『猟兵X Legend』
●バトル・ロイヤル
戦場に行く猟兵が選ばれる。猟兵は、3人1組でチームを組んだ。
個性豊かな猟兵キャラは、ある者は近接戦闘に長けており、ある者は索敵能力が高く、またある者は遠距離攻撃が得意だ。
「ゲーム、スタート!」
猟兵たちはそれぞれの飛空艇に乗り、一斉に地上に向けて飛び降りた。戦いの舞台は、キマイラフューチャーの都市がモデルとなっている。
「どこに降りようか」
「近くに別のチームはいないみたいだぜ」
「私は、あっちに降りるわ」
思い思いの場所に着地した猟兵たちは、まず周辺を探索して物資を集めた。
「銃があった!」
「こっちは刀を見つけたわ」
「これはフライパンじゃねーか」
時が経つにつれ、徐々に安全地帯が狭くなっていく。安全地帯の外にいるとHPゲージがどんどん削られて死んでしまう。
「安全地帯に移動しましょう」
移動する彼らは時折別チームを見つけて拾った武器を使って戦った。
「ゲージが溜まっているからユーベルコードを使うよ」
猟兵は、一定時間ごとにゲージが溜まり、ゲージがMAXになると『ユーベルコード』を1つ使うことができる。
「地獄の炎!」
ユーベルコードの発動により、戦場全体に荒ぶる炎の渦が放たれて敵が次々と倒れていく。
「ナイス!」
倒れた敵が武器や回復アイテムを落としている。猟兵たちは素早く物資を補給し、移動しようとした。だが、その時。
「足音!」
「別チームだ! ユーベルコードを使ってくるぞ……!」
どうやら、キルログを見て別の猟兵チームがやってきたようだった。
●グリモアベース
「キマイラフューチャーで、カジュアルなゲームイベントがあるようです」
グリモアベースの窓際でルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)がそう告げた。
「イベント会場に、怪人が出てくるようです。ですから、僕は怪人から人々を守ってくださるよう、お願いをしたいのです」
ルベルが資料を配り、簡単に状況の説明をする。
まず、キマイラフューチャーでの猟兵達は、「怪人をやっつけるめちゃくちゃカッコいいヒーロー」としてキマイラ達に大人気だ。動画をアップすればすぐミリオン、子供に見つかったら無限握手会。あまりに人気のため、猟兵を扱ったゲームもいくつか出ていたりする。例えば、『イエーガーカード』とか。
「ゲームイベントの会場で、ご自分がモデルとなっているキャラクターを選択してゲームを遊んでください。それだけでよいのです」
渡された資料には、ゲームの詳細が記載されている。
タイトルは、『猟兵X Legend』。主人公と同じ視点で操作するスタイルの3Dアクションシューティングゲームだ。
「バトルロイヤル、という形式をご存じでしょうか? 3名以上の個人またはチームが同時に戦い、自分または自分たち以外はすべて敵という状況の中で、失格にならずに最後まで生き残った個人またはチームを勝者と認めるというもの……、と、異世界の辞書には記載がございました」
キマイラフューチャーでつくられたこのゲームは、『猟兵』が主役となっている。プレイヤーは数ある『猟兵』の中から好きな1キャラを選択する。依頼を受ける猟兵は、この時に自分がモデルとなっている猟兵キャラを選ぶのだという。
「オンラインで他のプレイヤーとマッチングしてゲームが始まります。ゲームは3人1組のチームで戦う仕組みとなっております。3人の仲間以外は、全員が敵です。スタートは空から。3人で1つの飛空艇に乗り……」
ルベルは魔導式天球儀のスイッチを入れ、戦場マップを壁に投影した。
「マップは、キマイラフューチャーの都市がモデルとなっているようです。各チームは好きな場所を選んで、飛空艇から飛び降ります」
そして、降りた後は周辺を探索して武器や回復アイテムを調達したり、遭遇した敵チームと戦ったりするのだ。
「通常の武器やアイテム以外にも、一定時間ごとに使用できる『ユーベルコード』をうまく活用すればゲームを有利に進めることができましょう」
猟兵キャラは、モデルとなった猟兵のユーベルコードが使用できる。要するに自分が普段使っているユーベルコードをゲームでも使える、ということだ。
「マップは時間の経過により、安全地帯が狭くなっていきます。安全地帯の外にいるとダメージを継続して受けてしまいますゆえ、常に安全地帯を意識して立ち回るのがよろしいでしょう」
戦いの中で倒れた仲間は、1分以内であれば蘇生することができる。仲間と協力しあって勝利しよう、と、そんなゲームなのだ。
会場にはキマイラフューチャーの人々がゲームプレイに使用するゲーム用PCが多数設置されている。
「ゲームは、遊びさえすればよいのです。うまくプレイする必要も、勝つ必要もございません。適当に動かしてマップを散策してみたり、開始してすぐに倒されたりしても、問題はございません」
「飲み物や食べ物を売っているコーナーもございますから、プレイのお供に好きなものを購入していただいても結構です」
ルベルはそう言うと、会場の屋台スペースを教えた。
remo
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
今回はキマイラフューチャーでの冒険です。シナリオは2章構成となっております。オープニングの通り、ゲームをするのが肝、というエンジョイ系のシナリオです。
一応、2章では怪人も出てきます。
●『猟兵X Legend』につきまして
バトロワ系FPSゲームです。
猟兵たちは現地にあるPC・マウスキーボードにてキャラクターを操作し、仲間とボイスチャットで連携を取りながらゲームをプレイすることになります。
皆さんが使用するのは、自分の猟兵がモデルとなっているキャラです。ルベルで例えれば、ルベル本人がゲームで「ルベル」のキャラを選択してプレイする、ということです。
3人1組のチームで遊ぶゲームですが、ソロでのご参加ももちろん問題ありません。ゲーム内のマッチングシステムにて他の猟兵や現地人と野良チームを組むことになります。
武器やアイテムは、さまざまな世界観に対応していますので「刀」があったり「銃」があったり「アイスクリーム」があったり「ノコギリ」があったり、自由な発想でお楽しみいただけます。もちろん、「こんなところに俺の愛剣が!」と言って普段使いの愛剣を発見してもよいです。
●プレイング受付・リプレイについて
プレイングは、OPが公開された後にすぐ送ってくださって大丈夫です。執筆はのんびりペースを予定しています。
プレイングの集まり具合や内容しだいですが、1人ずつのリプレイをお返しする形式を考えています。
キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
第1章 日常
『FPSゲームで遊ぶ!』
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POW : 脳筋ゴリゴリ、パワフルにプレイする!
SPD : テクニカルなキャラコンを魅せてあげる!
WIZ : 頭を使って高IQな立ち回りをする!
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月凪・ハルマ
相変わらず技術力高いよなぁこの世界
その活かし方がほぼ遊びなのはアレとして
◆SPD
ああ、コレ俺がそのままキャラになってるのか
しかし外から自分を操作するってなんか変な感じ
コレ、ユーベルコードも含めて俺自身の能力まで再現されてるの?
それならいつもやってるように【迷彩】【忍び足】で姿を隠す
そのままマップを移動してアイテム回収
さらに安全地帯の範囲、敵の位置や動きを【情報収集】
味方と情報を共有しつつ、連携して立ち回る
アイテムの中に【投擲】するタイプの飛び道具があると助かるな
手裏剣がベストだけど、投げナイフとかそういうのでも大丈夫
ゲージが溜まったら【魔導機兵連隊】発動
そのまま一気に数の力で押し切っちゃおう
鏡島・嵐
おれらをゲームのキャラにして対戦させる……?
相変わらずキマイラフューチャーの連中って考えることがぶっ飛んでるなあ。
(ゲームを起動して)
ええと……おー、この「あらし」っておれがモデルか。本物のおれよりちょっとカッコいい気ィするけど、まあいいや。
とりあえず、アイテム捜すんだよな。
んー、剣とか銃は仲間に渡す用に取っておいて……あったあった、スリングショット。やっぱこれが一番しっくりくるな。
ゲームキャラとしてはおれと同じサポータータイプか。時々対戦相手と交戦しながらアイテム拾ったり、近くにいる味方をユーベルコードで支援したり。普段通りにやれば大丈夫か。
(何度か対戦。勝ったり負けたりだが勝率はそれなり)
アストラ・テレスコープ
ゲームはあまりやったことないけどキャラが自分なら感覚で行けるよね!たぶん!
降下開始!【視力】には自信あるから敵チームがどこにいるか把握して良さげな感じの位置に着地するよ!
よーし、じゃあアイテムを拾い集めるよー。普段は弓使いだけど、なんかこっちのショットガンの方が使ったことないから楽しそう!
弾も拾って、腰のミニロケットを噴射して【空中浮遊】しつつ高い場所を確保して敵を探すよ!
お!かなり遠いところに敵発見!おりゃーー!!バンバンッ!!
あれ?なんか弾が全然当たらない……え?ショットガンは遠距離向きじゃない?先に言ってよ!
あ、ユーべルコードが溜まったからそっちで倒しまーす!
やっぱり弓矢が一番だね!
