7
大江戸鳥物帳

#サムライエンパイア

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア


0




●長屋大騒動
「てめえがやったんだろ熊さん!」
「そいつぁ聞き捨てならねえぜ八っつぁん!」
 日頃より騒ぎの絶えない長屋を、さらなる喧騒が覆っている。今まさに始まらんとする取っ組み合いこそ、火事か喧嘩か江戸の華。
 しかし、その背後にある部屋の中を覗き込めば、此度のそれは単なる華ではなく、度を越したものであることが見て取れるだろう。
 割れた食器、飛び散った鍋の具、畳に染み込む酒と突き立った使いかけの箸、そして壁の傷に汚れ。そこかしこに舞い散る黒い羽は何らの暗示か何かか。それら全ては流石にこの貧乏長屋特有のものではなく、うち大部分は間違いなく原状回復を要するそれ。安い例えで言うなれば、まさに地獄の様相で。たとえ酒の席であったとしても、いやはやここまで悪酔いするとは考えにくく。
「熊さん、俺が酒に弱いからって、寝てる間にこれはねえだろう!」
「八っつぁん! てめぇこそ、腹が膨れると眠くなる俺を陥れようとしてやがるな!?」
 だからこそ、寝ていた二人は、その科人――主犯こそ目の前の相手だろうと信じ込み。

「お前がやった!」
「お前がモテないからひがんだ!」
「俺はモテるだろこのタコ!」
「俺のがモテるつってんだろこのハゲ!!」

 ――それは、果たしてどちらの声だったか。

「てめぇ言っていいことと悪いことがあんだろうがァ!!??」

 果たして、ひとつの単語に野次馬の一人が反応すれば、二人が三人、三四で十二。住人野次馬大乱闘。
 期待通りに華咲けば、犯人捜しは後回し。地上でワンワン怒鳴るなら頭上でピヨピヨ音が鳴り――嗚呼、江戸上空を鳥が飛ぶ。

 それはどこか……距離感を狂わせるサイズであったのだけれども。

●大江戸トリ物帳
「ちゅんちゅん」
 ナイン・アークライト(九体目・f05754)は集まった猟兵にそう呼びかけた。
「まあ、そんなわけでとある長屋の部屋の中がすっごいことになってるの」
 いつにも増してなんだその適当な説明は。
 猟兵たちが問うも、黙って聞いてほしいとナインは聞く耳持たず。
「多分オブリビオンのしわざなんだけど、みんなには犯人……犯鳥を追ってほしいの」
 鳥?
 急に出てきた情報を前に、首をかしげる猟兵たち。
「鳥、知らない?」
 知ってるわ!
 猟兵たちが声を上げるも、ナインはそれを気に掛ける様子もなく。両腕を広げ鳥のポーズをとると、羽ばたくようにその腕を上下に振りながら少女は詳しい説明を始める。大きな鳥が、江戸の住民のご飯を横取りして、散らかしていくというお話を。
「動機は食べ物欲しさ、かな。何にせよ、悪いことをしているから」
 すっごくこらしめてあげてほしい、と。
 でも、江戸と言っても広いだろうと猟兵の一人が問えば、他の猟兵たちもそうだそうだと賛同し。
「犯人は現場に戻るでしょ?」
 鳥だって同じ。同じか?
 とりあえず現地で調査してみて、と。反論を流し、くちばしのように口をとがらせて少女は答える。
「それに、もしかしたら餌付けしてる住人がいるかもしれないから」
 だからまず、長屋周辺を調査してほしいと。もし、本当に餌付けしている住人を見つけることができれば、逆にオブリビオンを誘き出すことができるかもしれない。
「手段は色々あるけれど、とりあえず住人の行動を調べてみるとか」
 今回、長屋が犯行の場所となったのは、近くに餌場となるものがあるからかもしれない。もしそうなら、住人の動きを追っていけば、餌を持ち寄る者を見つけられる可能性がある。
「あとは、取り調べも」
 やや言葉は強いものの、言わんとするのは住人へ直接の聞き込み。うまく彼らの空気に馴染めば、住人たちから重要な手がかりを聞き出せるかもしれない。
「ほかに? うーん、やっぱり現地調査かな」
 犯行現場含め、住人たちの部屋を調べれば、いずれかの部屋から何らかの手がかりが見つかるかもしれない。何にせよ、餌付けしている住人を見つければこっちのものだと、眠そうに目を擦り、ナインは軽くあくびをしながらグリモアを浮かび上がらせる。

「ただ、気を付けてね。この鳥は、きっと一筋縄じゃ行かないと思う」
 逃げられたとき、ちゃんと追えるようにしといてね、と。猟兵たちに注意を促しながら、ナインは猫のように爪を構え。
「今回は……長丁場の、予感?」
 こっちに聞くなという想いも届かぬまま、少女は猟兵たちをサムライエンパイアへと導くのだった。


メヒ子
 カニピラフー(挨拶)

 犯鳥を捕まえるために、餌付けしている住人を探してください。
 そのために、長屋の人たちといろんなコミュニケーションをしましょう。
 コミュニケーション(対話)はもちろん、
 コミュニケーション(物理)もあると思いますし、
 コミュニケーション(強制捜査)も視野に入ると思います。
 ●長屋の人々
  1.熊五郎・・・冒頭の熊さん。酒で失敗しやすい。
  2.八五郎・・・冒頭の八っつぁん。おっちょこちょいで失敗しやすい。
  3.与太郎・・・孝行者。どこか抜けてる愛嬌者。
  4.甚兵衛・・・真面目。人がよくて騙されやすい。
  5.ご隠居・・・長屋の知恵袋。とにかく話したがり。
  6.大家・・・・面倒見がいい。一部住人に店賃(家賃)を溜められている。

 なお、犯鳥と対面できたとしても当然逃げ出すので追ってください。
 大江戸捕物帳ならぬ大江戸鳥物帳ですね。

 ふふっ。

 最後は倒してください。
 ふわふわピヨピヨしているので、なんかこう、いい感じにこらしめてください。
 がんばっていい感じにします。
45




第1章 冒険 『不審な住人』

POW   :    住人の行動を調べる

SPD   :    住人から話を聞く

WIZ   :    住人の部屋や持ち物を調べる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●お先 まっくら
 今で言うところのペットってのは愛玩動物とか鳥のことですが、これがまたなかなかどうして歴史があるもののようで。聞くところによれば、太古の時代からネズミ除けやら狩りの友やら大活躍。現代と比較して実用的なところも強かったようですが、しっかり働き更には可愛い。文句も言わず、言うとすればニャアかワン。
 いやはや、それに比べてどっかの誰かと来たら、腰が重けりゃ態度もでかい。口を開けばやれ小言。小言も無視すりゃ大ごとになるもので、飼うか飼われるかの生存戦略が目下の悩みにございます。
 そこであたしも、ちょいと疲れがたまりましてね。「おまえも、もう少し小さければ」なんて口に出しちまったんですね。そしたら、もうおしまいですよ。「小さいだけが可愛さじゃないだろ」なんて言われてね。見てくださいよあたしの顔。犬より獰猛で猫の爪より鋭いんですあいつは。でもまあ、あいつの言ったことに感じるところもありましてね。

 小さいだけが可愛さじゃない。
 大きくても、可愛いものは可愛い、と。
 
 勘違いしないでください? あいつは大きくても、別に可愛くはないんです。でもね、自分の背丈より大きくて可愛いもの。そんな夢みたいなもんに直面した時、あたしたちは何を思うのか。可愛いのか怖いのか、可愛いのか怖いのか、たぶん間をとって「怖愛い」とか言うんでしょうけれど……ちょいとだれか、今の単語登録しといてください。してくれました? よしきた。さて、そいじゃあそろそろ始めましょう。

 これは、そんな夢のように大きな鳥と、それに直面した者たちの――賑やかな噺でございます。
キギ・レインメーカー
なんとなく平和…?っぽいね…けど、オブリビオンが関わってるならなんとかしないとね
【行動方針】
何はともあれ1人ずつ話聞いてこうか
「コミュ力」で聞き込みしてとりあえず世間話とか最近変わったこととかね、動物好きかどうかとか聞けたら収穫になるかもかな?
俺だけじゃ情報足りないだろうから仲間の猟兵のみんなとも情報交換出来たらばっちりかな

鳥に遭遇したら追いかけるだけ追いかけてみるけど、それよりも観察に徹したいかな。とりあえず戦う気はないし。
食べカスとか見つけれたら「世界知識」で何食べてたか予想できないかな?
【その他】
連携、アドリブ歓迎です


落浜・語
落語の世界観そのままってのに、惹かれてきたけれどまぁ、仕事はちゃんとやりますか。

【コミュ力】つかって住人から話を聞いて回る。
「長屋の周りで、色々生き物見かけたけれど、近くに餌場でもあるのかね?」
色々話を聞くきっかけになるなら、一席やるのもいいかもしれない。その時はマクラでちょっとカマかけてみるのもありかもな。人間観察は得意なんでちょっとでも挙動不審になったのがいれば、その人に聞きに行く。
「別に、悪いって言うつもりはないさ。俺も動物好きなんだ」
「ただまぁ、味を占めて他所に迷惑かける事もあるだろ?」

もし、犯鳥っぽいのを見かけたら、カラスに追跡を頼む。
「頼むぞ。カラス」
情報はほかの人たちと共有する



●大江戸コミュニケーション
「それで、最近景気はどうだい?」
 調査に来た者が、特に威張りもせず。更には柔和な表情に笑顔まで浮かべたなら――大家の部屋に集められた住人達も自然と気を許すように。
「年の瀬は越せたから、あとはまあ次の年まで安泰さ」
「お前さん、店賃溜まってるからね」
「……年の瀬までには必ず」
「遠いよ!」
 その気ごころを許したやりとりにくすりと笑えば、問いを投げたキギ・レインメーカー(オラトリオの探索者・f02371)は目の前にいる住人たちの顔を一人ずつ確認していく。
 今ので気まずそうに体を縮こまっている甚兵衛に、それをじとりと流し目で見つめる大家。そして、後ろで喧嘩を続ける熊五郎に八五郎――は置いておくとして、その様子を見て笑っている二人。ただおかしそうに体を揺すっている与太郎と、一方で眩しそうに目を細めるご隠居と。
 長屋を訪ねた時点で怪しい仕草をする者はなく、やはり聞き込みが必要とくれば聞き役を買って出たのはキギともう一人。
「そうそう――」
 それは、用意されたものとは感じさせぬ、ごく自然な振る舞いによってなされる問い。彼の恰好は、色合いこそ異なれどこの世界に通じる『着物』であるならば、その所作はこの世界にいくらか溶け込んでいて。
「長屋の周りで、色々生き物を見かけたけれど……近くに餌場でもあるのかね?」
 落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)は、彼自身も流れる空気にどこか馴染むものを感じながら、彼らに問いかけた。
「生き物だあ? おい熊さん、お前さんまーた何か拾ってきたのか?」
「おいおい八っつぁん。そっちこそ、まーだ猫をダシに女に粉かけてんのか?」
「「あ゛あ゛っ!?」」
 おぉーっと決まった! クロスカウンター!
 お互い同時に拳を顔面へと沈めれば、畳へと倒れこむも同時。
「猫を出汁に!? 猫食べるの八っつぁん!?」
「あのねえ、与太郎。ここでいうダシってのはね……」
 自らの想像に泣き出しそうな与太郎をご隠居がなだめ、倒れこんだ二人を甚兵衛が引きはがし、とりあえず壁際に並べておく。
「すまないね、甚兵衛」
「いえ、年の瀬までには必ず払いますんで」
「それは本当にすまないと思っとくれ」
 二人分の声が消えたため、静かになる部屋と再び縮こまる甚兵衛。
(何かしらの形で関与の可能性はある……か)
 急転直下、休まることのない展開を前に、今しがた聞こえた会話の中で何かしらの手ごたえを得たように語はうなずく。
 そして、その感覚を共有するかのようにキギ。
「あはは、みんな動物が好きなのかな?」
 とりあえずは残った人に、と。より詳しい話を聞けないかと四人へ。首をかしげる動作と共にへらりと笑えば、瞳の色と同じ花が、金糸と共にはらりと揺れる。
「好きさ! 熊さんも八っつぁんもそうだけど、ご隠居だってそうだよね?」
「おや、私も?」
「年越し前、雀のために豆撒いてたでしょ。そしたら熊さん達が拾い始めて騒ぎになったやつ」
 なにやってんだ熊さんたち。
「節分以外に豆撒いていいなんて……俺もこの前さっそく真似したし」
 なにやってんだ与太郎。
 与太郎の話に手がかりを得たという思うより先、思わず指摘したくなる気持ちが前に出るものの、そこは堪えて話を続け。
「雀? このあたりにも鳥が?」
「そうだねえ、今の時分は少ないかもしれないが、朝と夕は割と鳴き声が聞こえるよ」
 そう言うとご隠居は照れくさそうに、白い頭を掻いて。数少ない楽しみなんだけどねえ、とかつての騒ぎを思い出して苦笑する。
「なんだかんだ言ってみんな好きですねえ、ここの連中は」
 苦虫を噛み潰したように、大家。
「じゃあ何か動物を飼ってる人も?」
「それが、うちの長屋は動物禁止なんですよ。ねえ甚兵衛?」
「そうですね、困ったもんです」
 なんともない、ただの肯定的返答。
 しかし、その言葉に感情といった温度はなく。生身の人間の出す、その語りならぬ機械的な回答に違和感を抱いたならば――語はそっと、甚兵衛へ近づいて。
「甚兵衛さん、アナタ……」
 語がゆっくりとした動作でその隣に座れば、キギもそれに倣って甚兵衛を挟み向こう側。座り込みはせずに、中腰で耳を傾けるようにして。
「な、なんですかい? どうしたんで?」
 声をかけられどその顔は語の方を向かず。かといってキギの方を向くわけでもなく、ただ畳の目を数えるかの如く、じっと下を見つめたまま。
 猟兵は二人とも彼に怪しさを感じれど、当の本人が素直に話す姿勢を見せないならば、さてさてと。
「いえね、動物と言えば……ちょいとした笑い話がありまして」
 物腰柔らかに、それでいて目の前の相手を引き込むように聞こえるは、彼の成り立ちか、あるいは日頃の努めが成す技か。

「思いのほか、人と比べて四つ足ってのは育ちが早いもので――」
 昨日は一貫、今日二貫。明日はさてはて何貫か?
 今日抱き上げられる獣でも、明日はどうかもわからない。
 それは過去に聞こえた寓話か、または実話か。 
「毎日その姿を見ている分には気づかないものの、その実、この世に生きるものは確実に育つものでございます」
 人も、動物も、植物も。
 例え天狗だってその成長を止めることはできず、ましてやただの人間では。
「見上げて気づくは星と歳。いやはや、喜ばしくもあり恐ろしく」
 育てたものに責任持たぬ者の行先は、果たして――。

