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イケメンの悲しい宿命

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 人里から少し離れた森の中で、ぱしゃん、と水の音がした。
 綺麗な湖のほとりで、『何か』が水浴びをしているようだ。
 水音はしばらく聞こえていたが、不意に音がやんだ。

「いたぞ!」
「捕まえろ!」
 男たちの声が森に響く。

 ――バシャ! バシャバシャバチャバシャ!

 大きな水音がして『何か』の気配が遠ざかる。
 それを追いかける男達の声も、遠くなる。

 『何か』は『誰か』から懸命に逃げていた。
 自分自身を、守るために。


「ダークセイヴァーの森に行ってほしいんだけど」
 集まった猟兵たちに、レコ・ジェヒ(ケットシーのビーストマスター・f00191)が言った。
「人里から少し離れた森の中に、綺麗な湖があってね。そこに『何か』がいるんだ。それが何か、探ってほしい」
 必要であればその『何か』と接触し情報を手に入れてほしい、とレコは続ける。
「今回、あんまり提示できる情報がないんだよね……」
 判っているのはその『何か』が水浴びに現れること。
 そしてその『何か』は誰かに追われていること。
 追いかけているのは複数の一般人男性。どうも洗脳されているらしい。
「『何か』は自分が追われていることを知ってるから、普通に近づくと逃げちゃうかもしれない。それに、場合によっては追いかけてるほうと鉢合わせしちゃうかも」
 どうやって『何か』の正体を確認し、接触するか。追っ手と鉢合わせした時にどうするか。色々考えることはありそうだ。
「追っ手とトラブルになってもできれば『多少の怪我』くらいで収まるくらいにしてあげてほしいな……彼らは洗脳されてるだけだから」
 ちなみに湖はひょうたんのような形で、そのほとりの大半は数メートルから数十センチ幅の草地になっており、さらにその周りを森が取り囲んでいる。
 そこまで大きくない湖である、手分けして探せば『何か』を見つけること自体は難しくないはずだ。
「予知に引っかかったんだから、オブリビオン絡みなんだと思うけど……」
 何とも言えない表情で、レコが告げる。
「不確定要素が多くて申し訳ないんだけど、よろしくお願いします」
 そう言うと、レコはぺこりと頭を下げた。


乾ねこ
 乾ねこです。
 シナリオトップで盛大にネタバレしていますが、ダークセイヴァーの森でオブリビオン絡みと思われる事件(?)が発生しました。
 湖に現れる『何か』の正体を突き止め、情報を引き出してください。
 途中、『何か』を追いかける一般人男性(洗脳済)と鉢合わせするかもしれません。無力化するなりなんなり、適切に対応してください。
 第一章で『何か』から情報を得て、第二章に進む形となります。
 ネタ寄りになるかシリアス寄りになるかは皆様のプレイング次第です。

●以下、注意事項
 ご友人等、同行者がいらっしゃる場合はその旨をプレイングにご記入ください。お相手のIDやグループ名等が書かれていると確実です。
 また、プレイングの投稿時期が大きくズレますと同行の描写が叶わずプレイングをお返しする可能性があります。
 完全なる「単独行動」をご希望の場合にもプレイング内にてその旨をご指定ください。
 記入がない場合、単独参加でも他の参加者の方と行動を共にしていただくことがあります(特に探索、戦闘ではその傾向が強いです)。

 それでは、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『水浴びの乙女(?)を確認せよ』

POW   :    堂々と覗く

SPD   :    隠れつつ覗く

WIZ   :    遠巻きから覗く

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ドロシー・ドロイストラ
POW

男に追われているから逃げる、ならばドロシーが相手なら警戒しないで済むだろうか
これでも立派な角が愛らしい少女のつもりだぞ

そんなわけで堂々と覗き、堂々と姿を見せる
格好は……このままでいいか、水浴びなんてこのままでもできる
「おう、お前も水浴びか」くらいのフランクさでいこう

追っ手は全力出しちゃうと殺しちゃうから
ドロシー達を追いかけて湖に入ったら
ユーベルコード「凍結する冷気」を使って湖を凍らせる
できれば、追っ手の手前くらいまでな
「氷の上を走ってくるつもりか? 次は当てるぞ」と脅しを入れておこう

「実を言うと、ドロシーはお前を助けに来た。話をしてくれ、なにが起きている?」


富嶽・隼刀
富嶽・隼刀は猟兵であること以外は普通の16歳と変わらない。
臆病なのと左眼を通る傷痕を好きなゲームのキャラのコスプレ(ゴテゴテな軍服と顔の左半分を覆う眼帯)となりきりで隠している。

(この格好で隠密行動は無理だよなぁ……)
足首まである軍服はやはり動きにくい。
「……こそこそ覗き見など我には合わん」
そう呟き堂々と湖を覗く。(POW)




 大きな樹木が生い茂る森。ダークセイヴァーはもともと夜と闇の世界だが、空を覆う木々の枝がより一層その闇を濃くしている。
(「この格好で隠密行動は無理だよなぁ……」)
 暗い森の中で足を止め、富嶽・隼刀(本当の自分を隠して・f13192)は自分自身の身体に視線を落とした。
 別に容姿が異端だ、とかそういうことではない。仮にそうだとしても猟兵であればそこはさしたる問題にはならない。
 隼刀が問題視しているのは、彼自身の服装だった。
 彼は軍服を着ていた。隼刀の軍服はどちらかといえば正装とか礼装とかいう部類のものに近く、見た目を重視したデザインで勲章やら階級章やらがゴテゴテとついている。
 さらには顔の左半分を覆う眼帯。猟兵は「どんな姿をしていても一般人に違和感を持たれない」というが、あれは果たしてどこまで適用されるものなのだろう?
 もちろん隼刀は隼刀なりの理由があってこの服装をしているわけだが……。
(「やっぱり動きにくい」)
 空を覆う木々同様、足元には草が茂っている。さらに言えばあちこちに木々の根が張り出し、足首まである軍服を着ていてはとても歩き辛い。
 ほんの少し苦労しながらも件の湖へとたどり着き、隼刀は湖の縁に立つ木の幹に手をかけた。

「……こそこそ覗き見など我には合わん」

 堂々と姿を晒し、隼刀は湖へと視線を送る。
「誰もいないな」
 場所が悪かったのだろうか、『何か』の姿は見当たらない。
(「うーん、どうしよう……?」)
 湖のほとりに沿って探してみるか。それとも少し遠回りにはなるが、一旦森に入って少し離れたところでまた……。
 思案していた隼刀が、ふと顔を上げた。

 ――パシャン……。

 どこからか、微かな水音が聞こえてくる。
「……あっちか?」
 水音を頼りに、隼刀は再び歩き出した。


 水音は、ドロシー・ドロイストラ(寝惚けた氷嵐卿・f13158)にも届いていた。
(「男に追われているから逃げる、ならばドロシーが相手なら警戒しないで済むだろうか」)
 水音がしたほうへ近づきながら、ドロシーは考える。
 確かにドロシーは愛らしい少女の姿をしている。ドラゴニアン故にそれに由来する立派な角は生えているが、それもチャームポイントの一つ……のはずだ。
 そういうわけで、ドロシーは水音の源を堂々と覗くことにした。
 水音は、湖のほとりの大きな岩の陰からしている。一応、必要以上に警戒されぬよう気をつけつつ近づいて、ドロシーは岩陰を覗き込んだ。
「おう、お前も水浴びか」
「!!!」
 声をかけると同時、激しい水音を立てて相手が飛びずさる。
(「……ふむ」)
 何気ない様子を装いながら、相手を観察するドロシー。
 若い男だった。それなりに整った顔立ちをしている。こちらを警戒しているのだろうか、半身を引いていつでも逃げられるように構えているようだ。
 ドロシーが男に声をかけようとした、その時。
「いたぞ!」
「あそこだ!」
 別の男たちの声がして、若い男が慌てて身を翻す。
「あ、待て」
 ドロシーが咄嗟に若い男の手を掴んだ。
「放せ!」
「待てと言っている。大丈夫だ、ドロシーに任せろ」
 言いおいて、ドロシーは若い男の手を掴んだまま追っ手へと向き直る。
 少しでも距離をショートカットしようというのだろうか、湖に入り直進してくる追っ手の男たち。
「ディン・フォー!」
 ドロシーの口から氷のブレスが放たれる。湖面が見る間に凍結し、男たちは思わず足を止めた。
「氷の上を走ってくるつもりか? 次は当てるぞ」
 男たちは自分の足元スレスレまで凍り付いた湖面に視線を落とし、忌々し気に顔をゆがめる。
 まともに当たればタダではすまないことくらいは理解できたらしい。
「――いくぞ」
 ドロシーは男の手を引いたまま、急いでその場を後にした。

