4
苦痛に塗れよ、血の杯の為

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




●暴力はどんな味
 複数の男女が、一人の屈強な男を取り囲んで暴行している。暴力を振るう各々の手には鈍器。既に体液がまぶされ、先端に黒い染みが滲んでいる。
 襲われる男には抵抗するすべがない。もう両腕の関節がおかしな方向に曲がってしまっているし、片目は潰されてしまっている。それでもなお、暴行が止むことはない。淡々と暴力は実行され、男だったものを血の詰まった袋に変えていく。
 ようやく鈍器を振るうのを止めた女が囁いた。
「美味しそうかな?」
 裏返った声を張り上げて、隣の男が応じる。
「美味しいだろうよ! この前よりずっと出来がいいに決まってる!」
「……でも、これじゃあきっと量が足りないよ」
 女は手にしていた鈍器を、今しがた喋っていた男の眉間に叩き込んだ。

●グリモアベースにて
「モルシージャという料理があるそうですね。ぼくは食べたこと無いんですが」
 集まった猟兵たちへ、おもむろに或鴉が喋りかける。
「失敬。世間話ではないのですよ。どうやらダークセイヴァーのある村が、随分美食家のヴァンパイアの被害に遭ってるらしくて。今回の依頼はそいつの討伐です」
 オブリビオンなのに美食家とか、人生楽しみすぎですよね。僻むような言葉を挟んで、或鴉は続ける。
「ヴァンパイアなのでもちろん食事は血液です。かなりえげつないやり方で巻き上げてるようですね。敵の潜伏地点までは判らなかったので、現地で調べてきてください。村は結構殺気立ってるはずなんで、そこのところ要注意です。下手に刺激すれば攻撃されることもあるかもしれません」
 予知では村人同士が暴力を振るい合っていた、と或鴉は続ける。ダークセイヴァーでは狭いコミュニティ内での諍いなど日常茶飯事だが、それでも度を越した風に見えた、とも。
「ぼくは予知見て食欲なくなっちゃったんで、みなさんも何か軽く食べてから行った方がいいかもしれませんね。それでは、お気をつけて」
 青白い顔を心配からか僅かに歪ませて、或鴉は猟兵を送り出した。


墓異鈍
 はじめまして、墓異鈍(はかい・にぶる)と申します。初めてのシナリオですが頑張って書きますので、何卒よろしくお願い致します。
 当シナリオですが、物理的に痛い方向の暴力描写がそれなりに入るかと思います。ご留意ください。与ダメージ被ダメージのどちらでも、痛覚を刺激するプレイングをお待ちしております。
20




第1章 冒険 『この血なんの血気になる血』

POW   :    周辺をくまなく探す

SPD   :    村人にそれとなく聞いてみる

WIZ   :    村の中に不審な場所がないか確認

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ハロ・シエラ
確かにダークセイヴァーでは日常茶飯事です。
人間同士の争いも、仲間を売る事も。
悲しいし、愚かしいって分かってます。
だけど吸血鬼が、オブリビオンがいなければ……
とにかく、今は少しでもそんな悲しみを減らす為に行動しなければ。
今回は村の中を探して見ます。
私は子供ですし、少しは村人の目も油断させられるでしょう。
返り血の付いた人や、新しい血の形跡がある武器を見つければ何かに繋がるかも。
見咎められて怪しまれれば、敢えて捕まって見てもいい。
もしかしたら何らかの方法で血を取られるかも知れませんが、気をしっかり持って情報を集めてみます!
命が危うくなったら【怪力】【誘惑】を駆使して逃げますこど!



 この村には光が足りない。澱んだ村人たちのまなこと同じように、重ったるい気配が垂れこめている。
 心が締め付けられるような感覚に襲われ、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は思わずヘリオトロープの首飾りを握った。勇気が胸に湧いてくる。今は少しでもこの澱みを、悲しみを、減らすために行動しなければ。

 小柄な体で物陰に隠れつつ探索するハロは、しかし、どことなく刺々しい雰囲気の村人に呼び止められる。
「君、どこから来たんだ? 見ない顔だな」
 頭上で喋る彼の袖口が赤黒く汚れているのをハロは見逃さなかった。
「あ、あの。私、人探しをしていて……私と同じくらいの女の子なのですが」
 上目遣いに村人を見上げ、不安げな表情をつくってみせる。全てハッタリだ。村人は一瞬品定めするようにハロを睨むと、有無を言わさず腕をつかんだ。
「心当たりがある。案内しよう」
 大股に歩く彼は、村のはずれへ歩みを進める。間違いない、この人は暴力を振るうつもりだ。早鐘を打つ心臓の痛みにハロは耐えた。村人は木立の陰で足を止めると、掴んでいた腕を放す。
「案内はするが……先ず君をヴァンパイア様の餌として調理しないとなァッ!」
 村人が腕を大きく振り上げた――今だ! ハロの肘が、村人の無防備な鳩尾に入った。蹲ったところを関節技で押さえつける。只者ではない怪力に、完全に村人は怖気づいたようだった。
「私はヴァンパイアを倒しに来ました。あなたをこれ以上傷つけるつもりはありません。……居場所を案内してくれれば」
 あうあうと言葉にならない泣き言を呻く村人は、どうにか首を縦に振った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィリヤ・カヤラ
【WIZ】
苦痛とか嫌って気持ちが入ると
血が不味くなるから私は苦手なんだけど。
…美食家になると美味しいのかな?

探索苦手だけど頑張るよ!
【目立たない】を使って村の人を出来るだけ刺激しないように動くね。
服装が目立ちそうならマントで隠し気味に行くね。

【第六感】と【情報収集】を使いながら気になる所を探索するね。
村人が自分からヴァンパイアの所に行くんじゃなくて
離れている所まで運んでいるなら血の跡と、
荷車や馬車の轍があれば手掛かりになるかな。

村の中である程度作業してるなら、
血の跡が多くて引き摺った跡が
深そうな所を探してみるね。
手掛かりがあったら【追跡】で追ってみるよ。

アドリブと連携歓迎


アルファ・ユニ
物騒な事件だなぁ…カップルで犯行?互いの血でも吸っていちゃいちゃしててよ迷惑だな。

今までに被害が出た場所に行き、残っている血痕に触れてその残留思念…血の記憶を読ませてもらうよ。どんな人がどんな風にやられて、犯人は何処からきて何処にいったのか。血痕からだけじゃ情報が足りなかったらあんまり使いたくないけどサトリの眼…右眼も使ってその周囲の残留思念も読むよ。
他の猟兵達の情報とも照らし合わせて、奴等の後を追おう。


鹿忍・由紀
【WIZ】
曰く付きの場所なら無意識に避けがちにならないかな。
目立たないように村人達の動向を観察しながら不審そうな場所を探す。
わかりやすく血痕とか残ってくれてたら楽なんだけど。
複数箇所に血痕があればなんとなく敵の動向が見えてきそう。

すぐに本拠地がわかるのが一番良いんだろうけど、あちらもそんなに馬鹿じゃないよね。
むやみやたらに歩き回って目立ってもいけないみたいだし、観察からの情報収集と、気付いたことは仲間への共有をするよ。

それにしてもなんでわざわざ手のかかる方法で人を殺すのかな。
面倒だろうし、悪趣味。



 空気の淀んだ村に蠢く、青白い顔の人々。
 ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)の目にはとても美味しそうな血が通っているようには見えなかった。仕立ての良い軍服を外套で隠しつつ、俯き加減に周囲に目を凝らす。村人たちはヴィリヤに向ける気力も無いようで、特段咎めだてられることもなく村内を探索することができた。
「この村、変。血だらけだよ」
 ――村の至るところに、黒ずんだ痕跡がある。古いもの、新しいもの、目立つ場所にも目立たない場所にも。
 同じく気配を消して村人たちを観察していた鹿忍・由紀(余計者・f05760)は気だるげに眉を顰め同意する。
「ところかまわずって感じだね」
 痕跡には規則性が見られない。血痕から察せられる殺傷の規模もまちまちだ。計画的に食料を調達しているわけでは無いのかもしれない。人を殺めるモノたちの具体的な輪郭が、どうにも掴めないのだ。それにしても、と疑問に思うのは。
「なんでわざわざ手のかかる方法で人を殺すのかな。 面倒だろうし、悪趣味」
 悪趣味、という言葉にかぶせてヴィリヤが頷いた。できれば直接的な証拠を見つけて、予知に聞きし吸血鬼の所在を早く見つけたいものである。血腥いこの場所でいつまでも息を潜めて調べものをするなどというのは、なんとも気の滅入るシチュエーションだ。ヴィリヤはダンピールとしての殆ど第六感と言っても良い勘を働かせ、より濃い血の匂いを辿っていく。

 彼女が足を止めた場所は、村はずれの木立の奥だった。少しばかり開けた地面は、どす黒い液体でまだかすかにぬかるんでいる。すん、と嗅ぐと、どこか苦い。明確な暴力の証である。
 二人とは別行動で探索を試みていたアルファ・ユニ(愛染のレコーディングエンジニア・f07535)もまた、血の痕跡をたよりに、一足先に其処へ辿りついていた。制服が汚れないように気を付けながら、濡れた地面に指先を触れさせている。その表情は酷く強張っていた。今、ユニの意識には、レコードをかけるように過去の記録が再生されているのだ。
 (身体の内側が痙攣している。四方八方から、農具が、鉄棒が、打ち据えられて、筋肉だけが勝手に抵抗の意を示す。無理な方向に折り曲げられた両腕が痛くて、気力まで圧し折られたようだった。苦しい。痛めつけられていること、だけではない。自分の番が来てしまった。これまで己が振るってきた暴力が、自分に向けられた途端にこんなに恨めしい。憎い。苦痛で胸が焼けて――もう、息ができない。
 "美味しそうかな?"
 顔見知りの女の声が、最期に)
「聞こえた。ここで死んだヒトの、記憶。それと……」
 これだけでは未だ足りない。ユニは殺した側の情報を得るため、ヴィリヤと由紀から顔を背けて、残留思念を読み取る「サトリの眼」を用い周辺を走査する。
「……今だけ、聴かせて」
 ――男を一人殺した後、さらに別の男の眉間をかち割った女。彼女の意識にあったものは吸血鬼に食事を献上するという義務感、そして、激しい愉悦。殺された二人の男を除いて、その場にいた全ての者が暴力を振るうことに悦びを感じていた――。
 薄々察してはいたが、特定犯による殺傷よりもなお性質が悪い。身を蝕む不愉快さに、パーカーの袖を指先できゅっと握った。ユニは髪を整えて右眼を隠し、ヴィリヤと由紀へ向き直る。
「……殺されたのも、殺したのも、村人同士。愉しんでる。ヴァンパイアの餌にするとかしないとか、きっと、関係なく」
「あいつら自身が望んで殺ってる、ってわけだ」
 由紀が淡々と呟く。僅かな不快感を滲ませつつも、声音は冷たく乾いていた。
「早くヴァンパイアを倒さなくっちゃ。そうすれば少なくとも、"ヴァンパイアに献上するために"殺すって口実は無くなるよね」
 努めて明るく口にするヴィリヤに、記憶酔い気味のユニも表情を若干柔らかくして頷く。

 殺害の現場から引きずっていったような血の痕は、木立の隙間を縫うような獣道に続いている。周囲を警戒しつつ進んでいくと、一軒の掘っ立て小屋に行き当たった。人の気配はない。踏み入り、中を検める。小屋には人ひとりは運べそうな手押し車や、錆びついた金具が置かれていた。手押し車の底にも乾いた血がこびりついており、つい最近使用したことがうかがえる。目立つ赤で印が刻まれた地図が数枚、棚の上に散らかっていた。これはまず間違いなく、吸血鬼の所在を記したものだろう。三人はそれぞれ地図を手に、小屋を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ハルベル・ロウ
相変わらず陰気で血生臭い世界だな。
美食家なのは結構だが、限度を知らないのは考え物だ。
【WIZ】
【視力】には自信がある。村の人間達の様子、建物に違和感や怪しい箇所はないか警戒しながら見て回って、一番殺気立ってる奴に【第六感】であたりをつけたらユーベルコード【影狼】使用。追跡する。
俺は引き続き村の探索だ。……村の人間に絡まれるようなら【言いくるめ】で対応。手を出されたら牙での【吸血】を食らわせてやる。血の気が多いなら、多少減っても問題ないだろ?



 ハルベル・ロウ(スロウホワイト・f13579)は常人に非ざる眼光で、村人たちを観察していた。彼ら彼女らは一様にやつれていたが、それだけではない。攻撃的な衝動を抱えていることが、所作や表情の端々から見て取れる。
「美しき我が輩よ」
 ハルベルの呼びかけに応じ、足元から影のオオカミが姿を現した。観察した中でもひときわ殺気の強い女へと、影狼を差し向ける。強い感情を隠しもせずにいる人間だ。追跡していれば、尻尾を見せるに相違ない。

「あのさぁ。さっきからあんた、ジロジロ俺らのこと見てんだろ。喧嘩売ってんのか?」
 探索を続けていると、物陰で若い男が声をかけてきた。態度こそ大きいが、切羽詰まるような暴力性はさほど感じられない。単に血の気が多いだけの愚か者なのだろう。
「さあな。喧嘩は売っていないが、お前らから買いたい情報はある」
「ナメてんのか、野郎!」
 恫喝とともに振り上げられた拳を見切り、逆に首筋を右手に捉えて体ごと壁に叩きつける。衝撃で脱力した肩口に、ハルベルの牙が突き立てられた。舌に合わない血の味が広がる。苦さと辛さを煮詰めたような、不快感のある風味だ。吸血された男は目を見開き、先程の倍はある力でハルベルを突き放す。
「あんた……ヴァンパイア様の……」
「そう。そいつを探し――」
言い終わる前に、脱兎のごとく男は逃げ出す。結局、件の吸血鬼が美食家というより悪食家という情報しか得られなかった。

 その時だった。影狼を通じて、鈍い打音や血の臭いがハルベルの意識に流れ込んでくる。共有する視覚で影狼の向こう側を覗くと、先程の女が血塗れの少女を担いでどこかへ向かう様子が見えた。足取りは確りとしていて早い。この女を追い続ければ、吸血鬼の居住地とやらも掴めそうだ。ハルベルは物憂く息を吐き、影狼の跡を辿り始める。

成功 🔵​🔵​🔴​

伊万里・紗雪
「いやー、美食家ヴァンパイアかぁ。個人的に”食”を語りたいけど」
盛り付けの美しさは食に入るのか否か、食とは何か…とかな

度を越したコミュニティの諍い…なんや、村人の選択で生贄を差し出すとか?
推測はええとして、不審な場所を確認
血痕や人為的に傷付けられた痕跡等、やね
…生贄やったらヴァンパイアの所に連れていかれるやろーけど、不審者ってだけやったら殺しにかかってきそう
村人に接触せず、耳をそばだて不審な場所・周辺調査を主
うちはそんな面倒な事したないし、秋穂に変更

「(血…血の臭いの強弱で、検討はつくかも)」
あとは……音、すると思う
「(お花も摘んでいこう。……きっと、今までにも誰かが亡くなったのだろうから)」



「いやー、美食家ヴァンパイアかぁ。個人的に”食”を語りたいけど」
 独りごちながら、伊万里・紗雪(覚醒せし腐女子・f10367)は村の周囲を探索する。吸血鬼とコンタクトを取っているならば、村内でなくとも痕跡が残っている確率は高い。それに、攻撃的な村人と諍いになるのは願い下げだった。遠目に見ても、陰気な村だ。住まう者たちも気配が澱んでいる。アレらを食料としている吸血鬼にとっての美食とは何なのか、紗雪の脳裏に疑問が過った。もやもやと考えながら、地道に調査を続ける。どこかに血痕は無いか、不自然に抉れた地形は無いか、轍の跡は、誰かの悲鳴は……。
「……ちょっとコレ、飽きるな……」
 思わず口に出してしまう。延々と、延々と食材の下処理をするような作業はあまり性に合わないのだ。内気だが目端の利く秋穂に人格を交代する。

 まず注意を向けるべきは血の臭いだ、と秋穂は判断した。料理人という職業柄、食材の鮮度に直結する血の臭いには敏感である。新しい血のにおいがあるなら、そこから吸血鬼の手がかりを得ることが出来るだろう。
 その前に、と彼女は立ち止まった。既にここでは誰かが亡くなっているのだ。せめて花だけでも手向けたいと、草むらにかがみこみ――絶句した。小さいながらも可憐な草木に半ば埋もれていたのは、人間の腕。既に干からびているが、剥がされた爪や骨の隙間を抉るように穿たれた穴から、手酷い暴行を受けたことが察せられる。これが食事に拘る者のやることなのかと、胸を痛める間すら無く。
「――!」
 少女の叫び声、そして真新しい腥い臭い。そう遠くはないところで、誰かが誰かに傷つけられている。反射的に秋穂は駆けだした。吸血鬼の所在は、きっとこの音と臭いの先にある。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェイド・レーム
【WIZ】
おーおー、俺様がブタ箱にぶちこまれている間に随分とこの世界の村人どもも血気盛んになったもんだ。その元気を杭に変えてヴァンパイアのクソどもに向けれんもんかね、まったく…。

へ、呪具なり魔法なりで洗脳でもされてんのかね。こんなエネルギッシュなバカども相手に聞き込みも面倒くせえ、俺様は魔術師の観点から村を調べるとするぜ。マインドコントロールに使う触媒でも見つかれば話は早いんだがな、血生臭え場所でも探して回るとするかね。使用技能は【第六感】だ!

俺としてはヴァンパイアに味方しているような村は滅んじまっても構わねえんだが…まぁ報酬ぶんは働いてやるさ、美味い飯作って待ってろよグリモア猟兵!



 シェイド・レーム(ナイトハンター・f13612)は盛大にため息をついた。
 軽く探知した限り、いかなる魔術の気配もない。触媒になるような呪具が設置できそうな場所も探したが空振り。かくなる上は第六感、己の研ぎ澄まされた勘だけが頼りだ。
 足の向くままにふらりと立ち入った裏路地は――はたして、複数人が一人を囲んで暴行に及んでいる、まさにその現場だった。
「何してんだ、お前ら」
「オモチャで遊んでまーす! あんたもやるでしょ?」
 箍が外れたように笑いながら、一人の女がシェイドに角材を投げて寄越す。もちろんそれが拾われることはない。
「本ッ当に……滅んじまっても構わねえ村、みてえだな」
 吐き捨てたシェイドの言葉もまた、彼女らの耳には届かないようだった。ダークセイヴァー、抑圧されつづける弱者たちの世界。自分より弱いモノをつくりだして甚振ることはきっと、強烈な快楽を齎すに違いない。あるいは、吸血鬼の支配が無ければ、ただ貧しいだけの村人でいられたのかもしれない。が。
「自分から人間やめてどうすんだ。ヴァンパイア以下だな、お前らは」
 有無を言わせぬシェイドの気迫に、けらけらと笑っていた女も真顔になった。
「人間やめてるのはあんたなんじゃないの。何が悪いのかわかんないや」
「は、勝手に言ってろ。俺はヴァンパイアを滅ぼすために来た。今ここで自分が本当に正しいって信じてることが出来るなら、俺はお前らに手を出さない」
 殴打の濁音が止んで、場に沈黙が広がる。暴行を受けていた村人が、震える手で北を指さした。村のはずれに広がる森の方角だ。吸血鬼の居場所は其処だ、と無言で告げているのだろう。
 シェイドは踵を返し、示された方角へ歩む。裏路地からは、もう何も聞こえない。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『風雲大吸血鬼城』

POW   :    止める!壊す!耐える!

SPD   :    きっちり正攻法で上を行く。

WIZ   :    仕掛けの裏を突いて無効化する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが各々の手段を用いて辿り着いた吸血鬼の所在地は、何の変哲も無いように見える一本の古木だった。
 吸血鬼に食料を献上しに来たと思しき村人が木の根元に刺さっていた剣を引き抜くと、古木に寄生するように建てられた奇妙な城が姿を現す。外壁にはいたるところに鉄の棘や、毒々しい液に塗れた器具などが設置されており、外から登ることは不可能だろう。巨大な鉄杭に、見せしめのように串刺しにされたままの黒い肉塊が、沈黙をもってそれを語る。
 村人は黒々と穴をあけた入口に食料――すなわち人間を放り込むと、最初に刺さっていたのと同じように剣を元に戻した。城は霧散し、村人もまた獣道へと姿をくらませる。
 猟兵は思案する。外壁に据え付けられた異常なまでの器具から察するに、城内も罠が張り巡らされている可能性が高い。罠を受け止めて進むか、あるいは躱すか、罠自体を解除しながら進むか。
 いずれにせよ失敗すれば、待ち受けるものは……。
シェイド・レーム
チッ…どうしたもんかね。ここから先は俺様もアフターサービスだな…胸糞わりぃ、八つ当たりにヴァンパイア領主サマの首でも引きちぎって、あいつらに見せつけてやるかね。クックック…肥え太った美食家ヴァンパイアサマとやらの魔力、そっくり俺様が頂くぜ!ヒャーッハッハッハ!!

【絶望の福音】を使用してトラップを避ける。
相変わらずしょうもないモンで引きこもってんだな、ヴァンパイアどもは。こんなオモチャじゃ猟兵は止まりやしねえぞ、【オーラ防御】も展開だ!



 吸血鬼の首を取って見せつけてやれば、多少はあの胸糞悪い村人どもの性根もマシになるだろうか? 舌打ちしつつ、シェイド・レーム(ナイトハンター・f13612)は気を取り直して眼前に広がる迷宮へ向き直る。
 陰湿な罠の数々が透けて見えるようだ。しかしそれもシェイドの前ではオモチャ同然。感覚を研ぎ澄ますことによる状況予測、「絶望の福音」の精度はほぼ未来視能力に等しい。毒矢を躱し、虎挟みを一足飛びに跨ぐ。

 刹那、背筋に冷気が走る。
 脳裏に描き出された未来の光景には、かつて自分に死霊術を授けた神父の姿。手にするは黒い気配を纏った長剣。神父はシェイドの心臓へ向けて、躊躇う事なく剣を突き出し――
 我に返ったシェイドの前に、神父――では、断じてありえない!――を模した、からくり人形が姿を現した。呪詛の込められた切っ先の軌道は既に予測済みだ。剣は腕を掠めたが、内側から漲るオーラで守られた体に呪詛は通らない。人形の懐に体を滑り込ませ、核となっている呪具に短剣の柄を当てる。呪いには呪いだ。ありったけの呪詛を高速で叩き込み核を破壊すると、人形は木と鉄の塊に戻った。精神的な揺さぶりをかける罠なのだろう、一瞬触れた呪詛の魔力は加虐嗜癖と退廃嗜好に濁り切っていた。数えきれないほどの人間の苦痛を糧としたことがはっきりと解る。死してなお、苦痛の再生産に使われるのならば、その魔力は奪ってやるのが善き行いというものだろう。
「クックック……肥え太った美食家ヴァンパイアサマとやらの魔力、そっくり俺様が頂くぜ! ヒャーッハッハッハ!!」
 音に反応する罠が起動するのも構わず吼える。その叫びは、城の奥深くに身を隠す吸血鬼の鼓膜をも揺らした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハルベル・ロウ
いかにも吸血鬼の城、って見た目だな。
外に兵隊を配置した方が良いんじゃねえかと思うが、まあいい。

【WIZ】
【無言の軍勢】に先行させる。俺の盾になって道を拓け。
猟兵なら多少怪我した所でどうとでもなるだろうが、外の器具みたいに妙な液が仕込んであるとも限らないからな、【視力】と【第六感】で罠を感知手当り次第壊す。
呼び出した死者たちは一撃食らえば消えるがその分また呼び出すだけだ。
俺に飛んでくる仕掛けは【見切り】で躱すか、近くにいる死者を盾にして防御。死霊術ってのは便利なモンだ、やってることは俺も吸血鬼も大差ねえな。

【アドリブ歓迎】



「俺の剣となり盾となれ」
 ハルベル・ロウ(スロウホワイト・f13579)が口にすると、無言の軍勢――物言わぬ死者の大群が現れる。物理的な、霊的な盾として先行するそれらがあれば、大抵の罠は無力化できることだろう。それでもハルベルは警戒を怠らない。暗闇に目を走らせ、襲い来る毒蛇や鼠だのを確実に回避する。
 静かに進軍するハルベルは、前方を進む軍勢にふと違和感を覚える。軍勢のうちの一体が、先程からわずかに"ズレ"ているのだ。動きが奇妙に有機的すぎる。「それ」は薄闇の中で、ゆっくりと振りむき……死霊の隙間を縫って、ハルベル目掛けて襲い掛かってきた。ほとんど脊髄反射で、すぐ傍らにいた死者を盾にする。「それ」は死者に武器を突き立てて、なおもハルベル自身に迫る。血腥い臭いが鼻をつき、気づいた。ズレの正体は呼吸だ。死霊は呼吸で体を揺らすことは無い。死霊のように見えるが「それ」はまだ息をしている――生きている人間に他ならない!
 一瞬逡巡した。「それ」は呪術的な処置を受けた村人だろう。殺傷するより解呪した方が安全か? 思考する合間に、「それ」が不規則に痙攣しはじめる。もう一体の死者を盾にしたのと、「それ」の頭部が破裂したのは同時だった。巨大な蟲が胴を割いて這い出る。蟲はハルベルを複眼に映し、鋸に似た大顎をぎちりと鳴らした。
 今度は判断に迷うことは無い。抜き放ったグロリア――一族の紋章が美しく刻まれた小型拳銃――の照準を蟲の頭部と胸部の接続部に合わせ、銃弾を撃ち込む。着弾の衝撃で仰け反った隙にバックステップで距離を取り、死霊の群れを蟲へ差し向けて粉々に切断した。
 生者を死者に偽装していたのは、おそらく死霊術の一種だろう。吸血鬼とハルベルとで、やっていることに大差は無いのかもしれない。
「趣味は合わないようだがな……」
 醜い色彩の残骸を見下ろし、苦々しくハルベルは呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハロ・シエラ
なるほど、あれがそうですか。
先ほどの方には悪い事をしましたが……借りは吸血鬼を倒す事で返しましょう。

城の中は恐らく罠が満ちている事でしょう、私の村でもそうでした。
人を無理に招いては罠で殺し……いえ、それは今はいいでしょう。
私は小ささを生かして罠をかわす方向で行きます。
とにかく素早く動き、足を止めず、罠を【見切り】ユーベルコードを駆使して駆け抜けましょう!
少しは【毒耐性】もありますし。
真正面から罠を突破されれば吸血鬼も少しは悔しがるに違いありません。
吊り天井だろうが、矢だろうが、炎だろうが、はたまた他の何かであろうが……
傷ついてでも、どんなに痛みに晒されようとも突破して見せます!



 吸血鬼の城。窒息しそうな闇の密度が、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)に過去を想起させる。自分は生き残った。幾度となく向けられてきた悪意を潜り抜けてきた。今度だって、真正面から突破してみせる。吸血鬼を倒すことこそが、苦しめられてきた人々へのせめてもの手向けだ。決意を噛みしめ、ハロは駆けだした。
 墓所のように静かな城内ではわずかな音や振動もよく響く。小柄なハロとはいえ、派手に動けば簡単に罠のセンサに検知された。しかし、音や振動が響くのは罠の方とて同じだ。仕掛けの駆動する動作音や摩擦の震えを五感で捉え、的確に罠を見切っていく。猟兵として強化された知覚能力は既に、未来予測の域に到達している。広範囲を無差別に焼く火炎放射器ですら、ハロの髪の毛をわずか焦がすにとどめた。とにかく、足を止めるわけにはいかない。一度捉えられれば連続で攻撃を繋げられるのはわかりきっているのだから。
 彼女の動きは十二分に素早く。――だから、気付くのが遅れた。
 鼻の奥がじわりと痛い。避けるのに夢中で、変な場所を打ったのだろうか。口元を手の甲でぬぐうと、真っ赤な液体が不着する。それが血液であることを認識するのに少しばかり時間を要したのは、全くダメージを受けた心当たりがなかったからだ。喉に何か詰まったような感触を覚えて咳き込めば、今度は血の塊が吐き出される。
 (見える罠はブラフ、本命は呼吸器に作用する毒――?!)気付いたハロは姿勢を低くし、冷静に呼吸を整える。息が上がれば、それだけ毒を体に取り込むことになってしまう。毒への耐性はそれなりにある。多様な罠を用いる城主の趣味から考えて、毒霧もフロア全体に散布されてはいないはずだ。ハロはそう自分を鼓舞しながら、確実に歩みを進めていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィリヤ・カヤラ
【WIZ】かなぁ…。

技能:第六感
UC:幻影、輝光

うーん、わざと罠起動させて無効化するのは有りなのかな?
それならユーベルコードぶつけて
ドーン!って…思ったけど止めた方が良いかな?

【幻影】を使って分身に先行してもらいながら【第六感】を頼りに罠を見つけるね。
罠解除って勘でいけるのかな?
出来そうな人がいればお任せして、
いなかったら頑張ろう…【幻影】が。

分身でも罠に掛かったら
自分が掛かってる気分になりそう…
ここの罠って痛いの多そうだよね。

もし自分や誰かが怪我したら【輝光】で回復するね。

アドリブ、連携歓迎。



 罠があることがわかっているなら、あえて起動を促せばいい。見えていないがゆえに罠は脅威として機能するのだから。
 ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)がユーベルコード、幻影を発動すれば、姿形がそっくり同じもうひとりの自分が現れる。
「それじゃあ、よろしくね」
 声をかけると幻影のヴィリヤは頷く。先行する幻影に追従しながら、ヴィリヤは幻影に反応して起動する罠を直感的に発見し、破壊していった。とはいえ、全てを見つけられたわけではない。幻影のヴィリヤへ、鞭のように叩きつけられる鉄線が、皮膚を焼けただれさせる毒液が、まばらに襲いかかる。ヴィリヤの耳元を横切って幻影の背中に矢が命中したとき、ついに幻影は膝を折った。矢には返しが付いており、一人で引き抜くことは不可能そうだ。外套に覆われた背中がわずかに震えている。
 ヴィリヤは一度足を止め、幻影の背中を撫でた。引き抜けば傷口は広がるが、引き抜かなければ治療できない。慎重に矢を摘出するも、裂けた傷口からは血が溢れ、白い軍服を濡らしていった。
「守護を司る石の輝きを以て苦痛を癒せ」
 宝石から放たれる柔らかい光で全身の傷口を癒すものの、幻影のヴィリヤの顔色は悪い。
 もしこれが自分……本体であったら。痛みをイメージして血の気が引いた。実際に受けていないがゆえに、イメージの中の痛みは際限なく膨らむ。あるはずのない刺激に、思わず皮膚へ爪を立てた。
「大丈夫」
 幻影が囁き、輝光により癒された手で、ヴィリヤの手を取る。その眼差しには、悪意に折れない確かな意志の光があった。
 進めば進むほど強まる殺気から考えて、吸血鬼の待つ場所まではもう一息といったところだろう。まぼろしの痛みに耐えながら、ヴィリヤは今一度立ち上がった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルファ・ユニ
外観もトラップも、何もかも悪趣味。う…お化け屋敷とかじゃ、ないよね。そういうのは苦手だからやめてほしいな…?

トラップはわかってしまえばこっちのもの。音銃クラハライツから超音波を放ってエコー検査をする。その情報をPCで解析して位置を把握して進む。
トラップを見て瞬間避ける身体能力とかは残念だけど持ち合わせてないしね。ユニ文化系女子だし。

どうしても避けられないようなものは銃の音を差替えUCでトラップや地形を操り制す。殺傷力の高い音であまり壁や床が脆い場所だと倒壊しちゃうから、乱用はできないけどね。



 アルファ・ユニ(愛染のレコーディングエンジニア・f07535)は不気味な雰囲気に気圧されつつも、冷静に状況を把握していた。
「お化け屋敷……とかじゃ、ないよね?」
 か細く木霊した声に反応するモノは、幸いにもいない。
 物理的な仕掛けであれば、壊すも操るも対処可能だ。クラハライツから超音波を放ち、反響音をクローネで解析する。リアルタイムシミュレーションの三次元マップが、モニタに表示された。床や壁面には予想通り複雑な構造物が埋め込まれており、中にはどんな用途で使われるのか見当がつかないものもある。恐らくは呪いの触媒だろう。複数の精霊をクローネに繋ぎ、さらに詳しく分析をかける。サトリの眼で読みとらずとも、此処にあるものは悪意だけだ。呪術的反撃を含めて警戒しつつ、罠を避けて進む。
 幽霊こそ現れないものの、進めば進むほど罠の密度は上がるばかりだ。配置も複雑になり、攻撃導線の計算が困難になる。これ以上無傷で進むことは不可能だろう――ユーベルコードを使用しない限り。いい加減、ダークアンビエントめいた隙間風のBGMにも飽きてきたところだ。
「ここはユニ達の舞台。勝手に動くことは許さない」
 クラハライツから奏でられる、骨格が震えるほど激しい音響が、部屋全体を踊らせる。
 鋸は砕け、呪具は割れ、有刺鉄線は引き千切れる。毒液や毒霧を保管していた容器も割れたが、ミレナリィドールであるユニへの影響は微小だ。古びた床材は音の波形に従って一定の規則で拉げており、頭の中でリズムを取りながらユニは軽々と横切っていく。ソックスが瓦礫の破片に引っかかって少しほつれたものの、ほぼ無傷でユニは罠の群れを突破することが出来たのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
城の作りもいい趣味してるね。
仕掛けられてる罠のことを考えるとうんざりする。
オブリビオンと対面する前に消耗してる場合じゃないから、出来るだけ無効化して進みたいね。

職業柄、罠に対して対処しやすいほうだと思うから簡単そうな物は無効化。あんまり時間をかけすぎるわけにもいかないから咄嗟の無効化が難しそうであれば躱していく方針で。
オブリビオンの嗜好的に、一度罠にかかるとじわじわやられそうだから当たりたくないなぁ。
多少当たっても苦しんでたら敵の思う壺になるだろうし、【激痛耐性】【毒耐性】で足を止めずにさっさと罠をやり過ごす。
いちいち構ってられないよ。
ああ、めんどくさい。



