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贖罪の足枷

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #パストテイラー #ダークヒーロー #宿敵撃破


●かつて、彼はヴィランだった
 ヴィラン組織に属していた彼の役割は、幼い子供を連れてくること。
 それが出来るのは少年であるお前だけだと、そうして期待されることが少なからず嬉しくて。
 期待に応えたくて努めていた少年は、連れてきた子供たちがどうなったかなんて、知ろうともしなかった。
 だが、知ってしまった。偶然が重なって、子供達が人体改造の実験体となっていることを、知ってしまったのだ。
 それは少年の心に衝撃を与えた。幼い身一つで組織を逃げ出させるほどに。
 けれど、自分だけが組織を離れて、連れてきた子供達が残されたままとなってしまった事は、大人になった今も、彼の中にしこりとして残り続けていた――。

●今や、彼はヒーローの一員だ
「罪滅ぼしというやつだろうね。その少年は大人になって、ダークヒーローとなったわけだ」
 エンティ・シェア(欠片・f00526)は静かに語る。
 暴かれたくはないだろう過去を、彼の預かり知らぬところで、語るのだ。
「猟書家の幹部……その遺志を継いだ者が、彼の罪を利用して、悪事を働こうとしている」
 しかも、厄介なことに、ダークヒーローと結びつけるために、かつて悪事を働いた『少年』の姿ではなく、成長した大人の姿で再現しているのだという。
 改心し、ダークヒーローとして人々の平穏を守っている存在が、再びヴィランとして悪事を働く。
 そんなことがあっては、人々はダークヒーローという存在に不信感を抱くだろう。
 そう言った不和の種が、いずれは怪物『スナーク』の存在を信じる素地となるのだそうだ。
「それを未然に防ぐには、過去の悪事を、操るオブリビオンごと討伐してしまうしかない。無論、本物と共にね」
 そのためにも、件のダークヒーローと接触する必要がある。
 今回の予知では、オブリビオンの現れる場所までは、分からないのだから。
 まずはダークヒーローと接触し、彼が最も印象深い『悪事を働いた場所』を聞き出す必要がある。
 その上で、同行への説得か、弱点となりうる能力を聞き出すことが肝要だ。
「彼は素性を隠しているようだから、一先ずは目撃情報のある街へ向かって、探してもらえるかな」
 もっと正確に予知できればよかったのだけど、と肩を竦めて、エンティは道を開くのであった。


里音
 ヒーローズアース骸の月押し返し作戦を頑張りたい里音です。
 猟書家シナリオ、日常とボス戦の二章仕立てでお送りいたします。

 第一章ではダークヒーローと接触し、敵の出現現場を特定することが主な目的となります。
 その上で、ダークヒーローの同行、あるいは過去の己が使うであろう能力の情報提供を受けることでプレイングボーナスが付きます。
 探し方、説得の言葉等をプレイング内に記載くださいませ。
 ダークヒーローの性別は男性である事だけは判明しております。

 第二章開始時点で断章を挟む予定です。
 プレイングの参考にしていただければ幸いです。

 ヒーローズアース猟書家シナリオの完結数を見て、22日16時までの完結とするか16時以降の完結とするか判断していく予定です。
 そのため、早期の完結となったり、逆に内容に問題なくとも再送が発生する場合もあります。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『ダークヒーローの過去を探れ』

POW   :    ダークヒーローの現在のヒーロー活動に協力しつつ、話を聞く

SPD   :    ダークヒーローに接触し、言葉巧みに話を聞き出す

WIZ   :    ダークヒーローの過去を調べあげ、刺激しないように話を聞く

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杼糸・絡新婦
基本的には【コミュ力】でのお話し合いやね。
変化の術で『既製服』着用
カードコレクション片手に子供を中心に
話しかけ、件のダークヒーローについて【情報収集】
彼の出現場所をまず探して接触を図る。

こんにちは、ちょいとお話してくれへん?
猟兵である事と名前は名乗っておく。
敵の目的は、話しておいて大丈夫か?
知っておくことは大事なことやろ。
ついでに情報収集の時に得た
一般市民の彼への良い意見とかあれば伝えておく。
【勇気】付にはなるかな。
どんな理由あれ、それで今あんたさんはヒーローやっとる、
なら、力を貸してほしいのが正直なところや、
無理にとは言わん、情報だけでも良いけど、
あんたの過去、踏みにじられてええんかい?


サンディ・ノックス
もし俺がそのヒトだったら
偽物を探し当てて自分でケリをつけようと思う
その推測のもとダークヒーローを探すよ

偽物は子供を連れ去ろうとするから
子供が多く居て、かつ一人になりやすいところ…公園かな
孤立した子供に接触する偽物を待ち伏せているダークヒーローを探そう
UC招集・星夜で手数を増やそうか
小人は話せないけどヒト探しならできるだろうし

読みが外れたら別の場所に移動する
次はデパートにしようかな
調査は足で勝負だから

ダークヒーローを見つけたら努めて穏やかな雰囲気で声をかける
俺が猟兵であること
彼が邪悪な企みに巻き込まれていることを知っていると告げ
協力させてほしいと真摯な態度で願う

ねえ、貴方のことをどう呼べばいい?


牧杜・詞
まずは罪を利用されて堕とされかけてる彼を、探せばいいのね。

ダークヒーローってことだし、
なにかトラブルのあったところに行ってみればいいかしら。

彼に会えたらこちらも素性を話して、彼にも話してもらえるといいかな。
罪なら、わたしも背負ってるしね。

してしまったことは変えられないのだから、そこから逃げていないのなら、
うしろめたく思うことはないと思うわ。わたしもそうだしね。

あなたが同行するかどうかはお任せするけれど、場所と情報は教えてくれないかしら。

わたし過去を掘り起こすやり方は嫌いなのよね。
殺人鬼として、嫌いな人を刻むのにためらいはないわ。楽しくないけどね。

……刻むならやっぱり好きな人がいちばんだわ。


夜鳥・藍
SPD
そういえばヒーロー名も知らないですね。
それも含めて町の人に聞いたりして情報を集めましょう。でもあまり他の人におおっぴらに聞き込むのもちょっと考え物だとは思いますが、そこは様子を見ながらとしましょう。
派手に聞き込んで件のヒーローさんの変な噂が立ってはだめですものね。

お会い出来たらまずはご挨拶と事情説明を。
そのうえでお話しして下さると助かるのですが、私にできるのは真摯にお願いする事だけ。
過去は現在を形作るうえで重要なものです。積み上げた現在が未来を創る。
ですが過去に飲み込まれてもいけない。
過去の未練にひきづられてしまった私がいうのもなんですけどね。


陽向・理玖
罪滅ぼしか
子供を見守れそうなとこ
回ってたりするんかな?
児童施設や公園などで
情報収集しつつ

どんな人かは分かんねぇけど
ダークヒーローって事は
やっぱ陰のある大人の男?
ひとまず目撃情報纏めつつ足取りを追う

知らなかったからって許される訳じゃない
少なくともあんたはそう思ったんだろうな

ちょっとでも状況が変われば
俺だって似たようなもんだったろうし
意味は違うけど
今でも
自分の無力が許せなくなる

俺も子供は守りたい
同じ目に遭う奴は
少しでも減らしたいからな

協力してくれよ
少なくとも
今のあんたの姿で悪事を働かれるなんて
許せねぇだろ?
一緒に止めてくれ

仮にあんたが出来ねぇなら
俺が代わりにやる

ところで
俺は陽向理玖
あんた名前は?


