大祓百鬼夜行⑧〜残照
●彼岸と此岸
その間には境がある。別の理、別の時。此岸から彼岸へ行ったものは帰らず、戻らぬ。
されど此処は幽世、時は異変。間に走る川は時に極狭くなる、その様な地。故に橋が何処から流され掛かる事もある。役目をとうに過ぎた朽ちかけの橋が雑に彼岸と此岸の間に流れ着き、俄に二つの世を繋ぐ。
此岸の者が橋の袂に立てば縁深い者が彼岸に立つだろう、本来ならば交わらぬ者たちが泡沫の聯絡を取れば、その流れで橋は朽ちる。
此岸の時で日が月を呼ぶ時、彼岸の時は月が日を呼ぶ。だとしても此岸からは唯の残照に過ぎず、夜更と共に去りゆくものでしかない。
●
「皆には会いたいけどもう会えない人っている?」
リアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)は静かに問いかけた。大祓の最中とは思えない穏やかな口調で問いかける。
「もし、そう言う人に会いたいのなら、カクリヨファンタズムのある場所に行って欲しいんだ」
それはカクリヨファンタズムにある『川』とそれに架かる腐りかけの『橋』だという。
「それはまぼろしの橋。この橋で佇んでいると、死んだ想い人の亡霊が現れるんだ」
想い人、と言ってもそれが必ずしも愛おしきものとは限らないだろう。あるいは殺し損ねた敵であったり、佇むものの後悔を掻き立てるだけの者が現れるかも知れない。それこそ袂に立つもののこれまで次第だろう。
「どんな相手が出てくるにしてもできることはたった一つ、言葉を交わすことだけ」
橋は脆い。ただ言葉を介した思いのやり取りだけでも一晩も続ければ崩れて川に流されていくという。
「望む相手が出るとは限らない、けれどそこに立つ人の想いが強ければ強いほどそれを頼りに相手はやってくる」
もしかしたら自分が見ないようにしてきた記憶を頼りに来るかも知れない。それは恐らくそこに立つものに衝撃を与えるだろう。
「それでも良いというのなら行ってきて、私からはそれだけ」
いつになく静かにグリモア猟兵はそう呟いた。
西灰三
いつもお世話になっています。
西灰三です。
今回は大祓百鬼夜行のオープニングをお送りします。
詳しい内容はオープニングの通り。
以下プレイングボーナスとなります。
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プレイングボーナス……あなたの「想い人」を描写し、夜が明けるまで語らう。
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なお誠に勝手ながら、状況次第で再度のプレイング送信をお願いすることがあるかも知れません。
ご了承の上の参加をお願いします。
それでは皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 日常
『想い人と語らう』
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POW : 二度と会えない筈の相手に会う為、覚悟を決めて橋に立つ。
SPD : あの時伝えられなかった想いを言葉にする。
WIZ : 言葉は少なくとも、共に時を過ごすことで心を通わせる。
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紅月・美亜
「会いたくて仕方ない相手、か……私向けの案件じゃないだろコレ。特に思い当たらないぞ」
妹は生きてるしな、普通に。
……何だ、コレは。剣? 蒼く光る……剣。
「殺せ」
誰だ、お前は。
「殺せ。妹を殺した奴を殺せ」
これは亡霊……? お前は誰だ。妹の仇だと? 私には関係ない。
「いいや、私には関係がある」
「「お前は、私だ」」
……お前が、私に力を与えたのか。ただのUDCの一般ゲーマーに過ぎなかった私に、力を。だが、お前は私だな? 過去の私か……既に消えた世界の私。
私がお前に会いたかったんじゃない。お前が私を呼んだのか。
……もう、居ないか。だが、言いたい事は分かった。
「殺さなければならん、奴を」
●Continue
紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)はふと顔を上げた。その時になってはっと眉をひそめる。
「ここは……アレか? まぼろしの橋ってヤツ」
彼女とてグリモア猟兵である。今現在進行中の状況やその作戦には目を通している。しかしこの案件については関わらないようにしていたはずだ。
「会いたくて仕方ない相手、か……私向けの案件じゃないだろコレ。特に思い当たらないぞ」
だからこそ自分が今ここにいる事が不思議で仕方がない。気にはしている妹は健在だし。そう考え彼女が橋から視線を外し踵を返そうとすると、突如手にずっしりとした重さが生じる。
「………何だ、これは」
いつの間にか握らされていたものが手の中にあった。それは自分ではまず選ぶような得物ではなく。
「……剣? 蒼く光る……剣」