「お、俺は違う!」

 語の話、いいや噺というべきか。彼の言葉へと聞き入っていた部屋に、その一言が突如として響き渡る。
 声の主はと言えば、額から汗を流し、肩で息をするような具合で。
「甚兵衛、どうしたんだい?」
 ご隠居も大家も、呆気にとられた様子なら、流石の与太郎も目を丸くして。
「ええ! 甚さんは成長しないの?」
「そうじゃないよ与太郎」
 まあまあとなだめれば、キギはすかさず違う方向からの質問を。
「大丈夫大丈夫。俺たちは、何かこの長屋で変わったことがあったら教えてほしいんだ」
 何が大丈夫なのかはいざ知らず。優しく問いかけたなら、その立ち振る舞いも含め流石は磨き上げしそのコミュ力。甚兵衛の呼吸はやがておちついて、その問いかけへと静かに答え始める。
「……見たんだ。前に。何か、黒いものが長屋の前を歩いているところを」
 それは、猫でもなく、犬でもなく。
 見かけたのは一度きりではなく。ただ、現れるのは不定期で、それ故に自分は大きさの変化に気づけた、と。
「甚兵衛、なんであたしに教えてくれなかったんだい?」
「もし教えたら、大家さんが皆の部屋をひっかき回すだろうと。そうしたら、みんな困るだろうと」
 あたしゃ大家だよ、という声を遮り語は確認を進める。
「すると、あなたはその黒いものの正体は知らない?」
「ああ。長屋は知っての通り動物は禁止でね。最初はてっきり、俺と大家さん以外の誰かが飼ってる狸か何かかと」
 はは、化かされてるやつだね、とキギが笑い。
「じゃあ飼ってる人に心当たりは?」
 その笑みとは裏腹に、鋭い視線が残りの住人へと伸びて。
「雀に餌をあげることはあってもねえ」
「狸は知らないよ」
 別に狸と限定しちゃあいないだろうと周囲が突っ込むも、まあこんなものかと語。他の人がいる前では、全てを聞き出すにも限界がある。
「別に、餌をやるのが悪いって言うつもりはないさ。俺も動物好きなんだ」
 ま、長屋にも決まりっていうのがあるだろうけれど、と自らの本体たる扇子を握りしめながら。誰かのルール違反を咎めるわけでもなく、勿論この長屋のルールを咎めるわけでもなく。
「――ただまぁ、そいつが味を占めて他所に迷惑かける事もあるだろ?」
 にやりと口の端をあげれば、その後を繋ぐはキギ。
「そうそう、今回のように、ね」
 八五郎の部屋の件は、やはり甚兵衛の見た黒いものが関係しているのだろうと。現場から拝借した黒い羽を手で弄りつつ、事件の真相を語るべく聞かせれば、各々に心当たりを自問自答させるよう。
「ま、他の話はそれぞれ一人ずつ聞かせてもらうってことで、いいよね?」
 その問いかけに返事はなく。ただお互いに目を合わせれば、静かに頷くのみ。
「とりあえず、そこの二人を部屋に戻そうか」
 語が熊五郎を担ぎ、キギが八五郎を担ぎ。
 事件現場は使えないので、熊五郎の部屋へと運び込むべく、二人は大家の部屋を後にする。

「さてはて、キギさんはどう思う?」
「まあまあ、まだ結論には早いと思うんだけれどね」

 そんなことを、一部屋分ほど歩いたところで語りつつ。
 ふと、語が足を止めて顎の先で示した先、地面に転がるそれをキギも目視して。
「これは、豆か?」
「煎り大豆……福豆の残りかもね」
 ここの世界知識に照らし合わせれば、なるほどなるほど、と。
 とりあえず、現時点で他の猟兵へと共有する事項をまとめつつ、彼らは何かに思い当たったように顔を見合わせて――笑った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

綴・真砂
犯人、やない犯鳥捕まえてお仕置きせなあかんなぁこれは(手をワキワキ)
【WIZ】
ちゅうことで長屋の人に挨拶しつつ、軽く長屋周りをまわるで
鳥って結構でっかい糞だすやろ?せやから掃除道具系が増えとるとか有効活用で畑始めたとかや
あとボロボロになった柱や木切れや木くず後がないかとかや嘴でやられるよって布団が変わったとかもやね(出る羽毛有効活用?)

その後茶菓子をもってご隠居さんところへやね
お茶と一緒にいろいろお話や出入りが激しい逆に出んようなった人とか
ものの後始末の仕方ききにきた、とかやね
ついでに穀物系の取引とかあったかな~とか
茶飲み話は案外侮れへんのやで?
こぼれ話からなんや聞けたらえぇけどな~



●挨拶回りと春の風
 先の二人が持ち帰った情報を共有したところ、さてはて猟兵たちが次にするべきは。

「こんにちはー!」

 それはやっぱり皆への挨拶やろと。綴・真砂(妖狐の陰陽師・f08845)は張り切るように三尾を揺らし、がらりと大家の部屋の戸を開ける。
 しかし、集まりは既に解散し、部屋に残っていたのが大家と甚兵衛のみであれば出鼻をくじかれて。
「それで、いつ払えるんだい?」
「年の瀬までには……」
「遅いよ!」
 さらに、話している内容も世知辛い話なら、そのまま戸を閉じて。

「こんにちはー!」

 果たして、二回目。八五郎の部屋は事件現場であるため住人の姿はなく、隣の熊五郎の部屋もと覗いてみれば、話に聞いた喧嘩の結果、依然として気を失っている様子。なら後に残るは誰かと思えば、ふとかけられる気さくな声。
「おや、何かお探しかい?」
 ぱたぱたと向こうから近づいてい来るのは与太郎。見慣れぬ姿を見たならば、なんだなんだと好奇心のままに近づいて来た。
「いやね、うちも挨拶がしとうて。二人だけが挨拶して終わりじゃ不義理いうもんやろ?」
 こういう時こそ、礼儀はしっかりせんと。
 なあ? と真砂が微笑んだなら、普段より女っ気のない長屋に住んでいる与太郎、デレデレと顔のいろんなところを緩めた様子で。
「ご隠居には挨拶したかい? だったら、一番奥だから行くといいよ」
 聞いてもいないことまでぽろぽろと。なんだそのくねくねしたポーズは。
「まあ、まあ。ほんまおおきに」
 一方、行先が定まれば、真砂は頭を軽く下げて。与太郎へ礼を済ませたならば、指し示された先へと歩を進める。ただその途中、共同井戸の隣に立てかけられた竹ぼうき、それの三本並び立つ姿が目に入れば、自然と顔はそちらを向いて。近くに木々は見えないものの、果たしてここまで落ち葉が届くのだろうか? その違和感が真砂を引き留める。
「気になるかい? 熊さんや八さんと、一緒に長屋の周りを掃除しててさ」
 地面を掃く所作を演じながら、後方で与太郎が解説を加える。
 頑張りを知ってもらおうと張り切っている彼の姿は視界に入らぬものの、真砂が気になったのは眼前の竹ぼうき、その穂先に絡まったもの。
(黒い、綿?)
 落ち葉ではなく、何か分からぬものを掃いた跡。それは、果たして――?

「こんにちはー!」

「おやおやこれはどうもご丁寧に」
 見つけた謎は後回し、と。茶菓子をもってご隠居のところへ出向けば、珍しい客人を前に歓迎の様子で。
 好々爺とした笑顔を浮かべ、さっと差し出されるは彼にとって最上の持て成しなる濃いめの緑茶。
「なんや、今回は長屋全体大変やったねえ」
「そうだねえ。八のやつも、最近心を入れ替えたところでああいう目に合うとは、可哀そうで仕方ないよ」
 出されたお茶をすすり、ほうと息を吐けば自然と尻尾も揺れ。
「心? 前になんかあったん?」
 今聞いた話をより詳しく聞くべく、立てた耳をぴょんと寄せる。更には、茶菓子を勧めることも忘れない。
「ああいやね、昔はがらっ八なんて言われて、長屋でも荒れてたんだけど……ここだけの話、ある日を境に真面目になってね」
 何があったかはわからないけれど、と。
「今では長屋周りの掃除も率先してやるようになって、大分変ったもんだよ」
 成長した孫のことを語るように、その表情は穏やかで温かい。
「そうそう、掃除と言えば竹ぼうき見たけど。ここそんな落ち葉が届くん?」
「ああ、あれねえ。前はそんなことなかったんだけれど、時々、朝起きると黒い羽がたくさん落ちてるんだよ」 
 何か、カラスでも大量に飛び交っているのかねえと首をひねり。それからお茶菓子に口をつければ、おや美味しいとまた微笑み。
「そのせいで、最近雀も姿を見せなくてねえ」
 はにかんだり、しょぼんとしたり、忙しく表情を変えるご隠居を前に、いつしか情報収集よりも茶飲み話がメインになって。
「それは、雀もご隠居はんもかわいそうやなあ」
 雀への餌やりが数少ない楽しみだとご隠居が言うならば、その楽しみを奪わせはしないと、やがて真砂の心に燃えるは使命感。
「よし! うちに任しとき!」
 その黒い羽の持ち主、とっつかまえてこらしめたるわ!
 そう、手をワキワキとさせて宣すれば、目を丸くしたご隠居もやがて口に手を当てて笑い出して。
「ほほう、それは楽しみだねえ。でも」
 こらしめるには、まず腹ごしらえだろうと。
「私ひとりじゃ、こんなに食べきれないから……ほら、ちゃあんと持ってお行き」
「うちが持ってきたのに、うちが持って帰るんはどうかと思うで」
 情報は得たけれど、まだまだこの温かい時間は終わらせがたく。
 かくして、二人の会話に華は咲きつづけ――、

 真砂がご隠居の部屋を出てきたのは、それからしばらくたってのことだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神羅・アマミ
犯人は鳥…鳥といえば…豆!?
つまり節分の余った豆で餌付けしとる奴がおるな!?
豆を探そう(短絡的思考)!

家探しするならまずは熊さんを酒で潰す!
グリモアベースとかで適当にかっぱらってきた奴を勧め「いやーん、いい飲みっぷりー!」とかキャバ嬢並に囃し立て、「他の人も呼んであげましょうよ~」とかにゃー。
そこからいつもの喧嘩に発展したらしめたもの、こっそり抜け出し各長屋を調べて回るぞい。

ところで喧嘩の間に鳥飛んどったよな。
各長屋を回ってタンスだのをゴソゴソ探っとる間に、餌がもらえると勘違いして飛んでこないもんかのー。
特定の家で起きれば、そいつが犯人ってことになりゃせんか?
だが、見つかるのは勿論、豆!


光・天生
【POW】

熊さん八っつぁんに接触。
日常的に喧嘩してるようですし、喧嘩の場面に割り込めればベスト。
「近所で何者かに食糧を荒らされる事件が多発している」
「長屋付近で怪しい存在の目撃情報があり、調査に来た」
と説明した上で

噂は聞いてるぞ。一番怪しいのはテメエらなんだ。
テメエまた酒で何かやらかしたんじゃあるめェな?
それともテメエのおっちょこちょいでのやらかしか、あァ!?

……などという感じで【殺気】を放ち、必要なら拳を振るって【恫喝】。
あの性格、ハナっから喧嘩腰の方が、彼らも話しやすいと思うんです。
潔白が分かれば、それはそれで犯人を絞れる。

……諸々終わった後で、脅したことへの謝罪はしっかり入れておきます。


坂上・貞信
犯人探し、ね。ミステリーは苦手なんだよなあ……
トリックの説明シーンは好きだけどね。

さて、事前に情報を共有頂いてるがさっぱり解らない。
なので地道に行くとしようか。

多少、お金の流れが気になるところだね。
家賃を滞納されてるのは甚兵衛くんかな。
他にも何人かいるのだろうかね、居るなら一緒に。
遊び人に成りすまして、
お酒か食事でも奢るとしよう。

仕事がたまたま無かった、なら構いはしないが。
大きな鳥、満足するだけ食べさせるには
それなりに量が必要となるだろう。

特に甚兵衛くんはお人好しに騙されやすい、か。
どこぞの女子に入れ込んでるって話なら良いんだけどね。
それもまた愛、と。はは。



●酒と泪と泪と泪
 それから、またしばらく時が流れ。

「酒盛りの時間じゃコラァ!!」
「!?」

 勢いよく引き戸を開け放ち、目覚めたばかりの熊五郎の部屋に乗り込まんとするは神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)。その手にはどこからか持ってきた一升瓶を抱え、ずかずかと上がりこめば住人とその隣人の返事を待つより先に座り込んで。
「まま、一杯」
「おいおい嬢ちゃん、急にこんな掃き溜めに上がり込んでなんだい一体?」
 上がり込んできた少女の身なりの良さに、思わず口をついて出るは正直な感想。
「掃き溜めってのは随分じゃねえか八っつぁん?」
 調査とやらが終わるまで、隣のよしみで部屋を使わせてやってるってのによ、と。縁が欠けた湯呑を取り出して熊五郎。
「ごちそうになりやす」
 この熊、迷いがない。
「熊さん、お前さんそうやって何度やらかしたんだい!?」
 マジかこいつ、という視線を向ける八五郎は今回の被害者であり、酒に目がない熊五郎と違ってなかなか警戒を解かない様子。
 だが、それでいい。
「いや~ん、いい飲みっぷり~!」
 湯呑をぐいっと、一気に傾けるその隣。UDCのキャバクラ嬢もかくやといったノリで囃し立てるアマミの狙いはただひとつ。

 まずは、熊さんを酒で潰す!

 だから別に、八さんまで潰す必要はない。熊さんが出来上がればおのずとその瞬間は訪れる。
「おうおう、こんな別嬪さんに注がれて飲まない馬鹿はいねえや。なあ八っつぁん」
「熊さん、俺は嫌だよ熊さん。俺はね、まだ今回の件で疑っているからね。……大体、熊さんの酒癖の悪さときたら、俺が今までどんな目にあわされたか」
 すくと立ち上がれば、やってられないよと八五郎。だが、それが熊さんの逆鱗に触れた!
「なんだおめえ、俺の酒が飲めねえってのか!?」
 やったー狙い通りだー!! 
 目の前で本日三度目の喧嘩を始めようとするは良い大人。一方、やんややんやと手を叩き、いいぞいいぞと喜ぶ少女はまだ齢にして十とひとつ。いやはや末恐ろしいとはまさにこのことで、「表に出ろ」「上等だ」と二人が外へと飛び出していくようならば念願叶ったとと喜び送り出すは良妻を演じる悪女のそれ。
「しめしめ……」
 これで、気兼ねなく室内を調べられるとくれば、笑みもおのずとその顔に浮かび上がるもの。歯を見せて自らの手管に酔えば、さあてと取り掛かる待ちに待った家探しタイム。
 というのも、今回の家探しにおいてアマミには心当たりがあった。
(鳥といえば……豆!?)
 つまり――節分の余った豆で餌付けしとる奴がいるに違いない、と。
 だから、誰かの部屋で豆を見つけられれば、それは餌付けの証拠でファイナルアンサー賞金千両! ははは、騒げ騒げ騒ぐがよい。その間に妾が見つけてくれようぞと、もとより雑多な室内を更に雑多に沙汰のほか。戸棚を開けて、行李を開き――その間、通りから聞こえる怒号も悲鳴も何のその。

「おお、始まった始まった」

 こっちは探索、そっちは荒事。二人の世話は任せたとばかりに、外の誰かへバトンを渡す心境で。いざやいざ、次にアマミは畳を裏返しにかかった。

 かくして、少々時間はさかのぼり――。

 部屋から飛び出ていった熊五郎と八五郎。長屋の前にて向かい合えば、どちらもどちらで意気軒高。三度目の正直とばかり、今度こそ決着をつけんと互いに拳を鳴らしたところ、そこに近づく影が一つ。
「奉行所の使いだが」
 はた、と体の動きを止め。顔だけでその影を見つめれば、見るからに少年――光・天生(鈍色の天蓋に神は座す・f05971)が冷たい眼差しで彼らを見つめている。
「近所で何者かに食糧を荒らされる事件が多発している」
「ああ? なんだって?」
 しかし、酒が入って木の大きくなった熊五郎に、その言葉の意味は通じず。むしろ、目に映り込んだその姿はどう見ても子供であるし、実際には子供なのだから駄目な大人が反発するも道理。
「ガキが大人をからかうんじゃねえやい!」
「……長屋付近で怪しい存在の目撃情報があり、調査に来た」
 ガキと呼ばれて、ぴくりと眉間にしわがよれば、その声のトーンも一段階落ちて。それでもなお、情報を聞き出すためならばと冷静を保つのは子供にして大人の対応。
 しかし、
「そうだそうだ、ナマ言って俺たち大人の喧嘩に口を出してくんじゃねえこのチビ!」
 出たなー、がらっ八の悪いとこ出たなー。
 酒ではなくその粗野な振る舞いで失敗を繰り返す八五郎は、今日もまた人生の床板を踏み抜いた。

「ナマ言ってんのは、どっちだ」

 かくして、天生が殺気と共に地を踏み鳴らせば――震脚! それは周囲の重力を歪めるが如く。
 地面から弾かれ、あるいは局所的な地震に見舞われたと言うべきなら、熊五郎と八五郎、共に足を取られてその場に尻もちをついて空を見上げる。
 そこに映り込むは、先ほどまで彼らが見下ろしていた、少年の姿。
「噂は聞いてるぞ」
 一番怪しいのはテメエらなんだ、と。
 天生がゆっくりとその距離を詰めてくるならば、まだ何が起こったのかを理解できていない二人は、何も言葉を発せぬままに手を使って後ずさり。
「おい、熊。テメエまた酒で何かやらかしたんじゃあるめェな?」
 その、年齢に不相応とも言える迫力は如何なる境遇が出せるものか。名前を呼ばれ、その殺気の矛先が自分へと至るなら、その手が首元へ伸びんとすれば、熊五郎の口はパクパクと金魚のように。
「お、俺は何もやってねえよう!?」
 ようやくのことで回答を絞り出したなら、天生の次の矛先は隣へ。
「じゃあ八。テメエのおっちょこちょいでのやらかしか、あァ!?」
 這うように動けど、二足歩行を振り切れるはずもなく。あまりの剣幕に倒れこんだ先、頭のすぐ横へと鉄拳が落ちてきたならば、わあ死ぬ死んだと大騒ぎ。
「まだ、死んじゃあいねえだろ」
 されどそれを気にする天生ではなく、恫喝に次ぐ恫喝。
「し、知らねえ! 俺も知らねえよう! 俺たちゃ元々商売の話をしていただけでい!」
「そ、そうだそうだ! 手を出した商売がうまくいきそうだって、それで!」
 俺もこいつも、何も悪いことはしてねえんだと熊五郎が頭を垂れれば、二人の口から飛び出したのは『商売』とやらの話。
「お天道様に顔向けできないことやって商売か? ええ?」
「ち、ちがう! むしろ俺も熊さんも日焼けしちまうぐれえだ!」
「なら、話せ」
 二人が素直に、全てを話す気になったならばと、天生は拳をおさめて腕を組み。目線を同じ高さにするべく、彼らのそばでしゃがみ込む。さあ、真相を。真相に近づく情報を――。

「おおっと、そういう話ならもっと良い場所で聞かないかい?」

 背後からすかした男性の声。天生にとっては聞き覚えのあるその声。嫌々という顔で振り向けば、その先にいたのは甚兵衛に与太郎。そして、その二人の前に坂上・貞信(バーチャル無能軍人・f00110)――の期間限定的な江戸町人バージョンがポーズをとるように長屋の壁に寄り掛かっている。
「これから一緒に、一席どうかと思って誘いに来たんだ」
 若い者たちで盛り上がろうと、熊五郎の八五郎の二人にも声をかけるべくやってきたならば、数は多いほうが良いだろうと。
「なぁに、お金は払うとも。今日は若旦那だからね僕は」
「こっちは、別に」
 話だけ聞ければいい。未成年だし、と天生が返すも。
「まあまあ、いいからいいから」
 暖簾に腕押し糠に釘。これも情報収集だからと、聞く耳持たず。

 かくして、再び舞台は移り――。

 貞信が煮売り屋から買い集めた総菜を並べ、再び人が集うは八五郎の部屋。部屋の狭さに対して人が集まりすぎたなら、天生は中に入らず戸の外で寄り掛かったまま。与太郎は食べ物だけをもらって早々に部屋へと戻っていき、部屋の中には四人。
「じゃあ、店賃を溜めてるのは今のところ甚兵衛さんだけなのかい?」
「へい。前は全員そうでしたが、俺は商売に乗らなかったもんで」
 ご馳走の礼として、聞かれたことには答えると甚兵衛。
「俺たちは商売のおかげで店賃を帰し終わったんでさ」
 ちらちらと、外の天生を気にしながら八五郎。『商売』という単語に天生が反応したならば、何か言われるより先にと熊五郎が話を続け。
「ちょいとばかし布団屋にね、羽を卸すようになったのさ」
「羽?」
「ああ、鳥の羽ってえのは随分とあったけえらしくてよ? 布団屋の旦那が羽を集めようとしてたんだが、これがまた随分と手間がかかるらしい」
「そこで、ここんところ長屋の周りに落ちている羽を、ちょいとな」
 つまり、大家やご隠居には掃除と言いつつ、拾い集めたそれを布団屋に売り捌いていたと。
「へー、そんなに大量の羽が」
 すごいすごいと貞信が囃せば、徐々に場は盛り上がり。
「俺は反対した。拾い物で金を稼ぐなんて、罰が当たるに違いねえって」
「そうやってまーだ大家に叱られてんのはどこのどいつだよ」
「店賃返し終わってから文句言え」
 甚兵衛が拳を握り力説すれば、負けじと二人も反論し。
「で、結局その羽……出所にあたりはあるのか?」
 それまで黙って聞いていた天生が睨めば、これまた二人は縮み上がり、
「いいえ」
「ないです」
 そう答えるが早いか正座に座りなおした。
「さっきも大家さんとこでしゃべったけどな、この頃変な、黒いものを見るようになって……」
 だから、これはきっと祟りなんだと甚兵衛はうなだれて、あれは烏天狗やぬりぼとけ、化生の類に違いないと頭髪を掻きむしる。
(……羽と、目撃証言と。でもまだ、手がかりは遠いなあ)
 料理を勧めながら物思い、ふと貞信の脳裏をよぎったのはもう一人の人物。
「時に、与太郎君はどうなんだろう。彼も店賃は溜めてないんだよね」
「あいつは俺たちの商売に乗ったからな」
「しかもあいつ、掃除がうまくてよ」
 掃除がうまい?
 それがどう関係するのかと首を傾げれば、部屋の外に立つ天生と目が合って。今の発言に引っかかるところがあったのか、彼の体が部屋へと向いている。
「長屋つってもなかなかに広くてよ。全部を掃除するのは手がかかるだろ?」
「だから俺たちは、それぞれ場所を手分けしたうえで掃除して、羽を集めてんのさ」
「そうしたら、俺たちより与太郎一人が持ってくる羽の量がびっくりするくらい多くてよ。当の本人は、掃除がうまいからなんて笑ってやがった」
 あれには驚いたよなと笑いあう二人を前に、貞信が、天生が、それぞれ思いついたのは一つの可能性。
「なるほどなるほど。じゃああれだ。その掃除ってどれくらいの頻度でやってるんだい?」
「毎日じゃあねえなあ」
「羽がある時が掃除するときだからな」
 不定期に、羽が残され。
 そして不定期に、甚兵衛は黒い影を見て。
 そして――与太郎は、たくさんの羽を集めてくるときた。
「ようし、じゃあ僕らは与太郎くんにも話を聞いてくるとしよう」
 持たせた総菜の味も聞きたいしね、とそれとなく笑って立ち上がれば。新たに猟兵たちへと共有すべき情報は固まったと、貞信は思考をまとめながら部屋の外へと歩み出る。
 そしてそれは天生も同じこと。やるべきは決まった、聞くべきは聞いたとくれば――ここでやり残したことはただひとつ。

「……さっきは、その。あんなやり方ですみません」

 ぺこりと、部屋の中に残る熊五郎、八五郎へと頭を下げて。事態解決のためとはいえ、罪のない人に強く当たるのは、やはり良くないことだと。それを、過去の自分が知っているならば、謝罪だけは忘れずに、と。
 ただ、少々の照れくささはあり。ぽかんと口を開けた相手からの反応を待たずして駆け出せば、それを眩しそうに見つめる貞信。
 そして、

「この部屋からも豆が出ねぇー!!」

 目の前の部屋から飛び出してきたのは、いつの間にか熊五郎の部屋から消えていたアマミ。
 その口ぶりからするに、喧嘩騒ぎと宴の中、家主がいない間に家宅捜査をしていたようで。
「熊五郎の部屋は何もない。八五郎の部屋もちらかってるが実際何もない。それと今見てきたのは甚兵衛の部屋じゃが、これまたなーんもない。女物の櫛ぐらいしかないのぅ」
 仔細を報告すれば、それを聞いてまた眩しそうに目を細める貞信。
「櫛を……そうか、甚兵衛くんは櫛をね……」
 彼がなかなか店賃を支払えない理由に行き当たり、事件の捜査とは別に確信を得る。
 ああ、江戸にも愛は咲くものか、と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

星羅・羽織
絡み共闘アドリブなんでもござれ!

なるほど、事件。
めい探偵ハオリの、出番(『めい』には任意の漢字)
現場に、行けば、一発解決。
まずは、しっかり、観察。
細かい、ところまで、慎重に見れば、、きっとまだまだ証拠が、残っている。
他の人が、集めた情報と、『世界知識』も、活用して当時の、長屋まわりの動きを、シミュレーション。
脳みそフル回転。そして、糖分不足。
甘いものが、あったら、少しほしい。
モグつきながら、推理再開。
なるほど、完全に、分かった(どやん)

犯鳥の居場所か、それに繋がる人が、分かったから、突撃。
めい探偵も、たまに勢いが必要。


冬晴・キーラ
フィリップの野郎(f05496)と参戦するぜー。
やったー、おっきくてふわふわな鳥さんだー! ☆い!持って帰ろ!

大家ー! おめーがやったんだろー! 金の恨みでー★
かどうかはわかんねーけど、フィリップが足止めしてる間にこっそり忍び込んで『ぬいぐるみさんチーム』と協力して家探しするぜ☆ 働け☆
ついでに配信しとく。サムライエンパイアがどんな所か前から知りたかったし☆


フィリップとは無線でやり取りしとくぜ☆
はー? 急かすなよ、うっせーなー。今いいとこだろ☆ 小粋なトークで場を繋いどけ☆
……鳥の餌っておいしいのかな?

犯鳥が見つかったら、バーチャルインクをぶつけて跡を追跡するぜー☆


フィリップ・スカイ
キーラ(f05497)と参戦だ。

なるほどね、鳥をかくまってる住人がいるってことかい。
シンプルに家探しでもしますかね。
キーラと手分けして、部屋を調べてみますか。

というわけで、俺は足止め役。キーラが部屋を漁ってる間に家主と外で話してましょ。
聞き込みにはあんまり期待してねえけど、好きな動物でも聞きますかね。
鳥でもいいし。好きな鳥とかいます?俺は鷹とか結構好きですけどね。

適当に時間稼いだら、キーラに小声で無線連絡。
そっち行ったぞキーラー?急げー?
いやいや急げって、何遊んでんの?分かってます?
もうちょっと足止めが必要そうだったらしょうがないから多少強引にでも呼び止めますかね。
本当にしょうがねえ、全く。



●銀河大江戸名探偵
「大家ー! おめーがやったんだろー!」
 金のうらみでー★ とまで言い終わるより先に、慌ててその口を塞いだのはフィリップ・スカイ(キャプテンスカイ・f05496)
「ハイハイハイハイ急に何言ってくれてんですかね一体!?」
 ちゃんと打ち合わせしただろと顔を近づけるも、決してその口が閉じることは無く。冬晴・キーラ(星空アジタート・f05497)は首を振ってリボンをぴょこんと揺らしつつ、うーうー唸りながら★を飛ばす。
 かくして、がらりと戸が開き部屋より現れるは大家の姿。
「なんだいどうしたんだい人の部屋の前で?」
 身長的にまずフィリップと目があったならじろりと見定めるように。たはは、と気まずそうに笑う彼の顔を拝んだなら、聞こえた声との乖離をおぼえ、大家の視線はその下に。
「(うがー★)」
 依然として塞がれたままキーラの威嚇。
「元気がいいのはいいけどね、子供のしつけがなっちゃいないよ全く」
「俺そんな歳に見えますかね!?」
「はー、キレた。おいおい相棒、キーラ様キレたわ★」
 予想外の言葉を前に、フィリップが身振り手振りで抗議をすれば、解放されたキーラの口は「なんだァ? てめェ……」と呪詛を撒く。あわや、キーラのギザギザとした歯が大家に噛みつこうとした瞬間、それを留めたのは別の少女の声。
「大家の人、名探偵ハオリから、お願いがある」
 三人の視線が向いた先に立っていたのは、星色のローブを纏った少女、星羅・羽織(星空に願いを・f00376)。年齢はもちろんのこと、キーラより身長が高いなら、まるでお姉さんを気取るように「どうどう」と手で制しながら。
「現場に、行けば、一発解決」
 大家にも一緒に来てほしい、と。
「そうそう、そうなんですよ大家さん。いえね、八五郎の部屋、犯人をとっ捕まえたら弁償させないといけないでしょう」
 それにはもちろん、あの部屋の原状回復費用も含まれる。だから、その算定に付き合ってほしいと。フィリップは言葉巧みに彼らの事情を説明して。
「確かに、あれじゃあ八が出てったとしても使えないからねえ……」
 あたしがお金を出さないでいいなら――それにこしたこたあない、と。回転早く思考を巡らせれば、パンと叩いてすぐ了承。この大家、面倒見は間違いなくいいが吝嗇家であることも確かなら意気揚々と外へ出て。
「ちょろい」
 声を潜めて羽織が言えば、確かにと隣のフィリップも賛同する。
 そして、大家の後を追うように歩き出しながら背後のキーラへと向けて。
「おいキーラ、わかってんだろうな?」
「キーラ様『たち』にまかせとけって☆」
 現在、他の猟兵の活躍もあり、残り三部屋以外の探索は既に終わっている。
 そして、共有された情報によるならば、『本命』に踏み込むより前に確かめておきたいのは――残りの部屋の潔白。
「バッチリ配信しながら探してやるぜ☆」
「配信しないで真面目にやれ」
 かくして、羽織とフィリップは大家に付き添い事件現場へ。
 一方、キーラは主なき間に探索をと大家の部屋の中へ。
 それは互いを知った彼らの信頼の証か。誰一人として背後を振り向かずに進んで行けば、その先にあるのはきっと――。

『ハイ、というわけでー! 今回はサムライエンパイアに来ているよー☆』

「俺の話聞いてましたかねえ!?」
「なんだいまた急に!?」
 事件現場、突如として叫んだフィリップに当然大家は怪訝な顔をする。
 隠し持った無線機から聞こえた声に思わず反応してしまったなら、さて言い訳はどうしたものか。
「キャプテン、ときどき発作がある」
 これは持病だから、と。羽織が雑なフォローを入れれば、したくない賛同を強いられたフィリップは苦笑を浮かべて言葉を続け。
「あー、はいはい。実はそうなんですよ。緊張すると急に叫びたくなっちまうんですよね」
「けったいな病もあるもんだねえ」
 可哀そうなものを見るような目で一瞥すれば、また壁の傷や畳の汚れへと視線を戻して。ああこれはとっかえだ、これは業者だとすらすら算定を続ける大家。
「まずは、しっかり、観察」
 そして雑なフォローを入れ終わった羽織はマイペースに現場の調査へ沈み込み。壁をなぞり、畳に膝をついて汚れを調べ、共有された情報と比較して。
「細かい、ところまで、慎重に見れば……」
 きっとまだまだ証拠が、残っている。――だからキャプテン、真面目にやって。
「いや俺だって真面目に……おい、おいキーラ。真面目に探してんだろうなお前」
 お前のせいだと小さく愚痴りつつも、自らの仕事はキーラによる調査が終わるまでの時間稼ぎなら――いや、羽織ちゃんの調査も手伝いますけどね? まずは大家が早々に退散しないように見張らねば。
「ようし、大体こんなとこだね」
 早い早い早い早い。
「あー、時に大家さん。好きな動物とかいますかね?」
「あたしかい? あたしはどうも四つ足はねえ」
「私、パンダ、好き」
『キーラちゃんはーたくさんあって選べなーい☆』

 いいからお前は真面目に探せ――!

「はー? 急かすなよ、うっせーなー。今いいとこだろ☆」
 場面を変えてこちら大家の部屋。キーラのマジカルメガホンによる号令の下、犬や蛇、ハリネズミなどのぬいぐるみさんチームが手分けして大捜索にあたっている。
 無線の向こうから聞こえる相棒の声に片手で耳を抑えながら、それぞれのぬいぐるみが持ってきたものをひとつずつ検分し。
「和菓子しかないのかー。おっと、それは何かなー☆」
 はい押収☆ 次にカメのぬいぐるみが背に乗せて運んできた行李を見れば、迷わずえいやと蓋を開け。
「わー! フィリップが書いてた借用書そっくり☆」
 ぎっしりと詰まっていたのは住人をはじめとする人々の証文の束。内容は、金額が描かれている以上やはり貸し借りのそれか。
『嫌なこと思い出させないでくれますか……っていうかまだ捜査終わりません?』
「小粋なトークで場を繋いどけ☆」
『……大家さん、動物じゃなくて好きな鳥、好きな鳥はありますかね?』

 ――小粋か?
 
「俺は、鷹とか結構好きですけどね」
 再び場面を戻して事件現場。フィリップが語るそれはきっと、どこまでも飛翔せんとする彼にとってのシンボルだろうか。
「あたしは、ご隠居じゃないけど雀ぐらい小さいのなら好きだね。烏ぐらい大きくなると憎たらしいったらありゃしない」
 だから、長屋周囲に黒い羽が落ちてるのを見たときは大分まいったもんだよと大家。熊や八、そして与太郎が掃除してくれるからいいものの、いつまで続くんだかとげんなりした様子。
「おかげか、最近悪夢を見るようになってねえ。夢の中で鳥がさえずるのさ」
 カァカァじゃなくてピヨピヨってのがせめてもの救いだけどね、と。
 そして、
「…………」
 一通り部屋の中を見て回ってからというもの、一向に喋らなくなった羽織。目を閉じながらぶつぶつと何かを小声でつぶやいている。
「羽織ちゃん? 羽織ちゃんどうかしましたか?」
「脳みそフル回転」
 それだけ言うと、近づいたフィリップの手を取って。
「糖分不足。飴、ちょうだい」
 はいはい、そんなことかと。ポケットに入ってましたかねと探る間に、大家は算定は終わりとばかりに扉へ手をかけて。
「おい、おいキーラ! マジでもう行くぞ!」
 羽織に飴を差し出しつつ、急ぎ無線機へ語り掛ければ、聞こえてきた相棒の返答は――。
『すげー! 春画だー☆』
「ああわかった! つまり何もないってことだな! だったらもう離脱しろ!」
 半ばもう声を抑えるのはやめて、頃合いを示したならば羽織の推理が完了するも同時。
「なるほど、完全に、分かった」
 言い終わるより先に駆け出したなら大家を押しのけて部屋の外へ。
 文句を言いかける大家を更に押しのけて、そのあとを追うはフィリップ。なんだか今日はハードですねと疲れの色を滲ませながら。無線機を通じて相棒へと指示するは本命への合流。

『オーケー、隣の部屋だな☆』

●犯鳥は夜に鳴く
 果たして、その大家の部屋の隣。
 羽織が勢いよく開け放った扉の先――与太郎の部屋の中にいたのは。
「ピヨ!?」
 突然の乱入に声を失う与太郎と、そして黒いモフっとした謎の塊。それがピヨと鳴き、そして散乱する黒い羽こそ現場に残されたものと一緒なら最早言い逃れは無用。
「報告で、気になった」
 終わった豆まきの季節。にもかかわらず、与太郎はこの前撒いたと言った。
 それが契機かどうかはわからないけれど、ご隠居の真似事ならば、それはおそらく何か鳥を招こうとした行為。
「でも、それだけじゃない」
 一歩、部屋に足を踏み込んで。羽織は与太郎と、その犯人ならぬ犯鳥に語り掛けるよう説明を続ける。
「黒い羽、掃除が、うまいって」
 不定期に散らされる黒い羽。それを多く集められる理由が、掃除のうまさというのは少々意味が通らない。熊五郎と八五郎と、手分けして掃除しているならば、掃除する面積か、掃除する箇所にその秘訣があるとしか考えられない。そう、例えば――羽の持ち主が第二の巣としている場所、とか。
「でも、そいつは消去法だった」
「実際に部屋に入るまではわかんねーもんな☆」
 追いついた二人も、同じく部屋の中に足を踏み入れて。いくら天下御免符があるといえ、乱暴な調査は避けたいという猟兵の総意を語りつつ、決め手となった事実を告げる。
「そこでね、さっき大家さんが教えてくれましたよ」
 夜中に、鳥のさえずる悪夢を見ると。
「でも、そいつは悪夢なんかじゃねー★」
 この、壁の薄い長屋。大家の部屋の隣がこの与太郎の部屋ならば――

「実際、その鳥の、夜鳴き」

 というか、大家の人には早く気付いてほしかった。
 そんな感想を抱きつつ。びしり、と羽織が人差し指を突きつければ、焦燥する与太郎の隣、犯鳥は溶けるようにその身を地面へと平べったく広げる。そして、
「ピヨー!!」
 バネのように。元の形に戻るエネルギーを活かし、高く跳躍すれば――屋根ごとぶちぬいて空へと逃避行ならぬ逃飛行!
「逃がすか☆」
 しかし、黙ってそれを許す猟兵ではなく。キーラがすかさずバーチャルインクを投げれば、付着したそれはきっと追跡に役立つと。また、あの図体と羽の色に対してまだ日は高く。青い空にあの姿を追うのは、今ならまだ容易。
「ちょいと、あたしの部屋が荒らされてるんだけど――ってなんだい与太郎、この部屋は!? ……穴も!?」
「犯鳥の、しわざ」
 追ってきた大家が状況を見て絶叫する。
「安心して。私たちが、倒す」
 自分の胸をとん、と叩いて微笑めば羽織はそのまま天井に空いた穴から跳躍。鳥の後を追う。
「そうそう、俺たちに任せてくださいって」
「飼いてー☆ なあなあフィリップ、あれ船で飼おうぜ☆」
 ☆(欲し)い! 持って帰ろ! といざ目の当たりにした鳥に興奮を隠せぬキーラの目は、名前の通り綺羅星のように輝いている。
「そ、それはいいんだけど……ねえ、あたしの部屋が荒らされていたのは……」

「鳥のしわざですね」
「鳥そういうとこあるからなー★」

 かくして、猟兵対犯鳥――追跡戦が始まる!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『大江戸大追跡』

POW   :    相手が逃げるのを、妨害しながら追いかける

SPD   :    自分が進みやすい道を探して、効率良く追いかける

WIZ   :    相手の逃げるルートを予測し、先回りする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●追跡大江戸24時
 黒い羽根を町中に舞わせながら、犯鳥は江戸の空を飛ぶ。
 一生懸命に、その丸い体を少しでも早く前に進めんと。
 あの、よくわからない怖そうな者――猟兵たちから逃げようと。

 ああ、でもお腹がすいてきた。
 ごはんの途中だったのに、なんてひどいことをするんだろう。
 
 一方、猟兵たちは地上から、あるいは空からかの鳥を追う。
 自分たちには、力もあれば知恵もある。
 ならば、考えれば楽に追いつけるはずだ、と。

 それはまるで、追いかけっこのような――鳥と猟兵との知恵比べのような。
フィリップ・スカイ
キーラ(f05497)と参戦だ。

つーわけで、鳥さんを捕まえにレッツゴー。
俺のバイクでサムライエンパイアの町並みを駆け抜けるとしますかね。

それじゃあ、キーラ、後ろに乗せてやるからナビよろしくな。
真面目にやってくださいよ。

こちとら、通行人を避けるのに気を使わなきゃいけねえですからね。
おっと!飛び出し注意ってな。
この辺はろくな道がねえ。壁や屋根も使って行くから振り落とされんなよ、キーラ!

なるほどなるほど、ここに鳥が……?
いやあ、これは寄り道でしょ。流石に気づきますよ。
おら、行くぞ。行くっつってんだろ。立て!


冬晴・キーラ
フィリップの野郎(f05496)と参戦するぜー。
大きくてふわっふわな鳥さんだー☆ 捕まえてやるー☆

フィリップのバイクに乗って追跡する☆
バーチャルインクがついてるから、バーチャルGPSで場所はわかるぜー! 

でもでも、せっかくサムライエンパイアに来たんだし寄り道しとこ☆
お団子とかあんみつとかお寿司とか食べたいしー☆
適当に嘘ついて寄り道しつつ観光する★
バレたらてきとーに誤魔化しとく☆
まー、鳥さんも栄養補給に降りたりするだろうから、そこを狙えばいいんじゃねーかなー? 鳥の餌食う?

やばげな雰囲気になったら、鳥さん一直線の最短経路をフィリップにナビゲートするー★
ルートの難易度はあいつがなんとかするだろ☆


星羅・羽織
絡み、共闘、アドリブ大歓迎!

逃げる、鳥。追う、私。
名探偵から、ハンターに、鞍替え!
真の姿、解放。私の、宇宙<魔力>から、力を借りて、狼モード。
身体能力、上昇。感覚も、強化される。
だから、におい、痕跡、辿って追跡。
江戸の町を、駆け抜ける。
屋根を、走る。川を往く、船に、飛び移る。
どこまでも、追いかける。
とはいえ、入り組み、すぎてて、少し迷いそう……。

……おいしそうな、匂いに、誘われて、少し休憩。
さっきの、飴だけだと、エネルギー不足。
お抹茶も、頂く。結構な、お手前。
ここは、ノーマークだった。手帳に、メモする。

……追跡、再開。
元気ばっちり。今度こそ、追いつく。
十分近づいたら、とびかかって、押さえつけ。



●大江戸食い倒れツアー
 江戸の町をバイクが、いいやただのバイクではない――宇宙バイクが駆ける。
「大きくてふわっふわな鳥さんだー☆ 捕まえてやるー☆」
「はいはい、ナビはよろしくな」
 与太郎の家を飛び出し、まず先行する猟兵はキーラとフィリップ。
 フィリップが運転し、キーラが後ろでナビをして。いつもの役割分担ならば、「皆まで言うな☆」と慣れたもの。先程、犯鳥に付着させたバーチャルインクの位置情報が彼女の端末へと流れ込んでくる以上、これはもはや捕まえたも同然。
(でもでも、せっかくサムライエンパイアに来たんだし……)
 寄り道しとこ☆ という呟きはバイクが切る風に流れ。
「逃げる、鳥。追う、私」
 そして声と共に彼らの隣に並び、疾走するは狼――ではなく。耳をぴょこんと、四肢をもふっと、そして尻尾はふさふさと。宇宙<魔力>から力を借りて、狼が持つ俊敏さをその形状ごと真似た羽織の真の姿。
「これが、真の姿。人呼んで……狼モード」
 狼モード。
「そのままじゃねーか☆」
「その耳可愛いですねえ」
 二人が互いに違う感想を口にすれば、羽織は満足そうに、走りながら解説を続ける。
「これで、身体能力、上昇。感覚も、強化」
 つまり、『無敵』だということ。
「へえ、大きく出ましたね」
 バイクと並走する羽織の姿にまだ余力を感じたならば、フィリップも負けじとハンドルを握りしめる。
「こちとら、通行人を避けるのに気を使わなきゃいけねえですからね」
 そう、速度を上げようとするも、まだ日が高ければ往来には人も多く。流石に事故は起こせないと今はまだ安全運転モード。とはいえ、この速度で安全運転ができているのはひとえに彼の腕前によるもので、他の者が真似をすればどうなるかはお察しと言ったところ――、
「フィリップーそこ左なー」
「もっと事前に言ってもらえませんかね!?」
 おおっと急ハンドル!
 かくして後輪が土埃を立てて曲がれば、その土埃が直撃した隣の羽織は頬を膨らませて追走する。
「キャプテン、ひどい」
「そーだそーだ、ひどいぞフィリップ☆」
「今のは間違いなくキーラのせいだろ!」
 文句を言いながら一行が疾走する先に見えてきたのは――茶屋!
 のぼりを立てて、店先に長椅子を出しているその佇まいはまさに彼女がイメージする江戸のそれならば、次の指示はもう単純明快で。
「フィリップ、ストーップ!」
「だから急に……ッ!?」
 指示と同時、建物の角から人影が飛び出したなら、バイクは咄嗟に弧を描くように軌跡を描き。
 甲高い音に土煙、そして――、

「飛び出し注意ってな……お嬢さん?」

 視界が晴れれば静止したバイクの先、座り込む女性へと手を差し伸べるフィリップの姿。
 一方の手を差し伸べられた女性はしばらく茫然としていたものの、我に返れば蒼白な顔は急に赤みが差して。おずおずと手を伸ばし。立ち上がればお礼を言ってぱたぱたと早足に去っていく。
「……キーラ、今のナビはナイスだったぜ」
 その姿を見送りながら、背後に座る相棒へと礼を言わんとすれば、
「何やってんだお前」
 めちゃくちゃ白い目。
「キャプテン、すけこまし」
 追いついた羽織も白い目。
「なんでだよ! なんでですかよ!?」
 羽織ちゃんはどこでそういう言葉覚えてくるんですかねえ、と身振り手振りで抗議の意を示すも、キーラと羽織はどこ吹く風。
「キーラ様はそういうつもりでストップで言ったんじゃないしー★」
 バイクから飛び降りれば、少女はまっすぐと茶屋へと駆け出して。
「なるほどなるほど、ここに鳥が……?」
「そうそう★」
 そこに広がる光景は、特段何の変哲もない町の茶屋。『だんご』『あまざけ』『おでん』などと書かれたのぼりが風に吹けば、それらの匂いを運んで。
「……おいしそうな、匂い」
 先ほどの飴玉だけではエネルギー不足と、羽織もキーラに続く。
「お団子ー! それとあんみつー☆」
「お抹茶も、頂く」
 町の人に愛されている茶屋なのだろう。人の出入りは途絶えることは無く。活気のある声も収まることは無く。見渡せど見渡せど、鳥の姿は無く。
「キーラ」
「おいしー☆ このお団子100本ぐらいお土産に買ってこ☆」
「結構な、お点前」
 フィリップによる静かな呼びかけ。
 そして、両手に持った団子をぱくつくキーラと抹茶茶碗を傾ける羽織。
「おいキーラ」
「あとお寿司食べたいなー☆」
「ここは、ノーマークだった」
 フィリップによる再度の呼びかけ。
 そして、取り出した端末で寿司屋を探すキーラと、手帳を取り出してこの店の情報をメモする羽織。
「おっ、フィリップ。次はあっち、あっち行こうぜ☆」
「おすすめの店、知ってる」
「完全に寄り道でしょ」
 流石に気づきますよと早々にバイクに跨ると、いいから早く乗れと合図。
 そんな相棒のつれない態度に口をとがらせながら、キーラは渋々と会計を済ませ――店員に団子を包ませる。
「鳥さんだって栄養補給に降りてくるかもしれないだろー★」
「そんなことがあるわけ……」

『ピヨー!』

 けたたましい鳴き声と共に、巻き起こる旋風。
 そして運び去られる団子100本。
「……あったわ」
 舞い散る羽の色と、逆光に映り込む姿は間違いなく犯鳥――!
「何してんだフィリップ! 追うぜ★」
「切り替え早いなオイ!?」
 実害が自らに及べば事の優先度は犯鳥に振り切って。いつの間にか定位置に座れば、キーラの端末に表示されるは今度こそ紛うことなき犯鳥の位置。
「お先に、追跡、再開」
 充電が完了すれば、元気はもうばっちりと。二人がわたわたする間に羽織は大きく伸びをして、それから姿勢を低く。一拍後、自らが模したその野生を爆発させるように地を蹴れば、その身は一気に屋根の上。
「あとはもう、私にお任せ。二人は、観光でも、してるといい」
 それだけを言うと、もう振り返らずに。次から次へと屋根を渡り、もう逃がさないと鳥を追ってその姿を小さくしていく。
「こいつは……遅れちゃいられませんね!」
 向こうが野生の嗅覚なら、こっちはバーチャルの技術。相棒のナビを信じ、エンジンを吹かせばそのバイクは変形し――ゴッドスピードライド! バイク後部にエンジンノズルが増設されれば、その推進力は更に上がり。
「ターゲットは向かって北北東へ北上中だぜ!」
 ルート選択は任せた☆ とナビがあれば、フィリップが選ぶ道はただ一つ。
「振り落とされんなよ、キーラ!」
 
 ――江戸の町をバイクが駆ける。
 ――武家屋敷をバイクが駆ける。
 ――正しくは、武家屋敷を囲むその壁をバイクが駆ける。

 長く、広く。武家屋敷の囲いはどこまでもまっすぐに続いて。それゆえに道として扱えばこれ以上ない直線だと、白壁にタイヤ痕を残しながら。速度は重力を振り切り、壁に対して直角にフィリップの愛機は駆ける。
「門の前で屋根に出るぞ!」
「お前手加減しろ★」
 ぐええええ。頭をゆっさゆっさ揺らし、リボンをぶんぶん揺らしながら、今度はキーラが文句を言う番。
 やられっぱなしじゃいないと笑えば、やがて宣言通りにバイクは宙に浮き。ハンドルを曲げればノズルの向きも曲がって、空中でその軌道を変える。
「振り落とされてたら言ってくれよ」
「落ちてたら言えるわけねーだろ★」

 開けた視界の先に犯鳥の姿を補足すれば、他の猟兵にも情報を共有し。

 ――いざ一同、北北東へ進路をとれ☆

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

神羅・アマミ
ほれ!見やれ!妾の言った通りじゃろ!豆あったじゃろ!?
妾は見っかんなかったけど!妾の言った通りじゃろーッ!?

さておき、与太郎ハウスが第二の巣なら、奴らの帰巣本能を利用してやる!
作戦名は「行って来い」!

まずはコード『特機』を発動、ビットで華麗に与太郎ハウスの衣類やシーツをハンカチ大に切り揃える。
ビットに豆を包んで括り付ければ、「与太郎の匂いがついた豆」が出来上がるよな?
更にこれを家から散開させ、鳥を追わせれば、当然こぼれた豆が勝手に撒かれる!
追尾させたビットは鳥を引き返させるよう村の外側からつつき、与太郎ハウスへ誘導!
与太郎と豆の匂いにつられ、安全な場所へ逃げ戻ろうとすること請け合いって寸法よ!


光・天生
単純な力任せ、体力任せとくればこちらのものです。
【ダッシュ】で猛然と鳥の後を追うとしましょう。

龍氣一極により、氣を右肩へと集中、「攻撃力重視」の強化。
手の中には、長屋で拾ってきた豆。

「……豆が欲しいか、そらやるぞッ!!」

指で挟んだ複数の豆を、強化した肩力と【怪力】に任せ
空を飛ぶ鳥目掛けて勢いよく投げつけ、飛行を妨害します。
他の猟兵が先回りしてるなら、【殺気】を放ってそっちに追い込むのもいいですね。

接近のチャンスがありそうなら今度は氣を足裏に集中。
建物の壁を蹴り、屋根に駆け上がり、一気に鳥を捕……捕ま……
え、何これふわっふわ…………。
……ハッ、雑念!!
クソッ……思った以上に強敵だ……!


落浜・語
ここまで来て逃がしはしないからな。
……にしても大きいな。

使えるものはとことん使う、とりあえずはカラスを呼んで追跡。同じ高さなら見逃すことはないだろう。多分。周囲に迷惑かけそうなら、それを妨害。
食い意地張ってるみたいなんで、案外、豆とかちらつかせたら寄ってきたりしないか。

アドリブ、絡み歓迎



●鳥は豆のみにて生きるか
 江戸の裏通りを、少女が行く。
 布をなびかせながら駆ける少女は、叫ぶ。
「ほれ! 見やれ! 妾の言った通りじゃろ! 豆あったじゃろ!?」
「ありましたね」
 対照的に、必要最低限の回答を返すだけなのは共に駆けている天生。
「妾は見っかんなかったけど! 妾の言った通りじゃろーッ!?」
「先行きますね」
 なんじゃとぉー!? と指摘するアマミを一瞥だにせず、ようやく回って来た体力勝負に天生は走るペースを上げる。ただ猛然と。余計なおしゃべりは不要とばかりにアマミとの距離を突き放して。

「確かに豆はあったが、そいつは何だい?」

 ちゃーんと人の話を聞けー! と叫ぼうとしたところ。自分への返事が確かに聞こえたならば、その声のする方角を向いて。すると、頭上にはこれまた巨大な鳥の影。
「ぶ、分裂するとは……妾の目をもってしても読めなんじゃ……」
「俺だよ、俺さ」
 あわあわ慌てるアマミの姿をからから笑いながら、その影より顔を出すは語の姿。自らが呼び出した大カラスに騎乗して、粋に空から犯鳥を追う様子。他の猟兵から情報の共有があるならば、まずは追いつくよりも観察をと、高さを保って追走中。
「びびびっくりさせるでないわ! おうおう優雅じゃのうそっちは!」
 速度を落とさぬままに駆ければ、いよいよなびく布もまた風を受けて空へと舞い上がらんと。やがて無風、色々と落ち着くと共に、語がその布の正体を知りたがっていることをわかれば――一転得意気な表情で答える。
「与太郎のせんべい布団じゃよ!」
「与太郎の、せんべい布団」
 そうかー、与太郎の布団かー。
「そいつはまた、どうして?」
 その反応は、正しい。
「えっ、わからん? わからんかー!」
 ますます得意気になれば、まず土煙を立て足を止め。それから「いざや」とその布団を放り投げれば、間髪おかずに呼び出したるは剣の傀儡――コード『特機』なるアマミの号令の下、無数のソードビットが瞬時にかの布団をハンカチ大に斬り揃える。
「この布には与太郎の匂いが染みついておる。そして、かの犯鳥は与太郎になついておる。つまり……」
「与太郎さんが今夜寝るのに困るわけだ」
「そう! そうだけどそうじゃない!!」
 今はどうでも……どうでもよくないけど重要なことではないのじゃ、と。
 その答えに興味を持てば、語はカラスに速度を落とすよう指示をして。アマミの頭上を周回しながら――一方で犯鳥の行く方向を捉えることも忘れずに、その答えを待つ。
「つまり、この布切れは、与太郎の匂いをもって犯鳥を惹きつける手段に使えると思うのじゃ」
 喋りながら、ハンカチ大となった布団に懐から取り出した豆を少量ずつ包み。
「そして、そのただでさえ惹きつけるもので……さらに惹きつけるものを包んだら……お主はどうなると思う?」
 にやり、と。
 数多のソードビット、その剣先にひとつずつ包みを結び付ければ後は言わずもがな。行ってこーいとアマミが指を突きつければ、次々と空に飛びたち犯鳥を追う。
「なるほどねえ。カレーもうまけりゃうどんもうまい、カレー南蛮はなおうまいという話かい」
「なんか例えが安っぽいんじゃが!?」
 答えを確かめたなら、語は満足したように手を打って。そして彼が懐から取り出して見せるもまた、豆。
「なあに、俺も考えたことは同じでね。奴は食い意地が張っているみたいなんでね」
 こいつをちらつかせたら寄ってきたりしないか、なんて。
「ほほう? まさか妾と同じ考えの者がいるとはのう」
「ここはひとつ、共同戦線といこうか」
 かくして、お互いの手段と目的が一致したならば――!

●鳥は豆のみにて生きるにあらず
『ピヨーッ!!』

「うわめっちゃ警戒されてるんじゃが!?」
 語の大ガラスに乗せてもらい、ようやくのことで距離を詰めたところ。豆を見た犯鳥は寄ってくるどころか、どこか豆を見て怯えた様子で更に速度を上げる。
「このカラスが怖すぎるんじゃないかえ?」
「いやいや、ちょいと待っておくれよ。どうやらあれだ、あれ」
 そう言って、笑いながら語の長い指が差した先には――。
 
「……豆が、欲しいか?」

 深呼吸。
 丹田から氣を行きわたらせれば、強化された体そのものを弓として。右手の指で挟んだ複数の豆、それを矢とするならば右肩からその先は極限まで後方に引き絞り――頭から体幹を通して足までを弦と変えて……『龍氣一極』今、放つッ!

「そら、やるぞッ!!」

 嗚呼、それは豆を勢いよく犯鳥にぶつける天生の姿。
 そこには何らの悪意もなく、ただまっすぐな少年がとる解決の手段。
 考えてみれば、この世界だと鉄砲伝来から数えて100年経ったかどうか――此度は散弾銃の伝来か? 豆自体が着弾時の衝撃に耐え切れず弾ける音を立てるなら、その威力は如何程のものか……想像するだに恐ろしい。
 これなら豆を恐れたって仕方がないやと、見た者すべてが納得のワンシーンに対して、アマミ。
「何してくれてんのじゃあいつ!?」
 こ、こわー! こわいわほんとー! と震えるその隣で語は愉快そうにやんややんやと膝を叩く。
「いやあ、同じ豆でもみんな色々と考えるもんだねえ」
 そしてようやく、その上空の様子に地上の天生も気づき。一瞬、大カラスの存在に面食らったものの、上に二人の姿が覗いたならば聞くより前に理解して。
「ようやく。じゃあ、そっちに追い込むようぶつけますね」
 素早く地を蹴れば全身から殺気を放ち、両手に豆をリロード。
「悪鬼羅刹じゃろうか」
 羅刹ですから。
「まあまあ、周囲に迷惑かけないようにするのは大事さ。……頼むぞ、カラス」
 天生の姿勢に賛同したならば、語もカラスに語り掛け。追い込まれて此方へと来るだろう鳥を捕縛すべく、その心構えを共有する。
 そしてアマミも気を取り直し、再度周囲に特機を展開すれば――。

『ピッ、ピヨヨーッ!!』

「行きましたよ、そっち!」
 天生に脅された犯鳥は、あわれアマミと語の方に。
 しかし、それは追い込まれたというよりも――助けを求めに来るかのよう。
「受け止めろ、カラス!」
「これ、カラスのこと仲間だと思われてるんじゃないか……え゛っ」
 泣きつくようにまっすぐに飛んできた犯鳥の質量はどれほどだったろうか。触れた衝撃で吹き飛ばされそうになりながら二人は必死にカラスへしがみつく。
「いやあ、これきっと与太郎さんの布団のせいじゃないかい?」
「? ……ああ!」
 子供が親に泣きつくように、犯鳥が頼ったのはきっと餌をくれていた与太郎の匂い。それが、自分と少々似た姿の者から漂ってきたならば、味方と思って抱きついてくることもあるかもしれない。
「いやでもこれ、このまま捕まえるにしても妾たちだけじゃ……」
 一生懸命カラスが抑えているも、犯鳥もなかなかのパワー。むしろ、二人が落ちないように頑張っている分、カラスがパワー負けしていることも否めない。一度、犯鳥をおとなしくさせなくては――。

「勝機!」

 追い込んだ張本人たる天生が追いつけば、この機を逃すまいと。溜めた氣を足裏に送り込み、集中。地を蹴り、壁を蹴り、駆けあがった先で屋根を蹴り――その踏み込みが生むエネルギーは、宙を駆けるには十分すぎる!
「俺が、抑えます!」
 カラスと犯鳥を挟み込む形になり、その後方からしがみつけば後は……後は?

(え、何これふわっふわ……)

 すぅ、と吸い込まれそうになるその羽毛に一瞬、天生の思考が途絶える。
 それは彼にとって初めての感触だったかもしれない。何せ、ふわっふわで、もっふもっふで、すぅっ……である。犯鳥の体温も合わさればそのまま寝入ることも容易く。まだ12歳の少年が、育ち盛りの彼が、未知の感触にどうして抗うことができようか――!?
「……ハッ、雑念!!」
 よし抗った!
 しかし、抗えど呼吸を一度乱されたなら、その四肢に本来の力は宿らず。一生懸命体重に任せて下に引こうとするも、犯鳥の浮力を奪うには至らない。
「クソッ……思った以上に強敵だ……!」
「こっからだと全然そんな風に見えないんじゃが!?」
 さっさとこやつを引きずりおろしてくれー! とアマミが叫ぶ一方で、語が閃いたようにカラスへ語り掛ける。
「ようし、押してもだめなら引いてみようか」
 抑えようと押し合えど状況が改善しないなら、次にとるべきはこの状況を活かす一手。通信機で他の猟兵と連絡を取り合えば、目的地は決まったと他の二人に作戦を告げる。
「この状況で、逃げるんですか?」
 羽毛にうずもれたまま、その表情は見えないけれど怪訝な声で天生。
「そう。俺たちが逃げればきっと、味方がいなくなると思って追っかけてくるだろう?」
 だったら、そいつを活かして誘導しちまおうと語は言う。
「じゃが、誘導といってもどこに行くんじゃ?」
「そいつは当然――」
 俺たちにとって都合のいい場所さ、と。
 答えになっていないと不満を漏らすアマミを余所に、カラスは向きを反転。語の指示のもと進路をとる。
『ピヨ? ピヨー!』
 そして予想通りに犯鳥もカラスを追うならば、果たして当初の追跡劇とは逆の様相で。

「……もしかして俺、しばらくこのままですか?」
 一人、天生は戦いを続ける。
 雑念を払い、埋もれ、払い。
 それは、語が言う都合の良い場所までの――しばしにして、長い戦い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

キギ・レインメーカー
おもったより可愛らしい見た目だね、サクッと追い詰めようか
【行動方針】
普通に追いかけるのはみんながやるだろうから俺は少し違った角度から攻めようかな
「レプリカクラフト」で「仕掛け罠」を制作つくるよ
「世界知識」と「逃げ足」を基に逃走ルートを予想して「仕掛け罠」を設置
「仕掛け罠」を「迷彩」で細工して目立たないようにしておけばバッチリかな
あとはみんなに任せるよ
【その他】
連携、アドリブ歓迎です


坂上・貞信
いや、今回も良いものを見た。
これだから猟兵稼業は止められないね――

しかし、仮初でも人と共生したオブリビオンね。
何ともやり辛いというか……
ま、少なくとも今は市民の安全を優先すべきと。

さて。
見たところサイズは兎も角どうも雛。
食事を邪魔され慣れぬ飛行。
直に栄養補給が必要になるかな。

餌場と言えそうなのは……街中で田畑も無い。
店舗、それとも餌やりするような寺社でもあるか。
飛ぶ方向と照らし合わせ、
先回りで待ち構え集団で掛かるとしよう。
先んじて豆を撒いとくのもアリかな?

『我が愛しき部下よ来たれ』
さあ行くよ。怪獣駆除も我らの務め。
豆と網を両手に構えろ。

……こういう仕事ばっかりでも、
良いかもねえ。なんて。はは。



●追うより待ちたいお年頃
「よーし、仕上げのタイミングだね」
 キギが空より町並みを眺めるところ、視界の情報を世界知識に紐づければ、脳内地図は鮮明に。街並みが浮かび上がれば、逃げる者の気持ちとなって逃走ルートを考える。その結果、彼が脳内地図へとつけた印は、点在する飯処に茶屋の位置。それらが点々と続く先にある場所こそ、犯鳥はやがて訪れる――はず。
「うんうん。帰るとしたら、元々の餌場だろうね」
 一方、実物の地図を広げながら貞信。あの姿は、サイズ兎も角どうも雛。食事を邪魔され慣れぬ飛行、不幸がその身に積もるなら、どこかの餌場で休むだろう。
(すると、そこは一体……?)
 現在地を把握すれば、指でなぞるように地図をあたるも、町中ならば田畑の類はなく。かといって、通りにいつまでも居座れる体型でなければ茶屋や飯処は帰る場所ではない。
「だから、きっと」
 残る選択肢は?
「おそらくたぶん」
 自然と二人がたどり着いた先――それは、人多い江戸の町中において数少ない開けた場所。そして、建物ばかりの江戸の町中において数少ない緑に包まれた場所。
 そう、神社。
「この世界の神様もびっくりだ」
 石畳を踏みしめながらキギが見上げた先、ただ悠然と、そこにあるのは赤い鳥居。
「果たして、あの鳥も神頼みをするのかな?」
 軽く礼をするようにくぐれば、貞信もまた何らかの雰囲気を感じ。
「なるほど、神様の居場所というやつだね」
 騒ぐのは忍びないけれどと豆を撒き、やがて点々と続けていくは境内。開けた場所へ誘い出すべく、これはちゃんと後で拾うからと見えない誰かに言い訳をして。
「そうそう、ちゃんと片づけるからね」
 豆の先には罠。罠。罠。
 貞信が豆を置いたその先にひとつずつ仕掛け罠を設置していくキギ。レプリカクラフトでどんどん増やせば、その数が足りなくなることは無く。
「ついでに、迷彩加工もしちゃう」
「おおっと、君も悪だねえ」
 じゃあ僕もと、貞信が背後に呼び出したのは――。

●大吉:待鳥来る
 かくして、予想通りに。
 いいや、その少し前に他の猟兵から連絡があったなら確定した未来だけれども。
「おー、来た来た」
 待ち合わせの相手を驚かすように、拝殿の影に隠れて嬉しそうなキギが見るのは、大きな鳥の姿。何かを探すように、ふわふわと。
「みんなの手筈も上々だね」
 流石だなあ、と感心する貞信は一方茂みの中。そして、同じ茂みから他の頭もぽこぽこと。どんな世界でも律義に付き従う彼らの部下――死霊たちは、主に従い機を伺う。
「罠にかかったら一気にとびつこうか」
「ようし、わかった。――皆の衆、両手に構えろ」
 互いに離れた場所に潜めど、声の届く範囲ならお互いにタイミングを合わせるように。二人のやりとりに了解したなら、死霊たちの手にはそれぞれ捕り物の品。
『ピヨー……』
 やがて、見失ったのか。何かを探すのを諦めれば、犯鳥は手近な餌場を見つけて。羽を休めんと境内に降り立てば、その目が向く先は――豆。
「おっ、見つけた見つけた」
 恐る恐ると近づけば、そのもふもふとした体に隠れきった足の先でつんつんと豆をつつき。
「やっぱり鳥だからね」
 そして――蹴る。

「「蹴った!?」」

 豆が好きと言われる鳥が、豆を蹴った!?
 にわかには信じられない光景を前に、思わず前にのめりそうになる二人。そしてわたわたする死霊たち。
 この短時間で豆に余程嫌な思い出でもできたのか、目の敵といわんばかりに蹴る。蹴って次の豆を見つければ、蹴る。そしてまた次の豆を見つければ――、

『ピヨォー!?』

 むべなるかな。やはりというかなんというか、豆の先にあった罠にかかる犯鳥。咄嗟のことによる混乱に加え、足にかかった縄を外せぬのなら、その巨体はごろごろと境内を転がって。
「かかった!」
「かかれかかれい!」
 全て、手筈通りに。
 勢いよく拝殿の影からキギが飛び出せば、茂みから飛び出すは貞信と部下の皆さん。お縄だお縄だと、掛け声と共に投網。そして無用となった豆の代わりに投げ縄を回し――おっとここだけ西部劇。
「他のみんなが来るまで、おとなしくしててもらうよ」
 犯鳥が暴れれば暴れるほど、他の仕掛け罠がそのもふもふに絡み。
 ごめんね、と。キギが謝りつつも、既にその罠達が大半の自由を奪えば、後に押しかけれるは死霊の群れ。
「やあやあ、御用だ御用だ」
 これ、言ってみたかったんだよね、と笑いながら。着流し姿の貞信はその光景を後方から見やり。部下の務めが労働ならば、いい仕事だと称賛を贈るのが彼の務め。
『ピィッ! ピヨヨッ!?』
 その言葉に反応するように犯鳥がばたばたと動けば、辺りに舞い散るは黒い綿毛。
 まだまだ食べ盛りと言ったその様相をまじまじと見つめれば、思ったより可愛らしい見た目だとキギ。
「仮初でも、人と共生したオブリビオンだからね」
 その点、少々のやりにくさはあるけれど、と貞信が感想を漏らす。
「ま、少なくとも今は市民の安全を優先すべきと」
 事情はともあれ仕方ない。
 それもまた猟兵稼業なら、時にはこの手を汚すのも厭わない――。

「部下の手じゃなくて?」
「そうとも言うかもね」

 そんな軽口を叩きあう境内に、遠くから聞こえてくる他の猟兵の声。
 かくして、これで捕物劇は終了か。
 気づけば、高く上がっていた日は傾き始め、白色だった石畳には徐々に茜が差し始めている。

 ああ、めでたしめでた――?

 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『まっくろピヨたろう』

POW   :    超もふもふひっぷあたっく
単純で重い【もふもふなお尻 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ぱくぱくもぐもぐ
戦闘中に食べた【食べ物 】の量と質に応じて【眠くなってしまうが】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    もふもふあたっくはいぱー
【もふもふ体当たり 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠御剣・誉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夕暮れ時
 夜になる前に捕まえられてよかったと、ばたばたする犯鳥を見て誰かが言った。
 この色だと、闇に溶けて消えてしまいそうだから、と。
 そいつは詩的な表現だと誰かが返したならば、賛同したのは突如として風。鳥居を抜けてきたそれは果たして、如何なる力が働いたものか。

 ――境内に風が吹けば、黒い羽を宙に吹き上げる。

 その色が、周囲を一段と昏くしたならば、まるで夜が来たように。
 そして、

『ピヨ……ピヨーッ!』

 舞い上がった自らの羽がその身を覆えば、犯鳥は今迄で一番大きく鳴く。
 すると、かの姿は徐々にふくらみ――ふくらんで。ぶちり、と網を弾き飛ばせば、同じように自らを拘束する罠もまた、ぷちりぷちりと。
 やがてふくらみを終えたその巨体は、今まで追っていた姿よりも二回りほど大きく。茫然とする猟兵たちを圧倒的存在感で見下ろすその姿こそ、(あまり変わっていないけれど)犯鳥の真の姿か。

『ピピピピピ……ヨッ!』

 これ以上逃げられないとわかれば、戦う姿勢を明らかに。
 邪魔する相手はもふもふのおしりぺちゃんこにしちゃおうと――犯鳥は猟兵たちに向けて跳躍する!

 つぶされないよう、頑張れ猟兵。
 ぜったいつぶされないよう、頑張れ猟兵。
 あぶないからほんとほんと。ぜったいぜったい。
神羅・アマミ
所詮は人に仇なすとなれば躯の海に還すが運命!
剣聖形態にてお相手つかまつる!

巨大化したということは、これ即ち自らのすばしっこさを放棄したと見てよいのか?
コード『見切』を発動し、出鱈目な動きで回避を試みる!
当たらなければどうということはない!
奴の周囲を飛び回るついで、羽毛を削り取ることで奴の機動力を更に削ぐよう試みる。
そのうち奴さんがおねむになってくれればこちらとしても手間が省けるんじゃが…

ところで、この刈り取った羽毛って一緒に消えちまうんじゃろか。
与太郎氏の布団、切り刻んじまったしこいつで新調できんもんかにゃー。
時として捨てねばならん過去はあるが、大切な思い出に生きることだってできるはずじゃろ?


光・天生
や、やっと解放された……。
しかし俺は肉弾戦専門。
戦うとなると、また直接触れなくちゃいけないんですよね。
ふわふわピヨピヨしていてもオブリビオン。
情け容赦無用……かくなる上は。

手刀を用いた【グラップル】で、あのもふも……黒い羽を削ぎ落としてゆくことにしましょう。
羽毛の防御力は侮れませんし、これもある種の【鎧砕き】です。
狙うつもりはないけど、知らない間にいい感じのカットになってるかもしれません。

「春遠からじ……その羽毛、そろそろ邪魔だろ!」

……戦闘に際してはまあ、うっかり敬語が抜けることもありますが。
重量に任せた攻撃を仕掛けてくるなら、【怪力】で押し返すなど、こっちも正面きった対策をしましょうか。



●バーバー猟兵大江戸店
「っぶねー!」
 予備動作が緩慢なら、見切るのは容易。
 いくら声を出そうが、容易ったら容易。
 アマミをはじめとする猟兵たちは散り散りとなって犯鳥と距離をとれば、各々が得物を取り出し囲みにかかる。
「や、やっと解放された……」
 その中には既に疲れた様子で、天生。
 もふもふの雑念を払うべくつい先程まで静かな激闘を繰り広げていたのであれば、その精神はひとつの高みに至りつつも――消耗を隠せない。
 しかし、自らの事情で敵は待ってはくれない以上、少年はその敵を見つめ、改めて倒すべきオブリビオンの姿かたちを観察する。

 ――ふわふわしていて、ピヨピヨしている。

 観察して、また悩む。
 何故なら彼は肉弾戦専門。
(戦うとなると、また直接触れなくちゃいけないんですよね……)
 先ほど味わった、恐るべきもふもふの誘惑。
 そう、決して相手が可愛くて殴りにくいのではない。多分、恐らくそうではない。あのもふもふの雑念が、少年の手に残るもふもふの感覚が、彼の拳を曇らせるのだ!
「いえ、オブリビオンである以上情け容赦無用……かくなる上は」
「そうじゃ! 所詮は人に仇なすとなれば……躯の海に還すが運命!」
 たとえそれがもっふもっふのぴよぴよであろうとも、と。
 天生の決意を後押しするように、今までとは構えを変えてアマミ。
 その、だらりと傾けた首が、肩に担がれし黒塗りの大太刀を抑えれば――大見得と共に、それを勢いよく振りぬく!
『ピヨ?』
 其は、風切りの銀閃。
 出鱈目な構えの、出鱈目な速さの抜刀術ならば。音はすれど、そこに太刀筋等見えるはずもなく。例えその身が斬られたとて、かの鳥にはその痛みすら感じることができたかどうか。
『ピヨヨヨ?』

 ああ、<例え>その身が斬られたとて。

「お主の機動力は、その羽毛と見た!」
 そう、かの大太刀が切り裂きしは、巨体ならぬ、巨体を覆うもっふもふの綿毛。勢いよく断たれれば、刈られたそれは雪のように周囲へ舞い始める。元より狙いがそれならば、アマミの哄笑は境内に響き渡り――、
『ピヨーッ!』
 かき消すように、甲高い鳴き声。
 羽毛を刈られれど、その身に傷がないならば犯鳥は依然として元気。
 体を縮めると、そのエネルギーを跳躍した時とは別のベクトルに向けて解放。すなわち、超高速体当たりでアマミを狙う!
「クハハハ……見える、見えておるぞ其方ー!」
 負けじと、さらに張った声でアマミ。
 狙われれど、その勘に根拠のない自信があるならば、彼女は依然として無敵。
 眼を瞑ったまま、あてずっぽうに跳べば体当たりを回避!
 回避したという結果がある以上、犯鳥の攻撃は逆説的に予想通りであり『見切』済!
「そうだ……そしてその羽毛は、お前の鎧でもある!」
 この機を逃すまい。
 避けられたまま、その勢いを殺しきれず境内の木へ衝突した犯鳥の背後――天生が駆ける。
 その手に、敵を砕く拳は握られず。されど、ぴんと伸ばした5本の指は、体の一部にして鋼のような鋭さを宿すよう。
「お前に捧げる祈りは……ッ!」
『ピヨー』
 おっと雑念!
 されど、天生の狙いもまたアマミ同様、犯鳥そのものを狙うのでないならば、彼の放つ手刀が止まることはなく。その黒い鎧を削ぎ落すかのように、高速の一振り――『我が手は祈りを為し得ない(アキエース・ペッカトルム)』にて羽毛を断ち切る。
『ピッ! ピィヨ!』
 ならば、と。その身に傷を負わぬなら、やはり変わらず起き上がり、再び天高く跳ぶ犯鳥。今度こそ当ててやろうと溜めは少なめ高度は低く、落ちる猶予は短めに。
 しかして、周囲を飛び回らんとするアマミには届かず。彼女が跳ぶたびに羽が舞えば、それは如何なる園芸屋、あるいは散髪模様と言うべきか。
「クハハー! 刈れぃ刈れー!!」
 さあ、目を回せと更に速度を上げて。速度に応じて、カットは増えて、カットが増えれば――境内には綿毛がどっさり。
『ピピピ!』
 寒さを感じてか、はたまた身軽さを感じてか。あるいは、その笑い声がくちばしについたのだろうか? 犯鳥も負けじとアマミの姿を追わんとしたところ、そこでようやく、自由の利かない体に気づく。
 おそらく、お腹でつっかえて見えない部分。その、先程跳躍後に着地した場所――足元に、天生。
「春、遠からじ……」
 あの小さいのが、その両碗で、この身が生み出す全ての衝撃を受け止めたのか? 下部より聞こえた声に対し、信じられぬといった鳴き声で犯鳥。
『ピョー!?』
 その返答の代わりにと、天生が、天生の怪力が、がっしりと。今度こそがっしりと犯鳥の体を掴んで離さない。そして、離さないどころか。
「その羽毛、そろそろ邪魔だろ!」
 下から、犯鳥をひっくり返すべく気合を込めて。いよいよごろりと転がしたなら、そこへ間髪おかずに叩き込まれる連続手刀。カット、カット――勝った!

「お似合いだ、その格好!」

 羽毛舞い散る、黒き雪降るその先に……茶の相貌が光る。
 おお見よ! これぞ――雑念を克服した少年の新たな力!

●イェーガー寝具屋大江戸店
「よーくやった! 今じゃー今のうちにたっぷり刈ってやるのじゃー!?」
 天生がひっくり返し、よちよちしている犯鳥を見やれば、アマミも今のうちにと足を止めて。沢山の綿毛が集まったことを確認すれば、にっこり微笑み良い笑顔。
「これだけあれば、布団を作ってやれるかにゃー」
「布団?」
 なんでそんなものを、と手刀は続けたまま、世間話をする理容師のように天生。オブリビオンの排除こそ依頼内容なら、他に何をすることがあるかと。
「いやなに、与太郎にな」
 あやつの布団、切り刻んじまったし……と返せば、それはそうしてくださいと天生。
「ま、それに」
「それに?」
 やがて消えるであろう、否、猟兵が消さねばならぬ犯鳥の姿を見て、アマミは目を細める。
「時として捨てねばならん過去はあるが……大切な思い出に生きることだって、できるはずじゃろ?」
 与太郎と犯鳥の間に芽生えた絆を、一方的かもしれないけれど、その絆を彼女も確かに感じたならば。アマミが見据えたのは、犯鳥が消えた、その先の世界。その先の世界で生きる、与太郎のこと。
「……なるほど」
 その答えに、肯定もせず、否定もせず。天生はじっと、考える。

『ピヨー!』

 いい加減にしろーと、犯鳥が起き上がれば、おやまあ素敵なカットモデル。
 翼を奪い、鎧をはいだなら、さてさて戦いは第二幕へ。

「あとで布団作るの……手伝いましょうか」

 よっしゃーやるかーと意気込むアマミに、天生がそんなことを言ったかどうかは――果たして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星羅・羽織
絡み、共闘、アドリブ、カニピラフー。

ついに、本性を、現した。
懲らしめて、反省させる。

真の姿は、継続中。
狼モードで、跳躍、突撃!
このまま、カッコいいところ、見せる。

必殺、狼パンチ。当たったら、死ぬ、こともないけど、とても痛い。
観念(もふっ)わ、これ(にぎにぎ、もふもふ)すごく、ぬくぬく、もふもふ(もっふもふ)……もしかして、捕まった?(もふ)
……まずい予感。たすけて(もふもふ)

犯鳥、恐ろしい敵。危うく、やられる、ところだった。
今度は、慎重に。油断しない、一撃を、入れる。
『エレメンタル・ファンタジア』によって、炎をまとった、攻撃。
これなら、簡単に、拘束できない。
もふもふ惜しい。だけど、しかたない。


落浜・語
いやぁ…これはない。もふもふしすぎだろ。

『誰が為の活劇譚』で仲間を援護。
「たとえ相手がもふもふだろうと、市井に害があるならば!恐れず怯ます!多少の良心痛ませつつ、一気呵成に駆け出していく!」
こんなかね?気兼ねせずもふもふして、潰されてきてくれ。……違った、潰されないように気を付けて。

正面突破やらは他の人らに任せて、死角から回る。ぷつって刺したら空気が抜けて縮んだら面白いが、まぁ、ないな。
奏剣で刺しつつモフる。うん、もふもふは正義。

本体が折れなきゃ問題ないんで、潰されそうになったら消極的に逃げる。


キギ・レインメーカー
おお、もふもふだね…びしょ濡れにさせたら中身どうなってんだろう
【行動方針】
びしょ濡れにするつもりはないけど雨降らすくらいしかできないからね
「零れる雨」「毒使い」「属性攻撃」で毒属性の雨を降らして攻撃するよ
俺はメインのダメージ稼ぎってよりは「挑発」と「時間稼ぎ」が目的だね
決め技は味方の猟兵にまかしちゃおうか
攻撃対象が俺になったら狙い通りってことで「逃げ足」で回避に徹しようか

【その他】
連携、アドリブ歓迎です



●なぞなぞ猟兵
「上は大雨」
「下は火事」
「これなんだい?」
『ピヨー!?』

 話は少々さかのぼり、カットが終わったあたりまで。

「ついに、本性を、現した」
 こらしめて、反省させると意気込めば、羽織が犯鳥の前に立つ。
 その姿はなお、狼を模した真の姿。構えれば、刈りから繋がる狩りの時間と耳をぴょこぴょこ爪ぴんぴん。
『ピッピー!』
 対して、かかってこい! と言わんばかりに、ややスマートになった体を張って。犯鳥がそう鳴いたなら、第二ラウンド開始の合図。
「おおっと、なら俺も黙って見ているわけにはいかないね」
 話して喋って場を沸かす。士気を沸かすもお手の物と、語の口よりいざ雄弁に流れ出すは『誰が為の活劇譚(ソレハナカマノタメノモノガタリ)』!
「たとえ相手がもふもふだろうと、市井に害があるならば!」
「これが、必殺、狼パンチ」
「恐れず怯まず突き進み!」
「当たったら、死ぬ――こともないけど、とても痛い」
「多少の良心痛ませつつ、一気呵成に駆け出してこそ――我ら猟兵でございます!」
 その勇ましくも小気味いい。応援歌とはまた違う、背中を押される不思議な力に羽織の速度もまた上がり。そして、飛び掛かるその爪の鋭さも増す!
『ピィー!!』
「観念……!」
 果たして、その必殺の一撃が犯鳥の懐を捉えたならば――!

 もふっ。

 それは、速度の臨界点を超えた者にのみ見えるという錯覚によるものか?
 不思議と羽織の視界はスローになったものの、体を包む感触からすぐに錯覚ではないことに気づかされる。
「わ、これ」
 にぎにぎ、もっふもっふ。
 いかにカットされたとて綿毛はまだ多く。少女一人を飲み込むには十分に過ぎる量が、羽織の前にはあった。かくして、雑念に飲み込まれる恐ろしさは誰かが身をもって示した通り。
「すごく、ぬくぬく、もふもふ」
「おーい、羽織さん?」
 おかしな様子に語が声をかけるも、羽織は先ほどの茶屋での軽食が良い感じに消化されているところ、ぬっくぬっくのもっふもっふでぽっかぽっかである。
『ピッピッピ』
 勝ち誇ったかのように鳴く犯鳥の声が、うつらうつらとした意識に響けば、ようやく自らが捕まったことに気づいて。
「たすけてー」
 あまり危機感を感じさせない声音で、羽織の声が境内に響く。

「おお、カットがおわってもなお、もふもふだね……」

 呼び声に応じるものか、はたまた思いつきか。
 ならばお次はシャンプーかな? と。羽織の様子を見て悪戯っぽく微笑めば、キギが取り出したるは杯とフラスコ。怪しい色の液体を注ぎ込み、不思議な不思議なマジックアイテム『零れる雨』にて呼び出したるは……もくもく雨雲――毒の雨!
「びしょ濡れにさせたら、中身どうなってんだろうって」
 無邪気なコメントに反して、降る雨の色は刺激的にカラフル。
『ピヨッ? ピ、ピー!』
 打たれてしばらくすれば、どこかしびれたようにプルプルと。徐々に雨水が染み込めば、もふもふだった羽毛も水を吸って頭のあたりがべちゃべちゃに。
「うー」
 かくして、無事に――無事か? 羽織がぷるぷると羽毛から解放されれば、御礼代わりに唸り声。彼女も雨の影響を受けたなら、張り付いた前髪でその表情をうかがい知ることはできず。
「いやあ、気にしないでいいよ。猟兵同士助け合わないとね」
 良いことをしたと、キギは爽やかな笑み。
「うんうん、苦戦もまた活劇の華と」
 噺の参考になったと、語も笑えばまあにこやかに。
「うー」
 ばたり、と羽織は休憩の様子。にこやかにこやか。

『ピピーッ! ピヨッヨー!』

 と、犯鳥がその羽毛に染み付いた水を飛ばすように震え。周囲に水滴を飛ばすと、キギを睨みつければ震えたままに威嚇。
「うわ、かかるかかる」
 一方、当の本人はそれといった感想もなく飄々と。犯鳥を見上げれば、目が合って初めて直面する危機を知る。
「あれ? 俺?」
 なんだか、その姿に追われるのは夢に見そうだね、と。カットされ、さらには水で頭部のみ萎んだような犯鳥の姿。その姿を見た彼が正直な感想を呟いたなら、果たして主犯は誰だったか。
「ようし、それじゃあまた、一席」
 応援は任せろと語が再び言葉を並べ立てれば、送り出す体制は万全に。
「ささ。気兼ねなくもふもふして、潰されてきてくれ」
「ちょっとちょっと」
「ああ違った、潰されないように気を付けて」
 今。今なんか本音が聞こえたけれどとキギが指摘するも、眼前には既に犯鳥の巨体が迫り――!
『ピヨー!!』
 あわやというところで、横っ飛びに回避。
 避けられた犯鳥はごろごろと転がると、またどこかの木に当たり。なぎ倒しかけたところでまた向きを変えて、今度は逆回転でキギを襲う。
「ま、時間稼ぎは慣れてるけどね」
 逃げ足には自信があるんだ、と。方向を見切り再び回避したならば、挑発するように羽を広げ――鳥さんこちら、手の鳴る方へ。
『ピヨッ! ピヨヨッ!!』
 突進力はあれど、俊敏性はこちらが上。素早い方向転換を上下左右に繰り返したなら、いずれその巨体を支える二本足には限界が来る、はず!
「そして、俺も」
 犯鳥の死角から、語が回る。懐より取り出したるは、奇異な短剣。柄が笛であるそれは、果たして音を奏でる刃であろうか。『奏剣』と名付けられしそれを一振りすれば、風切りの音か笛の音か。
「刺してみたなら空気が抜けて……縮んだのなら面白い」
 ぷつり、ぷつりと刺してみて、もふり、もふりと手を伸ばし。もふもふの感触こそあれ、不思議と刺した手ごたえはなく。
『ピピピピピ、ピッピッピピ!』
 その一方で、刺す動作の度に犯鳥はくすぐったそうに鳴き。空気が抜けている様子はないけれど……それでもどこか、本当に縮んだように見えるのは気のせいだろうか?

「小さく、なってる」

 語の呟きに答えるよう、羽織。
 復活! 羽織復活!
 立ち上がった少女の瞳には決意の炎が宿り。その目は犯鳥を見つめ、やってくれたなと視線で燃やさんばかり。矛先がやや誤ってる気もするけれどそれには触れず。
「犯鳥、恐ろしい敵」
 危うく、やられるところだった、と。でももう、乾いたならば本調子。
「今度は、慎重に。油断しない、一撃を、入れる」
 構えられし少女の両手には、燃え盛る炎――『エレメンタル・ファンタジア』! これならば、もっふもっふに拘束されることなく、あの犯鳥をおとなしくさせられる!
「これに、耐えられる?」
『ピヨヨヨヨー!!』
 答えの代わりと言うべきか、彼女の言葉と共に足元へと殺到する炎にぴょんぴょんと。言葉にするならあちちあちちと跳ねながら犯鳥。
 それでも、頑張ってそのまま羽織を踏みつぶさんとしたところ、時間稼ぎが終わりとわかればキギから放たれる『零れる雨』の第二弾。
「まあほら、神社が火事になったら困るからね」
『ピヨヨー!?』
 高く飛ぶにも羽毛が濡れて、力が出せないならばごろごろと転がり、縮み、転がり、縮み――。
 かくして、その様子をつぶさに観察したならば、かの身が傷を負う代わりに徐々に縮むと知り。そこな三人に浮かぶのはにこやかな、とてもにこやかな、笑顔。

「上は大雨」
「下は火事」
「これなんだい?」
『ピヨー!?』

 冒頭に戻れば、そのなぞなぞの答えは今この状況といったところ。これもオブリビオンを無力化するためなら仕方ないと、火を焚き水を降らし。

 犯鳥が、当初のサイズに収まるまでは――もう少し、時間がかかりそう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

フィリップ・スカイ
キーラ(f05497)と参戦だ。

キーラ、まだあれ欲しいの?
持ち出し禁止なんですよねえ。オブリビオンだから。
え、何?持って帰ってぬいぐるみに?お前そんなことできんの?

おっと、踏みつけられねえように逃げねえとな。
なんか良い作戦はねえか?キーラ。
寿司の話は良いから!こんなときに!
いや、思いついたぜ、作戦を。
俺が動き回って注意を引くから、その間にわさびでも食わせてやれ!

踏まれんなよって?
心配すんなよ、俺を誰だと思ってんだ。

わさび食わせてスキができたらぶん殴ってやるか。
合わせろキーラ!
俺たちが引導を渡してやる!
ってなんだその恥ずかしい技名!


冬晴・キーラ
フィリップの野郎(f05496)と参戦するぜー。お団子代はきっちり返してもらわねーとな☆
えー? 鳥さん持ってかえれねー
の?
弱らせてから捕まえてぬいぐるみにしたろ★

フィリップが鳥さんにわさびを食わせてーみてーだから、お寿司屋さんまでナビゲートする☆
踏まれるなよ、ぜってーに踏まれるなよ☆

お寿司屋さんまでついたら『ぬいぐるみさんチーム』と一緒に大量にわさびを食わせるぜ★
ついでにキーラちゃんもお寿司食べる。玉子好き。
代金はフィリップが払うだろ☆

怯んだら相棒と合わせてマジカルメガホンで賑やかに派手に一撃いれるぜー!

技名はー「スーパーウルトラミラクルきらきらお星様ストライクスペシャル🌟」だ!


坂上・貞信
ふうん。人を襲わず食料を狙い、
我が身が危うくなりやっと本性を現すか。
やれやれだね、全く。

銃はちょっと剣呑過ぎる。
おいたが過ぎた子への罰はおしりぺんぺんあたりが
相場ってものさ。

刀は抜かず鞘のまま、相手のひっぷどろっぷを誘い、
『カウンター』でそのお尻引っ叩かせて貰おう。
相打ちで潰されるかな……ま、叩く手も痛いもんさ。
ホームラン狙い、長屋まで声を響かせてあげるよ。

しかし、戦闘後のこの子の処遇はどうなるんだろねえ。
部下、する事無いんだしひとっ走り長屋の与太郎くんとか
この場所の事を伝えて来なさいよ。

もしも利害関係だけでない、
オブリビオンと人間との間に友愛ってものが芽生えるなら。
ちょっと希望だと思わない?



●なべてお江戸はこともなし
『ピィーッ!』
 刈られて濡らされ刺されて燃やされ。
 猟兵たちの猛攻を前にして縮み縮んだ犯鳥は、その大きさをようやく長屋の部屋程度に戻して。その身に蓄積したダメージが目に見えてわかるなら、きっと――決着まではもう少し。
「よし、あと少しだキーラ! 決めちまうぞ!」
「踏まれるなよ、絶対に踏まれるなよ☆」
 そのフリのような警告にもかかわらず、しっかり反撃を掻い潜りながらもフィリップは愛機のスピードを上げて。犯鳥の着地を置き去りにすれば、衝撃が地面から伝わるより先にターン。進行方向は、ただまっすぐにその落下物。他に障害物が無いならば、それ行けそのままフルスロットル!
「心配すんなよ、俺を誰だと思ってんだ」
「よっしゃー☆ じゃあ例のアレやろうぜー!」
 相棒が恰好をつけたならキーラも応えるように歯を見せて笑い。構えたるはマジカルメガホン。星の意匠が輝くそれは、終わりを告げる拡声器!
「名付けてー! スーパーウルトラミラクルゥ~!」
 少女の詠唱(?)と共に宇宙バイクは音を立てて疾走し、犯鳥の眼前で跳躍。騎乗したまま、二人の拳と、メガホンがそれぞれ掲げられたなら――!

 ぼふんっ。

 突如として犯鳥が、再び犯鳥が巨大化。
「なんだその技名――っていうかなんだよコレ!?」
 相棒の技名に気を取られたところ、急に眼前で寸法が狂ったならば、頭を狙った先はいつしかお腹。バイクごと最高速で突っ込んだとして、その衝撃は如何程か。
「キーラッ、舌噛むなよ!」
 叫べた言葉は最低限。それ以上の猶予は既になく、予想した衝撃に頭を下げて、自然と身を丸めたならば。

 ぼふっ、ぽよーん。

 そんな、気の抜けた音が聞こえるかの如く。
 二人の体はバイクごと吸い込まれ――空高く弾かれる。
『ピヨッヨッヨッヨッ……』
 してやったり、と。
 静かに笑うように鳴く犯鳥の口元には、よく見れば団子のたれ。笑い声と聞こえたそれは、どこから取り出したか――いや、どこから持ってきたのか? 何にせよ沢山の団子をついばむ音であり、団子が消えるにつれて犯鳥は徐々に巨体を取り戻す。
「あー! キーラちゃんのお団子-!?」
「言ってる場合か!!」
 かくして、石畳にバイクが勢いよく転がったなら。重力法則上、高く宙に浮いた二人もやがて――同じように叩きつけられるが定め。

「はい、部下ー」

 ぱんぱん、と手を叩く音が聞こえれば必要最低限の数で。どこから生えたか、亡霊たちが二人を受け止める。
「うわー、どうせならぬいぐるみさんたちがよかったー★」
「うーん、もうちょっと部下がもふもふしてくれればねー」
 キーラの正直な感想に対して、正直な感想で貞信。
 自分たちを助けてくれたのが、今目の前でちょっとへこんだ様子の亡霊たち――貞信の部下であることがわかれば、フィリップが相棒の分も礼をしておく。
「いや全く、助かりましたよホント」
 あんな隠し玉があるなんて、と三人肩を並べて犯鳥を見上げ。
 おいしそうに団子を食べ続けるその姿は、とても無邪気で、とても――、
「ガー! このままじゃいられねー★」
 とても、キーラの逆鱗に触れた!
 あの鳥、絶対持ち帰ってやると意気込めば、相棒の袖を引っ張り。さっさとバイクを出せー出せーと、耳元でマジカルメガホン大活躍。
「うるせえうるさいわかったよ!」
 ただし、そのバイクも派手に飛ばされたなら、また起こすのも大変で。
「おおっと、終わったみたいだよ。休憩」
 貞信が指さした先、けぷりと息を吐く犯鳥が居れば、腹ごなしとばかり。じゃれつく相手として次に見つめるは――喚く二人の姿。
『ピーヨヨー!』
 フィリップが一生懸命バイクを起こす後ろで、はやくはやくー☆ とキーラ&ぬいぐるみさんチーム。犯鳥は既に飛び掛からんとしている様子ならば、急げ、急げ☆
「急いでるっての!!」

「なら、その間……僕が引き受けようか」

 二人に向ける犯鳥の視線を遮るようにして、貞信が前に出る。
 仲間を護るべく、あるいは目の前の敵をこらしめるべく。いざ、軍刀を構えたならば――刃は抜かずに鞘のまま。
 更に、珍しいことに従う部下も付けぬまま。 
「銃はちょっと剣呑すぎる」
 剥き身の刃も同様ならば、今日振るうにはこれで十分。鞘にてお相手仕ろう。
『ピーピピー!!』
 その、独特の構えに挑発されるよう、犯鳥は跳躍。溜め切ったエネルギーを消費すべく、小さくなったと錯覚するほどに高く飛んだなら――その身は流星の如く!
「おいたが過ぎた子への罰は……」
 されど、待ち受ける貞信に焦りの色は見られない。むしろ、駄々っ子を前にしたかのような年上らしい微笑を浮かべれば、流星に合わせて構えを変えて。
「――おしりぺんぺんあたりが、相場ってものさ」
 それは、伝説の一本足打法!
 ぱしん、と乾いた音が境内に響けば、その刹那に時は止まり。
 貞信自身も確かな手ごたえを感じたならば、犯鳥の反応を耳にするより先。満足そうな表情で――そのまま羽毛に潰される。
「あっ」
「結局つぶされんのかい☆」
 フィリップの応援に飽きたキーラが一部始終を見ていたところ、思わずツッコミを入れる光景。
 しかし、やがて犯鳥が苦しみだしたなら、かの一振りは無駄ではなく。あの乾いた音こそ、貞信の身命を賭したカウンターによるものであり――自らの衝撃が丸ごと返される形で、徐々に痺れが犯鳥の全身を包む。
『ピィピョーヨヨヨヨヨー!!!!!』
 それは、もしかして長屋まで届いたかもしれない。まさに、悲鳴といった様相で耳をつんざく鳴き声ならば、貞信の想定通りといったところか。
 犯鳥がじたばたする接地面において、もふもふの中から親指を立てた右手が見えたなら、たぶんきっとその通りで、たぶんきっと平気なご様子。

「お待たせしましたねえ」

 そこに、再びのエンジン音。
 音がする方には、バイクに跨るフィリップと、バイクからやや離れてキーラ。そして、それぞれぬいぐるみさんチーム。
「ようし、お寿司タイムだフィリップ!」
「オーケー……作戦通りに行くぜ、キーラ!」
 普段であれば、寿司の話はいいからと指摘するところ、ノリノリにフィリップ。スロットルを開けば、苦しむ犯鳥の周りをぐるぐると回り始め。
 一方で作戦が承認されたなら、一体ずつどこからかお寿司屋の包みをもってキーラ軍団は進軍! 犯鳥が周囲で音を立てるバイクに気を取られているなら、接近するは今! ムーブムーブムーブ、とキーラ隊長のもと一糸乱れぬ行進ならば、犯鳥の口が見える、頭の側までいざ駆け足。
「ぜんいーん、とまれ☆ かまえ☆ そしてー……投げろ☆」
 痺れる体で、一生懸命残りの団子を食べようとしている犯鳥のその口に、キーラ軍団がおすそ分けとばかり投げつけるは――激辛わさび寿司の数々! もはやクリスマスカラーのマグロ、緑が透け切ったイカ、わさびそのものまでをも投げつけたなら、より大きな鳴き声が江戸中に響き渡るぐらいの勢いで。
『ッッッッッッピィィィィィィ!?』
「おや、ようやくどいてくれた」
 辛さが痺れを上回れば、そのまま転がって苦しみ始め、縮み、萎み。
 そうこうするうち、下敷きの貞信も解放されて。さてはてと埃を叩きつつ眺めるは、その時が近づいてきた、二人による決着の一撃(リベンジ)。

「合わせろ、キーラ!」
「ほっふぇーふぃふぃっふ」

 フィリップが拳を振り上げれば、やはりキーラはメガホンを構え。
 玉子おいしー☆ とちゃっかりお寿司(サビ抜き)を口いっぱいに頬張っているために、キーラの返答はよく聞き取れないものの、動きこそぴったりと合わせているならば、それ以上のことをフィリップは正さない。
「俺たちが、引導を渡してやる!」
「ふーふぁーふふふぉあー……」
 ごくん。
「きらきらお星様ストライクスペシャル🌟」
「ってなんだその恥ずかしい技名!?」
 流石に正した。
 ただし、正されたとはいえ、その威力に修正はなく。拳とマジカル、息の合ったツープラトンによる波動が犯鳥の体、その中心でクロスするように伸びたなら、それは決着の一撃に相違ない。
『ピッ……!?』
 ワサビにより萎んだ体に、物理と魔法のエネルギーが押し寄せて。弾き、弾き、やがて弾く力が不足したその瞬間を、二人のスーパーウルトラミラクルきらきらお星様ストライクスペシャル🌟は見逃さない!
「長い!」

 かくして、黒い羽が散る。
 激闘を超えて、黒い羽が散る。
 その身が貫かれたなら、まるで空気が抜けていく風船のように。
 風を生むと共に、加速度的にその大きさは失われていき――。

『ピ』

 全ての風が消えた、その時。
 黒い綿毛の山の上、黒いヒヨコがピィと、不思議そうな顔で猟兵たちを見つめていた。

●大江戸に日は暮れて
 オブリビオンが怪異の類なら、この世界に生きる者へと憑りつき、宿ることもあるだろうか。そんなことを、猟兵たちは顔を見合わせ考える。
 そこに残るひよこに、すでにおかしな力はなく。だとすれば今回は――なんて疲れる厄落としと、ため息をつきながら。

「ピヨ太郎ー!」

 声が聞こえれば、境内に駆けこんできたのは与太郎。と、亡霊。
 戦闘に参加させていなかったなら、主である貞信から部下に命じられた仕事はただひとつ。犯鳥と与太郎との間に友愛を感じた以上、その結末を知らせるのもまた猟兵の仕事、と。
「おや与太郎くん、待っていたよ」
 ささ、と通された先に与太郎がひよこを見つけたならば、はてさてどういう反応か。ぬいぐるみにしたいと騒ぐキーラの口をフィリップが抑え、猟兵一同固唾を飲み見届けるその光景。

「ピ、ピヨ太郎……?」

 与太郎は肩で息をしながら、その名を繰り返し呼んで。そこにいる『ピヨ太郎』の、自らが知る姿とはかけ離れた小ささに目を丸くする。それでも、それでもゆっくりと、大事そうにその『ピヨ太郎』を両掌で持ち上げたなら、一人と一羽、じっと見つめあうこと数十秒。

「……お前は、大きくても小さくても、ピヨ太郎なんだね」

 そう言って懐にそっと抱え。帰ろう、と与太郎は言う。
 大きくても可愛いものは可愛く、小さくても可愛いものは可愛い。
 よくはわからないけれど、大きさが全てではないと与太郎が感じたのであれば、嗚呼、もうこれ以上誰も傷つくものはなく。
 
 猟兵一同にてそれを見守り、疲れたけれども奔走した意味はあったと感じ入ったならば、一件落着めでたしめでたし――と、続けて境内にはすごい剣幕で大家。

「おい与太郎、屋根の修理代は今月中に払ってくれるんだろうね!?」
「それが大家さん、急に羽振りが悪くなりまして」

 まこと、おあとがよろしいようで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月13日


挿絵イラスト