書架隊商と灯台図書館(作者 花雪 海
52


#アルダワ魔法学園  #戦後  #商会同盟  #シナリオ50♡ 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園
🔒
#戦後
🔒
#商会同盟
🔒
#シナリオ50♡


0




 その街にはとても背の高い灯台がある。
 ただの灯台ではない、まるで城のように聳え立つ灯台だ。そしてその内は、アルダワでも有数の広大な図書館。
 この街の住人は皆本好きだ。それが高じて蒐集した多数の書架を収蔵しておく場所を求め、当時空っぽだった灯台に白羽の矢が立った。けれども次第に灯台だけでは足りなくなって、増築と改築を重ねた結果、いつしか灯台は広大な図書館へと変わっていたのだ。
 灯台図書館の街メモリア。
 それがこの地の名前だった。

 高く聳え立つ灯台は海と砂漠を遠くまで照らし、さながらマリス・ステラのように彷徨える船や旅人の道標となる。
 けれども七月になった時、メモリアの灯台の光が静謐の銀から眩い金に変わる。
 それは皆が待ち望んだ日の合図。
 一年に一度、メモリアの灯台図書館に最大の活気がやってくる。

 金の光を目指し、金のランタンを掲げた隊商がやってくる。
 金の光を導に、金の篝火を焚いた船がやってくる。
 一年に一度、灯台図書館で開かれるブック・キャラバンの為に。


「本は好きかい? オレは好きだよ。見たこともない景色、知らない誰かの心や人生、未知の知識。いろんなものを教えてくれるからね」
 読んでいた本を自身の隣の書架の塔に更に積み上げながら、ディフ・クライン(雪月夜・f05200)は猟兵たちにそっと微笑みかける。
「もし本が好きなら、アルダワの商会同盟にある街で良い催しがあるんだ。一年に一度の書架隊商……ブック・キャラバンがやってくるんだよ」
 ブック・キャラバンとは、その名の通り本だけを扱った隊商のこと。毎年七月、メモリアという街にある灯台図書館で、大規模な本のマーケットが開催されるのだ。
 隊商が扱う本の種類に制限はない。魔導書や魔法書など魔法を扱った本の他、地図や旅の心得、植物図鑑に動物図鑑。さらには料理本や小説や漫画、童話と言った娯楽本まで、ありとあらゆる種類の本が集う。
 書架隊商の決まりは一つだけ。それは『前回の書架隊商から今日までの一年間のうちに出版された新作の本であること』。
 それさえ守れば、書架隊商では誰でもどんな本でも持ち込んで販売することが出来る。商人が色んな本を仕入れて売る場合もあれば、作家自らが自分の著作を持って販売することもある。
 そこまで説明して、ふとディフは思いついたように皆を見渡した。
「そういえば、猟兵の皆の中にも作家さんが居たね。もしこの一年以内に自分で書いた本があったら、このブック・キャラバンに出す事も出来るよ。自分で売ってもいいし、持ち込みを歓迎している商人さんにお願いするのもいいね」
 内容はなんだって構わない。アルダワ以外の世界のことを書いた本であっても、アルダワの住人にはファンタジーとして受け入れられるだろうから心配は要らない。
 一週間ほど開催されるブック・キャラバンは、新刊を目当てに集う人々で毎年盛大な賑わいをみせる。商人と交渉しながら本を買うも良いだろうし、買ったその場で本を読み耽るのもいいだろう。
 なんにせよ、本好きにとってはきっと心躍るキャラバンになる。

 ――とはいえ、だ。これだけならば良かったのだが。
「ただ残念ながら、この灯台にオブリビオンの出現が見えた。灯台の光が青に変わる時、それはきっと現れる。キャラバンを楽しんでいても、気をつけていてね」
 ブック・キャラバン真っ最中のメモリアには人も本も多い。それらを出来るだけ傷つけないようにするには、恐らく灯台の頂上で戦うことになるだろう。

 ふわり。真白のオダマキの花が散って、花弁が雪華の門を作り出す。門の先には金の光に溢れた景色が見えた。
「懸念はあるとはいえ、一年に一度の本のお祭りだ。まずは楽しんで、それからきっちり守っておいで。皆ならきっと出来ると信じているから」
 皆なら大丈夫。
 柔らかくそう言い添えて、ディフは皆を送り出した。


花雪 海
 閲覧頂きありがとうございます。花雪 海で御座います。
 この度はアルダワより、書架隊商と灯台図書館の街へとご案内致します。

●第一章:本に親しむひととき
 灯台図書館前の広い公園で、ブック・キャラバンを楽しむことができます。
 並ぶのはどれも直近一年の間に出版された新作の本ばかり。時には異世界の本も混じっているかもしれませんし、自分の著作があれば新作に限り出店することも出来ます。
 魔導書は勿論、旅の記録や図鑑、錬金術書に料理本、小説に童話と沢山の種類の本が販売されています。
 本のお祭り、本との出会いを楽しんで頂ければ幸いです。

●第二章:『灯台守の男』
 純戦です。灯台の頂上にて戦って頂くことになります。

●プレイングに関しまして
 各章とも、プレイングの受付日時を設定しております。ご参加の際はお手数ですが、『マスターページ・各章の断章・シナリオタグ・お知らせ用ツイッター』などにて、一度ご確認下さりますようお願い申し上げます。
 期間外に届いたプレイングは、内容に問題がなくとも採用致しませんのでご注意下さい。
 ご一緒の方がいらっしゃる場合は『お名前とID』もしくは『グループ名』を明記して下さい。
 今回は花雪のキャパシティから【1グループ2名様まで】とさせて下さいませ。
 また、のんびり執筆の為再送をお願いする場合があります。万が一再送になってしまいましたら、お気持ちが変わらなければその日のうちに再送頂けますと幸いです。

●第一章は断章追加の後、【7/15(木)8:31~7/17(土)22:00】の受付期間を予定しております。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
130




第1章 日常 『本に親しむひととき』

POW絵本や童話をほのぼの楽しもう
SPD小説や物語の世界に心を委ねよう
WIZ学術書や指南書で知識を蓄えよう
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●書架隊商と灯台図書館
 ゲートを潜った猟兵たちがまず目にしたのは金の光。そしてその光を放つ灯台だった。
 灯台、というには大きすぎる建物だ。確かに建物の中心には高く頑丈な造りの灯台が建っているのだが、その足元はまるで城。控えめにいっても大貴族の館のようである。
 あれが、メモリアの灯台図書館だ。
 図書館の前にはこれまた広大な広場が広がっている。普段は静けさを湛える広場も、今ばかりは金の光と活気、そして本の香りに溢れている。
 光と活気を頼りに街道を進めば、すぐにそこに辿り着けるだろう。

 図書館の周囲にはたくさんの出店が軒を連ねていた。皆金の光を掲げ、たくさんの本を積み上げている。商人が声を張り上げる。

「さぁさ! こちらはアルダワ魔法学園の教師たちの論文の解説本だよ! 魔導論理や魔法薬学、元素魔法理論、魔法陣設計論、どれも最新論文の最速解説本だ!」
「こちらは錬金術関連の本を扱ってるよ! 錬金術概論は初級から王級まで、材料産地時点と精製方法論も揃ってるから、纏めてどうだい?」
「こっちは妖精や精霊の本が揃ってるぞ! 妖精や精霊との契約方法、その気性、それらをまとめた最新版が限定10冊!」
 図書館の右側は、主に学術本が揃っている。アルダワらしく魔法や錬金術に関することが大半だが、レベルは子ども向けから専門家向けまで様々だ。魔法に関する本が欲しければ、ここを覗いてみるといい。

「さあさ、こっちは各王国の近代ニュースを扱ってるよ。北方帝国の最新発掘事情、商会同盟のここ一年の取引の推移とこれからの予測、諸王国連合の最新農業事情、それぞれの本いっぱいあるよ!」
「こっちは猫の国のここ一年の法律を纏めた本だよ! 今年も変更点が多数! 猫の国に行くなら一度は読んどいた方がいい本だ!」
「最新の地図はいらないかい? 精霊の森、群島海域、中原地方、より正確な地図があるよ」
 図書館の左側は、アルダワの各国の事情などを纏めた本が多い。アルダワを冒険するのに役立つだろうし、何か別の使い道も出来るかもしれない。

 そして、一番の賑わいを見せるのが図書館中央側。
 小説、雑誌、料理本、各地のグルメ本に絵本に童話。ありとあらゆる娯楽本を集めた本のエリアだ。
「歌う本が今年もやってきましたよ。子どもと一緒に歌う童謡、寝かしつけに使うおやすみの歌。色んなお歌の本が揃っています。いかがですか?」
「目を閉じると情景が描かれる小説は如何かな? ファンタジーにサスペンス、恋愛に日常、色んな種類があるよ!」
「各国ごとにまとめた最新のグルメ本はこちらです! 今回は巻末にお食事割引クーポンもついてますよ!」
「魔法生物、幻想動物図鑑はいかがですか? 此方触れると実際の鳴き声を聞くことができますよ!」
「三精霊機関を使った最新の乗り物図鑑はこちらだよー! 超かっこいいよー!」
「絵本売ってます! 私が書きました、優しい物語の本です。手に取って読んでみてくれませんか?」

 たくさんの人。たくさんの声。そしてたくさんの本。
 灯台図書館は一年に一度の大盛況。
 欲しい本を探して何度も何度もキャラバンを巡る人。買った本を読みながら、その場で議論する人。新しい絵本に目を輝かせる子ども。
 ここを訪れる人々は皆本が好きな人ばかりだ。
 このキャラバンで自分で書いた本を持ち込んで売るもよし、商人に頼むもよし。たくさんの本を買うもよし。お気に入りの一冊を見つけるもよし。
 どんな楽しみ方をしたっていい。

 きっと、貴方との出会いを待っている本がここにはある。
アルデルク・イドルド
本ってやつは価値のあるもんだと思っている。
だからこそ商人としてブック・キャラバンには興味は尽きない。
俺も知識や教養の多くを本から学んだ。
海賊商人に拾われてからは叩き込まれたっていうのが正しいが…商人としての価値を上げるために必要だと理解してからは自主的に読むことも増えたしな。
ブック・キャラバン商人と話をするのもいい経験になるだろうさ。
いつか本を商売道具に扱うのも面白いだろうしな。

相棒にも読みやすい勉強の本…なんて言うのもあればいいんだがな…今までは境遇では機会はなかったかもしれないが俺はあいつにももっと世界を知ってもらいたい。その一歩になる本が欲しい。
まぁ、あいつが望むかは別だがな。



 灯台図書館前の広場は、それは盛大な賑わいを見せていた。
 店の軒先に灯る金の光は灯台で輝くそれと同じ。軒先並べられた様々な本は、どれも新しい紙とインクの匂い。大きく息を吸えば、それが肺を満たすのもまた心地いい。
 並べられた本を一つ一つ吟味しながら、アルデルク・イドルド(海賊商人・f26179)は賑わう書架隊商をそぞろ歩く。
 本とは価値のあるものだとアルデルクは思う。
 アルデルク自身も知識や教養の多くは本から学んだ。海賊商人に拾われてからは叩き込まれたという方が正しかろうが、それでも本から学んだことは少なくない。海賊商人としての自覚が芽生え、自らの商人としての価値を上げるために知識は必要だと理解してからは、自主的に本を読むことも増えた。商人にとって、知識や教養とは武器であり防具なのだ。
 だからこそ、アルデルクは商人としてブック・キャラバンには興味が尽きないのだ。アルダワのあちらこちらから集められた新刊の書籍たち。そしてそれを扱う商人たち。このブック・キャラバンにもアルデルクが得られる知識や情報は多くある。それを探すのもいいし、ブック・キャラバンの商人と話をするのもいい経験になるだろう。
「いつか本を商売道具に扱うのも面白いだろうしな」
 アルデルク自身が価値を認め、そして需要の尽きぬものであるからこそ、本はきっと彼の商品たり得るだろう。
 
 アルダワ各国の情勢本のエリアを一通り覗いた後、アルデルクはもう一つの目的の為にいくつもの店を眺め歩く。
「相棒にも読みやすい勉強の本……なんて言うのもあればいいんだがな……」
 腕組みしながら陳列された本を吟味しつつ、ぽろりと零れた言葉。脳裏に浮かぶのは幼さを残す相棒だ。彼の今までの境遇を考えれば、学ぶ機会というのはなかったかもしれない。けれども、アルデルクは相棒にももっと世界を知ってもらいたいのだ。
「お客様、本をお探しですか?」
 難しい顔で本を選ぶアルデルクに、「良ければお手伝いしますよ」と店主が声を笑みを覗かせる。
「ああ。……そうだな、世界を知るきっかけになるような、世界を知ろうと思う一歩になるような本が欲しい。そういうのはあるか?」
「なるほど。それでしたらこういう本はいかがでしょうか?」
 そう言って商人が差し出したのは、『アルダワ』とだけ描かれた本だ。表紙の美しい風景写真が目を惹く。
「これは?」
「写真集です。最新のアルダワの美しい景色、特産品、営み、魔法、各国の様子。そういった魔導写真が解説付きで載っている本です。私が考えますに、世界を知る切っ掛けというのは、矢張り世界を見て得るものだと思います。ですが世界を巡るのは簡単ではない。そういう時、こういった魔導写真は世界を身近に感じさせてくれるのです。この写真の中でひとつでも、興味が惹かれたならば――」
「知る切っ掛けになる、か」
 本を受け取りぱらぱらと捲る。三精霊機関を使った魔導列車。風と砂を切って走る航砂船。魔法学園。人々の営み。北方帝国の宝石。
 確かにこれだけあれば、興味のひとつくらいは引けるかもしれない。
 それともせっかくの機会なのだから、もっと書架隊商を練り歩いてみようか。
「……まぁ、あいつが望むかは別だがな」
 くつりと喉を鳴らし、アルデルクはそっと目を細めた。
大成功 🔵🔵🔵

夜鳥・藍
POW
そういえば最近、というか猟兵になってから本を読む機会が減ってたわね。
この機会に積み本をまた作ろうかしら。買い置きしてた本はとっくに読み終わり本棚に収まってしまってるし。
どんな本がいいかしら?
妖精や精霊は気になるけど……ううん、新しい子を迎えるつもりは今の私にはないしいいわね。好きなもの興味あるのは、本業の占いともふもふ動物と……。
どれがいいかと眺め歩いてるうちに見つけたのは絵本。
生まれ変わって姿が変わってもまた巡り合った恋人たちのお話し。
星の王子と月のお姫様の物語。優しい絵柄と文章で子供向けといえばそうなのだけど、でも寝る前に読み返すにはちょうど良さそう。
……もしかして疲れてるのかしら。



「そういえば最近、というか猟兵になってから本を読む機会が減ってたわね」
 ブック・キャラバンに集う数多の本と本の商人たちを目の前にして、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)はふと唇に手を当てた。
「この機会に積み本をまた作ろうかしら。買い置きしてた本はとっくに読み終わり本棚に収まってしまっているし」
 せっかくのブック・キャラバンだ。しかも揃うのは全て新刊ばかり。藍の目に留まったことのない本は数多とある。星々の中から自分だけの一等星を見つけるように、自分を待っている本を探しにいくのも悪くない。そんな本との出会いを求め、藍はのんびりとキャラバンへと歩き出した。
 
 はじめはアルダワの情勢本のエリアを通り過ぎ、学術書エリアの魔導書や学問としての占いの本などを時折手に取ってみたり。いくつか気になってはみたものの、何処かぴんと来るものがない。藍の一等星を探す作業は、少々難航していた。
「どんな本がいいかしら。妖精や精霊は気になるけれど……」
 次に手に取ったのは、今アルダワで確認されている妖精や精霊の図鑑だ。性格や生息場所、好むもの苦手なもの、契約方法までも書かれている詳細な本――ではあったのだが。
「ううん、新しい子を迎えるつもりは今の私にはないしいいわね」
 手に取った本を元の場所へと戻す。
 妖精も精霊も好きだ。けれども今はもっと――物語に親しみたいような。
 藍はもう一度、胸に手を当てて考える。
 自分の好きなもの。興味のあるもの。それは本業の占いと、もふもふの動物と――。

 最新の占星術論の本。書いてある絵に触れると、その動物の手触りが体感出来る動物図鑑。色々と気になる本はあったけれど、思案しながら歩む足は未だ止まらずに。けれどもやがて、彷徨う視線が一つの本と結ばれた。
「あら、可愛い絵本」
 引き寄せられるように、藍はその本を手に取る。可愛らしい絵柄の絵本だ。王子様とお姫様が描かれた表紙は、背景の星空がきらきらと煌いている。
「……それ、私が書きました。よければ、読んでいってくれませんか?」
 買わなくてもいいかな、なんて。
 ちょっとだけ照れ臭そうに、店員がそっと声をかける。はじめて書いた本なのだという。興味を惹かれて、藍はゆっくりとページを捲く。するとぽろん、と音が零れた。
「あ……オルゴールの音?」
「はい。ページを捲ると鳴るように魔法をかけています」
「そう。可愛いわね」
 フード越しに、小さく藍は笑った。
 物語は星の王子と月のお姫様の物語。生まれ変わって姿が変わっても、また巡り合った恋人たちのお話だ。苦難があっても乗り越えて、姿が変わっても惹かれ合って。星と月はいつだって一緒に夜空に輝くのだと。そういった物語が、優しい絵柄と文章、そして穏やかなオルゴールの音で紡がれていた。
 子供向けと言われれば、きっとそうなのだろう。けれどもこの読後感の優しさと温かさが胸に染みて、自然と目元と心地が和らいでいく。 
「寝る前に読み返すにはちょうど良さそう」
 これを読んで、オルゴールを聴いて眠ると、きっと優しい夢が見られる。そんな確信がある。もしかして疲れているのかとも思ったが、だからこそこういう優しさを詰め込んだ物語を読むことが、癒しにも繋がりもするだろう。 
「これ、下さい」
 自分だけの一等星を見つけたかのように、藍は絵本を胸に抱えて静かに笑った。
大成功 🔵🔵🔵

アウグスト・アルトナー
では、ぼくが執筆した、子供向けの絵本を売らせていただきましょう
タイトルは『きみも、ふわっ』です

ぼくは作家としては無名ですが……
手に取って読んでいただいて、幸せな気分になってもらえればと思いますね

▼あらすじ
ふわふわのパンケーキ、ふわふわのねこ、ふわふわうかぶシャボンだま
とにかく、ふわふわがだいすきなおとこのこがいました

あるひ、みちにおちていた、ちいさなふわふわのけだま
それにさわると……なんと!
おとこのこは、おおきなふわふわのけだまになってしまいました

もとにもどるために、ふわふわのだいぼうけんがはじまります!

▼備考
人物が、くりっとつぶらな目なのが特徴の画風
ページに触れると、実際にふわふわ(※魔法)



 ブック・キャラバンの楽しみは、本を買うだけではない。作家にとっては自分の書いた本をより多くの人の目に留める大きなチャンスでもある。
 キャラバンの娯楽本エリア。子供向けの絵本が集まるエリアに、アウグスト・アルトナー(悠久家族・f23918)は居た。彼の前には数冊の絵本。呼び込みをするでもなくぼんやりと人の流れを眺め続けていると、いつのまにか一人の少女がアウグストを見つめていた。
「……いらっしゃいませ?」
「おにいさん、羽がいっぱい。てんしさま?」
「天使……とはちょっと違うでしょうか。オラトリオです」
「おらとりお!」
 ちゃんと伝わっているのか若干不安になったが、少女は何かを納得したようなのでよしとする。ともあれ最初のお客様である。ひとまずアウグストは、絵本を一冊手に取って少女に見せた。
「絵本、好きですか」
「エマ、絵本すき!」
 どうやら少女はエマというらしい。きらきらとした目で絵本を見つめるので、アウグストもこくりと頷いた。
「これはぼくが書いた絵本です。タイトルは『きみも、ふわっ』」
「ふわっ? エマもふわっ?」
「はい。お嬢さん、字は読めますか?」
 エマの目が一層にきらきら煌く。ふわっという単語は、エマの興味を十分に引けたよう。アウグストはエマの手に絵本を乗せて、ゆるり問う。
「エマ、まだ字よめない……」
「わかりました。ではちょっとだけぼくが読んでさしあげましょう。ページを捲ってください」
「うん!」
 エマは嬉しそうにページをめくると――。
「わぁ、この絵本ふわふわするー!?」
 まだ一文字も読まないうちから、ふわふわとした手触りを感じるページに大興奮。かけておいたふわふわの魔法も大成功のようだ。ほわり、温かな心地を感じながら、アウグストは文字を指でなぞる。
 
 ふわふわのパンケーキ、ふわふわのねこ、ふわふわうかぶシャボンだま。
 とにかく、ふわふわがだいすきなおとこのこがいました。
 
 あるひ、みちにおちていた、ちいさなふわふわのけだま。
 それにさわると……なんと!
 おとこのこは、おおきなふわふわのけだまになってしまいました。
 
 もとにもどるだめに、ふわふわのだいぼうけんがはじまります!

「エマもふわふわすき! おとこのこどうなっちゃうんだろう! おにいさんちょっとこれ持ってまってて!!」
 くりっとつぶらな瞳が特徴のイラストで描かれた、ふわふわのお話。すっかり本を気に入ったエマは、突然本をアウグストに押し付けて何処かへ駆けて行った。何事かとアウグストが目をぱちくりさせていると、やがてエマは大人の手を引いて帰ってきた。帰ってきたと思ったら、エマはびしっとアウグストの持つ本を指差してせがむ。
「おかあさん! エマね、このふわふわの絵本ほしい! きみも、ふわっ! エマねエマね、おとこのこがどうなっちゃうか気になるの!」
「まあまあ、突然いなくなったと思ったら。おにいさん、そちらの絵本一冊くださいな」
「ありがとうございます」
 代金と本を引き替えると、エマは嬉しそうに本を抱く。それから、アウグストにめいっぱいの笑みを向けて。
「おにいさん、ありがとう! エマすぐに読むからね!」
 何度も何度も振り返っては手を振って、親子は帰っていった。嬉しそうに絵本を母に見せる姿が印象的で、アウグストもまたその背を見えなくなるまで見送った。
 アウグストは作家としては無名だ。けれどもアウグストの絵本を手に取って、読んで、あんなにも嬉しそうに、そして幸せそうにしてくれて。その笑顔がアウグストの胸を、温めてやまない。
大成功 🔵🔵🔵

朱酉・逢真
深山サンと/f22925 初老の外見・変化は見目のみ
心情)活気のよろしいこと。俺ァ体力ザコなンで《獣》からロバ出して運んでもらわァ。ああ、手綱は大丈夫。楽しんでるかい、深山の兄さん。推理モンとオカルトなら、ホレ。あすこに屋台がある。俺も何ぞ卸したいとこだが、しまっとけッつわれたからな。諦めよう。兄さん、どっさり買うならロバに載せていいぜ。
行動)ヒトの情念はインクに染みる。こンだけ本が群れてりゃ紛れてンだろ。ヒトが言うとこの"呪いの本"がよ。オヤ興味がおありかい? 発狂・憑依・召喚強制・異形化…なんでもありさ。毒の。へェ…いいぜ、とっときを選んでやらァよ。軽い呪いなら剥がせっしなァ。


深山・鴇
逢真君と/f16930
安定の体力おじいちゃんだな、手綱は引かなくて大丈夫かい?

こいつは相当な規模の市だな
そりゃあもう、見たことのない物から絶版だと言われた本迄あるとくれば楽しくない訳がないさ
こっちもいいが、これもいいな…全部買ってしまうか(トランクに仕舞いつつ)

その本は多分人が死ぬからな…(止めて正解だった)
ああ、それじゃあトランクを頼もうか

逢真君の買い物にも付き合うとしよう
呪いの?どんな呪いが?へぇ、また厄介なもんを…。
ああそうだ、欲しい本があるんだが…逢真君、ひとつ選んでくれないか
うん? 毒の本さ、君の得意分野だろ?
呪いが掛かってるなら飛び切りだろうなぁ
(選んで貰った本を迷わず買って)



 人と本で賑わう灯台図書館。書架隊商は今年も大盛況で、その初日とあらば人出も多い。金の篝火をそれぞれの軒先で照らし、本を黄金の宝のように照らし出す。
「活気のよろしいこと。とはいえ俺ァ体力ザコなンで運んでもらわァ」
 こんな人混みを歩いていては半日も持たぬと、今宵は初老の姿の朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は呼び出したロバに跨った。人の多い往来でロバに乗れば、人は自然と避けてくれる。それは不用意な接触を避ける為にも良く、されどもそんなことはおくびにも出さずに逢真はのんびりと居並ぶテントの列を見渡した。
「安定の体力おじいちゃんだな、手綱は引かなくて大丈夫かい?」
「ああ、手綱は大丈夫」
 そんな逢真の様子に、深山・鴇(黒花鳥・f22925)はくすくすと喉を鳴らした。必要ならばと片手をひらりと見せれば、逢真は笑みだけでそれをやんわり返す。
 どちらともなく目線をキャラバンに向ければ、金の光が眩く二人の目に差し込んでくる。光の数だけテントがあって、テントの数だけ店がある。そしてその内には沢山の本と、それを買い求める人々が居る。
「こいつは相当の規模の市だな」
 アルダワでも有数の規模だとは聞いていたが、それにしても本だけを扱うマーケットでこれ程大規模なものは珍しい。しかも一年以内に出版された新刊ばかり。過去の書物を改めて加筆修正し、書き起こし直したものもあるけれど、基本的にはここにある本の殆どは手に取ったことのある方が珍しいというもので。
「楽しんでるかい、深山の兄さん」
「そりゃあもう、見たことのない物から絶版だと言われた本迄あるとくれば楽しくない訳がないさ」
 あっちの店もこっちの本も気になるといった体の鴇に、今度は逢真がくつりと喉を鳴らす番。返ってくる鴇の声はその表情以上にも弾んでいる。そしてその間も本を探し選ぶことはやめられない。
「そうかいそうかい。推理とオカルトなら、ホレ。あすこに屋台がある」
「ああ、本当だ。ちょっと見てこよう」
 そんな弾む心地の鴇に、ちょいと逢真のアドバイス。そちらと指差した先を見れば、鴇はすいすいと人混みを縫って往く。並べられた書籍に早速目を落とし、気になるタイトルを拾い上げ、店主に断って内容をぱらぱらと確認し、そして次の本へと手を伸ばし――。
「こっちもいいが、これもいいな……全部買ってしまうか」
 基本的に書架隊商での本は一期一会。この機を逃せば、次はアルダワのどこで同じ本で出会えるかはわからない。となれば、悩む必要もない。気になった本は財布の許す限り全部買ってしまえば解決である。
 そんな楽しそうな鴇を眺めつつ、逢真は少しばかり不満げな顔だ。
「俺も何ぞ卸したいとこだが、しまっとけッつわれたからな。諦めよう」
 折角の機会。折角の書架隊商。本を求めるたくさんの人の目に触れる機会だったのだがと、顎を一撫で。
「その本は多分人が死ぬからな……」
 だが当の「しまっとけッつった」本人である鴇にしてみれば、それも当然である。なんていったって逢真は病毒に戯ぶ神。その彼が卸す本である。何事もないとは楽観出来ない。それに関して否定も肯定もせずにニヤリと笑う逢真に、鴇はひそりと「止めてよかった」などと思うのだった。

「兄さん、どっさり買うならロバに載せていいぜ」
「ああ、それじゃあトランクを頼もうか」
 あちらこちらを見回っては、購入した本を鴇は次々とトランクにいれていく。いっそ清々しい程の買いっぷりに逢真がロバの腰のあたりをぽんぽんと叩けば、鴇も断る理由もない。
 そんなところで、ようやく逢真が「さて」と視線をあげた。
「こンだけ本が群れてりゃ紛れてンだろ。ヒトが言うとこの"呪いの本"がよ」
 光灯さぬ眸に宿るのは好機か神の気まぐれか。いずれにせよ彼が求めるのは普通の本ではなく、逢真の琴線に触れるヒトの昏い情念。ヒトの情念はインクに染みる。それが昏い念であればあるほど、その本は毒も呪いも集める本になる。なってしまう。
「呪いの? どんな呪いが?」
「オヤ興味がおありかい?」
 ロバの上で頬杖をつきながら、逢真が笑う。くつくつと、病毒の神の顔で。
「発狂・憑依・召喚強制・異形化…なんでもありさ」
「へぇ、また厄介なもんを……」
 それを見つけてどうするのだろうと気にはなったが、今のところは見つからぬようだ。それならばと、鴇は馬上の逢真を見上げる。
「ああそうだ、欲しい本があるんだが……逢真くん、ひとつ選んでくれないか」
「選ぶって何の本をだ?」
 己に選ばせるジャンルとはと首を傾げれば、今度は鴇がくすりと笑う番。
「うん? 毒の本さ、君の得意分野だろ? 呪いが掛かってるなら飛び切りだろうなぁ」
 病毒を己が権能とする神が選ぶ毒の本だ。呪われる程に強い情念で書かれた本ならば、それはきっと極上で、それはきっと危険で、それはきっと――酷く蠱惑的な。
「へェ…いいぜ、とっときを選んでやらァよ。軽い呪いなら剥がせっしなァ」

 逢真が選ぶ毒の本はどんなものだろう。
 甘やかか。刺激的か。冷たいか。昏いか。
 いずれにせよ、鴇はその本を迷わずに購入するだろう。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
エコー。何選んだ?
海賊!ははあ、そっか、そういう物語とかもあンのねえ
いいじゃん。あんまりUDCアースじゃ見ないジャンルだ
俺?あー
写真とか図多めの宇宙生物学――、アストロバイオロジーってやつ
結構最近できた学問なンだとさ
ま、俺のはいいのよ。持って帰るけど勉強はお家派だ

ねえ、エコー。そっち俺も一緒に読ませてよ。さーほら、肩を並べて
エコーも、家族とこんな感じだった?
俺、エコーが今までどうやって生きてきたのかとか
ほら、好きな島とかさ。そういう話聞いたことないなって思って
――今は本に集中しないとだけどさ
頁を捲るたびに楽しい海の思い出、聞かせてよ

あははっ、ロクでもねえの!マジでギャングじゃん
最高!


エコー・クラストフ
【BAD】
ボクが選んだのは海賊の物語本だよ
確かに、あっちじゃあんまり見ないよね。史実の本みたいなのはいくつかあるみたいだけど
海賊の暮らしや行動が、陸に住む人からどう映ってどう物語へと昇華されたのか……興味があってね
エマは? ……アストロ……バイオロジー……? へぇ……

……そうだね。考えてみたら、エマとそういう話したことあんまりなかったかな
ボクもこんなふうに海を旅して、たまに島に降りて、色んなことをしていたよ
あぁ、ちょうどこんな感じの島。宝があるって言われてたから向かったんだけど、槍を持った原住民がいてね
攻撃から逃げ帰るフリして宝だけは盗み出したんだ
その日は派手な宴だったよ。懐かしいなぁ……



 金の光とインクの匂い。人々の賑わいと紙を捲る音。
 そんなものがこの場を満たす灯台図書館前の書架隊商。ハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)とエコー・クラストフ(死海より・f27542)は、一旦それぞれの興味のあるエリアへと別れ、また灯台図書館の入り口前で落ち合った。それぞれの手にはそれぞれの選んだ本。当然、互いの興味はそこに映る。
「エコー。何選んだ?」
「ボクが選んだのは海賊の物語本だよ」
 ほら、と見せたそれはとある海賊一家の物語。剛毅豪快、愉快痛快。自由気ままに威風堂々と海を見渡す海賊一家の表紙が印象的だ。
「海賊! ははあ、そっか、そういう物語とかもあンのねえ」
 アルダワにも海賊はいるのかなんて疑問も、この本を見る限りはやっぱり居るんだろうという結論が得られる。世界や人の営み方が変わったって、やっぱり人のやることはどこの世界も変わらないのかもしれない。
「いいじゃん。あんまりUDCアースじゃ見ないジャンルだ」
「確かに、あっちじゃあんまり見ないよね。史実の本みたいなのはいくつかあるみたいだけど」
 エコーだからこそ興味を示すその本を、ハイドラも肯定する。知らぬはずのその本をどこか懐かしそうに、優しく手にするエコーは、かつても今も海賊だ。それは願いと妄執で生きる今であっても、彼女を確りと支える一本の柱のようなものなのだろう。
「海賊の暮らしや行動が、陸に住む人からどう映ってどう物語へと昇華されたのか……興味があってね。……エマは?」
「俺? あー」
 突如話を振られて、ハイドラが目を瞬かせる。ほんの少しだけの間を置いて、ハイドラは脇に抱えていた袋から本を取り出してみせる。
「写真とか図多めの宇宙生物学――、アストロバイオロジーってやつ。結構最近できた学問なンだとさ」
 宇宙生物学。端的に言えば宇宙と生命を関連付けて考える学問だ。生命の起源を宇宙に求めたり、進化の可能性、宇宙科学の未来などを天文学や生命科学など多岐に渡る学問と視野から研究する学問だ。如何にもUDCアースが得意そうな学問なのだが、ハイドラが購入したそれはなんとアルダワの研究者による学術書らしい。科学と魔法という逆方向からのアプローチではあるが、それはそれで差異が興味深い内容である、が。
「……アストロ……バイオロジー……? へぇ……」
 きょとんとするエコーの様子に、ハイドラはそっと目を閉じて天を見上げた。うん、ちょっと予想はしていた。
「ま、俺のはいいのよ。持って帰るけど勉強はお家派だ」
 学術書をさっと袋にしまい直し、ハイドラはエコーの手を引いていく。目的地は灯台図書館の中。大きな扉を潜ってしまえば外の喧騒も遠く、広く取られた読書コーナーは快適に整えられていた。

「ねえ、エコー。そっち俺も一緒に読ませてよ。さーほら、肩を並べて」
 海の見える長椅子を見つけて、ハイドラが先に腰を下す。ひらひら手招けばエコーもまたその隣。肩触れ合う程に近しく座り、互いの片膝をテーブルに本を開く。
 ――如何にも仲の良さそうな、豪快な海賊一家の挿絵。
 船長の父親。腕っぷしの強い母親。航海士の長男。コックの長女。船医の祖父に頼りになるオウム。幾多の困難を乗り越え、時に大暴れし、そのいつだって海賊一家は団結して乗り切っていく。時に海軍に追われたり、時にピンチに陥るけれど、いつだって家族は家族を見捨てない。大暴れしたあとは恒例の宴会だ。
「エコーも、家族とこんな感じだった?」
「うん?」
 そこまで共に読んだところで、ぽつりとハイドラが問うた。視線を本から上げて隣を見れば、金と銀のオッドアイと冴えた青が線を結ぶ。
「俺、エコーが今までどうやって生きていたのかとか」
 くるり。肩から流れた黒髪を指先で弄び、ハイドラは繋いだ視線を自ら切って海へと向ける。アルダワの海を、黄金の光がくるりくるりと回転しながら駆けて往く。
 たとえば、エコーもこういう光に導かれて航海したこともあったのか、とか。
 機会、というものがある。
 切欠、というものがある。
 他愛ないはずの会話だって、何の前触れもなく突然聞くのはハイドラだってちょっと考える。けれどこの本はいい機会でいい切欠だ。
「……そうだね。考えてみたら、エマとそういう話したことあんまりなかったかな」
 エコーとしても機会も切欠もなかった。
 肩を竦めて笑いながら、何から話せばいいかとエコーは思案する。家族との思い出はたくさんある。海賊船で旅をした記憶もいくつもあって、伝えたくともそれらの中から一つを拾い上げるのに迷ってしまう。
「頁を捲るたびに楽しい海の思い出、聞かせてよ」
 そんな様子に気付いたのか。悪戯めいたハイドラの笑みに瞬いて――、しかしすぐにエコーは柔く頷いて頁を捲った。
 見開きの絵。海賊一家が船で大海原を突っ切っていく。
「ボクもこんなふうに海を旅して、たまに島に降りて、色んなことをしていたよ。例えば……あぁ、ちょうどこんな感じの島」
 ぺらりとページを繰ると、海賊一家はとある島を発見した。あまり開拓されていない、手つかずの自然が多く残る原始的な島だ。海賊一家はそこに宝を求めて向かって行く。
「宝があるって言われてたから向かったんだけど、槍を持った原住民がいてね。攻撃から逃げ帰るフリして宝だけは盗み出したんだ。その日は派手な宴だったよ。懐かしいなぁ……」
「あははっ、ロクでもねえの! マジでギャングじゃん」
「だって海賊だもん」
「はは、最高!」
 本の頁を捲るごとにエコーの記憶の頁もまた捲られて、また記憶が手繰り寄せられていく。物語を読み進めるように、二人の知らぬ時間が埋められていく。
 灯台図書館の片隅で二人、密やかに。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ロバート・ブレイズ
では――魔導書の類を書いて売るのは容易だが、内容が内容故に一般人の眼球(め)からは遠退けねばならない
子供にも解るような『おそろしい』絵本は如何だ。たとえば『登場人物』が実際に目と鼻の先で『それ』を行う新作だ――王冠(クラウチ・エンド)――恐怖と狂気のごっこ遊びだ、城を成さずに演出を此処へ
幻想もしくは怪奇の螺旋階段だ、登るには苦労するだろうが得難い『好奇』を満たせるだろう。人類は怪物と呼ばれる隣人を視認出来ないが、嗚呼、僅かにも臭いは判るのだよ。文豪を冠(お)いて在るのだ、内容は保証してやろう。クカカッ――!
この登場人物の感情が理解出来ないだと? 出来なくて構わない、続きを捲り咀嚼し給え、貴様!



 金の光に溢れ、活気に溢れ、賑わいと本に溢れる書架隊商。
 アルダワのあちこちからかき集められた新刊の本たちは、読み手との出会いを今か今かと待ち続けている。
 けれどもこれほどまでにたくさんの本があれば、一つや二つ、いやもしかしたらもっと、紛れているものだ。『普通』ではない本が。
 
 その点において、ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)という男は『普通』ではなかった。彼は冒涜の翁である。彼が己が裡に秘めるのは渾沌であり無秩序である。彼は書を書き記す文豪であり、光の下よりも闇の裡に潜む狂気に心地よさを感じる魔王である。
 此度彼がこの灯台図書館の書架隊商を訪れたのは、書籍購入の為ではない。販売の為だ。
 娯楽本のエリアは広い。故意に作られたか偶然の産物かは知れないが、その広いエリアの中には仄暗い一角があった。そこに集うのは、場の仄暗さに相応しき本と商人たち。そこに、ロバートは居た。
 魔導書の類を書いて売ることは、彼にとっては容易な事だ。だがそれは陽に当たる場所で堂々と売られるような内容ではない。一般人の眼球からは遠ざけねばならず、それを『それ』と知って尚欲するような者にこそ渡るように売る必要があろう。
 何の気まぐれか。
 此度ロバートが綴るのは、絵本だという。
「子供にも解るような『おそろしい』絵本は如何だ。たとえば『登場人物』が実際に目と鼻の先で『それ』を行う新作だ」
 この場で綴ってやろうか。
 そう言わんばかりにロバートはユーベルコードを手繰る。

 ――王冠(クラウチ・エンド)――
 
 混沌と恐怖の『登場人物』を召喚する。それが演じるのは恐怖と狂気のごっこ遊びだ。十分な時間があれば城や街だって築ける彼等には、此度城ではなく『演出』を築かせよう。
 
 いつの間にか、ロバートの前には一人の男が居た。
 身なりは良い。上流階級の人間であることが知れる。けれどこんな場所にわざわざ来る程には、そこに浮かぶ笑みは歪んでいた。明らかに『退屈』を知る顔だ。だからこそ、『好奇』に惹かれて此処へ来たのだろう。
 ロバートは『登場人物』を繰り続ける。
 怖ろしいことを、狂った演出を、『登場人物』は演じ続ける。
「幻想もしくは怪奇の螺旋階段だ、登るには苦労するだろうが得難い『好奇』を満たせるだろう」
「本当かね。この私の退屈も、その怪奇と好奇とやらの本で充たせるか」
 男が口を開いた。
 やたらと甲高い声が耳につくが、その目は笑ってはいない。満たせなければ殺すとでも言いたげな、危険な目をしている。
 だが、そんなものに怯む理由などロバートにはない。ただただ歪んだ半月を描きながら、両手を広げて『それ』を物語の終局へと導いていく。

 恐怖は津波のようにせり上がり、狂気は冷気のように冷たく忍び寄り、やがて――『それ』が現れる。

「人類は怪物と呼ばれる隣人を視認出来ないが、嗚呼、僅かにも臭いは判るのだよ。文豪を冠いて在るのだ、内容は保障してやろう。クカカッ――!」
 ロバートが堪えきれずに声を上げて笑った。
 男はロバートの紡いだ絵本を手に取っていた。子どもが一目で『おそろしい』と解るような本を、今しがた目の前で行われていた『それ』を目にしながら、男は引きつった笑みを浮かべながら手にしている。
 嗚呼。この男もまた、己が恐怖と正気を代償に、己が『好奇』を満たさんと欲する者也や。
 
「この登場人物の感情が理解出来ないだと? 出来なくて構わない、続きを捲り咀嚼し給え、貴様!」
大成功 🔵🔵🔵

セラフィム・ヴェリヨン
会話は筆談
隣人(周囲泳ぐ赤青白の魚)はセラとのみ念話

なんて素敵な場所かしら…!
本の虫としてはときめいてしまうわ
文字喰む貴方たちにも堪らないわよね、と隣人突けば
おいしそー!あれなに?たべたい!と燥ぐ声
…食べちゃダメよ?

精霊の本も猫の国の法律書も
なんて蠱惑的
招く声についふらふら
地図を買って卓上旅行?
幻想動物の声に耳を澄ます?
…うう、選びきれないわ!
ずっと開いてればいいのにとも思うけれど
一年に一度きりだからこそ出会える本があって
この金の光が恋しくなるのでしょうね

あら、あれは…作家さん?
貴方も本を?
なら貴方のお話を私にも売って下さいませ

出会いの先に新たな物語を紡ぐ
本当に素敵なキャラバンね

本・内容お任せ



 金の光が溢れるテントと灯台図書館。
 人々との出会いを待つ本たちは、本を求める人々と繋がる時を今か今かと待っている。
『なんて素敵な場所かしら……! 本の虫としてはときめいてしまうわ』
 セラフィム・ヴェリヨン(Trisagion・f12222)は書架隊商を前に、ほうと息を吐いた。本好きとしては、このキャラバンには高揚せずにはいられない。
『文字喰む貴方たちにも堪らないわよね』
 浮足立つような心地のままにセラフィムがそっと空に手を伸ばす。可愛らしい指先に集うのは、セラフィムが隣人と呼ぶ赤と青と白の三匹の魚たち。
 
 おいしそー!
 あれなに?
 たべたい!

 文字が主食の魚たちは、くるくると指やセラフィムの周囲をはしゃいで泳ぐ。この書架隊商は、隣人たちにとってはセラフィムとは別の意味で宝の山に見えることだろう。
『……食べちゃダメよ?』
 とは言え商品を食べられても困る。的確な釘差しに、隣人たちはすごすごとセラフィムの周りに戻るのだった。

 書架隊商はまさしく宝物庫を冒険するような心地だった。10冊限定の精霊の本。猫王の気まぐれで変わる法律の本。ああ、なんて蠱惑的!
 地図を買って卓上旅行?
 幻想動物の声に耳を澄ます?
『……うう、選びきれないわ!』
 気になる本がありすぎて困ってしまう。もうずっと開いていればいいのに、なんて思ってしまうけれど――。
『一年に一度きりだからこそ出会える本があって、この金の光が恋しくなるのでしょうね』
 だからこそのこの賑わいなのだろうと、セラフィムは柔く目を細めた。

『あら、あれは……作家さん?』
 娯楽本のエリアを散策していると、ふとちいさなテントが目に入った。店主らしいおじいさんは、慣れぬ様子でそこに座りながら人の流れを見ている。指に見えるペンだこから見るに、きっと作家なのだろう。
 ノートを取り出したセラフィムは、さらさらと書いた字をおじいさんに見せる。
「《貴方も本を?》」
「ええ、そうですよ。……貴女の気に合うかはわからないが、読んでみますか?」
 穏やかな印象のおじいさんだった。どこか自信なさげに差し出した本に惹かれ、セラフィムは確りと頷いて表紙を捲る。

 ――アルダワの中原地方。
 航砂船の見習いの少年が、乗船した少女に恋をした。とはいえ少年は砂まみれの貧しい育ち。少女は育ちの良いお嬢様。身分違いの恋を言いだすことができず、少年は手紙を少女に渡すので精一杯。
 それから一年。少年の乗る航砂船に、再び少女が乗船した。そして少年を見るなりこう言ったのだ。
「手紙の返事を持ってきました」
 そうして二人の手紙のやりとりははじまった。

「これはね、僕と奥さんの伝記なんです。奥さんとは出会いから死に別れるまで本当に何通も手紙をやり取りしました。同じ家に住んでいても、夜には手紙を書き、おはようと言って手紙を渡すのです」
 それは挨拶と同じくらい気軽で、けれどもとても愛情深い行為だったとおじいさんは穏やかに目を細める。特別なことは起こらない。ただ二人の人生を、手紙が彩った。そんな物語だ。
 それがセラフィムの心を惹きつけるから。
「《なら貴方のお話を私にも売って下さいませ》」
「……喜んで、お嬢さん」
 求められたことが嬉しかったのだろう。おじいさんは、照れ臭そうにセラに本を手渡した。
 
 書架隊商の本は一期一会。
 今回を逃せば、次はアルダワのどこで同じ本が手に入るかはわからない。そのたった一度の出会いを求め、人は書架隊商に集うのだ。
『出会いの先に新たな物語を紡ぐ。本当に素敵なキャラバンね』
 そう言って微笑んだセラに、隣人たちも同意するように空を跳ねた。
大成功 🔵🔵🔵

冬原・イロハ
アドリブ歓迎

素敵な街……!
金の光と人の活気にわくわく
どんな本と出会えるかしらとわくわく
街道を進む歩みもきっと弾みます♪

色んな呼びこみを聞きながら、ゆっくりと進んで
図書館中央側のお歌の本に惹かれました
アルダワ世界の子守唄とかあるかしら?
どこか懐かしく感じるかもしれません
――私、これ覚えたいです
素敵なご本ですねぇ(ページを捲り

あと、気になったのが図鑑です!
動物や幻想動物の鳴き声が聞こえるって――
興味津々に触れてみれば聞こえてきた鳴き声に、わぁ♪
思わず商人さんを見上げてにっこり

ブック・キャラバン、凄く凄く素敵です!
皆さん、本を手に笑顔です
楽しい出会いが沢山
勿論私も購入した本たちを抱えてニコニコです



 大きな大きな図書館を抱く灯台。その麓では同じように金の灯りを掲げたテントがいくつも軒先を連ねている。あちらこちらから商人の呼び声がして、本を愛する人たちが今年限りの出会いを求めて訪れる。
 冬原・イロハ(戦場の掃除ねこ・f10327)もまた、本を愛する者のひとりだ。
「素敵な街……!」
 眼前に広がる街並みと、金の光と人の活気にわくわくが止まらない。どんな本と出会えるだろう。そんな期待に高鳴る胸が、街道を進む足取りをも弾ませてゆく。そして本の海に身を躍らせるように、イロハはブック・キャラバンへと飛び込んだ。
 
 あちらこちらから、本を紹介しながら呼び込む商人の声がする。それを聞き逃さぬよう、本との出会いを見逃さぬようにゆっくりとイロハは歩を進める。
 気になる本は多々あれど。一番はじめにイロハの心を引き寄せたのは、娯楽本エリアにある歌の本だった。
「アルダワ世界の子守唄とかあるかしら?」
 店を覗くと、若い店員さんがにこやかに顔を出す。
「ありますよ。丁度アルダワに伝わる子守歌を纏めた『歌う本』があるのです」
 一冊の本を手に取った店員は、表紙を開き、楽譜と歌詞が掛かれた頁の下部に在る魔法陣に触れた。すると魔法陣から飛び出した魔力が光の妖精の姿を象り歌ってくれるではないか。
 優しくて穏やかな曲調。可愛らしく愛情に満ちた歌詞。子守歌らしく静かに紡がれる歌に、イロハの耳がぴくりと反応した。
「この曲は……。私、これ覚えたいです」
 その歌は、イロハにとってはどこか懐かしい歌だった。何処かで聞いたことがあるのかもしれない。ぺらりとページを捲ると、どのページにも魔法陣が描いてあって、それに触れると魔力で出来た妖精がその歌を歌ってくれるのだ。
「素敵なご本ですねぇ」
 ページを捲る手が止まらない。結局全ての曲を歌ってもらったイロハは、嬉々としてその本を一冊購入するのだった。

 本を抱えて店主に手を振ったら、イロハは次の目的地まで人混みをすいすいと縫っていく。目指すは同じ娯楽本エリア。一つ向かいの店に、とても気になる本が売っていると呼び込んでいる――!
「あの、幻想動物図鑑ありますか! 動物や幻想動物の鳴き声が聞こえるって――!」
 そこは主に図鑑を取り扱っている店だった。色んな図鑑の中でも、一番人気は幻想動物図鑑。売り切れやしないかとほとんど飛び込むように店の中に声をかけると、店主であろう女商人は「大丈夫」とイロハへと一冊手渡してくれた。
 興味津々に本を開いて触れてみると、グリフォンの雄々しい鳴き声が、まるで至近距離にいるかのよにハッキリと聞こえた。
「わぁ♪」
 イロハが思わず商人を見上げてにっこりと笑えば、店主も笑みを返してくれる。他にも実際には滅多に見る事の出来ない珍しい幻想動物の絵図があったり、ドラゴンの種族別鳴き声なども聞けるらしい。そうと聞いたら、もう買わずにはいられない。こんな本は、今の出会いを逃したら次は何処で出会えるかもわからないのだから。
 
「ブック・キャラバン、凄く凄く素敵です!」
 購入した本たちを抱え、イロハはニコニコ大満足。
 嬉しさのままに顔をあげて周囲を見渡せば、イロハと同じように笑みが咲いた人々がたくさん居た。皆、その手には必ず本がある。
「皆さん、本を手に笑顔です。楽しい出会いが沢山あって」
「ふふ。私達の大好きなお祭りを、貴方も好きになってくれてありがとうねえ」
 イロハがまた嬉しそうに顔をあげれば、同じくらい嬉しそうな店主と目が合って。
 そうして二人で笑い合ったら、今日は本当に素敵な日。
大成功 🔵🔵🔵

朧・紅
ランタン【翠星】を持って
野望を胸にわくわく目移り

ご本いっぱいすぎて迷子~

う?僕が抱いてる本です?
お友達が綴ってくれた宝物【きみのひとみ】です!
売り物じゃ無いですが読むですかっ?(顔に読んでと書いてある

そう僕はこの宝物を自慢したかったのです!

開けば白黒紅の猫の幻影が三匹飛び出し
その瞳を通したとある図書館の物語が語られてゆく
(ステシの立ち絵イメージ

図書館の本に寄りそう猫さん素敵
言葉がぎゅっとくるです
僕もだいすき~っ

素敵な本に感化されれば始まるお勧め会

う?登場したお菓子が出てる本?
猫の図書館?
それも素敵
全部ほしー

にゃ
誘う様に白猫が本に降り立つ
その本も下さい!


不思議な小路で繋がった本を抱きしめほくほく



「ご本いっぱいすぎて迷子~」
 あっちを見てもこっちを見ても本。
 そんな本が溢れる海を、翠星を掲げた朧・紅(朧と紅・f01176)が往く。商人の呼び込みに心惹かれ、わくわくと紫の瞳があちらこちらへ彷徨ってすっかり本の迷子だ。選びきれずに一つの店の前で悩んでいると、店主であろうお姉さんが紅の隣に歩み寄えう。
「どんな本をお探しですか?」
「うんと……」
 問われてみても、やっぱり決めきれない。迷い続ける紅の様子に、店主は何かヒントやアドバイスになりそうな材料を探し、ふと紅がずっと大切そうに抱いている本に気が付いた。
「ねえ、あなたのその本、なんてご本? どんなお話?」
「う? 僕が抱いてる本です?」
 本の内容やタイトル、作者がわかれば、本を選ぶきっかけが出来るかもしれないと店主は考えたのだろう。だが紅の反応はちょっとだけ違っていた。自分の本のことを問われたと知るや、紫の瞳が宝石みたいにきらきらと輝きだしたのだ。
 紅は嬉しそうに本を店主に差し出して見せる。表紙には可愛らしい猫が三匹寄り添っている。
「これはお友達が綴ってくれた宝物【きみのひとみ】です! 売り物じゃないですが読むですかっ?」
 疑問形だが実質お願いというか推薦と言うか。紅の顔いっぱいに「読んで!」と書いてある。
 紅が今日胸に抱いてきた野望はこれだ。紅の宝物を自慢したかったのだ。
 本好きが高じてはじまった書架隊商。ならば街の人であれ商人であれ、大体は本が好きな人であるはずだ。紅が大事そうに持っている本があれば、誰かしら興味を抱いてくれそうな気がする。それを狙っていたのだ。
「お友達さんは作家かしら。えぇ、是非読みたいわ」
「もちろん!」
「じゃあテントの中へどうぞ」
 店主に手招かれるまま、紅は跳ねるような足取りでテントの中へ入っていく。中には長椅子があって、紅と店主は並んでそこに腰を落ち着けた。

「それでは見ていて下さいね。それっ」

 ――ぽんっ
 
 得意げに紅が表紙を開くと、本の中から三匹の猫の幻影が飛び出した。
 ぱっちりおめめが可愛らしい紅にゃんこ。おしゃまそうな白にゃんこ、そして鉤尻尾がトレードマークの黒にゃんこ。三匹の仔猫たちがくるりと紅の周囲を囲み、そろって「にゃあ」と鳴いた。

 物語は、とある図書館のお話だ。
 といっても人間の目線で語られる其れではなく、三匹の仔猫たちの瞳を通した物語。人と違う目線で語られる物語は時に可笑しく、時に不思議で胸を躍らせる。
「ここ寄り添う猫さんカコイイの! 言葉がぎゅっとくるです」
「私すごくすきだな、この猫さん」
「僕もだいすき~っ」
 物語が進むと、仔猫たちが場面に合わせてくるくる動く。猫の可愛らしさと物語の素敵さに、二人は夢中になって最後まで読み進めていった。

「とってもいいお話だったわ。見せてくれてありがとう」
「どういたしましてです!」
 本を通じてすっかり打ち解けた店主と握手を交わす。紅としてもこの宝物の素敵さを自慢できたこと、伝えられたことが嬉しくて誇らしい。
 それではと頭を下げたところで、店主が「ちょっと待って」と呼び止めた。
「さっき紅ちゃんのご本に出てきたお菓子が出てる本、あるのよ」
「う?」
「それから、猫さん好きなら絶対におすすめなのが【猫の図書館】!」
「わぁ、それも素敵。全部ほしー」
 流石商人というべきか。物語に着想を得て、紅が好きそうな本をいくつか見繕って差し出した。お菓子がたくさん出てくるスイーツの魔女のお話。猫の為の図書館のお話。
 どれも魅力的で、じいっとその表紙をみていると。
 
「にゃ」

 迷う紅を誘うように、白猫が本に降り立った。尻尾をぱたぱたとさせ、もう一度促すように「にゃん」と鳴く。
 まるで「どっちも買ったらいいじゃない」と言われているかのようで。そうしたらもう、迷う理由なんてなくなってしまった。
「その本も下さい!」
「喜んで!」
 そうして紅は、三冊の本を手にほくほく顔で店を出た。
 不思議な小路で繋がった本。こんな出会いがあるからこそ、メモリアの人々は書架隊商を愛するのだろう。
大成功 🔵🔵🔵

ローザ・ブラッド
本は好き
沢山知識を学ぶ事ができ
私の知らない世界を教えてくれる

いつも魔導書や生態に関する研究書を読んでいるのだけれど
今日はせっかくだから、違うジャンルを選んでみよう

ブック・キャラバン
こういった催しに出かけるのは初めて
一人で出かけるのも稀で、内心ドキドキする

魅力的な本が揃っていて迷うわね
あら?妖精や精霊の本…
10冊しか売っていない?
とても貴重な書物なのかしら?
秘めた好奇心が擽られて立ち寄る

ねぇ、妖精と精霊の本、頂いてもよろしくて?
普段は花を主とした書物を読む事が多いから
妖精や精霊の類にときめく

購入叶えば嬉しそうに本を抱える
この本で沢山学ばせていただくわ
ありがとう、商人さん

ふわり花の様に微笑みかける



 本は好きだ。
 沢山の知識を学ぶ事が出来るし、知らない世界を教えてくれる。何度だって読み返せる。何度だって、世界を渡っていくことが出来る。
 だから、本は好きだ。
 
 目の前に広がる大規模なマーケットと、それを包み込むような巨大な灯台図書館。書架隊商を通じてこの街全体を包み込む活気と熱気、そしてたくさんの紙とインクの匂いが風となり、ローザ・ブラッド(Code:Rose・f29560)の長い髪を揺らす。
 こういった催しに出掛けるのは初めてだ。それどころか一人で出かけるのだって稀。内心はとてもドキドキしている。いつだって最初の一歩は緊張するものだけれど、本の香りが、ローザにおいでと手招きするから。
 招かれるまま、ローザはキャラバンへと踏み出した。
 
 ローザはいつもは魔導書や生態に関する研究書を読んでいる。この書架隊商の学術書エリアにもそういった本は充実していて、例えば最新の研究に基づいた魔導書や、過去の文献の再翻訳、再解釈本、研究資料をまとめた本などが軒を連ねている。勿論それにだって興味はあるが。
「今日はせっかくだから、違うジャンルを選んでみよう」
 これ程にたくさんの本があるのだ。こんな時はいつもとは違う出会いを求めたっていい。今日は足の向くまま自由に本を探してみよう。
 
 アルダワの情勢本のエリアは主に商人で賑わっていた。矢張り商売をするにあたって、情勢や流行り、法律などは知っておくと良い武器になるのだろう。
 娯楽本のエリアは本がありすぎて、まるで本の海にいるようだ。右には童話。左には小説。向こうにはグルメ本。後ろには図鑑。珍しくて、それでいて心沸き立つような魔法がかけられている不思議な本たちは、見ているだけでも楽しくなってくる。
「魅力的な本が揃っていて迷うわね」
 別に一冊だけと決めているわけではないけれど、こうもあると選ぶことすら迷ってしまう。どうしようかと決めあぐねて、足が向いたのは学術書エリア。そこでふと、足が止まった。
「あら? 妖精や精霊の本……」
 商人の張り上げた声に、本当に何気なく目を遣った先。そこは精霊や妖精の本を集めた書架の店だった。
「いらっしゃい、お客さん。妖精や精霊に興味があるなら、今回一番のお勧めはこっちだ。妖精や精霊の生態、契約方法、その他諸々を最新のデータで纏めた本。なんと限定10冊だよ」
 店主が差し出したのは、不思議な本だった。厚い本なのに持ってみると羽のように軽い。深い緑色の表紙は、心なしか森の匂いがした。
 ただそれよりも、聞き逃してはいけない言葉がひとつ。
「10冊しか売っていない?」
「正確にはあと5冊だな。5冊売れたから」
 あと5冊。
 ローザの秘めた好奇心がどんどん擽られていく。
「とても貴重な書物なのかしら?」
「知る人ぞ知るってところだな。この本は毎年出るわけじゃないんだ。出版ペースは不定期。出版しても大体100冊くらいしか刷らない。だから知らない人は全く知らないが、知ってる人はかなり欲しがる本だ。内容は保障する。精霊や妖精に関してはアルダワでもトップクラスの本だよ」
 本当に貴重な本だった。
 書架隊商の本は基本的には一期一会。来年の書架隊商では同じ本は並ばないし、今ここで買い逃せば次は何処で出会えるかはわからない。
 それに、普段は花を主とした書物を読むことが多いからだろうか。妖精や精霊の類にローザの心はときめいていた。加えて、とても貴重な本に出会えたという高揚感。ローザの決断は早かった。
「ねぇ、妖精と精霊の本、頂いてもよろしくて?」
「勿論だよ。多少値は張るがそれだけの価値がある。ぜひ役立ててくれよな」
 これはおまけだと、商人は革製のブックカバーを本に掛けてくれた。妖精をモチーフにした銀のブックマーカーも更におまけして、商人はしっかりと本を手渡す。
「えぇ、この本で沢山学ばせていただくわ。ありがとう、商人さん」
 嬉しそうに本を抱えたローザは、ふわりと花のような笑みで微笑みかけた。
 まるで薔薇が花開いたような笑みに、商人もまた嬉しそうに笑み返すのだった。
大成功 🔵🔵🔵

荻原・志桜
🌸🕯

わあ!こんなにも本がたくさんあるなんて
にひひ。どんな本と巡り合えるかなぁ
楽しみだね、カルディアちゃん

ふふ、いいね
図鑑も地図も眺めるだけでも楽しいもん
知っていたものでも違う発見するとわくわくしちゃう
アルダワでも知らない場所はたくさんある
気になったとこへ一緒に行きたいな

わたしは魔法の勉強で使えるもの!
魔法学術本とか魔鉱石の本も気になるかな
あとは、その……魔法の絵本。子供っぽいかな?
ページを捲れば魔法が詰まった素敵な絵本
音が鳴ったり絵が動いたり
光が溢れてたくさんの夢を見せてくれる
魔女が登場したり、魔法が関わる絵本を集めてるんだ
えへへ。ありがとうカルディアちゃん

もっと知らない世界に出逢いたいね


カルディア・アミュレット
🌸🕯

志桜…本が、いっぱいよ
魔法の本や…いろんな図鑑も、ある…
ブック・キャラバンってすごいのね
こんなに盛大な催しだなんて…びっくりした…

志桜は、どんな本に…興味があるかしら…?
やっぱり、魔法の学術本…?
わたしは……、図鑑や地図が気になるかもしれないわ…
この世界のこと、もっと知りたいから…
丁度、本がほしいと思っていたところなの

いろんな世界を旅ができるのは猟兵の特権だけど…
アルダワの世界もまだまだいろんな不思議に満ちているから
もっと、知っていきたい…

絵本…?
いいえ、志桜らしいと思うのだわ
子供も大人も関係ない…
世界を楽しめる絵本こそ魔法の本だと思う

…この絵本との出逢いも
知らない世界との触れ合いよね



 お城みたいに大きな灯台図書館の、その麓。
 お城のお庭みたいにこれまた大きな広場は、今はその全てを埋め尽くすように隊商のテントが軒を連ねている。海を越えて、砂漠や森を越えてやってきた本たちは、それぞれの書架に収められて誰かとの出会いを待っている。
「志桜……本が、いっぱいよ」
「わあ! こんなにも本がたくさんあるなんて」
 そんなブック・キャラバンに訪れた女の子、ふたり。
 カルディア・アミュレット(命の灯神・f09196)は真っ赤なおめめを真ん丸にして。荻原・志桜(春燈の魔女・f01141)は喜びと楽しさを混ぜた笑みが咲いている。
「魔法の本や……いろんな図鑑も、ある……。ブック・キャラバンってすごいのね。こんなに盛大な催しだなんて……びっくりした……」
 二人の前には本。横を見ても本。後ろを見ても、向こうを見てもずうっと向こうまで本がずらりと並んでいる。まさに本の海だ。本だけを扱ったマーケットでここまで大きな催しはあまり見ないだろう。息を吸い込めば、ふわり紙とインクの匂い。
「にひひ。どんな本と巡り合えるかなぁ。楽しみだね、カルディアちゃん」
 書架隊商の本は一期一会。その出会いの予感に胸を躍らせて、二人は本の海へと飛び込んだ。

 学術書や魔法書が揃う学術書エリア。アルダワの各国の様子がわかる情勢本エリア、ジャンル不問の数多の本が集う娯楽本エリア。
 メモリアのブック・キャラバンは大きく三つのエリアに分けられる。流れのまま、気の向くままに進んでみるのも一つの楽しみ方ではあるが。
「どのエリアを見に行こうか。カルディアちゃん、気になる本はある?」
 折角ならば、気になる本から見に行きたい。志桜が問いに、カルディアは静かに思案する。
「わたしは……、図鑑や地図が気になるかもしれないわ……。この世界のこと、もっと知りたいから……。丁度、本がほしいと思っていたところなの」
 カルディアは主の故郷に引き篭もっていた時期が長く、猟兵として世界へ飛び出した今でもまだ知らないこと、知らない世界は多い。けれども世界と知りたいと願う時、本はそれを身近に叶えてくれるだろうから。
「ふふ、いいね。図鑑も地図も眺めてるだけでも楽しいもん。知っていたものでも違う発見するとわくわくしちゃう」
 そんなカルディアを微笑みながら肯定して、志桜はまずは地図のある情勢エリアへと足を向ける。本の海を渡り、エリアを変えれば風景や商人、そしてそこを訪れている人の様相もまた違う。まるで世界を渡るかのようだ。
 果たして魔導写真機で撮った写真がたくさん載っている地図を見つけ、カルディアはそっとそれを手に取った。
「いろんな世界を旅ができるのは猟兵の特権だけど……、アルダワの世界もまだまだいろんな不思議に満ちているから。もっと、知っていきたい……」
「うん。アルダワでも知らない場所はたくさんある。気になったとこへ一緒に行きたいな」
 この地図があれば、きっと何処へでも行けるだろうから。まずは一緒に本を読もう。行きたい場所を見つけるために。

 カルディアの欲しかった地図と図鑑を無事手に入れて、二人は娯楽本のエリアをのんびりと歩いていた。自分の欲しい本は買えたから、次は志桜の番だとカルディアはそっと志桜の顔を覗き込む。
「志桜は、どんな本に……興味があるかしら……? やっぱり、魔法の学術本……?」
「わたしは魔法の勉強で使えるもの! 魔法学術本とか魔鉱石の本も気になるかな」
 魔法を学び続けるのは志桜の矜持だ。魔法も常に進化しているし、魔術の媒体などに使われる魔鉱石などはその性質を知っておけば使える範囲がぐっと広がる。魔法の学びについての一途な想いは、如何にも志桜らしい。
 ――けれど、実はそれだけではなくて。
「あとは、その……魔法の絵本」
「絵本……?」
「うん」
 志桜は魔女ではあるが、同時に年頃の女の子でもある。魔法の勉強も好きだけれど、やっぱり可愛らしいものや素敵なものも好きなわけで。
 そう言って、志桜は目の前にある『魔女のおくりもの』という絵本を手に取った。
 それは、ページを捲れば魔法が詰まった素敵な絵本。紙をめくるたび、物語に合わせて音が鳴ったり、絵が動いたり、光が溢れてたくさんの夢を見せてくれる。
「魔女が登場したり、魔法が関わる絵本を集めてるんだ。子供っぽいかな?」
 なんて、ちょっぴり気恥ずかしそうに眉を下げて、志桜ははにかんだ。けれどもそんな問いを、カルディアは即座に首を横に振って否定する。
「いいえ、志桜らしいと思うのだわ。子供も大人も関係ない……世界を楽しめる絵本こそ魔法の本だと思う」
 カルディアはきっぱりと言い切った。その心遣いがとても嬉しくて。
「えへへ。ありがとうカルディアちゃん」
 やっぱりちょっぴり照れたように頬を桜彩に染めて、志桜はふわりと笑み咲いた。
「……この絵本との出逢いも、知らない世界との触れ合いよね」
「うん、きっとね。ねえカルディアちゃん。もっと知らない世界に出逢いたいね」
 知らない世界と触れ合うということは、何も大袈裟な出来事ではない。知らぬ絵本を開くこと。知らぬ催しへと足を運ぶこと。そんな小さなことを繰り返し、人はきっと自分の世界を広げていくのだろう。
 だから、行こう。
 二人で手を繋いで、この書架隊商をもっともっと楽しみに行こう。その先に、新たな出会いを待っている本が在る。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ランガナ・ラマムリタ
ときめくん(f22597)

一先ず一人で、ぐるりと回って興味深い本を片端から購入
いや、本の妖精冥利に尽きる、というやつだ

知らぬ本なら何でも読みたい濫読家だけど
せっかくのこの世界
今日は右側、魔術や呪いの本を

集めた本を【念動力】の魔法で周囲に浮かせ、ベンチで読み漁る
……椅子が硬いのが難点だな

見渡したその時、君の姿を見つけ
「ときめくん! 奇遇だね。本探しは一段落した? なら――」
にこにこと
座ってもらうと、慣れた様子で膝の上に乗って

早く続きが読みたいから、ちょっぴり上の空
「やっぱり今は君が一番だな……座り心地」
なんて漏らしつつ
もたれれば柔らかく、良い香りがして

うん、心地良い。これで存分に続きに浸れる――


如月・ときめ
ランガナさん(f21981)と

見過ごせない機会ですね
娯楽本もいいけれど、この世界の博物や文化を知る絶好の機会、探偵には重要すぎちゃいます
出来るだけ沢山買っていきたいですね

この市が荒らされそう、って知ったら怒りそうな妖精さんを思い浮かべながら、なおも掘り出し物を探してたら

「ランガナさん。やっぱり、来てたんですね」
なんて応じている間にあれよあれよといつもみたいに、椅子代わりに

「もうっ、勝手ですね」
笑いながら受け止めて
上の空に読書に没頭するあなたに悪戯心
桜の薫りが気に入るなら、頭の上や膝に花弁をちょっとずつ置いていっても気にしてないみたい

ふふ。ほんとにマイペース
でも、好きですよ。そういうところ



 書架隊商。灯台図書館の街メモリアのブック・キャラバン。
 一年に一度のこの本のお祭りは、アルダワのあちらこちらから集められたあらゆるジャンルの新刊が一堂に会す。
「見過ごせない機会ですね。娯楽本もいいけれど、この世界の博物や文化を知る絶好の機会、探偵には重要すぎちゃいます。」
 そんなブック・キャラバンに、ふわり混じる桜の香り。髪に咲く桜の花弁を風に舞わせ、如月・ときめ(祇ノ裔・f22597)は大きな鞄を手にゲートを潜る。世界を渡る探偵ならば、その世界の情勢を知っておくことは何より重要だ。
 文化、政治、風習、情勢、噂、流行り。それらの情報は探偵の武器であり防具であり道具である。ならば、此度の催しは絶好の情報収集機会だ。
「出来るだけ沢山買って行きたいですね」
 どんな職業であれ、自分の『装備』を整えることは重要だ。そして『装備』は多ければ多い程良い。人混みだって何のその。掘り出し物の本にも出会えたら最高だ。
 ときめは気合を入れて、情勢エリアへと歩き出した。
 
 アルダワにある各国の情勢。今年採掘された魔鉱石の情報。猫の国の今の法律一覧。アルダワに広がる噂や伝承をまとめた本。年間50冊しか刷られないという貴重な裏社会の情報本に巡り合えた時は、素早く確保したりして。
 なおも掘り出し物を探しつつ、ときめの脳裏に浮かぶのはある妖精の顔。
 この市が荒らされそうと知ったら、本好きの彼女は怒るだろうな、なんて。
 
 一方同じ頃。
 人々の間を本がすいすいすり抜けていく。否、本だけではない。ちゃんと見れば、本の直ぐ傍に妖精が居ることに気づくだろう。
 彼女はランガナ・ラマムリタ(本の妖精・f21981)。本の妖精だ。
 アルダワでも有数の規模の本のマーケットと聞けば、ランガナとしては黙っていられない。それはもう一も二もなくゲートに飛び込み、マーケットをぐるりと回って興味深い本を片端から購入していく。
 ランガナは知らぬ本なら何でも読みたい濫読家だが、せっかくのアルダワ世界。娯楽本にも情勢本にも興味は惹かれるけれど、此度はマーケットの右側、魔術や呪いの本を中心に据えよう。いや、それでもやっぱり気になる本は片端から。
 そうやって集めた本は既に10冊を超え、ランガナは一先ずのところは満足顔。集めた本を念動力で周囲にぷかぷか浮かべ、灯台図書館の外に設置されたベンチに座って早速読み漁る事にした。だが、どうにも本に集中しきれない。一応原因はわかる。このベンチだ。
「……椅子が硬いのが難点だな」
 折角本を読むのなら、もうちょっと柔らかくて座り心地がいい椅子があれば――。
 なんて思っていたら。
 
 二人の思考が何かを繋いだのだろうか。
 顔を上げたランガナと、本を探し歩いていたときめの目がぴたりと合った。
「ランガナさん。やっぱり、来てたんですね」
「ときめくん!」
 やっぱり、という言葉に少々首を傾げつつも、ランガナはひらひらとときめを手招く。招かれるままにときめが傍に行くと、ランガナは自身の隣をぽんぽんと叩いた。
「奇遇だね。本探しは一段落した?」
「ええ、まあ大体は」
「なら――」
 一瞬ランガナの目がきらりと光った。
 と同時に、にこにこ。にこにこと。
 ときめが座るのを確認すると、ランガナは許可を取ることもなく慣れた様子でその膝の上にすとんと乗った。
「やっぱり今は君が一番だな……座り心地」
 ときめの膝は適度に柔らかで、もたれれば心地よい。ようやく居心地よく座ることが出来たランガナは、大変満足そうに笑うと早速読んでいた本を引き寄せる。
「もうっ、勝手ですね」
「うん。うん」
 あれよあれよという間に椅子代わりにされてしまったときめが、笑いながら抗議する。けれども、早く続きが読みたいランガナは既に返事が上の空。とはいえこれも、もういつものことだ。
 もうランガナは本に没頭していて、ときめが何を言っても耳に入っていそうにない。こうなるとランガナはもうちょっとやそっとのことには気が付かないだろう。そんな様子に、ときめの悪戯心がむくむくと湧き上がってきた。
 本に夢中になるランガナの頭の上に、桜の花弁をちょこん。それには気づかないからもう一枚、ランガナの膝にちょこん。
 いつ気づくかなと桜の花弁を乗せ続けていたら、桜の帽子を被って桜のひざ掛けを掛けたようなランガナの出来上がり。
  本に夢中なランガナはそれでも気づかないけれど、どこかリラックスした表情を見せるのは、ときめの膝が心地よいからか、桜が良い香りだからか。――きっと両方で。
「うん、心地良い。これで存分に続きに浸れる――」
 視線は本から外さぬまま、ランガナは穏やかに呟いた。
 そんな様子のランガナに、ときめはぱちくりと目を瞬かせ――やがて、小さく吹き出した。
「ふふ、ほんとにマイペース。でも、好きですよ。そういうところ」
 そう言ってときめの顔には、ランガナと同じくらい穏やかな笑みが浮かんでいる。
 灯台の金の光は、穏やかに二人を照らしていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ディズユイット・ビブリオテーク
ああ……なんて立派な図書館なのでしょう!
これほどの出で立ちですと、中もきっとおしゃれで整然とした本棚達で彩られているのでしょうね。ああ……私もこんな図書館になりたいですわ……
っと、見とれていたら、新しい本との出会いの時間が無くなってしまいますわっ。

色々な本を見比べて、全部欲しい欲望をこらえて厳選し、買い集めていきますわ。
あら?子供さん達が売っている絵本、表紙が無い紙を束ねただけに見えますけれど……なるほど、お金を稼ぐために皆さんで作られたのですね?
……どれも温かみがあっていい本達ですわ。この本は読んだ人達みんなに幸せを運んできてくれますわね。
この本達、買わせていただきますわね?

アドリブ連携OK



「ああ……なんて立派な図書館なのでしょう!」
メモリアの灯台図書館は、元はただひとつの灯台だったという。それを本が埋め尽くし、それでも足りなくて増築し、いつしか城のように巨大な図書館が出来上がっていた。蔵書は書架隊商のたびに増え続ける。此処にしかない本も少なくないというのだから、その蔵書量は相当な物だろう。
 図書館の歴史と書かれた石碑と灯台図書館を前に、ディズユイット・ビブリオテーク(18番図書館・f31083)はほうと感嘆の息を吐く。
「これほどの出で立ちですと、中もきっとおしゃれで整然とした本棚達で彩られているのでしょうね。ああ……私もこんな図書館になりたいですわ……」
 城のような出で立ちというのは、なにも大きさだけの比喩ではない。図書館の外観や内装も城に負けず劣らず美しく作り上げられているのだ。
 図書館の妖怪であるディズユイットとしてはやっぱり気になるし、それが美しい外観や内装を持っていたなら憧れてもしまうわけだ。
 なんて、細部まで観察しては見惚れたところで。
「……っと、見惚れていたら、新しい本との出会いの時間がなくなってしまいますわっ」
 はっと気づいたディズユイットはスカートを翻す。図書館の入館は誰でも自由とのことだから、それはあとの楽しみにも取って置いて。
 今はまず、一年に一度のブック・キャラバンを楽しもう!

 学術書エリアでは、魔導書や古文書の最新解読書が気になったり。情勢エリアでは魔鉱石や猫の国の本が気になったり。娯楽本エリアでは魔法生物図鑑や歌う本が気になったり。
「……全部欲しい……」
 色々な本を見比べて、あれもこれも全部欲しい欲望を堪えて厳選し、本当に欲しい本を買い集めていく。それでもそれなりの量になった本を抱えて歩いていると、ふとディズユイットの目に他とは違うテントが目に入った。
「あら?」
 他と比べて小さく古いテントには、子供たちしかいない。大人はいないのだろうかと首を傾げていると、子供のうち年長と思わしき女の子と目があった。その瞬間、女の子がぱあっと笑って駆け寄ってくる。
「お姉さん、わたしたちの絵本見てみませんか」
「とってもたのしいですよ!」
「みてみて!」
 年長の女の子に続いて、小さな男の子や女の子も駆け寄ってくる。その手には子供たちが言う『絵本』があって、それをディズユイットにずいっと見せた。
「絵本? 表紙が無い紙を束ねただけに見えますけれど……」
 本、というには少々無理があるような気がする。何枚もの画用紙に絵を描いて、それを束ねただけのその『絵本』を、子供たちは真剣な顔で差し出したまま。
「あのね、これ、僕達が書いたの」
「わたしたち、孤児院にいるの」
「でも孤児院の経営、くるしいって先生たちが言ってたの聞いちゃって」
「だから私達、先生たちを助けたくて本を書いたんです。新しい本ならキャラバンで売っていいって聞いたから」
「ああ、成程。お金を稼ぐために皆さんで作られたのですね?」
 子供たちの言いたいことを察して確認すると、子供たちは皆一緒に頷いた。その目は何処までも真剣で、真っすぐで、思い遣りに溢れていて。
 ディズユイットは自身の胸のあたりがいっぱいになるのを感じながら、そっと差し出された本に手を添える。
「見せて頂いても?」
「うん! おねえさん、どうぞ」
 受け取った『絵本』は、子供たちの元気いっぱいな絵が描かれていた。「読んだ人にニコニコしてほしい」と言う物語は、孤児院の子供たち皆で考えたのだという。
 内容も絵も確かに拙い。紙を束ねただけの本は、簡単にほぐれてしまうかもしれない。
 けれど、何より心が伝わってくる。
 こんなにも、ディズユイットの胸を温める程に。それが何より尊い。
「……どれも温かみがあっていい本達ですわ。この本は読んだ人達みんなに幸せを運んできてくれますわね」
「ほんと?」
「ええ。この本達、買わせていただきますわね?」
「いいの?! おねえさん、ありがとう!!」
 子供たちは嬉しそうにディズユイットの周りを跳ねまわる。年長の女の子は何度も頭を下げながら、『絵本』を袋にいれてディズユイットに差し出した。
「私こそ、素敵な絵本をありがとうございました」
 微笑んでそれを受けとって、ディズユイットは大切に本を抱える。
 良い買い物をした。
 心からそう思った。
大成功 🔵🔵🔵

鏡島・嵐
詩乃(f17458)と

どこの世界でもそうだけど、市場ってのは旅の醍醐味の一つだな。
中に入って見て歩くだけで心が弾むし、買いてえって思ったモンに出遭えたなら一入だ。
本は嵩張るから沢山は旅には持って行けねえけど、その分しっかり読むぞ。それこそ手垢がつくくらいに、だ。

旅好きのおれとしては、旅行記は外せねえな。他人の経験に共感できるし、自分でも行ってみてえって気にさせられるし。
しかもここ一年の、最新の旅の情報と来たもんだ。次に行く場所の参考になるな。
それ以外にも、旅にまつわることを書いてある本は、とりあえず手に取って目を通してみる。意外な発見があるかもだしな。

詩乃はどうだ? いいモン見つかったか?


大町・詩乃
嵐さん(f03812)と

異国・異世界の市場の歩き方については嵐さんを参考に一緒に行動します。
嵐さんの市場への思いを聞き、実際にブック・キャラバンを目の当たりにして納得です。

人々の楽しそうな営みを見ているだけで嬉しくなりますが、自分が欲しい本との出会いも求めますよ。

嵐さんは旅行記を捜すのですね、旅好きな嵐さんらしいです♪

私は…(売り手の声を聞き)この世界には猫の国があるのですか!
猫さんの国に関する旅行記やガイドブックを読みたいですね、法律の本も。
可愛いからと言って、そのままモフったら怒られるでしょうし。

猫の国関連、そして植物を司る神としては植物図鑑を購入。
読んだらきっと行ってみたくなりますね~♪



「どこの世界でもそうだけど、市場ってのは旅の醍醐味の一つだな。中に入って見て歩くだけで心が弾むし、買いてえって思ったモンに出遭えたなら一入だ」
 金の光溢れる書架隊商。
 この街一番の催しであり、アルダワ中のからかき集めた本を目当てにたくさんの人が訪れるメモリアは活気に満ちていた。それぞれのテントには沢山の本が並び、商人が元気に呼び込みをし、本を求める人で賑わっている。
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はそんな人混みにはぐれてしまわぬよう、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の手を引いて歩む。
「ええ、ええ。わかります。異国、異世界の市場でも、基本は同じなんですね。この賑わいを目の当たりにして、納得しました」
 詩乃にとっては異国、異世界の市場。その歩き方を知らぬからと嵐を参考に共に行動していたが、心配は杞憂だったと知る。
 不思議なもので、どんなに世界や文化が違っていても、市場というものはなんとなくどこも似通うものらしい。人々の楽しそうな営みの様子に世界も国も関係はない。同じ「人」の営みであればこそ、時折特有のルールが存在することはあっても本質は変わらないのだろう。
 人々の楽しそうな営みを見ているだけで嬉しそうにしながら、詩乃は手を引く嵐を見上げる。
「嵐さんは本、お好きですか?」
「おう。本は嵩張るから沢山は旅には持って行けねえけど、その分しっかり読むぞ。それこそ手垢がつくくらいに、だ」
 旅の友になる本との出会いも、きっとこの書架隊商にはある。一期一会の本を探し、二人は本の海の旅に出る。

「嵐さんはどんな本を買う予定ですか?」
 娯楽本のエリアを散策しながら、ふと改めて詩乃が問うた。
「旅好きのおれとしては、旅行記は外せねえな。他人の経験に共感できるし、自分でも見てみてえって気にさせられるし。しかもここ一年の、最新の旅の情報と来たもんだ。次に行く場所の参考になるな」
 店に並べられた旅行記の一つに手を伸ばし、ぺらぺらと捲ってみながら嵐はにっと笑う。旅においても情報は新しければ新しい程いい。旅行記によって苦労が伺えた点はこれからの対策が出来るし、旅人の目線から見た国の情報は、時に国が発行する観光情報などとは違った視点が垣間見えて面白い。
「なるほど、旅好きな嵐さんらしいです♪」
「詩乃はどうだ? いいモン見つかったか?」
「私は……」
 未だ、と詩乃が言おうとした瞬間。一つ向こうの通りから、よく通る商人の呼び込みが聞こえてきた。
「猫の国の法律を纏めた本があるよ! 他にも猫の国関連の本が欲しいならうちに寄っておくれ!」
「この世界には猫の国があるのですか!」
「ま、正確にはケットシーの王様が統べる妖精の国だけどな」
 猫の国、と聞いた瞬間、詩乃の瞳がきらきらと煌いた。
 何せ詩乃は猫が大好きだ。猫――正確にはケットシーの国だとしても、猫の国には変わりない。そんな国があると聞けば、一気に詩乃の興味がそこに傾いていくわけで。
「私、猫さんの国に関する旅行記やガイドブックが読みたいです。あと猫の国の法律の本も」
 可愛いからと言って、相手はただの猫ではなくてケットシー。そのままもふもふしようものなら怒られたりもするだろうし、法律違反になってしまうかもしれない。猫の国に行くのなら、猫の国の情報や法律を知っておく事は大切だ。とてもとても大切だ。
 早速声を張り上げていた店に出向いて、詩乃は猫の国に関連した本を何冊か見繕って購入した。
 尚そこの店主もまたふわふわ長毛のケットシーで、テントの軒を潜った詩乃が内心大喜びしていたのは秘密のお話。

 詩乃は猫の国の本を、嵐は旅行記とアルダワを旅する際の情報誌をそれぞれ購入出来て、ほくほくと満足顔。嬉しそうな詩乃の様子に、嵐もふと微笑んで。
「いい本買えてよかったな」
「はい! 嵐さんが買った本も、私のこの猫の国の本も、読んだらきっと行ってみたくなりますね~♪」
「そうだな。さ、もうちょっと見て回ろうぜ。旅の事を書いてる本とかもっと探してみたいんだ」
「私も、植物図鑑も欲しいのですよね。行きましょう、嵐さん!」
「おう」
 二人顔を見合わせて笑って、今度は詩乃が嵐の手を引いて歩み出す。
 書架隊商はまだまだはじまったばかり。
 さあ、本の海を旅しよう。
 目的の本を探して。或いは偶然に任せて手に取った本に縁や興味、或いは好奇を見出して。
 書架隊商に並ぶ本達は、まだまだ二人との出会いを待っている。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

朽守・カスカ
灯台図書館、か…
名に惹かれて訪れてみたが、建物も蔵書量もキャラバンも、壮観の一言に尽きる、な
折角来たのだから、散策がてら最新の医学書や魔導蒸気機械の技術書を探してみるとしよう

本を探して歩いて気付くマーケットの賑やかさ
人の活気や熱意が伝わってきて心地よいもので
この立派な灯台も相まって、暫く逗留したくなってしまいそうだ
ああ、魔道蒸気の技術書を見つけた
数頁捲って中身を吟味し、一冊求めれば
今晩はこれを共に、ゆっくり読み耽るとしようか

だけどそんな心地よさの中に、どうしても拭えない、ささくれ立つ棘のようなもの
灯台に現れるオブリビオンか
…どうにも、心が騒ついて落ち着かない、な



「灯台図書館、か……」
 眼前に広がる大きな建物。灯台を抱くメモリアの図書館を見上げ、朽守・カスカ(灯台守・f00170)はそっと目を細める。
 灯台図書館という名に惹かれて訪れてみたが、建物も蔵書量もそしてブック・キャラバンも壮観の一言に尽きた。
 どれもこれも、想像以上の規模だった。灯台は高く立派に聳え、城のようだと謳われた図書館は本当に城のような荘厳で大きな建物だった。あの中の部屋のほとんどが本を収めるための部屋だというのだから、その蔵書量は相当なものだろうというのは想像に難くない。
 その全てがこの街メモリアの住人が本を愛するが故。だが同時に灯台を壊さずに大切にし、未だに大切にしていることからも、住人にとって灯台がいかに大切なものであるかも伺える。この街は灯台と図書館の街なのだ。
 そして、その住人たちの年に一度の楽しみがこのブック・キャラバンだ。はじめは住人だけの楽しみだったこの催しも、今はこのブック・キャラバンを目当てにアルダワ中から人が集まるようになった。本と人に溢れる街は、歩くだけでもその活気を感じる事が出来る。
「折角来たのだから、散策がてら最新の医学書や魔導蒸気機会の技術書を探してみるとしよう」
 もう一度灯台を見上げてから、カスカはくるりと踵を返した。
 
 本を探して歩いてみると気づく、マーケットの賑やかさ。
 あちらこちらで商人が呼び込みをして、自分が仕入れた本の宣伝をしている。本を求め歩く人、お勧めの本を商人に聞く人。買った本を手に嬉しそうに駆ける子ども。二人で一緒の本を買って、その内容について議論を交わす大人。
 人の活気や熱意がカスカにも伝わってきて、なんだか心地良い。
「この立派な灯台も相まって、暫く逗留したくなってしまいそうだ」
 そう言ったカスカの目元は柔らかい。
 確か、このキャラバンは一週間ここでマーケットを開くと言っていたっけ。ならばその間だけでも、なんて思ってしまう。
 そんな思考に耽りつつ歩む、学術書エリアで。
「ああ、見つけた」
 カスカは目的の本が置いてあるテントを見つけて軒を潜った。そこは主に魔導蒸気機械の技術書を販売している店だった。いくつかある本の中から、カスカの欲しい内容に添うであろう一冊を見つけ、何度か頁を捲る。
 書いてある内容を吟味し、それが目的に叶うと知ればその一冊を求める。
「お買い上げありがとうございます。是非その本をお役立て下さいね」
 人好きのする笑みでカスカを見送る店主に軽く頭を下げ、店を後にする。
「今晩はこれを共に、ゆっくり読み耽るとしようか」
 今宵の楽しみが出来たと、カスカは満足そうに本を胸に抱いた。

 ――だが。
 そんな心地よさの中に、どうしても拭えない、ささくれ立つ棘のようなものをカスカはずっと感じていた。
 メモリアに来てから――否、此処のことを聞いてからずっとだ。
 灯台に現れるオブリビオン。
 ただそれだけの情報のはずなのに。
「……どうにも、心が騒ついて落ち着かない、な」
 カスカが振り返った先。
 未だ金の光を導にくるくる回る灯台に、カスカは誰かの人影が見えたような気がして目を細めた。
 それは幻影か、現実か。
大成功 🔵🔵🔵

夏目・晴夜
リュカさんf02586と
ハレルヤの全力の語彙で良い感じにボカした味のコメントもあるドラゴン料理本
よし、これで大儲けしましょう

いや、試食は止めとくべきかと
というか料理本として売っていいんでしょうか
だってこれ、味が…
まぁいいか!

大丈夫、絶対に売れます
読み物として凄く面白いですし、それにこのハレルヤに完売の為の秘策ありです
私の白柴に店番させましょう
犬が番をしている店に人は寄って来がちです
そうして少しでも本に目を通して貰えれば、後は勝手に飛ぶように売れていきますよ
本当に面白い珠玉の一冊ですからね!

折角ですから他の店も見に行きましょう
あ、得体の知れないおやつは与えないで下さい!壊れたらどうするんですか!


リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
本を売っていいらしいから、作ってみた
ドラゴンの生態とか、弱点とかをイラスト付きで紹介したドラゴン肉の料理本です
お兄さんの味のコメントもある
(絵はそれなりに特徴を捉えてかけるし美味しそうなイラストもかけるが味は壊滅的

…ねえ思ったんだけど、このコメント、なんだか抽象的だし、
折角だから試食も……え、何、お兄さんその顔
いや、料理本だけど……料理本だよ?
(変なこと言うなあって顔

なんだかんだで売れると嬉しいし、売れないと落ち込む
後は時間を作って、ぶらっと見て回ろうか
第二作のマーケティングも兼ねて
白柴の売り子さんはこれ、おやつに食べてもいいよ(試作品
…次は…犬型魔獣でも狩る?



 ブック・キャラバンの娯楽本エリア。その一角で。
「料理本あります」
 そう言ってテントを開いたのは、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)。そして箱に入れられた本の著者名もまた、リュカ・エンキアンサスである。なんとまさかの出版側だった。
 そして共同著者名としてあげられていたのが、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)だ。
 本を売っていいらしいから作ってみた、ということで、リュカと晴夜が出版したのはなんと料理本。それもただの料理本ではなく、ドラゴンの生態や弱点などをイラスト付きで紹介した『ドラゴン肉の料理本』である。
 ドラゴンが好きなだけあってドラゴンには詳しいリュカが、基本的な文章とイラストを担当している。そしてなんと、料理のレシピもリュカ考案だ。
「割と自信作」
「ハレルヤもですよ」
 では晴夜は何を書いたかと言えば、その料理の味のコメントである。それはもう、晴夜の全力の語彙を以て良い感じにボカした味のコメントだ。料理を食べることといい感じにボカすのにそれなりに苦労したが、おかげで晴夜にとってもなかなかの自信作である。
「よし、これで大儲けしましょう」
 互いの顔を見て頷き合ったリュカと晴夜は、早速売り場の設営に取り掛かった。

 さて、あとは呼び込みをして売るだけ、というところで晴夜がリュカを見る。するとリュカは何故か微妙に眉根を寄せて、本の内容を改めて読み返していた。どうしたのかと聞くと、リュカはやっぱり難しい顔で本から顔をあげる。
「……ねえ思ったんだけど」
「なんです?」
「このコメント、なんだか抽象的だし、折角だから試食も……」
「いや、試食は止めとくべきかと」
 置いておけば尚いいのではないだろうか。
 持ってきてるし、と鞄からタッパーを取り出そうとしたリュカを晴夜はすかさずすっぱりきっぱりと制する。
「なんで……え、何、お兄さんその顔」
 晴夜の顔は、盛大に引きつっていた。
 察して、という晴夜の心の声は、非常に残念ながらリュカには届かない。
「いや、というかこれ料理本として売っていいんでしょうか。だってこれ、味が……」
 すごかったのである。
 リュカのレシピ通りに作った料理は、というかレシピ自体「ちょっと待って」の連続だったのだが、まあとにかくコメントを求められたが為に試食した晴夜は、ちょっとしたトリップ体験の連続で割と結構洒落にならなかったのだ
 リュカの味覚が絶望的なのは既に晴夜も知っていたが、実食するとまあやっぱりそれを身を以て再確認したわけで。
「いや、料理本だけど……料理本だよ?」
 だというのに当のリュカときたら、本当にきょとんとして「変なこと言うなあ」なんて顔で晴夜を見るのである。
「……まぁいいか!」
 晴夜は諸々考えるのをやめた。

「せっかく作った本だし……なんだかんだで売れるといいな」
 (レシピの味はともかくとして)リュカにとって、これはなかなかの自信作の本だ。
 ドラゴンについては一家言あるリュカだ。自分の知識を総動員し、絵はそれなりに特徴を捉え、その料理についてもなかなか美味しそうなイラストを描けたと思う。ちょっと抽象的でぼやっとしている(させている)が、晴夜のコメントもある。本が売れるとやっぱり嬉しいし、売れないとリュカでもちょっと落ち込むかもしれない。
「大丈夫、絶対に売れます」
 そんなリュカに、晴夜はにいと笑ってみせる。
「読み物として面白いですし、それにこのハレルヤに完売の為の秘策ありです」
「秘策って?」
「これです。私の白柴に店番させましょう」
 じゃん! と晴夜が紹介したのは、晴夜の愛玩用犬型からくりの『えだまめ』だ。完全に本物の白柴にしか見えない程に精巧で緻密な、一点物の晴夜の宝物である。
「犬が番をしている店に人は寄って来がちです」
 白い尻尾をわっさわっさと左右に揺らす『えだまめ』を撫でつつ、晴夜は胸を張ってそう言った。なかなかに自信満々だ。確かに犬が店番をしているとあらば、気になって店に顔を出してみる者は多いだろう。店を訪れて貰うきっかけとしては十分だ。
「そうして少しでも本に目を通して貰えれば、後は勝手に飛ぶように売れていきますよ。本当に面白い珠玉の一冊ですからね!」
「なるほど。いいかもしれない」
 自信満々に胸を張る晴夜に、任せろとばかりに一声吼えるえだまめ。てってっ走って店主の椅子に座ると、えだまめは尻尾をぶんぶん振りながら早速店番だ。任せても多分大丈夫だろう。
「店番は任せても大丈夫そうだし、ちょっとぶらっと見て回ろうか。第二作のマーケティングも兼ねて」
「そうですね。折角ですから他の店も見に行きましょう。……第二作?」
「そうだよ」
「聞いてない」と言えば「今言った」と言われる。
 それの味見ももしかして自分がするのだろうかと晴夜が若干気が遠のいている間に、リュカは留守番をしてくれる白柴の元へ行く。
「白柴の売り子さんはこれ、おやつに食べてもいいよ」
 バッグから取り出したのは、見た目は美味しそうなジャーキー。実は持ってきていた今回の料理本販売の為の試作品である。
「あ、得体の知れないおやつは与えないで下さい! 壊れたらどうするんですか!」
「得体は知れてるでしょ。晴夜おにいさんだって食べたじゃないか」
「ええ、ええ! 食べましたけどね! すごい味でしたけどね! それでリュカさん、第二作はなにか考えがあるんですか?」
 すごかったでしょ、なんてうんうん頷くリュカと晴夜の思考にはホームを挟んだ電車くらいの逆方向な擦れ違いがある気がする。話題を変えるためにも第二作についての続きを促しながら、晴夜はリュカの背をぐいぐい押して出発することにした。第二作について真剣に悩んでいる様子を見れば、本を出すことに満更でもないらしいことも窺い知れていたから。
「……次は……犬型魔獣でも狩る?」
 な ん で そ う な っ た。
 という言葉を飲み込むべきか、言うべきか。
 一瞬戦慄した白柴と晴夜の脳内の葛藤を他所に、リュカは機嫌よくマーケティングを開始するのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

木槻・莉奈
ニナ(f04392)と参加

ふふ、いいのよ
ニナが楽しそうで嬉しいし、私もワクワクしてるもの
そうねぇ…魔術関係もだし、錬金術関係も専門書が欲しいし…
料理本も、各地の取り揃えてるみたいだし色々欲しいわ
お土産も色々選びたいし、片っ端から見ていきましょ!

(これはあの人が喜びそう、と周りの邪魔にならないよう小声で話をしながら本を選び

あら、大丈夫よ
力自慢の子達に手伝ってくれるよう頼んであるもの
動物達なら本が沢山でも困らないわ

学者とドラゴン…本当に師匠(※ニナの父親)の事だったりして?
まぁ、うちのパパ関係の本も探せばありそうだけど…
本人は絶対、自分が本に載った事より知らない楽譜探してあげた方が喜びそうだわ


ニナ・グラジオラス
リナ(f04394)と

ブック・キャラバン。なんていい響きなんだ
電子も悪くないが、やっぱり紙とインクの良さには敵わない

すまない。テンションが上がり過ぎた
リナはどんな本が見たい?研究書籍も、料理本もありそうだぞ
そうだ、先輩と愚兄からの頼み物もあったな。土産ついでに見て行こうか

私は竜に関する本が欲しいけど、知らない薬学の本もありそうで悩む
沢山選ぶと重さが気になるが、カガリを緋奔りで大きくすれば…?
いや、素直にリナの動物を頼ろう。その方が安心だ

カガリが気になるのは学者とドラゴンの本?
どこかで聞いたような…まさか。でも絶対に無いって言えないのがなぁ

それじゃあ民謡の本を探してみよう。まったく、腕が鳴るな!



「ブック・キャラバン。なんていい響きなんだ。電子も悪くないが、やっぱり紙とインクの良さには敵わない」
 ニナ・グラジオラス(花篝・f04392)の眼前に広がる本の海。
 本だけを扱ったマーケットだけあって、図書館の周囲には紙とインクの香りが心地よく漂っている。UDCアースやキマイラフューチャーなどでは電子書籍も普及してきているし、場所を取らないのは確かに素晴らしいことだ。だが、それでも紙媒体の本が消えないのは、例えばここメモリアの住人やニナのように、本という形態を愛する人々からの支持が根強いからだろう。
「……すまない。テンションが上がり過ぎた」
 普段は凛と気高くあろうとしているニナだが、今日ばかりはきらきらと輝く瞳と興味、そして逸る気持ちが抑えきれずにうっかり気持ちが昂ってしまった。共にメモリアを訪れた親友の木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)にしゅんと謝ると、くすりと淡い笑みが返ってくる。
「ふふ、いいのよ。ニナが楽しそうで嬉しいし、私もワクワクしてるもの」
 親友が楽し気ならば莉奈だって嬉しい。それに莉奈も本は好きだ。ニナの気持ちもわからないでもないので、ただただ微笑ましく思うばかり。
 そうでなくとも、大きな市というのは心を弾ませる。人の活気、商人に呼び声、並べられた沢山の本。そわそわワクワクと心が沸き立つのは、莉奈だって同じ。
「リナはどんな本が見たい? 研究書籍も、料理本もありそうだぞ」
 書架隊商に揃う本の種類は多岐に渡る。莉奈が好みそうな本の種類を思い浮かべつつニナが問えば、莉奈は人差し指を口元に当てて。
「そうねぇ……魔術関係もだし、錬金術関係も専門書が欲しいし……あ、料理本も、各地の取り揃えてるみたいだし色々欲しいわ」
「そうだ、先輩と愚兄からの頼み物もあったな。土産ついでに見て行こうか」
「ええ、お土産も色々選びたいし、片っ端から見ていきましょ!」
 話は纏まった。それではいざブック・キャラバンへ。アルダワでも有数の本の市場へ!

 学術書エリアにアルダワの情勢エリア。そして娯楽本エリア。広大な敷地を余す事なく埋める隊商のテントと人々。料理本が揃った店では、アルダワならではの魔法を込めたスイーツや、地域ごとの郷土料理をまとめた本があったり。錬金術書を熱かった店では、実験器具や錬金術の媒体とセットになった付録本に興味を惹かれたり。流石アルダワというべきだろうか。魔術書関連は特に豊富で、魔法学園の教師の論文や実践攻撃魔法論、治癒魔法概論と言った、様々な本が揃っていた。
 どれもこれも新刊ばかり。店を縫うように、二人は沢山のテントを覗いていく。
(「これはあの人が喜びそう……」)
(「そうだな。これは買って行こう」)
 本を選ぶ周囲の人々の邪魔にならぬよう小声で話しながら、二人は本を選ぶ。自分の欲しいもの。お土産にするもの。二人は楽しみ笑いながら、手に取る本を増やしていく。
 そうしていくつか本を選び終わったあたり。
 ニナが手にした紙袋をふと見つめ、少々眉を下げた。
「私は竜に関する本が欲しいけど、知らない薬学の本もありそうで悩むな」
 実際のところ、買おうと思えばどちらの本も購入することは出来る。問題はお金ではなくて。
「ただ、あまりたくさん選ぶと重さがな……」
 そう、本自体の重さである。紙媒体の弱点の一つでもあるが、本をたくさん買えば当然荷物は重くなるし嵩張ってしまう。学術書ともなればそれが顕著で、とにかく厚くて重い。既に購入している本と合わせると、少々持ち歩きに支障が出てきそうだ。
「そうだ、カガリも緋奔りで大きくすれば…?」
 と思ったが、ニナはそれ以上紡ぐ前に早々に諦めた。
 はしゃぎすぎるということはないカガリだが、何せ焔竜である。大きくなって本を持ち運んでもらうにしても、うっかり着火してしまわないだろうか。そうでなくとも、カガリに負担をかけてしまうだろうか。
 ――いや、カガリならば多分大丈夫だと思うが……。
「あら、大丈夫よ。力自慢の子達に手伝ってくれるよう頼んであるもの。動物達なら本が沢山でも困らないわ」
 なんて、難しい顔をするニナは莉奈はあっけらかんと答えた。
 いつのまにやら莉奈の隣には従順なロバが居た。莉奈のユーベルコードで召喚した動物だ。莉奈はロバの背に購入した本が入った鞄を預けながら、「ニナもどうぞ」と促す。
「……いや、素直にリナの動物を頼ろう。その方が安心だ」
 色々と考えはしたものの、親友の笑みにはニナも弱い。莉奈の心遣いを有難く頂戴し、ニナもまたロバの背に鞄を預けた。

 そうして暫く歩くと、ニナの肩に留まっていたカガリが急に顔を上げた。すいと空を飛び、ある一冊の本の上で止まってまじまじとその表紙を覗いている。カガリの後を追いかけ、二人でその表紙を覗いてみると――。
「カガリが気になるのは学者とドラゴンの本? どこかで聞いたような……まさか」
 その組み合わせ、ニナには少々覚えがある。流石に、まさかとは思うが。
「学者とドラゴン……本当に師匠の事だったりして?」
 同じくその組み合わせに覚えがある莉奈は、ニナと顔を見合わせた。師匠とはつまり、ニナの父親のこと。カガリが興味を示すことからも「まさか」の気持ちが拭えずに、その表紙を二人と一匹でまじまじと眺めてしまう。
「多分流石に違うとおも……いやでも絶対に無いって言えないのがなぁ」
「まぁ、うちのパパ関係の本も探せばありそうだけど……本人は絶対、自分が本に載った事より知らない楽譜探してあげた方が喜びそうだわ」
「それじゃあ民謡の本を探してみよう。まったく、腕が鳴るな!」
 楽譜だって書架隊商にお任せあれ。
 きっと娯楽本エリアにあるだろうと、二人は手を取って歩き出す。張り切って本を探すニナは可愛らしい。微笑ましいと笑いながら、莉奈はカガリとロバも連れて本の海へと漕ぎ出すのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

芥生・秋日子
これでも作家の端くれですからね。本は好きですよ。
「ブック・キャラバン」とても心惹かれる響きです。
素敵な本に巡り合えたらいいな~。
え、自分で書いた本を置いてもらう?えー、そんなおこがましい。
私の作品は「普通」なので!

「ふぉおお、凄いですね」
想像よりも大規模なキャラバンに圧倒されつつも、本の海を探索する。
ふと、1冊の本に惹かれ、手に取ると……
「ひぎゃあっ!?」
す、すごい。え、ちょ、待って待って?マジで、本当に?
……思わず語彙力を失ってしまいましたが、
まさか、サクラミラージュ発の小説がこの世界でみられるなんて!

この本私買いそびれちゃってたんですよね。
この場でみつけられるなんて、なんだか嬉しいです。



 灯台図書館の街メモリアの、一年に一度のお祭り。書架隊商。
 広大な図書館の敷地をめいっぱい使って開かれる本の祭典は、本を愛する人の心を擽ってやまない。
 そして芥生・秋日子(普通の人・f22915)もまた作家の端くれ。本は普通の好きだ。
「ブック・キャラバン。とても心惹かれる響きです。素敵な本に巡り合えたらいいな~」
 素敵な本との出会いを願い、秋日子は軽い調子でキャラバンを歩む。読むとしたらどんな本がいいだろう。小説、図鑑、絵本、たまには魔導書なんて見てみようか?
 なんてゆるゆる思考していると、ある商人の呼び込みが耳に入った。
「作家さんの本の持ち込み歓迎してるよ。手数料は頂くけれど、販売価格はそのまま作家さんにお渡しする仕組みだ」
 どうやら持ち込みされた本を置くことを専門にしている商人らしい。そのせいなのか、置いてある本の種類は小説、学術書、詩集に魔導写真集と雑多だ。それらを珍しげに覗き込みながら、秋日子はゆるり首を傾げる。
「へえ。本を置いてもらえるんですね」
「おや、お嬢さんどうだい? 自作の本とかあったらうちに置きますよ」
「えー、そんなおこがましい。私の作品は『普通』なので!」
 書いた本がないわけではないけれど、今ここに置いてもらう気はない。「普通」に人を惹きつける本ではあるが、「普通」に誰の心にも残らない本。その出番は秋日子にとって今ではないのだろう。
 秋日子は店主に会釈をして、一際人気の娯楽本コーナーへと足を踏み入れた。

「ふぉおお、凄いですね」
 端から見ても大きなキャラバンだとは思ったが、いざ中に飛び込んでみると、秋日子の想像よりもずっと大規模で圧倒されてしまう。
 人も本も店の数も、全てが圧倒的だ。書架隊商を「本の海」と形容することもあるが、それは中に入ってしまえばよくわかる。秋日子は本の海を泳ぐように、探索していく。
 そうしていたらふと、秋日子は1冊の本に惹かれて店のテントの軒を潜る。心のままにそれを手に取ると、そこには――櫻の出版社マーク。
「ひぎゃあっ!?」
 それに気づいた瞬間、秋日子が飛び上がった。
 勢いでうっかり落としかけた本を慌てて掴み直し、秋日子はまじまじとその表紙を見つめる。確かに櫻の出版社。確かに向こうでよく見た字体。確かに、絶対に間違わない、微かに漂う櫻の香り。
「す、すごい。え、ちょ、待って待って? マジで、本当に?」
 あまりの衝撃に、思わず秋日子の語彙が吹っ飛んだ。わなわなとする秋日子の頬はほんのり薄紅を指している。
 これはまさしく、サクラミラージュの本だ。
 何をどうやって此処まで来たのかはわからないが、ともかくサクラミラージュ発の小説がこの世界で見られるなんて――!
「おや、お嬢さんこの本を知ってるのかい? 1冊しかないんだが、良ければどうだい?」
 すっかり興奮した様子の秋日子に、店主が声をかける。
 店主にとっても見たこともなく、調べてもアルダワのどこの本なのかわからなかったようで、誰かの手作りの本がうっかり紛れたのだろうと思っていたのだという。
「この本、私買いそびれちゃってたんですよね。この場でみつけられるなんて、なんだか嬉しいです。是非買わせて頂きます」
 買いそびれてその後見つからなかった本と、此処で出会えた偶然は、書架隊商が起こした奇跡だろうか。事実は何であるにせよ、欲しかった本を手に入れることが出来て秋日子は大変ほくほく顔。「来てよかったなあ」なんてほんわか思っては、更なる本との出会いを求め、秋日子は本の海へと再び漕ぎ出すのだった。
大成功 🔵🔵🔵

都槻・綾
困りましたね
とても困りました
時間が幾らあっても足りないの

呟きに反して
ふわふわ浮き立つように
書架巡り

様々な書を手に取っては
双眸を眩げに細めたり
眉や眦を下げたり
普段は余り見せぬ表情の移ろいも
知らず知らずにかんばせを彩る

ふと
ずらり並んだ鮮やかな背表紙に惹かれ
止める足

色名ごとに一冊ずつ
個別の色図鑑

彩に纏わる詩や言葉もうつくしく
無意識に零れる吐息は心なしか優美

――あぁ、そう、

全部入手する心積もりでは居るけれど
そのうちから抜き取った数冊は
藍から東雲へと移り変わる、黎明の空色で

此の場に導いてくださったディフさんへの
贈り物にしたいなと
思い描いたものだから

喜んでくださるかしら

眼差し柔らかに
表紙をそっと撫でて笑む



 壮大で美しい灯台図書館と、それが放つ金の光に誘われて訪れる書架隊商。
 灯台図書館の前は今や金の篝火と、本の香りに溢れている。紙とインク。そして旅をしてきた海と森と、乾いた砂塵の香りを吸い込めば、本が旅したその景色までもを身の内に取り入れるようで。
 さながら本の海ともいえる書架隊商に、ふわり漂う小舟一隻。その小舟の名は、都槻・綾(絲遊・f01786)と言う。
「困りましたね。とても困りました。時間が幾らあっても足りないの」
 呟きに反して、足取りはふわふわ浮き立つような書架巡り。けれどもその悩みは真剣そのもの。綾は書に親しむ本の虫。斯様にたくさんの本があればあれもこれもと気になって、出来ることなら全部読みたいだなんて夢さえ浮かぶ。
 波に漂う小舟のように幾つものもテントを巡り、様々な書を手に取っては双眸を眩げに細めたり、文章をなぞっては眉や眦を下げたり。
 普段は余り移ろうことなき表情も、親しみ愛す書が相手とあっては緩むのか。ゆるゆる浮かぶ移ろいが、その嫋やかなかんばせを彩っていく。
 書架の海を揺蕩うことは、まるで宝の山に居るような気分だ。此処にある本はどれだって宝物で、その中から胸に響く一冊を探し巡ることのなんと幸福なことか。あれもこれも全部買ってゆきたい衝動を堪え、綾は一冊一冊を丁寧に目を通していく

「……おや」
 無限に時間があればいいのに、なんて思いながら歩を進める先。
 ふと、あるテントの中に架かる虹に目を惹かれた。良く見ればそれは虹ではなくて、ずらりと書架に並んだ色鮮やかな背表紙。何かのシリーズ物であろうそれに呼び止められるように、綾は足を止めた。
 虹のように見えた彩豊かなその本は、色名ごとに一冊ずつの、個別の色図鑑だった。
 一冊抜き出して開いてみると、色の名前と色に纏わる言葉、そして彩に纏わる詩の数々が認められている。配置、配色、言葉、その全てが美しく調和していて、そんな本を読み進める程に無意識に零れた綾の吐息は、心なしか優美ですらある。

「――あぁ、そう、」

 既に綾の心はこの色図鑑を全部入手する心積もり。けれど、そのうちから数冊を抜き取って、腕の中で並べてみる。描き出したのは藍から東雲へと移り変わる黎明の空色。
 ――いってらっしゃい。楽しんできてね。
 そう言ってこの場へと導いたディフへの贈り物にしたいと、思い描いたものだから。
「喜んでくださるかしら」
 本が好きだと言っていた人形は、この本を贈ったら笑うだろうか。驚くだろうか。
 そう考えたら、自然と眼差しが柔くなる。本の表紙をそっと撫でる綾のかんばせには、暁天のようなうつくしき笑みが咲いていた。 
大成功 🔵🔵🔵

フィロメラ・アーティア
ブックキャラバンというものを初めて知りました
此処にいる本たちも色んな所を
旅したのでしょうかステキですね
暫くは此の景色を眺めて歩きます
沢山の出会いがある、世界は広いですね

フィロメラは花について描かれた
絵本や物語を探しているのですが
お姫様や魔法使いも出てくるとよいですね
棘と眠り姫のお話も割と好みではありますが
今日は新しい物語との出会いを探しましょう

見かけた蒼い花の絵本を手に取って
故郷の伝承にも似ていて懐かしく想えます
この本はどんな方が書いたのでしょうね
こうして出会えたことに感謝して
私と共に行きましょうか
読むのは帰ってからのお楽しみにしましょう



 一年に一度のメモリアのブック・キャラバン。
 本好きのメモリアの人々の要望に応え、その名の通り本棚に本を詰めて売りにきたのがはじまりとされている。そしていつしか本棚一つでは足りなくなって、遂には書架だけを詰めた隊商が出来、海からも船が来て、遂に書架隊商は今の規模になったのだという。
「此処にいる本たちも色んな所を旅したのでしょうか」
 ブック・キャラバンというものを初めて聞いたというフィロメラ・アーティア(花盗人・f33351)に、隊商の商人は書架隊商について色々教えてくれていた。
 この時の為に、商人はアルダワ中から新刊を集めてくるのだという。例えば北の雪国から。例えば南の猫の国から。海を渡り、森を渡り、砂漠を渡り。そうして灯台の金の光に導かれてメモリアを訪れるのだ。
「ステキですね」
 本の海を揺蕩うようにブック・キャラバンを歩きながら、フィロメラはこの景色を眺めて目を細める。紙とインクが香る。本が溢れ、本を求めて彷徨う人も、本を手に入れて喜ぶ顔も、人の活気が心を躍らせてくれる。その人も本も、遠くから訪れ出会いを待っているというのなら。
「人も本も沢山の出会いがある。世界は広いですね」
 なんだかとてもロマンチックだ。改めてキャラバンを目に収め、フィロメラは柔く目を細めた。

 キャラバンの雰囲気を堪能したら、次は自分の為の本探し。これと言えるような一冊との出会いを求め、あちらこちらの店の書架巡り。探しているのは花について描かれた絵本や物語だ。お姫様や魔法使いも出てくると尚良い。
 フィロメラとしては棘と眠り姫の物語も好みではあるのだが、それは既に読んだ本。せっかく新刊ばかり集まるキャラバンなのだ。今日は新しい物語との出会いを探したい。琴線に触れる本を探して幾つめかの店で、ふと見かけた一冊がフィロメラの目を惹いた。
 それは物語の本だ。蒼い花が表紙に描かれたそれを、フィロメラは手に取って頁を捲る。読み進めてみると、不思議とフィロメラの心に懐かしさが浮かんだ。故郷の伝承にもどこか似た物語だったからだ。
「この本はどんな方が書いたのでしょうね」
 ぽつりと呟きが零れる。
 もしかして、フィロメラの故郷の物語を知っている人だろうか。作者名を指でなぞっても、それはわからないけれど――こうしてこの本と出会えたことが嬉しくて。
 書架隊商が繋いだ出会いに感謝をしつつ、フィロメラはその本を迷いなく購入した。
「私と共に行きましょうか」
 腕の中の本に語り掛ける。この本を読むのは、帰ってからのお楽しみ。
 この本を読み終わった時に、フィロメラの心に去来するものはなんだろう。懐かしさか、目新しさか、喜びか、悲しみか。
 読み切れなかった物語と、懐かしき故郷に心を馳せつつ、フィロメラは帰路に着くのだった。
大成功 🔵🔵🔵

青和・イチ
灯台って好きだなぁ
旅人の、希望の光
送り、迎える…大きな愛を感じる

見上げて目を緩め
金色の光…灯台も、喜んでるみたい

それに、風に乗って本の薫り…凄い量だ

飛び交う商人の声に目を輝かせ
相棒のくろ丸と、右へ行ったり左へ行ったり

魔法や妖精、星の研究論文に興味津々
この地図も良いなぁ…旅路が目に浮かぶ
新しい物語に、鉱物、動物の不思議な図鑑…
あ、楽譜…これ全部下さい

買った本で両手は一杯
くろ丸も御機嫌で手提げ袋を咥え

すぐ読みたいなぁ
ソワソワと場所を物色
図書館って、入って読めるかな?
ダメなら公園の何処か…

灯台、警戒したいけど…たぶん無理
夢中になる予感しかしない
…くろ丸、頼んだ
(動物図鑑をフンフンしている相棒に任せる



 大きな灯台。金の光をくるくる回し、遥か遠くまで光を届ける導きの塔。
「灯台って好きだなぁ。旅人の、希望の光。送り、迎える……大きな愛を感じる」
 灯台図書館を見上げ、青和・イチ(藍色夜灯・f05526)と相棒のくろ丸は首を顔を一生懸命上に向ける。城のように巨大な、という言葉は比喩ではなく、本当に城のような大きな図書館の中央に、これまた大きな灯台があるのだ。その先端で、煌く金の光がくるくると回っていた。
「金色の光……灯台も喜んでるみたい」
 いつもを道行きを照らすばかりの灯台も、書架隊商の時だけは溢れる金の光が灯台を照らしてくれる。その美しさに、心なしかくるくる回る光も嬉しそうに思えて。
 そうしていたら、ふわと吹いた風がイチの鼻腔を擽った。
「それに、風に乗って本の薫り……凄い量だ」
 紙とインクの混じる薫りは、本来とても微かな香りだ。けれどもそれを濃厚に感じられるということは、それ程の本が集まっている証左。そう思ったら、イチの心はもうそわそわしてしまうから。
「行こう、くろ丸」
 居ても立っても居られなくて、イチはくろ丸を連れ立ちキャラバンへと飛び込んだ。

 ――海の中は賑やかだ、なんて、何の物語の台詞だったか。
 飛び交う商人の声に目を輝かせ、イチはくろ丸と一緒に右へ行ったり左へ行ったり、まるで波に揺れる小舟の様。
 学術書エリアに足を運べば、魔術や魔法、妖精や精霊の本が並ぶ。魔法や妖精、星の研究論文にはイチも興味津々で。中には妖精が封じられた本なんてのもあったりして、驚いてしまって。
 アルダワの情勢エリアに行くと、地図を扱った店の前で立ち止まり。
「この地図も良いなぁ……旅路が目に浮かぶ」
 しかも魔法の枠を置くと、枠内の上空映像が映し出される付録付き。地図の上で枠を滑らせるだけでも旅気分を味わえるかもしれない。
 娯楽本エリアでは新しい物語、鉱物、動物の不思議な図鑑にも心を奪われて。
「あ、楽譜……」
 そんな中で見つけた楽譜。メロディーラインをなぞってみると、なんともイチの心にすんなり馴染む。その声を聴いてくろ丸も嬉しそうに尻尾を振ってくれるから、悩む必要なんてなかった。だから思い切って。
「これ全部下さい」
 イチはそこにあった楽譜を片端から掴んでそう言った。

 心ゆくまで書架の海を堪能した頃には、イチの両手は購入した本でいっぱいだ。隣を歩くくろ丸も、ご機嫌で手提げ袋を抱えてくれている。
「すぐ読みたいなぁ」
 手にしているのは全てイチの心を擽った本。もう今すぐ読みたくてたまらない。なんてところに再び目に入ったのは、灯台図書館。
「図書館って入って読めるかな? 聞いてみようか」
 本を読むところなのだから、読書スペースもあるかもしれない。職員に聞いてみると、全く問題ない上に読書に集中する為の個室の閲覧室もあるらしい。そこも借りられるとのことで、イチは早速部屋を一つ借りた。
 閲覧室は広すぎず、狭すぎず。適度に寛げる広さと落ち着ける椅子とテーブル。そして魔導燭台を備えたシンプルで静かな部屋だった。こんな部屋を作っていることもまた、メモリアの人々の読書好きを感じられる。
「灯台、警戒したいけど……多分無理。夢中になる予感しかない」
 椅子に腰を下して早速一冊を手に取る。窓の外には書架隊商。そして、くるくる回る金の光。
 ――後に一騒動あることは、釘を差されているけれど。
 もう本を手に取っちゃったから。
「……くろ丸、頼んだ」
 だから仕方がないので、動物図鑑をフンフンしているくろ丸に警戒を任せることにした。「え?」とばかりにくろ丸が振り返ると、イチはもう本に夢中になっていた。
大成功 🔵🔵🔵

リタ・キャバリエーレ
蛟羽くん(f04322)と

きっと蛟羽くんも素敵な出会いがあると思うの

となんなら選んであげよう、と意気込んでいたものの、いざ着いてみれば様々な種類の本が溢れる空間に魅せられ

元々、猟兵になる前から本、という存在に救われ、そして親しんできた身
大量の種類溢れるブックキャラバンはまさに天国

わぁぁすごい……
ちょっぴりマニアックな鉱物図鑑に目を輝かせ、こちらの冒険譚に胸躍らせ。様々な本や作者、売り手の声に目移りしつつも、かろうじて目的を思い出して
蛟羽くんはなにか気になるもの、あったかしら?

これなんてどうかしら?と楽しげに歌う絵本を選んだり

高いところにある本は抱っこして持ち上げれば届くかしら?


未不二・蛟羽
リタさん(f22166)と
わー!これ全部ご本っすか!?
色んな色と紙の匂いがいっぱいっすね!

読書は得意ではないが新しいことを知るのは大好き
その為、初めて見る見渡す限りの本という環境に大興奮


面白そうなものいっぱいあるし、俺もご本読むっすよ
ここならいつもより内容がわかる気がするっす

意気込んでちょっと背伸びをしでダンス関連の本を引っ張り出すも開いて数秒後には船を漕ぎ始め

…はっ!
ね、ねね寝てないっすよ!?

でも、ムズカシイのはやっぱり苦手っす
…リタさん、何かオススメって無いっすか?

勇者が出てくる絵本やイラストが多めの本をその後は楽しく読み

※文字の読み書きは12歳前後
読解力と情緒はまだまだお子様

アドリブ歓迎



「わー! これ全部ご本っすか!? 色んな色と紙の匂いがいっぱいっすね!」
 お城みたいに大きな灯台図書館の前、広大な敷地の庭を使った書架隊商。
 海からも森からも砂漠からも集まった隊商はここで皆テントを広げ、本を一杯に詰めた書架を並べて店とする。一週間だけのお楽しみ。ブック・キャラバンの開幕である。
 ここまで大きな本の祭典は見たことがないのだろう。未不二・蛟羽(花散らで・f04322)は楽し気にあちこちをキョロキョロと見回しながら、傍に居るリタ・キャバリエーレ(空を夢見た翼・f22166)を振り返った。
「面白そうなものいっぱいあるし、俺もご本読むっすよ。ここならいつもより内容がわかる気がするっす」
「えぇ、きっと蛟羽くんも素敵な出会いがあると思うの」
 同じようにニコニコと笑うリタにやんわり肯定されて、嬉しそうに蛟羽が笑う。
 蛟羽にとって読書は得意な事ではないし、そも落ち着いて本を読むというガラでもない。だが新しいこと、未知の知識を知る事は好きだ。それ故か、初めて見る見渡す限りの本という環境に、蛟羽の心は沸き立っていた。
 そしてそれはリタも同じ。蛟羽の本のアドバイスをしたり、なんなら自分がぴったりの本を選んであげようと意気込んでいたのだが、いざブック・キャラバンに着いてみると、那由他とありそうな本が溢れる空間に魅せられてしまっていた。
 元々リタは猟兵になる前から『本』という存在に救われ、そして親しんできた身だ。そんなリタにとって――そして灯台図書館なんて建ててしまうメモリアの住人にとっても――、あらゆるジャンルの本が溢れるブック・キャラバンはまさに天国とも言えた。
 あちこちで飛び交う商人の呼び声に心揺らし、さて何処から行こうかと迷ってしまう。
 けれども海は飛び込まねば、その深さを知る事は出来ない。そしてそれは、本の海たるブック・キャラバンも同様で、飛び込んでみなければその深さと広さを本当の意味では知れたとは言えない。
 ならばまずは飛び込もう。いざ書架の海へ!

 勢いよく飛び込んだ書架の海は、人と本が金色の世界を揺蕩ううつくしいもの。あっちを見ても本。こっちを見ても本。振り返っても本。そして溢れる人々もまた、本との出会いを求める本好きばかり。
「わぁぁすごい……」
 色んな店を覗くたび、リタの目がキラキラと煌く。
 ちょっぴりマニアックな鉱物図鑑に目を輝かせ、向かいのお店の冒険譚に胸を躍らせて。特に目的の本やジャンルを決めていたわけではなかったが、だからこそこれだけ大量の魅力的な本を前に、すっかりリタは楽しい本の迷子だ。
 蛟羽も気合一発。意気込んで本の海へと漕ぎ出し、ちょっぴり背伸びをしてダンス関連の本を見つけて書架から引っ張り出す。開いてみれば、それは難しい構文で書かれたダンスの歴史やステップの種類を文字だけで表した本だったわけだが――。

「どうしよう迷っちゃう……」
 さて、様々な本や作者、売り手の声にリタはまだまだあっちこっちに目移り中。あっちの本も欲しいし、あっちで宣伝していた図鑑も気になるし、そっちにあった冒険譚も――。
 なんて迷いに迷って遂に本の海に座礁してしまった末に、リタはようやくはたと当初の目的を思い出す。
 そう、蛟羽に本を選んであげようと意気込んでいたのだった――!!
「蛟羽くんはなにか気になるもの、あったかしら? ……蛟羽くん?」
 慌てて振り返り、傍で本を選んでいたはずの蛟羽の姿を探す。と、果たしてそこにはダンスの本を開いたものの、ただの1ページで船を漕ぎ始めた蛟羽の姿。流石に蛟羽には難し過ぎたらしい。リタがとん、と蛟羽の肩に手を置くと、文字通り蛟羽が飛び上がる。
「……はっ! ね、ねね寝てないっすよ!」
「それ、寝てた子の常套句じゃない。寝てない子はそもそも何も聞かれる前から『寝てない』なんて言い訳しないのよ?」
「いやいやそれは、その……はい、寝てましたっす」
 言い訳と誤魔化しを試みてみたものの、ばっちり船を漕いでいるところをリタに目撃されてしまっていてはどうしようもない。蛟羽は観念したように両手を上げ、ダンスの本をぱたんと閉じてはしゅんとした。尻尾の蛇も同様にしょんもり下を向く。
「ムズカシイのはやっぱり苦手っす。……リタさん、何かオススメって無いっすか?」
「そうね、これなんてどうかしら?」
 お手上げ状態の蛟羽にくすくすと笑って、リタは一冊の本を手渡す。開いてみれば、それは歌う本。楽し気な音楽と共に、澄んだ声が楽譜を歌い上げてくれる本だ。曲はいくつもあって、それをダンスに活かすのも楽しいかもしれない。
 眠くてちょっぴり退屈そうにしていた蛟羽が、見る間に元気な表情を取り戻す。
「あ、リタさんあれも気になるっす。なんか勇者っぽい本!」
「あら、高いところにあるわね。抱っこして持ち上げれば届くかしら?」
「おっ助かるっす! ……いや待ってやっぱ無しちょっと待ってリタさん恥ずかしいし俺羽根あるからー!!」
 リタの提案にうっかり同意しかけた蛟羽だが、よくよく考えたら女性に抱っこしてもらう構図になるのでそれはちょっと流石に恥ずかしい。だがリタはリタで「大丈夫よー」とニコニコ笑い、蛟羽の両脇に腕を差し入れようとする。多分大丈夫ではない。蛟羽の年齢的に。
 その後リタの好意をどうにかこうにか断って、ちょっぴり羽搏いて手にした本を購入し、その後は二人でのんびり読書タイム。
 灯台図書館の前のベンチで、リタは図鑑を、蛟羽は勇者が出てくる絵本を楽しく読み進めるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

宵雛花・千隼
梟示(f24788)と

見渡す限りの本…心躍る眺めだわ
人混みは苦手でも、素敵な場所に紛れてしまいたい気分
梟示、素敵な本があったら教えてね
逸れてしまったら見つけて、なんて冗談めかし
ゆっくり本を見て行きましょう

アナタはどんな本が好き?
答えにワタシもよ、と柔く笑って
空想の物語が好きだわ
御伽噺に在るような、妖精や魔法が好きなの
まあ、挿絵が?
…迷うわ
多めに買って帰って、一緒に読むのはどう?

梟示?
つい夢中で見ていたら、本当に逸れてしまって
背の高い彼を探せど埋もれ

呼び声に本を抱いて、嬉しいままに微笑んで
ありがとう、見つけて下さる気がしていたの
素敵な物語を見つけたわ
蝶のランプを灯すお話…あなたに贈っていいかしら


高塔・梟示
千隼(f23049)と

ああ、それにとても活気がある
人と本のどちらが多いかな、なんて
勿論、声を掛けるとも
君もどうぞ教えてくれたら
冗談のままでいて欲しいな…と肩竦めて
素敵な出会いがあるように

わたしは小説、物語が好きだよ
旅の本や図録も好きだが…
さっき見た歌う本も興味深い
君は?問返せば瞬いて
…物語なら、挿絵の動く本があったっけ
名案だね、それなら倍読めるのだから

ふと、聴こえぬ声に辺りを見回し
つい夢中になってしまったか…
花に遊ぶ蝶を追うように、小柄な白い姿を探す

…千隼?よかった、捜したよ
ふふ、素敵な戦利品があったようだね
わたしに選んでくれたのかい?嬉しいよと微笑んで
花の妖精と住まう植物の手引きを、お返しに



「見渡す限りの本……心躍る眺めだわ。人混みは苦手でも、素敵な場所に紛れてしまいたい気分」
「ああ、それにとても活気がある。人と本のどちらが多いかな」
 活気と金の光に溢れる書架隊商を前に宵雛花・千隼(エニグマ・f23049)が手をぱちりと叩くと、高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)も鷹揚に頷いて見せる。
 灯台図書館の街メモリアの書架隊商は、アルダワの本好きにとっては一大イベントだ。なにせアルダワ中からかき集めた新刊が、一堂に会する機会である。本のジャンルも多岐に渡り、高度な学術書から絵本のような優しい本までなんでも揃うのである。たっぷりの書架に収められた本達は、それを求める人との出会いを今か今かと待ち望んでいる。
「梟示、素敵な本があったら教えてね」
「勿論、声を掛けるとも。君もどうぞ教えてくれたら」
 そんな本との出会いに胸を弾ませる千隼に、梟示の声もまたどこか上機嫌。早速二人並んで歩き出してみると、改めてその活気と人の多さを肌身で感じられた。人に流される程ではないけれど、ぼうっと立ち止まっていたら見失ってしまいそうだ。
「確かにすごいひと。逸れてしまったら見つけて」
「……冗談のままでいて欲しいな」
 千隼が冗談めかして微笑む様子に、梟示は肩を竦めつつ書架隊商を見回した。この規模と人出。迷子を探すのは少々骨が折れるだろうから。
「ゆっくり本を見て行きましょう」
 そんな梟示の様子にも楽し気にくすくすと笑い、けれども沸き立つ心の逸るまま。本との素敵な出会いを求め、千隼は梟示の手を取り書架の海へと漕ぎ出した。

 金の篝火を掲げたテントが並ぶキャラバン。書架に佇む本の背表紙を眺め、並べられた本の表紙を覗き込み二人は歩く。
「アナタはどんな本が好き?」
「わたしは小説、物語が好きだよ。旅の本や図録も好きだが……さっき見た歌う本も興味深い」
 ――君は?
 そう問い返せば、柔い笑みが返る。
「ワタシもよ。空想の物語が好きだわ。御伽噺に在るような、妖精や魔法が好きなの」
「……物語なら、挿絵の動く本があったっけ」
「まあ、挿絵が? ……迷うわ」
 梟示の魅力的な提案に、千隼のたおやかな指が悩まし気に唇に添えらえる。一言に『物語』と言っても、この書架隊商には何冊もの物語がある。その中から選りすぐりの一冊を選ぶのは難しく感じられた。――否、一冊だけを選ぶ理由もない気がして。
「多めに買って帰って、一緒に読むのはどう?」
「名案だね、それなら倍読めるのだから」
 そんな魅力的な提案を、梟示が否というわけもない。書架隊商の本は、基本的には一期一会。二人の本の好みが一緒ならば、二人の気になる本を遠慮せずに買えば楽しみも倍増だ。
 ならばとついつい夢中になる本選び。気になる本を手に取っては頁を捲り、内容を確認しては購入し。商人の呼び込みが気になって店を渡り、また本を手に取る。
「――梟示?」
 そうしていたらはたと、千隼は傍らに居るはずの梟示が居ないことに気付いた。いつからだろう。何処でだろう。冗談で言ったつもりが本当に逸れてしまって、背の高い梟示を探せども、溢れる人の流れに埋もれて見えない。本を抱きながら、千隼の瞳が不安に揺れた。
 同じ頃、梟示もまた千隼の声が聴こえぬことに気付いて、辺りを見回していた。
「しまった、つい夢中になってしまったか……」
 本を選ぶ時は内容を確認する為、数頁は読んでしまうもの。それが興味を引いたり琴線に触れるものであったならば猶の事。いつ逸れたのかも明確でないまま、花に遊ぶ蝶を追うように、小柄な白い姿を探して梟示は駆ける。

 果たして、梟示が千隼を見つけたのは灯台図書館の前だった。豊かな白い髪が揺れるのを目印に人の間を縫い、その名を呼ぶ。
「……千隼?」
「梟示」
 呼び声に気付いて、本を抱いた千隼が顔を上げる。その目が梟示を捉えれば、嬉しいままに微笑んで駆け寄った。
「よかった、捜したよ」
「ありがとう、見つけて下さる気がしていたの」
 だからあまり不安ではなかったと、千隼が笑う。信頼の証であろう言葉に梟示もまた息を吐いて笑み返し、ふと彼女が抱く本に気づいて双眸を細める。
「ふふ、素敵な戦利品があったようだね」
「素敵な物語を見つけたわ。蝶のランプを灯すお話……あなたに贈っていいかしら」
 そう言って千隼が差し出したのは一冊の物語。魔法のインクで描かれたのだという表紙では、本当に淡い灯りが燈るランプに蝶がひらひらと舞い踊っていた。
「わたしに選んでくれたのかい?」
 嬉しいよ、と受け取る梟示の言葉と微笑みは柔く温かい。お返しにと梟示も彼女に手渡したのは、『花の妖精と住まう植物の手引き』。互いに選んでいたのは相手の為の本だったと知るや、二人のかんばせにまたふわりと温かな笑みが咲く。
 帰ったら一緒に読もう。読み終わったら交換して、感想を言い合ってみようか。
 そんな約束を交わし、今度は逸れぬよう手を繋いで二人、再び書架隊商へと歩み出した
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

冴島・類
黒羽(f10471)と

灯台図書館の街で開かれる書架隊商
なんて心躍る案内!

見上げる灯台の元広がる
あの建物が図書館だなんて
到着したら、そわそわを抑えきれず

ね、黒羽
いんくと紙の香りだけじゃなく
色んな空気が混ざってるよ
本達も旅をしてきたからかな?

妖精に関する本なら学術本系が集う場が良いかも
僕もくれあや他の精霊のことも知りたいし
君の友とも仲良くなりたい
一緒に覗いてみようか
黒羽と紬に紹介と火の君を呼び


選ぶ横で、魔導論理の本を見れば
つい没頭しかけ、袖に気付き
やってしまったと笑い
ああ、お勧めを君にも
今日ばかりは荷が重くなりそうだ

目当てを手にした後は
中央側で絵本や図鑑なんかも覗かない?
偶然の出会い、宝物を探しに


華折・黒羽
類さん/f13398

本が沢山集う場所
大きな建物を同じように見上げ
きっと表情は然程変わらずとも
眸は溢れんばかりの期待に満ち満ちて

すん、と鼻で空気を吸えば
成程類さんの言う通り
旅をしてきた本、楽しみです

妖精の本を見てみたいんです
この仔の事を、もっと知りたくて
肩に乗る水の精霊、紬に視線をやり
くれあ
類さんにも精霊の友人が居るんですよね
俺も、仲良くなりたいです
いい本見つかるといいですね

あ、類さんこれとか…
没頭してしまってる類さんの横顔を見ればつい綻んで
くい、と引いた彼の服端
俺も半分持ちますよ
面白いのがあれば、俺にも読ませて下さい

提案に頷けば
片手にずしりと感じる重さにまた咲って
あなたの背について歩いてゆく



 灯台図書館の街で開かれる書架隊商。金の光で照らす街の中で、今日この日の為に集められた本が一堂に会す本の祭典。
 ああ、なんて心躍る案内――!

「あの建物が図書館だなんて」
 見上げる程に大きな灯台と、その元に広がる大きな屋敷。灯台を改築し、増築し、いつしか城や屋敷のように巨大な建物となった灯台図書館を見上げるのは、冴島・類(公孫樹・f13398)と華折・黒羽(掬折・f10471)の二人。
 その存在すらどこかお伽噺めいた建物を前に、到着早々類の心に広がるそわそわやわくわくが抑えきれない。街の人の手だけで作られたという灯台図書館は、大切な本を収める場所だからと出来るだけ大きく、そして美しく作られている。その内も、本にとって最適の空間、読書をする人にとっての最適の空間を目指して作られているのだから、メモリアの人々の本好きは相当なものだろう。
 隣の黒羽はといえば、灯台図書館を前にしても然程表情は変わらぬように見える。けれど類にはわかる。その双眸は、溢れんばかりの期待に満ち満ちていると。

「ね、黒羽。いんくと紙の香りだけじゃなく、色んな空気が混ざってるよ。本達も旅をしてきたからかな?」
 問われて黒羽がすん、と鼻で空気を吸うと、本の香りに混じって確かに別の香りがした。それは乾いた砂の香りだったり、潮の香りだったり、微かに湿った森の香りがするような気がした。この日の為にアルダワ中から新刊をかき集め、海を渡り砂を渡り、森や街を渡って隊商はメモリアにやってくる。本も旅をしてきたというのは言い得て妙だ。
「成る程。類さんの言う通り。旅をしてきた本、楽しみです」
 旅をしてきた本。
 その響きだけでも心を擽られるのは何故だろう。膨らむ期待は早く行こうと足を急かし、二人顔を見合わせればその思いの赴くまま、金の光溢れるキャラバンへと踏み出した。

「黒羽はどんな本が欲しい?」
 書架の海を揺蕩うように歩みながら、類が問う。この書架隊商は主に三つのエリアに分かれている。欲しい本があるのならば、向かうエリアも自ずと定まるし、特にないのなら本に誘われるままに自由に歩いてみるのもいいだろう。
 すると黒羽は灯台図書館を前にして、右側のエリアを指差した。
「俺は妖精の本を見てみたいんです。この仔の事を、もっと知りたくて」
 そう言って、黒羽は己の肩に座る水の精霊、紬に視線をやった。勿忘草色の水の精霊は、水の羽衣揺らして首を傾げている。黒羽は紬のことを詳しく知っているわけではない。だからこそ、『水の精霊』という存在そのものの事から学びたくて。
「成る程。妖精に関する本なら学術本系が集う場が良いかも」
 確か右側のエリアだと、進行方向を変えて二人は歩む。
「僕もくれあや他の精霊のことも知りたいし、君の友とも仲良くなりたい。一緒に覗いてみようか」
「くれあ。……類さんにも精霊の友人が居るんですよね。俺も、仲良くなりたいです」
「うん。そういえば紹介はまだだったかな。――おいで、くれあ。ご挨拶しよう」
 黒羽と紬に紹介と呼び声に応えて現れたのは、煌々と燃える髪持つ火の君。仲良くなるのなら、まずは自己紹介と挨拶だ。挨拶を交わし合ったら、きっと仲良くなれるから。
「いい本、見つかるといいですね」
 黒羽の言葉に類だけでなく、紬とくれあも嬉しそうに頷いた。

 学術書エリアに赴くと、妖精や精霊関連の本を多く扱っている店を見つけた。テントの中にはテーブルの他にいくつもの書架があって、中にも沢山の本が収められている。黒羽が商人に水の妖精についての本がないかと聞けば、たくさんあるよ!とざっと10冊くらいの本を手渡され。
 黒羽がその中身を確認している間に、ふと類が見つけたのは魔導論理の本。アルダワならではの魔導を論理的に説いた本に興味を惹かれて頁を捲る。それは思いの外わかりやすく、且つ興味をどんどん引いていく内容で、ついつい類も本に引き込まれていく――。
「あ、類さんこれとか……」
 商人に勧められた妖精の本の中から、黒羽の琴線に触れた本を見せようと隣を見ると、類はすっかり書に没頭していた。黒羽が見ていることも気付かぬ程に集中して読み進める横顔を見たら、つい黒羽のかんばせも綻んでしまう。そして驚かせぬようそっとくい、と類の服端を引いた。
 引かれた袖に気付いて、類がはっと書から顔を上げた。ついつい読み耽ってしまっていた。袖を引いた黒羽の顔を見ては「やってしまった」と笑えば、つられるように黒羽もふわりと微笑む。
「ああ、お勧めを君にも。今日ばかりは荷が重くなりそうだ」
「俺も半分持ちますよ。面白いのがあれば、俺にも読ませて下さい」
 まずは互いのお勧めを一冊ずつ。目当ての本を手にしたけれど、まだまだ居並ぶ本への興味は尽きない。あの本も気になるし、あっちの店も気になるのだと真面目な顔して黒羽が言えば、「僕もなんだよねえ」と類も真剣な顔。
 折角の本のお祭り。手にする本を一冊で済ませてしまうのは、少々勿体ないというもので。
「黒羽。中央側で絵本や図鑑なんかも覗かない? 偶然の出会い、宝物を探しにさ」
「いいですね、行ってみましょうか」
 魅力的な類の提案に頷いて。片手にずしりと感じる本の重さにまた咲って。
「行こう、黒羽」
 名を呼び歩み出す類の背について、黒羽も歩き出す。まるで親の背を追う子供のように。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

賑やかな祭りだね
サヨ、逸れないように手を繋ごう

はしゃぐ巫女が可愛らしい
私も本が好きだよ
一つ一つに物語、知が宿されている
私は旅行記がいいかな
旅をするのが好きなんだ

近くに並んで腰掛ける

きみと向かう旅の行先も見つけたい
此処は魔法の世界
不思議な場所がある

本を開けば未知の世界が拡がって
猫の国に、精霊の森に水妖精の湖──此方の星雫の平原も素敵だよ
魔法の桜が咲く丘も!
夏ならば魔法の海も…サヨ、次はこういう所に行きたいな
その次は白夜の─サヨ?
うん
一緒にいこう
時などいくらあっても足らないよ

サヨはどんな本を?
おお…美味しそうな甘味だ!
サヨの作る魔法のチョコレート食べたいな
旅のお供に
甘やかなきみの笑顔と一緒に


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイ!見て、賑やかね!
呼び込む声に未知を宿す魔法の書達
人混みに引き離される前に手を繋いで祭りを見てまわる

魔法植物に鉱石…これは魔法の童話?
かぁいらし!魔法生物の図鑑ね
手に取ってはカムイに見せていく
カムイは旅行記…?
旅が好きだものね

あなたの横に腰掛けて選んだ本を捲っていく
子供のように無邪気に旅に想いをはせるカムイの横顔のかぁいらしいこと
ねぇ一緒に旅しましょう
あなたの行きたい場所全部
ずうと寄り添っていたい

魔法菓子の本よ!私はショコラティエだもの
魔法の宿る鉱石や花のようなチョコレートを作りたいのよ
カムイとの旅に持っていきたい

勿論
そしたら私達だけの旅行記を記しましょ
こうして本に出来るくらいね



 灯台図書館の金の光に導かれやってくる、書架隊商。
 本が溢れ、人が溢れ、その出会いを繋ぐ商人が居て、キャラバンは大都市の市に勝るとも劣らない活気を見せている。
「カムイ! 見て、賑やかね!」
 ゲートを潜ってすぐに感じた活気に、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)はつられて高鳴る心のままにはしゃいで指をさす。
 商人の呼び込む声に、未知を宿す魔法の書達。書は世界を表すとはよく言ったもので、魔法と蒸気機械文明が発達したアルダワならではの本が溢れているようだ。
「賑やかな祭りだね。サヨ、逸れないように手を繋ごう」
 人混みに引き離される前にと、朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)は櫻宵の手を取ってしっかりと握る。そのさりげない優しさに目を細め、二人は書架の海へと踏み出した。

 商人の呼び込みに心惹かれるまま、二人はあちらこちら気になる店へと顔を覗かせる。それぞれの店には展示台と書架。それらいっぱいに並べられた本が、アルダワ中を旅してきた香りを纏って二人を誘う。
「魔法植物に鉱石……これは魔法の童話?」
「あら、かぁいらし! 魔法生物の図鑑ね。見てカムイ、本の中で絵が動いてるわ!」
「本当だ。すごいね」
 櫻宵は気になる本を手に取っては、カムイに見せていく。そんな櫻宵のはしゃぐ様子が何より愛らしくて、カムイにもふわふわ笑みが浮かぶ。そうしていくつか店を回ったところで、櫻宵はカムイの顔をひょいと覗き込む。
「カムイは本、好きかしら?」
「ああ、好きだよ。一つ一つに物語、知が宿されている。その中でも私は――こういうのがいいかな」
 丁度立ち寄った店で、カムイは目を惹いた本を手に取り櫻宵に見せる。しっかりとした厚みのある装丁のその本の表紙は、美しい景色で彩られていた。
「これは旅行記?」
「そうだよ。旅をするのが好きなんだ」
 優しく頷いたカムイは早速それを購入し、他にはアルダワの地図や旅行関係の本をいくつか買い揃え、櫻宵を誘って近くのベンチに腰掛ける。
 二人寄り添って座れば、カムイと櫻宵の膝を半分こして旅行記を置いて表紙を捲る。
「きみと向かう旅の行先も見つけたい。此処は魔法の世界。不思議な場所がある」
 旅行記を記したのは、とある夫婦。若い頃から旅好きだった二人が、生涯に渡って訪れた場所を本に記したものだ。付属の地図と照らし合わせれば、その場所の位置もわかるのが嬉しい。
「嗚呼。猫の国に、精霊の森に水妖精の湖――此方の星雫の平原も素敵だよ。魔法の桜が咲く丘も!」
 文を追い、その地のことを知るたびに、カムイのかんばせには期待や胸の高鳴りが笑みとなって浮かぶ。何処か興奮気味に話すカムイはまるで子供のように無邪気だ。旅に想いを馳せるカムイの横顔は、本当に旅が好きなのだと語っていて。
「……かぁいらしいこと」
「夏ならば魔法の海も……サヨ、次はこういう所に行きたいな。その次は白夜の――サヨ?」
「ふふ、なんでもないわ」
 夢中になって本を読み進めていたカムイが、にこにこと笑う櫻宵に気づいて首を傾げる。そして不思議そうなカムイの肩にそっと頭を預け、櫻宵は柔く目を細めた。うつくしい竜の瞳には、神が指でなぞった絶景の挿絵が映る。
「ねぇ一緒に旅しましょう。あなたの行きたい場所全部。ずうっと寄り添っていたい」
 こんな風に寄り添い、手を繋ぎ、いつまでも、どこまでも。
「うん。一緒に行こう。時などいくらあっても足らないよ」
 たくさんの世界に行って、たくさんの景色を見て、人の営みを感じ、自然の雄大さを知り、そして互いを知り、互いの心に同じ景色を遺していく。そのなんと愛おしいことだろうか。
 こてり、と預けられた櫻宵の頭に自分の頭を重ねる。神と竜の時間は一体どのくらいあるだろう。その時間をいっぱいに使って、寄り添えたらいいと思うのだ。
 
「……サヨはどんな本を?」
 一通り旅行記を読み終えて、カムイは本を閉じる。次に気になるのは、櫻宵が買い求めていた本だ。問われればやんわり頭を離した櫻宵は、傍らに置いていた本をカムイに差し出す。
「私は、ほら! 魔法菓子の本よ!」
「おお……美味しそうな甘味だ!」
 ぱあっと、先程とは別の意味でカムイの目がきらきら煌く。頁を捲ると、そこには魔法の材料をいくつか使った魔法のお菓子のレシピ本。魔力を込めたら花開く蕾の練り切りに、宝石めいたジュエルマスカットを使ったサンデー。そして、夜空の星を描くようなスターパウダーを振りかけた、とろける口どけの星夜のオペラ。
 アルダワらしい魔法を取り入れたスイーツが、魔導写真と詳細なレシピと共に掲載されている。
「私はショコラティエだもの。魔法の宿る鉱石や花のようなチョコレートを作りたいのよ。カムイとの旅に持っていきたい」
 そう甘やかなる提案を櫻宵がしたら。
「うん、サヨの作る魔法のチョコレート食べたいな。旅のお供に、甘やかなきみの笑顔と一緒にね」
 カムイの甘やかなるいらえが返る。
 きみとの旅。きみと見る景色。きみと食べる魔法のチョコレート。きっときっと、全てが心に残る思い出になる。 
「勿論。そしたら私達だけの旅行記を記しましょ。こうして本に出来るくらいね」
 そうしたら綴ろう。本が出来たら、いつかこの書架隊商に出してみるのもいいかもしれない。本を読んだ誰かがその旅路をなぞってくれたなら、その本を愛してくれたなら、二人の旅は世界に繋がってゆくから。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ライラック・エアルオウルズ
ペペルさん(f26758)と

海を揺蕩う物語が
灯を辿って一堂に会す
その景に鼓動跳ねては
何処か幼い笑みも浮かび

僕の街は海に縁遠くてね
それを渡る灯台の物語
少しも想像出来ないが
貴方は船運ぶ物語の欠片
密か聞いていたりする?

それも教えて欲しいものと
貴方が指先掬う御話にも
好奇誘われてしまうけど
身も耳も傾くのを、否と堪え
此度は共に好奇を満たそう

然して、悩ましいな
嵐より揺れて、素敵に座礁
猫の国の法律や魔法図鑑
目蓋に景を描く小説も良い
映す幻想を知りたい、し

――貴方は見つかった?
潔く山抱え、緩り覗けば
未だ悩むようすに眦下げ
此処は宛ら大海原だもの
気侭に巡りゆけばいいさ

本の微かな潮香指し戯れに
僕も貨物船の如く征こうか


ペペル・トーン
ライラちゃん(f01246)と
海揺られ、灯りに集うお話達
出会うのはどんな子か楽しみね
本は好きよ
たくさんお話してくれるもの

海遠いなら森の中かしらと
思い巡らせながら首を横に振り
私、海に沈んだ本を読んでいたの
だから、それは知らないわ
沈んだ本のお話は
また今度

今は、海遠い貴方と共に
知らないお話で満たしましょう
ふふ、溺れないように気をつけて

何処を見ても未知のものばかり
夢揺れるように歩き眺め
海泳ぐ人の幸せな物語に
花の図鑑に、星語る本に足をとめて
悩み選んで見上げれば
山抱えた貴方がいるものだから
思わず声を零して

貴方が誘われたものは多いみたいね
私はまだ迷ってしまって…
指した方へと目に映して
もう少しだけ巡っていい?



 海と砂漠、そして森を照らすメモリアの灯台。
 常は静謐の銀が道行きを照らすけれど、一年に一度の今だけは、輝く金の灯火となって道を照らす。皆が待ち望むキャラバンが迷わぬように。無事に辿り着けるように。こっちにだよとくるくる手を振って。
 そうして海を揺蕩う物語が、灯りを辿って一堂に会す。眼前に広がる金の景色に鼓動が跳ねては、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)のかんばせに何処か幼い笑みが浮かぶ。ライラックは本の綴り手だ。見渡す限りの本の祭典とあらば、心が躍らぬはずもない。
「海揺られ、灯りに集うお話達。出会うのはどんな子か楽しみね」
 上機嫌なライラックに、共に歩くペペル・トーン(融解クリームソーダ・f26758)もまた柔い笑みが咲く。
 アルダワ中から集められた新刊たちは、書架の揺り籠で船に乗って、或いは煌砂船や魔導蒸気列車でメモリアへやってきた。漂う香りにくん、と鼻を鳴らせば、紙とインクの香りに混じる潮の匂い。そしてあちらの書架からは森の湿った木々の匂い。向こうの書架からは乾いた砂塵の匂いがする。どれも遠く旅してきた本だと知れば、ペペルの胸も高鳴ってゆく。本は想像の旅に連れて行ってくれるもの。または未知の知識で世界を広げてくれるもの。旅をしてきた本で知識の旅に出る、というのもなんだか不思議で面白くて。そんな本達との出会いを楽しみに、ペペルも胸に手を当てる。
「本は好きよ。たくさんお話してくれるもの」
「それはよかった」
 そう言ったペペルに、作家たるライラックは柔く目を細め。それでは往こうと、共に歩み出す。
 
「僕の街は海に縁遠くてね」
 書架隊商の中、店がそれぞれ掲げる金の光を眩そうに見つめながら、ライラックは傍らの海に親しいソーダ水の娘へと視線を送る。
「それを渡る灯台の物語。少しも想像出来ないが……貴方は船運ぶ物語の欠片、密か聞いていたりする?」
 海遠いなら森の中かしら、なんて思いを巡らせつつ、けれどもペペルは否と首をゆるゆる横に振る。
「私、海に沈んだ本を読んでいたの。だから、それは知らないわ」
 船の標の光たる灯台の光は、海の中では残念ながら縁遠きもの。嵐の中で灯台の標だけを頼りに海を渡りきった船乗りたちの話も、砂漠を彷徨う王子が灯台の光を神の啓示と受け取って、その麓で見つけた地に国を築く話も、海の中には届かない。
 ついと伸びた指先が、ある店の灯台の物語で止まるものの――すらりと指は離れていく。ペペルの指に親しんだのは、海に沈んでソーダ水に濡れた物語。
「ああ、それも教えて欲しいもの」
 そんなペペルの御話にもライラックの好奇は誘われてしまう。海の底に沈んだ物語。それだってライラックには縁遠いものだ。けれど、今は。
「沈んだ本のお話はまた今度。今は、海遠い貴方と共に、知らないお話で満たしましょう。ふふ、溺れないように気をつけて」
 ペペルの指先がぴたり、身も耳も傾きかけたライラックの頬に触れる。上目に見つめるクリームソーダ色の瞳に、ライラックは「そうだね」と柔く笑って態勢を戻した。
 そう、今はこの時しか会えぬ書架の海へと来ているのだから。
 那由他と溢れる本に溺れながら、此度は共に好奇を満たそう。
 
 さて、二人で書架の海で宝探し、と洒落込んだものの。
「然して、悩ましいな」
 ライラックは眉根を顰めて煩悶する。嵐の海の船のように――或いはそれ以上に――揺れて店と本を見比べて、一冊手に取っては唸り、別の一冊を手にしては読み耽り。この海を乗りこなすのは大変だ。そう思った頃には、並ぶ素敵にすっかり座礁してしまっている。
 猫の国の法律や魔法図鑑。目蓋に景を描く小説も良い。映す幻想を知りたいし、瞼を閉じて幻想動物の鳴き声を聞いたなら、そんな物語だっていくらでも描けそうだけれど。
 一冊だけを選ぶべきだろうか。否、それが出来たら苦労しない!
 
 ライラックがうんうん唸って悩む中、隣のペペルは別の好奇に瞳を輝かせていた。
 何処を見ても未知のものばかり。夢に揺れるように歩き眺め、琴線に触れるタイトルや表紙を見つけては手に取ってみる。
 海泳ぐ人の幸せな物語に、花の図鑑。星語る本に足を止め。それらの間で視線と指を彷徨わせては、悩みに悩んでやっぱりペペルも座礁して。
「――貴方は見つかった?」
「……まあ、ライラちゃん。貴方が誘われたものは多いみたいね」
 声に目線を上げれば、先ずペペルの目に入ったのはライラックの顔ではなくて本の山。悩んだ末に、結局潔く本の山を抱えたライラックだった。こてり首を横に傾げれば、淡い紫と翠の視線が混じり合う。
 緩り覗けば未だ悩むペペルの様子に、ライラックの眦が下がった。
「私はまだ迷ってしまって」
「此処は宛ら大海原だもの。気侭に巡りゆけばいいさ」
 本の微かな潮香を指せば、つられるようにペペルもそちらを目に映す。灯台の光は未だ眩き金色で、まだ揺蕩う時間はあろうから。
「……もう少しだけ巡っていい?」
「勿論。僕も貨物船の如く征こうか」
 互いに顔を合わせてくすくすと笑って、二人は再びキャラバンを巡る旅。
 灯台の金の光を導にして、書架の海を船は往く。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

雨野・雲珠
ティルさんと!/f07995

ゆっ…夢の国では…!?
体も一寸くらい浮いているかも
ティルさんティルさん、どこから行きましょう!
くまなく歩いて、気になるたびしゃがんで

なるほど。説明だけではわかりにくい時もこれなら…
本の歌う声なんて初めて聴きます。
なんて綺麗なことでしょう…
ね、帰ったら貸し借りしませんか。

迷いすぎてちっとも決められな……あ、生き物図鑑!
きっと眺めるだけでも楽しい……ああ、植物図鑑も。
これは?配色事典…アルダワの宝石や景色を例にした?
わぁ…これも!これもください!
見せてあげたい方がいるんです。

ティルさん。俺ひとつ夢が出来ました…
うんとお金持ちになったら、
端から順にぜんぶ買うのです!


ティル・レーヴェ
雲珠(f22865)と

灯台図書館という浪漫の地に
満ち癒される書の香り
装丁には目を奪われて
呼び込む声に心が弾む
眸輝かせ浮く爪先で友と巡り

雲珠、雲珠!
見渡す限り素敵な書ばかり
気になる儘に迎えゆけば
鞄の紐が切れてしまいそう

其方の心惹く書は在られた?
妾はね
作り方の絵が動き出すお料理の本と
歌う本も迎えたいなぁ
此方の絵本も可愛らしいし
後は、この色んなランプが載った本!

嬉々と彼に見せ乍ら
提案に眸がきらり
勿論、勿論!
そしたら2人分の御本が読めるなぁ
へへ、贅沢っ

彼が手に取る図鑑達もとても素敵で
横から覗き込んではにこにこと
見せたいお方?と問えば
後でお話聞きたいと笑む

素敵で大きな夢!
ふふ、きっと其方なら叶えられるよ



 灯台図書館という浪漫の地に、満ち癒される書の香り。
 魔法がかけられた装丁には目を奪われて、商人たちの呼び込む声に心が弾む。魔法の世界の書架隊商。金の光に照らされたそれが、今ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)と雨野・雲珠(慚愧・f22865)の前に広がっていた。
「ゆっ……夢の国では……!?」
「雲珠、雲珠! 見渡す限り素敵な書ばかり!」
 沸き立つ心のままに、もしかしたら体も一寸くらい浮いているかも。右も左も、見渡す限りの本の海。書架の揺り籠の中で海を渡り、森を渡り砂塵を渡ってきた本たちは、己を求めてくれる人との出会いを今か今かと待ち望んでいる。――否、それは人の方だって。
「ティルさんティルさん、どこから行きましょう!」
 もうそわそわと待ちきれない。魔導書も情勢の本も気になるけれど、やっぱり最初は娯楽本のエリアから!
 今にも駆けだしていきたそうな雲珠と逸れぬように手を繋ぎ、ティルは跳ねるような足取りと花咲く笑みでキャラバンへと踏み出した。

 猫の国の法律に、本が読み聞かせてくれる不思議な絵本。アルダワならではの不思議な本がティルと雲珠を迎え入れてくれる。気になる本を気になる儘に迎えてしまえば、鞄の紐が切れてしまいそうだ。もしかしたら山を抱えて歩く羽目になるかもしれないけれど、それでも尚魅力的な本の数々、そして隊商と商人の活気あるキャラバンは、二人の心を惹きつけてやまない。
「其方の心惹く書は在られた?」
 それでもいくつかの本に目星をつけたティルが、傍らの雲珠に声を掛けた。雲珠もまた本に惹かれるままにくまなく歩き、気になるたびにしゃがんでは手に取って。そうして本を選んでいたはずだ。けれども問われた雲珠は、困った顔で首を横に振った。
「まだ決めきれていなくて。……ティルさんは?」
 逆に問われれば、ティルの顔がぱっと明るくなる。こっちこっちと雲珠を手招いて、ティルが書架から取り出したのは一冊のレシピ本。
「妾はね、この作り方の絵が動き出すお料理の本」
「なるほど。説明だけではわかりにくい時もこれなら……」
「それからこっちの歌う本も迎えたいなぁ。とても綺麗な声で歌うのじゃよ」
 店主の許可を得て「ほら」と本を開いてみると、楽譜が載っていた。曲のタイトルを指でふわりとなぞれば、途端に本が宙に浮いて伴奏と共に歌を歌いだす。澄んだ美しい声で、跳ねるよな可愛らしい砂漠兎の歌を歌い、終わるとふわりとティルの手に戻る。
 その様子と歌声に、雲珠の眸は宝石のように大きく美しく煌いた。 
「本の歌う声なんて初めて聴きます。なんて綺麗なことでしょう……」
「そうじゃろ? それから此方の絵本も可愛らしいし。後は、この色んなランプが載った本!」
 ティルは嬉々として、素敵な本を雲珠に見せていく。そのどれも雲珠の心を惹くから、ちょっと考えた雲珠は本を購入するティルにそっと声を掛けた。
「ね、帰ったら貸し借りしませんか」
 雲珠の提案に、ティルの眸がきらり。
「勿論、勿論! そしたら二人分の御本が読めるなぁ。へへ、贅沢っ」
 自分が選んだ本を読むのもいいけれど、他人が勧める本を読むのも楽しい。読める本も楽しみも二倍になるとティルが笑えば、雲珠も力強く頷いた。
 
「とはいえ、俺は迷いすぎてちっとも決められな……あ、生き物図鑑!」
 どこか困ったような、しょんもりとしたように雲珠が下を向いたのも束の間。そこにあった魔法生物図鑑に目を奪われて勢いよく手に取った。魔法生物の挿絵に触れれば鳴き声が聞こえたり、本の中で生き物が動くのだという。
「きっと眺めるだけでも楽しい……ああ、植物図鑑も」
 生き物図鑑を手にほうと息を吐いたら、見上げた視線の先には植物図鑑。アルダワにある植物の図鑑で、魔法の花や錬金術の材料になる特殊な花も掲載した最新版だ。ティルも隣で雲珠が手に取る図鑑達を覗き込んでは、「素敵な本だ」とにこにこ微笑んでいる。
手にした二冊を購入しようと商人と手続きをしようとして、ふともう一冊。まるで雲珠に見つけて欲しいかのように視界に飛び込んできた本を、雲珠は思わず手に取った。
「これは? 配色事典……アルダワの宝石や景色を例にした?」
 アルダワに咲く珍しい花。美しい山脈。魔鉱石。翡翠の泉。それらから名を取られた色の事典は、アルダワの景色や色をぎゅっと詰め込んだようだ。その事典が雲珠の心の琴線に触れてやまなくて。
「わぁ……これも! これもください! 見せてあげたい方がいるんです」
 ほとんど飛び込むようにして、雲珠は配色事典も商人に差し出した。おかしそうに笑いながら本を袋に詰めてくれる商人を横目に、ティルがひょこりと雲珠に首を傾げて見せる。
「見せたいお方?」
「はいっ」
 返る元気な返事にふぅわり目を細め、「後でお話聞きたい」とも微笑んだ。
 
 お互いにずしりと重い袋を抱えて、灯台図書館へと歩む。買った本を図書館で預かってくれるらしいので、まだまだ本を選ぶことも出来よう。
「ティルさん。俺ひとつ夢が出来ました……」
 あちらこちらの書に目を奪われつつ、雲珠はどこか真剣な瞳でティルを見つめる。
「夢?」
「はい。うんとお金持ちになったら、端から順にぜんぶ買うのです!」
 それは雲珠にとっては真剣な夢だ。気になる本がありすぎて困る。かといって財布の中身は有限で、今はあまりたくさんは買えないから――。
 いつか、きっと。気になる本は片端から遠慮なく買い揃えるのだ。
 そんな大きな夢を雲珠は無邪気な瞳でティルに語るから、ティルもふは、と大輪の笑みを咲かせて大きく頷いた。
「素敵で大きな夢! ふふ、きっと其方なら叶えられるよ」
 きっときっと叶うよ。
 あの灯台図書館だって、空の灯台から願いと本の力であんなにも大きくなったのだから。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ジャック・スペード
【XXX】

灯台の周囲に集うキャラバン
そして其処に並ぶ数々の本
ああ、実に壮観だな

サイバーアイに一枚
その光景を収めて
ああ、撮った
あんたの目の方が余程
優しい彩で好いと思うけどな

折角だから普段は読まない
小説や物語を求めてみよう
この鐵の手に丁度納まる一冊は有るだろうか
童話集とかなら、大判もあるかもな

ヒトの夢見る力は凄いよな、本当に
エッセイは面白いぞ
ぜひ感想を聴かせてくれ

ロキはどんな図鑑が気になるんだ?
因みに俺は幻獣図鑑を買った
触れると挿絵が動くんだ
示すのは翼の生えたうさぎの絵
この子はふわふわ飛ぶらしい

植物図鑑、キレイだな
いつでも花の馨が楽しめるとは
それこそ魔法みたいだ
良ければ後で、一緒に読ませて欲しい


ロキ・バロックヒート
【XXX】

ね、浪漫いっぱいの光景だ
スマホに撮っちゃおうかな
あれ?ジャックくん撮った?
えーやっぱりそのお目々写せたりするんだ
その眼、羨ましいなぁ

小説は凄いよね
ひとの想像力はこんなにも豊かでさ
神でも思いつかないことを描き出すの
エッセイとかもちょっと買ってみようかな
ジャックくんの手に合う本はないかな?って
聞いて回ってみたりもしよう

あとは図鑑買ってみたいな
植物とか動物とか、あとマジックアイテムのとか?
新作なら新発見もあるだろうから
見て行ってたら欲しいのいっぱいあって困っちゃうねぇ

わぁその図鑑すごいねぇ
兎可愛いなぁ空とか飛べちゃうのかな?
こっちの植物図鑑は花の匂いがするよ
後で一緒に見たいし見せてほしいな



 大きな大きな灯台と、そのふもとを増築して造られた図書館。そして金の光に導かれ、灯台の周囲に集うキャラバン。其処に居並ぶ数々の本。海を渡り森を渡り砂塵を渡り、隊商と共に旅をしてきた本達が、誰かの手に収まる時を今か今かと待ち望んでいる。
「ね、浪漫いっぱいの光景だ」
「ああ、実に壮観だな」
 ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)が額に手を当て辺りを見渡せば、ジャック・スペード(J♠️・f16475)も鷹揚に頷く。金の光は書架隊商の象徴なのか、各テントにもそれぞれ必ず金の篝火やランタンを焚いているから、キャラバン全体がまるで砂漠の夕陽のように美しかった。
 その光景を、ジャックはサイバーアイに収める。
 ――カシャリ。
「スマホに撮っちゃおうかな。……あれ? ジャックくん撮った?」
「ああ、撮った」
 いそいそとスマホを取り出していたロキが音を聞き逃さずに見上げると、ジャックは視線をキャラバンから逸らさずに肯定する。
「えーやっぱそのお目々写せたりするんだ。その眼、羨ましいなぁ」
 いちいちスマホとかカメラ取り出さなくていいじゃん、と言いつつ、ロキもまたこの光景をスマホに収める。
「あんたの目の方が余程、優しい彩で好いと思うけどな」
「彩を言うなら同じでしょ」
 互いの金の眸にキャラバンの光を宿し、目線を合わせればふ、と笑って。「いきますか」の一言に、二人はゆっくりと本の海へと漕ぎ出した。

「ジャックくん、欲しい本って決まってる?」
「そうだな。折角だから普段は読まない小説や物語を求めてみようと思う。……この鐵の手に丁度納まる一冊は有るだろうか」
 そう言って広げたジャックの手は、大柄な体に見合う無骨な手。太い鐵の指は小さく繊細な頁は少々捲りづらいからと、求めるのは大判の本。童話集などなら、それも叶うかもしれない。
「小説かあ。小説は凄いよね。ひとの想像力はこんなにも豊かでさ。神でも思いつかないことを描き出すの」
「ああ。ヒトの夢見る力は凄いよな、本当に」
 思考し想像する力が強いからこそ、人は此処まで反映してきた。『想像』とは『創造』だ。考えることは出来ても思い描くことが出来なければ、物語やアイテム――もっと言えば、文明だって出来ることはなかった。『思考』と『想像』が人を人たらしめる。ならば人が作り、人によって心を得た鐵や、人の世に生きるしかなかった神は――さて。
「エッセイとかもちょっと買ってみようかな」
「エッセイは面白いぞ。ぜひ感想を聴かせてくれ」
「ん。ジャックくんの手に合う本はないかな? 聞いて回ったりもしよう」
 と、ふとその言葉を聞いた商人が、おや、と声をあげた。テントから出てジャックを上から下まで確認し、その手の大きさを確認すると、にかっと笑みを見せた。
「なんだい、お前さんたち。そんな心配は無用だよ。本が小さいなら大きくすればいいのさ。ほら」
 一冊の物語をジャックの手に乗せると、取り出した杖で魔法をひとつ。きらり煌く魔力が本に降りかかったと思うと、見る間に本は大きくなって、ジャックの手にぴったりと収まった。
「……おお」
「お前さん、欲しい本があったら遠慮なく買って、オレんとこに持ってきなよ。丁度いいサイズにしてやっから」
 人間用の小説をドラゴニアン用に大きくしたり、ケットシー用に小さくしたり、頁を捲りやすく出来る魔法が使えると商人が胸を叩く。さすが、本の隊商の商人ともなるとそういった需要にも対応できるようにしているらしい。
「ふは、さすが魔法の世界。自由自在だ」
 なるほど、これで問題解決。どんな本だって選び放題だ。魔法が日常の世界に囚われる常識はないと、ロキは大層おかしそうに笑った。

 そんなこんなで書架巡り。商人の呼び込みに惹かれてあちらへ、気になる本が見えてそちらへ、まるでゆらりゆらりと海に揺れる船のよう。
 好みの本を何冊か迎えて荷がずしりと重くなった頃、ロキがきょろりと辺りを見回して。
「あとは図鑑買ってみたいな」
「ロキはどんな図鑑が気になるんだ?」
 いくつかあるがと『図鑑』とマーカーを打っておいた店をサイバーアイの中で表示させつつ、ジャックが問う。
「植物とか動物とか、あとマジックアイテムのとか? 新作なら新発見もあるだろうから」
 新刊しか置かぬのが書架隊商唯一の決まり。新しい情報に置き換わった最新の本が此処になるのなら、新発見を探すのもきっと楽しいだろう。ただ、唯一この書架隊商に欠点があるとしたら、きっとその本の量。
「見て行ったら欲しいのいっぱいあって困っちゃうねぇ」
 あれもこれも、これだけたくさんの本があれば興味を引く本はいくつだって出てくるのだ。仕方ないねとロキが肩を竦めて笑う。
「ふむ。因みに俺は幻獣図鑑を買った。触れると挿絵が動くんだ」
 そう言って図鑑を開いてみせたジャックが示すのは、翼の生えたうさぎの絵。UDCアースなどではゲームやお伽噺の中にしか出てこないような生き物だ。
「わぁその図鑑すごいねぇ。この兎可愛いなぁ空とか飛べちゃうのかな?」
「この子はふわふわ飛ぶらしい」
 無骨な鐵がそっとうさぎを撫でると、本の中でうさぎがきょろきょろと辺りを見回し、翼をぱたぱた動かしてふぅわり宙に浮いた。まるで本の中で生きているかのような動きに、ロキがぱちぱちと瞬く。
「ジャックくん。こっちの植物図鑑は花の匂いがするよ」
「植物図鑑、キレイだな。いつでも花の馨が楽しめるとは、それこそ魔法みたいだ」
 ジャックが手にした図鑑も、触れればふわと花の馨が本から漂う。薄青の花が撒いた香りは、まるでソーダ水のように爽やかで、どこか弾けるような不思議な香り。
「良ければ後で、一緒に読ませて欲しい」
「もっちろん。後で一緒に見たいし見せてほしいな」
 想像でもお伽噺でもなく、魔法に溢れる世界の姿。それを本で確かめるのもきっと楽しい。帰還してからの楽しみが出来たとロキが緩く笑えば、ジャックは真面目な顔で頷くのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

丸越・梓
アドリブ、マスタリング歓迎


孤児院の弟妹に絵本を読んであげたことを思い出しつつ
ページめくり

酷い境遇から拾われ集められた子どもで構成された、異邦の孤児院で
後に"生贄"として理不尽に殺されることも知らず俺たちは生きていた

弟妹達は文字が読めず
唯一読めた長兄役の俺が、ねだられるまま何度も読み聞かせをした
その時間はとても穏やかで、幸福で

…護ってやれなかった弟妹達
無力だった己への憎悪と悲嘆で胸はあの日から掻き毟られ
けれど絵本に触れる度
あの子達が笑ってくれる様で
「──失礼、此方を一冊いただけるだろうか」

描かれたエーデルワイス
俺たちの孤児院と同じ名の花

──おにいちゃん、と
泣きたいほど愛おしい声が
聴こえた気がした



 灯台図書館の街メモリア。
 住人のほとんどが本好きで、その為に作った灯台図書館と、住人の為にはじまった書架隊商。この街は本で出来ていると言っても過言ではない程に、ここには日常的に本が溢れている。
 子どもが二人、駆けていく。
 兄妹だろうか。兄の手には絵本があって、もう片方の手には妹の手が握られている。
「かえったらよんでね、やくそくよ」
 そう笑った妹に兄は「わかってる」と笑み返し、二人は家路を急ぐ。笑い声をあげて駆けて行った二人の背を、丸越・梓(零の魔王・f31127)は見送って。そしてまた歩き出す。
 彼が今居るのは娯楽本エリア。その中でも特に絵本を扱う店が多い場所だ。そこで、一冊の絵本を手にしていた。
 楽し気な絵本のはずなのに、頁を捲る梓の表情には明るさはなかった。ただ懐かしさと寂しさと、それらが混じり合った複雑な面持ち。
 
 ――昔、孤児院の弟妹に絵本を読んであげていた。
 
 酷い境遇から拾われ集められた子どもで構成された、異邦の孤児院。後に“生贄”として理不尽に殺されることも知らず、梓たちは生きていた。
 弟妹たちは文字が読めず、唯一読めた長兄役の梓が、幼い子どもたちにねだられるまま何度も読み聞かせをした。
 その時間はとても穏やかで、幸福で。
 読んでほしいなら何度だって読んでやると。
 嬉しそうに笑う妹達が、楽しそうに茶々を入れる弟達が、本当に大切だった。この幸福がいつまでも続けばいいとさえ願った、もう戻ることのない過去。
 
 ……護ってやれなかった。
 
 襲い掛かる理不尽な死から護ってやりたかった。
 梓に懐いて絡まってくる小さな弟妹たち。未来と夢に溢れた眸を、小さな手を、幸福な笑顔を、護ってやりたかった。けれど、梓は無力だった。
 弟妹たちにとって一番頼れる人間は、長兄役だった梓だろう。だが実際は梓さえも子どもだった。
 無力だった己への憎悪と悲嘆で、胸はあの日から掻き毟られたまま。命を救えないかもしれないという強迫観念が、梓を仕事の鬼とした。休むことを己に許さぬまま、人を掬う為に限界まで己を追い詰める日々。
 けれど。絵本に触れるたび、あの子達が笑ってくれているようで。
「お客様……?」
 本を持ったまま動かぬ梓を心配して、商人が声を掛ける。
「――失礼、此方を一冊頂けるだろうか」
 詰めていた息をゆっくりと吐きだして、梓は本の代金を商人に差し出した。

「どうぞ。ありがとうございます。気になる本がありましたら、いつでもお声がけくださいね」
 そう言って笑った商人に会釈をして、梓はくるりと踵を返す。
 購入した絵本の表紙に描かれていたのは『エーデルワイス』。梓たちが居た孤児院と同じ名前の花。そっと表紙に触れると、ふわりと花の香が溢れ出して。
 
 ――おにいちゃん。

 泣きたいほどに愛おしい声が聴こえた気がした。
大成功 🔵🔵🔵

メノン・メルヴォルド
ブック・キャラバン…掘り出し物はあるかしら?
魔道書は?

インクと紙の匂いを深く吸ってみるの
ん、好き…(くすりと微笑み

本好きな人達の集い
周囲を見渡せば読み耽る人、吟味する人達の好きが溢れていて
それも嬉しくなってしまうの

ふと目に留まったのは、1冊の物語
表紙に惹かれ手に取ったのは宝石竜とお姫様の冒険の話
ページを捲れば一瞬で世界の中へ入ってしまう

気に入ったかい?
声をかけられて、はっと顔を上げる
こくこくと頷き返せば、その人は笑顔で教えてくれたの

…これがその冒険の旅の地図?
物語を辿れるなんてステキ
ふふ、まるで一緒に旅をしているみたい、ね

魔道書を探しにきたのだけれど、欲しい本が見つかったのよ
さらりと本を撫でて



 金の光煌くキャラバンを、ふぅわり少女が往く。
 商人の呼び声。書架に収められた沢山の本。それを優しく見下ろす灯台図書館。その全てがメノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)の心を湧き立たせていく。
「ブック・キャラバン……掘り出し物はあるかしら? 魔導書は?」
 学術書や魔導書は確か灯台図書館を前に立って、右手側のエリアだと言っていた。くるりと踵を返し、灯台図書館を前にして現在地と目的地の位置を確かめる。
 そうしていたら、ふわと香った風。思わず深呼吸をしたら、メノンの内がインクと紙の匂いで満たされていく。
「ん、好き……」
 なんだか嬉しくなって、メノンはくすりと微笑む。本の香りが濃い。まるで街全体が本に包まれているかのようだ。
 書架隊商。元は本好きなメモリアの住人の為にはじめられたキャラバン。それが今ではアルダワで有数の本だけのマーケットになって、こうして今、本好きな人々の集いとなっている。周囲を見渡せば本を読み耽る人、本を吟味する人達の『好き』が溢れていて。それも嬉しくなってしまって、気づけばメノンはにこにこと蒲公英のように愛らしい笑みを浮かべて歩いていた。
 今この場所には『好き』しかない。そのなんと幸福な事だろう。

「ん……?」
 学術書エリアに向かう為に通りがかった中央の娯楽本エリア。そこでふと、一冊の本がメノンの目に留まった。まるで引き寄せられるように傍に寄っていくと、表紙が金の篝火を受けてきらきらと煌いている。
 心惹かれる侭に、メノンはその本を手に取った。
「宝石竜とお姫様……?」
 表紙で煌いていたのは、宝石竜の鱗とお姫様のティアラだった。頁を捲れば、それは1匹と1人の数奇な出会いからはじまる、冒険の物語と知る。
 はじめは擦れ違ってばかりだった二人。ぶっきらぼうで乱暴者で、宝石の鱗を狙われている宝石竜。国の為に、どうしても宝石竜の鱗を使った魔法を使いたいお姫様。突き放して、追いやって、どこにも安息の地などないと泣く竜に心を痛め、いつしか竜に寄り添い竜と平和に暮らせる地を探す旅に出る決意をするお姫様。そして二人は、アルダワの地を巡り往く――。
「気に入ったかい?」
「……っ」
 声を掛けられて、メノンははっと顔を上げた。
 頁を捲り、一瞬で物語の世界へと引き込まれていたようだ。顔を上げた先で紳士然とした商人と目が合って、にこりと微笑まれればちょっとだけ恥ずかしくなって俯いて。けれども問いにはこくこくと頷き返すと、商人は穏やかな笑みを浮かべた。
「そうか。じゃあね、もう一冊とっておきの本があるんだ。見るかい?」
「とっておき……?」
「そう。君が手にしている物語の旅の道筋を辿れるものだよ」
 メノンが興味を示したのを確認して、商人は書架の後ろから更に一冊の本を取り出した。表紙は『宝石竜とお姫様』に似ている。けれどもそれは物語の続きではなくて、竜とお姫様の旅の道筋を辿るもの。即ち――。
「……これがその冒険の旅の地図?」
「そうさ。物語の通りの道筋を辿って行くと、竜と姫が訪れた地の風景を見る事が出来る地図なんだ」
「まあ、物語を辿れるなんてステキ。ふふ、まるで一緒に旅をしているみたい、ね」
 魔法みたいと笑えば、魔法だからねと笑みが返る。
 すっかりこの冒険譚が気に入ったメノンは、躊躇いなく本を購入した。地図はプレゼントだと人差し指を唇に当てて笑う商人に手を振って、メノンはまた嬉しそうに歩み出す。さらり、本を撫でれば指先を宝石竜の煌きが照らす。
「魔導書を探しにきたのだけれど、欲しい本が見つかったのよ」
 すぐに続きを読みたい衝動を堪え、そわそわと擽るような心地に誘われて、メノンは本をぎゅうっと抱き締めた。
大成功 🔵🔵🔵

ナインチェ・アンサング
アラギ(f05247)と同行

ふ、む。書物の祭典といった趣でしょう、か
普段、書架の奥に眠る書物も見知らぬ、しかし求める人の手に取られ――
それは、書物としての本分を満たす物と想像します。ね

…つい、本の立場で思いを馳せてしまいましたが…
しかし、本日は私も求める者の一人として参りました。ので

ええ。本の興味は多少…ですがアラギは私以上の様子です、ね
学術書の類は、明るく無いですが…選び探し、楽しむ様に私もときめきを伝播させるようです
…目移りします、が…不意に目にとまった背表紙を、一冊
童話、絵本――暖かなパステルの絵物語

…折角ですので彼をアラギにおねだり致しましょうか
本棚がまた賑やかになる。嬉しい事です、ね


アラギ・グリフォス
ナインチェちゃん(f24188)と

まぁ!見て、ナインチェちゃん!
本の楽園が広がっているわよ!
なんて素晴らしいの~♪

ナインチェちゃんは、本に興味は?
ここは難しい本から楽しそうな本まで
たっくさん揃ってるみたい
今日はお付き合いしてくれるお礼に一冊お姉さんが本を買ってあげる!
何か目に留まったら教えてほしいわ

私は学術書が気になるの
これでも魔女なので♪
数多の世界の魔法技術に関心がある

魔法薬学に…嗚呼、錬金術にも興味あるわねぇ!
気づいたら色んな本を手に取った

ナインチェちゃんは童話と絵本が気に入ったのね
素敵なカラーを持つ本ね

ふふっ、これに決定ね?任せなさいな!
この本が貴女の心をときめかす一冊になりますように!



 灯台図書館前の書架隊商は、毎年のことながら大盛況。
 大きな広場をめいっぱい使ってテントを広げ、台や書架の中に所狭しと本を並べ、商人たちがあちらこちらで一生懸命に呼び込みをする。右を見ても本。左を見ても本。そして周囲は本を求める人達ばかり。
「まぁ! 見て、ナインチェちゃん! 本の楽園が広がっているわよ! なんて素晴らしいの~♪」
「ふ、む。書物の祭典といった趣でしょう、か」
 ゲートを潜ってすぐに現れた書架隊商の光景に、アラギ・グリフォス(変化を求める貪欲者・f05247)のテンションは急上昇。共に訪れたナインチェ・アンサング(‟謡われぬ”カリス・f24188)はといえば、少々珍しそうにこの光景を眺めて瞬いている。
「普段、書架の奥に眠る書物も見知らぬ、しかし求める人の手に取られ――それは、書物としての本分を満たす物と想像します、ね」
 ヤドリガミであるが故、だろうか。
 ナインチェはついつい本の立場で思いを馳せてしまって。けれども今日は器物としてではなく、ナインチェ自身も本を求める者の一人して此処に来た。キャラバンによって齎される書と人との出会い。どんな本と己が結びつくのかを思えば、ふわりと心も湧き立ってくる。
 穏やかに口の端を持ち上げるナインチェの様子に目を細め、アラギは「行きましょう」とその背を促して歩き出す。まずはどこをどう廻ろうということで、アラギはそっとナインチェの顔を覗き込み問うた。
「ナインチェちゃんは、本に興味は?」
「ええ。本の興味は多少……ですがアラギは私以上の様子です、ね」
「まあね! ここは難しい本から楽しそうな本までたっくさん揃ってるみたい」
 書架隊商には『一年以内に発刊された新刊であること』以外に決まりはない。絵本や童話にはじまり、手作りの本やアルダワ魔法学園の学術書や魔導書、古文書の最新解析論文など、ジャンルも内容の難度も多岐に渡る本が揃っている。何から手を付けようか迷ってしまうくらいだ。
 でもまずは、とアラギはナインチェを見てにこりと笑う。
「今日はお付き合いしてくれるお礼に一冊お姉さんが本を買ってあげる! 何か目に留まったら教えてほしいわ」
「よいのです、か?」
「もっちろんよ! 遠慮なく言ってちょうだいね」
 何だか申し訳ないような気もしてくるが、ここまで申し出てくれているのだから好意には甘えるべきなのだろう。
 約束よ、と笑ったアラギに、ナインチェも静かに微笑んで頷いた。

「アラギは、どんな本がになるのです、か」
「私は学術書が気になるの。これでも魔女なので♪」
 そう語るアラギの顔は、もうわっくわくのキラッキラだ。視界の全てに溢れる書の祭典は、好奇心が形を為したようなアラギにとっては全て興味の対象だ。
 書とは知。書の宝庫とは知の宝庫。
 アラギの好奇を満たしてくれる本はどの本だろうかと、既に心はわくわくと高鳴っているのだ。
「魔法薬学に……嗚呼、錬金術にも興味があるわねぇ!」
 数多の世界の魔法技術に関心があるアラギは、難しい本も嬉々として手に取っていく。魔法を日常にし、そして学問として確立しているアルダワ世界は、魔法や錬金術に興味がある者にとっては垂涎物の本が多く刊行されている。
 楽しそうに本を選ぶアラギを見上げ、ナインチェもまた表紙やタイトルを眺めて本を選ぶことにした。
 ナインチェ自身は学術書の類には明るく無いので、アラギの力にはなれそうにもない。それでも選び探し楽しむ様は、ナインチェにもときめきを伝播させるようで。
 本を選ぶ為に書架の海を彷徨うのも、楽しいと思える。呼び声という風に吹かれてそちらへ言って、人の流れという波に流されるままに歩むのもいいものだ。

「ナインチェちゃん、どーお? 気になる本は見つかった?」
 気づいたら色んな本を手に取っていて、そのどれもこれをも潔く全部買ったアラギは、本の山を築きながらナインチェに声を掛ける。ナインチェはというと、その手にはまだ一冊の本もない。彷徨う視線は未だ選びきれていない証左だ。
「……目移りします、が、……」
 定まり切らぬ目線は本の上を滑り――、やがて一冊の背表紙でぴたりと止まった。心惹かれるままに手を伸ばすと、それは童話の絵本だった。暖かくて優しいパステルの色彩で描かれた、絵物語だ。
「あら。ナインチェちゃんは童話と絵本が気に入ったのね。素敵なカラーを持つ本ね」
 ひょいとアラギもその本を覗き込む。
 頁を捲ってみると、色彩に違わず優しくて温かい物語だった。それが、ナインチェの心を惹きつけ、温める気がして。
「……アラギ。私、この本が欲しいのです、が」
「ふふっ、これに決定ね? 任せなさいな!」
 折角だからと、その絵本をねだると、二つ返事で頷かれ。一度アラギに手渡した絵本は、店主によって包装されて再びナインチェの手へ。
「はい、どうぞ! この本が貴女の心をときめかす一冊になりますように!」
「ありがとう、アラギ」
 魔女の優しい祈りで包まれた本を受け取って、ナインチェは静かにそっと微笑んだ。
「本棚がまた賑やかになる。嬉しい事です、ね」
 そして大切そうに本を抱き締めたナインチェを見て、アラギもまた満足そうに笑みを深めるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

陽向・理玖
【月風】

瑠碧は本とか何読む?
図鑑!やっぱ植物とか?

色々あって目移りするけど
でも目的は
前から2人で話してた料理本

瑠碧の飯旨いし
こだわんなくても
言いつつ内心嬉しい

これ面白そうだなぁ
旅行記とレシピが一緒になってる
こっちは絵本で紹介されてる
ぱらぱら捲り
だろ?
蒸気を使った料理とかアルダワっぽいけど
暑いから涼しげなレシピがいいな
瑠碧の好きな氷菓とか冷たい菓子とかの
あっコレいいじゃん
異世界の冷たいスイーツ!
って書いたの誰だよ猟兵か?
でも美味そうじゃね?
この辺異世界の本なのかな?

それいいな
アレンジも分かるって事だろ?
気が利いてる

旅行記も気になるけど
絵本と冷たいスイーツのにしよ
一緒に作って味見しようぜ
勿論和食も


泉宮・瑠碧
【月風】
恋人と一緒に
料理本探し

よく読むのは図鑑や、辞書に文学…雑学も楽しいですが
好きなのは絵本ですね

私は和食の本を探しに
…理玖が好きそうだから、作りたくてですね…
日本で探せば早くても、文明の発達した世界は不慣れなので
…此処にあるでしょうか

眺め始めると和食に限らず見ていき
理玖の絵本の料理本にも心惹かれ
図で示されると、よく分かりますし…
読み物としても、楽しそうです

他とは違う雰囲気の一角を見掛けて
一冊軽く捲り
…あ、お味噌汁…?
和食だけでは無くアルダワ風にしてあったり
郷土料理の様に紹介されていて
…この本も、異世界の方のでしょうか…
でも
私にも分かり易くて…この本が良いです

はい、味見も読むのも
楽しみですね



 灯台図書館に見守られ、此度の書架隊商も大盛況。
 金の光が照らす広場には所狭しとテントが並び、その中の台や書架にはいくつもの本が並べられている。
 紙とインク。潮と森と砂塵の匂い。旅の香りがする隊商を、陽向・理玖(夏疾風・f22773)と泉宮・瑠碧(月白・f04280)は逸れぬよう手を繋いで歩く。
「瑠碧は本とか何読む?」
「よく読むのは図鑑や、辞書に文学……雑学も楽しいですが。好きなのは絵本ですね」
「図鑑! やっぱ植物とか?」
 理玖の爽やかな笑みに、瑠碧はこくりと頷き返す。
 図鑑の他にも、このキャラバンには本当にたくさんの種の本が出品されている。学術書に魔導書、地図に魔法の絵本。色々あってあれにもこれにも目移りしてしまうけれど、今日の二人にはちゃんと目的の本がある。それは、以前から二人で話していた『料理本』を買うこと。
「和食の本が、アルダワにもあると良いのですが……」
「瑠碧の飯旨いし、こだわんなくても」
「……理玖が好きそうだから、作りたくてですね……。……此処にあるでしょうか」
 さらりと可愛くて嬉しいことを瑠碧が言うものだから、理玖はほんのり自分の頬が熱くなるのを感じて少しだけ視線を宙に逸らした。瑠碧が本に夢中でよかった、なんて心の中だけで独り言ちて。
 そんな理玖には気づかぬまま、瑠碧は真剣な顔で書架に並ぶ本の背表紙を指でなぞっている。和食の本が欲しいなら、UDCアースの日本で探した方が早いのはわかっている。けれども瑠碧は、文明の発達した世界はどうにも不慣れで。
 けれどもこの書架隊商ならば、『新刊であるならばどんな本でも出品可能』ということ以外ルールはない。猟兵が持ち込んだ本も異世界の本も販売は可能と聞いたし、実際に本を並べている猟兵も居たから、「此処ならば」という思いを胸に来たのだ。

 とはいえ、これだけたくさんの本があると、目的以外の本も気になってくるというもの。『魔法植物のレシピ集』『蒸気鍋と簡単美味しいお夕飯』なんてタイトルにも惹かれ、ついつい瑠碧も和食以外の本にも手が伸びる。
「これ面白そうだなぁ。旅行記とレシピが一緒になってる」
 その隣で、理玖がひょいと持ち上げた本は、旅先で出会った料理とそのレシピが掲載されている本だ。旅行記とセットなので、物語を楽しめるのも好い。
「こっちは絵本で紹介されてる」
「絵本の料理本ですか?」
「そうっぽい」
「図で示されると、よく分かりますし……読み物としても、とても楽しそうです」
「だろ? こっちの蒸気を使った料理とかアルダワっぽいけど、暑いから涼しげなレシピがいいな。瑠碧の好きな氷菓とか冷たい菓子とかの」
 理玖は次々と違う本を手にとっては、よさげなものを瑠碧にも見せる。本のタイトルを吟味する理玖の顔は楽しそうで、その顔を眺めているだけでも瑠碧はなんだか嬉しくなって笑みが浮かぶ。
 そうして店を変えながら本を眺め歩いていると、ふと他とは雰囲気の違う一角が目に入る。明確に何が違うとはわからぬままに、理玖が本に目を遣ると――。
「あっコレいいじゃん。異世界の冷たいスイーツ! ……って書いたの誰だよ猟兵か? でも美味そうじゃね?」
 興味を惹かれて手に取ってみたものの、普通アルダワの本で『異世界の』なんて書くだろうか。頁を捲ってみると、『幻朧桜のレアチーズケーキ』や『仙桃パフェ』なんてメニューが並んでいたので、本当にごく最近世界を渡る誰かが書いたものなのだろう。
 瑠碧もまた一冊手に取って頁を捲ってみると、見慣れた料理が目に飛び込んできた。
「……あ、お味噌汁……?」
「マジで?」
「はい。でも和食だけでは無くアルダワ風にしてあったり、郷土料理の様に紹介されていて」
「それいいな。アレンジも分かるって事だろ? 気が利いてる。ってかじゃあこの辺異世界の本なのかな?」
 理玖がそれとなく店主に聞いてみると、「見たことも聞いたこともない内容の本ばかりを集めた」と言う。基本的に同じ本が見つからぬ、一冊しかない本ばかりらしく、恐らく理玖と瑠碧の想像は間違っていないだろう。猟兵が書いたものか、他の世界から何らかの理由で渡ってきた本が、此処に集められているのだ。
 瑠碧も手にした本をまじまじと見つめれば、ところどころにアルダワ風を取り入れた和食のレシピが多い。これならばこのまま作るにしても、アルダワ要素を取り払って純粋な和食として作るにしても事足りる気がする。
「……この本も、異世界の方のでしょうか……。でも、私にも分かり易くて……この本がいいです」
「そっか、いいぜ。じゃあその本買おう」
 二つ返事で頷いて、一度本を瑠碧から受け取った理玖は、そのまま店主に渡して会計を願う。けれども理玖が購入したのがその一冊だけなことに気づいて、瑠碧は心配そうに理玖の顔を覗きこむ。
「理玖は、欲しい本はないですか。先程の旅行記とか……」
「旅行記も気になるけど、俺は絵本と冷たいスイーツのにしよ。一緒に作って味見しようぜ。勿論和食もさ」
 なんてことない顔でそう言って、購入した本を全部理玖が手に持って。
 楽しみにしてる、とどこか無邪気に、理玖が笑みを咲かせるものだから。
「はい、味見も読むのも楽しみですね」
 つられて瑠碧もふぅわりふわり、温かな笑みを咲かせ返すのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ナターシャ・フォーサイス
未知なる知、新たな世界との邂逅。
直近に出された本であるならば、そんな世界が待っているのでしょう。

物語や絵本、異世界のものも気にはなりますが…ふむ。
どうにも気になるのは、やはり召喚術を扱ったものでしょうか。
私も天使達を呼び出して扱う身、通づる部分はありますからね。
それを基本として、少々探してみましょう。
私のルーツにかかわるものも探してみたくはありますが、望み薄でしょうか。

…あぁ、ですが。
やはり、見物をしていれば他のものも気になるというもの。
どうにも、欲に身を任せると色々と買ってしまうものですね…
…ディフさんも、気になるものはあったでしょうか。
何を買ったか、何を見たか、少々話をしてみたいものです。


 灯台図書館と同じく金の光を掲げる書架隊商。どこを見ても本が居並び、紙とインクの匂いに潮や森、砂塵の旅の香りが混じる。
 そんな空気を胸いっぱいに吸い込んで、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)はゆるり本を眺めて歩く。
「物語や絵本、異世界のものも気にはなりますが……ふむ」
 これだけたくさんの本があると、ナターシャの気を引くような本も無数にある。絵本にも物語にも手にしてみたい本はたくさんあったが、此度の話を聞いて一番に心惹かれたのは、召喚術に関する本だった。
 アルダワは魔法を学問として、体系的に研究する世界だ。魔法を扱う世界は他にもあれど、ここまで学問として発達させている世界は他にはない。故にこそ、魔法を学ぶならばアルダワはどの世界よりも最適なのだろう。
 そしてナターシャ自身、天使達を呼び出して扱う身。召喚術には縁遠くはない。学術書エリアには召喚術に関する専門書もあるだろうし、アルダワ魔法学園の教師や生徒が書いた最新の論文を纏めた本や、その解説本。古文書に書かれた文章の最新解読本などもあるだろう。あとはそれを基本として、他にも気になる本などを少々探してみようと心に決める。
 そして、気になるものと言えばもうひとつ。
「私のルーツにかかわるものも探してみたくはありますが、望み薄でしょうか」
 少しだけ息を吐く。
 此処にはアルダワにある本ならば、様々なジャンルの本が集う。それはアルダワで執筆されたもののみならず、猟兵が書いたものや異世界から流れ着いた本も同様だ。
 ナターシャのルーツ。楽園。信仰。彼女が生まれた場所。彼女が行きついた場所。
 望みは薄いかもしれないが、此処は書架隊商だ。そして、アルダワでも有数の蔵書量を誇る灯台図書館だ。
 本と縁の繋がりやすいここならば、或いは――。
 それに賭けて探してみてもいいかもしれない。

 足の向くまま気を惹かれるまま。学術書エリアで目的の召喚術関連の書を買い付けたナターシャは、その後は気侭に対象を見物することにした。呼び込みが気になる商人の店を覗き、目を惹かれた表紙に手を伸ばし、居並ぶ背表紙からタイトルだけを読んで取り出してみたり。目的なく書架の海を漂えば、あれもこれもと気になってしまうもの。
「どうにも、欲に身を任せると色々と買ってしまうものですね……」
 お陰でいつのまにやら召喚術以外の本もいろいろ購入してしまい、ナターシャの持つトートバッグはずしりとした重さを肩に伝えていた。
 これは一度何処かに置くべきか。一度ゲートに戻ってあちらに置いてきてもらおうか?
 そう思ったらふと、門を開いた人形の顔が思い浮かんだ。
「……ディフさんも、気になるものはあったでしょうか」
 本が好きだと言っていた。この後自分も隊商で買い物をしてみようと思うと言って居たから、彼は今此処に居るのだろうか。だとしたら、どんな本を手にしているだろう。
「何を買ったか、何を見たか、少々話をしてみたいものです」
 それはきっと、穏やかで優しい時間になるだろうから。
大成功 🔵🔵🔵

宵鍔・千鶴
【耀累】

此れが、ブック・キャラバン…
灯台から連なる金の光を思わず追い掛けて
積み上がる本達に高揚は隠さず
菫、見て、あんなに識らない本が一杯…!

左側アルダワ国についての書物気になるね
猫の国の法律って面白そう
地図は持ってるだけで色々な世界を識れて冒険を夢見れるし
勿論、色々な地にも行こう

楽しくて浮足立って、あれもこれもと両手に本を抱え
菫は…普段、本って読むんだっけ?
本の虫なら丁度良かった
折角だから中央で娯楽本、見繕って貰おっか
プレゼント、させてくれる?
ああ、其れは一番嬉しいお返しだねって微笑み

出店の店主へおすすめを聞いて

君の元へ物語が降り注いでくれますように
菫の世界が広がってくれたら、俺も嬉しいんだ


君影・菫
【耀累】

ぶっく・きゃらばん
移動する本の市なんよね?
おとーさん――ちぃの視線を追って
金の彩にすみれ色輝かせた童女の視線と高揚
うん、あれが全部本やなんて…!
宝物がぎょうさんやないの

隣見つつ読ませて貰おとか思いながら
猫の国の本は揃いで一冊
ちぃが選ばんかった地図を手に
地図は夢も見れるけど、折角なら行きたいなて
ワガママいっこ 
楽しげな姿に浮足立つ音はいつしか重なって
ん、読むよ
本の虫?くらい

ふふ、見繕って貰うのええね
…はら、うちに?
ちぃからの贈り物、断ったりせんよ
お礼は本の感想でええ?なんて、

大切なキミが降らせてくれる物語
またひとつ世界を辿る道導
他でもないちぃが喜んでくれるなら
うちもうれしいって笑み咲かせ



 お城のように大きな灯台図書館の麓。お城のお庭みたいに広い広場を埋め尽くす、隊商のテント。息を吸い込めば、紙とインクの匂いが胸を満たす。これ程までに濃い本の香りは、今此処にある本がどれ程に多いのかを物語るかのようだ。
 本の祭典。それが、このメモリアの書架隊商だ。
「此れが、ブック・キャラバン……」
「ぶっく・きゃらばん。移動する本の市なんよね?」
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)が何処か夢見心地にふわりと呟く。灯台から連なる金の光を思わず追いかけて往けば、テントに積み上がる那由他の本に心が高鳴ってゆく。
 君影・菫(ゆびさき・f14101)も、父と慕う千鶴と共にそれを追いゆけば、それぞれのテントの掲げた金の篝火が揺れて、まるで幻想の夕陽の中に紛れ込んだかのよう。黄金の彩に照らされたすみれ色の眸は、童女のような耀きと高鳴りを映し出していた。
 二人、姉弟のようにも親子のようにも手を繋ぎ、心が惹かれる侭に本と金の光の海へと飛び込んでいく。
「菫、見て、あんなに識らない本が一杯……!」
「うん、あれが全部本やなんて……! 宝物がぎょうさんやないの」
 本の海は、本好きにはたまらない宝の海。あちらこちらから商人の呼び声や、手招くように主張する本の表紙たち。千鶴と菫は顔を見合わせて頷き合うと、二人で更に本の海へと飛び込んでいく。
 けれども、書架の海は広い。海で気の向くままに彷徨うのも楽しいけれど、まずは目的地を定めるのもいいことだ。
「ちぃはどんな本が気になる?」
「ん、左側アルダワ国についての書物気になるね。猫の国の法律って面白そう。地図は持ってるだけで色々な世界を識れて冒険を夢みれるし」
「猫の国の本はうちも欲しいなあ。揃いで一冊買お?」
 構わないよと千鶴が猫の国の法律の本を二冊買い求める間、菫は千鶴が選ばなかった地図を手に取った。開けばアルダワの詳細な地図が描かれていて、付属の魔法のルーペで地図を覗くと、その場所の様子が少しだけ覗けるという代物だ。これがあれば、その場に行った気分になることも出来よう。けれど、と、菫はやっぱり地図を元に戻す。
「地図は夢も見れるけど、折角なら行きたいなて」
 小さなワガママ、いっこだけ。
 けれどそれを、どうして千鶴が我儘と思おうか。
「勿論、色々な地にも行こう」
 夢ではなくて現実で行きたいというのならばそうしよう。地図を持って何処へでも。何処までも。手を繋いで。

 段々と本を選ぶのが楽しくなって、千鶴はどんどん浮足立って。商人の呼び込みが気になって店を覗き、表紙に惹かれて手に取って。どうしても我慢できないから購入して。
 千鶴の浮足立つ姿に、菫の心の音も次第に重なっていく。そうしてあちこちを巡り、気づけばあれもこれもと両手に抱えた本。重そうな千鶴の様子を見つつ、あとで読ませて貰お、なんて思っていたら、ふと視線に気づいた千鶴と目が合った。
「菫は……普段、本って読むんだっけ?」
 本を抱え直しながら千鶴が問うと、
「ん、読むよ。本の虫? くらい」
 菫が用意していたトートバッグを差し出す。これに入れたらせめて千鶴の片手は空くだろう。礼を言って本をバッグに詰め、それを肩にかけたら、千鶴はにこりと笑った。
「本の虫なら丁度よかった。折角だから中央で娯楽本、見繕って貰おっか」 
「ふふ、見繕って貰うのええね」
 けど持てる? なんて笑いながら本の山を指差すと、大丈夫と力強い声が返る。千鶴だって男だ。このくらいは何ともない。それに、見繕ってもらいたい本は千鶴用ではなくて――。
「良い本や好きな本があったらプレゼント、させてくれる?」
「……はら、うちに?」
 愛娘へのプレゼント。
 予想外の申し出に、菫はぱちくりぱちくり、その名と同じ色の眸を瞬かせる。けれども次の瞬間には、ふぅわりふわりと笑った。
「ちぃからの贈り物、断ったりせんよ。お礼は本の感想でええ?」
「ああ、其れは一番嬉しいお返しだね」
 贈った本の感想を聴けることは、送り主としても嬉しい。叶うならば、その本が「楽しかった」と言ってくれたならば最高だ。
 二人顔を見合わせて笑って、中央エリアに向かう。物語が充実している出店を見つけ、そこの店主におすすめを聞いた。店主は丁寧に菫の希望を聞き取って、その希望に沿う本を探してくれる。
 優しくて、温かくて、楽しくて、世界を広げてくれるような物語の本。
 出会いを待っていましたとばかりに、必然のようにそこにあった本。本と人とを繋ぐブック・キャラバンだからこそ、繋がった縁だろうか。
 
 大切な君の元へ、素敵な物語が降り注いでくれますように。
「菫の世界が広がってくれたら、俺も嬉しいんだ」
 そう言って、千鶴が願いを込めて本を手渡せば。
 
 大切な父が、菫の為に降らせてくれる物語。またひとつ世界を辿る道標。
「他でもないちぃが喜んでくれるなら、うちもうれしい」
 そう言って菫が笑みを咲かせ。

 願いと祈りを込められた本は、金の光を受けて煌いた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

シャルファ・ルイエ
……ここは天国か何かでしょうか……。

読み切れないくらいに並んだ本や雰囲気にわくわくしますし、聞こえてくるだけでも欲しい本がたくさんです……!
とりあえず、気になるものは買えるだけ買おうと思います。一期一会の本だってありますから!

待ってください今限定って聞こえました。
ええと、まずはそこから……!
妖精と精霊についての本を狙って行きます。頑張りますけど、限定ですし買えなくても泣きません……!
あとはこの論文の解説に、最新の地図、魔法生物や幻想動物の図鑑と、……。

買いすぎて持てなくなったら、一度【空への扉】でお家に本を置いてきましょう。
まだまだ、童話集や装丁の綺麗な絵本なんかも探して回りたいですもの。



 書架隊商。ブック・キャラバン。
 灯台図書館の街メモリアの一大イベントが、ゲートを潜ったばかりのシャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)の目の前に、金の光と共に広がっていた。
「……ここは天国か何かでしょうか……」
 見渡す限りの本。まるで本の海だ。広大な庭をいっぱいに使ってテントを並べ、台の上に並べたり、書架に収められた本達が、本との出会いを欲する人々との出会いを心待ちにしている。
 読み切れないくらいに並んだ本や、活気ある雰囲気にシャルファの心はどんどん高鳴っていく。あちらこちらから聞こえてくる商人の呼び込みだけでも、欲しい本がたくさんだ。
「とりあえず、気になるものは買えるだけ買いましょう。一期一会の本だってありますから!」
 今は惜しむ時ではない。お財布よし。買い物用の鞄よし。
 えいえいおーと気合を入れて、シャルファはブック・キャラバンへと歩き出し――。

「こっちは妖精や精霊の本が揃ってるぞ! 妖精や精霊との契約方法、その気性、それらをまとめた最新版が限定10冊!」
「待ってください今限定って聞こえました、ええと、まずはそこから……!」
 
 商人の呼び込みに、前に進みかけた踵をくるりと返し、声の主の方へと足早に向かう。
 限定。
 魅力的な響きだ。期間限定とか数量限定とか、そういった物に心惹かれてしまう人は多い。
 しかも書架隊商で販売される本は基本的に一期一会。『出版一年以内の新刊限定』という書架隊商のルール上、来年の書架隊商には同じ本が並ぶことはない。同じ本が欲しければ、アルダワ中を駆け巡るしかないわけで。
「すいません、妖精と精霊の限定最新本、まだ残っておりますか!」
「あるよ、ラスト1冊だ!」
「ください!」
 その間10秒未満。
 頑張るけれども限定だし買えなくても泣かないと思っていたけれど、思いの外問題なく変えてしまった。
「やった、買えました、ラスト一冊……」
 しかもラスト一冊だ。
 なんて心擽る響き。ただでさえ限定本だったのに、ラスト1冊をゲットできたというだけでお得感が三倍くらいに感じられるのはなぜなのだろう。
 ともあれ第一目標が達成出来て、シャルファはまず一安心。これで安心して次の目標へと行ける。
「あとはこの論文の解説に、最新の地図、魔法生物や幻想動物の図鑑と、……」
 シャルファは手にした簡素な地図につけた丸印をチェックしていく。先程の店主がくれた、書架隊商用の魔法のミニマップだ。全ての本とまではいかないが、店の位置と目玉になる本だけはきっちり記載してくれている。おかげで商人の呼び込みだけではわからなかった店の位置なども、きちんと知ることが出来るのだ。
 
 そんなこんなで、シャルファは潔く気になった本を買えるだけ買い求めていく。買い物鞄がいっぱいになって、それでも袋に入り切らなかった本を抱えつつも、欲しい本を手に入れられたシャルファは大層満足顔だ。けれどもこれで終わりではない。何せまだ学術書関連を手に入れただけなのである
「まだまだ、童話集や装丁の綺麗な絵本なんかも探して回りたいですわね」
 一度鍵を使ってお家に戻り、本を置いてきたらまた戻ってこよう。
 書架隊商の本は一期一会。今を逃せばもう出会えないかもしれないのだから。
大成功 🔵🔵🔵

トリテレイア・ゼロナイン
この人混みに混ざるのは周りの方々に悪い気も致しますが…(体躯の関係)
貴重な機会を逃す訳には参りませんね

(自身の原点の再確認作業も兼ねているのか、アイテムの私物の本に転移した世界各国の騎士道物語や御伽噺を蒐集する趣味がある)

一年以内に出版された本が集まるこの場所
最近になって研究が進み書に纏められた各地の御伽噺に纏わる本があれば良いのですが

おや、これはアルダワ大迷宮の大魔王封印に参加したマジックナイトの伝承の研究論文ですか

服装に作法…現代の研究者の視点で付けられた文化の解説も嬉しいですね
これのお陰で、筆を執った作家の流麗な文章が更に奥深く楽しめます
一冊、頂けますか?

さて、次はどの題材の本があるか…



 本が溢れる書架隊商。
 この一年に一度の本の祭りを目当てに、毎年メモリアにはたくさんの人々が訪れる。
 本はとても身近な娯楽だ。子供から老人まで、娯楽、勉強と様々な目的で本を求める人々が、この書架隊商には溢れている。
「この人混みに混ざるのは周りの方々に悪い気も致しますが……」
 そんな本と人に溢れたキャラバンを前に、少々申し訳なさそうにしているのはトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)だ。
 なんていったって身長285.2cmの機械騎士である。人混みの中を歩くのはそれなりに気を遣うし、その体躯から周囲の人々にも気を遣わせてしまう。それはわかっているのだが。

 トリテレイアには、転移した世界各地の騎士道物語や御伽噺を蒐集する趣味がある。自身の原点の再確認作業も兼ねているのか、そうして蒐集した物語を自身の私物の本に書き記しているのだ。既にかなりの数の騎士道物語や御伽噺を蒐集したが、それでも未だ満足はしていない。きっとこれからも集め続ける。
 それに、だ。
 書架隊商はその唯一のルール故に、来年にはもう同じ本は並ばない。基本的に書架隊商の本は一期一会なのだ。
「貴重な機会を逃す訳には参りませんね。……ちょっとすみません、通りますよ」
 新たな物語との出会いの為、原点の確認の為、そして趣味の為。
 トリテレイアは人々にぶつからぬよう気をつけたり声をかけたりしながら、ゆっくりと歩を進めるのだった。

 さて、一年に一度。一年以内に出版された本が集まるこの書架隊商。
 かなりの量、そして多岐に渡るジャンルの本が販売されている。ならばもしかしたらあるかもしれぬと望みを抱いている本がある。
「最近になって研究が進み、書に纏められた各地の御伽噺に纏わる本があれば良いのですが……」
 金の篝火を焚いたテントを、トリテレイアはいくつも廻る。こういう時、全環境適応型マルチセンサーの存在は役に立つ。視界に入った本のタイトルを、ほぼ一瞬で全て把握できるからだ。
 そうして本をチェックしながら歩いていると、ある一冊にセンサーのマーカーが止まった。
「おや、これはアルダワ大迷宮の大魔王封印に参加したマジックナイトの伝承の研究論文ですか」
 マジックナイト。つまりは魔法騎士だ。多少戦闘スタイルが違えども、騎士には違いない。店主に閲覧の許可を貰うと、トリテレイアは早速無骨な指で頁を捲る。
 流石、アルダワ魔法学園の研究者が書いた論文なだけあって、伝承について相当細かく研究しているようだった。伝承の物語やら導き出される本人の性格、出身地。マジックナイトが存在していたであろう時期の時代検証などもなされている。服装に作法など、現代の研究者の視点で付けられた文化の解説も嬉しい。
「これのお陰で、筆を執った作家の流麗な文章が更に奥深く楽しめます。一冊、頂けますか?」
 内容に満足そうに頷いて、トリテレイアは早速その一冊を買い求める。これでまた、私物の騎士物語が充実することだろう。
「さて、次はどの題材の本があるか……」
 更に騎士道に関わる物語を探そうとして、トリテレイアが前を向いた、その瞬間。
 一瞬にして全ての篝火の火が落ちた。
 やがて灯台図書館の最先端にある灯台だけに、再び光が燈る。
 
「……来ましたか。本探しは一旦お預けですね」

 そこに灯ったのは、青白い炎の光。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『灯台守の男』

POW ●嵐が待ち受けても、進むものたちのため
【ランタンの灯が周囲を骸の海に変え、骸の海】から【無数の脆弱なオブリビオン】を放ち、【脅威とならないが懸命な攻撃】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD ●眠気覚ましの一杯は、如何かな
【泥水のような不味い珈琲】を給仕している間、戦場にいる泥水のような不味い珈琲を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ ●誰しもあるだろう、忘れられない過去が
【過去の忘れえぬ嘆きと後悔】を降らせる事で、戦場全体が【骸の海】と同じ環境に変化する。[骸の海]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は朽守・カスカです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 書架隊商の賑わいが最高潮に達しつつあった、そのタイミングで。
 灯台図書館の灯りが全て消えた。

「さあ、灯台の灯りを導に戻りきたまえ。嵐が待ち受けてもなお、進むものたちよ。今再び、現世の地へ」

 低くしわがれた声の主が、手にしたランタンを揺らす。
 ゆぅらりゆらり。片翼揺らし。幻想の灯揺らし。
 導くように。此処だと報せるように。
 
「誰しもあるだろう、忘れられない過去が。過去の忘れ得ぬ嘆きと後悔が。故に戻り来たまえ、骸の海より」

 ただ穏やかに。
 それが職務であると言わんばかりに。
 『灯台守の男』は、深い皺の刻まれた目元を和らげて。
 
「滅びてなお世界が恋しいか。ならば来たれ。――此処に」

 灯台が再び灯りを燈す。
 それは青。骸の海より魂を導く青の光。
 灯台図書館の頂上から、波が溢れ出した。
 
「灯台図書館が!」
「あれは災魔だ!! 災魔が出たぞ!! 自警団を呼べ!」
「隊商の商人たちは避難して! 傭兵部隊、出るぞ!」
「でも図書館の本が!!」
 灯台図書館の頂上より溢れ出したオブリビオンによって、メモリアの街は大騒乱となった。書架隊商を訪れているのは殆どが一般人だ。突然の災魔襲来に混乱状態となり、慌てふためいて逃げていく。
「本は今は置いていけ! 命の方が大事だ!」
「でも大切な本なのです! これはもう此処にある分だけしかない本で……」
「貴方の命はここに一つしかない!」
「図書館は!? あそことあそこにある本はメモリアの宝です!!」
「ああお願い誰か、灯台図書館を、本を……メモリアを助けて……!」
 商品でありその価値を知る商人たちの躊躇いも、命を守る為に戦う自警団の言い分も、本好きな人々ばかりのメモリアの人々の嘆きも正しい。けれどもオブリビオンはそんなことを気にしてはくれないし、場を荒らし無念をはらすために躊躇などしないだろう。
 
 だから望まれた。
 猟兵たちの力を。この状況を打開できる誰かを。本を、図書館を、街を守ることの出来る人を。
 
「誰か、誰でもいい、お願いします!! あれを止めてください!!」

 メモリアの自警団が避難誘導にあたり、隊商の護衛たる傭兵たちがギリギリのところでオブリビオンの拡散を防いでくれている。
 その長くは続かない僅かな均衡の間に。
 
「灯台の上で起こっている何かを止めてくれ!!」

 ――その男は巨大な灯台の頂上で、青き光を見下ろしている。
 珈琲を啜りながら。
 穏やかな笑みと共に過去を導く。
 報われず果てた過去の嘆きの為。そして。
 
 自らの為。

* * * * * 
●第二章について
 戦闘場所は灯台図書館の灯台、その頂上部分。標の光がくるくる回る、その屋根の上での決戦となります。
 既にそこに辿り着いているものとして扱いますので、移動などのプレイングは不要です。また屋根の上は充分なスペースがあり、戦うことに支障はありません。

●灯台守の男
 【POW】特に捕捉は有りません。
 【SPD】を選んだ場合、【強制的に】泥水のように不味い珈琲を口に流し込まれます。
 それを楽しめるかどうかは貴方様のプレイング次第です。
 【WIZ】を選んだ場合、彼が手にしたランタンによって貴方様自身の過去の忘れ得ぬ後悔と嘆きの記憶の幻覚が貴方様を覆います。
 その状況をどうにか打破することで、灯台守の男にダメージを与えることが出来るでしょう。
メノン・メルヴォルド
ん、何…?
突然灯りが消えて周囲を見回す
ざわざわとした空気が広がるのを感じて灯台を見上げ

確かに命は、尊くて大切
でも本にも貴重な知識や、かけがえのないものも、確かにあるのよ
本好きとして、魔道書を扱う精霊術士として、そう思う

そして、今動かなければ、ワタシはこの日をきっと後悔してしまうから
…行くの
自分のために

人は誰しも何かを選択しながら前に進んでいくもの
過去の後悔も嘆きも、あって当然なのよ
繰り返し苛まれて今がある
何を怯える事があるというの
過去を忘れられないのは、アナタの方でしょう?

だから、恐れず唱える、ね
――精霊達よ、チカラを貸して

ロッドを握り締めて
《高速詠唱》《全力魔法》でエレメンタル・ファンタジア



 あんなにも眩しくメモリアを照らしていた金の光が、一斉に消えた。灯台も書架隊商のランタンも全てだ。
「ん、何……?」
 キャラバンでの買い物を楽しんでいたメノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)は、灯りの消えた周囲を見回した。ざわざわと不安気な空気が広がるのを感じて灯台を見上げれば、ふいに灯りが燈る。しかしそれは輝く金色ではなくて、不気味な青い光。それと同時に、まるで波が吹き出すように大量のオブリビオンが灯台から雪崩れてくるのが見えた。

「本は今は置いていけ! 命の方が大事だ!」
「でも大切な本なのです! これはもう此処にある分だけしかない本で……」
「貴方の命はここに一つしかない!」

 自警団と商人の悲痛なやりとりが聴こえる。
 そう。確かに命は尊くて大切だ。たった一つしかない。失われてしまえば終わりで、オブリビオンによって齎されるそれはきっととても理不尽で、悲しみはきっと連鎖していくだろう。後悔も嘆きも悲しみもきっと生み出してしまう。
「でも本にも貴重な知識や、かけがえのないものも、確かにあるのよ」
 メノンはぎゅっと本を抱き締める。
 命は大切だ。けれども、本だって大切なのだ。籠められた想い、綴られた心。伝えたいこと。ましてこの灯台図書館と書架隊商はメモリアの街の人々の想いが込められている。
 そして、今動かなければ、メノンはこの日をきっと後悔してしまうから。
「……行くの。自分のために」
 メノンは灯台図書館へと駆けだした。

 灯台の頂上。廻る青い光の屋根の上。そこで、灯台守の男は片翼のランタン揺らして骸の海を呼び続ける。
「誰しもあるだろう。忘れられない過去が」
 男はメノンに背を向けたまま語り掛ける。それは語り掛けのようでもあり、問いかけのようでもあり、独り言のようでもあった。表情は伺い知れない。
 メノンは一歩、男に近づいた。
「ええ。人は誰しも何かを選択しながら前に進んでいくもの。過去の後悔も嘆きも、あって当然なのよ」
 今更何を問うのか。
 後悔の無い人生などあるのだろうか。嘆きの無い人生などあるのだろうか。清濁併せ持つのが人間で、生きるということだ。そんなことはメノンだって知っている。
「繰り返し苛まれて今がある。何を怯えることがあるというの。過去を忘れられないのは、アナタの方でしょう?」
 だからそうやってオブリビオンを呼ぶのだろう。そう言ったメノンの言葉に、男は初めて振り返った。
「そうだよ、お嬢さん。僕らは過去だからね。僕たちの時は止まったんだ」
 穏やかな瞳はオブリビオンであることを疑う程なのに、その目の奥はどうしようもない程に昏い。
 けれどそれを容認出来はしないから。
 だから、恐れず唱える、ね。
「――精霊達よ、チカラを貸して」
 風が逆巻く。風同士がぶつかり合って出来た水滴が氷の粒へと変化し始め、やがてメノンを取り巻く氷の竜巻となる。メノンの竜巻と、黒のオブリビオンの波がぶつかり合った。
成功 🔵🔵🔴

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

サヨ、気をつけて
揺らぐ灯火に私には無いはずの過去が呼び覚まされる

どうして
『私』は幼いきみに再び巡り会ったその時に
きみを攫ってしまわなかったのだろう
サヨだって、『私』と共にいたいと旅がしたいと言ってくれていたのに
ひとの子は厄災の元ではなく
家族たるひとの元で育つべきだと躊躇した

ひとの家から連れ出して攫ってしまっていたなら
呪は刻まれなかっただろう
サヨが苦しむことも
泣くことなんてきっとなかった
其れは私が赦さない事

之は『私』のはじめの後悔
私はもう後悔なんてしない
欲しいものには手を伸ばす
離しはしない
呪からも何者からも救ってみせる

きみの隣でわらっていたい
サヨと旅をするんだ
ずっとずっと
この燈は消えないよ


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイ!
大丈夫よ…私にはあなたがいてくれる

灯火が照らす後悔の姿
真っ赤な柘榴から滴る血の味が
蕩けるような美味が裡を満たしていく
愛するものは美味しいの
あいしているものは一等に

大切な人たちを一人ずつ
愛なる呪の儀式として母の望みのままに食らう

宿された呪は師匠にみつかった
厄神である師匠はこの呪をなんとしても解こうとして、術を手に入れるために旅に出て
果てはこの神殺しの呪を引き受けて
あなたを死に追いやった

後悔、というにはあまりに甘い
全て私の為にと想われた行動が嬉しいと想う心こそが嘆かわしい

カムイ─
私の師の転生よ
大丈夫
同じ事は繰り返さない
あなたとの未来を旅する為に
嘆きも後悔も携え闇を薙ぎ払って進むのよ



 灯台図書館の頂上に辿り着いた朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)と誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)が見たものは、悠然とそこに立つ一人の老齢の男だった。
 ゆらゆら揺らす片翼のランタンに灯す焔は温かな色のはずなのに、そこから感じるのはどうして寒気だけなのだろう。
「来たのか、猟兵。過去を切り捨てる者たち」
 穏やかな声はおよそオブリビオンとは思えない。物腰も、立ち居振る舞いも穏やかなそれなのに、彼の周囲を取り巻くのは骸の海から現れた無数の脆弱なオブリビオンたちだけ。
 何より猟兵に刻まれた本能とも言うべき直感がビリビリと痺れてならない。
「サヨ、気をつけて」
 彼は異様だ。
 その不気味さを感じ取って、カムイは櫻宵の前に立つ。
「カムイ! 大丈夫よ……私にはあなたがいてくれる」
 その背を頼もしく思いつつも、守られるばかりではないと櫻宵はカムイの隣に立って共に灯台守の男を睨みつける。二人武器を構え、目線と息を合わせて二人駆け出した。
「災魔の召喚、やめてもらいましょうか!」
 刀を振り上げた二人を、男は目を細めて見据え、
「お断りしよう」
 浮かべた笑みを隠すように、掲げたランタンの青燈が二人を差した。
 
 青燈は呼び起こす。
 忘れ得ぬ過去。後悔。嘆き。それこそが――骸の海を満たすものと報せるように。
 青燈は呼び起こす。
 櫻宵が身に刻み続ける後悔の姿を。
 
 ――真っ赤な柘榴から滴る血をぺろりと舐めとると、蕩けるような美味が己が裡を満たしていく。
 未だ温くて、新鮮で、甘やかな柘榴。
 ――愛するものは美味しいの。あいているものなら一等に。
 大切な人達を一人ずつ。愛なる呪の儀式として、母の望みのままに櫻宵は喰らう。
 一人食べるたびに刻まれる八首の大蛇の呪印。絶望と悲哀を糧に育ち、そして呪印を刻まれたものを蝕む神殺しの愛の呪い。
 そうして刻まれた呪をひた隠しにし、やがて師匠にみつかった。
 厄神である櫻宵の師匠はその呪をなんとしても解こうとして、術を手に入れるために旅に出て。
 その果てに、神殺しの呪を引き受けて死に追いやった。
 後悔と呼ぶにはあまりに甘い。
 全て櫻宵の為にと想われた行動を「嬉しい」と思う己が心こそが嘆かわしかった。
 これは確かに愛の呪い。
 むせ返るほどに甘く蕩ける、絶望と悲哀の呪。
 
 青燈は呼び起こす。
 『朱赫七カムイ』にはある筈の無い過去の後悔。
 ――どうして。
 何度そう自身に問うたかわからない。
 ――どうして『私』は、幼いきみに再び巡り会ったその時に、きみを攫ってしまわなかったのだろう。
 サヨだって、『私』と共に居たいと、旅がしたいと言ってくれていたのに。
 けれども『私』は躊躇った。
 ひとの子は厄災の傍になど居るべきではないと。家族たるひとの元で育つべきだと躊躇した。それは厄神ゆえの優しさで、決断出来なかった甘さだった。
 ひとの家から連れ出して攫ってしまっていたならば、櫻宵の身体に呪が刻まれることはなかっただろう。それによって櫻宵が苦しむことも、まして泣くことなんてきっとなかったはずだった。そんなことは絶対にカムイが赦さない事だから。
 それが『私』のはじめの後悔だった。
 
 けれど。
 カムイが、櫻宵が、青燈の中で手を伸ばす。
「私はもう後悔なんてしない」
 隣にいると信じて手を伸ばす。見えなくたって関係ない。後悔などせぬと決めた。欲しいものには手を伸ばし、決して離しはしないと決めた。呪からも何者からも救ってみせると誓った。だから。
「サヨ……私は、きみの隣で笑っていたい。サヨと旅をするんだ。ずっとずっと、この燈は消えないよ」
 迷いなく伸ばされたカムイの手が、同じように手を伸ばしていた櫻宵の手をしっかりと捕まえた。
 温かくて力強いカムイの手の感触が、櫻宵を完全に幻覚から覚醒させていく。青燈などには最早眼は眩まない。
「カムイ――私の師の転生よ。大丈夫。同じ事は繰り返さない」
 安心してと言うように、櫻宵は握る手に力を込める。この感触が、熱が、二人の約束だ。
「海に捨てられた過去の嘆きを、全て斬り捨てて進むのが猟兵か」
「わかってないわね。少なくとも私達は捨ててるんじゃないわ。どんなに忘れたい嘆きや悲しみ、別れだって、私達はひとつも捨てた覚えなんてない」
 青燈に沈まぬとわかった灯台守の男は、ランタンの代わりに周囲にオブリビオンたちを展開させる。その数や、徐々に灯台守の男を覆う壁とならん程だ。
 だが、そんなことが何するものぞと櫻宵は強気の笑みを浮かべる。
 再約の神罰が壁となるオブリビオンの召喚を解き、その隙間を正確に艶やかな魂食いの神罰の華がオブリビオンを次々と喰らい続ける。
 カムイと櫻宵は手を繋いだまま、決して離さない。
「あなたとの未来を旅する為に、嘆きも後悔も携え闇を祓って進むのよ」
 それが、二人が今を生きる理由だから。
 強く笑った櫻宵の笑みは眩しかった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

アウグスト・アルトナー
かつて、奴隷商人の檻から抜け出した、ぼくと……ユーリ兄さん
追いつかれ捕らえられ、「どっちから死ぬか選ばせてやる」と言われて
迷いなく「僕からにしなよ」と言い、首を落とされたのは兄さんでした

二人とも生き延びる道は、本当になかったのでしょうか
様々な可能性を考えては、今でも後悔しています

……ですが、どうやっても過去を変えることは叶いません
たとえ今、この幻の中でぼくが兄さんを助けても

【救済の花】を使用。幻を打ち消します
兄さんは、今でもぼくの中に『生きている』んですから

錆びついた『兄さんのナイフ』の【封印を解く】としましょう
「兄さん、力をお借りします」と【祈り】

人の幸福を踏みにじる灯台守に
鋭い刃の一刺しを



 ゆらり、ゆらり。ランタンが揺れる。
「誰しもにあるだろう。忘れ得ぬ過去が。嘆きが。後悔が。それに身を浸せ。それでこそ、此処は、彼らが居た海になり得る」
 灯台守の男が掲げるランタンが、アウグスト・アルトナー(悠久家族・f23918)を嘆きへと誘う。

 ――かつて、奴隷商人の檻から抜け出した二人の少年が居ました。
 一人はアウグスト。もう一人はアウグストの兄、ユーリ。
 二人は懸命に逃げましたが、大人の足は早く、また狡猾でした。
 ほどなくして二人は奴隷商人に追いつかれ捕らえられてしまいます。
 奴隷商人は残忍で怒りにまみれた顔で言いました。
「どっちから死ぬか選ばせてやる」
 どうあっても殺される。そんな状況で。
「僕からにしなよ」
 迷いなくそう言って首を落とされたのは、兄のユーリでした。
 
 どうすればよかったのでしょうか。
 二人とも生き延びる道はなかったのでしょうか。
 生き残ったアウグストは、様々な可能性を考えては、今も後悔しているのです。
 可哀想なユーリ。可哀想なアウグスト。
 二人は今も嘆きの中――。
 
「……いいえ。いいえ。決してそうではありません」

 絵本を捲るように廻る幾度目かの後悔に、それでもアウグストは首を横に振った。
「確かに今でも後悔しています。……ですが、どうやっても過去を変えることは叶いません」
 幻の中で、兄が今にも首を落とされそうになっている。今なら助けられる。今の自分ならば。
 けれどもこれは「過去」ではない。たとえ今この幻の中でアウグストが兄を助けても、「過去」は変わらない。戻れないからこそ過去で、戻れないからこそ過去の嘆きは骸の海へと辿り着き、戻れないからこそ刻みつけられた。

「兄さんは、今でもぼくの中に『生きている』んですから」
 アウグストの右腕の傷跡から、無数のクリスマスローズが咲き、花嵐となって吹き荒れる。追憶の花が遠く過ぎ去った過去を慰め、想い、慈しむように咲く。花がランタンの灯りをかき乱し、過去に土足で踏み入る灯りを掻き消せば、あの日の光景は花の向こうへと消えていった。
 花を避けるように一歩下がった灯台守の男を見据え、アウグストは駆けだした。手には兄のナイフ。普段は錆びついて抜けやしないそれをぎゅっと握り。
「兄さん、力をお借りします」
 アウグストの祈りに応えるように、ナイフが光を放つ。錆びだらけだった刃が光と共に鋭さを取り戻し、すらりと鞘から抜け出してくる。ナイフを握る手に兄の小さな手を感じる。添えられている。そう思えさえするのは、己が裡に兄が『生きている』と知っているアウグストだからこそで。
「人の幸福を踏み躙る貴方に、お返しです」
 アウグストが鋭く踏み込む。
 ランタンを庇うように身を翻した灯台守の男へと詰め寄って振り上げたナイフは、男を守る脆弱なオブリビオンごと男の腕を貫いた。
成功 🔵🔵🔴

都槻・綾
本は記録
誰かの記憶
歴史の日々
創造、未来
読み手に継がれていく、想い

大切なものが沢山綴られた書物達を
泥濘に沈めてしまうおつもりですか

符を掲げた指先で
空中に描く五芒星
戦の庭に
被害拡大を防ぐ結界を張ろう
柔らなオーラも広げ
自他共、護りを強固に

片翼の籠に目を細めれば
幽かに肩を竦めたくなるけれど
今は自嘲より
もっと大事なものが目の前にある

第六感で機を逃さず
駆けて踏み込み、抜刀
袈裟懸けに切り上げ
返し刃で振り下ろす

命中に全てを籠め
灯台も本達も人々も
決して傷付けない

守るべき場所を
想いを
間違えたからオブリビオンになったのか
オブリビオンになったから間違えたのか
分からないけれど

ねぇ、あなた
――図書館では、どうぞ、お静かに



 人を幻覚という昏さに巻き、灯台守の男は灯台図書館を導に骸の海からオブリビオンを呼び続ける。ナイフを突き刺された腕はそこらのオブリビオンを取り込んで傷を塞いでいる。そうしてまで骸の海より嘆きと後悔のオブリビオンを呼び続ける理由はなんなのか。それを知るには、男の表情も余裕も変わらな過ぎる。
 召喚されたオブリビオンは、一体一体は脆弱だ。だがその数があまりに多すぎる。そして、脆弱でありながら乱暴で。通る場所にあるもののことなど、すっかり頭にないのだ。
 此処が図書館であることも、そこに眠る本達のことも、そして本と灯台図書館、そして書架隊商を愛する人々のことも、全て全て破壊する対象でしかない。
 それが、常ならば柔い笑み湛える都槻・綾(絲遊・f01786)に不機嫌を齎した。
「大切なものが沢山綴られた書物達を、泥濘に沈めてしまうおつもりですか」
 本は記録だ。
 誰かの記憶。歴史の日々。創造、未来。伝えたいもの。読み手に継がれていく、想い。それらを文章という方法で紙という媒体に閉じ込めた記録であり記憶であり追憶で、未来への願いだ。
 そして故にこそ、智を尊び本に親しむ綾は、この現状を見過ごすわけにはいかないのだ。
「そうだな。大変に勿体ないが仕方ない。……いずれ書物も骸の海に流れ着くこともあろうかな」
 だがそんな想いすら知ったことではないと、灯台守の男は一蹴した。目的の為に行動し、目的に関係のないものは仕方ないと切り捨てる。だがその穏やかな目に浮かぶ感情は、読み取れはしなかった。
 
 けれども綾とて言葉だけで聞き入れられるとは微塵も思っていない。これはそういう相手ではないことなど、素人目にも明らかだ。
 ならばとばかりに、綾はぴっと符を取り出した。
 符を掲げた指先で空中に描く五芒星。それが発動すると同時に、灯台の頂上に巨大な五芒星が描かれる。張り巡らせるは被害拡大を防ぐための結界。それと同時に柔らなオーラも広げて、自他共に護りを強固にする。
 
 それでも、灯台守の男は悠然と構えたまま。その手で揺れる片翼のランタンに、綾は目を細める。微かに肩を竦めたくもなるけれど、今は自嘲よりももっと大切なもの、護るべきものが目の前にある。
「護りの壁、か。ならば突き崩そう。彼等は捕らえられることを望むまいよ」
 灯台守の男が片翼のランタンを掲げる。その灯りが届く場所は泥濘の海となり、無数の脆弱なオブリビオンが湧き出してくる。それを、解き放った。
「鶴唳風声に、哭け」
 勘が告げる一瞬を見逃さずに、綾も駆けて踏み込む。
 襲い掛かるオブリビオンたちを抜刀した刀で袈裟懸けに斬り上げ、返し刃で次の波を一刀両断する。脆いオブリビオン相手には命中に全てを籠める。
 灯台も本たちも人々も、決して傷つけないという覚悟の元に揮う刃。押し寄せる波を斬り払って、その根源たる男へと迫る。

 その男は、あまりにも人間然としている。
 守るべき場所を、想いを、間違えたからオブリビオンになったのか。
 オブリビオンになったから間違えたから。それは綾の与り知らぬことではあるけれど。
 ただひとつ、確かなことは。
 
「ねぇ、あなた。――図書館では、どうぞ、お静かに」

 玲瓏の刃が閃いた。
成功 🔵🔵🔴

アルデルク・イドルド
ずいぶんと不味いコーヒーだな。
だが、嫌いじゃあないぜ。
コーヒーなんてものが飲めるのはまだ余裕がある証拠だからな。
コーヒーを始めて口にしたのは生まれ故郷でもそこから逃げるために乗り込んだ海賊船でもない海賊商人に拾われてからだった。

コーヒー、ありがとよ。
これは礼だ受け取んな。
UC【ゴーイング・マイウェイ】

コーヒーの対価だと笑いながらコインを消費して

だが…貴重な本が手に入るブックキャラバンを襲ったのはいただけねぇ。
骸の海に還りな

懐に入り込んでパイレーツダガーによる攻撃



 あのランタンは幻覚を見せる効果がある。
 それはこれまでの行動からも明らかだ。だが、だからと言って簡単に防げるわけでもなかった。灯りを見なければ良いというものでもない。そのランタンが揺れれば、強制的に幻覚へと墜とされるのだ。
 だから、アルデルク・イドルド(海賊商人・f26179)が意識を急速覚醒させた時には、既に灯台守の男とテーブルを挟んで珈琲を飲み干していた、そんなタイミングだった。
 喉を滑り落ちるざらざらとした感触。香りだけは珈琲のそれなのに、舌に残る苦みとえぐみが酷い。これは泥水か、それとも飲み物なのか。気品あるカップが酷く不似合いで。
「眠気覚ましの一杯は如何だい。目は覚めたかな」
 テーブルの向かいには灯台守の男が座っている。そこには余裕しかなく、またアルデルクを警戒している様すら見受けられない。ただその男は、その珈琲のような何かを美味そうに啜っていた。そうして改めて此方を見据える瞳に赤い光と凄絶な笑みを向ける。その笑みは底なしだ。まるで『骸の海そのものを覗いている』かのようで。
 
 だが、海のことならばアルデルクが恐れる必要は何処にある。
 アルデルクもまた、海を生きる場とする海賊なのに。
 
「ずいぶんと不味いコーヒーだな」
 口の端釣り上げて笑うのは、先に余裕を失くした方が負けだと知っているからだ。この手の商談ややり口などいくらでも経験してきた。この程度で揺らぐと思っているのならば安い挑発だ。
「だが、嫌いじゃあないぜ。コーヒーなんてものが飲めるのはまだ余裕がある証拠だからな」
 アルデルクがコーヒーを初めて口にしたのは、生まれ故郷からでもそこから逃げるために乗り込んだ海賊船でもない。海賊商人に拾われてからだった。それまでは必死で、余裕なんてなかった。それを思えば、いくら不味かろうが飲み物を口に出来ているだけマシな状況だ。
 カップの取っ手に指を引っ掛け、行儀悪くゆらゆら揺らす。やけに真っ黒なコーヒーが一滴、二人の間にぽとりと落ちた。黒い雫が白いテーブルクロスに広がって、それはやがて嘆きと後悔に溢れる骸の海となる。
 広がる海の対岸で、アルデルクは席を立った。
「コーヒー、ありがとよ。これは礼だ、受け取んな」
 指で弾いたコイン。海を越えた先へとそれが飛び込んでいくと、灯台守の男はそれを受け取った。
「そうか。やはり僕の珈琲は不味いのか……。ああ、これは有り難く受け取っておこう」
 微笑みばかり浮かべていた顔が、少しだけ苦笑いになる。
 だがそれも一瞬だけ。ともすれば見逃していただろうそれにかける言葉はなく、アルデルク素早くテーブルに足を掛けて最短距離で灯台守の男へと迫る。
「だが……貴重な本が手に入るブックキャラバンを襲ったのはいただけねぇ。骸の海に還りな」
 振り下ろしたパイレーツダガーが男を袈裟に切り裂く。吹きあがるのは黒い黒い、なにか。男は衝撃で後ろに倒れながらも、召喚したオブリビオンをアルデルクに差し向ける。
「悪いが未だ還ってやるわけにはいかん。僕にはやるべきことがあるのでね」
「口の減らねぇじいさんだな」
 脆弱なオブリビオンを斬り捨て、アルデルクは再びパイレーツダガーを油断なく構えた。
成功 🔵🔵🔴

未不二・蛟羽
リタさん(f22166)と

ここの本は、俺にとってはムズカシいのが多いけど
でも、此処にくる人はみんなきらきらっす
だから、助けるっすよ
この絵本にあった、ヒーローみたいに!

ダッシュとスライディングで一気に接近

がぶっとしようとした勢い余ってUCで獅子に変化した蛇ちゃんが珈琲をがぶ飲み
ついでに本体でも飲んじゃったり

うーん…確かに苦いけど、別に普通に飲めるっすよ?(悪食の味音痴)
それにちょっと頭がすっきりして、ムズかしい本のタイトル見ても今なら起きてられる気がするっすね!
突っ込むリタさんにはきょとんとしつつ、まぁ楽しそうだからいっかー、とか

改めて、とリタさんと挟み討ちにするように噛み付いて生命力吸収っす!


リタ・キャバリエーレ
蛟羽(f04322)くんと

こんな素敵な場所を、そして沢山の人の想いの詰まった場所をなんだと思っているの!

同じこの場所を、本を、物語を愛する1人として!
一切の遠慮なく骸の海に送り返してあげる!

って蛟羽くん!?

ぺっしなさい!ぺっ!

泥水の様な敵の攻撃をケロッとした顔で飲み干す様子に、なるほどこれが悪食…と変な納得をする反面、これが終わったら絶対に美味しい珈琲を出すお店に連れていこうと決意

懸命な敵の動きにも躊躇も手加減もなく
灯台などを傷をつけない様に、だけは注意して
持ち前の怪力を生かした破ノ一撃で敵の防御ごと破壊してあげるわ(鎧無視攻撃)

数が多いなら衝撃波で吹っ飛ばしすまでよ!

アドリブ歓迎



 灯台守の男は召喚し続ける。
 灯台の灯りを導として、骸の海より嘆きと後悔を呼ぶ。その手は聊かも休まる事はなく、己が目的の為にただ只管に呼び続ける。
 その結果、どんな地獄を呼んでいても。
「こんな素敵な場所を、そして沢山の人の想いの詰まった場所をなんだと思っているの!」
 スカートの裾を握り締めながら、リタ・キャバリエーレ(空を夢見た翼・f22166)が吼えた。リタは見たのだ。書架隊商の人々の賑わいを。この灯台図書館の成り立ちを。隊商と図書館を見つめるメモリアの人々の目の、誇らしさを。
 それをこのように理不尽で無差別な攻撃によって乱されるのは我慢ならない。皆ついさっきまで笑顔でいたのに、そんな笑顔をこの男は一瞬で消し去ったのだ。
「なんだと……か。僕にとってはここが丁度よかっただけのことだよ、お嬢さん。本のことは、些か申し訳ないとは思うけれども。仕方がないんだ」
「仕方がないって……」
 どうして、どこか申し訳なさそうに言うのだ。
 なのにどうして、その手は緩めることがないのだ。
 まだ対話の余地がありそうだったのに、それは儚い希望だったと知る。
 歯を食いしばるリタの背に、未不二・蛟羽(花散らで・f04322)は手にしていた絵本をぎゅっと握り締める。
「ここの本は、俺にとってはムズカシいのが多いけど。でも、此処にくる人はみんなきらきらっす」
 蛟羽も見ていた。商人たちの活き活きとしていた顔。本を真剣に選ぶ人々。皆本が好きだった。皆本を手にすると笑っていた。本当に、きらきらしていた――!
「だから助けるっすよ。この絵本にあった、ヒーローみたいに!」
「私も、同じこの場所を、本を、物語を愛する一人として! 一切の遠慮なく骸の海に送り返してあげる!」
 共に在るならやれる。
 あのきらきらした場所を、笑みを、取り戻すために――!

 先陣を切ったのは蛟羽だ。
 スピードは彼自身の得意とするところ。ダッシュで駆け、襲い来るオブリビオンをスライディングで躱して一息に肉薄する。男は優雅に珈琲を飲んでいる。そんな余裕を前に我慢できなくなったか、蛟羽の尾の蛇がむくりと獅子の顔に変じて噛みつこうと飛び掛かった。
「おっと」
「!?」
「?!」
 ごっくん。
 飛び掛かった獅子の頭をするりと避けたせいで、するりと男の手からカップが滑り落ちた。飛び散った珈琲を勢いで蛇が飲み、ついでに何でか蛟羽本体も飲んじゃって。
「って蛟羽くん!? 飲んだの!? 今それ飲んじゃったの!?」
「あー、うん。飲んじゃった」
 飲んだのは蛟羽なのにリタの方が飛び上がって驚いた。
 慌てて駆け寄ると、リタは蛟羽の背中をバシバシ叩く。
「ぺっしなさい! 蛟羽くん、ぺっ!!」
「いたたたたたリタさんいたいっす!? うーん、確かに苦いけど、別に普通に飲めるっすよ?」
 なんていってもオブリビオンが飲んでいたもの。口にしていいのか悪いのかで言えば多分悪いのでリタは大慌てだが、蛟羽と蛇は顔を見合わせ首を傾げるばかり。
「それにちょっと頭がすっきりして、ムズかしい本のタイトル見ても今なら起きてられる気がするっすね!」
 敵の攻撃だったはずなのに何故けろっとして飲み干すのか。ちょっとくらい慌てて欲しい。
 なるほど、これが悪食……その上確か味音痴。
 リタは溜息と共に変な納得をしたが、なんだか頭痛もしてきたような気もする。
「ふむ。新しい感想だ。ありがとう、少年」
「俺こそごちそうさまっす!」
「なんでかお礼言われてるし! 言ってるし!」
 リタは一瞬目眩を覚えたけれど、すんでのところでふらつきを堪える。今日イチ理解できない流れだが、とりあえずこれが終わったら絶対に蛟羽を美味しい珈琲を出すお店に連れて行こうと固く決意した。せめて美味しいと不味いくらいは学んでいただきたい。味音痴だって美味しい物ばっかり食べてたらきっとよくなるはず……はず……と思いたい……。
 
 そんなリタの決意やらなにやらを知ってか知らずか、当の蛟羽はきょとんと首を傾げる。まぁとりあえずリタが楽しそうだからいいか、なんて考えている辺り、本当に何も問題なく飲んだのだろう。
 
 そんなのんびりした雰囲気は、残念ながら長くは続かない。
 灯台守の男が揺らす片翼のランタンから骸の海が広がり、そこからまた無数のオブリビオンたちが出現したからだ。形を為しきれぬそれらは、きっと弱く脆いのだろう。だが何より数が問題だった。
 波のようにせり上がって襲い来るオブリビオンの群れを見据え、二人は頷き合って駆ける。蛟羽がガリと噛み裂いた指から溢れた血が、赤の鉤爪となる。リタと挟撃するように左右に散って、踊るように血の爪を振るう。動きを止めるようなオブリビオンたちの行動も、爪の一撃を以て葬り去り、尾の蛇が噛み千切って失った体力や生命力を回復する。
 リタはといえば、巨大なハンマーを構え思い切り振り上げた。気をつけるのは、灯台そのものを傷つけないこと。だから叩きつけるのは今回はなしだ。やるなら薙ぎ払い。そして――。
「数が多いなら衝撃波で吹っ飛ばすまでよ!」
 持ち前の怪力を活かし、リタは思い切りハンマーを横に薙ぎ払う。数体のオブリビオンを纏めて薙ぎ払い、それでも尚余った威力は衝撃波となって空を駆け、第二陣を巻き込んで切り裂く。脆弱なオブリビオンに防御などあってないに等しい。紙切れ同然に裂かれ潰され、それを見遣ることもなくリタと蛟羽は駆ける。その先で今も尚波を召喚し続ける男は、「もう少し」と笑っていた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

夏目・晴夜
リュカさんf02586と

いくら私が偉大でも後悔した事もあります
ずっと昔の幼い頃に飼っていた白い子犬
守れず死なせてしまったその存在は私の後悔そのものです

なので幻覚で現れても見ない
声も絶対に聞かない
大量の霊を差し向け、幻覚も敵も全てぐちゃぐちゃにさせます
別にいいでしょう、偶には目を逸らしても
完璧ではないからこそハレルヤは至高ですのでね

ここで颯爽とリュカさんの…え、もう終わったんですか?
や、まあ確かに手早く片付けましたけど…いや非難されるのおかしくないです!?
というか、もっとハレルヤに支えさせて下さいよ!
私は常にリュカさんの手助けがしたくてウズウズしていますのに

全然足りないです。ハレルヤは強欲なので


リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と

あーうん後悔。後悔ね…
さほどないんだよね。もっと別の形の生き物になりたかったってのはあるんだけど
何になりたい、とかではないからこんな感じに曖昧でもわっとした何にもなれないものになる
そして俺は俺の生存を脅かすものは感情関係なく何でも即殺せるので
取りあえず速攻でそれに銃弾を撃ち込んでさっさと撃ち殺して

お兄さん、大丈…
…あれ、お兄さんの方もカタついてる
早すぎない。いい加減俺の頼もしさに感動するターンじゃないの
いつするの。今でしょ
(空気読まないなあって顔してた

…俺だってお兄さんの手助けをしたいと思ってるから、お互い様だね
俺はこれで結構、お兄さんを頼りにしてると思うんだけどなあ



 揺れる。揺れる。片翼のランタンが揺れる。
 誰しもあるだろう。後悔が。嘆きが。時を止めた僕達は、消えることも晴れることもない永遠の海を漂い続ける。

「あーうん後悔。後悔ね……」
 溜息をつくように、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)は面白くもなさげに呟く。幻覚に捉えられていてなお、リュカはそれを脅威とは感じていなかった。
「さほどないんだよね」
 もっと別の形の生き物になりたかったとは思う。けれどもそれは後悔ではないし、嘆きとも違う。具体的に何になりたい、ということでもない。あまりに漠然とした願いで、叶うこともないし心からそれを願い叶えようと何かすることもない。だから、リュカの前に現れる幻は曖昧でもわっとしていて、結局何にもなれないものになる。
 こんなもののどこが脅威だ。野生の獣の方がよっぽどマシだ。こんな曖昧なものに惑わされるリュカではないし、そも自分の生存を脅かすものは感情に関係なく、何であってもすぐに殺せるのがリュカだ。
 脅威を感じずとも敵の攻撃だ。脅威となる前に殺すのが得策と判断し、リュカはその何ともつかぬ物に銃弾を撃ち込んだ。
 
 時を同じくして、リュカと共に灯台へと踏み込んだ夏目・晴夜(不夜狼・f00145)もまた、幻に囚われている。
 過去の嘆き。後悔。
「ええ。ええ。いくら私が偉大でも後悔した事もあります」
 ずっと昔の幼い頃に飼っていた白い子犬。守れずに死なせてしまったその存在は、晴夜の後悔そのものだ。
 だから後悔の気配を感じ取るやいなや、晴夜は目を瞑り耳を塞いだ。絶対にその姿を見ない。声も絶対に聞かない。見なければ、聞かなければ、『幻覚』はそこに居ないのと同じだ。けれどもそれだけでは足りないから。
 晴夜が妖刀を『幻覚』が居るであろう方向へと向ける。途端、刀から数多の悪霊が飛び出して『幻覚』に襲い掛かった。
 救いを求めて群がる悪霊は、凄惨な方法で敵も幻覚も全て全てぐちゃぐちゃにする。そうしたら何も見えない。何も聞こえない。
「別にいいでしょう、偶には目を逸らしても。完璧ではなからこそハレルヤは至高ですのでね」
 消えていく幻覚から目を背けてそう言った晴夜の声は、ほんの少しだけ溜息が混じっていた。
 
 互いに幻覚を破ったことで、目をくらませたランタンの光が一時的に弱まってくれる。幻へと放った攻撃は灯台守の男へもダメージを与えているようで、男からは黒く濁った何かが零れていた。
「お兄さん、大丈……」
「ここで颯爽とリュカさんの……」
 ほぼ同時に意識を覚醒させた二人は、すぐさま『隣で幻覚に惑わされているであろう相手』を助けようと振り向き――ばっちり目が合った。どう考えてもどちらも既に正気である。
「え、もう終わったんですか?」
「……あれ、お兄さんの方もカタついてる。早すぎない。いい加減俺の頼もしさに感動するターンじゃないの。いつするの。今でしょ」
「や、まあ確かに手早く片付けましたけど……いや非難されるのおかしくないです!?」
 互いに助けようとした、はずなのだが。思いの外互いに早く片付いてるもんだから、若干面白くない。いや無事は無事でいいのだが、もうちょっとこう……。
 みたいな内心を遠慮なく口に出し、挙句「空気読まないなあ」なんて顔で呆れて晴夜を見上げるリュカに、全晴夜がびっくりした。こうなると晴夜もカタなしである。というか自信過剰な晴夜だが、なぜかリュカ相手だと突っ込みにまわる場合が多い。
「というか、もっとハレルヤに支えさせて下さいよ! 私は常にリュカさんの手助けがしたくてウズウズしていますのに」
「……俺だってお兄さんを手助けしたいと思ってるから、お互い様だね」
 やれやれとリュカが肩を竦める。
 敵に対して遠慮も躊躇も迷いもないリュカを出し抜いて、自分が颯爽とリュカを助けたいと思うのなら、晴夜はリュカ以上の即断即決そして即殺が必要になるのだろう。それを想像して、晴夜は頭を抑えた。
 リュカはリュカで、晴夜を助けようと思うのなら更に今以上の即断即決即殺が必要になる。そんなの敵が視界に入ったら殺すレベル速度が必要な気がする。
 互いに手が早いとこういう時苦労するらしい。
「というか、俺はこれで結構、お兄さんを頼りにしてると思うんだけどなあ」
「全然足りないです。ハレルヤは強欲なので」
 嘆きというなら今此処に。助け合うのも楽じゃない。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

荻原・志桜
🌸🕯

アナタの灯はわたしが知る灯と違うね
昏くて冷たい
不安を齎す悲しみに満ちた灯

カルディアちゃんの灯は明るい未来に導く光
不安を拭い去り心を癒してくれる
慈愛に満ちているものなんだよ

過去は違った灯を燈していたかもしれない
でもいま災禍に誘うその灯、消させてもらうよ
ふたりならできる!

消えぬ傷
それは死別した恩師のこと
幼く未熟なわたしに為す術はなく
もっと力があれば亡くなることも

違う。苦しんだ過去は戻らない
先生との別れを無かったことにできない
もう一度出逢えた
名を初めて呼んでもらえた
生きろと言ってくれた
いまのわたしに与えられた光を手放したりしない!

不安で押し潰されそうでも
わたしは、わたしたちは歩みを止めないよ


カルディア・アミュレット
🌸🕯

灯台…
大きな灯は旅ゆく者の導
何故…あなたは人を立ち止まらせるの?
灯は流れる時の中で生を導く存在だというのに

できるわ
志桜となら人々の希望を救える

嘆き
其は私が物として意識も覚束ない記憶
私の持主である吸血鬼と人間の乙女が恋に落ち悲劇に陥った記録

吸血鬼と人の恋は決して許されない
人間は吸血鬼を嫌う
討伐しようとする

うろ覚えに等しい記憶蘇る
主さまは乙女を人を愛したかった
なのに人は彼を悪と罵り銀刃を振う

刃は吸血鬼と
彼を守ろうとした乙女を裂く
私は独り取り残され恋人達は散った

思い出したくはなかった
私は恋人を照らす燈なれど
未来導く事叶わず

でも私が人を導きたいと望むのは
彼が人を愛したいと願っていたからなのよ…



「アナタの灯はわたしが知る灯とは違うね。昏くて冷たい。不安を齎す悲しみに満ちた灯」
 片翼のランタンを揺らす灯台守の男に、荻原・志桜(春燈の魔女・f01141)は静かに武器を構えて告げる。
 灯台守の男が掲げるランタンには温かさを感じることはないし、ずっと見ていると不安で悲しくなる。灯りとは本来、そういうものではない筈だ。
「カルディアちゃんの灯は明るい未来に導く光。不安を拭い去り心を癒してくれる、慈愛に満ちたものなんだよ」
「灯台……大きな灯は旅ゆく者の標。何故……あなたは人を立ち止まらせるの? 灯は流れる時の中で生を導く存在だというのに」
 志桜の隣。静謐の青を灯すランタンを掲げたカルディア・アミュレット(命の灯神・f09196)もまた、その灯りを見つめる。同じランタンなのに。カルディアの主は命を重んじる人だった。そして、カルディアという灯もそうあれと願いを託されて今此処に居る。
 だからカルディアには理解が出来ないのだ。生者の為、命の為にこそ灯りを燈してきたカルディアだからこそ、生者を立ち止まらせ過去を呼ぶ灯りを灯す意味が。
 けれどもそれも、オブリビオンであるが故というのなら。
「過去は違った灯を燈していたかもしれない。でもいま災禍に誘うその灯、消させてもらうよ。ふたりならできる!」
「できるわ。志桜となら人々の希望を救える」
 メモリアの人々より願いを託された。人々も本も全てを守りたいから、志桜とカルディアはしっかりと頷き合って武器を構えた。

「過去に灯す燈はない、か。構わんよ。僕のやろうとしていることと、君たちが守りたいものは相容れない。どんな言葉も交わすことは無意味だ。だから、」
 そんな若者の姿を灯台守の男は目を細めて静かに見据える。穏やかな口調は何処か説得も出来そうなものなのに、男は決して己が道を譲りはしなかった。何故と問う言葉も、相容れぬが故に応えることはなく。ただ――。
「まだ、邪魔をしないでおくれ」
 揺れる片翼のランタンが、二人を一瞬にして幻覚に飲み込んだ。
 
 ――それは、カルディアがまだランタンだった頃。
 物として意識も覚束ない時の記憶。
 カルディアの持ち主だった吸血鬼と人間の乙女が恋に落ち、そして悲劇に陥った記録。
 吸血鬼と人の恋は決して許されない。人間は吸血鬼を嫌うし、討伐しようとする。吸血鬼は人間を奴隷としか思っていない。身分違いの恋よりもなお重い罪。見つかれば双方から責められ、殺されるのは目に見えていたことだ。
 それでもカルディアの主は乙女を、人を愛したかった。事実カルディアの主は乙女を愛していたし、吸血鬼でありながら人の命を重んじた。けれども、人はそうではなかった。彼を悪と罵り、碌に言葉を交わすこともなく銀刃を振るう。
 刃は吸血鬼と、彼を守ろうとした乙女を共に斬り裂いた。命を重んじた二人の命は、重んじられることはなかった。
 そうしてカルディアは独り取り残され、恋人たちは散った。
 
「……思い出したくはなかった」
 ランタンを強く強く握りしめる。
 カルディアは主を、恋人を照らす燈だ。けれどもその未来を導く事は叶わなかった。思い起こされてしまった記憶は苦いもので、嘆きであり後悔で。
 けれど、それでも。
 ――それでも!!
「私が人を導きたいと望むのは、彼が人を愛したいと願っていたからなのよ……」
 一粒、カルディアの瞳から硝子玉のような雫が零れ落ちた。
 
 一方志桜もまた、消えぬ傷を再び目の前に見せられていた。
 志桜の前に居るのは、死別した恩師の男性だ。懐かしさよりも申し訳なさが先に胸に過る。幼く未熟な志桜に為す術はなく、志桜にもっと力があれば亡くなることもなかったかもしれない。
 もっと、力があれば……。
「――違う」
 嘆きと後悔の海が足元に押し寄せていたことに気付いて、志桜は首を振った。
「苦しんだ過去は戻らない。先生との別れを無かったことにできない」
 だってもう一度出逢えた。
 名を初めて呼んでもらえた。
 生きろと言ってくれた。
 確かに志桜には助けられなかった。だからと言って過去の後悔で今を塗り潰して、不安と悲しみで立ち止まって、「二度目の別れ」をなかったことにしてしまっていいはずがない。悲しかった。でも別れはいつか訪れるもので、それはどうしたって悲しいもので、それを乗り越えてこそ今がある。
「わたしは、いまのわたしに与えられた光を手放したりしない!」
 だから嘆きと悲しみに沈んだりなんかしない。志桜は決意を秘めた顔で春燈の導を幻に向けた。

 剣の星が空が脆弱なオブリビオンたちを貫く。冷たく燃える青き焔が、広がりかけている黒い海を燃やしていく。
 その焔の海を挟んで、二人は灯台守の男と再び対峙していた。
「不安で押し潰されそうでも、わたしは、わたしたちは歩みを止めないよ」
 それが「今を生きる」ということだから。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ナインチェ・アンサング
【燈屋】

廻る燈
導きの灯台の火
ですが彼らが帰る場所はここでは、ありません

――古く、船乗りを導くもの
灯台と、星

月明かりを零す蒼水晶の剣を抜き放つ
青と蒼
ええ、どちらも間違った導きかも、しれません
ですが、今を謳歌する者の為に
過去は過去へ
嘆きも後悔も、再び骸の海へと導きます

――【極光(オーロラ・ブレイカー)】

振るい、放つは月の光
強い、そして同種の明かりにて灯台の光を打消し、惑わします

…過去の後悔も、嘆きも
それは誰かのモノではありません

そして、それらも
進む時の中でなら善き成就へ至る事もあるのですから

ええ。アラギ
貴方がそうであるように
それを、示さねばなりません、ね


アラギ・グリフォス
【燈屋】

忘れられぬ記憶
魔石だった頃の私
まだ主が生きていた時の

主は黒曜石の様に洗礼された漆黒の髪と瞳を持つ魔族
魔と称す類を極める者を魔族と謂った

主は所謂お人よしな人だった
他を笑わせ喜ばせ
災いを救済せんと努力した魔族

だが在りし日
人間が彼を化物と指した

彼は人の為に努力しただけ
然し人が異質だと唱えたのは…

彼は抵抗しなかった
唯笑って受け入れたの
それが人の望みだというのなら

私は我に返る

懐かしい夢…
噫、いけないわ
人を過去を暴いて立ち止まらせて
灯は人を立ち止まらせる為の標じゃないのよ

貴方の無念は如何なるものだったの?
されど人を巻き込んではいけない
故に私は、唱える

滅せよ、時を遮る骸の海よ
全力魔法のUC



 揺れる。揺れる。片翼のランタンが揺れる。
 遠き日の思い出。過ぎ去りし過去。胸に残り続ける嘆き。悲しみ――後悔。
 それを海から呼び起こす。
 
 ――忘れられない記憶がある。
 アラギ・グリフォス(変化を求める貪欲者・f05247)がまだ身体を得る前。魔石だった頃、まだ主が生きていた時の記憶が。
 アラギの主は黒曜石の様に洗礼された漆黒の髪と瞳を持つ『魔族』。そう呼ばれていた。魔と称す類を極める者を『魔族』と謂った。
 けれども『魔族』というイメージにそぐわぬ人だったように思う。アラギの主は所謂お人好しで、他を笑わせ喜ばせ、災いを救済せんと努力した人だった。努力を惜しまぬ人で、彼の胸にあることが、アラギにとっては誇らしいことでもあった。
 努力して、頑張って、成功して、失敗して。全て誰かの為にと、皆が笑って暮らせるようにと、来る日も来る日も努力して。
 けれど在りし日、人間が彼を化物と指した。
 彼は人の為に努力しただけだ。然し人が異質だと唱えたのは、『魔族』の彼だったのだ。
 彼は抵抗しなかった。唯笑って受け入れた。それが人の望みだというのならと。魔石だったアラギは、ただ見ていることしか出来なかった。
 
「……懐かしい夢」
 そこでアラギは我に返った。目の前に居るのは彼でもなく、彼の命を絶やした者でもなく、ナインチェ・アンサング(‟謡われぬ”カリス・f24188)と相対する灯台守の男。
 残った幻覚の残滓を振り払うように頭を振って、アラギは静かに笑みを浮かべる。
「噫、いけないわ。人を過去を暴いて立ち止まらせて。灯は人を立ち止まらせる為の標じゃないのよ」
「そうだね。僕もそう思うよ」
 返る声は存外に穏やかでしわがれた声だった。予想外の返答に不信そうにアラギは見つめるけれど、それ以外の応えは返らぬまま。
「ですが彼らが帰る場所はここでは、ありません」
 廻る燈。導きの灯台の灯の上で、アラギの隣に立つナインチェは蒼水晶の剣を抜き放った。
 ――古く、船乗りを導くもの。
 それは灯台と、星。
 正しい導きとはなんだろうか。皆が納得できる導きなどあるのだろうか。正しさはわからない。もしかしたらナインチェの導きも間違っているのかもしれないし、それを誰が判断してくれるのかもわからない。
 けれど、ナインチェは見て、聞いたのだ。メモリアの人々が嘆き悲しんでいたのを。守ってくれと叫んだ悲痛さを。
 戦いが信念同士のぶつかり合いで、それが共に相容れることがないのなら、信じるしかないのだ。己が掲げる物を守り切るという誓いを、信念を。
「今を謳歌する者の為に、過去は過去へ。嘆きも後悔も、再び骸の海へと導きます」
 ナインチェの言葉に同調するように、華奢な体に不釣り合いな大剣が蒼い燐光を放ちはじめる。それはまるで、静謐の月光。
 
 ――極光。オーロラ・ブレイカー。
 
 美しき月の光が、溢れ出した脆弱なオブリビオンたちを包み込んだ。強い強い月の光はオブリビオンの導きたる灯台守の男の灯りを打ち消していく。突然導を失い慌てるオブリビオンたちは、そのまま聖なる光に焼かれて薄れ消えて。そして、灯台守の男をただ独りにする。
「……過去の後悔も、嘆きも、それは誰かのモノではありません」
「そうだね」
「そして、それらも。進む時の中でなら善き成就へと至る事もあるのですから」
「そうだね。でも、ならば。止まってしまった時の中に居る者たちは、どうすればいい」
 はじめて、灯台守の男の表情が変わった。
 穏やかな笑みは消えて、ただ静かに二人を見据えている。その優し気な瞳の奥には、底知れぬ黒が潜んでいる。
「……貴方の無念は如何なるものだったの? どんなものであっても人を巻き込んではいけないわ」
 たまらずにアラギが問う。会話が出来るのならば、思い直すことは出来ないのだろうか。
「灯りは立ち止まらせる為の導ではないのだろう?」
 だが、返ってくるのは優しいけれども相容れはしない声。この溝は決して埋まらないと、アラギは悟った。彼はオブリビオンで、アラギとナインチェは猟兵で。彼は死者で、二人は生者で。彼は過去で、二人は現在と未来。決して相容れることはないのだ。
「……そう。人を巻き込むのなら、止めるだけよ」
「ええ。アラギ。貴方がそうであるように。それを、示さねばなりません、ね」
 ナインチェの言葉を支えに、アラギは杖を掲げる。
 相容れないのならば、信じるもの、守りたいものの為に戦うだけ。

「滅せよ、時を遮る骸の海よ」

 無数の焔の矢が、骸の海を広げ召喚を続ける男とその周囲へと降り注いだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ニナ・グラジオラス
私の後悔は嘆きにはならない。これは私の使命感を燃やす活力だからな
だから骸の海は怖くない

導きの灯が欲しいのなら、呉れてやろう
その青は本を読むには相応しくない。だから上書きしてやるぞ
還れ、お前達の海へ
メモリアの嘆きは諦めろ、私達がこれ以上彼らを悲しませはしない

カガリ、私の灯をキミに
『高速詠唱』による魔力譲渡の【緋奔り】でカガリを解き放ち、
『範囲攻撃』で周囲のオブリビオンを巻き込みつつ灯台守の男を狙うように指示

私への攻撃は『見切り』ながら、
『オーラ防御』と『敵を盾にする』を駆使して、カガリへの攻撃は私が全て『かばう』
大丈夫、私が動けずともキミが動けるなら問題ない
その代わり、私の分まで攻撃は頼んだよ



 過去は過去。既に終わっていて、決して巻き戻ることのないもの。そして、未来を手に入れる為に、骸の海に捨てるもの。
 未来の為に灯す燈があるのなら、過去の為に灯す燈はあるか。

「私の後悔は嘆きにはならない。これは私の使命感を燃やす活力だからな。だから骸の海は怖くない」
 嘆きと後悔を問われたニナ・グラジオラス(花篝・f04392)は、真っ直ぐな目で灯台守の男を見返した。既にいくつもの傷を負っている男は、それでも召喚を止めはしない。何か強い思いがあるのだろうことは察せたが、だからと言って見逃してやるわけにはいかない。
「導きの灯が欲しいのなら、呉れてやろう」
 ただしその青では本を読むには相応しくない。字を読みにくいことこの上なく、そして不安を煽る。ならば、上書きしてやろう!
「還れ、お前達の海へ。メモリアの嘆きは諦めろ、私達がこれ以上彼らを悲しませはしない」
「……いいや、まだ還らないよ」
 灯台守の男は動じない。ただ穏やかなままにランタンを揺らす。意見は相容れることはない。それも望む所と、ニナは焔竜カガリを呼んだ。
「カガリ、私の灯をキミに」
 カガリが高く鳴いた。
 高速化された詠唱によってニナの焔の魔力をカガリへと送り込む。増大した魔力はカガリの封印を解き、轟という風と熱と共にカガリの真の姿たる焔竜の姿を解き放つ。そこに立つのは黒き龍。つのと翼、そして尾を燃え滾らせた焔竜が猛り吼える。
「カガリ、周囲のオブリビオンたちを巻き込みながら、あの男と骸の海を焼き払え!」
 ニナの指示に、カガリが大きく息を吸う。その口に迸る炎。攻撃を察したオブリビオンたが、男を守るように壁を作る。それを乗り越え、オブリビオンたちの波がニナとカガリに襲い掛かった。
 轟音と共に炎が吐き出された。灯台の青を塗り潰すような鮮烈な赤が空を染め上げる。苛烈な炎はニナと雪崩れ込んできたオブリビオンの波を飲み込み、その後ろに控えた壁にぶつかって高く燃え上がる。猛烈な熱気と赤に、ニナの髪が揺れた。
 だが、すぐに次の波が襲い来る。炎の壁を突き抜けて、炎塗れになりながらニナ目掛けてオブリビオンたちが次々と飛んでくるのだ。その攻撃をニナは間断なく避けながら、カガリへと目を配ることも忘れない。飛んできたオブリビオンを避けつつ首根っこを引っ掴み、遠心力を利用して放り投げて次の敵を防ぐ。どうしても避け切れぬ攻撃は身を纏うオーラを使って防ぎ、間をすり抜けようとする敵には足を引っ掛ける。
 カガリへの攻撃は何一つ通さぬと、竜騎士の矜持が爆ぜる。
 気遣わしげな鳴き声が、ニナの真後ろから聞こえた。カガリだ。心配をしてくれているのだろう。振り向くことは出来ないが、それでもニナは極力明るい声をあげた。
「大丈夫、私が動けずともキミが動けるなら問題ない。その代わり、私の分まで攻撃は頼んだよ」
 顔を見ずともわかる。ニナは笑っている。それはカガリを信じているからだ。
 その期待に全力を以て応えんと、カガリは最大まで溜めた炎のブレスを吐き出した。
成功 🔵🔵🔴

シャルファ・ルイエ
嵐に立ち向かうのは、過去だってわたし達だって同じです。
今を報われない過去にしないために、大事なものを想って響く、声と願いに応えましょう。
わたし達はそのために来たんですから。

忘れてしまったわたしに忘れられない過去を呼び掛けられるのは、何だか皮肉ですね。
覚えている中にだってそれはありますけど……。
予知で間に合わないって言われた人達の事や、もっと他に良い方法があったんじゃないかと思う事。
でもきっと、覚えている経験が浅い分他よりも幻覚に動揺はしませんし、翼が有れば海に飲み込まれもしません。
だから、この場所に星と雨を。
自警団や傭兵の人達も猟兵も変わらず、一緒に戦っている誰かの、灯りのひとつになるように。



 高い高い火柱が上がった。
 空を裂くような炎は青をかき消して、メモリアを明るく照らす。それが、メモリアの人々の心を励ました。必死に戦う自警団や傭兵たちに勇気を灯し、負けぬものかと押されかけていた勢いをジリジリ押し返していく。
「嵐に立ち向かうのは、過去だってわたし達だって同じです」
 それを青い瞳に映しながら、シャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)は優しく笑った。
 皆それぞれの戦いを戦っている。
 過去の残滓は過去の嘆きの為に。
 そして今を生きる人々は、今を報われない過去にしないために。
「大事なものを想って響く、声と願いに応えましょう。わたし達はそのために来たんですから」
 その勇気を、優しさを、命の灯火を、大切なものを守る為に。
 
 焔の中から出てきた灯台守の男は、既に大きな傷を幾つも負っていた。戦いの終わりが近いことを、シャルファも男も悟っている。それでも男は、片翼のランタンを揺らし続ける。嘆きと後悔の過去を呼び続けている。その光は弱弱しくもシャルファにも届き――けれども飲み込んでしまうことは出来なかった。
 
「忘れてしまったわたしに忘れられない過去を呼び掛けられるのは、何だか皮肉ですね。覚えている中にだってそれはありますけど……」
 幻覚に落としきれない光の中で、シャルファは眉を下げて小さく息を吐いた。シャルファは10歳以前の記憶がない。不自然に途切れた記憶の中で、知らぬ過去の記憶や嘆きを呼び起こすことも出来るかもしれなかったが、不完全な幻覚の中ではそれも叶わない。
 けれども、覚えている中でも後悔や悲しみの瞬間は確かに有った。
 予知で間に合わないと言われた人達の事。もっと他に良い方法があったんじゃないかと思う事。
 けれど覚えている経験が浅い分、他よりも幻覚に動揺することはなかった。悲しくはあれど、飲み込まれる程ではない。そも、翼があれば海に飲み込まれることもない。
 だから歌おう。この場所に星と雨を降らそう。
 自警団や傭兵の人達も猟兵も変わらず、一緒に戦っている誰かの、灯りのひとつになれるように。
 
 シャルファはふわりと宙を舞う。
 そして歌うのだ。
『流れる星も光の雨も。見惚れるくらい綺麗なものを、あなたにぜんぶ見せるから』
 シャルファの声に合わせるように、空に星が流れた。攻撃の意思を削ぐ歌声が召喚された形なきオブリビオンたちの動きを止め、降り注いだ星が次々と浄化していく。灯台の外には光の雨が降り注ぎ、傷ついた自警団や傭兵たちを鼓舞し傷を癒して。
 形勢は此処に来て完全に逆転した。
大成功 🔵🔵🔵

丸越・梓
アドリブ、マスタリング歓迎

_

──あるとも
忘れられない…否、忘れてはならない過去が
然しそれはきっと『過去』も同じこと
忘れてはいけないもの、諦めきれないものがあるからこそ
灯台守の男の呼び声に応えたのだろうと
彼らの物語は終わっていない、彼らは終わらせられない
故にこそ
望まれていなくとも
もしこれから先も彼らが苦しみ続けるのなら
一つのピリオドを与えてやらねば
それがエゴだと解っている


攻撃は全てこの身で受け止める
俺はいくら傷ついても構わない
彼らの思いを、心を受け止めねば
でなければ彼らは報われないと思うから

彼らにそっと触れ抱きしめて
願うは安息

彼らの願いを
全部俺が背負って
明日へ連れて行く



 忘れられない過去はあるか。
 嘆き続ける過去はあるか。
 後悔し続ける過去はあるか。
 煤けた片翼のランタンは問い続ける。その光の中に、何処か優しい声が響いている気がした。
 
「――あるとも。忘れられない……否、忘れてはならない過去が」

 呼びかけに応えたのは、夜を集めたような男だった。
 まるで喪に服したような黒いスーツと黒い手袋の男――丸越・梓(零の魔王・f31127)は、最早ほとんど残っておらぬ脆弱なオブリビオンたちと、地に伏した灯台守の男を瞳に映した。
 梓の目には、この男とオブリビオンたちはただの敵には見えていない。それどころか何処か似た匂いを嗅ぎ取っている。
「然し同じなんだろう。貴方達も」
 梓に忘れてはならない過去があるように、きっとここに居る『過去』たちにも同じものがあるのだと感じている。
「忘れてはいけないもの、諦めきれないがあるからこそ、貴方の呼び声に応えたのだろう」
「……ああ、そうだよ」
 梓の問いに、灯台守の男は観念したように頷いた。
 自分は、『過去』の嘆きや悲しみを晴らす為、此方の世界に呼んだのだと。

 彼等は過去となった瞬間から、不変のままに未来に向けて歩むことはなくなった。当然、胸の想いも変わらない。喜びは喜びのまま。嘆きは嘆きのまま、過去は骸の海に溶けて漂うだけ。
 彼らの物語は終わっていない。彼らは終わらせられない。
 故にこそ、たとえ望まれていなくとも。
「それを知ったところでどうするというんだい。私達はオブリビオン。決して君達と相容れはしないよ」
「……もしこれから先も彼らが苦しみ続けるのなら、一つのピリオドを与えてやらねば」
「……エゴだね、それは」
「わかっている」
 解っている。どうしようもない程に。
 それでも梓の『過去』が、あの日救えなかった代わりに、救えるものは救えと叫んでいるのだ。
 だから、梓は太刀を抜かずに両手を広げた。
 
 残滓のような脆弱なオブリビオンたちが、残った力で梓に攻撃をする。それは脅威と呼べるようなものではなく、まるで子どもの駄々のようだ。オブリビオンの攻撃が梓を斬る。時に梓を殴打する。だが、梓は決して反撃をしようとは思わなかった。
(「俺自身はいくら傷ついても構わない。頑丈な体はこういう時にも役に立つ。彼らの想いを、心を受け止めねば」)
 でなければ彼らは報われないと思うから。
 せめてもの安息を願い、梓はそっとオブリビオン達に触れた。びくりと震えた感触。けれど逃げることも攻撃が激しくなることもない。だから梓は、静かに彼らを抱き締めた。

「……呼び声に応えたその子達は」

 いつのまにか、灯台守の男が梓の傍に来ていた。
 彼自身に攻撃をする術がないことは、此処までくれば皆もう判っている。そうでなくとも、今の男に梓を害する意思などないように見えた。
「事故死や、病死。不慮の死で、後悔や嘆きを抱えた子たちばかりなんだ」
 悲し気に目を細めて男は言う。
 そんな彼らを呼んでいた目的は知れぬが――。
「ならば猶の事。貴方達の願いを全部俺が背負って、明日へ連れて行く」
「ヒトの身にそれは重いよ」
「俺が、そうしたいんだ」
「……そうか」
 梓の腕の中でオブリビオン達が浄化され消えていく。それを見送る男と梓の目は、同じ優しさを湛えていたような気がした。
大成功 🔵🔵🔵

朽守・カスカ
全く何をしているかね、父さんは
喪われた過去が蘇るとは
そういうことなのだろう
私が止めねば、な

父さんの下手な珈琲の所為で
香り高く飲める泥水と勘違いしてたんだぞ、私は
珈琲を啜る都度、文句を口にして顔を顰める
眠気覚ましだとしても本当に酷い味さ
全く、本当に
…だけどそれでも
もう一度、飲みたかったんだ
口に残る苦味より
懐かしさが胸を打つ
ああ満足さ
再び飲めて
父さんに逢えて

犇き満ちるオブリビオン達よ
此処から先に来てはいけない
悔いや嘆きは此処に置いて
在るべき処へお帰り

灯したランタンを掲げれば
眩い閃光が溢れ
標となる

貴方の娘も灯台守となったよ
貴方の残した足跡を歩んで
先へ行くから大丈夫、さ
ありがとう、父さん
ゆっくりお休み



 立ち上がっているのが精一杯と、灯台守の男は自分を判断した。
 既に満身創痍。それでも、晴れることのない後悔や嘆きを抱えた過去の残滓たちを呼び続けることだけは止めない。骸の海から再び現世へと現れる時、オブリビオンという化け物に変ずるとわかっていても。それでも此方に来れば晴れるのではないかと思った。そうであって欲しかった。
 そしてそれは――心残りを抱えて死んだ己も同じ。

「全く何をしているかね、父さんは」
 笑っているような、泣いているような。嬉しいような、悲しいような。
 いくつもの感情を複雑に抱え、朽守・カスカ(灯台守・f00170)は灯台の頂上へと辿り着いた。目の前に佇むのは確かに灯台守の男――カスカの父。
 喪われた過去が蘇る。それはつまり、『そういうこと』だ。そして蘇った過去は遍く人類の敵、だから。
「私が止めねば、な」
 覚悟なら出来た。
 だからカスカは、あの日と変わらぬ姿で父の前に立った。
 
「……カスカ」
「父さん」
 互いに懐かしい声だ。二人ともあの日と姿は変わらぬまま、まるであの日の続きを演じるよう。
「……久しぶりに珈琲を一杯、如何かな」
「ああ、頂くよ」
 父の最期の力は、娘と珈琲を飲むために使われた。
 あの孤島の灯台にあったテーブルと寸分違わぬものが召喚され、二人は椅子につく。向かい合って座ると、父はカスカに珈琲を淹れたカップを差し出す。何も言わずにカスカはそっとそれを口にする。
 そして、顔を顰めた。
 その珈琲ときたら、とても香り高いのに味は泥水みたいだ。美味しいなんてお世辞にも言えない。
「父さんの下手な珈琲の所為で、珈琲というものは香り高く飲める泥水と勘違いしてたんだぞ、私は」
「泥水か……しかし眠気は覚めるだろう?」
「眠気覚ましだとしても本当に酷い味さ。全く、本当に」
 珈琲を啜る都度、カスカは文句を口にしては顔を顰める。それでも、飲むことは止めなかった。何度文句を言ったって、何度顔を顰めたって、カスカは最後まできちんと飲み干した。
「……だけどそれでも」
 カスカは憂いを湛えた笑みを、もう珈琲が失くなってしまったカップに零す。
 珈琲はもう、無くなってしまった。
「もう一度、飲みたかったんだ」
 口に残る苦味より、懐かしさがカスカの胸を打つ。
 何度こうして二人で珈琲を飲んだだろう。「不味い」と眉を顰めるカスカに、父は「今度こそは上手くいく」なんて言って。
「ああ、満足さ。再び飲めて。……父さんに逢えて」
 嬉しくて、嬉しくて。顔を上げたカスカは、泣いているように笑っていた。

「……どうして来たんだい、父さん」
「君が心残りだった。僕は病に臥せって間を置かずに死んだだろう。それからカスカが、僕の死に囚われてはいまいか。ずっとそんな想いを抱えていたんだよ」
「そうか。……なら、見ていてくれ、父さん」

 そう言って、カスカは席を立った。歩む先には、灯台守の男が持っていた片翼のランタンがある。それは、カスカの持っているランタンによく似ているもので。そしてそのランタンを中心に、未だ脆弱なオブリビオンたちが召喚され続けていた。
 娘として、父のしたことにはけじめをつけなければいけない。それがどういうことか判りながら、カスカは此処に来たのだ。
「犇き満ちるオブリビオン達よ。此処から先に来てはいけない」
 カスカの傍に、父もまた歩み寄る。娘の言葉通り、娘のすることを目に焼き付ける為に。
「悔いや嘆きは此処に置いて、在るべき処へお帰り」
 そうしてカスカは、別れの言葉を告げるように灯を燈したランタンを掲げた。
 
 ランタンから眩い閃光が溢れる。
 眩くて鮮烈な一条の光が今、まるで灯台のように道を示す標となる。
 
 光に導かれ、ひとり、またひとりとオブリビオン達が還ってゆく。悔いも嘆きもその光の中に置いて、軽くなった心に安堵しながら光に溶けていく。
 ――そして標の光は、オブリビオンとなった父にも同様に降り注ぐ。
 
 カスカはランタンを掲げたまま、父へと振り返った。
 笑みを浮かべれば、穏やかな笑みが返る。もう二度と逢えぬ愛おしい微笑みが、カスカの胸を打って止まない。
「貴方の娘も灯台守となったよ」

 白一色の無垢な少女。人と違わぬ姿のその人形が完成した時、夜の色が宿った。その色を見た人形技師が、友である孤島の灯台守へと少女を贈った。

「貴方の残した足跡を歩んで、先へ行くから大丈夫、さ」

 孤島の灯台守は少女を娘として育て、ともに暮らした。
 ともに起きて、ともに珈琲を飲んで、ともに灯台に灯を燈し、ともに眠って。やがて孤島の灯台守が病で生涯を閉じた時、少女もまた長く深い眠りについた。
 そして今、その少女は愛した父の足跡をなぞり、父のような灯台守となった。
 燈した光は父の悔いや嘆きを穏やかに溶かしていく。そうして優しく、父に道を示すのだ。
 貴方のように立派な灯台守になったでしょうと、笑って。
 
「……そうなんだね、カスカ。立派で、いい灯台守になったんだな」

 父の優しい優しい笑みがカスカに向けられる。そして最期にぽん、と。父はカスカの髪を優しく撫ぜた。
 
「きっと幸せになりなさい、カスカ」
「……ありがとう、父さん。ゆっくりお休み」

 ゆっくりと、父の姿が光に溶けていく。父は最期まで笑っていて、カスカは父をもう一度見送った。

 やがてランタンの灯火が消え、暁が空と海を覆っていく。
 誰も居なくなった灯台の上で、夜明けの色を宿した少女が零した雫を、風が優しく攫っていった。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年08月10日
宿敵 『灯台守の男』を撃破!
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