アポカリプス・ランページ⑮〜BlackIllusion
●黒の幻影
「お疲れさまです。新たな戦場が開けましたので、皆様のお手をお借りしたいのです」
地図を広げ、猟兵達に次なる戦場を告げる金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)。指先はミシシッピ川の近く、元は大都市だったと言われているメンフィスを差している。
ここは既に大都市としての面影はなく、黒く燃え上がる草原として存在している。
地下も含め、黒い炎がメンフィス全体を覆い尽くしており、人の立ち入る領域とは言い難いのだとか。
「黒い炎……それはどうやら、我々の知る『恐るべき敵の幻影』が実体を伴って現れるみたいです。しかし炎を見た際に見える幻影は常に一定ではなく、個人個人によって幻影は違う様子」
「幻影は強い恐怖心を持つ者の攻撃はすべてすり抜けるため、それを利用して我々を惑わして混乱に陥れようとしているのでしょう。いやはや、趣味が悪い」
肩を竦めた燦斗の言葉に、猟兵達は首を軽く縦にふる。
個人個人で見え方が違う敵の幻影に対して、恐怖を煽って攻撃を通らなくするという、一見簡単にクリア出来そうな仕掛けにも見えるが……恐怖というのは恐ろしいもので。
敵へ恐怖心を持てば持つほど、その力を強くする。
自分は恐怖心をもて持つほど、攻撃が当たらなくなる。
この仕組みをクリアするためには、見えた幻影に対する恐怖を乗り越えることが一番の手っ取り早い攻略法だと燦斗は言う。
「恐怖を乗り越えた一撃。それで、幻影を貫いて霧散させることは出来ます」
「が……乗り越えるまでにどのような苦しみが見えるか。今回の攻略のポイントは、己の恐怖をどう乗り越えるかということになりますねえ……」
恐怖を乗り越えるためだからといって、無茶はしないでくださいね? と。
燦斗はただ一言告げて、猟兵達を戦場へと送り込んだ。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
新しい場所が開けましたね。みなさんお疲れさまです。
ちょっとここらで閑話休題として恐怖乗り越えてみませんか?
初めての方はMSページを読んで頂ければと思います。
●採用について
「シナリオの成功数に到達する🔵の確保が確定した時点」で締め切ります。
また回転を早めるため、採用人数は最低数にしぼります。
採用が難しいと判断したプレイングはお返し致しますのでご了承ください。
●場所:黒い炎が燃え盛る崩れたメンフィス大都市
轟々と真っ黒な炎が燃え盛っています。
この黒い炎から、猟兵の皆さんの「恐るべき敵」が現れます。
プレイングにはどのような敵が出てくるか、それに対してどのような恐怖を感じたかの記載をお願いします。
●プレイングボーナス:あなたの「恐るべき敵」を描写し、恐怖心を乗り越える。
敵を描写して恐怖心を乗り越える、までが1セットになります。
そのため敵だけの描写、敵の描写無しの恐怖心を乗り越える描写のみはボーナスとなりません。
予めご了承ください。
皆様の素敵なプレイング、お待ちしております。
第1章 冒険
『恐るべき幻影』
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POW : 今の自分の力を信じ、かつての恐怖を乗り越える。
SPD : 幻影はあくまで幻影と自分に言い聞かせる。
WIZ : 自らの恐怖を一度受け入れてから、冷静に対処する。
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夜鳥・藍
メンフィスって米国内にもあるんですね。学生時代は歴史をとってたのでてっきり古代埃及の方かと思ってました。
私にとって恐いもの……それは口さがない人々。
人間の両親の元に生まれたクリスタリアンである私。そして生まれた人間の弟。ただ一人違う私。
例え影朧の転生が知れ渡っていたとしても、それでもそういう人たちがいる。
面と向かって言ってくる方はまだいい。一番性質が悪いのはこそこそと人に物に隠れ噂する人々。何度心を言葉のナイフで切りつけられたか。
でも私は、過去の私の記憶と想いに触れて知ったのよ。
例え何があっても想いを挫く事は出来ないのよ。覚悟を殺す事は出来ない。
私はどうあっても私でしかないって。
●ただ、1人。
「メンフィスって米国内にもあるんですね……」
驚いた様子で黒い炎に包まれた大都市を眺める夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)。彼女は学生時代は歴史を取っていたため、てっきり古代埃及――古代エジプトに存在していた方のメンフィスを想像していたそうだ。
なお、こちらのメンフィスは藍のいう古代エジプトに存在していたメンフィスに因んで名付けられているというのは、知らない人が多いかもしれない。
黒い炎が揺らめく中で、藍は拳を軽く握りしめた。
自分が最も恐れを抱いているものがその炎の中から現れるというのだから。
「…………」
無言が続き、数分は待った。何もなかったと振り返ったところで、彼女の耳に声が届いた。
――どうして両親が人間なのに、あんなのが生まれてくるんだ?
――ああ、恐ろしい。我々にいつか害をなすんじゃないか?
――恐ろしや、恐ろしや。あの子は呪われているんだ。
「……っ……」
小さく、息が詰まる。藍の最も恐れるもの、それは口さがない――噂や批評を無責任に、無遠慮に揃えて告げる人々。
彼女は人間の両親の間に生まれた、クリスタリアン。
本来ならばありえない誕生になるのだが、これはサクラミラージュにて起こりうる『影朧の転生』によって引き起こされたもの。
故に彼の弟は普通の人間であり、唯一彼女だけが人種が違う。
だから、人々は隠れに隠れて彼女のありもしない噂を囁いた。
呪われているだの、害をなすのではないかと、彼女の意思に関係ないことばかりを噂して。
何度も、何度も、何度も、何度も、心を言葉のナイフでズタズタにされた。
面と向かって聞いてくるならまだしも、影に隠れている者の方がよっぽどたちが悪いと彼女は思っていたのだが……。
「……でも私は、過去の私の記憶と思いに触れて、知った」
彼女の過去。それは不安定なオブリビオンだったころの、生まれた頃にはなかった頃の記憶。
それらを見て、聞いて、触れて、彼女は気づいたのだ。
どんなに恐れられようとも、自分は自分。変えることの出来ない、かけがえのないただ1つの存在なのだと。
「例え、何があったとしても想いは挫くことは出来ない。覚悟を殺すことは出来ない」
――私は、どうあがいても、どう叫んでも、私《夜鳥・藍》でしかないのだ。
黒炎から生まれた恐怖に打ち勝った藍の雷が、周囲の人々を打ち砕いた。
大成功
🔵🔵🔵
飛・千雨
SPD アドリブ歓迎
※恐怖の対象:千雨の故郷を滅ぼし、半年前まで千雨を虐げていたコンキスタドール。外見や能力はお任せします。
恐るべき敵、の幻影ですか。……好機と捉えるとしましょう。
あの者は、猟兵の手に討たれましたが、私が乗り越えた訳ではありませんから。
……参ります。
※幻影を前にすると、緊張し、鼓動が早くなる。
思わず首を抑える。ほんの半年ほど前まで、そこにかけられていた首輪の重みを錯覚する。
……いいえ。私はあなたの道具じゃない。もう、奴隷じゃない。
あの海で戦っていた多くの猟兵たちと同じ、猟兵です。
だから、あなたには従いません。
あなたに埋め込まれたこの力と、私の意志で。
あなたを食らい、滅ぼします。
●己に残されたもの
「……恐るべき敵、の幻影……ですか」
幻影を見せつけるという黒い炎、その外周に飛・千雨(偽神宝貝の使い手・f32933)は佇んでいた。
己と向き合うことさえも恐れるほどの敵の幻影。それらを見て恐怖を得た場合は、敵に攻撃が与えられないという情報に千雨は少々難色を見出していた。
「あの者は猟兵の手に討たれましたが……私が乗り越えたわけでは、ありません」
炎を見ないように一度目を閉じて、少しだけ脳裏に過去のことを思い浮かべ……様々な出来事を、様々な思い出を、そしてかの敵を脳裏に焼き付けて、目を開いて炎を見つめる。
炎の奥から現れたのは、半年前まで千雨を虐げていたコンキスタドール。
顔に傷を持ち、事あるごとに遊びと称してはナイフで彼女を傷つけて、奴隷として働かせてきた男。
彼女だけではなく、幾人もの奴隷達が彼の手によって傷つけられていたのは記憶にも新しい。
喉にひんやりとした感触が、かけられていた首輪の重みが、千雨に襲いかかる。
今はもう無いはずなのに、そっと手を首に寄せる。
呼吸が早くなる。鼓動が早くなる。力が抜けてゆく。
目が乾く。口の中が痛い。喉の奥が焼け付く。皮膚に痛みが走る。
痛みが全身を駆け巡る。痛みが全てに襲いかかる。
ああ、またどんな"遊び"が始まるのだろうか。
ああ、またどんな"痛み"がやってくるのだろうか。
考えただけで、ああ、身体が苦しみで悲鳴を上げている。
――否。
「……私はあなたの道具じゃない。もう、奴隷じゃない」
きっぱりと言い切った千雨の声は、とても力強いものだった。
猟兵という存在に助けられた彼女はコンキスタドールの男の目をしっかりと睨みつけて、自分もまた同じ猟兵であると言い切った。
「だから、私はあなたには従いません。もう二度と、あのような場所に戻ることはない。私は私の道を行くと決めたのですから」
そう言い放った千雨は過去コンキスタドールの男によって埋め込まれた力を発揮させ、恐怖していた自分を振り払う。これこそが今の自分、猟兵となって戦い続ける者であると示すように。
「あなたに埋め込まれたこの力と、私の意志で……あなたを喰らい、滅ぼします」
いくつもの偽神宝貝が、コンキスタドールの亡霊を喰らいつくした。
大成功
🔵🔵🔵
マリア・ルート
そうね、私にとって怖いのは……私に宿る破壊の怪鳥――フレースヴェルグ。
宇宙の幼生を壊す作戦の時、2回ほど解放してみたけど……やっぱり、震えてしまった。
自分がああなってしまうかもしれないというのが。
自分がああいう破壊の化身になってしまうのが。
怖くて仕方がない。
黒い炎の向こうに見えるあの影は確かにフレースヴェルグの幻影で……咆哮一つで狂ってしまいそう、衝動にやられそうになる。
でも私は知っている。
恐怖を感じ、危機感をわかっているからこそ、恐れてはいけないんだということを。
さあ、来なさい、フレースヴェルグ。
創造と破壊は表裏一体。あんたは私で、私はあんた。
だから私はあんたを、御して見せる。
●破壊を恐れるな
「私にとって怖いのは……私の中に宿る、破壊の怪鳥――フレースヴェルグ」
胸にそっと手を当て、己の恐怖を語るマリア・ルート(紅の姫・f15057)。この任務を受ける前に2度ほどフレースヴェルグを解放したときのことを思い出すと、わずかに震えが収まらない。
自分が仲間を壊してしまう。自分が世界を壊してしまう。自分が自分を壊してしまう。いずれ訪れる、破壊の化身に成るかもしれないという恐怖はいつまでも慣れないものだ。
黒い炎がごうごうと燃え盛る。その身に眠っている恐るべき敵を教えろと言うように、マリアの青い瞳に映り込む。
「……ああ、やっぱり」
彼女の瞳に映るのは、破壊の怪鳥・フレースヴェルグ。凶悪で、残酷で、耳障りな鳴き声が辺りに響き渡る。
声を聞いたマリアは、あまりの恐怖に立ちすくんでしまう。フレースヴェルグから逃げるように階段を上り詰めていたのに、いつの間にか奈落へと落ちている……そんな感覚が拭えない。
――ねえ、いつまで創造を続けているの?
声が聞こえる。
炎の奥から、怪鳥フレースヴェルグらしき"もの"が尋ねている。
何故壊さないのかと、何故創り続けるのかと。
――造ったところで、誰も喜ぶ人はいないんだよ?
囁き声がする。囁き声がする。
マリアの脳を支配するかのように、声は語りかける。
いずれ世界も破壊の道が訪れるのだと。
――だから、一緒に全てを壊してしまおう?
破壊の衝動がマリアの全てを覆い尽くす。
壊してしまえばいいという欲だけが溢れかえり……。
「……それでも、私はあんたを御してみせる」
フレースヴェルグの声に耳を傾けながら、マリアは1つの決断を下す。
恐怖を感じ、危機感をわかっているからこその答え。逃げてはならない、向き合い続けなければならないという答えが。
「あんたが破壊を繰り返すのなら、私は創造を繰り返す。私はあんたで、あんたは私。創造と破壊は、決して離れることが出来ない。永遠に表裏一体なのよ」
――私かあんた。どちらかが死ぬまで、付き合い続けてあげるわ。
そう言い切ったマリアは、その腕に己の身に眠るフレースヴェルグを宿す。
己の歩く道を塞ぐ幻影を"破壊"して、己の歩く道を新たに"創造"するために。
大成功
🔵🔵🔵