アポカリプス・ランページ⑪〜デミウルゴス信奉者団
●予知:煩わしい者共。
「ヒャッハアアア!」「ヒィィィハァァァ!」
(……煩い)
アイオワ州デモイン市。
かつて、ジェームズ・アレンの監督下で建てられたデモイン砦が放棄された後、入植した人々が集まり、町として拡大した歴史のある都市だ。
そこに再建されたデモイン砦に、一人の男と数多くのレイダーたちがいた。
その男こそ、フィールド・オブ・ナインの1体である、無敵の偽神『デミウルゴス』。
そしてその部下である偽神細胞を有するオブリビオンの軍勢、『拠点破壊部隊』である。
デミウルゴスの前に、部隊のレイダーたちが集まり高揚していた。
「ヒャッハアアア!」「やってやろうぜ、ブラザー!」
「オレのショットガンが火を噴くぜ」「ヒィィィハァァァ!」
(……煩い……煩い……!)
レイダーたちは各々の武器を入念に手入れしている。
デミウルゴスに多くの命を捧げるために。
デミウルゴスに多くの祈りを捧げるために。
「偉大なる神がオレらのトップだ!」「おお! 怖いもんなんてねぇぜ!」
「片っ端から拠点を襲って、皆殺しにしてやるぜぇ!」
「ヒィィィハァァァ
!」「……煩い、黙れ!」
苛立ったデミウルゴスが、一人のレイダーの首を刎ねる。
一瞬の静寂。そして、爆発する歓喜の叫び。
崇拝する神によって、手ずから殺されること。
それこそ、この場にいるレイダーたちにとって最大の栄誉だった。
「おおおお! 神の手によって、また一人永遠に至ったぜ!」
「羨ましい! あの野郎、赦されやがって……!」
「デミウルゴス様! オレたちの救世主ぅ! アンタのために、命を捧げまくるぜぇ!」
「……ああ……煩い……」
デミウルゴスの頭には、絶え間なく声が響いている。
この場にいない、各地の拠点で生き残っている人間たちの声が届いている。
人間たちの祈りの声。助けを求める声。
仇を裁いて欲しい。罪を許して欲しい。
そうした声に苦しめられ、苛まれている。
一方で、目の前では狂喜する者共の姿がある。
人間たちを殺しつくすために必要な戦力である、レイダーたちの祈り。
デミウルゴスを信奉し、デミウルゴスの命令に従って死ぬことで、オブリビオン・ストームによる永遠の中に加われるという信仰。
それもまた、デミウルゴスの殺意を高めるものだった。
(俺は救世主などではない、神なんかじゃない。狂った教団に作られた偽物だ……!)
人を救う力などない。あるのは、破壊し、殺戮し、滅ぼすだけの暴力だけだ。
だから、祈るな。語り掛けるな。縋るな。喝采するな!
すべての者の声が聞こえなくなるまで、殺し尽くさなければならない!
「すべて……殺す……! 殺せ……殺し尽くせ……!」
「聞いたか! 我らが神の神託だ!」「おお! 殺せ、殺せっ!」
「「「デミ、ウル、ゴス! デミ、ウル、ゴス! デミ、ウル、ゴス!」」」
(誰か……俺を、こいつらを、殺し尽くしてくれ……!)
偽神細胞製の大剣『偽神断罪剣』を握りしめて、デミウルゴスは猟兵たちの到来を待っていた。
●招集:偽神ヒャッハー部隊。
「ヒャッハー! エブリワン!
フィールド・オブ・ナインとのバトルが続きマース!」
看板を出して猟兵に語り掛けているのは、バルタン・ノーヴェである。
今回の予知では、偽神細胞を持つオブリビオンたちが相手となるようだ。
「偽神兵器を振りかぶる数多くのレイダーたち!
火炎放射器、チェーンソー、武装バギー! 何れも偽神兵器デース!」
モヒカン姿のヒャッハーなレイダーたちが、デモイン砦の中と外を跳梁していた。
そして、続けて表示される陰鬱な表情の大男。
砦の最奥に控え、偽神細胞製の大剣『偽神断罪剣』を握るこの男が、今回の標的。 『デミウルゴス』だ。
「そして、そのレイダーを率いるボスこそ、無敵の偽神『デミウルゴス』!
手にしている武装、偽神断罪剣を振るって、近距離・中距離・遠距離と、オールレンジで攻撃してくる強敵であります!
その上で彼奴は、体内に偽神細胞を持たない存在からの攻撃を……。
完 全 無 効 化!
してしまう恐るべき強敵であります!」
ストームブレイドでなければ戦えないというのか?
その疑問に、バルタンは笑顔で回答する。
「HAHAHA! 偽神細胞を持つ存在ならば……現場にたくさんあるではありマセンカ!」
ヒャッハーなレイダーたちの画像を再び表示する。
こいつらの攻撃を誘導すれば、あるいはそのままこいつらを用いれば。
偽神細胞液を摂取することなく、偽神化せずにデミウルゴスを倒せるかもしれない。
「どのみち、ここに集められた『拠点破壊部隊』を野放しにしては、今後の治安に差し支えマース!
プランニングは皆様にお任せしマース!
それではエブリワン! 存分に殲滅をお願いしマース!」
バルタンは叫ぶと共に、ゲートを展開する。
目標はデミウルゴス。
だが、その部下である拠点破壊部隊を逃さないようにして欲しいと告げて、バルタンは猟兵たちをテレポートさせていった。
リバーソン
こんにちは。リバーソンです。
マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。
今回のシナリオは一章構成です。アポカリプスヘルの戦争シナリオとなります。
フィールド・オブ・ナインの一体である『デミウルゴス』の撃破が目的です。
配下である『拠点破壊部隊』も攻撃してきますが、猟兵にとってはさほど脅威ではありません。
プレイングボーナスは、『「拠点破壊部隊」を利用し、デミウルゴスを攻撃する』です。
デミウルゴスへの直接攻撃を行わずとも、デミウルゴスを攻撃することができるのでご活用ください。
また、ストームブレイドの方は『偽神細胞を持つ』ということで、プレイングボーナスは適用されているとして扱います。他にも独自に『偽神細胞液』を摂取されている方は、プレイングに記載されているのであれば適用させていただきます。
オープニング公開後、断章を公開します。
皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『デミウルゴス』
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POW : デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD : 偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ : デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
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●希望の到来。
「デミウルゴス様! 襲撃です」
来たか。猟兵。
「……迎え撃て」
「ラジャー! オマエラ、行くぞぉ
!」「「「おおおお
!!」」」
拠点破壊部隊に排除される様ならば、猟兵ではない。ただの煩わしい声だ。
部隊を蹴散らすならば、猟兵だ。俺に救いを齎す存在だ。
殺さなければならない。殺されなければならない。
この身体は自死を許さない。
偽神細胞は俺の意志とは無関係に、生き延びようと、殺そうと暴れ狂う。
だから全力で抗い、戦う。だから、全力で殺しに来い。猟兵。
「デミウルゴス様のお手を煩わせることはねぇ!
俺たちで襲撃者を返り討ちにしてやるぞぉ!」
「「「おおおお
!!」」」
「……頼む」
猟兵たち。埒外の侵略者。どうか。俺を殺して(救って)くれ……!
水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:ロキ
偽神細胞、実験素材としては面白いのですが使われると厄介ですね。
光属性の触手で光学迷彩をかけ、デミウルゴスの近くで姿を現します。
「いざ、勝負です」
もちろんダメージを与える手はありませんが、拠点破壊部隊の目は惹けるはず。風属性の触手を移動と牽制攻撃に使い、大剣の攻撃と同時に砂嵐を起こします。
さらにデミウルゴスに光属性の触手を巻き付け、私そっくりの幻影へ姿を変えます。私自身は土属性の触手で地面の中へ退避。
これで、拠点破壊部隊の目には私の姿をしたデミウルゴスだけが映るハズ。死を望むなら、自らネタばらしはしないでしょう?拠点破壊部隊の方が気づくまで、同士討ちして頂きましょう。
灯火・紅咲
うぇひひひ!
いーっぱい集まってますねぇ!
こういうとこほどボクってば本領を発揮できちゃうヒーローだったりしちゃうんですよぉ!
こーっそりと破壊部隊に近づきましたらぁ、外側に居るとか、ちょっと単独で行動している人とか見つけてとりゃー!と【シリンジワイヤー】で襲って【吸血】しちゃいますぅ!
そしてー、へんしーん!
して何食わぬ顔でレイダーさんに合流!
あとはー、もうたっぷりとウソをばら撒いちゃうのですぅ
デミウルゴス様が敵に襲われて大変だから無敵のデミウルゴス様に構わず攻撃をぶち込んで援護しましょうとかぁ
デミウルゴス様に一発攻撃当てたらご褒美に殺してもらえるとか!
強そうな武器をお借りしちゃうのもいいですねぇ!
