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Fear of The Dark Flame

#アポカリプスヘル #【Q】 #戦後

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#アポカリプスヘル
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#【Q】
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#戦後


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●グリモアベース
「アポカリプス・ランページでの勝利、お疲れさまだ。フィールド・オブ・ナインの内、目を覚ました6体はすべて撃破することができた」
 いたわるように声をかけたのは、ディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)。

「戦争は終わったが残る謎も多い。今後もアポカリプスヘルでは調査が続くだろう。今回の依頼もそうだ。皆にはメンフィスで未だ燃え続ける『黒い炎』への対処を頼みたい」
 かつてのテネシー州、ミシシッピ川に栄えたメンフィス市も、今は消えない『黒い炎』に覆われた死の草原と化している。
 そして先の戦争で明らかになった『黒い炎』の性質。一つは炎の奥から湧き出る無数のオブリビオン。
 そしてもう一つ。炎の中で実体を得て襲い掛かってくる『恐るべき敵の幻影』。その恐怖を乗り越えない限り、いかなる攻撃も幻影をすり抜けてしまう。
 例外は、『恐怖を乗り越えた一撃』のみ。それだけが『恐るべき敵の幻影』を打ち破ることができる。

「そうやってオブリビオンの群れを倒し、『恐怖を乗り越えた一撃』で『恐るべき敵の幻影』を打ち破るたび、『黒い炎』は弱まっていく。そうして『黒い炎』を弱めていくことが、今回の依頼の目的だ」
 メンフィス市を死の草原へと変えた『黒い炎』、それが消え去れば人類の生存域獲得や新たな調査にも繋がるだろう。今回の依頼だけではそこまではいかないが、確実に先に進めるはずだ、とディスターブは続ける。

「先も言ったが、今回は『幻影』との戦いの前に、別のオブリビオンと戦うことになる。『黒い炎』の奥から湧き出るオブリビオンの群れ――ダーティーギャングと呼ばれる敵だが、そう苦戦はするまい、何せ連中は半狂乱だ」
 今回、遭遇するオブリビオンたちは、恐怖を乗り越えることはできない。黒い炎の中、『恐るべき敵の幻影』に苛まれたまま、見境もなく襲い掛かってくるだろう。
「大した相手ではないが、炎の向こうから奇襲される恐れもある。なんとか先に攻撃する手段を準備しておいたほうがよいだろう。それこそ連中の恐怖の叫びを聞くなど、な」
 炎に視界を遮られようとも、恐怖におびえた悲鳴を上げている以上は、位置を探るのは難しくない、とディスターブが補足する。

「そして、ダーティギャングたちを倒した後で、『恐るべき敵の幻影』との戦いだ。恐怖を知りそれを乗り越えた一撃を放たなくてはならないが――」
 今の猟兵ならば決して負けることはないだろう、とディスターブは頷き、手にしたグリモアを輝かせる。

「知らしめてやるがいい。恐怖を飼いならし、それでもなお挑まんとする戦士の強さを」

●アポカリプスヘル アメリカテネシー州 メンフィス灼熱草原
 草原へと降り立った猟兵たちを出迎えたのは視界を覆う程の『黒い炎』であった。はためく炎の向こう日ら熱く人影。オブリビオン――ダーティーギャングたちだ。熱気に満ちた風が彼らの叫びと悲鳴を運ぶ。
「違う、助けてくれ! オレはただ命令に従っただけなんだっ!」
「奴隷ごときがっ! オレ様に歯向かってただで済むと思うなよ! 絶対にぶちのめしてやる」
「来るな。来るな、来るな来るな来るなぁっ!」
 怯えて命乞いをするもの、恐怖を認めず虚勢をはるもの、ただ立ち竦むもの。
 ギャング達は全員が、『黒い炎』の幻影と恐怖に飲み込まれていた。

 正気を保っているのは、キミたち猟兵のみ。
 さあ、恐怖を乗り越えて、炎の先に道を開くのだ!


雲鶴
●主人公、求む! 雲鶴です。
 さて今回はアポカリプスヘルの戦後シナリオとなります。
 各章の詳細は、下記のとおりです。

●第一章
 燃え盛る『黒い炎』に覆われ視界のさえぎられた草原で、集団敵ダーティギャングとの戦闘となります。
 ダーティギャングたちは、『黒い炎』の『恐るべき敵の幻影』によって半狂乱になっており、悲鳴や叫び声、雄たけびなどをあげているようです。
 いち早く敵を発見し、攻撃を仕掛けることで、有利に戦えるでしょう。
 この章のプレイングボーナスは『黒い炎に紛れた敵を素早く発見する』ことです。

●第二章
 燃え盛る『黒い炎』から猟兵の知る『恐るべき敵の幻影』が実体を伴って現れ襲撃してきます。恐怖を持ったままの攻撃はすべてすり抜けてしまいますが、恐怖を乗り越えた一撃を放つことで、この幻影を実体もろとも打ち破ることができます。
 この章のプレイングボーナスは『あなたの「恐るべき敵」を描写し、恐怖心を乗り越える』ことです。

 プレイングの受付期間などは、随時シナリオタグの形で記載していきますので、そちらをご確認ください。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『ダーティーギャング』

POW   :    お寝んねしな!
【鉄パイプや鎖】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    催涙スプレーの時間だぜぇ!
【催涙スプレー】から【目の痛くなる液体】を放ち、【目の痛み】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    おらおら、おとなしくしな!
【手錠】【スタンガン】【鎖】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヴィクトリア・アイニッヒ
メンフィス灼熱草原。
この地の厄介さは、私も過日の戦いで予知を見ましたから良く知っています。
ですがそれだけに、この地の炎が消えた跡には何が残るのか…興味もあります。
その為にもまずは、目先の敵を祓わねばなりませんね。

さて、視界が通り難いこの戦況。
五感の他に第六感も総動員はしますが、それだけでは奇襲を防ぐには少々不足でしょう。
ならば……。

「──主よ。悪意を祓う力を、此処に!」

UC【神威の光剣】を使用。
奉じる神への祈りを捧げ、光剣を召喚し…その剣の一部を地に突き立てる事で、結界術の補強としましょう。
これで防御は大丈夫。後は飛び出してきた敵の攻撃を受け止め、残りの光剣で動きを止めて仕留めるとしましょう。



●太陽の剣
 『黒い炎』に覆われ死の土地と化したメンフィス灼熱草原。その光景をまのあたりにしてヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)は、眉をひそめた。
「過日の戦いで予知を見ましたから、厄介なものとは思っていましたが、これほどのものとは」
――ですがそれだけに、この地の炎が消えた跡には何が残るのか……興味もあります。
 彼女がこの戦場を訪れたのは、只の好奇心ではなかっただろう。この『黒い炎』が消え去ったのちに残るのは、人の住まうことのできる新たな居住地かもしれず、あるいは未だ知られぬフィールド・オブ・ナインが眠っているかもしれない。
 いずれにしても傍観してはいられない、それはヴィクトリアの力無き人々を護ろうという思いだった。

 草原へと降り立ったヴィクトリアの周囲で『黒い炎』が燃え盛り、熱せられた空気が風を生む。細かな気配を察することはできそうになかった。敵の位置を探るのに頼れるのは、響く怒号と、第六感しか無い。
 それだけで奇襲を防ぐには心もとない、ならば、とヴィクトリアは、己の奉じる太陽神へと加護を祈る。そんな彼女の背後から1人のダーティギャングが、鎖を手に忍び寄っていた。
 一歩、二歩、近付くがヴィクトリアは動かない。三歩、ギャングが鎖を振り上げた、瞬間。

「──主よ。悪意を祓う力を、此処に!」

 ヴィクトリアの祈りに応えるように、天空に光が溢れ、輝く剣がいくつも降り注いだ。ヴィクトリアを守るように地に突き立った光剣が放つのは、まぎれもない太陽神の威光。生命を育み、悪を許さぬ烈しい光がダーティギャングの目を焼いた。
 悲鳴とともに、怯みながらも振り下ろされる鎖、それはヴィクトリアの後頭部に届く前に、彼女が紡いだ光の結界によって阻まれる。
「やはり。光剣を招いて正解でしたね」
 己の背後で響いた衝突音に平然と構えるヴィクトリア。敬虔なる太陽神の信徒である彼女の祈りは、決してただの験担ぎではない。奇蹟を起こし、未来を紡ぐ一手だ。
 振り向きざま振り下ろしたヴィクトリアの手に合わせて、さらに天から光剣が降り注いだ。その切っ先がダーティギャングの四肢を貫きその動きを封じる。
 痛みに悶えるギャング。その瞳に正気の光はなく、呻くように何かを罵っていた。
「畜生、畜生……っ。俺様をこんな目に合わせるなんて。この奴隷風情がっ!」
「奴隷……?」
 その言葉が自らに向けられたものではないことをヴィクトリアはすぐに悟った。つまりその言葉を向けられたのは、この滅びかけた地で必死に寄り添い、今日を生き延びようとする人々。そんな彼らを踏みにじろうとするダーティギャングの言葉は、ヴィクトリアにとっては決して許せぬものだっただろう。
 奇襲失敗を見て取ったダーティギャング達が、黒い炎の中からヴィクトリアを囲むように姿を現つ。ヴィクトリアは一振りの光剣を降らせると、自らその柄を握り、ギャングたちへと向き直り、声を上げた。

「弱者を虐げ食い物にしようとする、その悪意。私が祓いましょう!」
 燃え盛る黒い炎の中、風に銀の髪をたなびかせて、光輝く剣を手にヴィクトリアが宣言する。

 何をと殺到するダーティギャングたち。しかし恐怖と虚勢にまみれたギャングたちが、いかに数を恃もうともヴィクトリアの敵ではない。
 弱者を虐げるギャングたちをヴィクトリアが返り討ちにするのに、さほど時間はかからなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マティアス・エルンスト(サポート)
アドリブ・連携・苦戦描写・UC詠唱改変・その他OK

「……俺が前に出る。お前は俺を盾にしろ。」

一人称:俺
口調:寡黙で無機質。表情も一見無愛想で感情が読み取りづらいが仲間想い。
性格:知らない物事へ対する好奇心と知識欲が旺盛。自身を精密な電子機器と思っている様子。

戦法:高いPOWを活かし、エネルギー充填したアームドフォートによる威圧感たっぷりの威嚇射撃や一斉発射等、「攻撃は最大の防御」を体現した戦法を好む。
仮に間合いに踏み込まれても剣や槍で受け流し、鎧砕きも狙いながらのカウンター攻撃。

指定したUCを何でも使用。
戦況等に照らし「適切・最善」と判断すれば他の存在からの指示や命令にも即応する。

他はお任せ。


ルク・フッシー(サポート)
こ、こんにちは。ぼ、ボクは、ルクといいます

戦いは怖いですけど…誰かの大切な物を守るために…
大丈夫です。ボク、戦います…!

できるだけ敵と中〜遠距離を保ち、相手の能力を考え、最適だと思うユーベルコードを使い戦います
塗料に属性や誘導弾などの性質を宿す事もあります

攻撃はよけるよりオーラ防御や武器で受けて軽減したり、激痛耐性で耐えたりする方が得意です

たとえ依頼達成のためでも、他の猟兵や一般人などに迷惑をかけるような事や公序良俗に反する事はしません

よ、よろしくお願いします…!(絵筆をきゅっと抱きしめる)



●守護の願い
 続いてメンフィスに降り立ったのは2人の猟兵。マティアス・エルンスト(人間見習い・f04055)とルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)の2人の猟兵だった。
「なるほど、これは索敵に手間がかかりそうだ」
 周囲を冷静に観察するのはマティアス・エルンスト(人間見習い・f04055)。
「本当、視界がさえぎられて……ひっ!?」
 彼の隣でルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)が響いた叫び声に、怯えたように身をすくませる。元々は絵が好きなだけの学生でもあり、戦い自体に恐怖を覚えていた。

「恐れる必要はない、お前は俺を盾にしろ」
 言うなりマティアスが近くの炎へと細身のバーチャルランスを突きだした。瞬間響く衝突音。ルクが見たのは、炎の中から鉄パイプを振り下ろしてきたダーティギャングと、それをバーチャルランスで受け止めるマティアスの姿だった。
 奇襲を防がれたと知ってダーティギャングが舌を打つ。
「やっちまえ、行くぞてめぇらっ!」
 その言葉を皮切りに炎の奥から現れるダーティギャングたち。鉄パイプや鎖で武装した集団に囲まれ、ルクは涙目になりながらも愛用の特大絵筆と塗料を構え、マティアスは鉄塊剣を抜く。

 抜刀一閃、マティアスは鉄塊剣で目の前のダーティギャングを切り捨てて、反転、背後に迫っていたギャングをヴァーチャルランスで突き倒す。さらに横から襲い掛かるダーティギャング。振るわれた鎖を鉄塊剣で防ぐが、鎖が剣へと絡みつく。
「む……っ!」
 ギャングが武器を奪おうと絡みついた鎖を手繰り、マティアスがそれに抗い踏みとどまる。好機と見たか鉄パイプを持ったギャングが駆け寄る。マティアスめがけて鉄パイプを振り下ろそうと構えた瞬間、その顔面をルクの放った塗料がが覆った。同時にマティアスは鉄塊剣を手放す。
 狙いの逸れた鉄パイプの一撃をヴァーチャルランスで受け流し、ギャングへと足払い。バランスを崩しよろめいた体が向かった先は、鉄塊剣の重さにたたらを踏んでいた鎖のギャング。2人ともに体勢を崩したところでの正面衝突。そろって倒れた所へ、マティアスがヴァーチャルランスでとどめを刺した。

 ルクもまた決して守られるばかりではなかった。ルクが特大絵筆をふるう度、色鮮やかな塗料が宙に舞い、ギャングの顔を覆って視界を奪っては攻撃を防ぐ。
「ええい、このガキっ!」
 手強いと見たギャングがルクめがけて駆け寄る。振り下ろされ鉄パイプめがけて、振るわれる絵筆、筆先が宙に描いたバリアがオーラのごとく鉄パイプを受け止めた。
 反撃とばかりルクが空中に絵筆を走らせ、描いたのは真紅の炎。実体化した炎がギャングへと襲い掛かり、その身を焼く。苦悶の声、身を焼かれながらもギャングは鉄パイプを振り回し、バリアを突き破ろうと殴打し続ける。その血走った目と、ルクの目が合った。
 半ば虚ろだったギャングの顔が、怒りと恥辱に染まり、血と煤に汚れた悪鬼のごとき形相へとかわる。その姿にルクは思わず悲鳴を上げ、更に防御を固めようと、特大絵筆を走らせる。その背後に影が差した。忍び寄っていた別のギャングがルクめがけて、手にした鎖を勢いよく振り下ろす。
 思わず目を閉じ身をすくませたルクの耳に殴打音が届いた。痛みはない、衝撃も。恐る恐る目を明けた先に見えたのは。
「……無事か」
 ギャングの一撃に身を盾にして割り込み、傷ついたマティアスの姿だった。

 勢いづき気勢を上げるダーティギャングたち、マティアスはルクを背中に庇い声をかける。
「もう下がっていろ、ここは俺が引き受ける」
 言い残し、ギャングたちを迎え撃つマティアス。その姿を呆然と見送るルク。ふいに顔にぬるりとした感触を覚え手で拭う。
 血であった。ルクを庇って、マティアスが流した血。涙に濡れた目に決意が宿る。
 愛用の特大絵筆を揮い空中へと流れる星を描き始める。それに気づいたギャングが怒号を上げた。剥き出しの怒りをぶつけられルクの身がすくむ。だがその絵筆が止まることはない。
 ――戦いに怯えながらそれでもルクを突き動かしたのは、誰かを守りたいという彼の優しさだった。
 怒声を挙げて駆け出すギャングを阻むようにマティアスがヴァーチャルランスを突き出す。
「先ほどから疑問だった。なぜお前たちはわざわざ叫び体力を減らすのかと。だが……」
 マティアスは腰に装着していたアームドフォートを解放、銃口を目の前のギャングの顔面に突きつける。
「相手を怯えさせ竦ませる、そのような効果があったのだな。その戦法お前たちで試すとしよう」
 そのままギャングの頭を吹き飛ばし周囲のギャングたちめがけアームドフォートの照準を定め、威嚇するようにエネルギーを充填していく。
――敵からでも貪欲に戦術を学び成長する、それは彼が他の猟兵との交流によって知った己の「幼さ」への自覚と、それに伴う知識欲がなす技だった。

 じり、とルクへと動いたギャングにマティアスの砲台が向く。同時に流れ星の絵が完成し、マティアスを囲むギャングめがけて落下。恐怖に駆られてルクへと駆け出すギャングへマティアスがアームドフォートの全砲門を発射する。レーザー砲の光の中、空をかける流れ星。そこへ祈ったマティアスとルクの願いはきっと同じだっただろう。

――どうか彼が、これ以上、傷つくことがないように。

 光が爆ぜる。周囲のダーティギャングたちを吹き飛ばしたのは、互いを守ろうとする2人の猟兵の一撃であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧島・絶奈
◆心情
「千里の道も一歩から」と言います
こうした積み重ねは一見地味に見えますが重要ですね

◆行動
さて…
こうした場合、先制攻撃が肝要です
敵は何やら喚いている者が多い様ですから【聞き耳】を立てる事で位置を探りましょう

凡その当たりを付けた所で『涅槃寂静』にて「死」属性の「ハブーブ」を行使し【範囲攻撃】

私自身も【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
序に【罠使い】として持ち込んだ「魔法で敵を識別するサーモバリック爆薬」を【衝撃波】に乗せて投射

多種多様な【範囲攻撃】の釣瓶打ちです
位置を正確に割り出せなくとも、空間諸共蹂躙するまでです

負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復



●死は歩み来る
 灼熱草原の黒い炎の中、霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は静かに聞き耳を立てていた。彼女の耳に届くのはダーティギャングたちの悲鳴や、恐怖に狂った言葉ばかり。しかしそれで構わなかった。声がした場所に敵がいることが分かれば良い。
――声の主は右前方、人数は5から6、距離は射程内。後方や、側面にも小集団。さて、こうした場合は先制攻撃で敵に打撃を与えることこそが肝要ですし……。