ふいと幽世の月に掲げれば、蒼い軌跡が刀身を追う。果たしてこれは何なのか、美亜が困惑していると彼女の背中、橋の向こう側からどこかで聞いたことがあるような声で、聞いたことのない言葉が投げかけられた。
『殺せ』
「……っ!?」
美亜が振り向くと小柄な女らしきものの影が橋の向こうに立っていた。
「……誰だ、お前は」
『殺せ。妹を殺した奴を殺せ』
これは、なんだ。さっきから意味の分からない事ばかりだ。
「亡霊……? お前は誰だ。妹の仇だと? 私には関係ない」
そうだ、関係ない。関係ないはずだ、それなのに美亜はその場を離れることができない。所詮あれは橋を渡ることなぞできないはずなのに。その理由を理解しているのか確信に満ちた声で影は言葉を続ける。
「いいや、『私』には関係がある」
そう影が言った瞬間、美亜の裡からぞわぞわと何かが登り口から這い出てくる。
『「お前は、私だ」』
咄嗟に美亜は口を抑えるが、既に吐き出された言葉の意味は彼女の全てが肯定してしまっていた。彼女が手を下ろし橋の向こうを見るとその先で影が同調するように揺れていた。
「……お前が、私に力を与えたのか。ただのUDCの一般ゲーマーに過ぎなかった私に、力を。だが、お前は私だな?」
それに返事はない。ただそれが間違っていない事だけは理解できる。
「過去の私か……既に消えた世界の私」
今手にあるこの剣も恐らく『私』のものなのだろう。剣に生死は無くだからこそ託された。
「私がお前に会いたかったんじゃない。お前が私を呼んだのか」
影はとうに薄れ切り何かを言おうとして。消えた。……もう返事はない。しかしメッセージは受け取った。
「殺さなければならん、奴を」
大成功
🔵🔵🔵
隠神・華蘭
わたくしの身内に亡くなったものなど……おや?
あぁいましたねぇ貴方達が。
化けが出来ず車に轢かれたり狩られたり飢えたりで死んでいった普通の狸達。
人間の言葉など発せないでしょうしわたくしが通訳でお話しますね。
どうですあの世とやらは、えんじょいできてます?
質問ついでにUCで炎を一つだして明かりにしておきますね。
この炎です? ちゃんと使っていますよ。
人間は燐火と呼ぶそうですねぇこれ。貴方達の骸が主成分の怨みの炎。
ま、最近の使い道はお馬鹿なことばかりですが。
怨み塗れより楽しく燃えたほうが貴方達も気楽でしょう?
人間嫌いで憎しみまみれはこの華蘭だけで十分ですよ。
では、あちらで会ったらまたお話しましょうね。
●火継ぎ
隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)がここにいるのは言うなればただの好奇心に過ぎない。喪われてもなお会いたい者がいない者がいた時、果たしてどんな反応があるのか。少しだけそれを知りたかっただけだ。
(「まあわたくしの身内に亡くなったものなど……おや?」)
だから橋の向こうに何かがいたのを意外に思ったのだ、そしてその姿を見てようやく得心する。
「あぁいましたねえ、貴方達が」
橋の向こうにいたのは彼女の膝丈程の獣の群れ。化けることも化かすこともできず、その上で人間を含んだ他の生き物や、変化する環境に耐えられす、地球で命絶えた狸達。なんとも言えない笑みを浮かべて華蘭は旧友に話しかけるような口調で言葉を紡ぐ。
「どうですあの世とやらは、えんじょいできてます?」
炎を浮かべて照らし出される彼らの顔からは表情をうかがい知るのは難しい。しかしそれでも狸たちの意図は分かるのか、彼らの鳴き声に合わせて華蘭は言葉を返す。
「この炎です? ちゃんと使っていますよ。……人間は燐火と呼ぶそうですねぇこれ。貴方達の骸が主成分の怨みの炎」
表情を微笑みのまま彼女は言う。狸達は何も言わず華蘭を見上げている。
「ま、最近の使い道はお馬鹿なことばかりですが。怨み塗れより楽しく燃えたほうが貴方達も気楽でしょう?」
ぱちぱちと爆ぜる炎の下で浮かぶ華蘭の表情は穏やかだ。
「人間嫌いで憎しみまみれはこの華蘭だけで十分ですよ」
その言葉とともに狸達は彼岸の向こうへと一匹、また一匹と去っていく。その背に彼女は変わらぬ調子で別れの言葉をかける。
「では、そちらで会ったらまたお話しましょうね」
大成功
🔵🔵🔵
月凪・ハルマ
現れる人物については予想が付く……というより、
その人しか思い浮かばない
かつての俺の持ち主だった『彼』
もっとも、その頃の俺はヤドリガミですらなくて、
そのせいかハッキリとした記憶が殆ど無い
……貴方が死んだ、あの瞬間以外は
……だけど
今の俺のこの性格とか、性質っていうのかな……
そういうのは、貴方から受けた影響が大きいんだと思う
俺にとって貴方は主であり、師であり、
そして、生き様を教わった父親でもあったんだ
――貴方を失った事は本当に悲しい。正直今でも引きずってます
だけど同時に、感謝もしているんです
俺は貴方に会えたから、きっと今此処に居る
だからこれからも、護る為に戦い続けます
貴方が最期までそうしたように
●バトンタッチ
その人は自分の事を知っているのだろうか?