夜刀神・鏡介
拠点破壊部隊をどうにか利用して、デミウルゴスを倒す……か
デミウルゴスだってただ突っ立ってる訳じゃないし、どう対応したものかね
神刀の封印を解放、神気によって身体能力を強化しつつ、弐の型【朧月】の構え
襲撃者なりデミウルゴスの攻撃をひたすら防御しつつ、どこまでの攻撃が通用するのかを確かめよう
デミウルゴスに対する攻撃で、ダメージはなくとも動きを阻害する事が出来るかどうか
例えば破壊部隊の持つ武器を奪って攻撃するのは有効か
近接攻撃なり銃弾なりを弾いたものを当てるのは有効か
或いは、もっと直接的に拠点部隊の体勢を崩してから突き飛ばすなりして、デミウルゴスに誤爆させる
時間はかかるが、少しずつ削っていこう
●猟兵たちの陣形。
「ヒャッハー! 猟兵共! ぶっ殺してやるぜぇ!」
転移してきた猟兵を確認して、デモイン砦の外にいる拠点破壊部隊が二手に分かれる。
現れた猟兵を殺害しようと殺到する者たちと、砦の中にいる仲間やデミウルゴスに知らせる者たちだ。
様々な種類の偽神兵器を手に駆け寄ってくるレイダーたちを、三人の猟兵が迎え撃とうとしていた。
「偽神細胞、実験素材としては面白いのですが使われると厄介ですね」
「拠点破壊部隊をどうにか利用して、デミウルゴスを倒す……か。
デミウルゴスだってただ突っ立ってる訳じゃないだろう」
「うぇひひひ! いーっぱい集まってますねぇ!
こういうとこほどボクってば、本領を発揮できちゃうヒーローだったりしちゃうんですよぉ!」
多重人格者、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の人格の一人、ロキ。
『選ばれし者』とも呼ばれる剣豪、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)。
強化人間のダークヒーロー、灯火・紅咲(ガチで恋した5秒前・f16734)の三人だ。
「私の作戦が上手くいけば、かなり効果があるはずです。
鏡介さん、紅咲さん。協力をお願いできますか?」
「わかった。水鏡の策が上手くいくよう、引き付けてみせよう」
「はーい! それはもうたっぷりと騙しちゃうのですぅ!」
迫り来る拠点破壊部隊のレイダーたちを前に、三人は連携行動を開始した。
●前衛の剣豪。
鏡介は『神刀』の封印を解放して、ロキと紅咲の前に立った。
二人の邪魔をさせないようにレイダーたちの意識を引き付けること。
そして出てきたデミウルゴスを足止めすることが、鏡介の役目だ。
「ヒャッハー! 一番槍ならぬ一番チェーンソーをいただくぜぇ!」
「遅い」
真っ先に襲い掛かってきたレイダーがチェーンソーを振りかぶるが、振り下ろす間もなく鏡介に斬り捨てられる。
後に続くレイダーたちも、鏡介が一刀のもとに斬り捨てていく。
横薙ぎに振るわれるノコギリも、突き出されるランスも、鏡介に見切られ受け流されカウンターで切り伏せられる。
鏡介の立ち回りを見たレイダーたちは、鏡介が近接戦闘に熟練した猟兵だと察する。
「遠くから撃ち殺せ!」「ヒャッハー!」「一斉発射だぁ!」
隊長格のレイダーが指示を飛ばし、戦車に搭載したガトリング砲を用いて鏡介を狙い撃つ。
火炎放射器が、グレネードランチャーが、鏡介に殺到する。
しかし、放たれた弾丸は一つ残らず斬り落とされる。
燃え滾る炎も激しい爆発の衝撃も、森羅万象の悉くを斬る刃に払われていた。
唖然としたレイダーたちが鏡介に踏み込まれ、武器ごと両断されていく。
