アポカリプス・ランページ⑦~戦車軍団、前へ!
荒涼とした大地で唸りを上げる、無数の鋼の猛獣たち。
そのハッチから上半身を晒しながら、一人の偉丈夫が思案を巡らせていた。
男の名は、『ロンメル・ヴォーテックス』。かつての偉大なる軍人の名を持ち、その名に恥じぬ様な自身の機甲軍団の強化に専心を重ねる男である。
「……しかし、無能な兄妹達は禄に嘘もつけないのか」
そんな男が頭を悩ませていたのは、ここ最近の情勢についてであった。
各地に散らばる、一族に名を連ねる者達。そんな彼らを追い詰め、討ち取っているという者達の存在。
敵の名は、猟兵。異世界より顕れ、オブリビオンを討ち果たす者達である。
だが、しかしだ。
「異世界から来た猟兵? そんな奴、いる訳がなかろう」
ロンメルからすれば、その情報は眉唾ものである。
だってそうだろう。異世界からの来訪者? フィクションなノベルやコミックなどではないのだから、そんな物があるはずが無いではないか。
それに、『フィールド・オブ・ナイン』の復活? それこそありえないし、出来るはずも無い。
冷静に考えれば、どちらの情報も十中八九、兄妹が己を討つ為に差し向けた刺客に関するカバーストーリーであるだろう。
「まあ、見ていろ」
それならそれで、問題無い。
無能な兄妹達が差し向けた刺客程度など、この無敵の戦車軍団を前にすれば物の数では無い。
完膚無きまでに粉砕し、格の違いという物を教えてやるのも一興という物だろう。
そして、その上で──。
「──兄妹の争いを制した私が、世界の王として君臨するのだ」
──Panzer Vor!(戦車、前へ!)
言い捨て哄笑するロンメルが、掲げた掌を振り下ろす。その指示に従うように、輸送車両が、対空戦車が、主力戦車が……彼の指揮下のありとあらゆる車両達が動き出す。
動き出す、『ロンメル機動陸軍基地』。その勇壮な姿に、軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』も意気を高めていた。
●
「お集まり頂きまして、ありがとうございます」
グリモアベースに集まる猟兵達を迎え入れる、銀の髪の乙女。
ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)のその表情は、まだ固かった。
大戦の進捗はそれなりであるが、まだまだ油断は禁物と言う事なのだろう。
「今回皆さんに挑んで頂きますのは、こちら……」
地図を広げたヴィクトリアの指が、とある点を指し示す。
白く細い指が指したのは……北米大陸の南西部だ。
「旧アメリカ合衆国、ニューメキシコ州ロズウェル。現在は『ロンメル機動陸軍基地』と呼ばれる地です」
ロズウェルと言えば、かつては米空軍の一大拠点の在った地として知られているが……それ以上に、未確認飛行物体に纏わる『ロズウェル事件』の舞台としての名の方が有名であろうか。
とは言え、アポカリプスヘル世界の今現在ではかつての街の面影は欠片も無い。荒涼とした地が広がるばかりである。
そんな地に陣を敷く、一大勢力が今回の敵となる。
「敵の名は、『ロンメル・ヴォーテックス』。『軍人宰相』の異名を持つ、ヴォーテックス一族の一人です」
かつての高名な軍人の名を持つ彼の特徴は、その知略。
そして数多の戦車軍団の中央に座しながら、配下をまるで手足の様に動かす統率力も併せ持つのだと言う。
今回は、その統率力こそが最大の壁となる。無数の銃砲弾や戦車の高速機動に対処出来なければ、軍人宰相の下へと辿り着くことすらままならぬだろう。
「とは言え、軍人宰相それ自体の戦闘力は高くはないようです。その上、我々『猟兵』の存在についても懐疑的であるようです」
突く隙があるとすれば、そこでしょうね。と、ヴィクトリアが言葉を続ける。
敵将の統率力は、確かに厄介だ。真正面から突破するのは、骨が折れる事だろう。
だが、敵は『猟兵』の存在に関して懐疑的であるのだという。その一点だけで、付け入る隙はいくらでも見出だせるはずだ。
「大戦は、まだ序盤。ここで躓いてはいられません」
道を切り拓く為にも、皆様の御力をお貸し下さい。
丁寧に、深く。ヴィクトリアは頭を下げて、猟兵達を戦場へと送り出すのだった。
月城祐一
出足は順調、か……?
どうも、月城祐一です。別に某戦車道アニメに影響された訳ではありません(泳ぎ目)
アポカリプス・ランページ。月城からは二本目の依頼。
このシナリオは、『⑦ロンメル・ヴォーテックス』攻略シナリオとなります。
以下、簡単な捕捉を。
敵は『ロンメル・ヴォーテックス』。
軍人宰相の通称を持つ、知略と統率力に優れた敵です。
今回皆さんには、彼の『統率力』に挑んで頂く形となります。
ロンメル自身は軍団の中央に座し、指揮を執っています。
OPの通り彼自身の戦闘力は高くありませんが、そこに行き着くまでが大変です。
卓越した統率力で指揮された無数の戦車軍団や軍人オブリビオンの妨害を乗り越えねば、彼と見えることすら出来ません。
この戦車軍団への対処が、今回の鍵となります。
(=対処が適切なプレイングには、プレイングボーナスが与えられます)
戦場は、荒涼とした荒野。天候は晴れ。
戦車軍団が機動すれば、いい感じの砂煙が上がるくらいの乾き具合です。
戦車軍団の進路上に転移を終えた猟兵達を轢き潰すかのような勢いで、敵は真っ直ぐ突撃してきます。
敵への対処、戦場での立ち回り。色々と考えてみると良いでしょう。
数多の鋼を指揮するは、悪徳の一族の軍人宰相。
その卓越した指揮能力を、猟兵達はどう崩すか。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
第1章 ボス戦
『ロンメル・ヴォーテックス』
|
POW : 軍人宰相の指揮
自身が操縦する【戦車軍団】の【反応速度】と【耐久力】を増強する。
SPD : アンブッシュ・タクティクス
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【ロンメル率いる戦車軍団の搭載火器】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ : 戦場の掟
敵より【指揮する配下の数が多い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●
転移を終えた猟兵達。
剥き出しとなり、固い大地だ。空気も乾き、周囲に障害もない。戦車の類が機動戦を行うには、絶好の地であると言えるだろう。
──ゴゴゴゴゴゴ……!
そんな風に戦場を確認する猟兵達の耳に響く、地鳴りに似た音。
視線を上げれば、遠方に立ち昇る土煙の数々が目に写る。
目の良い者には、判るだろう。アレは無数の車両が駆動する事で巻き上げられた土埃であるのだ、と。
今回の目標である軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』を討つ為には、あの戦車軍団をどうにかしなければならない。
まるで鉄の津波の様な圧倒的な光景をどう捌き、敵に刃を突き付けるべきか。頭を働かせながら、猟兵達はそれぞれに武器を取る。
軍人宰相率いる鋼の大戦車軍団との戦いの幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
塩崎・曲人
戦車の軍団をただの人間一人で止めるって割と無理臭くね?
根本的に質量とかパワーが違うんだが??
「まぁ、腕力も小細工も通じねぇなら別のやり方でヤるだけだがね
アルダワのダンジョンハッカーの手札を見せてやるよ」
戦車が擱座する原因ランキングTOP3は敵の攻撃で破損、設計的に弱い部品の故障、そんで……
「泥にハマる。大量の戦車をいっぺんに足止めすんならこれだわな」
【最後の手札】の水魔法+土魔法コンボで戦車軍団周辺を一気に泥濘化
足が止まって体当たりができなくなったら
後は軍団の懐に飛び込みゃ安全、と
スタック解除の為に乗員が外に出たら機銃も使えねぇだろ
「同士討ちは怖いもんなぁ!特に敵が大将のすぐ近くまで来りゃ!」
飛・千雨
SPD アドリブ連携歓迎
なんとも。鋼鉄の車両が走り回るというのは、圧巻ですね。
しかし、それが破壊と殺戮を齎すというのであれば。
ここで止めなければなりませんね。
私も力添えさせていただきます。
偽神宝貝『朶思泉銃』を持って岩陰に身を隠し、戦車軍団の接近を待ちますわ。
落ち着いて、一騎でも多く巻き込めるようギリギリまで……引きつけて。
UC起動!
死ねぇ略奪者共がぁ!
アハハハ!
朶思泉銃には薬物を湧かす小壺型宝貝がついてるんだ!
これでテメェラの鉄屑をボロボロに溶かす酸性の強ぇ薬を作ってバラ撒いてやるよっ!
巨大化させてぇ! 無差別にまとめて乱れ打ちで! ブチ殺してやるよぉ!
(口汚い言葉遣い、失礼いたします……)
マリア・ルート
ちょっと変わったアプローチでも取ってみようかしら。
まずは見晴らしの良さそうな場所を探してそこからマグナムルート・βを構えて戦車に銃撃。なるべく多くの戦車に当てるようにするわ。
そしたら『早業』からの【指定UC】使用。このコードは自分の武器による攻撃が入ることがトリガー。うまく戦車だけを動かして戦車同士を同士討ちさせるわ。あるいはロンメルをそれで狙ってもいいかもね。
操作時間のギリギリになったら爆破させる。これで同士討ちと相まってダメージは稼げるはず。
相手の攻撃は『野生の勘』で察知しつつ回避しきれないものは『残像』『オーラ防御』で防ぐわ。
同士討ちなんて起きたら、あんたの自慢の戦略も台無しよね?
ラフタイン・トリアンテ
$他猟兵との連携歓迎するよ$
ロンメル……戦車兵団ね。
私の所の戦車(チャリオット)ではなく戦車(タンク)か。
戦術家に対抗するってことなら、
同じ高度な戦術で凌駕する、とか
一騎当千の猛者が戦術をぶち壊しにする……なんてのがセオリーだけど、
私はもうちょっと別の方法を採ってみようか。
宝杖に【魔力溜め】で魔力を増幅してから、
【高速詠唱】でUC発動。空から槍を複数地点に着弾させて、
敵軍にぶち当てるとともに、地形破壊で後続の戦車の進軍を困難にするよ。
「ま、無限軌道(キャタピラ)は悪路に弱いからね。幾ら改良を施そうと限度があるってものさ。名将の名を冠する悪党には、せいぜい驚いて貰うとしよう」
●
激しく土煙を上げながら迫りくる、威風堂々な戦車軍団。
鉄の津波とも形容できそうなその勇壮なる姿を視界に入れて、塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)の口から漏れたのは小さな溜息だった。
(戦車の軍団を、ただの人間一人で止めるって。割と無茶臭くね?)
戦車とは、人類の科学技術の粋を集めた陸戦兵器。強大な質量と圧倒的な馬力に支えられた強烈な火砲と堅牢な装甲を備える、『陸戦兵器の王者』である。
そんな強力な兵器が、数を揃えて迫りつつあるのだ。しかも指揮を執るのは『軍人宰相』の異名を持つ、卓越した統率力を誇るオブリビオンであるのだという。
曲人が憂鬱な気分となるのも、まぁ宜なるかなと言った所である。
「……まぁ、能力も小細工も通じねぇなら。別のやり方でヤるだけだがね」
だが、だからといって。戦えないという訳では無い。
強力な兵器である戦車と言えど、欠点はある。戦い方次第では、無力な歩兵であっても戦車を撃破する事は不可能では無いのだ。
況や、曲人は只の一般人でなく生命の埒外である『猟兵』の一人である。こんな状況を覆す為の手段の一つや二つは備えていると言うものだ。
「アルダワのダンジョンハッカーの手札を見せてやるよ──!」
叫び、肩に担ぐ鉄パイプで地を叩けば。脈動する魔力が世界を変える。
……さて、話は変わるが。陸戦兵器の王者である戦車が擱座(撃破や故障などで動けなくなる事だ)する、その原因の主たる物をご存知だろうか? 理由となる物は、様々あるが……敢えてトップスリーを挙げるとするならば、『敵の攻撃による物』、『設計的に弱い部品の故障による物』などが挙げられる。
そして、残るもう一つの主たる要因が……。
「泥にハマる。大量の戦車をいっぺんに足止めすんなら、これだわな!」
そう。泥濘に履帯をハマらせて身動きが取れなくなる状態……所謂『スタック』という状態だ。
この状態は、戦車のみならず通常の車両などでも良くある事だ。タイヤが砂地や雪などに嵌まり込んで身動きが取れなくなるのと、同じ理屈である。
通常のタイヤではなく無限軌道による路面踏破能力の高さを持つ戦車とは言え、車両である以上はその宿命からは逃れられない。
その事を識る曲人は、乾いた荒地を水と土の属性魔法で泥沼と化して、真正面から突入してくる戦車群の足止めを図ったのだ。
「──後は止まった戦車の懐に飛び込みゃ安全、ってな!」
果たして、曲人の狙いは上手くハマった。
敵戦車は急な路面状況の変化に対応できず、次から次へと沼地へ嵌り、その履帯を空回りさせるばかりである。
そんなスタックした状況からの離脱を図る為、戦車の乗員が外へと飛び出し作業に移ろうとするが……その状況こそが、曲人の狙いだ。
対魔加工を施したブーツで沼地の影響を無視して一息に懐まで突っ込んで、乗員を鉄パイプでぶん殴り無力化していく。
敵の懐に潜り込んだ白兵戦となれば、誤射を恐れて車載機銃も使えないはず。曲人のその目論見もまた、正鵠を得る物であった。
「同士討ちは怖いもんなぁ! オラァ!」
意気揚々と、また一人敵兵を殴り倒す曲人。
粗野で荒々しい見た目に反して知恵を巡らせた彼の手により、戦車軍団の先鋒はその場に釘付けにされつつあった。
「──ふむ?」
だが、直後。敵の様子に変化が生まれる。
釘付けとなった先鋒の状況を察知した指揮官の指示が下ったのか、敵の先鋒集団が幾つかの小集団に分派して、迂回するような進路を取り出したのだ。
「悪くない手だけど。でも、相手が悪かったわね」
そんな敵の動きを小高い丘から見下ろしながら、マリア・ルート(紅の姫・f15057)が銃器を構える。
そう、敵の打つ手は悪くはない。臨機応変な指揮官の対処に即座に反応出来る配下の練度も、中々に高いと評価していいだろう。
けれど、その程度では。猟兵を相手にするには、不足というものだ。
「ちょっと変わったアプローチでも取ってみようかしら……」
呟き、深く息を吸い込み、銃身を安定させて。銃爪を引く。
タイプライターを叩くような軽やかな音と共に閃くマズルフラッシュ。そして薙ぎ払う様に放たれた銃弾が、数両の敵戦車の装甲板を軽やかに叩き──その全てが弾かれた。
マリアの銃は、銃剣付きの自動小銃である。多少の改造を施しているとは言え、あくまでも対人火器の範疇を超える物では無い。
当然、重装甲を誇る戦車からすればそんな物は豆鉄砲以外の何者でもない。精々が装甲に多少凹ませる程度の物でしか無いだろう。
だが、それで良い。銃撃によるダメージを与えられない事など、マリアの想定の内である。
……『攻撃を当てる』という行為。それが成った時点で、マリアの狙いは果たされたのだから。
「──今、生殺与奪の権は握らせてもらったわ」
呟くマリアのその声が風に消えるや否や、眼下の戦車小隊の動きに再びの変化が生じる。
マリアの小銃弾を受けた車両が、突如として超信地旋回(スピンターン)をして反転。その火砲を後続車両に指向して、砲火を撃ち放ったのだ。
味方からの攻撃に、虚を突かれた後続車両は回避の暇もなく砲弾を浴び、甲高い音と炎を上げて爆散する。
(同士討ちなんて起きたら、自慢の戦略も台無しよね?)
突然の自体に明らかな動揺を示す眼下の敵に、マリアの口の端が上がる。
【逆流創造:部位破壊(ロストストリーム・ピースブレイク)】。マリアの振るうユーベルコードである。
このユーベルコードの特徴は、攻撃が命中した部位に『創造』の魔力を流し込む事で敵を爆破、または操作するという物である。
そのトリガーとなるのは、『自身の武器による攻撃の命中』という行為であるのだ。
つまり先程のマリアの銃撃は、この異能を発動させる為のトリガーを引く為の行為であったのだ。
(操作時間のギリギリになったら、爆破させるとして。これで敵の混乱は誘えるはず……!)
不可思議な事態に搭乗員が脱出する車両を操りながら、マリアが胸中で呟く。
こうして少しでも敵の混乱を誘えれば、他に動く者達が動きやすくなるはずだ。
……一方、別の場所でも。分派した敵戦車小隊を迎え撃つ者がいる。
「──“槍よ、蒼空より墜ちよ”!」
決然としたラフタイン・トリアンテ(継ぎし者・f33834)の声が戦場に響く度、空が割れて巨大な何かが地へと落ちる。
ラフタインが喚び出したのは、超巨大な槍の穂先だ。携える家宝の宝杖の力で高められた魔力によって喚び出されたその槍は、常より巨大な物となって敵戦車を打ち砕いていた。
現状、戦果は上々と言った所ではある。だが、その戦果はここから更に拡大していくだろう。
それというのも……。
「少しずつ、荒れてきたかな」
槍を喚び出し、降らせた事で得られた副次的効果。即ち、地形破壊による足止めが効果を発揮し始めたからである。
ラフタインの喚び出す槍は、その巨大さに比した質量を秘めていた。
当然そんな物が地に落ちれば、落下地点は砕けて路面は荒れる。そして路面が荒れれば、戦車の足回りへの負担となる。
(戦車は常に、足回りに問題を抱えるものだからね)
ラフタインが良く識る戦車(チャリオット)と、目の前に迫りくる戦車(タンク)は全く別物である。
だがそれでも、双方共に足回りが弱点であるというのは共通である。
時代が進み、技術が進み。戦車の足回りが進化を遂げたとしても、その問題からは逃れられる物ではない。いくら改良を施そうとも、限度があると言うものだ。
必然、足回りを気にする様になれば持ち味である高速機動は発揮できなくなるだろう。
戦術家である敵将に対抗するのなら、同じく高度な戦術による知恵比べや、一騎当千の猛者で盤面ごとひっくり返すというのがセオリーだ。
だが、戦術とはセオリーが全てでは無い。敵の足を引っ張り、強みを消す事に徹するというのもまた、戦術の一つであるのだ。
ラフタインが今回採った策は、まさしくそんな策であったのだ。
(名将の名を関する悪党には、せいぜい驚いて貰うとしようか)
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、また一つ空から槍を落とすラフタイン。
地が砕け、直撃を受けた戦車が爆ぜる爆音が戦場に響いた。
(なんとも。鋼鉄の車両が走り回るというのは、圧巻ですね)
そんな様子を、荒れて隆起した岩場の影から覗き見する女が一人。
飛・千雨(偽神宝貝の使い手・f32933)の表情に浮かぶのは、嫋やかな笑みだ。
(ですが、それが破壊と殺戮を齎すと言うのであれば、ここで止めなければなりませんね)
だが、その内面では……熱く燃え滾る物を抱えていた。
まだ幼い頃、千雨の故郷はコンキスタドールに滅ぼされたのだという。千雨自身も捕虜として連れ去られ、戯れに偽神兵器を埋め込まれるなど弄ばれてきたのだという。
そんな経歴を持つからだろうか。千雨はこのアポカリプスヘルという世界で翻弄される人々をどこか自身を重ね、何とか力添えしたいという強い思いを抱いていた。
(もう少し、あと、少し……)
胸の中で滾る物を必死に押さえつつ、銃を構える。
『朶思泉銃』と呼ばれるその銃は、薬物を湧かす小壷の宝具と一体となった偽神兵器である。その能力を活かし、銃には強い酸性の薬品を装填している。堅牢な装甲だろうと、確実に溶かして鉄屑へと変えてくれるだろう。
だが、まだ動く時ではない。混乱した敵の陣形は、大きく乱れている状態だから、今攻撃を仕掛けてもそれほど多くの敵は巻き込めないはずだ。