「手初めは、こんな所でしょうか」

 気負わぬ言葉とともに、絶奈の蒼白の外套が翻り、死の風が吹いた。
 風は地の砂を舞い上げ、炎を巻き込んで勢いを増し、轟々と唸りを上げ、天を衝くほどの砂嵐――ハブーブとなって、周囲のギャングたちへと襲い掛かる。
 それは大自然の暴力であった。雲をも巻き込む砂嵐、あるギャングはその姿を見上げたまま、嵐に飲み込まれた。逃れようと駆け出すギャング達が木の葉のように巻き上げられて宙を舞う。息を潜めてやり過ごそうとした者は、風に込められた死の呪詛によって一瞬で命を奪われる。

 そうして無数のギャングたちを一掃する絶奈。そんな彼女の背後で押し殺したような足音がした。絶奈の背後の炎の向こう、ダーティギャングたちが絶奈を狙っていた。手にしたスタンガンの照準を絶奈へと合わせ、引き金を絞り。照準器の向こう、ついと絶奈が振り向いた。フードの下の視線がギャングたちを射抜く。発砲。
 スタンガンから発射された電気針が絶奈へと迫り、そのすべてが空中で静止する。絶奈の纏うオーラが壁となってギャングたちの一撃を阻んでいた。

「わざわざ出てきてくれるとは……、探る手間が省けるというものです」

 言葉と同時、絶奈がヒラリと手を振り、何かをほうった。瞬間、放たれた魔力が衝撃波となって電気針もろともギャングたちを吹き飛ばす。受け身も取れずに草原へと投げ出されるギャングたち。死んではいない、だが全身がマヒしたように動かなかった。そうして身動きのとれぬギャングたちの目の前に転がったものがあった。先ほど絶奈が放っていた爆弾である。それは爆発の時が近づくことを知らせるように電子音を響かせていた。ギャングたちが声にならぬ悲鳴を上げる。迫る死から逃れるため、ギャングは目の前の爆弾を投げ返そうと、必死に体に力を籠める。しかし、麻痺した体はただ痙攣するばかり。そうして投げ返すばかりか掴むことすらままならぬ内に、電子音が早まっていき。爆発がギャングたちを吹き飛ばした。
 だがギャングたちは見誤っていた。仮に爆弾を投げ返されていたとしても、込められた魔力が絶奈に反応し、決して爆発することはなかっただろう。

 いや、もっと言えば初めから。絶奈を只の獲物と見たことが、そもそもの誤り。
 爆音を背中に聞き、絶奈は軽く息をつく。
「『千里の道も一歩から』と言います。こうした地道な積み重ねというものは一見すると地味にも見えますが重要ですね」
 衝撃波も爆撃も死の砂嵐でさえも。絶奈にしてみれば、ただ一歩を歩むに等しい児戯だったかもしれぬ。彼女こそは、かつて信仰と畏怖を集めた異端の神の一柱なれば。
「さて次はあのあたりでしょうか。――細かい位置までは分かりませんが、空間諸共蹂躙するまでです」
 言葉とともに放たれる衝撃波と爆薬。ギャングたちの断末魔とともに、絶奈は歩みを進めていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…フィールド・オブ・ナインなき後もこの地の炎は消えませんか。
なれば、これは未だ眠る残党の手によるものか、或いはこの世界の根幹より出ずるものか…、そも、これは本当に『炎』であるのか。
いずれにせよ、恐怖を食い物とする現象。良い予感は致しませんね。


野生の勘、聞き耳にて敵の位置を正確に把握し、
UC発動にて残像の速度で即座に肉薄
怪力、グラップルによる高速格闘戦にて戦闘展開
敵の放つ催涙スプレーに対しては目を閉じることで対応、
見えぬ視界の中でも並外れた野生の勘を以て敵の位置、動き、視線の意識まで正確に捉え仕留める


貴方がたも、貴方がたの恐怖も今は過去。
その魂を、その恐怖ごと。骸の海へと還しましょう。



●体現するは武の精華
 黒い炎に覆われた草原にダーティギャングの二人組がいた。恐怖に怯えそれを紛らわすように互いを口汚く罵っている。そこへ向かう白い人影があった。月白・雪音(月輪氷華・f29413)だ。黒い炎に紛れ、足音もなく駆け寄っていく。
 ダーティギャングの一人が、大声で罵声を上げる。
「もとはといえば、てめぇがあんなドジを踏んだせいだろ!」
 反論しようともう一人のギャングが口を開いた瞬間、その首が90度ねじ曲がった。ごきり、と頸椎の折れる音が鳴る。
「は……?」
 目の前で倒れる仲間の死体を呆然と見下ろすギャング。その頭上に影が落ちた。雪音は先の一瞬で跳躍し、空中から2人目のギャングを狙っていた。落下と同時、体重を乗せた一撃で頭骨を砕く。接敵からわずか数秒の事であった。
 倒れ伏したギャング達が動かないのを見て、雪音は残心を解く。そうしてわずかな敵の声と、研ぎ澄まされた野性の感を頼りに再び草原を走りはじめた。

 そうして討つべきダーティギャングたちを求めて駆けるうち、雪音の思考は周囲の草原を覆う黒い炎へと移っていった。
 ――……フィールド・オブ・ナインなき後もこの地の炎は消えませんか。
 ならば、この黒い炎はどこから来たのか、そんな疑問が雪音の裡に湧き起こる。
 未だ眠る残りのフィールド・オブ・ナインの手によるものか?
 或いはこの世界の根幹、知られざる秘密の一端より出ずるものか?
 そもそも、これは本当に『炎』であるのか?
 はっきりとした答えは出ない。だがいずれにせよ、恐怖を食い物とする現象であることを思えば良い予感はしない。捨て置くことはできなかった。

 目指す気配まであと少し。胸騒ぎを振り払うように雪音は足を速めた。敵を間合いにとらえると同時、ギャングの集団へと躍りかかる。
 一手、黒い炎を抜けて手近な男の背骨を拳で突き割る。
 二手、身をひるがえして水面蹴り、脇の男の体勢を崩し。
 三手、髪を掴んで引き倒し、顔面に膝蹴りを叩き込む。
 直後、反撃が来た。ギャングの一人が雪音の顔へと催涙スプレーを噴射。とっさに目を閉じたが、直撃した。顔にべっとりと付着した液体、目蓋の隙間から染み入っただけでも痛みが走る。
 暫くは目を開けられそうになかった。好機と見たギャングたちが四方から、雪音へと殺到する。無数の殺意と暴力の気配を感じながらも、雪音の顔に焦りの色はなかった。
 四手、殴りかかるギャングの足音を頼りに逆に踏み出し、腹へと拳を突き入れる。
 五手、後方からの視線を産毛で感じ、目の前の男を背後へと投げ飛ばす。2人分の悲鳴が上がった。

 六手。七手。雪音の攻撃は、目を閉ざす前と変わらずギャングたちを圧倒していた。
 目を閉じてなお、彼女にはギャングたちの動きが感じ取れた。攻撃に移る息遣い、筋肉の軋み。肌に浴びる殺気と視線。全身の感覚が、ギャングたちの位置を、行動を伝えてくる。それは数多の武術家が求めてやまぬ、妙域ともいえる神業であった。
 それを為さしめたのは、雪音がその身で積み上げてきた修練と、彼女の師父たちが命懸けで磨き上げてきた武術に他ならない。連綿と受け継がれてきた闘争技術、その極致ともいえる技を雪音はその身で体現していた。

 攻撃の手を緩めぬまま、雪音は引導を渡すように言葉を紡ぐ。
「貴方がたも、貴方がたの恐怖も今は過去。その魂を、その恐怖ごと。骸の海へと還しましょう。――恐怖を忘れて眠りなさい」
 言い置いた雪音の背後で最後のギャングが倒れ伏し、揺らぐ空気へ溶けて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『恐るべき幻影』

POW   :    今の自分の力を信じ、かつての恐怖を乗り越える。

SPD   :    幻影はあくまで幻影と自分に言い聞かせる。

WIZ   :    自らの恐怖を一度受け入れてから、冷静に対処する。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マティアス・エルンスト
「恐怖」か……。まだよく分からない感情だ。
だが、先のギャング達との戦いで、共にいた猟兵も、敵勢さえも「悲鳴」というものをあげていたな。あれが、「恐怖」の表れか?

俺は「幼い」。だから知らない事が非常に多い。

……?

目の前に、仲間たち、か?
……?
何故、見知った者たちが背を向けて去る?母親のような存在も、目標にしている存在も……。

「俺はここだ。何か用があるのでは無いのか?どこへ……」

……?何故、呼びかけても無視をする?確かに1度は俺を見るのに。

この感覚は……?
……何か、強い衝動が襲い来る。

(――おいていくな。こわい、もどってきて……!)

……!
そうか、これが「恐怖」か。
経験したことがあった感覚だ。

ならばやることは単純だ。撃破する。
何故ならその「恐怖」はもう過去のもの。今は、未知に遭遇しようが、重傷で帰還しようが、呼べば必ず応えてくれる仲間がいる。少なくとも、母親のような存在と目標にしている存在は、俺に応えてくれる。

「……セーフティ解除。」

撃破後は黒炎の変化を観察しておく。仲間の役に立つだろうから。



●恐怖を学ぶ
 恐怖とはいったい何なのだろうか。マティアスはそう自問する。過去の記憶の多くをリセットしたヴァーチャルキャラクターの身には、未知の感情であった。
 思い浮かぶのは先ほどのオブリビオンたちとの戦い。一緒に戦った猟兵も、オブリビオンたちも身を竦ませ、目を見開き、悲鳴を上げていた。あれが、恐怖を感じた姿なのだろうか?
 ――わからない。それはきっと俺が「幼い」から、多くの事を知らないということなのだろう。

 そう結論付けたマティアスの目の前で、黒い炎の中を歩む人影が見えた。炎を避けるようにしながらマティアスへと歩んでくるのは。色黒の肌に、金の髪、毛玉のような珍種のドラゴンを伴った姿。見覚えがあった。マティアスが戦友と恃む青年だ。マティアスは身構えることも忘れ、その姿に声をかけた。
「こんなところで会うとは珍しいな」
 しかし青年は、緑の瞳でマティアスを一瞥すると、そのまま物も言わずに彼の横を通り過ぎ、炎の中へと歩み去っていく。それ以上声もかけられないまま、マティアスは遠ざかる後姿を見送った。なんとなく息苦しさを覚えながら。
 入れ違うように現れたのは、彼にとっては目標ともいえる存在――長い黒い髪に着物姿の陰陽時の女性であった。誰かを探すように周囲を見回しながら、黒い炎の中を歩んでくる。
「俺はここだ。助けに来てくれたのか?」
 その言葉に彼女の目がマティアスの姿をとらえ、すぐに視線がそれる。いや、彼女だけではない。気づけば多くの仲間たちの姿が炎の中に現れ、彼のことを知らぬかのように通り過ぎていく。
 その光景にマティアスの息苦しさが増した。何か、取り返しのつかない何かが失われたような感覚に、彼の体が震える。

 ――何故だ。……どうして呼び掛けても無視をするのだ? 確かに彼らは俺を見ていたのに。

 気づけばマティアスは周囲に視線を巡らせ、行きかう人々の中に1人の女性を探していた。彼にとって最も信じられる相手。彼にとっての母親代わりの女性の姿を。果たして彼女の姿が見つかった。長い金髪から覗くエルフ耳、牧師姿の彼女もまた誰かを探すようにきょろきょろとあたりを見回していた。
「俺ならここだ。俺に何か用があるのでは無いのか?」
 息苦しさを振り払うように、マティアスは大きく声をあげる。
 その声に牧師姿の女性が振り返ってマティアスを見ると、すぐに興味を無くしたように、背を向けた。歩み去っていく、彼を保護し様々なことを教えてくれた『母親』が。
 息が詰まった。その後ろ姿を追うように手を伸ばす。周囲の空気が冷え込んだような感触。

 ――待ってくれ。俺をおいていかないで。戻ってきて。
 絞りだした言葉は声にならない。それは先の戦いで聞いた恐怖の悲鳴に似ていた。

 その事実がマティアスに状況を悟らせた。己が今感じている感覚こそが恐怖であり、今周囲に現れた仲間たちの姿はすべて黒い炎が見せる幻影であると。ならば。
 マティアスはアームドフォートを展開。仲間の姿をした幻影たちへと照準を合わせる。
 もし幻影でなければ彼は己の手で大切な存在を撃つことになるだろう。だが、そうはならないという確信があった。
 いかなる未知に遭遇しようと、重傷で帰還しようと必ず仲間たちは彼に応えてくれる。かの陰陽師も、『母親』も、けっして彼を一人にすることはない。