月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)はふと思い返す。何故なら彼が、ヤドリガミとしての月凪ハルマが覚醒したのが、その人の死がきっかけだったのだから。単なる朧気な自我しかなかったはずの自分が、持ち主の『彼』の喪失による悲しみを軸として生まれたその瞬間。
(「あの時の事はハッキリと覚えている」)
それ以前の事は殆どないのに。それ以来ハルマはいなくなった『彼』のように振る舞い始めた。人の形の真似事をする時に一番見てきたからか、あるいは喪われた悲しみを補うために辿ったのか。何にせよ『彼』があらゆる意味で今のハルマを作ったとも言える。
(「今の俺のこの性格とか、性質っていうのかな……そういうのは、貴方から受けた影響が大きいんだと思う」)
ただ『彼』の武器に付いていただけのハルマは橋の袂に立ち、そして『彼』の姿を認める。『彼』は不思議そうにハルマを見る。意を決して『彼』にハルマは話しかける。自分の伝えたいことを伝えるために。
「貴方は俺を知らないかも知れないですが、俺はずっと貴方の近くで戦いを見ていました。……貴方の最後の時も」
ハルマの瞳の奥で本体の宝珠と同じ輝きが灯る。それを認めた『彼』はハルマの正体を理解する。ハルマは『彼』に対して更に言葉を続ける。
「俺にとって貴方は主であり、師であり、そして、生き様を教わった父親でもあったんです」
ずっと傍らで見てきたから、そう言える。
「――貴方を失った事は本当に悲しい。正直今でも引きずってます。……だけど同時に、感謝もしているんです」
『彼』は静かにハルマの絞り出すような言葉に耳を傾けている、それこそ父親のように。
「俺は貴方に会えたから、きっと今此処に居る。だからこれからも、護る為に戦い続けます。……貴方が最期までそうしたように」
『彼』はハルマの言葉を聞き遂げると力強く頷き、そして消え去っていく。ハルマは深く帽子を被り直してその場を去る。『彼』に伝えた事を実践するために。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と
彼の育ての親猫さんに会いに
歳が歳ですから、恐らくは、もう
でも…その猫さんとの出会いが、今のナイくんを形作ったというのなら
付き添いですが、ご挨拶に参りましたっ
ナイくんと仲睦まじく話す猫さん
会話の内容はよくわかりませんが…ちゃんと伝えなければ
はじめまして!彼の相棒を務め、支える、わたしはソラスティベルと申します!
親御さんに挨拶するみたいでちょっと緊張しますけれども、
伝えなければ
彼が今、一人じゃないことを
幸せに生きていることを、そして感謝を
わたしが彼とまた出会えたのは、きっとあなたがいたお陰
ありがとうございます、彼に生きる術を教え、彼を育ててくれて
ありがとう、おやすみなさい
ナイ・デス
ソラ(f05892)と、恩猫にあいに
約12年前、外見は6歳でも、中身は0歳で知識不足だった私が出会い、数日という短い期間でしたが、色々教えてくれた恩猫について話していて
すでに寿命を迎えているなら、あえると気付いて一緒に
恩猫。UDCアースの都会でボス猫してた野良。名無し
おでぶ。ぶっきらぼうな口調だが子供の面倒見はよし
当時から【動物と話す】ことができ『生まれながらの光』で調子をよくしてくれるナイに色々教えてくれた
覚えていてくれて
無事を喜び、パートナーのソラと再会できたことを祝い
元気でなと言ってくれる
私は相槌程度
当時のように光、癒し
言えなかった、お別れを
おやすみなさい
……死が、確認できてしまいました
●寝子は起き、また眠る
「ナイくんこっちですよ!」
手を振りながらナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)をソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が先導しながら川縁を歩いている。彼の足取りが重い時、その手を引くのは彼女の役目だった。ナイの動きが鈍い理由も概ね見当は付いている、付いてはいるのだけれどそれを口にすることはしない。
「ソラ、大丈夫です」
ナイだってソラが何も言わない理由を理解している、自分の為に口に出さない事くらいは。だからそれ以上に心配させるわけにはいかない。自分の足に速く進めと念じながら彼は橋の袂へ急ぐ。
「ここですね!」
存外に早く辿り着いた橋は見るからに朽ちそうで。にも関わらずその上にはふてぶてしく太り気味の一匹の老猫が鎮座していた。
『なんか五月蝿いと思って起きてみればお前か』
老猫が欠伸と共に鳴いた声がナイには酷く懐かしく聞こえた。
『お久しぶりです。覚えてくれていたんですね?』
『お前みたいにでかいガキの事なんて忘れたくても忘れられんよ』
恩猫はかつて会った時と同じ様な口調だった。彼はナイの後ろで静かにしていたソラに目を向けると、ソラもまた頭を下げて老猫に挨拶をする。
「はじめまして! 彼の相棒を務め、支える、わたしはソラスティベルと申します!」
まるで親御さんに挨拶するようで緊張する自分に少しばかり苦笑する。これではまるで、と。
『あれはお前のつがいか?』
『ツガイ……? パートナーのソラです。あのあと再会できたんですよ』
『ふうん。お前も一端のオスになったのか』
尻尾を揺らして鼻を鳴らす恩猫の様子にやや不思議そうな表情を浮かべるナイ。ただ老猫は彼の隣にソラがいることを喜んではいるようだ。
『そう言えばあの時みたいに傷を癒やしましょうか?』
『よせやい、今の俺には必要ねえ。お前もそれくらいの事は分かってここに来てんだろ』
恩猫はため息をついてからナイに対して説教を始める。
『良いか。お前はいつ死ぬか分からねえと思ってるが、それはお前だけの話じゃねえ。あと死ににくいからって自分の体を雑に使うんじゃねえ。死ぬことを怖がる事と、体を大事にしないのは別の話だ。……どうせお前まだ無茶ばかりしてんだろ』
図星だった、再生能力にかまけてこれまで色々やってきたから。
『そりゃ雄は雌を守って死ぬもんだ。けどなテメエすら大事にできない雄が、それ以上に大事にしなきゃならん雌を守れると思うなよ』
恩猫はソラを再び見る。その彼女は何か言葉を求められたのかと思い、頭をぴょこりと下げる。
「わたしが彼とまた出会えたのは、きっとあなたがいたお陰です。ありがとうございます、彼に生きる術を教え、彼を育ててくれて」
『守ってやれよ。いつまでもお前の腕があるとは限らんからな』
『……はい』
そこまで言い切ると恩猫はよろりと立ち上がり首を橋の向こう側へと向ける。
『そろそろ俺は行く。……元気でな』
完全に振り返った恩猫にナイとソラは別れの言葉を投げかける。
「ありがとう」
『おやすみなさい』
恩猫が尻尾を振って二人の言葉に返すとその姿は掻き消え、同時にまぼろしの橋も消えてしまう。
「最後まで怒られてしまいました」
「ナイくん……」
ナイは川の向こうを見て呟いた。いつの間にか川幅は大きくなり、もう声も届きそうにない。
「……死が、確認できてしまいました。……ソラ?」
不意にソラがナイを後ろから抱きしめた、今の彼が一人では無いことを伝えるために。
行く川の流れは絶えずして、しかも元の水に非ず。振り返って会いたいと願った時、人はまた一つ歩みを進めている。水も人も振り返りはすれども同じ位置や形をしているわけではない。
この橋はただそれだけを示し、そして消えていった。
大成功
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