のぼやきにも似たツッコみが当人――いや当鳥達にも聞こえていたのか。ただでさえふっくらなフォルムをますます膨らませてドヤ顔するちゅんちゅんさま。
「……。成る程、オブリビオンなのでその常識は通じないのですね」
『と言うかちゅん達、割と雑食でちゅんよ?』
スズメは実際何でも食う。虫も葉っぱも食う。ここに転送したエルフの女は庭に植えていた苺を食われたと激怒していた程である(実話)。
(「葉なら解る、けど……そもそも大根のいわゆる根を食い散らかすという話は……」)
掘り返してまで大根を、根の部分を狙うとは。旺盛な食欲に藍は呆れた表情一つ。
だが、農家の人はこう言うだろう。
うちの大根の美味さにスズメも思わず食いたくなったのだ、と。
――それで襲われてるんだから話にならねぇ。
「さて……」
自前の三鈷剣を手に取った藍。遠くから見守る島の民は、「え、大根使ってくれないの?」という視線を向けている――ような気がしてならないのは何故だろう。
「いえ、その……」
何か居たたまれない雰囲気を感じてしまったのか。彼女はちらと畑に生える大根を見遣り、困った表情で告げる。
「抜いても、そもそも剣を振るう事がないので加減がわかりませんし……」
『言い訳に聞こえるちゅん』
抜かれたら斬られる側の筈であるスズメ達が首を傾げてツッコんできた。
「複製して飛ばすのも多分慣れてませんし……」
というか複製できるのかも怪しい。むしろ複製された大根そのものが宙に浮き舞ったら、それはそれで恐ろしくシュールな光景である事は間違い無い。
『往生際が悪いちゅん!!』
もっふもふの翼から射出される羽根が飛ばされる。
藍は咄嗟に手にした三鈷剣・鳴神を複製し、スズメ達に向けて包囲する様操ると、羽根を相殺しながら容赦無く攻撃を加えていく。
『ぴぃぃぃっっ!?』
もふもふスズメさんたちのふわふわ羽根も幾何学模様の攻撃に晒されて、すっかりさっぱりカットされ。ぼとぼと地面に、骸の海にと落ちていく。
「――もふもふは害なくが大前提です」
いつもならもふもふに反応したくてうずうずしている所だけど今回は我慢。だって食害を、被害を抑えるのが優先だから。
「大根を狙ったのが仇となりましたね」
きっと何を狙った所で倒される運命にあるちゅんちゅんさま達を、藍は悲しげに見送るしかなかったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
逢坂・宵
ザッフィーロ(f02925)と
ニンジンの使者の次はスズメですか……!
やはり大根の平和のためには襲い来る脅威を退けねばならないのですね
そうして首をゆるく振れば、可愛らしいものに目がないかれの様子に笑って
わかっていますよとばかりに頷きましょう
傍らに青々と茂り背高く聳えていた大根の茎をしっかりと握りこみ引き抜きます
この感触は久しぶりですね……
さて、二年ぶりのひと仕事、務めさせていただきましょう!
抜いた大根を一振りしてから襲い来るちゅんちゅんさまに清白剣で戦い
かれへと襲い来る敵にはなんやかんやして反撃できれば
背を預け合い戦いつつも、二年前にはなかった頼もしさに笑い
やっぱりきみは、僕の相棒だ
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
大根を…貪り喰らおうとする雀…だと…!
丸いフォルムに円らな瞳…なんと愛らし…いや、何も言っておらんぞ
宵の笑みに気づけばそう誤魔化しながらも、青々とした葉に向かってくる雀を見れば阻止するようにその葉を手に引き抜こう
見ろ、白く輝き美味そうだが、これは米ではないのだぞ!
そう天高く大根を掲げながらも、同じく大根剣を手にした宵を見れば2年前にもやはり斯様な事があったのだなと声を
宵へ向かう雀を見れば大根剣にて攻撃を受け止めんと試みよう
宵、怪我はないか…と!あ、相棒は俺の事だな?剣の事ではないだろう!?
そう慌てた様な声を宵へ投げつつも宵と背を預けあい敵を白く輝く剣にて倒して行ければとそう思う
『ちゅちゅんがちゅーん!』
『美味しそうな大根は食っちゃうんだちゅん!』
一斉に空からやって来るふわふわして丸っこい凶悪スズメ達を前に、ザッフィーロ・アドラツィオーネは只でさえ眉間に刻まれた皺を深くする。
「大根を……貪り喰らおうとする雀、だと……!」
あんなに可愛らしいのに何とけしからん、と言いたげな蒼玉の瞳と対称的に。夜の星を映す紫色の瞳は――逢坂・宵は二年前の戦いを思い返しながら身構える。
「ニンジンの使者の次はスズメですか……!」
人参?とザッフィーロは謎のワードに一瞬宵の方を見やるザッフィーロ。その視線に対し、宵は聞くな、と言いたげな笑みを返した。
「やはり大根の平和のためには襲い来る脅威を退けねばならないのですね」
そう、驚異だ。宵はゆるりと悪夢を散らすべく首を横に振る。少なくとも前回の脅威はこんなに見た目から油断を誘う相手では決して無く、むしろ心を無にして挑むより他無かったが……今回は違う。
「丸いフォルムに、円らな瞳……なんと愛らし――」
「ザッフィーロ……?」
「――いや、何も言っておらんぞ」
宵の向けた薄い笑みに誤魔化すように視線をスズメ達に向ける。その瞳はやはり、惑わされてはならぬと知りながらも尚、可愛らしいものに向ける愛情というか優しさの様なモノを感じ取れる。
(「わかっていますよ」)
この不器用すぎる朴念仁の性格は、何から何まで。
『ちゅんっ!』
『よそ見してる隙に大根いただくちゅん!』
羽ばたき襲い来るちゅんちゅんさまの群れ。
「この感触は久しぶり、ですね……!」
傍らに青々と繁る菜。天にそびえるが如く育ったその大根の茎をしっかりと握りこみ、宵は力の限り戦う勇気と希望を籠めて引き抜いた!
すらりと真っ直ぐ根を伸ばしたその大根は星の光を放ったかと思うと、瞬時のその形を真白き刀身を有する清白剣へと変化させたのだ!!
「見ろ、白く輝き美味そうだが、これは米ではないのだぞ!」
ザッフィーロもスズメ達に見せつけるが為、傍らにあった立派に青々と葉を伸ばす青首大根の菜をむんずと力一杯掴み引き抜いたかと思うと。
青白い輝きを放つその大根は、見る間に彼の戦う意志に呼応し、無骨な儀礼用片手剣へと姿を変化させたのだ。
「成る程、二年前も斯様な事があったのだな
……!?」
手に握られし清白剣を目にしたザッフィーロは成る程と一人呟いた。
実にツッコみ不在なこの状況。奇天烈すぎるこの武器をすんなり受け入れたのは魔法的物品だと認識したのか、ただ単に純真天然だからか。
『ちゅちゅっっ!! 大根が剣になったちゅん!?』
『怯むなちゅん! あんなのちゅん達の敵じゃ無いちゅん!』
恐れずに向かってくるスズメ達。翼から放たれる羽根の攻撃だが、宵は怯まず一振りした大根にて見事に斬り払い、ザッフィーロに向かうその攻撃をも叩き落とす!
「さて、二年ぶりのひと仕事、務めさせていただきましょう!」
「宵、油断は禁物だぞ!!」
羽根を飛ばしながらも魅惑のもふもふボディで体当たりを試みるスズメを清白剣にて受け止め、ぶん殴って吹っ飛ばしながらもザッフィーロは心配そうに彼の方に目を向ける。
お互いの死角を補う様に自然と互いの動きを予測しながら庇い合いながら動いた結果、気が付けば背を合わせ預ける様に二人は大根畑という戦場に立っていた。
「宵、怪我はないか?」
「ええ、ザッフィーロこそ」
互いの身を案じる言葉が自然と零れる。この感触、二年前の戦いの中では存在すらしなかった頼もしさだ――宵はそう思い、ふっと口元を綻ばせて告げた。
「やっぱりきみは――僕の相棒だ」
「……あ、相棒は俺の事、だな? 剣の事では無いだろう??」
途端に慌てた声を上げる相棒のセリフ。流石の宵もコレにはどこからツッコめば良いのか言葉が即座に出なかった。
「――大根に対抗心持たないで下さい」
まさかこの清白剣に対してまで嫉妬されるなんて、と苦笑い浮かべつつ。宵がようやっと口にした言葉はそれであった。
『ちゅちゅーん!?』
『こいつら強いちゅん……!』
次々と清白剣に撃ち倒されるちゅんちゅん達。このヤドリガミ二人の強き絆に勝てるモノなど存在はしなかったのだ。
やがて全てのオブリビオンは排除され、島に畑に平和が戻る。
二年ぶりの勇者の再来、そしてその素晴らしき相棒の存在と絆、戦いぶりは後々も語られる事だろう。
清白剣ダイ・コーンと勇者の伝説は、まだまだ今も未来も新たに紡がれ、語り継がれるのだった……!
大成功
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