大祓百鬼夜行⑩〜屋台の王道、それは粉物!
カクリヨファンタズムで『大祓百鬼夜行』が勃発してから早一週間。
妖怪世界の様々な場所で『もてなし衝動』を持て余すオブリビオン店主の屋台が、夜な夜な出現している予知は、既にいくつか出ている事は、猟兵達も既知のはずだ。
「私も、件の屋台店主が暴走する予知を見ましたの」
真っ赤な軍服風のステージ衣装を翻して、グリモア猟兵の蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)は、集まってくれた猟兵達へ予知の内容をグリモアから投影し始めた。
――草木も眠る丑三つ時。
そんな夜中に、香ばしいソースと仄かな青海苔の香りを漂わせる屋台があった。
やけに屋台は繁盛しており、その中から店主の威勢のいい声が聞こえてきた。
「なんやかんやゆーても、屋台の王道はタコ焼きちゃうか? こっそり焼きそばも用意したるさかい、お好み焼きもあるで! せやから、おっちゃん、ここで食うてってや!」
エセ関西弁を話す西の妖怪紳士が、屋台の暖簾をくぐって顔を出す東方妖怪のおっちゃんを引き止める。
「んなこと言ってもよぉ? 粉物で酒が飲めるかよ? 俺ぁ、もっとガッツリしたツマミで酒を呑みてぇんだよ!」
この言葉に、オブリビオン店主がブチ切れた。
「粉 物 は 主 食 や ろ が い !」
ゴリラ並みの腕力を誇るオブリビオン店主が、東方妖怪のおっちゃんの髪を引き千切る! 何たる無慈悲! おっちゃんの頭部は一瞬でハゲ山と化してしまう!
「アバババーッ!? 俺の髪がーッ!?」
「粉物は主食で、白飯がおかずや! 何なら主食がお好み焼きで、おかずがタコ焼きでもええんやでっ? 焼きそばでも可! れっきとしたガッツリ系やろがい!」
「なんだ、その炭水化物オンリーの献立はっ!?」
「黙らんかいワレ!」
「グワーッ!?」
凄まじい腕力でおっちゃんを強制着席させる店主!
「ちょっと待っときや! 今からワイが酒が進む激ウマ粉物料理を作ったるわ!」
東方妖怪のおっちゃんは後悔した。
他の客もみな、粉物に粉物を併せて、粉物で締めて酒やジュースを飲んでいる。
その目には、まるで生気が感じられない。
きっと完食しないと、あのゴリラの腕力で叩きのめされてしまうからだろう。
おっちゃんは命欲しさに、皿の上に山積みになった粉物パレードを無心で胃袋へ押し込み始めた……。
「皆様には、これから粉物パレードに参加していただきますわ」
ライムの言葉は非情だった。
この屋台にメニューには、タコ焼きに焼きそばにお好み焼きは当然のラインナップとして、うどんや蕎麦といった正統派麺類の他にも、アメリカンドックやチジミ等の異国風の粉物や、鯛焼きやクレープなどのスイーツまで網羅している。もちろん、酒類やソフトドリンクも充実している。
これらをすべて完全制覇してもよし、ひたすら同じ物を食べ続けるもよし、とにかくオブリビオン店主の『もてなし衝動』が解消されるまで猟兵が食べ続ければ、取り込んだ骸魂が抜けて、店主は元の姿へ戻るのだという。
「ですので、今回はただただ食べて食べて食べまくってくださいまし! でないと、UDCアースが粉物で氾濫して埋め尽くされてしまいますわ!」
無数のタコ焼きの雪崩で家が押し潰される未来なんて、此方から願い下げである。
「たくさん食べるような工夫やユーベルコードを駆使して、他の妖怪さん達が食べなくても良いように、皆様で頑張ってくださいませ。それでは、ご武運を!」
ライムはすぐさま転送の準備に取り掛かる。
猟兵達は、いかにたらふく食べるかを思案しつつ、カクリヨファンタズムの件の屋台へ向かうのだった。
七転 十五起
このシナリオは戦争シナリオです。
ですが、プレイング次第では戦闘が発生しません。
なぎてんはねおきです。
●プレイングボーナス
屋台グルメを食べまくる(戦わずともダメージを与えられます)。
粉物オンリーの屋台で食べ放題に挑んでもらいます。
猟兵が爆食を始めると、他の客が解放されて逃げ出すことが出来ます。
店主は猟兵達の食べっぷりに喜んで、逃げる客を気にしなくなります。
とにかくたくさん食べる工夫をして、店主が取り込んだ骸魂を抜き出しましょう。
●その他
キャラクターの年齢が未成年の場合、飲酒・喫煙プレイングは禁止です。
明記してきても、リプレイに描写はしかねますので御了承下さい。
コンビやチームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずプレイング冒頭部分に【お相手の呼称とID】若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能です)
それでは、皆さんの大食いプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『西の幹部妖怪』
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POW : 妖怪で紳士で改造人間!
【ゴリラの腕力】【紳士の余裕】【上司妖怪としての責任感】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : ノリノリアゲアゲコォオル!!
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【部下妖怪による応援で得たテンション】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : 強さの証明ッ!!!
対象の攻撃を軽減する【真の紳士の証であるタンクトップ姿】に変身しつつ、【天裂き地穿ち海を割るゴリゴリ紳士流格闘術】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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空亡・劔
地球まで巻き込む大異変ですって!?
この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いて生意気すぎよ!
そういう異変はあたしに起こさせなさい!
人死にも出そうとかセンスを疑うわ!
それは差し置いてお腹空いたからおすすめ頂戴
先ずはたこ焼きね(はふはふ
ねぇねぇ
チーズや明太子乗ってるのも欲しいわ
お好み焼き…ねぇ
ねぇ
ガーリックライスの上にお好み焼き乗ってるの頂戴
(むっしゃぁ
お腹一杯になったら
ちょっと運動したい
あんた付き合いなさい
(程よく模擬戦、ユベコも使って運動よ!!
あんた幹部妖怪なのね!この最強の大妖怪を崇めてもいいのよ(えっへん
あ、またお腹空いたから…
今度はお蕎麦食べたいわ
あげだま入れてね?(ずるずる
茶を啜り一息
インディゴ・クロワッサン
おっけー!食べまくるよー!
「たこ焼き!焼きそば!お好み焼き!うん、まずはサッパリとウーロンハイでー!」
まるで仕事の打ち上げみたいだけど、気にしない気にしなーい!
「お次は…焼きうどんとタコス辺りで、野菜攻めだー!」
ぷはぁ…麦酒で流し込むのも悪くないねぇ…
「それじゃ、もう一回たこ焼きと焼きうどんにして…あ、アメリカンドックも追加でー!」
瓶ラムネあるなら、瓶ラムネが良いなー
「で、僕のシメは…つぶあん入りとカスタード入りのたい焼きと甘い系のクレープで宜しく~!」
あ、他のお客さんの忘れ物は、僕が後で責任持って食べとくから気にしないで☆(こっそりUC:無限収納 で回収
「冷めても美味しいって最っ高…」
深夜の粉物屋台に猟兵が駆け付ける。
世界を救うべく、空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)とインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)がほぼ同時に暖簾をくぐった。
「地球まで巻き込む大異変ですって!? この最強の大妖怪である空亡 劔を差し置いて生意気すぎよ! そういう異変はあたしに任せなさい!」
意気揚々と着席する空亡。少し間を置いてインディゴも席に付いた。
「おっけー! 食べまくるよー!」
気合十分。お腹の空き具合も申し分ない。漂ういい香りに、彼のお腹が地鳴りのような催促を促した。
空腹の音を聞かれたインディゴ、音に気が付いて辺りを見渡す空亡と目が合った。
「おや? キミも猟兵なのかい? たくさん食べようねぇ!」
「ええ、勿論よ! 放っておくと人死にも出そうとかセンスを疑うわ!」
憤りながらおしぼりで手を拭く空亡。準備万端だ。
「らっしゃい! まず何から喰うねん?」
店主が屋台のメニューが書かれた藁半紙を差し出した。
空亡はその紙を突っ返すと、不敵な笑みを浮かべた。
「あんたのセンスは差し置いて、お腹空いたから店主のおすすめ頂戴」
「ほう? ワイの気まぐれフルコースを注文かいな? 自分、なかなかのツワモノとみたで!」
店主はワクワクしながら小麦粉を解き始める。
一方、インディゴはどんどん注文を告げていく。
「それじゃ、たこ焼き! 焼きそば! お好み焼き! あとは……うん、まずはサッパリとウーロンハイでー!」
「あいよ! 待っててや!」
店主の目の前の鉄板に小麦粉の解き汁と具材がが続々と焼かれてゆく。
まずはタコ焼きから。見事な串捌きでコロコロとひっくり返す様は心が躍る。
「お待っとさん! タコ焼きやでー!」
どんっ!と更に積まれたタコ焼きピラミッドが猟兵の前にそれぞれ差し出された。
「まずはたこ焼きね? 最初からすごい量だわ……」
「美味しそう! いただきまーす!」
空亡とインディゴははふはふと息を漏らしながら、熱々のたこ焼きを頬張る。
「「……美味しい!」」
猟兵2人の声がユニゾンした。
「外がカリカリ、中はトロトロね! 中のたこもごろっと大きめなのが嬉しいわ!」
「ソースに鰹出汁が混じってるのかなぁ? 香り高くて、これならいくらでもお腹に入っちゃうねぇ……ウーロンハイまだぁ?」
「あいよ! ウーハイ、大ジョッキや!」
店主が持ってきたウーロンハイを、待ち侘びていたインディゴは一気に喉へ流し込む。
「……ぷはぁ! これこれ! まるで仕事の打ち上げみたいだけど、気にしない気にしなーい! たこ焼き、美味ぁっ!」
10段以上積まれていたたこ焼きピラミッドは、あまりの美味しさに瞬時に解体されてしまった。
だが、空亡は何処か不満顔だ。
「……ねぇねぇ、あんた? チーズや明太子が乗ってるのも欲しいわ」
店主に味変を要求!
インディゴも聞き付けて便乗する。
「あ、可能なら僕もたこ焼きにチーズのトッピングお願いしまーす!」
普通、屋台にシャレオツなトッピングを求めるのは酷な話のはず。
だが、このオブリビオン店主の『もてなし衝動』は常識を打ち破る。
「……あるで、チーズに明太子!」
「「あるんだ!?」」
また猟兵2人の声が重なった。
「お次はお好み焼きやで! それとチーズ乗せと明太子乗せたこ焼きもセットで召し上がれ!」
UDCアースでいうところの大阪でみられるキャベツたっぷりのお好み焼きとトッピングたこ焼きのコンボが襲来!
「お好み焼きねぇ……? あむ……っ! はふはふっ、うん、うん、やるじゃないの!」
店主の粉物への情熱は本物だ、と空亡は確信した。
オブリビオンとなっても、その手腕は落ちるどころか天井知らずでレベルアップしている。
「ねぇねぇ、別個でガーリックライスの上にお好み焼き乗ってるの頂戴?」
「……あるで!」
「即答!? って、もう焼いてるのっ?」
店主は既に空亡の注文品を焼いていた。
ドヤ顔で店主は空亡の顔を見詰めて告げる。
「嬢ちゃんの食べたそうなもんは、顔を見ればだいたい分かるで!」
「な……っ? そんなにあたしの顔に出てたの!?」
ちょっと恥ずかしさで顔が俯いてしまう空亡であった。
「おっちゃーん! 頼んだ焼きそばとお好み焼き、まだぁ?」
すっかりほろ酔いのインディゴが料理の催促!