コッペリウス・ソムヌス
救いたいという想いを抱く者
ヒトを助ける者をヒーローと呼ぶらしいね
過去があるから現在に至るなら
何が罪かは自分で決めるもの、だろうか

件のダークヒーローを探そう
子どもと関わることが多そうだから
そういう子の集まりそうな場所を重点的に
公園や学校や、いっそのこと子ども達に
そのヒーローを知っているかも聞いてみようかな
過去の彼が得意だったというのは、
つまりは今もそういう事のような気もするし

接触できたら彼に問おうか
多くの幼い子供を連れ去れる場所って何処だろう
かつて同じ事をしていたキミは知っている、
知っているからこそ目を背けることも
嘗てと向き合い新たな悲劇を防ぐことも
選べるのは今ヒーローであるキミだけだよ


饕・餮
んー……何というか、そんな風に気になっているのなら被害者の子達がどうなったのか、どんな素性だったかを調査して親御さんや家族に最後をきちんと伝える方が良いんじゃないかな?
親御さんは子供がどうなったか知る事も出来ず今も探し続けてるか僕の母さんみたいに復讐者になってしまうか……何れにしても今も苦しみ続けてるんだし
過去と向き合うのは辛いかもしれないけど……家族を苦しみから解放出来るのは貴方だけなんだし、さ

ダークヒーローが解決した事件を調査
全ての事件の起きて彼が到着する迄どれ位かかったかの時間を確認
到着するのにかかった大まかな時間を割り出し地図に記載
拠点が在りそうな大まかな場所を算出し其処で※情報収集




 猟兵達は件のダークヒーローの捜索に当たり、大きく二つの手段に分かれた。
 一つは、子供が集まる場所での情報収集。
 もう一つは、目撃情報のある土地で過去に起きた事件の調査や事件の起きそうな現場周辺での調査だ。
 饕・餮(前を向き歩き始めた者・f21993)は、『彼』が事件に関わった際、どの程度の時間をかけて解決したかを主に調べていた。
「うーん……思ったより情報が曖昧だったかな……」
 データの収集に見切りをつけて、餮は印をつけた地図とにらめっこを始める。
 可能であれば到着時間を主に調べたかったところだが、全ての事件についてそのような詳細が記されているわけでもなく。集められる範囲での情報からの分析で、『彼』が拠点としている可能性の高い地域を絞り込んだのだ。
 思ったよりは広い範囲になったが、そうなったら後は現地へ赴くしかない。
 そうして訪れたその場所で、餮は街の人間へ聞き込みをしている夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)の姿を見つけることとなる。
「――……のようなダークヒーローの方が……いえ、占いで、人生を左右する方になる可能性があるという結果が出たので、興味が……」
 様子を窺っていると、藍は積極的な聞き込みを行っているわけではないことが分かった。
 世間話や占い師としての軽い営業トークのようなものに、さりげなくダークヒーローの話題を混ぜ込む程度。
 何せヒーロー名も分からぬような、素性を隠したダークヒーローが相手だ。妙な噂が立っては元も子もないと、聞き込みの内容や人選にも気を配っているのだろう。
 そんな様子が見て取れるからこそ、餮は藍に自ら接触することはせず、ただ視線を交わすに留まった。
 一方で、牧杜・詞(身魂乖離・f25693)は実際に事件が起こった現場に足を運んでいた。
 そこで見かける者に軽い聞き込みをしている内に、詞はこの街が以前はさほど治安が良くなかったことを知る。
 子供だけで出歩かせるなどもってのほかだったという。
「……そう。助けてくれる誰かが、いるのね……」
 罪を利用されて堕とされかけてると、理解していたけれど。まだ、この街の人達にとっては直接誰かに結び付く話ではないらしい。
 ダークヒーローの事も、その罪を再現したという偽物の事も。
 幾つかの言葉を聞いて、なるほどね、と胸中だけで呟いて。
 見守られている様子の子供達が集まる場所へと、足を向けるのだった。

「変身! なんつって」
 ユーベルコードである変化の術を用い、杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)は目にも止まらぬ速さで普段の和装からヒーローズアースの流行に即した服装に着替えると、カードコレクションを手に、公園に集まる少年少女へと声を掛けた。
「この中に実際に見たことあるヒーローさんは居るやろか」
 気に入ったヒーローやヴィランのカードばかり集めたものだが、ヒーローに焦がれる少年達の心を掴むにはバッチリだった。
 わいわいとお喋りがてら、この辺にはヒーローは見かけないのか、なんて尋ねながら、子供目線の情報を集めていく。
 コッペリウス・ソムヌスもまた、公園をさりげなく歩きながら、自身と同じようにこういった子供達の集まる場所で警戒している大人がいないかと意識を配る。
(救いたいという想いを抱く者、ヒトを助ける者をヒーローと呼ぶらしいね)
 その点で言えば、いまの『彼』は十分にヒーローなのだろう。
 『彼』をヒーロー足らしめんとするのが、過去の出来事で、それを罪と思うゆえだとしても。
 ――いいや、だからこそ、その心を挫くような真似は、阻止したいものだ。
 眺めていても埒が明かぬと、ちょいと手招きした子供らに、内緒話をするようにしてダークヒーローの目撃情報尋ねてみる。
 かつて、幼い子供を連れてくることを期待されていたというのなら。今も、子供に関わる事は得意であろうから。
 公園を臨む児童施設では、陽向・理玖(夏疾風・f22773)が同様に少年らの遊びに付き合いながら、情報収集をしている。
 素性を隠しているとはいえ、変身能力などを持たない限りは完全に別の人間になることは出来ない。
 ダークヒーローという存在のイメージと性別的に、陰のある大人の男性辺りが候補として上がるだろうかと、それとなくそんな人が居ないか尋ねていた。
(罪滅ぼしか……)
 有益なようなそうでもないような。そんな無邪気な返答を聞く傍らで、理玖はほんのわずか、想いを馳せる。
 ヴィラン組織に拐われ実験体となった理玖にとって、『彼』の所業は確かに罪だと言えるけれど。
 子供達を守りたいという願いは、きっと同じなのだろうと、そう感じるから。
 会って、話がしたいと、そう思う。
 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は少し方向性を変えての捜索だ。
 子供達が集まる場所かつ、彼らが孤立するような可能性のある場所を重点的に調査している。
「悪戯はほどほどにね」
 言い聞かせるように告げられた青色系の水晶で構成された小人達が、一人では目の届かないような場所まで駆けていき、その捜索範囲を広げてくれる。
 自身が『彼』ならば、自分の偽物がかつての手口と同様に一人になった子供を連れて行くことを危惧するから。
 ――もっとも、『彼』がグリモア猟兵の予知より早く、オブリビオンによる過去の再現の存在に気付いているかは、定かではないが。
 それでも、密かに子供達を守るような存在であれば、子供にとって危険な場所を見過ごすはずは、無いだろうから。
 読みが外れるようなら次はデパートにでも足を向けようかと思案しながら、サンディは根気強く、その存在を待ち、探した。
 そうして、彼らはその人を、見つけるのであった。

●邂逅
「こんにちは」
 努めて、穏やかに。柔らかな声で。サンディは公園の端でベンチに腰を掛けて読書を嗜む男性へと声を掛けた。
 彼の調査方針は聞き込みではない。ゆえに、これは確信だった。
「ダークヒーローの方ですよね」
「……何のことでしょう」
「俺は、猟兵です」
 素性を明かすことで、男性はハッとしたようにサンディを見上げる。
 敢えてそう名乗って声を掛けてくることの意味を、よく、理解している証拠だ。
 周囲の人気を確かめるように視線を配る男性が、再び自分を見上げてくるまでを待って、サンディはぺこりと頭を下げた。
「いきなりですみません。俺は、貴方が邪悪な企みに巻き込まれている事を、知っています」
「邪悪な企み……?」
「……知らない、かな。貴方の偽物が、貴方の罪を模倣して、事件を起こそうとしていることを」
 サンディの言葉を聞いて、男性は驚いたように目を見開いて、ガタ、と音を立てて立ち上がった。
 慌てる様子に、既に対処に動いているという読みが外れたことを察したが、すぐさま見せた険しい表情に、やはり、この人は自身で対処をしようとする人なのだと、理解して。
 穏やかさを作る笑みをひそめ、真摯な表情を向けた。
「協力させてほしい」
 自分より背の高い『彼』を、今度はサンディが見上げる形となって。
 戸惑う瞳と、視線が合う。
「……俺一人の言葉じゃ信用できないかもしれないけど、俺と同じ目的で、同業者がこの公園の近くに集まってるから、話だけでも、聞いてほしい」
 ひょこ、ひょこ、と。青色の水晶で出来た小人達が草の影などから顔を覗かせ、導くように男性の視線の先をふよふよと浮き進む。
 彼らとサンディとを見比べて、男性は戸惑いを拭えぬ表情のままながらも、人の集まるその場所へ、向かうのであった。

 サンディに促されて訪れたその場所には、確かに、普段の公園では見かけない姿が幾つもあった。
 その中の一人――絡新婦が、こちらに気付くや、集まっていた少年達に礼と別れを告げて、歩み寄ってくる。
「こんにちは。あんたさんが噂のダークヒーローさんやね」
「ほう、なるほど君が」
 状況を察したコッペリアも、同様に声を掛けてくる。
 互いに軽い会釈を交わした後、先に切り出したのは絡新婦の方。
「自分らが猟兵やちゅうことは知ってる感じやね。杼糸絡新婦ちゅうんよ。えぇと、なんであんたさんを探してたかも……知ってる顔してはるね」
 こくり、頷く男性に、それならば話は早いとコッペリアも頷く。
「多くの幼い子供を連れ去れる場所って何処だろう」
「幼い子供……いや、それは……申し訳ないが、分からない。ここだって、僕や貴方達が居なければ、充分該当する場所だし」
 戸惑う様子の男性の言葉に、コッペリアは首を傾げる。
 かつて同じように子供を集めることが出来た彼ならば、そう言った場所の目星はつくだろうと思っていたが、読みが外れただろうかと。
 思案する様子のコッペリアに同じように首を傾げてから、男性はもしかして、と言葉を続ける。
「連れ去った後に、閉じ込められる場所……なら、組織に居た時は、病院、を偽装していました」
「なるほど病院か」
 しかし、病院と一口に言っても数は多い。ここだ、という決め手となるには足りなかった。
 尋ねる方向性が違っただろうかと再び思案に戻ったコッペリアを見やりつつも、絡新婦はのんびりとした調子で男性に告げる。
「あんたさんを探す時になぁ、子供らに色んな話聞かせてもろてん」
 ここらで見かけるダークヒーローについてを問うた時、皆口をそろえて言ったのだ。
 詳しくは知らないけれど、この街にも悪い人から守ってくれるヒーローがいる事は知っている。と。
「目きらきらさせてな、自分もヒーローになる、て言うてたんよ」
 そんな評価を、彼が望んだわけではないのだろうけれど。踏み出してくれる勇気を与えられたならと、絡新婦は願う。
 願いながら、静かに男性を見つめた。
「どんな理由あれ、それで今あんたさんはヒーローやっとる、なら、力を貸してほしいのが正直なところや」
「力を……」
「無理にとは言わんよ。言うたように偽物が出るらしいから、出そうな場所と、その能力に心当たりがないかだけでも良い」
 ただ、と。
 言葉を濁すでもなく、心根に問いかけるように、ゆるり、小首を傾げて。
「あんたの過去、踏みにじられてええんかい?」
 言葉を詰まらせる男性に、にこり、絡新婦は微笑む。
 沢山の時間は上げられないけど、考えてくれたら嬉しい、と。
 そうして、あっちにも仲間がおるんよ、と公園の入り口の方を指さし、促した。
 唇を噛み、ぺこりと礼をした男性が踵を返した間際、思案から戻ったコッペリアは、激励するように言葉を投げかける。
「知っているからこそ目を背けることも、嘗てと向き合い新たな悲劇を防ぐことも、選べるのは今ヒーローであるキミだけだよ」
 その言葉に直接の返答はなかったけれど。一瞬合った視線からは、向き合う事を選ぶような意志を、感じられた気がした。

 神妙な面持ちに、窺うような態度。
 それだけで、詞はその男性が件のダークヒーローであり、大方の事情は既に察した後だという事は把握できた。
「貴方達も、猟兵の方ですか……?」
 達、と言われて。詞は背後を振り返る。そこには、最終的にこの場所へと行きつくこととなった餮と藍の姿もあった。
 そうね、とだけ返して、詞は男性を窺い見る。
 事情を知っているのなら、教えてほしい情報が何かも分かっているのでしょう、と問うように。
「偽物、とやらの出そうな場所というのが……すみません、僕には思いつかなくて……」
「貴方が、過去に『悪事』を働いた場所も?」
「え……そ、それなら……」
 それが分かれば十分だと、詞は頷く。
「あなたが同行するかどうかはお任せするけれど、場所と情報は教えてくれないかしら」
 組織の施設跡地。そこに現れる、偽物の彼の能力を。
 それを聞いたなら、今すぐにでも踵を返して向かうことが出来ると、詞の眼差しは訴えかけている。
「……僕は、人の心に干渉する能力が、あります」
 敵意や警戒心を解き、友好的な感情を抱かせる能力。
 それがあったからこそ、無邪気な少年だったあの頃は、『友達』を簡単に作ることが出来て、何の疑いもなく、組織の元に連れ込むことが出来たのだ。
「昔は制御も出来ませんでしたが、今は、悪人を捕まえる時にしか――」
「それは、どうでもいいわ」
 その能力を危ういものだと自覚して、制御することを覚えたのなら、しでかしてしまった過去から逃げる気はないという事だろうと、詞は軽く首を傾げて見せる。
「うしろめたく思うことはないと思うわ。わたしもそうだしね」
「え……」
「罪なら、わたしも背負ってるという事よ」
 敢えて告げる事でもないが、詞とて、己の手で一族を滅ぼしてしまったことを罪として自覚はしている。
 自らの使命を全うした結果ゆえに、後悔はしていないけれど。
 それでも、その『罪』を悪戯に掘り返されるやり方は、気に入らない。
「わたし過去を掘り起こすやり方は嫌いなのよね。殺人鬼として、嫌いな人を刻むのにためらいはないわ。楽しくないけどね」
 肩を竦める詞は、するりと男性の脇を横切り、公園内の猟兵達と合流すべく歩み出す。
(……刻むならやっぱり好きな人がいちばんだわ)
 流石に、そんな言葉をうっかりとこぼしてしまうのは、躊躇われたがゆえに。
 どこか呆気にとられた様子で詞を振り返る男性を見つめた藍は、彼の意識がこちらに戻ってくるのを待って、言葉を紡ぐ。
「過去は現在を形作るうえで重要なものです。積み上げた現在が未来を創るものですから」
 過去の『罪』があったからこそ、今こうしてダークヒーローとして生きていることが、何よりの証左だろう。
「ですが過去に飲み込まれてもいけない」
 罪悪感に押し潰される事は、あってはならないのだと。そう、言われているようで。
 男性はほんの少し、安堵した様子を見せた。
 その表情を見上げながら、藍は少しばかり、バツの悪い心地になる。
(過去の未練にひきずられてしまった私がいうのもなんですけどね)
 未練に引きずられ影朧となってしまった過去を持つ藍が吐くには、随分と矛盾した言葉だとは思うけれど。
 ささやかでも彼の気持ちが前向きになるのならよい事かと、表情はベールの下に隠したままに。
 そのやり取りを見つめていた餮は、そっと男性の足元に歩み寄り、くい、とその服の裾を引く。
「少し、気になっていた事を聞いても良いかな」
 小首を傾げて、餮が問う。促すように頷かれれば、じぃ、と男性を見上げて。
「こんな風に子供達を見守るくらい気になっているのなら、被害者の子達がどうなったのか、どんな素性だったかを調査して親御さんや家族に最後をきちんと伝える方が良いんじゃないかな?」
「最後……」
 す、と。男性の目線が逸らされた。
 悔やむような横顔を、餮は変わらずじっと見つめている。
「親御さんは子供がどうなったか知る事も出来ず今も探し続けてるか僕の母さんみたいに復讐者になってしまうか……何れにしても今も苦しみ続けてるんだし……」
「――それはあり得ないんだ」
 絞り出すような声が、餮の言葉を遮った。
 小さな少年を見下ろす瞳には、悔しさと、怒りと、悲しみが満ちている。
「僕が、逃げ出した後に……組織は施設を捨て、連れ去った子供も、彼らの家族も、皆……殺してしまったから」
 償う相手すら、もういない。
 それどころか、より多くの命を奪う切っ掛けとなってしまった。
 それを聞けば、もう、猟兵達が向かうべき場所は決まったも同然だ。
 これほどまでに強く罪の意識を感じさせる場所なんて、彼が所属していたという組織の施設が存在した場所に他ならない。
「……案内を、させてください。僕にとっても、あの場所は、けじめをつけなければ、ならない場所ですから」
 そう告げた男性の目を見上げた餮は、ぱちり、と瞳を瞬かせる。
 なんだか、まるで。復讐者と化した母と、同じ目をしているように見えて――。
 
 得た情報を共有しあう猟兵達から少し離れて立つ男性に、理玖とサンディは揃って声を掛けた。
 動揺はあるようだけれど消極的ではなさそう。そんな話をサンディから聞いていた理玖だが、他の猟兵達と話して何を思ったか。窺うようにその表情を見て、ほんの少し、眉を寄せた。
「……心は決まった、って感じか」
「……今日は、沢山の人と話させてもらいましたから」
 仮に、彼が動けないというのなら、代わりに自分がやると理玖は言うつもりだったけれど、それはもう、必要ない言葉 なのだろう。
 だけれど、彼の横顔は、決意や正義感よりもずっと、後悔や、それに伴う憎悪が垣間見えるような気がして。
 とても、危うく見えた。
「……知らなかったからって許される訳じゃない。少なくともあんたはそう思ったんだろうな」
 独り言のように、理玖はこぼす。自分も似たようなものだったと。
 理玖の場合、ヒーローに救われることによってヴィラン組織から逃げ出せたが、そうでなかったならこの男性と同じように、ヴィランの手先として悪事に手を染めていたかもしれない。
 救ってくれたその人が見兼ねることがないくらい強く居られたなら、己のせいで大切な師を失う事もなかったかもしれない。
 例えばなしは、始めるときりがない事は、理解しているけれど。
「今でも、自分の無力が許せなくなる」
 ぐ、と一度こぶしを握り、男性を見つめる。
「俺も子供は守りたい。同じ目に遭う奴は、少しでも減らしたいからな」
 告げる理玖へ、男性が初めて視線を向けた。
 目が合った理玖からは、守りたいという一つの決意が窺えて。
 いつかの日、ダークヒーローとして同じ決意を持って立ち上がった時と、同じ目をしている気がした。
「少なくとも、今のあんたの姿で悪事を働かれるなんて許せねぇだろ? 一緒に止めてくれ」
「……ありがとうございます」
 危うく、目的が復讐に置き換わる所だったと男性は苦笑する。
 今回現れる敵は、決して、過去の組織と関係のある存在ではないというのに。
 礼を言うのはこちらだと笑ってから、理玖は一度サンディと顔を見合わせて。
「ところで、俺は陽向理玖」
「俺は、サンディ」
 ――貴方の事を、なんと呼べばいい?
 その問いかけに、男性は改めて彼らを含む猟兵達を見渡し、深く、頭を垂れた。
「僕の事は、影、と――」
 そう呼んでください、と。
 顔を上げたその人は、ダークヒーローとしての矜持を宿した眼差しでそう告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『哭死蝶アゲハ』

POW   :    あの時ヒーローも猟兵も来なかった!なのに今更!
自身が【何故家族は助けてくれなかったという怒り】を感じると、レベル×1体の【息子がくれた蝶の髪飾りを模した血吸いの妖】が召喚される。息子がくれた蝶の髪飾りを模した血吸いの妖は何故家族は助けてくれなかったという怒りを与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    あの人は若くあの子は未だ四歳だった!なのに!
自身からレベルm半径内の無機物を【嘗て家族を喪った時を思わせる業火製の紅葉】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ   :    二人は悲しまない!もう悲しむ事も出来ないのよ!
自身の装備武器を無数の【触れた者を麻痺させる、夫が愛した八車菊】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
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●消えざる罪の残滓の如く
 『影』と名乗ったダークヒーローの案内で、猟兵達は、かつて彼が所属していたというヴィラン組織の跡地へとたどり着いた。
 その場所は、病院だった面影を残した廃墟。そこからほど近い位置に存在する街は、かつて多くの子供が連れ去られ、更には子供を失った家族の虐殺という事件があったにも関わらず、活気ある街としてそこにあった。
「――今更現れたの、ヒーロー達」
 それとも、猟兵かしら。
 その声は、集った猟兵達の背後から唐突に響いた。
 振り返り臨戦態勢を取る猟兵達の目に、憎悪に満ちた女の顔が、映る。
「そこに居るのはダークヒーローね。ヴィランから改心したそうね」
 ふふ、ふふふ。女は一人で語り、笑う。
 そうして、狂気の籠った瞳で一同を見渡した。
「改心? 改心ですって? 私の夫を! 子供を! 殺しておいて!! そんなことが許されるというの!?」
「ッ……!」
 影の表情が凍る。この女は影の過去とは何の関わりもない存在だけれど、それでも、その言葉はただひたすらに、突き刺さるのだ。
 叫ぶ女の傍らには、猟兵達と共にこの場所へ訪れた影と同じ姿の男が立っている。
 その男がにこりと場違いなほどに柔らかく微笑むだけで、猟兵達は抱いているはずの敵意や警戒心が揺らぐ心地がした。
「許されない、許されないのよ……お前も、お前達も、ヴィランとして死んでしまえ!!!」
 ヴィランという存在に対して異常なまでの憎悪を見せる女の正体は『哭死蝶アゲハ』。
 猟書家幹部の遺志を継ぎ、ヴィランとしての罪を引き連れ事件を起こさんとするオブリビオンたるこの女を、ここで止めねばならないのだ――。
牧杜・詞
許されない?

そこからもう間違ってるわね。
彼もわたしも、許されるために戦っているのではないわ。

彼は罪を背負い、忘れず、購っていくために。
わたしは……。

快楽のため、とはさすがに言えないか。
ま、言う必要もないかな。

それにその微笑み。あまり意味はないわね。
わたしはあなたたちに敵意があるわけではないもの。
自らの快楽のために殺すだけよ。

そしてそれは罪にならない。素敵よね?

【命根裁截】を【新月小鴨】で使って、
命――仮初めなのだろうけれど――を刈り取らせてもらうわ。

自らの罪を背負って、反省と贖罪に生きる彼のほうが、
恨みで他人を巻き込んだり、快楽で殺しを続けるわたしたちより、
よっぽど生きる価値はあると思うわよ。




「許されない?」
 狂気を振りまくように叫ぶ哭死蝶アゲハに、牧杜・詞は純粋な疑問を投げかけるように首を傾げた。
 アゲハが何を言いたいのか。それが分からないわけではない。けれど、その糾弾は間違っていると、そう思うのだ。
「彼もわたしも、許されるために戦っているのではないわ」
 す、と。一歩前に出て、詞は胸の前に短刀を構える。
 幾つもの命を刈り取ってきた刃を、今もまた、目の前の存在へと向けるために。
 如実な動揺を示した影は、詞の言葉に同調するでも、否定するでもない。苦い顔をして、それでもアゲハから目を背けずにいる姿だけを一瞥して、詞は淡々と、言葉を紡いでいく。
「彼は罪を背負い、忘れず、購っていくために。わたしは……」
 ――快楽のため。
 そう言いかけて、やめた。
 この場でいうには、あまり相応しくはないだろうことは、察せるから。
 詞にとって、殺すことは自らの欲求を満たす行為だ。そう、自覚しているし、それは自分が理解していればいい事だった。
 必要のない言葉は、つぐんだまま。詞は視線をアゲハからその隣に佇む影の紛い物へと向ける。
「……その微笑み。あまり意味はないわね」
 敵意や警戒心を掻き消し、友好的な気持ちを抱かせるという影の能力の模倣。
 それは元々敵意も警戒心もなくこの場にいる詞にとっては、なんの効果もなさない能力だ。
 だから、詞が刃を振るうのを阻むことなんて、到底できない。
「これで、終わり」
 た、と。踏み込む足取りはいつだって軽く、迷いがない。
 突き立てるために握り込んだ刃を、忌々し気に払いのけようとしたアゲハは、手や腕に刃が触れても傷がつかないことに気が付き、次の瞬間には、自身の命が明確に刈り取られていることを悟る。
 詞を睨みつける瞳には、怨嗟と同じくらいの、怒りが籠っていて。
「罪を背負う? 購う? そんな綺麗ごとの裏で、どれだけの命が救われずに消えていくかも知らないで!」
「ええ、知らないわ。でも、あなたを殺せば、少なくともあなたに殺されて消える命はなくなるわ」
 対峙すれば、よくわかる。彼女は、ただただ自身の家族を失ったことを嘆いているのだ。
 その悲しみと怒り意外何も見えていないからこそ――息子がくれた蝶の髪飾りを模したものから、血を吸う妖が、溢れ出るのだ。
「気が付いているはずよ」
 自身へと群がってくる妖を斬り捨てながら、詞はアゲハの瞳を真っ直ぐに見つめる。
「自らの罪を背負って、反省と贖罪に生きる彼のほうが、恨みで他人を巻き込んだり、快楽で殺しを続けるわたしたちより、よっぽど生きる価値はあるって」
 もっとも、それを受け入れられるようなら、初めからオブリビオンになどなっていなかったのだろうけど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
思うままに口から出る言葉は私でなくて私であって。

改心は許されるよ。
己が心の動きは誰が何と言おうと思おうとも、自分にすら止める事なんてできやしないの。
そして同じようにその心の動きを許す許さないも貴女の自由なんだ。
だって貴女だって大切な人を想うなって言われて納得できるの?できないでしょう?
それと同じだよ。
だから恨む貴女の心も影の想いも。私は許すよ。認めるよ。だってそれが私の在り様だから。

青月を構え雷公天絶陣を放ち、花びらの効果が出る前に雷撃で撃ち落とし焼き尽くしてしまいましょう。
影の偽物の能力には狂気耐性で抗います。心に作用する能力ですから心への耐性である程度軽減できると思いますし。




 夜鳥・藍は、叫ばれる言葉に、聞き入るように瞳を伏せる。
 自身の中に落とし込み、しっかりと受け止めたうえで、ゆっくりと瞳を開いた藍の唇からは、思うままに、言葉が零れる。
「改心は許されるよ」
 己でなくて、己である。そんな言葉。
 哭死蝶アゲハへと、真っ直ぐに向ける言葉。
「己が心の動きは誰が何と言おうと思おうとも、自分にすら止める事なんてできやしないの。そして同じようにその心の動きを許す許さないも貴女の自由なんだ」
 何を大切に思うのも、何を憎く思うのも。何を信じ、何を受け入れるのも。皆、その人のその時の心が決めるもの。
 影は、己のしたことを罪だと思った。そうして、せめてもの償いを己に課した。
 アゲハは、救われなかった家族が大切だった。だからこそ恨む気持ちを抑えることなどできなかった。
 どちらも、否定されるべきではない心の選択だ。
「貴女だって大切な人を想うなって言われて納得できるの? できないでしょう? それと同じだよ」
 だから。
「恨む貴女の心も影の想いも。私は許すよ。認めるよ。だってそれが私の在り様だから」
「――それでも」
 藍の言葉を遮ることなく聞いた上で、アゲハは吐き捨てるように言う。
「お前は私を殺すのでしょう?」
 アゲハは、許さない。許せない。だから殺す。
 けれど許すと言ったその口で、お前は私の死を望むのだろうとアゲハは眉を寄せる。
「私の気持ちを許し認めるというのなら!! 私に殺されるべきではなくて!?」
「……それは、できない」
「そうよ、そうでしょうよ!」
 貴方はヒーローだもの。いいえ、猟兵かしら。
 どちらでもいいわとアゲハは笑う。どちらでも同じだ。
「それが、許さないという事よ!!」
 復讐に取り憑かれたアゲハを説くことなど出来ない。分かっていたが、言わずにはいられなかった藍はベールの下で唇を噛み、アゲハの周囲を舞い始めた八車菊の花弁へ向けて、降り注ぐ雷を放つ。
 雷に巻き込まれて悲鳴を上げるアゲハの傍らで、彼女を支えるようにしながら咎めるような目線を向けてくる影の紛い物。
 その眼差しに、心が動かされそうになるけれど。藍はそれを狂気と振り払う。
(私は……)
 それでも、許したい。そんな、祈りにも似た願いを抱えながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
影さんの過去を利用したことは許せないけど
このヒトも可哀想なヒトなんだ
憎しみのあまり亡くなった後もオブリビオンになって還ってきてしまって

その狂気に満ちた目を見れば話が通じないのはなんとなくわかる
それでも彼女に敵意は向けない
ただ、止めよう、それがきっと彼女の為にもなる

UC解放・星夜発動
小人の魔力弾で追い詰めよう
剣を振るわず、黒水晶も使わずに小人を使うのが彼女にできるせめてもの慰め

矢車菊は黒剣で斬り払いながらUCの発動を維持
うん、そうだね
死者は悲しむこともできない
それは俺もよく考える
かつて自分の身勝手でたくさんのヒトを死なせて
その罪について考えているから
(償う方法は見つけていない)




 オブリビオンという存在にも色んな者が居る。その事実を、サンディ・ノックスは改めて痛感した心地だった。
(影さんの過去を利用したことは許せないけど……)
 それでも、彼女――哭死蝶アゲハを悪と切り捨てるのは憚られた。
 アゲハにとって失った存在があまりに大きすぎたために、恨み、憎しみを募らせて、ついにはその過去に執着してオブリビオンと化した。
 それは、とても。可哀想なことだと、感じるから。
 サンディはそっと息を吐く。居た堪れない気持ちに陥りそうな胸中を宥めるために。
 そうして、真っすぐ、アゲハを見つめた。
 その眼差しに敵意がない事は、じっとサンディを見つめる影の紛い物が無駄だと言うように肩を竦めるのを見れば明らかだろう。
 そして同時に、アゲハを見つめたサンディにも、彼女には話が通じないのが悟れた。
 無い敵意を削ぐことは出来ないし、無い理性に訴えかけることも、出来ないのだから。
 止めよう。決意を宿すや、サンディは青い水晶を幾つもの小人の姿に転じさせる。
「この子たち、どう見える?」
 問うような言葉は、答えを求めぬ詠唱。小人達は両手帯びた魔力を弾丸のように放ち、攻撃する。
 ――これは、せめてもの慰めだ。
 サンディが選べる攻撃手段の中で、一番、苦しみの少ない技。
 一生懸命に魔力弾を放つ小人達は、アゲハが少し小突いただけで消えてしまう脆弱な存在だけれど、数の力で、確実にダメージを与えていく。
「この程度、この程度で私は止まらない……何をしてでも、ヴィランを殺しつくすのよ!」
 そうでなければ収まらない、と、アゲハは叫ぶ。
 その行為を夫や息子が嘆くのではないかなんて、もう、とっくの昔に斬り捨てた自問だ。
「二人は悲しまない! もう悲しむ事も出来ないのよ!」
 溢れるように舞った無数の花弁。
 夫が愛した八車菊の花が、まるでアゲハの狂気を孕んだかのように、触れた者を麻痺させる武器として小人やサンディへと襲い掛かる。
「――うん、そうだね」
 一撃で消滅してしまう小人達を守るように、黒剣で花弁を斬り払いながら。サンディは穏やかな口調で、アゲハに頷いた。
 死者は悲しむこともできない。そのことを、サンディもよく考える。
 悲しむことも、怒ることも、憎むことも出来なくなった人々の事を。
 彼らをそんな目に遭わせたのは、かつての自分の身勝手。
 沢山のヒトを死なせた罪を、考えない瞬間はない。
(それでも、償う方法なんて、見つけられないけど……)
 ほんの一瞬過った翳りを、振り切るように。サンディは小人を守るためだけに、刃を振るうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

杼糸・絡新婦
なあ、影さん、
あんたさんに今言葉をつきつけているあれは自分の敵や、
んじゃ、あれを倒した自分はヴィランになると思う?
向き合うのは大事なことやけど、
背負ってヒーローやっとるんやろ、
ここで潰されても許された事にはならんで。

鋼糸を使用し、【捕縛】するように絡みつき、敵の行動阻害
【フェイント】をいれ攻撃し、こちらへ意識を向ける、
味方を含め、こちらにきた攻撃を、
【かばう】形で【見切り】
タイミングを図り脱力し受け止め
オペラツィオン・マカブルを発動、
排し、返せ、サイギョウ

どちらにせよ。
大事な気持ちを利用するやり口が気に入らん。
だから、ここで止めようか。




 哭死蝶アゲハが放つ幾つもの叫びを、影は黙って聞くしかなかった。
 猟兵達のように戦う術に秀でているとも言えず、アゲハに対して自身能力を使う事が正しいとも思えない影には、そうするしかなかった。
「なあ、影さん」
 そんな彼に、杼糸・絡新婦はゆるりと、問う。
 視線が向けられるのを待って、ことりと首を傾げて。
「あんたさんに今言葉をつきつけているあれは自分の敵や、んじゃ、あれを倒した自分はヴィランになると思う?」
「え……いえ、それは……」
 言葉に詰まりつつも、影は絡新婦を見つめて、言う。
 どんな理由があっても、今のアゲハは悪意を持って人々を害そうとする存在であって、それを止めるために行動する者が、ヴィランと――悪と断じられるのはおかしいと思う、と。
 うん、そうかあ、と。絡新婦はほんの少し口角を上げて、自身の指先に鋼糸をあそばせる。
「向き合うのは大事なことやけど、背負ってヒーローやっとるんやろ、ここで潰されても許された事にはならんで」
 護るために戦うと決めたならば、何を大切にするべきかを理解しているならば。
 責められたって傷ついたって、蹲っている場合ではない。
 ヒーローなのだから。
 絡新婦の言葉に目を丸くした影にもう一度微笑んでから、さて、とアゲハに向き直る。
 敵が蝶ならこちらは蜘蛛だ。鋼糸を放ち、その行動を阻害するように絡みつかせようとする絡新婦へ、アゲハは鋭い眼差しを向ける。
 捕縛しようとする動きを忌々し気に払い、溢れんばかりの憎悪を突き付けてくるアゲハに、怖いなあ、と軽口を叩いて見せて。
 自身へと、意識を向けさせる。
「邪魔ばかりして……」
 あの時は何もしてくれなかったのに、こんな時にばかり駆けつけてくるなんて。
 悲嘆が、怒りと憎しみを増長する。どうして大切な人達が喪われなければならなかったのかと嘆く声に、周囲の無機物がまるで同調するように炎へと転じる。
 膨れ上がった業火は、そのまま赤々と舞う紅葉へと変化し、辺り一帯に憤怒の熱を迸らせながら、一直線に絡新婦へと向かってきた。
「こっちにくるなら、話が早い」
 さりげなく影の前に立ち、彼へと攻撃が及ぶことのないよう配慮しながら、絡新婦はゆるりと腕を広げる。
 おいでと言わんばかりのその身を、業火で出来たの紅葉が一斉に襲い掛かり――。
「排し、返せ、サイギョウ」
 傍らの狐人の人形が、全て、吸い込んだ。
 熱の渦から晴れた絡新婦の表情には、明確な怒りがあって。
「――どちらにせよ。大事な気持ちを利用するやり口が気に入らん」
 だから、ここで止めようか。
 ちらと見やったのは影の紛い物。微笑むそれが気持ちをざわつかせようとしてくるのに舌打ちしながら、己の不快を知らしめるように、人形が吸い込んだものを、叩き返してやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
ああ…どうしてだろう
…分かっちまう
みんなを助けるのがヒーローなら
誰がヒーローを助けてくれるんだろうって
師匠が居なくなった時
確かにそう思ったから

そう今更だよな
過去は変えらんねぇ
あんたの嘆き
受け止めてやる
覚悟込め

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波飛ばし残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る

妖は動き見切り
龍牙でジャストガード直前で受け止め受け流し
UC起動し加速
怒りで思い出を汚していいのかよ

過去は今更でも
今は未来は変えられる
影兄さん!
干渉して貰い隙作り出し
限界突破更に加速し懐へ
拳の乱れ撃ち
早く還れよ
旦那と息子待ってるぞ

人一人の力には限界があって
それでも
俺は
みんなを
世界を守りたい




 陽向・理玖の胸中は、影と同じくらい複雑だったことだろう。
 哭死蝶アゲハの嘆きは、理玖には理解できた。
 どうして助けてくれなかったのか。自身の前に庇い立つ師の背中を思い起こしながら、理玖はあの時に感じた嘆きを思う。
 みんなを助けるのがヒーローなら。
 ――誰がヒーローを助けてくれるんだろう。
 答えは、簡単なことだった。自分が、助けられるだけの力を得るしかない。
 アゲハにとっても同じなのだろう。彼女はただ、助けられる存在ではなく、排除する存在に道を違えてしまっただけ。
「そう今更だよな」
 過去は、変えられない。アゲハの家族がヴィランによって殺されたことも、それによって彼女がオブリビオンと化したことも。
 全部、変えられない現実なのだ。
 ならばと、理玖は一つ弾き出した龍珠と共にこぶしを握り締める。
「あんたの嘆き。受け止めてやる」
 ――変身ッ!
 龍珠をドラゴンドライバーにはめ込めば、理玖の全身は装甲に覆われる。
 ヒーローらしく、姿を転じて。衝撃波を飛ばすと同時、勢いよく間合いを詰めると、アゲハに掴みかかった。
 振りかざす拳にはヒーローとしての矜持を籠めて、殴る。
 呻く声と共に、憤りを湛えた瞳が理玖を睨み、同時にアゲハの纏う蝶の髪飾りから妖が生まれた。
 その髪飾りが大切なものである事は、触れるアゲハの指先の優しさから感じ取れるのに。その大切なものから生み出すのは、血を吸う妖なのだ。
 かすかに眉を寄せ、理玖は龍の刻印が入った五鈷杵を翳し、妖の攻撃を受け止め、いなす。
「フォームチェンジ! ライジングドラグーン!!」
 理玖の覚悟を具現化したような、七色に輝く眩い龍のオーラが彼の身を包む。
 同時に得た戦闘力と飛翔能力の力で、理玖はさらに加速し、アゲハに肉薄すると、切とした声で、訴えた。
「怒りで思い出を汚していいのかよ」
 ぴくり、と。アゲハの指先が震えた気がした。
「そんな、今更なことを……」
「過去は今更でも、今は未来は変えられる――影兄さん!」
 理玖の呼びかける声は、影に、アゲハへの能力の使用を促すもの。
 アゲハの心を『惑わせる』ことには躊躇いのあった影だが、理玖の言葉は、アゲハの心を『救う』ことを望むようで。
 だから、祈るような気持ちを込めて、アゲハの敵意へ、憎しみへ、干渉した。
 その干渉で心を塗り替えることは出来ずとも、一瞬の隙が出来れば、充分だ。
 握りしめた拳で、打ち据える。
 ――理玖が手を伸ばせるのは、その手が届く範囲だけ。それが、理玖一人に出来る限界だ。
(それでも俺は――)
 みんなを、世界を守りたい。
 理玖の覚悟が一層輝きを増し、理玖の攻撃に威力を与える。
 反撃の隙を与えぬほどの乱れ撃ちを見舞われ、ついにアゲハは膝を折った。
 血を吐きながら、それでも震える指先が縋るように触れるのは、蝶の髪飾り。
 息子がくれた、大切なもの。
「早く還れよ。旦那と息子待ってるぞ」
「あの人は……あの子は……」
 どこにもいない、はずなのに。
 待っている。アゲハにはその言葉が、不思議と現実味を帯びて、聞こえるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

饕・餮
アレンジ連携歓迎

誕生日にお祖父ちゃんに教わりながら作った其れ大事にしてくれてたんだね

……遅くなっちゃったけど僕は帰って来たよ?

…確かに父さんの時は間に合わなかったけど……僕は、猟兵に救われたよ
アリスラビリンスに迷い込んで仲間が僕の為に自ら犠牲になって……自分が許せなくて息をしているだけで生きてなかった僕を救ってくれた人が、さ
母さん……もう止めよう?

思いの丈を自分が帰って来た事を母に伝える
それで止まらないなら母の痛みを少しでも刻み込む為攻撃を受ける
※激痛耐性で耐え※カウンターで※捨て身の一撃UC
戦う意志、怒りを断つ

止めるならせめて自分で

ただいま母さん……
母さんが生きてる内に間に合わなくてごめん…




「まだ、まだよ……ヴィランを殺さなければ……」
 震える指で、縋るように触れられた髪飾りを見て、饕・餮は瞳を細める。
 そうして、とてとてと、膝をつき項垂れるアゲハの前に歩み寄った。
「誕生日にお祖父ちゃんに教わりながら作った其れ大事にしてくれてたんだね」
 その声に、『哭死蝶アゲハ』は顔を上げた。
 そうして、目を見開いた。
「……遅くなっちゃったけど僕は帰って来たよ?」
 死んだ息子に、よく似た少年がそこにいる。
 ――死んだと思っていた、四歳の息子の面影を残した餮が、生きてそこにいる。
 その現実は、アゲハにとってはあまりに衝撃的で。夢のようで。
 だからこそ信じがたいものだというのが、表情を見ていればよく分かった。
 こぼれんばかりに見開かれた瞳を真っ直ぐに見つめ、餮はゆっくり、ゆっくりと語り掛ける。
「……確かに父さんの時は間に合わなかったけど……僕は、猟兵に救われたよ」
 父を喪ったあの日、餮は一人アリスラビリンスに迷い込んでいた。
 仲良くしてくれ、共に扉を探してくれた仲間達が自ら犠牲となって逃がしてくれたおかげで、餮は一人生き延びた。
 大切だと思った存在を次々に失い自分一人残り続けることは、幼い餮の心を押し潰すには十分で。
 そんな折に、出会った猟兵が居たのだ。
「……自分が許せなくて息をしているだけで生きてなかった僕を救ってくれた人が、さ」
 その手が遍く全てに届くわけではないことを、猟兵自身が理解しているし、だからこそ彼らは――自分は、少しでも届くように手を伸ばすのだ。
 地面に爪を立てる手に己の手をそっと重ね。餮はアゲハに――母に、語り掛ける。
「母さん……もう止めよう?」
 どうかこのまま、静かに眠って。
 再会がこんな形になることを、望んでいたわけではないけれど。こんな形になってしまったからこそ、憎悪に取り憑かれた母に、帰ってきたことを理解してほしかった。
 真摯な瞳は、それでも優しくて。
 息子の面影を抱くこの少年が、真実、己の息子であることを、アゲハは実感せざるを得なかった。
 ――思いの丈を伝えても、母は止まってくれないかもしれないという懸念が、餮の中にはあった。
 そうなったなら、母が抱き続けてきた痛みを少しでも刻み込むために、敢えて攻撃を受けるつもりでもいた。
 けれど、それは不要だった。アゲハが伸ばした手は、餮を傷つけることなく、その身を優しく抱きしめたのだから。
「ただいま母さん……」
 母に突き立てる事を覚悟して握りしめたボロボロの退魔刀の鞘をそっと手放して、餮もまた、母を抱きしめる。
「母さんが生きてる内に間に合わなくてごめん……」
「私こそ……迎えに行ってあげれらなくて、ごめんね……」
 寄り添い抱きしめ合えば、そこに敵意も憎悪もない事が伝わってくる。
 そうして、アゲハの執着出逢ったその感情が消えうせることで、アゲハ自身が掻き消えていくのも、伝わってきた。
「おかえりなさい、私の可愛い子」
 最後の一言は、餮のよく知る母の顔で。母の声で。
 彼女が微笑むから、餮もまた、あどけない笑みを湛えて、見送るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月21日
宿敵 『哭死蝶アゲハ』 を撃破!


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#ヒーローズアース
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#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
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#パストテイラー
🔒
#ダークヒーロー
#宿敵撃破


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠饕・餮です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト