壺の中の激闘~拳は謎解きの後で
●
フェアリーランド。
それはフェアリー自身が壺など何かしらの容器の中に作り上げた、物理法則を無視したファンタジー空間である。
「お初にお目もじいたします」
アックス&ウィザーズの冒険者の酒場にて。
「あのっ、ちょっと変わったフェアリーランドを作ったので、一緒に遊んでくださいませんか?」
猟兵たちを前にぺこりと頭を下げたそのフェアリーは、依頼というには無邪気なお願いを口にした。
「彼女はリエ・ストック様です。フェアリーランド……即ちユーベルコードが使える優秀な冒険者さんですの」
猟兵たちをここまで案内してきた椀種・クルトン(憂き実・f00365)が補足する。
「リエ様はフェアリーランドの中に『謎解き』をご準備なさったそうです。もし、謎を解いて見事正解なさった方には、ご褒美もご用意なさっているそうですわ」
クルトンの説明に続いて、リエが両手を振り振り慌てる。
「そんな、ご褒美だなんて大したものでは……自分がひもじい思いをしないために貯蔵しているだけで。皆様のお気に召しますかどうか」
その様を眺めてクスッと笑うクルトン。
「ともあれ、謎解きにご興味がある方はどうぞお気軽にご参加くださいませ」
正解者が多くてご褒美が足りなくなったらどうするのか——誰ともなく自然に上がった問いへは、
「ええ。それも抜かりなく。正解なさった皆様には残り1人になるまで殴り合っていただきますわ」
さらりと怖いことを口にするクルトンだった。
「わ、わたし、見てみたいです。猟兵様がたのマジ喧嘩!!」
リエなどは不謹慎な願いを宣言して目を輝かせる始末だ。
「まぁ、必ずしも力で解決なさる必要はございません。お金や物で買収なさったり、魅力的な対価を餌に交渉なさっても構いませんの」
クルトンも楽しそうに説明する。
「ガチの殴り合いをなさるも良し。ドロドロした策略を巡らせて駆け引きを仕掛けるも良しですわ。もちろん、正解だけしてご褒美は辞退、他の正解者様の争いを見てるだけというのもアリですの」
ご褒美を巡って全身全霊争うのか、それとも主催者の意に反して平和的に解決するのか。
全ては猟兵たちの選択次第である。
●問題
壺の中はパステルカラーの花が咲き乱れる可愛らしい高原に通じていた。
虹色の流れが幻想的な川も星の海へと繋がっていて、水の花や波の花が豊富である。
さて、雲でできたテーブルの上に問題文が浮かんでいた。
『カツラ+浴衣=粥の時、短歌−葱+ニラを答えよ』
側には何故かしゃもじが落ちている。
問題のヒントか、それともご褒美に欠かせない道具か。
猟兵たちは知恵を絞って、問題に取り組み始めた。
雨都瑣枝
ご覧くださりありがとうございます、雨都です。
ところどころにヒントもあるので、難問と言えるかは微妙です。お気軽にどうぞ。
●第1章について
謎解きです。
ヒントはそこら中にありますが、リエの最初の挨拶もそのひとつです。
なるべく正解者様は全員描写したいですが、ただでさえ少ないキャパシティを超えたら、早い者勝ちとか面白い者勝ちになるかもしれません。悪しからずご容赦ください。
●第2章について
猟兵同士のご褒美の奪い合いです。不正解者様もご参加いただけます。
(ユーベルコードを含めた)力に訴える、お金や財力に訴える、穏便に交渉する、平和的に分け合う——方法は何でも構いません。
(交渉については公序良俗にギリギリ反さない程度にお願いします。
ex……18禁本や媒体を抵当にするのはOK。ご自身の体やそういう行為を抵当にするのはNG)
壺の中という安全な場所ゆえ、説明役のパンツ妖精も参加できます。
もし絡みたい方はプレイング冒頭へ『椀』とお書きください。
●第2章のプレイング受付開始について
冒頭にご褒美の説明の文章を挟みます。
それが載ったらプレイング受付開始となります。
(シナリオ進行のペース次第では、都合により受付開始を数日遅らせる可能性があります)
●プレイングボーナスについて
謎解きと奪い合いそれぞれを全力で楽しむと、大成功を得やすくなります。
皆様のプレイング、楽しみにお待ちいたしております。
第1章 冒険
『天空城の探索』
|
POW : 瓦礫をどかしたり、重い物を動かして探す。
SPD : 計測器具などを用いて探す。
WIZ : 魔術の痕跡などを探す。
|
涼風・穹
……答えは『谷』だったりするか…?
リエの挨拶も女房言葉だったし、しゃもじを女房言葉にすると「しゃ」+文字だから取り合えず問題で二文字になっている「短歌」を「短(たん)」に、「ニラ」も「ニ」として読んでみた
葱については女房言葉でなら「ひともじ」とも読めるから「たん」から一文字引けとも取れるから「短歌−葱=た」としてそれに「ニ(に)」を足してみると『たに』になったから取り合えず音から意味のありそうな漢字を当ててみると『谷』位しか思いつかなかった
……些か、というかかなり強引な推論ではあるけど「ニラ」が「韮」ではなく片仮名で表現されていたから音で読んでみた
「葱+韮」ならまた違う読み方も出来そうだけど…
●ヒントと解法
フェアリーランドは幻想的な高原の花畑。
「…………」
涼風・穹(人間の探索者・f02404)は、辺りを物珍しそうに見渡してから、
「……答えは『谷』だったりするか……?」
テーブルの上で浮いているリエに向かって、どことなく自信なさそうに語りかけた。
「谷ですか。どうしてそう思われたのでしょう?」
「リエの挨拶も女房言葉だったし、しゃもじを女房言葉にすると『しゃ』+文字だから取り合えず問題で二文字になっている『短歌』を『短(たん)』に、『ニラ』も『ニ』として読んでみた」
頭をかきかき説明する穹を見て、リエはぱぁっと顔を綻ばせた。
「女房言葉! よくぞ気づいてくださいました。とても良い着眼点です。……そこからどうして二文字に拘ったのかはわかりませんが」
「葱については女房言葉でなら『ひともじ』とも読めて『たん』から一文字引けとも取れるから『短歌−葱=た』としてそれに『ニ(に)』を足してみると『たに』になった」
「ふむふむ」
「取り合えず音から意味のありそうな漢字を当ててみると『谷』位しか思いつかなかった」
「なるほど。残念ながら不正解です」
ですが、女房言葉に変換して葱をひともじと読む解き方は合ってます! ぐっと親指を立てるリエ。
「そうか……些か、というかかなり強引な推論ではあるけどニラが韮ではなく片仮名で表現されていたから音で読んでみた」
『葱+韮』ならまた違う読み方も出来そうだけど——頭を抱える穹へリエがアドバイスする。
「ニラはニラです。これもそのまま女房言葉にすれば大丈夫ですよ」
と。
成功
🔵🔵🔴
アニカ・エドフェルト
なるほど、カツラは、つけ髪、ということで「『か』文字+『ゆ』文字」で、「かゆ」だった、というわけ、ですね。
(学習ノートに浮かび上がってきた女房言葉いろいろを読みながら)
なので「『短歌』−『一』文字+『二』文字」。
「短歌」は、このいろいろにはなさそう、なのと、
足す文字を、外から、持ってくると、ノーヒントに、なっちゃいますね。
なので、いろいろと、解釈できそう、ですが、「短歌」の1文字目から1字引く、2文字目から1字足す、みたいな感じで、「タカ」もしくは「タカ科」、
単純に、「歌→おうた」として、「奥羽」もしくは「歌う」とか…「短」が、どこか、いっちゃいましたが。
このあたりで、あればいいの、ですが…。
●大ヒント
続いて。
「なるほど」
アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)は幼い面に満面の笑みを湛えて、抱えた学習ノートをめくり始める。
「カツラは、つけ髪、ということで『か文字+ゆ文字』で『かゆ』だった、というわけ、ですね」
ノートのページに浮かび上がる様々な女房言葉を確かめるように読んで、うんうんと頷くアニカ。
「その通りです!」
変わらず雲のテーブルの上をひらひら舞いながら、リエがぱちぱち拍手を送る。
「なので『短歌−一文字+二文字』……短歌は、このいろいろにはなさそう、なのと、足す文字を、外から、持ってくると、ノーヒントに、なっちゃいますね」
だが、すぐにアニカはむむむと考え込む。
「なので、いろいろと、解釈できそう、ですが、『短歌』の1文字目から1字引く、2文字目から1字足す、みたいな感じで、『タカ』もしくは『タカ科』」
「ふむ」
「単純に、『歌→おうた』として、『奥羽』もしくは『歌う』とか……短が、どこか、いっちゃいましたが」
このあたりで、あればいいの、ですが……——アニカが自信なさそうに呟く。
「残念ながら不正解ですね」
リエはそう告げて、更に付け足した。
「かもじ+ゆもじ=かゆであるように、問題も単純な計算なのですよ。葱とニラが何故ひともじとふたもじって呼ばれたかを考えると、自然に短歌の別名もわかるかと思います」
恐らく、これが最後のヒントになるだろう。
成功
🔵🔵🔴
宙夢・拓未
ええと、葱は『き』って一文字で読まれてたから『ひともじ』って別名で
それに対してニラは二文字だから『ふたもじ』なんだったか……?
……そうか!
短歌は、5・7・5・7・7
それで、『三十一文字(みそひともじ)』って呼ばれてたんだな
つまり、『みそひと』から『ひと』を引いて『ふた』を足すんだから
答えは『みそふた』……
……味噌蓋? そんな言葉、あったか?
味噌樽の蓋とか、味噌の上の白い紙のこととか、か……?
な、なんか……自信ないな。もうちょい考えよう
……あ
『みそ』と『ふた』、くっつける順番が逆か!?
確か、手作り味噌の表面部分を、『蓋味噌』って呼ぶよな
よし!
俺の答えは、『ふたみそ(蓋味噌)』だぜ!
……どうだ!?
●正解発表
さて。
「ええと、葱は『き』って一文字で読まれてたから『ひともじ』って別名で、それに対してニラは二文字だから『ふたもじ』なんだったか……?」
宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)は、リエのヒントから正答を導き出そうと思案していた。
「……そうか!」
すぐに何か思いあたったらしく、端正な面差しに笑顔が浮かぶ。
「短歌は、5・7・5・7・7の文字で構成されている。それで、『三十一文字(みそひともじ)』って呼ばれてたんだな」
自信と安堵がない混ぜの声で、澱みなく説明する拓未。
「はい。その通りです!」
リエも歓声を上げつつぱちぱち拍手した。
「つまり、『みそひと』から『ひと』を引いて『ふた』を足すんだから、答えは『みそふた』……」
ついに辿り着いた拓未の計算には何の誤りもない。
「……味噌蓋? そんな言葉、あったか?」
おかげで、不意に拓未が不安そうな声を出しても、リエは安心して見守っている。
「味噌樽の蓋とか、味噌の上の白い紙のこととか、か……?」
元より謎解きの経験も豊富な拓未だから、人間時代と変わらぬ記憶の底から、雑学の知識を引っ張り出してくるのも早かった。
「……あ。『みそ』と『ふた』、くっつける順番が逆か!? 確か、手作り味噌の表面部分を、『蓋味噌』って呼ぶよな」
「ふむ」
「よし! 俺の答えは、『ふたみそ(蓋味噌)』だぜ!」
最後まで気を緩めずに考え抜いた回答。
「……どうだ!?」
拓未が珍しく興奮した様子でリエを見やると、
「正解でーす!!」
リエは小さな体でめいっぱいはしゃぎ回りながら断言した。
「あ~、よかった……」
心底安心したのか、気の抜けたように笑う拓未。
「ちなみに、計算式さえ合っていれば、味噌蓋でも蓋味噌でも、ふたもじをにもじに変えて味噌煮にしても、どれでも正解にするつもりでしたよ」
「へぇ、味噌蓋ってのは何なんだ?」
「隠れ蓑——植物の方——の別名なんです」
かくて拓未は初の正解者として、ご褒美をもらう権利を得た。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
女房言葉……ですか
神隠しで渡ってきた異世界人から伝わったりしたのかにゃ?
不思議で面白いですね
と。あとは「短歌」の読みがわかれば、でしょうか
短歌……短歌って、なんでしょう?言葉は聞いたことはあるのですが、どういうもの、こと?かは知らないのですよね
ということで、電脳ゴーグルで調べてみましょう
検索「短歌」と……あ、これでしょうか
5・7・5・7・7の、31文字で、みそひともじ……?
みそひともじーひともじ+ふたもじで……「みそふた」?
味噌蓋?なんでしょう。そういう蓋があるのでしょうか
●2人目の正解者
一方。
「女房言葉……ですか。神隠しで渡ってきた異世界人から伝わったりしたのかにゃ?」
ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は、問題やヒントに散りばめられた女房言葉の数々について考察していた。
「不思議で面白いですね」
「そうですね。女房言葉って私はご本で読むまで知りませんでした。沢山種類があるみたいですから、色んなご本を読んで調べるのが楽しくって」
大きな本を自力で捲るのは大変ですけど、とリエがはにかむ。
「なるほど」
異世界の書物が神隠しに遭った異世界人によって流入したのだろうか——色々と推察を巡らせつつ、問題にも正面から取り組むナイ。
「と。あとは『短歌』の読みがわかれば、でしょうか」
だが。
「短歌……短歌って、なんでしょう?」
思わぬところで躓いて、こてんと首を傾げてしまう。
「言葉は聞いたことはあるのですが、どういうもの、こと? かは知らないのですよね」
記憶すら失う数奇な来し方を辿ったナイだけに、短歌という単語を聞いたことがあるだけでも充分すごい。
「ということで、電脳ゴーグルで調べてみましょう」
検索『短歌』と打ち込めば、上位の結果に興味深い文言が見えた。
「5・7・5・7・7の、31文字で、みそひともじ……?」
不思議そうに呟くも、理解も計算も早いナイは、その情報処理能力を遺憾なく発揮。
「みそひともじーひともじ+ふたもじで……『みそふた』?」
と、正しい答えを素早く導き出したのだった。
「味噌蓋? なんでしょう。そういう蓋があるのでしょうか」
「はいっ。大正解でーす!!」
蓋ではなく低木ですけど、とリエが両手にぶら提げてきた枝を、ナイはまじまじと見つめる。
細い枝先に密集した丸い果実は、ほとんど黒に近い紫色をしている。
「味噌蓋、別名カクレミノの実です。可愛いでしょう?」
「これが……渋い色をしていますね」
そんなこんなで、ナイも見事に問題を解き明かし、ご褒美の権利を手にした。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『冒険者の喧嘩を何とかしろ』
|
POW : とりあえず殴って黙らせる
SPD : 捕縛や束縛で動きを封じる
WIZ : 双方の主張を聞いて対話を試みる
|
●ご褒美発表
謎解きに参加してくれた、あるいはご褒美バトルの観戦やご褒美の横取りもとい交渉にやってきた猟兵たちを見渡して、リエが発表する。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございますっ。謎解きのご褒美は、『鮎飯』でーーす!!」
なぜにあゆめし?
頭上に疑問符を浮かべそうな、きょとんとした表情で首を傾げる猟兵たち。
「この高原に流れる虹色の川、そして川の終点たる海岸をよーくご覧ください」
そう。元々このファンタジックな高原は、リエが予め捕まえておいた活きの良い鮎を川に放して棲まわせていたのだ。
そして、リアリティの追求なのか何なのか、成分が外界と同じ海水から焼き塩を作っていたりもした。
「水の花は鮎、波の花は塩を指す女房言葉ですから、実は問題のヒントの一部でした。せっかく用意したからにはご褒美も鮎飯にしようと思ったんです」
そう解説するリエは、自分より大きな寿司桶に炊き立ての鮎飯を詰め、長い長い縄でぶら提げて運んできた。
ちなみに鮎飯とは、醤油の味をつけて炊いたご飯へ頭を取った鮎を突っ込み、尾を回しながら骨ごと抜いて、残った身をよく混ぜ合わせたものである。
鮎は先に塩を振っておくか、好みで塩焼きにしておいても良い。
「さて、正解者様はお2人ですから、本来ならこの3合の鮎飯を半分ずつ分け合っていただくところですが」
言いつつ、次にリエが取り出したるは2本のしゃもじ。
「このしゃもじがいわば鮎飯引換券です。それでは、全力でこれらを放り投げますのでどうぞお好きに奪い合ってくださいね」
よーい、どん! の掛け声と同時に、フェアリーランドの高原へ吹く風に乗って、2本のしゃもじが空高く舞い上がった。
宙夢・拓未
椀
炊きたての鮎飯、美味そうだな……ぜひ欲しいな!
どうするかな……よし、ああしよう
まずは相手の作戦に乗るふりをするぜ
真っ向からの殴り合いでも、交渉でもな
少し経ったら、俺はばったりその場に倒れる
【鋼鉄の相棒】で、意識をバイクに移したってわけだな
クルトンにもリエにも何も言ってないから、多分心配されるが
……ま、敵を欺くにはまず味方(?)から、ってな
倒れてる俺(の本体)に皆の注意が向いてる隙に
バイク(に意識を移した俺)が、反対側からしゃもじへ向かう!
【ジャンプ】!
空中のしゃもじを、ハンドルに括り付けた虫取り網でゲットだ
以上が俺の【だまし討ち】作戦だ
上手くいくかな?
勝利時
【グルメ知識】を駆使し食レポするぜ
ルナリリス・シュヴァリエ(サポート)
何かお困りですか? 私は旅の聖剣使いです
誰かの力になりたい、そんな思いから猟兵活動をしています
私で良ければ力になりましょう。
お人好しな性格で、並みいる敵を聖剣でなぎ払い、罠やトラブルは体当たりで乗り越えていく
そんな突撃隊長的なキャラクターです。
あとはお任せで、よろしくおねがいします。
●其は肉弾戦か頭脳戦か
フェアリーランド。
「炊きたての鮎飯、美味そうだな……ぜひ欲しいな!」
宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)は、正解者の余裕か、焦ることなく上空のしゃもじを眺めて思案する。
(「どうするかな……よし」)
何か良い作戦が思いついたのか、にやりと自信に満ちた笑顔になる拓未。
一方。
「エッチはイケナイ事です。女神様が許しても私が許しません!」
ルナリリス・シュヴァリエ(サキュバスの剣姫・f25397)は、クルトンがしていた諸々の説明に対して、清楚な彼女らしいツッコミを入れていた。
「わかってますわかってますとも。わたくしだって本番は許しませんっ。ただ交渉材料としてエロ本とかならギリギリありかなって」
「うっ、エロ本でしたか……創作物へ携わった人々の想いや、創作物を愛する人々の想いをあのメガリス島で知ってしまった今となっては、とても撲滅できなくなってしまいました……!」
漫才じみたやりとりを繰り広げる2人へ、思わず拓未がツッコむ。
「いや、俺もそんな本もらったところで困るから……」
「あら、左様でしたか。では交渉の余地は無いということですね」
苦笑する拓未へ向き直って、ルナリリスは礼儀正しく頭を下げた。
「では折角ですし、食事前の軽い運動ということで鮎飯を賭けての一戦、お願いします!」
競争を見たがってるリエさんのためにも——笑顔で気負いなく聖剣を抜くルナリリスだが、その構えには隙がない。
「ああ。受けて立とう」
拓未もすぐさま真剣な目になって、オブリビオン・キラーの柄に手をかける。
2人の剣戟は熾烈を極めた。
それは鮎飯がかかっているから、というより、観戦しているリエとクルトンを楽しませたい拓未とルナリリス双方のサービス精神の賜物だろう。
そして、ルナリリスのペースに巻きこまれることこそが、拓未の密かな策であった。
元より真っ向からの殴り合いだろうと、相手の意図を読む必要のある交渉だろうと、ノリの良い拓未なら躊躇いなく乗っかるに違いない。
そう誰もが思う拓未の明るさ、裏表の無さが、今回の作戦にうまく噛み合っていた。
(「そろそろ頃合いか」)
さて、しばらくはルナリリスの振るう聖剣アストライアに押され気味な様子を演じていた拓未だが。
突然、ばったりとその場に倒れ込んだ。
「きゃぁぁぁぁ!!?」
リエとクルトンが悲鳴をあげる。
「大丈夫ですかっ!」
ルナリリスも機敏に駆け寄って、拓未を気遣った。
皆が心配する傍ら、拓未は密かに鋼鉄の相棒を発動して、自らの意識をバイク——Crimson-Blastへ移したのだ。
「宙夢さん、大丈夫ですか!」
「宙夢様、しっかり!」
(「……ま、敵を欺くにはまず味方から、ってな」)
倒れてる拓未の本体へ皆の注意が向いている隙に、自力でエンジンをかけたバイクが、大きく弧を描きしゃもじ目掛けて爆走する。
(「今だ!」)
例えるなら、横スクロールのアクションゲームでコインを取るが如き、正確なジャンプを決める拓未。
——すぽっ!
ハンドルに括りつけた虫取り網が、空中のしゃもじをうまく捉えた。
「「「あっ
……」」』
それを見たルナリリス、クルトン、リエの驚いた顔といったらなかった。
「うん。炊きこみご飯は少々冷めても変わらずに旨い」
ようやく正当なご褒美、炊き立ての鮎飯にありついた拓未は、旬の味に舌鼓を打つ。
「鮎が焼き鮎なのもまた良いな。塩気や内臓の苦味がご飯にうつったのが最高だね」
「ほんとに美味しそうですねぇ~」
すっかり拓未に裏をかかれたルナリリスは羨ましそうに呟くも、本人の元気そうな様子を、半ば安心した心地で眺めるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
涼風・穹
『椀』
当然手段を選ばず実力行使でいく
狙うのはより遠くへ飛んでいきそうな方の杓文字
まずはフェイントとして《天駆》で宙を駆けて近い方の杓文字を追いかけるように飛びますが直ぐに本来の狙いである遠い方の杓文字へ向かいます
一瞬の遅れはありますがそれで遠い方の杓文字を追おうとしているのが誰か分かる筈
誰もいなければ良いのですが誰かいて先行されそうならフック付きワイヤーを投擲
それで上手く相手に絡められれば僥倖
外しても牽制になれば良し
さっさと杓文字を取りに行きます
……問題は取る直前と取った後
妨害又は奪取するなら狙い目し俺ならそうする
どうにか出来れば良いけどいざとなれば杓文字を半分程度に切って一部だけでも確保する
●2本目の行方
同じ頃。
(「当然、手段を選ばず実力行使でいく」)
この手の依頼に慣れている涼風・穹(人間の探索者・f02404)は、さっぱりした顔で方針を決めた。
穹が狙うのは、リエが投げた2本のうち、より高く遠くへ飛んでいったしゃもじだ。
早速、天駆を発動して地面を蹴る穹。
まるで見えない階段を駆け上がっているかのようにスタスタと跳ね飛んで、しゃもじを追いかけた。
「せっかくですから、わたくしも」
競争を盛り上げようとしてか、いつのまにかクルトンまでぱたぱたと羽ばたきながら、しゃもじを追いかけている。
穹が最初に追跡していた近い方のしゃもじへ向かって、まんまと穹の仕掛けたフェイントへ引っかかっていた。
「しまった……!」
穹はすぐさま進路を変えて、本来の狙いである遠い方のしゃもじへ向かう。
その道中、近い方のしゃもじを巡る決闘と騙し討ちが繰り広げられていて、
「宙夢様がご無事でよかった~」
安心して2本目のしゃもじを捕まえにいくクルトン。
「……」
だが、穹がひと足先にしゃもじをキャッチすると同時に、フック付きワイヤーを投擲。
(「一度取れてもすかさず妨害や奪取されないとも限らないし、俺ならそうする」)
それ故、しゃもじを入手しても最後まで油断はしないとのこと。
「きゃーっ!」
穹の狙い澄ましたフック投げによって、クルトンはまるで罠にかかった鳥か虫の如く、ぐるぐる巻きになってしまった。
そして。
「うん、旨いな。焼き鮎のように蓼酢で鮎飯を作ったらどうなるかも興味があるな」
2本目のしゃもじをしっかり確保した穹は、鮎飯を心ゆくまで楽しむ。
「良いですわね蓼酢、わたくし大好きですわ」
蓑虫状態で木の枝に吊るされているクルトンが頷いた。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
謎解き目当てだったので、ご褒美はさて、どうしましょう……
うーむ
……決めました。マジ喧嘩を見てみたいと言ってたリエさんには悪いですが、私は争いには参加しません
かわりに……
こういう時、こういうことする猟兵もいると、みせてあげましょう。にゃんて
ご褒美争奪戦のあと、みんなで食べれるように、鮎飯をもっと作りましょう?
リエさんが頑張って捕まえ、このフェアリーランドに放した鮎、使うの許可もらえれば、ですが
とりあえず、これ(群竜大陸の財宝「ダイウルゴスの彫像」たくさん確保してるせいか一体ぽんと渡す)で材料費などは足ります?多ければ、気持ち豪華にいきましょう
料理してー
みんなお腹いっぱい食べれるのが、いいですよね
●一生鮎飯でも有り余る
さて。
「謎解き目当てだったので、ご褒美はさて、どうしましょう……」
うーむと腕組みして考えこむのはナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)。
謎解きの経験豊富な彼らしい参加理由である。
「……決めました。マジ喧嘩を見てみたいと言ってたリエさんには悪いですが、私は争いには参加しません」
すぐにナイはふわりと柔らかく微笑んで、
「かわりに……」
ばっと構えるのは手持ちの地縛鎖。
「こういう時、こういうことする猟兵もいると、みせてあげましょう。にゃんて」
ナイが目論んだのは、ご褒美の鮎飯作りであった。
(「リエさんが頑張って捕まえ、このフェアリーランドに放した鮎、使うの許可もらえれば、ですが」)
心優しく律儀なナイの憂慮である。
「とりあえず、これで材料費などは足ります?」
ナイがリエへ向かって、ぽんと景気良く差し出したのは、群竜大陸の財宝『ダイウルゴスの彫像』。
日本円に換算すると1体1950万円也。
「「足り過ぎます!!」」
リエとクルトンの声が重なった。
「あ、ありがとうございます……鮎飯のおかわりをたくさん作ってくださるということですよね。こちらからも是非お願いしたいぐらいです」
リエはそう言ってご褒美の追加を快諾してくれた。
「私が炊くのは3合が限界でしたから」
人間で例えるなら、寸胴鍋いっぱいに炊き出しするか、それ以上の重労働だったのだろう。
「でしたら、気持ち豪華にいきましょう」
かくて、許可を得たナイは楽しそうにひょいひょいと鮎を釣り上げて、塩を振ったり焼いたりと大忙し。
塩焼き用に育てていたという蓼も蓼酢に仕立てて、炊き込みご飯の風味付けにも使ってみた。
「お、おかわりか。こいつはありがたい」
「いただきます」
既に最初の鮎飯を平らげていた拓未と穹も、ナイのおかわりをありがたくご馳走になっている。
「わたくしたちもいただきますわ」
「ひとくち頂戴しますね」
こちらは、そのひとくちでお腹いっぱいになるフェアリー2人が小鉢に盛った鮎飯をいただいている。
フェアリーランドにも様々な種類があれど、リエのそれはクルトンと違って、種族間の体格差が外界と同じなようだ。
「みんなお腹いっぱい食べれるのが、いいですよね」
ナイは、皆が旨そうに鮎飯を食べているのを眺めて、自分も箸をとりつつ幸せそうに微笑んた。
大成功
🔵🔵🔵