店主は他の妖怪達とは違う、積極的に料理を注文する姿勢にいたく感動する。
「待ってぇな、あんちゃん! これをこうしてこうで、こうや! 出来上がり!」
「いや、そうはならんやろー」
「なっとるやろがい! へい、お待っとさん!」
「ほんまやー、出来とるがなー!」
まるで仙界の特級料理人の如き早業調理に、インディゴのツッコミが冴える。
勿論、冷めないうちにインディゴはパクパクと平らげていった。
「うーん、どれ食べても美味しいとか、店主は天才かな? あ、お次は……焼きうどんとタコス辺りで、野菜攻めだー! あと生ビール、中ジョッキ!」
「あいよ! あんちゃんの食べっぷりにワイも心が躍るでぇ!」
気を良くしたオブリビオン店主、他の妖怪達の注文そっちのけで猟兵達への給仕に集中し始める。
これを契機に、ひとり、またひとりと屋台から逃げ出してゆく妖怪達。それでもきちんとお金は置いていくので律儀すぎる。
インディゴは焼きうどんとタコスをムシャムシャと頬張ると、キンキンに冷えた生ビールで喉奥へ押し込んでいった。
「ぷはあぁ~っ! 野菜たっぷりの粉物を麦酒で流し込むのも悪くないねぇ……!」
完全に酔っ払いへクラスチェンジしたインディゴ、追加注文も躊躇わない。
「それじゃ、もう一回たこ焼きと焼きうどんにして……あ、アメリカンドックも追加でー! あとラムネある? 瓶ラムネがあるといいなぁ!」
景気よく注文した品をガツガツ喰らってゆくインディゴ。
ヒエヒエの瓶ラムネに思わず笑顔が溢れる。
その頃、空亡は……。
「うぅ……ちょっとお腹がキツイわ……」
限界が、近付いてきたようだ。
「こうなったら……あんた、ちょっとあたしの運動に付き合いなさい!」
「なんでやねん! ワイは店の番があるっちゅーねん!」
「あら、軽く汗を流せば、もう少し食べられそうなのだけど……」
空亡のこの言葉に、店主は思案を巡らす。
彼の『もてなし衝動』は、何よりも優先すべき衝動なのだ。
「……せやったら、ほんの少しな?」
「助かるわ! それじゃ、早速ユーベルコードを使うわね?」
「ユーベルコード使うんやったら、ワイも本気だすわ! 強さの証明ッ!!! それは真の紳士の証であるタンクトップッ!!!」
エプロンとスーツを脱ぎ捨てた店主がタンクトップ姿になると、ゴリラ腕力を発揮する筋肉をバンプアップさせた。
「天裂き地穿ち海を割るゴリゴリ紳士流格闘術、嬢ちゃんにほんのちょいと見せたるわ!」
「我が根源……我が存在意義……魔王が在り方を我が身に示せ。我が名は空亡劔…神殺しの魔王が子なり……!」
空亡も背中に展開される氷の翼を広げ、時速440kmもの高速飛翔しながら拳を交えさせる。
紳士と魔王のバトルが深夜に勃発!
熱いバトルにインディゴが声援を送る。
「2人とも頑張れー! あ~、観戦にアメリカンドッグと瓶ラムネがある幸せ……! そこへ生ビール! カオス! ヨシ!」
完全に優勝しているインディゴである。
「あんた西の幹部妖怪なのね! この最強の大妖怪を崇めてもいいのよ?」
「いや、ワイ、お嬢様のこと最強とか知らんわ! すまへんな!」
互いにクロスカウンターが決まったところでバトル終了。
「……いい感じに胃袋に隙間が空いたわね。ねぇ、あんた、今度はお蕎麦が食べたいわ。揚げ玉入れてね?」
「あいよ! って東のやつやんか、それ! 『たぬきそば』ゆうたら、油揚げの乗ったそばやろがい!」
ということで、東西のたぬきそばを両方食すすことになった空亡であった。
そして、インディゴはというと……?
「僕のシメは……つぶあん入りとカスタード入りのたい焼きと甘い系のクレープで宜しく~!」
しっかりデザートまで網羅していた。
テーブルに残っている他の妖怪達が食べきれなかった手付かずの料理を、インディゴは店主に頼んで回収してゆく。
「あ、他のお客さんの忘れ物は、僕が後で責任持って食べとくから気にしないで☆」
ユーベルコード“無限収納(インベントリ)”で呼び出した小さな茨が纏わりついた扉に料理を放り込んでゆくインディゴ。
「此処の料理、本当に美味しいねぇ! それに冷めても美味しいって最っ高……!」
体よくテイクアウトまで成功させたインディゴ、文句なしに優勝してみせた。
「ねぇ、あたしも、あの青い人と同じデザートを頂戴?」
そして玉露茶を飲む空亡もアガリとなったのだった。
大成功
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ティー・アラベリア
ボクは思うのです
普段キャバリアとか、オブリビオン化した魔獣とか、ついでに人間とかを食べさせている戦闘妖精達に、たまにはまともな物を食べさせてあげるべきではないかと
というわけで、大量の戦闘妖精を引き連れて訪問いたします
大将、やってます?連れは……どんどん増えます
砲撃妖精はペリメニですか、砲兵と言えばロシアですものね
対人同化妖精は何を食べたいですか?え、たい焼き?意外と甘党だったんですね……
自爆妖精はたこ焼き?まぁ確かに爆弾みたいな見た目ですけれど
妖精達がモグモグ食べた栄養を魔力に変換して、追加で妖精を生成し、どんどん食べる主体を増やしていきます
あ、ボクはクレープをお願いします。クリームましましで
ティー・アラベリア(ご家庭用奉仕人形・f30348)は深夜の粉物屋台の前で思案に暮れていた。
「ボクは思うのです。普段キャバリアとか、オブリビオン化した魔獣とか、ついでに人間とかを食べさせている戦闘妖精達に、たまにはまともな物を食べさせてあげるべきではないかと」
ティーはその容姿端麗さとは裏腹に、地獄のような戦術や武装を駆使するプロフェッショナルだ。
その彼(見た目は愛らしいメイドだが、個体性別は男性だ)の戦術の中核を担うのが、戦闘妖精達である。
今回の任務内容は、その戦闘妖精達を労うのにうってつけであった。
……と、言うわけで。
「大将、やってます? 連れもいますが、構いませんよね?」
「構へん、構へん! で、お連れ様は何名おるん?」
オブリビオン店主の問いに、ティーは照れくさそうに答えた。
「それが……“たったの”490体だけなんですが……」
「ほーん? なんや、490体しかおらんのかぁ、って490体やてっ!?」
店主が屋台の前へ飛び出ると、ティーがユーベルコードで召喚した魔導砲撃妖精達がわらわらとたむろしているではないか!
