繰り紐揺れる快楽の館
長閑な光が窓から差し込んでいた。
カーテンを揺らす風は涼やかに開けた窓から、ベッドのシーツを撫でる。
人狼はゆっくりと体を起こして、衣服を探す。部屋の扉に散らばっていた。
隣で寝ている、いつか喪ったはずの恋人を起こさぬよう口付け、ゆっくりとベッドを出る。
幸福は、静かに体のいたる場所から注ぎ込まれていく。
朝の香りがする。テーブルの上にはいつ用意されたのか、クローシュのかけられた皿があった。開けば、まだ暖かなサンドイッチに紅茶が添えられている。
起きたのなら共に食べようか。人狼が二人分の衣服を拾い上げようとしたその時。
「あ、ぎぁ、あぁあッアアッ!!」
屋敷を震わせるような絶叫が響き渡った。いや、その絶叫はまだ続いている。
羨ましい。人狼はそう思った。この幸福の更に先へと旅立ったのだ。
後ろから抱きすくめられる。恋人が目を覚ましていた。その大きな体を感じながら、人狼はこの穏やかですべての欲が満たされる世界に耽溺する。
この館に来てよかった。
来た理由など覚えてはいないけれど、それだけは確かだと、そう思えたのだ。
薔薇で彩られた美しい中庭が窓の外に広がっている。その手を握る。眩い光に目を細めて、人狼は笑った。
そうして、彼はその中庭へと誘われていく。
◇◇◇
奴隷市場、その『商品』の流れを追う内に、特別な「第五の貴族」が寄生型オブリビオン『紋章』を生産する居城を突き止めたという。
紋章の生産――ときには奴隷を素体とし、聖者や人狼、神までをも捧げ、強力な紋章を作り上げる儀式。
ひとつの館、それが儀式の行われているであろう場所だ。
「遂に昏き深淵の尾の先は目の前……しかし、相手もそう易々と捕らえさせてはくれないようだな」
言うに、その館へと斥候として送り込んだ遊兵団のメンバーは、戻ってこなかったという。
囚われ『紋章』の生け贄となったか。生きているのかは定かではないが、館には何かがある。と言うことは間違いがないだろう。
何があるか、それは猟兵達には計り知れない。それでも、手掛かりがそこにあると言うのなら。
「虎穴だろうと踏み込んでいけ」
コクヨウは短くそう告げた。
熱血漢
いつも通りな熱血漢MSなあれです。
第一章
とても長閑で、温かで、幸福な館で過ごします。
あらゆる欲が満たされるその幸福な場所は、とても幸福です。
でも、偽りだと気付いても良いです。
第二章
血生臭い廃墟に生い茂る黒鈴蘭との戦闘です。
第三章
館の主、呪術師『ダペルトゥット』との戦闘です。
第一章の欲望や幸福で形作った猟兵の人形とともに猟兵を襲ってきます。
基本お好きにどうぞ。
よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『迷い館の罠』
|
POW : 食べたこともない美味を堪能する
SPD : 清潔で暖かな布団でぐっすり眠る
WIZ : クローゼットの衣装に着替えてみる
|
銀山・昭平
今回は館の調査、場合によっては遊兵団の生存確認・可能なら救出って感じだべな。
ならばおらも全力を出して……って、なんだか館の雰囲気はそんなんでもなさそうだべ。怪しいくらいに長閑で穏やかな時間だが……何?おらに食べさせたいものがある?
『……色々な者と囲まれて食べる温かい料理、孤独も空腹も知らぬというのは、どれだけの幸せなものか……』
……えっ、おらの様子が変だったべ? まぁおらも色々あったんだべ。それにしてもどの料理も美味いべなぁ……おらはこの白いパンとポトフが気に入ったべ。
(色々な料理を食べるうちに、自身に宿るドラゴンが時折表に出ながら楽しそうに食事を楽しんでいる様子)
☆共闘・アドリブ等大歓迎です
その館へと足を踏み入れた。
「まずは調査……だべな」
銀山・昭平(田舎っぺからくり大好き親父・f01103)は、爽やかな涼風を感じてふと目をしばたかせた。
「それから、生存確認……はて、何の生存を確かめるんだったべか?」
喉の奥に何かが絡み付くような一瞬の不快感に気を取られた瞬間に、何かを思い出せなくなる。
「調査、調査……だなんだという雰囲気ではなさそうだべな」
そう考えながら、昭平は整えられた明るい広間に立っていた。明るい光に満たされた空間は、淡い色彩で調和された立派な洋風の館であった。
そして、気付けば昭平の目の前に、見知らぬ人影が立っていた。それは静かに言葉を発する。
「ようこそ御越しくださいました」
恭しく頭を下げる女給に、昭平は思わずに面食らう。
「お客様? ……如何なさいましたか?」
「む、……お客様ってのは、おらの事だべか?」
「左様で御座います。お待ち申し上げておりました」
確りと頷き、女給はあくまで歓待の姿勢を崩そうとはしない。
「皆様お食事の席でお待ちでございます。どうぞ、こちらへ」
「ああ、そう、だったべな?」
そういえば、誰かと会うような約束をしていた気がすると、昭平がついていった先。二十余人が悠々と座れるような大机に座る人々。
人間、人狼、吸血鬼ばかりではない、これまで見知った世界の人々がそこに座り、昭平に言葉を掛けてきていた。
「いやあ、待たせちまっただべな。すまんすまん」
頭を掻き、謝意を述べた昭平は、全員が揃ったというように饗される食事を少しずつ口に運んでいく。
そのどれもが絶品といって違いないものであった。慣れぬ調味料、それでも、どこか懐かしい味わいと奥深さの感じられる味わいに、昭平は心なしか腹の底から満足を覚え始めている。
争いのない幸せな空間。様々な者たちが談笑し、素材をふんだんに使うのだろう食事に舌鼓を打つ。舌をくすぐる温かさが臓腑に染み渡っていく。
『ああ、孤独も空腹も知らぬというのは、どれだけの幸せなものか……』
「昭平どの? どうかなされましたか?」
「……、んお? ああ、はは、まぁおらも色々あったんだべ」
老紳士の心配するような声色の問いかけに、昭平は丸く膨らむ腹を擦る。
「いやあ、にしてもどの料理も美味いべなあ……おらはこの白いパンとポトフが気に入ったべ」
渇き、飢えた魂を宥めるように、昭平はまた柔らかな白い小麦の肉をちぎる。
「はは、私もそう感じます。香草の扱い方が本当に巧みで」
そうして、和気あいあいとした食卓は、時を忘れるように過ぎ去っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
サーティ・ファイブ
☆あれ?確かオレ、お仕事引き受けてここに―――あ、32番の兄ちゃんだ。
あー、うん。そうだった、オレ、32番の兄ちゃんと一緒にお泊り勉強会に来て―――(そうだっけ?)
ねえ、兄ちゃん。この屋敷、変じゃない?
さっきから変な悲鳴が聞こえてる気がするんだけど…
…そっか、特におかしい事もないか。(本当に?)
