●
UDC組織。九州支部――の、ひとつ。
「ここさ、この支部さ、ほぼ倉庫状態じゃん」
UDC組織の一人が学校の校舎のような建物を見て呟いた。
「UDC怪物ではないと証明されたもの、UDC-Nullの再調査……書籍やビデオテープや8mmフィルムはいいとして……巻物もあるってぇ話だし……」
ライフラインは生きているし、事前に掃除(健康に支障がない程度)もされたし、資料室その1へ入って資料を引っ張り出し始める組織の者たち。
「あっ、先輩、ちっちゃなDVD? のケースがあります! 薄!」
「それフロッピーディスクな」
「これは大きなカセット? ですね」
「それビデオテープな」
そこそこジェネレーションギャップなるものを発生させながらも、UDC組織の面々は資料を漁っていくのだった。
●
「改めて、大祓百鬼夜行はお疲れさまでした」
グリモアベースに集まった猟兵たちを迎え、早速だけど、とポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)が説明を始めた。
「UDCアースに来ていた妖怪たちはカクリヨファンタズムへと帰っていったわけだけど、まだUDCアースに残っている骸魂がいるのよね。だから失われたUDC-Nullを「再現」してしまう可能性があるの」
UDC-Nullとは『UDC怪物ではないと証明されたもの』。
UDCアースでは単なる虚言の類につける分類であった。
だが、先日の大祓百鬼夜行により、実はそれらのうちの幾つかは本物であり、かつて実在していたことが判明したのは記憶に新しい。
「UDC組織では昔の、今までの資料をひっくり返してひとつづつ検証を繰り返しているようなの。それによって『危険』を未然に防いでいくって方針。そこで皆さんには再調査のお手伝いに行って欲しいのよ」
猟兵たちが向かうのは九州支部である。
膨大な資料の山から、UDC-Nullについてまとめられた資料を探し出し、その発掘した資料を検証する。
「いずれ実体化するUDC-Nullの情報の一つが、この九州支部にあると思うのよね。予知でポンポン分かっちゃうと便利なんだけど、残念ながらそうもいかなくって」
事務作業や資料整理が得意な猟兵なら、有利に仕事を進められるかもしれない。
まずは膨大な資料からUDC-Nullについてまとめられた資料を探し出すこと。
「適度に休憩も挟みつつやると良いかも。出前で丼ものやラーメンも頼めるみたいよ」
飲食は24時間対応のようだ。
はい、メニュー。とポノが渡してくる。
「……超缶詰状態じゃん……」
ぱらりと、何ページかあるメニューを捲りながら猟兵が呟いた。
「でも! 悲劇的な(?)事件を防げるかは皆さんと組織の皆さんの頑張り次第! 健闘を祈るわ!」
そう言って猟兵たちを送り出すポノだった。
ねこあじ
ねこあじです。
今回はUDCアースのUDC組織でUDC-Nullの記録を探し出すお仕事です。
よろしくお願いします。
第1章、資料を探すお仕事です。
ご飯も食べられるよ。断章、無いです。
第2章、集団戦になります。断章あります。
第3章、ボス戦になります。断章あります。
以上です。
プレイングの受付開始日や締切日が発生します。
タグやマスターページ、Twitterなどに日付記載します。お手数おかけしますが、チェックよろしくです。
再送が起こる可能性もあります(なるべく無いようにはしたいです……)。
それではプレイングお待ちしています。
第1章 日常
『電子化されてない資料を漁る憂鬱な仕事』
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POW : 気合いで黙々と資料を漁る
SPD : 速読などを活かして迅速に資料を漁る
WIZ : 効率の良い調査方法を考える
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加賀・三槌
「UDC組織も人手不足ですか。世知辛いですねぇ……あ、私カツ丼特盛で。つゆだくでお願いしますよ」
費用もあちら持ちでしょうから遠慮なく注文しつつ、資料を探し始めます。
さて、仮にも組織立って作成された資料群、分類コードの類くらいはあるでしょう。必要なら廊下から適当な支部員を引きずり込んで【コミュ力】を活かしてNull区分のコードを聞き出し、それを元に【情報収集】を図って資料を絞り込みます。
この部屋の様子では分類ごとにまとめられているかは怪しいものですが、いちいち中身を見るよりは時間の短縮になるでしょう。
WIZ判定、アドリブ改変連携大歓迎。
依頼の達成を目的に行動します。
ノイン・フィーバー
心情:フフフフ! ワタシの新たな力を発揮する時がきましたネ!!
調査:SPDで
アイテム化してるたこサメさんにリモコンを渡し、早送りボタンを押してもらってUC発動。何倍ものスピードで速読(物理)しますヨー。
消耗はあるので定期的に休みますけどネー
追伸:あ、ビデオ系資料はビデオデッキを有線で繋いでTV画面に流す事により効率的に把握します。
結果でもしアタリを引いた場合:
足元でたこサメサンが広げて読んでた資料がソレ。
九州名物?
とりあえずもつ鍋とか頂きましょうカ。たこサメさんにもお裾分けしつつ、お箸でひろいあげたモツを画面の中へもぐもぐ。(可能なら)画面の中で『彼女』ももぐもぐ。
ンマァアアイッ!!
箒星・仄々
これもUDCさんに海へとお還りいただくための
大事なお仕事ですね
手分けをして進めましょうか
過去の資料をみるのは
結構楽しいかも知れません
巻物とかビデオテープとか
どんなことが書かれたり映ったりしているんでしょうね~
最初は興味津々でも眠くなったり
集中力が途切れることもあるでしょうから
適宜、休憩を挟みますよ
竪琴奏でてリラックスしましょう
実際に治癒で疲労を回復してリフレッシュできるはずです
出前もいただきたいですね
折角の九州でしたら
もつ鍋とか博多ラーメンとか馬刺しとか
名物っぽいものをいただいて
九州パワーを漲らせたら
さあ、また頑張りましょう!
「猟兵サンが助っ人に来て下さったぞぉぉ!」
「やったぁぁ!」
各地での再調査が進められている現状、UDC組織としても人員は猫の手も借りたい程。
猟兵の訪れにあちこちから喜びの声が上がった。
「UDC組織も人手不足ですか。世知辛いですねぇ……あ、私カツ丼特盛で。つゆだくでお願いしますよ」
早速とばかりに加賀・三槌(奸智術策・f32336)が伝え、ノイン・フィーバー(テレビ顔のメカ野郎・f03434)もまた軽く手を挙げた。
「あ、ワタシはもつ鍋デ。九州名物の一つと言ったらコレでショウ」
そして、私も、と声が上がる。組織員が見おろすとそこには箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)の姿。
「もつ鍋、食べたいです! あとは九州っぽいもの……ラーメンと……」
悩む仄々に、三槌が言い添える。
「費用は組織持ちでしょうし、遠慮なくいくのが宜しいかと」
「では、馬刺しもお願いします!」
高タンパク、カルシウム、鉄分も豊富。
「おお、いいですネ~」
ノインのテレビ型マスクにnice! の文字が流れていく。
「ご注文承りましたッス」
猟兵たちの注文を聞いて、下っ端な組織員がメモをした。そのまま他の猟兵たちの元へと向かっていく。
さて、と三槌は案内に立った組織員へと声を掛けた。
「UDC-Null。仮にも組織立って作成された資料群ですし、分類コードの類くらいはあるでしょう?」
「そうですね。電子化したものはそれで探せましたね」
zero、少々古いものではnihil。
組織員が言葉を続ける。
「アナログ型では未知・不明、適用不能・非存在などそういったもので分けられているようですが、それ以前となると……」
近代化前の巻物などは完全に不明なものとなっている。
「それだけ分かればある程度は絞り込めそうな気がします」
「人海戦術も使えそうなのデ、張り切って参りまショウ!」
三槌に続き、これだけの猟兵サンが集まったのですカラ、とノイン。
はい、と仄々が頷いた。
「これもUDCさんに海へとお還りいただくための大事なお仕事ですね」
「それではまずこちらの部屋からお願いします」
そう言った組織員が案内した部屋には走り書きがされた段ボールが幾つか積まれている。
棚にはファイル。分類分けはされているようだ。
「手分けしていきましょう。ええと、こっちは……」
梯子に登り、仄々が上から見ていく。
三槌とノインはめぼしい資料を引っ張り出した。
ノインが手にした資料と向き合ったところで、彼のたこサメがたこ足でリモコンを持ち、早送りのボタンを押した。
キュルキュルキュルという音がノインから零れ、ページを捲る手が速くなる。
速読も行っているらしく、ノインのTV型マスクは微動だにしない。集中している。
「…………こちらは海外資料の翻訳ですか」
海外からのはUMAなどの単語でも分類されているようだ。三槌が調べていく。
速度が上がっているだけなので消耗も普通に早く訪れるノイン、そして途中眠気を覚えた仄々が休憩を挟みつつ。
三槌はUDC-Nullの資料を見つけては検証可、検証不可と分けながら資料分けを進めていく。
そうこうしていると注文をしていた店屋物が続々と届き始めた。
集中が切れる良い頃合いだ。
食堂へと出向き、カツ丼ともつ鍋、ラーメンや馬刺しをそれぞれいただく三人。
「海外のものはUFO資料もありましたよ」
一旦除外しました、と三槌。
黄金色のカツ丼。しっかりとご飯までつゆに浸ったもの。九州らしく味は甘めだ。
「浪漫ですね~。昔のでは、検証済みのもので絵コンテみたいになっている物があったりしました」
四コマみたいで面白かったですと仄々。
とんこつラーメンはスープが美味しいこってり系。脂気を口の中で払ってくれるネギともやしが良い仕事をしている。馬刺しは柔らかく甘みもあった。
「そちらハ再審査ということで後で提出しておきまショウ」
もつ鍋は野菜たっぷりぷるぷるとしたモツに味が確りと染みこんでいた。
たこサメにもお裾分けもして、ノインは箸でひろいあげたモツを画面の中に。思わずといったように観察している周囲の視線は気にしていない様子。
「ンッ! マァアアイッ!!」
そう叫ぶノインの画面が点滅して井戸と白ワンピースの少女の姿が映り、真正面から目撃してしまった仄々は毛を逆立てた。
「どんどん近づいてきてますよ、彼女」
仄々の隣に座っている三槌が言う。
ノインが食べるとちょっとずつ近づいてくる長い黒髪の少女。
リアルホラーですね、と三槌は続けて言うのだった。
ドアップになった画面の中の彼女がモツを食べるのを眺めたり。
仄々がカッツェンリートを奏で、リフレッシュをしたあとは。
「仄々サン、次お願いしまス」
「はい」
カシャンとビデオを取り替える。
ビデオデッキと有線で繋がったノインがビデオテープの資料を画面に流し込んでいく。
「……何だかここから延々と山での映像が流れている気がしますね」
早送りで流れる映像を見て仄々が呟いた。
「検証可と適用不能が繰り返されている同一資料がありますよ。他の部屋にもあるかもしれませんが、ここにあるは昭和のものです」
分類から更に分類分けをしていた三槌が気付く。
恐らく裏が取れそうなものだったのだろう。辿り着いたのはキャスト不可の赤文字。
ノインの流れていく画面と、三槌が手にした物にはいくつかの植物について調べている。九州に分布する植物たちだ。
三人とたこサメは顔を見合わせて『S』と書いた箱に、まとめてそれらを入れるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
肆陸・ミサキ
※アドリブok
支倉・奏(f17797)と
僕はPOWで
いやほんと、正直こういう作業、凄く苦手なのだけど
集中力が続かないとかではなく、効率が悪いというか、頭脳労働に向かないというか……
ああ、殴って解決する類いの方が気楽だなんて、世も末だなぁ
という事情で、紙の資料を端から順に確認してくよ
奏はどういう感じでやるのかな、話しかけたら邪魔になるだろうか
……あ、大丈夫?うん、それなら助かるよ、沈黙って辛いからね
しかし気になるものって言われてもな、物騒な感じなら至るとこにありそうだし、気長に行くしかないかぁ
夏休み……最近学校出れてないし、少しは真面目にしなきゃだし
うん、その作戦、乗った
支倉・奏
※アドリブok
肆陸・ミサ(f00415)と
ボクはWIZで参加するよー
人にはそれぞれ得意な事がある
ボクも別に頭はよくないけど
だいたい電子化した資料も元は紙媒体
スマホでとってアプリで文字を抜き出し
そこから事件性のありそうな単語
例えば傷とか殺すとか失うとかピックアップして
関係ありそうなモノを探す
くらいならできそうかな?
こういう時は話しながらやろ
これだけの量なら大体は関係ない資料だから
気になるものを見つけた時だけ集中する
それが長続きのコツだよ
これさー地域伝承の調査とかお題つけて夏休みの自由研究で出そっか?
夏休みの宿題ここで消費して夏はパッと遊ぼうぜ
――学校は、ちゃんといこうぜ
「猟兵さんが来て下さったぞ~」
「助かります!」
各地での再調査が進められている現状、UDC組織としても人員は猫の手も借りたい程なのだろう。
猟兵の訪れにあちこちから喜びの声が上がっている。
「その、ちゃんと助けになれるかは……分からないのだけど」
歓迎する組織員たちに軽く片手をあげて、肆陸・ミサキ(独りの・f00415)はふるふると頭を振った。
案内された資料室の一つはキャビネットの並ぶ一室であった。まだ手付かずなのだろう。
軽く案内をしたあと、組織員は持ち場へと戻っていく。
「うわ、ぎっしり……!」
棚を開いて支倉・奏(NECRO FRONTIER・f17797)が驚きの声を上げた。中のファイルを引っ張りだしていく。
「UDC-Null。って単純にそう書いているわけでもないか、ええとこれはっと」
「……いやほんと、正直こういう作業、凄く苦手なのだけど」
ミサキの呟きに、そうなの? と奏。
「ん。集中力が続かないとかではなく、効率が悪いというか、頭脳労働に向かないというか……」
探しているもの自体が不特定。これは使えるものと分類を行う判断も迷いが入る。
ミサキは溜息を零して言葉を続けた。
「ああ、殴って解決する類いの方が気楽だなんて――」
「「世も末だなぁ」」
奏が声を被せてきて、キョトンとして彼女を見ればにこりとした笑顔を向けられていた。
「ボクも別に頭はよくないけど、人にはそれぞれ得意なことがあるし。その辺はその人に任せてさ、ボクたちはのんびりやろー。こういうのは話しながらやるに限る」
持っているスマートフォンのアプリでスキャンしていきながら奏が言った。
「……それなら助かるよ」
沈黙って辛いからね、とミサキが呟きながら資料を捲った。
紐で括られた昔の冊子。
ファイリングされていない紙束。
暫定UDCにまつわる儀式や検証結果、都市伝説、流行する噂の繰り返し。
内容は様々だ。
UDC-Nullについてまとめた資料はこれだろうか、と怪しいものを取り分けていく。
「しかし……気になるものって言われてもな……物騒な感じなら至るとこにありそうだし、気長に行くしかない。よね?」
「そうそう。これだけの量なら大体は関係ない資料だから、気になるものを見つけた時だけ集中する。それが長続きのコツだよ」
日々の生活だってそう。無意識な取捨選択の連続だ。
都市伝説は聞いたことがあるものだったり、初めて聞いたものだったり。
流行は繰り返すというが、その類も一部は繰り返されているようだ。
奏はスキャンした資料から事件性のありそうな単語を適宜ピックアップしていく。
『傷』や『殺す』、『死』とか『失う』。
ぽつり、ぽつりと喋りながら次のキャビネットへ。
「ミサ」
「? どうしたの」
「これさー、地域伝承の調査とかお題つけて夏休みの自由研究で出そっか? 夏休みの宿題ここで消費して夏はパッと遊ぼうぜ」
と、奏。
夏にはもってこいの題材だ。
夏休み……とミサキは考えたのちにゆっくりと頷いた。
「うん、その作戦、乗った」
「じゃあ色々スキャンしとく」
新たな目標にスイッチの切り替えも軽々と。新鮮な目線で資料に向き合っていくと、ミサキがぽつりと呟く。
「……最近学校出れてないし、少しは真面目にしなきゃだし」
「――学校は、ちゃんといこうぜ」
課題、ちゃんと貰った?