「……セーフティ解除。その『恐怖』はもう過去のものだ。消えろ幻影」
 解除コードと同時、マティアスの思考が兵器のそれへと切り替わる。すべてを打ち抜くという意志の元、トリガーを引く。アームドフォートから放たれた白光が視界を塗りつぶし恐怖の幻影を消し飛ばしていく。
 その一撃を可能にしたのは、マティアスが恐怖より早く「信頼」を学んでいたからかもしれない。
 白光に飲み込まれる幻影たちの中に、孤独に怯えるマティアス自身の幻影が見えた気がした。その恐怖の幻影もまた、光の裡に溶けて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトリア・アイニッヒ
オブリビオンの脅威は祓えました。
さて、後はこの黒い炎です。一体、何が出るでしょうか……。

……いえ、何となく予期はありました。
私の郷里を奪った、漆黒の巨竜。太陽の輝きを覆い隠し、その威光を食らう邪竜。
その姿は、記憶の姿と同じ。何という圧力……!

……いいえ。冷静になりなさい、ヴィクトリア。
あれは、幻影。あの時、私から全てを奪った仇敵そのものではありません。
それに、私もあの時とは違う。
恐怖に身を竦ませ、全てを奪われたあの日の私では無いのです。

「──主よ! 命を照らす、陽光の化身よ!」

勇気を示す様に斧槍を掲げ、UCを発動。
主に祈りを捧げ誓いましょう。

確かに、私は恐怖を感じています。
ですが、そこで怯まず足を止めず。打ち勝ち、乗り越える事が出来るのが、ヒトの強さ。命持つ者の強さなのですから。
そのヒトの持つ強さを。主がその加護を与える、生命の輝きを。

「この一撃で、示しましょう──!」

背に輝く光翼を羽撃かせて空を舞い、急降下。
その速度を加えた斧槍の一撃で、幻影を貫いてみせましょう。

※アドリブ歓迎です



●舞い降りる陽光
 オブリビオンたちを退け、ヴィクトリアは周囲の黒い炎を見回し、『幻影』の出現に備える。
「さて、私にとっての恐るべき敵とは……何でしょうか」
 言いながらも、ヴィクトリアにはどんな敵が現れるのか予感があった。

 不意に風が吹いた。思わず目を閉じたヴィクトリアの耳に、強大な翼が羽ばたく音が届く。翼の主が大きく舞い上がる気配とともに、ヴィクトリアへと注いでいた陽光が翳っていく。
 強風の中、目を開いたヴィクトリアが見たのは空に舞い上がった漆黒の巨竜。かつて彼女の郷里と故国を滅ぼした邪竜が、太陽の輝きを覆い、喰らう。そうして己の闇の深さを増していくようであった。咆哮とともに、草原が闇に染まっていき、暗闇の中、邪竜の瞳だけが得物を探すように煌めいている。目が合った。禍々しい眼光がヴィクトリアの身を射抜く。彼女の記憶に残るものと寸分たがわぬ姿、その威圧感に竦みそうな己の身をヴィクトリアは必死で鼓舞する。

 力みを抜くように息を吐き、ヴィクトリアは自らへと言い聞かせる。
――いいえ、冷静になりなさい、ヴィクトリア。どれだけ似ていようとあれは、幻影。あの時、私から全てを奪った仇敵そのものではありません。この状況はあの時とは違います。敵も、そして私も。
 邪竜の視線を跳ね返すように見つめ返し、『太陽の誇り』と銘打たれた斧槍を構える。
――私はもう、恐怖に身をすくませて、易々と全てを奪われたあの日の私ではないのです。
 すべてを覆いつくすような闇の中、ヴィクトリアは斧槍を掲げ、己の信じる神へ祈りと誓いを捧げる。

「──主よ! 命を照らす、陽光の化身よ! 邪悪を灼き、命を護る為の力を!」

 暗闇の中、天から差した細い光がヴィクトリアへと降りかかる。それは彼女の祈りに応えるように、ヴィクトリアへと力を与え、彼女の真の姿を解放させる。ヴィクトリアの体が光を帯び、闇の中、羽化した蝶が羽を広げるように、光り輝く翼を広げていく。

 放たれた光が漆黒の邪竜の姿を照らしだした。ヴィクトリア目指して殺到する巨竜。一足早く、ヴィクトリアは光の翼を羽ばたかせて空へと舞い上がる。直後、邪竜の揮った爪が、彼女の立っていた地面を抉った。
 邪竜もまた空を舞い、その巨大な爪を振りかざす。二度三度と揮われる巨大な爪をギリギリでかわして四発目、回避直後の不安定な体勢のヴィクトリアへと鋭い爪が襲い掛かる。目前に迫った死へ、ヴィクトリアは逆に切り込んだ。爪めがけて斧槍をたたきつけ、その一撃を弾きかえす。同時にヴィクトリアの体が大きく後方に飛ぶ。邪竜の一撃を受けて斧槍を持つ両手が痺れていた。
 たとえ幻影といえどまともに食らえば命はなかっただろう――その実感がヴィクトリアの体を震わせた。その事実に彼女は自身の恐怖を自覚し、それでもなお輝く翼とともに宙を舞う。

 彼女に立ち向かう強さを与えたのはきっと、弱き人々を守らんとする彼女自身の善性であっただろう。
 襲い掛かる邪竜の一撃を躱し、あるいはいなしながら、ヴィクトリアは自らを鼓舞し続ける。揮われた爪が耳元をかすめ、風が渦巻き唸り声をあげる。身をかわしたヴィクトリアの銀髪が翻り、邪竜の爪に断ち切られてハラリと宙を舞った。その切れ味を目の当たりにしながらも、ヴィクトリアはさらに己自身を奮い立たせる。
――認めましょう、確かに私はこの邪竜に恐怖を覚えている。ですが、そこで怯まず足を止めず。恐怖に打ち勝ち、乗り越えることができるのがヒトの強さ。命持つ者の強さなのですから。
 空中のヴィクトリアめがけて切り上げるように揮われる爪、その一撃をヴィクトリアは斧槍で弾き、彼女の体が邪竜の頭上、高く跳ね上げられる。先ほどとは違い、ヴィクトリア自身の意志で。それは反撃のための一手であった。
 ヴィクトリアは光の翼を羽ばたかせ、追いすがろうとする邪竜めがけ急降下。迎え撃とうと振るわれる爪にも速度を緩めることなく飛び込んで。
――ヒトの持つその強さを。主がその加護を与える、生命の輝きを。