「おい……おい、あんた!」
 どれくらい走ったのだろうか。男に話しかけられ、ドロシーが立ち止まる。
「なんだ?」
「あんた、何なんだよ!」
 男の問いに、ドロシーは少しだけ考えるような素振りをして……やがてうん、と頷いた。
「実を言うと、ドロシーはお前を助けにきた」
「は? 助けに?」
 何を言っているんだ、とでも言いたげな男に大真面目に頷いて見せるドロシー。
「話をしてくれ、なにが起きている?」
 ドロシーの問いかけに、男はしばらく黙っていたが……やがて口を開いた。
「助けてくれたことには感謝してる。でも……俺はまだあんたを信用できない」
 男の告白に、ドロシーが更に問いを重ねる。
「信用できないか? どうすれば信用する?」
「俺の仲間も、ここに来てるんだ。俺を追っかけてたやつも多分、他の連中を探し始めてる……そいつらも助けてくれたら、話してもいい」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



 『何か』は若い男だった。
 発見された人物以外にも、何人か湖に来ているらしい。
 追われているのがわかっていて何故複数人で行動したのか、と問われた男はこう答えた。
「もし追っ手に見つかった時、誰か一人が犠牲になっても他が助かるように」
 まるで捕食を前提に生きる小動物のような考え方だが、それほどに追い詰められていたのだろう。
「他の連中も助けてくれたら、知っていることを話す」
 男はそう約束した。

 『何か』の正体は判明したが、猟兵たちの仕事はまだ終わらない。
 湖のほとりのどこかにいるであろう男の仲間を見つけ、助ける。当然、追っ手にも対処しなければ――。
苧環・つづら
洗脳済集団の捕獲対象が見目の整った青年、ねえ……
……そして此処はダークセイヴァー……どうにも頭を掠める嫌な予感。

お話聞かせて貰う為にも救助と追手への嫌がらせが必要ね。
間違い無く世界観的に場違いな宇宙バイクも動員して度肝を抜いてやりますか。
機動力を生かして湖の周囲を回れば見つかるでしょうし、
救助対象と追手の間にドリフト仕掛けつつ割り込めば嫌でも止まる筈。
それでも来るようなら空砲代わりにフェイント智猿衆召喚。
……ただね、予感が間違ってなきゃ、多分アタシ自身が一番の囮と化しそうな。

救助者は後ろに乗っけて他の方々に合流。
緊張と全力疾走で疲れてるでしょうし氷砂糖どうぞ、甘い物で落ち着いて?


ドロシー・ドロイストラ
さて他のヤツ探す前に聞いておきたいことがあるんだけど
逃げたところで当てがあったのか?
潜伏先ってやつだな
あるならまずそこに男を送ってから次に行く
ないならドロシーについて来い、一番安全だ

あと名前教えろ、他のヤツ助けるにあたって
お前からの頼みってことわかってもらえば逃げたりしないだろう

さて助けに行くとしよう
最初の手が通じるなら湖凍らせて脅す方向でいくが
それができないようなら普通に脅かそう
まず適当な石を2つ拾う、丸いの、玉状のがベスト
「ドロシーの邪魔をするなら…」
石を…玉を二つ握りつぶす
「お前らの、『そこ』がこうなる……」
どことは言わないけど、わかれ

そんな感じで追っ手を追い払ってどんどん合流していくぞ




「……っているんですか?」
 聞こえてきた声に、青灰色の宇宙バイクに跨った苧環・つづら(残響にて紡ぐ円環・f06155)が顔を上げた。
「嫌だ! 行きたくない!!!」
「無駄ですよ、逃がしません」
 悲鳴のような男の声と、淡々とした男の声。
「いやだあああ!!!」
 切羽詰まった声が響く。
 石が転がり木の根が張り出す凸凹の地面を物ともせず、宇宙バイクを走らせ現場に急行するつづら。
 十数秒ほど湖のほとりを走ったところで人影が見えた。その数、四つ――湖を背にした一人を、三人が取り囲んでいるように見える。
(「ひとつ度肝を抜いてやりますか」)
 ブォン! と敢えて大きくアクセルを吹かせ、人影に急接近。案の定、人影は全員男で……三人が一人を追い詰めているところだったらしい。
「なんだ!?」
 突然現れた見慣れぬ乗り物に動揺する男たち。追っ手と思わしき三人と救助すべき男との間にドリフトしながら割り込んで、つづらは男に手を伸ばす。
「捕まりたくないならアタシと一緒にいらっしゃい!」
 男が一瞬躊躇する。
「早く!」
 勢いに押されるようにして、男がつづらの手を取った。
 つづらが男を宇宙バイクの後ろに乗せるのと、追っ手の男たちが自分を取り戻すのがほぼ同時。
「しっかり捕まってなさいよ」
 つづらは宇宙バイクをその場で旋回させ急発進。この場を離れようとする。
「あっ、逃げるぞ!」
「追え! 何としても捕まえろ!」
 この期に及んでもまだ追いすがる追っ手たち。どう考えても追いつけるはずはないのだが……。
「ああもう、しつこいわねぇ」
 一瞬だけ後ろを振り返り、つづらは三体の白猿の霊を召喚した。
「しばらく三猿さんに相手してもらいなさいな」
「なんだこいつら!?」
「うわ、やめろ近づくなっ」
 男たちの慌てふためく声に背に、づづらはバイクを走らせる――。

「ここで大丈夫かしら?」
 つづらが宇宙バイクを止めたのは、追われている男たちが潜伏していたという洞穴の前。
 極度の緊張からか、あるいは宇宙バイクでの初ドライブ故か……疲労困憊の男をバイクから降ろしつづらは用意した氷砂糖を差し出す。
「どうぞ、甘い者で落ち着いて?」
「あ、ああ。……ありがとう」
 男が氷砂糖を一つ口に含み、ほんの少しだけ目を和ませる。
「ライナー! 無事だったか!」
「ルッツ!」
 洞穴から出てきたもう一人の男を見て、男がその名を呼ぶ。
「他の連中は?」
「……わからない」
 深刻そうなやり取りをする男たちを見ながら、つづらは思う。
 何者かに追われる、整った顔立ちの二人。さらに言えば洗脳されて彼らを追っているという男たちも、なかなかの美形だったような気が。
 ダークセイヴァーという世界も相まって、つづらの脳裏を嫌な予感が過る。
 この先、状況がどう動くかはまだわからないけれど――。
(「もしかしてコレ、アタシ自身が一番の囮になっちゃうパターン……?」)

 つづらの心配は、果たして的中してしまうのか。


 ――時間をほんの少しだけ遡る。
 男を助けたドロシーは、彼が潜伏していたという洞穴まで彼を送り届けていた。
「お前の名前教えろ。他のヤツを助ける時、お前の頼みだとわかれば向こうも無駄に逃げたりしないですむだろう?」
 ドロシーの問いに、男は答えた。
「……ルッツだ」
「ルッツか。ではルッツ、しばらくここで待っていろ」

 湖のほとりへと引き返し、耳を澄ませるドロシー。
「いたか!」
「いや、こっちにはいない」
「くそ、どこに隠れたんだ!」
 追っ手と思わしき男たちの声がした。
(「誰かを追いかけているのか?」)
 声の方角へとドロシーが足を向ける。耳を澄まし、目を凝らし――注意しつつ歩を進めれば、大樹の陰に隠れる人影が見えた。
 大樹の目と鼻の先には、懸命に何か……おそらくは大樹の陰にいる人物を探す男たち。
 放っておけば大樹の陰の人物は男たちに見つかってしまうだろう。ドロシーは敢えて大樹の脇を通り過ぎ、男たちの前に立った。
「なんだお前は」
 男の中の一人がドロシーに問いかける。どこか威圧するような、脅すような口調なのはドロシーを見た目通りの幼い少女と侮っているからだろうか。
「ドロシーはやることがある。お前たちは邪魔だ、さっさとどこかに行け」
「なんだと?!」
 気色ばむ男たち。ドロシーは面倒くさそうに男たちを一瞥すると、足元に転がった石を二つ、手に取った。
 水に流され、角の取れた球状に近い石が二つ。それを片手の上に乗せ、男たちの前に差し出すドロシー。
「もう一回言う。お前たちは邪魔だ、ここから立ち去れ。もし、ドロシーの邪魔をするなら……」
 そこで一拍置いて、ドロシーは石を乗せた手をグッと握りしめる。ドロシーの怪力により思い切り握りしめられた二つの石は、なんだかとても嫌な音を立て……。
「お前らの、『そこ』がこうなる……」
 言葉と共に開かれた掌には、粉砕された『丸い石だったもの』の残骸が。
「うっ」
 誰かが思わずうめき声を上げた。粉砕された石が何を意味するのかわかったのだろう、男たちが二、三歩ほど後ずさる。
「逃げないのか? 逃げないなら……」
「「う、うわああぁ!」」
 ドロシーが一歩踏み出すと同時、慌てて逃げ出す男たち。その後ろ姿が心持ち内股っぽくなっていたのは気のせいか。
「おい、そこのお前。大丈夫か」
「ひっ!!!」
 ドロシーに声をかけられ、大樹の陰に隠れていた人物――十代後半と思わしき少年が悲鳴を上げる。
「ああ、逃げるな。心配しなくていい、ルッツに頼まれてきた」
「ルッツ……? ルッツを知ってるの?」
「ああ、知っている。ドロシーはルッツと約束した。ルッツの仲間を助けると」
 それを聞いて漸く安心したのだろうか、少年がへなへなと地面にへたり込む。
「ここは危ない、ルッツと一緒に隠れていろ。そこまでドロシーが送っていく」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ビートルジュース・スーパーノヴァ
ココじゃオレの最高にクールなバイクもヤル気出ねーし、逃げる『何か』探すより追っ手とっ捕まえたほうが早いんじゃね?
いいね、冴えてるオレ。さすオレ。

『何』を『何のために』追ってんのか聞きてーけど洗脳されてんだっけ。解けねーかな、洗脳。
とりあ普通に声かけて何してんのか聞いて、話通じねーなら押さえ込んで吸血。派手にぶん殴るのも手、痛えし。次々襲ってきたら間に合わねーから殴るけどな。
逃げるならどこへ逃げるのか追ってみるか。

怪我してる奴とか倒れてる奴がいたら追われてる『何か』かもしれねーから、シンフォニック・キュアで回復させて事情を聞くぜ。




 森と湖の境で、ビートルジュース・スーパーノヴァ(Hyper×Super×Shooting Star・f10965)は両腕を組みながら考える。
(「ココじゃオレの最高にクールなバイクもヤル気出ねーし」)
 左手には木々の根が張り出し下草が茂る森。右手には大小の石や岩が転がる砂利の浜。乗ろうと思えば乗れなくはないが、クールなバイクで走るには足元が悪すぎる。
 仮に『何か』に逃げられた場合、追いかけるのは面倒だ。

 ……ならばいっそ、追っかけているほうを捕まえてしまったほうが早いのでは?

 頭に浮かんだ妙案にうんうんと一人頷くビートルジュース。
(「いいね、冴えてるオレ。さすオレ」)
 自画自賛中の彼に、早速チャンスがやってくる。
「こっちにもいたぞ!」
 ビートルジュースを捕獲対象と間違えた男たちが、向こうから近づいてきてくれたのだ。
「アンタたち、何してんの?」
 追っ手の数は四人。皆それぞれに美形である。
(「でもま、オレほどじゃねぇけどな」)
 心の中で呟きつつ、ビートルジュースは最後方に立つ男に視線を送る。男の肩には、意識を失っているらしい人間が担がれていた。
「なんだお前は……ここらの人間じゃないな」
 一番体格のいい男がビートルジュースを見下ろす。
「いやまあ確かにそうだけど? アンタらはこんなとこで何してんのさ」
「貴様には関係ない」
「そっかぁ、関係ないかぁ。でもオレはアンタらに聞きたいことがあんだよね……その肩の荷物は何なのか、とかさ」
 ビートルジュースの言葉に、男たちが一気に殺気立つ。
 そしてその直後、男たちはビートルジュースに襲い掛かった。
「っと!」
 殴りかかってくる男の腕を躱し、カウンターでボティに一発。その場に崩れ落ちた男の影から飛び出してきた男のナイフをその場でしゃがんで華麗に回避し、勢いをつけてアッパーカット。抑え込もうとでもいうのか、掴みかかってきた別の男の腕を掴んで引き寄せ、その勢いも利用してもう片方の肘で男の顔面に思い切りエルボー。
「ったく。ぶん殴るのも痛えんだぞ」
 三人の男をいとも簡単に叩き伏せ、ビートルジュースは残る一人に向き直る。
「さーて、話聞かせてくれっかな?」
 とてもいい笑顔で迫るビートルジュースに、男は半歩ほど後ずさり……。
「うわああ! 助けてください主さまぁ!!」
 肩に担いだ人間を放り出し、よくわからない悲鳴を上げて逃げ出した。
(「アイツ追いかければなんかわかるんじゃね?」)
 そうは思うものの、地面に転がされた被害者らしき人物を放置するわけにはいかない。
 ビートルジュースはその人物のもとに歩み寄り、片膝をついてその様子を観察する。
 ビートルジュースでも抱き抱えられそうな小柄で細身の男性……というか、少年だろうか?
(「見た感じ怪我はしてなさそうだけど……放っておくわけにもいかねーか」)
 近くには追っ手が三人転がっている。とりあえずこの少年を安全な場所に運ぶべきだろう。
「仕方ねーな」
 肩を軽く竦めた後、ビートルジュースは少年を抱え上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜雨・カイ
騒ぎは聞こえますがどうやって探しましょうか…?
水浴びすれば戻ってくるかもしれませんね。錬成カミヤドリで錬成体を作り水浴び(の真似)をして水音を立てます。
追っ手がきたら、他の錬成体で取り囲みます
あ…多くのお面に囲まれたら普通怖いですね、脅かしてすみません。
怪我はさせたくないので、引いてくれませんか?(襲ってきたら錬成体で羽交い締め)

追っ手の対処後は「何か(誰か)」さんに向けて呼びかけます。
「もう追いかける人はいませんよー、だから安心して下さいー」
見つけたら、安全な所まで送っていきますよと声をかけます

何が起こってるんですか?
何か手伝える事があるかもしれません、良かったら話してくれませんか?




 湖のほとり、水浴びをする人影。
 その音に釣られて、大柄な男が森の中から姿を現す。
「……おい、お前」
 男に声を駆けられて、水浴びをしていた人影が振り向いた。
「ひっ!」
 男が引き攣ったような声を上げる。
 顔を覆う白い狐面、人形を思わせる肩や腕の関節部。見慣れぬ異形の姿に、男が怯えの表情を見せる。
 狐面と睨み合うこと数秒、ゆっくりその場を離れようとした男は更なる恐怖に襲われることとなった。
 水浴びをしていたのと全く同じ、狐面を被った異形に周りを取り囲まれていたのである。
「っっっ!!」
 声にならない悲鳴を上げて尻餅をつく男。
「あ……脅かしてしまいましたか」
 そう言いながら尻餅をついた男に近づいたのは、異形と同じ服装をした若い男――桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)だった。
「こんなに多くのお面に囲まれたら普通怖いですよね、すみません」
 ペコリと頭を下げるカイ。男を取り囲んでいる狐面の正体は、彼の本体でもあるからくり人形……の複製たち。
(「湖にいるという『何か』、どうやって探しましょうか……?」)
 思案を巡らせたカイは複製の一体に水浴びの真似事をさせ、まず追っ手を誘き出してみることを考えた。
 男はそれにまんまと引っかかり、狐面のからくり人形に取り囲まれてしまったのだ。
「怪我はさせたくないので、引いてくれませんか?」
 誠実そうな表情で、丁寧な口調で、カイは男に語り掛ける。しかし、からくり人形たちに取り囲まれたままの男には半ば脅迫と思えるような言葉だったらしい。
 男は怯えた表情のままコクコクと何度も頷き、人形たちが包囲を解くと転がらんばかりの勢いで森の中へと走り去っていった。

