アポカリプス・ランページ⑮〜わんこ戦車との戦い
●黒炎の大地とわんこの戦車
メンフィス灼熱草原。かつてはミシシッピ川に面した華やかな大都市だったが、今やどこにもその面影はない。辺り一面、見渡す限りに轟轟と黒い炎が燃え盛り、熱波に包まれている。
何によっても消されることの無い激しき黒炎は、地表のみならず地下にまで及び、現状のメンフィスは文字通りの「死の草原」と化している。
そんな灼熱の草原から、黒い炎とは別の「何か動く影」が出てきた。
「わん!」
「うー!わんっ!」
「きゃうん!わふっ!」
場違いな、愛くるしい鳴き声と共に蠢くのは、「いぬせんしゃ」の大軍―― 無数のオブリビオンだ。
この犬たちは皆かつては賢い動物であり、操っている戦車はそんな賢い動物たちでも操縦可能なように専門的に開発された戦車……だったのだが、今では亡き者となり、オブリビオンとして蘇ってしまっているという訳である。しかも、戦車と融合し一体化して。
無数のいぬせんしゃたちは、幾らか攻撃を放ちながらパトロールした結果、今のところ敵は存在しないと分かると、静かになって再び黒炎の中へ姿をくらましていった……。
●グリモアベースにて
「この度もお集まりくださいまして、ありがとうございます。グリモア猟兵の土御門泰花(つちみかど・やすか)と申します」
優雅に一礼し、泰花は早速今回の戦場に関する予知の内容を説明し始めた。
「今回私が予知しましたのは、メンフィス灼熱草原での無数のオブリビオンたちの姿です。……先ずは、姿をお見せしますね」
そうして彼女が虚空へ投影したのは、先ほどの光景。可愛い鳴き声でパトロールするわんこの戦車の群れに、猟兵たちから幾らかの笑いが漏れる。そんな彼らにつられ笑いしそうになりながらも、泰花は注意を促した。
「ふふ……ダメですよ、皆さん。油断大敵です。まして戦争の最中なのです。彼らはこの時こそ鳴き声をあげていましたが、皆さんという敵を察知すれば、皆さんの視界を覆う灼熱の黒炎に静かに潜みながら四方八方に散開して皆さんを撃破しに襲ってきます」
そこで必要になるのは、如何にして素早く敵を発見するかである、とのこと……簡単に言ってしまえば先手必勝という訳だ。
もちろん、戦争に投入されるような存在なのだから、侮れば先手を取れても負ける危険性はないとは言えない。
「敵は、単体ではそこまで大した強さを持ちませんが、数の優位で皆さんを蹴散らせると考えている節があるようです。四方八方に散って襲い来ることからも、まとめて撃破することを狙うよりは1体でもいち早く見つけ、各個撃破を狙うのが良いでしょう」
ふむ、と思案し始める猟兵たちへ、泰花はさらに付け加える。
「ただし、1体だけを見つけたと思っていても、どうやら犬の本能と申しますか習性と申しますか、そのようなものは残っているらしく、敏感に仲間の状況を察知できるようです。その結果、場合によっては協力技のようなものを仕掛けてきたり、さらなる『いぬせんしゃ』を召喚して頭数を増やすこともしてくるようです。加えて当然戦車ですので、主砲であるキャノンの一撃にもご注意ください。着弾地点を破壊するほどの重たい一撃を放つようです」
その事は、頭の片隅に置いていてくださいね、と泰花は告げて柔和に微笑む。
「大事なことは、視界を妨げる黒炎の中に潜んで襲いかかろうとする彼らの存在を如何に素早く看破するかです。先手をとれればある程度は優位に立てることでしょう。……ご武運を。では、早速ですがお支度の整いました方から転送致します。この度もどうぞよろしくお願いします」
改めて猟兵たちを見渡して一礼した泰花は、手のひらへ紫のグリモアを浮かべた。それが淡く光を放つと、転送陣が展開される。
猟兵たちは策を思い立った者から順次、現地へと転送されていくのだった。
月影左京
こんにちは。いつもお世話になっております、マスターの月影左京です。
今回はちょっとほっこりする(かもしれない)戦争シナリオのお届けです。
※私のシナリオに初めて参加される方は、念の為マスターページをご確認いただければ幸いです。
今回の戦場はメンフィス灼熱草原です。
ここで燃え盛っている黒い炎は、猟兵の皆さんへ燃え着くことはありませんが、視界を遮り、妨げてきます。影響があるとしても、せいぜい熱波で暑いなぁ……くらいです。
黒い炎はものすごくよく燃えているので、上空から見渡そうとしても炎が揺らめき、その中に敵群が潜んでいてやはり視界はあまり良くはありません。
通常の消火方法でこの黒い炎を消すことはできず、敵群を駆逐することでようやく何とか……といったところです。
彼ら「いぬせんしゃ」が鳴き声を立てるのは敵からの攻撃を始めてからのようですので、それを当てにするならひと工夫必要でしょう。
今回のプレイングボーナスは次の通りです。
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プレイングボーナス……黒い炎に紛れた敵を素早く発見する。
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私もリプレイ執筆を頑張ります!
皆さんからの勇ましいプレイング、お待ちしております!
第1章 集団戦
『いぬせんしゃ』
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POW : きゅらきゅら
【キャタピラを全速力で稼働させた】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他のいぬせんしゃ】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : むれのきずな
自身が【自身や仲間の危機】を感じると、レベル×1体の【いぬせんしゃ】が召喚される。いぬせんしゃは自身や仲間の危機を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ : いぬせんしゃキャノン
単純で重い【いぬせんしゃキャノン】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
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栗花落・澪
※アレンジ、連携可
動物大好きかわいい子大好き、ほのぼの展開も大歓迎
これでもふもふだったら危険を冒してでも抱きついてた
一応体力的な面と速度を理由に翼の【空中戦】で
目立たないよう低空飛行
【聞き耳】で周囲の音を常時探りつつ
見えないなら無理矢理居場所教えてもらいましょ
【高速詠唱】で雷魔法の【属性攻撃、範囲攻撃】
体を回転させながら撃ち出す事で全方位を攻撃し
一体にでも当たればラッキーって事で
もし向こうの攻撃の方が速くても
砲撃音に反応し回避しつつ音の出所を予想し雷撃
さて、今度はこっちの番
【優しさ】を乗せて苦痛の感情は与えないように【指定UC】
あたたかな【破魔】の範囲攻撃で【浄化】
どうか安らかな眠りを
ルクル・クルルク
わんこ戦車……見た目は可愛いかもしれませんが、油断はできませんね。ルクル、がんばります!
使い魔のニクスに守護の結界(【オーラ防御】、【結界術】)を使ってもらって黒い炎から身を守りつつ。
ぴーんとうさぎ耳で【聞き耳】を立てて、戦車の駆動音やわんこの鳴き声等に注意して【索敵】しますね。
大丈夫です、【落ち着き】ましょう。ルクルはやればできる子ですからね。
わんこ戦車を見つけたら、他の戦車が集まってくる前に素早く倒しますね。戦車には戦艦で対抗しますよ。よーく狙って、主砲でずどん、です。
周りに他の猟兵さん達がいたら、お邪魔にならない範囲で協力するですよ。
「「わんこ
……!!」」
小さな声ながら、少年少女2人の声が共鳴する。
かたや栗花落・澪(泡沫の花・f03165)、動物大好きかわいい子大好き。これでもふもふだったら危険を冒してでも抱きついてた!と、その輝く表情に書いてある。
もう1人はルクル・クルルク(時計ウサギの死霊術士・f31003)、しかしこちらはいくぶん冷静で、事前情報を思い出すと奮起した。
「……見た目は可愛いかもしれませんが、油断はできませんね。ルクル、がんばります!」
「そうだよね、うん……行こう!」
2人は、それぞれに地を蹴る。澪は体力面と速度を鑑みて翼をはためかせ、低空飛行を。ルクルは使い魔の白兎、ニクスに守護の結界を張ってもらう。
「きゅう」