天文学の呑み込みがいい?ふふっ、嬉しいなあ。兄ちゃんに褒められると。
え?折角だから少し息抜きしないかって?いいよ。
(…なんか、変だなあ。
32番の兄ちゃん、"色欲"を司るけど、こんなに積極的じゃなかったよなー)
「あれ?」
サーティ・ファイブ(SLM-35 Marchocias Proto・f34542)は、穏やかな陽光の差す廊下に立っていた。
「確かオレ、お仕事引き受けてここに――」
「ああ、こんな所にいたか」
サーティは自分の名前が呼ばれたような心地になって振り返る。
「32番の兄ちゃん……、ああ、そうだった。オレ、兄ちゃんと一緒にお泊り勉強会に――」
来たんだった。
そうだったはずの言葉が、しかし、それを舌が拒むかのように言葉が出ない。
「来ないからどうしたのかと思ったぞ、迷ってたのか?」
偉丈夫。そう読んでも差し支えないような印象を浮かべる彼は、しかしどこか華奢な雰囲気も漂わせている。清純であり蠱惑的な声色に、サーティの目がその喉元に、その全身に誘惑される。
「……道が分かんなくて」
「そうか、ならこっちだ。ついてこい」
彼が告げる。
それと同時に、絹を咲くような絶叫が響き渡ってきた。思わずに身をすくめるサーティは、しかし、それが初めて聞くものではない事を知っている。むしろ、断続的に終わらぬ絶望と激痛を叫ぶようなそれ。
「ねえ、兄ちゃん。この屋敷、変じゃない?」
「何がだ?」
「さっきから変な悲鳴が聞こえてる気がするんだけど……」
何も聞こえないように首を傾げる兄に、サーティは自信なさげに問いかける。その答えは、至って単純な答えだった。
「ああ、変ではないさ。この館にはあって当然だからな」
彼はそう言って、一つの扉の前で立ち止まる。
「そっか、特におかしい事も」
ないか。という言葉はやはりほつれて消える。その扉を開けば、天文台のような部屋が二人を歓迎していた。天井に映るは仮初の星空。その付近は暗く、しかし手元は明るく。不可思議な光に包まれている。サーティを見つめる理知的な瞳が、柔らかく微笑んだ。
「さ、勉強会だな、天文を識るにはいい場所だろう?」
サーティは頷く。扉が閉まって星の下に二人は閉ざされた。
「ああ、やはり、お前は天文学の呑み込みがいいな」
兄はサーティの手を、その甲を包むようにして、天文図を覗き込んだ。背から抱くようにする兄の温もりと、その言葉に嬉しくなったサーティはくすぐったいと言うように笑う。
「ふふっ、嬉しいなあ。兄ちゃんに褒められるなんて」
「言っておくが、甘やかしているわけではないからな?」
「はあい」
サーティが軽く返事をする。その息を吐く胸の上に、兄の腕が交差した。息が首筋にかかる。密着する体に、熱が灯っていくようだ。
「折角二人きりなんだ……少し息抜きしないか?」
「兄ちゃんと、息抜き?」
サーティのマズルを掌が包む。腹の上を指が這う。息を吸えば、蒸気立つように喉が乾くのを感じる。
「いいよ」
サーティが頷けば、軽々とその体が持ち上げられ、兄を見上げる。
七大が色欲を司る王――32番目。
(……でも、兄ちゃん。こんなに積極的じゃなかったよな)
僅かな違和感。しかし、それは共に在れる幸福と広がる快楽に、僅かに忘却へと押しやられていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
秋月・充嘉
○☆
肉欲にガッツリ溺れる(POW)
一日中、欲に任せて過ごせてそれでいて、疲れは心地いい感じ程度。体力が回復したらまた溺れて。
いやーイイっすねぇ、ある意味楽園っすよー。
ねぇ、そう思うっすよね、う…
…?誰に言おうとしてたっけ…?
ま、いいや。
送り込まれた遊兵団のメンバーともっと溺れるっすよ。
腹いっぱいになって頭ン中真っ白になるまで。
休憩したら前以上に溺れて。
底がつきない幸福って、いいっすねぇ…
ずぐ。
ぱたた。
熱を帯びた肉の中に存分に吐き出したその茎を引きずり出せば、その雁首に掻き出されるようにして、濃い雫が廊下に落ちる。
「あ……、っ、溢……れる」
「あんまり汚しちゃ怒られるっすよ?」
陽の光に溢れる館の廊下。誰が通るかも分からない。そんな窓辺で秋月・充嘉(キマイラメカニカ・f01160)は、自らが犯した人狼の使用人。その自分の大きさに開いた孔の口に指を這わせながら、荒く息を吐く人狼を揶揄う。
「つっても、もう、こっちが散々吐き散らしちゃってるんすけどね」
「ぁっ……ふ、ぐ」
花瓶の世話をしていただけ。人狼はただそうしていた。そこに充嘉が通りかかり、声を掛け……、そしてその服を剥いたのだ。
「君も送り込まれたメンバーっすよね」
「……ぇ、めん、ばー?」
ぐ、とその顎を掴んで、充嘉は答えなど聞いていないというようにその口を塞ぐ。マズルを交し、唾液をその奥へと押し込んでいく。ぐぬち、と淫らな音が響かせた後に、充嘉は彼を解放した。
「いやーここ。イイっすねぇ、ある意味楽園っすよー」
と、濡れたままの雄を、ただ一つ身につけている下着の中へと押し込んで、充嘉は人狼ではなく背後を振り返った。
「ねぇ、そう思うっすよね、ウ……」
だが、そこに誰かがいるわけでもない。陽の光に照らされ充嘉の影が、その形を変えることなく浮かんでいるだけだ。
「……誰に言おうとしてたっけ……?」
何かを忘れているような。そんな感覚に首をかしげながら充嘉は人狼に再び振り向いた。
「ああそうだ、良かったら俺の部屋、後で来てほしいっす」
ちょっと休憩がてら歩いてただけなんで。充嘉は、そう告げると、その竜の尾の下。その人狼が触れてすらいないそこから滴りを見せながら、充嘉は一言、言葉を残して廊下を歩き去っていく。
「……もっと、溺れたいだろ」
その背を、人狼は熱に浮かれたように見つめ――。
◇◇◇
「……っ」
肉厚の剛直が、充嘉の口を埋める。喉奥に絡む粘液は、今咥えているそれから発されたものではない。それを施した雄は、充嘉の胴体に跨って自らの肉壺を慰めながら、時折跳ね上げる充嘉の腰によって歓喜にに満ちた悲鳴を上げている。
「ほら、もっと良くしないと」
充嘉の背に敷いた雄が豊かな胸の先芯を弄びながら、充嘉を貫いていた。横から伸ばされた手で腹を撫でられ、白濁の絡む舌で別の雄と口づけを交わす。差し出された雄茎の一つを吸いながら、自らの体に降り掛かる熱い迸りに、まだだとばかりに腰を打ち上げる。
「ははぁ、心地良い疲れっすねえ」
嬌声に満ちる部屋。乱れる充嘉は、静かに、それでも確かに部屋の扉が開く音を聞き取った。
「やあ、来たんすね」
知っている顔。充嘉はそれを見て、ニヤリと笑う。
「腹ン中も頭ン中も、真っ白にして、溺れさせてくださいっす」
丁度席が空いた、と。充嘉はその特等席へと彼をいざなった。
大成功
🔵🔵🔵
テフラ・カルデラ
○
☆
一度入ったら二度と出られない館…どんな恐ろしい館なのでしょうか…?
少し怖いですが…覚悟を決めて館に入ります…!
あ…あれ?これ…は…?
館ではありますが…像がたくさんなのです!
彫像だけでも石像や大理石像、黒曜石像や石膏像までもがあります!
他にも黄金像…氷像…蝋像…
…どれもリアルで…人がそのまま像になってしまったかのようで、それだけでもドキドキが止まりません…!