 鹿忍・由紀(余計者・f05760)は慣れた手つきで、罠を手際よく解除しながら進む。触った限り、この城の罠は連携を前提として設置されているものが多いようだ。巧妙ではある。しかし、ピースを一つ抜き取れさえすれば、総合的な罠の威力が落ちるところがこういった仕組みの弱点だ。面倒であることにかわりはないけど、と金具を取り外しつつ内心でぼやく。
 順調にフロアを突破する由紀が次なる罠に手を掛けたときだった。静まり返った空間に、細い金属片が落ちるような音が響く。脊髄反射、手を引っ込めるも、既に指先には針が喰い込んでいた。罠解除を見越して設置された罠だ。敵の周到さ――面倒くささに、腹を立てても仕方がない。針を抜こうと指を動かすと、関節を割られるような激痛が走った。針のように攻撃力の低いギミックには普通毒を仕込む。死に至る神経毒の類ではなく、痛覚を過敏にする毒であるあたりに城主の性格が透けて見えるようだ。苦痛ではあるが、絶命するほどではない。だがそれが逆に、常人の埒外に在る猟兵にとっては有利に働く。
 痛みなんて、気にすることすら億劫だ。由紀はそう自分に言い聞かせた。怯えて我を忘れれば、それこそ敵の思う壺。探索中に見つけた別の罠――麻痺毒が塗布された鏃を、傷口に突き立てる。動かしづらくはなるが、痛みは多少マシになった。重ねて上から包帯を巻く。これで、十分。消耗するより早く、吸血鬼を見つけられればそれでいい。
 気怠げながらも隙の無い歩みを阻むことのできる罠はもはや無かった。深みを増していく闇に足を取られることなく、由紀は進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

伊万里・紗雪
……これ、どういう仕組みなんやろ?
兎に角、剣を抜いて食料通路から侵入
「てか、あの謎のオブジェってやっぱ人肉なんかな」
うちの美的センスとは合わへんなー、豪快と粗野はちゃうで
ま、うちの感覚では……って注意書きがいるけど

無効化を試み進攻、オルタナティブ・ダブルでもうひとりの自分と協力しあう
戦闘時もオルタナティブ・ダブルで挟撃
「こっちが本物のうち、やったり」
だまし討ち、ってとこや……いや、本物もなんもないけど



「てか、あの謎のオブジェってやっぱ人肉なんかな」
 ユーベルコードで呼び出したもう一人の紗雪に話しかけるも、軽く首を傾げられる。
 伊万里・紗雪(覚醒せし腐女子・f10367)は軽快に侵攻していた。外見からイメージしたような罠の一つにもかからない。拍子抜けするくらいだ。その代わり、巨大に変異した虫らしき生物が、先程から敵意を剥き出しに襲いかかってきていた。振り払えば離れるが、何度も懲りずに纏わりつき、鬱陶しいことこの上ない。もう一人の紗雪を先行させ、挟み撃ちで確実に仕留めていく。順調。だと思っていた。
 前方で武器を振るうもうひとりの紗雪が、急に動きを止める。
「どないし、た」
 血飛沫が全身を濡らして、それから認識が追い付く。自らの分身、だったものは。巨大な杭に足から肩口にかけてを貫かれ、空中に縫い留められていた。外壁で串刺しにされていた肉塊がその姿に重なる。
「やっぱ人肉やったんやないか……!」
 動かないもうひとりの紗雪へ好機とばかりに群がる虫を、ありったけの力と手数で叩き潰す。
「こっちが本物のうち、やったり」
 言い放つ声は驚くほど冷徹。その圧を感じ取ったのか、虫たちはそれまでの何かに統率されていたような規則正しい動きから逸脱しはじめた。ただ逃げるためにもがく虫どもを、死角から突き入れる攻撃で悉く殺しつくす。この虫たちは、本命の罠に誘い込むための囮だったのだろう。紗雪自身は無傷で済んだが、呼吸が乱れたのは戦闘だけが理由ではない。
「本当に……私のセンスには合わないみたいですね」
 胸焼けしそうな怒気をどうにか爆発しないよう吐き出し、紗雪は城主の潜む闇を睨んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『リーシャ・ヴァーミリオン』

POW   :    魔槍剛撃
単純で重い【鮮血槍】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ブラッディ・カーニバル
自身に【忌まわしき血液】をまとい、高速移動と【血の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    魔槍連撃
【鮮血槍による連続突き】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが各々の方法で罠だらけの城内を突破すると、天井の高い広間に出た。
 広間の真ん中、紅蓮の衣装を纏った影が、ゆらりと白い顔を上げる。
「ふむ。我が城を越えてきたか。私はリーシャ・ヴァーミリオン。気高きヴァーミリオンの血に連なる者」
 リーシャと名乗った吸血鬼の少女は、猟兵を認めると、澄んだ声で高圧的に語りかけてきた。
「私は苦く辛いモノをこよなく愛している。世界に存在する以上、己に備わった味覚を謳歌することが罪だなどとは欠片も思わない。人間どもの血は甘ったるいのだ、この私にはな。ゆえに手間暇かけて調理を行う。実に文化的な営みだろう?」
 微笑をのせた唇は、外見にそぐわず退廃に爛れている。
「貴様らはあまり調理されてはいないが……まあ、たまには悪食もいいだろう。私が刃を振るうのだ、有り難く思え」
 リーシャは赤く濡れた槍を構えた。
 天窓から月光が差し込む。冴え冴えとした青い光が、戦いの幕を切って落とした。
シェイド・レーム
へっ、なに文化人気取ってんだよ化け物ごときが!感謝しな!てめえがブクブク肥えて醜いブタになるまえに俺様が食ってやるんだからよぉ!ヒャーッハッハッハ!てめえの魔力は頂くぜぇ!!

命中率重視!【呪詛】を組み込んだ【死霊ミサイル】だ!俺様の闇に取り込まれなぁ!こいつはてめえが食い散らかした人間の怨念よ!

照準ロック…発射ぁ!
食いちぎれ!!

ヴァンパイア野郎の攻撃は【オーラ防御】だ!薄汚いヴァンパイアの攻撃などくらってやるかよ!防壁展開だ!


サクヤ・ニイヅキ
悪いけど、あなたに奉げる血なんて一滴もないの
というか血が通ってないの☆
お詫びに道化師の芸を、心行くまで堪能してもらうの!

派手な身振り手振り、大きな声、無駄の大きい動作
それらの「パフォーマンス」で敵の注意を引きながら【レンボウ・ジャグリング】で攻撃するの
敵の攻撃がこちらに向いたら【ミレナリオ・リフレクション】で相殺
注意が逸れれば【シーブズ・ギャンビット】で死角に回り込み急所への一撃
「演目中は目を離さないで欲しいの☆」

苦いモノがお好きなら、自分の血を舐めてみるといいの
きっと、腐った泥みたいな味がするの☆



 リーシャが先陣を切った。
 鮮血槍の穂先がシェイド・レーム(ナイトハンター・f13612)を掠めるも、邪気を纏った刃は内より漲るオーラによって弾かれる。
「はっ! くらってやるかよ!」
「中々だ、だがこれはどうかな!」
 上方から振り下ろされた一撃はまたしてもシェイドに命中しない、が。呪力により強化された打撃は、彼の立つ足場を粉砕した。体勢を崩したシェイドの首を落とさんと、リーシャが跳躍する。高所から突き立てられる刺突が命中すれば、粉砕されるのは足場だけでは済まない。瓦礫に膝をつくシェイドの右手が掲げられる。握られた闇の短剣は、真っすぐリーシャへ向けられていた。
「照準ロック……」
 空中にいるリーシャは短剣に収束する魔力に気付くも、その斜線から逃れることができない。背の翼がもがくように羽ばたき。
「発射ぁ!」
 呪詛によって組み上げられた死霊のミサイルは、辛うじて防御姿勢をとったリーシャを吹き飛ばした。地面に転がる吸血鬼へ、シェイドは更に追撃を仕掛ける。
「こいつは地獄の底までお前を追い続けるぜ! てめえが食い散らかした人間の怨念が……てめえを食いちぎる!」
 この場に縫い留められた死霊の念は、いくら呪詛で束ねても尽きる気配がない。途切れぬ弾幕はようやく身を起こしたリーシャの動きを封じる。槍術と呪術を以てミサイルを破砕するも、青白い肌には次々と細い血の筋が走っていった。漂う闇の魔力の匂いに、シェイドはギラついた目を細める。
「ヒャーッハッハッハ! てめえの魔力は頂くぜぇ!!」
「人間風情が……ッ! いいだろう、我が力を喰らうがいい!」
 リーシャはミサイルの一撃をあえて拳で受け、血の目潰しとともに蓄積した魔力をシェイドへ浴びせかける。美食に拘り、蓄えられてきた邪気の濃度は尋常ではない。一瞬シェイドの意識がブラックアウトした隙に、リーシャはミサイルの有効射程圏外まで傷ついた翼で跳ねて退く。
「わたしのショーにようこそ、なの☆」
 吸血鬼の背後から、華やかな声が響く。天窓を背に、華美な衣装に身を包んだ少女――サクヤ・ニイヅキ(ムーンレイカー・f01673)は己の得物をくるくると弄ぶ。
「ふ……新手と思えば人形細工か。血すら通わぬ紛い物よ」
「あなたに捧げる血なんて一滴も通ってないの☆」
「ほざけ、砕け散るがいい!」
 リーシャの手捌きは生半可な視力で追えるものではない。吸血鬼の魔槍が、もはや紅い閃光にしか見えない連撃を繰り出す。応戦するサクヤもまた、魔力を纏わせた数十本のクラブを空中に踊らせた。まるで見えない針で狙いすまして磔にしたかのように、連撃の初動をクラブが全て相殺する。だん、と重く靴音を鳴らし、リーシャが更に踏み込んだ。
「花拳繍腿! 見掛け倒しの技が通用するとでも?」
 炸裂音が遅れて轟く。それほどまでに疾い連撃の第二波は、空を貫いた。サクヤの帽子が何もない空間にくるりと翻る。
「演目中は目を離さないで欲しいの☆」
 完全なる死角を取ったサクヤは短剣――エースオブスペードを、吸血鬼の脇腹に突き刺す。剣先を捻りながら引き抜き、サーカスの踊り子のように軽やかなステップで傷口目掛けて爪先を蹴り入れる。リーシャは口から血の塊が溢れさせつつ、なおも槍を軸に態勢を立て直した。構えに疲れは見えるが、まだ戦意にみちている。
「苦いモノがお好きなら、自分の血を舐めてみるといいの。きっと、腐った泥みたいな味がするの☆」
「己が血を啜るなどというのは……飢えに飢えた餓鬼の所業よ……」
 苦々しい面持ちで、吸血鬼は口元の血を拭い捨てた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィリヤ・カヤラ
美味しい物は幸せになるけど、
気高い血筋の割に調理方法が原始的かな?

仲間がいる場合は連携重視。
敵の動きを良く見て技の出始めに気付いた時や、
死角からの攻撃で狙われている人がいたら声掛け又は、
割り込みでフォローに入るね。

動きが速そうだから【ジャッジメント・クルセイド】や
【氷晶】で敵の進路妨害を狙ってみるね。

敵の対応や進路妨害には剣も使うけど、
意識が逸れている時に宵闇を蛇腹剣に
変形させての攻撃も狙ってみようかな。
隙を作るためにも積極的に攻撃的していくね。

回復は前衛やダメージの大きい仲間を優先して、
早めを心掛けて【輝光】で回復するよ。

アドリブ、連携歓迎


ハルベル・ロウ
……ああ、あの村で吸ってやった男の血が苦くて辛かった理由がわかった。
村は丸ごとお前のキッチンだった訳だ、結構な料理人じゃねえか。
【WIZ】
【血の系譜】で敵の動きを止める。
奴がまた動き出す前に【呪詛】を込めた銃弾を撃ち込んでやるよ。
ああ、呪詛なんて慣れ切ってるかも知れねえな、【2回攻撃】で【祈り】を込めた弾もくれてやる。聖者の祈りだ、有難く受け取れ。

隙があれば敵に【吸血】を仕掛けよう。とんでもない悪食吸血鬼、一体どんな味がするんだろうな。

【アドリブ歓迎】



 猟兵と距離を置いたリーシャは、低い姿勢で鮮血槍を構え直した。威嚇するように広げた翼が、ばちりと空を叩き――ほとんど滑空するように走り出す。翼による爆発的な推進力を得た銀髪の吸血鬼はまるで弾丸。迎撃するはダンピール二人。
 削るぞ、とハルベル・ロウ(スロウホワイト・f13579)が目で合図する。
 ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)もまた鋭い目線で応じた。
 ヴィリヤの観察する限り、この吸血鬼は、調理方法が原始的だし即物的だ。戦闘も同様。ここまでの道のりで観察した罠の配置や導線から、直感的にではあるが吸血鬼の動きが見えてくる。
 リーシャと一定の距離を取りながら誘い込む形で立ち回るハルベルに、吸血鬼はいよいよしびれを切らして直線的に疾駆する。ヴィリヤは着地点を予測した――完璧な精度は今はいらない。
「氷よ……」
 一帯の大気が、澱む湿気ごと一気に冷気を帯びる。
「氷よ射抜け」
 弾丸自体を射て、撃ち落とすことは難しい。ならば予測軌道上全てを掃射すればいいだけのこと。降り注ぐ氷の刃が、吸血鬼の翼に幾本か突き刺さった。刺さるだけでない。空気に含まれる水分を凝結させ、刃は太く長く成長する。リーシャは床に槍を突き立て無理やり減速を試みるも、バランスを崩して大きくたたらを踏んだ。狙い通り作ることのできた隙を、ヴィリヤは確実に突く。
「切り落とすよ、次お願い!」
 手首を撓らせて、宵闇――鞭の如き蛇腹剣を振るう。しなやかにして鋭利な黒い刀身は吸血鬼の両翼を絡めとり、氷の結晶ごと破砕した。
 翼を奪われ、身動きの取れるようになった吸血鬼の連撃がヴィリヤに向けられる。それも読めていた。宵闇を引きざまに刺突を弾き、さらに返す手で鞭を見舞えば、吸血鬼は後ずさりせざるをえない。
「よそ見してる場合かよ」
 リーシャの背中は、ハルベルの射程圏内だ。振り向いた吸血鬼の紅い視線と、緑の視線が交わる。紅の瞳が、驚愕に見開かれた。
「その、緑眼は」
「動くな」
 ただその一言で、リーシャの動きが止まる。睫毛一本すら震えない。
 ハルベルは気怠げにグロリア――白銀のリボルバーの撃鉄を起こし、引き金を引く。手慣れたシークエンス。呪詛の込められた弾丸が、吸血鬼の眉間にめりこんだ。
「一発目。呪い憑きだ、苦しいか?……ああ、呪詛なんて慣れ切ってるかも知れねえな」
 ハルベルは懐から弾丸を取り出すと、グロリアの弾倉に元々装填されていたそれと素早く交換する。弾に込められた祈りに呼応するように、胸の聖痕が淡い光を帯びた。引き金を引く。乾いた音が闇を裂いた。
「二発目。聖者の祈りだ、有難く受け取れ」
 喉笛に命中した弾丸は、吸血鬼の傷口をじわりと焼き焦がす。血液が小さなあぶくをつくりながら流れ落ちた。ハルベルの真白い指先が、血を掬い取る。化粧のように爪先を飾る紅を舐めた、端正な顔が曇る。
「……二口目は遠慮しよう」
 後ろ歩きで悠然と間合いを空けた直後、硬直した時が動き出した。吸血鬼は頭を抱えて蹲る。血の泡が弾ける濁音で割れた、少女とは思えない絶叫が薄闇に吸い込まれていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鹿忍・由紀
人の事をゲテモノみたいに言うね。まあ美味しそうと思われるよりかは良いか。

