●お掃除いたしましょう
ヒーローズアースにおける太平洋。その海底に存在する海洋文明アトランティス。
そこに存在する一つの都市が、猟書家の侵略に晒されているのだと、ソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)は語った。
「敵は海洋汚染を伴った状態でアトランティスに接近し、丸ごと汚染することで『超生物スナーク』を生み出す『スナークトライアングル』に変えようとしているようですわ」
そのために、海洋汚染の発生源となるオブリビオンの群れを創造し、放っているというのだ。
ヒーローズアースの危機となれば、勿論ヒーロー達が黙ってはいない。
しかし、多くのヒーローは深海での活動をアトランティスの超技術である『適応光線』に頼っている。
「幹部はその適応光線を無効化するユーベルコードを持っておりますの。ほとんどのヒーローが、現場にさえたどり着けない状態ですわ」
唯一、海中でも活動できるように体を変異できるミュータントヒーロー達が応戦しているが、オブリビオン相手では戦闘力の差がありすぎる。
さらに厄介なことに、オブリビオンの群れは、取り逃がしてしまうと幹部へ汚染された海水を纏わせ、パワーアップさせてしまうのだ。
「ですので、ミュータントヒーローの方々と協力し、逃がさないよう動いてもらうなどなさると、良いかと思いますわ」
自身より戦闘力のある猟兵の加勢を察したなら、ミュータントヒーロー達は熟知しているアトランティスの地形を活かし、より効果的に敵を屠れるよう助力してくれる。
追い込みや囲い込みなどへの助力は勿論、広範囲を攻撃するために巻き込まれない位置まで退避する等も快く聞き入れてくれる。
「放たれるオブリビオンの群れは、海洋生物と融合した状態ですの。人魚のように尾鰭が映えておりますわ。元はメイドさんのようですので……まさしくマーメイドでございますわね」
一瞬、上手い事言ったのではみたいな顔をした。
さておき、そのメイド人魚は素早さを活かした攻撃を得意とする。
群れでの連携も程々に取れており、自身の能力を引き上げて味方を補佐する動きをする個体もいるだろう。
くれぐれも注意が必要であると告げて、ソフィアは少しだけ眉を下げる。
「敵幹部は、元々は海神の眷属であったようですの。海洋汚染を地上文明によるものと断じ、怒りに心奪われた存在ですわ」
だからこそ、海洋汚染の根源となるオブリビオンを駆逐してやらねばなるまい。例えそれが、自らが放ったものだとしても。
美しい海を守り、眷属を眠らせてやってほしい。
静かに語ったソフィアは最後にもう一つ、と言葉を続ける。
「スナークなる存在を、敵は恐怖を集める象徴として生み出そうとしておりますの。もし、余力がありましたら、我ら猟兵が、スナークを名乗ってしまいましょう」
『秘密結社スナーク』の一員であると、声高に。
恐ろしさを憧れに転じてやれば、猟書家達の活動への、良い妨害になると、少しばかり、悪戯気な顔をして告げるのであった。
里音
ヒーローズアース骸の月押し返し作戦を頑張りたい里音です。
猟書家シナリオ、集団戦とボス戦の二章仕立てでお送りいたします。
今回のシナリオではミュータントヒーローと協力すること、あるいは猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員として名乗ることでプレイングボーナスが得られます。
ミュータントヒーローとの協力は、特に細かい指示等なくとも、逃げられないように追い込んでほしい、など簡単にお願いすることで大体従ってくれます。
秘密結社スナークの一員と名乗るための口上に付き合ってもらうなどして頂いてもOKです。
集団敵の姿はイラストの姿の脚の部分が人魚のようになっている状態だと思ってください。
全滅させることで、二章ボス戦のパワーアップを防ぐことが出来ます。
二章ボス戦へ移行時に断章を追加する予定ですが、その前にプレイングを書けて頂いても問題ありません。
早め進行で参りますので、公開と同時に受付開始、書ける時にサクサク進めて参ります。
サポートさんのお力もお借りしつつ進行する予定なので、早期の締め切りが発生する場合があります。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『万能派遣ヴィラン隊』
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POW : これより業務に移ります
【民衆もしくは敵に対して一礼と共に宣言する】事で【機能性を重視した業務用メイド服】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 業務の邪魔は許しません
【超高速移動からの目にも留まらぬ打撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : あらゆるニーズにお答えします
技能名「【全技能】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
👑11
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王・笑鷹
ヒーローなら料金とられることもないだろうし、気兼ねなく頼るのヨ。
まずはフック付きワイヤーを沢山仕掛けて、動きを阻害する陣を張るネ。
簡単に幹部に辿り着かないよう、時間稼ぎも狙いつつ。
ハォ、格好いいヒーローさん達!
あの辺りに誘き寄せてくださいナ。
狙い通りならワイヤーに沿ってメイドさんの行列が出来るはず。
少なくとも破るために減速するはずネ。
メイドさんへ向かって飛び出し、服を脱いで水着になりながらダガーで攻撃ネ。
美少女の水着は高くつくのヨ!
アトランティス名物マーメイド喫茶とか、儲かったりしないカナ、とか過ったケド、諸行無常ヨ。
ついでに宣伝もしとくネ。
サァサァ、海の平和は、秘密結社スナークが守るヨー!
●
海の底へ真っ直ぐと進んでいく王・笑鷹(きんぎつね・f17130)は、やがて向かう先に靄のようなものが浮かんでいるのを見つける。
正確には、それは海洋汚染を招く物質。ゴミや油の入り混じった、不愉快な浮遊物だ。
うぇ、と眉をひそめた笑鷹はその浮遊物を掻い潜りながら交戦する幾つかの影を見つけて、するり、フック付きのワイヤーを幾つも取り出した。
まずはあちらの動きを阻害するべく、陣を張る。こちらが有利に戦うように。いざ不利を感じて逃げ出そうとしたオブリビオン達が、簡単に幹部の元にたどり着けないように。
そうしてから、すいすいと泳いでミュータントヒーロー達の元へと、合流する。
「ハォ、格好いいヒーローさん達!」
気さくな笑顔で挨拶をしつつ、笑鷹は彼らの周りをにこにこと泳ぎ回る。
対価や報酬のやり取りを極力発生させたくない笑鷹にとって、共闘というのは極力避けたい事項だ。
しかしこの交渉相手はヒーローなのだ。正義のために活動する彼らなら、料金を取ろうとすることもあるまい。
打算塗れなのを特に隠そうともしないまま、笑鷹はすぃと己が張った陣の辺りを指さして。
「あの辺りに誘き寄せてくださいナ」
利害は一致するでしょうと言わんばかりに、笑みを向けた。
自信満々の笑鷹の表情と、何より生身で海中行動を可能にしている事で、ミュータントヒーロー達は彼女が猟兵であることを即座に理解し、頷き合う。
そうして、ある者は勇ましく挑みかかり、ある者は危機を察して逃れるように踵を返しと、気取られないように誘導を始めた。
人魚のメイド達は、そんなヒーロー達の動きに合わせるように尾鰭を棚引かせて水中を泳ぎ回り……そうして、気付いてしまった。
いつの間にか、自分達の周囲が、鋭利なワイヤーで覆われていることに。
「得意の高速移動を披露できなくて残念そうネ!」
こんな所でそんな技を使ったならば、たちまちの内にみじん切りだ。
覚悟の上で挑むメイドもいるにはいるが、結果として自身の体や鰭の一部を失い、大きく機動力を落とす事となっている。
ミュータントヒーロー達もやや慎重になっている様子が伺えるが、陣を張った笑鷹本人は、全てを把握しているのだ。
ダガーを構え、メイドへ向かって飛び出した笑鷹は、対抗しようとするメイドの攻撃を、服を囮にすることで器用に躱し、素早く急所を切り裂いた。
勿論、服の下は水着である。
「美少女の水着は高くつくのヨ!」
お代は貴方の命と、ついでにアトランティスかヒーロー組織から分かりやすい感謝の印を頂けたらなおいいのだけれど。
出来ぬ期待はほどほどに、笑鷹は次のメイドを狙いすましながら、ふと、考える。
アトランティス名物マーメイド喫茶とか、儲かったりしないだろうか――。
(……うん、諸行無常ヨ)
案としては悪くないが、何を成すにも、まずはこの物騒なメイドを処理するところから始めるよりほかないのだ。
ワイヤーを足場に勢いを増し、メイド人魚を切り捌く笑鷹は、くるりと回って両手を大きく広げて見せて。
「サァサァ、海の平和は、秘密結社スナークが守るヨー!」
何も恐れる事は無いのだというように、声高に告げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
サーシャ・ペンローズ(サポート)
バーチャルキャラクターの電脳魔術士×バトルゲーマー、18歳の女です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、敵には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エッチな描写もNGです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
猟兵が現れたことにより、更に躍起になって汚染を広げようとする人魚メイド達に、サーシャ・ペンローズ(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f26054)は眉を顰めつつ、幾つものゲームキャラクターを召喚していく。
海で活動するのだから、その姿も海に適したものに。
自身の体を変異させつつ頑張っているミュータントヒーローというモデルがそこら中に居るのだから、イメージだってしやすかった。
「折角の綺麗な海を汚すなんて。全部纏めてお掃除しちゃいましょう!」
召喚された八十体あまりのキャラクター達は、すいすいと海中を泳いで、ゴミの類が広がっていかないように拾い集め始める。
数を活かしたその行動に、いち早く気が付いたのは、メイドの方だった。
邪魔をするなと言わんばかりに接近してくるメイドは、目にも止まらぬ速さで。瞬く間に、キャラクターの一部が倒されてしまった。
だが、サーシャは取り乱すことをしない。確かに一体一体は弱いキャラクター達だが、それは額の刻印が「1」のままであるせい。
レベル1では、どんなキャラクターだって活躍するのは難しいのだ。
――つまり、レベルを上げてやればいい。
「合体しましょう!」
合図と共に、残るキャラクター達がわっと集合し、一塊になる。
そうして、ぴかっ、と一瞬だけ光ったかと思えば、まるで海神さながらの威厳を湛えた姿に転じたではないか。
いかにも『強そう』な姿に、一瞬怯んだメイドだが、意を決したように斬り込んでくる。
その素早い動きは、サーシャとて目で追うのがやっと。
しかし、あっという間に懐に入り込まれたと思った瞬間、海神(仮)が手にした槍でメイドを貫いていた。
そうしてそのまま、ぶん、と槍を振るい、海流のような波を生み出す衝撃波で、メイド達を吹き飛ばしていく。
「今です!」
体勢を大きく崩された隙にと、ミュータントヒーロー達に追撃を促せば、彼らは次々とメイド達を倒していった。
そうして、周囲のメイド達がひとしきり倒されたなら、サーシャは合体させたキャラクターを一度引っ込めて、再び小さなキャラクター達を呼び寄せた。
「次はあちらを目指しましょう」
汚染の元を引き連れた人魚メイドの集団は、まだまだいる。
目印となる汚れを目指して、再び地道なゴミ集めから始めるべく、サーシャはゆるり、泳ぎだし始めたのであった。
成功
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羽堤・夏(サポート)
あたしは夏!防人の夏!
度胸根性、向日葵娘ってな!
火力とステゴロがメインのオラトリオだ
特技は【庇う】こと!
あたしはタフだからな、盾になるのも防ぐのもどんとこいだ!
あとは…ユーベルコード【夏姉ちゃん属性チェンジ】で、状況に合わせて姿を変えることができるぞ!
パワーが必要なら炎を操る真っ赤な猛火の姿に、速度が必要なら氷を操る青い吹雪の姿に変身だ。
…それでも足りない?
なら…必殺【アライズサンシャイン】!
夏姉ちゃんの、怒りの鉄拳食らいやがれ!
もしもの時は【解き放て、内なる焔】で自爆もできるぞ!
あたしは基本的に公序良俗ってのに反することはしない
あと…正直下品なのはちょっと…
ナギ・ヌドゥー(サポート)
普段はなるべく穏やかで優し気な感じで話してます。
……そう意識しておかないと自分を抑えきれなくなりそうなので。
それでも戦闘が激しくなると凶悪な自分が出てしまいますね。
オブリビオン相手なら最初から素で対峙し、手段を選ばず殺しにいきますよ。
探索行動の時は第六感などの知覚に頼る事が多いです。
日常的な行動は、寛ぐ事に慣れてないから浮いた存在になるかもしれません……
武器は遠距離ではサイコパーム、近距離では歪な怨刃、
痛みや恐怖を与える時はソウルトーチャーを使います。
己は所詮、血に飢えた殺人鬼……
それでも最後の理性を保つ為に良き猟兵を演じなければ、とも思っています。
どうぞ自由に使ってください。
●
――さあ、どこからでもかかってこい!
揺らめく海の気配を背に、羽堤・夏(防人たる向日葵娘・f19610)は蔓延る人魚メイド達へと力強く訴えた。
よく通る大きな声は、海洋汚染をまき散らしていた敵の耳に届き、その敵意を集める。
しかし、夏にとってそれは問題となる状況ではない。
むしろ、懸命に戦うミュータントヒーロー達の負担を少しでも肩代わりできるのなら、どんと来い、だ。
大きく胸を張る夏の近くで、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は対照的なほどに静かで冷たい雰囲気を湛えながらそこにいた。
対峙する相手は、オブリビオン。それならば、自身が持つ凶悪な殺戮衝動を抑える必要は微塵もない。
隠すことのない敵意と殺意は、夏とは違った方向性で、敵の意識を引く。
びりびりとした緊張感を感じ、ちらりと一度だけナギを見やった夏は、ぱん、と己の拳を掌に打ち付けて、敵へ向けて泳ぎ始めた。
海中での行動が、それに特化させたあちらより優れているとは初めから思っていない。
だからこそ、自ら接近し、タフな自身の体を活かした立ち回りをする夏。
そんな夏の接近をサポートするように、ナギは体内に埋め込まれた光線兵器からビームを放ち、攻撃してくる。
二人を、そしてそんな彼らに合流しようと動くミュータントヒーロー達を見渡して。
人魚メイドはぴしりと背筋を伸ばし、深く、一礼をする。
「これより業務に移ります」
それは、合図だ。自身の寿命を代償に、スピードと反応速度を爆発的に上げるべく、機能性を重視したメイド服に転じた彼女達は、尾鰭を振るい、真っすぐに夏へと迫ってくる。
(来た……!)
ぎゅっと拳を握り、一粒口に含んできたひまわりの種の味を思い起こす。
母が良く買ってくれた夏の好物は、今日も美味しかった。まるで、力が漲ってくるよう。
握りしめた拳には、愛と勇気が目一杯籠められている。向かってくる超速の人魚を真っ直ぐ、目を逸らさずに見据えた夏は、人魚が握る鋭利な刃物に恐れることなく、手を伸ばした。
ゆらり、と海中に揺れるのは、真っ赤な鮮血。けれど、痛みになんて怯まない。伸ばした手でそのまま大きな尾鰭をむんずと掴むと、対の手を、大きく振りかぶって。
「お姉ちゃんの拳骨は、超あっついんだよ!」
熱を帯びた拳骨を、その胴に叩き込んでやった。
その瞬間、かっ、と打ち据えた場所が一瞬輝く。拳から解き放たれた極小の太陽は、人魚を一瞬で焼き尽くし、海の藻屑へと変えた。
「へぇ」
肉を切らせて骨を断つとは、まさにこのことだろうと言うように、ナギは薄らと口角を上げる。
それぞれの出方を窺うように遠距離武器を用いてみたが、夏の攻撃スタイルが『やられた以上をやり返す』形ならば、ナギにも、この状況にぴったりな技がある。
「――喰らい尽くせ!」
魔を、聖を……全てを!
命じる声に応じるのは、咎人の肉と骨で錬成した呪獣。
弾かれたように突き進むその姿は、禍々しいの一言に尽きる。
それが、ただひたすらに素早く動く人魚達を狙っては、噛みつき、血肉をまき散らしながら屠っていく姿は、凄惨だった。
けれど、爆発的に増大した速度を持つ相手に嗾けるには、これ以上ないほどの適任であることは、誰の目にも明らかで。
察せるからこそ、夏は自身の構えを解かず、人魚達を待ち構える。
禍つ獣に食い散らされるか。一矢報いて太陽に焼き尽くされるか。
選べと言わんばかりに、真っすぐ、見据える。
無論、ミュータントヒーロー達にだって手出しはさせない。人魚達が彼らを狙おうとするならば、身を挺して庇う準備も夏にはいつだって出来ているし、ナギとて黙って見過ごすつもりは毛頭ない。
敵を屠ること以上に、その世界で懸命に生きる者達を守ることも、務めの内であるのだから。
成功
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夜鳥・藍
どうやって海に適応するかが一番の問題ですけど……環境耐性でごり押しできないかしら。
竜王さんなら手助けして下さりそうだけど、基本攻撃なのよね。
これを機に少し考えてみましょう。
鳴神を投擲かつ念動力で操作しとにかく初撃をあてるようにしましょう。
追い立てるようにしてなるべく一礼と宣言する時間を与えないようにします。そうしてるうちに嫌でも鳴神が当たるようになるでしょう。
そうしてしまえば竜王さんを召喚し雷撃で葬ってしまいましょう。
そういえばマーメイドのメイドも職業としてのメイドも語源は同じなんですね。
乙女や未婚女性の意味らしいですね。
●
適応光線とやらがない状態でうまく海中で立ち回れるだろうか。心配していた夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)だったが、埒外の存在とはこういう時にもその力を発揮してくれるらしい。
とはいえ、地上とは勝手が違うのも事実で。慣れない環境で動きにくさを感じていることは、否めなかった。
(竜王さんなら手助けして下さりそうだけど……)
召喚するその竜王は、攻撃をするための存在であり、海中での手助けがどこまで有用になるかは未知数。
これを機に、様々な環境下での円滑な活動について考えてみる必要があるだろうと、思案して。
一度その思案をわきに置いて、藍は一先ず敵を見据える。
目に見えて数は減ったようだが、まだ集団として存在しているのも見て取れる。
最後のもう一押しを果たすべく、藍は古い三鈷剣を手に取った。
すかさず投擲し、念動力での操作を重ね、人魚メイドを追い立てる。
海中での動きに関してはあちらに利があるようだが、直接の移動出ない念動力での操作ならば、その不利もいくらか埋められる。
まして、スピードや反応速度を強化されていない状態であるならば、追い立てるのは難しくはないものだ。
(こちらへの一礼や宣言をさせる間など与えません)
右へ、左へ。翻弄するような動きの三鈷剣に、周囲のミュータントヒーロー達も藍を補佐するべく人魚メイドを追い立てる。
「捕えました!」
ついに、藍の三鈷剣『鳴神』が人魚メイドへと命中する。
その一撃は、恐らくは人魚メイドが思っていたほど強烈ではない。
だが、それが真価を発揮するのは、これからだ。
「竜王招来!」
鳴神を起点とするように、呼び出された嵐の王たる竜王の雷撃が放たれる。
それは自身を貫いた剣の比ではない威力で以て、人魚メイドを焼き尽くす雷だ。
「この調子で、仕留めきってしまいましょう」
促す声に、ミュータントヒーロー達は頷いて。残る人魚メイド達が逃げる事の無いよう、また、藍が操作する剣が確実に命中するよう、水の衝撃波や銛のような武器で応戦してくれる。
その助力を得ながら、鳴神を次々と命中させては雷撃を放っていく藍は、ふと、人魚でありメイドである彼女達の姿を、まじまじと見つめた。
グリモア猟兵がこれぞマーメイドみたいなことを言っていた気もするが、そう言えば、人魚の別名であるマーメイドも、職業としてのメイドも、語源としては同じだと聞く。
(確か……乙女とか、未婚女性とかの意味だったはず)
つまり。
グリモア猟兵の言っていたこともあながち間違いではない、のだろう。
(……戻ったら教えてあげようかしら)
そのような気まぐれが発揮されるか否かは、この仕事の首尾次第だろうけれど。
なんて、再び思案を展開させていた藍の傍に控えていた竜王が、最後の一体を焼き払い、辺りは束の間の静寂に包まれるのであった。
成功
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第2章 ボス戦
『クリティアス』
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POW : 深海激怒ティマイオス
【海を汚染した地上文明に対する怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : 海洋憤懣ヘルモクラテス
自身の【頑健な甲羅】から【大津波と共に汚染に蝕まれた海洋生物たち】を放出し、戦場内全ての【敵を海に沈め、海洋生物以外の水中活動能力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
WIZ : 侵略蔵書「ガベッジ・オーシャン」
【猛毒と化した汚染水を垂れ流す姿】に変身する。変身の度に自身の【体から溢れる汚染廃棄物】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
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●深海の怒り
一瞬の静寂に包まれたアトランティスに、咆哮が響き渡る。
それは怒りの声。かつて侵略者の時代、地上文明への怒りに立ち上がった海神の眷属は、今やその怒りにだけ捕らわれた存在へとなっていた。
さらには、自らの手で、疎むべき海洋汚染をまき散らしている。
自らが抱く怒りとの矛盾に気付く事さえできずにいるこの眷属の名は『クリティアス』。
フジツボにも似た鋭利なものに覆われた甲羅を持つ、巨大なウミガメのような存在だ。
ミュータントヒーロー達は、最早己の手に負えないことを十分に理解している。
それでも戦線を退く者はいない。邪魔にはならず、助けになることを各々が必死に考え、行動に移そうとしているのだろう。
助力を願うも、撤退を指示するも、全ては猟兵達次第。
少なくとも、海洋汚染と共にオブリビオンを放ち、アトランティスを危機に陥れたこの眷属に、最早理性的な会話は望めない。
眠らせてやってほしい。そう願ったグリモア猟兵の言葉通り、討ち果たし、骸の海へと還してやることが、この存在にとっての救いになりえるのだろう。
もっとも、それを易々と果たさせてもらえるほど、簡単な相手ではないだろうことも、感じていたのだけれど――。
夜鳥・藍
オブリビオンになると元が動物っぽくともその形態から外れちゃうんでしょうか。
ウミガメの足は鰭のようになっていて甲羅も水の抵抗を受けない形が多いのですが。全体的にトゲトゲしちゃってるからオブリビオン化が原因なのかしらね。ちょっとリクガメっぽくなってるわ。
うん、本当世界を越えると色んな物を見れるし知る事ができるわ。
UC星乙女で変身を。飛翔能力は意味がなくなりますがですが大きくなる事で……多分何とか抑え込みができるのではないかと
ですが一応接近する前に光線で迎撃してみます。抑え込み状態になっても光線は撃てるので至近距離で撃ち込むこともします。
真の姿は目元をベールで隠し光の翼を持つ女性の姿
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現れた猟書家幹部の姿をまじまじと見て、夜鳥・藍はゆるり、小首を傾げる。
(オブリビオンになると元が動物っぽくともその形態から外れちゃうんでしょうか)
一見すればウミガメっぽいようにも見える。
けれど、前足が鰭っぽいようで、やや凶暴化している影響かリクを踏みしめる足のようにも見えるし。
甲羅も、もっとこう、ウミガメならば海を泳ぐために水の抵抗を受けない形をしているものだが、全体的にトゲトゲしてしまっている。
これが、オブリビオン化の影響だというのだろうか。ちょっと、リクガメっぽくなっているように思う。
「うん、本当世界を越えると色んな物を見れるし知る事ができるわ」
知的好奇心を満たされたのだから、良しとしよう。
問題は、この亀らしい敵を、いかに倒すかだ。
ゆうらりと泳ぐ亀――クリティアスは、自身に挑もうとする藍が、地上に生きる存在であることを認識するや、その怒りを爆発させる。
海を汚染した存在、地上文明へ破滅を与えんとするその怒りは、クリティアスの体を更に巨大化させ、同時に戦闘力も上昇させていく。
その行為を、ただ黙ってみているわけには、いかない。
思案は一瞬だ。相手が巨大な存在だと言うなら、こちらも、大きくなればいい。
「これもまた私」
唱える声に応えるように、ふわり、と藍の体を光が包む。
その光は、藍の背で翼の形をとり、同時に晒していた顔がベールに覆われ隠された。
真の姿に転じた藍は、さらにその身を巨大化させる。それこそが彼女のユーベルコード『星乙女』の真価。
十九歳の藍は、十九メートルの巨大な乙女へと変身し、巨大化したクリティアスと対峙する。
海の中では空と勝手が違う分、超速の飛翔能力を最大限生かすのは難しいだろうが、この身で抑え込むことくらいは出来るはずだ。
「参ります」
真正面に立ちはだかり、突進するように泳いでくるクリティアスへ、真白の光線を放つ。
いくらか効いてはいるのだろう。甲羅が欠け、焼けるような音が聞こえるのだから。
けれどそれに怯むことをしないのは、怒りによって理性を無くしているせいか。あるいは、その程度と意にも介さないのか。
きゅ、とベールの下で眉をひそめ、藍は突進してきたクリティアスと組みあうと、そのまま、抑え込む。
そうして今度は、甲羅よりも脆そうな体へ向けて光線を放った。
クリティアスの、地上文明への怒りとやらが、これだけで抑えきれるとは、思わないけれど。
「好き勝手には、させません」
地上も、海底も、共に守る意思を強く持って、藍は挑むのであった。
成功
🔵🔵🔴
迅雷・電子(サポート)
人間のバーバリアン×力持ち、16歳の女です。父親が相撲取りだったのが切欠で相撲にはまり、夢は女横綱です。
普段の口調は「男勝り(あたし、あんた、だねぇ、だよ、だよねぇ、なのかい?)」です。普段は女子高生なので制服ですが戦闘になると脱いでイェーガーカードの姿になります。基本相撲の動きで戦います。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
源・ヨーコ(サポート)
『悪い子はお仕置きっすよー!』
人間のブレイズキャリバー × ビーストマスター
年齢 16歳 女
外見 158.4cm 金の瞳 ピンクの髪 色白の肌
特徴 胸が大きい 八重歯 ギャル ハイテンション! 運動が好き
口調 体育会系(自分、~先輩、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)
悪いヤツは鉄拳制裁!
あまり難しいことは考えず、敵に向かって猪突猛進するタイプ。全ては拳で解決できると信じていて、とりあえず接近して殴るが基本戦術。
硬そうな相手にはカウンターでの一撃必殺を狙い、素早そうな相手には連撃と使い分けぐらいはする。
単独行動を好み、調査などは苦手。
基本は戦闘オンリーな感じですが、よろしくお願いします。
●
敵が大きかろうが小さかろうが、倒して来いと指示が下ったなら、やることは変わらない。
そう、迅雷・電子(女雷電・f23120)にとっても、源・ヨーコ(鉄拳制裁・f13588)にとっても。
「でっかい相手だねぇ! 相撲の取り甲斐もあるってもんだ」
相撲取りだった父に影響されて始めた相撲にすっかりのめり込んだ電子は、きっちりと締めたまわしの具合を確かめ、ぎゅっと胸元を締め付ける晒しの前で、パン、と手のひらを拳に打つ。
海中での戦闘ともなれば、踏ん張りも効かないだろうし色々と動き方に制限もある。
まして相手が人型ですらないのだから、これは工夫して取り組まないと相手にすらならないだろう。
でも、電子はそれを不利とは思わない。むしろ、わくわくするくらい。
対するヨーコも、生まれも育ちもアルダワながら、メカを操るのも魔法を極めるのも早々に適正無しと割り切って、ひたすら拳打を鍛えて早三年が経とうというところ。
いかにも殴りがいがありそうなどでかい相手を前にして、日々の退屈が一気に晴れるような高揚感すら感じている。
つまるところ、相手にとって不足なし。
ただ全力で、挑むだけだ。
そんな彼女らが立ちはだかる姿に、クリティアスはゆったりとした所作で対峙する。
海には似つかわしくない地上文明の生き物達。それが自身の前に存在するというのなら、滅ぼすよりほかないと、怨嗟に近い怒りを放ちながら、その体躯と共に戦闘力を巨大に、強大に転じていく。
それを合図にしたかのように、一斉に泳ぎだし、クリティアスに接近する二人。
鋭利な爪を持った前足が勢いよく振るわれれば、電子はすかさずその足に組み付き、ヨーコは力いっぱい殴り返す。
しがみついているだけでも、水の抵抗感が凄まじい圧となって電子を襲うが、ヨーコの拳がその威力を軽減してくれた。
振り回されるばかりにならずに済んだ体勢をすかさず立て直し、電子はクリティアスの体躯を素早く観察する。
(やっぱり足かねぇ……いや、そっ首掴んでってのも……)
いっそごつごつした甲羅の、汚染物を垂れ流すフジツボもどきでもいいかもしれないし、お誂え向きな尻尾だってあるではないか。
存外掴めそうなところが一杯あるのを認めれば、がぜん、やる気が出てくる電子。
しかし、女横綱を目指す身としては、やはり掴むべきは腰だ。己の信念を真っ直ぐに見つめ、クリティアスの腰元目がけて泳ぎだす電子の姿を横目に、ヨーコは繰り返し肉弾戦を挑んでいく。
しかし甲羅は硬いし。肉の部分もごつくて肉厚。猪突猛進を自覚するヨーコだとて、このまま無策に殴り続けるのが良いとは思えなかった。
(これは……少しは脆そうなところを探すべきっすかね……)
くる、くる、くるり。視線を巡らせて、どこが脆そうかと探るヨーコ。
だがしかし、見ているだけではちっともわからない。ここはひとつ、思いついたところを順に殴って確かめるしかなかろう!
結論に至れば簡単な話だった。ゆらりと視界の先で揺れている髭のようなものを掴んで引き寄せ、取り合えず一発横っ面にお見舞いする。
噛みつきどころか丸呑みできそうなサイズ感の口が迫れば、口の中の方が弱いのでは!? と自ら飛び込み、上顎に痛烈な一打を食らわせた。
そうして『なんとなく脆そう』な顔面周囲でヨーコが暴れている隙に、電子は尻尾の方からぐるりと迂回するようにして、クリティアスの腰と思しき場所にたどり着いた。
多分、正しいは尻尾の付け根とかそんな位置だけど。
「さぁ、掴んだよ!」
両手を目一杯広げ、力持ちゆえの握力にものを言わせて、ぐわしと掴みかかった電子は、そのままクリティアスの太い尻尾を足場代わりにして、ぐいとその身を引く。
持ち上がる、というよりは、体勢を崩されるといった状態だが、クリティアスの巨躯が確かに傾いて、ぐるり、ひっくり返って。
「いっけええぇ!!」
思いきり、ぶん投げられた。
咄嗟に退避した、ヨーコへ目がけて。
「あ、こっち来るっすか? それなら――」
身構えて、ぐっ、と握った拳を引いて、待ち構えるヨーコ。
「我、神の名において正義を執行す。汝ら罪なし――!」
努力と友情と勝利を搭載し攻撃力に極振りした拳を、顔面に、叩きつけてやった。
投げられた勢いに加わったその一撃は、めり込むほどに強烈で。
幾度目かの咆哮は、悲鳴のように、海中に響き渡る――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
王・笑鷹
格好良い心意気ネ、流石ヒーロー!
とか鼓舞してみつつ。
海の資源は皆のモノ……侵略者許すまじは解るヨ。
でもそれで、全部を汚して排除するのは、駄目ネ。
悪貨は良貨を駆逐する――理想的な世界はそれじゃ築けないのヨ。
ワタシは元々海の中では生きていけないケド。
さぁさ、海の生き物には海の生き物で!
キューエイくんを沢山複製して、突進させるヨ。
狙いは甲羅と体の境目カナー。
ワタシの代わりに、一斉突撃ヨ!
海洋生物ごと、押し返しちゃってー!
あ、ヒーローさんはワタシの近くに。
守ってあげるんじゃなくて……守って頂戴ネ!
そんなに泳ぐの得意じゃないからネ……(ぶくぶく)
見たネ、これがスナークの自然と共存する力ネ(がぼがぼ)
火土金水・明
「私は猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員、『魔法少女ブラックマルス』。猟書家達の邪魔をする者です。」(攻撃する時は、ミュータントヒーローさん達を巻き込まないようにします。)
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【属性攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『クリティアス』と汚染廃棄物を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【毒耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
●
凄い声だった。思わず耳を塞いだ王・笑鷹は、同じくそれを聞いたミュータントヒーロー達をちらりと見やる。
恐ろしい声だったが、彼らはやはり、誰一人として踵を返すことをしない。
その姿に、にっ、と笑みを作る笑鷹。
「格好良い心意気ネ、流石ヒーロー!」
頼りにさせてもらうネ、とウインク飛ばす笑鷹に続くように、ヒーロー達もクリティアスへと対峙する。
そこへ現れた新たな人影に、ヒーロー達はハッとしたように顔を上げた。
「あ、貴女は……?」
突如現れた黒衣に魔女帽子を纏った女性に、ミュータントヒーロー達が尋ねれば、魔女帽子をくいとあげて、女性は語る。
「私は猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員、『魔法少女ブラックマルス』。猟書家達の邪魔をする者です」
こうして生身で海中へと降下してこられるのだから、きっと猟兵の一員だろうとは思っていた。
だが、その名乗りは、ヒーローズアースに生きる彼らに通ずるものでもあって。
ヒーロー達の正義の心に、強く響いたようだ。
共にアトランティスを守ろうと意気込むヒーロー達に混ざって、うんうん、と深く頷いていた笑鷹もまた、ちら、とそんな女性――火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)を見やって。
「具体的にどう攻める?」
「私は、この魔法の矢で攻撃していくわ」
魔法少女だもの、と微笑んで見せた明の手には、氷の魔力を帯びた魔法の矢が生成されている。
「あちらが汚染廃棄物を垂れ流して来ようとも、本体諸共、纏めて凍り付かせてやるわ」
「ウンウン、海の資源も守れて一石二鳥ネ!」
資源は、皆のモノであり、地上文明によってそれが汚染される事態を『侵略』として怒りを覚えるその気持ちは、笑鷹とてよくわかるのだ。
しかし、だからと言って地上も海底も全部を汚して排除するのは、本末転倒だ。
「悪貨は良貨を駆逐する――理想的な世界はそれじゃ築けないのヨ」
もっとも、笑鷹は海の中では生きていけないのだから、海底文明にとっての理想的な世界については、造詣が深いわけでもないのだけど。
少なくとも、クリティアスの存在が今この場での最たる害悪となり果てている事だけは、確かなこと。
「汚染物が……!」
「私に任せて」
クリティアスの体が、徐々に変化し、その体からどろりとした汚染水が垂れ流される。
それが猛毒そのものであることを十分に理解しながら、明は氷の矢を次々と放っていく。
「我、求めるは、冷たき力――」
キン、と冴えた音が水を伝って響き渡るや、クリティアスの一部が、汚染水ごと凍り付く。
本体の方の氷結は、クリティアスが軽く身じろぐだけで砕けてしまうが、覆うように嗾けられる矢に穿たれ、その身を貫くダメージは、じわじわと蓄積されていく。
対抗するように、頑健な甲羅から放たれるのは、大津波と共に汚染に蝕まれた海洋生物たち。
海中にいることで津波の勢いは抑えられているようだが、強烈な海流に、ミュータントヒーロー達が次々と流されていくのを、笑鷹は横目に見ていた。
彼等の事だから、また邪魔にならない位置まで果敢に戻ってくるのだろうが、一旦は安全圏に至ったという事で、良しとしよう。
「さぁさ、海の生き物には海の生き物で!」
くるり、笑鷹の声に合わせるようにして、小型の海竜が姿を現した。
細長い翡翠色のその生き物を、笑鷹は次々と複製し、海洋生物へと放つ。
「お代は見てのオカワリ……じゃなくて、オカエリ! キューエイくんたち、狙いは甲羅と体の隙間ネ!」
芸を覚えるより簡単でしょうと言いたげに突撃させれば、海竜達は一斉にクリティアスへ殺到し、細い体躯を活かして甲羅の隙間に攻撃をねじ込んでいく。
それを振り払おうと身じろぎ暴れるクリティアスから漏れる汚染水の毒素に気付いて、ぴくり、明は眉を寄せる。
「少し下がった方がいいかもしれないわ」
「そうさせてもらうのヨ!」
すぃ、と少し距離を置くついでに、ようやく戻ってきたヒーロー達をその場に引き留める笑鷹。
「あ、ヒーローさんはワタシの近くで……守って頂戴ネ!」
曰く、そんなに泳ぐのが得意ではない笑鷹。
いざとなったら咄嗟に避けれる自信がないと胸を張って主張する姿に、猟兵にも出来ないことがあるんだなぁ、としみじみしたり、しなかったり。
兎角、クリティアスへの総攻撃は、確実にその命を削っていく。
毒や環境への耐性、オーラ防御を駆使して汚染物をしのいでいた明は、その威力が明確に弱ったことを悟り、声を上げる。
このまま、押し切るべし、と。
「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に託すこと」
「なら、トドメは遠慮なく貰おうカナ。キョーエイ君たち!」
貫く氷の矢に寄って、あんなに硬かった甲羅もボロボロだ。
どこを攻撃しても致命傷に至れるその身へ、再び息合わせての総攻撃を仕掛ければ――。
「汚染水が……!」
垂れ流されていた膨れ上がるような兆候を見つけたヒーローの一人が危惧するように叫んだ直後、それさえも掻き消えるように霧散して。同時に、クリティアスの体も崩れていった。
歓喜に沸くミュータントヒーロー達をちらと見て、共に視線を合わせた笑鷹と明は、口元に薄らと笑みを浮かべる。
「見たネ、これがスナークの自然と共存する力ネ」
「ええ、スナークの力は猟書家には負けないわ」
アフターケアもばっちりしっかり。
人々に『スナーク』の正義を知らしめて、そろそろ恋しくなった地上へと帰還するのであった。
大成功
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