「自分アホちゃうん? ワイ、ワンオペ経営なんやで?」
「ええ、でもたくさんボク達をもてなしてくださるんでしょう?」
初対面で、可憐な少女めいた上目遣いと期待に胸膨らませる無邪気さを発揮するティーの懇願を断れる者はなかなか居ない。
オブリビオン店主も『もてなし衝動』の限りを尽くし、意を決して首を縦に振った。
「よっしゃッ! ワイも男や! 500体だろうが5000体だろが、腕がもげるまで焼き続けたるでぇ!」
「……それ、言質として記憶させていただきますね?」
店主の宣言内容にニッコリと微笑むティーは、衝撃の事実を口にした。
「実は、後から連れが遅れてくるんです……近接防御妖精達に白兵戦支援妖精達、姿は視認できませんが浸透自爆妖精達も呼んであげないとですね。それから……」
「もうええわ! とにかく焼きまくるでぇ……!」
オブリビオン店主は、一心不乱に大量の小麦粉をだし汁に解き始める。
一方、ティーは妖精達が食べたい料理を聞いて回っていた。
「砲撃妖精はペリメニですか、砲兵と言えばロシアですものね。対人同化妖精は何を食べたいですか? え、たい焼き? ……意外と甘党だったんですね……って、自爆妖精はたこ焼きですか? まぁ確かに爆弾みたいな見た目ですけれど。近接防御妖精は温かき揚げ蕎麦? いつもは敵を寄せ付けない分、今日は温もりを掻き集めてソバに感じたいって謎掛けですか。遅れてくる白兵戦支援妖精は、後ほど注文を聞きましょうか」
店主はとにかく鉄板の上で大量の粉物を焼き続けては提供してゆき、妖精達がそれらをモグモグと平らげてゆく。食べた分だけ魔料が生成され、余剰魔力が新たな妖精達を召喚させていた。
「ふ、ふふ……ははは……っ! なんや、楽しくなってきたで! ワイの粉物料理をもっと喰っとき!」
大量注文をワンオペで消化してゆくオブリビオン店主は、次第にランナーズハイ状態に突入!
なんか頼まれていない料理も提供され始め、やや暴走気味の様子。
無論、妖精達はお残しなどせず、出された料理を魔力に変えて更に個体数を増やしていった。
「あ、ボクはクレープをお願いします。クリームましましで」
「ジャージー牛乳ヒャッホォォォーッ!」
特殊な道具を鉄板の上で回してクレープ生地を焼く店主の目が多幸感に溢れていた。
忙殺されて変なスイッチが入ってしまっている……!
ティーは店主の全体から漏れる黒い霧……骸魂の一部が発散されるのを目の当たりにし、目論見が成功したと確信した。
「やはりこういう依頼は、質よりも数で押し潰すに限りますね。衝動の発散は此方のほうが圧倒的に効率がいいですし」
全ては計画通りだとほくそ笑むティーは、受け取った生クリーム増し増しのクレープを上品かつお淑やかに頬張った。
大成功
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中小路・楓椛
アドリブ連携歓迎
粉モノですか?粉モノですね?
店主の言い分も理解できますが、本当に美味しい料理であれば食べる人間に貴賤の念すら頭に思い浮かばない筈です。今食べている方々は自由な表情をされていますか?
と言う訳で、先ずは粉モノ料理全種類を少量づつ注文して五感チェックで試食します。その上で隣で屋台を展開しダゴン焼き屋として試食した全ての品を私なりに工夫し【料理】してみましょう。
粉モノに一家言お持ちである店主サマが食べずに否定する事は…まさかありません…よね?(【言いくるめ】)
その上で改善された料理の出来そのものでの結論を期待しております――客の皆様、逃げられるなら今のうちに逃げて下さいまし。
妖狐の中小路・楓椛(ダゴン焼き普及会代表・f29038)は、自前の屋台を曳きながら現場へ駆け付けてきた。
「粉モノですか? 粉モノですね?」
確認するべく、客の食べている料理を確認。
焼きそば、お好み焼き、たこ焼きに鯛焼き、確かに粉モノばかりだ。
中小路はオブリビオン店主を呼び立てると、同じ屋台の主として忠言を渡し始めた。
「店主の言い分も理解できますが、本当に美味しい料理であれば食べる人間に貴賤の念すら頭に思い浮かばない筈です。今食べている方々は自由な表情をされていますか?」
未だ逃げることが出来ていなかった妖怪達の目は、ちっとも美味しそうに食べていないし目が死んでいた。
「これでは食事を提供する者として失格ではないでしょうか?」
「なんやいきなり来てからに? そない文句言うんやったら、一度喰ろうてから物言わんかい!」
怒るオブリビオンに、中小路が考え込む。
「確かに、仰るとおりです。わたしも“ダゴン焼き”なるモノを普及させんと日夜屋台を曳いて回る者。と言う訳で、先ずは粉モノ料理全種類を少量づつ注文して五感チェックで試食します。お願いできますか?」
唐突な中小路の注文に戸惑うオブリビオン店主だが、料理を食べてくれるならと調理を開始した。そして次々と出来上がる料理を食べ続ける中小路は、気付いたことをメモ紙にしたためていた。
「……大体分かりました。では、今度はわたしの番ですね」
中小路は自分の屋台へ戻ると、先程メモした料理をアレンジしてオブリビオン店主へ突き返した。
「どうぞ、食べてみて下さい。粉モノに一家言お持ちである店主サマが食べずに否定する事は……まさかありません……よね?」
「いや、ワイの屋台の横に屋台を構えられてモノ言うても……ってうんまぁっ!」
驚愕するオブリビオン店主!