「うん、ありがとう」
ニクスが小さく鳴けば、熱波が多少和らいだ。澪はと探せば、もう遠くへ羽ばたいてしまったようだ。
遅れをとるまいと、ルクルも今一度気を引き締める。
(大丈夫です、落ち着きましょう……ルクルはやればできる子ですからね)
ぴーん!とうさぎの耳で聞き耳を立てる。僅かな駆動音も鳴き声も聞き逃さないよう、慎重に……すると、彼方から雷鳴が聞こえてきた。
ルクルは、澪が見つけたのか撃たれたのか、どちらにせよ接敵した可能性があると判断し、そちらへ駆け出した。
――一方、雷鳴の現場では。
「きゃん、わんっ!」
「わふっ!うー、わん!」
聞き耳を立てているだけでは探りきれぬと、澪が高速詠唱した雷魔法。それを身体を捻ることで全方位に放ったのが少々やり過ぎたか……澪のもとへは2体のいぬせんしゃが反撃を仕掛けてきていた。
黒炎の陰で太い砲身がふたつ、同時に澪へと狙いを定める。特に防御の策を講じていない澪には尚のこと、まともに受ければ致命的な一撃になるだろう。
(回避……!)
咄嗟に砲撃音に反応し、回避しつつ音の出所を予想して雷撃で反撃を試みる。しかし、もう一撃は……。
(間に合わな……っ!?)
「これは、あなたへの、葬送曲……。最期の時を、わたしと、楽団員さん達で、奏でます……! 全門、狙え……放て!」
一瞬、何が起きたのか分からなかったのは澪だけでなくいぬせんしゃたちもだろう。
しっとりとした葬送の歌が響き出した途端、3連の砲塔が火を噴いて澪を狙った主砲の一撃と、そのいぬせんしゃ本体諸共叩き潰したのだ。ルクルによる【仔ウサギの軍艦交響楽団(ウタッテノロッテクルッテハゼロ)】。
いぬせんしゃはまず1体、きゅうん……と悲しげに鳴いたきり、沈黙し鉄の塊と化したと思えば消え去った。
「戦車には、戦艦で……。大丈夫、ですか……っ!?」
「うん、ありがとう!助かったよ。……それじゃあ今度はこっちの番」
息をゼェゼェさせている辺り、時計ウサギの彼女は全力で助太刀に来てくれたのだろう。ならば、その隙を護るのは僕の役目だ……!
「鳥たちよ、どうかあの人……あのわんこを導いてあげて」
澪の穏やかな語りかけに応じて、113羽の様々な鳥たちが鮮やかな炎となって空から飛翔してきた。可愛いわんこが、せめて苦痛に悶えることの無いよう、優しさを乗せて放つ【浄化と祝福(ピュリフィカシオン・エト・ベネディクション)】。
破魔の力を宿した鳥型の炎は、鋼鉄のわんこをあたたかく包む。
「きゅぅん……きゅぅん……」
「どうか安らかな眠りを、わんこさん」
「きゅーん……」
いぬせんしゃは、澪へ甘えるような鳴き声を発しながら、やがてその声は小さくなり……先のいぬせんしゃと同様、散り消えた。
チクリ、微かに澪の心が痛む。彼らが賢い動物のままだったなら。いつしか出会い仲良くなって、思う存分もふれたかもしれないのに。
しかし、まだ他にもいぬせんしゃは潜んでいる。戦いは終わっていない。されど、このまますべてを2人で討伐するよりは、次なる戦いに備えて休むこともまた、戦いの在り方だ。
澪は窮地をフォローしてくれたルクルをねぎらい、一旦戦線を離脱して休息をとろうと提案した。
大成功
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夜刀神・鏡介
隠れた敵を探し出せ……か。音や気配から敵を探すのも一つの選択肢だが、然程のんびりもしていられないしな
しかし、いぬせんしゃとは……いや、深くは考えまい
鉄刀を抜いた状態で、バイク『八咫烏』に騎乗
戦場を駆け巡る事で敵を探して回ろう。或いはバイクの排気音を聞きつけて、敵の方からやってきてくれるだろう
基本的には騎乗で戦闘、片手ですれ違いながらの振り下ろし。参の型【天火】による斬撃を叩き込む
敵が全速力の突進を放ってきても、バイクのスピードと(戦車と比べて)足回りの良さを活かせば避けきれる筈
もし攻撃を受けてしまったなら、流石に無理はさせられないので降りて戦おう。
その頃には敵の位置もある程度判明しているだろう
シキ・ジルモント
狼の姿へ変化し、「いぬせんしゃ」へ届くように遠吠えを上げてみる
相手が「いぬ」なら応答があるかもしれないと期待して
応答すればその声と、攻撃を予測できるユーベルコードの効果も併せて、相手の位置を探りたい
自ら狼の姿と習性を利用する事になるが、これも仕事の為だ
…それよりも、成功したらあちこちで遠吠えが連鎖する事態となるだろうか
自分から発したとはいえこれはなかなか喧しい…分かった、分かったから落ち着いてくれ
来なくてもいい、頼むから動かずその場にいてくれ(思わず耳を伏せて)
相手の位置が分かったら人の姿に戻り、銃の狙撃で順に攻撃していく
素直な相手に多少同情はするが、オブリビオンのままというのも良くないだろう
「…… 分かった、分かったから落ち着いてくれ。来なくてもいい、頼むから動かずその場にいてくれ」
思わず狼のその耳を伏せて苦い顔をしているのはシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)。事前情報から、いぬせんしゃたちが「イヌ」としての習性を持ち合わせていると聞いたことで、自らも同族の狼となりて遠吠えを発し、【ワイルドセンス(ワイルドセンス)】の効果を用いて位置を割り出そうとしたのだが……。
「あおーん!」
「わおーん!」
「おおーん!」
次から次へと遠吠えが連鎖してしまったのだ。これは如何に戦場広しと言えども、なかなかに喧しい。
(いぬせんしゃとは……いや、深くは考えまい)
その遠吠えの連鎖に、共に転送されてきた夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は少し遠い目をする。
されど、これなら逆に探す手間がだいぶ省ける。そう考えた鏡介はスラリと鉄刀「無銘」を抜くと、大型バイクの「八咫烏」に乗って黒炎の中を駆け抜けた。ちなみにこの大型バイク・八咫烏は、まさにここアポカリプスヘルで製造され、刀を振りながら戦うのに適したカスタムがなされている。
鏡介が遠吠えを頼りに疾駆し、すれ違いざまに先ずはいぬせんしゃ1体へユーベルコードによる斬撃を見舞う。
「剛刃一閃――参の型【天火】」
【参の型【天火】(サンノカタ・アメノヒ)】は、鏡介の基本技の参。力強い一撃は、確かにいぬせんしゃの自慢であろう主砲を斬り落とした。されど……。
「あおーん!」
「あおーん!」
呼び合うような鳴き声と共に、きゅらきゅらきゅらきゅら……複数のキャタピラがどこからともなく迫り来る音がした。そして瞬く間にいぬせんしゃが何体も鏡介のもとへ現れ、時間差で猛突進を掛けてきた!
(バイクのスピードと足回りの良さを活かせば、避けきれる……筈!)
鏡介は「八咫烏」の性能を最大限に活かし、寸でのところで突進を躱し、反撃する。それでもいぬせんしゃたちは諦めが悪く、幾度も鏡介を狙っては高速でキャタピラを駆り、突進してきた。
「わんわんっ!」
「きゃぅん!」
いぬせんしゃたちの鳴き声は無邪気なまでに元気だ。まるで、「お兄ちゃん、遊ぼ!」とせがんでいるかのようですらある。
(何かこう……やりにくいな。この子犬の群れのような鳴き声を聞いてしまうと)
鳴き声に複雑な気持ちになる鏡介。だが攻撃はそんな可愛らしいものではなく、何とか応戦するもののこうも執拗に迫られては、流石の鏡介も防戦一方だ。
これでは、各個撃破されるのは此方か……と鏡介が苦い顔をした時。
――パンッ。パンッ。
小さな銃声と共に、信じられない威力で弾がキャタピラを貫き、穴を開けていく。音の源をちらりと見遣れば、人の姿に戻ったシキが愛用のハンドガン・シロガネを手に援護射撃をしてくれていた。
シキのそのハンドガンは、取り回し易さを損なわないギリギリまで威力を上げた実戦により特化した代物だ。加えて、倍率変更機能付きの光学照準器をも装着している為、狙撃の正確さは並のものではない。
もっと言えば、閃光や銃声を抑制するアイテム等も装着しているので、いぬせんしゃたちは自身のキャタピラ駆動音にかき消されて聞き取れていなかった様子だ。
次から次へとキャタピラを破壊されて動きを奪われていくいぬせんしゃたち。しかし元が賢い動物だったとあって、判断の切り替えも早かった。
「がるるるる……!あおーん!」
「あおーん!」
「わんわんっ!」
「きゃんきゃん!」
「わん!」
窮地に立たされたと見るや、そのうちの1体が敵意を増幅させ、低く唸った後大声で鳴いた。刹那、新たないぬせんしゃの大群がその場に召喚されて集まってきたでは無いか!
「マジか……」
呟いたのはシキだが、鏡介も同じ思いだろう。新たに呼び集められたいぬせんしゃは、ゆうに100体を超えていたのだから。
戦争に投入されるほどのオブリビオンたちなのだ、レベルも相応のもので、ゆえにむれのきずなの効果もかなりのものがあった。
各個撃破するには間違いなく骨が折れるが、こうなってしまったら一掃してしまう他無い。
「わん!わふっ!」
「きゃん!きゃうん!」
「あおーん!わんわんっ!」
いぬせんしゃたちは、まるで遊んで欲しいとねだる子犬のように愛らしい声をあげながら、自らの仲間を窮地へ追いやったシキへ群がる。
「……っ、素直な相手に多少同情はするが」
こんなに大量の敵を前にしては、如何にクイックドロウやスナイパーの技能に秀でていても、今度はシキの銃撃が流石に追いつかない。けれどもその穴を、落ち着いた上で瞬間的な思考力によって戦況判断をした鏡介が、大型バイクの八咫烏に乗ったままで放つ剛力の剣技で埋める。
2人は狙撃と斬撃で互いに連携しながら、順に1体ずつ、時には運良く複数を巻き込みながら、鉄塊へと変えては雲散霧消させていった。
――そうして、幾許の時が過ぎたろうか。
「……ようやく、静かになったか」
「もしかしてこれで全部……なのか?」
息を整えながら、シキと鏡介は辺りを見渡す。この地を灼く黒炎が、心做しか多少なりとも弱くなったように感じるのは、気のせいだろうか。
シキは、仕事の為に仕方ないと割り切って、再び狼へと姿を転じた。しかしユーベルコードの効果をもってしても、他にいぬせんしゃがいる気配はしなかった。
「俺が探った限りじゃ、これで一掃できたみたいだな……あんたの援護で助かった。礼を言う」
「何、こちらこそ、俺が危機に陥った時に援護射撃してくれて助かった……ありがとう」
人の姿へ戻ったシキと鏡介は、互いに礼を伝えてねぎらい合う。
思わぬ事態が続いたがどうにか乗り切った達成感を覚えつつ、2人もまた次なる戦いへ備えてグリモアベースへ戻るのであった。
「……しかしなぁ。いぬせんしゃ、か」
「ああ……まぁ、ああ言う奴らも戦争に駆り出されんだな。調子が狂うぜ」
鳴き声の愛くるしさとえげつない攻撃のギャップに苦笑しつつ、ではあったが。
……よもや、その後にさらにヤバい「イヌ」の戦車が待つとは、露にも思わずに。
大成功
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