「この一撃で示しましょう!」

 落下の勢いを加えた、斧槍【L'orgoglio del sole】の一撃が邪竜の頭を、ヴィクトリアにとっての『恐るべき敵の幻影』を確かに貫き、打ち破った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・絶奈
◆心情
…ああ、成る程
「コレ」が私の恐怖ですか

◆行動
乱しようもない程の秩序、疑う余地もない程に完璧な人格者が揃った世界…

その世界を好ましく思うからこそ、其れを壊すのはとても怖い
同時に我が身が必要とされなくなる事もまた、恐怖ではあるのでしょう
どんな言葉で飾り立てようとも、所詮この身は暴力装置に過ぎない以上、其れを揮う場が喪わる事は堪えますね

…ですが、その世界には進歩が無い
「疑う余地もない程に完璧な人格者」?
そんなモノは「人」ではありません

人の可能性とは、定める事等出来ないからこそ尊いのですよ
其れを閉じ込める管理された平穏なれば、破壊を厭うつもりはありません

治世に牙を剥くのは「獣」の役目である故に…



●聖女と獣
 オブリビオンを倒した絶奈の前に現れた『恐怖の幻影』は、あるいは平凡な光景とも言ってよかったかもしれない。
 どこか田舎の農村だろうか。行き交う人々の顔は笑顔であふれ、農夫達が額に汗をかきながら麦を刈り取り、子供たちがはしゃぎながらトンボを追う。
 ごく平穏な風景。争いや武力の気配もなく、その秩序だった世界に、恐怖よりもむしろ好感を抱きながら、絶奈は農村の中を歩んでいく。
 そうやって歩んでいった農村の端、何もかもが完璧に整えられたかのような世界の中でたった一つ。朽ち果てて崩れ落ちたものがあった。

――荒れ果てて顧みられることのなくなった礼拝堂の中、忘れ去られた裁きの女神像。

「……ああ、成る程。『コレ』が、こうなることが私の恐怖ですか」

 傾き、崩れ、苔むした女神像を見上げ、絶奈は己の恐怖の正体を直感した。
 乱しようもないほどに秩序だった世界で、ほんの僅かの諍いも起こるはずもなく。全ての人々が善良ならば、善悪を計り裁く神が必要とされるはずもない。疑う余地もない程に完璧な人格者たちだけならば、そこには法も審判すらも不要となる。
 平穏を愛し、法と秩序のために裁きの鉄槌を齎す神、それこそが絶奈の一側面。けれど、真に愛すべき法と秩序の世界が完成した時、そこに裁きの鉄槌があるべき場所は。――絶奈の居場所はない。朽ちた女神像の姿が、その事実を絶奈へと伝えていた。
 抗う言葉は無かった。
「確かに。どんな言葉で飾り立てようとも、所詮この身は暴力装置。敵を討つ力に過ぎない以上、其れを揮う場が喪われる事は堪えますね」
 そしてこの完璧な世界を破壊できるだけの力を自らが持っていることも。彼女にとっては恐怖であった。

 目の前の女神像のごとく、一切の暴力を奮うことなく、朽ち果てることが正しい道であるような気さえした。

――本当にそうでしょうか。
 絶奈の冷静な部分が、そう反論した。疑う余地もない程に完璧な人格者、そんなものが実在し得るだろうか。否、それは完璧でないものを切り捨てただけのこと。
 それは生まれたばかりの赤ん坊に完璧であることを強要する世界。若者の向こう見ずな勇気を。不用心な傲慢さを。理不尽に立ち向かう怒りを。戦いへと駆り立てる憎しみを。誰かを傷つけるかもしれない愛を。完璧な人間には必要のないすべてを。注意深く徹底的に取り除かれた人々。
 そんなモノはもはや人と呼べず、彼らの住まう世界には進歩がない、絶奈はそう結論付ける。

 絶奈は女神像に背を向け、朽ちた礼拝堂の玄関越しに外の光景を見やる。完璧な法と秩序を体現した人々の姿。けれどきっと彼らはどんな不幸もどんな理不尽も受け入れて、決して何かを変えることはしないだろう。完璧である彼らは、成長することも進歩の余地もない、すでに完璧であるがゆえに。

「そう。この光景は、この世界は人の可能性を奪いつくした世界。ですが、人の可能性とは、定める事等が出来ないからこそ尊いのですよ」

 その思いは、かつて小さな世界を管理した「異端の神々」である絶奈が持つ、人々の可能性への信頼であっただろう。
「これが、人の可能性を閉じ込める管理された平穏なれば――、どれほどの秩序があろうとも、破壊を厭うつもりはありません」
 そうして絶奈は、ユーベルコードを発動させた。彼女の周囲に青白い燐光が霧のように浮かび、その姿が異端の神々のそれへと変わる。純白の死神のごとき姿。それは絶奈のもう一つの側面、病と死をもたらし、世界に混沌をもたらす存在。
「治世に牙を剥くのは『獣』の役目である故に……」
 言葉と同時、死がまき散らされた。その姿は疫病をまとった屍獣の群れであり、鎧甲冑をまとった死者の軍勢であった。
 指示を下すように、絶奈が朽ちた女神像を指さす。それに従うように死人たちの槍が、女神像めがけて繰り出され――命中と同時、周囲の幻影を破壊した。

 朽ちた女神像と絶奈との一線を隔て、恐怖を乗り越えさせたものは、人の可能性を信じ、進歩を尊ぶ心だったかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
想起されるは獣の衝動に呑まれ、ただ本能のままに爪牙を振るい死を振り撒く『己自身』の姿。


…やはり私の前に現れるのは、『獣』を置いて他にありませんか。
私は師より己の力に呑まれぬ精神を培う術を、世の命の有り様を、
そして何よりも、その尊さを学びました。
故に、それを容易に摘み滅ぼす己が内の衝動をこそ私は恐れている。

されどその衝動は私の一部にして本質、律しはすれど目を逸らす事など致しません。

――我が武を以て、私(あなた)を超えましょう。


UC発動、怪力、残像、グラップルを用いての格闘戦にて相対

衝動のままに暴威を振るう獣には腕力で及ぶべくもなく、その速度も勘の鋭さも、己を遥かに凌駕している。

されど、獣には力を効率的に伝える技が無い。
相手の動きを見定める目が無い。
…そして何よりも、力を律する「心」が無い。

落ち着き技能の限界突破、無我の至りにて極限まで技を練り上げ、
見切りにて動きを掴み
怪力、グラップル、残像を交えた最大速度、最大威力の一撃を以て獣を仕留める

貴女も、共に背負いましょう。
…私の中にお戻りなさい。



●己の内に潜む化生
 周囲の敵を倒し、雪音はさらに炎の中の気配を頼りに駆け出していく。聞こえる声は5人、――いや4人。一際大きな足音と主に、1人が倒れた。続けて響く打撃音と断末魔。聞こえる声が3人に減った。雪音が駆けるうちに、また1人。雪音の野性の感が警鐘を鳴らす。この打撃と破壊の主はオブリビオンではない。きっと雪音自身の『恐るべき敵の幻影』。
 そして次の1人が倒されて断末魔が消えるころ。雪音は己の『恐怖の幻影』のもとへとたどり着いた。

 『幻影』は血にまみれた、雪音自身の姿をしていた。

 怪我はない、血の主はおそらく周辺に転がっているオブリビオン達。その死体のどれもこれもが只の怪力によって引きちぎられ、噛みちぎられていた。それはさながら荒れ狂う獣が、衝動のまま本能のままに狩りを行い、犠牲者たちに死を振りまいたかのような惨状であった。
 その凄惨な姿を目の当たりにして、雪音がつぶやく。
「嗚呼、……やはり。私の前に現れるのは『獣』をおいて他にありませんか」
 予感はあった。雪音が最も恐れるもの、それは己のうちに眠る殺戮と闘争の衝動。雪音はすでに師より武を学び、己の力に飲み込まれぬよう精神を鍛える術を身に着け、世界の命の有様を、何よりもその尊さを知っていた。
 そして、だからこそ。雪音はそれらをたやすく摘み取る自らの衝動に恐れを抱いていた。
 雪音を威嚇するように唸り声をあげる、雪音自身の『幻影』。雪音もまた拳を構える。衝動に飲み込まれ、血にまみれた己の『幻影』をまっすぐ見つめた。。
――その姿も、その衝動も、私の一部にして本質。律しはすれど、否定や目を背けたりなどは致しません。

「我が武を以って、私(あなた)を超えましょう」

 雪音の言葉が戦いの口火を切った。『幻影』が雪音へと躍りかかり、雪音もまた迎え撃つように一歩を踏み込む。2人の雪音は同時に攻撃を仕掛け、2つの拳が正面からぶつかり合う。押し勝ったのは『幻影』。不利を悟って雪音はとっさに後方へと跳躍、一瞬遅れて『幻影』が跳躍した。『幻影』の動きは雪音よりも早く、空中で雪音へと追いついて、力任せに右手を叩きつける。その一撃に雪音の体が宙を舞い、草原へと打ち付けられた。受け身を取って立ち上がりかけた雪音へと、『幻影』が追いすがり左手の爪を振りかざす。放たれた一撃が空を切った。雪音は自らの残像だけを断ち切らせて『幻影』の背後に回っていた。音もなく『幻影』の首へと手を伸ばし、仕留める寸前、『幻影』が何かを察したように飛び上がって間合いをとった。
――今の気配を気取りますか。衝動に身を任せているだけあって、勘の鋭さは今の私以上。いえ、その腕力も速度も。されど。
 先の攻防で痛む体を鎮める様に呼気を整え、先ほどの攻防のすべてを見直す。
 『獣』は怪力を振り回しているだけ、力を効率的に伝える技がない。
 相手がどのように動こうとしているのか、先を見通す目を持たない。

――そして何よりも、力を律する『心』がない。
 雪音には勝ち目が見えた。

 『幻影』が再び雪音へと飛び掛かり雪音も迎え撃つように拳を揮う、先ほどの攻防をなぞるように。だが、拳同士が触れ合う寸前、雪音の腕が弧を描き『幻影』の拳を払い、いなした。そのまま流れるように『幻影』へと肘を振り下ろす。体重の乗った一撃が『幻影』の肩を砕いた。よろめく『幻影』へと雪音は追いすがる。『幻影』の目を狙うように右手で一撃を放ち、防御を誘ったところで、がら空きの腹部へと左の拳を突き入れる。意識しての動きではない、何千、何万と。気の多くなるほどの鍛錬の果てに体に染み込ませた動きであった。
 苦し紛れのように咆哮する『幻影』、対する雪音はいたって平静のまま、『幻影』へと向きあっていた。
 雪音に獣のごとき『幻影』を圧倒せしめているのは、無我の境地へと至らせた精神修養と攻防を忘我の内に為すまでに鍛え上げられたその武の技であっただろう。
 雪音の姿に『幻影』が一瞬怯えるかのような素振りを見せ、それを振り払うように雪音へと躍りかかった。雪音も幻影へ向けて地を蹴った。同時に足の指から拳の先まで一つ一つの関節をねじり連動させ、力を伝えて加速させる。2人の拳が同時に放たれ交差する。クロスカウンター。先に拳を届かせたのは雪音であった。全力の一撃に『幻影』が気を失なったように倒れ伏す。

 草原の中、薄れて消えゆくもう一人の『雪音』。雪音はそっと、その手を握った。
「私は貴女の事も、共に背負いましょう。……私の中にお戻りなさい」
 消え去る寸前、『雪音』が安心したように微笑んだような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



 戦いの後、幾人かの猟兵がメンフィス草原を見回っていた。『黒い炎』はいまだメンフィス草原を覆いつくしている。が――。
 その火勢はわずかではあっても確実に弱まっていた。

最終結果:成功

完成日:2021年10月14日


挿絵イラスト