「何やこれ! 生地と具材が互いを引き立てあってるやん! どないしたんっ?」
「お待ち下さい。その気持ちこそが大事なのです」
中小路の言葉に、オブリビオン店主はハッとなにかに気付かされた。
「その上で改善された料理の出来そのものでの結論を期待しております」
「……客の喜ぶ顔が思い浮かぶでぇ! せやったな、ワイは美味い料理をたらふく食べさせたかっただけやねん。それを客を拘束するような真似しおって……すまんかった!」
「――だ、そうです。妖怪の皆様、お勘定のお時間ですよ。早く支払ってお逃げ下さい」
骸魂の影響が薄らいできた店主が改心し、これで他の妖怪達の客も解放された。
中小路の行動は、店主の興味を猟兵へ一本化させるのに貢献できたはずだ……!
大成功
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大神・狼煙
無理やり食わせるとは、なんて外道な店……(自店の珈琲の危険性を棚上げする外道眼鏡)
大食いならうどん
噛む回数は少なめにして満腹感を抑えつつ、飲み込めるサイズに切るイメージ
うどんは小麦粉オンリーだが、それ以外は多数の食材が含まれカロリーがある分、質量に対して満腹感が来るのが早い
また、ソース系は味が濃くなりがちで水を求めるが、この水が腹に溜まる
胃は食べた物を常温に温めてから消化する特性がある故である
つまり、あったかい薄味のうどんなら、理論上はいける!
実際には、味に飽きが来るだろうから
「味に変わり映えがないんですが、あなたの薄味の腕前はこの程度ですか?」
など、もてなしを進行させつつ味変させましょう
巨海・蔵人
■ユーベルコードに掛ける願い(サムネ)優しい妖怪達に犠牲が出ませんように。
はい、今回はカクリヨファンタズム、屋台通りからお届けです。
駆出し猟兵として、粉物の氾濫との勝負です、そちらに集中するので実況はここまでですが。皆のイイねが力になる!応援お願いします。
■煽っていくスタイル
(基本は大食いをリミッター解除で満足させつつ)
ところでご主人、串カツはあるかな?
揚げ物は衣が命、つまりパン粉、すなわち小麦粉、粉物。
ご主人程の粉物愛溢れる人が粉物の懐の広さ、可能性を認めない訳が思うけど。
(エセ専門家風に暴論を混ぜつつ、上手くいったらシェアしよう)
お団子は粉物、そば粉がよくて、米粉が駄目なんて差別ご主人は、
黒褐色の肌のダンピールがフラリと深夜の屋台の前に足を運ぶ。
その人殺しのような剣呑な視線を屋台の赤提灯に向けると、人知れずに舌打ちを響かせた。
どうやら、今回の依頼内容に、何やら思うところがあるようだ。
「無理やり食わせるとは、なんて外道な店……」
大神・狼煙(餓狼・f06108)の言い放った台詞は、彼の営む珈琲店で出す珈琲を飲んだことのある者らが聞いたら総ツッコミが入っていただろう。
なんで同じ器具・同じ豆使ってるのに、毎回、味がピーキーに変わるのか(しかも大抵は客が悶絶する程の不味さになる)?
いや、今の大神はギャグ要員ではない。
オブリビオンを倒すべく、シリアスに飯を食いに来たダンピール猟兵なのだ。
UDCアースが消えると、大切な家族の宿縁オブリビオンを殺せなくなる。
あいつだけは何度も何度も、見つけ次第、俺が殺してやる。
そう誓ったあの日から大黒の眼光は大業物めいて鋭い光を放っているのだ。
……あと、UDCアースが消滅すると、自身の営む珈琲店も消滅するので、割と逼迫した状況でもある。
「さて、入りますか。って、なんかやたらでかい人が居ますね? って、もしかして猟兵です?」
屋台の前で誰も居ない虚空へお喋りをしている巨体の男は、努めて明るく振る舞おうと必死の様子。
「えっと、サムネ用お写真はオッケー……『ユーベルコードに掛ける願い! 優しい妖怪達に犠牲が出ませんように……』っと煽りフォントもバッチリだね。それじゃ……配信開始、がんばろう……」
自分を奮い立たせて、ソーシャルディーヴァ型バイオモンスターの巨海・蔵人(おおきなおおきなうたうたい・f25425)は手にした撮影用カメラの前で生配信を開始した。
「皆のイイねが僕の力、愉快なバイオモンスター蔵人君チャンネル。配信主の蔵人君です、遅い時間に視聴してくれてるみんな、どうもありがとう」
世界を超えて、キマイラフューチャーや端末を配置済みの封神武侠界のファンが深夜にも関わらず次々とコメントを寄せ始めた。
「はい、今夜の生配信は、人気コーナー。“チャレンジ! 蔵人君!”です。つまり、お待ちかね、フードファイトですよ。今回はカクリヨファンタズム、屋台通りからお届けです」
<待ってました!(5000pt)>
<お食事代(3000pt)>
<今日も飯テロに期待(10000pt)>
視聴者の投げ銭をメガネ型ソーシャルデバイスで確認した蔵人は感謝の言葉を述べると、カクリヨ世界に起きた大異変を他世界の視聴者へ完結に説明し始めた。
「……というわけで、大ボスの予知を可能にするために、優しい妖怪達は自らオブリビオンになっちゃたんだ。今から食べる粉物屋台のご主人も、そんな優しい妖怪のひとり。ぼくがいっぱい食べて、絶対に助け出してみせます」
コメント欄には激励の声が流れてゆけば、蔵人は猟兵としての覚悟を腹に据える。
ユーベルコード“プロジェクト・うぃっしゅ”を発動させ、今回の任務の成功を願う蔵人。
「駆出し猟兵として、粉物の氾濫との勝負です、皆のイイねが力になる! 応援お願いします! まず、先輩猟兵さんにインタヴューしちゃおうかな」
蔵人は、唐突に側に居合わせた大神にカメラを向ける。
「な、なんなのです?」
「突然ごめんなさい、ぼく、愉快なバイオモンスター蔵人君チャンネルの配信主、蔵人君です」
「アッハイ。どうも。これ今、配信中です?」
シリアス大神は困惑している!