気付けば自分の身体がどんどん金に…あぁ…そうだ…この像達も…
わたしも…同じ…像…に…しあ…わ…せ…
(実際はUC【兎少年黄金像】が暴発しているだけ)
「あ……あれ……?」
テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は、踏み入れた館の穏やかな様子に呆気に取られていた。
「一度入ったら二度と出られない館……みたいな話でした……よね……?」
覚悟を決めて、この館に入ってきたように思うのに、肩透かしであった。
「それに、これは……」
そして、テフラは傍らに聳える女性像を見上げた。石膏の白に全身を包んでいると言うのに、触れれば柔らかく肉の感触を返してきそうだと思えるほどに精巧に作られた像。
ともすればテフラの色彩感覚が狂い、そこに裸の人間が一人立っているかのような、そんな錯覚すら覚える程の像。
「まだ、たくさん」
テフラは、続く廊下の両脇や広間に鎮座する像を眺めながら、館を進んでいく。
少年から老婆、人狼や吸血鬼、老若男女種族など関係なく、素材も関係なく、皆が皆今にも動き出しそうな有り様で並べられている。
石像も黒曜石や大理石、その他様々な石があり。黄金、水晶、蝋、氷。まるでとりとめのない並びだというのに、そのリアルさだけで全てに統一感が生まれている。
「ぁう……」
自分に似た年頃の像を見つめ、テフラは先程からずっとドクドクと鳴り響く鼓動に震える胸を押さえる。
それは、テフラ自身が何かの時をじっと待っているかのようで。
「……ぁ」
そして『その時』はすぐに訪れた。廊下の先、円形に開けた広間とも呼べぬ小さな空間に空の台座。それを見つけた時、テフラは、指先に不思議な感覚を覚えた。
見ずとも分かる。テフラは、それこそが使命だと確信するように、徐々に黄金に染まっていく体を引き摺り台座へと向かう。
そして台座の上に乗り、殆どが黄金に変化した体を見て、テフラは薄く笑った。
他の像が見える。其々に表情は違えど、どこか幸福に満ちた像達。彼らが自分と同じだと気付いたのはいつからか。
「わたしも……同じ……像に……しあ……わ……せ……」
それは一体目を見上げたときからだったのかもしれない。あの強烈な憧れが、今叶う。その幸福に苛まれ。
テフラは、その動きの一切を止めた。
大成功
🔵🔵🔵
ディルガス・ブルトガング
☆
世間の喧騒から遠く離れたこちらの館、のんびりスローライフするにはもってこいの場所じゃん
こういう所で一人で過ごすのもイイけど、せっかくなら誰か知り合いと来れば良かったかな?
食べ物も美味しいし、テラスからの眺めも最高…なんだか貴族になった気分だね!
従者に囲まれて優雅な日々を過ごす…うーん、幸せ!
さ~て、そろそろ食後の『デザート』が欲しくなってきちゃったな
誰かと一緒に来てたらつまみ食いしちゃってたかもね?
…あ(警備担当さんと目が合う)
食後の『デザート』にしてはちょっと重いかもしれないけど…彼に決まり、かな!
やっぱりこういう相手には惹きつけられちゃうね
大丈夫、悪いようにはしないからさ♪(本当かな?)
ディルガス・ブルトガング(呪鎧の黒騎士・f17021)は食後の紅茶に息をつきながら、整えられた薔薇庭を眺めた。
館の外は、長閑な草原が広がっている。遠くの山の麓に民家が見えていた。その中間ほどに見えていた掘が、この館の境界だろうか。
「のんびりスローライフするにはもってこいの場所じゃん」
世間の喧騒から遠く離れた館。猟兵という特殊な存在であっても、しかし実状について口を滑らせば少なからず奇異の目を向けられてしまうディルガスにとっては、まさに理想とも言える場所だった。
給侍も様々。女給に試しに語ってみれば「私は死なない身ですのでなんと申せば良いのか」と見当違いな返事が返ってくるほどだ。
テラスで昼食を済ませたディルガスは、そろそろ食器を下げてほしいな、と思うタイミングで控えていた給侍がそれらを下げていく光景に、拍手を送る。
流石に変な目で見られるかな、と心の中で、ではあるが。
「うーん、貴族気分……、一人で満喫するのはもったいない気がしてきちゃったねえ」
こんな事なら誰かと来ればよかった。とそこまで考えて、ふと思う。
どうして、誰かと来なかったのか。そこに何か理由があったような気がする。そこまで考えて、ディルガスは全身に粘る何かを感じ、そして、その疑問と違和感を即座に忘却していた。
「うーん、幸せ!」
下がっていった給侍を見送って、ディルガスは椅子の背凭れに寄りかかるように背伸びをして立ち上がる。
テラスと庭を繋ぐ柵に凭れかかると、庭に人影を見つけた。その人物もディルガスに気付いたように視線を合わせてくる。
「……少し重ためだけど、味は良さそう」
警備だろう。鍛えられた肉体を誇示するようなデザインの制服。胸と尻が特に張り詰めた美しさすらある精悍な肉体。闘いを知る鋭い目に反してその表情はどこか初心な青さを感じさせる。
甘酸っぱい香りが鼻先をつつくような。
「あー、食後のデザートが食べたくなっちゃったな」
ディルガスは、その生気に飢えを感じる。テラスから部屋に戻れば誰も邪魔はされないだろう。
手招きすれば歩み寄るその無警戒な彼を部屋に招き入れる。一人で暇をもて余していたところだ。少し『つまみ食い』をするくらいなら許されるだろう。
「それで、どうかされましたか?」
カーテンを閉じる。問いかけてきた彼にディルガスは、行動をもって返事とした。
「大丈夫、悪いようにはしないからさ」
多分ね。その言葉を隠してディルガスは彼の体に指を触れた。
大成功
🔵🔵🔵
シエナ・リーレイ
◼️アドリブ絡み可
ここのお父様はどちらなのかな?とシエナは呟きます。
幸福に満ちた館をさ迷い歩くシエナ
その目的は自身の器物の製作者であるダペルトゥットとの対話です
だけど彼が背後に侍らせる繰り手はダペルトゥット・ドールに繰られる死骸人形の証
仮に彼が死骸人形であれば相対するのは自身の兄姉であり、シエナの目的は叶わないでしょう
ありがとう。とシエナは『お友達』にお礼を言います。
幸福の館の筈なのに段々と気分が沈んで行くシエナ、そんな彼女を何処からともなく現れた『お友達』が慰め始めます
そして、沢山の『お友達』に囲まれて持ち直したシエナは『お友達』に促され、お父様と会うためのおめかしを始めるのでした
「……ああ、どこかにいるのですね、とシエナは不可思議な縁に嘆息します」
シエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)は、別れを告げたはずの製作者の気配を色濃く感じる館の空気に呟く。
どこに向かうでもなく、館をさ迷い歩いている。
切ったはずの糸が、落ちる間際の僅かに繋がりで別の運命を手繰り寄せたのか。
「でも、どこにもいないのですね、とシエナは首を傾げます」
ぎこちなく、目当ての人影がないことに語る言葉通りに首を傾げてみせたシエナは、窓を見た。
明るい館だ。整えられて、綺麗で、清潔で。一歩歩くほどに、シエナは自らに押し寄せる幸福感情に辟易としていく。
ここに製作者が現れるならそれは幸福ではなく、ここに製作者が現れないならそれもまた幸福ではない。
『どうしたの?』
ひょこりと、どこからともなく現れた人形がシエナに語りかけた。
『お父様に会えないのが悲しいの?』
『お父様がいることが悲しいの?』
『お父様に愛されないのが悲しいの?』
『お父様に愛されたいことが悲しいの?』
『大丈夫だよ』
『大丈夫』
『皆いるよ』
『皆いる』
『皆愛してる』
『皆が愛してる』
『皆を愛してる』
「……、とシエナは『お友達』に語りかけられる言葉を一つ一つ噛み締めます」
一歩歩く。何処かに誘われている。
宛もなく歩いてはいない。人形達は、確かな足取りでシエナを導いている。
『おいで』
『おいでよ、シエナ』
『そうだ、可愛い可愛い女の子』
『お似合いのドレスを見繕ってあげる』
「ドレス? とシエナは聞き返します」
『そう、ドレス。飛びきりのお姫様にお似合いのドレスよ』
『チェリーレッドの軽やかなフレア』
『ヴィヴィッドなグリーンマーメイド』
『それともおしとやかなヴァージンホワイト?』
「アクセサリーは? シエナは少しだけ胸を弾ませるように言います」
『キミの望むままに!』
『さあ、おいで。扉の向こうへ』
気付けばいつの間にか扉の前にシエナは立っていた。開かれた扉の向こうには衣装室が広がって、彼女の到着を待っている。
『さあ、めいっぱいのおめかしをしましょう?』
『皆が大好きなシエナの為に』
『シエナが大好きなシエナの為に』
「そうね、ありがとう。シエナは大好きな皆にお礼を言います」
お安いご用さ。声が重なって返る。
閉じる扉の向こうへシエナは消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『黒鈴蘭』
|
POW : 黒鈴蘭の嵐
自身の装備武器を無数の【幻覚をもたらす催眠毒を放つ鈴蘭】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 大地の福音
【侵食した大地】から【侵食、吸収能力に長けた根】を放ち、【毒性】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 享楽の傀儡
対象の【身体】に【幻惑毒を分泌する根】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[身体]を自在に操作できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
鉄が錆びた匂いがした。
赤黒い視界の中で、ざらついた舌がいやに甘ったるく感じる。
猟兵は変わらずそこにいた。
椅子に座り、ベッドに寝転び、遠くを見るように立ち、そして絡み付く黒い植物に全身を掴まれている。這う黒い根茎が幾重にも分かれ、血管のように包み込んでくれている。
磔のようですらあった。
揺れる花から滴る花蜜、その甘く酸い香りに吐き気が催す。
血の香り、腐肉の香り、鈴蘭の香り。そして全てを覆い隠さんとする薔薇の芳香が、生者を拒むように脳髄を溶かすようだ。
覚醒が近い。熟れ落ちて蕩けた果実を逆再生するように、思考が定まっていく。
館は廃墟。崩れた瓦礫に黒い根が張り付いている。
空は厚く曇り、血のような赤を隙間から覗かせる。
ただ、薔薇の園は盛りを増し、一つの怪物の口のようにすら見える。その中心に赤黒くそまる石台があった。
人影がある。背に巨大な手を浮かべた老人の姿をしている。それは台の上に乗った人狼を撫でる。
絶叫が、絶望と苦痛と快楽の叫びがこだまする。
ざわりと、地面を埋める黒鈴蘭が、巨大な液体生物のように歓喜に沸き上がる。
老人の手には猟兵の数と等しい宝石が握られていた。
◇◇◇
黒鈴蘭との戦闘です。生い茂ってます。
既に猟兵にも生い茂ってます。
老人は第三章での接触かなといったところです。
お好きにどうぞ。
サーティ・ファイブ
☆…あれ?兄ちゃん、どこに―――っ!?
