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邪神館にようこそ

#UDCアース #UDCエージェント藤谷理沙


●惨劇の館
 どうしてこんなことに……。
「ねえ、こんなのおかしいよ、カナデ! なんでヒビキと藤谷さんを殺しちゃったの!?」
「ひひひひ。あいつらだけじゃない。お前もここで死ぬんだよォ! コトコ!」
「カナデ! 一体どうしちゃったんだよお!」

 私は半狂乱になって叫んだ。……思えばカナデはこの館に来た時からなんだか様子がおかしかった。一人二役で見えない誰かとしゃべり始めたり、突然お嬢様口調になったり、奇声を上げながら窓にドロップキックしたり……。

 こんなことになるなら、こんな不気味な建物で肝試しなんてするんじゃなかった!

 でも、後悔した所で後の祭りだ。私達が入口に戻った時には、扉にカギがかかっていて、どんなに頑張っても開かなかった。私達は仕方なく、別の出口を探して洋館の中を探し始めた。途中でプロのゴーストバスターの藤谷さんに保護されたまでは良かったが、この部屋に入った瞬間、突然カナデが暴れだして、みんなを包丁で刺したのだ。
 後ろから首を刺された藤谷さんは即死だったと思う。胸をめった刺しにされたヒビキも虚ろな目で、二人分の血だまりに沈んでいる。

「いや、やめて……カナデ……殺さな――」
 ドスッ。
 カナデの手にした血染めの包丁が、容赦なく私の喉に突き刺さる。私はごぼごぼと血を吐きながら、仰向けに倒れた。

「どう……して……」
 薄れていく意識の中、私は必死にカナデの方を見上げる。私達三人を刺したカナデは、とても嬉しそうにケタケタ笑っていた。

「ヒャッハー! 邪神様! 命令通り、みんな殺しました! 三人の乙女の血を生贄に捧げました! どうぞ復ッ活ッ!! なさいませ!!」

 しかし、何も起こらない。カナデはあれ、と首をかしげた後、ぽん、と手を叩いた。

「あ、そうか。生贄はもう一人いるんだわ」

 カナデはにたり、と笑うと、自分の首に向かって、勢いよく包丁を――。
 ストン。
 刃はするりと彼女の首を通り抜けた。噴水のように鮮血が吹き出し、ごろごろとボールのようにカナデが転がっていく。そして、ごろんとこちらを向いた彼女と目が合った。
 それが私の見た、最後の光景だった。

●グリモアベース
「凶悪なUDCが復活する予知を見た。等級は『邪神級』だ」
 青白い顔をした少女、守田緋姫子は沈痛な面持ちで猟兵達へと告げた。

 UDCとは、UDCアース世界におけるオブリビオンの別名である。彼らは現地の対UDC組織によって幾つかの等級に分けられている。邪神級とは、完全に覚醒すれば一体で世界を滅ぼしかねないほどの力を持つ、極めて強力な個体に与えられる等級である。

「現地のJC(女子中学生)が何を思ったか、邪神が封印されている洋館に肝試しに出かけてな……。邪神はそいつらの恐怖心を吸収し、己の力を増すことで封印を破る腹積もりのようだ。だがそうはさせん。ただちに現地に向かい、邪神が蘇る前にJCを保護してくれ」

 予知によると、洋館に入り込み、肝試しをしている中学生達は三名。いずれもオカルト研究部に所属する中学生のようだ。
 邪神の方はまだ封印状態だが、洋館の内部で怪奇現象を起こすぐらいには力を取り戻しているようだ。急がねば、大変なことになるだろう。

「三人の内の一人はまともなんだが、残りの二人がなかなかの問題児たちでな。まず片方がいわゆる霊媒体質で、邪神が怪奇現象を起こすたびに、影響を受け、一時的に発狂する。これに関しては本人に非はないと思うが、予知では邪神に近づき過ぎて最後には精神崩壊を起こしていた。彼女には特に注意してくれ」

 緋姫子はこめかみを押さえながら、事前に描いておいた少女の似顔絵を猟兵達に見せた。そこには、そこそこ整った顔立ちのツインテールの少女が描かれている。

「もう一人は好奇心の塊のような女で、怪しいスイッチを片っ端から押しまくったり、部屋の壁にかかっている武器を装備しようとしたり、後ろからついてくる人形をカバンに入れて持ち帰ろうとするようなヤツだ。見つけたら目を離さないようにしてくれ」

 緋姫子はハア、と深いため息を吐き、また似顔絵を掲示した。こちらの少女は髪型はショートカットで、動きやすそうなハーフパンツを履いており、いかにもやんちゃそうな感じだ。

「彼女達が恐怖を感じれば感じるほど、邪神は力を増していく。だから邪神や眷属の低級UDCたちはいかにも怪奇現象っぽい演出をしてくるはずだ。物を動かしたり、電話をかけてきたりな。
 それに対抗する為、猟兵の力で怪奇現象を否定するか、JC達のメンタルケアを怠らないようにしてくれ。そうすれば、邪神は完全な形では復活できず、私達でも対抗できるぐらいの出力で顕現するはずだ」

「あと、最後にもう一つ。現地には既に藤谷という名のUDC組織の諜報員が潜入している。彼女の保護は必要ないが、接触すればこちらに協力してくれるだろう。何か用があれば彼女に頼むといい。拳銃の弾とか、インクリボンとか、ロケットランチャーとか色々持ち込んでるようだから」

 緋姫子は一枚の写真を見せた。このUDCエージェントの女性については過去にも猟兵と一緒にUDC退治をしたことがある為、写真が残っていたのだ。

「じゃあ、準備ができた人から現地に送るのでよろしく頼む。手ごわい相手だが、邪神を完全復活させるわけにはいかない。なんとか阻止してくれ。頼んだぞ」


大熊猫
 今回登場する邪神は人間の恐怖を糧にパワーアップする性質があり、救出対象の中学生達の精神状態が悪化するほど力を増します。中学生達を安心させることができれば、対決を有利に運ぶことができるでしょう。
 また、邪神の力により討伐完了まで中学生達は洋館からは決して脱出できず、異空間への隔離なども短時間しか保ちません。

 まずは洋館に迷い込んでしまった中学生達を見つけ出して保護しましょう。ただし、あの世からの電話や動く人形、ポルターガイスト、彷徨う鎧など、様々な怪奇現象が猟兵たちを襲います。
 また、現地にはUDC組織の諜報員が一人潜入しています。彼女の保護は不要ですが、猟兵がコンタクトを取れば協力してくれるでしょう。

 ※怪奇現象の内容は大まかにプレイングで指定が可能です。指定が無ければMSお任せになります。

●プレイングボーナス(一章・二章共通)
 迷い込んだ中学生たちを安心させる。またはUDCエージェントと協力する。

●登場NPC紹介
 利口田・奏(リコウダ・カナデ)。
 オカルト研究部の部員その一。中学生。
 霊媒体質で、登場NPCの中で最も強く邪神の影響を受け、事あるごとに発狂してトラブルを起こします。しばらくすると元に戻りますが、何度も発狂するとオープニングのように邪神の眷属と化してしまうかもしれません。
 ※適切なアイテム、スキル、UCを用いればメンタルケアが可能です。
 発狂イベントの例:猟兵にボールペンで襲いかかる、見えない誰かと会話する、窓をぶち破ろうとする、浮遊霊に憑依されてキャラが激変する、等。

 音無・琴子(オトナシ・コトコ)。
 オカ研部員その二。霊感ちょい有。他の二人とは違って常識人です。

 織岩・響(オリイワ・ヒビキ)。
 オカ研部員その三。
 好奇心旺盛。霊感はあまりない。怪しいスイッチがあると押してみたくなるお年頃。
 イベントの例:「すげー! 壁に剣が飾ってあるぜ! 持っていくか!」
 ※中学生三人は固まって行動しています。

●藤谷理沙(ふじやりさ)
 UDC組織のエージェント。二十一才の美人。
 一章ではほっといても死にませんが、彼女と合流すると中学生達がちょっと元気になります。ちなみに過去のシナリオでも二回登場しています。

●文字数省略用記号
 アドリブ歓迎→☆、連携歓迎→★、何でも歓迎→◎(☆★と同じ)、ソロ描写希望→▲。

 以上です。皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『洋館事件』

POW   :    筋肉は全てを解決する。力技で怪奇現象を解決する。

SPD   :    私は霊能力者です。オカルトの力で怪奇現象を解決する。

WIZ   :    これは怪異の仕業などではありません。トリックです。科学の力で怪奇現象を解決する。

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●恐怖の夜の始まり
 月明かりの無い夜。日はとうに沈み、時計の針が深夜十二時を示す頃、少女達は静寂と闇に包まれた洋館を、ライトで照らしながら進んでいた。

「ねえ、そろそろ帰ろうよ。ここ、なんだか気味が悪いわ」

 琴子は先頭を歩く奏の袖を引っ張りながら言った。

「まだ半分も見てないじゃない。もう少し、調べてみようよ」
「もう少し見て見ようぜ。お宝とかあるかもしんないし」
 琴子の後ろを歩いていたヒビキがあっけらかんと言った。

 スマホのライトを構え、奏はずんずん進んでいく。琴子はため息をつき、仕方なく彼女についていった。二人の後ろには、キャンプ用のヘッドライトと金属バットを装備した響がついてきている。

 琴子ら、黄昏中学オカルト研究部の三人は、町外れにある廃墟、通称『人喰い洋館』に肝試しに来ていた。先輩達が部活を引退し、晴れてオカルト研究部の新部長となった奏は、世代交代後の記念すべき最初の活動として、怪奇スポットであるこの洋館の探索を発案したのである。
 昔からこの洋館は、窓に少女の人影を見たとか、夜中に謎の悲鳴が聞こえたとか、怪談に事欠かない場所だ。
 中三にもなって本気で幽霊など信じているわけではないのだが、琴子はこの洋館にいると、ひどく落ち着かない気分になった。
 なんだか、常に誰かに見られているような気がするのだ。

「……けにえ、きた」
 突然、ぽつりと奏が呟いた。
「え、奏、今なんて?」
「えっ。私、何も言ってないわよ?」

 琴子の問いかけにきょとんとする奏。琴子は聞き間違いかなと気持ちを切り替え、行軍を再開しようとした。
 だが、その時。

 タラララララン、タラララララン。
 突然、廊下に飾ってあったレトロな蓄音器がひとりでに回転を始め、物悲しいメロディを奏で始めたのだ。

「え、誰か動かした?」
 奏は琴子と響に問いかけた。
「誰も触ってないわ」
「というか動かし方がまず分からんし」

 混乱する三人。だが、奇妙な出来事はそれだけでは終わらなかった。

 カツーン。カツーン。

「足音……?」
「誰だ……?」

 琴子達は身を寄せ合い、廊下の奥から歩いて来る人影を凝視した。

「な……!?」

 廊下の奥から歩いてきたのは、さっきまで一階のロビーに飾ったあったはずの、西洋甲冑だった。西洋甲冑はお互いがハッキリ見える距離まで近づくと、いきなり腰に差していた剣を抜いた。

「な、なんで甲冑が動いてるの!?」
「ど、どういうこと!? 本物のお化け!?」
「分からんがやばい! 逃げるぞ!」

 少女達は、洋館の奥に向かって全速力で逃げていった。

 目覚めつつある邪神は、少女達の恐怖と魂を糧とし、復活を果たそうとしている。
 果たして猟兵達は、少女達を救うことができるのだろうか?
黒沼・藍亜

やばい、ホラーでやらかすタイプが揃ってやがるっす
むしろよく今まで無事で済んでたっすね……

何はともあれまずはUCを使用、
「事件も異変も無いその世界での平凡な日常」と同じ環境にしちゃうっすよ

これでその環境に馴染んだ者の行動は成功しやすくなり、
異常や怪異の行動成功率は相対的に下がる訳っす
……まあそもそも幻の日常風景でそういう異常は塗り潰してるんだけど

ただ不審者や老朽化、そういう廃墟で普通に起きそうな異常ほど抑えにくい訳なので
先にエージェントと接触して状況説明、その後対象を保護、そういうまだ詳細を誤魔化せる脅威を物理的排除しつつ進むっすよ

……一応もしもの時用に記憶消去銃はすぐ使えるよう準備しとくっす


シシトル・ウィッシュハーバー

これはマズい力の流れがする…
必ず守らなきゃ
『彼女』みたいな子は、もう絶対に出したくないんだ

まずは合流
賑やかな子がいるみたいだから…
【指定UC】で呼んだ精霊に【聞き耳】【第六感】で探し出してついていてもらおう
危険な場面ならすぐさま精霊の幸運を使ってもらう

大丈夫かい?

合流できたら声をかける…けど、たぶん怖いだろうから、オカルト知識の話題を振りつつ自己紹介
僕と同名のお守りを持ってたらいいんだけど、難しいだろうなあ

そのもこもこかい?彼らはケセランパサラン
幸運の精霊なんだけど…知らない?

僕はシシトル
君たちを守りに来たんだ

僕の他に仲間がいる事を伝えつつ、ぬいぐるみみたいに扱われるなら甘んじて受けるよ



●UDCエージェントと願いの守り手
「これはマズい力の流れがする……」
 洋館に突入したシシトル・ウィッシュハーバーは、館内に満ちる邪気を感じ取り、顔を曇らせた。館内の至る所で邪悪な気配を感じるのだ。
「必ず守らなきゃ! 『彼女』みたいな子は、もう絶対に出したくないんだ」
 シシトルの脳裏に一瞬、かつて救えなかったアリスと、堅く鎖された扉の姿が浮かぶ。シシトルは悲しみの記憶を心の片隅に追いやると、凛とした声で叫んだ。
『幸運のふわもこ(サモン・ケセランパサラン)!』
 すると、シシトルの呼び声に応え、タンポポの綿毛のようなふわふわした姿の精霊が十体ほど召喚された。
「女の子がこの中にいるはずだ。一緒に探して!」
 綿毛達は広がり、聞き耳を立て始めた。


「やばい、ホラーでやらかすタイプが揃ってやがるっす。むしろよく今まで無事で済んでたっすね……」
 グリモア猟兵から聞いた少女達の特徴を思い返しながら、黒沼・藍亜は独りごちた。この洋館を彷徨っている者達は問題児揃いだ。ホラー映画なら間違いなく早死にしているだろう。急がねば。

「さあさあ、埒外(ボクら) 過去(アンタら)も、事件(イベント)なんて起きない、平凡な日常(カバーストーリィ)へとご招待っすよ!」
 パン、と手を叩き、藍亜はユーベルコードを発動する。すると、ざああああ、と外で激しい雨音がした。幻の雨が降り注ぎ、洋館を『事件も異変も無い平凡な日常』に塗り潰しているのだ。規格外の存在である邪神の影響下の中で、どの程度効果が保つのかは未知数だが、しばらくは怪奇現象の発生を防げるだろう。
「ただ不審者や老朽化、そういう廃墟で普通に起きそうな異常ほど抑えにくいんすよね……」
 藍亜は溜息をつきながら、スマートフォンでUDCエージェントの携帯を鳴らした(番号は組織から聞いた)。

「はい、藤谷です」
「お。ちゃんと繋がった。良かったっす。ボクはエージェントの黒沼っす。応援に来たっすけど、そっちは大丈夫っすか?」
「ありがとう! こっちは猟兵さんと合流できてるから、子供達の方に行ってあげて!」
「了解っす。一応、ボクのユーベルコードの効果だけ説明しておくッス」
 ……。
 藍亜は手短に説明を終えると、中学生達を探して洋館内を走り回った。
 しばらくすると……。
「きゃああああああ!」
 絹を裂くような女性達の悲鳴が聞こえた。
「やばいっす! もう襲われてるっす!」


 その頃、二階の廊下では。
「離して! 離して! あそこ! あそこに凄い数の虫がいるの! 全部燃やさなきゃ!」
「ちょっと、カナデ! どうしちゃったの!?」
「落ち着けよ、カナデ! そこには何もいねえよ! 危ねえからそれを離せよ!」

 燭台を振り回して暴れだした奏を、琴子と響が必死に取り押さえようとしていた。なんとか動く甲冑を撒いたと思ったら、今度は壁にかかっていた燭台をむしり取り、虫に火を点けると言い出したのだ。しかしそこに虫などいない。奏は幻覚を見ているのだ。

「す、すげえ力だ! 本当に奏か!?」
「お願いだからやめて! 火事になっちゃうよ!」
 二人は必死に燭台を取り上げようとするが、奏は女子中学生とはとても思えぬ怪力を発揮し、二人を振り払おうとしていた。

 ギイイ……。
「「え」」
 さらに畳みかけるように三人に厄災が降りかかる。耳を覆いたくなるような嫌な音を立てながら、廊下に並んでいた扉の一つが少し開いたのだ。扉の隙間から、こちらを覗き込んでいるのは……。

「ア ソ ビ マ ショ」
「「きゃあああああああ!」」
 琴子と響きは思わず悲鳴を上げた。


 赤々と燃える燭台は地面に叩きつけられ、中学生達の周囲を包むように炎が巻き起こった。さらに、少しだけ開いた扉の奥から、忌まわしい何者かが姿を見せようとしている。
 
「火事!? それに敵っすか!」
「ボクは炎をなんとかする! お姉さんはあの悪霊(?)を!」
「了解っす!」
 途中の廊下で合流したシシトルと藍亜はすぐ状況を認識した。二手に別れ、同時に問題の対処に当たる。

「お願い! ケセランパサラン!」
 シシトルが少女達を指差すと、綿毛のような精霊が少女達へとすっ飛んでいき、幸運の力を散布した。
 すると、すでに給水が途絶えているはずの天井のスプリンクラーが作動し、炎へと降り注いだ。炎の勢いは徐々に弱まり、やがて完全に消火された。幻覚を見ていた奏も我に返り、大人しくなる。

「よし! あっちはなんとかなったっすね! こっちの不審者も……!」
 藍亜は扉が開きかけていた一室に飛び込み、出て来ようとしていた人物へと銃を突き付けた。
「け、警察!? う、撃つな! ちょっと脅かしただけだ!」
 彼女の予想通り、不審な人影の正体は悪霊などではなく、生身の人間だった。
 後で尋問したところによると、この洋館に勝手に棲みついていたホームレスだったらしい。自分の住処に部外者が紛れ込んできたので、脅かして追い払おうとしたのだとか。
「ま、火事と不審者ぐらいならなんとか誤魔化せるか……」
 藍亜はホームレスに記憶消去銃を浴びせ、外で待機していた組織の事後処理担当に引き渡した……。

「僕はシシトル! 君たちを守りに来たんだ」
 シシトルが自己紹介すると、そのキュートな姿に中学生たちは歓喜した。
「かわいいー!」
「妖精! 初めて見たわ!」
「これはアレか!? 私らが魔法少女に選ばれる流れか!?」
「その毛玉は幸運の精霊で……って聞いてないね。自己紹介は落ち着いてからにしよう……」
 シシトルは興奮した中学生たちにひっぱられたり撫でられたりするのを、甘んじて受け入れるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

テレシア・テラー
どろろ〜ん、ばあ〜っ!わたしはテレシア・テラー。テレシアはこわくてとっても恐ろしい、ワル〜いおばけ……テレシアの存在そのものがアウトじゃない?普段は恐怖を与える側……

まあ、いい……他の霊に憑依されてもメンドーだから透明化して近づいて、テレシアが先に霊感強いヤツに降霊して憑依しておく。その間、宿主の精神は眠っててもらう。

恐怖心は邪神の物となる前に捕食する。カクリヨの住民は人間の感情が食糧。本当は自分で驚かせた感情を食べたいけれど、今回は我慢。

怪奇現象には霊障の念動力をぶつけたり押さえつけて黙らせる。出来るだけ見えない所で処理。今起きた事は全部「不慮の事故」

本物のおばけとして偽物には負けられない。


外邨・蛍嘉

うーん、厄介な邪神だね。さて、一仕事しようか。
…まあ、悪霊がここ(自分)にいるから、心霊は否定できないんだけどさ。

常に【藤蛍】使用。
浮遊霊は、強化した降霊でこちらに引き寄せて浄化。
あと、奏さんにも常に浄化をかけて、精神汚染から離し、できるだけ影響少なくしよう。
見えない誰かと会話しそうになったら、割り込んじゃおうか。

ちなみに、空中泳ぐ陽凪に結界術で透明化を施してる。呪いに類いするものは、陽凪に食べてもらうのさ。
量が多ければ、私の祟り縄に封じることも考えよう。



●二人の悪霊
「うーん、厄介な邪神だね」
 外邨・蛍嘉は洋館に入るなり顔をしかめた。浮遊霊がそこかしこに漂っていたのだ。この洋館に満ちた霊的磁場は自殺の名所か、古戦場並である。恐らくは、復活しかけの邪神の妖気が霊なる者たちを引き寄せているのだろう。

「……まあ、悪霊がここ(自分)にいるから、心霊は否定できないんだけどさ」
 蛍嘉は自嘲気味に笑った。蛍嘉は人としての命はとうの昔に喪っている。善悪はさておき、猟兵としては『悪霊』と区分される存在なのだ。

「貴方ハ悪霊ではアッテモ、邪霊ではナイト思いマスヨ、蛍嘉」
 この身に封じられた鬼のクルワが返事をした。独り言のつもりだったが、クルワには聞こえていたらしい。
「そりゃ、ありがとうよ。さて、一仕事しようか」
 外邨・蛍嘉は腕まくりをした。着物の裾から枯れた腕が覗く。まずはそこいら中にいる浮遊霊を祓わねばならない。迷い込んだ中学生の中には霊媒体質の少女もいると聞く。本来ならとるに足らない霊たちだが、この状況では存在そのものが危険だ。

「安らかにお行き」 
 藤色に光る蛍火がぼう、と蛍嘉の周りを照らす。この藤蛍は霊を浄化し、あの世へと送る導きの光だ。蛍嘉は降霊術で引き寄せた浮遊霊を片っ端から祓いながら、洋館の中を進んでいった。


「どろろ~ん、ばあ? っ! わたしはテレシア・テラー。テレシアはこわくてとっても恐ろしい、ワル~いおばけ……テレシアの存在そのものがアウトじゃない? 普段は恐怖を与える側……」
 転移と同時にポーズをとったテレシア・テラーは我に返って自問自答した。そう、彼女も蛍嘉と同じく悪霊のジョブを持つ猟兵である。だが、その姿は和服姿の老女である蛍嘉とは大きく異なっている。西洋妖怪のゴーストであるテレシアの姿は、絵本に出て来そうな布おばけだ。子供ならむしろ喜ぶかもしれない。

「まあいい……」
 テンション低く呟いたテレシアは亡霊の布の力で姿を隠し、ふわふわと洋館の中を進んでいく。恐怖を与えることがNGなのは残念だが、邪神の策に乗せられるのは残念を通り越して癪だ。
「あそこか……」
 ほどなくテレシアは中学生達の気配を見つけた。


「ぎゃはははは! なかなかいい体だ! この体、気に入ったぜ!」
「ちょっと、カナデ! どうしちゃったの!?」
「くそっ……! なんか憑いてるんじゃねえか!?」
 奏は壁に立てかけてあった短剣を取り、高笑いをしていた。琴子と響は奏から距離を取りつつも、説得を試みている。

 すでに猟兵達に保護されていた中学生達だったが、老朽化した床を踏み抜き、中学生達だけが一階に落下してしまうというアクシデントが起きたのだ。さらに、邪神の介入で空間が歪み、中学生達は猟兵と分断された状態で悪霊の巣と化した部屋に閉じ込められていた。

「ククク……生贄をささげりゃあ、この体は俺のモンになるって話だからな。お嬢ちゃん達には、悪いが死んでもらうぜ。どっちが先がいい? 好きな方から殺してやるよ」
 完全に正気を失っている奏は、短剣を構えて舌なめずりをした。
「くそっ……正気に戻れよ! カナデ!」

 その時、邪神の力で閉ざされていたはずの扉がバーン、と開き、二人の『悪霊』が飛びこんで来た。

「そのお嬢さんから出ていってもらおうか」
「!?」
 悪霊その一、蛍嘉の放った浄化の光は奏を刺し貫いた。
「ガアアアアアッ!」
 悪霊は悲鳴を上げ、奏の体から出ていく。もちろん奏本人は無傷だ。
「ヤッタ! アノ娘ノ体ガ空イタゾ!」
 すぐさま部屋を彷徨っていた別の悪霊たちが奏の体に入り込もうとするが、それより早く、同時に入ってきた悪霊その二、テレシアが降霊術の応用で奏に憑依した。
「奏さん、ちょっと眠っててね」
 テレシアは奏の魂を意識の奥底へと追いやった。奏の魂がテレシアを追い出そうと激しく抵抗してくるので長時間の憑依は難しそうだが、しばらくは大丈夫だろう。

「ごめん。私どうかしてたわ」
 テレシアは奏のフリをし、琴子と響に謝罪した。急に正気に戻った(ように見える)ので二人はきょとんとしているが、今はそれどころではない。まずはこの部屋に満ちた悪霊たちをなんとかしなければ。
 ガタガタガタッ!
 突然、椅子や机が震えはじめた。ポルターガイスト現象の前兆だ。中学生達にぶつけてダメージを与えるのが狙いではなく、恐怖心を煽るのが狙いだろう。
 だが、中学生の恐怖心は邪神が吸収する前にテレシアがバクン、と捕食してしまった。テレシアは感情を食らうカクリヨファンタズムの妖怪だ。目には見えないはずの感情も、彼女には本能で感知することができる。
(本当は自分で驚かせた感情を食べたいけれど、今回は我慢)
 ガタガタガタッ!
「本物のおばけとして偽物には負けられない」
 なおも激しく震える家具。テレシアは霊障をぶつけ、揺れる家具を抑え込んだ。結構がんばっているのだが、見た目には何も起こっていないように見えるだろう。

「頼むよ、陽凪」
 蛍嘉も中学生達に見えないよう、こっそりと悪霊たちを祓っていく。透明化している『陽凪』に命じ、悪霊たちを食べさせているのだ。

 テレシアがポルターガイストを抑え込んでいる間に、蛍嘉は静かに部屋中の悪霊を祓っていくのだった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カイム・クローバー

スマホを光源代わりに洋館を進む。

出会うのは藤谷理沙。
埃臭くて湿っぽい場所には似合わない美人だ。――それで。何か探し物…いや、『探し人』か?
理沙に軽口半分で気安く声を掛け。こんなトコでウロウロしてちゃ危ないぜ。見な。(親指でクイっ)――妙なストーカーに狙われてる。
剣を抜いた西洋甲冑に口笛でも鳴らして。
美人を口説くなら、もう少しお喋りで軽快な雰囲気の一つでも作るのをお勧めするぜ?
【怪力】任せの素手で殴り、蹴り壊す。動いてるだけの甲冑なら武器を使う必要も無さそうだ。

――暫くは俺と行動した方が良いんじゃないか?世事の一つも言えないガラクタの甲冑よりは俺の方が一緒に居てマシだと思うが。(悪戯っぽく笑い



●断章
「不気味な場所ね……早く中学生達を見つけないと」
 UDCエージェント、藤谷理沙は記憶消去銃の下部に取り付けたフラッシュライトで廊下を照らしながら、慎重に進んでいた。なんでも、組織が要注意物件として警戒していたこの洋館に、中学生グループががふざけて侵入してしまったらしいのだ。
 さらに、トドメとばかりに組織のレーダーがUDCの反応を検知。そこで急遽、一番現場の近くにいた私が持てるだけの武器を持って突入したというわけである。
 目を凝らし、耳を澄まして廊下の奥の気配を探る。しかし洋館は思いのほか広く、人の気配は感じられなかった。
「二階に上がってみようかしら……」
 私が階段を登ろうとしたその時、だった。後ろから急にポンと肩に手を置かれ、心臓がドクンと跳ねた。

「埃臭くて湿っぽい場所には似合わない美人だ。――それで。何か探し物……いや、『探し人』か?」
 振り向いた先には、明らかにこの世界の人間ではない銀髪のイケメンが立っていた。

●便利屋Black Jack
「こんなトコでウロウロしてちゃ危ないぜ。見な」
 カイム・クローバーはクイッと親指を後ろに向け、藤谷が来た道を示した。カイムに見惚れていた理沙は我に返り、少し遅れてそちらを向く。
「――え?」
 そこには、西洋騎士――否、伽藍洞の甲冑がシャン、シャンと音を立て、こちらに向かって歩いてくる姿があった。

「私の後ろから……? 気付かなかったわ」
 理沙は銃を構え、戦闘態勢を取った。すると甲冑の方も腰の剣を抜き、応戦の構えを取る。緊迫した空気が両者の間に流れたが、カイムは飄々とした態度を崩さず、口笛を吹いた。
「美人を口説くなら、もう少しお喋りで軽快な雰囲気の一つでも作るのをお勧めするぜ?」
 次の瞬間、カイムの重心が深く沈んだかと思うと、その姿が理沙の視界から消えた。縮地法の如き速度で移動し、甲冑の前に再出現したカイムは、甲冑の胴へと蹴りを叩き込む。甲冑はひとたまりもなく吹き飛び、壁に叩きつけられてバラバラになった。
「動いてるだけの甲冑なら武器を使う必要も無い」
「強い……!」
 カイムの鬼神の如き強さに理沙は戦慄した。後に知ることになるが、カイムは便利屋『Black Jack』として、UDC組織でも名を知られた男だったのだ。最も、その高い実力だけではなく、性格の癖の強さも有名だったのだが……。

「――暫くは俺と行動した方が良いんじゃないか? 世事の一つも言えないガラクタの甲冑よりは俺の方が一緒に居てマシだと思うが」
 一瞬で甲冑を片付けた後、カイムは理沙に手を差し出し、悪戯っぽく笑ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ループ』

POW   :    ループを引き起こしている元凶を排除する

SPD   :    ループが起きる条件を満たさぬよう切り抜ける

WIZ   :    ループが起きる法則を見極めて潜り抜ける

👑11
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●ループ
 三人の中学生達を無事に保護し、UDCエージェントとも合流できた猟兵達。適当な部屋に入り、自己紹介をしようとした矢先に不思議なことが起こった。
 突然、猟兵達は最初に自分達が転移した場所に戻っていたのだ。時計を見ると、なんと時刻までもが転移直後の時間を示していた。信じがたいことだが、どうやら時間が巻き戻ったらしい。
 猟兵達は何度か中学生を救出し直したが、何度やっても、中学生達を救出してからしばらくするとこの時間に巻き戻されるということが分かった。猟兵達はなぜループが起こるのかを解明しつつ、三人の中学生達(とエージェント)を救出し直さねばならない。

 MSより:
 この章は一章開始時と同じ状況で物語が始まりますが、登場人物は全員過去の記憶を引き継いでいます。その為、「前回の記憶」を利用することで、出会う前からNPCにメッセージを伝え、行動を変えさせることができます。ただし、時間が巻き戻ると、ユーベルコードの効果などの、記憶以外の影響は全て消滅します。
 なお、ここまでのループでは誰も死亡していない為、死者が出た場合どうなるかは不明です。また、一章参加者ではない猟兵が新たに参加された場合も、継続参加の方と同じようにループに取り込まれます。
 以上の条件を利用し、ループの謎に挑みましょう。
黒沼・藍亜

うーん……あの浮浪者が戻ってなければループ対象は「その時点で洋館内にいる者」と思うっすけど……まあ出れなきゃ意味ないか

予めループ前に
怪異が増えるかもしれない事、だから危険そうなモノ・場所には近づかない事、をJC達に言い含めて…

今度はボクの中の粘液状UDC『昏く暗い黒い沼』を足元に滴らせ広げ、
その「沼」からUCで落とし子【奈落這う黒群】を呼び出し。

後は黒群たちを散開させ洋館内を《情報収集》、
ついでに鎧とか危なげな品を《怪力・運搬》でお片付けっす
何か見つかるといいけど

それと…ボクだけ別行動でJC達と合流しない場合、ループとか怪異はどうなるっすかね?一応ボクも自衛ぐらいはできるし試してみるっすかね



●邪神館探索
「うーん……あの浮浪者が戻ってなければループ対象は『その時点で洋館内にいる者』と思うっすけど……まあ出れなきゃ意味ないか」
 再び洋館の入口に戻ってきた藍亜は、ループの規模について思案していた。いくら邪神級UDCとはいえ、封印された状態で世界規模で時間を巻き戻すようなユーベルコードが使えるとは思えない。念の為UDC組織に電話で確認してみると、案の定UDC組織の者達にはループの記憶などなかった。やはりこの洋館限定の怪奇現象なのだろう。

「アンタ達はボクらが来るまで極力動かないでいて欲しいっす。危険そうなモノ・場所には近づかない事。行動パターンが変わると別の怪異が発生するかもしれないし」
 前回ループした際、中学生達にそう言い含めておいた藍亜は、中学生達のガードは他の猟兵に任せ、館内を捜索することにした。まだ館内の全域を捜索できているわけではない。もしかすると、ループのスイッチとなる物理的な要因があるのかもしれない。

「さーて、お仕事の時間っす。出てくるっすよー」
 藍亜の体から、ぼとぼとと黒い粘液が滴り落ち、染み広がっていく。黒い沼のように床を侵蝕した粘液はぼこぼこと盛り上がり、黒い球体が連結した不気味な虫のような姿を形作った。

『奈落這う黒群』(サモンブラックワーカーズ)。藍亜に取り憑いているUDCの力の一端を引き出し、使い魔として使役する術である。

「さあ、探偵パートの始まりっす。ついでに危ないものは取り除いておくっすよ」
 虫達を蟻のように働かせ、藍亜は洋館内を捜索していく。鎧や刀剣類、なんか入ってそうな怪しい壺などの危険物は藍亜の元に持ってくるように命じた。

「何か見つかるといいっすけど……あ」
 しばらく(虫が)館内を捜索していると、一体の虫の気配が突然消えた。たぶん、消されたのだろう。恐らくは甲冑や悪霊よりも邪神に近しい何かに。
「なんだ、単純な話じゃないっすか。多分、ループの元凶がそこにいるっすね」
 藍亜はロビーにあったソファからよっこいしょと腰を上げ、虫が消えた場所へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー

予知では何度も救出を繰り返すなんて情報はない。猟兵が彼女達と接触する事で本来、起こり得ない事が起きてる。要するに……猟兵の出現に邪神が相当焦ってるって事だろうぜ。

変わらず理沙と行動。館内の全員が合流するのがループの条件か?と考え、他のメンバーと合流せずに封印状態の邪神を探索に出る。学生達は他の猟兵が護衛に付いてるようだ。面倒な事にはならねぇだろ。
仮に。ループが始まったとしても邪神の場所が分かってるのは無駄にならねぇさ。記憶は消えねぇわけだし。
雑談でもしながら行くか。施錠された扉はピッキングツールのような物を使ってUCの【鍵開け】。
魔術的な仕掛けの施した扉があれば――それはもうビンゴだろうぜ。



●封印された扉
「館内の仲間が合流するのがループの条件か? 要するに……猟兵の出現に邪神が相当焦ってるって事だろうぜ」
 グリモア猟兵の予知が見通せる範囲にはムラがある。今回は特に情報の少なかった事件だ。予知で判明しなかった部分については、現場の猟兵が推測するしかない。この時間が巻き戻るという、摩訶不思議な現象は邪神が猟兵を恐れ、対策を講じた結果なのではないか……カイムはそう判断した。

「とりあえず、あのお嬢さんと合流するか。危なっかしいしな」

 ――他の猟兵との接触は避け、猟兵ではないエージェントである理沙と館内を探索する。
 それがカイムの方針だ。カイムはちゃっかり聞いておいた理沙の携帯に電話をかけ、待ち合わせ場所を決めた。
 

「あんたは新人エージェントなのか? 随分若いが」
「それはどうも。現場に初めて出たのは去年の十二月よ。でも猟兵さんと一緒に仕事をするのはこれで三度目ね」
 難無く理沙と合流したカイムは、雑談しながら理沙と洋館を探索していた。聞くところによると、理沙はまだ現場に出てきてから半年程度しか経っていない新人らしい。もっとも、単独で邪神案件に飛び込んできているあたり、度胸はその辺のベテランより上かもしれない。
「なるほど、美人な上に勇敢と来たか。仕事だけの関係にするにはもったいないぐらいの女性だな」
「はいはい、ナンパは仕事が終わってからにしてね。ほら、集中!」
 理沙はまんざらでもなさそうな様子だが、依然緊迫した状況だからか、適当にカイムをあしらい、周囲に注意を払って進んでいった。

「おっと。この扉、鍵がかかってるな。開けるから少し離れてくれ」
 カイムは『盗賊の極意』のユーベルコードを使用し、一瞬にして施錠を外した。余りの早業に、理沙はカイムが扉に手を触れただけのようにしか見えなかった。

「……固定電話が置いてあるな。この電話、他の部屋でも見たぞ。この洋館は昔ホテルだったのか? 妙に数が多い気がするが」
「いえ、そんなことはないはずよ。確か、廃墟になる前は外国人の別荘だったはず」
「そうか」
 カイムは短く返答した後、受話器を取ってみた。しばらくそのまま待機してみるが……特に何も起こらなかった。

 その後も二人は何度か時間切れでループしつつも、館内の探索を進め、怪しい部屋に辿り着いた。
「ビンゴだな。見るからに怪しい部屋だ」
 二人が辿り着いた部屋の扉には、悪魔の顔のような不気味な模様が彫られていた……。

成功 🔵​🔵​🔴​

外邨・蛍嘉

ループねぇ…少し気になるのは、浄化したはずの浮遊霊も戻ってるのかどうか。
戻ってたら相当だし、新たに引き寄せられてるのなら、それも問題だし。

でも、どうにかして抜け出さないとね。『陽凪』は引き続き呪詛を食べておくれ。
私は常に【藤蛍】でお祓い(浄化)をしていこう。
過去の記憶持つとはいえ、怖いものは怖いと思うしね?結界術で守るけどさ。

これ、誰かが死なないとループ解除されないとかないよね?
血の生け贄欲してるみたいだし。
そうだったら、まあ考えるよ。元から死んでるから、今さらだし。乙女とは言いづらいけどね。
大丈夫大丈夫、兄もわかってくれるさ。結果的には偽装死になるしね!


アラン・スミシー(サポート)
基本突然現れて仕事を終えたら去っていく人物です。

情報収集が必要なら他の猟兵の手の回らない所に赴き集めて聞き込みをしてからメイン参加者に渡し、足止めが必要ならガラスのラビリンスを展開し、一般NPCがピンチなら白馬の王子様で救出…みたいな手の足りない所に何故か居るみたいな感じです。

説得や交渉等が必要ならなんか良い感じの言葉を言います。
例:君の正義は分かった。しかしその正義は君を救ったかい?

ユーベルコードのセリフを参照し、MSの言って欲しい都合の良い言葉をアレンジしてやってください。

武器はリボルバー銃メイン。

「手伝いが必要かい?
「この程度なんて事はないさ
「君は君のやるべき事を



●蛍嘉とアラン
「ループねぇ……少し気になるのは、浄化したはずの浮遊霊も戻ってるのかどうか。
戻ってたら相当だし、新たに引き寄せられてるのなら、それも問題だし」
 再び洋館の入口へと戻ってきた蛍嘉はぽつりと呟いた。
 目を凝らして霊視してみると、浄化したはずの浮遊霊もしっかりと現世に舞い戻っている。どうやら、本当に時間が巻き戻っているようだ。
「手伝いが必要かい?」
 いつの間にか蛍嘉の隣に出現していた、痩せぎすの枯れた様相の男が帽子をいじりながら蛍嘉へと問いかけた。名はアラン・スミシー。神出鬼没なことで知られる猟兵である。
「じゃあ、中学生達の方を頼もうかな。私はこの霊達を浄化してから進むよ」
「了解した。任せてくれ」
 アランはリボルバー拳銃を利き腕に持ちながら、洋館の奥へと進んでいった。

