大祓百鬼夜行㉓〜読書狂ヘヴン
●ワイちゃん参上!
ずいぶん毛色の違う親分さんが出て来たな、とか、キャラ濃いなぁあ、とか思った人もいないではないかもしれないが(迂遠な肯定)、例えそうであっても新し親分『バズリトレンディ』はやっぱり親分だ。
「全力のワイちゃんを倒せれば、大祓骸魂の撃破に必要な『虞知らず』を習得できちまうんだ!」
ツッコミどころ満載なあれこれは右か左においておいて、新し親分も他の親分たちと同様に、自らの犠牲も顧みずに大祓百鬼夜行へ身を投じている。
故に、新し親分も撃破せねばならぬ。
新し親分がいるのは、その名の通りバズりまくりで(いにしえの)トレンディ感満載な、あらゆる流行の最終到達地点に相応しい超煌びやかな「バズリトレンディ御殿」。細かい事は考えるな感じるんだ、なそんな戦場(ばしょ)。
「さあこい、HPAH(ハンマーパイナッポー&アッポーハンマー)!」
待ち受けられてるんだから、突っ込む(notツッコミ)しかないよね。
●戦い方も独特です!
かつて『バブル』と呼ばれた時代があった。
ミラーボールがキラキラしいディスコでは、イケイケな女子たちが羽扇を手にお立ち台に群がっていたし。終電までは時間があるのに、一万円札をひらひらさせてタクシーを止めるサラリーマンだっていた時代だ。
特大肩パッドが多用され、街には逆三角形が溢れていた。夏と冬だけじゃなく、春の決算賞与とかでボーナスだって大盤振る舞い――などとつらつら解説していると、胸がすんっとするので、ひとまず雰囲気ふわっとで留めるとして。
とにもかくにもバブルというのは、お金が湯水のように使われていた(使えていた)時代。
「だから新し親分を撃退するには、金の消費すれば良いそうだ」
虚空蔵・クジャク(快緂慈・f22536)、藪から棒に真顔で言う。
「ああ、身銭を切る必要はないよ。何せバズリトレンディ御殿では、バブル期を彷彿するかのように金が噴出しているんだ」
クジャク、引き続き真顔。
「皆にはこの金で買えるものをイメージして貰いたい。そうすると、溢れる金と引き換えに、イメージしたものが現れ、その消費額に応じて皆がパワーアップするという仕組みだ」
クジャク、やっぱり真顔。
「金は使えば使う程、良い。新し親分を上回るゴージャス度で金を使って使って使って使いまくって、バブルパワーで圧倒することこそ、この戦場での勝利を意味するからな……」
――ぐすん。
クジャクの語尾に聞えたすすり泣きは、気のせいじゃない。
お金を無尽蔵に使っていいとか、むしろ使えば使うほど良いとか、どんな羨ま戦場。
我慢なんて必要ない。贅沢万歳。こんな状況、なかなかないよ。いや、ほんと。
「イメージする品物は何でもいいが、私……ふと思ったんだ。欲しいだけ本を買ってしまうとか、とんでもなくバブリーなんじゃないかと」
ブランド服を「ここからここまで全部くださらない?」するみたいに、棚どころか書店まるごと買い上げる勢いで本を買えたらどんなにいいだろう。
一冊一冊は比較的安価なコミックや文庫類だって、シリーズ全巻大人買いしようとすれば、相応のお値段になるし、作者買いとかしても同様だ。
もはや芸術の域なんじゃ? っていう装丁が凝った児童書も、かなりお高い。
学術書関連はそもそも単価が高いし、資料にできそうな大型本は言わずもがな。プレミアがついた古書なんてとんでもない。
あと、一応『薄い本』も本の範疇に含まれる。厚くて薄い本とか、あっと言う間に万券出動案件だよネ。
そんな、こんなで。
「是非、心行くまで、欲しい本をイメージして、手にする喜びを堪能して欲しい。遠慮は微塵もいらない」
ずびびびび。
羨ましさに鼻を啜りつつ、クジャクは猟兵たちをバズリトレンディ御殿へ送り出す。
七凪臣
お世話になります、七凪です。
大祓百鬼夜行、新し親分シナリオ、お届けします。
●プレイング受付期間
OP公開時点より。
受付締切はタグにてお報せいたします。
※導入部追記はありません。
●シナリオ傾向
ネタと勢い。煩悩炸裂わっしょい。
(公序良俗に触れるもの・版権に抵触するものは、マスタリングが入ります)
●プレイングボーナス
お金で買えそうなものを買いまくりパワーアップする(買ったもので攻撃するのもOK)。
●採用人数・作業日関連
完結を優先させますので、1日or2日で書ききれる範囲内での採用になります。
(1日で可能な作業人数は4名様前後です)
●他
採用は先着順ではありません。
リプレイ文字数はお一人様あたり600~800字程度を想定。
ご縁頂けましたら、幸いです。
宜しくお願い申し上げます。
第1章 ボス戦
『新し親分バズリトレンディ・トレンディ形態』
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POW : 竹やぶで拾ってきたわ!
【多額の現金】を籠めた【大きなカバン】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【戦闘意欲】のみを攻撃する。
SPD : 何があろうと戦い続けんと!
【栄養ドリンク】を給仕している間、戦場にいる栄養ドリンクを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : ワイちゃんと踊ろうか!
【召喚したミラーボールから光】を降らせる事で、戦場全体が【1990年代前半のディスコ】と同じ環境に変化する。[1990年代前半のディスコ]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
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神宮時・蒼
……なんだか、目が、ちかちか、する、御殿、ですね
…散財、するのは、いい、ですが、現実に、引き戻された、時が、ちょっと、怖い、ですね
…何とも、世知辛い、世の中に、なった、もの、です……
【WIZ】
欲しい本…
ぱっと思いつくのは絶版になったものでしょうか
専門書って、確か、高い、ですよね
こう、写真、ではなく、手書き、の、植物の学術書や図説、とか
鉱石・宝石関連の本とか
装飾がめっためたに凝っているの、とか…
あ、宝石で、装飾されてる、すごい…
でも、中身はちゃんとしてる資料なのですよね
此の見解、興味深い…
時代は、でじたる?らしい、ですが、紙媒体、いいですよね…
あ、今、すごい、良い所、なので…
●読書の邪魔をする親分は
ぱちぱちと、神宮時・蒼(追懐の花雨・f03681)は左右で異なる色彩を持つ瞳を瞬いた。
この御殿、なんだかとっても目がチカチカする。チカチカし過ぎて、落ち着かない。
本来は財と長寿を与える「祝い」の品たるブローチである蒼でこの反応だ。つまりどれだけ煌びやかであるのはお察しに過ぎる。
しかも蒼が祝すべきひとつである財が、湯水のように湧いているのだ。正直、少し背筋が冷える。
(……散財、するのは、いい、ですが、現実に、引き戻された、時が、ちょっと、怖い、ですね)
富めることは良いことだ。だがこの御殿は所謂『狭間』のようなもの。
「……夢は、一時」
ぽつりと呟き、蒼は世を切なむ。夢の終わりを否応なしに考えざるを得ないなんて、何と世知辛い世の中になってしまったものか。
だからこそ、今は――今だけくらいは夢に浸りきるのも悪くないはず。
「……欲しい、本……」
ざばざばと降り来る諭吉の吹雪に煽られながら、蒼は「うーん」と小首を傾げる。
「……あ」
真っ先に思い付いたのは、絶版になってしまった本のこと。専門書の類はお高くてなかなか手が出ないうちに、版が途絶えがち。おかげで「いざ注文!」となった時には、「すみません、そちらの本のお取り扱いは終了しております」が多発する。
確か、植物の学術書だったか図説だったかがあったはずだ。それも挿図は全て手描きというこだわりの。
全体的に温かみのある風合は、憧れであり、心和むもの(ただしお値段にはぜんぜん和めない)。
「そういえ、ば……鉱石、や、宝石関連の、本も……」
脳裏に蘇った色合いが、更なる鮮やかさを連れてくる。それは本物の貴石を装丁にあしらった分厚い資料書籍。お値段は言わずもがな!
そして、ついに。イメージは具現化する。
「……わ、ぁ……」
不意に目の前に現れた二冊の本に、蒼は先ほどとは違った意味で瞬く。
植物の本も見事だが、特に宝石資料本がすごい。表紙に散りばめられた貴石が目に眩しくてチカチカする。でも御殿みたいに不自然なチカチカじゃない。
それに頁をめくれば、しっかりみっちり学術的情報や、謂れや逸話が盛りだくさん!
「成程……此の見解、興味深い……」
その場に膝をついて座り込み、蒼は本に集中する。
時代は『でじたる』とやらが主流になりつつあるが、このページを捲る感触がまた堪らなくて、手が止まらない。良い、紙媒体良い。すぐに行って戻れるのも良い。ランダムに開くのもまた良し。
然して。
「ねーねー、ワイちゃんと躍らないのー?」
「あ、今、すごい、良い所、なので……」
「はうあ!?」
うっかり読書の邪魔をしかけた新し親分が、蒼が無意識に使った無月残影ノ舞に見舞われたのは、必然である。
大成功
🔵🔵🔵
菱川・彌三八
本
…は確かに貴重だが…
何でも良いんだろ?
然しそんねェに欲しいものなんざねェんだが
筆も染料も、屹度此処じゃ大ェした事ねえだろうしなァ
上等な着物…
一つくれえありゃ質にも入れられるだろ
然し未々
舟出して騒ぐ…
まァ、やれんこともねェ
初鰹一本…
いや確かに高ェが、今此処で出て来ても…
(出てきた)
…後で如何にかするとして
太夫と遊ぶ…
こいつァ高ェぞ
しかも三度は通う
一晩で幾らでェ…
エート…
まァ、一生かかっても無理なくれえだな、よしよし
後ァ…
城…?
…
あーっ今なァ忘れてくれ、否いらねえ、城は駄目だ
金で買えるかしれねえけれども、押し潰すくれえしか出来ねえだろ
出てこねえなら僥倖、高めた力で波描いて仕舞ェにしようや
疲れた
クロト・ラトキエ
え?真っ先に買いますよね?
家。
階毎に分類したいですし、最低でも地上四階、地下二階。
エレベーターは当然として、劣化防止の光量・空調管理施設。
地下書架は古書用も兼ね可動式。
免震構造、滑落防止テープ。
万一の火災もガス消火。防水は絶対!
本の蒐集は、下準備の段階から始まっているのです…!
ディ(コンプライアンス!)系の数十冊単位で嵩張る、けど軽い本は上階。
一冊ずつは軽くとも、大量収納出来て超重量になる文庫本は一階辺り。
植物図鑑(全巻)…歴史本(全巻)…服飾(民族衣装含む)…
見て楽しい、仕事にも役立つ、一石二鳥!
無論、各階に快適読書スペースも忘れずに。
それ図書館?