うん。
そんな会話が続いていく。
調べていくと『縁殺し』『縁破り』に関連する都市伝説がいくつか出てくる。
昔、UDC-Nullとして検証しようとして、結果適用不能となった存在。
その可能性のいくつかを二人は見つけ出すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
これはまた…、凄い量の資料だな
この中から必要な情報を探し出すのは…かなり骨だぞ
自身が埋もれそうになる恐怖心から防衛衝動を発動させる
とりあえずは人海戦術…かなぁ…(汗
分身達と交代したり資料を確認する役、資料を整理する役、区分けする役、など役割分担しつつ行えば少しは効率があがるのかな?
あ、その分食費掛かりますけど…、UDC持ちでいいんですかね?(ちょっと不安
まぁ、今回は【大食い】にはお休みいただいて必要最低限のエネルギー補給で行こう
人数が多いからローテーションで休憩も取れる
全体として休まず資料探しは出来るはずだ
手書きの資料とかは解読するのに時間が掛かるかも
【継戦能力】維持して頑張ろう
メルメッテ・アインクラング
資料探しですね、かしこまりました
紙媒体をぱらり。【瞬間思考力】で必要な情報を【見切り】取捨と分別を致します
……集中すると時間を忘れてしまいますね。補給を致しましょう
出前?まあ、お料理を届けて下さるのですか?
「……ラーメン。ラーメン!?」
私の大好物でございます!主様からは『月に一回』と定められておりますので今回のを今月の分と致しますが、よろしいのですか?本当に?お仕事中ですのに……?
届けて下さったお店の方にお支払いをし、握手をお願いして、何度もお礼を申し上げ。瞳を輝かせ「いただきます!」
美味しい!すごいです、すごくて、すごく美味しい……!
まさかラーメンを食べられるなんて!メルは感激しております!
フレスベルク・メリアグレース
お疲れ様です
わたくしも教皇になる前は実の両親が院長を務めている実家の児童養護施設の経理等をやっていたんですよ。
そう言いながら書類作業を流れるように済ませながら末端の職員に美味しいお茶やコーヒーを入れる異世界とはいえ教皇と言う特A級VIP
手料理も得意なのですが、ここは出前にしましょうか
……何ですか大司教?最上位の店に頼んでほしいと?まぁUDC職員さんも疲れているでしょうし、良い鰻を取りましょうか。旬だと聞きますしね
到着する一杯五千円の鰻重
メリアグレースでも鰻を食べたことはありますが、これは美味しいですね
あ、我が国は海鮮料理が名産品なんです
そう言いながら書類作業を続けていく
「これはまた……、凄い量の資料だな」
猟兵の訪れに喜び、案内をかってでたUDC組織員の後をついていきながら、他の部屋を目にした鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は唖然とした声を零した。
「お恥ずかしながら……電子化が間に合っていないものでして……」
持ちだすにしろ、機器を持ちこんでスキャンするにしろ、人の手がいる。各地を飛び回る組織員たちは中々そこまで手が回っていないようだった。
「資料探しでしたらおまかせを」
メルメッテ・アインクラング(Erstelltes Herz・f29929)がぺこりと一礼をする。
「紙媒体の方は私たちの方で、ビデオテープなどはお任せできる人へお運びいたしましょう」
機材に向き合う猟兵、時代によって変化する分類を見つけ出す猟兵、色んなやり方で挑む仲間がいる。
「そうだね。役割分担は大事だ」
ひりょが頷き、一つの部屋に入った。
しかし、と考える。
(「この中から必要な情報を探し出すのは……かなり骨だぞ」)
自身が埋もれそうになる恐怖心から防衛衝動を発動させ、現れる自身の分身たち。
「人海戦術で行こう。資料を確認する役、資料を整理する役、区分けする役、など役割分担しつつ行えば少しは効率があがると思うんだけど」
「それなら、資料整理はわたくしの方へ寄越してください。児童養護施設の経理等をやっていたので、分類で捌くのは慣れているのです」
フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)が微笑み言えば、かしこまりました、と応じるメルメッテ。
今でこそ教皇に座するフレスベルクだが、その前は実家である児童養護施設にいた。
院長を務める両親の手伝いをやってきたので、乱雑な環境を整理していく手腕を心得ているのだろう。
頼もしい仲間の存在にひりょは安堵する。
キャビネットや本棚から引っ張り出した資料を確認していくひりょと分身たち。
紙媒体のものをぱらりと捲り、必要だと思われる情報を見切り取っていくのはメルメッテだ。瞬間思考力を極限まで拡大されたアンサーヒューマンの彼女はその処理が速い。
「フレスベルク様、こちらはキャスト不可となったものたちです」
「ああ、ありがとうございます。今こちらに届いているものと合わせて分けていきましょう」
休憩に飲み物など如何ですか?
と、フレスベルク自ら淹れた飲み物が用意されていて、誰かの疲れを感じ取れば、彼女はそれらを勧める。
検証済であってもUDC-Nullのものとして扱われている資料がいくつか。
情報が足りない、または精査が足りないなど様々な理由があったのだろう。
「違う妖怪だけど、同じような絵のものがあるな……」
分身体の情報を集束させたひりょが一つの都市伝説を見つける。
UDC-Nullは遡れば、妖怪や悪霊などといったものとして存在している様子。
「……集中すると時間を忘れてしまいますね」
補給も忘れずにしなければと思ってメルメッテが顔を上げると、一旦席をはずしていたフレスベルクが戻ってきた。
「お疲れさまです。食事の用意がされるようですよ」
そう告げれば後ろの方からやってきた組織員がメニューはどれになさいますか? と二人に尋ねる。
「出前なのですって。手料理も得意なのですが、折角なのでここはお料理を頼みましょう」
「まあ、お料理を届けて下さるのですか?」
フレスベルクとメルメッテがどこかほわほわとした雰囲気でメニューを開く。
しかし次の瞬間、ハッとした表情になるメルメッテ。
「……ラーメン。ラーメン!?」
「メルメッテさん、ラーメン好きなの?」
ひりょが尋ねれば、はい! と元気の良い返事。
「私の大好物でございます! 主様からは『月に一回』と定められておりますので今回のを今月の分と致しますが、よろしいのですか? 本当に? お仕事中ですのに
……???」
「腹が減っては戦ができぬ、だよね。食費は組織もちらしいし、遠慮なく頼もうよ」
俺は、丼物とラーメン頼もうかなぁとひりょ。
その時、フレスベルクのユーベルコードで界渡りをした者がそっと彼女に声を掛けた。
「……え? 最上位の店に頼んでほしい、と? ――まぁUDC職員さんも疲れているでしょうし、良い鰻を取りましょうか。旬だと聞きますしね」
「ああ、鰻も良いね!」
ひりょが笑顔になる。
馬刺しやもつ鍋の単語も聞こえてきたり、九州は美味しいものがいっぱいだ。
「ラーメン……!! ありがとうございます! 美味しくいただきます……っ」
届けてくれた店の人に握手をお願いするメルメッテ。何度も、何度も丁寧にお礼を伝えて。
あつあつの器を前に、両手を合わせた。
「いただきます!」
そう告げた瞳は輝いている。
とんこつラーメンはこってりだけれども、大量のもやしやネギが口内の脂を払ってくれる。
スープは深みのある味でついつい飲んでしまうほど。
「美味しい! すごいです、すごくて、すごく美味しい……!」
水でリフレッシュして再び挑めば、また美味しい。
「まさかラーメンを食べられるなんて! メルは感激しております!」
「辛し高菜も良い仕事してるよね」
ひりょの言葉に、はいっと再びメルメッテ。本当の本当に、ラーメンLOVEという気持ちが伝わってくる。
「メリアグレースでも鰻を食べたことはありますが、これは美味しいですね」
「うんうん、身がふっくらしていて秘伝のタレなのかな? 甘めで美味しいね」
フレスベルクの感想に、頷きを返すひりょ。
鰻は炭火タレ焼きでしっかりと味がついている。
口に入れた瞬間はタレが濃いけれども、じんわりと炭火独特の味が広がってきて、それがまたご飯と合うのだ。
「我が国は海鮮料理が名産品なんです」
海の幸はシンプルなものでも美味しいが、手を加えると一風違った味わいとなり、改良のし甲斐がある。自国の料理を説明するフレスベルクは解読するように一口一口を味わいながら食べていく。
お腹を満たし、英気を養った猟兵たちは再び資料探し。
未検証のUDC-Nullは妖怪に関するものが多い。
検証が失敗に終わっている妖怪の伝承――そのいくつかは邪神の如き変貌を遂げた話があって、三人はそれらを取り置いていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キリジ・グッドウィン
アドリブ◎
アナログな保存方法は天災とか事故があった時に残りやすいって言うがこれもその類……いや単純に移行しきれてないだけだな
モニター積んで地道に映像の検証。怪しい所あれば巻き戻して止めての繰り返し
単純作業はまあ苦手じゃねぇからな
これ途中で全然違う映像に…使いまわしてんのか?これじゃラベリングも怪しいな
飯は結構(逆に気が散るような気だけする)腹はあまり空かないんで
手がかり決め打ちすれば詳細の解析は容易いかもしれねぇが
手遊びだけどスケッチでも取るか。映像からの模写は解像度も低そうだし想像力で補う必要がある……想像力は持ち合わせてないが
ま、そこは周りの奴とか研究員掴まえて聞いてみるとかあるだろ。多分
「助力感謝いたします!」
猟兵の訪れにUDC組織の職員たちが喜びの声を上げた。
キリジ・グッドウィン(what it is like・f31149)は案内されながら、通過する一室へちらりと視線をやった。
「アナログな保存方法は天災とか事故があった時に残りやすいって言うがこれもその類……」
一度言葉を切り、考えを改める。
「……いや単純に移行しきれてないだけだな」
これ。と呟きが指した部屋は機材が組まれた部屋だった。
モニターが幾つか。机の横や部屋の隅には未処理のビデオテープやディスクのダンボールが積まれている。
その時、見つけたデータディスクを猟兵が運びいれてきた。
キリジの言葉に、いやあお恥ずかしいですと組織員が応える。
「まさしく言葉の通りでして」
持ちだすにしろ、機器を持ちこんでスキャンするにしろ、人の手がいる。各地を飛び回る組織員たちは中々そこまで手が回らないようだった。
単純作業は苦手ではない。
キリジが行なうのは地道な映像の検証だ。怪しい所あれば巻き戻して止めてを繰り返す。
未知・不明は映像にまでは至っていない。適用不能・非存在の、一度は検証可とされたものの記録。
個人の家に収められている巻物の画。それらは妖怪が多く、伝承の分布図が映像として残されていた。
「九州……山口、四国が一部……」
かといって違うディスクには何だか断絶的な映像で、乱れを感じる。
「これ途中で全然違う映像に……使いまわしてんのか?」
これじゃラベリングも怪しいな。と若干呆れた声が零れた。
「あのー、グッドウィンさんは出前どうするっす?」
人懐こい組織員が声を掛けてきて、キリジはひらりと手を振った。
「飯は結構。腹はあまり空かないんで」
「そっすかー。あんましコンつめないようにしてくださいね」
頷きを返すキリジだが、その目はモニターに向かったまま。
縁切り系。
と大雑把に書かれたラベルの箱。
その中の一つのディスクは全国の縁切り寺に関するものであった。
もう一つは縁を切るためのまじない。復縁のまじない。
「そもそもUDC-Nullが何も示さないモノすぎるんだよな」
何も示さないから、逆から――有からnullに矢印を示すのは難解だ。
示す一手の手がかりがまじないとなるのだろう。
邪神でいうなら『儀式』。
(「手がかり決め打ちすれば詳細の解析は容易いかもしれねぇが……」)
繋ぐ要素が見えないからこそ、容易くこちらのキャストが不可になる。
使い古したスケッチバッグからスケッチブックを取り出したキリジは、鉛筆を右手に持った。
紙を滑る柔らかな芯の感覚。
映像からの模写は解像度も低くなりがちだが、そのぶん想像力で補える。
(「まあ……想像力は持ち合わせてねぇけど」)
映像は血臭さを感じるものになっていて、記号的に捉えたものを描いていく。
二度と戻りたくない、戻したくない、屠る縁。
数多のまじないが映像を通し、キリジの手を通し、検証可の道へと入っていった。
大成功
🔵🔵🔵
彩波・いちご
理緒さんと
では私は、映像資料を漁ってきましょうか
ビデオテープ…βもありますね?
これは8ミリテープ?ビデオCDにレーザーディスク?
…理緒さんの機器で読めるのかしら…?
とにかく集めて積んで理緒さんに渡して
そして理緒さんが解析している間に私は休憩の用意を
飲み物と軽く食べれるものを用意して…理緒さんもちゃんと休息とらないとダメですよ?
軽くお腹にいれつつ、私も少しは付き合って映像を見ましょう
…和風ホラー映画みたいな映像が多いですねぇ、さすがに
ホラー好きなので、見入っちゃいそうです
…理緒さん、ずっと見っぱなしで疲れません?
少し目を休めるために…膝枕しますから、横になってくださいな?
ほら、遠慮しないで、ね?