「さて、またお願いね。陽凪」
 蛍嘉は再び宙を泳ぐガラ・ルファ(鯉科の熱帯魚。ヒトの角質を食べることで知られる)、陽凪を呼び出した。陽凪は洋館の中を悠然と泳ぎ回り、むしゃむしゃと洋館内に漂う邪霊を食べ始めた。陽凪もループの影響を受けているのか、満腹であるという気配は全くない。今初めて呼び出されましたとでも言わんばかりに、霊を食い散らかしている。

「安らかなるを願いマス」
 再び蛍嘉が藤蛍を発動すると、今度はクルワが蛍嘉の代わりにぽつりと呟いた。藤色の淡い光が再びぼわん、ぼわんと蛍嘉の周りに満ち、霊達を優しく浄化していく。

「さて、中学生達のことは他の人達に任せて、私はさっき行かなかった所を調べてみようかね」
「隠れて藤蛍をやり過ごした邪霊がいるかもしれマセンからネ」
 蛍嘉は藤蛍で身を守りながら、洋館の奥へと足を踏み入れていった。


 その頃、中学生達が立てこもっている部屋では……。
「やれやれ、私は平和主義者(ピースメーカー)なんだがね」
 ドンドンドンドンッ!
 アランの手にした回転式拳銃が火を吹き、中学生達ににじりよっていた不気味なマネキン人形達の額を瞬く間に撃ち抜いた。
 致命傷だったのか、マネキンたちはガシャンと床に崩れ落ち、中学生達は安堵の溜息をつく。
「サンキューベリーマッチ」
 流暢な英語で礼を言いながら、ぺこりと頭を下げる奏。
「助かった~。探偵のおっさん、ありがとう! それ、本物!? ちょっとアタシにも見せてくんない!?」
「こら、響、失礼でしょ! あと、ナチュラルに銃に興味を示すな! 男子か! ありがとうございました。ええと……」
 響と琴子も(日本語で)アランに礼を言うが、響はアランのリボルバーに興味深々の様子だ。
「名乗る程の者じゃないさ。姫君たちのピンチに駆け付ける白馬の王子様の役がこんな枯れた中年で済まないね。あと、これは危ないから触るのは遠慮してくれたまえ」
 三人の中学生達の救出に成功したアランは銃を降ろし、肩をすくめるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

テレシア・テラー
どろろ〜ん。さっきからずっと同じ味の恐怖ばかりで流石に食べ飽きてきたぞ〜。ポルターガイストなんて悪戯、テレシアもやりたいのに。

アプローチを変える為に透明化を解除。姿を表して三人の前に出ていく?
感じるこの味(感情)は……好意?
「なにこのおばけ可愛い!!」って?……恐怖の亡霊テレシア・テラーを前にして、恐ろしさのあまりに気が狂ったのか?
よくわからないがテレシアを見ておばけへの恐怖心がやわらいだ様子……何故?

あとはお任せ。



●恐怖のグルメ
「どろろ〜ん。さっきからずっと同じ味の恐怖ばかりで流石に食べ飽きてきたぞ〜。ポルターガイストなんて悪戯、テレシアもやりたいのに」
 幾度かループを繰り返し、また洋館のホールに戻ってきたテレシアは唇を尖らせた。いくらテレシアが恐怖を糧とする西洋妖怪とはいえ、同じ人間の、しかも同じ種類の恐怖を何度も食べ続けていてはさすがに飽きてくる。テレシアは案外グルメなのだ。
 再び家具がガタガタ揺れる場面まで戻って来たテレシアは一計を案じた。
「透明化、解除」
 テレシアはアプローチを変える為、ゴーストヴェールの効果を切ったのだ。揺れる家具を霊障で抑え込みつつ、おもむろに中学生たちの前に姿を現す。
「ばあ~! お化けだぞ~!」
 布の下でヤクザ顔負けの迫力ある表情を作り、精一杯メンチを切る。自ら恐怖を演出し、中学生たちから自分への恐怖を搾取しようという企みである。しかし、肝心の中学生たちの反応は……。
(感じるこの味は……好意?)
「なにこのおばけ可愛い!!」
「絵本のお化けみたい!」
「あれだあれ! 夜更かししてると拉致されるやつ!」
 きゃあきゃあと嬉しそうに騒ぎ出す女子中学生ズ。なぜかテレシアは大人気であった。
(……恐怖の亡霊テレシア・テラーを前にして、恐ろしさのあまりに気が狂ったのか? よくわからないが、テレシアを見ておばけへの恐怖心がやわらいだ様子……何故?)
 余りの恐怖に感覚がマヒし、一周回ってかっこよくなってしまったのだろうか。テレシアは訝しんだ。クトゥルーの神々とかに相対するとたまにそういうヤツが出ると聞くが……。
「その布の下はどうなってるのかな? お姉さんに見せてみ!」
「ああ、こら! 布の中は覗いたら駄目です! てい!」
 好奇心旺盛な響をチョップで迎撃し、テレシアは中学生たちから距離を取った。オランウータンのように激しく体を揺すり、中学生たちを威嚇していると、いつの間にか、ポルターガイスト現象がぴたりと止んだ。さらに、もう時間が巻き戻る気配はない。どうやら、誰かがループを止めることに成功したようだ。
 テレシアは肩の力を抜き、安堵の溜息をつくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『四三一『デビルズナンバーもしもし』』

POW   :    悪魔の呼掛(デビルコール)
【対象に電話をかけ、背後に瞬間移動する事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【とても鋭利なカッターナイフ】で攻撃する。
SPD   :    悪魔の電話(デビルテレフォン)
【未来の自分自身と通話することで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    悪魔の文句(デビルクレーム)
【対象が傷つくであろう罵詈雑言】を籠めた【迷惑電話】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【精神】のみを攻撃する。
👑11
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●邪神、復活 
 猟兵たちが洋館の最深部にあった部屋に踏み込むと、そこは西洋人形が所せましと並ぶ異様な部屋であった。また、部屋の中央には血で描かれたような魔法陣が刻まれている。猟兵が踏み込んだ瞬間、人形の一体が動き出し、形容しがたい不気味な声を発した。
「ダレモイカシテカエサナイ」
 とうとう封印の部屋まで踏み込まれた邪神は不完全な力のまま、人形を依り代に強引に復活したのだ。そして、個人の携帯電話を含む、洋館中の電話という電話が一斉に鳴り響き始めた……。

 MSより:
 前章でループが発生していたので、この章開始時点での猟兵の所在地は自己申告で構いません。なお、邪神が洋館を外界から隔離している為、NPCは全員洋館内に残っています。
カイム・クローバー

…人間を象った人形や玩具ってのは魂やら怨念やらを宿すらしいが。理沙、今ならまだ間に合うぜ。扉の外で待機しておいた方が良いんじゃないか?(肩竦め、彼女の意志に任せる)

近所迷惑な目覚めだ。アンタ、目覚ましのアラーム一個じゃ起きられないタイプ?耳障りにも程があるぜ。軽口交じりに【挑発】。
もし理沙が付いてきているなら彼女の護衛を優先して動く。言っとくが、怪我一つさせるつもりは無い。
俺は反抗的でね。生かして帰さない、なんて言われると意地でも全員、生かして帰したくなるのさ。
右手に魔剣を顕現。理沙を伏せさせ、UCで部屋全体の西洋人形を【焼却】。

持ち主の居ない人形だ。悪巧みされねぇよう派手に供養が必要だろ?



●魔剣の使い手
 僅か三十センチほどの小さな人形に乗り移った邪神は壊れたスマートフォンを手にしながら、侵入者達を睨んでいる。
「……人間を象った人形や玩具ってのは魂やら怨念やらを宿すらしいが。理沙、今ならまだ間に合うぜ。扉の外で待機しておいた方が良いんじゃないか?」
 カイムは理沙を守るように一歩前に踏み出すと、肩を竦めた。
「相手は邪神でしょう? 貴方達の側にいた方がまだ安全よ」
「違いない。なら俺の後ろから離れるな」
 理沙は銃をホルスターから抜き、両手で構えた。どうやら、出ていくつもりはないらしい。猟兵ではない彼女が戦力になることはないだろうが、目に見える所にいた方が安全だというのは一理ある。カイムは口笛を吹くと、さらに一歩前へと進み出た。
「~♪~♪」
 その時、場違いなほど明るい歌謡曲が部屋に鳴り響いた。電源を落としていたはずの理沙の私用のスマートフォンの着信音だ。
「え」
 理沙が音に反応した瞬間、邪神の姿がふっと掻き消えた。瞬間移動したのだ。邪
「キキキ」
 理沙の背後に再出現した邪神は彼女の背中を一突きにせんと、身の丈程もあるカッターナイフを振り上げた!
 しかし、その瞬間、神がかり的な反射で邪神の動きに反応したカイムが理沙と邪神の間に割って入り、邪神に拳を叩きつけた。軽く吹っ飛ぶかと思われた邪神はカイムの拳をスマートフォンで受け止め、不気味な笑い声を上げながら空中で静止している。
「近所迷惑な目覚めだ。アンタ、目覚ましのアラーム一個じゃ起きられないタイプ? 耳障りにも程があるぜ」
 未だに鳴り続けている電話の音に辟易としながら、カイムは理沙を抱えて後ろに飛んだ。彼女には怪我一つさせるつもりはないのだ。
「俺は反抗的でね。生かして帰さない、なんて言われると意地でも全員、生かして帰したくなるのさ」
 理沙を降ろしたカイムが唇の端を吊り上げた瞬間、その右手が赤く輝いた。それと同時に、邪神の姿が再びカイムの視界から消える。ナイフを振り上げた邪神が再出現した位置は――カイムの背後!
 だが、その一撃はカイムの右手に顕現した巨大な剣に受け止められていた。カイムが体ごと叩きつけるように邪神に向かって大剣を一閃すると、刀身から黒銀の炎が噴き出した。激しく燃え盛る炎は邪神へと襲い掛かり、一瞬にしてその全身を焼き焦がす!
「理沙、伏せろ!」
 カイムの声に反応し、理沙は咄嗟に身を伏せる。次の瞬間、神を殺す魔剣から放たれた無慈悲なる黒銀の炎は部屋全体へと燃え広がり、部屋中の人形を焼却していく。
「持ち主の居ない人形だ。悪巧みされねぇよう派手に供養が必要だろ?」
 十秒もしない間に、部屋中の人形は全て焼き尽くされ、灰となった。そして、洋館中で鳴っていた電話も止まり、洋館は再び静寂を取り戻した。
「た、倒したの?」
 カイムが炎を消したすぐ後、むくりと起き上がった理沙が尋ねた。
「いや、逃げられたみたいだな」
 カイムは再び肩を竦めた。部屋中の人形を焼き尽くしたつもりだったが、いつの間にか、一番最初に焔に呑まれた邪神入りの人形だけは、部屋から消失していたのだ……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒沼・藍亜

部屋に向かう途中っすけど……その必要はなくなったっぽいっすね
さっきの異常からすればやけに目につく電話含めて、ここは既に「向こうの領域」
ならそれを崩しながら動くだけっす

足元に黒い粘液状UDCを滴らせ、沼のように広げいつでも攻撃を仕掛けられるように
触腕やUCの、触腕でのパンジャン落とし子ぶん投げ爆破で電話機を見掛け次第破壊しながら進むっすよ

邪神相手には触腕で捕まえ締め上げたり
改造銃からのワイヤーで捕まえ通電したり
パンジャン落とし子を投げつけたりするっすよ
電話は無視。この状況で掛けてくる奴なんか例え同僚・上司でも知らない。

……ボクの戦闘、基本こんななのでJC達との合流と護衛はほかの人にお任せっす


外邨・蛍嘉


いた場所は、部屋の一つかな。中学生たちとは別行動してたときだ。
なるほど、人形ってのは宿りやすいからね…なまじ人に似てるから、とても厄介だよ。

でも、立地が悪かったね?ここは部屋でさ、当たり前だけど壁で区切られてる。
…そうだよ、その壁も利用して閉じ込めの結界術を張ってる。さらに、室内だけど天候操作で雲を呼び出して浄化の雨も降らせてる。
キミのは、電話という一手間がいるんだ…さて、この雨の中、視認しづらくなった剣撃を避けられるのかい?
ふふ、聞く暇も無いままに斬ってあげよう。これこそ、歩き巫女の統括者の役割さ。

誰も犠牲にはさせないよ。


カイム・クローバー

逃げた人形を追うぜ。

人形と猟兵との戦闘の痕跡を【追跡】。逃げ足は早い邪神だ。隠れ潜んで、は可能性としては高い。
理沙の様子には気を配る。生贄を求める邪神なら殺しやすい相手から狙うのがセオリー。……理沙を囮のようにしちまってるのは気が引けるが、彼女に怪我の一つもさせる気は無いってのは最初から変わらねぇよ。
だから――理沙の携帯が鳴るだろう事は予想してたし、警戒してた。
理沙の身体を優しく左腕に抱きよせ、瞬間移動してきた人形の顔面に右手の銃口を。
思い描いた脚本通りじゃなくて悪かったな。UCで顔面を吹き飛ばす。
誰も死なない二流ホラーってのも悪くねぇモンだ。――ま、主演がイケメンだからな。(理沙に笑う)


テレシア・テラー
◎中学生に気に入られ、抱っこされて一緒
霊体なので異常な程軽い

誰も生かして帰さない?そもそももう死んでるおばけだぞ〜!
三人を守る為に離れてもらい、浮かび上がって立ち塞がるが

「幽霊の癖に全然怖くない。恐怖の亡霊?え、どこが?」と言うような罵詈雑言を電話持ってないので直接言われショックを受けて落ち込んでしまい、その隙に更なる精神攻撃としてわたしの嫌がる事……被っている布を脱がされてしまうかも

しかし布の中身は【真の姿】
その解放により精神の負傷が回復
マスタールール参照

でもやっぱり恥ずかしいので見ないでください〜〜っ!!!
暴走してぱんつの力で霊障が強化されUC付ポルターガイスト攻撃

うぅ、はずかしい…///


徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
 サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
 嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!



●UDCエージェントVS邪神!
「さっきの部屋に行こうと思ってたけど……その必要はなくなったっぽいっすね」
 一人で廊下を歩いていた藍亜は目を細めた。彼女は一度前のループで見た怪しい部屋に向かおうとしていた途中だったのだが、途中で洋館の空気の変化を感じとったのだ。藍亜の内にいるUDCも嫉妬に震えているのが分かる。どうやらこの洋館の邪神が目覚めたようだ。
「ここは既に『向こうの領域』。ならそれを崩しながら動くだけっす」
 藍亜は精神を集中し、内なるUDCを励起させる。すると、藍亜の全身からどす黒い粘液が滴り落ち、足元に汚泥のような染みが生まれた。
「まずは一発っす!」
 黒い汚泥が持ち上がり、ざぱん、と車輪のような何かが飛び出した。狙うはそこら中でやかましく鳴り響いている電話機だ。イギリス軍の黒歴史を模したUDCの落とし子は真っすぐに電話機へと突っ込んでいき、電話機諸共大爆発を起こした。爆炎と爆音が電話の騒音を掻き消すと共に、飛び散った黒い粘液により、藍亜の内に封じられたUDCのテリトリーがさらに広がっていく。
「手あたり次第に行くっす!」
 続けて二発、三発と、藍亜はパンジャン落とし子を放つ。藍亜は電話機が目につくたび、落とし子を特攻させて電話機を破壊していった。実はその間もずっと電話口からは邪神のメッセージが流れ続けていたのだが、大爆音のせいで藍亜には全く聞こえていなかった。もしかしたら私用の携帯も鳴っていたのかもしれないが、今の状況で電話をかけてくる奴はたとえ上司でも断固無視する方向だ。
 しばらく藍亜が爆弾テロ活動を続けていると、流石に無視できないと思ったのか、ゾンビのような姿になった邪神がぬっと姿を現した。
「出たっすね! 邪神! 覚悟!」
 即座に藍亜は黒い沼から触腕を取り出し、足元から邪神を強襲した。鞭のようにしなるUDCの触腕は邪神の足に絡みつき、その身を拘束する。すかさず藍亜は銃を抜き、ワイヤーを撃ちこんで電流を流した。
「ギャアアアアアア」
 悲鳴を上げた邪神は空中に溶けるように消え、藍亜の前から消失した。