「どなたかいらっしゃいますかー?」
 男の姿が完全に見えなくなったことを確認して、カイは『何か』に呼びかける。
「もう追いかける人はいませんよー、だから安心して下さいー」
 呼びかけに反応してか、少し離れた岩の影から一人の男性が恐る恐るといった様子で顔を出す。
「あ、あんたは……?」
 尋ねる男を安心させるように、カイはにっこりと笑って見せる。
「あなたたちを助けに来たんです。もう大丈夫ですよ、安全な場所まで送っていきますから」
「ほ、本当か?」
「ええ。ですから、教えてほしいんです……何が起こってるんですか?」
 カイの問いに、男が口籠る。
「何か手伝えることがあるかもしれません。歩きながらでも、安全な場所に着いてからでも構いません。良かったら話してくれませんか?」

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『顔のきれいな男がさらわれる』

POW   :    体をはって囮作戦。とりあえず捕まってみる

SPD   :    拐われた人を追いかけてどこにつれていかれたかを探る

WIZ   :    村人に話を聞いたり、現場を調べて真相を推測する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「本当にみんなを助けてくれたんだな、ありがとう」
 湖に潜んでいた『何か』――若い男たちを代表し、ルッツが礼を言う。
「約束通り、全て話す」
 そう言うと、彼らは自分たちが知っていることを話し始めた。

 男たちは元々とある村の住人であるらしい。
 ダークセイヴァーにしては平穏な村だったらしいが、数か月ほど前から「領主さまの命令だ」と言って若く見目の良い男性が連れ去られるようになった。
 連れ去られた男性は帰ってこない。若く見目良い男性がいなくなると連れ去られる男性の年齢の幅が広がり、見目の良さの基準が甘くなり……今ではもう、村には十代半ばから四十代近くの男性が殆どいないのだという。
 にもかかわらず、拉致の対象は何故か『町で暮らしていた』あるいは『町に足を踏み入れた』男性のみで、どれほど美貌を誇る男性であっても町に足を踏み入れるまでは決して拉致の対象とはならなかったらしい。
「連れ去られた連中がどこに行ったのか、今どうしているのかもわからない。無事でいるのか、あるいは……」

 ――男性を拉致する連中は、今も村を徘徊している。

 連れ去られた男性がどこに言ってしまったのか。
 村に、何が起こっているのか。
 更なる調査を進めるために、猟兵たちは件の村へと足を踏み入れた。
富嶽・隼刀
【POW】
何とかしたいが富嶽には最善の方法が思い浮かばない。
(気は進まないけど……)
幸い、ではないが富嶽は男である。
ここはわざと捕まって何処へ連れていかれるか確かめてみることにした。


ビートルジュース・スーパーノヴァ
こっちにもいたぞ!つってたな、アイツら。
拉致基準クリアしてるみてーだし『町に足を踏み入れた男』になれば、あとは寝ててもアイツらが運んでくれるってワケだな!
懸念点つーと三人ぶん殴って一人逃したから顔バレしてるってことだな。厳重に警戒されちまうと捕まったあとで動きにくいよな。
レコちんが洗脳されてるつってたけど会話や判断力はマトモっぽいんだよな。一応逃げるフリしてから捕まって、怖がってメソメソしとこ。かわいこぶったらカワイイからなオレ!(※個人の感想です)

しっかし町に何があんのかね。領主がどうとかって話だけど、領地からしか搾取できねールールでもあんのか?
ユーベルコード関係じゃねーといいんだけど。




 ひっそりと、誰もが息を殺して暮らしているかのような村だった。
 人がいないわけではない。村には小さいながらも幾つかの商店があり、店番をする女性や買い物途中らしき女性姿もちらほらと見える。
 確認できる限り出歩いているのは女性ばかり……誰も彼も疲れたが様な、何かを諦めた様な顔をしている。
(「まあ、それも無理ないよね……」)
 この村で発生している事件を思い、富嶽・隼刀(本当の自分を隠して・f13192)は小さく息を吐く。
 見かけるのが女性だけなのは、連れ去りを警戒してのことだろう。いつ連れ去り対象になるかわからない以上、男性はろくに外も出歩けないに違いない。
 隼刀たち猟兵は、この事件を解決するために村にやってきたのだが……。
(「何とかしたいけど、最善の方法が思い浮かばない」)
 むぅ、と難しい顔をする隼刀の脇から、ビートルジュース・スーパーノヴァ(Hyper×Super×Shooting Star・f10965)がひょい、と顔を出した。
「なに難しい顔してんの?」
「うぉ?!」
 思わずその場から飛びのいてしまった隼刀は間違っていない……と思う。
「なんだ、我と同じ猟兵か。いや、これからどうするかと考えていてな」
 動揺を押し隠し隼刀が答えると、頭の後ろで両手を組んだビートルジュースはあっけらかんとした様子で口を開いた。
「そんなん、オレらも連れ去られりゃいいんじゃね?」
 湖での追っ手の反応で、ビートルジュース自身が連れ去りの基準をクリアしているらしいことは確認済。隼刀も若い男性であり、余裕で連れ去りの対象のはずである。
「む……」
 隼刀が唸る。ビートルジュースの案は、隼刀も考えていたことだった。ただ――。
(「あまり気は進まないけど……」)
 内心だけで、息を吐く。気は進まないが、他にいい案が浮かばないのも事実。
「仕方がないか」
 隼刀が軽く頭を振った。
「――あんたたち、旅の人かい?」
 二人に声をかけてきたのは、それまで遠巻きに二人を眺めていた村の女性の一人だった。
「まあ、そんなものだが……」
「もうすぐ『領主さまの使い』がくる。悪い事は言わない、早くこの村から出ていきな。でないと二度と帰ってこれなくなるよ」
「領主さまの使い?」
「忠告はしたよ、あとはもう知らないからね!」
 一方的に言って、そそくさと立ち去る女性。その後ろ姿を見送って、隼刀とビートルジュースは顔を見合わせる。
「つまり『領主さまの使い』とやらが男たちを連れ去っているということか」
 思案顔の隼刀に対し、ビートルジュースがニヤッと笑う。
「だと思うぜ。もうすぐソイツらが来るっていうし、あとは寝ててもソイツらが運んでくれるってワケだ」

 ――暫くの後。
 隼刀とビートルジュースは、大柄な男数人に囲まれていた。
「お前たち、旅の人間か?」
「そ、そうですけど……」
 ビクビク、オドオド。いかにも「怖がっています」という風情を漂わせて答えるビートルジュース。
 もっとも、内心ではまったく別のことを考えているわけだが。
(「湖でぶっ飛ばしたの、多分コイツらの仲間だよな。一人逃がしたから顔バレしてるかと思ったけど、今んトコ大丈夫っぽい?」)
 脅しめいた男たちの話は続いていた。それを聞きながら、ビートルジュースは更に思考を重ねる。もちろん、男たちの言葉に合わせてビクッと身体を震わせたり涙目になったりの細かな演技は忘れない。
(「洗脳されてるって割には、会話や判断力はマトモっぽいんだよな」)
 だからこそこうしてめちゃくちゃ怖がってるフリをしているのだが。
(「かわいこぶったらカワイイからなオレ!」)
 ビートルジュースがそんなことを考えているとも知らず、男たちはニヤリと嫌な笑みを浮かべる。
「お前たちは俺たちと一緒に来てもらう。反抗したら……わかっているな?」
 お約束のような言葉と共に、隼刀とビートルジュースは男たちに拉致された。

 予定通り、男たちに釣れされれた二人。
 果たして彼らはどこへ連れていかれるのだろう――?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

筒石・トオル
【WIZ】
町に入る事で領主が男性達を視認しているのかも。
囮になる人はその条件(フラグ)を踏んだ方が確実に釣れると思う。
村人も不安になっているだろうし、【礼儀作法】を用いて落ち着いた雰囲気で聞き込み調査を。例の命令が発せられた前後で何か変わった事がなかったかどうか。領主が世代交代したとか。
僕は対象外だから現場に何か手掛かりがないか、【視力】【第六感】で探り【情報収集】をする。
他にも調べている人が居たら情報交換したり意見を交わし合いたいな。

「それにしても…イケメンを攫って領主さまは何をするんだろうね?」
不思議そうに首を傾げたら、一部の人が目を逸らしたんだけど、何か知ってるのかな?




 屈強そうな男たちに連れ去られる猟兵たちを、筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)は建物の影から見送った。
(「やっぱり町に入ることが条件になってるっぽいな。領主がそれで男性の存在を認識しているのかも」)
 幸か不幸か、トオル自身は年齢的な部分でギリギリ対象外……のはずだが、念のため周囲を確認し道沿いに歩きだす。
(「誰かに話を聞きたいんだけれど」)
 状況が状況だけに仕方がないのかもしれないが、外を歩いている人が少ないうえに誰も彼も足早に歩き去っていく。
(「みんな不安になっているだろうし……」)
 急いでいるのを無理に引き留めて話を聞くのも気が引ける。となれば、開いている商店で買い物をするついでを装って聞き込みをするのが一番無難だろうか。
(「店をやっているなら、いろんな人から話を聞いているかもしれないし」)
 軽くあたりを見回して、食料品を売っているらしい店の店頭へ。
「いらっしゃい――おや?」
 店の奥から出てきたのは優しげな老女だった。
「こんにちは。旅の途中なのですが、食糧が覚束なくなってしまって……何か保存のきく食べ物とかありませんか?」
「あらあら、まだ小さいのに大変ねぇ。野菜を乾燥させたのとか、そういうのしかないけれど大丈夫かしら……」
「十分です」
 トオルが答えると、老女が品物を準備し始める。
「ずいぶん人が少ないんですね」
「……今はちょっと問題があってね。以前はもっと人がたくさんいたのよ? 割と穏やかで平穏なところだったから」
 言いながら、老女は遠くを見るように目を細める。
「何かあったんですか?」
 知らぬふりをして問いかければ、老女は困ったような顔をして見せた。
「あなたも知っておいたほうがいいのかしら。多分まだ、大丈夫だと思うのだけれど……」
 品物をまとめる手を止め、悩む素振りを見せる老女。トオルが根気よく次の言葉を待っていると、老女ははあ、と大きくため息を吐いた。
「若い男たちがね、領主さまに連れ去られるようになったのよ。今この村にいるのは女子供と、中年以上の男だけ……それ以外の男は連れ去られたか、村から逃げ出してしまった」
「そんなことが……でもなぜ急に? 領主さまが代替わりしたとか?」
 トオルの問いに、老女はゆっくりと頭を振った。
「いいえ、そういう話は聞かないわ。でもそういえば、領主さまが新しい奥方を迎えたとかなんとか聞いたことはあるわね」
「奥方???」
「ええ、時期はわからないんだけれど……」
 改めて手を動かしながら、老女が答える。
「そうですか。それにしても……男性を攫って領主さまは何をするんでしょうね?」
 首を傾げるトオルに、老女は小さく笑って「さあねぇ」と呟いた。
「さ、できましたよ」
 購入した品物を受け取りペコリと頭を下げたトオルに、老女は改めて忠告する。

 あなたもできるだけ早くこの村を離れなさい。
 今日は大丈夫でも、明日には連れ去られるかもしれないのだから――。

成功 🔵​🔵​🔴​

山田・真尋
【SPD】
…見知った顔(ビートルジュース…ビーやん)が連れて行かれてるような気がしたにゃ。
うちは荒事は得意だけども、偵察とかは向いてないんだけどにゃー。
しかし、男集めて何してるのかみゃ。
食べられたりしてなきゃいいんだけども。

つかず離れず後ろを追って、もし、途中で待ち構えられたりしたら、
真打・尋兼の峰でどついて気絶させる程度に留めておきたいみゃ。


ドロシー・ドロイストラ
SPD

おお連れていかれてる連れていかれてる。
…こいつら追いかけたらいいんじゃないか?
というわけでドロシーは連れていかれた猟兵2人を追いかけようじゃないか

集団なら遠目にも見やすいだろうし距離を十分取って追う
見通しが良さそうな場所に出てしまったら
「幻の沈黙」を使って透明化するぞ
あくまで静かに、見つからずにだ

ルッツを追いかけてきた連中は脅しは通じるあたり
こいつら真まで洗脳されてるわけじゃなさそうだし
何かワケアリか、単に洗脳がゆるいのか
あるいは領主様からなにかご褒美があるか…さてどっちだ?




(「おお、連れていかれてる連れていかれてる」)
 ドロシー・ドロイストラ(寝惚けた氷嵐卿・f13158)は猟兵二人が拉致される一部始終を少し離れたところから眺めていた。
 ドロシーは女性である。囮にもなれないし、どうやって情報を集めようか考えていたのだが……。
(「あいつら追いかけたらいいんじゃないか?」)
 彼らの後姿をじっと見つめ、十分に距離が離れたところでドロシーは行動を開始した。

「なんか見知った相手が連れていかれてるような気がしたにゃ」
 別の場所で、ぴこん! と何かを察したように山田・真尋(妖刀のヤドリガミ・f10961)が顔を上げた。
 さほど広くない村を少し歩きまわってみれば、村の外れで男たちに取り囲まれ両脇を抱えられるようにして連行される男性二人を発見。
 案の定、二人の内一人は顔見知りの猟兵で――物陰から二人が連れ去られる様子を伺いながら、真尋は困ったように頬を掻く。
(「うちは荒事は得意だけども、偵察とかは向いてないんだけどにゃー」)
 とはいえ、男たちがどこに向かうのかを知るには絶好のチャンスである。
「……仕方ないにゃー」
 男たちの後をつけるべく歩き出そうとした真尋の肩を、誰かがぽん、と叩いた。
「!!!」
 咄嗟に腰に佩いた妖刀『真打・尋兼』に手をかけた真尋だったが、そこにいたのは大きな角も可愛らしい紫の瞳の少女。
「な、なんだにゃ?」
「ドロシーはあの男たちを追っている。……お前も猟兵か?」
「そうみゃ。もしかして……」
 言いかけた真尋にむけて、ドロシーがこっくりと頷いた。
「ドロシーも猟兵だ。あの男たちを追うのなら、一緒に行こう」
 複数人いたほうが、不測の事態に対応しやすい。あまりに人数が多いのも考え物だが、二人なら問題ない。
 真尋はドロシーの提案に乗ることにした。

 拉致した猟兵を連れ、村を出ていく男たち。
 当然ながら街道沿いの建物は減り、だんだん見通しが良くなっていく。
「うーん、困ったにゃ」
 真尋が呟く。遠目でも男たちの姿が確認できるのはありがたいが、それは同時にこちらが見つかりやすくなるということでもある。
 十分距離を置いているとはいえ、気付かれると厄介だ。
「ん、大丈夫だ。なんとかなる」
 ドロシーはそう言うと、真尋にぐっと密着した。
「な、なんにゃ?!」
 慌てる真尋に構うことなく、ドロシーは彼女の耳元で竜の言葉を紡ぐ。
『サー……ドレム……!』
 ドロシーが言葉を紡ぎ終えた時、二人は透明になっていた。
「これでいい」
「はにゃー、これは便利だみゃ」
「音は消えない。気をつけろ」
「了解にゃー」

 街道をしばらく進んだところで不意に道を逸れる男たち。真尋とドロシーは、男たちを見失わぬよう少しだけ距離を詰める。
 男たちが進む先には、葉を落とし枝を晒した広葉樹の林。林の中へ入ると、彼らはどんどんその奥へと進んでいく。
「にしても、男集めて何してるのかみゃ? 食べられたりしてなきゃいいんだけども」
「それはドロシーにも、わからない」
 真尋の呟きにそう返し、ドロシーは考える。
 連れていかれた人間がどうなっているかも気になるが、拉致の実行犯であるあの男たちのことも気になる。
(「湖の連中には脅しが通じた。あいつら、完全に洗脳されてるわけじゃなさそう?」)
 単純にその程度の洗脳なのか、あるいは何か訳があるのか。
(「男を連れて行ったら領主さまとやらからご褒美があるのか?」)
 何かを盾に脅されている、という線もあるだろうか。
 あれこれと思案するが、今はまだ何もわからない。
 林の中をしばらく歩くと、石造りの建物が見えてきた。城、というほどではないがかなり大きな建物である。
 重厚そうな観音開きの扉を開け、その建物の中に入っていく男たち。
「まだいけるかにゃ?」
「大丈夫だ、問題ない」
 真尋とドロシーは透明化を維持したまま、急ぎ足で閉まる扉の中へと滑り込む。
 扉の先はアーチ状の天井を持つ玄関ホールだった。その突き当りにある扉は開け放たれており、頭を垂れて跪く男たちと、捕らわれた猟兵の姿が見える。
「――ご苦労様です」
 見知らぬ誰かの声がした。どうやら、男たちは誰かと話しているようである。
「は。こちらが新しく連れてきた男たちでございます」
「あら、久しぶりに綺麗な子たちですね」
「いかがいたしましょう?」
「いつものように奥にお連れして。……丁重に扱いなさい、怪我などさせないように」
 真尋とドロシーは、姿を消したまま扉の奥――ちょっとしたパーティでも開けそうな広間の中を覗き込む。
「?!??!」
 男たちが話している相手の姿を確認した瞬間、真尋は驚きのあまり吹き出しそうになった。口元を懸命に抑え、マジマジと相手を見遣る。
(「ギャ、ギャップが凄いにゃ……」)
 丁寧な穏やかな口調で話すその人物は、黒いベビードールを身に着けていた。ツインテールに結われた豊かな黒髪、厚い胸板、太く逞しい二の腕、引き締まり鍛え上げられた肉体……はっきり言って、その口から洩れる言葉との落差が凄すぎる。
 男たちとの会話から、おそらくは彼女? こそが男性連れ去りの主犯なのだろう。
 建物の奥に男たちの姿が消えると、ベビードールの人物は広間の椅子にゆっくりと腰を下ろした。
「……見目の良い男性は宝ですもの。わたくしがしっかり保護しなければ」
 彼女の紡ぐ優しげな言葉が、真尋とドロシーの耳に届く。
「今度の子も存分に愛でてあげなければね。そのためにも、まずはわたくしの良さを分かってもらいましょう……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『変態的破滅招来体』ランジーリ』

POW   :    本当の自分と向き合って!
【欲望】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【対象の分身】から、高命中力の【本音】を飛ばす。
SPD   :    あなたの気持ち、わかるわ!
【まるで相手の心をわかっているかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    あなたの欲望を教えて?
質問と共に【視線を向けてウィンク】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ウルフシャ・オーゲツです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ある猟兵は囮として林の中の建物に入り込んだ。
 別の猟兵は、拉致の実行犯を追ってこの建物を突き止めた。
 か細い情報からこの建物を割り出し自力で辿り着いた者もいれば、他の猟兵から情報を得て急いで駆け付けた者もいる。

「あらあらまあまあ……ずいぶんと荒々しいお客様ですこと」
 この建物の主――正確に言うと、主たる領主の妻の座に収まった『変態的破滅招来体』ランジーリは、玄関ホールの先にある広間で猟兵たちと対峙していた。
 広間にはランジーリ一人。拉致されたという一般人男性はもちろん、取り巻きと思わしき男たちもこの場にはいない。
「せっかくわたくしが保護したのに、怪我をされてはたまりませんもの」
 口元に右手を当てくすくすと笑うランジーリ。ただそれだけの動作に、右の上腕二頭筋がムキっと盛り上がる。
「あなたたちの中にも、怪我をさせたくない人がいるのだけれど……」
 ランジーリが猟兵たちに思わせぶりな視線を送った。
「でも、言っても聞いてくれないのでしょう? でも安心して下さいな」
 優しげな言葉とは裏腹に、ファイティングポーズを取るランジーリ。
「たまにはこういうのも悪くありませんわ。大丈夫――男性は、殺しはしませんから」

 力と力でぶつかり合い、わたくしの良さを知っていただきましょう。
 そして、わたくしの保護下でわたくしに愛でられながら、一生を過ごすのです――。
======
 ランジーリ本人は「男性云々」と言っていますが、基本的に「来るもの拒まず」です。
 男性のみならず「見目が良い」「可愛い」「かっこいい」「強い」等、色々な理由をつけて気に入ったといい、女性猟兵であっても自分に(いろんな意味で)屈服させたがります。
 それに対しゾワゾワするもよし、乗ってみるもよし。

 あまり深く考えず、ランジーリとの戦闘をお楽しみください。
======
山田・真尋
おお…なんつー筋肉にゃ…
そんな、そんな凄い体見せ付けられたら…
斬りたくて、斬りたくて疼いてしまうのみゃあぁ!!
錬成カミヤドリで増やした本体、真打・尋兼で斬りかかるにゃ。
とっても斬り応えがあるだろうにゃあ…。
なお、助けるべき相手の事はさっぱり頭に無いにゃ。

落ち着いた頃に、親友のビーやん(ビートルジュース)に気付いて
ビーやん、さっき、アレ口説いてなかったかにゃ!?
と、戦慄でもしとくにゃ。


ビートルジュース・スーパーノヴァ
すげーな、ドスケベマダムじゃん! それでツインテとか少女趣味なとこがギャップエロい。捗る。
でもバイオレンスは趣味じゃねーんだよな。ドツキ愛とかノーセンキュー。とりあえずあっちがヤル気だから喧嘩は買うけどな!

血統覚醒でぶん殴る一択。覚醒したオレ激カッコイイから惚れんなよ! いや、なんなら惚れろ! そんで領地なんて捨ててオレんとこ来いよ! したらルッツたちも家に帰れるし超ラブ&ピース! は? オレは本気だぜ?
あ、でも領主とモメんのやべーな。領主もオレの男になんねーかな??

あ〜〜血統覚醒めちゃくちゃしんどい。後から来る。


筒石・トオル
【WIZ】
攫われたイケメンさん達が居ないのは幸いだね。これで思いっきり戦える。

僕は狙われる対象外だけど、結構狙われそうな人も居るので、UCで動きを止めようと思う。何か色々危険な感じがするし。
その上で熱線銃で『援護射撃』『早業』『2回攻撃』でダメージを与えて行く。
…うん、狙われないと言っても怖いから。僕は近寄らないようにするね。
近接攻撃する人は頑張って。

全てが終わったら、肩ぽむくらいはする。どんまい。




 『『変態的破滅招来体』ランジーリ』が待つ広間に突入した筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)は思った。
(「攫われたイケメンさんたちがいないのは幸いだな」)
 おかげで余計な気を使う必要がない。自分たちも思い切り戦えるというものだ。
 しかし、気がかりが全くないわけではない。この場にはランジーリの好みぴったりの容姿をした猟兵の姿もちらほら見えるからだ。
 例えば、目の前に立っているビートルジュース・スーパーノヴァ(Hyper×Super×Shooting Star・f10965)とかは余裕でランジーリの守備範囲だろう。
「大変だと思うけどがんばっ……」
「すげーな、ドスケベマダムじゃん!」
「え?」
 ビートルジュースの第一声に、トオルが固まる。
「それでツインテとか少女趣味なとこがギャップエロい。捗る」
「捗るって何が?!」
「でもバイオレンスは趣味じゃねーんだよな。ドツキ愛とかノーセンキュー」
「拒否するのそこ? そこだけでいいの?」
「何が?」
 突っ込むトオルに不思議そうにそう返し、ビートルジュースはウィンクひとつ。
「ま、とりあえずあっちがヤル気だから喧嘩は買うけどな!」
「ああ……そ、そう」
 ちょっと引き気味のトオルをよそに、ビートルジュースがランジーリに向かっていく。
 ビートルジュースの瞳の色がオレンジから真紅に変わる。得物など使わない、武器は己の身体のみ。
「あら、あなたは先程の」
 言いかけたランジーリの顔面に、ヴァンパイアへと覚醒したビートルジュースが拳を叩きこむ。
「覚醒したオレ激カッコイイだろ!」
 僅かによろめいたランジーリをビシッと指さし、そう言い放つビートルジュース。
「そうですね。先程までの可愛らしい貴方も素敵でしたが、今の貴方も……」
「惚れんなよ! いや、なんならオレに惚れろ! 領地なんて捨ててオレんとこ来い!」
 ビートルジュースが放つ蹴りをその逞しい腕でガードして、ランジーリが怪しく微笑む。
「あらあら、わたくしは口説かれているのかしら」
「オレは本気だぜ?」
 再びランジーリに殴りかかったビートルジュースの腕を、褐色の手が掴んだ。
 ビートルジュースがその手の主に視線を向ければ……そこにはもう一人の自分がいた。
「なんだ、オレやっぱカッコイイじゃん!」
 当たり前のように言い切るビートルジュース。彼の分身も同意見なのだろう、その顔に不敵な笑みを浮かべ……そして二人同時にお互いに殴りかかる。
「「でもな、オレはオレ一人いれば十分なんだよっ!」」

 壮絶な殴り合いをするビートルジュースとその分身。
「君の友人は大丈夫なのかい?」
 トオルが声をかけたの相手は、山田・真尋(妖刀のヤドリガミ・f10961)。しかし、残念ながら真尋はトオルの言葉を聞いていなかった。何故なら……。
「おお……なんつー筋肉にゃ……」
 ランジーリの鍛え抜かれた筋肉に見惚れていたからである。
「そんな、そんな凄い体見せつけられたら……」
 感極まったと言わんばかりにプルプルと震えだす真尋。
(「えぇ、もしかしてこの人も??」)
 トオルがそう思った瞬間。
「切りたくて、斬りたくて疼いてしまうのみゃあぁ!!」
 真尋が錬成カミヤドリで複製した自身の本体、妖刀『真打・尋兼』を周囲に侍らせランジーリに斬りかかった。
「みゃあああぁ! 斬らせろおぉ!」
「まあ、あなたは女の子なのにわたくしの良さをわかってくださるの?」
 その瞳を爛爛と輝かせ十数本もの刀を操り攻撃を仕掛ける真尋に対し、ランジーリが嬉しそうに笑いかける。
「あなたの気持ち、わかるわ」
 ランジーリは囁くような声と共に、見た目からは想像できない反応速度で繰り出される刀を回避。刀を侍らせた真尋の胴に強烈なボディをお見舞いする。
 その場に崩れ落ちる真尋。それに追い打ちをかけるように、ランジーリは組んだ両手を真尋の頭上へ振り下ろす――。
「光よ我が願いを叶えたまえ。聖なる力、邪なる者を封じる力をここに」
 ランジーリの両手が真尋を捉える直前、トオルのメガネが点滅しランジーリの動きを止めた。
「……」
 ランジーリがトオルに視線を向ける。そして、ふわりと花開くように微笑んだ。
「可愛らしい子ですね。……数年後が楽しみです」
「!!!!」
 トオルの背筋に悪寒が走る。花開くようにといえば聞こえはいいが、はっきり言ってランジーリのそれは毒花の類だった。
「勘弁してくださいっ!!」
 反射的に熱線銃を構えランジーリ向けて発射する。立て続けに放たれた二本の熱線が、ランジーリの脇腹と太腿を掠めていく。
 冗談抜きで勘弁してほしい、というのがトオルの本音だった。ぶっちゃけ怖い。強者に対する恐怖とかではなくもっとこう、人としての何かが「近づいてはいけない」と警告を発している気がする。
 とはいえ、ランジーリの意識がトオルに向いてしまったのも事実。ジリジリと迫るランジーリに熱線銃で応戦しながら、少しずつ後退するトオル。
 さてどうしよう――? トオルが本気で悩み始めた時、二つの影がランジーリの背後からランジーリに躍りかかった。
「よそ見すんなよ!」
「その筋肉、斬らせるにゃぁあ!」
 自らの分身を消滅させたビートルジュースと、殴られた衝撃から復活した真尋である。
 咄嗟に振り返ったランジーリだったが、その反応はほんの少しだけ遅かった。不完全な体制のまま血に覚醒したビートルジュースの荒々しい一撃をまともに受け、ランジーリが床に片膝をつく。
 追い打ちをかけるように真尋が操る妖刀が次々とランジーリに襲い掛かり、その鍛え上げられた筋肉と……ついでにベビードールの布まで切り裂いた。
「いやあああ!」
 仕草や声だけは可愛らしく、悲鳴を上げるランジーリ。それを聞いた瞬間、トオルの顔色が悪くなる。
「斬り甲斐のある筋肉にゃ……」
「他のヤツなんか見んなよ、オレを見ろ! そして惚れろ!!」
 一度全力で筋肉に斬りかかったせいか、少し冷静になった真尋が驚いた顔をしてビートルジュースを見た。
「もしかしてビーやん、アレ口説いてるのかにゃ?!」
「おう! アイツがオレに惚れてオレんとこ来れば、他の連中は家に帰れるし超ラブ&ピース! Win-Winってやつじゃね? あ、でも領主とモメんのはやべーな」
 領主もオレの男になんねーかな?? などと言い出したビートルジュースに戦慄する真尋。親友の真尋でもそうなのだから、初対面のトオルに至ってはなにをかいわんやである。
「……強いのですね、あなた方は」

 腹のあたりが切り裂かれ、一部分だけでかろうじて繋がっているベビードール。
 逞しいその肉体のあちこちに刻まれた、真新しい刀傷。
 容赦のない渾身の殴打による打撲跡と、熱線銃による火傷。
 決して軽くはないダメージを受けながらも、ランジーリは立ち上がった。
「あなた方のように強い方は初めてです……余計に欲しくなりました」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ドロシー・ドロイストラ
戦う前に言っておこう
見事な肉体だランジーリ、それとファス…力で屈服させるやり方もドロシーは否定しない
だから、だ
これ以上好き勝手やりたかったらまずはドロシーを倒すがいい

まずは小細工抜きに【怪力】全乗せのトゥズによる一撃を食らわせる
挨拶みたいなもんだ、むしろこれくらいは止めろよという気持ちでやる
本命はユーベルコード「砕かれる氷像」
ブレスを浴びせて凍りついたランジーリをトゥズの一撃で砕くぞ
攻撃はラース・ヴィーングの【オーラ防御】で止めるが
長くは持たんだろうし隙あらばブレスだ
「ドロシーに屈しろ、ランジーリ」

欲望を教えろと言われてもな
お前を倒して力を得る、ひとまず今はな
お前が欲しいと言い換えてもいい




「戦う前に言っておこう」
 そう言いながらランジーリの前に進み出てきたのはドロシー・ドロイストラ(寝惚けた氷嵐卿・f13158)だった。
「見事な肉体だランジーリ。それとファス……力で屈服させるやり方もドロシーは否定しない」
「貴方もわたくしのことを認めてくださるの?」
 一歩一歩近づいてくるドロシーに、ランジーリがゆっくりと構えを取る。
「だから、だ」
 ドロシーが構えるのは『トゥズ』という名の斧とも剣とも言えそうな金属の塊。
「これ以上好き勝手やりたかったらまずはドロシーを倒すがいい」
 言い切るなり床を蹴り、一気にランジーリとの距離を詰めるドロシー。そして勢いに乗ったままトゥズを振りかぶり、その怪力に任せて思い切りランジーリの胴に叩きこむ。
「甘い、ですね」
 ランジーリの腕がトゥズを止めた。けれど、それはドロシーにとって想定内。というか、これくらい止めてもらわなければ困る。
「なに、今のは挨拶みたいなもんだ――『クラー・クレヌス!』」
 間髪入れず放たれるドロシーの冷凍ブレス。至近でそれを受け凍り付いたランジーリの脳天に、トゥズによる唐竹割りが炸裂する。
「――っ!」
 衝撃に、またしても膝をつくランジーリ。ランジーリを中心に入った床の罅が、その衝撃の強さを物語る。
「ドロシーに屈しろ、ランジーリ」
 告げるドロシーを、巨大な金属の塊が襲った。咄嗟にオーラの翼で身を守ったドロシーが見たのは、トゥズを構えるもう一人の自分の姿。
「ランジーリはドロシーのものだ」
 そう言い切るもう一人の自分に、ドロシーは冷たいブレスを吹きかけ容赦なくトゥズを振り下ろす。
 応戦する間もなく消滅するドロシーの分身。
「ああ、もう倒されてしまいましたか……」
 ランジーリがゆっくりと立ち上がる。その体の表面から、氷の欠片がパラパラと床にこぼれ落ちた。
「貴方の欲望を教えて」
 ランジーリの問いに、ドロシーが答えた。
「ドロシーの分身が言っていただろう? 『お前はドロシーのものだ』と」
 それは真実ドロシーの欲望であるがゆえに、ランジーリの攻撃は発動しなかった。逆に、ドロシーのトゥズがランジーリの脇腹を捉えその体を壁面へと叩きつける。
 手にしたトゥズをランジーリに向け、ドロシーが改めて通告する。
「ドロシーはお前を倒して力を得る。それがドロシーの欲望だ……ひとまず今はな」
「ふ……貴方もわたくしをご所望ですか」
 上半身を壁にもたせ掛けたランジーリが、困ったように微笑んだ。
「生憎とわたくし、誰かのものになるつもりはありませんの」
 満身創痍で、なおもそう嘯くランジーリ。

 わたくしが、わたくしの愛するものを所有するのです。
 その逆など――認めない。

 それは、ランジーリなりの矜持なのだろうか。
 よろめきながらも、ランジーリは再び立ち上がる――。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜雨・カイ
アドリブ連携歓迎

※基本的に真面目に考えてます
女性の服装のような気がしますが…女性?しかし男性のようにみえる筋肉は立派です。日頃の鍛錬の成果でしょうね
器物の影響かあまり筋肉がつかないので少しうらやましいです。どのような鍛錬を行ってるのでしょう…?(大まじめ)

その鍛えられた筋肉で戦いたいというのなら受けます。
でもイケメンさんを捕らえるのは駄目です、解放してもらいます。

まともに組んだら力負けしそうですね、
錬成カミヤドリ発動。まずは1体錬成(囮)。捕まった瞬間にさらに残りの錬成体でまとめて攻撃します(【2回攻撃】使用)


アレクシア・アークライト
 なに?
 ボスが変態すぎて近付きたくない?
 それは外面だけを見ているからだよ。
 逆に考えるんだ。

 と、そんなことをゴーストが囁いた気がしたので、性別を逆転してみる。
 「若い女性を町から攫い、洗脳して愛でる変態領主」
 あ、これ、徹底的に叩きのめさないといけない奴だ。
 今すぐ倒し、囚われた人達を開放しよう。

・基本は遠距離戦。
・[念動力]で敵の手足の動きを阻害し、ひっ転ばしたりしつつ、攻撃。

・最後は物理。八極拳士に二の撃はいらない。
・一足飛びで間合いを詰め、力場を収束して震脚からの肘撃を放つ。[空中戦、グラップル、捨て身の一撃]

「洗脳して崇めさせるだなんて、よっぽど自分に自信がないのね」




(「一体どのような鍛錬を行えばあのような筋肉になるのでしょう……?」)
 猟兵たちと激しい戦いを繰り広げるランジーリを前に、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は割と本気でそんなことを考えていた。
 黒のベビードールという服装やその言動から、このランジーリは女性であるように思える。……少なくとも本人の自認は女性なんだろう、多分。
 しかしながら、ランジーリの体を覆う筋肉は男性と見紛うばかりのそれはそれは立派なもの。
「その筋肉はやはり日頃の鍛錬の成果なのでしょうね。……少しだけ羨ましいです」
 カイも努力はしているが、どうも筋肉がつきにくい体質であるらしく結果は芳しくない。もしや本体の器物の影響か、と思わなくもないが実際のところは不明である。
「貴方もわたくしの庇護を受けなさい。ずっと大切にして差し上げます」
 数多の傷を負いながら、それでもランジーリの言葉には揺るぎがない。
「それはできません」
 ランジーリの誘い文句を、カイはきっぱりと拒否した。
「その鍛えられた筋肉で戦いたいというのなら受けます。……ですが」
 その肉体を羨ましいと思うのもその鍛錬方法に興味があるのも本心だが、だからといって看過できないことがある。
「……それは残念」
 心底残念そうに、ランジーリは呟いた。


(「嫌だなぁ」)
 ランジーリの姿を目にしたアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は思い切り顔を顰めていた。
 筋肉ムキムキの肉体にツインテール、身に纏うのはベビードール一枚きりのボスとか控えめに言って変態じゃないだろうか。
 何故にそんなのと相対せねばならないのか。はっきり言って近づきたくない。
『それは外面だけを見ているからだよ。逆に考えるんだ』
 アレクシアの脳内で何かが囁いた……ような気がした。
(「じゃあ、性別を逆転させてみよう」)
 囁きに従い、想像を巡らせてみるアレクシア。

『村から次々攫われる若い女性たち』
『攫っているのはその一帯を治める男性領主』
『攫われた女性たちは洗脳され、その領主に愛でられるためだけに生かされる』

(「あ、これ、徹底的に叩きのめさないといけない奴だ」)
 よし、今すぐ倒そう。倒して囚われた人たちを解放しよう。
 速攻で考えを改めたアレクシアは、ランジーリに向けて目に見えない力場を放った。
「?!」
 突然襲い掛かった違和感――手を、足を、その動きを阻むかのような『何か』の感覚に、身体のバランスを崩すランジーリ。
「洗脳して崇めさせるだなんて、よっぽど自分に自信がないのね」
「崇めさせてなんていませんわ。ただわたくしの良さを知ってもらっただけですもの」
 アレクシアが投げかけた言葉に悪びれもせず言い返すランジーリ。ランジーリにとってはそれは当たり前のことでしかないのかもしれない。
 ランジーリが強引にアレクシアの力場を振り切り、彼女にその拳の矛先を向ける。
 その時、白い狐面を被った人間サイズのからくり人形がランジーリに襲い掛かった。
 流れるような動作でからくり人形の不意打ちを避け、その頭を掴み地面に叩きつけるランジーリ。しかし、その直後に殺到した全く同じからくり人形の群れには流石に対応しきれなかった。
 ランジーリを取り囲むからくり人形たちが半ば一方的にランジーリに攻撃を仕掛ける。
「イケメンさんを捕らえるのは駄目です、なんとしても解放してもらいます」
 からくり人形を操るカイの言葉に、ランジーリは答えなかった。ほどなく、からくり人形数体がまとめて薙ぎ払われ、ボロボロになったランジーリの姿が露になる。
 満身創痍でカイのからくり人形の複製による集中砲火を受けて、それでもなおランジーリは立っていた。
「それでまだ倒れないって流石の体力ね。――でも」
 アレクシアが床を蹴り、一足飛びにランジーリとの距離を詰める。
「これで、終わり!」
 ランジーリの懐に一気に踏み込みその腕を掴む。踏み込んだ勢いのまま放つのは、全身の力場を収束させた渾身の肘撃。
「ガハッ!!」
 ランジーリの体がくの字に曲がった。ランジーリの受けた衝撃の強さを示すかのようにその背後にある壁に放射状の罅が入る。
 アレクシアがランジーリの腕を掴んだ手を放すと、ランジーリの体はずるずると床に崩れ落ちた。
「あ……」
 床に横たわったままのランジーリの口が、微かに動く。
「あなた、がたは……ほんと、に……強い……のです、ね……」

 手に入れられなくて、本当に残念――。

 声にならない言葉を紡ぎ、ランジーリは消滅した。


 猟兵たちの手によって、攫われた男性たちは全員解放された。
 『保護する』というランジーリの言葉に偽りはなかったらしく、囚われていた男性は全員怪我一つない健康体。
 森に隠れ住んでいた男性たちも含めて彼らは全員村へと戻り、愛する家族や恋人との再会を果たした。
 ある者は手を取り合い、ある者は抱き合い、ある者は涙を流し……再会を喜ぶ村人たち。
 ランジーリに洗脳されその手下となっていた男たちも正気を取り戻し、それぞれがあるべき場所へと帰っていくことを選んだ。

 再会を喜び、自分たちを救ってくれた猟兵に感謝する人々たちの姿を胸に、猟兵たちはこの世界を後にする――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月18日


挿絵イラスト