ご冗談をー。
それは児童書用別館まで建てないと
●何故おっさんは不動産に走りたがるのか(彌三八とクロトをいっしょくたにしてはいけないと思っている。思っている。少なくとも三十路前はおっさんじゃない)(あと、タイトル長いな、とか思ってはいけない)。
「何でェ、此処は……」
御殿に放り込まれた菱川・彌三八(彌栄・f12195)は、あんぐりと口を開けて呆けた。
そこかしこが煌めいている。江戸城天守の金鯱も真っ青な派手派手しさだ。もしかすると、太閤殿下の黄金茶室が、こんな雰囲気なのかもしれない。
――違う、そうじゃない。珍妙極まる御殿だが、今は場に呑まれている時に非ず。
「本、だったけナ」
我に返った彌三八、目的を思い出した。思い出しはしたが、ピンと来ない。
江戸っ子である彌三八にとって、紙こそ貴重品ではないが、本はまだまだ珍しい。おかげで、具体的な想像がしにくいったらありゃしない。
でも、この地へ送り出した女は言っていた。別に本でなくても構わない、と。
ならばと彌三八は本をすっぱり諦める。切り替えが早いのもまた江戸っ子だ。
だが、しかし(二重否定)。
「……あー……あー……あァ?」
腹の底を漁ってみたが、欲しいものが浮かんでこない。何故か。繰り返しになるが、彌三八は江戸っ子。しかも長屋に住むばりばり庶民。あれこれ欲しがったって、家におけない。あと宵越しの銭は持たない。
「――上等な着物とかか?」
過るに任せ口にした途端、彌三八の前に絹の着物が現れた。成程、これは質草に良さそうだ。とは言え、未だ未だ足りない。
「舟出して騒ぐ……」
池に浮かべてどんちゃん騒ぎが出来そうな舟が出た。賑やかしの喇叭とかはオマケらしい。
「初鰹一本……いや確かに高ェが、今此処で出て来ても……」
ぴんと弾かれたみたいに出て来た初夏の縁起物(丸ごと一本)を華麗にキャッチし、彌三八はなおも悩む(初鰹は後で捌くことにした)。
欲しいと言えば、やはり筆だ染料だという絵描き道具だ。なれど、それらが此処の相場ではさしたる額にならない事は理解っている。
値が張らねばならないのだ。だとするならば――。
「そうでェ! 太夫と遊ぶってんでどうだ!」
彌三八、辿り着いた妙案に、ぱぁんと手を打ち鳴らす。成程、これはお高い。それに最低、初会、裏、と続いて三度は通わねばならない。
「一晩で幾らでェ……」
エート、と彌三八は指を折る。折ってはみたが、指が足りなかった。多分、しがない絵描きでは一生かかっても無理な金額だ。
実際、絢爛豪華な太夫は現れている。ところがここで問題勃発。三夜通うだけの時間がなかった。なんてことだ!
「ッチ、抜かったか――となれば……後ァ……城?」
追い詰められた故か、天啓が降りたかの如く、彌三八は妙案を思いつく。これはお高い。頗るお高い――だが。
「あーっ、今なァ忘れてくれ。否、いらねえ。城は駄目だ。親分を押し潰すくれえしか出来ね――」
彌三八、現在進行形で戦闘中(たぶん)忘れてなかった。
猟兵としての良識が、非常識を妨げる。
ところが、どっこい。
「どうして諦めてしまうのです? 買いますよね、真っ先に。家」
彌三八の良識をぶっ壊す唐突さで、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)が真顔で推参。
「え?」
「いえ、買いますよ家。それが城なら益々良しです。だって我が家は城とか言いますし」
またも呆気にとられた彌三八に、クロトは押しが強すぎるセールスよろしく笑みかける。
無尽蔵な浪費が許されるなら、やはり手を出すべきは不動産だ。こだわり抜いた家とか、軽率に最高おぶ最高。
「城というからには、複数階層は必須ですよね。だとすると、階毎に分類したいですし、最低でも地上四階、地下二階は要りますね」
御殿並みのキラキラしさで、クロトの眼の中には星が散る。四十路が見えたクロトは、或る意味、現実的に堅実だった。むしろ堅実過ぎた。
そんな、こんなで。
「エレベーターは当然として、劣化防止の光量・空調管理施設も大事です」
「え、えれべぇたあ?」
「地下書架は古書用も兼ね可動式。免震構造、滑落防止テープ。万一の火災もガス消火。防水は絶対!」
「めんしん? てぇぷ? がす消火?」
図面を引くが如く、クロトは最高物件を具体的にイメージしまくる。既に彌三八は置いてけぼりだ。
けれども此処で彌三八、自分は絵師であるのを思い出す。思い出して、ばっと紙を広げて、絵筆を取った。
「よくわかんねェが、いめえじとやらは具体的な方が良いだろ? その方が絶対、金がかかる」
「いいですね、いいですよ。より具体的に、細部までみっちりと詰め込みましょう!」
クロト曰く。
本の蒐集は、下準備から。下準備=ガワ。つまり入れ物である、不動産(いえ)。
「ディ系の数十冊単位で嵩張る、けど軽い本は上階」
コンプライアンス! とか得心顔でクロトが言えば、具体的なところはよく分からないながらも彌三八は描く。
「一冊ずつは軽くとも、大量収納出来て超重量になる文庫本は一階辺りが理想でしょう」
「重ェもんは下っつーことだナ?」
「その通りです! カテゴリー分けも重要ですよ。植物図鑑に、歴史本、服飾系も最新モードから民族衣装まで取り揃えなければいけません」
――もちろん全巻、と断言するクロトに、彌三八は「らしき」本棚をずんずんずん図面に付け足す。
「見て楽しい、仕事にも役立つ、一石二鳥! 無論、各階に快適読書スペースも忘れずに!」
「……ん?」
此処でふと、彌三八は思う。外観が城であるのと、複数階層であるのを除けば、クロトが思い描くものは『家』ではなくて――。
「なァ、此れって贅沢な貸し本屋――」
「おおっと、皆まで言ってはなりません。それに児童書用別館がありませんから、此れはあくまで家です。家。図書館じゃありませんとも」
「こっちじゃ、そねェなもんか?」
「ええ、そうですとも」
訝しむ彌三八をクロトは笑顔で制す。
そんな、こんなで(2回目)。
「ねえねえワイちゃんの出番はー! っていうか、動けないしー!」
彌三八が想像した通り、新し親分は超絶立派な城に潰されることになったのでした。
御殿に城が入った不思議は追及しないで? そもそも此処は金が沸く不思議空間だから!
大成功
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百合根・理嘉
バブル?なにそれ美味しいの?
こうさ、じーさん(土地成金)が
しみじみと『あの頃はよかった』って顔するやつじゃん
俺、生まれる前なんて全部過去じゃん?
関係ないじゃ……うるせぇ、羨ましくなんかねぇよ!ばかぁ!
本!俺欲しいのある!
大人買いとかそういうんじゃなくてさ
絶版で入手困難なやつ!
こいつとー
(めっちゃ可愛い絵本※絶版プレミアム価格)
これとー
(めっちゃ長編のSF小説。グなんとか・サーガみたいなの)
あー!あと、このへん!
(バイクメンテ系の小難しい専門書のシリーズ。一冊が超お高い)
ついでだからこの辺もー!
(ナイスバディのグラビアアイドルの写真集とかとかとか)
ふへへへ!すげぇな!あんた!
あ、負けないけどな!
●地味に痛恨の一撃
百合根・理嘉(風伯の仔・f03365)はつい先日(ほんとについ先日)、二十歳を迎えたばかりの若人だ。ぴっちぴち(古語)の若人だ。
故に。
「バブル? なにそれ美味しいの?」
ファストフード店のメニューを眺めているかの佇まいで、『バブル』なるものを思い浮かべる。
聞いた覚えはある気がした(何せ世は空前の昭和ブーム)。
イメージ的にはアレだ。じーさん(土地成金)が垂れるご高説の中に、必ず出てくる系。「昔はよかった」って枕詞がつくヤツ。
「つまり俺が生まれる前じゃん? そんなの全部昔話じゃん??」
理嘉、全昭和生まれに喧嘩をふっかけた気がするが、まぁ、よし。何なら平成前半生まれも敵にまわした気がするが、まぁ、よし(後で体育館裏に呼び出す←全昭和民が)。
でも理嘉、昔話(む・か・し・ば・な・し!)を侮ってるわけじゃナイ。だって理嘉、バブルを「関係ない」と切り捨てられない。むしろ――。
「……羨ましくなんかねぇよ、ばかぁ!」
典型的なツンデレ発動させるくらいには、「いいなぁ」って思ってる。
昼食をワンコインバーガーで済ませなくて良い時代。付き合いに恵まれたら、二十歳の若造でも昼からがっつりうな重とか余裕な時代。
「……やべぇ、腹減った」
ぐう。想像だけで鳴ってしまった腹をさすり、わびしさをお供に、理嘉は気持ちを切り替える(そうでもしないとやってらんない、というのもまた本音)。
幸い、理嘉には欲しい本が山ほどあった。しかも大人買いを遥かに超える、絶版狙い。
「あー、これこれこれ!」
なんとなーく想像しただけで、ポンっと現れためっちゃクラシカルで可愛らしい絵本(ちなみにプレミア価格がついている)を手にとり、理嘉はほっこり笑む。
これはいいものだ。けれど理嘉の欲しい本はもちろんこれだけじゃあ、ない。
「あとはー、これとー」
ずん。棚一列に収まりきれない量の長編SF小説が現れる。当然、これらも絶版もの。手に入れるにはオークションに参戦するしかない。
「やっぱりバイク系ははずせないだろー」
ずん、ずん、ずん。
見るからにお高いバイクメンテ系の本がずらり。これでSilver Starの改造が捗りそうだ。
「ついでだから、この辺もー!」
そして最後はまさかのナイスバディなお姉ちゃんたち――そのものではなく、グラビアアイドルの写真集。だって理嘉、二十歳のオトコノコだもの! 回顧厨なおじーちゃんじゃないものっ!
「ふへへへへ! すげぇな、あんた!」
手にした本たちに囲まれて、理嘉めちゃくちゃハッピーそう。その様子に、新し親分ぼそり。
「うん……うん……ワイちゃんも、なかなかイケてる女子だと思うんだけどナ……」
グラビア女子という二次元に負けたという衝撃が、三次元な新し親分にとってかなりな痛撃(精神的ダメージ含む)になったとは、理嘉は知る由もない。
大成功
🔵🔵🔵
パティ・チャン
■SPD
「好きな本をいくらでも買ってよい」ですって!
本の虫の気がある私、それって天国では??!!
そうなると、この体躯では、あまりにも惜しすぎる
(「Humanisiere Dich」発動。これで、重い本も持ち運べる!)
あの本もこの本も買える~♪
と、いうわけで。贔屓の作家の全集と歴史書まるっとセットを初版版でくださいな(はぁと)
もう、家まで待ってられるものですか!
読んじゃいますよ、寝る間も惜しむ勢いで。
……え?親分さん直々に栄養ドリンクの差し入れですか?それはどうもどうもです~
(【学習力、世界知識、情報収集】発動させて、心ゆくまで本を楽しみまくります)
…あとがちょっと怖いけど
※アドリブ・連携共歓迎
●ハッピー・バズリトレンディ御殿
パティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)がどれくらいの本好きかというと、依頼で出向いた先で書物の類をゲットするのが常態化してるくらい。
そんなパティが今回の件に目を輝かせないわけがない(おおむね積ん読と化しているのは、敢えて考えない)。
「好きな本をいくらでも買ってよいって、天国なのでは
??!!」
本好きのことを一般的に『本の虫』という。パティは決して虫ではないが(むしろ比喩に持ち出すのが申し訳ないくらい、可愛らしい女性だ)、体躯は大きくない。大きくないというか、とても小さい。何故ならパティ、フェアリーだから。
もちろんフェアリーサイズの本もある。だが、国や文化を問わず本を楽しむ為には、体躯が小さいのはあまりに惜しい。だって、小さいと、お持ち帰れる本の数も、種類も、少なくなっちゃう。
で、あるからして。
「身体が大きいことも、便利だねっ!」
パティ、迷いなくUC発動。途端、薄く透ける翅が美しい、一般的『人間』サイズのパティが爆誕!
小さい体躯だと普通の人が入れない隙間も自由自在で便利だけど、大きいは大きいで便利なのだ。
そしてここから先のパティの行動は、極めて速やかであった。
「ふふ、これであの本も、この本も買える~♪」
欲しい本なら山のよう。手始めに思い浮かべたのは、贔屓の作家の全集。当然、初版本で。
「あああ、ついにこれが私のものになるのね……」
歓喜に青い瞳が潤む。まさに最高おぶ最高。でもでもお金はまだまだ湯水のように湧いてくる。
「……そういうことなら、あの国と、この国と、その国と、それからあっちの国とそっちの国とこっちの国の歴史書まるっとセットで! もちろんこれも初版本よ!」
ずん。
ずん。
ずうん。
地響きを立て、無造作に現れるのは、マニアならずとも垂涎の書物たち。使った費用はかなりの額だ。とはいえ、まだまだ買える。買える、けれどっ。
「もう、待ってられないっ!」
お宝の山を前に、パティの読書欲爆発。この誘惑には抗えない。積ん読にする余裕もない。
然してパティ、一冊目の頁を捲ったが最後、ひたすら本を読む。寝る間も惜しむ勢いで、本を読む。その場に座り込んで、本を読む。人目も気にせず、本を読む。
これでパティは小さな王国の近衛騎士一族の跡取り娘。実家でだって、こんなに本に没頭できる機会はそうそうない。そういう面でも、ほぼ同類しかいないこの地は、まさに天国!
「がんばってや! ワイちゃんも応援するから」
「ありがとうございます!」
新し親分からの栄養ドリンクの差し入れも、渡りに船。これ幸いと一気飲みして、パティは心ゆくまで本を楽しみ続ける。
結果。
新し親分の攻撃はパティに一切ダメージ与えないどころか、栄養ドリンク捻出するのに力を消費し、しっかり骸魂へダメージ蓄積。
誰も不幸にならないバズリトレンディ御殿の、なんと素晴らしきこと哉!
まぁ、栄養ドリンク飲みすぎのパティの後日は、ちょっとばかり心配だけど……(そっと目を逸らす)。
大成功
🔵🔵🔵
榎本・英
バズりとは。
聞き慣れない単語だね?
ありったけの札の束を使う事は分かるのだが
本か。何の本を買おう。
此方の世界にはどのような本があるのかな?
嗚呼。本屋を丸々と。
残念ながら、それには興味が沸かないのだよ。
そうだね。
ナナ。君の気になる本を教えて呉れ。
それを買おうではないか。
そちらの料理本に、そちらの魚の本。
こちらは――魚の本だね?
君の選ぶ本は魚料理の本か魚の本。
こっちは大きな図鑑だよ。
ありとあらゆる魚の本を買って、読みたいのかな?
嗚呼。すまないね。
駄目ではないよ。大歓迎だとも。
魚は本の中から出て来ないが
見る分には何の問題もない
それではこの魚の本で魚の素晴らしさを彼女に伝えようではないか。
●お猫様の仰せの侭に
バズるとは、いったいどういう意味を持つ単語なのだろう。
(五段活用の動詞のひとつ、だろうか?)
大正浪漫がよくよく似合う榎本・英(優誉・f22898)は、平凡な推理小説家だ。であるが故に、聞き慣れない響きを耳に、首を傾げる。
猟兵として行き来する国や時代は、実に数多。未知との遭遇は、時に創作意欲の源にもなる――なりは、する、が。
「……」
乱れ舞うお札たちに英は、今度は頭を捻る。
これらを存分に使えという命題は理解した。しかも出来れば本が良いらしい。
いったいどんな本を買おうか。作家として参考にしたい図書なら山ほどある。とは言え、本屋を丸々買い上げるようなやり方には、残念ながら英の食指は動かない。むしろ自著だけ本屋を埋め尽くす方が面白味はあろう。
だが買い求めなければならないものは、買い求めなければならない。
「……ん?」
いったいどんな本にしようかと迷い果てかけた英、もぞりと動いた懐に目を遣る。そこには一対の円らな瞳があった。立ち尽くす主を何事かと思い、三毛猫のナナが顏を出したのだ。
ぱ、ち。ぱ、ち。
「!」
特に問題があった風ではない英へ安堵したのか、ナナはゆっくりと青い双眸を瞬かせる。その親愛の情を示す仕草に、英は閃いた。
「そうだね、ナナ。君の気になる本を教えて呉れ」
買うならば(財源は新し親分だけれど)、誰かが喜んでくれる本が良い。それが愛猫ならば、文句なし。
「さあ、ナナ。遠慮なく思い浮かべてご覧」
英に抱き上げられて、ナナの尻尾がふらりふらりと揺れた。ナナはただの三毛猫ではない、歴とした使い魔だ。だから英の言わんとすることはすぐに察するし、行動にだって移せる。
然して。
「――はは」
ぽん、っと飛び出して来た本に、英は堪らず破顔した。
表紙に大きな魚が描かれている。とても分かりやすい選択だ――などと感心しているうちに、またポンっと次なる書籍が現れた。
こんがり焼けた秋刀魚に大根おろしが添えられた表紙は、明らかに料理本。
そこから先も、次々に魚の本と料理の本が現れる。途絶える隙なく、ポンポンポンポン現れる。
「もしかして君はあらゆる魚の本を買って、読みたいのかな?」
分厚さも、大きさも、まさに『図鑑』な本が現れた時には、英は堪らず吹き出した。そこで初めて本の出現が止まったのは、呆れられたとナナが誤解したせい。
「嗚呼、すまないね。駄目ではないよ。大歓迎だとも」
だから確り誤解を解いて、さあさ遠慮なくと英はナナを促す。
魚は本の中から出て来ないが、眺める分には危険もないし、問題はない。さらに言うと、古今東西どれだけの魚や料理の本があると思う? それらを買い尽くすには、札の束が幾らあっても足りはすまい。
余談。
ナナの為にはたいた大枚は数知れず。もちろんパワーアップしまくりの、新し親分へのダメージはいりまくり――だったのだけど。
「うっ、ネコちゃんズルい。可愛いネコちゃんはバズり必至だしっ」
ナナと英の触れ合い具合の方が、新し親分にはいろいろ刺さっておりましたとさ。
大成功
🔵🔵🔵
グィー・フォーサイス
★F
えっ!好きなだけ本を買っていいのかい!?