●一つの結末
「理沙、逃げた人形を追うぞ!」
 邪神が去った後すぐにカイムが叫んだ。復活が中途半端だったとはいえ、邪神を洋館の外に出すわけにはいかない。確実にこの場で始末しておく必要がある。
「ええ! もちろん!」
 理沙は銃を構え、カイムの後からついてきた。カイムは他の猟兵との戦いを痕跡を探し、邪神の行方を追う。そこら中に爆破された電話の残骸があるのが気になったが、流石に破壊された電話からは発信も着信もできないだろう。
「~~♪~~♪」
「嘘、電源さっき切ったのに!」
 再び理沙のスマートフォンが着信メロディを奏で、二人の間に緊張が走る。だが、この事態を予想していたカイムはすぐさま理沙を優しく抱き寄せ、『双魔銃オルトロス』の片割れを構えた。
「お前はもう一度、理沙を狙ってくるんじゃないかと思ってた」
 三人の中学生達には二人の猟兵が付いている。となれば、今この洋館内で一番ガードが薄いのは理沙だということになる。邪神が復活の為のエネルギー源として生贄を欲しているのならば、彼女を狙ってくるのは半ば必然だった。理沙を囮のようにしてしまったのは気が引けたが、自分が側で守るのが一番確実だと判断したのだ。
「思い描いた脚本通りじゃなくて悪かったな――『Jack pot』!」
 カイムの右手の銃口から紫雷を纏った銀の銃弾が滑り出し、邪神の顔面へと叩き込まれる。顔面の右半分を吹き飛ばされた邪神は悲鳴を上げながらカイム達の前から消え、二度と二人の前に現れることはなかった。
「誰も死なない二流ホラーってのも悪くねぇモンだ。――ま、主演がイケメンだからな」
 カイムは白い歯を見せ、理沙に笑いかけた。
「え、映画とかだとここは感謝のキスをする場面かしら?」
 すっかりヒロイン気分になった理沙は今この瞬間だけ仕事を忘れ、頬を染めながら言った。

●邪神の最期
 だが、物語のエンドロールにはまだ早い。腐っても邪神級UDCというべきか、『四三一デビルズナンバーもしもし』は未だ復活を諦めていなかったのだ。

「なぜわたしは中学生に抱っこされているのか」
「それはテレシアちゃんがとても可愛いからだ」
 猟兵達が邪神と激闘を繰り広げていた頃、テレシアは何故か護衛対象である中学生の一人、響に抱っこされていた。幸い(?)ゴーストである彼女は霊体なので体重は異常な程軽い。きっとチワワより軽いだろう。
「皆さん、気を付けて下さいね。どうやら戦いはもう始まっているようですから」
「上様、お願いします」
「ミッチー、よろしくね」
 少女達を警護するように扉の前に立ち、油断なく目を光らせているのは徳川・家光だ。彼は実はサムライエンパイアの将軍なのだが、UDCアースの一般中学生である少女達は『徳川って苗字、今でもあるんだな』ぐらいにしか思っていなかった。
 とぅるるるるるる!
 突然、けたたましい電話の呼び出し音が室内に鳴り響く。部屋の隅に置いてあった電話機が鳴っているのだ。
「え、電話!? 出た方がいいの!?」
「いえ、絶対に出ないで下さい」
 家光は困惑する中学生達を制止しながら、鎚曇斬剣を抜いた。今回は屋内での依頼だったので、かさばる日本刀ではなく、取り回しのいい剣を持ち込んだのだ。電話はしばらく鳴った後、諦めたかのように沈黙した。そしてしばしの静寂の後、家光とテレシアの脳に直接鳴り響くかのような、悍ましい声が聞こえた。
「徳川家光……お前は所詮、親の七光りに過ぎぬ……生まれについての将軍などとは片腹痛い……」
「幽霊の癖に全然怖くない。恐怖の亡霊? え、どこが?」
 二人の脳に響いた罵詈雑言は邪神が放った標的の精神のみを傷つける呪言のユーベルコードだ。言葉の刃は二人の心に突き刺さり、ジクジクと滲むような鈍い痛みが生まれた。
「余を愚弄するか。余が何者か知りながら侮辱したのだ。相応の覚悟はあるのだろうな、邪神よ」
 家光は全身から怒気を迸らせ、ユーベルコードを解放した。
「どこに隠れているのか知らぬが……その姿、暴き出してくれる。削ぎ剥がせ、神話の獣。『神州因幡白兎殺』(シンシュウイナバノシロウサギゴロシ)」
 皮剥ぎ刃を身に纏った百の鮫が洋館中に溢れ出す。宙を泳ぐ鮫は狩人となり、邪神を探して館内をうろつき始めた。
「シャアアーーク!」
「ギャアアアアア!」
 そして一体の鮫が家光達がいた部屋の天井に勢いよく突っ込んだ。邪神は天井裏に隠れていたのだ。空飛ぶ鮫に食らいつかれた邪神は表面を牙と刃で削ぎ落され、見るも無惨な姿となってぼとりと落下してきた。おまけにカイムや藍亜との戦いで全身焼け焦げている上に顔面も半壊しているので、その姿はホラー映画の怪物もかくやといった有様だ。
「ば、化け物だあああああ!!」
「ぎゃー! ぎゃー!」
「きゃあああああ! ああああああ!」
「落ち着いて下さい! すぐ僕達が退治するので!」
 騒ぎ出す中学生達。通常モードに戻った家光は強硬状態に陥った中学生達を必死で宥めた。

「私……怖くない……?」
 一方、テレシアの方は部屋の隅っこにうずくまり、未だに落ち込んでいた。邪神の罵詈雑言がだいぶ答えたようだ。そこに目を付けた邪神はテレシアの足元へと素早く滑り込んだ。
「キキキ」
 邪神は布の端を掴み、勢いよく引っぺがした!
「~~~~~!!」
 すると、布の下から、下着姿の可愛らしい幽霊少女が出て来た。この姿こそ、ゴーストヴェールによって隠されていたテレシアの真の姿だ。真の姿が解放されたことにより、テレシアが邪神に与えられた心の傷もみるみる内に癒えていく。心の傷が塞がったテレシアはむくりと立ち上がった。
「でもやっぱり恥ずかしいので見ないでください〜〜っ!!!」
 羞恥心の余り暴走したテレシアは、どろんぱんつの力で強化された霊障を邪神へと叩きつけた。ろくに制御されていない力は暴発し、連鎖する呪いとなって邪神を襲う!
 棚が邪神に向かって倒れ、割れた皿が邪神へと降り注ぎ、家電が一斉に爆発して邪神に向かって火を噴いた。畳みかけるような連続攻撃を浴び、邪神はもう虫の息だ。邪神は電話を介した瞬間移動でこの窮地を脱出しようとしたが――。なぜか瞬間移動がうまくいかなかった。既に洋館中の電話機は全て藍亜によって破壊されていたからだ。最後の手段とばかりにこの場にいない猟兵の携帯電話にも電話をかけてみたが、それもうまくいかなかった。

「なるほど、人形ってのは宿りやすいからね……なまじ人に似てるから、とても厄介だよ」
 いつの間にか部屋に入ってきていた老女は溜息をついた。老女――蛍嘉は邪神を外に逃がさないよう、すぐさま部屋に結界を張り、外界と隔離したのだ。さらに蛍嘉が念を込めると、屋内にもかかわらず激しい霧雨が降り始めた。
「浄化ノ雨、カ」
 邪神は片言で呟いた。
「正解だよ。さて、この雨の中、キミは視認しづらくなった剣撃を避けられるのかい?」
 蛍嘉は妖影刀『甚雨』を抜くと、一瞬にして邪神へと間合いを詰めて一閃した。三日月のような流麗な弧を描いた刃は邪神を真っ二つに断ち割り、骸の海へと叩き墜とした。
「さて、これで一件落着だね。これこそ、歩き巫女の統括者の役割さ。誰も犠牲が出なくて何よりだよ」

 こうして、人喰い洋館に封じられていた邪神は猟兵たちの手で復活を阻止されたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年07月11日


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#UDCアース
#UDCエージェント藤谷理沙


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は六六六・たかしです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト