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魔女猫と白竜の物語

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #魔女猫グリマルキン #竜騎士

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●竜神山脈に竜は哭く
 遠い遠い、昔の話。
 一人の魔女がいました。彼女は少々頭は鈍かったけれども、持ち前の優しさで周囲には多くの人々が集まっていました。
 その中に一匹のケットシーがいました。
 彼女は魔女に魔術について教わり、その好奇心からどんどんのめりこんでいって一人前の魔法使いになりました。
 けれども、その時おそろしき大魔王が魔女を襲ってしまったのです。
 慕っていた人々がその身を挺しても、魔法使いの猫が抵抗しても力は全く及ばず、魔女は食べられてしまいました。
 何とか生き延びたケットシーですが、当然怒り心頭。
 その後の生涯を大魔王を打ち破る為の魔術の研究、研鑽に捧げ尽くしその発展に尽力したのでした。
 やがて時が経ち。
 大魔王は大いなるダンジョンメーカーにより封印され、その上に建てられたアルダワ魔法学園により世界は今も守られているのです。

『だからにゃー、魔王を滅ぼしてくれたのはとても気分がいいにゃ』
 竜神山脈、いくつも存在する竜の洞の一つの中に高い猫の声が響く。
『けれども……アレは何だにゃ? あの魔導蒸気機械という名前のアレ、作ったのはオアニーヴという賢竜だって聞いたけども、それは大きな問題じゃあない』
 苦しげなドラゴンの呻きが響くも、猫の声は止まらない。
『偉大な魔女様の魔法を放棄してあんなくだらないおもちゃで世界を満たそうとしている――それがお前さん達ドラゴンの仕業。切っ掛けを与えただけだとしてもそんなの許す訳にはいかない』
 洞の中には地面に拘束された白く毛並みのふさふさしたドラゴンと、それに比べて随分と小さな魔女帽子のケットシー。
 如何にも魔女と言った風体のケットシーの名は魔女猫グリマルキン、この世界を侵略せんとする猟書家の一人だ。
 彼女は帽子を取ってその中に手を突っ込みごそごそ何かを探り、邪悪な気配を纏う黒き仮面を取り出した。
『……大魔王の仮面、私がこれを使うのはしょーじき腹が立つことこの上ないけれど、それ以上に頭にくるお前さん達には丁度いいよね』
 嫌がるように首を振り咆哮をあげる白竜にグリマルキンは魔王の仮面を被せる。
 邪悪なる魔力がドラゴンの精神を汚染し、完全に支配するまでそう長くはかからないだろう。
 ドラゴンの悲痛な悲鳴が竜神山脈に響くも、他のドラゴンには届かない。
 だが、山の麓にいた一匹のケットシーがその救援を求める声を聞き届けていた。
『これは……ドラゴン様の悲鳴ですの! 今すぐ助けに向かわなければ!』
 ノールという名の白い毛並みのケットシーはそれを認識すると即座に険しい山へと駆け出した。
 進む先に道はないに等しくいつ崩れるかも分からぬ険路。だが、使命感に燃える彼女はそんなことお構いなしに突き進み、道が崩れるよりも早く山の壁すら足場に走る勢いで進んでいくのであった。

 グリモアベース。
「カクリヨファンタズムの戦いお疲れ様。それで早速で悪いんだけどアルダワ世界の猟書家の事件を予知しちゃったんだ。竜神山脈の事件で、ドラゴンと竜騎士のケットシーがピンチになっているから皆の力を貸して欲しい」
 騎士の格好をしたケットシー、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は集まった猟兵達にそんな風に切り出した。
「今回助けに行って欲しいのは竜神山脈に住む一頭のドラゴン、そして彼を助けに向かう一人のケットシーだ。猟書家の一人、魔女猫グリマルキンが白いドラゴンを拘束して大魔王の仮面を装着させて支配しようと企んでいる。すぐ助けに行ければいいんだけど……点在して暮らすドラゴンの習性と、場所が広すぎて直接転移するにも正確な場所が分からない。飛行も魔力を含んだ風で阻害されちゃうからどうにか走ったり道具を使って踏破しないといけないだろうね」
 真っ当に挑むなら難関だと、クーナは言う。
「けれど今回は竜騎士のケットシー、ノールって名前の子なんだけど、彼女がドラゴンの声……竜言語による助けを求める声を聞いているみたいで、その助けを得る事ができれば危険を最小限に抑えつつ一直線にドラゴンの元へと辿り着くことができるだろう。ちょっと性格が猪突猛進だけど……ドラゴンを助けたいって所を上手く伝える事ができれば多分大丈夫だと思う」
 ちなみに猟兵で竜騎士の人がいた場合は、その人も竜言語を聞き取る事もできるかもしれないね、と騎士猫は付け加える。
「正確な居場所は分からないけど、道中はかなりの難所である事自体は予知されている。崩れやすい足場だとか落石だとか、まだ雪が残っていて滑りやすくなっているだとか……どれも厄介だけど上手く対処してドラゴンの所に辿り着いて欲しい」
 そして猟書家についての説明にクーナの話は移る。
「魔女猫グリマルキンは生涯を魔術に捧げ、それで得た恐ろしい程の魔力で魔法を自在に操ってくる。空を飛びつつ魔力の矢を放ったり、疑似的な未来予知で攻撃を回避してきたり……あと、侵略蔵書だと思うけども鬼火を纏う魚の霊を無数に召喚してくるみたいだ。ただ、戦いになると大魔王の仮面への注意が逸れて支配が甘くなる。そこを狙ってドラゴンに呼びかけて支配への抵抗力を強めれば、魔女猫の戦闘に使える魔力が減って隙ができるかもしれない」
 そこまで説明したクーナは灯篭型のグリモアを取り出し火を灯す。
 頑張って、とクーナが言うと、灯篭から光が溢れ景色を光で満たし、そして光が消えた時には猟兵達の眼前に竜神山脈の険しき山の姿が広がっていた。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 割と本末転倒になっている気はしますが、それ程怒り狂っているのかもしれません。

※このシナリオは猟書家幹部シナリオで二章構成です。
 アルダワ世界の『竜神山脈』に現れた猟書家によるドラゴンの洗脳を阻止しつつ、猟書家を撃破するシナリオとなります。

 第一章は竜神山脈を踏破し猟書家に襲われているドラゴンの元へ向かう冒険になります。
 ドラゴンのいる場所までの道中は崩れやすい崖や狭い足場等の難所に溢れています。
 また、魔力を帯びた風が吹いているため迂闊に飛行すると落下してしまう危険もあります。
 竜騎士の少女ケットシー『ノール』は助けを求める竜言語が聞こえる為、協力を得る事ができれば危険が最も少ないルートやタイミングを教えて貰う事ができます。
 ただし性格が猪突猛進お嬢様タイプなので接し方を間違えると一人で突撃して勝手にすいすい進んでしまう可能性もあるのでご注意。

 第二章は幹部猟書家『魔女猫グリマルキン』との戦いになります。
 こちらは冒頭に状況説明を追加致しますのでそちらをご確認下さい。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス(全章共通)……竜騎士の助力を得る/ドラゴンを鼓舞する。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『竜神山脈を踏破せよ』

POW   :    火竜の如き力で踏破する/熱意を持って竜騎士に協力を求める

SPD   :    風竜の如き俊敏さで踏破する/巧みな言葉で竜騎士に協力させる

WIZ   :    賢竜の如き智慧で踏破する/竜騎士に協力することの利を説く

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と行動・POW選択
一応俺も竜騎士だしな。ドラゴンの危機は無視できねぇぜ

自分達もドラゴンを救いたいと、ノールに協力を要請する
お嬢様ってことだから、必要に応じて【コミュ力】【礼儀作法】も駆使
俺も多少は竜言語が分かるが、ノールほどじゃないだろうから
ぜひ導いて欲しいということも伝える

道中はノールの指示に従いつつ、【視力】で周囲の状況を【情報収集】し、
【地形の利用】で残雪が少ない場所を踏破していく
落石などに気づいた場合は【衝撃波】で【吹き飛ばし】たり、
ノールや樒を【かばう】よう行動する
また、自分でもドラゴンの声を聞き取るようにする

ドラゴンが猟書家の手に落ちる前に、急いで向かわねぇとな!


織部・樒
ザフェルさん(f10233)と行動
アドリブOK

確かにこれは険しい
取り敢えず、そのケットシーの竜騎士さんと合流する必要がありますね

ドラゴンには詳しくありませんから、基本ザフェルさんの補佐的に行動します
【失せ物探し】にて竜騎士の場所を大まかでいいので占えないでしょうか
また付近に動物や鳥がいるなら【動物と話す】で、期待出来なければ
【式神使い】にて付近を捜索しつつ情報収集
移動はUCで召喚した大神様にて
邂逅出来たらザフェルさんに交渉をお願いしつつ我々もドラゴンを助けたい旨を話します
足元は【地形耐性】【地形の利用】【空中浮遊】【クライミング】等で固め
必要なら【忍び足】【動物使い】等も駆使します



 険しい竜神山脈には、この夏に差し掛かった時期にも雪の残っている場所が存在している。
 吹き過ぎる風は魔力を帯び奇妙な唸りをあげていて、今はその中に奇妙な鳴き声のようなものが混じっている。
 その地の麓にある小屋の前に転移した猟兵が二人。
 一人は乳白色の髪と雪とはやや異なる白い肌の少年ヤドリガミの織部・樒(九鼎大呂・f10234)。
 もう一人は焼けたように濃い茶髪の色黒の竜騎士、ザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)で、二人は険しい山峰を見上げていた。
 確かに険しい、と山を見上げ樒は思う。
 この険しい山をガイドなしで、目的地すら分からぬ状態で進むのは困難だろう。
「んー……これが竜言語か? 途切れ途切れにしか聞き取れねえが」
 竜騎士であるザフェルは竜言語を聞き取ることはできるようだが、距離があるからかこの地の地形によるものなのかこの場所では具体的には分からないようだ。
 とりあえず、グリモア猟兵の言っていたケットシーの騎士のノールと合流する必要があるだろう。
 しかし彼女は既にこの場所を発ってしまったようで小屋を覗いてみても誰もおらず、足跡も途切れて見つからない。
 それならと、樒が修行で身に着けた陰陽術の出番。
 周囲に召喚した式神を放ち手掛かりを探らせながら占いを始めてみる。
 目的のものが曖昧だったから結果を出すのに難航していたところ、式神が山鼠を一匹連れ帰ってくる。
 小屋からパンの欠片を失敬して鼠に与え、ケットシーが通らなかったか尋ねてみれば、ついさっき向こうの方角へとかなりの速度で走っていったとの情報を得られる。
 それならすぐに追いかけねばならないだろう。樒がユーベルコードを起動し、白金の毛並みの美しい狼を召喚する。
「宜しくお願いしますね」
 軽く撫でてその背にザフェルと共に乗って、鼠の教えてくれた方角へと神使とされる美しき狼は一気に駆け出す。
 あっという間に風景が後方へと飛んでいく中、雪の場所に新しい小さな足跡が点々と残っている事にザフェルは気づき、そして小さな影を進路上に捉えた。
『ドラゴン様を助けにまだまだ進みますわよー!』
 走っているのは白きケットシーの竜騎士、きっと彼女が目的のノールだと、樒とザフェルは彼女の前へと回り込む。
『オオカミ!? というか貴方達なんなんですの!』
 突如現れた二人にケットシーの竜騎士は警戒心を露にする。
 ザフェルに比べやや小柄な樒でもケットシーの少女には見上げるような身長差。そんな二人が樒の倍ある金狼に乗って現れたのだ。
 こんな険しい場所でそんな相手と遭遇したなら警戒するのも無理はないだろう。
 そんな警戒する彼女に、ザフェルと樒は神使とされる金狼から降りて丁寧に礼をする。
「先に名乗らせていただきましょう。俺はザフェル・エジェデルハという者です」
「私は織部・樒です。どうぞお見知りおきを」
『あら! ……これはご丁寧に。私の名はノールと申します』
 礼儀正しく挨拶をしてくる二人にノールは驚いたような表情をしつつ、育ちのいいお嬢様らしい彼女は礼儀正しく挨拶を返す。
『そちらは仔竜……ですかにゃ? ということは貴方も竜騎士? このドラゴン様の声を聞いたんですかにゃ?』
 ノールの視線の先にはザフェルの周りを飛び回る紅き鱗の仔竜イルディリム、その存在でザフェルがノールと同類だという事を認識したようだ。
「俺も竜騎士でこの声は聞こえる。けれどそこまではっきりと聞き取れていないんだ」
 残念そうに首を振るザフェル、山に近づき途切れ途切れの言葉も少し聞こえ易くなってきてはいるがまだ聞き取れない部分の方が大半だ。
 だがこの山脈に悲痛に響く竜言語を竜騎士たるザフェルは無視できない。
「だから、この竜の言葉をはっきり聞き取れるノールの力を貸してほしい」
 俺達も、我々もドラゴンを救いたいんだ、とザフェルと樒は真っ直ぐにケットシーを見つめて伝えた。
『……信用させて頂きますにゃ!』
 二人の真摯な言葉にノールはこくりと頷き手を差し出し、二人の猟兵はその手を取った。

 そして二人の猟兵とケットシーの竜騎士、そして金色の狼は山を往く。
 神使の狼は三人を乗せつつもこの険しい山道も真下に見える深い谷底も苦にせず、華麗に地を蹴り適切な足場を選び進んでいく。
『むっ! そのまま進むと危険だって、ドラゴン様が仰ってますにゃ!』
「分かりました。それでは此方へ」
 ノールの助言に樒が指示すれば、金狼は方向転換して別の進路の足場へと着地する。
 するとその衝撃で元々進もうとしていた場所の足場がばらばらと崩れ、岩が谷底へと落ちていった。 
 ナビゲートがなければ巻き込まれていたかもしれないと樒が思っていると、細く上に通じる雪の残る道と比較的大き目な足場の続く道の分岐に差し掛かる。
『……ちょっとストップにゃ! このままの道を進むと突風で岩が崩れてくるから、まずそっちの上に通じる細い道の先の岩を落としてから戻って進んだ方がいいとの事ですにゃ』
「了解! なら俺がちょっくら行ってくる」
 ザフェルが金狼からひょいと飛び降り、雪の少ない足場を選びつつ上の方へ軽やかに跳ねていく。
 元の身体能力に優れた視力で把握した地形情報も合わせ、狭く雪残る道も危なげなく進んでいったザフェルは、やがて不安定な大岩を視界に捉える。
「あの岩を落とせば……ん? 後ろが危険?」
 その時、強風に紛れた竜言語での警告がザフェルの耳に届く。
 振り返り上方を見上げれば、大岩が山頂の方から樒やノール達目掛け転がり落ちてきていた。
 樒なら今からでも対応できるだろうが、今この位置にいるザフェルの方が対処も容易。彼はその緑瞳で狙いを定め、特徴的な形状の両刃の戦斧を構えて力強く薙げば、衝撃波が大岩へと放たれ弾き飛ばす事に成功。
 大岩は樒達から離れた場所へと軌道を変えて、そして底の見えない谷底へと落下していった。
 それを確認したザフェルはほっと一息つきつつ、元来た目的の大岩を衝撃波で弾き落とす。
 そして彼が樒達の元へと戻れば、きらきら大きな目を輝かせたノールが感謝を述べて。
「そんじゃドラゴンが猟書家の手に落ちる前に、急いで向かわねぇとな!」
「ええ、早く助けに行きましょうか」
 再びザフェルが金狼に相乗りし、樒は金狼の頭を撫でて先へと促す。
 そして猟兵と竜騎士乗せた金狼は険しき山脈を速やかに進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

果無駅・駅長代理(サポート)
――アローン
僕は、はかなし駅の駅長代理。助けが必要な時は、いつでも呼んで

呼子笛をひと鳴らし。喚び出すのは、果無駅を覆う霧――まるで白い闇のよう
これなら、敵の目を眩ませる事が出来る筈だ

具合は大丈夫かな
帰り路を標す、カンテラの燈を掲げよう。――コレは、君の命を照らす燈
痛みも迷いも苦しみも、全部とかしてしまう灯りだよ
無花果の実も食べるかい?勇気と力を与えてくれるから――

荒事は得意じゃないけれど
いざとなったら幽霊列車の残骸を纏い、僕が君たちの盾になろう

自分の意志を信じて、まっすぐに進んで行けば――きっと、正しい終末に辿り着ける
君の旅路が、素晴らしいものになる事を祈るよ

――アローン(白い闇に紛れて去る)



 順調に山脈を進んでいた妖精猫と狼と猟兵。聞こえてくるドラゴンの言葉からもうすぐ目的の場所へと辿り着けるだろう。
 けれど、そこに酷く運の悪い偶然が起こる。
 雪の深い足場から足場へと跳ねた時に強い突風が彼らの体を強かに打ち付けて、咄嗟反応した猟兵二人は金の毛並みを掴んで難を逃れたけれども、
『にゃー!』
 小柄で軽いノールは反応する前に吹き飛ばされ、更にはぶわりと谷底から吹き上げる風に助ける間もなくさらわれてしまう。

 そして、風に巻かれたノールは運よく積もり積もった雪へと落下する。
 小柄で軽いから雪に埋もれる事もなく、そして周囲を見渡したけれどどうやら先の猟兵達とははぐれてしまったようだ。
 向こうは向こうで声の聞こえる人がいたからきっと大丈夫、けれどノール自身は目的地からは離れてしまったようだ。
 しかしそれで諦めるような彼女ではない。気を取り直して再度ドラゴンの棲み処を目指そうとノールが走りだそうとして。
 その時崖の岩肌に反響するように高い呼子笛の音が響く。
 そして雪にもよく似た白い霧が闇のように湧き出てくる。
 白い闇の向こう、混じらぬ色の一匹の灰色の猫が銀の呼子笛を手にしたままにさくさくと雪を踏みしめやってきた。
 子猫のような顔だけど背はケットシーのノールが見上げる位、服装はまるで駅員のような彼は果無駅・駅長代理(アローン・f24903)。
「……具合は大丈夫かな」
『ええ、大丈夫ですわ!』
「ならよかった。無花果の実も食べるかい?」
 そんな言葉を交わして駅長代理は無花果を取り出してノールに手渡す。
 お礼の言葉を述べて、ノールが一口齧ってみればひんやりとした無花果の甘味が山道に少々疲れた体に優しく染み渡っていく。
 緊張も僅かに緩んだ彼女の表情をみて、駅長代理はカンテラを掲げる。
 不思議と安心するようなその輝きが示すのは彼女の往くべき場所。
 ノールの耳に届く竜の声も、そちらから聞こえてきている。
 光に示されるままに共に歩めば、段々と霧が薄れて進むべき道がはっきりとしてくる。
「いってらっしゃい。君の旅路が、素晴らしいものになる事を祈るよ」
 ――アローン。
 そんな風に一声鳴いて、駅長代理は白い闇に紛れるように去っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

惑草・挧々槞
猫のお嬢様ってことらしいし、まずはきちんとご挨拶。カーテシー(貴婦人の礼)とかしときましょう。猫のよしみで救出に助力させて頂くわ。

それで、山脈の踏破、と。
《輪転天輪》で地を駆けていきましょうか。少しくらいなら飛べるけれど、高所飛行すると魔力風の影響を受けそう。飛ぶとしても低空に留めておく方が良さそうね。

ガス溜まりや魔力溜まりがあったりすると危ないから、少なくとも私よりは地理感のある(それに加えて竜言語が聞こえる)ノールさんに探知して貰ったりして気をつけて行きたい所。
ケットシーさん一人くらいなら私でもおんぶ出来ると思うし、彼女が嫌じゃ無ければ背に捕まってて貰おうかしら。人力車ならぬ猫車、なんて。



 そして白い霧を抜けて、ドラゴンの棲み処を目指すノールは不安定な細い道の前に立ち竦んでいた。
 明らかに足場は脆く細い、そして少しでも高くに飛べば一気に体を持っていかれそうな程に風も強い。
 竜の声もだいぶ近くなってきていて、進むべき道ははっきりしているけれど、この道を走り抜けるにはちょっとばかり勢いが足りないような気もしてくる。
 うんうん唸って悩むノール、そんな彼女の後方から一人の猟兵がやってくる。
 鮮やかなピンクの服と大きなリボン、そして白猫の耳の目立つ彼女は惑草・挧々槞(浮萍・f30734)。東方妖怪である彼女はひとつ咳払いをして声をかける。
 びくりと跳ねるケットシー。けれど挧々槞の仕草はスカートの裾を摘み片足を軽く下げ、背筋を伸ばしたまま礼をするカーテシーで、お嬢様のノールもご丁寧にと同じ仕草で挨拶を返す。
『……貴女も猟兵さんですかにゃ?』
 先に出会った猟兵達、その経験からノールが問うて挧々槞はこくりと頷く。
 猫のよしみで救出に助力させて貰うと、挧々槞のそのの一言で僅かに残っていた警戒心も消え失せて、ここでどう進もうか迷っているのだと挧々槞に悩みを打ち明ける。
 ふむ、と口元に手を当て思考する挧々槞。だけど考えてもここは突っ切る以外の方法はなさそうだ。
「さて。真面目に働くとしましょうか」
 そう言って挧々槞がユーベルコードを起動すれば、彼女の足元に連なった車輪が出現して回転を始める。
「一気に行きましょうか。おんぶしましょう」
 そして挧々槞がノールの前で背を向けて屈み、ノールはその背にぴょんと飛び乗ってしがみつく。
「……危ない所がありましたら、教えてくださいね」
 燃える車輪が地面を噛んで、一気に加速する。
 足場が崩れるよりも早く、マドウクシャの妖怪娘とケットシーは恐ろしい速度で道を進んでいく。
 人力車ならぬ猫車、速度は段違いに速いけどと挧々槞が冗談めかして言って、ノールも違いないにゃと風圧に耐えながらテンション高く返す。
 途中、細く分岐した道があったけれども、
『あっそこ左はまずいにゃー!』
 ノールの指示通り左を避けて右の道を挧々槞が往けば、左の道の方で魔力が突き上げるように吹きあがっていく光景が二人の目に映る。
 魔力溜まりの間欠泉のようなものなのだろうと考える挧々槞の耳に、もう少しでドラゴン様の所に到着できそうですわとノールが囁く。
 徐々に挧々槞の耳にも咆哮が聞こえ始め、それが近づいてくるのが分かる。
 あまり時間もないかもしれないと、更に挧々槞は速度を上げていく。
 そして二人は危険な道を乗り越えて、ドラゴンの棲み処へと辿り着いたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『魔女猫グリマルキン』

POW   :    不完全なる終焉視
【疑似的な『魔女』の予知能力により】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    遺失魔術『フライハイ』
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【魔女より賜った大切な杖】から【無数の魔力の矢】を放つ。
WIZ   :    魚霊群の回遊
【空を舞う無数の鬼火纏う魚】の霊を召喚する。これは【鬼火の勢いを増した突撃】や【鬼火の延焼による精神汚染】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠クーナ・セラフィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●猟書家と仮面に憑かれし白竜
 そして猟兵達と竜騎士のケットシーは白き竜の洞の入り口へと辿り着く。
 竜の住処だからか周囲は広く、これまでの道中のように不安定な足場だったりはしないようだ。
『ドラゴン様! 今お助けしますわ!』
 ケットシーのノールは背負っていた東方妖怪の背から飛び降りると猛ダッシュして飛び込んでいって、
『にゃー! ドラゴン様がー!』
 すぐさまダッシュで戻ってきた。
『うるさい奴だにゃ……なんだ、猟兵か』
 彼女に遅れて洞から歩き出てきたのは、ノールが道中で出会った駅長代理の愉快な仲間にも似た黒に近い灰の毛並みのケットシー。
 魔女の帽子と杖を身に付けた彼女こそがこの地のドラゴンを苛む猟書家『魔女猫グリマルキン』だ。
 そしてグリマルキンに続き、猟兵達が見上げるような大きさの白き竜がのっそりとその巨体を外気に晒すと、空に向けて咆哮を上げる。
 頭部に装着された大魔王の仮面に精神を支配されているのか、どこか動作は人形のようにぎこちない。
『ドラゴン様! 目を覚ましてくださいにゃ!』
 ノールの叫びにグウゥと低く唸り何かを振り払うように首を振る白き竜。
『……効きが悪い不良品かにゃ。もっと魔力を注がないと……本格的に支配するのはまた後にするとして、まずはお前達を排除してやるかにゃ』
 そしてグリマルキンは魔女の帽子をひっくり返し、その中から一冊の書物を取り出しつつ不意討ちを仕掛けてきたノールの槍を予見していたかのように躱して再び帽子を被り直す。
 更に白竜が周囲の温度を奪い、その身に氷を鎧のように纏うと猟兵達に氷の尾を叩き付けんとする。
 その一撃を金狼と二人の猟兵が躱し距離を取って周囲の様子を再確認。この付近の安定した地盤なら多少派手に暴れても問題なさそうだ。
 だが巨体の竜が自在に動けるだけの空間もあって、地形を利用して動きを封じるのは難しいだろう。
 しかし、先程ノールの言葉に反応したのは間違いない。
 上手く竜を応援、鼓舞できれば仮面の支配力に抵抗し、グリマルキンに余計に魔力を使わせて隙を作る事も不可能ではないだろう。
 支配されつつある竜の前で僅かに不安そうに突撃槍を構えるノール、彼女の力ももしかすれば借りる事もできるかもしれない。
 とにかく、この魔女猫の野望を食い止める。
 猟兵達は各々戦闘態勢を取り、白竜を解放する為の戦いが始まった。
織部・樒
引き続きザフェルさん(f10233)と行動
アドリブ歓迎

ノールさん、ここが正念場です
先ずは竜に正気を取り戻していただきましょう

念の為事前に【式神使い】にてザフェルさん、ノールさんの補助・護衛をお願いします
基本は相手の動きを見つつ、UCを展開
【高速詠唱】【早業】を駆使して敵の発動に合わせるように
その間の防御はザフェルさんに一任しますが、自分で防げそうであれば錫杖で【見切り】、
【ジャストガード】、【武器受け】、【オーラ防御】を使用します
余裕があれば【マヒ攻撃】や【呪詛】を込めた攻撃も行いましょう
ノールさんの呼び掛けが実を結べば畳み掛けるように攻撃を行います
(その間も敵UCには此方のUCで対抗)


ザフェル・エジェデルハ
引き続き、樒(f10234)と共闘
見た目が可愛いくてもやっぱ猟書家か やり口が汚ぇな

樒が術を展開するまでは彼とノールの壁役になり、
【オーラ防御】や【武器受け】で敵攻撃から【かばう】
また、ノールには白竜へ語り続けるよう頼む
声は届いているみたいだからな しっかり語り掛け、魔女に操られないようしてくれ
敵意を向けられたら不本意だが攻撃することになっちまう

樒の術展開後、防御は樒の術の力を借り、攻撃することに集中
【鬼火纏う魚】とグリマルキンへ黒竜を向かわせる
敵との距離が詰まることがあれば、【怪力】による武器攻撃も同時に行い、
敵の行動を阻害する

人形遊びがしたいなら骸の海でやってくれ



 魔女猫が魔導書を捲る中、樒は動揺するノールを落ち着かせるように声をかける。
「ノールさん、ここが正念場です。先ずは竜に正気を取り戻していただきましょう」
 周囲に式神を展開する樒の言葉に、ノールの不安げな雰囲気は和らぐ。
 代わりに竜を救わんとする意志をその瞳に再び燃え上がらせ、槍を構えた。
(「見た目が可愛いくてもやっぱ猟書家か やり口が汚ぇな」)
 内心毒づくザフェルを他所に、魔女猫が魔導書を捲り詠唱すればその周囲に骨の魚が無数に出現し、火が灯り揺らめく。
 鬼火――青白いそれを灯した魚の群は海の中にいるかのように空を泳ぐと、群れを成してノールと猟兵に襲い掛かる。
 その魚群をザフェルの長柄の戦斧が振り払い、明後日の方向へと弾き飛ばす。
 鬼火の延焼もオーラ纏う斧には及ばず、だがその数で強引に守りの隙間を突破せんと魚群は勢いを増していく。
 敵の数は膨大で小型。さしものザフェルでもその全てを阻むことはできず一匹を通してしまう。
 そしてそれがノールに体当たりし鬼火を延焼させんとした時、
「そうはさせませんよ」
 樒の式神が魚を阻み動きを鈍らせ、その動きを見切った樒が錫杖で叩き伏せ消滅させる。
「ノールはそのまま語り掛けてくれ! 声は届いているみたいだから、あの魔女に完全に操られないようにな!」
 もしも白竜が本格的に操られて敵意をこちらに向けるような事になれば――、
(「その時は不本意だが攻撃しなければならねぇが」)
 最悪の想定もしながら、後方の樒とノールを守るようにザフェルは長尺の武器を器用に操り式神とのコンビネーションで一匹たりとも攻撃を通させない。
『ええい面倒にゃ! 追加で出てこいにゃ!』
 苛立ったようにグリマルキンが魔導書を捲り鬼火灯す骨魚の群を再び召喚する。
「――青龍、白虎、朱雀、玄武、勾陳、帝台、文王、三台、玉女」
 しかしそのタイミングを見切っていた樒が応じる形で高速で詠唱しユーベルコードを起動、するとグリマルキンの正面に破邪の方による結界の壁が出現し、魚群の大半を相殺する。
 一度放たれたそれを見ていた樒が合わせた九字真言のタイミングは完璧、それにより生じたグリマルキンの隙を見逃さずにザフェルがユーべルコードを起動。
「我が黒竜よ、捉えし影を曝せ」
 これまで猟書家から感じ取っていた悪意、それに対して感じた敵意や不快に応えるように黒き幻影の竜が94体出現、そしてそれらを引き連れザフェルが魔女猫へと切り込んでいく。
 黒き幻の竜が僅かに残った鬼火灯す骨魚に食らいつき爪を突き立て阻み、その間に大半の幻影黒竜とザフェルが魔女猫へと距離を詰める。
『ええい、うっとおしいにゃ!』
 グリマルキンが杖でザフェルを示せば、白き竜が咆哮をあげて尾を持ち上げザフェルへ叩きつけようとする。
 その間にもグリマルキンはザフェルとの距離を離そうと魔法を構築していき、
『ドラゴンさまー! もうすぐ解放するから頑張ってにゃー!』
 だが、そんなノールの声に白竜の動きがびくんと止まる。そしてグリマルキンの背に式神が呪詛を乗せた一撃を加え詠唱を妨害。
 それだけの時間があれば、ザフェルには十分。
「人形遊びなら、骸の海で……もっと小さいのでやるんだな!!
 両刃の戦斧をその全力で叩きつけるザフェル、その衝撃にグリマルキンの矮躯は派手に弾き飛ばされたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー(サポート)
※絡みアドリブOK
※感情が尻尾や耳によく表れる
※人見知りだが【優しい】性格で育ちのいいお坊ちゃま
※戦闘時は魔術器官と電脳空間の演算力を用いて知略で戦う
※「ぼく」「~なの」「~さん

体のあちこちにつけた魔道具の回路を起動し(【高速詠唱】)、
狼の嗅覚聴覚視覚(【聞き耳】【暗視】)を駆使した【情報収集】と、電脳空間からの【ハッキング】で敵戦力を分析(【学習力】)

適切な魔術(UC)を組み合わせたり【乱れ撃ち】する
防御は【結界術】で作る【オーラ防御】壁や、
小柄な体系と狼の機動力(【ダッシュ】【残像】)を使う

仲間を守り、敵には【勇気】をもって容赦ない作戦・攻撃を行う(【全力魔法】)



 そして魔女猫が吹き飛ばされた所に、一人の人狼の少年が魔術を構築しつつ距離を詰めていく。
 咄嗟に猟書家は杖を向け反撃の魔術を放たんとするが、形を成す前に霧散する。
 ――ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)という名の彼が得意とするのは電脳空間の演算力を用いた分析力。
 先の二人が戦っている間にこの魔女猫の魔術の癖を優れた狼の感覚で分析し、魔術陣を通し割り込みをかけたのだ。
 そして魔道具に魔力を通し誘導する魔力弾の群をロランがグリマルキンに放つ。
 しかし、
『舐めるんじゃないにゃ!』
 グリマルキンは慌てずにユーベルコードを起動してロランの誘導魔力弾の全てをまるで予かじめ見ていたかのように回避する。
 疑似的な魔女の未来視能力――それを発動した魔女猫は大魔王の仮面を通した白竜への支配力を強めロランにその竜の尾を叩きつけさせる。
 風切り音を狼の耳で捉えたロランはその一撃を躱しつつ、
「おねえちゃん、力を借りるの」
 対抗する為のユーベルコードを起動。
「……血よ響け。そして夜に輝き、星を駆ける契約を。我が身に降りて道を示せ」
 すると少年の体は成人の人狼吸血鬼のものへと変化。得た飛翔能力を使ってやわらかな月光を放ちながら空へと飛び立つ。
 地上から彼を撃ち落とさんとグリマルキンの杖から精密な魔力弾が放たれる。
 未来を見たかのように移動先を的確に狙ってくるが、ロランの人狼としての情報処理能力と移動能力はそれら攻撃を相殺、或いは回避し一撃も受ける事はなくやり過ごす。
 白竜もブレスで撃ち落そうと大きく息を吸ったが、少女猫の竜騎士の呼びかけで抵抗し明後日の方向に逸らしてしまう。
 そしてその内、グリマルキンの魔術の威力が弱まってくる。
 それもそのはず、ロランの放つ月光は受けると能力の弱体化を引き起こしてしまう効力を持つもので、長時間浴びればさしものグリマルキンもその影響を無視しきれなくなる。
 頃合いを見計らいロランがグリマルキンへと急降下、反撃の水の魔術弾をギリギリで躱しながら、刺突剣と成した破邪結界で魔女猫に鋭い一撃を加えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

竜胆・樹月(サポート)
「気を引き締めていかないとね」
力不足は承知でも、できることをがんばりたいんだ

ユーベルコードは最良のタイミングを見極めて使用する
敵の小さな隙を見つけたらチャンスに変えて、力と速さを最大限に生かした一撃を見舞わせる

神化衣(水色の羽織)を取って下級神の竜に変え、それに騎乗して戦う
リーチが長い薙刀(腰布を変化させた槍)で、敵を斬り払う
竜にはブレス攻撃(水属性)で戦ってもらう

敵とは適度な距離を取る
敵からの攻撃は軽い身のこなしでかわすか、周辺地形を利用して避ける
本体以外の敵がいれば優先順位をつける

仲間とは協力し合い、自分勝手な行動は取らない

ボクの竜神としての本当の強さを見せるよ
そして、あなたを救いたい



 人狼吸血鬼の一閃が魔女猫の灰の毛並みを斬り裂き血が周囲に散る。
 しかし猟書家は爆発の魔法を行使、至近距離で起爆し自身の身体をその余波で上空へと打ち上げる。
『……遺失魔術『フライハイ』!』
 その魔術は使用者に飛翔能力を与えるもの、くるりと空中で反転し飛翔を開始すると、地上の猟兵達に杖から魔力の矢を雨霰のように降り注がせる。
 高速で飛翔する魔女猫を地上から捕らえるのは困難だろう。
 ――地上から迎え撃つのであれば。「気を引き締めていかないとね」
 水の色の竜に騎乗した一人の青年が空のグリマルキンへと向かっていく。
 下級神である竜は彼、竜胆・樹月(竜神の剣豪・f33290)の神化衣が神威を受け変じたもの。
 霊力を通し薙刀に変えた腰布を振るい魔女猫を斬り裂こうとするが、変幻自在に飛翔する魔女猫はそれを容易く回避する。
 騎乗する竜が重ね水のブレスで支援、けれどそれは地上から放たれた白竜の高熱のブレスに打ち消され莫大な水蒸気が発生。
 視界が悪くなった中、樹月は冷静に竜神である自分ができる事を考え、薙刀から竜刀に持ち換える。
 力不足は承知、だが地上の白竜とケットシーの竜騎士の少女を救う為に彼は全力を尽くす事を厭わない。
 そこに、視界の悪さを利用して魔女猫が急襲、突撃しながら彼女の杖から無数の魔力矢が竜の上の樹月を狙う。
「――そんな間合いで守り切れるとでも……?」
 しかしそれは樹月の予測通りの攻撃、彼は竜から高く跳ねて宙返りし矢の群れを回避しつつ、突っ込んでくる魔女猫に目にも止まらぬ速度で四度斬りつける。
 電流を帯びたその刃が二度魔女猫を斬りつけた所で距離を離され二撃が空を切る。
 四撃全てを刻み付けられれば致命となるユーベルコードであったが、間合いから逃れられては仕方がない。
 竜が旋回し樹月の下へとするりと体を滑り込ませ樹月は華麗に着地を決めて、そして強引に逃れようとした猟書家は制御を失い地上に墜落する。
 しかしまだ立ち上がっている。だがあと少しで打倒できることは疑いない。
 少しでも支援を行う為に、樹月は高度を落とし次の行動に備えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

惑草・挧々槞
秘密を明かす時が来たようね──実は私のご先祖様にはドラゴンが居て、その血を継ぐ私は竜言語を扱うことが出来るのよ!(ばばーん)
「「な、なんだってー!?」」

という感じで。
私の《絶対彼女》は、任意の対象に所謂〝後付設定〟を生やすという効果のUC。
あくまでも一時的に、ね。それとこの驚いてる奴ら(モブ魍魎)が媒介になっているから、実は此奴らが全滅すると効果が消えちゃうのよ。
ただまあ、初見でそれに気づけるかって話。

竜言語を駆使してドラゴンさんを励ましつつ、会話内容を悟られぬようノールさんとも竜言語で話して連携攻撃するわ。
もし敵も竜言語が解るなら……そうね、実はテレパシストだったって設定でも生やそうかしら?



 制御を失い地に落とされた猟書家は既に満身創痍の様子、斬撃に刻まれ毛並みのあちこちが朱に塗れている。
 しかし瞳から憎悪は失われていない。何としてもこの窮地を乗り切らんと、帽子から再び魔導書を取り出し周囲に鬼火纏う骨魚の群を出現させる。
 更に残りの魔力をありったけ注いだのか、白竜の頭部の仮面が妖しく輝きその支配力を強める。
「もうちょっとよ! ノールさん!」
 だが、ここまでノールを空からの魔力矢や白竜の攻撃の余波から守っていた猟兵の一人である惑草・挧々槞(浮萍・f30734)は不安げな猫の竜騎士を励ます。
 ここまで来たのだ。あの魔女猫グリマルキンを撃破し、そしてドラゴン様を無事に救出する。その為の最後の一手の為に挧々槞が前に出る。
「……秘密を明かす時が来たようね」
 背の低さから下から睨め上げる猟書家に挧々槞は自信たっぷりに告げる。
「──実は私のご先祖様にはドラゴンが居て、その血を継ぐ私は竜言語を扱うことが出来るのよ!」
『……はっ?』
 魔女猫の口から純粋な疑問の声が漏れ、ノールもえっと驚いた様子。
 そもそも道中の案内の時も竜の声を聞き取っているようには微塵も見えていなかったのだから。
『『『『『な、なんだってー!?』』』』』
『いや誰なんだにゃお前達!?』
 挧々槞の突然の告白、そして突如彼女の背後に出現して驚きの声を上げる謎の人型達に魔女猫は思わずツッコミを入れてしまう。
 そもそもこんな辺境の山奥に普通の人間がいるはずもなし。当然この人間達はユーベルコードによって召喚された存在、モブ魍魎である。
「さあ、存分に崇め奉りなさい!」
『流石挧々槞様!』
 モブ魍魎である彼らが心底から挧々槞自身を崇める事で、挧々槞の突拍子もない都合のいい設定がひとときの真実となる。
 つまり、仮面の魔力に抵抗を続けるドラゴンの言葉を挧々槞でも理解できるようになる。
『……モウ……意識ガ……助ケ……』
 救援を求める切なる声、あまり時間はなさそうだ。
「大丈夫よ! 私が来たんだから!」
『お前が来ても私の願いは止められるものか!』
 竜に竜言語で呼びかける挧々槞に猟書家が叫ぶ。そして挧々槞は驚きの表情のままのノールとアイコンタクトし、猟書家へと一気に飛び込んでいく。
 鬼火を灯した魚の群は向かってくる挧々槞に集中、もしもモブ魍魎達に向かい全てを消されてしまえば都合のいい設定も消え失せてしまうからそれ自体は狙い通り。
 火車としての反応速度で鬼火の群を躱しながら距離を詰めていくが猟書家も必死、周囲の守りを固め接近を許さない。
『何をしている! さっさとあれを叩き潰して!』
 魔女猫が苛立ちと共に白竜への支配を強め命令、白竜が咆哮と共に体を回転させて尾を高く振り上げた。
 けれど尾は振り下ろされなかった。代わりに空に小さな影が魔女猫の真上へと打ち上げられる。
 挧々槞は魔女猫の注意を惹きつけている間、ノールにテレパシー――実はテレパシストだったという唐突な後付け設定を生やして声を使わずノールと白竜への伝達を行ったのだ。
 ノールには竜の力を借りて奇襲を、白竜には魔女猫の命令のタイミングで尾を振り上げて、との要請を。
 その作戦は見事成功、白竜の尾に飛び乗りそして打ち上げられたノールが骨魚の壁を飛び越え魔女猫の頭上からその突撃槍を構え突っ込んだ。
 その一撃を魔女猫は咄嗟に回避するが白竜が思う様に従わなかったこと、そして奇襲に完全に挧々槞から意識が逸れてしまい隙が生じる。
 火車の全速で挧々槞が飛び込み、そして可愛らしくリデコレートされた槌を魔女猫の胴に全力で叩きつけた。
 その一撃と同時に白竜を支配していた仮面に罅が入り、ばらばらに砕ける。破片が地面に落ち切るのと同時、猟書家もその体を消失させたのであった。

 そして猟書家の撃破が成って、猟兵達は休息をとる。
 猟書家がいなくなったこの地はとても静かで、金狼を連れた二人の青年は山脈の景色を眺めつつ周囲の警戒を行っていた。
 そんな彼らに白竜ががあ、と鳴く。挧々槞の一時の都合のいい設定はすっかり消え失せ意味も分からなくなってしまっているけれども、
『有難う、皆さん……ってドラゴンさまが言ってますにゃ』
 ノールがそう翻訳してくれる。とはいえ穏やかな表情と鳴き声の調子から大体分かっていたのだけれども。
『私からも、ありがとうですにゃ!』
 そんな風にノールは笑顔でお礼を言う。
 帰りは白竜が乗せていってくれる、そんな申し出もありもう少しだけこの山脈での時間は続く者もいるかもしれない。
 ともあれ。こうして猟書家の野望の一つは潰え、白竜と猫の竜騎士の未来は猟兵達に護られたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月18日
宿敵 『魔女猫グリマルキン』 を撃破!


挿絵イラスト