敵のWIZ攻撃を避けてしまえば大きな隙ができそうだね。
UCで避けて他の猟兵達の攻撃チャンスでも作っとこうか。
他の人たちがうまくやってくれるだろう、きっと。
俺自身も攻撃するチャンスがあればダガーで削っとこう。
「フェイント」や「だまし討ち」とか使って相手の集中力を引っ掻き回してやる。
比較的重くなさそうな攻撃をわざとくらって油断させたりとか出来るかな。

相手が弱ってきたら、
ねぇ、美味しそうかな?って言ってやろう。


ハロ・シエラ
毒で少し体は苦しいですが、吸血鬼が相手となればそんな事も言ってはいられません。
我々人間も動物を食べます。
同じだと言われれば返す言葉もありません。
でも、食うか食われるかのさだめだと言うのなら……黙って食われるつもりもありません!

吸血鬼は見た目によらず力が強い。
まずは【怪力】を用いた【武器受け】や【見切り】で思った様な攻撃をさせず、苛立たせます。
致命的でなければダメージを受けてもいいですが、地形を破壊する様な一撃はかわしたいですね。
鉄壁ではない分、相手も焦れるでしょう。
相手の冷静さを乱せれば【フェイント】で隙を誘います。
上手く行けば出来た隙に剣刃一閃を叩き込みます!
その槍ごと、塵に返りなさい!



「全員八つ裂きだ! 貴様ら! 全員だ!」
 激昂したリーシャが叫び、槍の石突で床を突く。地鳴りが城全体を揺らす。
「集え、我が血! 我が肉! 我が従僕よ!」
 壁に彫られた溝を、重力を無視した血液がぞるぞると満たしていく。血は天窓までをも赤く染めて、弾けた。紅い雨が降り注ぎ、吸血鬼は吼え猛る。槍と全身に血を纏ったリーシャは速度も破壊力もこれまでより数段高い。呪いで濡れた刃は、一振りすれば間合いから外れた場所までも鋭利に切り裂く。
 速い、けれど。
 鹿忍・由紀(余計者・f05760)は碧眼に、紅い軌跡を刻んでいた。速いがゆえに、単純なのだ。単純であるがゆえに、破壊力がある。それだけだ。眼球に装着されたデバイスと、磨いてきた観察眼とが、軌道を計算する。
「遅い! 遅い遅い遅いぞぉッ!」
 リーシャが縦横無尽に振るう槍から放たれる血の刃を、ひとつひとつ目視する。
「急かさないで」
 ゆるりと歩き距離を詰めた。刃は掠りもしない。暁の空のように青と赤が映る瞳は、吸血鬼の動きを完全に見切っていた。どこに力が籠るのか、次にどう槍を振るうのか。踏み出したその場所が安全地帯だ。吸血鬼は、明らかに当たるはずの攻撃が当たらないことに歯噛みする。
 由紀が手にしたダガーでするりと横に薙ぐと、リーシャの鼻筋に紅い横一文字が刻まれた。皮膚に走る熱に、彼女は瞠目し、狼狽のまま槍を振り回す。切っ先が胸を掠めたが――傷は浅い、この痛みは耐えられる――、由紀はもう一撃ダガーで顔を狙うモーションで、足払いをかけた。
 上半身と下半身が全く一致しない動きを、吸血鬼は読み違える。あっけなく転倒し、強かに全身を床に打った。
 仰臥するリーシャを由紀が覗き込む。胸の傷からぽたりぽたりと血が零れて、吸血鬼の豪奢な衣服に黒い染みをつくった。
「ねぇ、美味しそうかな?」
 頬まで散った血を指で拭い、唇へ蠱惑的に乗せる。煽るような仕草に、吸血鬼も怒りという自我を取り戻した。
「私を、この私を……!」
 続く罵倒は言葉にならず、リーシャは再び血を纏う。集積する呪詛は存在を蝕む暴威。リーシャ自身にも負荷がかかるレベルの呪詛集積は、すなわちそれだけ彼女が追いつめられていることを意味する。
「滅べッ!」
 咆哮。炸裂する打突。
 鮮血槍の重撃から由紀を庇い、紙一重で攻撃を躱したのはハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)だ。吸血鬼というモノの爆発的な力と、華奢な外見にそぐわない間合いを彼女は経験によって知っている。
「滅ぼしたいなら、どうぞご勝手に!」
 毒に侵された身は、全快時ほど機敏には動いてくれない。吸血鬼も匂いでそれがわかるのか、わざと足元を狙って暴力的な連撃を繰り出した。
 その加虐性が巡り巡って己を滅ぼすのだと、この吸血鬼が気づくことはないだろう。ハロは胸の内で静かに覚悟を決め、あえて毒が回ったように破壊された床に体を投げ出す。
「随分つらそうじゃないか。苦しむがいい、もっと、もっと」
 リーシャは勝利を確信した笑みを浮かべ、ハロの頭を素手で鷲掴んで宙に吊り上げた。激痛が走る。だが、同時にハロは、慢心の絶頂に至ったリーシャを射程に捉えていたのだ。
「槍よ、喰らえ。新しい餌だ――」
「食らいなさい、霊剣の一撃――」
 妖狐の霊力が込められたレイピア――リトルフォックスが、吸血鬼の脳髄を貫通する。リーシャの手が大きく開き、解放されたハロは更に深く刀身を突き入れた。鉄鎧のごとき血すら引き裂く怪力が、肉体を真っ二つに両断する。
「その槍ごと、塵に返りなさい!」
 がらん、と槍が床に落ち、少し遅れて肉塊が床に頽れた。
 やがて昇る朝日が、オブリビオンを骸の海へと還すだろう。
 血の杯を求める支配者はもういない。苦痛に塗れた村から血の臭いが流れ去るには時間が必要だ。それでも、暴力を正当化する理由は失われた――これから殺められるかもしれなかった命を救えた。伽藍を照らす月光にも似た、か細くも明るい希望を、猟兵たちは確かに齎したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト