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アポカリプス・ランページ④〜ウィルス兵器を奪取せよ!

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #アポカリプス・ランページ④


●コミュニティラジオは高らかに宣言する
 ザザザ……ザーザーザー……ザザー……ブウンッ!

 ――やあやあ“猟兵”の諸君。
 ボクの名は『クリッサ・マティア』、ヴォーテックスに協力するマッッッドサイエンティスの1人さ。

 さっそくだがこの戦争、残念ながらキミたちの敗北は決したよ。
 なぜなら! ボクたちはグレートでパーフェクトな“禁断のコンピュータウイルス”を発明したからさ。
 この“ウイルス”があれば、“どんな武器だって狂わせられる”! キミたちの信頼する相棒はもはやナーフガンも同然、指を口に加えながらこの世界の滅びゆく末を眺めているがいいさ!

 フフン、嘘だと思うなら“ここ”まで確かめに来るといいさ。ボクたちは“ここ”で待っている!
 だけどキミたちの攻撃がボクたち通用するのかな?
 キミたちの武器、いつまでも使えると思わない方がいいよ? アハ、アハハハハ!

●虎穴の仔虎
「この方はお間抜けさんなのかしら。このようなラヂヲをわざわざオープンにしていれば、誰だって警戒してかかるに決まっていますわ」
 エリナ・アンブレラ(南蛮かぶれなかさおはけ・f34517)は傍受した通信の再生を終えると、ため息混じりに云う。

「無線通信の発生源は旧ヨセミテ渓谷、高温と乾燥に支配された通称“デス・バレー(死の谷)”、そこにヴォーテックス一族の機械要塞兼コンピュータ研究所が設置されているようですの」
 ここで『クリッサ・マティア』や他の研究員たちが“ウィルス”をコンピューターから拡散しようとしているのだろう。だがそれは“ウィルス”の存在が本当であれば、の話だ。
 「“ウイルス”の存在が本当であれば秘密裏に流し込めばいいですのにそれをしていませんの。そして放送を使って“我々”を挑発している、つまりこれはただの罠と考えるのが妥当ですわ」
 ただでさえ時々刻々と戦況が変わり行き、速攻を求められている“戦争”だ。わざわざ相手にしてやる必要はありませんの、と彼女は断じる。

「ですが、そんな話をするならばわざわざ皆様にお集まりいただきませんの。“ウィルス”の話が本当であれば奪ってやりたい、というのが私の提示する作戦ですわ」
 そう、考えようによっては“禁断のコンピュータウイルス”とやらはこのアポカリプスヘルにおける戦争で、戦況を左右する特異点の一つになるだろう。
「ヴォーテックスが今、どのような技術を有しているか底が知れず油断なりませんの。“ウィルス”も然りですわ。例えばあるかは分かりかねますが“世界に本当の終末を齎すような戦車”とか、どのような兵器が来ても対抗できる切り札は手に入れておきたいですの」
 エリナはパタリと唐傘を閉じる。

「やつらの口車に乗るのは癪ですけど“どんな武器だって狂わせられるウィルス”は我々には脅威ですの。危険な任務かもしれませんがよろしくお願いしますの」


豚ー
 こんにちわ、豚ー(ぶー)と申します。
 オープニングをお読みいただきありがとうございます。

 さて、今回はアポカリプスヘルにおける戦争シナリオとなっております。
 現時点で予兆がないのでぼかしていますが、“⑫スーパー戦車”への対抗手段になりえそうなアイテム、禁断のコンピュータウイルスの奪取が今回の目的です。後に対峙することになるだろう“スーパー戦車”との戦闘を有利に進めるためにも、ここは華麗に奪ってやりましょう。

 このシナリオは「武装の無力化への対策を行う」ことでプレイングボーナスボーナスが得られます。
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第1章 ボス戦 『クリッサ・マティア』

POW   :    戦術パターン・アルファ
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【球体ドローンα 】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    戦術パターン・ベータ
【右眼に埋め込まれた照準システム 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【球体ドローンβが放つ高エネルギー砲】で攻撃する。
WIZ   :    戦術パターン・オメガ
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【と同時に自我を放棄させ、忠誠心と任務 】を与える。
👑11
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菫宮・理緒
あ、エリナさん、やっほー。今回はだいじょうぶだよね? 
わたし的には、違ってもぜんぜんおっけーなのだけど!(わきわき)

と、まぁそれは帰ってきてからのこととして、
たとえ罠だったとしても『禁断のコンピュータウイルス』がほんとにあるなら、
それはなんとしてもわたしがげっとしないとね。
そんなラブリーアイテム、他の人に渡すわけにはいかないよ!

取りに来いっていうなら、いってあげちゃうよ。

どんな障害があっても、わたしのウイルスげっとは阻ませないからね!
邪魔するなら……わたしもウイルスをごちそうしてあげちゃおう。
【ストラクチュアル・イロージョン】で周囲にウイルスを散布。

わたしのウイルスも、機械、使えなくなるよ?


芙蓉・蒔ツ莉
ねこねここねここねここねここねこ
(世界はこねこで出来ている)

こねこねここねこねこねこここねこ
(地にはグングニャール、空にはネコノコミコン)

こねこねこねこねここねこねこねこ
(パパ猫は負けを知らず)

ねここねこねこねここねここねこね
(ママ猫に知らぬ物は無く)

ねこねここねこねここねこねこねこ
(騎士団猫と魔術師隊猫の忠義は堅く)

ねこねこねここねこここねここねこ
(そのネ皇国は栄えていた)

こねこねここねこねここねここねこ
(しかし機械に頼らなかったその国は)

ねここねこねここねここねここねこ
(この仔を残して亡霊と成り果てる)

ねこねここねここねここねここねこ
(この仔猫はこねこで出来ている)

「機械ってにゃんにゃ?」


馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

早業の限界突破結界術で防護壁構築しましてー。

まあ、やりようはあるんですよー。
最近、使ってなかったこの指定UC使いましょうかー。二人で素早く範囲確認しましてー。
ええ、これは悪霊の性ですしねー?
フフ、元は私たちが(風林火山的な意味で)構成する『嵐』ですからねー。

※召喚人格
第四『不動なる者』盾&まとめ役な武士
一人称:わし 質実剛健古風

そういえば、久しく使ってなかったのう。であれば、使うのも悪くはない。
我らの呪詛は武器ではないからな。武器もないときに輝くものの一つである。
しかもその照準、一人にしか合わせられぬのではないか?


夜刀神・鏡介
電子機器の類ならともかく、俺のは唯の刀だぞ。それを封じるってどういう事だと言いたいけれど……それを愚痴っても仕方ない
今は出来る事をやるとしよう

刀がなくとも戦えるように覚えた、無の型【赤手】の構え――なんとか射程圏内まで潜り込む必要があるな
敵の行動を落ち着いて見極めながらダッシュで回避。上手く掻い潜って接近

彼我のサイズ差を考えると足元くらいしか攻撃が届かないかな?
まずは攻撃が通じるところから殴っていこう

流石にロボットだけあって硬いが、通じていない訳じゃない
なら、体勢が崩れるまで何度でも殴るまでだ

一点を集中して狙い、体勢を崩した所で敵を踏んで跳躍
頭など、弱点だと思われる場所に渾身の一撃を叩き込む



●無悪善
 酷く乾燥し灼熱に照らされた砂漠、その真ん中に存在する盆地“デス・バレー”の最奥にヴォーテックスの研究所は在った。

「ハハハ、アハハハハハハ。来たね、やって来たね! “猟兵”諸君!」
 そこにはあの放送の声の主『クリッサ・マティア』が“猟兵”たちを待ち構えていた。仁王立ちしているその背後には、まさに“いかにも”な物体が白布を被せられている。
「キミたちはこれが罠だとわからずに来たのかい? ただのバカたちだったのかな?」
「抜かすなよ。あんたがラジオで宣伝してたんだろ、“禁断のコンピュータウイルス”とやらを。一つ俺たちにくれよ、あるんならな」
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)と“猟兵”たちは、『マティア』の浅薄な挑発に応えながらも警戒を怠っていない。周囲に伏兵の気配はない、がやはりあの布に覆われた物体が気になる。
「ああ、“ウィルス”が欲しいのかい? ああいいよ、くれてやるさ。これがキミの云う“ウィルス”を使用して開発した弾頭! 名付けて“侵蝕プログラム弾”さ!」
 『マティア』がバサリと布を翻すと、そこには巨大な砲身がこちらを睨みつけていた。
「欲しいのならボクから奪っていくがいいさ! だが負けるのはキミたちだ」
 『マティア』の肩の上を浮いていた球体ドローンの一つがエネルギーの充填を始める。
「何もできないまま、“お前たち”はここで死んでおけ!」
 そして右手を振り下ろすと、“猟兵”たちへ向けてビームの乱射をはじめた。

「んー、このままだとじり貧ですねえ」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の人格のうち一人、“疾き者”外邨・義紘は、ビームを結界術で構築した防護壁でやり過ごしつつ呟く。
 光線の一筋一筋は単調で避けるだけならたやすいものだ。しかしビームは連射され続け、“猟兵”を近寄らせまいとしている。完全な膠着状態へと突入していた。
「しかし、なぜ“侵蝕プログラム弾”とやらをまず放たなかったのでしょうかねー」
「大方、近寄ったり武器を構えたタイミングでズドン、と噛ますつもりなんだろ」
 そうすれば確かに大きな隙と油断を誘うことはできる。だが趣味の悪いやり方だ、と同じく防護壁に護られる鏡介は推察する。
「大体俺のは唯の刀だぞ。“どんな武器だって狂わせられる”ってどういう事なんだ? と聞きたいところだが……それを愚痴っても仕方ない。今は出来る事をやるとしよう」
 俺たちは“猟兵”だ。使いたい武装が使えぬ戦場などいつでもありうる話だ。いずれにせよ敵の張った罠にわざわざかかる必要はない。今回は武器を使わないで討伐しよう。
 義紘も同調し、向こうの岩陰に隠れている菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)に呼びかける。
「なにか敵の傾向とか見えませんかねー」
「ちょっとまってね」
 彼女は手に持つタブレットで、敵『クリッサ・マティア』を“ハッキング”していた。
「ビームは『クリッサ・マティア』の右目に連動していて、視線を向けた方向に照射されるみたいだね。『マティア』の死角に入れば安全に攻撃ができるよ。そしてもう一方のドローン、これは『マティア』に合体してロボットに変形するみたいだね」
「まてまて、連動に合体ってアイツ自身もロボットなのか?」
「正確には生身の部分もある、たぶんサイボーグかなにかじゃないかな」
 とっても興味深い敵だよ、と楽しそうに答える。
「でも絡繰の部分があるということはー、菫宮殿の得意分野ではないですかー?」
「うん、そうだねー。五分。いや、三分くれるかな? それだけあれば『クリッサ・マティア』をクラック、してみせるよ」
 自信たっぷりに腕を捲る。人・機が一体になった存在とはいえ、所詮はプログラムで動く“おもちゃ”だ。理緒にとっては難しくないオブジェクトなのだろう。
「では光線を撃つ飛翔体は私が潰しましょうかー」
「なら、俺はその三分を作ってやろう。で、お前さんはどうするんだ?」
 ビームによって立ち上る土煙の向こうで鼻を赤くしながら高笑いをする『マティア』を芙蓉・蒔ツ莉(この銀仔猫は柔らかい・f19635)は、同じく防護壁の内からジッと観察していた。
「にゃにゃあにゃにゃんにゃあ」
 蒔ツ莉ちゃんに任せろ、と云ったのだろう。彼女は振り返ると防護壁の後方から何処かへ行ってしまった。
「なるほど、お前さんはお前さんで考えがあるのか。……よし、まかせよう」
 攻略の方針は決まった。あとはキッカケだけだ。
「隙をついて打って出るぞ、みんな」
 “猟兵”は静かにその機会を窺った。

「んん?」
 自分の不調に『マティア』は気が付いた。どうも先ほどから身体を構成するメカニカルな部分の反応に遅延が見られるし、ちょっとした動作でプログラムがエクセプションを頻繁に吐くようにもなっている。
「ふむ、これはウィルス……だね。一体どこから……」
 自身に不正アクセスする不埒ものを逆探査してやる。発信元は……あれだ、ヤツらが防御している結界のさらに向こう、岩陰で女がタブレットを操作しているのが見えた。
「ああ、キミのそれはマズい。困るね、勝手にボクの身体をイジってもらわれちゃあ」
 『マティア』はつぶやくと理緒の隠れる岩山へ、静かに照準を合わせる。
「あぶにゃあ!」
 蒔ツ莉はその異変を察知していた。理緒のタブレットを奪うと岩山から素早く岩陰から離れる。
「あ、ちょ」
 不意に相棒を横取りされた理緒は猫を追いかけるように体勢を崩す、その刹那――。
 ――ズゴオオオンッ
 間一髪、先ほどまで隠れていた岩はビームによって砕け散った。
「あ、ありがとう。たすかった、かな」
「にゃあにゃ、にゃんにゃみぃにゃあにゃ」
 なあに、礼はいらないよ、と云ったのだろう。蒔ツ莉が肉球で差し出すタブレットを理緒は受け取り、そして『マティア』に宣告する。
「さて、『クリッサ・マティア』。気づいている通り、あなたの身体に【ストラクチュアル・イロージョン】ウィルスをごちそうしてあげたよ」
 ウィルスは『マティア』の機械の身体を侵食し、やがて完全に無力化されてしまうだろう。その時間が理緒の提案した三分だ。
「さぁ! 『タイムリミットまで、そんなにないよ』!」
 三分間のカウントダウンが始まった。

「逃がしたか!」
 『マティア』は逃さまいと、すかさず視線を再び理緒に合わせ……、
「余所見してる暇があるんですかー?」
「させるか!」
 隙をついて防護壁から飛び出た義紘と鏡介が『マティア』を強襲する。
「ちぃっ」
 舌打ちをしながらそれを避ける。
「くそっ、“侵蝕プログラム弾”放……っ?!」
 『マティア』はすかさず秘密兵器を“猟兵”たちに浴びせようとした。だが、彼らの装備を見て愕然とする。挟撃者たちの手には何も、何も武器が握られていないのである。
「まあ、武器が使えなくたってやりようはあるんですよー。それが“猟兵”ってやつですからねー」
「例え刀がなくとも戦えるように体捌きくらい覚えてるさ、無手相手だからと侮るなよ」
 『マティア』はとても苦い顔をした。

「さて。来てもらえますかー、賢好殿」
 義紘は“馬県・義透”の異なる一人の人格、“不動なる者”内県・賢好に呼びかける。
「私たちも『悪霊は悪霊らしく』、呪詛で戦いましょうかー」
「そういえば、かのユーベルコードも久しく使ってなかったのう。であれば、使うのも悪くはない。ああ、我らの呪詛は武器ではないからな。武器もないときに輝くものの一つであるな」
 『マティア』は思わぬタイミングで増えた敵に戦慄いた。
「先ほどからの射撃、右目に連動して照射しているんですってねー」
 義紘は『マティア』の右手側に、
「その照準、一人にしか合わせられぬのではないか?」
 賢好は左手側に回り込む。
「さて、このように挟まれれば、貴殿は如何にするのであろうな」
「ハ……ハハハ! そんなもの、決まっているじゃないか!」
 『マティア』は大きく後方へ飛びのく。二人を自らの視界に捉えるために。だが、
「判断はいいでしょう、でも遅かったですねー」
 それよりも先に二人が『マティア』を視界に捉えているのだ。
「フフ、これは私たち二人が構成する『嵐』です」
 黒雲があたりを支配し、渺々と吹き始める。そしてシャンと稲光が走った。
「秋の草木が吹く風に萎れるが如く、貴殿も木枯れるがよいわ」
 再び空が光り、呪詛の籠った雷が『マティア』を襲う。
「ぐ、がぁっ!」
 『マティア』の右目と、ビームを放っていた球体ドローンははじけ飛んだ。

「くそっ、βがやられた……」
 『マティア』は右目を抑えて一旦岩陰に隠れていた。空中ビーム砲台、球体ドローンβがやられてしまったことで、ビームの嵐で近づかせまいとする戦術はもう使えないだろう。どうあがいても“猟兵”どもとの接近戦は免れないだろう。
「仕方がない、α!」
 もう一方のドローンを呼び出し、自らの身体に刻まれた接続面でドローンと合体を始めた。

「これが菫宮の云っていた“変形ロボット”か……」
 岩陰の上から現れた巨人ロボットに関心する。
「戦闘終盤の巨大化は負けフラグだって知らないのか?」
「キミこそ相手をそうやって指摘すると、負けフラグだと存じてるかな?」
 鏡介の挑発に『マティア』は鉄拳で応える。
「シ……ッ」
 だがこれを危うげなく避ける。
「おのれ、おのれ、ちょこまかと……っ! これならどうだぁ!」
 『マティア』は両手で蚊を潰すかのように挟みこもうとしている。
 両手を使うなら、接近するチャンスだな。
 プレス攻撃をスライディングで回避し、一気にダッシュで足元へ飛び込む。
「ここだ。――無の型【赤手】、はぁぁあああ!」
 ――ズンッ!
 鏡介の一撃が、ロボットの脚のアキレス腱に刺さる。
「ぐうぅっ!」
 軽くよろめく。が、体制を崩すには至らない。
「なめるなよ、“猟兵”ぃ!」
 ロボットはしっかりと荒野を踏み直し、再び鉄拳を放つ。
「さすがに一撃では倒れないか、ならば」
 それを鏡介は跳んで乗ると、一気にロボットの腕を駆けのぼる。
「その体制で、頭に貰うとさすがに崩れるだろう」
 ――ズドンッッ!
「ガ……ハッ?!」
 パンチの為に前傾になった後頭部へ渾身の一撃。ロボットはゆっくりと倒れ始めた。
「なんだ、ロボだからって全然対したことないな」
 転倒に巻き込まれないように鏡介は反対方向に飛び降りた。

「くそっくそっ」
 『マティア』はロボットの下からやっとの思いで這い出てきた。
 既にあれから三分が経過した。身体に埋め込んだ様々なメカは既に役には立たない。いや、まだだ。研究施設に逃げきれれば、まだ“猟兵”どもを駆逐するための兵器はあったはずだ。まだ、ヤツらはボクには気が付いていない。この隙に戻るのだ。
 『マティア』は研究所へ向けて駆けだした。

 ――ねこねここねここねここねここねこ
 (世界はこねこで出来ている)

 だが、ゲートの向こうには一匹の猫、蒔ツ莉が待ち構えていた。
「おい、なあ。キミ、そこで何をしているんだ」

 ――こねこねここねこねこねこここねこ
 (地にはグングニャール、空にはネコノコミコン)

「そこで何をしているんだ! そこを除け!」
 『マティア』は赤くなった鼻を擦りながら叫ぶ。

 ――こねこねこねこねここねこねこねこ
 ――ねここねこねこねここねここねこね
 (パパ猫は負けを知らず)
 (ママ猫に知らぬ物は無く)

 しかし、蒔ツ莉は構わず詠唱を続ける。
 これはまずいと『マティア』は横を大きく回って研究所へ向かおうとする。

 ――ねこねここねこねここねこねこねこ
 ――ねこねこねここねこここねここねこ
 (騎士団猫と魔術師隊猫の忠義は堅く)
 (そのネ皇国は栄えていた)

 だが、満身創痍の身体だ。どれだけ急いで走ろうとしてもウィルスに蝕まれ、ただの重りと成り果てた機械の身体は、残っている生身の身体では引き摺るのがやっとだ。

 ――こねこねここねこねここねここねこ
 ――ねここねこねここねここねここねこ
 (しかし機械に頼らなかったその国は)
 (この仔を残して亡霊と成り果てる)

 ザッと進行する先に蒔ツ莉が前に立ちはだかる。
 たったこれだけで『マティア』は先に進めない。
「ク、クソ猫がああああ!」
 哀れな『マティア』は絶叫した。

 ――ねこねここねここねここねここねこ
 (この仔猫はこねこで出来ている)

 Unlimited Brake Cats。もとい、ユーベルコード【このこねこはねこでありこねこですどうぞよしにゃし】。
 自らの周囲の無機物を猫に変える力。そしてここは荒野だ。
 無尽蔵に、ただ無秩序に転がる礫、礫、礫の存在が仔猫に置換され『クリッサ・マティア』に襲い掛かる。
「く、くそっ! おい、やめろ」
 多勢に無勢となった戦況に『マティア』は焦燥する。いやそうではない、彼にはそれよりももっと重大なことがあり、抵抗が許されないのだ。
「やめ、やめてくれ! ボクは……ボクは“猫アレルギー”なんだぁぁあああ!!!」
 どれだけ高性能な機械であろうと、ファンに猫の毛一本が詰まれば熱暴走を起こし、やがて壊れてしまう。

 かくして『クリッサ・マティア』は、残り数少ない生体部分の“正常動作”によって滅びたのであった。

 かくして『クリッサ・マティア』は、残り少ない生体部分の“正常動作”によって黒く滅んだのだった。
 目の前には、今回の目的である“ウィルス”を搭載した“侵蝕プログラム弾”が一つと云わず丸ごと残されている。このヴォーテックス一族との全面戦争においてどこで使うのか、今のところ皆目見当はつかないがきっとどこかで役に立つであろう。
 ただ問題なのは“丸ごと”残されているという点だ。
「これ、全部持って帰るのか(にゃ)?」
 想定以上の戦利品の量に、“猟兵”たちは困惑ししばし顔を見合わせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月12日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はタリアルド・キャバルステッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト