大祓百鬼夜行③〜光の礎
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百霊鎮守塔の制圧には今暫し、時間を要することだろう。
その分、塔を破壊しようとする存在の襲来も、途絶えぬわけで。
エンティ・シェア(欠片・f00526)はメモをめくりながら言葉を紡ぐ。
「この塔の最上階にある『百霊灯籠』の光が竜神親分の力を抑えるという効果はご存じだろう。彼の親分へ至る道は開かれども、その力が維持されれば、戦況を覆しがたいと見たのだろうかね」
あちらの思惑は定かではない。あるいはただ、塔を破壊する事だけを望まれ、その命に忠実に動いているだけなのかもしれない。
どちらにせよ、塔を破壊されるわけにはいかない。
そのためにも、いま一度手を貸してほしいとエンティは告げた。
「今回相手をしてもらうのは、子供だ。子供の姿の、妖怪だ」
元はどんな妖怪だったのか。それは見た目では判断しきれない。
足や尻尾の類を掴んで振り回す怪力を披露したり、遠くの敵に念動力や鬼火で攻撃してきたりする、骸魂に取り憑かれた子供達だ。
「君達は見た目で油断をしたりはしないと知っているがね、加減はしないでおあげ。彼らもまた、倒されることで骸魂から解放されることを望んでいるのだろうから」
そのためにも、塔に備わる霊的防御装置を駆使することをお勧めする。
その装置とやらは、治癒の力を持つ結界陣だ。指先で五芒星を描くことで発動し、自身の周囲を結界で守ってくれる。
敵から受けた攻撃を即座に癒す陣は、は自分を中心に展開されるため、移動してもついてくる便利な代物だ。
ただし。敵もそれを使用することが可能であるとエンティは言う。
「発動条件は割と簡単だから、あちらに気取られぬよう、こっそり使用することをお勧めするよ」
演技力などに自信があるなら、敢えて違う呪文やポーズなどで格好よく決め、偽の情報を与えるのも一つの手だろう。
手段はお任せするよと微笑んで、塔へ続く道を開くのであった。
里音
たまには純戦的な戦争シナリオを!
霊的防御装置を駆使して塔を守ることでプレイングボーナスが得られます。
今回は治癒結界。がっつりダメージ食らっても即座に治癒するので無茶な戦い方をしても大丈夫です。
早めの完結となる予定でおります。そのため、採用数が控えめになる可能性がありますのでご注意ください。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『骸魂童子』
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POW : 怪力
レベル×1tまでの対象の【尻尾や足】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : 霊障
見えない【念動力】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ : 鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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牧杜・詞
子供の姿……。
どんな妖怪にどんな骸魂が憑いたのかは解らないけれど、
まさかそれで隙ができるなどと思ってのことではないわよね。
子供の純粋さゆえの残酷さを体現した、と思いたいところだわ。
無邪気と快楽どちらが生き残るか楽しみね。
それにしても治癒の結界、だっけ。
便利なのでしょうけど、個人的には気に入らないわね。
殺し合いは危険だから楽しいものよ。
こちらが勝手に使わないのは自由だろうから、わたしは使わないでおくわ。
それにね。怪我は治せるのだろうけど、
【命根裁截】で、直接刈られた命まで癒せるのかしら?
怪力はそれだけで脅威ではあるけれど、捕まらなければいいのだし、
最初から無傷で生き残れるとも思ってはいないわ。
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百霊鎮守塔を破壊すべく終結したオブリビオン達。
その姿を見て、牧杜・詞(身魂乖離・f25693)はほんのかすかに、眉をひそめた。
それは幼い子供だ。骸魂に取り憑かれた影響か、どこか無邪気さを失くしたようにも見えるけれど、あどけない顔つきはどれもこれも、明らかに詞より年下に分類されるだろう容姿をしていた。
――妖怪相手であるならば、百や二百も年上でも驚きはしないのだけれど。
それはそれとしても、詞は、気に入らないとばかりに刀を抜き払う。
「まさかそれで隙ができるなどと思ってのことではないわよね」
猟兵が、幼子相手に刃を向けることを躊躇う者ばかりだと思われているのなら。随分と、舐められたものだ。
そもそも骸魂に取り憑かれた妖怪達は、倒すことで救うことが出来る。
子供の妖怪に憑いた骸魂なのか。妖怪に取り憑いた子供の骸魂なのか。
あるいは子供の純粋さゆえの残酷さを体現したような存在かもしれない。
どのような経緯があるにしても、詞には関係がなかった。
「無邪気と快楽どちらが生き残るか楽しみね」
口角を上げて笑うと、刀を抜き払い、迫る一団へと対峙する。
その空間には、治癒を施す結界を発生させる霊的防御装置があると言うけれど。詞はなんとなく、それが気に入らなかった。
殺し合いは、命を落とす危険があるからこそ楽しいのに。
だから、詞は敢えてその装置を使わずに挑む。数と相対する以上、それが不利になることは自覚したうえで、その苦境をも楽しむと決めたのだ。
思念を込めた刃を握り、詞は駆ける。その細い足を掴もうとする手を掻い潜りながら、刀を振るう。
詞の振るう刃は、幼子の体を傷つける事は無いけれど。刃を這わせる度に、確実に、その命を切り捌いていくのだ。
「これで、終わり」
倒れ伏す幼子の向こうから、ふわりと靡く詞の髪にまで手を伸ばそうとする者がいたけれど。
無粋な手を払いのけるように打ち刀で跳ね上げて、対の手で抜き払った白鞘の短刀を突き立てて。
ふと、思うのだ。
彼らに治癒の結界の使い方を教えたとして。傷ではない、狩り取られた命まで癒すことなど、出来るのだろうかと。
試してみるのも面白くはありそうだけれど……必要以上に不利を演出するのは、それこそ無粋か――。
「ッ……!」
思案を過らせた詞の足が、小さな手に掴まれる。そのまま振り上げる力は、幼子とは思えない怪力。
身をよじり、受け身を取ることで無防備に叩きつけられることを回避した詞は、掴まれた足を薙ぐようにして小さな体を引き寄せると、刀を振るう。
じん、と痛む足も体も、そこに命のある事を、命のやり取りをしていることを、実感させて。
自然と、笑みがこぼれた。
「やっぱり、こうでなくちゃ」
殺し合っている意味が、無いでしょう?
大成功
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夜刀神・鏡介
此処を制圧せずとも竜神親分相手に戦って勝てないという事はあるまいが……出来る事は全て行って万全を期したいのもまた事実
あまり時間をかけていられないし、油断も加減もなく、きっちり制圧させてもらおう
鉄刀を片手で構えて、意味ありげに刀を振り回して……大仰な口上を述べるのはわざとらしいが、刀の錆になりたい奴からかかってこい、とか言っておくか?
そうやって注意を惹いている内に、反対の手でこっそりと五芒星を書いて治癒結界を発動しておく
尤も傷が即座に癒えるとはいえ、無駄に攻撃を受けるつもりはない――捌の型【水鏡】
敢えて、敵が足を掴みやすいように隙を見せて動きを誘導。伸ばしてきた手を弾いて、反撃から一気にとどめ
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百霊灯籠が果たす二つの役目。一つは、カクリヨファンタズムの最下層を照らし出し、竜神親分への道を示すこと。
もう一つは、その竜神親分の力を抑えること。
一つは既に果たされた。そしてもう一つも、佳境となったこの戦況化では、必ずしも必要な効果とは言い難い。
それでも、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はこの戦場に臨むのだ。
万全を期すために、出来ることはしておきたい。この戦争を、悔いなく終えるために。
とは言え、あまり時間も掛けてはいられない。ゆえに鏡介は、相対するものの姿に、何の躊躇も抱かない。
「油断も加減もなく、きっちり制圧させてもらおう」
そうする事で、いち早く、彼らが救われるように。
よく使いこまれた刀は、鏡介の手に馴染む代物だ。それを片手で構え、まるで何らかの印を刻むかのように、意味ありげに振り回してやる。
こちらに斬りかかってくるわけでもないその動きを、幼子の妖怪達は無感情に、あるいはわずかの興味や怪訝を示して見つめていた。
見渡して、ふ、と鏡介は笑む。
「刀の錆になりたい奴からかかってこい」
その刹那、鏡介の足元に結界が展開される。
それを見た幼子達は、ひそ、と囁き合ったり顔を見合わせたりしながら、ある者は鏡介を真似るような動きで手を振り回してみたり、またある者はそんな彼らのために時間を稼ごうとするかのように、鏡介へ掴みかかってくる。
「おっと、そう簡単に捕まるわけにもいかないな」
迫る手を躱しながら、鏡介はちらり、自分を真似ている様子の子らを見やる。
そうして、上手くいかないと言いたげに顔をひそめているさまを見て、胸中だけで笑みを作った。
(ちゃんと気は惹けたか)
大仰な振る舞いをする対の手で、素早く描いた五芒星。それこそが結界の発動条件であることを、彼らは気取れぬようだ。
こちらばかりが癒しの術を得たとはいえ、持久戦に持ち込む気はない。
「我が太刀は鏡の如く――捌の型【水鏡】」
構えを取る鏡介は、先ほどと同じように、大仰な素振りをして見えながら、隙がない。
――けれど、一点だけ。足元だけは、どこか注意が疎かに見えた。
ともすれば簡単に掴めてしまいそうな足へ、幼子は手を伸ばす。
思いがけず素早く掴まれてしまうならば、己の修行不足と割り切り治癒結界の世話になるしかないのだけれど。
鏡介の構えが見せる本分は、そうして敵の動きを誘導すること。
足元へ伸ばされる手を、蹴り上げ弾く。姿勢が崩れたところへ浴びせる一太刀は、的確にその身を捉え、斬り伏せた。
飛び散る血は、今は見ないふりをして。次は誰が掛かってくるとばかりに振り返った鏡介は、そのまま力強く、踏み出し駆けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
子供の妖怪も、この戦いのために自らの身を差し出しているんだね
早く終わらせてあげよう
UC伴星・強欲の両鎌槍を発動
俺の持つ悪意の魔力を使い肉体を魔法物質に変換し、大量の両鎌槍を作り上げる
たくさんの妖怪達をこれで倒し一気に救うよ
ああ、なんて強欲なんだろう
多く倒す、つまり肉体の変換量も非常に多いから消耗するんだ
妖怪からの炎による消耗もきっといつもよりずっと激しい
身体が動かせなくなる前に結界陣を発動させて身を守りながら回復しよう
早口で絶え間なく唱えてから星を描く
単語を理解させなければ真似もよりされにくいはず
『名を齎し無限の可能性を秘めし碎輝を封ずるは百霊灯籠を抱く百霊鎮守塔の力よ今我に力を与えたまえ』
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子供の妖怪も、この戦いのために自らの身を差し出しているのか。
サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は現れた姿を見据え、その心意気に感銘を受けたというように、深く頷いた。
望んで挑んだ戦場とて、骸魂に取り憑かれたまま終わるのは、きっと本望ではあるまい。
(早く終わらせてあげよう)
そのためにも、サンディは蔓延る敵をより素早く、より多く倒すための技を用いるのだ。
自身の中に存在する悪意の魔力。それを用いて、己の肉体を、魔法物質へと変換する。
そうして生成した魔法物質は、サンディの望む形――十字を描く両鎌の槍へと転じた。
手だろうが足だろうが持っていくがいいと言わんばかりに差し出して、幾つも、幾つも、大量に。
作り出された槍は幾何学模様を描き、複雑に飛翔しながら、目の前の敵を一掃していくのだ。
「ああ、なんて強欲なんだろう」
くすり、と。微笑むサンディの身は、槍を生成するたびに抉り取られ、身の先端から削れていく。
仲間を薙ぎ払っていく槍の乱舞以上に、その狂気の様に幼子らは一瞬怯んだ様子を見せたけれど、あちらが自壊をしていくならば追い打ちをかけるべしと、鬼火を放ち攻撃してくる。
あるいは槍を焼き落とそうと操作する者もいるが、複雑な軌道を読み切るよりは、ずっと、それを呼び寄せた者を叩く方が効率的だ。
ちゃんと考えているのだなぁ、なんて人ごとのような笑みが浮かんでしまうのは、消耗ゆえか。
体もいまいちスムーズに動いてくれなくて、鬼火の炎に晒される身が、一層削られていくのを感じる。
このまま、動けなくなってしまう前に。
サンディは何かに縋るように手を掲げ、口早に呪文を唱える。
「名を齎し無限の可能性を秘めし碎輝を封ずるは百霊灯籠を抱く百霊鎮守塔の力よ今我に力を与えたまえ」
そうして、ひそり。その指先で五芒星を描いた。
それを受けて、百霊鎮守塔の霊的防御装置は作動し、サンディに治癒の結界を与える。
魔法物質への変換による消耗も、鬼火に晒されて受けた傷も、瞬く間に回復していくその効果は、なるほどとんでもないなと思案して。
随分と軽くなった体で、幼子達と向き合った。
見渡した彼らは、サンディの身を癒した治癒の結界を得ようとしてか、呪文を探っているようで。
しかし、何かを唱えていたのはわかったが、全然聞き取れなかったと言わんばかりの顔。
隣り合う者とでひそひそと確かめ合っているようだが、皆一様に首を振るばかりで、全く判別できていないようだった。
「そんなに悠長に、相談してる場合かな?」
こっちはお陰様で全快だ。だから――また、身を削って槍を生み出すことが出来る。
「逃げ場なんてないよ」
もっとも、本当の意味で逃げ出すような者は、ここには存在していないようだったけれど。
大成功
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エア・ルフェイム
子供だってなんだって強い人は好き
戦うことだって好きだ
ましてや世界の命運かかってるんじゃ、
これはもう血湧き肉躍るってやつよね!
ここから先はとおせんぼ!
どうしてもっていうならエア達を越えてゆけ!
―さぁさ、楽しく一緒に遊びましょ?
あえて縛霊手片手に真っ向から立ち向かう
勝負は正々堂々とが一番だもん
見える攻撃は見切りでひらりとかわす
…けど…見えないのはずるくない?
あちこち痛くてちょっぴり泣き言
でもこんなことで挫けてる暇はないの!
ロン君を巨大化させて一気に畳みかけに
ついでにロン君の影に隠れながらさっと五芒星描いちゃう
これはれっきとした戦略!ずるくないんだからね!
私とロン君の絆パワー
とくと味わっていってね!
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目の前にいるのが子供であろうと、大人であろうと関係ない。
とかく、エア・ルフェイム(華焔・f02503)は強い存在が好きだった。
戦うことだって好きだ。ましてや、世界の命運がかかった大戦ともなれば――。
「これはもう血湧き肉躍るってやつよね!」
さぁ、かかってきなさい、と意気込むエアの前に、幼子達の群れが現れる。
「ここから先はとおせんぼ! どうしてもっていうならエア達を越えてゆけ!」
生気のあるような、無いような。表情のあるような、無いような。
どのような妖怪に、どのような骸魂が取り憑いているのか。それすらも、エアには関係ない。
塔を守る使命を抱えた己に、挑んでくるならば戦い討ち果たすまでだ。
「――さぁさ、楽しく一緒に遊びましょ?」
に、と口角を上げて軽快に笑い、エアは縛霊手を備えた片手を大きく振りかざし、真っすぐ、真っ向から立ち向かっていく。
正々堂々がエアの信条だ。あちらがどう相対してくるかを把握するまでは、絡めてなんて使う気はない。
そんなエアの側面から、べきり、と何かが剥がれる音が聞こえる。
即座に視線を向ければ、誰もいないはずの場所で、並んだ木の柵がはぎ取られ、エアへと向かってくるのが見えた。
よっ、と一声、ひらりと身を翻してそれを躱すエアだが、同時に、何か見えない圧力のようなものを眼前に感じて、咄嗟に、縛霊手を掲げ身を庇う。
「くぅ……!」
見えない何かに、攻撃された。
なるほどこれは厄介だと理解するエアは、気配を探り、対応しようとするも、どうしても見える攻撃に意識が引きずられ、見えない攻撃を受けてしまう。
ずざっ、と体勢を崩して大きく吹っ飛ばされたエアは、ずきずきと痛む感覚に眉をしかめ、むぅ、と少しだけ頬を膨らませた。
「……見えないのはずるくない?」
見える攻撃と織り交ぜてくるなんて一層ずるい。
でも、それも策略と言われればそれまでだ。意思の疎通が可能な多数である時点で、連携と言う手段が取れるのだから。
ひょい、と立ち上がり、ぽん、と砂埃に塗れた膝を払う。
縛霊手をぎゅっと握り直し、エアは気持ちをリセットした。
そうだ、こんなことで挫けている暇はない。
相棒である絡繰り黒猫の『ロン君』を、呼ぶ。
エアの傍に駆け寄った黒猫は、するりとその足元に侍り、くるり、エアの周りを一周するや、猛獣さながらに巨大化した。
「さぁさロン君、レッツゴーショータイム!」
絡繰りの体を駆動させ、幼子の群れへ突撃せんとするロン君の影で、エアは素早く五芒星を描く。
展開された治癒結界は、エアの傷を癒し、痛みを取り除いてくれた。
「これはれっきとした戦略! ずるくないんだからね!」
ちろりと振り返ってきたロン君に、しぃ、と親指を立てて。自身の準備も整えれば、後は、駆けるだけ。
敵味方の区別をしない黒猫の攻撃をひらりと躱し、グーを作った腕で思い切り、殴りかかっていく。
「私とロン君の絆パワー、とくと味わっていってね!」
見えない念動力にちょっと吹っ飛ばされようが、お構いなし。
相棒と共に大暴れしたエアが、せーので殴り飛ばした妖怪が吹っ飛び、そのまま倒れるのを見届ければ。百霊鎮守塔を狙った一団は、無事に、一掃されるのであった。
大成功
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