菫宮・理緒
いちごさんと
憂鬱? いえいえぜんぜんまったくそんなことないよー♪
資料分析とか整理とかは得意分野!
引きこもりの真価が発揮されちゃうよ!
わたしは映像・音声系を担当したいかな。
一度再生しながら【LVTP-X3rd-van】に取り込んで、
そのあと【電脳潜行】を使って精査していこう。
いちごさんもいっしょに見よう、ねー♪
あ、わたしはごはんとかいらなくなるけど、
いちごさんはちゃんと食べないとダメだからね?
「おわかりいただけただろうか?」的なものとか、
妖しげな呪文や噂的なものとか、記録されているといいんだけどな。
え? 疲れるだろうから膝枕?
やーん、そんなー、疲れないんだけど、そこは内緒にして甘えちゃおう。
猟兵たちの訪れを喜ぶUDC組織員たち。
早速とばかりに仕事が割り振られ、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)と彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)は機材のある部屋へと案内された。
「わ、ビデオデッキだ~♪ 映写機もある」
少々古めかしい機器を見て、理緒が声を弾ませ近付く。
「そちらは理緒さんにお任せしますね。私は映像資料を漁ってきます」
「は~い」
機器の前に座ってLVTP-X3rd-vanを画面の前に設置しながらいちごの声に応える理緒。
テープやカセットなどの映像資料を運んでくる猟兵や組織員から受け取り、いちごは種別ごとに分けていく。
「ビデオテープ……βもありますね? ベータデッキもあると良いのですが」
状態を見ればなかなかの良好。カビもなく、機器があれば無事に再生できそうだ。
「ええと、こっちは……これは8ミリテープ? ビデオCDにレーザーディスク?」
理緒さんの機器で読めるのかしら……? と、やや首を傾げるいちご。
彼女を振り返ってみれば、再生される画面にコンバーチブル型の2in1パソコンを向けている。映像資料をそのまま撮っているようだ。
時に有線に繋いでいるので適宜対応しているのだろう。
映像に向き合う理緒の表情は真剣そのもの。
けれど根を詰めるといった様子でもなく、あくまでも淡々とした雰囲気から常日頃こういった分析をしているのだろうという地力が窺えた。
『資料分析とか整理とかは得意分野! 引きこもりの真価が発揮されちゃうよ!』――出発前に言っていた理緒の、言葉通りの彼女の強さ。
その小さな背を見ていちごは微笑むのだった。
「認証クリア……ログ、イン」
構築した電脳世界。そこへユーベルコード・電脳潜行でダイブする理緒の意識。
映像はリアルに。
画像を繋ぎ、文字が踊れば呪文が仕上がる。
(「調べるのはUDC-Nullのこと」)
UDC-NullはUDC-Null故に、そこから何も示さない。
働きかけるのは有であるこちらの世界から。
儀式、召喚、まじない、そのどれも成功率は低い――仮定として成功率を操作する理緒。電脳世界で弾きだされた仮想空間、IFの演算に、虚構の成功がデータ化されていく。
「理緒さん」
肩を叩かれて、理緒はハッと意識を浮上させる。
「いちごさん」
「そろそろ休憩しましょう。休息はちゃんととらないとダメですよ?」
そう言っていちごがテーブルに軽食を置く。サンドイッチと温かな紅茶。
電脳潜行している間は生命維持も必要なくなる。それは事前に伝えられていたけれども、やはりいちごは心配なのだった。
希薄になった彼女の存在がこちらへと戻ってきて密かに安堵する。
「一緒に食べましょう」
ね。と、そう呟けば、理緒はこくりと頷いた。
軽食をとりながら理緒が見てきた世界を、LVTP-X3rd-vanの画面で見ていくいちご。
「……和風ホラー映画みたいな映像が多いですねぇ、さすがに」
山に入っての儀式は血を使うもの。
素人撮りなので映像はところどころ揺れ乱れているのが、逆に臨場感を起こしている。
昔の画像や映像を繋げたものだが、色んな儀式の成功率を引き上げた架空の結果もそこにはあった。
「江戸時代からあった伝承の儀式を、昔のUDC組織は一度検証したみたいだね」
妖怪、都市伝説、土地で伝わっている噂。物騒な種類のものを検証し、適用不能とされた結果たち――。
食べ終わっても、理緒はじっと画面と向き合っている。
片づけを終えて戻ってきたいちごが再び彼女へと声を掛けた。
「……理緒さん、ずっと見っぱなしで疲れません?」
「え? へ??」
「少し目を休めるために……膝枕しますから、横になってくださいな?」
「えっ、いちごさんの膝枕!?」
疲れてないけど、ぐらっとくる理緒。胸がきゅんとした。
「ほら、遠慮しないで、ね?」
いちごが座り、膝を差し出すようにひらりと手が舞った。
「やーん、そんなー、でも甘えちゃおっかなー!」
にこにことして理緒が横たわる。一瞬恥ずかしそうに身を竦めたその動きが猫のようで、いちごは思わず頭を撫でた。
「休めそうですか?」
「うん、休める休める。きっと元気いっぱいになる~」
笑顔な理緒を見ていると、いちごもにこにことした表情に。
(「私も癒されてしまいますね」)
ちょっとした休息を楽しみ、その後は再び資料と向き合う二人だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
軍艦島か
いいネ何かに遭遇できるかもしれないし
観光はご褒美としてまずは仕事を片付けよう
しかし資料の量と雑然さに早くもめげる僕
これは酷い
帰ろうかソヨゴ
せいぜい紙の資料だろうとたかを括っていたら
古代のビデオテープとか無理無理
これ再生できるの?ベータって書いてあるんだけど
ソヨゴとは逆に
やる気が底辺まで落ちてから火がつく
やるしかないならさっさとやろう!
UC発動
全触手を使って資料の仕分けをする
紙類のものは巻物まで含めて僕が担当するから
ソヨゴはそれ以外の映像系とかよろしく!
こうなったら全部精査してやる
うん?お腹すいた?
じゃあ九州ラーメンを出前で頼もうか
東京のとはずいぶん違うそうだし楽しみ
城島・冬青
【橙翠】
九州まで来たんだし仕事が終わったら屋台村巡りや軍艦島観光したいですね
しかし他の猟兵も手伝うとはいえこの量は…
ええい
やるしかない!
ほらほら
動かないと片付くものも片付きませんよ
頑張りましょう!
2人で分担して資料漁り
チェックする資料は
第六感で気になったものから当たっていきます
そういやこの間見た刑事ドラマでもこんな風に映像をチェックして証拠を探してたんですよ
なんだか刑事になった気分ですね
と始まったばかりの頃は余裕があるけど
時間が進むにつれ段々とテンションも下がっていく
資料がまだまだこんなに沢山…
はぁそれにお腹が空いた
あ!そうですね
出前取りましょう
お腹を満たして英気を養えば作業も効率よく進むはず
「遠路はるばるようこそです! 今回はよろしくお願いします」
猟兵の訪れに喜ぶ九州支部のUDC組織員たち。
「頑張ります」
にこっと笑顔で応えた城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は辺りを見回しているアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)の腕を引き、案内してくれる組織員の後をついていく。
「同じ日本とはいえ、ここは九州! アヤネさん、九州まで来たんだし仕事が終わったら屋台村巡りや軍艦島観光したいですね」
「軍艦島か、いいネ。何かに遭遇できるかもしれないし、観光はご褒美だネ」
美味しいもの、見所はたくさんある。
でも。
まずは仕事を片付けなくちゃ。と言いながら、ちょっとわくわくしてきたアヤネだったが案内された部屋に一歩踏み入った途端、「げ」と声を上げた。
古めかしい紙の匂い。
部屋は換気され、除湿もされているものの雰囲気はそうそう改善されない。
「これ、何」
「文献です」
「ぶんけん……」
朗らかに返ってきた答えを繰り返しながら、いつの時代なんだ、と呟くアヤネ。
書架、キャビネットはぎっしりと。書類箱も山となり積まれている。
「…………、これは酷い。帰ろうかソヨゴ」
「ええっ!? ここはやるしかないんですよっ、お仕事なんですよっ、アヤネさん!」
くるっと踵を返そうとするアヤネの腕を更に引っ張り、引き止める冬青。
「いやでもちょっと、見てよコレ」
アヤネが箱の中から一つのビデオテープを取り出す。
「これ再生できるの? ベータって書いてあるんだけど。古代のものだよ
????」
再生機材は生産中止となったものだ。
UDC組織がそれなりに大事にしている機材は一応持ってきているようだが。
「紙よりもまず、こういうのから電子化していかないと……」
「動かないと片付くものも片付きませんよ。頑張りましょう!」
第六感で探しますよ! と冬青。ここは突っ走らなければ止まってしまう。
「ね!」
圧。
「はぁい」
冬青の勢いに返事をして、のろのろとアヤネは動き始めるのだった。
二重螺旋のウロボロスを発動させたアヤネが蛇に似た異界の触手を働かせる。
資料を取り出し、巻物を開き、アヤネが見て読んでと精査していく。
冬青は映像の方を担当した。
ビデオ、フロッピーディスクは仲間に任せ、映写機に通してフィルムを見ていく。
作業をしながら、そういえば、と冬青が呟いた。
「この間見た刑事ドラマでもこんな風に映像をチェックして証拠を探してたんですよ。なんだか刑事になった気分ですね」
監視カメラに映る目的のものを探すのは大変そうだった。あのドラマの刑事のように、冬青は目を凝らして見ていく。
都市伝説、噂、昔に焼け落ちた学び舎の資料。
すでに現存していない物がたくさんのフィルムにおさめられていた。
「写真は……あちゃー色褪せちゃってますね」
映写機に通したそれを改めてデジタルカメラで撮った。
「何だか懐かしい記号が……」
学校で撮られたものと思われる上向きの矢印。その両側に名前が書かれた、いわゆる相合傘。
「縁を繋ぐもの、だよネ? こっちは縁切りの伝承がいっぱいある」
まとめてUDC-Nullとしての資料のようだ。
「他の方たちと一緒に調べるもの、として取り分けておきましょう」
再チェックしやすいように分類して。
まだ見ていないものに目を通して。
――ずっと同じことをしていると、ふらっと思考が何処かへ流れていく。
ふと横にある手つかずの資料たちを見遣った冬青から溜息が漏れた。
「資料がまだまだこんなにたくさん……」
「……ちょっと休憩しようか」
「はぁい。――何だかお腹も空いてきちゃったなぁ」
ふうっと息を零して、作業を止めれば疲労感がどっと襲ってくる。
「ソヨゴ、出前でも頼もうか? 僕、ラーメンが食べたいな」
「あ! そうですね! お腹を満たして英気を養えば作業も効率よく進むはずですっ」
腹が減っては何とやら。
資料探しが終わったら次が控えている。
「九州のラーメンは、東京のとはずいぶん違うそうだし、楽しみだ」
アヤネがそう言って、二人は食堂へと向かった。
九州はとんこつラーメン!
他のもあるけど、ラーメンといえばとんこつ一択の土地だ。
スープはこってりだけど飲みやすいレベルのあっさりという矛盾を感じる。辛し高菜を入れてちょっと辛めにしても美味しい。
「意外とおにぎりが『進む』ネ」
「味が濃いからでしょうね」
とんこつスープの味と米が合う。
カロリーを十分に補給した冬青に笑顔が戻った。
「「ごちそうさまでした!」」
美味しいラーメンを食べ終えた後は、再び資料の山と向き合っていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クララ・リンドヴァル
UDC組織……お邪魔するのは初めてです。
適度に狭いですし、資料もたくさんあったりで、落ち着ける場所ですね。
ここなら、じっくりと腰を据えて調べものを行う事が出来そうです。
方法は、勘と整理です。
まずは【第六感】でおおまかな場所を絞りましょう。
その後、UCを発動して、【情報収集】能力を引き上げます。
乱雑な並びの中に規則性を見つけながら、ありそうな場所を漁っていきます。
私はタイトルで中身がわかる紙媒体を中心に探します。
器械類の視聴は基本他の皆さんにお任せです。捜索まではタイトルが書いていれば何とか、といった感じ。
資料を探し当てたら用意して頂いたお茶を飲みながら内容を確認します。
※アドリブ連携OK
「では、こちらの一室をお願いするっす!」
猟兵の訪れを歓迎するUDC組織員に案内されたのは地下書庫。空気を動かすのは除湿器くらいで、小さな狭い書庫、けれども資料がぎっしりと詰められた一室にクララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)は安堵の息を零した。
「適度に狭く、資料もたくさんあったりで、落ち着ける場所ですね」
キャビネットと本棚の間を通りながらクララは周囲を見回す。
ゆっくりと、部屋内を精査するように視線を巡らせて、一点を見つめた。
ユーベルコード・司書の心得を発動させたクララが乱雑なファイルの並びを辿っていく。
「…………ここは一度まとめられたもの……ですが……未知、不可……」
検証に至っていない並び。
「……適用不能」
UDC-Null――。『UDC怪物ではないと証明されたもの』は逆を辿れば、何らかの検証をしたものとなる。
何も示さないnull。示すための、儀式・検証。
「これは不要とされた情報も……必要なのでは……」
屈んだクララが下の棚を開けばそこにはノートがたくさん入った箱がある。
取り出してページを捲れば、証明を行おうとしたもの、走り書き、儀式の手順を試行錯誤した跡などがあった。
検証して、適用不能とされたもの。
妖怪、邪神、龍神。様々なものがノートの表題に綴られている。
その時に実体化しなかったのは、骸魂や骸の海といった埒外の力が作用しなかったから。
けれども今のUDCアースには骸魂が彷徨っている。
映像は仲間が調べていて、近代的な情報が幾つか出てくるだろう。
都市伝説や噂、伝承も幾つか出てきているかもしれない。
けれども実体へと結びつけるための方法が要る。
「見つけてくださった資料と照らし合わせないといけませんね」
これだ、と思うノートを数冊取り分けて、引き続きクララは資料を探していく。
「リンドヴァルさぁん、ひと休みしませんか?」
黙々と資料を確認しているとUDC組織員の一人がお茶を持ってきた。
「……あ……します」
クララがこくりと頷けば、失礼しまーす、と入ってくる。
「一応食堂もあるっすけど」
「ここでいただきます」
休憩無くぶっ続けで調べている猟兵もいたり、ご当地の味を楽しんだり、猟兵の行動も様々だ。
お茶と豆菓子。用意されたそれを前にしてもクララの意識は資料へと向いていた。
少しずつ飲みながら、情報を収集していく。
彼女の第六感が一番働いたのは『傘』に関する事柄だった。
古代の外国まで遡り調べられたそれは世界にとってなじみ深い一つの儀式があったようだ。
「……縁切り……」
――仲間がさがし当てた資料と合わせれば、より詳細が分かるかもしれない。
地下書庫にあったUDC-Nullの資料を手に、クララは地上への階段をのぼっていった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『おぞましき異形の群れ』
|
POW : わかってください、わかって?