●1
「相変わらず技術力高いよなぁこの世界。その活かし方がほぼ遊びなのはアレとして」
月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)がキャラ選択画面を見ながら呟いた。
「ああ、コレ俺がそのままキャラになってるのか。しかし外から自分を操作するってなんか変な感じ――、コレ、ユーベルコードも含めて俺自身の能力まで再現されてるの?」
キャラ性能を把握するようにハルマがカチカチカタカタとキー操作を試している。
「おれらをゲームのキャラにして対戦させる……? 相変わらずキマイラフューチャーの連中って考えることがぶっ飛んでるなあ」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)もゲームを起動させ、キャラ選択画面に進んでいた。
「ええと……おー」
サポータータイプの猟兵アバターがカメラ目線でポーズを決めている。ヒーロー然として頼りがいがありそうだ。
「この「あらし」っておれがモデルか。本物のおれよりちょっとカッコいい気ィするけど、まあいいや」
「ゲームはあまりやったことないけどキャラが自分なら感覚で行けるよね! たぶん!」
アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)がマッチングメニューを選択した。少しの時間を置いて、3人は同じチームになったのだった。
ゲームがスタートし、3人が降下する。
アストラのキャラがはしゃぐように宙で一回転した。一人称視点がぐるぐる動いている。画面の中を薄い飛行軌跡が奔っている。別チームがどんどん降りている。降りている。アストラが心に留める――降りていく。
「他のチーム降りてるけど、降りなくていいんか?」
「ここが良さげな感じだよ!」
3人は降下先を決め、マップのやや北西寄りビル群へと降り立った。
「シグマ・ウェストビル」
スタート地点ビルの名前である。
無人の都市は無機質に3人を受け入れた。ビルの入り口に近づけば、音もなく自動ドアが開く。
「とりあえず、アイテム捜すんだよな」
嵐が問えば、ハルマが声を返した。
「飛び道具があると助かります」
「オーケー、見つけたら報せる」
「よーし、じゃあアイテムを拾い集めるよー」
元気一杯に声をあげたのは、アストラだ。
ビルの1階にキャラを進めながら、嵐が「おー、散らかってんな」と呟く。床にごろごろとアイテムが落ちていた。
「アストラは弓使いだっけ?」
アストラは「大丈夫!」と返事した。
「なんかこっちのショットガンの方が使ったことないから楽しそう!」
その手に装備したのはとても扱いやすそうなオーラを醸し出しているショットガンだ。
そうか。あ、これはハルマが探してたやつか?」
嵐が位置情報を送る。ハルマが駆け付ければ、刃が四方に剥いた特殊な形状の武器がある。
「これは手裏剣……だな?」
ハルマは説明文に目を通し、手裏剣を持っていくことにした。そして、安全地帯を調べた。
「次フェーズの安全地帯は、まだ広いけど北東にちょっと寄ってるかな? 様子を見てきますよ」
少し周辺を探索すると、銃声が聞こえる。
「南から聞こえるかな」
アストラが弾を探しながら「弾がないと攻撃できないんだよね?」と確認している。
「スタートで2チームが中央広場ちかくに降りてたんだよ。だから、ぶつかってるならそこだと思う。あとは、西に1チーム向降りてたかな? 東にも行ってたところがあると思う……」
耳にはハルマからの報告が継続して入ってくる。
「北東に移動しよう」
やがて、3人は移動することにした。
移動した彼らは今、サン・ノースビルという北のビルにいる。
「次の安全地帯も北東に寄る予定……これ、どんどん北東にいくかな」
「どうだろう」
嵐がアイテムボックスを開ける。中には何種類かの武器が入っていた。
「……あったあった、スリングショット。やっぱこれが一番しっくりくるな」
「すこし東にあるラビットセンタービルは無人……、いや、2階に1チーム隠れてますね」
ハルマが足音を立てずに付近を探っている。操作キャラクターは周囲の環境に似た色合いの迷彩スキンだ。
「アイテム雑に落ちてるけど」
ハルマは部屋の中で素早くアイテムを回収した。
「これはアストラさんが探してた弾ですね、持っていきます」
「弾! やった、ありがとう!」
アストラがショットガンの弾を見つけていそいそと装填している。
「1チーム隠れてるビルに別のチームが入っていきますよ」
「じゃあ、戦ってる所を狙おうか」
2人は別チームの後を追いラビットセンタービルに入りかけるが、空中に浮き上がっていたアストラが警告を発する。
「隠れて! かなり遠いところから狙われてるよ!」
「!」
2人が隠れると同時に西から重い発砲音が轟き、弾が虚空を通過した。アストラがお返しとばかりに撃ち返す。
「おりゃーー!! バンバンッ!!」
口でも効果音を言いながらバンバン弾を撃つアストラ! しかし。
「あれ? なんか弾が全然当たらない……」
嵐がどれどれ、と銃を見た。
「あれ、これ近接向きじゃないか?」
「え? ショットガンは遠距離向きじゃない? 先に言ってよ!」
驚愕するアストラ。一方、ハルマは冷静に戦況を視ていた。
「ビルに入ってったチームが音に気づいて外を警戒して――あ、隠れたほうが」
ハルマが注意を促した瞬間、アストラが「撃たれたー!!」早速の悲鳴をあげて室内に避難する。
「一撃で死ななきゃ大丈夫だ!」
嵐がユーベルコードを発動させた。
『~~♪』
戦場に切々とした人魚の歌声が流れた。いつの間にか、戦場に人魚が召喚されている。
ダメージを受けていた味方のHPが持続して回復される!
「おれのユーベルコードだ」
「あ、あのチーム、ビルに隠れてたチームから奇襲受けてる」
ハルマがビルに向けて手裏剣を投げた。
「遠くのチームは詰めてくるんかな?」
嵐がスリングショットを撃って援護する。
「あ、刺さった」
ハルマが報告をしている。
「あ、ユーべルコードが溜まったからそっちで遠くのチーム倒しまーす!」
アストラが仕返しとばかりにユーベルコードを発動させる。
「『何処までも……飛んでけっ!』」
『流鏑流星(メテオリックストライク)』が発動し、華々しく光り激しく燃える流星のような矢弾が遠方の敵を鮮烈に貫いた。
「やっぱり弓矢が一番だね!」
喜ぶアストラの背後で爆発が起きる。
「なんだ?」
「刺さった手裏剣が爆発した」
端的に事実を告げながらハルマがユーベルコードを使用した。『魔導機兵連隊(レジメント・オブ・ゴーレム)』だ。
「『皆、出番だ!』」
ハルマそっくりのボイスがキャラから発せられ、胴体に1と刻印された戦闘用魔導機械式ゴーレムがなんと107体も召喚された。
「もう残りチーム、一気に数の力で押し切っちゃおう!」
――大量のゴーレムたちは敵を見つけしだい襲い掛かり、野良チームをどんどん轢き殺していく!
「よし、このペース……今月中の完結に間に合うか」
ハルマが「旅団メンバーに報告できそうだ」と思った時、戦場に一発の重さを報せる猛き銃声が轟いた。
一撃、必殺。東から飛んできたスナイパーライフルの弾は、ほんの一瞬の斜線を鬼のような速度と精密さで駆け抜けて見事ハルマのキャラに命中した。しかも、頭に。
「あっ!」
一撃でダウンするハルマ! そして、消滅するゴーレム!
「ハ、ハルマー!!」
嵐が助けに向かう。
「しっかりしろ、今蘇生するからな!」
「やりかえすよ! 弓矢の良さを教えてあげるもん!」
アストラがユーベルコードを使おうとして、「あっあと10秒」と気づいた。
――そこへ――、
ダーン! ダーン!
立て続けに轟く狙撃音!
「ああ、全滅……」
チームは全滅したのであった。
「お疲れ様でした」
「GG!」
「なあ、もう1戦しないか?」
嵐が提案して、3人は再びチームで試合を開始した。その後は徐々に連携が取れて、勝率はぐいぐいと上がっていったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
スフィア・フローラ
【ハウンド】
「私たちがレジェンドになってるのは…恥ずかしいですね」
しかもエンジェルとハザードの固有ボイスもあるとか
知られ過ぎてませんか?
私もキャラと同じセリフを喋りながらやりましょうか。
あれ、これ味方さんにとってはミラージュが二人いるみたいに…
「ウィングマンを発見しました。
「一流志向の、最強ピストルですよ」
能力は確か…
キャラ名:エンジェル(本名:スフィア・フローラ)
戦術:ヒールドローン 近くの兵士の体力を回復
パッシブ:自動蘇生 ドローンが蘇生を行う
小柄 被弾しづらいが、被ダメージが5%増える
ULT Hサークル 味方の兵士を自身の近くへ転移させ、
シールドと体力を回復させる。
茅場・榛名
【ハウンド】野良キマイラ可
「……パット勢なんだが、それでやってもいいか?」
実はボク少しやってるんだよねコレ。
ダブハンとか爪痕とか破竹持ちのLv350アカウント持ってる。
ちょっとネタプレイになるけどオープンVCでキャラと同じセリフを喋ろう
もちろん勝ちは狙うけど楽しまないとねえ
「ヴァルキリーを発見。」
「コイツは故郷で二番目の傑作だ。一番は、ボクだ」
確か性能はこんな感じだな
キャラ名:ハザード(本名:ハルナ・サーガスラーフ)
戦術:アドレナリン 体力‐20、6秒間移動速度+50%
パッシブ:不屈の血 ダメージを受けていない間、徐々に体力回復
ULT:捕縛者殺し 弱ホーミング弾6発を装填したリボルバーを装備
●2
「私たちがレジェンドになってるのは……恥ずかしいですね」
スフィア・フローラ(戦う衛生兵・f18744)が画面の中のエンジェルとハザードを見つめている。何を隠そう彼女こそが傭兵部隊『ハウンド』所属、コードネーム『エンジェル』本人。そしてチームメンバー茅場・榛名(白夜の火狐・f12464)はコードネーム『ハザード』本人だ。
「固有ボイスもあるとか知られ過ぎてませんか?」
2人は隣同士の席に座り、スフィアはキーマウで、榛名はPADで必要な設定を終えて試合を開始した。
野良のキマイラがボイスチャットをONにしている。ちいさな女の子の声だ。
「ワア、このバッジつよいひとだよね? これ、20キルしないと取れない。こっちはダブハンの」
隣の座席で榛名がVCをONにした。ハザードが発言する。
「ボクの最期の試合、どうなるか楽しみだ」
「えっ? そのボイスどうやって出してるの?」
女の子が困惑している。スフィアが眼鏡の奥の瞳を和ませた。
「こっちに行こう」
「う、うん」
キャラボイスと同じ声がVCで聞こえると、女の子が不思議そうにしている。
(私もキャラと同じセリフを喋りながらやりましょうか)
「ここでアイテムを探してみますね」
「あれ? これVC?」
物資を漁りながら一瞬だけ隣同士の2人が目を合わせた。互いの目が笑っている。VCをOFFにして榛名がこっそり囁いた。
「ちょっとネタプレイになるけど――もちろん勝ちは狙うけど、楽しまないとねえ」
「敵だ! 撃ってきた! 怖いよう。あたし、ユベコの使い方わかんない! このキャラ初めて使うの!」
女の子が悲鳴をあげている。
「回復します! 私の元へ!」
エンジェルがダウンしかけた女の子を自身の元に呼び全快させている。2人の前に弾むように飛び出してショットガンを撃つのはハザードだ。
「すごい! 全部当たってる!」
敵影に撃ち込まれた弾が8方に微散しながら数字を出している。
「追いましょう」
「エンジェル、そのボイスどうやって出してるの?」
不思議そうにしている女の子に和みながら、スフィアは安全地帯を確認した。無言でハザードがキルログを流している。ホログラムの怪人像が佇む南西エリアを抜けて、見えてきたのは中央交差点を挟んで南のショッピングストリート。
画面の中では、ハザードがショットガンに弾を再装填してアドレナリン全開に跳ねながら瀕死の逃亡者を追撃している。
「ないすぅ~」
女の子がはしゃいでいる。そんな女の子の子守りをするようにエンジェルは近くで物資を漁った。
「ウィングマンを発見しました。一流志向の、最強ピストルですよ」
女の子が「それ、あたしが撃っても当たらない」と呟いている。
ハザードが物資を拾い上げ、北方ビル群の屋上にピンを刺した。
「ヴァルキリーを発見」
ハザードが発動したのはユーベルコード『捕縛者殺し(ウスタナクキラー)』。向けた対象は、空に浮かび上がって西にショットガンを撃っている女性猟兵。
「あのヴァルキリー、なぜショットガンを……」
もちろん、一発も当たっている様子がない。そこへ誘導炸裂弾が命中し、大ダメージ!