もう少し、あと少し。理性と本能がせめぎ合う精神状態が続き……遂に、その時が来た。強行突破を図ろうとする小隊規模の敵が、目の前に現れたのだ、
その姿を目にした瞬間──千雨の理性が、弾けた。
「──アッハハハハ! 死ねぇ略奪者(レイダー)共がぁっ!!」
膨れ上がる千雨の殺意に応じるように、巨大化する朶思泉銃。
その銃口から洪水のような勢いで放たれたのは、先程も触れた酸性の薬液である。
突如現れ奇声を発しながら放水を開始した女の姿に、浴びせかけられた戦車の乗員は一瞬困惑を浮かべるが……それが、彼が感じた最後の感情だった。
何故なら直後、薬液が装甲を溶かして貫通し、車体内部を一瞬で満たし……内部の搭乗員全てを、一瞬で溶かしたからだ。
「オラオラァ! 無差別に! まとめて!! 乱れ撃ちでぇ!!! ブチ殺してやるよぉ!」
一瞬にしてボロボロに溶けていく戦車を前に、意気上がる千雨が薬剤を再装填すれば。朶思泉銃から放水される薬液は更に勢いを増し、突破に続こうとした別の車体をも溶かしていく。
……千雨の様子は、最早暴走と言っていいそれに近いものがある。
敵の足止めと混乱は誘えるのだし、下手に近づくよりは満足するまでやらせておいた方が良いだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天城・千歳
【POW】
アドリブ、絡み歓迎
かの砂漠の狐と同じ名前と。その名前に相応しい人物ですかね?
戦場周辺にサテライトドローン群を展開、観測・通信網を形成、通信網の観測とUCで呼出した陸戦艇部隊の各種センサーでの観測による【偵察】【索敵】【情報収集】で得た情報から【戦闘知識】【瞬間思考力】で最適の陣形を展開し攻撃力を上昇。
【誘導弾】の【一斉発射】による【弾幕】【範囲攻撃】で【先制攻撃】を行い、残存の相手は陸戦艇隊との【集団戦術】で主砲及び対空砲塔群、近接防御システムによる【砲撃】【レーザー射撃】【制圧射撃】【弾幕】で迎撃。
敵の攻撃は電磁フィールドによる【オーラ防御】で対応。
味方との通信はリモート義体が担当
カシム・ディーン
「ご主人サマー!メルシー軍隊戦やりたいー!」(銀髪少女
あれをやれってか!
ぐぅうう…!
UC発動
今ここに地獄が発生する
「「ひゃっはー☆」」
【情報収集・視力・戦闘知識・集団戦術】
敵戦車軍団の陣形と攻撃方法
その方向性を把握
打撃を与えるに足る軍団陣形を把握
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を9割の幼女軍団に付与
光学迷彩で存在を隠蔽し水の障壁で熱源も悟らせない
【砲撃・念動力】
正面から一割幼女軍団を乗せた戦艦突撃
念動障壁を展開しつつ砲撃と共に正面から激突し意識をそらせ
本隊
【空中戦・弾幕・スナイパー】
空より飛来しロンメルの本隊を中心に念動光弾の弾幕乱射
【二回攻撃・切断・盗み攻撃】
群がり戦車蹂躙
ついでにロンメルも
寺内・美月
アドリブ・連携歓迎
「第二亡霊軍突撃開始」
・指定UCにて歩兵四個軍団(自動車化歩兵、対戦車火器・対戦車部隊大規模増員)及び航空軍団(指定兵科軍団)を召喚(通称第二軍)。
・方針としては四個歩兵軍団を二手に分けて包囲し対戦車火力を以て撃砕。この際、歩兵軍団が保有する戦車火力、砲迫火力、航空火力の支援を受けて確実に戦車を破壊して前進する。
・航空軍団は歩兵軍団の攻撃一時間前に敵軍団の上空に侵入、大規模な空襲を発動し敵軍団に大打撃を与える。この際、高射部隊の反撃には要注意。
・ロンメル本人の討伐は別の猟兵に任せ、自らは部下の第二軍司令官(画像参照)と共に敵軍団の撃滅に専念する。
●
猟兵達の猛攻により、戦車軍団は見事に足止めされはじめていた。
同時に最前線で猟兵との攻撃を受けた部隊は混乱し、潰走し始めてもいたが……。
「──む?」
それ以外の敵──恐らく、敵の本体だ──には、大きな動揺は見られていないようである。
それどころか、この状況を打破する為なのか。護りを固めるかのような円形陣を組み始めたようである。
(なるほど。かの『砂漠の狐』と同じ名前をだけはありますか)
その様子を展開したドローンユニットから得た天城・千歳(自立型コアユニット・f06941)、胸の内で小さく呟く。
通信を傍受した限り、敵将は未だに『猟兵』という存在に懐疑的であり、この攻撃も事前の下準備があった上での物と判断しているらしい。
成程、それなら敵の動きも頷ける。出鼻を挫かれたと悟ったその瞬間、即座に護りを固めて体勢を立て直す事を選択出来る決断力と、部下を過不足無く動かす事の出来る統率力は、一廉の将軍であると判断できる物だろう。
だが、しかしだ。
「その選択は、『猟兵』を相手とするには悪手ですよ」
それらは全て、普通の戦いの場であれば、という話である。
戦術の常道、セオリー。それらは全て、生命の埒外との戦いに於いては悪手と成り得る物である。
何故なら。
「──陸戦艇艦隊、展開。本艦を中心に、陣形を組め!」
猟兵という存在は、その異能の力を以て強力な戦力を即座に展開する事も出来るからだ。
千歳が喚び出したのは、100隻を超える陸上戦闘艇であった。
戦闘艇、つまりは艇(フネ)である。その大きさは戦車のソレを上回り、必然その戦闘力も戦車のそれとは比較にならぬ域にある。
そんな存在が、100隻。舳先を並べて陣を組み、軍人宰相率いる機甲軍団へと襲い掛かろうとしているのだ。
しかもだ。今まさに陣を組み上げている部隊は、千歳の配下の戦闘艇部隊だけでは無い。
「各方面に通達──」
そう。千歳と同じように軍団単位の戦力を展開していたのは、彼女だけでは無かったのである。
「ご主人サマー! 展開完了したよー!」
「あぁ、もう。判ってるって!」
届けられた通信を聞き、耳元で楽しげに騒ぐ相棒の声を聞きながらカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)が唸る。
相棒──カシムが駆るサイキックキャバリア『メルクリウス』の管制ユニットでもあるメルシーのたっての希望を受けて、今回のカシムは動いていた。
即ち、10個師団分に及ぶ幼女(ミニ)メルシーを量産し、彼女たちに小型のキャバリア用武装を持たせての軍団戦闘である。
あっちを見てもメルシー、こっちを見てもメルシー、目の届かぬ所までもメルシーだらけ。まさに【メルシー春の幼女祭り】とはこの事である。
……うん? ユベコの名前、【対軍撃滅機構『戦争と死の神』】だって? でもほら、ルビがこうだから、ね?
(今まさに、ここに地獄が発生している……!)
まぁそんなこんなの事情のせいで、カシムの目が疲れた様にどこか遠くを眺めるのも宜なるかなと言った所であった。
(ちなみに、1個師団はおおよそ1万5千名程の兵士が属する計算になる。10個師団なら15万人。これは日本の陸上自衛隊の総兵数を僅かに上回る数となる。カシムが地獄と言いたくなる気持ちも、良く分かるというものだ)
閑話休題。
今現在、カシムは一歩引いた位置でメルシー軍団の指揮に専念した状況だ。
そんな彼が指揮するメルシー軍団の多くは属性魔術による光学迷彩を施された上で、千歳の陸上艇と共に敵に襲い掛かるのを今か今かと待ち構えている段階である。
……陸戦艇部隊と幼女軍団で、最早質量共にロンメル機甲軍団を圧殺出来る程の量が整っている気がするが。だがまだ、同じ様に戦力を展開する者がいる。
「──展開完了、了解」
敵軍団の後方を遮断するように展開するのは、寺内・美月(霊軍統べし黒衣の帥・f02790)が率いる部隊、通称『第二亡霊軍』である。
彼が指揮するのは、対戦車装備を整えた自動車化歩兵四個軍団。更にその支援を行う航空軍団も付随した、一大軍勢である。
敷かれた陣に隙は無く、立てられた作戦計画もまた水を漏らさぬ出来である。事前の航空作戦こそ時間の都合上実行は叶わなかったが、その代わりに他の猟兵の戦力が期待できる状況である。
最早、勝利は揺るがぬと。誰もが自信を持って確信出来るというような、そんな状況であった。
だが、しかし。美月の表情に油断は無かった。
どんな堤も、蟻の一穴で崩壊する物。ましてや敵は、稀代の名将の名を名乗る卓越した指揮官である。
勝利を掴むその時まで、油断はしない。そう心に決めて、美月が腕を振りかざし。
「全突撃部隊に発令。『雷霆万鈞』、発動」
──第二亡霊軍、突撃開始。
その腕を振り下ろし、命を下せば。下された命令を果たすべく、兵士たちが動き出す。
美月が狙うのは、敵機甲軍団の包囲殲滅。その為に、脚の早い自動車化歩兵を二手に分けるなどの策を採っていた。
だが今回は、美月の攻勢と歩調を合せる者達がいる。彼らの存在もあって、美月と麾下の亡霊軍団が担当する範囲は想定よりも随分と小さくなっていた。
それが一体、何を意味するかと言えば……敵の撃破速度の激化である。
次々に飛び込んでくる戦況報告を第二軍司令官を筆頭とした幕僚と共に捌きながら、美月の目は冷徹に戦況を見極め続けていた。
「敵陣外縁部隊、三割の撃破を確認──」
そんな第二亡霊軍司令部と同様、立て続けに入る戦況報告を取り纏め各所の管制に徹するのは千歳である。
戦況は、こちらに圧倒的優位。陸戦艇の砲撃や歴戦の歩兵軍団、キャバリア装備を纏った幼女軍団(?)の猛攻を受け、敵の主力戦車はまさに溶ける様な勢いで撃破されている。
──一部の幼女部隊が空挺攻撃を掛けようと動いていたようだが、この状況で下手に敵陣に切り込むと流れ弾が当たる恐れがある。下手に動くよりは砲撃戦に徹しておく様にプランの修正を提案しておく。
それに、そういった戦い方は……特化した戦い方を選んだ者に、任せるべきだろう。
「敵戦力、四割の撃破を確認。各員、このまま攻勢を維持せよ」
何やら通信の向こうから不満げな少女の声と平謝りする男の声が聞こえてきたりもする中。
通信を維持し、取り纏める千歳(と、そのリモート義体)は戦域管制に専心し続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アテナ・アイリス
UCを使用して次世代全領域可変戦闘機モード状態の『シグルドリーヴァ』を呼び出す。
「圧倒的なオーバーテクノロジーの力、見せてあげるわよ」
飛び立つと、マッハ10で高度を上げていき、超高度から誘導爆弾を全弾投下していく。
その後、ステルス機能を持った機体を急降下させつつ、上からレーザー兵器で戦車たちを焼き払う。
「私のシグルドリーヴァは、どんな相手であろうと負けないのよ!」
砲撃に備えるためにバリアを展開しながら、マルチロックオンシステムを起動し、全武装フルバースト攻撃を行う。
壊滅させたところで自動操縦モードに切り替えて、ロンメルの近くに飛び降りる。
「どうかしら、これが猟兵よ!」
共闘、アドリブ大好きです。
マリー・ハロット
マリー、アポヘルは面白いことないし、みんな大変そーで、キライだけどさ……そういうがんばってる人達をめちゃくちゃにして笑ってるヤツらはもっとキライ! 自分は強いんだぞーってふんぞり返ってる奴なんて、メタメタにやっつけちゃうんだから!
うんと、確か、戦車って上かのこーげきにはあんまり強くないんだっけ?
それじゃあ、【念動力】で空を飛んで(【空中浮遊】【空中戦】)、空から仕掛けるね! できれば、他の猟兵の人とれんけい?できればいいけど。
使うUCは『サイキック・はんず』! マリーの【念動力】の手で、取り巻きの戦車から【蹂躙】しちゃうんだから! アハハッ、みんなみんな潰れちゃえ!!
●
圧倒的な火力を武器に、猟兵達は軍人宰相が作り上げた機甲軍団を削り潰していく。
最早敵の戦力は壊滅状態。止めを刺しに行くのなら、今こそが好機と言えるだろう。
「次世代エルフの力、見せてあげるわ」
──来なさい、シグルドリーヴァ!
その好機を見据え、動いたのはアテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)。
掲げた掌に力を集めて喚び出したのは……想像から創造した、無敵の人形巨大ロボット兵器【機動兵器シグルドリーヴァ】である。
アテナは、勇者の見届人を目指すエルフの女戦士である。当然、古式ゆかしい戦いの作法も修めている。
だが、それだけが彼女の全てでは無い。数多くのオーバーテクノロジーの力をも十全に使いこなす事も、彼女の武器でであるのだ。
その戦いのスタイルは、まさに『次世代エルフ』という肩書に相応しい物である。
「圧倒的なオーバーテクノロジーの力、見せてあげるわよ!」
コクピットに乗り込み操作桿を操れば、機体の姿が変じ、大空を駆ける戦闘機形態へと姿を変える。
そうして変じた機体を駆って、アテナがその決意を顕わとすれば。機体は空へと舞い上がり、ぐんぐんと加速して──。
「──誘導爆弾、投下!」
高空から、機体に搭載された爆弾を投下する。
当然、空から降り注ぐその攻撃に敵は抵抗できる術は無い……訳が無い。
古来より、陸戦兵器の天敵は飛行機と相場が決まっている。ならばその対策も、当然施されているという物である。
撃破を免れていた自走対空砲から放たれる銃火の数々。糸を引くようなその猛射の前に、一つ二つと直撃コースに乗っていた誘導弾が撃ち抜かれて爆散するが……その全てを迎撃出来る数の自走対空砲は生き残っていなかったようである。
生き残った誘導弾が今、対空車両へと命中すれば。立て続けに他の対空車両へも誘導弾が叩き込まれ、爆発炎上。機甲軍団の貴重な対空火力を奪っていく。
「ぐっどたいみーんぐ!」
そんな敵に追い打ちを掛ける様に動いたのは、マリー・ハロット(高級カラーひよこ・f24446)だ。
アポカリプスヘルという世界に対して、マリーはあまり好意的な印象を抱いてはいなかった。文明は崩壊し、娯楽は無くて、生き残る人々はみんながみんな大変そうで。『たのしーことだけをしていきたい』というマリーからすれば、正直言ってキライな世界であった。
けれど、そんな世界で頑張っている人達をめちゃくちゃにして嗤っている様なヤツらは、もっとキライだ。特に、自分は強いんだぞと弱い人々を踏みにじって踏ん反り返っている様なヤツら……ヴォーテックス一族の様な連中なんて、虫酸が走るというものであった。
だからこそ、メタメタにやっつけちゃうんだから! と、今回のマリーはやる気十分であった。
しかし、そんなマリーの目の前に立ち塞がったのが対空自走砲の存在だった。
知識の上で、戦車は上からの攻撃に弱いという事をマリーは知っていた。だから自慢の念動力で空を飛んで、敵の頭上から攻撃を仕掛けようと考えていたのだが……その狙いを妨害するかのように、対空自走砲の銃口が空を睨み続けていたのだ。
だが、その自走砲は今まさに排除された。攻撃を仕掛けるなら、今しか無い!
「マリーの『手』からは、逃げられないよっ!」
叫ぶマリアの戦意に呼応するように、空気が蠢く。そして次の瞬間、擱座し燃え上がる車両が独りでに浮き上がり……被害を免れていた車両の上へと落下する!
金属と金属がぶつかり、拉げる甲高い音。直後、燃料が燃え上がったのは炎が高く舞い上がる。
マリーが放ったのは、不可視の手だ。彼女の身体を浮かす念動力を用いて創られた【サイキック・はんず】の能力を活かし、燃え上がる車両を掴み上げて生き残りの車両に叩きつけたのだ。
「アハハッ! みんなみんな、壊れちゃえ!!」
無邪気に遊ぶ子供の様にマリーが嗤えば、また一両生き残った戦車が大破し燃え上がる。まるで玩具を弄ぶ様に、マリーが敵を蹂躙する。
だが敵もやはり、やられる一方では無い。生き残った戦車が一両、その砲身をマリーに向けて……。
──カッ!
その砲弾が放たれる事は無かった。空から降り注いだ光が、その戦車を真っ二つに貫いたからだ。
「私のシグルドリーヴァは、どんな相手であろうと負けないのよ!」
その光線を放ったのは、アテナのシグルドリーヴァだ。誘導弾を投弾し一度戦場空域から離脱した後に、Uターンをして戦場に復帰したのだ。
更に一射、二射。立て続けに放たれる光線は戦車の堅牢な装甲を容易く引き裂き破壊する。
「どうかしら、これが猟兵の力よ!」
一瞬、眼下に見えたオープントップの指揮車、その後部に腰掛けた偉丈夫と目が合い、叫ぶアテナ。
アテナの叫びが聞こえたはずも無いのだが……その男は屈辱に震える様に、全身をワナワナと震わせていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
物量で挑んでくるか
悪手だな
戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
要らぬ余波は『無現』にて否定し消去
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
敵進行方向より行動開始
破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
高速詠唱を『刻真』『再帰』にて無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、周囲全方向へ斉射
更に射出の瞬間を無限循環し殲滅まで一切止まらず継続
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
圧殺するぞ
殲滅されるのを厭うなら死力を尽くせ
※アドリブ歓迎
●
(──何だ! 何が起こっているのだ!)
キューベルワーゲンの後部座席に腰掛けた軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』は、屈辱に震えていた。
意気揚々と進撃を命じた自慢の機甲軍団。その軍事力は無能な兄妹達を降し、自身の覇権を約束する物であったはずだ。
なのに、目の前の現実はこれである。
先鋒の無様な出来はまだ良い。足元が急に泥濘んだと報告があったが、そんな訳が無かろう。味方が暴走しただの、空から槍が振ってきただの、先行車両が溶けただのと……慢心の言い訳をするにしても、もっとマシな言い方というのがあるだろう。
……だが、その直後に顕れた奴らは何だ!
こちらを上回る砲火力に、高い練度を示す動きを見せる歩兵軍団、謎の武器を構える幼女の群れ!?
更には目にも止まらぬ疾さで空を掛け、光線で戦車を焼き切る戦闘機に、空を舞う少女!?
──一体私は、何と戦っているというのだ!
『ぐっ、ぇ、えぇい! 残存戦力で、敵の防御の薄い面を突破する!』
混乱と屈辱とで、煮え滾りそうになる頭を掻き毟る軍人宰相であったが、それでもその統率と戦術眼は健在であった。
軍人宰相が目をつけたのは、飛来する砲弾の投射量が少ない方面であった。即ちそここそが、包囲の薄い一面であると見抜いたのだ。
振るうその腕に従う様に。僅かに生き残った主力戦車を先頭にして、機甲軍団が動き出す。
……軍人宰相のその指示は、間違った物では無かった。普通に考えれば、生き残る道はそこにしか無いのだから。
けれど、この場にいるのは普通の者では無い。世界に認められ、生命の埒外の力を振るう猟兵達である。
そしてその場に立つその男は……猟兵達の中でも、特に異質な力を振るう男であった。
「物量で挑んで来るか」
脱出路を求めて殺到してくる敵集団を静かに睥睨し、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)が一つ呟く。
アルトリウスは、世界が構成される前の法則『原理』を扱う異能者である。その異能の力は、『ヒト』という枠に押し込められたが故に大きな制約を受けてはいるが……基本的には己が想起しうる全ての事象に干渉し、時に概念そのものを捻じ曲げる程の物である。
そんな彼に対して、ただの物量と勢いに任せた強行突破を仕掛けるなど、悪手以外の何物でも無い。
「──行き止まりだ」
一つ、アルトリウスが小さく呟いたその瞬間。彼の周囲の世界が変わる。
形成されたのは、蒼光の魔弾。その魔弾は瞬きの間に数を増やし、天を覆う程の密度となってもなお数を増し続けていく。
ただただ圧倒的なその光景は、彼が纏う『原理』の力によるもの。原理を相互に廻し、循環させる事で発現させた現象である。
当然、そんな数の魔弾を生み出せば常人であれば魔力はとうの昔に尽きるはずだが……その魔力すら、『原理』の力を用いれば世界の外から常時供給可能であるのだという。
……アルトリウスが見せたその力は、まさに人知を越えた物であった。
『──な、んだと、言うのだ
……!?』
その人智を越えた現象を前にして、ワーゲンを止めたロンメルの口から呆けたような声が漏れる。
彼の常識に無いこの光景を前に、眼は大きく見開かれて思考が完全に止まってしまった様な様子であった。
だが、その状態が。彼の命を僅かであるが生き長らえさせる事となった。
「圧殺するぞ」
殲滅されるのを厭うなら、死力を尽くせ。
淡々と呟かれるその声と共に、地に降り注ぐ魔弾の雨。
バケツを引っくり返した……等というありきたりな言葉では到底足りぬ程の密度の前に、機甲軍団が抗う術などありはしない。
回避は出来ず、決死の反撃も無力化されて。次々に直撃を受け、『その場に存在していた』という痕跡、根源ごと根刮ぎ掻き消されたかのようにして、一方的に討ち果たされていくのみである。
そうして運良く……いや、運悪くとも言うべきか。ただ一両生き残ったのは、軍人宰相が座す指揮車両のみであった。
──さぁ、お前はどうする?
アルトイウスの怜悧な瞳が射竦める様に軍人宰相を睨めば、その視線を受けた偉丈夫は身を震わせながらもこう叫ぶ。
『て、転進っ……! 転進だ! 急げ!!』
その指示が戦場に消えぬ内に。運転手を務める軍人オブリビオンが急ハンドルを切れば、車両はUターンをして、アルトリウスの前から逃走する。
……だが、最早軍人宰相に逃げ場など無い。
取り巻きであった機甲軍団も壊滅し、その終わりの時は刻一刻と近づいていた。
大成功
🔵🔵🔵
アネット・レインフォール
▼静
(敵の呟きを聞き)
普通に考えればそうなんだよなぁ…。
日常的に世界を渡り歩いていると、その感覚は薄れるが。
野心は兎も角、今回の敵は件の兄弟の中でも
真面目な方かもしれないな。
(少しシンパシーを感じつつ)…まあ、只の勘だが。
だが相手がリアリストならば――
こちらはファンタジーなパワーで相対するとしようか。
▼動
念動力で宙に浮かせた刀剣を足場利用。
太陽を背に死角をついて移動し、戦況と敵の位置を観察。
必要なら戦車の片輪に結界術で坂道を作り、
横転を狙ったり混戦時のフォローも。
見敵後は霽刀を手に【斑鳩】で空中から強襲。
毒や麻痺、消沈等の状態異常を付与した闘気を込め、
少しでも知力・統率力を削ぐ事を狙おう。
秋月・信子
●SPD
正面突破、しかありませんよね
できるだけ身軽に装備はハンドガンのみ
アサルトバニーで強化された【ジャンプ】で戦車の上から【鎧無視攻撃】の魔弾で搭載された弾薬や燃料を撃ち抜いて進んでいきます
敵が地形の起伏を利用している時には、ヘッドギアの無線機能を使って数十キロ後方でピースメーカーに乗って待機している私の影と連絡を取ります
盗聴対策で隠語を交えてです
雷神雷神、こちら風神
『こちら雷神、お届け物のご入用?』
はい、今お届け先を送ります
グレネードピストルで【暗号作成】の砲撃マーカーを目標に射出し、それを目印に元は野戦砲だったRSバントラインによる【地形破壊】させる威力の【砲撃】支援で突破していきます
●
戦場には、破壊された無数の車両の残骸が転がっていた。
時折上がる爆音や火の手は、車両に残置されていた弾薬や燃料に引火して起きたものであろうか。
「──フッ!」
そんな残骸の上を蹴り渡るようにして単身、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は歩みを進めていた。
彼女が纏うのは、身体にピッタリと張り付く強化スーツ。手に携えるのは大振りの対装甲拳銃一丁のみである。
(敵の戦車軍団は、もう大分片付いたようですけど……)
度重なる猟兵の猛攻の前に、軍人宰相自慢の機甲軍団は文字通り全滅の憂き目を見ていた。
だがそんな中、肝心の軍人宰相は悪運強く生き延びていた。
ここで奴を逃しては、ここまでの戦いの意味が無くなってしまう。逃さず仕留めねばならぬ。
信子はスーツで強化された身体能力をフルに活かして、逃げる軍人宰相が座す指揮車両のその後を追っていた。
「──見えたッ!」
信子のその行動は、しっかりと結果に結びつく。
積み重なった車両の残骸、その向こうを直走るキューベルワーゲンを眼にしたのだ。
「雷神雷神、こちら風神」
目標の姿を眼にしたその瞬間、信子がスーツに備え付けられた通信機に問い掛ける。
──こちら雷神、お届け物のご入用?
その先にいるのは、信子が『姉』と慕う影法師だ。
信子の影は、戦域の外に潜伏していた。愛機である量産型キャバリアに座し、出番の時を今か今かと待ち侘びていたのだ。
その出番こそが、今である。
「はい。今、お届け先を送ります──!」
通信に言葉を返しつつ、その手に持つ大型拳銃をキューベルワーゲンに向けて、発砲。
全速力で逃走する車両を狙撃するのは難しい事だが、信子は魔弾の射手の肩書を持つ猟兵だ。その程度の事、造作もなく成すことが出来る。
車体に被弾し衝撃にグラリと揺れるワーゲンだが、その逃げの脚は止まらない。攻撃は失敗したのだろうか?
……いいや、そうではない。信子の攻撃の本命は、これからだ。
──マーカー確認! 弾着……今!
信子の通信機越しに聞こえる『姉』の声。その声が終わるや否や、人の本能に恐怖を植え付ける風切り音が響き……。
──ズガンッ!!
響く炸裂音。爆ぜる地面。吹き飛ぶ大地に巻き込まれ、キューベルワーゲンが横転する。
信子が撃ったのは、弾頭にマーカーを仕込んだ特殊弾だ。そのマーカーの情報を後方で待機する信子の『姉』が受け取って、彼女のキャバリアが装備する元は野戦砲であったという兵装での支援砲撃を敢行したのだ。
その砲撃の効果は、ご覧の通り。まさに狙い通りと言った所だろう。
『ぐっ、ぅぅ……くそっ、何が……っ!』
だが、そんな横転したキューベルワーゲンから這い出てくる影が一つ。軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』その人である。
軍人宰相のその姿は、土に塗れた無残な姿であった。全身に浅くない傷を負い、その軍服の至る所を赤黒く染めていた。
それでも、彼は生きていた。生きてはいたが……それだけである。
最早戦う力は無く、ただトドメを刺される時を待つだけの無力な姿を晒していた。
『……何だというのだ、お前たちは! 理不尽が過ぎるだろう!』
悲嘆に叫ぶ軍人宰相の声が荒野に響く。
その嘆き節を、空中に浮かばせた剣の足場の上で聞いていたアネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)が小さく息を吐く。
(ああ、うん。普通に考えれば、そうなんだよなぁ……)
日常的に世界を渡り歩く猟兵の立場に慣れてしまうと感覚が薄れるが、本来世界とはそう容易く渡り歩けるものではない。
異世界から来る存在を嘘と断じた彼のその考えは、実に常識的な考えだと言えるだろう。
(野心は兎も角。奴は他の一族の中でも、真面目な方であるのかもしれないな)
そんな常識的な思考に僅かなシンパシーを感じつつも、アネットの瞳に同情はない。
真面目だろうが何だろうが、奴はこの世界に悪意を齎す『ヴォーテックス一族』に連なるオブリビオンである。討たねばまた多くの力無き人々が傷つくことになるだろう。
……ならばこの力を振るう事に、戸惑いは無い。
「裏肆式──」
理不尽を嘆くならば、その理不尽……実在するファンタジーを以て、相対しよう。
心の内で呟きつつ、アネットの上半身が弛緩する。だがその反面、足場を踏む脚の筋肉には力が籠もる。
弛緩と緊張、相反する二つの現象を両立させつつ、その上半身がゆっくりと前へと傾いて……。
「──斑鳩」
呟きを一つ。その言葉を残し、アネットの身体が掻き消える。
そして次の瞬間、響いたのは固く荒れた土が踏み割られる音。そして甲高い剣の鍔鳴りと……何かが吹き出す水音。同時にその水音に紛れるように、重い物が崩れ落ちたような鈍い音が鳴る。
「……『縮地』、という奴だ。ファンタジーは実在するのだぞ」
まぁ、聞こえていないだろうがな、と。呟かれるアネットの声に答える者は、いなかった。答えるべき相手である軍人宰相のその身体は、一刀の下に斬り捨てられていたからだ。
アネットが見せたのは、所謂『縮地法』と呼ばれる技術。仙術に端を発する技法の一つであり、現在では古武術の幾つかにその名残を残す武技である。
その特徴は、『地脈を縮め、距離を短くする』という事。有り体に言えば、瞬間移動に限りなく近い移動法である。
勿論、今現実に残る縮地法で瞬間移動を実現する事など出来るはずもない。だがその不可能を可能にしたのが、アネットの武技【裏肆式・斑鳩(イカルガ)】である。
現実に存在する不可能を、可能にする。これはファンタジー以外の何者でも無いだろう。
(直接的な戦闘力は高くないとは聞いていたが、流石に拍子抜けだな……)
目を見開いたまま絶命した軍人宰相の身体が、塵となって消えていく。後に残るのは、破壊され無数の戦車の残骸ばかりである。
これらの残骸もうまく回収して再利用する事が出来れば、この世界の復興に役立つだろうかなどと。そんな益体もない事を、アネットは考えていた。
……ともあれ、こうして軍人宰相『ロンメル・ヴォーテックス』も猟兵達の手により討たれた。
この世界に悪意を広げる『悪徳の一族』。その一角がまた一つ、崩壊世界から消え去ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