僕はね、冒険譚を読むのが好きなんだ
勇者が伝説の剣を抜いてドラゴンを倒す話とか
料理人が食材を求めて旅に出たら秘境で珍しい魔物と出逢って心交わすとか
嵐の中の飛行士の話とか、そういうやつ
今はもう手に入らない古いのとか、買ってしまうよ
あ!郵便の歴史とか活版印刷の歴史とかの本もほしいなぁ
この際思いつく本全部買ってしまおう
いいの?本当にいいの?
本、ください!
嬉しいなあ
これ、プレミアついてて買えなかったんだよね…
これなんてもう重版されていないし…
うっ、嬉しい
早く家に帰って読みたいなあ
いや、今すぐ読みたい
攻撃する必要があれば
銃でズドンとしておくよ
ありがとう!親分!!
雅楽代・真珠
★F
僕は金銭に困ったことはないけれど
それでも手に入らないものがある
流石に僕もね、
趣味で家に此程の金を出させるのは気が引けていたから助かるよ
欲しい書物は絵巻物だよ
UDCあぁすの価格だと億にいくくらいかな
金箔を惜しげなく使い
砕いた宝石で着色し
平安の世に描かれている絵巻物
ああ、やっと手に入るのか
嬉しいな
何でも買って良いのでしょう?
実はこれ、全二十巻あるのだけれど…いいかな?
すごい
見てよ、ほら
着物も花も、なんて美しいのだろう
僕は胸がいっぱいで今ならお前を愛でてもいい気分
だからね
誘惑してあげる
歌を唄ってあげようか
骸魂よ、眠れ眠れ
眠って、消えて
そら、ばずりとれんでぃ
骸魂を追い出すのだよ
そう、良い子
●運び屋と金魚(敢えて並べて、比べてみました)
「えっ! 好きなだけ本を買っていいのかい!?」
きんきらバズリトレンディ御殿に、五月の清風が吹いた――というのは比喩で。でもグィー・フォーサイス(風のあしおと・f00789)が上げた歓喜の声が、お札が吹き荒れるという世にも奇妙な光景の中での清涼剤になったのは事実だ。
ケットシーの身軽さで札嵐を掻い潜り、くるんと華麗に宙返り。からの、100点満点の着地を決めたグィーは、チカチカする視界にいったんおさらばして、瞼の裏に欲しい本を思い浮かべる。
(僕はね、冒険譚を読むのが好きなんだ)
手紙や小さな小包の配達はもちろん、何処かへ向かう誰かの護衛もお手の物なグィーは、文字通り運び屋だ。
運ぶために、色々なところを訪れた。様々なものを見た。たくさんの出逢いがあった。本たちとの邂逅もそのひとつ。
(勇者が伝説の剣を抜いてドラゴンを倒す話は、どこの話だったかな?)
――ぽんっ。
(料理人が食材を求めて旅に出たら秘境で珍しい魔物と出逢って心交わした物語は、確か――)
――ぽんっ。
(嵐の中の飛行士の話とかもあったね!)
――ぽふんっ!
思い出す度に、しゃぼんの泡が弾けるみたいな音がした。待ちきれず、琥珀に似た瞳をそろりと開けると――。
「わぁあ!」
先ほどよりも大きな歓声を上げて、グィーはぴょおんと跳ねる。
凄い凄い凄い。プレミアがついて(プレミアがついて!)買えなかった本たちが、ずらりと並んでいる。
「じゃあ、じゃあ、郵便の歴史とか活版印刷の歴史とかの本もほしいなぁ」
――ぽん。
――ぽん。
――ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽんっ!
「お宝の山だ!」
高揚に任せて、記憶を隅の隅までつつけば、願った通りの本が出てくる、出てくる、出てくる。
本当にいいのか不安になりそうだが、良いのだ。この御殿内では浪費こそ正義!
「ああ、これはもう重版されなくて手に入れるのは無理だって思ってた本。こっちは博物館に特別展示されていた歴史書だ!」
たかが本、されど本。努々侮ることなかれ、お高い本はガチでヤバい。
そう、ガチでヤバいのだ。
「あまり趣味はよろしくないみたいだね」
黒衣の青年型人形に恭しく抱きかかえられた雅楽代・真珠(水中花・f12752)は、柳眉を不機嫌に顰めた。
成金趣味と評するのも過言ではない御殿は、時代を映しているかもしれないが、趣深さに欠ける――つまり真珠の美的感覚からは著しく外れている。札が乱れ舞うとか、品位の欠片も感じられないし、無駄にキラキラしているのも目に痛いだけだ。
もちろん、こうなるだろうことは予測できた。それでもなお、真珠が御殿に足を踏み入れたのは、欲しい本があったからに他ならない。
ちなみに。
真珠は生まれてこのかた(もしかすると『生まれる』前から)、金銭に困ったことは全くない。困らない程度の慎ましやかな暮らしをしていたわけでもない。
真珠はびいどろ金魚のヤドリガミ。愛し愛され、望まれた果てに命を得たもの。だから身の回りは、相応の美や品性で溢れている。
(そんな僕でも、手に入れられなかった……)
綺麗な眸を穢す外界から一時、意識を断って。真珠は長年焦がれたそれを思い浮かべる。
金箔を惜しげもなくあしらい、砕いた宝石で色をつけ、雅なる宮廷の暮らしぶりなぞをしたためたもの――それは、平安の世に描かれている絵巻物。
「ああ、やっと手に入るのか」
うっとりとため息を零す。
流石の真珠でも、趣味で家に此程の金を出させるのは気が引けていたのだ。なお『此程』とは、UDCアース価格にて軽く億超えていく感じ。
「憧れの、全二十巻……」
億超え×20=しょみんにはちょっとわかりません(ほら。ヤバいやつはヤバいって言ったでしょ?)。
「――……」
真珠、薄く開いた目を試すように横へ遣る。地の文へではなく、新し親分へ。「おっけーおっけー、ワイちゃんにお任せ~♪」なんて胸を叩いてる新し親分のこめかみが、ちょっとだけ引き攣っていたのはきっと気のせいだ。
「……そう、そういうことなら」
ふ、と口の端だけで微かに笑み、真珠は虚空へ手を伸ばす。そして、まるでそこに収まるのが正しいのだとでも言うように、現れた絵巻物(全二十巻)を抱きとめる。
「やっと、僕のものになったね」
十九巻は人形へ預け、最初の一巻を堪らず紐解く。
「見てよ、ほら」
長い時を経てなお目もあやな紙面に、真珠は感嘆さえ忘れる。
着物も花も、美しい。描き残された空気感そのものが、美しい。
「僕は胸がいっぱいで、今ならお前を愛でてもいい気分なんだ――だからね、特別に誘惑してあげる」
「ふぁっ!? ワイちゃんを誘惑するの? え、また新しいバズり??」
「違うよ……いや、違わないかな。古くて新しい、新しくも古い、不変の流行り事だろうからね」
「わーぉ」
あちら的には『同僚』くらいにしか思われていないのだろうが、グィー的には『ほっとけないなぁ』と思ってる真珠が、びっくりするくらい機嫌よさげに歌っている。
響きは頗る美しいながら、『服従』と『その声で褒めてもらいたくなる』――つまり、心を惑わす歌だ。
骸魂を追い出そうとしているようなので、間近で耳にした新し親分には相応の効果があるだろう。
「割って入らなくていいかな? いいよね。うん、大丈夫そうだ」
必要あらば銃でズドンとする気でいたグィー、助力は不要と判断し、いそいそと館の出口を目指す。
早く家に帰らなきゃ、今日は徹夜の読書で決まりだもの!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
九泉・伽
クジャクさんもバブル?俺もリアル世代だよ
え?外見と合わないって?ほら多重人格だし
当時掃いて捨てる程出回ってたゲーム攻略本諸々
当時は古本屋でも買いたたかれてみんな捨ててたの
今じゃ却ってレアなんだよね
俺も死ぬ前始末したけど人生リバイバルしちゃったし改めて欲しいなぁ
特にヒロインがbeep音と共に死ぬバグが見つかった「よろめきハプニング」ってギャルゲーの攻略本…これが即回収されたから今はオークションでウン十万
当時開発ヘルプで七徹夜させられたからヒロイン見ると目眩のトラウマだったけど愛着あるから欲しいなぁ
あ、本で殴るよー
このヒロインのせいで1週間で7キロ痩せたんだよ、死ね
持って帰れないんでしょ?知ってる
●雀のお宿
この地へ自分を送り出した女の顔を思い出し、九泉・伽(Pray to my God・f11786)は口に合わない煙草をぷかりと吹かした。
(バブル、彼女もリアル世代?)
『も』というからには、伽もそうだということ。しかし伽の齢は三十路手前。つまり『も』を語るには、辻褄が合わない。が、そんな矛盾も伽にとっては些末事だ。
そも、伽を構成する全てが胡乱。伽は「多重人格だし」と軽く片付けるけれど、そればかりであるはずがない。
けれど真実の追及に、どんな意味や価値があるというのか。本人が求めるならば、いざしらず。特に今は、夢と現の境じみた戦いの最中。
然して伽は、唐突に降って湧いた分厚い書籍を頭上でキャッチすると、つるんとした照りのある表紙を懐かし気に撫でる。
「そうそう、これこれ」
咥え煙草で、くふと喉を鳴らす。
それは20年ほど昔、本屋の棚と平台を席捲していたゲームの攻略本だ。最近は攻略情報もネットが主流になって、わざわざ紙に刷られたものを手に取る機会は減ったものの、当時は発売日と同時にゲーム中盤までフォローした攻略本が刊行され、それはもう飛ぶように売れたのだ。
それだけ刷られれば、早々に古本屋へ持ち込んでも二束三文にしかならず。そのくせスペースは取るものだから、処分手段は廃棄が優先。
(今じゃ却ってレアとか、時代の変化って面白いねぇ)
ゲームタイトルを紫煙に混ぜて呟く度に、ぽとりぽとりと攻略本が降って来る。とうてい古本には見えない状態の良さからして、相当な高値がついたものだろうことは疑うべくもない。
ちくいち拾って、伽は目を細める。何れも諸事ある前に始末してしまったものたちだ。人生リバイバルした今となっては、懐かしいを通りこして愛おしい――なかでも。
「やあやあ、ご無沙汰ご無沙汰」
ふらりよろめく風情のセーラー服美少女が表紙の一冊を手に、伽の声にも貌にも今日一の感慨が溢れる。
ゲームタイトルは、その名も『よろめきハプニング』。よろめきぶつかった瞬間、恋が芽生える、なんてべたべたのシチュエーションが盛りだくさんの恋愛シミュレーションなのだが。謎のbeep音と共にヒロインが死亡してしまうという、有り得ないにも程がある前代未聞のバグが発見されて、発売翌日に回収が決定したという曰くつきまくりなのだ。当然、重版かかるはずもない攻略本はレア中のレア。
「これが今じゃ、オークションでウン十万とはねぇ? あー……開発ヘルプで七徹した後の朝日は黄土色だったなぁ……」
ぽとり、煙草の灰が足元に降り積もる札の上に落ちた。変に火が点く前に、伽は無造作に札ごと灰を踏み潰す。
「このヒロインのせいで、1週間で7キロ痩せたんだよ。死ね」
唐突な物騒な語尾は、攻略本の角で新し親分をぶん殴ったせい。その流れるような動作に「え、今なにが起こったん? ワイちゃん、わかんないし」と新し親分が大混乱に陥るが、既に伽の気持ちは其処に無い。
「ヒロイン見るだけで眩暈のトラウマだったけど、今になったらただの愛着だねぇ」
――どうせ、持って帰れないんでしょ?
摂理に反して生じたものは、須らく泡と消える。全ては夢物語。だからこそ、かつての苦しみも、無責任に楽しめ、愛で、笑っていられもするのだ。
なれどご用心?
雀のお宿を訪れた老夫婦は、現実まで財を持ち帰っていたりするのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
琴平・琴子
えっ
ほ、本を大量に買っちゃっていいんですか…
本当に??
じゃ、じゃあ…
国語、漢字、和英、英和、ことわざ、四字熟語…
辞典の一式を全部を買ってもいいのですよね!?
良い値段するから躊躇っていたのですがこの機に買えるとは思いもしませんでした…!
ああでも全部持つと結構重た…あっ
(手から滑らせて親分さんの足に落ちる
…親分さん、あの、大丈夫ですか
だ、大丈夫そうには見えませんが…
お金は大事ですよ
(辞書の角を使って攻撃
大体お金を武器にするよりも知性を持ってくださいませ、下品ですよ!
確かにペンは剣よりも強しとは言いますけどもここまでの威力があるとは…
辞書で勉強の日が楽しみですね
●ペンは剣よりも強し
えっ?――と。元より内側から仄光るような琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)の瞳が、喜びに煌めいた。
本を大量に買って良いとの話だったが、俄かには信じがたくて、口をついて出たのは「本当に??」という確認の問い。
正直、バズリトレンディ御殿への転送が完了するまで半信半疑だった。けれども他の猟兵たちが次々に本を手にする姿を見て、琴子の表情からは完全に戸惑いが消えていた。
本当に、好きなだけ本を買って良いのだ。むしろ、ありったけを買う方が喜ばれる。
「じゃ、じゃあ……」
夢みたいな状況に、琴子の心は走り出す。小学生のお財布では、文庫本だって月に2冊が精一杯だ。両親にお願いすれば、買って貰えるものもあるだろうが、何かと褒めてくれる父母に当然のように強請りたくはない。
だから。
「国語辞典、漢字辞典、和英辞典、英和辞典、ことわざ辞典、四字熟語辞典……歴史辞典も欲しいです。これからはプログラミング辞典なども必要でしょうか」
思いつく限りの目一杯で、琴子は辞書・辞典の類を買い求めていく。
全て、二カ月以上はお小遣いを貯めるか、お年玉でしか買えないものたちだ。
長く使えるものだから、いつかは――とずっと願っていた。それがまさか、こんな機会に恵まれるなんて!
「独和、和独、仏和、和仏、露和、和露……中国語も忘れたらいけませんね。科学、化学、物理に、医学もあったらきっと便利です!」
琴子、止まらない。
どれだけ学ぶ気だろうかと、既に修学時期を過ぎた大人の目には羨ましいやら、眩しいやら、末恐ろしいやら、心苦しいだわのてんこ盛りだ。
と、なれば。当然のように重い。おそろしく、重い。とんでもなく、重い。
「何ナニ? それ全部、持って帰るん? もー、仕方ないなぁ。ワイちゃんも手伝ってあげるよ」
「え? 良いのですか、親分さ――」
骸魂に憑かれていても、元の性分を一切失わない――我が身の犠牲を厭わず、大祓百鬼夜行に身を投じているのだ。人の好さは折り紙付き――新し親分が手伝いを申し出るのは必然。そしてうっかり琴子の手から、一冊の辞書が滑り落ちたのは偶然。
「んぎゃあっ」
「す、すみません親分さん。大丈夫ですか?」
「へ、ヘーキヘーキ。これくらい余裕のよっちゃんや」
「余裕の、よっちゃん?」
「今の子ぉは知らんかぁ……ひぎゃあっ」
凶器にも等しい辞書の角の直撃を、足の指先に受けて仰け反った新し親分。ジェネレーションギャップ的なものにも衝撃をうけてへたりこむ。そこへ畳み掛けるよう、辞書が雪崩てくるとは露とも想像せずに。
「申し訳ありません、親分さんっ」
律儀に一冊一冊積んでおいたのが徒になったと琴子は後悔する。涙目の新し親分はどう見ても平気そうじゃない。
だが、しかし。元はと言えば、このバズリトレンディ御殿がよろしくない。
大事な大事なお金を、こんな風にばら撒くのは如何なものか(恩恵に与った事実はさておいて)。それにこの無駄にキラキラしいのも品がなくて悪趣味だ。
「お金を武器にするよりも、知性を持って下さっていれば今ごろ……あら?」
「ワイちゃん、バタンキューやで……」
小学生とは思えぬ理詰めで新し親分に一言申し上げようとしていた琴子、『ばたんきゅー』なる聞き馴染みのない断末魔を残し、新し親分が消え逝く様に直面して目を丸くする。
ペンは剣よりも強しとは言うけれど、まさか辞書で親分さんを撃破できてしまうとは思いもしなかった。
やはり学ぶことは素晴らしい。学びこそ、成長の礎。
新し親分には悪いことをしてしまった気がするが、これも骸魂から解き放つための一歩だと思うと、琴子の心も穏やかになる。
「親分さん、ありがとうございました」
斯くして琴子は、猟兵としてのあれこれを総動員して辞書という辞書を持ち帰る。
最高の戦利品だ。これらで勉強する日が、早くも待ち遠しかった。
大成功
🔵🔵🔵