蔵人はカメラを向けながら優しい笑顔を向けた。
「はい、生配信中です。ぼく、駆け出し猟兵なんですけど、先輩として良かったらアドバイスを頂けませんか?」
「ええと……そうですね……」
先輩と呼ばれ、助言を請われたのならば、それを無下にする理由はない。
大神は決め顔かつカメラ目線で告げた。
「どうも、先輩猟兵の大神・狼煙です(前髪ふぁっさぁ……)。いいですか、自分の信念を貫くのです。貫いた先に、猟兵は勝利をもぎ取るのです!」
「かっこいい……! ありがとうございました。では、フードファイトに集中するので実況はここまでですが。先輩と一緒に頑張ります」
「私達の活躍から目を離さないでくださいね?」
大神もノリノリで視聴者を煽り、蔵人と共に屋台の暖簾をくぐった。
オブリビオン店主は悩んでいた。
「せやかてお客さん? そない言うても……」
「いいえ、ご主人? 串カツがないなんて、粉物屋を名乗るのには片手落ちじゃないかな? 揚げ物は衣が命、つまりパン粉、すなわち小麦粉、粉物。ね?」
「ね?って、お客さん堪忍してつかぁさい……」
蔵人はその巨体に似合った食べっぷりで、この屋台のメニューを早々に完全制覇してしまったのだ。
それでもまだまだ物足りない蔵人は、ご主人にこう尋ねた。
『メニューにないものでも作れるの?』
『メニュー全制覇者の特権や! ワイに作れない粉物はあらへんで!』
そう豪語した店主に突き付けられたのが、串カツだった。
「ご主人程の粉物愛溢れる人が、粉物の懐の広さ、可能性を認めない訳が思うけど」
「ぐ、ぬぬ……! ワイの屋台には本格的な揚げ物用の機材がないんや……せやけど、ワイに二言はあらへんで! ちょっと待っとき!」
店主は大鍋に油をドプドプ注ぐと、コンロに火を掛けて温め始めた。
具材を竹串に差し、油が熱せられるまでの間に衣を大量にまぶしてゆく。
その間に、大神もうどんを啜ってゆく。
「あの、この素うどん、味に変わり映えがないんですが、あなたの薄味の腕前はこの程度ですか?」
「いや、あんちゃん、さんざん理屈捏ねておいて、その言い分は無いやん……」
店主はがっくりと肩を落としてしまう。
大神はこの素うどんに辿り着くまで、店主を翻弄し続けてきたのだ。
「ええ、大食いならうどんが一番です。噛む回数は少なめにして満腹感を抑えつつ、飲み込めるサイズに切るイメージですから。ですが、うどんは小麦粉オンリーだが、それ以外は多数の食材が含まれカロリーがある分、質量に対して満腹感が来るのが早いのです。また、ソース系は味が濃くなりがちで水を求めがちですが、この水が腹に溜まるのです。つまり、あったかい薄味の素うどんなら、理論上はいける! なぜなら、胃は食べた物を常温に温めてから消化する特性がある故に! ええ、そう言いましたとも!」
大神の目の前には、積み重ねられたどんぶりが既に5つも重なっていた。
結構食べているはずだが、ここから追込みを掛けるべく、彼は店主へ揺さぶってゆく。
「ですが、やはり“飽きる”んですよ。でももっと食べたいのですよね……。もったいないですね、この味を楽しみたいのですけど。あぁ、どなたか、私を満足させてくれませんかねぇ?(チラチラッ)」
横目で店主のおもてなし衝動をくすぐる大神。
この要求に、店主はぎりりと奥歯を食いしばって叫んだ。
「んんんん! やったるわぁぁッ! そこまでいうなら、ワイの腕によりをかけて、素うどんの真髄、みせたるわ! うおおおぉぉぉっ!」
店主はうどんつゆの出しの配合を変えて、大神へ次々と繰り出してゆく。
「ほう? 此方は昆布の香りが高く、見た目の黄金のつゆにうどんが泳ぐ様子は美しいですね。次はアゴ出汁ですか。さっぱりしてるのにコクがありますね。そして此方は……まさかのエビだしですか! 芳醇な磯の香りが鼻を通りますね!」
すするペースが格段に上がる大神に、店主は達成感からか骸魂がごっそり抜けてゆく。
そうこうしているうちに油が温まり、店主は串を揚げ始めた。
「ソースはこれを使こうてや! とんかつソースを昆布出汁で割ったものや、美味いでぇ!」
「ありがとうございます。ソースは二度漬け禁止ですよ。UDCアースのオオサカでは常識だそうです」
蔵人の豆知識に、視聴者達は異世界文化の関心の声が高まる。
「お待ちかね! 揚げたて串カツ、まずは100本や! まだまだ揚がるで!」
「頂きます。ソースを付けて……あむ、はふはふ……美味しいです!」
思わず笑みが溢れる蔵人。
その笑顔につられ、店主もまた笑顔を零す。
「さよか! おっちゃん、がんばったかいがあったわ~!」
此方も充実感が骸魂を追い出して、身体から黒い霧がモヤモヤと出ていく。
投げ銭も最高潮となり、今回の生配信で、蔵人は投げ銭の過去最高金額を獲得してしまうのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カシム・ディーン
今回の戦争って地球も巻き込むとんでもない規模ですよね
それで大食いって…
「お好み焼きも種類があって割と戦争案件じゃなかったっけ?」
焼きそばが入ってるのも入っていないのも美味しいですけどね
という訳で美味しいのが食べれると聞きました!
