大祓百鬼夜行⑳~非実体化は吸血姫の特権
●雷の吸血姫
「うふふ……こんな素敵なことができるなんて、やっぱり力は持つものね!」
その属性の一つに雷を持つオブリビオン、『狂乱の吸血姫』バージニア・ネクタリアは大祓百鬼夜行において重要な鍵を握る、妖怪の変貌した姿。世界を破壊しようと企むバージニアはあろうことか、電気を操りUDCアースの通信網に潜り込んできたのだ。
現代社会とは通信インフラに大きく支えられている。故に、彼女の凶行は止めなければならないが――。
見出された弱点は、今や街の遺物となりかけている、電話ボックス。
そこへ打ち込む番号は。
●カクリヨファンタズム・大祓百鬼夜行
「電気の妖怪が暴れています! 止めましょう!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が視た電気の妖怪は、今度はちょっと毛色が違うようで。
「この電気の妖怪は『大祓骸魂』を私達に認識させるために骸魂を喰らって、今は『狂乱の吸血姫』バージニア・ネクタリアというオブリビオンになってしまっています! 彼女はUDCアースの通信網の中を非実体化して飛び回っているため捕らえる手段はないと思われましたが、一つだけ、『電話ボックス』という弱点があったんです!」
なんだか奇妙な弱点だ、と思う者もいるかもしれないが、事実なので今は飲み込んでおくしかない。
「それで、電話ボックスをどう使うかというと、『メリーさんの電話番号』というものでアクセスするんです。その番号は『090-2410-9679』なので、よく覚えていてください! アクセスすると、なんと、受話器から妖怪が実体化され、飛び出してきます! 理由は不明ですがスマートフォンや固定電話では無理なようなので、必ず公衆電話の電話ボックスから行ってください! 妖怪が実体化されたら、あとは倒すだけですね! それと、電話ボックスを壊すと妖怪も非実体化してしまうので、戦う際は注意してください! 戦争もいよいよ後半戦です! 疲れも溜まっているところかもしれませんが、頑張っていきましょう!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
戦争シナリオです。戦争の概要は専用ページをよろしくです!
●フラグメント詳細
第1章:ボス戦『『狂乱の吸血姫』バージニア・ネクタリア』
電話ボックスを見つけて「メリーさんの電話番号(090-2410-9679)」でアクセスすると、受話器から妖怪が飛び出すという……なんだか凄い光景な気がしますが。
あとは普通に戦えばいいかと思いますが、電話ボックスを破壊しないようにだけ、注意しましょう。
●MSのキャパシティ
戦争シナリオってことで青丸足りたら即完結の可能性が高いです。ご了承ください。
第1章 ボス戦
『『狂乱の吸血姫』バージニア・ネクタリア』
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POW : 血雷の蛇(ブラッディ・ヴァイパー)
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【闇+雷属性の、刀身を分割した蛇腹剣】で包囲攻撃する。
SPD : 敵意穿つ魔符(マリス・カード)
自身が【敵対心や恐怖心】を感じると、レベル×1体の【攻撃魔法&能力弱体魔法を発動するカード】が召喚される。攻撃魔法&能力弱体魔法を発動するカードは敵対心や恐怖心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ : 憧憬と恐怖の狭間で(ラブ・アンド・フィアー)
【生前恋心を抱いていた退魔騎士の青年の衣装】に変身し、武器「【蛇腹剣&魔法カード&ハイヒール】」の威力増強と、【マント】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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七那原・望
アマービレで呼んだねこさん達を外にいっぱい配備してから電話なのです。
電話番号は090-2410-9679、でしたね?
敵が現れたらすぐにオラトリオで殴り飛ばして電話ボックスから引き離すのです。
そしてねこさん達の多重詠唱全力魔法の結界術で電話ボックスとねこさん達、そしてわたしを護りましょう。
そんな力全然ステキじゃないのです。
第六感と野生の勘で蛇腹剣の動きと敵の攻撃を見切り、結界の中で機会を伺いながらユニゾンに魔力を限界を超えて溜めるのです。
チャンスを見つけたらすぐ飛び出し蛇腹剣の隙間を縫いつつ素早く接近、跳び上がって真上からリミッター解除全力魔法攻撃力特化Lux desireを零距離射撃なのです!
●呼ばれて飛び出たバージニア
「ねこさーん、出てきてくださーい」
電話ボックスの前で七那原・望(封印されし果実・f04836)はアマービレと呼ばれる白いタクトを振っていた。ねこじゃらしを扱うが如くふりふり。すると魔法猫がポポポポン、とわんさか現れて、あっという間の猫王国。
「電話ボックスの周りに居てくださいね。今から敵を呼び出しますから」
魔法猫達は望の指示に「にゃあー」と合唱し、それぞれ決まった配置につく。望は電話ボックスの戸を開けて中に入ると、受話器を取ってボタンをプッシュ。
「電話番号は090-2410-9679、でしたね?」
一つ一つ数字を声に出して、メリーさんの電話番号をダイヤルする。すると――。
「…………ぃぃやぁぁぁあああっっ!!」
耳に当てるスピーカー部分からバージニアがにゅるんと飛び出し、電話ボックスの外へ吐き出された。アスファルトの地面にずべしゃっと転がる。
「何、何!? え、嘘、実体化してる! 嫌っ!! は、早く通信網の中に戻らないと――」
「そうはさせないのです」
バージニアが公衆電話へ突っ込もうとするところ、望は即座に電話ボックスから飛び出すと実体のあるエクルベージュ色の影、オラトリオを振り回しバージニアをスマッシュ。
「ふげっ!?」
左頬を強烈に殴打されたバージニアはライナー性の軌道で魔法猫達の頭上を越えていく。
「ねこさん達、結界術をお願いするのです。電話ボックスと皆さん、そしてわたしを護ってください」
「「「にゃ! にゃにゃにゃ~♪」」」
魔法猫達は揃って右前足を上げ、一声鳴くと、力強い大輪唱で望を支援する。張り巡らされた結界は何層にも重なって、電話ボックス、魔法猫達、そして望をドーム状に覆っていった。
「そこをどきなさい!」
「嫌なのです」
打ち飛ばされたバージニアが立ち上がり怒声を浴びせてきたが、望は毅然とした態度で迎え撃つ。
「なんでよ! せっかく非実体化できる素敵な力を手に入れたのに――!」
「そんな力……全然ステキじゃないのです」
「アンタにはわからないわよね! この力の価値なんて!」
ヒステリーを起こしたかのような甲高い声で喚くバージニア。
「血雷の蛇(ブラッディ・ヴァイパー)!」
パシリ、とバージニアの腕から闇の電撃が迸ると、宙に何十という蛇腹剣が発生し、複雑な幾何学模様を描き出した。バージニアを中心に広がる模様は望へと侵食範囲を伸ばしてくる。
土砂降りのように叩きつけてくる刃。それを阻むのは結界だ。強固に固定された多重結界が闇雷の斬撃を受け止めている間、望は第六の感覚と生存本能とも言うべき野生の勘で飛翔経路を読みつつ、手には真核・ユニゾンを持ち魔力を溜める。
器には容量というものがあるが、強度によっては限界を超え得る。ユニゾンは望の魔力を受け止めて、その形を保ったまま限界を超えた。
煌めく金色の輝きを放つ果実。結界に打ち付ける幾何学の刃は薄皮を一枚一枚剥ぐが如き侵食速度。随分時間を稼いだものだ。
「――そこなのです」
そして幾何学故の周期性を望に見切られる。疾走から結界を飛び出し、針に糸を通す精度の身の捌きで蛇腹剣の空隙に突入した。
肌に触れるか、触れないかという超至近に刃は闇雷を閃かせて飛翔していた。視覚で追えば眩暈は必至。その点、目を覆う望は軽やかに潜り抜けていく。直進から一歩右に抜け出し開けた空を臨むと、高く跳躍し果実を両手で空に掲げた。
跳躍の頂点から落ちる先はバージニアの頭上。
「あの輝きは――!」
バージニアは危機感を覚えて宙に蛇腹剣を走らせる。しかしバージニアは望に時間を与えすぎた。魔力充填も然ることながら、バージニアの頭上に至れる光の道を、望は脳裏に描き出していた。
『全ての望みを束ねて……!』
「ひっ――」
振り下ろしぶつけられる全力魔法。堰を切ったように溢れた膨大な光の奔流がバージニアの全身を厚く覆って焼いていく。
「ぎぃぃぃゃぁあああ!!」
極限すら超える熱量は光でありながら灼熱に匹敵した。バージニアは濁った叫び声を上げながら光を掻き分け縋り所を求めるも、何にも縋れず光に溺れ、身を焼かれ続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
楠葉・狐徹
【POW】
周辺の電話ボックスから電話をかけて呼び出す。現れたら刀を抜いて戦闘開始
「吸血姫お願いしますって冗談で言ったら本当に来やがった。お前を指名したのは俺さ。おっと、キャンセルやチェンジは受け付けないぜ?お前はここで俺に斬られるんだからな!」
敵が蛇腹剣を飛ばしてきたら【カウンター】と【なぎ払い】で受けつつ隙を伺う
「幾何学模様ならば必ずカーブを描くような軌道になるはず…なら真正面がガラ空きになる隙があるはずだ。」
曲がる軌道の合間を突いて正面から接近。成功したら散桜斬りを使用
「見えたぜ、お前の殺し方…!どうやらお前は接近戦は不得手みたいだな。」
※アドリブ&連携OK
●時を経てやがて0になる
「お、あったあった」
緑の受話器の看板が目印。楠葉・狐徹(表裏一体の刃・f17109)は電話ボックスを見つけると、早速中に入り、メリーさんの電話番号をプッシュする。
090-2410-9679、この数字の並びの時だけは、硬貨もテレホンカードも無しに繋がるホットライン。
「……おし、これでいいな。すいませーん、吸血姫お願いしまーす」
受話器を宛がって冗談めかした注文をしてみると、スピーカー部分から聞こえてきたのはざあざあ喧しい砂嵐の音。耳を劈くほどに膨れ上がってきて狐徹が思わず耳から離すと、
「…………ぃぃぃぃやああまたああぁ!!」
悲鳴と共にバージニアが頭から飛び出してきた。開放されたガラス扉の縁に額をぶつけ、ピンボールの如く跳ね出されて転がっていく。白磁の肌は黒く煤けて、衣服やマントも所々燃え千切れていた。
「吸血姫お願いしますって冗談で言ったら本当に来やがった」
狐徹は受話器を戻すと、電話ボックスを出て浄玻璃刀を抜いた。
「誰よ! どういう方法か知らないけど、またアタシを呼び出して!」
「お前を指名したのは俺さ。おっと、キャンセルやチェンジは受け付けないぜ? お前はここで俺に斬られるんだからな!」
「そんなの絶対お断りよ! 血雷の蛇よ――飛びなさい!」
赤黒の雷が空間の亀裂となってバージニアの頭上に弾け飛ぶと、エイのヒレを模したような分割された蛇腹剣が無数に吐き出されて泳ぎ出す。飛翔軌道はそれぞれが複雑な幾何学模様。しかし緻密に操作された刃は一瞬たりとも交わることなく狐徹へと襲い掛かってくる。
「ふっ――っと、こいつは、なかなかっ!」
狐徹は包囲してくる蛇腹剣へ向けて五月雨の薙ぎを放つ。初めは刃の圧に押され気味だった剣戟も、火花散らして蛇腹剣を弾き返すうちに薙ぎの速度が増し、次第に刃の真正面を捉えるようになった。勢いを最大限活用されて打ち返された蛇腹剣は宙へ大きく弾き出され、蛇腹の網の目は少しずつ広がっていく。
「幾何学模様ならば必ずカーブを描くような軌道になるはず……なら真正面がガラ空きになる隙があるはずだ」
蛇腹という特性が生む曲線美はバージニアの隙となり得るか。模様の折り重なりは互いの隙間を埋める周期性を持つが、それも時間軸を極限まで伸ばしていけば、そのどこかに全てが0となる極点が生じる。
狐徹は蛇腹剣を刀に受け耐える。腕には錘を一つずつぶら下げられているような疲労を感じ始めていたが、なお刀を振り続けて機を待った。
「いい加減……倒れなさいよっ!」
「はっ、それこそ『絶対にお断り』だ!」
押し切れないバージニアが苛立ちを募らせる中、その時は不意に訪れる。
狐徹とバージニアを繋ぐ一本の道から全ての刃が逸れていく瞬間が。
「ここだ!」
虎視眈々と狙っていた。狐徹は刀を引くと若干の前傾を保って飛び出す。蛇腹剣が引き潮の如く遠ざかり、正面には見開く眼で狐徹を見るバージニアの姿があった。
「なっ……蛇腹剣が……!」
思いのまま動かしていたはずのそれは、狐徹が駆け抜ける一瞬だけバージニアに反旗を翻す。詰める狐徹にバージニアの体は反応しきれない。
「見えたぜ、お前の殺し方……! どうやらお前は、接近戦は不得手みたいだな」
飛翔させる蛇腹剣も、その他の魔法も全ては敵を寄せ付けないための結界。そこへ突如として現れたワームホールから乗り込んできたのが狐徹だった。
狐徹は間合いに踏み込むと、中段から胴を斬り裂かんとする一閃を放っていった。刹那の閃きにバージニアは後方へ体をずらす動きを見せながら、右手を差し出し刃を止めに入るが。
高々オーラの薄膜を纏った程度の手だ。狐徹が放つ横薙ぎを前にしては豆腐に等しき強度。すぱんと滑らかに刈り取られて鮮血と共に手首が宙を舞っていた。
「いやあぁぁぁぁ! 手が! アタシの右手があぁぁぁっっ!!!」
現実に脳の処理が追いつかなかったか、バージニアの絶叫は一つ遅れて轟いていた。
大成功
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水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
電話から飛び出してくるとは……アグレッシブなメリーさんですね。いえ、メリーさんではないのでしたか。
電話ボックスを丸ごと液体金属で覆い密閉保護します。天井付近や下部の隙間部分も埋め、電話機本体も覆います。マイクとスピーカーは風属性の触手で代用。バージニアさんが出れるようスピーカー部分は最初だけ開けておきましょう。自身はボックスに入らずドアを閉め、外から遠隔操作でUDC液体金属を操って電話をかけます。
バージニアさんが出てきたら受話器部分も閉じ、電撃、炎、氷を浴びせます。UDC液体金属で覆っていますので電話ボックスは無傷
「作戦通りですが、相手の姿が見えないのが難点ですね」
●見えない箱の中
「電話から飛び出してくるとは……アグレッシブなメリーさんですね。いえ、メリーさんではないのでしたか」
その名はバージニア・ネクタリア。愛称にしても似つかわしくないメリーの名を冠する電話番号で何故彼女が飛び出してくるのかは謎のままであった。
水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の一面として存在するロキは、準備が整うまでの暇を思考で潰す。地を這い出していくUDC液体金属は電話ボックスを丸ごと飲み込むように覆っていき、そこには黒く玉虫色に輝くオブジェが出来上がった。
外側と内側の両面から覆うことで完全なる密閉保護を完成させ、さらには電話機本体も覆い尽くす。しかしバージニアが出てこなければこれらの防護も意味を成さない。受話器のマイクとスピーカーだけは風属性の触手を用いた代替的な封鎖、スピーカーはバージニアが出てくるまでは開放状態で放置する。
扉を閉めれば、触れ合った液体金属はぴたりと密着して閉鎖空間を作り上げる。ロキ自身は電話ボックスの中には入らず、事の始まりから終わりまでを全て液体金属に任せることにしていた。
「番号は……」
ロキの記憶の下、ボタンを押すのは液体金属だ。一か所ずつぺこぺこと凹んだ圧で番号がプッシュされ、メリーさんの電話番号へのアクセスが果たされる。
「……ぃぃぃいいひいい――ぐべっ!?」
反響した悲鳴の最中に起こった衝撃は、バージニアが受話器のスピーカーより吐き出されたことを意味していた。そこは閉鎖された液体金属の海。
「今度はっ……どこ!? ここ!? ――あ、ちょ……何塞いでんの、よっ……!」
右の手首から先を失っていたバージニアは受話器をちょん切れた腕で押さえつけ、左手で液体金属を剥がしにかかる。だが液体金属も譲らず膠着状態。そのうちに、バージニアの背後へにゅるりと複数の触手が伸びていた。
それぞれ雷、炎、氷の属性を持ち、竹輪のような開口部から電撃、火炎、氷晶を一斉に照射した。バージニアの体は三色に分割されて、麻痺と火傷と凍傷を同時に引き起こす。
「あづっめっ――いだあああぁぁぁぁ!!!」
狭い空間でのた打ち回るバージニア。体を激しく周囲に打ち付けていたが、液体金属は全ての衝撃を吸収していた。爛れ固まった肌は元の美貌など見る影もなく、ゾンビの如き容貌となってしまっていた。
反撃すべき相手の居場所もわからず、痺れて焼けて凍り付いたバージニアの体は液体金属の壁にもたれかかってずり落ちていく。だがその様子は、当の本人であるバージニアのみが知るところ。
「作戦通りですが、相手の姿が見えないのが難点ですね」
ロキの思惑は全て果たされたが――液体金属に覆われた電話ボックスは、まさにブラックボックスなのであった。
大成功
🔵🔵🔵
電話・ボックス
クククク....よりにもよって通信ネットワークの中に逃げ込むとは愚かな。
これは我がグリモアテレコムセンター社への明確な営業妨害と受け取った。
電気を操る妖怪とやら、我が社の総力を上げ駆逐してやろう
.....!
ーグリモアテレコムセンターCEOー
↑(と書かれた電話ボックスが鎮座している)
ピポパポ←(早速自らがメリーさんに電話)
(以下自動音声)
お電話、ありがとうございます。
此方は、グリモア・テレコムセンターです。
↓
受話器からバージニア出現
↓
鎧装パーツの、転送を、開始します。
↓
彼女を閉じ込めたまま巨大ロボットに変身(攻撃回数重視)。
尚、彼女を入れた機体は手の部分にしておく。
↓
お前が武器になるんじゃあ!!
●通信網の安全と未来を守ります
通信網の中へ侵入したオブリビオンを駆逐することに、並々ならぬ熱意を燃やす者がいた。
「クククク……よりにもよって通信ネットワークの中に逃げ込むとは愚かな。これは我がグリモアテレコムセンター社への明確な営業妨害と受け取った。電気を操る妖怪とやら、我が社の総力を上げ駆逐してやろう……!」
電話・ボックス(旧式・f17084)とは、まさに名が体を示す存在。鎮座する電話ボックスに記された肩書は「グリモアテレコムセンターCEO」。社の頂点が直々に動いていた。
ボックスはその名の通り、電話ボックスである。UDCアースにて緩やかに数を減らしつつある電話ボックスなどに頼らずとも、自らメリーさんの電話番号へアクセスすることができるのだ。
ボタンもプッシュではなくタッチパネル式。独自の進化を遂げているボックスは早速ピポパポと信号を送る。
「お電話、ありがとうございます。此方は、グリモア・テレコムセンターです」
無機質な音声が流れると同時に受話器がガタガタと震え出し、バージニアのようなボロ雑巾、もといボロ雑巾のようなバージニアを吐き出した。
四肢には麻痺と火傷と凍傷が混在して、右の手首から先を無くしたそれは、金属の台に左手を掛けながら、どうにかこうにか立ち上がろうとしていた。
「ぅあ……もう、何度、目……」
行く先々で猟兵の襲撃を受けていたバージニアの体は崩壊寸前。そこへ投げかけられる声は、無情なまでに淡々と役目をこなす。
『鎧装パーツの、転送を、開始します』
ボックスが閉じてバージニアを閉じ込めると、その円筒体は81台の同型機が合体したスーパーロボットへと変形した。バージニアが格納された1機は皮肉にも、彼女が失っていた右手となっていた。
「お前が武器になるんじゃあ!!」
「ひゃ――ぎゃっ、んべっ!?」
ぶん、と振り回される右手の中でバージニアはシェイクされ、天井やら床やらに激しく体を打ち付け続けた。攻撃回数に重きを置いた構成により、バージニアが内部で衝突する回数は通常の5倍となり、必然的にダメージも5倍に跳ね上がる。
天も無くし、地も無くし、宇宙空間を漂うデブリのようにズタボロになったバージニアはやがて、骸魂の残骸を垂れ流して吸血姫の力を失っていく。
「ククク……! 我が社に――敵は無し!」
グリモアテレコムセンター社に功績がまた一つ、積み上がった瞬間だった。
大成功
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