(気づけば全身に根が絡み、分泌された幻惑毒で濡れている)
ああ…そっか、兄ちゃんとここで再会できるなんて、そんな都合のいい話、ないもんなぁ…
…なんか、むかついた。
(だが身体は好き勝手に動かされている。息を吸い、吐き出し。幻惑と快楽の中でも精神を平静へと保ち、魔術回路を励起させ、耐えつつゆっくりと詠唱を開始する)
恩恵の光など要らぬ 暖かな光など要らぬ 我求めるは無慈悲なる光 我求めるは裁きの光 我が魂喰らいて―――降り注げ!
(光の暴風雨を自身ごと、全身に絡みつく黒鈴蘭へと降り注がせる!)
…ほんっと、オレってバカだ。兄ちゃんの幻に引っかかるとかさ…
感覚が。
兄と触れ合うその快感が遠く失せていき、サーティ・ファイブ(SLM-35 Marchocias Proto・f34542)は目を開けた。
「あ、れ……?」
横たわっている。誰もいない。仮初の星空もない。不気味な空が広がる瓦礫の中で横たわっていた。
「兄ちゃん、どこに――」
行ったのか。言葉は驚愕に呑まれて消える。自らの四肢に、いや、全身に絡み付く根と黒い鈴蘭を見て、正しき獣は解答に辿り着く。
ここに兄はいない。
「ここで再会できるなんて、そんな都合のいい話、ないもんなぁ……」
探していた兄に出会えた喜びは、ただ無為に消費された。
悲しい。
あの温もりも、あの快さも、偽りだった。その虚しさが悲しく、そして。
「なんか、……むかついた」
幼子が拗ねたように言う。だが、その目に灯る怒りは本物だった。
サーティの意思など関係なく、彼の体が起き上がる。植え着いた黒鈴蘭が覚醒したサーティを動かしている。
追加で注がれる毒に幻覚がサーティの全身を艶かしく撫で付ける。幾本もの兄の腕がサーティの神経を刺激して、幾重にも重なる甘い囁きが脳髄を刺激する。
「す……ぅ、はー」
深く呼吸をした。口の中へ、腹の中へ。気持ちのいい何かが蠢くような錯覚。それに絡め取られてしまわぬように平静を保ち、サーティは己の中。黒鈴蘭に侵されていない魔術回路を知覚する。
『恩恵の光など要らぬ 暖かな光など要らぬ』
破いた紙の、その切れ端同士がぴたりと重なるような感覚。契約の整合性は満たされる。
『我求めるは無慈悲なる光 我求めるは裁きの光』
則ち魔の執行。正と糺す光。
『我が魂喰らいて――降り注げ!』
光の雨が降る。光の風が舞う。全てを塗りつぶし白紙に至らしめるような、光の暴風雨がサーティを呑み込み、黒鈴蘭を呑み込み、広がり。
「はあ」
その光が止んだ只中に、一人サーティは立っていた。
全身を焼かれ、血を流しながら、深くため息をつく。
「兄ちゃんの幻に引っかかるとかさ……」
黒鈴蘭を焼き払い消えた幻に。消えたがゆえに幻だと証明してしまった再会に。それに浮かれた自分こそに。
「ほんっと、オレってばかだ……」
呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
銀山・昭平
☆○
む……油断しきってたとはいえ、これはだいぶマズい状況だべ。
こういう手合は草刈り機で刈り取っちまうか、薬で枯らしちまうのが一番だろうが……そもそもあの飯を食いまくったし黒鈴蘭に体内からも寄生されちゃまともに動ける状態じゃ無いべ。
おらを椅子に縛り付け、何を聞くでもなく辱めるように拷問をする輩が見えるのは、それにその拷問も気持ち良いと感じてしまってるのはきっとこいつの分泌する毒のせいだべな……決しておらがそういう趣味ってわけではないべ、たぶんきっとおそらく。
とにかく今の状況を脱するには、こいつらに頼るのが良さそうだべ!【銀山式絡繰人形部隊】!この鈴蘭どもを刈り取っちまうべ!
☆アドリブ等歓迎です!
「は、ぁ……、ぐ……?」
朦朧とする中で銀山・昭平(田舎っぺからくり大好き親父・f01103)は、空腹に鳴く腹に意識を甘い蜜の夢から浮上させた。
「これは――」
ひび割れた椅子。黒い鈴蘭の根が補強して、昭平の体重をも支えきるそれが、身動ぎに軋みを上げた。
だが崩れもせず、腕は腕起きに固定されたまま指先しか動かせない。
「だいぶマズい状況だべ」
敵は植物。生い茂る強靭な雑草は、草刈り機やらで根刮ぎ刈り取るか、薬で枯らしてしまうのが一番。
だが、仮にもオブリビオン。それだけの相手に効果的な手段を、すぐに用意出来るか、出来ないかでいえば。
「……っ、ぐ……ぬぁ!?」
出来る。
そう考えた瞬間に、体の中に空洞が出来たかのような無感覚と、直後に世界が歪む幻覚が襲い来た。
直感する。抵抗の意思と、その方法に思い至った昭平の動きを封じようとする黒鈴蘭が、食事として出されていたのだろう黒鈴蘭か、その種子。そういったものが体内から毒を分泌した。
「……っ、あ゛ぅ」
気付けば昭平は、一切れの衣服すら許されぬ体で椅子に縛り付けられていた。いや、幻覚だ。そう思ってしまっているだけ。だというのに、眼前で笑む男が握る剛直は、リアルな快感を感じ取っていた。
声が漏れる。男は面白がるようにころころと嘲笑う。
『どうした、快感によがって涎を垂らすだけか、あの威勢はどこにいった?』
逃げるように腰を動かせば、下から体を貫く何かがうねり動く。胸を摘む金具は絶えず強烈な痺れで昭平の腰を撃ち抜き、男の手が逃げた昭平の雄を躾けるように叩く。
拷問だ。だが、解放される手はない。何故なら何も問われてはいないからだ。逃げ道はなくただただ辱しめられるだけの、――快楽。
「……ふん、ぐ」
昭平が、己の声に首を振る。これは毒にもたらされる幻の快楽であって、己の願望ではないのだと。
「は、……はぐっ、う……」
そう論じながらも、この幻覚に囚われたままではいけない。そう確信する心もあった。快楽、否、望まぬ苦痛が口元を汚す。
そんな中でも昭平はこれを幻覚だとまだ覚えていた。
「とにかく……、今の状況を、うぐっ、脱する、にはっ」
幻に奪われるように閉じていた瞼を抉じ開け、昭平は叫ぶ。
「こいつらに、頼るのが良さそうだべ!」
現れるは絡繰の人形部隊。それらに黒鈴蘭の神経毒は通用しない。昭平の追加命令ですら無視して黒鈴蘭を刈り取るように即興調整した人形達は、回転鋸を振り回し黒鈴蘭を刈り取っていく。
「ぁ……がっ、はっ、む……無駄だべ……ッ」
幻覚の拷問官が焦ったように昭平を痛め付ける。だがもう止まらない。
自律ではなく自動化した人形が黒鈴蘭を刈りきるか、昭平が耐えきれず堕落するか。闘いの結末はその二択に絞られることとなっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ディルガス・ブルトガング
☆
っとと、この根、結構体の奥深くまで張られちゃってる?
随分長いこと夢を見せられちゃってたってコトかな
おっかしいな~と思ったんだよね
『デザート』をいくら食べても元気が出てこなくてさ
でも…もうちょっと気付かないでいたかった、かな
根が更に広がろうとしてる…?
このまま夢の続きを見るのも悪くないかも、なんて
だけど覚めない夢なんて無いんだ
それに勝手に体を動かされるのはちょっとイヤだよね
この根、死者は上手く操れないみたいだ
こんな形で自分の体に感謝する事になるなんて思わなかったよ
魔法で焼き払って、先に進もう
あ、まだ体にちょっとくっついてるじゃん
…一輪、お土産に持っていこうかな
また夢を見たい時がくるかもだし?
「あーそっか、そうだよねえ」
重い体を揺らし、ディルガス・ブルトガング(呪鎧の黒騎士・f17021)数度頷く。
違和感は覚えていた。
「『デザート』をいくら食べても元気が出てこなかったの、そういうことか」
生気を奪う。肌の接触をトリガーとするその能力で、解け合うほどに触れ合った警備の男は、それでも元気だった。
普通であれば、あれだけ貪れば瞬く間に正気を失してしまう程だ。そして、ディルガスはむしろ消耗すら感じ取っていた。
明らかな異常ではあったが、そこの誤魔化しも含めた幻惑立ったのだろう。あぎとを開いて、ディルガスは喉に引っ掛かる根茎を引きずり出す。
喉の奥を何かが這い出ていくような感覚は、心地いいとはとても言えないが、放っておくよりはマシだろう。
「あ、あー。うん、この根、結構体の奥深くまで張られちゃってる?」
腕を動かせたはいいものの、体はまだ鈍い。感覚が遠い、というべきか。夢の中で歩きうとしても進めない感覚が近いかもしれない。
恐らく下半身もガッチリと固められている。いや、抵抗を感知したか、さらに深くへと侵食しようと根が蠢くのを確かに感じていた。
「このまま夢の続きを見るのも悪くないか」
幸せな夢にも耽って、溺れて。そして、この花の糧となって朽ちていく。
「なんてねぇ」
だが覚めない夢はない。目が覚めたなら起きなければいけない。ディルガスが俗にいう健康体かは置いておいて。
腕を持ち上げる。
「……ん、頑張れば動きはする」
ふと他の猟兵が、黒鈴蘭の呪縛から強引に抜け出す様子に、どうやら拘束の強度が違うように思えていた。
ゆっくりではあるが、己の意思で体を動かせはする。
「……死者だから、かな? それとも、鎧のおかげか……うん、分かんないけど」
この体に感謝するってのは変な気分だ。
よいしょ、と軽い掛け声で立ち上がると、魔法弾を作り出す。回る赤色のうねり。火炎の弾丸、400を超えるそれらをディルガスは躊躇いなく自分の周囲の黒鈴蘭の群れへと解き放つ。
上昇気流が黒い鈴蘭を千切り、灰へと変えていく。
「はあ、もう少し夢見ていたかったな」
未練がましく、ディルガスは言う。周囲の黒鈴蘭を全て焼き払った彼は、黒ずむ灰の上を進んでいく。
と。
「うん?」
ふと違和感に左腕を上げる。丁度見えなくなっていた位置に小さな黒鈴蘭が蠢いていた。
その殆どを焼かれ、僅かに残った燃え滓。呪鎧が魔力を僅かに吸い上げれば瞬く間に消え失せるだろう微弱なそれ。
「……持って変えれるか様子見してみようかな」
ディルガスは見逃す事にした。腹は減るが、尽きぬ快楽を貪るあの夢は、捨てがたいものではあったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可
んっ…んん?うわぁぁぁ…!?何ですかこの植物!?なんか根付いてますし…!?
このまま植物に変わり果てる…ワケないですよね!!それになんか嫌な雰囲気を感じるので…さっさと処理しちゃいましょう!
【ウィザード・ミサイル】で焼き払ってしまいましょう…!
うぅ…根付いている感覚がまだ抜けなくて気持ち悪いのです…
「あ、あれ……?」
テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は、徐々に変化していく周囲に――いや、解除されていく幻覚に戸惑いを浮かべていた。
驚きの声は動かす口はないので、言葉を溢してしまったような錯覚ではあるけれど。
(……石像が消えて、氷も黄金も全部……)
消えてゆく。本来の姿を取り戻し朽ちてゆく館の光景に、テフラの像化も解除されていく。
いや、そもそも彼の像化自体、状況に感化され無意識に暴走させてしまったユーベルコードだ。
完全防御のユーベルコードに対しては、流石の黒鈴蘭もその幻覚を維持するのは難しかったらしい。
ふと自分の体を見下ろす。
びっしりと、自らに根付いた植物。
「んん? うわぁぁぁ
……!?」
テフラは、全身がその赤黒い植物に寄生されているという現実に、一気に覚醒した。
「何ですかコレ、何ですかあっ!?」
慌てて引き抜こうとするも、何せその数だ。
「植物化……とか、じゃない、ですよね」
植物人形になったことは無かったように思う。とやや変な方向の感慨を覚えながらテフラは、徐々に根から何かが浸透させられていく感覚に嫌な雰囲気を感じ取っていた。
「ともかく、このままじゃ、なんか、危なそうですよね」
頭上に、大量の火炎魔法弾を展開する。直後降り注いだ魔法弾が周囲の黒鈴蘭を焼き払っていくのを見ながら、解放された体を隅々まで確認するように全身を眺めて、すこし嫌そうな顔をしていた。
「ぅう……まだ、根付いてる感覚が残ってて気持ち悪いのですよ……」
心配はないと分かっていつつも、妙にこびりつく感触に、テフラは不快そうに眉をひそめるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
秋月・充嘉
☆
ふあ…?
「ようやくお目覚めかこのバカ主!」
ウルフ…?あ、あー…あー思い出した!『時間差でウルフを呼べるようにして思いっきりおーぼれよ』ってガッツリ罠に飛び込んでたっすね。
「ずいぶんとお楽しみだったようじゃないか、あ?」
いやーははは、否定できない。ところでこの拘束解いてくれない?
「断る」
えー。
「今は、だ。落ち着くまでそこで生殺しになってろ」
さすが俺が目をかけた狼お兄さん!ツンデレ台詞に救助する感があって頼もしい!あ、この植物ちょこっとだけ残してねー。持ち帰れるか試したいから。
「は?」
(さてと、植物駆除は任せてオレは游兵団を目視で探すっすかね。生き残りががいればいいんすけど)
「ようやくお目覚めか、このバカ主!」
ザン、と鋭い斬撃音に秋月・充嘉(キマイラメカニカ・f01160)が目を開けると、そんな棘のある叱責の声が飛んできた。
黒い根で地面に仰向けの状態で縫い付けられている充嘉が、顔を動かすと馴染みのある狼獣人が大剣を振り回しながら、睨み付けてきていた。
「……ウルフ、あー……そっか、そうだったっすね」
召喚のユーベルコードの発動を態と遅れるようにして、なんだか楽しそうな雰囲気を感じて無防備に館に飛び込んだのだ。
「喚ばれたと思えばてめえは、気味悪い根っこに絡まれてやがるし、俺まで襲ってくるわ」
最悪。と状況を一言に完結させたウルフは、しかも、と動けない充嘉の一部分を忌々しく凝視する。
なるほど、あれが幻覚だったなら、今も窮屈なそこは結構大変な事になっていそうだ。少し感覚の鈍ったままの充嘉は、それは分からないのだが
「ずいぶんとお楽しみだったようじゃないか、あ?」
「いやーははは、否定できない」
「……」
苛立ち交じりに振るわれた大剣が、束になって襲いかかってきた黒鈴蘭をまとめて引き千切る。
「えーっと、ところでこの拘束解いてくれない?」
「断る」
えー、いけずー。
即答したウルフに口を尖らせると、すごい形相で睨まれた。よっぽど腹に据えかねているらしい。
「今は、だ。落ち着くまでそこで生殺しになってろ」
「ふうー! さすが俺が目をかけた狼お兄さん! ツンデレ台詞に救助する感があって頼もしい!」
「千切るぞ」
充嘉も何を? と聞くのはやめておいた。
「あ、この植物ちょこっとだけ残してねー。持ち帰れるか試したいから」
「……可能な限り善処はするが、確約を保証できるものではないな」
役所めいた返事と容赦なく振るわれる剣に、どうやら残す気はなさそうだと悟る。
契約不履行で揺すって楽しませてもらうかと思考を切り替えながら、充嘉は周囲を見回した。
(さて、あの御老人が何かしてる台。あれが斥候に出た遊兵っすかねえ)
中央の台。朽ちた館の中にも人影はあるが、差し迫っているのは、彼だろう。
(……さて、少し動けるようになってきたし、働くとするっすかねえ)
充嘉は、薄れてきた根を千切るように腕を動かしてみせた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『呪術師『ダペルトゥット』』
|
POW : お主の感情を儂におくれ。/感情奪取の呪詛
【感情や欲望を際限なく奪い宝石に変える呪詛】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 儂の人形作りを邪魔するでない。/存在変換の呪詛
非戦闘行為に没頭している間、自身の【作業開始後、半径レベルmに入る物を繰り手】が【実体、非実体関係なく人形の素材に変換し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : 新たなダペルトゥット・ドールの完成じゃ。
自身の【持つ感情奪取の呪詛により生み出された宝石】を代償に、【宝玉化した感情の持ち主に酷似した人形】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【宝石が内包する感情や欲望を暴走させる呪詛】で戦う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
「さて、ふむ、良い工房であったのにのう」
それは微塵も残念そうな声色ではなく――そういった感情を表に出すべきだからそうしている、とでもいうような稀薄な感情の上澄み。
そんな老人が手の中の宝玉を放り投げた。地面に転がるそれらは形を変え、みるみるうちに猟兵達と同じ姿を作り出す。
その胸に紋章を宿す老人は、呪術師『ダペルトゥット』はそれらを猟兵へとけしかけてくる。
それを待たずして誰かがダペルトゥットへと攻撃を放つ。しかしそれは紋章から放たれた光のような糸が彼の体を包み阻まれた。
糸が紋章と人形を繋いでいる。それを解除しなければ、ダペルトゥットへと攻撃を届かせることは叶わないのだろう。
死臭と花香に満ちた薔薇園で、己の人形と猟兵が向き合った。
◇◇◇
第三章
ボス戦です。
紋章の効果によって、自分の人形を倒さないと攻撃できません。
人形は、猟兵と同じ攻撃に、第一章の欲望や幸福にちなんだ効果の呪詛を合わせて攻撃してきます。
基本、お好きにどうぞ。
よろしくお願いします。
ディルガス・ブルトガング
☆
あの時の感情を基にしている、って…食後のデザートで気持ち良くなってた時?!
えーっと、悪いようにはしない(大嘘)とか言ったような…
うわーっ、ちょっと恥ずかしいんですけど?
んっ…動けない…?
人形の呪いみたいなモノかな
あれ、もしかしてこのまま自分の人形に悪いようにされちゃうのでは…?!
別にそういうの望んでるわけじゃ…ない事もないけど!
あ~っ、動けないから仕方ないねー!
堪能したりされたり…じゃなくて突破口を考えてたら呪鎧に怒られてしまいました
人形は宝石の魔力で動いてるみたいだったし、タスカッタヨー(棒読み)
ちょっと残念(?)だけど、これで攻撃が通るだろうから元凶を倒さないとね!
「えーっと……」
元になったあの宝石は、幻惑の夢に囚われていた時の欲望や感情を引き抜いたものだと。
ディルガス・ブルトガング(呪鎧の黒騎士・f17021)は、その時の自分の言動を思い返していた。
悪いようにはしない。とか言ってたけど、本心では悪いようにしまくる気でしかなかったし、多分あの人形はそっちの本心の方を抽出されたのだろうと分かる。
「ああ、美味そうなニオイだねえ……満足するまで放してあげないからね」
というか、殊更に強調された感じの人形が、ディルガスの首を撫でた。
「ちょっと恥ずかしいの、やだぁ……、ってか動けないんだけど」
自分の声と姿で口説かれる、というなんとも特殊な状況に思わず羞恥が漏れたディルガスだが、体が動かない事に気付いて焦りを言葉尻に浮かべた。
「あれ、もしかしてこのまま自分の人形に悪いようにされちゃうのでは
……?!」
という、命の危機とは別ベクトルの心配ではあったが、しかし、その心配は的中する。人形の手が勝手知ったる鎧の隙間を開き、布の上からゆっくりとディルガスの体を撫でる。楽しもうという相手から生気や魔力をいただく時にやる自分の手付き。
それを受けるのは当然ながら始めてではあるのだが、しかし、ディルガスが何処を心地いいと感じるかやらなんやらを把握しているらしい人形は、的確にそこを攻めてくる。
「……ぁ、ッ、こ……こんな……」
そういう欲で生まれたからか、もしかすればいつものディルガスよりも巧みなのかもしれない。人形――偽物に責められ、一方的に欲望のはけ口とされるような感覚にディルガスは、しかし、拒めないでいる自分を確かに感じていた。
「別にそういうの望んでるわけじゃ……ない事もないけど!」
というか積極的に肯定していた。
内側が濡れてきた布をずらして人形がその、液体の発生源を追い求めてくる。ああ、このまま、抵抗を許されず人形の求めるがままに身体を使われてしまうのか。
それもいいな。
なんて考えているその時、不意にディルガスの口が動いた。いや、全身鎧のその口部がというべきか。
『おい』
呪鎧が呆れたように物を言う。
『早く魔力食わせろよ』
「いやでも、もうちょっと……あ、ちょ……っ」
『うるせえ、こんなカス魔力相手に構ってられるか!』
瞬間、人形の動きが止まったかと思えば、一気に魔力が鎧へと注ぎ込まれてガシャシャ、と崩れ落ちる。
「……貴重な体験だったのに」
『あ?』
「これで攻撃が通るだろうから、元凶を倒さないとね!」
あんまり言うと本気で怒りそうだったので、中途半端に終わった行為を一旦忘れることにして、ディルガスはダペルトゥットへと足を向けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
サーティ・ファイブ
☆オレを模した、人形かぁ…
(ダメージを確認する。火傷と流血、そして魔術回路の一時的な機能不全。)
まったくもって、趣味悪いなぁ…
(牽制代わりに拳を放てば、向こうも拳を返してくる。
受け止めただけでも、潜在的な欲望を炙り出す呪詛が身を蝕む。)
…は、ぁ
(32番の兄との息抜きをフラッシュバックさせられる。)
あの時、偽りと分かっていても溺れてしまった方が幸せだったのかもしれない…
でも。
(呼吸を整え、人形を捉える)
それでも現実を見続けないと、いけないんだ。72人揃うその日まで…!
(ノーガードな殴り合いを続ける。呪詛に侵食され続けながらも、人形を破壊して呪術師本体に呪詛を"殴り"返す瞬間を狙い続ける…!)
焼けた服を破り捨ててサーティは、正面に立つ人形を見た。
「まったくもって、趣味悪いなぁ」
怪我も再現しているらしい。傷ついた自分の姿を見るのは奇妙な心地だ。
(火傷と流血、魔術回路も……一部機能不全かぁ)
歩く、決して速くはない速度で互いに距離を詰めながらサーティは自分を分析しながら、迫る拳を見据えた。避けるよりも先に、脳裏に浮かぶ夢の光景。呪詛がそれをもたらす。
体の機能を再確認するように、優しく被毛を撫でる手。
誰にも教えてもらえない獣の――生物の本能。愛や情、触れ合う喜び。実験体故に、全て学習計画されていたのだろう、その発散の仕方も、その先も。
家族という、知らぬつながり。
あのまま、欲望におぼれていたのなら。サーティは、同じ姿をしたその獣の拳を正面から受け止める。頬にぶつかる痛みが、視界に星を瞬かせる。
「……っ」
だが、サーティはそれに対して拳を握る事しか知らない。この欲求を向ける先も、その方法も、それだけだ。潜在的な欲望を体現している人形、その体の中心に赤く燃えるような滾り、そこに渦巻く感覚に対してサーティも人形も、短絡的な他者への暴力で矛先を向けるしか知り得ないのだ。
「このッ!」
拳を握り、殴り、殴られ――人形に触れるたび、32番めの兄との息抜きがフラッシュバックする。その度、抑えきれない情動がサーティの胸を焼くのだ。あの手の感触を慰めに再現することもあるだろう。偽りではあっても、おぼれていたのなら、幸せだったかも知れない。
「でも」
目をつむり、あの記憶から現実へと意識を集中させる。会いたいのは夢の存在ではなく、現実にいるはずの兄弟だ。
突き出された拳を、首を動かすだけで避けて、サーティは人形へと肉薄した。その傷ついた身体を突き飛ばすように地面に押し倒す。
ゴッ――! と抵抗の拳が返されるが、サーティも攻撃をやめはしない。拳を振るい、振るわれる。馬乗りになった腰同士が擦れ合う。熱を持った欲望の呪詛が感情を揺さぶる。
「それでも現実を見続けないと、いけないんだ……っ」
快なのか不快なのかも、ぐちゃぐちゃになりそうな激痛の応酬。気付けばサーティは、相手からの拳が己に届かなくなっている事に気付いた。
拳を下ろす。
振り抜かれた拳を掴み止めると、その人形は力を失っていく。その手に触れてももはや呪詛は流れてこない。砂のように崩れていく中で、サーティは未だ解決しない身体と感情を現実だと受け止めるように、何も言わずにそれを見送っていた。
「72人、皆に会うまで……夢ばっか見てらんないよ」
傍に落ちていた朽ちたカーテンの端を身体に巻いて、サーティはダペルトゥットを睨みつけた。
大成功
🔵🔵🔵
銀山・昭平
☆
ふぅ、ふぅ……だいぶ消耗した気がするべな……だが、皆と暖かな食事を囲む幻想(つくりもの)……絶対に『本物』にしてやるべ。そのためにも……『巫山戯た幻惑で我を愚弄せしこと、後悔させてやろう』
(【暴却なる忘食】を発動、真の姿でもある暴食竜となり自身の人形に食らいつくように攻撃を)
(自分自身の人形はどんな攻撃かはある程度は予測できているものの……。暴食の呪詛に苦しめられながらも、飛び道具を棘を飛ばし迎撃。近接攻撃は噛みつき、或いは体を叩きつけるように対応、後手後手になるが【咄嗟の一撃】や【気絶攻撃】も絡めた力押しで戦う!)
☆アドリブ・連携歓迎です!
「ふぅ、ふぅ……だいぶ消耗した気がするべな……」
銀山・昭平(田舎っぺからくり大好き親父・f01103)は、解放された椅子から立ち上がりながら、肩を揺らして呼吸する。
それに、と昭平は己の服を見下ろす。幻惑の中で奪われていたそれらは現実ではそこにあり続けていたらしい。それはいいのだが、その中。拷問に耐えてはいたが、最後の猛攻に放ってしまった感触がじっとりと残っている。
「……、いやいや、毒のせい、だべ……うん、うん」
思い出せば、未だに心を擽られるような感覚に、無自覚だった欲望を自覚しそうになり、首を振って昭平は己の姿を取る人形を見遣る。
そして、その後ろにいる人形師へと。
「幻想、人形……全部が全部作り物だべな」
偽りで昭平を手篭めにしようとした、その敵へと、どこか清々しさを感じさせるような険しい笑みを差し向ける。
「……絶対に『本物』にしてやるべ」
宣戦布告。偽りを拒絶する、強い言葉とともに昭平の雰囲気が一変する。その呼吸すらも別次元の存在へと切り替わったかのような一瞬。昭平の形をした人形が、一足に飛び出した。
昭平に何もさせるわけにはいかないと、周囲に絡繰兵を作り上げ、殺到させた。圧殺――無数の絡繰に押しつぶされれば、屈強な肉体を持っていようが意味を成さない。そのまま潰れて肉塊と化す。
だが、その理想は食い破られた。文字通りに、現れた牙が絡繰兵を食い破ったのだ。
絡繰を一掃され、更に噛みつかれそうになった人形は、瞬間的に全力の逃げを取った。
『巫山戯た幻惑で我を愚弄せしこと、後悔させてやろう』
その牙の範囲から逃げた人形へと、開かれた暴食の喉笛が重々しい言葉を発していた。
真の姿を解放し、暴食竜へと変じた昭平。人形は、盾とする使い捨ての絡繰兵と遠距離の絡繰兵を組み上げ、昭平を追い詰めんとする。
「ぬん……!」
『この程度か、我の写し身が笑わせてくれる!』
戦法はたしかに正しかっただろう。昭平は、展開される陣に対して、後手、受け手に回らざるを得ない。だが、昭平はその尽くを力押しで押し返していた。
薙ぎ払い、突き砕き。その鱗が打撃を防ぎ、放つ棘が迫る矢を弾く。防御陣を敷く人形に、昭平は一気に突貫する。
『温い、温いわ!!』
消耗した声が響く。昭平の中で嵐のように吹き荒れる激しい飢餓が、その自我をも削り喰らわんとしている。
この力を使うデメリットが無いはずがない。昭平も、そして人形もそれを知っている。幻想で見た夢の光景を手綱として暴れ狂う力を制御し、昭平は時間を稼ごうとする人形へと肉薄し、そして。
『虚ろなど、腹を満たしてはくれん』
牙が人形を貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
シエナ・リーレイ
◇人形館
☆
テフラくんはぶれないね……。とシエナは呆れます。
時間をかけて綺麗な衣装を見繕ったシエナ、何故か荒らされた花畑を『お友達』と共に抜けた先で彫像に成り果てたテフラくんを見つけます
お呪いでテフラくんを『お友達』に迎えたシエナはテフラやジュリエッタに似た弟妹の相手をお願いするとお父様との対話に臨みます
あなたはどちらなの?とシエナは問い掛けます。
シエナが問い掛けるのはお父様が死骸人形であるか否か
兄姉に操られる死骸人形であればお父様を休ませる為に兄姉から引き剥がす事を試みます
逆に死骸人形でなければ自身の活躍を報告し彼が求めた呪具は完成している事を告げ、これ以上作る必要はないとお父様を抱きしめます
テフラ・カルデラ
◇人形館
☆
こ…これが元凶…の前に、わたしによく似た人形を相手しなければです…
…って、わたし自身を模したものであれば?
それならお話は簡単ですね♪ アイテム【蝋シャンパン】で人形ごと一緒にドロドロ蝋固めなのですよ♪
…あっ、本体に攻撃するのどうしましょ―――
固まっている間、意識はありましたが…身動き一つとれません…
あっ…シエナさん!といっても声は聞こえませんが…わたしだということに気づいたようです
うぅむ…予想通り『お友達』として他の人形の相手をすることに…
まだ【蝋シャンパン】は残っているので【サイキックブラスト】で動きを止めて思いっきり浴びせてやりましょうか!
わたし自身浴びてもノーダメージなので!
「あの人が、元凶……」
テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は老人――老人の姿をした異形存在から、しかし、その前に相手をしなければいけないらしいソレに視線を向けた。
「わたしによく似た人形……、とても良く出来てるのですよ」
テフラは、人形を見つめる。その髪の毛の先までまるで生き写しのようだ。欲望を元にした、のであれば欲深い彼女の人形が瓜二つになるのも頷ける。
そしてテフラは、そんな人形を見てこう思った。
(今なら、二対一体な像が作れる……?)
どんな場面でもテフラはテフラだった。そして、欲望の人形たるテフラもまた、同じ結論へと至り。同時に取りだすは蝋シャンパン。
振って栓を抜けば、どろどろの蝋が噴き出すアイテムだ。
「一緒にドロドロ」「蝋固めなのですよ♪」
台詞が完全一致する。きゅぽんと良い音がして栓が外れた瓶から大量の蝋が溢れだし――。
◇◇◇
シエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)は、豪奢な、それでいてスッキリとした淑やかさを感じられるドレスで、朽ちゆく庭に踏み出した。
あの衣装の数々が幻覚であったとしても、その幻覚の記憶から『お友達』wl作るように服を仕立てる事は十分に可能だった。
いわば服として作ったお友達を纏っている。
それは人形遣いの人形としての、何よりの勝負服でもある。
「……あら、とシエナは庭の傍らに立つ蝋像を見つめます」
知った顔だ。
知った顔が二つ。さて、どちらかが完全な蝋像で、どちらかが本物か。それともどちらも偽物だろうか。
そう顔を覗きこんだシエナは、片側のそれが本物だと察した。
そして、もう一つの像が、かの製作者が作り出した人形だと――シエナは己の姿をした人形と視線を合わせてそう悟る。
「ですが、シエナはシエナに用は無いのですよ。シエナは無機質に言い放ちます」
「ん、んー、やっぱりこうなりますよね」
テフラの肩に手を置いた。テフラをお友達にしたシエナは、動き始めたテフラに静かに頷いて見せた。
「ふふん、シエナさんもきっと蝋がお似合いだと思ってたのですよ……千載一遇の大ちゃんすということです!」
蝋シャンパンを手に意気込むテフラに任せて、シエナはゆっくりとダペルトゥットに近づいていく。
◇◇◇
「お父様は死骸人形であるか否か、シエナは問いかけます」
「人形を造る上で、その答に意味はあるのか?」
カチカチと背後の手が蠢く。手繰る糸はダペルトゥットに繋がるが、しかし、操られているのはどちらか。
「儂が儂を作った、儂が儂を元に儂を作った。死骸人形ではない、儂は儂でしかない」
その目がシエナを見る。嫌悪するような目が虚に覗く。
醜いな。
その口が告げた。
「人形は自ら飾り立てはせん、人形は自ら問い掛けはせん」
ダペルトゥットの動かす手の中で、小さくパチリと音が弾けた。
「これが、儂の究極か」
浮かぶ左右の手が崩れていく。糸が切れたように落ちていく。ダペルトゥットは静かにシエナに近づく。
ゆっくりとシエナが両腕を開く。父の軽い体を抱き締めた。
「醜い、良い呪いだ」
心なしか僅かに微笑んだような声。それだけを残して、ダペルトゥットの体はシエナの腕の中で朽ちていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
秋月・充嘉
☆
あれって俺?もう少しイケメンでは?
「ご自分のツラをご覧になったことがない?」
おっと半端な丁寧語が意外と刺さるぞー?
…ま、冗談はさておきお仕事するっすかね。
俺に似せた人形が、俺と同じ攻撃をするってことは、
「…お前の偽物が俺に似たモノを召喚する?」
…ぽいっすねぇ。ややこしいんで自分と同じやつをやるっすかね。
貴重な自分同士のお楽しみっすから堪能しとくっすよ~
「言ってろ」
人形だし特に面白みはなさそうと思ったんすけど、欲望が濃いっすねぇ。
うん、否定はできないしいいんだけどそれはそれなんで倒すっす。
一応聞くっすけど、ウルフは本物?
「ちぎるぞ」
本物っすね。それじゃ游兵団メンバーの介抱に行くっすか。
「んー……」
秋月・充嘉(キマイラメカニカ・f01160)は自分の人形を見つめながら、深々と唸ってみせた。顎に手を当てて暫く考えた後。
「俺って、もう少しイケメンでは?」
「ご自分のツラをご覧になったことがない?」
「おっと、半端な丁寧語が意外と刺さるぞぉ? まだ怒ってるっすか?」
と召喚したままのウルフに問いかけてみれば、帰るのは沈黙だった。
「……ま、冗談はさておきお仕事するっすかね」
振り向いた充嘉の人形は、己の影を渦巻かせている。その光景はひどく見覚えのあるそれで。
「俺の欲望が、俺のマネをするって事は?」
「……お前の偽物が俺に似たモノを召喚する?」
はたして、ウルフの予想は正しいものだった。召喚されるウルフのような形をした、おそらく人形。精巧なそれは、なるほどウルフそのものにしか見えない。
んー、と二人を見比べた充嘉は、一つ頷いた。
「ややこしいんで自分と同じやつをやるっすかね」
「まあ、間違えてホンモノぶった切っちまうかもしれねえしなあ、なあ?」
意味深に睨んできたウルフに、充嘉は肩を竦めて返す。
「ひえ、怖いっすねー。でもま、貴重な自分同士のお楽しみっすから、堪能しとくっすよ、ウルフー」
「言ってろ」
背中からの声に手を軽く振って、己の人形へと歩く。ウルフの姿をする人形も充嘉ではなくウルフを狙うようで、危害もなく充嘉は人形の身体に指を這わせる。
「ん、っ……は」
返すように、充嘉の胸を掴む人形が、すいとそのマズルを開けば、充嘉はそれを受け入れるように長い獣の舌を絡め合う。充嘉の身体が地面に押し倒される。
ぬち、ぬち、と息と唾液の混ざり合う音が響く。互いに互いをよく知る愛撫に徐々に感情が高まっていく。このまま、人形とまぐわい、果てるのも悪くはないかも知れない。
「――とまでは、思えないっすかね」
濃厚な、強烈な欲望。口の中に残る唾液を舌ですくう。近距離から撃ち抜いた影の拳槌の一撃で胴体に孔を空けた人形が崩れ落ちていく。
「さて、そのウルフはホンモノっすか?」
頭を挟むように足が落とされた。真上の影に問う。そうそうに方をつけたらしいウルフが、不機嫌な顔で充嘉を見下ろしている。
大剣を手の甲で押しのけて、丁度いい位置に合った股座に鼻先を埋めた。すん、と湿った臭いのする硬い感触を確かめる。
「ちぎるぞ」
「本物っすねえ……」
「ソコでしゃべるな」
深いため息を吐くウルフ――と満更でもないように少し重量感を増した感触に本人認証を済ませた充嘉は、そろそろいいかと今度こそちゃんと立ち上がる。
「さて、と……あの人形師はアッチに任せる事にするっすね」
と、充嘉は台の上に乗り、おそらく未だ快楽と絶望の夢の中に囚われている遊兵団メンバーに視線を向けた。
「まあ、まだ壊されちゃあないだろうな」
また面倒だ。ウルフは告げた。
あれから回復させるには、時間を掛けて行くしか無いだろう。と面倒見の良いのか、ただ欲深いだけなのか分からぬ主の笑みに、ため息を吐くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年08月21日
宿敵
『呪術師『ダペルトゥット』』
を撃破!
|