「ごーはーんー!」
まずはがっつりいくぞ!
餅チーズお好み焼きをお願いします
「メルシーモダン焼きー☆(はっ!これまさにデートじゃない!?ヒャッハー☆」
存分に食レポしつつ食べます
たこ焼き行きます
「メルシーチジミ食べたい!」
一応シェアしてそれぞれ食べます
一度ユベコで飛び回ってお腹空かせて再び食べ始めます
スィーツいくぞ!
今川焼
「メルシーたい焼き!うぐぅ☆」
やめろ!?
「奇跡だよ☆」
ルパート・ブラックスミス
オブリビオン店主。否、あえてこう呼ぼう。
師匠。自分に、たこ焼きの技術を伝授して頂きたい……!(土下座)
当方、夏限定の行商人の三年目なのですが新規事業展開を考えようにも肝心の【料理】技術を師事するアテがない次第。
夏といえば屋台、そして屋台定番の粉物でもたこ焼きに要求される技術は別格。(※個人の意見です)
【学習力】【覚悟】【覇気】そして【情熱】。己の総てをもって、ついていきましょう。
今、此処で、自分を一端のたこ焼き屋に仕立てて頂きたい!
まぁ真面目な話、教育方面に思考を誘導すれば『もてなし衝動』の矛先が逸れて粉物量産抑制になるやもと目論んだ次第。
勿論、味見も兼ねて過程で出来たものは全部食べるぞ。
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は相棒の白銀美少女メルシーと共に、深夜の屋台の暖簾をくぐった。
「今回の戦争って地球も巻き込むとんでもない規模ですよね。それで大食いって……」
「お好み焼きも種類があって、割と戦争案件じゃなかったっけ?」
「焼きそばが入ってるのも入っていないのも美味しいですけどね? という訳で美味しいのが食べれると聞きました!」
「こんばんはー! ごーはーんー!」
「らっしゃい! そろそろ店じまいにするつもりやったんやけど、お客さん達が最後やな?」
店主はホクホク顔で2人を出迎えた。
「おい、バイト! おしぼりをお客さんに渡したってや!」
「はい、今すぐに」
ガシャン、と金属音が鳴り響く。
店主の後ろに立っていた、西洋鎧がひとりでに動き出した。
「おしぼりです、どうぞ」
「「鎧が動いた!?」」
おしぼりを渡した鎧甲冑に、カシムとメルシーが腰を抜かしてしまう。
そこへ、切れ長の目が涼し気な黒髪の青年が慌てて駆け寄ってくる。
「お客様、大丈夫か?」
「きゃ……♥ ご主人サマほどじゃないけどイケメン……♥」
メルシーが見惚れていると、カシムが無言で彼女の頭を引っ叩いた。
「痛い~って、ご主人サマ、もしかしてヤキモチ?」
「ちげーよ! 馬鹿ですか、お前は!」
「やだー、ご主人サマ、顔真っ赤~☆」
「うっせー!」
「仲が良いのだな。いいことだ」
青年が微笑むと、メルシーはコクコクと何度も頷き、カシムが激しく首を横に往復して振った。
「あれは自分の器物で本体。ヤドリガミなのでな。普段からあの姿なのだが、接客の際には仮初の姿のほうが違和感がないからと、店主からの助言をもらってユーベルコードで呼び出しておいてよかった」
ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は、カシムたちを驚かせた事を詫びると、手を取って彼らを立ち上がらせた。
「そうなのですか……って、なんで猟兵がこの屋台で働いてるのです?」
「それは……」
ルパート(鎧)が腕を組んで経緯を話し始めた。
『オブリビオン店主。否、あえてこう呼ぼう。――師匠。自分に、たこ焼きの技術を伝授して頂きたい……!』
カシムたちよりも先に屋台へ到着したルパートは、店主に土下座をぶちかました。
『なんや急に!? 顔上げぇや自分!』
慌てるオブリビオン店主に、鎧甲冑のルパートが土下座をしたまま訳を話し始めた。
『当方、夏限定の行商人を初めて三年目なのですが、新規事業展開を考えようにも、肝心の料理技術を師事するアテがない次第。夏といえば屋台、そして屋台定番の粉物、その中でも、たこ焼きに要求される技術は別格!』
『いや、そういうわけでもあらへんがな?』
ルパートの見解に首を傾げつつ、店主は『せやけど言われてみれば……』と乗せられてゆく。
『この身は燃え盛る流動鉛が詰まっている鎧のヤドリガミなれど、夏の行商に掛ける想いは誰にも負けない、負けたくない所存。この溢れ出る情熱を受け止めてくれるのは師匠、貴殿だと確信した。己の総てをもって、ついていきましょう。今、此処で、自分を一端の“たこ焼き屋”に仕立てて頂きたい!』
こうして、ルパートの修行が始まった。
『違う! 生地の混ぜ方が甘いで!』
『申し訳ない、どうすればよいのだろうか?』
『最初しっかり、あとは素早くや! 鎧のままだとやりにくいやろ?』
『む、ならばこうしよう。過去に潰えた我が命運は鋼と鉛に繋がれ。されど、未来で結んだ縁は運命を新たな道に導く。いでよ仮初の自分。“縁が紡ぎし身製(リテイクルパートリインカーネーション)”!』
『うおっ? ごっつイケメンのあんちゃんが出てきたやん!』
『『その言葉はこそばゆいな……』』
『両方喋った!?』
『片方が生地を流し、片方が具材を投入。そして2人で串を動かし、効率よくひっくり返してゆく……!』
『良いコンビネーションや! ワイにはできん芸当や! 誇ってええで!』
『……! ありがとうございます、師匠!』
『飲み込み早くて助かるわー! ホレ、喰うてみぃ? 初めて自分で作ったたこ焼の味や!』
『頂きます……駄目だ! 師匠の味には届いていない! 何故だ、何が違うんだ!』
『どれどれ? ……ふん、まだまだやな……。ワイのたこ焼きの味をもっと研究するんや!』
『あむ、もぐもぐ……何処だ? 何処に決定的な差が隠れているんだ
……!?』
「……ということがあったのでな、かなり師匠のたこ焼きを食べたおかげで腕前がかなり上達したので、ようやく店に立つことを許されたのだ」
「なんか僕達が来るまでにドキュメンタリー番組1本分の撮れ高が!?」
「それじゃ、ルパート君のたこ焼きをくださいなー☆」
メルシーの注文に、ルパートが戸惑う。
「だが、まだ客前に披露できるレベルでは……」
「ええやん? ルパート、かましたれ! お前の魂のたこ焼きを!」
「師匠……!」
オブリビオン店主のゴーサインを受け、ダブルルパートの鮮やかな手際が初めて客前で披露された。
的確な役割分担と手数によるスピード感溢れる焼き方に、カシムとメルシーは心を奪われた。
「……出来た。自分の現段階で最善を尽くした。忌憚のない意見を貰いたい」
ルパートの差し出した船皿に、黄金色の丸くて香ばしい努力の結晶が並ぶ。
カシム達は覚悟を決め、焼きたてのたこ焼きに手を伸ばした。
ひとくち、ふたくち、2人は無言で食し続ける。
ルパートの仮初肉体の青年の表情が、緊張で強張ってゆく。
そして遂に、2人が声を揃えて告げた。
「「すっごく美味しい!」」
「よし……っ!」
ダブルルパートがシンクロガッツポーズ!
「外カリ中トロ! 焼き加減が理想的ですね!」
「ホントだねー☆ 何個でも食べられちゃうよ!」
「やりおったな、ルパート!」
「はい……師匠、ありがとうございます……」
仮初肉体の青年ルパートが涙すれば、鎧のルパートが鉛の青く燃える涙を流す。
「弟子が大成した祝いや! ルパート、お前も喰え!」
「良いのですか? では、お言葉に甘えて……!」
こうして、いつしか宴会へと発展し、自然と妖怪達も笑顔で屋台へ戻ってきた。
「まずはがっつりいくぞ! 餅チーズお好み焼きをお願いします!」
「メルシーはモダン焼きー☆」
「……自分はやはり、師匠のたこ焼きを」
「あいよッ!」
店主は笑顔で調理を行ってゆくと、骸魂がどんどん抜けていく。
恐らく、もうすぐで店主のオブリビオン化は解除されるだろう。
「お待っとさん! ご注文の品やで!」
「ありがとうございます、うーん、素質の香りも素晴らしいですですが、材料の質がそもそもいいですね。良い目利きです」
「うーん☆ ホントだね! 最高の素材を最高の職人が料理するんだもん、美味しいに決まってるよっ!」
「この味……カクリヨファンタズムだけに留めておくのは非情に惜しい。自分がこの味を受け継ぎます……!」
それぞれの賞賛の言葉が、店主の涙を誘う。
「グスッ……! 思い出すなぁ……屋台を始めた頃の、あん時のキラキラした自分の志を……そうや、ワイはみんなに美味いモン食べてもらくて屋台を始めたんや!」
その瞬間、店主の身体から骸魂がスポーンと飛び出す!
「メルシー! 行くぞ!」
「オッケーご主人サマ☆」
ユーベルコード“対人戦術機構『詩文の神』(メルシーマホーショウジョモード)”で2人が飛翔すると、その場から離脱しようとする骸玉へ追い縋る!
「メルシー! ハルペーで刈り取れ!」
「冥府の世界の特急券をプレゼントだよ☆」
ビーム鎌剣ハルペーを振りかざすと、メルシーは骸魂をマップ達に断ち切った!
「……はっ? ワイは何を?」
骸魂がもとに戻った店主……の見た目は変わらなかったが、どうやら正気に戻ったようだ。
西の幹部妖怪って、もしかしたらそういう意味なのかもしれない……。
「よし、運動したらお腹が空きましたね。スィーツいくぞ! 今川焼きあります?」
「メルシーたい焼き! うぐぅ☆」
「おい馬鹿やめろ! いちいちネタが古いんだよ、お前は!」
「奇跡だよ☆ それを理解できるご主人サマも相当だよね!」
「うぐぅぅぅぅ!」
墓穴を掘るカシムが頭を抱えていると、メルシーはふと思い付く。
(はっ! これまさにデートだよね!? ヒャッハー☆)
チヂミを食べながら、密かにガッツポーズするメルシー。
「師匠……オブリビオンに身を落としながらも、粉物の熱き魂を伝えてくれたこと、感謝します」
ルパートは今日の依頼をずっと覚えていようと、流動鉛の蒼き炎に記憶を刻み込んだのだった。
かくして、屋台騒動は終結し、多くの妖怪達が救出された。
そして雲の橋は新たな場所を指し示す。
新たに待ち受けるオブリビオンを倒し、妖怪達を助けるべく、猟兵達は戦場を駆け抜ける……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