「さすがですね」
モニターの前でスフィアが微笑み、すぐに緊迫した声で警告を発した。
「狙われています」
驚異的な反射速度を見せてハザードが飛びのく。秒を待たず、射撃が一瞬前までハザードがいた地点を撃った――ぎりぎりの回避成功!
「っと、別チームか」
「後ろから別チームが来てますね」
エンジェルが車の陰に隠れてヒールドローンで女の子を蘇生している。
「しかも、別チームの戦闘用魔導機械式ゴーレムも多数向かってきますよ」
見れば、北方にいたチームが放ったらしきゴーレムの群れが向かってくるではないか。
「ボクが時間を稼ぐ! 東に走れ!」
ハザードが高機動で横に滑るようにしながら銃声を響かせる。
「当たるんだ、それ」
女の子が驚いている。そして、ぶつぶつと呟いている。
「あたしも役に立たなきゃ。ユベコ使わなきゃ!」
「一緒に、こちらに」
スフィアは女の子に声をかけ、HPゲージに気を配り遮蔽物を利用しながら安全地帯内を駆け抜けた。
「そろそろですね」
ハザードのHPが残り僅かとなったのを見計らい、ダウン寸前でスフィアがユーベルコードの札を切る。
『回復します! ハザード、私の元へ!』
発動直後、瀕死のハザードがスフィアの近くに転移され、シールドと体力が回復していく。
「信じてたよ」
「私はあなたのライフラインですから」
2人は女の子の様子を見た。女の子は、「もう回復アイテムがないよう」と弱気な声である。
「ボクがポーションを落とすよ」
「私からはキャベツを分けますね」
ハザードとエンジェルがアイテムをそれぞれ落とした。女の子は嬉しそうな声を出す。
「ありがとう、ハザード、エンジェル!」
女の子はすっかりボイスに違和感を感じなくなっているようだった。楽しそうに笑い、落ちていたアイテムを拾おうと――、
「頭を出すな!」
ハザードが叫ぶ。直後、戦場に伝説級の銃声が轟いた。東から西へと駆け抜けた弾丸は、別チームの誰かに命中したようだった。
「ゴーレム、消えました」
エンジェルが報告する。
「安全地帯、狭まります。あの乱戦状態のビルの周囲だけになりますね。行きますか?」
「まだだ」
音とキルログを確認してハザードが数を数える。
「3」
「2」
「1」
「狙撃手の弾が切れたよ!」
ハザードが飛び出した。アドレナリンを活かし、高速で駆ければ伝説級スナイパーライフルを手放し、今まさに地面に刺さった伝説剣を引き抜こうとしている猟兵が一人。
「カバー!」
画面に映るのは剣を放して片手を上にあげる動作をし、後ろに退く猟兵。庇うように前に出るダガー持ちの猟兵。
ハザードは一瞬で距離を詰め、アドレナリンムービングを混ぜながら弾を当てる。アシストが力を発揮してエイムが吸い付く。エンジェルが息の合った連携を見せて十字砲火を浴びせている。ダメージの連続!
「ワンダウン!」
「あと1人!」
最後の1人なった猟兵を追いエイムしたその時。
「『僕には関係ないよね?』」
ユーベルコードのボイスと共に猟兵が突っ込んでくる。それまでの流れを一切無視したヤクザキック! 同時に上から降ってきたのは、丸い――、
「携行型爆弾!」
「ハザード!」
着弾と同時に爆発が起きる。キックが命中し、誰もが思った。「同時に入ったダメージがハザードを倒す」――しかし。
「ハザードは、あたしが守るもん!」
女の子の声と共に、バリアがハザードを守るように展開された。
「ずっと、何もできなかったけど。あたしも役に立つもん……!」
2人が優しく生かし続けたおかげで、ずっと何もできなかった女の子が最後の最後でユーベルコードを成功させたのである。
バリアに守られたハザードにはダメージが入らず、ハザードとエンジェルが集中砲火を浴びせると3人はチャンピオンとなったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オルキテ・タンプル
●心情
・実際に重火器を使うんじゃなくてゲームならばボクにでも出来そうだね。
・ま、ハッカーだからな、ボクは。どうしても勝たないといけなくなれば…まあ、それなりの手段に出るとしよう。
●戦闘
・武器はいつものダガーとブラスターで行こうかな。使い慣れたものが一番ってね。基本的にはドローン使いだからなぁ…。蜘蛛型ドローンで情報を集めて…味方に伝えながら動いていく感じになるかな。
・情報収集、分析。味方への指示。強い敵は強い敵にぶつければ良し。戦場でモノを言うのは腕っぷしだけじゃないさ。頭を使う事も大事だってボクは思うね。
・っつーかまあ、よくボクのモデルなんてあったもんだ。滅多に仕事しないんだけどなぁ…。
オブシダン・ソード
誰か!! 誰か剣が落ちているのを見なかったかい!?
僕は銃よりそっちのが好きなんだけど!!
とか言いつつ野良で参加させてもらうね
武器欲しさでうろちょろしちゃうけど許してほしい
だめ?
でもあっちに伝説の剣とかあるかも知れないし…
突出してやられても笑顔のエンジョイ勢
無駄口叩きながらゲームするのはすごい得意
一応(現実で)連携して戦うのも得意だから、援護射撃が必要な場面では真面目に動くよ
あーでも落ちてるアイテムが気になるな…取りに行きたいな…
剣が見つからないなら最後は格闘だよオラーッ(UC)
死んだ時ややることない時、あとは隙を見てタコ焼きとか摘まみたい
エナジードリンクって美味しい
ロースト・チキン
おい、チキンを温めてる最中に呼び出すだなんて、マジで誰だよ!?
マジで、FPSの人数足りないとか、脳筋が欲しいとかフザケタ囁きをオレの脳内に送り込んできた奴、出てこい! ブッ〇すぞ!?
チキンを温めてる最中に呼び出されたローストは、存在しない天の神とルベルに向かって悪態をついてます。
へい! もういいだろ! さっさと始めようぜ!
ヒャッハーーーー!!!!
色々考えてる皆さまとは正反対に作戦など、全く聞いていないローストは、ただの脊髄反射的なノリと無策にも、そこらに落ちていた斧を片手に敵チームに突撃していきます。
まぁまぁ、チキン食っておちつけ、俺達にはチキンがあるんだ!