「ば、バカな! あれだけやって、なんで傷一つ負ってねぇんだよぉぉぉ!?」
有象無象の攻撃では一つのかすり傷を負わせることも許さない、鉄壁の陣。
あらゆる攻撃を見極め、見切り、受け流して反撃を斬り込む構え。
鏡介の卓越した剣術、《弐の型【朧月】》による守りの技である。
兵戈槍攘も砲煙弾雨も、この構えを取った鏡介の前では凪に等しい。
真に斬ると決めたもののみを断つと謂れのある神刀を構えて、鏡介は居並ぶレイダーたちを睥睨する。
「どうした? もう終わりか?」
「こ、この野郎! ええい、全員でかかれぇ!」
鏡介を取り囲み、一斉に襲い掛かるレイダーたち。
時が来るまで、鏡介は一人でレイダーたちを翻弄し続けていく。
●中衛のメカニック。後衛のシェイプシフター。
砦の外にいるレイダーたちの意識は、鏡介に集中させられていた。
無秩序に見えても拠点破壊部隊というだけあって、最低限の指揮系統は存在している様子だ。
砦の出入り口にいるレイダーが声を張り上げ指示を飛ばし、連携を取って鏡介を害そうとしている。
もっとも、鏡介の守りを突破することはできずにまごついているのだが。
そうして鏡介が注意を引き付けている間に、
ロキが銃型魔導兵器『オムニバス』―――イメージした現象と設定した属性が一致すれば発動する魔術を搭載したハンドガンを取り出して、
ユーベルコード《触手式魔導兵器-シンフォニア》を起動した。
「……よし、必要数の起動ができました」
オムニバスに設定している属性の力を取り込んだ触手が、ロキと紅咲に放たれる。
その触手の一本一本が、異なる属性を有している。
最大で操作できるその本数は、565本。
今は作戦に必要な本数を起動させて、ロキと紅咲に纏わせている。
まずは光属性と風属性の触手を発動させて、ロキと紅咲に光学迷彩と音や臭いを遮断する隠密性能を付与した。
「それでは、手筈通りに」
「はいはーい! ボクも思いっきりめちゃくちゃにしてあげますよぉ!」
ロキは姿を隠し、紅咲はデミウルゴスを叩くための仕込みを行うためレイダーたちに近づいていく。
鏡介に夢中になっているとはいえ、紅咲はレイダーの群れの中を物怖じすることなくすり抜けていく。
「あはっ! こんなに近づいても気づかれないなんて、さっすがぁ!」
「何してやがる! 囲め囲めぇ! 逃がすんじゃねぇぞ!」
「あー。あの人がリーダーかなぁ?
それじゃあ、……あの人でいいかなぁ? ふひ!」
紅咲は拠点破壊部隊の後方にいる指揮官に目をつける。
ゆっくりと武装バギーに歩み寄り、戦車ガトリング砲を撃ちながら怒鳴り散らすレイダーの背後に忍び寄る。
紅咲は気づかれていないことを確認して、袖下に仕込んだ小型のワイヤー射出機構『シリンジワイヤー』の狙いを定めて、その先端に取り付けている注射器をレイダーの首筋に突き刺した。
「とりゃー!」「はやぶっ!?」
そのまま倒れたレイダーを車体に隠し、吸血用の注射器から血を吸い取りながら紅咲は堂々とバギーの上に立つ。
その姿は、今しがた倒したレイダーと同じ姿になっていた。
「へんしーん! ひひっ! 似合ってますかぁ? どうですかねぇ?」
《千に変わり万と化す(メイクアップ)》。
血液を摂取した対象へ変身することができる、紅咲のユーベルコードだ。
変身時間は摂取した血液の量に応じるが、ただいま現在進行形で吸い続けているこの姿は、戦闘中は持続できるだろう。
「さーてと、んっんっー。よーし、喉の調子もオーケー!
あとは出てくるのを待つばかりですねぇ! ふひひっ!
オラオラー! 右に回れー! 違ーう、そっちは左だよっ!
止まるんじゃないぞー! 走れ走れー! そこでジャーンプ!」
さりげなくバギーを操縦して入口から距離を取りつつ、紅咲は楽しそうにレイダーたちに指示を出していた。
そうして騒動を起こしながら、本命が出てくるのを待っていた。
●本陣のデミウルゴス。
「……来たか」
砦の外にいる拠点破壊部隊を鏡介が倒し続けて数分が経過した。
襲撃者を猟兵と判断したデミウルゴスは腰を上げ、偽神断罪剣を握りしめて外に姿を現した。
「おっとぉ。みんなぁ! デミウルゴス様が来てくれたぞぉ!」
「おおおお! デミ、ウル、ゴス! デミ、ウル、ゴス!」
紅咲が声を張り上げ、鏡介と戦っていたレイダーたちが歓声を上げて道を開く。
デミウルゴスの眼には、目の前に立つ鏡介しか見えていない。
「……殺せ」
デミウルゴスは偽神断罪剣を振りかざし、駆け出した。
偽神細胞が活性化し、偽神断罪剣が通常時の三倍の大きさとなる。
それでいて移動速度は衰えず、威力も偽神細胞の侵食による拒絶反応の効果も増大している。
デミウルゴスは鏡介に向けて強力な初撃を繰り出した。
迎え撃った鏡介は、全神経を集中させてデミウルゴスの一撃を受け流す。
霞み揺らめく月の如く、的確に攻撃の勢いを見極めて、力の込められた瞬間を逸らし、神刀を断罪剣に添わせて地面へと叩きつけさせる。
大地が抉れるほどの強打を受け流されたことで、デミウルゴスの動きが、一瞬止められる。
「いざ、勝負です。デミウルゴス」
そこを、その隙を。
風属性の触手を使って空中を浮遊していたロキがついた。
ロキ自身に巻き付けていた土属性と風属性の触手を組み合わせて、砂嵐を展開する。
ロキと、鏡介とデミウルゴスが砂のカーテンに覆われてレイダーたちから見えなくなる。
「猟、兵……!」
「私の触手はこういうこともできるんですよ」
ロキは光学迷彩を解いて姿を現し、デミウルゴスとの距離を詰めてオムニバスの引き金を引く。
ロキの放った触手が、鏡介とデミウルゴスに巻き付いた。
触手はデミウルゴスの断罪剣を持つ手に絡みつき、一方で鏡介には動きを阻害させないよう背中や腰回りに纏われて。
それぞれの触手が、込められた光属性の力を発揮する。
「早く……殺せ……!」
「安心しろ、時間はかかるが、殺してやるさ」
鏡介の言葉を聞いて、デミウルゴスが、否、デミウルゴスの偽神細胞が活性化する。
デミウルゴスは触手ごと強引に断罪剣を振るい、強毒化した偽神細胞を巻き散らす。
これこそ一定の範囲内にいる敵全員にダメージと死に至る拒絶反応の状態異常を与える必殺のユーベルコード。
《デミウルゴス・ヴァイオレーション》!
ロキは落下の勢いのまま素早く土属性の触手を用いて地面の中へと退避する。
鏡介は可能な限りの攻撃を切り払い、纏っていた【無仭】の神気により耐え忍ぶ。
拒絶反応の状態異常を、鏡介は神刀の浄化する力によって回復させていった。
デミウルゴスの範囲攻撃により砂嵐が晴れ……そこには対峙する鏡介とデミウルゴスの姿があった。
ただし。
光属性の触手によって幻影をかぶせられた、デミウルゴスの姿の鏡介と、鏡介の姿のデミウルゴスであった。
デミウルゴスが一瞬、驚愕に目を見開く。
その反応を見て鏡介は微笑み、紅咲に作戦成功の合図を送る。
刀を掲げて、声を出す。
「俺ごと、撃て!」
合図を聞いて、紅咲は大喜びで声を張り上げる。
「聞こえたかぁ! デミウルゴス様が大変だぁ!
デミウルゴス様は無敵だから、構わず攻撃をぶち込んで援護しろぉ!」
「ヒャッハー!」「お任せくださいデミウルゴス様ぁ!」「死ねぇ猟兵ぇ!」
崇拝するデミウルゴスの命令、そして部隊長の指示。
レイダーたちに躊躇する理由はなく、手にした思い思いの偽神兵器を放っていく。
いずれも鏡介を狙ったものだが、肉薄しているデミウルゴスに誤射が起こるのは当然だ。
紅咲も偽神兵器の武装バギーに搭載されている戦車ガトリング砲をぶっ放し、デミウルゴスを狙い打つ。
「ひゃっほう! 楽しいですねぇ!」
「彼が死を望むなら、自らネタばらしはしないでしょう。
このまま同士討ちして頂きましょうか」
「あ、お帰りなさーい、ロキくん!」
地中を通って紅咲の隣に出現したロキもまた、バギーに載っていた戦車機銃を握って一斉射撃に参加する。
光属性の触手でレイダーのような幻影へ姿を変えているため、ヒートアップしたレイダーたちはロキが猟兵であると気づかずにいる。
鏡介は降り注ぐ弾幕を《弐の型【朧月】》で防ぎ、デミウルゴスを逃さないよう足止めを続けている。
その刀でデミウルゴスに傷をつけることができないにしても、動きを阻害することはできていた。
偽神兵器の流れ弾と、明確な誤射という名の攻撃を浴び続け、デミウルゴスは無視できないほどに損傷を受けた。
不意に、口の端を歪めるデミウルゴスの表情を、鏡介は見た。
そこで、宿主の命の危機を感じ取った偽神細胞がデミウルゴスの身体に纏わりついた触手を食らう。
「ヒャッハー! ……あれ?」「デミウルゴス様が、二人になってるぞ?」「あの猟兵が変身したのか!? どっちが本物だ!?」
「くっ……俺は……! 殺さねば……!」
幻影が解かれた理由は、《デミウルゴス・セル》というユーベルコードによるものだ。
デミウルゴス自身の偽神細胞でできた変化する肉体が、捕食した対象のユーベルコードをコピーして数秒間発動することができる能力。
デミウルゴスの意に沿わずに細胞が勝手に触手を食らい、その光属性をコピーしていたのだ。
困惑するレイダーたちを他所に、デミウルゴスは光学迷彩を展開して殺し間から離脱する。
「待てっ! ……逃げられたか」
「どうやら、まだあの偽神細胞が生かそうとしているようですね……」
「うーん、せっかく誘い出したのに逃げられたかぁ。
でもでもぉ、ボクたち結構な大ダメージを与えられましたよね!」
「はい。私たちは、ここにいる拠点破壊部隊を殲滅しておきましょう」
「……ああ、わかった。お前たち、そこに並べ」
困惑するレイダーたちをデミウルゴスの姿のままの鏡介が斬り伏せていく。
崇拝する神の声が違うことに気づかない狂信者たちは、恍惚とした表情で処刑の列を成して、殲滅させられていった。
鏡介の脳裏には、直前に安堵の笑みを浮かべるデミウルゴスの表情が残っていた。
大成功
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グレアム・マックスウェル
死にたがりの神に死にたがりの信者たち
ある意味、似合いの組み合わせかもね
見習いたくはないけど
ともあれ、あの雑魚たちは僕にとってやりやすい相手だ
何せ自分から命を捨ててくれるんだから
破壊部隊に指定UC
人は死して初めて神の座に祀られる
十字架の救世主も、オルレアンの聖女も、ギリシャの英雄も
君たちの神が「真の神」であれと欲するなら、その手で奴を
『殺せ』
とはいえ闇雲に突撃させても無駄死にさせるだけだ
自らも囮として立ち回りデミウルゴスの注意を誘いフェイント
攻撃を受けたら手近な敵レイダーを盾にすることで相殺
火炎放射器の炎を
チェーンソーの刃を
全身に仕込んだ爆弾を
バギーの突撃を
ありったけの祝福をお前たちの神に捧げろ
●神を殺せしモノ。
「……煩い……黙れ……! 殺す、殺せ、殺し、……っ!」
デミウルゴスは砦の中へと戻り、居合わせた拠点破壊部隊を捕食していた。
偽神細胞が損なわれた肉体の傷を癒すために、必要なものを補充するために身体を伸ばしていた。
拠点破壊部隊のレイダーたちは、降ってわいた神の祝福に打ち震えていた。
「ああ、まさかデミウルゴス様の一部になれるなんて……!」
「どうぞ使ってください! オレの命を捧げます、神よ!」
感極まって喜びの涙を流すレイダーたちを、苛立ちながらデミウルゴスは咀嚼していた。
猟兵たちによって受けた損傷を回復している偽神細胞の食事現場へと、一人の猟兵が踏み込んだ。
「死にたがりの神に、死にたがりの信者たち。
ある意味、似合いの組み合わせかもね。見習いたくはないけど」
グレアム・マックスウェル(サイバーバード・f26109)は、冷徹な表情を浮かべてデミウルゴスとレイダーたちの前に現れた。
「なんだ、テメェ! デミウルゴス様を侮辱するってぇのか!」
「テメェ猟兵この野郎! ぶっ殺してやる!」
「……猟、兵……!」
デミウルゴスの命令を待つことなく、レイダーたちが偽神兵器を手にグレアムに殺到する。
狭い砦の中、彼我の距離は瞬く間に縮まり、レイダーがグレアムに向けて凶器を振り下ろそうとする。
その直前、グレアムが指を鳴らす。
「ともあれ、この雑魚たちは僕にとってやりやすい相手だ。
何せ自分から命を捨ててくれるんだから」
その場にいるレイダーたちが全員、一瞬硬直した。
そして反転して、先程まで敬っていたはずのデミウルゴスへと向かっていく。
その目には純然たる殺意と、変わらぬ信仰心が宿っていた。
「野郎、ぶっ殺してやる!」「デミウルゴス様の敵めっ! 死ねぇ!」
デミウルゴスは一切躊躇うことなく無言で偽神断罪剣を振るい、襲って来るレイダーを殺す。
拠点破壊部隊は薙ぎ払われ、デミウルゴスはグレアムの行いに気づいた。
「洗脳……。いや、ハッキング、か……!」
「ほう、気づくのか。そうだとも。
さあ踊れ、死の刃の端で。自らの愚の果てに待つ運命を知らぬままに」
レイダーたちがデミウルゴスへ攻撃し始めた原因は、グレアムのユーベルコードによる作用だ。
グレアムのヘッドセットマイクから戦場にいる敵に向けて、敵と味方を識別するための意志制御を阻害する命令コードを放ち、自傷や同士討ちを誘発する状態異常を与える能力。
それが《愚者の行進(シリー・ウォーク)》。その効果によって、レイダーたちはデミウルゴスを敵と、グレアムを味方だと誤認させられているのだ。
「人は死して初めて神の座に祀られる。
十字架の救世主も、オルレアンの聖女も、ギリシャの英雄も。
君たちの神が『真の神』であれと欲するなら、その手で奴を、
『殺せ』」
「うおおおおおお! デミウルゴス様のために! デミウルゴス様を! 殺せぇ!」
指揮をするように手を振るうグレアムに応じて、レイダーたちがデミウルゴスへ殺到する。
デミウルゴスを傷つけることのできる偽神兵器を持ったレイダーたちが、デミウルゴスへの信仰心を抱いたままデミウルゴスを殺そうとしている。
チェーンソーの刃が、ショットガンの弾丸が、クロスボウの矢が、デミウルゴスに捧げられる。
しかし闇雲なレイダーたちの攻撃はデミウルゴスに触れることも許されず、三倍に巨大化した偽神断罪剣で容易く蹂躙されていく。
「無駄だ……! 殺せ、早く……!」
そのままレイダーたちをデミウルゴスに処理させるのも良いだろうが、無駄死にさせるだけだと思案したグレアムは、デミウルゴスを追い込むための一手を追加することにした。
隠匿性に優れた小型拳銃『Minimum-Maximum』を抜き、デミウルゴスの方へ向ける。
偽神兵器ではない武器はデミウルゴスに痛痒を与えないが、レイダーたちには通用する。
グレアムはデミウルゴスの傍に火炎放射器を持ったレイダーと爆発物を持ったレイダーを送り込み、燃料タンクを撃ち抜いた。
「殉教だ。嬉しいだろう?」
「デミウルゴス様、万歳ィィィ!」
砦を揺るがす爆発が起こった。
至近距離で不意の偽神兵器の自爆に巻き込まれ、デミウルゴスは壁を砕いて砦の外へ飛ばされていく。
決して軽くないダメージを与えられたことだろう。
砦の中に残っているレイダーたちは、その悉くがグレアムのユーベルコードにより識別意志の制御機能に異常をきたし、自傷や同士討ちを繰り返している。
「僕の仕事はここまでか。あとは任せるよ」
グレアムは砦の外にて待ち受ける猟兵にデミウルゴスの始末を託して、砦内の残党処理を粛々と済ませて行った。
成功
🔵🔵🔴
フレスベルク・メリアグレース
偽の神よ
本来救世主として求められ、しかし至れなかった者よ
わたくしは傲慢な憐憫だとしてもあなたに敬意を払わずにいられない
例え、その存在意義が万有を滅びに導く事しか出来なくとも……
その衝動をねじ伏せ、自死を求める事で否定する『分別できる理性』を有していた
それだけで十分、わたくしは貴方を肯定し――永眠させましょう
真の姿を開放
背中から天使の如き複数対の翼を広げると同時、死に至る拒絶反応を真の姿を開放する事で無毒化
それと同時に展開されるはヴォーパルソード
それらは「拠点破壊部隊」を串刺しにし、刀身をその偽神細胞の影響を受けた血液で濡らしていく
信仰を己の都合良き理屈に当てはめる愚者よ
貴方達はモズの早贄になるのが相応しい
冷徹に告げながらその肉塊を放り捨て、偽神細胞の影響を受けた血液に濡れたヴォーパルソードをデミウルゴスへと向ける
その命、天へと帰しましょう
瞬間、青白き剣が偽の神へと殺到し、呪われし肉体に終焉の安息を与えていく
●信仰の行く末。
砦の外、大地に横たわるデミウルゴスに残ったすべての拠点破壊部隊が集結していた。
デミウルゴスの受けた傷は活動に支障はないが、傷だらけのデミウルゴスの姿を見てレイダーたちは声を張り上げている。
「デミウルゴス様!?」「無敵のデミウルゴス様が、まさかこんな!」
「猟兵共の仕業だ! よくも神に傷を!」「デミウルゴス様、何か必要ですか!」
「オレを食って傷を癒してください!」「馬鹿野郎、神に身を捧げるのはオレが先だ!」
負傷したデミウルゴスのためにその身を捧げようとする様子を、
フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)は冷徹に見つめていた。
「信仰を己の都合良き理屈に当てはめる愚者よ……。
貴方達はモズの早贄になるのが相応しい」
「テメェ……猟兵か!」「よくもデミウルゴス様を! ぶっ殺してやる!」
どこまでも自分本位なレイダーたち。
無私の奉公に見せた妄信。献身的な忠誠に見せかけた狂信。
『オブリビオン・ストームによる永遠の中に加わりたい』という欲望が根底にある、偽りの信仰心。
その醜悪な者共への想いが。そして、その渦中にあるデミウルゴスへの想いが。
フレスベルクの枷を解き放った。
「……煩い、黙れ」
「おお、デミウルゴス様!」「我らが神よ! オレたちの永遠を阻む敵に鉄槌を!」
「黙れ! 退け! ……俺は……殺せ……!」
レイダーの手を払いのけ、デミウルゴスが立ち上がる。
偽神断罪剣を手にして、フレスベルクに対峙する。
フレスベルクは、背中から天使の如き複数対の翼を広げていた。
オーバーロードによる真の姿を開放である。
その姿は、悪魔の如き漆黒の姿を晒すデミウルゴスと対照的に映っていた。
拠点破壊部隊の声はもはや雑音となり、もう二人の耳には届かない。
フレスベルクとデミウルゴスは、互いを見合っていた。
「偽の神よ。
本来救世主として求められ、しかし至れなかった者よ。
わたくしは傲慢な憐憫だとしてもあなたに敬意を払わずにいられない」
「……俺は、神ではない……! 祈るな……願うな……! 俺は……!」
「例え、その存在意義が万有を滅びに導く事しか出来なくとも……。
その衝動をねじ伏せ、自死を求める事で否定する『分別できる理性』を有していた。
それだけで十分、わたくしは貴方を肯定し――永眠させましょう」
「……。……ああ……。頼む……を、殺して、くれっ……! アアアアアアッ!!」
デミウルゴスの偽神細胞が活性化する。
デミウルゴスが慟哭の叫びをあげて、偽神断罪剣を振りかざす。
《デミウルゴス・ヴァイオレーション》
強毒化した偽神細胞を周囲全域に放ち、フレスベルクにダメージと死に至る拒絶反応の状態異常を与えようとする。
フレスベルクはその侵食を、祈りで斬り払った。
「その剣は聖にして邪なる存在。蒼白にして不可視の致命的。
汝、その剣を従えると言うならば弾劾者たるを心得よ。
《識に囚われざる竜殺者の聖なる邪剣(フェイタルペイル・ゲオルギウスブレイド)》」
幾何学模様を描き複雑に飛翔する、千を超える数の認識不可の青白き刃。
斬竜剣ヴォーパル・ソードが、漂う偽神細胞を一つ残らず寸断していた。
ついで拠点破壊部隊をすべて串刺しにして、刀身を赤い血液で濡らしていく。
偽神細胞の影響を受けたレイダーたちの血で彩られた刃は、偽神細胞による攻撃に等しい武器となった。
もはやデミウルゴスには、千刃を無効化する方法を持っていない。
フレスベルクの意志の元、すべてのヴォーパル・ソードがデミウルゴスへと向けられる。
「その命、天へと帰しましょう」
偽神細胞が抵抗する猶予を与えることもなく。
青白き剣が偽の神へと殺到し、呪われし肉体に終焉の安息を与えていく。
最期に笑みを残して、無敵の偽神デミウルゴスは塵となって消えていく。
フレスベルクはその場に膝をつき。静かに、名も知らぬ男に祈りを捧げていた。
フィールド・オブ・ナインの第8席、『デミウルゴス』、撃破。
大成功
🔵🔵🔵
偽神細胞が全力で蠢いている。もはやユーベルコードも使えないというのに。
逃げることを求めている。生き延びることを願っている。
一人でも多くの命を殺すのだと、暴れ狂っている。
偽神細胞を散布しろと主張している。
こんなところで諦めるな。
殺戮せよ。
救え。
それも、すぐに静かになった。
ああ。
本当に静かだ。
もう、誰の祈りも届かない。
ずっと、苦しかった。終わりたかった。
もう何も聞こえない。何も見えない。感じない。
永劫に囚われて、こうして安らぐことも許されなかった。
だから、これでようやく休むことができる。
もう人々を、殺さずに済む。
……ありがとう。
猟兵たち。
俺は。