【醜い異形の姿】【狂気的思考】【奇怪な言動】を披露した指定の全対象に【恐怖】【嫌悪】【忌避】に基づく【敵対】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD : みとめてください、みとめて?
【自分達を否定されると、暴走状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ : こたえてください、こたえて?
対象への質問と共に、【対象の周囲のあちこち】から【おぞましき異形の群れ】を召喚する。満足な答えを得るまで、おぞましき異形の群れは対象を【話し相手にする】が、限界に達すると【全力】で攻撃する。
👑11
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●
『UDC-Null』
『UDC怪物ではないと証明されたもの』
UDC-NullはUDC-Null故に、『そこ』から何も示さない。
働きかけるのは有であるこちらの世界から。
儀式、召喚、まじない、そのどれも成功率は低く、その昔組織が実験をしても実体化しなかった理由は骸魂や骸の海といった埒外の力が作用しなかったからだろう。
けれどもカクリヨファンタズムの骸魂が入りこんだ現在は容易に作用し、再現される。
猟兵たちが見当をつけたのは、『縁切り』『縁殺し』『縁破り』に関連する都市伝説だ。
「昭和の時代に流行った噂があったのでしょうね。学校やお寺といった場所を調べています」
「よく相合傘のラクガキとかあったよね」
記号的な傘を描いて両側に名前を入れる。
雨の日に曇ったガラスの窓で描いたり、地面に描いたり、悪い子は壁に落書きしたり。
「日本に渡ってきたのは平安時代だったそうですよ」
「古い記号的な占いはその時代のかもな」
読み取り、該当した手描きのスケッチを猟兵が置く。
「傘に関しては海外資料の翻訳も」
雨具や日よけとして使われる傘だが、その昔は王侯貴族の権威を表すために使われていたようだ。壁画の映像にあった。
「権威の失墜、クーデター。その辺りからきた呪術かもしれませんね」
縁を切るだけでは生ぬるい。
二度と復縁できぬよう、縁を殺すためのまじないの儀式。
日本では主に九州、四国の一部に生息するヤブレガサという植物が儀式に使われていたようだ。
透き通る心や復縁といった言葉を持つ植物故に槍玉に挙がったのだろう。
ヤブレガサを血で濡らし、縁を殺したい『もの』を願う――さすれば怪物が縁を切りにやってくる。
●
その足で九州山地へと赴いた猟兵たちは一本のヤブレガサを血糊で濡らした。
発掘した資料に基づき、特定の場所で、特定の儀式を行えば骸魂が寄ってきた。
血なまぐさい風が吹き、現れるUDC。
『******』
実体化したUDC-Nullは理解できない言葉を発したが、その声は嘆いているようだった。
『**……*』
山の植物が揺れ、ざざざざと波状に広がっていく何か――。
『こたえてください、こたえて?』
『みとめてください、みとめて?』
『わかってください、わかって?』
本来ならば、見えない怪物の群れ。
ポルターガイスト、ラップ音が該当するソレ。
けれどもいま儀式は正しく働き、猟兵たちは彼ら・彼女らの姿をはっきりと見ることができた。
『みてください、みて?』
おぞましき敵の呼気が猟兵たちを嬲り、圧が後退に導く。
まずはこの異形の群れを倒さなければ実体化したUDC-Nullに近付くこともできないだろう。
老若男女、たくさんの声がひそひそと猟兵たちの精神を削り取ろうとする。
形無きモノだったUDCの承認要求。
『そのちとにくをください、ちょうだい?』
『しんでください、しんで?』
要求は尽きることなく、その攻撃が猟兵たちへと向かった。
=====
マスターコメント。
訂正箇所。
傘の単語があちこち抜けておりました。申し訳ございません。
>>>
猟兵たちが見当をつけたのは、『縁切り』『縁殺し』『縁破り』に関連する傘の都市伝説だ。
「昭和の時代に流行った噂があったのでしょうね。学校やお寺といった場所を調べています」
「よく相合傘のラクガキとかあったよね」
記号的な傘を描いて両側に名前を入れる。
雨の日に曇ったガラスの窓で描いたり、地面に描いたり、悪い子は壁に落書きしたり。
「傘が日本に渡ってきたのは平安時代だったそうですよ」
>>>
=====
ノイン・フィーバー
縁切りの実体化に巻き込まれる形で実体化した怨念の類か
過去『犠牲者』という概念を実体化したのか
それとも最初から『こういう』存在という化け物なのか。
「しかし何であれ! 被写体になりたいと仰るならワタシも一肌脱ぎまショウ!」
UC発動!いつもは鼻先や背ビレに武器を纏っているサメ達にとりつけられたのは各種カメラ!撮影である!
創造されたZ級映画のキャラクター達の狂気は彼ら異形を上回る。(ノインの独断と偏見)彼ら程度の言い分を「そういうもの」と認められずに何が娯楽か!
なお認める事と敵対することは別なのでサメは撮りながらむしゃむしゃいく。サメだしね! サメを理解してね!
ノインはひっそり援護射撃
連携等OK!
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
相手の問いかけに満足な答えを返答できるとは到底思えない
限界を迎えるまで永久に続くだろう
それにこちらが付き合う道理はない
第1、ここでそちらの要求通り死んでやるつもりもないよ!
相手の攻撃はある意味【精神攻撃】だ
ならば、相手が話し掛けて来る事が出来なくしてやる!
自身の周囲へ念のため【狂気耐性】&【呪詛耐性】の結界を【結界術】にて形成、敵の攻撃による影響を可能な限り軽減
周囲に集まって来た敵集団に向け【範囲攻撃】のUC『破邪顕正』を発動
相手を行動不能にし、こちらへ話し掛けて来る事そのものを封じる
動きを止めた敵へ精霊の護符の【乱れ撃ち】及び【破魔】付与した刀での攻撃で畳みかける!
加賀・三槌
「ふぅむ、『まじない』……と言うより、こうなると最早『のろい』の産物ですねえ」
人を呪わば穴二つなどと申しますが、やはり呪詛に対して有効なのは呪詛返しでしょう。
UC【一時的擬態】を使用、相手の召喚した異形の群れを模したようなバロックを作り出し、問いかけをそのまま相手に返して互いに喰らい合わせてみましょうか。
……自分から仕掛けておいてなんですがほぼ蠱毒の壺ですね、コレ。
WIZ判定、アドリブ改変連携大歓迎。
箒星・仄々
他者の承認を求め続けるとは
お可哀そうに
他者からの称賛や承認を求めるとは
即ち他者に振り回されること
自分の気持ちや感情を蔑ろにしたり
価値観を放棄することに等しいのでは?
貴女方のお姿は正にその現れです
自身が溶け出し
己が何者かどんな存在なのか
ご自身でも判らなくなっておいででしょう
海へお還しし
安らかを贈りましょう
自身をペロしてから
悠々と歩いて群れへ
敵攻撃を回避&摩擦減で受け流しつつ
異形さんをペロ
転んだり将棋倒しになってもらいます
この急な動きは無差別攻撃の対象となるでしょう
同士討ちを狙います
その混乱の中
悠然と次々とペロして動きを封じていきます
鎮魂の調べは…ボスさんを還すまで
少々お待ちくださいね
独特の湿った空気に加えられる異様な気配。
「ふぅむ、『まじない』……と言うより、こうなると最早『のろい』の産物ですねえ」
呪い。
異なるだけで印象ががらりと変わる言葉を加賀・三槌は口にした。
怪物の群れの向こう、噂が実体化したUDCは何かを聞きたそうに猟兵たちへ意識を向けているが、
『******』
相手の放つ言葉はやはり理解できない。
「ともあれ、この儀式は施行した者も危機に陥る物と明らかになりました。さっくり倒してしまいましょう」
三槌の言葉に箒星・仄々は頷いた。
「はい。海へお還しし、安らかを贈りましょう」
そう言って自身をぺろぺろと舐める。ケットシーの毛並みはやわらかくしっとりしたものへと。
怪物の群れは絶え間なく猟兵たちへと要求する。
『『『そのちとにくをください、のませて?』』』
ぐ、と鳳凰院・ひりょの眉間が僅かに寄った。
相手の求めは身勝手で、そして中身がない。それに対してすべての要求に満足な返答など到底無理な話だ。そうひりょは判断した。むしろ、
(「限界を迎えるまで永久に続くだろう。それにこちらが付き合う道理はない」)
『しんでください、しんで?』
「要求通り、死んでやるつもりは無いよ」
呪わしき言霊の数々を薄めるようにひりょは周囲に向けて結界を構築していった。
言葉のノイズが薄れていくなか、ノイン・フィーバーはブラックアウトした画面(真顔)を怪物の群れに向けた。
(「縁切りの実体化に巻き込まれる形で実体化した怨念の類か」)
召喚の儀式に付随する『ポルターガイスト』は数が多い。
それだけ――過去『犠牲者』という概念が実体化されたのだろうか、とノインは考える。
(「それとも最初から『こういう』存在という化け物なのか」)
「人を呪わば穴二つなどと申しますが、やはり呪詛に対して有効なのは呪詛返しでしょう」
シリアス・ノインの流れるような思考に決着をつけたのは、ふとした三槌の言葉であった。
そう人を呪わば穴二つ。
澱みは溜まり、さらに返ってくるものなのだろう。
ノインの顔文字がきらめく。
それはそれとして、これはこれ。
「だがしかし! 何であれ! 被写体になりたいと仰るのならワタシも一肌脱ぎまショウ!」
『こたえてください、こたえて?』
おぞましき異形の群れが、それこそ人の海のように召喚されて猟兵たちに圧を掛けてくる。
「ならば、あなた方も応えてください」
相手の群れを払うように身を翻した三槌がそう言い放った瞬間、解析した呪詛が構築され異形の群れが異形の群れに襲いかかった。
おぞましき言葉が溢れかえり、敵味方の耳を打ち、脳に響かせる。
悲鳴は潰された瞬間に。
孤独からの要求、嫉妬からの要求、身勝手な呪詛が場に溢れかえる。
「…………」
呪われた敵が全力で攻撃を仕掛ければ、押し潰していく三槌の構築した異形たち。
「……自分から仕掛けておいてなんですがほぼ蠱毒の壺ですね、コレ」
一歩、二歩。三槌はちょっと後退した。自分でやっておいて引いた。
「イエイエ! 素晴らしき題材となっていますヨ! ナイス呪い!」
サムズアップしたノインが放ったユーベルコードは『Z-Class-SF-Exhibition』。各種カメラをとりつけたサメたちの群れであった。
蠱毒の壺状態となった彼らの戦場を撮影していくサメたち。
「ちょっと観てみまス?」
ノインの画面に映されるのは、異形の群れVS異形の群れ。横切るサメ。煽りを撮ろうと飛び込んだサメの画面へと切り替わり、ますます改めて客観的にソレを見てしまう三槌。
「……何気に敵残骸の海となってきたようですが」
サメはむしゃむしゃ怪物の群れを食べている。
「彼らもサメですからネ」
「そうですねえ。サメですからねえ」
サメだもんね。皆、ご理解いただける。
スプラッタな映画が撮影&披露されている一方で、残骸の海ではない場所に歩いていったのは仄々。
摩擦抵抗を減らした仄々に体当たってきた敵がするりと滑る。
召喚されていた異形の群れへと倒れ込み、反射的に群れがその相手を叩き潰した。
ぎゃっと小さく上がった悲鳴は肉塊の響きに埋もれていく。
そんな敵を哀しそうな目で仄々は見つめた。
(「他者からの称賛や承認を求めるとは、即ち他者に振り回されること」)
ペロペロした相手は仄々の情を感じ取っただろうか――。
(「自分の気持ちや感情を蔑ろにしたり、価値観を放棄することに等しいのでは?」)
放棄した思考はそのまま相手の負担と化す。
負のスパイラルだ。
「貴女がたのお姿は正にその現れです……自身が溶け出し、己が何者かどんな存在なのか……ご自身でも判らなくなっておいでなのでしょう」
還りましょう。
揺蕩う時の海へと。
猫の毛づくろいをすることによって自立できなくなった相手を違う群れの中へ。
異形の肉塊がその相手を飲みこんでいく。
『たべさせてください、かませて?』
敵の要求はけれどもひりょには届かない。
「幾多の精霊よ、哀れなるかの者らに裁きを――破邪顕正!」
精霊の護符を手に、ひりょが呟けば退魔の力が拡散されていく。精霊の力を宿したユーベルコードは水の力であり、風の力であり、火の力であり。
精霊によって増幅された自然界の力が禍々しき存在を清浄化すべく働きかけた。
光の精霊符を敵の群れへと放ち、破魔の力宿す一刀がひりょの手によって振られる。
踏み込みと同時に放った一撃は敵の体を斬り、呪詛にまみれた肉を灼く。
浸透する破魔が敵の体をぼろりぼろりと崩していった。
そんな中で彼の放った水の精霊符に反応し、いきいきと並走して泳ぐノインのサメが異形へとかぶりついた。
それを見たひりょが水の精霊符をさらに飛ばせば、空は大海のごときと化す――。
「おお~サメたちが喜んでますネ。ひりょサン、ありがとうございマス」
仄々の毛づくろいによって体勢を崩した敵を、サメがくわえて横切っていった。
「臨場感のあるサメ映画だ」
映画っていうか現場っていうか。ひりょが苦笑する。
風を呼びこめば、澱み、混乱した場の空気を払った。
すべてを飲みこんでしまいそうだった狂気が呼びこまれた混沌にすり潰され、少しずつ正常へと戻っていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
支倉・奏
ミサキ(f00415)と参加
縁を切りたい相手ねえ、特になし
ミサキは?
ま、切りたいと思うならボクらは儀式なんか使わず自分で切るけど!
ちょっと、こんな時に照れるじゃん
ほんと変わり者どもが出てきたもんさ
分かってくださいなんて甘えた事言うなよ
声が出せるなら歌を謡える、体があるなら音を鳴らせるだろ
どんな身体だって音楽はできんだよ
最近は素顔なんて見せなくても動画でアップできるし
理解求める情熱があるなら音楽しなよ
「しんでくれ」とかそういう過激なフレーズも最近は流行りだぜ
手本を見せてやるよ心音楽団!
ボク達の音楽の形を見せてやるぜミサキ
ミサキの戦うリズムに合わせギターをかき鳴らしカッコいいBGMを付けちゃうよ
肆陸・ミサキ
※苦戦怪我アドリブok
支倉・奏(f17797)と
縁かー
僕は……切りたくない縁なら隣にあるぜ、へへ
しかし前衛的な造形が出てきたなぁ
この世界にも趣味の悪いのがいるもんだ
まさか死んでる奴からも、死んでとか言われると思わなかったけれど
そういうの、奏にまで吐き掛けるの、やめてよね
WIZで
質問とかどうせ意味の無いものだろうし、話し相手になるつもりもないからね
さっさと全力で来なよ
黒剣を槍形態で広い範囲を攻撃、近付かれたらUCで攻撃
こたえてというなら、僕なりの応えで行くさ
奏者へのお触りは厳禁、リズムにノッて近付かせないように、敵を倒して見せる
縁を殺したい『もの』を願う。さすれば怪物が縁を切りにやってくる。
支倉・奏は「縁を切りたい相手ねえ……」と考えるように呟いた。
「ボクは特になし。ミサキは?」
「うーん……縁かー」
いるかなぁと肆陸・ミサキも一応考えてみる。
ああ、でも。
「僕は……切りたくない縁なら隣にあるぜ」
そう言ってほろっとした笑みを浮かべたミサキに奏は「わ」と声をあげた。
「ちょっと、こんな時に照れるじゃん」
奏の頬がぱっと染まる。
へへ、とミサキもまた照れを隠すように。それにしても、と言葉を続けた。
「前衛的な造形が出てきたなぁ」
『たべさせてください、かませて?』
UDCを中心に波状に声が渡り、猟兵の鼓膜を嬲り脳を揺るがす。肉塊がせめぎあう儀式後の場。
「……この世界にも趣味の悪いのがいるもんだ。まさか死んでる奴からも、死んでとか言われると思わなかったけれど」
槍状のDeicidaManを手にミサキが敵群を見据えた。
奏がこくりと頷く。
「ほんと変わり者どもが出てきたもんさ――分かってくださいなんて甘えたこと言うなよ」
サウンドウェポンのギターをピックで弾けば、滑らかな弦音がひとつ。
『わかってください、わかって?』
肉塊が蠢き、その狂気的な声と考えを相手に絶え間なく披露する異形の群れ。
『『『しんでください、しんで?』』』
「そういうの、奏にまで吐き掛けるの、やめてよね」
声が聞こえた方へ踏み込んだミサキが槍を振るう。広く持った長柄の先を鋭く叩けば当然にDeicidaManが応えて横を薙ぐ一閃。
ミサキは指で掌でと瞬時に長柄を躍らせ、続け放った螺旋の突きが空気を捻り肉を斬る旋風が敵群を襲った。
『こたえてください、こたえて?』
異形の尽きぬ要求と質問に意味は無く、例え返してもまた意味無き言葉が返ってくるのだろう。
「さっさと全力で来なよ」
異形が異形を召喚する。
その時、奏の声が場に渡った。
「声が出せるなら歌を謡える、体があるなら音を鳴らせるだろ。どんな身体だって音楽はできんだよ」
その身ひとつで表現する。
それが奏の生き方なのだろう。ふらふらできるのは確りと立つ芯があるから。
「最近は素顔なんて見せなくても動画でアップできるし、理解求める情熱があるなら音楽しなよ」
敵の与えてくる恐怖や嫌悪、忌避に基づく敵対感情なんて題材にぴったりだ。
負の感情も表現に値する芸術の世界。
心の靄はそうやって吐き出せばいいのだ。
「『しんでくれ』とかそういう過激なフレーズも最近は流行りなんだぜ――手本を見せてやるよ心音楽団!」
奏でられる音楽が疾く駆けた。
ミサキが横へ一歩。それだけで槍の間合いが変化する。
踵を返しての一撃は弾むように。
重い一撃の反動を利用し、自身の身体を僅かに浮かす跳躍は次の一手を刻むもの。
奏のかき鳴らすギターの音に合わせたミサキの攻撃のリズム。
「ボク達の音楽の形を見せてやるぜ、ミサキ!」
弾んだ声の呼び掛けに応えるは弧を描く穂先だった。
羽虫のように飛ぶ異形の一体が大きく薙いだ槍を掻い潜りミサキへと突進してくる。
視認したミサキの両腕がヴァンパイア化し、次の瞬間には羽虫のような異形が裂けた。
槍が虚空で踊って後続を追撃する――その肉虫は奏に向かって飛んでいったものだった。「奏者へのお触りは厳禁だよ」
迫る肉壁を払うミサキの力は相当なものだ。
敵の勢いを真っ向から返し、傷つきながらも剛なる槍で根こそぎ刈り取っていく。
「ひゅ~! ミサキ、カッコイー!」
ギターの響きと共に奏の声。
心音楽団のリズムに合わせるミサキの連撃が敵陣を骸の海へと還していくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
キリジ・グッドウィン
(儀式って血糊で良いのか……今どきらしく省エネだな)
都市伝説になりきれない事象・噂の群れってとこか
成り切れないからそれっぽく取り繕って……か。心当たりはなくはないが
継ぎ接ぎだらけでグロテスク極めてるな。
相対して初対面でぶっ潰されなきゃならないってのは酷だが、こっちには関係ないからそこ退いてもらうわ
黒い銃カラゴズによる先制攻撃、連射は利かないが連続させれば弱らせる事は出来るだろうし威嚇にもなる
あーあー煩い、「狂気」は処理が面倒だから後で頭痛必至なワケ。さっさと撃ち落としちまいてぇんだわ。
隙を見切って鉄の左で掴みかかり、零距離射撃
「わからせ力」の違いってヤツで(?)
メルメッテ・アインクラング
血を流す、縁を殺す。そこに託されたものは願いではなく呪いの様で。けれども否定は致しません。……黙して佇み、主様がいつか仰った『呪いにしかできない事もある』というお言葉を思い出しておりました
ただ、私達を脅かすと言うのなら。私は抗い、銃を向けるまででございます
敵の攻撃を【オーラ防御】し『想音色』。淡い空色の蝶を飛ばし敵全体に【マヒ攻撃】です
動きが鈍った敵を順番に狙い思念銃で一発ずつ確実に撃ち抜きます
声を掛けるなら敵の問いかけには答えず、一方的に「もう良いのです。おやすみなさいませ」
ええ、私は貴方様方の存在を承認しております。目の前にあると確かに認め、そして――倒すべき敵と判断。取り除かせて頂きます
(「儀式って血糊で良いのか……今どきらしく省エネだな」)
媒介になるものはそれなりにと猟兵たちは血液パックも用意していたのだが、儀式を通して働きかけるものはソフトであった。
もっとも、縁を殺したい相手を思い浮かべるのは相当なもののようだが。随伴したUDC組織員の思考か、猟兵の思考か、誰のものが結ばれたのかは不明だ。
思考を淵にキリジ・グッドウィンが儀式後の場を見渡す。
視認されるおぞましき異形の群れ。
「都市伝説になりきれない事象・噂の群れってとこか」
つくづく、人の闇は底が尽きぬし行く先が知れない。ぼやけた澱みがこうして受肉した。
(「成り切れないからそれっぽく取り繕って……か。心当たりはなくはないが」)
過去が手を伸ばし、現在を引きずり込もうとしている。
それにしても。
「継ぎ接ぎだらけでグロテスク極めてるな」
枯れた内臓やコードを肉で包みこむ。
そんな敵の群れに対し、キリジは吐き捨てるような呼気。
一方、紛いの赤とはいえその目で儀式が行われたこと、UDCが出現したこと、故に確かにかつて在った業だと知る。
控え、黙して佇むメルメッテ・アインクラングの脳裏に浮かぶのは静かなる懐旧。
(「血を流す、縁を殺す。そこに託されたものは願いではなく呪いの様で」)
それでも誰かにとっては救いであったのだろう。
メルメッテは否定しない。
いつかの主の言葉が、声を伴い甦る。
(「『呪いにしかできない事もある』、そう、主様は仰っていました。ですがただ、私達を脅かすと言うのなら」)
「……私は抗い、銃を向けるまででございます」
呟いたのちに「キリジ様」と声を掛ければ彼は即座に頷いた。
異形の群れは最早肉壁だ。
「相対して初対面でぶっ潰されなきゃならないってのは酷だが、こっちには関係ないから。そこ、退いてもらうわ」
結ばれた、殺したい縁を棄却するために猟兵たちが攻撃を仕掛けるべく動いていく。
黒い銃・カラゴズの剛弾が敵の肉壁を穿つ。
威力の高いそれは当然反動も強いが、キリジの複数のジョイントが衝撃を吸収し瞬時に散らした。射撃姿勢はぶれない。
連射は利かないが連続して放たれる撃ちこみに吹き飛ばされる異形や、空いた大穴に瓦解する異形。
『『『わかってください、わかって?』』』
波紋のように広がる声の数々。
音の波が発生し、それが聞くものの鼓膜を嬲り脳に響かせる。
「あーあー煩い」
眉を寄せてキリジが返す。
その時、メルメッテから想音色が放たれた。
淡い空色の蝶がひらりと優雅に、それでいて敵一直線に飛んでいく。敵陣に柔らかく触れた蝶が敵の動きを少しずつ鈍らせていった。
異形の群れの狂気的な言動や念として飛ばされた思考の渦もまた引いていく。
「ありがとな、メルメっち」
「いえ」
礼を置いて引いていく波動を追うようにキリジが踏み込んだ。
『その』
『ちとにくをください』
『のませて?』
近付けばそれだけ狂気の渦に飲みこまれる感覚。
キリジは振り切るように鉄の左で掴みかかった。
「『狂気』は処理が面倒だから後で頭痛必至なワケ。さっさと撃ち落としちまいてぇんだわ」
そう告げて、銃口を肉塊に押し付けての射撃。
螺旋を描く弾丸の勢いは握撃の零距離だからこそ。敵肉を捻るように巻き込んで撃ち貫き、敵を形成するものが弾ける。
『みとめてください、みとめて?』
向かってくる動きの鈍い異形には答えず、けれども一方的に応えるメルメッテ。思念銃で一発ずつ確実に撃ちこんでいく。
迷いのない凛とした射撃であった。
(「ええ、私は貴方様方の存在を承認しております。目の前にあると確かに認め、そして――倒すべき敵と判断」)
「もう良いのです。おやすみなさいませ」
ポルターガイストは存在としては弱く、今回の受肉に『彼ら』がどう思ったのか。
骸の海という過去思念の澱みに再び沈んでいく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩波・いちご
理緒さんと
「うぅ、気持ち悪い敵ですね…理緒さん平気ですか?」
敵の見た目に思わず顔をしかめますが…あれ、理緒さん平気そう
いえ、私も苦手という程ではないですけど…あまり見たくはないですねぇ…
ああいう見るだけで正気が削れそうなのは…やっぱりちょっと…
目はつむりませんが…えっと、手は繋ぎましょうか
ぎゅっと握った温もりが、削れそうな正気を繋ぎとめて…これなら戦えます
貴方達の存在は認めますし、見てあげますが…血も肉もあげられません!
理緒さんと手を繋いだまま、2人で炎の共演といきましょう
【異界の深焔】の生きた炎を呼び出し、最大火力で焼却処分です!
この繋がった手…私達の縁、切らせはしませんからねっ
菫宮・理緒
いちごさんと
「え、なにが? あ、いちごさんこういうの苦手な感じ? 」
だいじょぶだいじょぶ。
電脳世界ならR-18でもっとヤバいの出てくるし、わたしは慣れた感じかも。
海外ホラゲーならもっとグロいの転がってるしね!
気持ち悪かったら、目瞑っててもいいよー?
手、繋いであげる!
あなたがここにいることを、
みとめるし、わかるし、みる」こともするけど……しんではあげられないな。
でもそんなことより『縁を殺し』に来るっていってたよね。
いちごさんとの縁を殺しに来た、とでもいうのかな?
おとなしく骸の海に還るならいいけど、
もしそんなこというなら……綺麗に焼却処分するよ?
【Nimrud lens】、最大火力で消毒だね!
おぞましき異形の群れが、肉壁となり猟兵たちに圧を掛けてくる。
『ちとにくをください、のませて?』
『わたしをみてください、みて?』
様々な承認を要求する声は全体で聞けば聞き取れないくらいに多い。
人であったと思わしき蠢く肉塊に、枯れた内臓、千切れたコードを内包する群れ。
そんな敵を前に思わず顔をしかめた彩波・いちごが僅かに呻く。
「うぅ、気持ち悪い敵ですね……理緒さん、平気ですか?」
「え、なにが? ――あ、いちごさんこういうの苦手な感じ?」
少々青褪めているいちごとは反対に、菫宮・理緒はいつも通り。
「理緒さんは平気なのですね」
「うん、このくらいならだいじょぶ。電脳世界ならR-18でもっとヤバいの出てくるし、わたしは結構慣れてるかも。海外ホラゲーならもっとグロいの転がってるしね!」
様々なグロテスクに接している理緒は耐性があるようだ。
ふう、と自身を落ち着けるようにいちごは息を吐く。
「……いえ……私も苦手という程ではないですけど……あまり見たくはないですねぇ……」
そっと敵から視線を逸らしつつ、けれども何かあれば対応できる程度には視界におさめつつ。
「こういう、見るだけで正気が削れそうなのは……やっぱりちょっと……」
「いちごさん」
改まってちょっと明るめな声を掛けられて、いちごは理緒を見る。
「気持ち悪かったら、目瞑っててもいいよー? 手、繋いであげる!」
にっこりとした表情とともに差し出される手。
「……手、繋ぎます」
柔らかな手を取ってぎゅっと握る。
「目は瞑りませんが……ああ、これなら戦えそうです」
温もりが伝ってくる。知らず知らずのうちに手先が冷え切っていたようだ。削れそうな正気も繋ぎ止められて、いちごの表情が僅かに緩む。
『『『わかってください、わかって?』』』
敵群の声が鼓膜を嬲り、脳を揺らす。
蠢く肉塊が踊るように動けば濡れた質感が伝わってくる。
『『『みとめてください、みとめて?』』』
ほら、見て。という風に広がる両腕は複数に。
『しんでください、しんで?』
『ちとにくをください、たべさせて?』
嬲る声の波と肉の壁に立ち向かうように、二人はぎゅっと手を握り合った。
理緒の琥珀色の瞳に敵たちが映りこむ。
「あなたたちがここにいることを、みとめるし、わかるし、みることもするけど……しんではあげられないな」
「ええ。貴方たちの存在は認めますし、見てあげますが……血も肉もあげられません!」
理緒が応え、いちごが応え、否を告げた。
言葉はそのまま力あるものへ捧ぐ。
「ふんぐるいふんぐるい……、遠き星海にて燃え盛る神の炎よ!」
いちごの異界の門が開き、異界の深焔が放たれた。猛る炎が連なり龍の如きうねりを見せる。
「屈折率、固定……収斂」
大気を屈折させてレンズを生成し一度収束させた光を、熱線と炎として理緒が放つ。
いちごと同時に、呼吸を合わせたNimrud lens。
新たな炎を内包し生きた異界の炎が敵を嬲り焼き払っていく。火達磨となった肉塊が崩れれば周囲に延焼を起こす。別の個体では内包していた圧が破裂し、炎が飛び散った。
「でもそんなことより『縁を殺し』に来るっていってたよね」
そう言った理緒の視線の先には、この集団の敵を従える根源。
「いちごさんとの縁を殺しに来た、とでもいうのかな?」
一度切れた縁は元には戻らない。
駄目になった人間関係は戻そうとしても、既に切れた時の人の感情が宿っている。
けれども対峙するのは切れる以上に縁を駄目にする力。
根源のUDCが花を飛ばせば、呼応するように肉塊の嗤いの漣。
「おとなしく骸の海に還るならいいけど、もしそんなこというなら……綺麗に焼却処分するよ?」
「この繋がった手……私たちの縁――切らせはしませんからねっ」
熱線を覆う異界の炎が加速する。
UDCの目的は破鏡へと至らせること。
それを考えれば二人は格好の的となることだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
城島・冬青
【橙翠】
おおう…これは見た目がなかなかにキッツイのが来ましたね
さすがUDCエージェント!
アヤネさんたのもしーい!
では其方はお任せします
私はこっちの集団の相手を
片付けたらすぐに加勢に来ますので
刀を抜き何かされる前にとりあえず手近の異形にダッシュ斬り
彼等の発する言葉や謎の行動に惑わされちゃダメだ
落ち着きで冷静さを保つ
彼等の謎な行動も見続けるのもよくなさそうだし
ここはスカシバちゃん、出番だよ!
UC吸血蛾で彼等を覆い尽くすように纏わりつかせ攻撃し
衝撃波で吹っ飛ばす
よっし!アヤネさんの方は大丈夫かな?
ってアヤネさんの方、全然敵の数減ってないですよ?!
もー、しょうがないですね
スカシバちゃん
もう一回行くよ!
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
気持ち悪いかい?
でも僕は仕事柄こういう奴らには慣れている
質問ばかりしている群れは全部僕が引き受けよう
他をやっつけておくれ
大丈夫コツがあるのさ
こいつらは相手の答えに合わせて呪いをかける
だから選択肢通りに答えない
断定もしない
のらりくらりと時間稼ぎをしよう
両手が空なのを相手に見せ武器が無いことを見せながら友好的に話しかける
聞きたいことがあれば何でも僕が答えよう
慌てず順番に聞こうじゃないか
ふむふむところで逆に質問いいかな?
なるほどネしかしどちらかは迷うなあ
やあソヨゴ
え?全然減ってない?そりゃそうネ
袖からずるりと両手鎌を取り出し伸びをしつつ
長話に付き合うのも飽き飽きだ
終いにするネ
ソヨゴよろしく!
枯れた臓腑、機械的なチューブを包む肉塊、人の形をしたおぞましき異形の群れを目にした猟兵たちの反応は様々だった。
「……おおう、見た目がなかなかにキッツイのが現れましたね」
若干引き気味に呟いた城島・冬青。
敵の狂気的な姿と、言葉として象られる意味無き声が鼓膜を嬲り脳を揺さぶる。
正気が削がれるといった感じだろうか。
早めに敵群の数を減らさなければ何かが削がれてしまう気がして、猟兵たちが攻撃を仕掛け始めた。
「うん? 気持ち悪いかい?」
冬青に尋ねながらもアヤネ・ラグランジェは「でも」と言葉を続ける。
「僕は仕事柄こういう奴らには慣れている。――質問ばかりしている群れは全部僕が引き受けよう」
「わ、さすがUDCエージェント! アヤネさんたのもしーい! ではっ、そちらはお任せしますね」
「うん、任せて。ソヨゴは他をやっつけておくれ」
応えれば「はいっ!」と元気な声で、軽く手を振って冬青が走り出す。
駆けで五歩。
姿勢を僅かに前傾させて一体の異形へ向かって、一気に間合いを詰めた冬青が花髑髏を抜き放った。勢いに任せ横一文字を描く一刀が敵の肉厚を裂く。
僅かな引っ掛かりはゴムのように伸びた内臓部。冬青は瞬時の判断で刃先を僅かに傾け薙ぎ切った。
『『『わかってください、わかって?』』』
『ここにきてください、きて?』
圧の含まれた音が波のように襲ってきて、冬青は一歩分真横へ。近付けば音波の暴力、異臭と蠢く肉塊がより迫って来る感覚を、頭を軽く動かし振り払う。
(「彼らの発する言葉や謎の行動に惑わされちゃダメだ」)
見続けるのもよくないだろう。
今、何に対し何をすべきか、分析を続ければ冬青の頭も冷静なまま。
現状、肉壁にずっと囲まれているようなものだ。
(「それなら!」)
「ここはスカシバちゃんたちの出番! やっちゃって!」
冬青の言葉に呼応した花髑髏の魔力が膨れ上がり、放たれた花弁は透かし翅を高速で動かすオオスカシバへと変化した。
モコモコずんぐりなオオスカシバたちが異形の群れを囲い、ホバリングをしながら吸血行動を行う。
肉塊に突き刺すオオスカシバたちの攻撃に敵の動きは鈍くなった。
そこへ冬青の一閃が放たれ、衝撃波が異形の彼らを襲う。空弾の如き圧が敵を吹き飛ばし、続き刃となった鋭風が群れを斬り刻む。
「よっし!」
やや視界の開けた場となり冬青がぐっと拳を作った。
「アヤネさんの方は大丈夫かな?」
そう言って彼女の姿を探す。
一方。
『『『こたえてください、こたえて?』』』
「それは君たち個々の定義によるかな。ほら、ケダモノの君や人間だったかもしれない君――君は絡繰りのようだ」
『どうしてワタシはスてられたの?』
『どうしてボクはコロされたの?』
『アナタにワタシをタベテほしい』
意外と話せる異形の群れではあるが、個々を分ければ主張も激しくなってくる。
アヤネは興味深げにおぞましき姿の彼らを見た。
「聞きたいことがあれば何でも僕が答えるよ。慌てず順番に聞こうじゃないか」
そう言ったアヤネに対して、興味を持った異形の群れが取り囲む。
密やかに、肉塊の影で謎を喰らう触手の群れが敵を侵食していた。
「僕の言う事は分かるかい? 君たちは、意外だが学んでいく知性があるようだネ」
逆に質問をいいかな? とアヤネ。
異形から返ってくるのは頓珍漢な答えがほとんどであったが、そこには主張という裏打ちされた俗的な感情がある。
恐らく、確りと時間を掛けて向き合えば、彼らを読み解くことさえできるだろう。
だが――。
「アヤネさん、何してるんですかー! 全然敵の数減ってないですよ?!」
「おや、時間切れのようだ」
冬青の声が届き顔を上げるアヤネ。近付いてくる冬青へ軽く手を振ってみせる。
「やあソヨゴ。そりゃあ話を聞いていただけだからネ。数は減ってないよ」
でも、と袖からずるりとScythe of Ouroborosを取り出して、アヤネを軽く姿勢を正すように伸びをした。
伸ばした背と腕が気持ち良い。
「長話に付き合うのも飽き飽きしてきた」
首を少し傾けて笑む。
「――ソヨゴ、よろしく!」
「もー、しょうがないですね! スカシバちゃん、もう一回行くよ!」
オオスカシバたちがアヤネを取り囲む異形の群れへと襲いかかり、ウロボロスの大鎌をアヤネが振るう。
逆手順手と長柄を繰り、遠心を利用した数多の斬撃が肉塊を払っていく。
「終いにしよう」
枯れた臓腑も、機械的なチューブも、覆う肉体も、内包された意識も。
すべてを骸の海へと還していくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クララ・リンドヴァル
乾いた骨ならどうと言う事も無いのです。
鎧を着せて書庫の番人くらいには出来ますからね。
世迷い事を並べ立てる肉付きが一番厄介。
あなたたちのような存在が、死霊術を貧者の魔術に貶めているのですよ。
……などと、心にもない事を言ってしまいます。
少し胸が痛いですが、UDCたちを暴走状態に陥らせるためです。
相手の動きに合わせて、こちらもページストームを放ちます。
きっとUDCたちは自分から切り裂かれに紙の群れへ飛び込んでいくでしょう。
私は動かず目立たないようにしています。
気持ちは伝わったのに、言い方とかが邪魔をして、結局聞き入れて貰えなかった体験。誰にでもあると思います。
……あります、よね?
※アドリブ連携OK
枯れきった臓腑。
零れ垂れたチューブ。
機械的な身体は錆びているところも。更には腐食した肉を纏う。
『みてください、みて?』
『『『みとめてください、みとめて?』』』
おぞましき異形の群れ。彼ら彼女らの姿にクララ・リンドヴァルは静謐な、灯色の瞳を向ける。
「乾いた骨ならどうと言う事も無いのです。鎧を着せて書庫の番人くらいには出来ますからね」
術者として、クララは異形の者たちへ話しかけた。ですが、と続ける声は淡々と――どこか冷たく。
「世迷い事を並べ立てる肉付きが一番厄介。自身の役割を放り、自己主張を並べ立てる
。…………あなたたちのような存在が、死霊術を貧者の魔術に貶めているのですよ」
そして貧者の一灯を無きものとしているのです。
異形の群れにも、個体によっては知性があった。
学びがある。猟兵たちの語りかけには倣いの言葉で応える。
『ひどい』
『すきでこんなになったワケじゃないのに』
上がった声にクララの瞳が僅かに揺れた。敢えて心にもない言葉を相手に向けた。
『ころしてください、ころして?』
『ワタシをたべてください、たべて?』
クララに否定された異形の群れが彼女を取り囲もうと近寄ってくる。
彼女の言葉がナイフであったのなら、敵の声は暴力だ。
切られ、流れる血の如き声がクララの耳を打ち脳を嬲る。
クララの開いた魔導書から切り離されたページが放たれて、向かってくる敵肉を裂く。
風の魔法陣を繰り、紙片が嵐のように鋭く飛んだ。
さらにいくつかの魔術を施行するクララ。
その一つ、天涯の書版から構築した類感の魔法を伴わせれば、彼らの傷付いた結果が、個々が持つ異形に至った原因に起因し伝播する。
広範に掛けられた複数の術が円環となれば敵は総崩れとなった。
紙片の嵐はページによって様々な影響を敵に及ぼす。
炭となり崩れるものもいれば、紙片に裂かれた瞬間炎の一閃となるものもあった。
「……気持ちは伝わったのに、言い方とかが邪魔をして、結局聞き入れて貰えなかった体験。……誰にでもあると思います」
目立たないように立つクララがぽつりと呟く。
規則性ある舞いを見せるページと、軌道から一拍遅れて倒れる異形。
「……あります、よね?」
混在し、個々とした意識と肉塊が骸の海へと還っていく。
肉の残骸にまみれた異形の目玉がきょろりと動き――クララと目が合った。
「おやすみなさい」
灯の瞳は先程とは違って僅かに。情を宿すものに。
硬質化し真珠のような色になった目玉は、次の瞬間砕け散るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『邪神『パトリック』』
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POW : かわいいはな
戦闘中に食べた【信者】の量と質に応じて【身体の周囲に信者の意識を宿した花が咲き】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : はながきれい
自身の身体部位ひとつを【花】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : さいたさいた
全身を【信者の意識を宿した花】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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邪神『パトリック』。
このUDC怪物は、今、骸魂と合体した姿で現世に出現した。
緑色のマントやあちこちに引き裂かれたような穴があって破れかぶれ。ところどころが血で染まっていた。
『******』
言葉を発すれば花が発生した。
その花たちは猟兵たちをからかうようにふわふわと飛び舞わった。
猟兵たちの間を引き裂こうと花たちが道を作り始める。
訪れた大量の花吹雪は、霧のように視界を覆い、迷路のようなものへと。
猟兵の仲間意識などの縁を切ろうとしているのだろう。
そして圧し潰すが如くの花は、息の根を止める殺すもの。
『******』
けれど所詮は花。
炎で焼いたり、風で吹き飛ばせば、狭まった視界が僅かに戻る。
花たちから声無き悲鳴が上がる気配。
花は邪神の信者たちであった。最早泣いたり笑ったりとできぬ存在の花たちだが、痛みは感じるのだろう。
『***
……!!』
邪神の鋭い声。言葉は理解できないが、花たちが攻撃されて怒っているのは分かった。
視線のあった猟兵同士で頷きあえば、さらに怒ったように大量の花が迫ってくる。
花はすべて邪神から放たれていた。
恐らくは、絆・縁といったもの、または植物を滅する属性が邪神の弱点となるだろう。
猟兵たちは情報を共有し、この世に現れたUDC怪物を倒すべくそれぞれが動き始めた。
敵は呪詛を交えた攻撃を放つ。
花を伴う行動は信者を盾にするようなもので、いかにも邪神にふさわしき禍々しさだった。
肆陸・ミサキ
※アドリブ怪我OK
支倉・奏(f17797)と
鍵を影に差して回し、UCのシャリオを呼び出して奏を後ろに乗せる
……背中の感触も、律動も、身体に馴染む二人の音だ
この縁だけは、神にも悪魔にも引き裂けないよ
WIZ
シャリオの機動力で敵との間合いをはかるよ
奏がいるから安全運転にしたいけれど、彼女なら耐えられるギリギリの動きをさせてもらう
信用、信頼してこそ、だもんね
ああ、奏がそうしたいってことは解っているから、道行きを整えるのは僕の役目
焼却の範囲攻撃で前面をぶちぬいて、キツイ一発をお見舞いしちゃえ!
支倉・奏
※アドリブ怪我OK
ミサキ(f00415)と参戦
キミとボクで二人乗りだ
もうさっきの戦いでお互いのビートはチューニング済み
どんな花も迷宮もボクらの間に入り込めないさ!
こうして身体を重ねていると鼓動が感じ取れるだろ
どんな姿勢も状態からでもボクらは歌の中に居る
キミの背でボクの高鳴りを聞いてくれ
「今日は一段と激しいねミサキ、ボクもなんだか燃えてきちゃうよ!」
キミを抱く手でギターは弾けないが
アイツを殴るなら片手でやれる
拍子を合わせて殴り抜けるぜ!
「 Rock 'n' Rollだッ!!」
心音楽団でギターを武器化!
バイクの上から一発派手にぶんなぐってやる!
視界には花、花、花。
腕で振り払った肆陸・ミサキの手には一つの鍵。
「嘶け! 轢き裂け! 踏み砕け! ――来い、街路の騎馬!」
銀の鍵を自身の影に差して回したミサキが呼び出したのはシャリオ。
黒い影を纏う大型重二輪車に跨ったミサキが支倉・奏に声掛ければ「オッケー!」と軽やかな駆けで奏が背にくっつくように騎乗した。
「さっきの戦いでお互いのビートはチューニング済み。どんな花も迷宮もボクらの間に入り込めないさ!」
「ん」
奏の言葉に微笑むミサキ。
アクセルを回せば滑らかな走り出し。
吹雪のように流れる花たちを振り切ってのアクセルターン。スロットルを煽り、車体を傾ける旋回に奏がぴったりと寄り添った。
邪神パトリックの信者である花たちの動きをChariotの切る風で乱し、ミサキは操りながら敵との彼我の距離を目測する。
ぎゅっとミサキの体に回されている奏の腕。
彼女自身の手は前で結ばれていて、背中に奏の僅かな動き、鼓動を感じ取った。
(「……背中の感触も、律動も、身体に馴染む二人の音だ。この縁だけは、神にも悪魔にも引き裂けないよ」)
『******』
邪神から放たれて咲き飛ぶ花たち。
瞬時に花弁を鋭くした花は擦れ違い時に二人の肌を裂く。
「……!」
華麗なハンドル捌きでそれらを避け、敵陣に僅かな滞空時間を与えながらハンドルを切れば交差した風が花を吹き飛ばした。
適宜姿勢を合わせ動かす奏。
(「どんな姿勢も、どんな状態でもボクらは歌の中に居る。キミの背でボクの高鳴りを聞いてくれ」)
鼓動が伝われ、とミサキの背中にぎゅっとくっつけば頬を打つ風が和らぐ。
二人で作ってきた縁だ。
時を共に過ごせばたくさんの結び目ができる。その一つ一つが愛おしい思い出となって、魂に刻まれていく。
「今日は一段と激しいねミサキ、ボクもなんだか燃えてきちゃうよ!」
音を奏でたい。
うずく指を翻した奏が手にしたのはギター。
アンティック・ローズ色の楽器を片手に構えれば、既にミサキは奏の動きに合わせて邪神へと向かっていくところ。
コースレイアウトを完璧に把握したシャリオの走りには迷いがない。
「奏! キツイ一発をお見舞いしちゃえ!」
前ブレーキを強くかけたターン速度に乗ったギターのぶん回し。
「 Rock 'n' Rollだッ!!」
奏が翻るやぶれかぶれな邪神のマントと胴目掛けてギターで殴りつけた。
攻撃の反動でぶれる車体を瞬時に繰り吸収するミサキの運転技術と、ストラップも活用した奏のギターの一撃。
加速からの強打は到底受け止めきれるものではない。
邪神パトリックは殴り飛ばされた。
「yeah!」
「お見事」
少女たちは喜び、軽やかなグッジョブの声を交わすのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メルメッテ・アインクラング
キリジ様(f31149)と
花がご縁であるならばそれらを何故、蔑ろに?共感致しかねます
自身にバリアを張り【オーラ防御】で花を防ぎますが下手に動く事は叶わず……
初めてなのでございます。共に歩いた春の日、絵を描かれる貴方様の右腕、一つ一つを思い出す度、胸の奥から力が湧くのも。そして、この繋がりを失いたくないと、こんなにも強く感じるのも!
花で視界が埋まる中、顔を上げて『殉心戯劇』!
キリジ様を信じ、想い、この身に熱を纏わせ跳躍。高速で飛翔し敵へと接近
空中でキリジ様と目が合えば顔が自然と綻び、微笑んで
「ええ、キリジ様。またお会いできて嬉しいです」
花を避けた射線を【見切り】邪神を狙って思念銃の引金を引きます
キリジ・グッドウィン
メルメっち(f29929)と
花の攻撃を激痛耐性で耐えながら立ち
こいつ等全部信者とか随分と御縁がおありで
『絆や縁』か、別つ程のそれがオレにあるとは考えられねえ
痛みも感情もヒトのそれより感じるのが遠く、それを取り繕って成り切れない自分に。
………だがそれに憧れるからこそ、一緒に花を観て、その景色を絵にするのに付き合ってもらって、そして今日偶然会ったメルメッテとの小さく積もるほんの僅かな絆を掴んで手繰っても、良いだろうか。
使用UCで左の拳を叩き付け、目の前の地形を破壊する程の衝撃で風の流れを変え
その一瞬の隙を突いてワヤン・クリを投擲し邪神への直接攻撃を試みる
「よぉ、久しぶりだな。メルメっち」
「こいつ等全部信者とか、随分と御縁がおありで……」
可愛らしい花が咲き飛ぶなか、何処か吐き捨てる調子でキリジ・グッドウィンが呟く。
邪神と花の呪詛の連撃が渦巻く戦場にて重ねられる一撃の数々は――身体部位を複数回換装しているキリジには鈍く伝達された。
(「『絆や縁』か……別つ程のそれがオレにあるとは考えられねえ」)
色ある世界の様々を、まずは色なき情報へと変換する。色を付随するのはその後だ。
痛みも感情もヒトのそれより感じるのが遠く、それを取り繕って成り切れない自分。
今はまだ別つ程の絆や縁がないとしても、ちょっとした時に触れたものが繋がっていくのだろう。
記録に付随する思い出が脳裏にふと浮かんだのは絆や縁に憧れるからこそ、だ。
一緒に花を観て、その景色を絵にするのに付き合ってもらって、そして今日偶然会った猟兵。
視線の先にはメルメッテ・アインクラング。
(「共感致しかねます」)
花が縁であるのなら、何故蔑ろにするのだろう、と。
歪んだ世界の理、故の邪神。
呪詛を放つ花が咲き飛ぶ光景は一見、美しいというものなのかもしれない。
けれども、メルメッテは同じ花であってもたくさんの違う美しさをもう知っている。
呪詛が猟兵たちを蝕んでいく。
『生命体の埒外にあるもの』という猟兵同士の縁を少しずつ破っていく。
今の花たちは触れれば痛みが走るもので、メルメッテは透明なオーラでその身を覆った。
(「初めてなのでございます。共に歩いた春の日、絵を描かれる貴方様の右腕、一つ一つを思い出す度、胸の奥から力が湧くのも」)
誰かと共にした時間は彼女の中で思い出として降り積もっていく。
キリジと一緒に出掛けた春のことも大切な思い出だ。これが縁というものなのだろう。
(「そして、この繋がりを失いたくないと、こんなにも強く感じるのも!」)
『******』
邪神パトリックの声が聞こえる。
花たちが舞い飛ぶなかで何かを伝えようとメルメッテは顔を上げた。
「メルの鼓動が聞こえますか? 永遠のような一瞬を――あなた様と共に」
告げた瞬間、縁を隔離・切断しようとしていた周囲の花たちを溶かすほどの念力が彼女を覆う。
花の残滓が熱となり風となるなか、メルメッテは跳躍した。
「ひとまずは……ぶっ壊す!!」
キリジが左の鋼の拳を叩きつければそれが起点となる。
穿たれた地面が瞬時に陥没し、同時に押し出される周囲の大地が盛り上がった。発生するのは風だ。上昇する突風が花たちを吹き飛ばし、キリジの視界がクリアになる。
対し、一瞬花を払われた邪神の眼窩が露わになる。風の目くらまし。
計算の尽くされた軌道なのか、投擲したワヤン・クリが吸い込まれるようにして邪神の真胴へと突き刺さる。
熱が払われるような突風を活かし僅かな滞空を得たのはメルメッテ。
キリジの対角からの射撃は思念銃によるもので敵胴を貫いた。淡く乳青色な彼女の目と合った。
「よぉ、久しぶりだな。メルメっち」
「ええ、キリジ様。またお会いできて嬉しいです」
投擲した手をそのままひらり。ニッと笑んで挨拶すれば表情を綻ばせたメルメッテが微笑み応える。
『***……!』
再び繋がった猟兵たちの縁に、邪神が何かを呟いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
箒星・仄々
花へと変えられてしまったとはお可哀そうに
元へ戻しては差し上げられませんが
せめて海へとお還しすることで救いとしたいです
そして私達の姿
様々な世界からこうして猟兵として集い
力合わせ戦う姿は
正に縁そのものではないでしょうか
邪神さんへ見せつけちゃいましょう
風の魔力を乗せて剣風を放ち
花々を吹き飛ばして食べられないようにしたり
刃に炎の魔力を込めて花々を燃やします
燃やす時は
苦痛が長引かない様
一瞬で灰にするよう心がけます
植物を滅する属性といえば金行と炎です
ですので
そのまま銀朱の刃で刺突を放ち
邪神さんを刻み燃やします
終幕
異形の群れさん
邪神さん
信者さん達へ
鎮魂の調べ
海で静かな眠りを
九州グルメをまた堪能したいです♪
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
中途半端な攻撃は相手を回復させてしまうだけか…
なら、俺の持てる最大火力でもって焼き払う!
道を形成する花を【破魔】を付与した刀で切り裂きながら、敵へ精霊の護符を投擲可能な射程まで押し進む
所定位置へ辿り着けたら敵の四方へ向け、精霊の護符を放つ!
ただ、それだけだと相手に警戒されるだろうから、事前に水の力を込めた【属性攻撃】、続けて火の力を込めた【属性攻撃】の護符を放っておく
放たれた水に火が加わり霧状と成す
一瞬でいい、相手の視界を遮られれば!その間に四方へ護符を放ち仕込みを終える
さぁ、準備は整った
火の疑似精霊、全力で行くよ!
大火球を『疑似精霊・最大火力』で生成し叩き込む!
ノイン・フィーバー
心情:縁切りを求める割にはご自身は花との縁を手放さないのですねェ。
戦闘:
基本は花を殲滅しつつ援護射撃
花は機銃をメイン系にしたアームドフォートで薙ぎ払う
できるだけ花を減らす
無数の花? 無数の弾丸で迎え撃ちまSHOW!
しびれを切らして本体が攻撃をしかけてきたら、それは自分の身で受け止める
あるいは仲間が本体に攻撃されそうでも身を挺してかばう
そうやって作ったゼロ距離でUC発動
「この距離は『彼女』の距離ですノで」
「我々猟兵の縁。人々の縁。そして彼女の『呪い』とも呼ぶべき現世への怨みノ縁。
気をつけなさイ。アナタがソレらをなくそうとする時、また縁もアナタを打ち倒そうとすルのです」
連携等お任せ
花弁が四つの花を邪神が食べれば、四つの花が虚空に咲く。
邪神パトリックから排出される花たちとは違い、生まれた花々は明確な殺意を持って猟兵たちへと襲いかかってきた。
「花たちと縁を築いてらっしゃるのカ、利用しているのカ……ともあれ、その矛盾ハまさしく邪神なるものですねェ」
自身の持つ縁は手放さない邪神の姿を見てノイン・フィーバーはぽつりと呟いた。
「中途半端な攻撃は相手を回復させてしまうだけになりそうだ。――行こう!」
鳳凰院・ひりょの言葉に箒星・仄々が頷いた。
ざああっと擦れあい乱れ飛ぶ花たちをノインがアームドフォート・typeGで掃射していく。
耳を劈く銃音と無数の弾丸、なぎ払うような軌道が展開されれば道が開かれた。
開かれた場へ踏み込んだひりょが破魔刀を振るえば、その一閃の風に触れた花が消失していく。
敷かれた呪詛の戦場が薄らいだ。
(「お可哀そうに……元へ戻しては差し上げられませんが、せめて」)
花となったいつしかの信者たち。
花吹雪の薄まった場へ跳躍した仄々は、食べ続ける邪神、そして敵周囲の花たちに向かってカッツェンナーゲルを振るった。
『******』
邪神の手や間合いからすり抜けるように、剣風で吹き飛ばされていく花たちに邪神が何かを言う。
「骸の海へとお還りください。これが救いとなりますよう――」
両刃細身の魔法剣が炎を纏い花たちを焼き払っていく。
邪神が跳躍すれば花の軌道。
長い腕を花に変えた敵が呪詛の一撃を放てばその到達点にはノインがいた。
「!」
ノインの画面が砂嵐で覆われる。
ステップを踏むかのように旋回した邪神が両腕をぶん回してノインへと連撃を叩きこんだ。
「ノインさん!」
千鳥足のように後退へと追いこまれるノイン、そして一撃一撃に更に呪詛を叩きこむ邪神に向かってひりょが複数の精霊の護符を放った。
キン! と清廉な水の気配が行き渡り、神水を与えられたかのようなみずみずしさが満ちた戦場へ次なる符。
満ちた水へ投擲される火符は通れば蒸気が発生し、数多の符の掛け合いが一時的に霧を発生させた。
「今、お助けします!」
仄々が高く跳躍した。
宙中でくるんと回転し、応じて銀朱の刃が駆ける。
邪神の肩に着地し、首から胴に掛けた刺突攻撃。内部から邪神の身体を炎が焼いていく。
刃をひるがえして更なる刺突。
『***
……!!』
びくりと身を震わせた邪神にノインは組みついた。
「この距離は『彼女』の距離ですノで」
砂嵐となっていた画面がぱっと井戸の映像へと切り替わる。
井戸から這い出てくる『彼女』。
ぎしり、がくりと音の聞こえそうな動きで近付いてくる映像。
「我々猟兵の縁。人々の縁。そして彼女の『呪い』とも呼ぶべき現世への怨みノ縁」
画面片側を掌で覆い、『彼女』は振り被る動作。
「――気をつけなさイ。アナタがソレらをなくそうとする時、また縁もアナタを打ち倒そうとすルのです」
両刃の剣を邪神から抜いた仄々が間合いから抜けるべく跳ぶ。
同時に『彼女』による弾丸の如き拳の一撃がノインの画面から放たれた。ゼロ距離となる邪神の頭を砕き、殴り飛ばす。
『******!?』
邪神パトリックが紡ぐ声は音だ。けれども調子が彼の現状を伝える。
地面で擦った身をよろよろと起こす動作に、よりマントが彼を覆う。
その時、
「呼びかけに応じよ疑似精霊」
邪神の四方に配置された符が火光を放ちだした。ひりょの間合いへと導かれた邪神パトリック。
『!』
「かの者に大いなる鉄槌を――エレメンタル・バースト!」
ひりょが宣告した瞬間。大火球が邪神を包みこんだ。
轟く業火の音は、浄化の音。邪神の身を焼き、やぶれかぶれのマントにも新たな破れが生じ、縮小していく――。
(「様々な世界からこうして猟兵として集い、力合わせ戦う私たちの姿は、正に縁そのものではないでしょうか」)
壊される縁よりも、紡ぐ縁。
仄々の丸い瞳が炎を映しガラスのようにキラキラと輝く。
少しずつ、少しずつ重ねていく縁はどんな未来へ辿り着くのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
信者を花に変えた?
悪趣味だけどなっちゃったものは仕方ない
構わず散らすだけだネ
おや?敵さんはそんなに縁に敏感なのネ
じゃあキスとかしたら?
敵の動きを狂わせられるはず
僕らに攻撃が集中するかもしれないけど
予め対抗措置はしておこう
ソヨゴ
名前を呼んで
その頬にキス
いやさすがに人前で本気のキスとかできないってば!
自分からやっておいて顔真っ赤
UC発動
恥ずかしがりつつ敵からの防御はしっかり
よし相手の隙ができたよ
PhantomPainを構えてスコープを電脳ゴーグルにリンク
ソヨゴが切り込むのに合わせて援護射撃
ってソヨゴは無茶な動きをするから
大丈夫?
なめて治そうか?
城島・冬青
【橙翠】
この花…元は信者…?
くっ!こいつ…
縁切りが好みのようだけれど私たちの絆は絶対に断ち切……なんですか?アヤネさ…
!!んにょええぇ?!!
何するんですかー!
今敵が目の前なんですよ!?
昨今のUDCエージェントは
敵前でキスするんですかー!
アヤネさんの突飛な行動で余計な力が抜けたかも
よし!衝撃波で花を一瞬で吹き飛ばし消滅させる
ごめん、せめて苦しいと感じる間もなく終わせるから
パトリックのガラ空きになった身体に死角から斬撃を浴びせる
痛い?
でもまだこんなもんじゃないですよ!
負傷したらカウンターでUC発動
ありったけの力を込めて花ごと纏めてぶっ飛ばす
大丈夫ですアヤネさん
少し血を失いましたがまだまだいけます!
「この花が元は信者だっていうんですか……?」
圧迫感を放ち乱れ飛ぶ花に囲まれながら城島・冬青は息を呑む。
「くっ! こいつ……」
はぐれぬよう咄嗟にアヤネ・ラグランジェの手を握り、花吹雪の向こう――邪神・パトリックを睨んだ。
配偶者、親、子、過去といった時間的な概念まで縁切りを願い信じたものたち。遡ればその数は如何程か。
冬青は言う。
「縁切りが好みのようだけれど私たちの絆は絶対に断ち切――……?」
くいくいっと握っていた手を引っ張られた。犯人はアヤネしかいない。
「ソヨゴ」
「なんですか? アヤネさ」
呼ばれ、振り向き尋ねる声もぷっつりと途切れた。頬にチュと、やわらかな感触。犯人はやはりアヤネしかいない。
「!! んにょええぇ?!!」
思わず仰け反り後退しようとした冬青であったが、今度はアヤネがぎゅっと手を握りそれを阻止した。
「敵中だよ。危ないよ、ソヨゴ」
「アヤネさんがそれ言うんですか何するんですかー! 今敵が目の前なんですよ!? 昨今のUDCエージェントは敵前でキスするんですかー
!?!?」
ちょっとツッコミ気味で後半ツンギレデレな声となってしまう冬青。
「いやさすがに人前で本気のキスとかできないってば!」
自分からやっておきながらアヤネの顔は真っ赤で、冬青もまたつられてしまう。
アヤネとしては絆を見せつけることで敵の動きを狂わせられるはずという元々は冷静な判断のもとで行ったことだ。
読みは正しく、二人に向かって呪詛の力が強まった。
けれども咄嗟に向けた威圧攻撃は軌道がぶれ、穴もある。二重螺旋のウロボロスがアヤネの影から放たれて敵身へと巻き付いた。
「よし相手の隙ができたよ」
アヤネの突飛な行動で気が抜けてしまった冬青。その言葉に我に返り――良い意味で肩の力が抜けたようだ。
抜刀した花髑髏を振り向きざまに一閃。
その鋭さに呼応し、質量ある衝撃波が吹き飛ばす花を消滅させた。
十字を切るようにもう一度薙ぎ払えば覆われた視界は開かれて敵の呪わしき威圧も薄れる。
「アヤネさん!」
「うん」
射線がクリアになり、アヤネがPhantom Painを邪神に向かって撃つ。
テンポよく間断なく。敵の動きを牽制すれば、その射撃から逃れようと邪神が自らを花で覆った。むしり取って食べている。
花玉のようになった敵へ切り込むのは死角から迫っていた冬青だ。
踏み切り、跳躍がてらの斬撃。着地をすれば敵の意識が冬青に追いつく前にまた跳ぶ。
『***!』
ざん! と地面に縁を殺す呪詛まみれの花畑が展開された。
「う、わ」
花弁が鋭くなった花々が冬青の脚を傷付け、数多の切り傷。
「ソヨゴ、大丈夫? なめて治そうか?」
「いえ! 大丈夫ですアヤネさん」
鮮血を代償に、冬青の足元から蝙蝠の大群が飛び立った。真紅の翼が花を払い叩き、邪神の身を叩き切り刻む。
「少し血を失いましたがまだまだいけます!」
「それは残念ネ」
提案を真っ当に断られて肩を竦めるアヤネ。
スコープにリンクした電脳ゴーグルで敵を捉え、引鉄を弾いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩波・いちご
理緒さんと
絆や縁が弱点になる邪神…ですか
…私の中に封じられてるモノも、そうであったら楽なんですけどね
ひとまずその邪神の依代体としての力を解放、尻尾が六尾に増えて身体強化
その上で、邪神由来の生きた炎…【異界の深焔】を召喚します
理緒さんとの炎熱のコンビネーションで花を燃やし尽くしてあげましょう!
…っと、花が理緒さんを襲おうとしてます?
あぶないっと理緒さんの腰を抱くように抱えてその場を飛びのきつつ
…ビックリした理緒さんには、クスッと微笑みかけて
私達の絆を見せつけてあげようと思いまして、なんて軽く言っておきましょう
そのまま理緒さんを抱きかかえたまま、生きた炎を操って全てを燃やし尽くしてあげますよ!
菫宮・理緒
いちごさんと
絆や縁なら、ぜったいの自信があるよ。
だって今回は、いちごさんといっしょだからね。
たかが邪神に、わたしたちの絆が切れわけないもの!
あ、いちごさんの奥の人のことじゃないよ?
それに、植物を滅するってなったら、やっぱり熱とか火だよね。
それなら【Nimrud lens】で焼かせてもらおうかな。
いちごさんの炎とタイミングを合わせて、絆と炎と熱のトリプルアタックしちゃうよっ!
わたしたちの愛の連携で、骸の海に還れー!
って、いちごさん?
なんでわたしの腰に手をまわしてるのかな?
いえいえいえ、全然ダメじゃないけど、いちおう戦闘中……。
え? 絆を見せつけて相手の弱点をつく作戦?
な、ならしかたない、ねー♪
「絆や縁を断ち、それ故に弱点ともなる邪神……ですか――……私の中に封じられてるモノも、そうであったら楽なんですけどね」
どこか諦念めいた笑みを浮かべ、そう呟く彩波・いちご。目を閉じて三拍。
その瞳が再び露わになった時、盛る青がちらりと映った。
いちごという依代に邪神が顕現する。その手をぐっと握ったのは菫宮・理緒だった。
「絆や縁なら、ぜったいの自信があるよ。だって今回は、いちごさんといっしょだからね」
たかが邪神に、わたしたちの絆が切れわけないもの!
そうでしょう? そういちごを見上げて微笑む理緒。
離した手はLVTP-X3rd-vanの画面を滑り、次なる絆を結ぶために大気を屈折しレンズを生成した。先程の戦闘で構築したマップ――遥か上空に。より陽が近い場所で光を集めるレンズ。
「いこう、いちごさん」
「ええ、私と理緒さんとの炎熱のコンビネーションで花を燃やし尽くしてあげましょう!」
異界の門が開き、凶つ星が耀いた。
静かなる海の波動が途端に鋭きものとなり、いちごの身の内を喰わんと暴れ回る――その力を集束させていく。
「ふんぐるいふんぐるい……遠き星海にて燃え盛る神の炎よ」
異界の深焔、神なる炎が現世へと召喚され龍の如きうねりで花群を焼き払っていく。
理緒のNimrud lensが戦場に熱をもたらした。空高く降り注ぐ熱線が花を焼く。
「わたしたちの愛の連携で、骸の海に還れー!」
灼熱の地と化した場で次々と花が消失し、邪神の体を焼いた。
ごうごうと音を放ち駆ける炎。
逃げるようにして花が邪神の体内へと入っていけば、敵身体の周囲に氷花が咲き始めた。
鋭き氷刃となった花弁が吹き荒ぶ。
「あぶないっ」
理緒の腰を抱くように抱えてその場を飛びのくいちご。六尾の尻尾がバランス調整に動く。
「わあっ、え、どうしたの、いちごさん」
一瞬身を竦ませる理緒だったが、いちごの腕の中だと悟って直ぐに力を抜いた。でもびっくりした表情はそのままだ。
猫のような挙動をみせる理緒に、いちごはクスッと微笑みかける。
「私たちの絆を見せつけてあげようと思いまして」
そう軽く言って脚をすくえばお姫様抱っこに。少し慌てたように理緒が彼の首に腕を回した。
「へ? え? 絆を見せつけて相手の弱点をつく……作戦? な、ならしかたない、ねー♪」
どぎまぎとして、ちょっと弾みをつけて「うんっ」と頷く理緒の表情がころころと変わって可愛らしい。
「――早く片付けてしまいましょう」
理緒を抱きかかえたまま、いちごは生きた炎による炎舞を繰り広げて花も邪神も燃やしていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
加賀・三槌
「この花は……攻撃ですかね?
まあいずれ碌なものではないでしょうし、あまり広範囲に撒き散らされると面倒ですねぇ」
UCを使用、本体の邪神もろとも花吹雪を鏡の迷路の中に封じ込めにかかります。
その後唯一の入り口から【レーザー射撃】を【乱れ撃ち】、鏡に反射させて花ごと焼却してみましょうか。
……ああそうそう、この鏡の迷宮は鏡像の代わりに自らの過去の【傷口をえぐる】ような【精神攻撃】じみた虚像が映り込むことがありましてね。もしもアレに自我が宿っているのならば、あるいは邪神に縋ってまで切りたかった『縁』を思い出させることもあるやもしれませんね。
WIZ判定、アドリブ改変連携大歓迎。
クララ・リンドヴァル
あれが元信者ですか……。
綺麗な花なのに、邪神と並ぶとなかなかに禍々しい光景です……ね。
教科書通りなら炎魔術なのでしょうけど、
花が意識を持っているとわかると、使い辛いですよね。
……風で行きます。
本体への狙撃を行います。
最後衛から少し外れた、中衛とかの位置に居ましょう。
少しなら呪詛を耐性で受けられるので、その分だけ時間稼ぎが出来ます。
UCの魔法の矢を使って、本体である邪神を狙撃してダメージを与えます。
花の攻勢が激しくなり始めたら、味方の支援を行います。
魔法の矢に風属性を付与し、花たちを吹き散らします。
その後は無属性と風属性を交互に撃ち、相手を翻弄しながら押していきましょう。
※アドリブ連携OK
「この花は……邪神の攻撃ですかね?」
邪神・パトリックから放たれた花たちへと加賀・三槌が目を眇め呟くと、クララ・リンドヴァルが「恐らく」と応える。
「呪詛の力が宿っているようです……元信者というのもあるのでしょうが――」
ぼんやりしていると徐々に蝕んでくるそれの力。
異形の群れほど直接的ではないが、長期的に浴びればどんな作用を及ぼすか。
見た目は綺麗な花なのに、中心に邪神を据えただけで禍々しく思えてくる花たちの様子をクララは観察する。
三槌は「まあ」と言葉を続けた。
「いずれ碌なものではないでしょうし、あまり広範囲に撒き散らされると面倒ですねぇ――行きましょうか」
倒すべき邪神に付随するもの。
古来から縁を切る願いの術は数多にあった。
蓄積した感情が信者と成り果てたのかどうかは分からない。
邪神と花の呪詛の連撃が渦巻く戦場はじっとしていたら捕らわれる。
邪神に近付くほどに呪詛は強く、ある程度まとまった動きに防衛と攻撃の魔術が働いているようなものだと判断したクララが詠唱無く風の矢を放った。
吹き荒ぶ花たちのなか風属性の魔法矢がゆけば、花たちは軌道を乱し矢の余波に煽られる。
「そこでしばらく遊んでいなさい」
レーザーライフルを手にした三槌の言葉と共に鏡の迷宮が構築され、散らされた花たちを捕らえていく。
彼だけが知っている出口からレーザーを照射すれば、鏡の反射によって射線が複雑化された複数のレーザーが花たちを焼いていく。
花群が散り散りになれば形成していた呪詛の陣が破壊され、邪神がその身に花を纏う。
「縁を殺すものでありながら縁に縋る矛盾は、まさしく『邪神』ですねぇ」
揶揄めいた三槌の声。
その縁を払う――否、解放へ導くように今度は無属性の魔法の矢をクララは放つ。
邪神を穿って敵を覆っていた花が散った瞬間、続く風の矢が花たちをさらった。
花たちが吹き飛び、邪神だけが晒されれば三槌の鏡の迷宮が敵を封じ込める。
『******!』
邪神の言葉なき声。
「…………ああそうそう、この鏡の迷宮は鏡像の代わりに自らの過去の傷口を抉るような、精神攻撃じみた虚像が映り込むことがありましてね」
鏡に映る邪神と花。そして亡きものにしたはずの『縁』が朧となり映っていた。
凄惨な過去、配偶者、親、上司。殺し、殺されてきた縁は人間だけでなく、時間的な概念も。
けれども『縁繋がっていた過去』という確かな時間が骸の海には在る。
邪神の足元から葬られた縁溜まりが沸き起こり、敵を中心に鏡の迷宮が黒く染まっていく。
「……花が……」
クララが呟いた。
黒き花と変化した信者――よく見れば黒い靄に覆われている。破鏡に至った縁はそのすべてに憎悪が裏打ちされているのだろう。
「……恐ろしいですねぇ」
繋がり、切った過去に痛みを感じた花たちが消失していく。声があれば絶望を叫んでいた。
邪神は眼窩から小さな花をぽろぽろと零す。
その姿は泣いているようでもあって――それが嘆きなのか安堵なのか、猟兵たちには判断がつかなかった。
信者という縁は絶え、抜けられぬ縁溜まりが焔と化す。
鎮魂の調べが奏でられるなか、数多の想いが骸の海へと引きずり込むように――邪神は倒され、還っていくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