●3
(実際に重火器を使うんじゃなくてゲームならばボクにでも出来そうだね)
オルキテ・タンプル(もう一人の蘭花・f15791)がゲーミングチェアに身をおさめて眼鏡をかけなおした。目の前のモニターに猟兵キャラが映っている。
(ま、ハッカーだからな、ボクは。どうしても勝たないといけなくなれば……まあ、それなりの手段に出るとしよう)
「っつーかまあ、よくボクのモデルなんてあったもんだ。滅多に仕事しないんだけどなぁ……」
操作しやすいようにキーの割り当てや感度調整をしつつ、オルキテはキャラアバターに驚いていた。
どこからか美味しそうなにおいがする。
(これは、タコ焼きのにおい……)
食欲をそそられつつ、マッチングを待っていると、猟兵が新たに1羽、ポーンと飛んできて適当な座席に放り込まれた。
「おい、チキンを温めてる最中に呼び出すだなんて、マジで誰だよ!?」
ロースト・チキン(チキン野郎・f03598)であった。
そして待つこと数秒、マッチングが完了する。
「あっ」
色々察するオルキテ。
「マジで、FPSの人数足りないとか、脳筋が欲しいとかフザケタ囁きをオレの脳内に送り込んできた奴、出てこい! ブッ〇すぞ!?」
なんという偶然でしょう、味方にニワトリキャラがいるではありませんか。しかもニワトリさん、とっても元気いっぱいである。そんなローストボイスを心地よいBGMに彼らのお空の旅が始まったのでした。
「さて、ジャンプマスターは僕だね。あそこに行こう」
オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が北東に目印をつけた。
「ヒャッハーーーー
!!!!」
オレは行くぜオレは行くぜ――、そんな気迫を伝えるローストの雄たけびと共に、3人は戦いの舞台へと降り立った。
サン・イーストビルという看板に書かれたビル。チームメンバーは手分けして物資を漁り始めた。
「支給ボックスはこれか。沢山入ってるけど、全部は持っていけないな」
オルキテが1つ1つアイテムの説明に目を通し、必要なものを厳選している。
「敵はどこだ!」
ローストが斧を構えて走り回る。
「近くに敵はいないよ。あ、肉食べる?」
「鶏肉じゃねぇか! ポチッ、もぐもぐ」
「それは回復アイテムだからHPが減った時に使うんだ」
平和な初動である。
「あ、『電剣・バルボフィラム』があったよ。ボクが使うけど」
物資を漁っていたオルキテが報告をする。『電剣・バルボフィラム』は、雷で出来たオルキテ用のダガーなのだ。
「あとは『シンビデューム』が見つかればいいかな。使い慣れたものが一番ってね。見かけたら教えてほしい」
一方、オブシダンは高速で漁りながら走り回りながら、自分が使わない物資を仲間の傍にばらまいている。
「誰か!! 誰か剣が落ちているのを見なかったかい!? 僕は銃よりそっちのが好きなんだけど!!」
「剣が必要だ!」
「剣が必要だ!」
見れば、オブシダンがキャラボイスとボイスチャットの両方を使って猛烈アピールしながら剣捜索の旅に出ようとしていた。
「こういうゲームは初めてだけど、味方が離れすぎると危ないんじゃないかな?」
オルキテが尋ねると、オブシダンがなんとも愛嬌に溢れる声でおねだりする。
「武器が呼んでる気がするんだ。許してほしい。だめ?」
「うーん、安全地帯になる予定なのは反対側みたいだよ?」
「でもあっちに伝説の剣とかあるかも知れないし……」
オルキテは画面の前で頷いた。そして、ふと会場の前のほうにチームメンバーと同じ格好の猟兵が座ってプレイしていることに気づいた。タコ焼きを時折つまみながら遠目にも実に楽しそうにプレイしている。
「わかったよ」
(この人は、エンジョイ勢だ)
オルキテは画面の前で伸びをした。そして、微笑んだ。
「楽しもう」
「うんうん、“good luck, have fun”」
(そしてローストさんは……あっ)
オルキテはローストがいそいそと席を立ち、どこかに行くのを見てしまった。
(ま、まさか本当にチキンを温めに)
AFK(離席)中のローストの隣でオルキテがマップとキルログを見ながら報告をする。
「ボクのユーベルコードがあと30秒で使用可能になるよ」
「了解だよ」
オルキテの報告を聞きながら、オブシダンは安全地帯を予想していた。
「たぶん、少し西に落ち着くんじゃないかな」
言いながらキャラは東で漁っている。
「3、2、1、ユベコ発動するよ、『さあて、悪戯の時間だよ! 行きなよ、電霊共!!』」
ゲーム内のオルキテキャラがボイスを発している。声はオルキテ本人の声にとてもよく似ていた。蜘蛛型ドローンが何体も出現し、周辺の探索へと散る。このドローン、ユーベルコードなだけあってただのドローンではない。ネットワークを自在に移動する電霊であり、敵プレイヤー視点では極めて発見が困難というメリットがある。
ドローンの視界が画面に映る。次々と切り替えながら、オルキテは味方と情報を共有した。
「南西、怪人ホログラム像地点から中央に移動する1チーム。中央南ショッピングストリートで2チームが交戦中、北西、シグマウェストビルに1チーム。その東にあるサイ・ノースビルに1チーム、さらに東ラビットセンタービル内に1チーム、外1チーム……」
(戦場でモノを言うのは腕っぷしだけじゃないさ)
オルキテは考えた。楽しみつつ、勝ってみせようじゃないか、と。
「ボクはこのゲームが初めてだけど、チーム同士が戦っているところを漁夫ったり、最終安全地帯内になりそうな地帯で戦いやすい場所に隠れたり罠を仕掛けたりしてみたらどうかな」
その瞳に、ローストが座席に戻ってきたのが見えた。温めてきたのだろうか、チキンの皿を持っている。皿を置き、ヘッドセットをつけてマウスを握ったローストは開口一番。
「こっちに行こうぜ! ヒャッハー!」
勇ましく吠えて、駆けだした!
「ああ、ここなら出ると思ったのに銃しか出なかった。合流するよ」
人気のない辺境で地下に潜り保管庫から強物資を獲得していたオブシダンが残念そうに言いながらローストが向かう地点へと走る。
「これはカバーした方がいいよね」
その動きを見てオルキテも前線へと走っていく。
「敵だ! 敵を見つけたぜ!」
漢ロースト、味方を待たない! オレこそが猟兵界のリロイ・ジェンキンスだと言わんばかりに斧を構え、突撃突撃!
「ROOOAAASTTT CHICCCKKEEEEEEEN!!」
折しも、突撃先は一番の激戦区。別チームが召喚した戦闘用魔導機械式ゴーレムがなんと107体ひしめいている上に複数チームが四方八方入り乱れての乱闘中だ。
「すごい、どこ見ても敵しかいない」
オルキテが呆然としながら突っ込むローストを見ている。
「よく突っ込むね! そこに!」
いつの間にかオブシダンが倒れていた。オルキテはリアルのオブシダンが笑いながらタコ焼きに手を伸ばすのを見ながら、ゲーム内のオブシダンを蘇生した。
一方、リアルのローストはチキンを頬張りながら突撃して暴れている。
「オレのユベコ! 『我が朋友の鶏肉に一片の悔いなぁーーーーーしぃ!!』」
なんとこのユベコ、リアルに食べたチキンの量と質がゲーム内の戦闘力にも影響を及ぼしている……!
「ヒャッハーーーーーーーーー!!!」
「オルキテ、戦闘用魔導機械式ゴーレムの召喚者はわかるかな?」
オブシダンが移動しながら金色に光るスナイパーライフルを持っている。これは伝説のスナイパーライフルだ、素人目にもわかる仰々しさ、弾数は4発!
「迷彩でかなりわかりにくいけど、あの位置にいるね」
オルキテがゴーレム召喚者とその仲間に目印をつけた。
「いい目印だね。当てやすい」
「それと、回復ユーベルコードの使い手が1人、弓のユーベルコードの使い手が1人。前者は使用可能状態、後者は使えないよ」
「ぎゃーーーーーーーー!」
ローストが使命を果たし、散っている。狙撃音が高らかに鳴ったのは同時だった。
「ヘッドショットだ。やったよ」
伝説のライフルを手にオブシダンが連続で召喚者の仲間を撃ちぬいている。
「実は僕もタコ焼きを食べると命中精度が上がるのかもしれないね。あーでも落ちてるアイテムが気になるな……取りに行きたいな……」
「ローストさんも蘇生するよ……」
半眼になるオルキテ。
実は、1発は外してもう弾もない。そう言ってオブシダンは銃を捨てて――1本の剣を見つけて目を輝かせた。
「あの地面に刺さっている剣!!」
ついに見つけた! と大喜びで剣を引き抜こうとした時、恐ろしく高速で新手の猟兵が現れた。
「!!」
「カバー!」
素早くグレネードを真上に投げ、オブシダンが退く。蘇生に行こうとしていたオルキテが慌てて駆け寄り、前に出た。
「あっ!!」
(消えた!?)
恐ろしい速度で視界から消える敵猟兵。しかも、仲間が別方向から息ぴったりに銃弾を浴びせてくる! オルキテはあっという間にダウンしてしまった。
「最後は格闘だよオラーッ」
リアルのオブシダンが楽しそうに笑いながら自分のキャラを突っ込ませた。
「『僕には関係ないよね?』」
それまでの流れを一切無視したヤクザキック! 同時に、先ほど投げたグレネードが落下して爆発する! 誰もが「同時に炸裂したダメージで主力キャラを落としきった」と思ったその時。
「バリア!?」
なんと、敵チームの3人目がバリアを張ってダメージをゼロに抑えていた。
「あーっ」
連携の取れた敵2人が集中砲火を浴びせる。オブシダンが沈み、チームは全滅してしまったのだった。
「エナジードリンクって美味しい」
「チキンが足りなかったな」
挨拶をしながらエナジードリンクを味わうオブシダンとローストを見て、オルキテは「ボクも何か食べるかな……」と呟くのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『カゲキマイラーズ』
|
POW : 狼少年「今日も過激なチャレンジを配信するぜ!
自身の【スマホ画面】が輝く間、【迷惑行為や過激な行為による攻撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : 眼鏡狐「この僕を論破できると思っているのかい?
対象への質問と共に、【自身のスマホ】から【相手が負けを認めるまで消えない炎の怪物】を召喚する。満足な答えを得るまで、相手が負けを認めるまで消えない炎の怪物は対象を【根も葉もない誹謗中傷や魂を焼く炎】で攻撃する。
WIZ : パンサー娘「今から私のイケない姿を配信するね❤
【自分のイケない姿を記録した動画】を披露した指定の全対象に【この動画配信者の配下になりたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
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●『カゲキマイラーズ』が現れた!
『怪人フォール2をすくえ!』
「さて、もう1ゲーム……あれ?」
思い思いにゲームを楽しんでいた猟兵たちが、異変に気付く。ゲームのスタート画面にあやしげな告知文が出ていたのだ。
「マッチングメニューがない」
「ハッキングされてるぞ!」
イベント会場にいた他のプレイヤーたちもざわざわとしている。なんと、突然ゲームがハッキングされてしまったのだ。
マイクか何かを使っているのだろうか、会場中に苛立ちを露わにした少年の声が響く。
「はー、さっきの試合はないわ。何だよあのゴーレムの数? 腹いせにゲームハッキングしてイベント潰し配信するぜ!」
会場の電気が落とされ、真っ暗になる。そして、暗闇を燃やすような存在感を放つ炎の怪物が現れた。
「キャー! 怪人よー!」
一般客から悲鳴があがった。
「ち、ちがうもん。ハザードもエンジェルも「トロール」なんて言わないもん! 3人で勝ったんだもん!」
スフィアと榛名には聞き覚えのある女の子の苦悶の声が聞こえる。
真っ暗な会場に響き渡る怪人の拡張音声――「僕は負けない。なぜなら、相手が負けを認めるまで怪物が暴れるからさ」
最初に喋った怪人とは別の怪人だ。猟兵たちはそう思った。
そして、もう1人。
「今から私のイケない姿を配信するね❤ 配下になりたい子は窓際にいらっしゃい」
カワボが響いた。女の怪人もいるようだ。一体何が配信されてしまうのか。えっちっちなアレではないのか。健全でイケるのか。イケないとは健全でイケないという意味なのか? その場合、「健全なのがいけない」なのか、それとも「健全ではいけない」なのか――様々な憶測と心配を背景に、良い子の2章が始まるのである!
💠2章のプレイングにつきまして
1章へのご参加ありがとうございました。
2章は、本日8月21日8時31分から受付開始し、失効する前にプレイングを執筆していき、成功度を達成した時点でプレイング受付終了となります。
当たり前ですが「1章に参加していたから2章に必ず参加しないといけない」ということはありませんので、ご安心ください。
それでは、よろしくお願いします!
矢来・夕立
は〜。ひとがログインしようとした時に。このキッズがよ。
しかも怪人フォール過激派じゃなくてフツーにりょぺ(猟兵Xの略)で遊んでるクセになんなんですかコイツらは。頭上に怪人フォールスタンバイしてやろうか。
とはいえリアルですからスタンバイせず滅ぼす程度で勘弁してやります。
【紙技・影分身】。もう一人送り込んだオレもイケメンですね。
論破?知りませんよ。大体眼鏡キャラで被ってるんですよ。そっちが消えろ。
紙に向かって話しかけてるスキに《闇に紛れて》殴ります。
すべての戦いにおいて言葉など無意味。武力こそ正義。つまり破滅の雨で苦痛を感じる間もないわけです。
え?ランクはずっと銅ですけど
●矢来・夕立(影・f14904)の場合
広々とした世界を飛翔する。青空に煌めく軌跡を残して。
左右上下に人がいる。
重力に導かれ、降り立つのだ。己が知恵と腕っぷしで勝ちあがるのだ、仲間と共にいざ戦場へ――、
「きゃー!」
「えーんえーん」
「たすけてー!!」
すすり泣く声。どなる声。わめく声。叫ぶ声。悲鳴。
伊達眼鏡をぴっかぴかに磨いていざゲーム! と画面を見つめていた夕立は息を吸い、目を閉じた。呼気が震える。嘆息。
「は~。ひとがログインしようとした時に。このキッズがよ」
「しかも怪人フォール過激派じゃなくてフツーにりょぺ(猟兵Xの略)で遊んでるクセになんなんですかコイツらは。頭上に怪人フォールスタンバイしてやろうか。とはいえリアルですからスタンバイせず滅ぼす程度で勘弁してやりますよ」
ここまでを一呼吸で吐き捨てて、夕立は目を開けた。
見通す闇の中に、数メートル先を移動するもう一人の夕立がいる。形代を使った分身の術である。分身は眼鏡狐に無防備に近寄り、イケメンフェイスを見せつけるようにガン飛ばしをした。敵のスマホ画面が帯びる光に伊達眼鏡の縁を光らせてやれば、やる気が伝わったのだろう、眼鏡狐もキリキリと目じりを吊り上げた。
「この僕を論破できると思っているのかい?」
眼鏡狐が眼鏡の奥の瞳に敵意を見せていた。よく視ると目が赤い。
「論破? 知りませんよ。大体眼鏡キャラで被ってるんですよ。そっちが消えろ」
分身のクールな声を聴き、夕立は深く頷いた。オレの声と顔がいい――心の底からそう思いながら。
「上位互換なんですよ」
「狐耳があるし毛色も違うじゃないか」
「そこは問題にならないんですよ」
「そ、そうかい?」
これは議論なのだろうか。やりとりに誰もが思った、そんな時。
「あのー、キャラ被り論争中みたいっすけど、すみません」
どこからか少年の声がして、手裏剣が飛んでくる。夕立も忍者を名乗る身。その手裏剣がユーベルコードによるもので、どういった効果なのかを瞬時に悟った。さくっと敵に刺さるのを見て、分身は叫んだ。
「刺さった! 爆発しますよ!」
「ば、爆発するぅ! 僕から離れてくれぇ!」
反射的に身構える眼鏡狐、そして仲間から離れる狼少年!
「ウソですよ」
闇が囁くように、本体が眼鏡狐の背後から奇襲をかける。
ボコッ。
暗闇の中、誰にでもわかる「あっ、殴ったな」という音。ガツンともう、ストレートに殴ったとしか言いようがないほどシンプルなパンチを繰り出し、さらに左を振りかざしてもう一発。よく見ると先程の手裏剣忍者猟兵も一緒になってボコボコしている。打ち合わせもしていないのに、夕立がボコッと殴って右に眼鏡狐が倒れ掛かれば反対側からボコっと打たれて夕立のほうに戻ってくるというサンドバッグ状態になっている。ここに2人は「2021夏の忍者連携賞」を受賞したのであった。オンリーツーだぞ。
「そもそも、なんなんですか」
ボロボロの眼鏡狐に向かって夕立がクレームをつけている。
「なんなんですかとはなんだい……?」
肩で息をしながらちょっぴり涙目の眼鏡狐。
「いえ、つまりですよ。あなたたちが遊んでたじゃないですか」
「そう、そうだね。確かにさっき遊んでいたね」
夕立は物わかりの悪い子供に言い含めるように眼鏡狐を見下ろした。
「そうでしょう。そうでしょう。オレはログインできなかったんですよ。せっかくこのイベントに来たのに、プレイしようと思ったのに」
「ちょっと、そんなこと言われても、そうだな。なあ。なんだ」
「なんですか。もう眼鏡没収ですよ」
いつの間にかその手には敵の眼鏡が握られている。なんということだ、眼鏡狐がただの狐怪人になってしまった! 眼鏡狐改め狐怪人は、しょんぼりしながら言い訳をした。
「ちょうど今、ランクがアツイ時期だというのはわかっていたんだ。ただ、そういうときにハッキングすることで、怪人フォール2の惨状を知らない人たちに、怪人フォール2のことを知ってもらえるという効果があるわけだよ」
「ほう?」
「なんだ、その。僕も怪人フォールも好きだし、りょぺも遊ぶんだよ。わかってくれるだろう。
お前もりょぺが好きなんだろう。なんか以下にも上級者って顔してるし、ランクも高いんだろうな」
「え? ランクはずっと銅ですけど」
「え?」
「え」
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
うーん、やっとゲームに慣れてきたトコなのに、乱入者かぁ。折角皆イベント楽しんでるのに、潰すってのは穏やかじゃねえよな。
それに……ゲームで勝敗決めるんならまだしも、実際に戦うってのはおっかねえ。
でも、やるしかないか。
とりあえず、皆を助けねえとな。普通のキマイラも居るし、そっちもなんとかしねーと。
《笛吹き男の凱歌》で仲間を強化しながら、怖気づいてる一般客を〈鼓舞〉して励ましたり、《凱歌》の効果を〈楽器演奏〉と〈歌唱〉で増幅したり。
敵がやろうとしてる「良くない配信」からある程度目を逸らす役には立つかもしんねーし。
……ところで「イケない」って何がいけねえんだろ? なんかイマイチピンと来ねーんだけど。
●鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)の場合
「うーん、やっとゲームに慣れてきたトコなのに、乱入者かぁ」
嵐は残念そうに呟いた。
「折角皆イベント楽しんでるのに、潰すってのは穏やかじゃねえよな」
琥珀色の瞳が、その人柄の良さを滲ませている。
(それに……ゲームで勝敗決めるんならまだしも、実際に戦うってのはおっかねえ)
戦いはいつでも怖い。
(さっき遊んでたゲームも、やっぱ現実の戦いに通じるものがあるよな)
あんなふうに一瞬で生命は終わりを迎えてしまうのだ。
それこそ熟練の猟兵であっても、一瞬の判断ミスや予期せぬ事故は起こりうる。
「でも、やるしかないか」
――だって、世界は待ってくれねえもん。迷ってる間にも、どんどん時間が過ぎちまう。
嵐は震える手をぐっと握った。小指の感覚が若干ぎこちない。
「やるぞ」
声に出すのは、自分を鼓舞するのにいいんだ。嵐はぐっと歯を食いしばって集中するよう自分に言い聞かせた。握った手のひらはじわりと汗ばんでいたけれど、体は言うことを聞いてくれる。
「できる!」
勇気を振り絞るようにして、嵐は立ち上がった。
「とりあえず皆を助けねえとな。普通のキマイラも居るし、そっちもなんとかしねーと」
――おれには、戦うちからがあるんだ。
嵐は脳裏にゲームキャラの「あらし」を思い出した。あらしは、格好良かった。
「来てくれ!」
呼べば、傍らに道化師が現れる。
「魔笛の導き、鼠の行軍、それは常闇への巡礼なり」
道化師が笛を吹く。
(ああ、いつもの音だ)
周囲がよく視える。暗闇は、怖くなかった。
祖母が手を引いてくれた夜のしずけさ、虫の囀りと穏やかな占星の語りをBGMに見上げた夜空。
夜は親しいものだ。
嵐は戦いこそ恐れるものの闇を恐れることはなく、闇に阻害されることがない。これは、大きなアドバンテージだった。
「だいじょうぶか、今助ける」
「ああ……ああ……」
蹲る老人を助け起こす嵐の震えが少し収まっていた。嵐は老人に寄り添うように膝をつき、優しく背を支えた。
「杖が落ちてる。これ、ばあちゃんのかな」
「ああ、ありがとう……ありがとう」
骨ばって皺だらけの手がひんやりと冷え、震えている。杖を握る手に上から包み込むよう、温めるように手を重ねて嵐は安全な出口へと老人を誘導した。
「みんな、近くにいる人達。一緒に行こう。こっちだ」
震えてまともに歩けない人。
声を出そうにも、息めいた掠れ声しか出ない人。
腰が抜けて動けない人。
かろうじて動ける人が手を貸しあって出口へと皆で向かっていく。
――そうだよな。
――おれも怖いけど、本当に戦ったことがない一般の人たちもものすごく怖いよな。
自分が怖いからこそ、人の気持ちに寄り添える。自分が痛みを知るから人の痛みがわかる。
猟兵キャラあらしは見た目が格好良いサポートキャラだ。だが、実はそのキャラ説明には彼の優しさと勇気こそが強調されている。
「あらし、だ」
誰かが言った。
「本物のあらしだ」
嵐はゲームキャラの「あらし」を意識して背筋を伸ばした。
(安心させることができれば)
猟兵は、心の支えになれるのだ。
「みんな、もう大丈夫だ」
理想の自分を思い描いて、嵐はにっこりと笑ってみせたのだった。
~♪
笛の音が高く澄んでいる。道化師だ。
「ぜんぜん、怖くねえよ」
嵐は目を閉じて歌詞を諳んじる。
「おれの仲間はつええから、おれもちゃんと、頑張るからさ……♪」
召喚主の歌を喜ぶように道化師が体を揺らし、いっそう楽しそうに音を刻む。
よく通る歌声は不思議な柔らかさと温かさを湛えて人の心に染みていく。他の誰の歌声とも違う、独特な歌声。心が籠った歌だった。
「あんた、ここまで支えてくれてありがとう。もうへいきだよ」
一人、また一人。
「おれも、自分で歩けるよ」
人々が落ち着きを取り戻し、避難していく。
「……ところで「イケない」って何がいけねえんだろ? なんかイマイチピンと来ねーんだけど」
その点だけは、謎である。
大成功
🔵🔵🔵
アストラ・テレスコープ
このゲーム楽しー!もっとやりたいなー!
あれ?別の敵?いつの間にかアップデート入った?何かのイベントかな?
まあいいや!どんどんやっちゃうよー!
武器を2つ持てることも知ったし、弓とショットガンを拾って戦ってくよ!
矢は銃声もしなくて気づかれにくいからちょっと離れた敵にぱしゅぱしゅっと!
っと、そろそろ溜まる時間が長い方のユーベルコードも溜まった!
一緒に来たい人いたら私にしがみついて!いなくても一人でいくけどね!
こちらアストラ!発射準備完了!飛ぶよ!
当機には着陸の機能はありません!あと知性もありません!そのまま敵に突っ込みまーす!!
●アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)の場合
「このゲーム楽しー! もっとやりたいなー!」
明るい画面を夢中で見つめながら、アストラが1ゲームを終えていそいそと次試合のマッチングを待っている。短時間でフレンドまでできていた。チャットが届いている。
「チャット:俺がキャリーしてあげるよ!」
「チャット:声が可愛いですね」
「チャット:教えてあげようか?」
そんなチャットには気づかず、マッチングを完了したアストラは元気一杯に野良チームと挨拶を交わした。
「あっ、マッチした。よろしくー!」
何度目かの空の旅。胸を弾ませ、カメラを動かして――
「……あれ?」
アストラが目を瞬かせる。
「いつの間にかアップデート入った? あれ? 別の敵?」
キャラピック画面にはいなかった新キャラがいる。飛行中に武器も持ち、降下しながら炎の怪物を使って別チームキルしている。
現実世界のイベント会場が暗くなり、かと思えば赤い光が遠くを照らしていたり、楽しそうなBGMや歌が流れたり。
「何かのイベントかな? まあいいや、どんどんやっちゃうよ」
アストラは暗闇と光の演出を楽しみながらキャラを操作した。
「私は弓とショットガンでいくよ! 弾も持った!」
「OK!」
現実世界にも実際に前例があることだが、ハッキングされたときにマッチングを完了して既にプレー中となっていたプレイヤーが、ハッキングがされていることに気づかずそのまま試合を楽しんでしまおうという現象がある。なんと、タイミングよく試合開始直後だったアストラは、事件発生中もゲームから締め出されることなく試合を継続できたのだ。
「遮幸神ジャブ激ロー!」
アストラが別チームの頭に弓矢を当てている。
「さっき飛行中に暴れてたチームだけど、あれはチーターだと思う」
味方がジャブを仕留めようと距離を詰め、銃ではなく刀を使ってキルを取った。
「ジャブの仲間が来る前に移動しよう」
「今SNS見たらトレンドになってる!」
もう1人の味方が驚いた様子で叫んだ。
「俺たち以外、みんなゲームできなくなってるよ!」
「あの暴れてるチーターが犯人の怪人ぽい。フレンドが別チームで同じ試合にいるんだ」
アストラはキルログを見た。マップの南西、ホログラム怪人像付近で大暴れしているようだ。
「よくわからないけど、あの怪人チーム倒しにいこう!」
ちょうど溜まる時間が長い方のユーベルコードも溜まったよ、と言ってアストラが『ロケットブレットハートビート』を発動させる。
「『3・2・1……発射!!』――行こ!」
アストラの4つのミニロケットが全長1mの大きさに変形し、打ちあがろうとする。
「待って!」
「よ、よし、行くぞ!」
仲間たちが慌ててしがみつく。
「こちらアストラ! 発射準備完了! 飛ぶよ!」
大きな音を立てて、アストラチームが飛び上がる。
「当機には着陸の機能はありません! あと知性もありません!」
え、と仲間たちが驚く中。
「そのまま敵に突っ込みまーす!!」
ホログラム像上空まで飛んだアストラたちは急降下!
「俺は降りる!」
1人が途中でジャンプして、3脚の巨大飛空ドローンの上に降りることに成功した。
「地上、フレの味方1チーム! 巻き添えしても怒らないけどできれば先に協力してチーターをやろうって言ってる!」
もう1人がアストラにしがみついたままで報せる。
「とっつげきーー!!」
2人は勢いよく敵に突っ込んだ。
「「「!?」」」
衝撃で黒髪アバターの1人がダウン! 大ダメージを受けて味方チームに追撃されているのが1人、そしてもう1人はよく見るとビルの中で――、
「AFK?」
魂が抜けている。
アストラはさくっと矢を突き刺して、無音のままにAFK中の敵を暗殺したのであった。
「チーター排除!」
「いえーーーーーぃ!!」
アストラチームとフレンドチームがチーターのデスボックスの周りでぴょんぴょんジャンプし、エモートを交わして互いの健闘をたたえ合う。
「じゃ、チャンピオンを決めようか? 次に安全地帯が狭くなった時スタートにしよう」
「いいね」
そして、2チームは距離を取り、ゲームを再開するのであった。
「3」
「2」
「1」
安全地帯が狭まる。
「GO!」
――決着の時だ。
大成功
🔵🔵🔵
月凪・ハルマ
いや……文句があるならソレ再現したゲーム関係者に
言ってくんない?
◆SPD
―なんて、そんな理屈が通じる訳もないか
そもそも気に入らないってだけで荒らしにくるとか言語道断
相手が負けを認めるまで消えない炎の怪物ねぇ
それは厄介だ。だから無視させてもらおう
言いつつ【迷彩】で眼鏡狐、及び炎の怪物の視界から姿を消す
その後は【忍び足】で【目立たない】様に周囲を移動
怪物が周囲に被害を及ぼしそうな場合にのみ
【武器改造】【属性攻撃】で水の力を付与した手裏剣を
投擲して妨害
そして隙を見て眼鏡狐に【潜刃・禍ッ牙】
当たれば怪物はさようなら
あとは残った眼鏡狐に【早業】で接近
魔導蒸気式旋棍の連打でフルボッコだ
※アドリブ・連携歓迎
オブシダン・ソード
ちょっと何てことしてくれるの
うかうか追加の焼きそばも食べてられないじゃない
とりあえず僕はめちゃめちゃ屁理屈こねてきそうなやつを狙おうか
炎上攻撃を伝説じゃない剣で受け止めたら『狐憑き』発動
「君こそ、さっさと電源切って布団被って寝てた方がよくない?」
同じUCを返してあげるから不毛なレスポンスバトルしようねえ
さっきのゲームにも参加してたみたいだし戦果とか生き残り時間とか死に様で煽り倒せないかな
あとはソース出してとか嘘つくのやめてもらっていい?とか言いがかりで戦おう
敵を発見したら…あれなんかもうボロボロじゃない?
他の猟兵来てた?
何かその忍者君心当たりあるなあかわいそー
でも一応蹴っ飛ばしておくね
オラーッ
●犯人は
「ちょっと何てことしてくれるの。うかうか追加の焼きそばも食べてられないじゃない」
オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が焼きそばの皿に箸を置いて不満の声をあげた。
「チキンもまだ温まってないよ」
「あー……」
月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)が脱力系笑顔を浮かべている。
世の中には、「あっこれちょっとおかしいですね」と思う出来事がたくさんある。
ハルマ少年は齢16にしてそんな出来事を幾つも知っていた。経験もしていた。
ちょっぴり認識が歪んだ人種がよく言いがちなセリフがある。
「俺がおかしいのではない、周囲がおかしいのだ」
多くの場合は、そう言った本人がおかしい事が多い。
しかし、本人は正常で周囲がおかしい、という場合も実のところ、ある。
あるのだ――特にネタシナでは多い――ハルマは知っていた。
「いや……文句があるならソレ再現したゲーム関係者に言ってくんない?」
穏やかな笑顔で物申したハルマ。狼少年の怪人は、すぐに声の主が猟兵、しかもゴーレム使いだと思い至った。
「お前がゴーレム使いか! お前だな! お前のゴーレムで俺のチームは轢き殺されたんだ!」
「いや、そういうゲームなんで」
「オーバーパワーだ! ゲーム制作者も悪いがお前も悪い! フライパンだけで戦え!」
「ええ……?」
(理屈が通じるわけもないか)
仕方ないよね、言ってもね。通じないね。と、迫る怪物を見てもう悟りの境地に達してしまうハルマであった。
「狼、こいつらは僕の怪物が炎上させるよ」
眼鏡狐が炎の怪物を嗾ける。蜥蜴のような形態に変じた怪物は、炎上攻撃を仕掛けるべく突撃してくる。仲間を庇うように前に出て剣で攻撃を受け止めたのは、オブシダンだ。
「君こそ、さっさと電源切って布団被って寝てた方がよくない?」
ふわり、と空気が動いた。にょろっと伸びやかに飛び出した狐が数匹、愛らしく鳴く。オブシダンの助けになるべく、ユーベルコードをコピーして。剣に力を移したのちは、オブシダンの脚に身をすりすり、懐いている。家を守護する管狐たちによりコピーされた力を宿した剣を確認し、オブシダンが怪人たちを煽る。
「見てたよさっきの試合。見事に轢き殺されてたね」
オブシダンの目には、横合いから暗闇に紛れるようにして飛んできた手裏剣が音もなく怪物に刺さるのが見えた。剣を振り、斬り祓うようにすれば炎は散り散りになって消滅した。
(封印完了)
手裏剣を放ったハルマが帽子のつばをくい、と持ち上げてアイコンタクトをする。もう炎の怪物は出ない、とオブシダンは微笑んで剣を納めた。おちょくる舌を休めることはなく、その間もするすると言葉が出て止まらない。
「ゴーレムを1体ずつ倒そうとしてて驚いたよ」
オブシダンは焼きそばを数本箸で掬い取り、空になったたこ焼きケースに移した。狐たちが興味津々でにおいを嗅いでいる。
「何キルだった? ちなみに僕はさっきの試合クレーバーで3タテしたよ――そう、ゴーレム使いのチームをね。知らなかったのかな、対処法」
そう言って肩を竦めれば、怪人たちは武器がなかったんだと反論した。
「そっちのチームは武器運がよかったんだ、こっちにはまともな武器がなかったんだよ」
「武器運は僕も悪かったな。本当は剣が欲しかったんだ。一生懸命探していたんだ、実に広範囲を漁ってまわって、安全地帯外にまで行って」
声には説得力があった。聞く誰もが「すごく探したのに見つからなかったんだろうな」とその苦労を想像することができる声であった。
「僕は物資を漁れる限り全速で漁る努力をしたよ。君は?」
「そもそも、漁らないと武器が出ないのがいけない。最初から武器を持っていればいいだろう! そうだ、ゲームが悪いんだ」
やりとりにハルマが半笑いになっている。
「あれー?」
――何やら不毛なレスポンスバトルが。
多少脱力感に襲われつつ、疲れるけれどもツッコミを入れなければならない。いやいやおかしいでしょうと全身で訴えたい、こころがしんどい――、そんなとき特有の顔というのがある。それは例えば今回のハルマのような顔である。よく見ると、口の端から吐血している。戦う前からメンタルにダメージを受けているではないか。
「待ってろ、今運営会社にクレームしてゲームを変えてもらうから」
狼怪人は行動派だった。早速ゲーム関係者に向けた長文のクレーム文を作成し始めている。背中合わせに猟兵をけん制しようとした眼鏡狐は「炎の怪物が出ないじゃないか」と困惑していた。
オブシダンは狐たちを撫でながら首を振る。
「僕は1+1が2だと理解して2を導くために1に1を足すんだよね。でも君は1に2を足してから1+2が2になるようにしろと怒ってるんじゃないか」
怪人が暗闇の中で別猟兵と何か話している。ハルマは隙をついて身を隠した。
「あれ? そういえばゴーレム使いはどこ行った?」
怪人がハルマがいなくなった事に気づき、訝しんでいる。
「もしかして、算数を知らない……そうか、そんな可能性もあったね!」
オブシダンが煽り散らして注意を引く中、敵の視界からすっかり姿を晦ましたハルマは会場の闇と騒音に紛れて敵の背後に回った。
「大体眼鏡キャラで被ってるんですよ」
狐怪人に別方向からもクレームが入っている。
「被ってない。狐耳もあるし別キャラだって!」
「狐耳がない分上位です」
「なんだって。そんなことを言うなら狐耳がある分こっちが上位だ!」
「あのー、論争中みたいっすけど、すみません」
ハルマはこの繊細で不毛な戦いを終わらせるべく、手裏剣を投げた。誰かが終わらせないと永遠に終わらないかもしれない。そんな危機感を込めて飛んだ手裏剣はゲームと異なり、水気を帯びている。
しかし、誰かが叫んだ。
「刺さった! 爆発しますよ!」
「ば、爆発するぅ! 僕から離れてくれぇ!」
狼怪人が逃げていく。
「いや、爆発はしないんだけど」
今だ、とハルマが素早く距離を詰めて魔導蒸気式旋棍の連撃を叩きこむ。肘を畳んで素直なフォームで勢いを乗せ、右腕の一棍を左脇位置から伸びやかに右上へと斜め横に振り上げて。
ボコボコッ。
「なんかもう1人いる」
同時に反対側から衝撃が加えられた。そんな感覚があった。そう思いながらもう1撃。
ボコボコッ。
「ちょっとタイミングをずらして」
ボコッ。
殴れば、相手が続いてくれる。
ボコッ。
「次いきまーす」
ハルマが殴る。
ボコッ。
「いきますよー」
返事があった。ボコッ。
もう1人忍者らしき少年が一緒になって反対側でボコボコしている。ここに2人は「2021夏の忍者連携賞」を受賞したのであった。
「あれなんかもうボロボロじゃない?」
そんな狐怪人に気づいてオブシダンがしゃがみこむ。
「他の猟兵?」
「に、忍者。犯人は忍者」
狐怪人は悔しそうにダイイングメッセージを書いている。
「何かその忍者君心当たりあるなあかわいそー」
「しかし、僕はまだ終わるわけにはいかないんだ」
どうやら、まだ戦わないといけないらしい。怪人稼業も大変だ。
「わかるよ」
オブシダンは優しく頷き、近くにいた狼怪人とまとめて一緒に蹴っ飛ばした。
「オラーッ」
げしっ、ごろごろごろ。どーん。
怪人たちが背中に足跡をくっきりつけて会場の隅へと転がっていく。
大成功
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オルキテ・タンプル
●心情
・ほうほう、ボクの前でハッキングとはいい度胸しているね。ハッキングをするという事は、操作端末とゲームがネットワークで繋がっているということだ。それは即ち、ハッキングチャーンス!
●戦闘
・ユーべルコードを発動して蜘蛛の電霊を呼び出し、電霊の力を持って逆ハッキングを仕掛けるよ。あーっはっはっはぁ!この程度のセキュリティ。ボクにとっては、何もないのも同じだね。さあ、電霊共、いたずらの時間だよ。今回は遠慮しなくていいからね
・相手の端末に入ったら、クラッキング(破壊工作)を行って使えなくするよ。OSが壊れたら君らが持ってる道具はガラクタだ
・キレて襲い掛かってきたら、電撃銃で麻痺させてからダガー投げる
●オルキテ・タンプル(もう一人の蘭花・f15791)の場合
さて、ちょうどその頃。イベント会場から離れた地域の個人宅にて、ひとりのキマイラがベッドに倒れこんでいた。
「ああ、やっと休める」
彼は、この1年を振り返る。
何かと不幸が続いた1年だった。心身共に限界ぎりぎりの1年であった。にもかかわらずユーザーたちは自分が運営するゲームの苦情をひっきりなしに送り、訴えてきた。チーターたちは彼のゲームを居心地の良い公園のように気に入り、暴れまわった。
「休日はしっかり休もう。それは私の権利だ」
暮らしに困らず、楽しく暮らしているキマイラの中にも、やはりこういう過労気味な職業人は存在するのである。
しかし、そんな彼に報せが届いたのである。――曰く、ゲームがハッキングされて大変なことになっているので、休日返上してなんとかしろという。
「な、なんだと……」
「これはボクの出番だな」
イベント会場では、画面を見つめるオルキテの目が据わっていた。
「ほうほう、ボクの前でハッキングとはいい度胸しているね。それは即ち、ハッキングチャーンス!」
悲鳴、怒号が渦のように雑多なノイズとなって会場を包んでいる。そんな中、オルキテは慌てることなくユーベルコードを綴りながら呟いた。
「ハッキングをするという事は、操作端末とゲームがネットワークで繋がっているということだ」
およそ力仕事に縁がなさそうなお嬢様然とした白くてほっそりとした指がリズミカルにキーを叩く。都度、呼び出されるのは蜘蛛の電霊たちだ。
電霊たちはなにやら燥ぐように足をばたばたちょこちょこさせてタップダンスを踊っている。召喚者に構ってほしいのだろうか。
「さあ電霊共、いたずらの時間だよ」
オルキテはそんなかわいい電霊たちに微笑んだ。
「なんと僕の前でハッキングをする怪人がいるんだ。見てよ、これ」
餅は餅屋とはよく言ったもの。そう、怪人は餅屋の前でヘタクソな餅をついてしまったのだ。
電霊たちは「けしからん」とか「なめるな」とか言いたげに足をばたばたさせ、ハッキングを始めた。――そう、オルキテもハッカーなのだ。
「今回は遠慮しなくていいからね」
眉が好戦的に吊り上がり、危険な笑みが浮かんでいる。
「おかしいわね、配信がうまくいかないわ」
パンサー娘がイケない姿でカーテンにくるまり、困惑の声をあげている。
「あーっはっはっはぁ! この程度のセキュリティ。ボクにとっては、何もないのも同じだね」
オルキテは勝利の高笑いと共に破壊工作を進めた。
「OSが壊れたら君らが持ってる道具はガラクタだ」
「おぉ、マイゴッド」
休日を返上して対応に追われていたキマイラが目を潤ませた。
「復旧したぞ!」
自宅のゲーム機やPCで様子を見ていて全世界のプレイヤーたちも状況の変化を報告しあっていた。
「あ、『怪人フォール2をすくえ!』の表示が消えたよ」
「プレイできるようになった!!」
「一時はこのままもうサービス終了かと思ったけど、大丈夫かな」
SNSも沸いている。
「見て、猟兵がイベント会場にいるよ」
いくつかの投稿された動画に、猟兵たちが映っている。
その中にオルキテがいた。
画面の中でオルキテは、転がってきた狼怪人にトドメを刺していた。
「狼少年をよくも! 私の配信を邪魔したのも、ゲームを元に戻したのもお前ね?」
イケない姿にモザイクがかけられたパンサー娘が金切声でオルキテに迫る。
「お前もイケない姿にしてやるわ!」
「それは遠慮する!」
オルキテが魔力をチャージしたブラスター『シンビデューム』を撃つ。ゲーム内では行方不明だったブラスターは、闇にその電光を一瞬弾けさせ、敵に命中した。
「あっ」
パンサー娘が膝をつく。立ち上がろうとするも、全身が麻痺しているようだ。
「くっ……ころ」
「皆まで言わせないよ」
オルキテはさくっとパンサー娘にダガーを投げつけた。華麗に宙を駆ける電剣・バルボフィラム。ゲーム内に再現されたのと同じダガーが吸い込まれるように命中するさまは実に鮮やかで、その日以来「オルキテ」のピック率が上がったのだとか。
大成功
🔵🔵🔵
茅場・榛名
【ハウンド】
「よう、お前たちの悪行は見逃せねぇ。このハザード様と」スフィアが続く
「ボクたちの目を盗んでハッキングとは、バカだな!」
前衛は任せておけ、視聴者たちを沸かせるショーを見せてやるよ!
ゲームから飛び出したボクは、強いぜ?
火属性こそ最も得意な属性だ。どれだけ私を狙おうが
高い『火炎耐性』は伊達じゃないぞ!それに。
「デコイでドカンだ」大量のデコイで惑わせば、片付けるのは容易い。
意識の外からライフルの腰撃ちで撃てばいいからな
仕上げは私のフィニッシャー…ゲームと同じ「フルスロットル」だッ!
さぁキマイラのお嬢さん、また一緒に踊っていただけるかな?
プラチナ常連のうちらでいいなら、ね
スフィア・フローラ
【ハウンド】
隊長に続いて「エンジェルが、ゲームの世界から飛び出して参りました」
もう一人のレジェンドの子に微笑みかけて
「私たちの目を盗んでハッキングとは、バカですね!」
「空からの援護はお任せください、隊長!」
天使の翼で空を飛び、V2ウィングマン・カスタムで『援護射撃』します。
攻撃をしかけようものなら『制圧射撃』として腕でも狙いましょうか
「ウィングマンはこう撃つんですよ!」
フィニッシャーはハルナさまに譲ってあげます。
スタイリッシュな一撃をお見舞いしてあげてください!
殲滅が完了したら、またトリオで遊びますか?
私たちに挑みたい方はどうぞ。この『速さ』についてこれるなら、ですが。
●『猟兵X Legend』
ほろほろと溢れる涙――泣きじゃくる女の子。炎は消えていた。しかし、心に受けた傷が後を引いているのだ。
(助けなくちゃ)
茅場・榛名(白夜の火狐・f12464)はそう判断して立ち上がる。背後に続く気配がある。振り返るまでもなかった。敵を見据えて、口を開く。
「よう、お前たちの悪行は見逃せねぇ。このハザード様と」
スフィア・フローラ(戦う衛生兵・f18744)は一歩控えた位置で言葉を引き継いだ。
「エンジェルが、ゲームの世界から飛び出して参りました」
声は――、
「ハザードとエンジェル?」
届いた。
毒心罵声の幻聴残滓が全て意味を持たなくなったかのように。
けれど不確かな現実の中、曖昧な夢の中にいるように。
女の子が瞬きをして暗闇に目を凝らす。
そこに、いるのだ。
ゲームキャラと同じ姿が。
「『ハウンド』だ。ハザードとエンジェルだ……」
「はい」
『エンジェル』が首をかしげてみせた――本物ですよ、と。
夕日色のサイドテールがやわらかに揺れる。女の子にははっきりとわかった。その表情が優しく微笑んでいるのだと。
「猟兵め!」
狐怪人が炎の怪物を嗾けようとした。よく見ると眼鏡がない。体中に青痣ができていて、背中に蹴飛ばされたような跡もあった。
「くっ、封印されてユーベルコードが出ないじゃないか!」
狐怪人は自棄になってパンチを繰り出した。
「狐怪人、ミリ……」
榛名は地を蹴り、跳びあがった。身軽に跳んだ体は敵のパンチを軽く避けて伸ばした腕を踏み台にして素早くもう一度跳び、敵の背後へと回る。トン、と軽やかな足音を立てて着地し。
「ゲームから飛び出したボクは、強いぜ?」
敵が振り返り、すぐ後ろにいた榛名をなんとか捉えようとして。
「!」
捉えた、と思った瞬間に榛名が消える。横合いからヴァルキリーライフルが撃たれる。被弾しつつ狐怪人が反撃すると、やはり榛名は消えた。
「幻なのか?」
狐怪人が眉を寄せる。そう、すべて幻体――『ミラージュパーティー』が発動されていた。
「ええい、これかっ? こっちかっ? どれが本物だ……?」
そこへ。
――なんて情けない、と嘆息交じりの声が挟まれる。
「狐怪人たら、情けないわね。私が手伝ってあげるわ」
パンサー娘だ。頭にダガーが刺さっている。
「パンサー娘、激ローですね」
スフィアが呟いた。
そんなパンサー娘は、大分ぎこちない手つきでスマホを操作しようとしている。どうやら、痺れているらしい。
「今動画を投稿するから待ってて……ってこのスマホ、ハッキングされてて配信できないわ。もう……キャッ!?」
「させません!」
間髪入れず銃弾が奔る。スフィアだ。吸い込まれるように命中した弾は敵のスマホを打ち砕き、パンサー娘は衝撃に腕を抑えて蹲った。
スフィアは反重力装置である専用のウィングで飛翔して敵を見下ろす。
「私たちの目を盗んでハッキングとは、バカですね!」
白魔導士の装束に身を包み穢れなき純白の羽根を広げる姿は、まさに『天使(エンジェル)』。
「空からの援護はお任せください、隊長!」
手には、V2ウィングマン・カスタムがある。高威力のマグナムリボルバーで、改造によって8発装填可能になっているのだ。
「ウィングマンだ」
女の子が気づいた。
「ウィングマンはこう撃つんですよ!」
生々しい実戦というよりは、それはショーに似ていた。ゲームではなく、現実に目の前で猟兵がウィングマンを撃っている。女の子は恐ろしさを忘れてその華麗なショーに見惚れた。本物は、ゲームの銃よりもずっと重そうだった。なのに、華奢な『エンジェル』は反動にも慣れた様子で使いこなしている。
「パンサー娘!」
狐怪人が悲鳴をあげる。一瞬でパンサー娘が討取られていた。
「すごい、あっという間」
憧憬が強く胸に湧き、女の子から素直な呟きが漏れる。
「ゲームよりすごい!」
そんな女の子ににこりと笑い、スフィアは榛名に合図した。
「ハルナさま」
――譲ってあげます。
――スタイリッシュな一撃をお見舞いしてあげてください!
交叉する視線。榛名は頷き、ゲームを再現するかのように敵にフルスロットルでトドメを刺した。
「せっかくだから同じ場所に」
もともとついていた足形を狙ってのキレッキレの脚撃! 一部の性癖の怪人にはご褒美といわれそうなフィニッシャーは偶然にも怪人のスマホから配信にバッチリ映り、視聴者たちをおおいに沸かせたのだった。
「怪我は、ないみたいですね」
スフィアが女の子の傍に寄り、ケアしている。
「ありがとう、エンジェル。ハザード。ワア、本物だ。あたし、本物のハザードとエンジェルに助けられちゃった! すごい……!」
興奮で頬を林檎のようにしている女の子にスフィアは優しく誘いかけた。
「またトリオで遊びますか?」
「えっ、さっきのも……やっぱり、さっきゲームで一緒だった2人も本物だったの?」
榛名は笑顔で頷いた。
そして、まるで舞踏会に姫君を誘う貴族紳士のように女の子に手を差し伸べた。
「さぁキマイラのお嬢さん、また一緒に踊っていただけるかな? プラチナ常連のうちらでいいなら、ね」
身近に覗き込む『ハザード』の瞳は、先ほど女の子が苦しめられていた炎と似ている赤い色を見せていた。けれど、自信にあふれるその瞳は頼もしいばかりで悪意の一片もない。
――ハザードは、怪人をやっつけてくれる。
――みんなを守る猟兵なんだ。
女の子はそっと榛名の手に自分の手を置いた。
少しだけ遠慮がちに、不器用に榛名がその手を握り返す。
スフィアは2人を微笑ましく見守り席に座り、SNSをちらりとチェックした。ゲーム復旧の知らせと猟兵による怪人退治の話で人々が盛り上がっているようだった。
会場に照明が戻り、イベントもやがて再開した。先ほどまで怯えたり悲鳴をあげて逃げていた人々も、「すごいものをナマで観れたね」なんて言いながら笑っている。さすがキマイラたちだ。
ログインすれば、もう1人の自分がそこにいる。
榛名はレベル350のアカウントにいつものようにログインし、女の子にフレンドを飛ばした。
「ハザード、フレンドになってくれるの?」
「もう友達だよ」
女の子は嬉しそうにチーム入りして、3人は再び空に飛び出した。
「私たちに挑みたい方はどうぞ。この『速さ』についてこれるなら、ですが」
挑戦的に宣言してスフィアが周囲のチームの降りる先を見ている。
「味方がつよいから……敵、つよい人がいっぱいかな?」
女の子がそっとたずねた。
「怖いですか?」
「大丈夫、楽しくやろう」
榛名は先ほどの試合で封印していたジャンプパッドを出しながらオーダーを出すのであった。
目的に向かって3人が跳ぶ。
周囲の景色が高速で流れる。降りる視界の中、『ハザード』が銃を撃つ。
ゲーム内の空はからりと晴れて、青かった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